平成20(行コ)318 所得税更正処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成18年(行ウ)第747号)

裁判年月日・裁判所
平成21年2月26日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文6,230 文字)

- 1 -主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求めた裁判 控訴人( )原判決を取り消す。 ( )処分行政庁が平成17年6月29日付けでした控訴人の平成14年分 の所得税の更正処分のうち所得税の確定申告書記載の課税総所得金額及び納付すべき税額(課税総所得金額1億2621万8000円,納付すべき税額(還付金の額)1623万4745円)を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 ( )訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 被控訴人主文と同旨第2事案の概要 本件は,処分行政庁である芦屋税務署長が,控訴人(原審原告)の平成14年分の所得税の確定申告(課税総所得金額1億2621万8000円,納付すべき税額(還付金の額)1623万4745円)について,控訴人が60パーセントの株式を保有するシンガポール法人(A社)が租税特別措置法40条の4第1項所定の「特定外国子会社等」に該当し,同社の平成13年事業年度における「適用対象留保金額」に60パーセントを乗じた「課税対象留保金額(50億2382万9671円)を控訴人の平成14年分の雑」所得の金額の計算上その総収入金額に算入すべきものであるとして,控訴人に対し,平成17年6月29日付けで平成14年分の所得税の更正処分(課税総所得金額51億5004万8000円,納付すべき税額18億4258- 2 -万2300円(本件更正処分)及び過少申告加算税(2億7662万35))(),,00円の賦課決定処分本件賦課決定処分を行ったことから控訴人が(,「」。)本件更正処分及び本件賦課決定処分以下まとめて本件各処分というを不服として異議申立て及び審査請求を順次行い,これらが の賦課決定処分本件賦課決定処分を行ったことから控訴人が(,「」。)本件更正処分及び本件賦課決定処分以下まとめて本件各処分というを不服として異議申立て及び審査請求を順次行い,これらが棄却されたために,本件各処分の取消しを求めて訴えを提起した事案である。 原審は,控訴人の請求をいずれも棄却した。そこで,控訴人が原判決を不服として控訴した。 法令の定め及び争いのない事実は,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の1及び2に記載(原判決2頁5行目から7頁3行目まで)のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決5頁23行目の「原告」を「A社」に改め,6頁7行目の「原告」の前に「A社と」を加える。 本件各処分の適法性(税額の計算根拠を含む)に関する被控訴人の主張。 は,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の3に記載(原判決7頁4行目から同頁6行目まで)のとおりであるから,これを引用する。 争点及び争点に関する当事者の主張は,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の4及び5に記載(原判決7頁7行目から18頁19行目まで)のとおりであるから,これを引用する。 第3当裁判所の判断 当裁判所も,本件各処分は適法であり,控訴人の本件請求はいずれも理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は,下記2ないし4のとおり補充の判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3争点に対する判断」の1ないし4に記載(原判決18頁21行目から35頁19行目まで)のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決31頁15行目の「995パーセント」を「95パーセント」に改める。 . 争点1(措置法40条の4が日星租税協定7条1項に違反するか否か)について- 3 -( )控訴人は,控訴理 し,原判決31頁15行目の「995パーセント」を「95パーセント」に改める。 . 争点1(措置法40条の4が日星租税協定7条1項に違反するか否か)について- 3 -( )控訴人は,控訴理由として,措置法40条の4が日星租税協定7条1 項に反しないとした原判決の判断は誤っている旨を主張する。 ( )しかしながら,原判決が説示するとおり,措置法40条の4は,同条 3項に定める非持株会社等基準,実体基準,管理支配基準,非関連者基準及び所在地国基準を充足しない,当該国において事業を行うことに経済的合理性が認められないような特定外国子会社等に関しては,そのような特定外国子会社等を本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低い国又は地域に設けそのような特定外国子会社等に本来法人の所有者である株主に対して移転されるべきである利益を留保することによって租税回避行為をしていると評価されることから,このような場合には,当該特定外国子会社等に留保された「適用対象留保金額」は本来株主にその利益移転が行われるべきものであるので,実際には株主に配当等の利益移転が行われていなくても,配当等の利益移転があったものとみなして,課税することとしたものにほかならないと解される。そうすると,措置法40条の4は,本来特定外国子会社等から我が国に居住する株主に利益移転がなされるのが当然であると解される場合であるにもかかわらずそれがなされていないときに,雑所得の金額の計算上,本来あるべき利益移転があったものとみなして,そのあるべき利益移転によって株主である我が国の居住者が得たとみなされる配当等の所得に対して課税するものであるといえるのである。 そうである以上は,措置法40条の4は,あくまでも,一定の要件のもとに我が国の居住者である特定外国子会社 る我が国の居住者が得たとみなされる配当等の所得に対して課税するものであるといえるのである。 そうである以上は,措置法40条の4は,あくまでも,一定の要件のもとに我が国の居住者である特定外国子会社等の株主の所得に対して課税する規定であって,シンガポール法人が事業等によって得た利益すなわち「企業の利得」に対して課税するものでないことは明らかというべきであるから,措置法40条の4は一方の締約国の「企業の利得」について二重に課税することを防止するために課税権限の分配について定めた日星租税協- 4 -定7条1項に反するものではない(すなわち,日星租税協定7条1項は,我が国のいわゆるタックス・ヘイブン対策税制を禁じる趣旨を規定したものではない)というべきである。同旨の原判決の判断に誤りはない。 。 ( )控訴人は「日星租税協定10条1項は「一方の締約国の居住者である ,法人が他方の締約国の居住者に支払う配当に対しては,当該他方の締約国において租税を課することできる」と規定しているので,実際に支払わ。 れた配当については我が国において課税できるのは当然であるが,仮に措置法40条の4を配当が実際にあったものとみなす規定であるとしても,かかるみなし配当に対する課税は,未だ配当がなされていないシンガポール企業の留保利益に対して課税するものであるから,日星租税協定上許容されていないものであり,本件各処分は違法である。日星租税協定7条1。」項の例外はあくまでも日星租税協定自身において定めるべきものである旨を主張する。 しかしながら,日星租税協定7条1項は,シンガポール法人の「企業の利得」についての課税権の分配を定めたものにすぎず,これに対して,措置法40条の4は,たとえ日星租税協定10条1項にいう配当の支払が実際には未だない場合であっても,本来 ,シンガポール法人の「企業の利得」についての課税権の分配を定めたものにすぎず,これに対して,措置法40条の4は,たとえ日星租税協定10条1項にいう配当の支払が実際には未だない場合であっても,本来あるべき配当の支払があったものとみなした上で,その配当の支払すなわち擬制された配当の支払について課税する(株主たる我が国の居住者の雑所得の金額の計算上総収入金額の額に算入する)ものであるから,未だ配当されていないシンガポール法人の「企業の利得」について直接に課税するものではなく,措置法40条の4と日星租税協定7条1項とはその適用場面を異にし,両者が矛盾抵触することはないものである(なお,日星租税協定10条1項の規定が,我が国がその居住者に対して上記のように擬制された配当の支払について課税すること自体を禁じた規定であるとは解されない。 。)控訴人は,実際には配当が支払われていない以上それはやはりシンガポ- 5 -ール法人の「企業の利得」に対して直接に課税するものである旨を主張するが,株主たる我が国の居住者に対して課税することによってシンガポール法人の「企業の利得」を減少させるわけではないから,シンガポール法人の「企業の利得」に対して直接に課税するものとはいえないというべきである。 控訴人の上記主張は採用することができない。 ( )その他,控訴人が控訴理由書( )で指摘する点を踏まえ,控訴人が当審 で新たに提出した書証を加えて検討しても,措置法40条の4が日星租税協定7条1項に反しないとした原判決の判断に誤りがあるとは認められない。 争点2(A社が,措置法40条の4第3項の適用除外要件のうち非持株会社等基準,実体基準及び管理支配基準をいずれも充足するか否か)について( )控訴人は,控訴理由として「A社は,設立時の平成8年事業年 点2(A社が,措置法40条の4第3項の適用除外要件のうち非持株会社等基準,実体基準及び管理支配基準をいずれも充足するか否か)について( )控訴人は,控訴理由として「A社は,設立時の平成8年事業年度から ,その後の平成12年事業年度まで継続して鋼管の卸売業を「主たる事業」としてきており,控訴人の平成14年分所得税の課税所得金額算入の対象となった平成13年事業年度においても引き続き鋼管の卸売業を「主たる事業」としていたのであるから,A社の平成13年事業年度の主たる事業を株式の保有と認めた原判決の判断は誤っている」旨を主張する。 。 ( )まず,原判決が説示するとおり,特定外国子会社等が複数の事業を営 む場合においてそのいずれの事業が「主たる事業」であるかについての判定は,措置法40条の4第3項の「… 特定外国子会社等(株式(出資を含む)若しくは債券の保有… を主たる事業とするものを除く)が,。 。 … 各事業年度においてその行う主たる事業が次の各号に掲げる事業のいずれに該当するかに応じ当該各号に掲げる場合に該当するときは,当該特定外国子会社等のその該当する事業年度に係る適用対象留保金額については,適用しない」という文言からも明らかなように,事業年度ごとに行。 - 6 -われることが当然に予定されているものというべきである。 ( )原判決は,措置法40条の4第3項(適用除外規定)の適用の前提と なる特定外国子会社等の主たる事業の判定が事業年度ごとに行われることを前提としつつ,A社が平成13年事業年度(平成13年1月1日~同年12月31日)において鋼管の卸売,金銭の貸付け及び株式の保有という複数の事業を行っていたことを認定した上で,そのいずれが主たる事業であるかは,それぞれの事業年度における事業活動の具体的かつ客観的な内容( 1日)において鋼管の卸売,金銭の貸付け及び株式の保有という複数の事業を行っていたことを認定した上で,そのいずれが主たる事業であるかは,それぞれの事業年度における事業活動の具体的かつ客観的な内容(事業活動の客観的な結果として得られた収入金額又は所得金額,使用人の数,事務所・店舗・工場その他の固定施設の状況,等)を総合的に勘,,案して判定すべきであるとの見地に立って平成13年事業年度においてA社の株式の売却は平成13年12月18日に行われたB社の株式75万株のC社への売却のみであり,これに対して,A社の鋼管の卸売は7件(売上高約9万米ドル)であるが,A社の収入金額(約81億6424万5434円)においては,株式の保有に関するものが9955パーセント.(約81億2717万0507円)を占め,所得金額(差引利益(約8).0億9817万2109円においても株式の保有に関するものが99),79パーセント(約80億8129万7395円)を占めていたこと,A社の保有資産は約83億6999万8510円であるが,このうち株式の保有による資産(B社の株式の売却代金を原資とする定期預金及びD社の株式等の合計)は9536パーセントであること,A社は,平成13年.事業年度の決算書において,自社の主な事業活動は持株会社としての業務であることを自認していること,A社においては,平成13年事業年度当初はシンガポールの現地事務所に現地取締役1名と従業員1名が勤務していたが,同年3月に従業員が退職し,現地取締役も同年7月に退職したため,同年7月24日,シンガポールの現地事務所を閉鎖し,鋼管の卸売事業をD社に移管し,その後は鋼管の卸売の実績は存しないこと,これに対- 7 -,,,してA社は平成13年12月18日の売却時までB社の株式を保有し ガポールの現地事務所を閉鎖し,鋼管の卸売事業をD社に移管し,その後は鋼管の卸売の実績は存しないこと,これに対- 7 -,,,してA社は平成13年12月18日の売却時までB社の株式を保有し,,またD社の株式を平成13年事業年度以降も継続して保有していたこと等の事実を認め,これら事実によって,A社の平成13年事業年度における主たる事業を株式の保有と認めたものであって,原判決の上記の認定・判断に誤りはないというべきである。A社の設立時である平成8年事業年度からその後の平成12年事業年度までA社の主たる事業が控訴人主張のとおり鋼管の卸売業であったとしても,そのことによって,A社の平成13年事業年度の主たる事業が株式の保有であると認定・判断することが妨げられるものではない。 ( )控訴人が控訴理由書( )で指摘する点を踏まえ,控訴人が当審で新たに 提出した書証を加えて検討しても,上記の判断は変わらない。 なお,控訴人は「控訴人に租税回避の意図はなく,控訴人は真摯に鋼管,事業を行ってきたのであり,A社によるB社の株式の売却も,A社を含むEグループを救済するためにやむを得ず行われた緊急の措置であって,控訴人自らはA社から一度も配当を受け取っていないのであるから,それにもかか,()わらず事後になってなされた約21億円もの莫大な課税処分本件各処分は著しく不合理であり過酷である」旨を主張するが,たとえ上記の事情を。 考慮しても,本件各処分を違法なものとして取り消すには至らない。 第4 結論 よって,控訴人の本件請求をいずれも棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第8民事部裁判長裁判官原田敏章- 8 -裁判官氣賀澤耕一裁判官 原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第8民事部裁判長裁判官原田敏章- 8 -裁判官氣賀澤耕一裁判官加藤謙一

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