平成22(ワ)46700 特許権使用差止請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年9月12日 東京地方裁判所
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平成24年9月12日判決言渡同日原本領収裁判所書記官大野哲治平成22年(ワ)第46700号特許権使用差止請求事件口頭弁論終結日平成24年6月18日判 決東京都豊島区<以下略>原告オービックインターナショナル株式会社同訴訟代理人弁護士久世表士東京都江東区<以下略>被告株式会社マルヨシ鋲螺同訴訟代理人弁護士龍村 全同木村圭太同訴訟代理人弁理士原島典孝主 文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求の趣旨 1 被告は,別紙物件目録1ないし3記載の駐輪機を製造し,販売し,引き渡し,又は販売若しくは引渡しのために展示してはならない。 2 被告は,前項の物件を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,3025万5000円及びこれに対する平成23年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,駐輪施設に関する特許(特許第3966526号。以下「本件特許」という。)の専用実施権者である原告が,被告による別紙物件目録1ないし3記載の駐輪装置(以下,順に「イ号物件」「ロ号物件」「ハ号物件」とい い,併せて「被告製品」という。)の製造,販売等は本件特許の専用実施権を侵害し,又は侵害するものとみなされる(特許法101条1号又は2号)と主張して,被告に対し,特許法100条1項,2項に基づき被告製品の製造,販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに,民法709条, を侵害し,又は侵害するものとみなされる(特許法101条1号又は2号)と主張して,被告に対し,特許法100条1項,2項に基づき被告製品の製造,販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに,民法709条,特許法102条1項に基づき3025万5000円及びこれに対する不法行為の後の日である平成23年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提となる事実(末尾に証拠等を付した以外の事実は争いがない。)(1) 原告の専用実施権原告は,以下の特許(本件特許)の専用実施権を有している。 ア登録番号特許第3966526号(特願平10-8836)イ出願日平成10年1月20日ウ登録日平成19年6月8日エ発明の名称駐輪施設オ専用実施権の設定平成22年11月17日(2) 本件特許に係る明細書(以下「本件明細書」といい,本件特許に係る特許公報(甲2)を本判決末尾に添付する。)の「特許請求の範囲」請求項2記載の発明(以下「本件発明」という。)の構成を分説すると,以下のとおりである。 A 転倒防止装置を備えた横方向に移動可能な自転車受台を複数台設置した第1段目と,B 複数の昇降用柱に沿ってそれぞれ昇降する転倒防止装置を備えた自転車受台を有するパレット及び該パレットを昇降させる定荷重ばね装置とを有する第2段目と,からなる駐輪施設において,前記定荷重ばね装置は,C パレット重量とほぼ等しい引き戻し力を有する第1の定荷重ばね装置と, D 自転車重量にほぼ等しい引き戻し力を有する第2の定荷重ばね装置とからなり,E 自転車空のときは第1の定荷重ばね装置で,自転車搭載時は第1と第2の定荷重ばね装置でパレットを昇降させるF ことを特徴 車重量にほぼ等しい引き戻し力を有する第2の定荷重ばね装置とからなり,E 自転車空のときは第1の定荷重ばね装置で,自転車搭載時は第1と第2の定荷重ばね装置でパレットを昇降させるF ことを特徴とする駐輪施設。 (3) 被告製品の製造販売等ア被告は,別紙物件目録1記載のイ号物件を製造,販売している(乙1,5,弁論の全趣旨)。 イ号物件の説明は,別紙イ号物件説明書のとおりである(被告の製造する「M2型」は,イ号物件説明書記載の支柱1本,ラック1個,主たるばね1個,補助ばね2個を1組とする商品名のようであるが,それが複数集まり,「複数の支柱に沿ってそれぞれ昇降する・・・・・・ラック・・・・・・を有する第2段目」となった場合に,別紙物件目録1の3の構成を充足し,イ号物件に該当することになる(1組の「M2型」は,イ号物件に当たらない。))。 イ被告は,別紙物件目録2記載のロ号物件の下段のラック及びレールを製造,販売している(乙1,2,弁論の全趣旨。ロ号物件の全体を製造,販売しているか否かは争いがある。)。 ロ号物件の説明は,別紙ロ号物件説明書のとおりである(ロ号物件は,上段のイ号物件と下段のラック装置とからなり,下段のラック装置は,前入れのラック(レール装着部と車輪ホルダーを備える。),後入れのラック(前同),レールからなる。被告の製造する「F型」は前入れのラック1個,「R型」は後ろ入れのラック1個の商品名のようであるが,それらが複数集まり,レール及びイ号物件と組み合わされた場合に,別紙物件目録2の3の構成を充足し,ロ号物件に該当することになる(「F型」「R型」単体では,ロ号物件に当たらない。))。 ウ被告は,別紙物件目録3記載のハ号物件の下段のラック及びレールを製造,販売している(乙1,3,弁論の 号物件に該当することになる(「F型」「R型」単体では,ロ号物件に当たらない。))。 ウ被告は,別紙物件目録3記載のハ号物件の下段のラック及びレールを製造,販売している(乙1,3,弁論の全趣旨。ハ号物件の全体を製造,販売しているか否かは争いがある。)。 ハ号物件の説明は,別紙ハ号物件説明書のとおりである(ハ号物件は,上段のイ号物件と下段のラック装置とからなり,下段のラック装置は,F1型のラック(レール装着部と車輪ホルダーを備える。),F2型のラック(前同),レールからなる。被告の製造する「F1型」はレール装着部がやや前方に取り付けられたラック1個,「F2型」はレール装着部が中央寄りに取り付けられたラック1個の商品名のようであるが,それらが複数集まり,レール及びイ号物件と組み合わされた場合に,別紙物件目録3の3の構成を充足し,ハ号物件に該当することになる(「F1型」「F2型」単体では,ハ号物件に当たらない。))。 エロ号物件を別紙物件目録2の1ないし3の構成を有するものと限定して理解する限りは,ロ号物件の支柱,車輪ホルダー及びラックは,それぞれ,本件発明の「昇降用柱」,「転倒防止装置」及び「自転車受台」に各相当することは争いがない。 3 争点(1) 構成要件A充足性(争点1)(原告の主張)構成要件Aにいう「横方向」は,上下(垂直)方向に対する「横」であり,「水平方向」と同義で,ラックの長手方向に直角な方向を特に意味するわけではない。ロ号物件,ハ号物件の下段のラックは水平方向に移動するから,「横方向に移動可能な自転車受台」に当たり,ロ号物件,ハ号物件は構成要件Aを充足する。 (被告の主張)「自転車受台が横方向に移動可能」とは,自転車受台の長手方向に直交す る方向に移 向に移動可能な自転車受台」に当たり,ロ号物件,ハ号物件は構成要件Aを充足する。 (被告の主張)「自転車受台が横方向に移動可能」とは,自転車受台の長手方向に直交す る方向に移動可能なものと解されるが,ロ号物件,ハ号物件の下段のラックは,レールに対し10~70度の角度を付けて取り付けられ,その角度を維持したままレールに沿って水平方向に移動するものであって,レールへの取り付け角度が45度以上の場合には,むしろ縦方向に移動するというべきものである。したがって,ロ号物件,ハ号物件は,構成要件Aを充足しない。 なお,別紙物件目録1ないし3の「M2型」等が単なる例示であるとすれば,その構成は,本件特許の特許請求の範囲に記載された構成より広範であって,本件特許発明の技術的範囲に属さないものまで包含するから,目録として不適切である。 (2) 構成要件C充足性(争点2)(原告の主張)ア 「定荷重ばね」について(ア) 「定荷重ばね」とは,「たわみが変化しても,力がほとんど変化しないばね」と規定される。「力がほとんど変化しない」とは,逆に言えば,力(荷重)が物理的に変化しないのではなく所定の幅で変動することを前提とする。その変動の幅が,ばねメーカーがいくら精度よく製作しようとしても避け得ない公差(許容される誤差)の範囲に過ぎないようなばねは,定荷重ばねといえる。 (イ) 被告製品の主たるばねは,ラックの操作性・復帰性等に関与するだけで高い精度が求められるばねではないから,JIS規格(JISB2708)において,有効巻数10以下であって,ばね定数の厳密さが余り要求されない等級3級の許容差±15%(全体で30%の幅)の範囲に収まるものは,定荷重ばねといって差し支えない。 (ウ) 被告製品の主たるばねの て,有効巻数10以下であって,ばね定数の厳密さが余り要求されない等級3級の許容差±15%(全体で30%の幅)の範囲に収まるものは,定荷重ばねといって差し支えない。 (ウ) 被告製品の主たるばねのばね特性につき,試験環境や手法の違い等により3回の試験データ(甲11の1・2,26,29の1ないし3,44ないし46)が完全に一致はしないものの,3回目の試験データ (甲44ないし46)によれば,ラック上昇過程(復路)において最大82N・最小73N(平均76.6N)であり,平均荷重76.6Nに対する変動幅は-4.7~+7.0%(変動幅11.7%)で,公差ないしそれと同視できる程度の範囲にあるから,定荷重ばねといえる。 ばね荷重が所定箇所で他箇所より変化するとしても,その変化が公差ないしそれと同視できる程度の範囲にある以上,それを被告が意図したか意図しないかといった主観面は問題にならず,あくまでも客観的にみて定荷重ばねに該当するというべきである。 イ 「ほぼ等しい」について(ア) A:主たるばねの引き戻し力と,R:ラック重量とが「ほぼ等しい」とは,A=Rの場合,A=R-αの場合(AはRより小:-側領域でほぼ等しい)場合,A=R+α(AはRより大きい:+側領域でほぼ等しい)場合を含む。ほぼの範囲が-側(A=R-α)であれば,空のラックを手で上昇させることになり,ほぼの範囲が+側(A=R+α)であれば(ラックの移動抵抗等は無視したとして),空のラックが差分αによりひとりでに上昇する(被告はこれをオートリターンと呼んでいる。)だけの話である。 (イ) このほぼの範囲:αが,上記ア(イ)で述べたばねの許容差(公差)内に吸収される程度のものであれば,公差内で+側に取ろうとしたαがゼロ又はマイナスになったり,-側に取ろうとしたαがゼ る。 (イ) このほぼの範囲:αが,上記ア(イ)で述べたばねの許容差(公差)内に吸収される程度のものであれば,公差内で+側に取ろうとしたαがゼロ又はマイナスになったり,-側に取ろうとしたαがゼロ又はプラスになることもあり得るのだから(設計者の意に反してA=Rになることもあり,その場合は最も一致度の高い「ほぼ」となる。),かかるαは±いずれの側でもほぼの範囲とすることに充分理由がある。 幅30%までなら一般に「公差」範囲といえるが,これを被告に有利なように最小限の範囲に限定したとしても,幅15%あるいは20%に入っていれば「ほぼ等しい」の要件を満たすといえる。 (ウ) 以上のとおり,構成要件Cの「ほぼ等しい」の意味は明確に解釈できるため,明細書を参酌する必要はない。 本件明細書の【0016】の「僅かな力で変位させてその位置に停止させる」とは,定荷重ばねはこうしたことができるといった一般的意味に過ぎない。一般的な定荷重ばねの例示として記載されているに過ぎない,本件とは無関係な物品(ブラインド,引き出し,OAデスク)に関する記述から,構成要件Cの「ほぼ等しい」の意味を「昇降させた位置にパレットを停止させること」,「パレットを動かして動摩擦力がかかる状態でパレットを停止すること」と解釈すべきとの被告の主張は理由がない。 (エ) 3回目の試験データ(甲44ないし46)に基づいて,主たるばねの荷重73~82N(重量単位に換算すると7.4~8.4kg)とラック重量(7.32kg)とを比較すれば,主たるばねのばね荷重は,ラック重量より+1.1~+14.8%だけ大きいことになる。これはばねの公差ないしそれと同視できる範囲であり,主たるばねの引き戻し力はラック重量と「ほぼ等しい」といえる。 ウ 「パレット重量」につい ック重量より+1.1~+14.8%だけ大きいことになる。これはばねの公差ないしそれと同視できる範囲であり,主たるばねの引き戻し力はラック重量と「ほぼ等しい」といえる。 ウ 「パレット重量」についてばねによって自転車重量を引き上げるから少しの力で昇降させることができる,とする本件発明の効果からすれば,上昇時のラックの摩擦力はラック重量と同じ下向きに作用するから,自転車とともに引き上げられる狭義のラック重量とその上昇に伴う摩擦力(抵抗)を含んで実質的なラック重量とすることは理に適っている。原告は,摩擦力の具体的数値を加味する複雑さを避けるために狭義のラック重量とばね加重を比較する被告に有利な手法を用いているが,それでも主たるばねの荷重はばねの公差範囲に入っており,「ほぼ等しい」の要件を満たす。 (被告の主張) ア 「定荷重ばね」について(ア) 定荷重ばねの定義が,「たわみが変化しても,力がほとんど変化しないばね」であることは認める。 原告は,荷重の変動幅が「公差」の範囲内であれば定荷重ばねといえると主張するが,誤りである。 一般的に「公差」とは,ある設定値に対する製造許容誤差のことをいうが,ここでいう製造許容誤差とは,製作上必ず生じてしまう避けることができない程度の誤差(普遍的誤差)をいうものではない。「公差」とは,ばねの特性等から絶対的な値として定められた数値ではなく,注文主と製作者との間で,その用途等に応じて任意に設定される流動的な値に過ぎない。 このような流動的な「公差」の値をもって,普遍的なばねの特性を基礎付ける構成要素と捉えることはできない。「公差」の値が流動的で任意に定まるものである以上,その公差の範囲内か否かで,ばねの特性,例えば「定荷重」か否かを判断することは到底不可 遍的なばねの特性を基礎付ける構成要素と捉えることはできない。「公差」の値が流動的で任意に定まるものである以上,その公差の範囲内か否かで,ばねの特性,例えば「定荷重」か否かを判断することは到底不可能である。 「公差」は,設計値に対する許容誤差であるから,公差の範囲内か否かは,まずもって設計値が明らかにされなければ判断できないものであり,設計値のいかんによってばねの特性が左右されることなど常識的に考えてあり得ない。 製造許容誤差である「公差」と,ばねの特性は全く別の概念であるから,定荷重ばねの公差の範囲をもって,一律にそのばねの特性が定荷重ばねであるなどという理屈は全く成り立たない。 (イ) 定荷重ばねの定義は,「たわみが変化しても,力がほとんど変化しないばね」であるから,逆に言えば,「たわみの変化により力が必ず変化するばね」は定荷重ばねではないことになる。 被告製品の主たるばねは,上昇中にラックが加速することがないよう に,上昇時のストローク900mm付近で荷重が小さくなるよう設計されている「変動荷重ばね」であって,定荷重ばねではない。 公差は許容誤差である以上,必ずストローク900mm付近でばね荷重が変化する主たるばねの挙動をそもそも誤差ということ自体おかしいというべきである。 イ 「ほぼ等しい」について(ア) 上記ア(ア)のとおり,「公差」は絶対的な数値ではなく,注文主と製作者との間で任意に設定される流動的な数値であることからすれば,公差の範囲内か否かという判断基準は,そもそも客観的な基準とはなり得ない。 したがって,公差の範囲内の差をもって「ほぼ等しい」とする原告の主張は理由がない。 (イ) 構成要件Cにおける「ほぼ等しい」をどのように解すべきかは,もっぱら本件特許の明細書の記載に基づく したがって,公差の範囲内の差をもって「ほぼ等しい」とする原告の主張は理由がない。 (イ) 構成要件Cにおける「ほぼ等しい」をどのように解すべきかは,もっぱら本件特許の明細書の記載に基づくほかにない。 本件明細書の段落【0016】には,「定荷重ばね装置は戻る力が一定であるので,ブラインドの開閉,サイドデスクの引き出し,OAスタンド等の角度調整などいろいろな分野で使われており,僅かな力で変位させてその位置に停止させることが可能であり」,「これをパレットの昇降用に使用し」,「自転車を搭載しない場合は1台の定荷重ばね装置で・・・・・・人間の手で少しの力を加えるだけでスムーズに昇降させることが可能である」との記載があり,【0016】に記載されている駐輪施設では,(ア)僅かな力を加えることによりパレットの昇降位置を変位させることができ,(イ)昇降させた位置にパレットを停止させることができるようなものであることが明らかである。 ここで,(イ)昇降させた位置にパレットを停止させることができるような引き戻し力がパレットにかかっていれば,当然(ア)僅かな力を 加えることによりパレットの昇降位置を変位させることができると考えられる。 したがって,「パレット重量にほぼ等しい引き戻し力」とは,「昇降させた位置にパレットを停止させることができる引き戻し力」と解釈すべきである。 (ウ) 通常ブラインドの開閉やサイドデスクの引き出し,OAスタンドの角度調整などにおいては,ブラインドや引き出し,OAスタンドを完全に静止させた上で手を離すようなことはしないのが通常であり,その位置や角度を変化させている途中で手を離してもその位置や角度に留まることを期待しているとみるのが自然である。 そうすると,「昇降させた位置にパレットを停止させる なことはしないのが通常であり,その位置や角度を変化させている途中で手を離してもその位置や角度に留まることを期待しているとみるのが自然である。 そうすると,「昇降させた位置にパレットを停止させる」とは,パレットを動かして動摩擦力がかかる状態でパレットが停止することと解釈するべきである。 もっとも,「昇降させた位置にパレットを停止させる」を,ラックを昇降させた後人間の手により完全に静止させた上でわずかな力を加えることもなく手を離したときにラックが停止することと解釈したとしても,結論に変わりはない。 (エ) 被告製品においては,少なくともラックの昇降範囲下限位置において主たるばねの荷重がラック重量よりも大きいため,自転車を降ろした後,ラックが自動的に上昇する(オートリターン機能)のであるから,主たるばねは「パレット重量とほぼ等しい引き戻し力」を有するものではなく,構成要件Cを満たさない。 ウ 「パレット重量」について構成要件Cの「パレット重量」は,パレット(ラック)の重量に他ならず,摩擦力を加味した重量などと解釈する余地はない。 (3) 構成要件D充足性について(争点3) (原告の主張)ア 「定荷重ばね」について被告製品の補助ばねは,ラックの昇降範囲である100~1100mmの範囲で典型的な定荷重ばねの特性を示しており,そのことは被告も認めている。 補助ばねはラックの昇降を容易にするためのものであるから,ラックの昇降範囲で定荷重ばね性が問われているのであって,ラックの下限を超えて補助ばねを引き出した場合にばね力が顕著に変化する部分があったとしても,構成要件Cの充足性とは関係がない。 イ 「ほぼ等しい」について2回目の試験データ(甲29の3)によれば, 下限を超えて補助ばねを引き出した場合にばね力が顕著に変化する部分があったとしても,構成要件Cの充足性とは関係がない。 イ 「ほぼ等しい」について2回目の試験データ(甲29の3)によれば,被告製品の補助ばねの上昇時における平均引き戻し力は165.1N(重量に換算して16.8kg)である。 被告製品が想定する自転車重量は15~20kgであり,中間値をとれば17.5kg,ある程度の幅を±0.5kgで加えても17~18kg程度である。 補助ばねの引き戻し力16.8kgを自転車重量17~18kgと比較すると,-1.2~-7.1%であり,公差の範囲内にあるから,補助ばねは自転車重量と「ほぼ等しい」引き戻し力を有するといえる。 (被告の主張)ア 「定荷重ばね」について原告による1回目の試験データにおいて,補助ばねの荷重が,100~1100mmの範囲では「定荷重ばね」といってよい誤差の数値で推移していることは認める。 補助ばねは,被告製品におけるラックの昇降範囲の上限と下限の間においてはほぼ一定のばね力を有するが,ラックの昇降範囲下限における引き 出し量を超えて更に引き出された場合に,主たるばねと同様にばね力が顕著に変化する部分があり,「定荷重ばね」ではない。 補助ばねをこのように設定している理由は,第1に,主たるばねが破損した場合に補助ばねを主たるばねとして用いることができるようにするため,第2に,重い自転車(例えばチャイルドシートや後方のかごを取り付けた自転車,電動アシスト自転車など)の多い施設において,補助ばねを切断することでラックの昇降範囲下限の状態における補助ばねのばね力が通常時よりも大きくなるように調整することができるようにするためである。 イ 「ほぼ等しい」につい の多い施設において,補助ばねを切断することでラックの昇降範囲下限の状態における補助ばねのばね力が通常時よりも大きくなるように調整することができるようにするためである。 イ 「ほぼ等しい」についてそもそも自転車の重量は千差万別であり,社会通念上「自転車重量」は一意に決定する値ではない。また,被告製品は,個別の自転車重量に合わせて補助ばねのばね力を調整して出荷していない。したがって,被告製品の補助ばねの引き戻し力が,「自転車重量にほぼ等しい」とはいえない。 補助ばねの引き戻し力は,比較的多く存在すると考えられる,前方にかごが取り付けられ,後方に荷台を有する26インチの自転車の平均的な重量(18~20kg)よりも十分に小さく設定されている。 (4) ロ号物件,ハ号物件の直接侵害性について(争点4)(原告の主張)ロ号物件,ハ号物件は本件発明の構成要件A~Fをすべて充足する。 被告がロ号物件,ハ号物件の上段・下段を同時に製造販売しているか,上段と下段を別個に製造販売しているかは問題でなく,上段と下段とを別個に,また時間的に隔たって製造しているとしても,それらが個別に完成していれば被告のロ号物件,ハ号物件の製造は完了しているのであり,上段と下段とを個別に販売するとしても,それらがロ号物件,ハ号物件の構成要素である以上,ロ号物件,ハ号物件の販売となる。 (被告の主張)被告製品のM2型とF型,R型の組み合わせがロ号物件の構成を充足すること,M2型とF1型,F2型の組み合わせがハ号物件の構成を充足することは認める。 F型,R型及びF1/F2型は,M2型とは別個の製品であり,それ自体単独で使用可能な独立の製品である。また,F型,R型及びF1/F2型は,必ずしもM2型と組み合わせてのみ使用され とは認める。 F型,R型及びF1/F2型は,M2型とは別個の製品であり,それ自体単独で使用可能な独立の製品である。また,F型,R型及びF1/F2型は,必ずしもM2型と組み合わせてのみ使用されるものではなく,被告は,それら下段をM2型と必ず組み合わせるものとして製造販売するものではない。 F型,R型及びF1/F2型は,他社の上段の製品と組み合わせて使用されることも想定しているのであり,M2型と組み合わせて使用されることが前提となっているものではない。 (5) イ号物件の間接侵害性について(争点5)(原告の主張)アイ号物件は,構成要件B~Eを充足するが,構成要件A(「1段目」),F(「(上下2段式の)駐輪施設」)を充足しない。 イイ号物件は,本件発明にかかる上下2段式の駐輪施設の第2段目(上段)のために製造・販売され,他の現実的かつ実用的用途は存在しないから,イ号物件は本件発明に係る駐輪施設の生産にのみ用いられるものであり,被告が業としてその製造販売を行うことは,特許法101条1号により,原告の専用実施権の間接侵害となる。 ウまた,イ号物件は,本件発明に係る上下2段式駐輪設備の生産に用いる物であって,本件発明の課題の解決に不可欠なものであり,被告は,本件発明が特許発明であること及びイ号物件が本件発明の実施に用いられることを知りながら業としてイ号物件の製造販売を行っており,特許法101条2号の間接侵害も成立する。 (被告の主張) イ号物件は,それ単独でも使用可能な独立した製品であって,ロ号物件,ハ号物件の下段と組み合わされるものとしてのみ使用されることが前提となっているものではない。 イ号物件は,他社製品の下段と組み合わせても使用できるし,イ号物件単体で販売することもできる。 ハ号物件の下段と組み合わされるものとしてのみ使用されることが前提となっているものではない。 イ号物件は,他社製品の下段と組み合わせても使用できるし,イ号物件単体で販売することもできる。 イ号物件はそれ単独で販売され使用可能な独立した製品であり,侵害物件の生産にのみ用いる物とはいえない。 (6) 損害(争点6)(原告の主張)ア被告は,原告が専用実施権の設定を受けた平成22年11月17日以降に,平塚駅西口第1駐輪場に,被告製品を販売した。 イ平塚駅西口第1駐輪場には,上段926台,下段1421台の被告製品が設置されている。 ウ原告には,本件発明の実施品の製造販売能力があり,侵害行為がなければ同量を販売することができた。 原告の利益は,上段1台当たり2万5000円,下段1台当たり5000円である。 したがって,原告の損害額は,2万5000円×926台+5000円×1421台=3025万5000円と推定される。 エよって,原告は,被告に対し,民法709条,特許法102条1項に基づき,本件特許の専用実施権侵害による損害賠償の一部請求として,3025万5000円及びこれに対する不法行為の後の日である平成23年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)平塚駅西口第1駐輪場に被告製品を販売したことは認め,損害額は全て否 認する。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(構成要件A充足性)について(1) 構成要件Aにおける「横方向」の意義に関し,原告は水平方向を意味すると主張し,被告は自転車受台の長手方向に直交する方向を意味すると主張する。 (2) そこで検討するに,構成要件Aにおいて自転車受台を「横方向に移動可能」な 」の意義に関し,原告は水平方向を意味すると主張し,被告は自転車受台の長手方向に直交する方向を意味すると主張する。 (2) そこで検討するに,構成要件Aにおいて自転車受台を「横方向に移動可能」なものとした技術的意義は,1段目の自転車受台を左右に移動させることによって,パレットに自転車を出し入れするのに必要なスペースを確保するためであり(【0006】),この構成を備えることによって,従来技術である,自転車受台の位置が固定された駐輪施設よりもスペース効率よく自転車を収納可能とする効果(【0002~0004,0020】)を奏するものと認められる(甲2)。 このような効果を奏するためには,自転車受台は,昇降するパレットに自転車の出し入れが可能な程度に水平方向に移動できれば足り,自転車受台の長手方向に直交する方向に移動する必要はない。 本件明細書(甲2)の【0007】の項で1段目の平面図として説明されている【図2】(a)においては,自転車受台4はレール3とほぼ直交するような形で図示されているが,【0007】の項の本文においては,自転車受台は「ローラとキャスタとで左右に横移動できるようになっている。」と説明されているだけで自転車受台とレールが直交しているような記載はなく,構成要件Aにいう「横方向」を,自転車受台の長手方向に直交する方向に限定して解すべき根拠はない。 そうすると,構成要件Aにいう「横方向」とは「水平方向」を意味すると解するのが相当であり,これを「自転車受台の長手方向に直交する方向」とする被告の主張は採用できない。 (3) これを被告製品についてみると,ロ号物件及びハ号物件におけるラックは,水平方向に移動可能なものであるから(ロ号物件,ハ号物件がそれぞれその構成aを備えることは争いがない。),構成要件Aを充足 (3) これを被告製品についてみると,ロ号物件及びハ号物件におけるラックは,水平方向に移動可能なものであるから(ロ号物件,ハ号物件がそれぞれその構成aを備えることは争いがない。),構成要件Aを充足する。 (4) なお,イ号物件は,第1段目を備えていないから,構成要件Aを充足しない。 2 争点2(構成要件C充足性)について(1) 構成要件Cは,「パレット重量とほぼ等しい引き戻し力を有する第1の定荷重ばね装置」との要件を定めているところ,「ほぼ等しい」及び「定荷重ばね」の意義について争いがある。 (2) 「ほぼ等しい」というのは,「完全に等しい」というのと異なり,ある程度の幅を許容する概念である。 また,「定荷重ばね」とは,「たわみが変化しても,力がほとんど変化しないばね」を意味するところ(争いがない。),「ほとんど変化しない」というのは,「全く変化しないのではなく少しは変化する」ということであり,やはりある程度の変動の幅を許容する概念である。 (3) この点,原告は,ばねの製作における許容誤差である公差の範囲程度の荷重差であれば,「ほぼ等しい」「定荷重ばね」の要件を充足するとした上で,ばねの製作における公差は±15%(30%幅)程度であり,その公差ないしそれと同視できる程度の範囲内の荷重差であれば,「ほぼ等しい」「定荷重ばね」といえる,などと主張する。 しかし,本件特許の明細書(甲2)には,公差によって「ほぼ等しい」「定荷重ばね」の意義を説明しているような箇所は存在しないし,「定荷重ばね」の定義に関する文献(甲13ないし15,乙7,10)にも,その荷重の変動幅を公差によって説明しているものは存在しない。 そして,圧縮コイルばね及び引張コイルばねに関するJIS規格においても,1級,2級,3級というばねの等級によっ ,乙7,10)にも,その荷重の変動幅を公差によって説明しているものは存在しない。 そして,圧縮コイルばね及び引張コイルばねに関するJIS規格においても,1級,2級,3級というばねの等級によってばね定数の許容差(公差) は異なっており,有効巻数3以上10以下のものと10を超えるものとでも異なっている(甲24。なお,本件特許の明細書には,ばねの等級や有効巻数の限定はない上,コイルばねにおけるばね定数の公差を定荷重ばねに適用できる根拠も明らかでない。)。 また,具体的な定荷重ばね商品における公差の範囲をみても,サンコースプリング株式会社のコンストンCS型の出力公差は-0~+15%(甲17から20),株式会社ミスミのCFS型の荷重の許容差は0~+15%(甲21),大阪熱処理株式会社のコプリング(荷重8kgのもの)の荷重公差は±10%(甲22,23)と,定荷重ばねの公差の範囲は,業者,商品ごとに異なっている。 以上によれば,ばねの公差の範囲が一義的に一定の値に定まっているとは認められず,「公差」によって構成要件Cにいう「ほぼ等しい」「定荷重ばね」の範囲を確定するという原告の主張を採用することはできない。 (4) 以上のとおり,本件特許の【特許請求の範囲】の請求項2の記載及び技術常識から「ほぼ等しい」「定荷重ばね」の意義を一義的に特定できない以上,その意義は,明細書の【発明の詳細な説明】の記載を参酌して検討する必要がある。 そこで検討するに,まず,本件特許の明細書の【0020】の項には,【発明の効果】として,「収納に際しての労力を必要とせず」という効果の記載がある(【発明が解決しようとする課題】を記載した【0004】の項にも同様の記載がある。)(甲2)。 しかし,駆動機構を有する本件特許の請求項1の発明におい の労力を必要とせず」という効果の記載がある(【発明が解決しようとする課題】を記載した【0004】の項にも同様の記載がある。)(甲2)。 しかし,駆動機構を有する本件特許の請求項1の発明においてはともかく,ばねを使用する本件発明において,収納の労力を全く必要としないことはあり得ない。 これを「収納の労力が軽減される」と解釈したとしても,およそ何らかのばねを備えれば,そのばねの引き戻し力によってパレットを上昇する労力は その分軽減されるから,本件発明において「ほぼ等しい」「定荷重ばね」の要件を要求した意義を具体的に明らかにするものとはいえない。 (5) そこで他の記載をみるに,本件特許の明細書の【発明の実施の形態】すなわち実施例の記載以外には,この点に関する記載は見当たらない。そして,実施例について説明した【0016】の項には,「1台の定荷重ばね装置の引き込み力を自転車を搭載しないときのパレット重量にほぼ等しくし,もう1台の定荷重ばね装置の引き込み力を自転車重量にほぼ等しくし,2台の定荷重ばね装置の合計の引き込み力を自転車を搭載したときの重量にほぼ等しくなるようにしてもよい。定荷重ばねは戻る力が一定であるので,ブラインドの開閉,サイドデスクの引き出し,OAスタンドの角度調整などいろいろな分野で使われており,僅かな力で変位させてその位置に停止させることが可能であり,これをパレットの昇降用に使用し,自転車を搭載しない場合は1台の定荷重ばね装置で,自転車を搭載した場合は2台の定荷重ばね装置を使用し,人間の手で少しの力を加えるだけでスムーズに昇降させることが可能である。」との記載がある(甲2)。 上記のとおり,本件明細書において,「ほぼ等しい」「定荷重ばね」の意義について説明した箇所は他に存在しないし,上記【0016】 スムーズに昇降させることが可能である。」との記載がある(甲2)。 上記のとおり,本件明細書において,「ほぼ等しい」「定荷重ばね」の意義について説明した箇所は他に存在しないし,上記【0016】の記載は,発明の効果に関する【0020】の「収納に際しての労力を必要とせず」との記載を「パレットを上昇下降する労力が軽減される」との意義と解したとしても矛盾するものではないから,構成要件Cにおいて「ほぼ等しい」「定荷重ばね」の要件を定めた技術的意義は,「僅かな力で変位させてその位置に停止させることが可能であり」,「人間の手で少しの力を加えるだけでスムーズに昇降させることが可能である」という効果を奏するためであると認めるのが相当である。 そうすると,構成要件Cにいう「パレット重量とほぼ等しい引き戻し力を有する第1の定荷重ばね装置」とは, C-1 自転車を搭載しないパレット(以下「空ラック」という。)に,人間の手で少しの力を加えるだけで昇降させることができ,C-2 昇降させた位置に空ラックを停止させることができるC-3 ような引き戻し力を有するばね装置を意味するものと解釈するのが相当である。 (6) 上記C-2において,空ラックを「停止させる」とは,昇降用柱の上端と下端の間の任意の位置で空ラックを停止させた場合に,空ラックの重量とばねの荷重の大きさとの差が,空ラックが静止しているときにかかる静摩擦力(静止した物体に働く摩擦力)の大きさを超えないために,空ラックが勝手に上昇したり下降したりせず静止した状態を保っていられることを意味する。 空ラックがいったん停止しても,重力又はばねの引き戻し力によって勝手にラックが昇降するようでは,自転車の出し入れや駐輪機能に支障をきたし,本件発明の所期の効果を奏することができないか する。 空ラックがいったん停止しても,重力又はばねの引き戻し力によって勝手にラックが昇降するようでは,自転車の出し入れや駐輪機能に支障をきたし,本件発明の所期の効果を奏することができないからである。 この点,原告は,空ラックを停止させることができる必要はないと主張する。 しかし,空ラックを停止させる必要がないとすれば,上記(4)のとおり,本件発明において「ほぼ等しい」「定荷重ばね」の要件を定めた意義を説明できないのであるから,原告の主張は採用できない。 他方,被告は,OAスタンドの角度調節などにおいては位置を変化させている途中で手を離してもその位置にとどまることを期待しているのであるから,ラックが昇降している途中で手を離せばその位置に停止する,すなわち,動摩擦力(物体が動いているときにかかる摩擦力)がかかる状態で空ラックが停止することが必要であると主張する。 しかし,本件発明の所期の効果を奏するためには,「第1の定荷重ばね装置」に必要な引き戻し力は,上記C-1ないしC-3を満たす引き戻し力で あれば足り,昇降中に速度が存在する状態で手を離した場合にその場で停止することまで必要であるとは解されないから,動摩擦力のかかる状態で空ラックが停止することまで要求する必要はないと解するのが相当である。 (7) 上記構成要件C-1については,C-2で昇降させた位置に空ラックを停止させることができる程度に空ラックの重量とばねの荷重の大きさとの差が小さければ,当然に,人間の手で少しの力を加えるだけで昇降させることができることになると考えられる。 上昇を開始する場合には,ばねの荷重及び人間の手が加える力の合計が,空ラックの重量及び静摩擦力の合計を上回っていることを意味し,下降を開始する場合は,空ラックの重量及び とになると考えられる。 上昇を開始する場合には,ばねの荷重及び人間の手が加える力の合計が,空ラックの重量及び静摩擦力の合計を上回っていることを意味し,下降を開始する場合は,空ラックの重量及び人間の手が加える力の合計が,ばねの引き戻し力及び静摩擦力の合計を上回っていることを意味する。 (8) これを被告製品についてみると,以下のとおりである。 ア証拠(甲3,11の1・2,12,26,29の1ないし3,35,38,44ないし46,乙13)及び弁論の全趣旨を総合すると,被告製品における主たるばねは,c-1 空ラックに,人間の手で少しの力を加えるだけで昇降させることができるが,c-2 少なくとも昇降用柱の下端の位置において,主たるばねの引き戻し力は空ラックの重量よりも所定量大きく,人間の手で力を加えなくても,主たるばねの引き戻し力によって,空ラックは自動的に上昇する(オートリターン),c-3 ような引き戻し力を有するばね装置であると認められる。 イそうすると,被告製品における主たるばねは,上記構成要件C-2を満たさず,構成要件Cを充足しない。すなわち,被告製品における主たるばねは,「パレット重量とほぼ等しい引き戻し力を有する第1の定荷重ばね 装置」に当たらない。 ウ ①本件特許の明細書の同じ【0016】には,「2台の定荷重ばね装置(例えば,商品名「コンストン」三光発条株式会社製等)」との記載があること(甲2),②サンコースプリング株式会社のウェブページにおいて「コンストンは,当社が開発した定荷重ばねの商品名です。」との記載があること(甲16),③被告製品においてサンコースプリング株式会社の「コンストン」が使用されていること(甲29の6,乙6,弁論の全趣旨。 ただし,被告は,被告製品に使用しているのは です。」との記載があること(甲16),③被告製品においてサンコースプリング株式会社の「コンストン」が使用されていること(甲29の6,乙6,弁論の全趣旨。 ただし,被告は,被告製品に使用しているのは「変動荷重コンストン」であると主張している。),④株式会社トップギアによる当初の被告製品のカタログにおいて「上段は,機能性と静音性を追求した定荷重ばね式」との記載があったこと(甲3。ただし,被告は,株式会社トップギアが独自に行ったものと主張している。),⑤被告が平成20年9月3日に出願した「垂直昇降式駐輪機のラックの自動戻し装置」の特許(特許第4265692号)の明細書の【0027】の項に,「ラックを牽引して支柱に沿って昇降させる・・・・・・バネは,常に一定の力で引いたり戻したりすることができる定荷重バネであることがより好ましい。ストローク量に関係なく,常に一定出力であるので,ラックの昇降がスムーズである。」と記載されていること(甲8。ただし,被告は,その後実機を開発する過程で変動荷重ばねを使用することにしたと主張している。),⑥被告製品のカタログに上記⑤の特許番号が記載されていること(甲3,12,35)などは,いずれも,本件発明における「ほぼ等しい」「定荷重ばね」の技術的意義を踏まえた上記解釈,認定を左右するものではない。 3 争点3(構成要件D充足性)について(1) 構成要件Dは,「自転車重量にほぼ等しい引き戻し力を有する第2の定荷重ばね装置」との要件を定めているところ,「ほぼ等しい」及び「定荷重ばね」の意義について争いがあること,それぞれある程度の幅を許容する概 念であること,その意義は本件特許の【特許請求の範囲】の請求項2の記載からは一義的に特定することができず,明細書の【発明の詳細な説明】の記載を参酌して検討する必 れある程度の幅を許容する概 念であること,その意義は本件特許の【特許請求の範囲】の請求項2の記載からは一義的に特定することができず,明細書の【発明の詳細な説明】の記載を参酌して検討する必要があることは,構成要件Cと同様である。 (2) 構成要件Dにおける「ほぼ等しい」「定荷重ばね」を説明した箇所も,本件特許の明細書の【0016】の項以外には存在しないから,構成要件Dの「ほぼ等しい」「定荷重ばね」の要件の技術的意義も,「僅かな力で変位させてその位置に停止させることが可能であり」,また,「人間の手で少しの力を加えるだけでスムーズに昇降させることが可能である」という効果を奏するためであると認めるのが相当である。 そうすると,構成要件Dにいう「自転車重量にほぼ等しい引き戻し力を有する第2の定荷重ばね装置」とは,D-1 自転車を搭載したパレット(以下「自転車搭載ラック」という。)に,人間の手で少しの力を加えるだけで昇降させることができ,D-2 昇降させた位置に自転車搭載ラックを停止させることができるD-3 ような引き戻し力を有するばね装置を意味するものと解釈するのが相当である。 (3) 上記D-2において,自転車搭載ラックを「停止させる」とは,昇降用柱の上端と下端の間の任意の位置で自転車搭載ラックを停止させた場合に,空ラックの重量及び自転車の重量の合計と,第1の定荷重ばね装置のばね荷重と第2の定荷重ばね装置のばね荷重の大きさの合計との差が,自転車搭載ラックに働く静摩擦力の大きさを超えないために,自転車搭載ラックが勝手に上昇したり下降したりせず静止した状態を保っていられることを意味する。 自転車の重量は様々であるから,実際には自転車搭載ラックが停止しない状態が生じることは避けられないが,駐輪施設が想定する一定の自転 たり下降したりせず静止した状態を保っていられることを意味する。 自転車の重量は様々であるから,実際には自転車搭載ラックが停止しない状態が生じることは避けられないが,駐輪施設が想定する一定の自転車を搭載した状態で要件D-1ないしD-3を満たせば,他に構成要件を充足しない使用方法があったとしても,構成要件D充足性を満たすものとみてよいと 考えられる。 (4) これを被告製品についてみると,以下のとおりである。 ア証拠(甲3,11の1・2,12,26,29の3・4,35,44ないし46)及び弁論の全趣旨を総合すると,被告製品における補助ばねは,d-1 自転車搭載ラックに,人間の手で少しの力を加えるだけで昇降させることができるが,d-2 昇降させた位置に自転車搭載ラックを停止させることができるか否か(被告製品の想定する一定の自転車を搭載した状態において,空ラックの重量及び自転車の重量の合計と,主たるばねのばね荷重及び補助ばね(2本)のばね荷重の大きさの合計との差が静摩擦力の大きさを超えないか否か)は明らかでないd-3 ような引き戻し力を有するばね装置であると認められる。 イそうすると,被告製品における補助ばねは,上記構成要件D-2を満たすか否か明らかでない。本件全証拠によっても被告製品がこれを満たしていると認めるに足りる証拠はないから,被告製品は構成要件Dを充足しない。すなわち,被告製品における補助ばねは,「自転車重量とほぼ等しい引き戻し力を有する第2の定荷重ばね装置」に当たらない。 4 以上によれば,被告製品は本件発明の構成要件C,Dを充足せず,イ号製品については本件発明に係る上下2段式の駐輪施設の生産に用いる物(特許法101条1,2号)に当たらず,ロ号及びハ号製品については本件発明の技術的範囲に 品は本件発明の構成要件C,Dを充足せず,イ号製品については本件発明に係る上下2段式の駐輪施設の生産に用いる物(特許法101条1,2号)に当たらず,ロ号及びハ号製品については本件発明の技術的範囲に属しないから,その余の点につき判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官西村康夫 裁判官森川さつき

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