平成13(ワ)210 一般廃棄物中間処理施設操業差止請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年9月30日 宇都宮地方裁判所
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判決文本文23,908 文字)

判決 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,別紙施設目録記載の施設の操業をしてはならない。 第2 事案の概要本件は,栃木県内に居住する原告らが,被告による別紙施設目録記載の施設(以下「本件施設」という。)の操業により,ダイオキシン類その他の有害物質の排出による大気汚染,水質汚染,農作物や建物の汚染,ごみ運搬車両の走行による公害,交通災害などが生じ,原告らの健康,生活あるいは財産について被害を受けるおそれがあると主張して,被告に対し,人格権等を根拠として,本件施設の操業の差止めを求めた事案である。 1 争いのない事実等(証拠を摘示しない事実は,当事者間に争いがない。)(1) 原告らは,宇都宮市ないしその周辺に居住する者である。 (2) 被告は,平成2年ころから,新たなごみ処理施設の建設を計画し始め,平成5年ないし6年ころにかけて,新清掃工場の建設に伴う環境影響評価(いわゆる環境アセスメント。以下「本件アセスメント」という。)を実施した上で,平成9年8月,本件施設の建設を開始した。本件施設は,平成13年3月ころ被告に引き渡され,そのころから,被告がこれを本格稼働している。 (3) 被告,上三川町,石橋町,上河内町及び河内町(以下,一括して「関係自治体」という。)は,本件施設の周辺に位置するA自治会,B自治会,C自治会,D自治会,E自治会及びF自治会(以下,一括して「周辺6自治会」という。)との間で,平成13年3月31日付けで「クリーンパーク茂原の環境保全に関する協定書」(以下「本件協定」という。)を取り交わした。本件協定には以下の内容の条項がある。 ア 6自治会」という。)との間で,平成13年3月31日付けで「クリーンパーク茂原の環境保全に関する協定書」(以下「本件協定」という。)を取り交わした。本件協定には以下の内容の条項がある。 ア本件協定は,本件施設を含む「クリーンパーク茂原」の建設及び稼動に際し,関係自治体が,周辺6自治会との連携を図りながら,環境保全対策を行い,周辺6自治会の地域住民の快適な生活環境を将来にわたって確保することを目的とする。 イ本件施設において処理するごみは,宇都宮市,上三川町及び石橋町のものとする。 ウ関係自治体は,本件施設の稼動に際しては,排出ガス中の以下の各物質の排出濃度(1時間値)について,各自己規制値を遵守する。 ばいじん 0.02g/N?以下硫黄酸化物 30ppm以下窒素酸化物 70ppm以下塩化水素 50ppm以下ダイオキシン  0.1ng/N?以下エ関係自治体は,本件施設の稼動において上記自己規制値を超えた場合は,直ちにその原因となる系統の焼却炉等の運転を一時停止し,必要な措置を講ずるものとする。 (4) 本件施設においては,宇都宮市,上三川町及び石橋町のごみが搬入され,焼却処理されている。 本件施設の焼却炉形式は全連続燃焼式焼却炉(ストーカ式),焼却能力は390t/1日(130t/1日×3炉),灰溶融炉形式は電気溶融方式(3相アーク式),灰溶融能力は40t/1日(1炉)である(乙1)。 (5)アダイオキシン類の濃度は,各異性体(化学構造及び毒性の異なる化学物質)の実測濃度に,当該異性体の毒性係数(最も毒性の強い異性体2,3,7,8-TeCDDの毒性を1とした場合の相対的な毒性の強さ)を乗じ,それらすべてを は,各異性体(化学構造及び毒性の異なる化学物質)の実測濃度に,当該異性体の毒性係数(最も毒性の強い異性体2,3,7,8-TeCDDの毒性を1とした場合の相対的な毒性の強さ)を乗じ,それらすべてを合計することによって算定される,毒性等量(TEQ)という数値で示されることが多い。以下,ダイオキシン類の濃度の表示はすべてこの毒性等量によるものである。 イダイオキシン類対策特別措置法(以下「特措法」という。)7条及びダイオキシン類による大気の汚染,水質の汚濁及び土壌の汚染に係る環境基準(環境庁告示第68号)は,「ダイオキシン類による大気の汚染,水質の汚濁(水底の底質の汚染を含む。)及び土壌の汚染に係る環境上の条件について・・・人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準」(以下「環境基準」という。)のうち大気に関するものを,年間平均値で0.6pg-TEQ/?以下と定め,「環境基準が達成されていない地域又は水域にあっては,可及的速やかに達成されるように努めることとする。」としている。 ウ特措法8条1項及びダイオキシン類対策特別措置法施行規則(以下「特措法施行規則」という。)1条は,ダイオキシン類の「排出基準」を,施設の種類等に応じて定めている。本件施設に適用される排出基準は,0.1ng-TEQ/N?となる。 エ大気汚染防止法及びその関連法令は,以下の各物質の排出基準を,施設の種類等に応じて定めている。本件施設に適用される排出基準は,それぞれ以下のとおりとなる。 ばいじん 0.04g/N?以下硫黄酸化物 K値8以下窒素酸化物 250ppm以下塩化水素 700mg/N?以下 2 本件の争点は,原告らが被告に対し,本件施設の操業の差止めを求める権利 酸化物 K値8以下窒素酸化物 250ppm以下塩化水素 700mg/N?以下 2 本件の争点は,原告らが被告に対し,本件施設の操業の差止めを求める権利を有するか否かであり,両当事者の主張は以下のとおりである。 (原告らの主張)(1) 以下の諸事情に照らせば,本件施設の操業により,ダイオキシン類,重金属類,芳香族炭化水素類,ばいじん,窒素酸化物,塩化水素類その他の有害物質が排出され,それにより大気,土壌,地下水等が汚染され,原告らが健康被害を受けるおそれがある。また,ばいじんやダイオキシン類の排出により,原告らの農作物,建物,洗濯物,自動車等が汚染,汚損され,生活被害を受けるおそれもある。 ア原告らが株式会社Gに依頼して行った調査の結果(甲49が同G作成の報告書。以下「本件報告書」という。)によれば,本件施設の排ガス中のダイオキシン類濃度は9.6ng-TEQ/N?以上と推定され,これは,特措法上の排出基準であり本件協定にかかる自己規制値でもある0.1ng-TEQ/N?を大幅に上回るものである。被告の調査結果は実態を反映するものではない。 また,実際にも,本件における原告本人尋問や平成13年12月から平成14年1月にかけて行われたアンケート(甲19)において,一定程度の周辺住民が,本件施設稼働開始後に悪臭や振動を感じた旨述べており,頭痛等の身体の変化も訴えている。 イ平成12年10月17日から平成13年3月11日までの本件施設の試運転期間中,21件のトラブル,不具合の発生が確認されている。平成12年10月には,排ガス中の二酸化硫黄,塩化水素などの濃度が本件協定にかかる自己規制値を超過したことが複数回あった。排ガス中の一酸化炭素濃度については,1時間平均値で10 生が確認されている。平成12年10月には,排ガス中の二酸化硫黄,塩化水素などの濃度が本件協定にかかる自己規制値を超過したことが複数回あった。排ガス中の一酸化炭素濃度については,1時間平均値で100ppm以下となるよう燃焼管理を行うことが法律上義務づけられているところ,同月から同年12月にかけて,これを超えたことがしばしばあった。 本運転開始後も,不具合や自己規制値違反が度々生じており,改善されていない。平成13年4月には,硫黄酸化物及び塩化水素が本件協定にかかる自己規制値を超過するという事故が発生している。同年5月にも,不具合が生じて炉が一時停止され,その立ち下げ・立ち上げ時に一酸化炭素濃度が100ppmを大幅に上回ったが,ダイオキシン類は,かかる立ち下げ・立ち上げ時不完全燃焼により大量に発生することが知られており,このとき高濃度のダイオキシン類が生成された可能性がある。同年6月には,本件施設から酸化膜が飛散するという事故が発生しており,その成分や飛散範囲の調査がされておらず,煙突の内側に高濃度のダイオキシン類や重金属類を含んだばいじんが付着し,酸化膜と共にこれらのばいじんが一緒に飛散した可能性もある。 本件協定にかかる自己規制値の超過が生じた場合にも,被告は本件施設の炉を停止させなかった。これは本件協定に明らかに違反しており,本件協定は実質的には何ら機能していない。 本件施設についての平成13年度及び平成14年度における修繕・整備関係費は,莫大な額にのぼっており,本件施設が順調に稼働していないことを推測させるものである。 ウ被告は,本件施設の整備目標年次である平成19年度における処理対象ごみ量(宇都宮市他4町)を663.1t/1日と予測しているが,これは,現状のごみ排出量の推移や最近の国の立法措 のである。 ウ被告は,本件施設の整備目標年次である平成19年度における処理対象ごみ量(宇都宮市他4町)を663.1t/1日と予測しているが,これは,現状のごみ排出量の推移や最近の国の立法措置等の動向からみて著しく過大な数値である。おそらく,平成19年度にはごみの排出削減が相当進んでいるはずであり,そうなれば,本件施設の規模は相当に過大なものとなる可能性が高い。 実際,本件施設においては,上記のとおり,本来の運転計画において炉の運転が停止されることになっていない時期にこれが停止されたことがあり,これは,被告の予想よりもごみ量が少ないためと考えられる。 実際の焼却ごみ量が設計焼却能力を大幅に下回ることになると,まず,適正かつ正常な燃焼管理が困難になり,不完全燃焼等が原因で高濃度のダイオキシン類等の発生をもたらすおそれがある。また,炉の一部運転停止が頻繁に行われるようになり,その結果,炉の立ち下げ・立ち上げに伴うダイオキシン類の発生の蓋然性が高くなることとなる。さらに,ごみ量が減少すると本件施設に付随する発電施設の定格出力を維持することが困難となるため,これを維持するため,本来予定された地域以外の地域のごみを収集したり,本来焼却すべきでないごみをも収集し焼却するということになるおそれがある。 エ本件施設のような焼却施設において,完全燃焼を常時維持することは実際には困難であり,不完全燃焼が生じた場合,ダイオキシン類が発生する可能性がある。 ダイオキシン類の再生成を完全に抑制することも困難であり,再生成が生じた場合,高濃度のダイオキシンが流出してしまう。 薬剤の注入装置の故障等も生じ得る。 ろ過集塵器,いわゆるバグフィルターは,ダイオキシン類の排出抑制のために最も効果の高い装置であるが 場合,高濃度のダイオキシンが流出してしまう。 薬剤の注入装置の故障等も生じ得る。 ろ過集塵器,いわゆるバグフィルターは,ダイオキシン類の排出抑制のために最も効果の高い装置であるが,排ガス中の数ミクロンという微細なダスト(すす等のばいじん微粒子)が当たっただけで簡単に破れてしまうものであり,破損等の可能性は否定できない。バグフィルターが破損した場合,バグフィルター入口の濃度の(すなわち明らかに特措法に定められた排出基準を超過する濃度の)ダイオキシン類がそのまま大気へ排出されることになる。 オダイオキシン類は,強い毒性を有し,発がん性を有するほか,皮膚,生殖機能,甲状腺ホルモン等に影響を及ぼす危険がある。その他,本件施設からは,芳香族炭化水素類,有害な金属・非金属等が排出される可能性があり,これらも発がん性等の毒性を有する。実際にも,廃棄物焼却施設の排ガス中ダイオキシン類濃度と悪性新生物死亡の地理的分布との間に因果関係があるとの報告,焼却炉の周辺地域において種々の健康被害が生じ,裁判所の閉鎖命令が出た事例,ごみ焼却施設から放出される物質によりさまざまな健康被害や環境破壊が生じるとの報告等が存在する。 (2) 本件アセスメントは,以下の点において不十分である。 まず,本件施設から排出される可能性のある有害物質の種類とその量についての把握が必要であり,汚染源となる疑いのある既知の物質はすべて予測評価の対象とされなければならないところ,本件アセスメントにおいては,硫黄酸化物,窒素酸化物,ばいじん及び塩化水素の4物質についてしか予測が行われていない。 本件施設から排出された大気汚染物質の飛散の方向や降下地点を予測するためには,煙突の位置を中心として周囲5~10km程度の範囲の気象条件についての把握が必要 いてしか予測が行われていない。 本件施設から排出された大気汚染物質の飛散の方向や降下地点を予測するためには,煙突の位置を中心として周囲5~10km程度の範囲の気象条件についての把握が必要であり,そのためには,現地における1年ないし2年にわたる継続的な観測調査が必要であるところ,本件アセスメントにおいては,建設予定地から約8.7kmも離れた宇都宮地方気象台の観測データしか使用されておらず,現地観測調査は全く実施されていない。冬期の逆転層発生時には高濃度汚染が発生しやすいため,このときの現地における気象観測データが特に必要であるところ,かかるデータは存在しない。 本件アセスメントにおける排ガスの大気拡散計算は,いわゆるプルーム・パフモデル理論に依拠して行われているところ,煙突から摂氏200度の温度で排出された排ガスが実際に同理論に従って拡散するものであるか否かの科学的な検証が必要であるにもかかわらず,これが全く行われていない。現地におけるトレーサーを使用した大気拡散調査が必要であるが,これも実施されていない。 原告らの居住する地域には,本件施設以外に,リサイクルプラザ,栃木県下水道資源化工場,東横田清掃工場,屋板清掃工場,北関東自動車道,自衛隊宇都宮駐屯地,JR高圧変電所,宇都宮貨物ターミナル,オイルターミナル,東北新幹線,JR宇都宮線など,複数の問題施設あるいはその建設計画が存在しており,これらとの複合汚染に関する予測・評価も必要であるところ,これが行われていない。なお,被告が実施した本件施設,上記下水道資源化工場及び北関東自動車道の三者についての複合汚染のシミュレーションに関しても,本件アセスメントと同様に,宇都宮地方気象台の観測データしか使用されておらず,現地での気象観測のデータが全くないこと,プルーム・パフ 東自動車道の三者についての複合汚染のシミュレーションに関しても,本件アセスメントと同様に,宇都宮地方気象台の観測データしか使用されておらず,現地での気象観測のデータが全くないこと,プルーム・パフモデル理論にのみ依拠していることなどの問題がある。 (3) 本件施設の周辺において,宇都宮市,上三川町及び石橋町以外の地域のごみや一般廃棄物でないごみを搬入しているのではないかと疑われる不審な車両の通行が確認されている(甲14,17)。 (4) 本件施設に関連する廃棄物運搬車両の走行により,自動車の排ガスに含まれる窒素酸化物,ベンゼン,ディーゼル排出微粒子,ダイオキシン類,芳香族炭化水素類などの有害物質が相当量排出され,長年のうちに呼吸器疾患や肺がんを引き起こすおそれがある。交通騒音も生じる。 また,廃棄物運搬車両の中には,パッカーを開けたまま走行したり,正規の搬入ルートを守らずに走行したりするものがあり,その走行により交通事故が生じる可能性もある。実際,平成12年12月には,運搬車両と一般車両との交通事故が発生している。 (5) 宇都宮市における1人1日当たりのごみ排出量は他の都市と比べて多く,ごみ減量に向けた被告の努力はなお不十分であり,リサイクル,製品の長寿命化や長期使用などの施策を講じるべきである。また,リサイクルに関する法の整備などにより,今後はごみの発生段階での排出抑制や再使用,再生利用が促進され,ごみの大幅な減量が見込まれる。 したがって,本件施設には必要性がない。 (6) 平成9年6月に原告らが周辺住民を対象として実施したアンケート(甲18)の結果によれば,当時,C自治会を中心とする周辺住民の多くが本件施設の建設に反対の意思を有していたこと及び本件施設の建設に関する被告の説明が不十分であったことが明 として実施したアンケート(甲18)の結果によれば,当時,C自治会を中心とする周辺住民の多くが本件施設の建設に反対の意思を有していたこと及び本件施設の建設に関する被告の説明が不十分であったことが明らかである。平成9年3月に原告らがH地区の44名の自治会長を対象として実施したアンケート(甲29)の結果によれば,アンケートに応じた27名の自治会長のうち,自治会員の多数決に基づいて本件施設の建設への同意書に署名・捺印をしたとする者はわずか2名にすぎない。H地区の42の自治会が平成8年12月に被告に提出した要望書に関して,C自治会員をはじめとする6の自治会に所属する会員合計138名から,要望書の無効,棄却を求める要望書(甲31)も提出されている。各自治会長は,自治会内部での話し合いのないまま,あたかも周辺住民が本件施設の建設に同意をしているかのような同意書を被告に提出していたのである。本件協定に関しても,各自治会内部において十分な話し合いがされたとは考えられず,住民同意の証となるものではない。 (7) 以上によれば,原告らは,①人格権,②環境権(良好な環境を享受する権利。憲法13条後段及び25条を根拠とする。),あるいは③住民自治権(自ら居住する地域にかかわる事柄の決定に参与する権利。憲法92条及び95条を根拠とする。)に基づき,被告に対し,本件施設の操業の差止めを求める権利を有する。 なお,上記(2)の本件アセスメントの不十分性は,本件施設から有害物質が排出されることとは別個に,本件差止請求の独立した根拠となるものである。 (被告の主張)(1) 本件施設の操業により原告らに健康被害や生活被害をもたらすおそれはない。 ア本件施設は,廃棄物の処理及び清掃に関する法律に関連して定められている「一般廃棄物処理施設の技術上の基準」,「 (1) 本件施設の操業により原告らに健康被害や生活被害をもたらすおそれはない。 ア本件施設は,廃棄物の処理及び清掃に関する法律に関連して定められている「一般廃棄物処理施設の技術上の基準」,「一般廃棄物処理施設の維持管理の技術上の基準」及び「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」中の新設ごみ焼却炉に係る基準をすべて満足する施設である。完全燃焼によりダイオキシン類の発生を抑制し,排ガスの低温処理によりダイオキシン類の再生成を抑制し,消石灰,活性炭供給装置,バグフィルター,触媒脱硝装置などの最新鋭の設備により発生したダイオキシン類その他の有害物質を除去・分解する。 なお,バグフィルターのろ布の破損による被害を防ぐため,本件施設においては,バグフィルターの入口にルーバー(排ガスを整流化する装置)を設置している。ばいじん濃度を常に監視し,20mg/N?を超えるような異常な濃度が確認されたときは速やかに炉を停止することになっている。また,本件施設の引渡時の性能試験におけるバグフィルター入口のダイオキシン類濃度は平均2.7ng-TEQ/N?であったから,万が一ろ布が破損し,同濃度の排ガスがそのまま放出されたとしても,拡散倍率20万倍と仮定して,ダイオキシン類濃度が最も高くなる地点でも0.014pg-TEQ/?となり,特措法上の環境基準0.6pg-TEQ/?に比して十分に低い値となるから,問題はない。 イ本件アセスメントの結果によれば,本件施設及び栃木県下水道資源化工場の稼動による現況(当時)への影響は,二酸化硫黄,二酸化窒素,浮遊粒子状物質,塩化水素のいずれについても,軽微なものである。 ウさらに,被告は,平成9年度から毎年度継続して環境モニタリング調査を実施し,本件アセスメントの妥当性を検証するとともに 窒素,浮遊粒子状物質,塩化水素のいずれについても,軽微なものである。 ウさらに,被告は,平成9年度から毎年度継続して環境モニタリング調査を実施し,本件アセスメントの妥当性を検証するとともに,ダイオキシン類を含め,大気,水質,騒音,振動,臭気等,本件施設周辺の環境の調査も行っている。 また,被告を含む関係自治体は,周辺6自治会の代表者3名の参加する「クリーンパーク茂原協議会」において,定期的に,自己規制値の達成状況,環境モニタリング調査の結果等を報告している。 (2) 原告の主張に対する反論は,以下のとおりである。 ア本件施設の排ガス中のダイオキシン類濃度は,特措法上の排出基準0.1ng-TEQ/N?をさらに大幅に下回る数値にとどまっている。本件報告書に記載された9.6ng-TEQ/N?に達するようなものではなく,本件報告書には信憑性がない。 本件施設周辺の大気中のダイオキシン類濃度は,本件施設の稼動開始後最近に至るまで,環境基準値0.6pg-TEQ/?を大幅に下回っている。その余の有害物質についても,法令上の基準値を大幅に下回っている。 原告らの主張するアンケートの結果については不知であるが,同アンケートの質問文には不適切なものも多く含まれており,その集計結果は信憑性に欠ける。 イまず,試運転は,多数の機器で構成され多種多様の制御を要する焼却プラント全体について,引渡時までに調整し,不具合箇所を改善するために行われるものである。試運転時に発生したいくつかの不具合については,発生後速やかに原因究明され,改善されており,引渡しに先立って性能検査も行われ,性能保障項目のすべてにおいて性能が確認された後に引渡しを受けている。計画値(自己規制値)を超えたときであっても,法令上の規制値はすべて満 究明され,改善されており,引渡しに先立って性能検査も行われ,性能保障項目のすべてにおいて性能が確認された後に引渡しを受けている。計画値(自己規制値)を超えたときであっても,法令上の規制値はすべて満足している。排ガス中の一酸化炭素濃度の規制値超過は,自動燃焼制御装置の調整段階に発生したものに過ぎない。 引渡後において,塩化水素,硫黄酸化物及び窒素酸化物の1時間当たりの排出量が計画値を超えたことが42時間あったが,これは総運転時間に比してほんの一時期のことであり,しかも速やかに改善もされている。 炉の立ち下げ・立ち上げ時に関しては,まず,原告のいう100ppmは炉の起動時・停止時には適用しないとされる基準値である。不完全燃焼が生じても,バグフィルター等による処理が行われるから,高濃度のダイオキシン類が排出される可能性は低い。さらに,極力,連続運転の実施を心がけている。 酸化皮膜(錆)の飛散は,煙突の設置時から試運転開始時までの2年間に煙突の内側に錆が発生し,稼働により剥離して錆が飛散したものであるが,発見された時点で速やかに調査を行い,その結果,その飛散は煙突を中心として数十メートルの範囲でしか確認されず,クリーンパーク茂原ないし下水道資源化工場の敷地内に留まっていた。その成分についても調査し,その結果,土壌の汚染にかかる環境基準をすべての項目で満たし,ダイオキシン類についても周辺土壌のダイオキシン類濃度の平均値以下であった。さらに現在は,錆の発生防止のため,休炉中も煙突に高温の空気を送って乾燥させており,また煙突内面の点検や清掃も実施することになっている。 本件協定に違反する濃度等が生じた際にも,当該濃度は法令上の基準値に比べればいずれも十分に低いものであり,健康に影響を与えるとは考えられない。また の点検や清掃も実施することになっている。 本件協定に違反する濃度等が生じた際にも,当該濃度は法令上の基準値に比べればいずれも十分に低いものであり,健康に影響を与えるとは考えられない。また,再発防止のため,マニュアルの作成,運転員の教育,総合点検等を行っている。 なお,本件施設に関しては,プラント機器の性能を維持し安定した処理を継続するため,1炉につき,原則として年1回の修繕工事を実施し,消耗部品等の交換,各種機器のオーバーホール等を行っている。 ウ本件施設の規模は過大ではない。 仮にごみ量が予測を下回ったときは,3つの炉の一部のみを稼動させることも可能であるし,仮に所内電力が不足する場合は東京電力から買電することも可能であるから,ごみによる発電に関して常時最大出力を確保することは考えておらず,原告らの主張するようなことにはならない。 エ本件アセスメントは,厚生省監修のごみ焼却施設環境アセスメントマニュアルに基づいて適正に行われたものである。 現地の気象観測は,平成6年2月から同年10月にかけて4シーズン各7日間行っている。実際の拡散のシミュレーションにおいては宇都宮地方気象台のデータを用いているが,現地観測結果との相関は0.9569と高く,代表性は十分に確保されている。 比較的平坦な地形であったため,トレーサーを使用しての大気拡散調査は行っていない。 複合汚染に関しては,栃木県下水道資源化工場との複合影響予測も実施している。また,平成11年には,ダイオキシン類に関しても,同工場及び北関東自動車道との複合影響シミュレーションを実施している。原告らの主張する諸施設は既に稼動しており,影響があるとしても本件アセスメント等の際の計測結果に既に反映されているから,本件施設と併せての影響予測を実施する必要 影響シミュレーションを実施している。原告らの主張する諸施設は既に稼動しており,影響があるとしても本件アセスメント等の際の計測結果に既に反映されているから,本件施設と併せての影響予測を実施する必要はない。 オ原告らが不審であると主張する車両について調査した結果,その所属等の判明した分に関しては,いずれも,他地域のごみや一般廃棄物でないごみの搬入を目的としたものではなかった。本件施設においては,計量及びプラットホームの段階で,口頭及び目視による搬入ごみの監視が行われている。 カ本件施設に関連する廃棄物運搬車両は1日当たり最大でものべ500台程度にとどまり,交通量は通常の道路以下である。 ホッパードアを開けたまま走行する運搬車両や正規の搬入ルートを守らない運搬車両は存在するが,この点に関しては,業者等に対し,廃棄物を飛散させないよう,また搬入ルートを厳守するよう,指導を行った。交通事故については,公道上のものであり,本件施設の稼動とは無関係である。 キ宇都宮市においては,平成元年度以降,ごみの要処理量が被告の処理能力に接近する状態が続いた。既存の清掃工場の中には老朽化が進んでいるものもあった。平成6年度には,ごみ処理を一時的に外部に委託する事態も生じた。 そのため被告としては,平成7年度から,ごみの分別区分を3種3分別から5種9分別に変更して,ごみの減量に成功し,また,既存の清掃工場の施設の改善などに取り組み,一定の成果を上げた。しかし,ごみ処理に余裕のない状態は解消されなかった。 そこで,老朽化した工場を適正規模で更新し,安定した一般廃棄物の処理を継続するため,本件施設が建設された。本件施設は,宇都宮市,上三川町及び石橋町の住民にとっては,なくてはならない生活基盤である。 ク被告は,平成4年12月から平成8年10月までの間に,建 物の処理を継続するため,本件施設が建設された。本件施設は,宇都宮市,上三川町及び石橋町の住民にとっては,なくてはならない生活基盤である。 ク被告は,平成4年12月から平成8年10月までの間に,建設計画,本件アセスメントの実施,その中間報告,結果報告,都市計画などに関して,地権者や関係自治会に対し,合計78回にわたる説明会を実施した。市内周辺に居住する人や説明会に参加できなかった人のため,説明会開催後の土曜日や日曜日に雀宮地区市民センターに意見交換コーナーを設け,説明や意見交換の場を提供した。平成5年11月から平成8年10月までの間,16回に及ぶ戸別訪問も実施し,精力的に説明を行った。 本件施設について住民の同意を得たことの証は,本件協定の存在である。 被告は,平成8年11月以降,周辺6自治会との間で順次相当数の協議を行い,平成12年4月までに各自治体との個別の協定を締結した。しかし,各協定の内容に差異があったため,統一的な協定の成立に向けて,同年7月から平成13年3月までの間,周辺6自治会の代表者各3名及び関係自治体により構成される協議会において,7回にわたる詳細な協議が重ねられ,その結果,同年5月29日,本件協定の調印式が行われた。このように,本件協定は,長期にわたる十分な協議を経て成立したものである。 第3 当裁判所の判断 1 上記争いのない事実等に証拠(甲1,2,乙1,3ないし5,14,15,24,25,30,33,35,36,37の1,38,40の1,46ないし48)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。 (1) 大学教授等14名の委員から成る「ごみ処理に係るダイオキシン削減対策検討会」において,平成9年1月付けで,「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」が作成された。新設の全連続炉の排ガス中 大学教授等14名の委員から成る「ごみ処理に係るダイオキシン削減対策検討会」において,平成9年1月付けで,「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」が作成された。新設の全連続炉の排ガス中ダイオキシン類濃度の基準は,旧ガイドラインにおいては0.5ng-TEQ/N?以下とされていたところ,上記新ガイドラインは,「最新の技術に照らし,最大限可能な水準まで削減する」として,その基準を0.1ng-TEQ/N?以下(これが特措法上の排出基準となり,本件協定における自己規制値としても採用された。)と設定するとともに,これを達成するため,施設運営,受入れ供給設備,燃焼設備,ガス冷却設備,排ガス処理設備など多岐にわたる事項に関して,詳細な対策を提示している。本件施設は,上記の新ガイドラインの内容に則って建設されたものである。 具体的には,まずダイオキシン類削減のため,以下の態勢がとられている。すなわち,できる限り完全燃焼が継続されるようにするため,ごみを破砕し,クレーンで攪拌するなどしてごみ質を均一化するとともに,自動燃焼制御装置により,燃焼空気量,ごみ供給,ストーカ速度の調整を行う。ダイオキシン類の再生成の抑制のため,再生成の促進される温度域における排ガスの滞留時間を短縮し,バグフィルターの前にある減温塔により排ガスを急冷する。発生したダイオキシン類を除去するため,排ガスをバグフィルターに通し,ダイオキシン類をばいじんとともに捕集除去するとともに,その効率を高めるため,バグフィルターの手前で排ガスに活性炭を噴霧し,ダイオキシン類を吸着した活性炭をバグフィルターで捕集する。さらに,触媒脱硝装置で分解する。 また,その他の有害物質に関しても,本件協定において上記争いのない事実等(3)ウの各自己規制値(いずれも法令上の規制値に比して 炭をバグフィルターで捕集する。さらに,触媒脱硝装置で分解する。 また,その他の有害物質に関しても,本件協定において上記争いのない事実等(3)ウの各自己規制値(いずれも法令上の規制値に比して厳しい基準である。)が設定されており,具体的には,塩化水素及び硫黄酸化物は消石灰の噴霧により,ばいじんはバグフィルターにより,窒素酸化物はアンモニア噴霧量の調整により,それぞれ浄化するシステムになっている。そして,排ガス中のばいじん,硫黄酸化物,塩化水素,窒素酸化物及び一酸化炭素の濃度等は,常時測定され,来客者用の門の外に設置された電光掲示板にも表示される。 以上の点からすると,本件施設は,ダイオキシン類をはじめとする有害物質の排出による環境破壊防止のため,社会通念上必要かつ相当と考えられる措置が講じられたものということができる。 (2) 本件アセスメントの結果,本件施設の操業による環境への影響に関しては,いずれも「環境保全目標を満足しており」,「周辺環境への影響は総合的にみて少なく」,「環境保全上支障のないものであると考えられる」との予測評価がされた。 (3)ア以下の各日における,本件施設の1号炉の排ガス中ダイオキシン類濃度,2号炉のそれ及び3号炉のそれは,被告による測定の結果,それぞれ以下のとおりであった(単位ng-TEQ/N?)。いずれも,特措法上の排出基準0.1ng-TEQ/N?を大幅に下回る数値である。上記(1)で説示したとおり,0.1ng-TEQ/N?以下という基準は,平成9年1月ころの最新の技術により最大限可能な限りの削減を果たすため設けられたものであり,これを満たすという事実は,科学的見地からも相応の意味を有すると考えられる。 平成13年5月9日 0.017 0.00091 を果たすため設けられたものであり,これを満たすという事実は,科学的見地からも相応の意味を有すると考えられる。 平成13年5月9日 0.017 0.00091 0.00011同年8月28日ないし30日 0 0.0000024 0.0000019同年11月6日ないし8日 0.0000011 0.0000021 0.0000013平成14年2月25日ないし同年3月8日 0.0000016 0.0000032 0.0023同年4月16日ないし18日 0.0000025 0.0000028 0.0000018同年7月16日ないし19日 0.0020 0.00014 0.00098同年10月8日ないし25日 0.00040 0.00066 0.00093平成15年1月15日ないし17日 0.00047 0.00044 0.00034同年4月10日ないし24日 0.0036 0.00016 0.000054同年7月2日ないし15日 0.000039  0.00074 0.00072イまた,以下の各年度における,本件施設周辺の6地点(周辺6自治会のうち,A自治会及びB自治会の区域に合わせて2地点,その余の4自治会の各区域にそれぞれ1地点ずつ。いずれも本件施設の敷地から500mないし1000m程度離れた地点である。)における大気中ダイオキシン類濃度の数季平均の最低値~最高値及び平均値は,被告による測定の結果,それぞれ以下のとおりであった(単位pg-TEQ/?)。 00mないし1000m程度離れた地点である。)における大気中ダイオキシン類濃度の数季平均の最低値~最高値及び平均値は,被告による測定の結果,それぞれ以下のとおりであった(単位pg-TEQ/?)。稼動開始後においても,特措法上の環境基準0.6pg-TEQ/?を大幅に下回る数値が続いており,むしろ年々減少している。平成14年度における,宇都宮市内の一般環境5地点における大気中ダイオキシン類濃度の4季平均の平均値は,0.090pg-TEQ/?であり,これと比べても遜色はない。なお,被告の測定における1季あたりのサンプリング期間は,従来は1日間であったが,平成14年度からは7日間に変更され,より実態を反映しやすいものとなっている。 平成12年度(3季平均) 0.24~0.33 0.28平成13年度(4季平均) 0.19~0.34 0.25平成14年度(4季平均) 0.070~0.099 0.082平成15年度(2季平均) 0.046~0.063 0.055(4)ア以下の各有害物質の排出についても,平成13年3月ころから平成15年10月ころまで,年数回,測定が行われたが,その最低値~最高値は,それぞれ以下のとおりであった。いずれも上記自己規制値を下回るものである。 ばいじん 0.001g/N?未満~0.008g/N?未満硫黄酸化物  4.2ppm未満~11ppm(いずれもK値では0.1未満)窒素酸化物  6.5ppm~33ppmイ塩化水素の排出についても,上記アの各物質と同様に測定が行われた。そのうち,平成13年9月19日の測定の結果は98ppm未満というものであり,自己規制値を達成したか否かは明らかでないが,mgに換算すれば160mg についても,上記アの各物質と同様に測定が行われた。そのうち,平成13年9月19日の測定の結果は98ppm未満というものであり,自己規制値を達成したか否かは明らかでないが,mgに換算すれば160mg/N?未満となり,法令上の規制値は十分に下回るものであった。その余の測定における最低値~最高値は,10ppm未満~37ppm未満であった。 2 次に,原告らの主張について,以下検討する。 (1) 原告らは,本件報告書及びその作成に携わった証人Iの証言を根拠として,本件施設の排ガス中ダイオキシン類濃度は,低くとも9.6ng-TEQ/N?と推定される旨主張する。証拠(甲49)によれば,本件報告書の内容は,要旨以下のとおりであることが認められる。すなわち,宇都宮市内の一般環境5地点における大気中ダイオキシン類濃度の4季平均の平均値は,被告の調査によると,平成11年度には0.29pg-TEQ/?であったのが,平成13年度には0.11pg-TEQ/?と大幅に低下している。これに対し,本件施設の周辺における大気中ダイオキシン類濃度の平均値は,本件施設周辺で採取された松葉を分析した結果によれば,平成11年度(平成11年8月ころ松葉採取)には0.27pg-TEQ/?であったところ,平成13年度(平成14年4月ころ松葉採取)においても0.22pg-TEQ/?であり,同時期の宇都宮市内の一般環境に比して,その低下幅は大幅に小さい。この間,本件施設の周辺において,本件施設の操業開始以外にダイオキシン類発生源の変化は見当たらないから,この全部,少なくとも半分は本件施設の操業開始によるものと考えるのが妥当である。本件施設の操業開始による周辺の大気中ダイオキシン類濃度への寄与を0.12pg-TEQ/?とし,かつ希釈拡散倍率を16万倍として計算すると,本件施設の排ガス中ダイ によるものと考えるのが妥当である。本件施設の操業開始による周辺の大気中ダイオキシン類濃度への寄与を0.12pg-TEQ/?とし,かつ希釈拡散倍率を16万倍として計算すると,本件施設の排ガス中ダイオキシン類濃度の平均値は,19.2ng-TEQ/N?,少なくともその半分の9.6ng-TEQ/N?と推定される,というものである。 しかしながら,上記1(3)イに認定のとおり,本件施設の周辺地域の大気中ダイオキシン類濃度は,平成13年度の4季平均の平均値は0.25pg-TEQ/?(被告の調査による数値)であったものの,平成14年度の4季平均の平均値は0.082pg-TEQ/?,平成15年度の2季平均の平均値は0.055pg-TEQ/?と,大幅に低下してきている。平成14年度以降に本件施設の操業態勢が有意に変化したことを窺わせる事情は特に見当たらないから,本件施設の操業に起因する周辺の大気中ダイオキシン類濃度の上昇分が,恒常的に0.12pg-TEQ/?,あるいはその半分である0.06pg-TEQ/?に達していたとみることは困難である。上記1(1)に認定の本件施設の設備,操業態勢等からしても,平均で特措法上の排出基準値の100倍,200倍に達する濃度のダイオキシン類が排出されていたとは考えにくい。加えて,証拠(乙33,証人J)によれば,本件施設の周辺にダイオキシン類を発生させる可能性のある施設(特措法上の「特定施設」)が複数存在すること(本件施設から半径1km以内に1,2km以内に6,4km以内に34。乙33)が認められ,この事実も考慮すると,本件施設の周辺の大気中ダイオキシン類濃度の低下幅が宇都宮市一般のそれに比して小さかったことの原因に関しても,近辺の他の施設等による特別な寄与があった可能性を排除できないというべきである。 以 施設の周辺の大気中ダイオキシン類濃度の低下幅が宇都宮市一般のそれに比して小さかったことの原因に関しても,近辺の他の施設等による特別な寄与があった可能性を排除できないというべきである。 以上によれば,本件施設の排ガス中ダイオキシン類濃度に関して,本件報告書の数値を採用することはできない。 (2) 原告らは,被告の排ガス中ダイオキシン類濃度の測定に関して,①わずか年4回の特定の日に行うだけであり,長期にわたる排ガス中ダイオキシン類濃度の実態を反映するものではない,②測定時に検査用の良質のごみを燃やしている可能性,あるいはごみ質の悪いときのデータを隠している可能性もある,③各異性体の実測濃度が定量下限未満である場合は,その値を「0」として計算するため,見かけ上非常に低い数値が出るに過ぎない,④被告が示す本件施設の排ガス中ダイオキシン類濃度は,宇都宮市内の一般環境大気中ダイオキシン類濃度より低い値となっており,そのようなことは通常考えられない旨主張する。また,証拠(甲71ないし74)によれば,被告の作成した設備日報には,炉出口温度の欄が「****」とされたり,一酸化炭素濃度が「-22」とされるなど,一見不可解な部分があることが認められる。 しかしながら,被告による本件施設の排ガス中ダイオキシン類濃度の測定は,特措法28条所定の「大気基準適用施設」の設置者として義務付けられたものであるところ,同条及び特措法施行令4条1項は,同測定を「毎年一回以上」行うものとし,特措法施行規則2条は,本件施設に関する測定の方法として,日本工業規格(JIS)K0311によることなどを定め,特措法施行規則3条は,毒性等量の計算に関して,「それぞれの異性体の測定量が定量下限未満である場合にあっては,当該異性体の測定量は零として換算する」としている。 IS)K0311によることなどを定め,特措法施行規則3条は,毒性等量の計算に関して,「それぞれの異性体の測定量が定量下限未満である場合にあっては,当該異性体の測定量は零として換算する」としている。この点について,証拠(乙33)によれば,環境庁長官(当時)からの諮問に応じ,特措法の施行に向けての専門的事項の審議等を進めた中央環境審議会大気部会排出抑制専門委員会も,その報告書(乙33)において,上記測定の回数に関しては「分析費用が非常に高価であることも考慮して」年1回以上とすることが適当であるとし,測定方法に関してはJISのK0311を用いることが適当であるとし,定量下限未満の値の取り扱いに関しては「大気排出基準については,それにより罰則を伴う規制を行うものであり,ダイオキシン類対策特別措置法を運用するに当たり,十分な精度が得られていない定量下限未満の値を前提とすることはできない」との理由により,特措法施行規則3条所定の上記計算方法を用いるのが適当であるという内容の意見を述べており,法令上の上記規定は専門家による一定程度の議論に基づいて設けられたものであることが認められるところ,証拠(乙33)及び弁論の全趣旨によれば,本件施設の排ガス中ダイオキシン類濃度の測定は,専門の資格を取得した業者により,基本的に上記の各規定に則って行われていることも認められる。 他方,証拠(乙33,証人J)及び弁論の前趣旨によれば,検査用の特別なごみを作成することは困難と考えられ,その他本件全証拠によっても,本件施設の排ガス中ダイオキシン類濃度の測定時に被告が意図的に操業態勢を変更したり,測定を実施した業者が測定結果を意図的に操作したり,その他その測定結果を実態から乖離させるような事実があったことは認めるに足りない。 また,証拠(乙49)及び弁論の全趣旨によれ 業態勢を変更したり,測定を実施した業者が測定結果を意図的に操作したり,その他その測定結果を実態から乖離させるような事実があったことは認めるに足りない。 また,証拠(乙49)及び弁論の全趣旨によれば,本件施設の設計・施行にあたった株式会社クボタは,炉出口温度の「****」表示に関しては,炉出口温度の計測機器の交換や点検のためにその配線をはずした際に生じるものである旨説明し,一酸化炭素濃度のマイナス表示に関しては,その分析装置に±2%の測定誤差があるため,濃度が0に近い場合にはマイナス表示になることがあり,「-22」については,20分程度の電源遮断があったため1時間平均値としてそのような値になった旨説明していることが認められるところ,これらの説明に特段不合理な点は見当たらない。 以上の点を踏まえると,原告らの上記主張①ないし④を考慮しても,被告による測定の結果について,実態を反映しないものとは認められない。 (3) 証拠(甲61,62,67,原告K,同L)及び弁論の全趣旨によれば,一定数の住民が悪臭や頭痛を感じ,かつそれが本件施設の操業によるものと考えていることが窺われる。 しかしながら,上記認定事実のみでは,具体的にどの程度の被害が生じているのか,そのうちのどの程度のものが本件施設の操業に起因するものなのかというような点はいずれも明らかでなく,本件施設の操業差止めを求める根拠としては不十分といわざるを得ない。 (4) 証拠(甲3,7,9,11,12の1及び2,13,16,69,70,乙9)及び弁論の全趣旨によれば,本件施設の試運転時において多数の不具合が発生したこと,本運転開始後も,硫黄酸化物及び塩化水素が本件協定にかかる自己規制値を超過したり,炉の一時停止により一酸化炭素が急増したり,酸化膜が飛散したりする事故 の試運転時において多数の不具合が発生したこと,本運転開始後も,硫黄酸化物及び塩化水素が本件協定にかかる自己規制値を超過したり,炉の一時停止により一酸化炭素が急増したり,酸化膜が飛散したりする事故があったこと,自己規制値超過が生じたにもかかわらず被告が炉を停止させなかったことがあったこと,本件施設を含むクリーンパーク茂原についての平成13年度及び平成14年度における修繕・整備関係費が,それぞれ約5727万円,約2億1223万円にのぼっていることが認められる。 しかしながら,上記各証拠に加えて,証拠(乙11の1及び2,12,27,28)及び弁論の全趣旨によれば,有害物質の排出が自己規制値を超過した際にも,法令上の基準を超過したことはなく,むしろこれを大きく下回っていたこと,酸化膜飛散に関しても,調査の結果,その飛散は煙突を中心として数十メートルの範囲でしか確認されず,それに含まれる有害物質はダイオキシン類も含めて法令上の基準の範囲内であったこと,本件施設の炉の立ち下げ・立ち上げ時における排ガス中ダイオキシン類濃度の測定も行われ,その結果,立ち下げ時のそれは0.00030ng-TEQ/N?,立ち上げ時のそれは0.0045ng-TEQ/N?であり,いずれも通常時の排出基準0.1ng-TEQ/N?を大きく下回るものであったこと,各不具合等については一応の分析及び再発防止策がとられていること,自己規制値超過の再発防止のため,点検等が行われるとともに,詳細な内容の「自己規制値を遵守するためのマニュアル」が作成され,これが本件施設に係る協議会において了承されたこと,同マニュアルにおいては,仮に有害物質排出量の1時間値が自己規制値を超えた場合であっても,それが「軽故障時(早急な回復措置が見込める場合)」にあたる場合には,「当該炉へのごみの投入を 承されたこと,同マニュアルにおいては,仮に有害物質排出量の1時間値が自己規制値を超えた場合であっても,それが「軽故障時(早急な回復措置が見込める場合)」にあたる場合には,「当該炉へのごみの投入を一時停止する」のみでよいとされたこと,酸化膜に関しても,その発生防止のため,煙突内面の掃除などが行われたことが認められる。 試運転時に発生した不具合についても,弁論の全趣旨によれば,試運転はあくまで不具合等を発見して調整するために行われるものであることが認められ,本格稼働後の稼働状況,不具合に対し本格稼働後に採られた対応措置は,上記認定のとおりである。また,修繕等の費用が高額であるからといって,直ちに本件施設が正常に稼働していないとはいえない。 以上の点を踏まえれば,原告らの指摘する事実を考慮しても,現段階において,周辺住民に健康被害をもたらすような事故等が発生する具体的なおそれがあるとまでは認められない。 (5) 原告らは,平成19年度における処理対象ごみ量に関する被告の予測が過大であり,したがって本件施設の規模も過大なものである旨主張するが,本件全証拠によっても,本件施設の規模が近い将来過大なものとなると認めるに足りる的確な証拠はないし,問題の性質上,ある程度余裕をもった態勢を整えることもやむを得ない面があるというべきである。また,仮に,ごみの量が減少した場合においても,炉の一部のみを稼動させることも可能と考えられるほか,上記(4)の説示の理由によれば,炉の立ち下げ・立ち上げが増えたとしても,排ガス中ダイオキシン類濃度が特措法上の排出基準を超える可能性は低いと考えられることを考慮すると,本件施設の規模の点も,本件施設の操業差止めの根拠としては不十分といわざるを得ない。 本件施設において,不完全燃焼,ダイオキシン類の再生 基準を超える可能性は低いと考えられることを考慮すると,本件施設の規模の点も,本件施設の操業差止めの根拠としては不十分といわざるを得ない。 本件施設において,不完全燃焼,ダイオキシン類の再生成,薬剤の注入装置の故障,ろ布の破損等が生じる客観的な可能性自体は否定できないものの,上記1(1)に認定の事実のほか,本件施設が操業を開始して以来ろ布が破損したことはないものの,破損を避けるため,バグフィルターの入口に排ガスの偏流を防止するルーバーが設置されたこと(証拠〔乙33〕及び弁論の全趣旨により,これを認める。)に鑑みると,被告においては,かかる事態が生じることを避けるため,またかかる事態が生じた場合に具体的な健康被害が生じることを避けるため,相応の対策を講じているものとみるのが相当であり,抽象的な可能性のみをもって操業差止めの根拠とすることはできない。 (6) 本件アセスメントに関して,原告らの主張するような,検討対象とする有害物質の追加,長期間にわたる現地の気象観測調査,有害物質の拡散に関する理論についての具体的検証,複合汚染の予測等が行われていれば,より精度の高いものになった可能性自体は否定できない。 しかしながら,証拠(甲2,乙7,33)及び弁論の全趣旨によれば,本件アセスメントは,被告の委託に基づいて,専門の業者が,旧厚生省監修の「ごみ焼却施設環境アセスメントマニュアル」に基づいて実施したものであること,具体的には,4季各7日間にわたる現地の気象の観測,有害物質の濃度の測定その他の現況調査を実施し,その結果について詳細な検討を加えた上で,各有害物質についての大気中拡散のシミュレーションを,特に高濃度を引き起こすおそれのある特殊な気象条件等も想定しつつ実施していること,栃木県下水道資源化工場との複合汚染の予測も実施し を加えた上で,各有害物質についての大気中拡散のシミュレーションを,特に高濃度を引き起こすおそれのある特殊な気象条件等も想定しつつ実施していること,栃木県下水道資源化工場との複合汚染の予測も実施したことなどが認められる。本件全証拠によっても,宇都宮地方気象台のデータの使用やプルーム・パフモデル理論の採用それ自体に関して,具体的に不合理というべき事情は認められない。加えて,証拠(乙4)によれば,平成11年には,本件アセスメントで対象とされなかったダイオキシン類に関しても,栃木県下水道資源化工場及び北関東自動車道との複合影響シミュレーションが実施されたことが認められ,上記1(3)に説示のとおり,本件施設稼働開始後における排ガス中の有害物質の濃度は,法令上の規制値を大幅に下回り,自己規制値をもほぼ下回るものであり,周辺地域の大気中ダイオキシン類濃度も特措法上の環境基準を大幅に下回っていることも勘案すると,本件アセスメントに関して,本件施設の操業を差し止めなければならないほどの重大な欠陥があるとは認められない。 (7) 証拠(乙17ないし19,26)及び弁論の全趣旨によれば,原告らが不審と主張する運搬車両(甲14,17)のうち,その所属等の判明したものに関しては,他地域のごみや一般廃棄物でないごみの搬入を目的としたものではなかったと認めるのが相当である。その他,本件施設において,関係自治体以外の地域からのごみ搬入や一般廃棄物でないごみの搬入が恒常的に行われていることを認めるに足りる証拠はない。 本件施設の操業によりその周辺を廃棄物運搬車両が走行することになるが,それによる有害物質の排出や騒音が具体的にどの程度のものになるかという点に関する特段の主張立証はなく,本件全証拠によっても,それらが受忍限度を超えるものとなることを認めるに足 走行することになるが,それによる有害物質の排出や騒音が具体的にどの程度のものになるかという点に関する特段の主張立証はなく,本件全証拠によっても,それらが受忍限度を超えるものとなることを認めるに足りない。 また,廃棄物運搬車両の中には,パッカーを開けたまま走行したり,正規の搬入ルートを守らずに走行したりするものがあることは,当事者間に争いがないところ,弁論の全趣旨によれば,被告もこれを容認しているわけではなく,業者等に対する一応の指導を行っていることが認められる。本件全証拠によっても,本件施設の操業により,その周辺における事故発生の可能性が受忍限度を超えるほど高まることを認めるに足りない。 (8) 証拠(甲1,乙1)及び弁論の全趣旨によれば,宇都宮市においてごみ処理の状況が逼迫していたこと,旧施設の老朽化が進んでおり更新の必要に迫られていたことなどが認められ,そうである以上,本件施設の必要性が乏しいとは到底いえない。原告らは,被告のごみ減量への取組みが不十分であるということに関して種々主張するが,仮にその点に関する取組みになお改善の余地があるとしても,それをもって,本件施設の操業を継続する必要がないとまでいうことはできない。 (9) 原告らは,アンケート結果等を根拠に,本件施設の建設に反対の意思を有していた住民が数多く存在し,住民の同意が得られていない旨主張する。 しかしながら,証拠(甲30,乙3,10)及び弁論の全趣旨によれば,本件施設の建設に関して,被告主張のとおり多数回にわたる多種多様な説明会等が行われたこと,特に周辺6自治会との間では,環境保全に関して,長期間にわたる実質的な議論が行われ,その結果,被告は,平成12年4月までに各自治体との個別の協定を締結したこと,さらに,被告は,統一的な協定の成立に向けて協 辺6自治会との間では,環境保全に関して,長期間にわたる実質的な議論が行われ,その結果,被告は,平成12年4月までに各自治体との個別の協定を締結したこと,さらに,被告は,統一的な協定の成立に向けて協議を継続し,本件協定の成立に至ったこと,本件施設の周辺に位置するH地区自治会連合会から,平成8年12月10日付けで,被告に対し,本件施設の建設を支援する意思を表明するとともに,本件施設建設に係わる地域振興施設として温泉プール,運動広場の整備等を講じるほか,H地区の振興のための様々な措置(駅前の再開発,道路の新設,高齢者福祉センターの建設など)を講じることを要望する旨の「要望書」が提出されたことが認められ,かかる経緯に照らせば,本件施設の建設に関して,その周辺住民の意思や利益への配慮が一定程度行われたことは明らかである。その結果,一定数の周辺住民の同意が得られなかったからといって,建設・操業が一切許されないと解することはできない。 3 以上の1及び2によれば,本件施設の操業の継続により,原告らが受忍限度を超える健康被害や生活被害を受けるおそれがあるとは認められない。したがって,原告らの人格権に基づく本件施設の操業の差止請求は,理由がない。 また,原告らは,本件差止請求の根拠として環境権や住民自治権を主張するが,環境権については,実定法上の根拠が明らかでないし,住民自治権については,憲法が住民自治に関する規定を設けているとしても,個々の住民がこれを根拠に民事上の差止請求をすることを許容する趣旨とまでは認められないから,上記各権利に基づく差止請求を認めることはできない。なお,原告らは,本件アセスメントの不十分性は,本件施設から有害物質が排出されることとは別個に,本件差止請求の独立した根拠となると主張するが,上記2(7)に説示のとおり,本件アセスメン とはできない。なお,原告らは,本件アセスメントの不十分性は,本件施設から有害物質が排出されることとは別個に,本件差止請求の独立した根拠となると主張するが,上記2(7)に説示のとおり,本件アセスメントに本件差止請求を肯認すべきほどの欠陥は認められないし,そもそも,被害の程度と関係なしに,本件アセスメントの不十分性自体で本件差止請求を認容すべきこととなるものでもない。 4 以上の次第で,原告らの請求は,いずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 宇都宮地方裁判所第1民事部裁判長裁判官岩田眞裁判官有賀貞博裁判官秋吉信彦施設目録宇都宮市茂原町777番地1及びその周辺に所在する一般廃棄物中間処理施設である「クリーンパーク茂原焼却ごみ処理施設」(灰溶融施設を含む。)及びその附属建物(管理棟,煙突,計量棟,洗車場等を含み,「リサイクルプラザ」は含まない。)

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