令和5年12月7日判決言渡同日原本受領裁判所書記官令和5年(ワ)第565号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日令和5年10月23日判決 原 告株式会社ZUND同代表者代表取締役同訴訟代理人弁護士春名一典同奥村草太郎同新熊聡 被 告株式会社セイショウ同代表者代表取締役同訴訟代理人弁護士島村美樹主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 被告は、原告に対し、420万円及びこれに対する令和2年9月20日から支払 済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等原告が、第三者から賃借した物件で運営していたラーメン店を閉店することとなり、被告(請負人)に同物件に係る賃貸借契約終了に伴う原状回復工事を依頼したが、被告が残置すべき監視カメラを撤去・廃棄したとして、被告に対し、請負契約 の契約不適合責任に基づく損害賠償金420万円及びこれに対する令和2年9月2 0日(工事完成日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である(原告は、根拠条文として、民法415条1項のほかに民法559条、562条1項、564条を挙げるが、損害賠償請求に関しては、契約不適合による場合も債務不履行に基づく損害賠償請求と性質が異なるものではないから、原告は として、民法415条1項のほかに民法559条、562条1項、564条を挙げるが、損害賠償請求に関しては、契約不適合による場合も債務不履行に基づく損害賠償請求と性質が異なるものではないから、原告は、民法415条1項に基づき損害賠償を請求するものと解される。)。 なお、原告は、当初、被告による自社ウェブサイトへの原告店舗の写真等の掲載行為が不正競争防止法2条1項20号所定の不正競争に該当するとして、同法3条1項及び2項に基づき、上記掲載写真等の削除を求めたが、被告がこれらを削除したため、原告は当該請求に係る訴えを取り下げた。 1 前提事実(証拠等を掲げていない事実は、争いのない事実又は弁論の全趣旨 により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア原告は、和洋食店、中華料理店、喫茶店、パブレストラン及びバーの経営等を目的とする株式会社であり、主にラーメン店「ラー麺ずんどう屋」の運営、管理を行っている。 イ被告は、不動産の売買、賃貸、管理及びその仲介等を目的とする株式会社であり、主に建築や内装工事等を行っている。 (2) 賃貸借契約の締結等(甲1)ア原告は、平成29年7月31日付けで、株式会社Kネクスト(以下「Kネクスト」という。)との間で、賃貸期間を「平成29年8月1日から平成32年7月 31日」(ただし、別段の意思表示のない限り、3年ごとの更新)とする建物賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」といい、対象物件を「本件賃借物件」という。)を締結し、Kネクストに対して保証金800万円を支払った。原告とKネクスト間における本件賃借物件の使用目的及び保証金の合意内容は、要旨、下記のとおりであった。 記 第2条(使用目的)原告は、本件賃借物件を飲食店(ラーメン店)及びそれに ト間における本件賃借物件の使用目的及び保証金の合意内容は、要旨、下記のとおりであった。 記 第2条(使用目的)原告は、本件賃借物件を飲食店(ラーメン店)及びそれに付随する一切の業務の店舗として使用するものとし、これ以外の目的に使用してはならない。 第7条(保証金) 1 原告は、Kネクストに対し保証金として800万円を本件賃貸借契約締結後 1週間以内にKネクストの指定口座へ振り込み送金するものとする。 2 保証金は賃料支払債務及びその遅延損害金並びに原状回復義務違反による損害等その他本件賃貸借契約から生ずる原告のKネクストに対する一切の債務を担保する。(省略) 7 本件賃貸借契約賃貸借期間開始の日から期間満了において、第19条の規定 による解約(引用者注:期間内解約)によって本件賃貸借契約が終了される場合の取扱いは次のとおりとする。(省略)② 賃貸借開始3年以上~6年未満での解約は返戻金40%とする。(省略)イその後、原告は、本件賃借物件において「ラー麺ずんどう屋奈良大安寺店」の運営を始めたが、令和2年8月31日、同店舗を閉店させた。 (3) 請負契約の締結等ア上記閉店に伴い本件賃貸借契約が終了することとなったため、原告は、被告に対し、本件賃借物件の原状回復を目的とする工事を依頼した。被告は、同月7日付けで見積書を作成し、原告はこれを受領した。(甲2の1)。 イ原告の当時の担当者であったP1は、同月中旬ころ、被告代表者及びKネク スト代表者と上記工事の打合せをし、被告代表者に対し、上記工事に先立って本件賃借物件内の監視カメラとスピーカーを別業者に依頼して移動させると伝えた(なお、後述のとおり、上記「監視カメラ」がKネクスト所有の監視カメラであるか否か し、被告代表者に対し、上記工事に先立って本件賃借物件内の監視カメラとスピーカーを別業者に依頼して移動させると伝えた(なお、後述のとおり、上記「監視カメラ」がKネクスト所有の監視カメラであるか否かにつき、当事者間に争いがある。)。(乙2)P1は、上記工事の際に残置する機材及び備品を記載したリスト(以下「本件リ スト」という。)を作成し、被告に対し、本件リストに記載された機材及び備品を 残置するよう指示した。本件リストに監視カメラの記載はなかった。(乙1)その後、P1は、被告に対し、空調機も残置するように指示した。 ウ原告と被告は、遅くとも同月末までに、上記工事の実施を内容とする請負契約(以下「本件請負契約」という。)を締結した。 エ被告は、令和2年9月1日から工事に着手し、同月20日に工事を完成させ た。被告は、同月9日、本件賃借物件内のKネクスト所有の監視カメラ6台(以下「Kネクスト監視カメラ」という。)を撤去し、廃棄した。(甲3,12の2)オ原告は、被告から、同年10月1日付け請求書記載の報酬273万1205円の支払請求を受け、被告に対し、これを支払った。(甲2の2)(4) 原告とKネクストとの間の訴訟等 ア Kネクストは、Kネクスト監視カメラが損壊されたことを理由に、本件賃貸借契約の期間内解約による終了に際して原告に保証金を返還しなかった。 そこで、原告は、Kネクストに対し、上記(2)アの合意に基づき、保証金320万円(=800万円×返戻金率40%)の返還を求める訴訟を提起した(当庁令和2年(ワ)第12426号)。これに対し、Kネクストは、原告に対し、Kネクスト 監視カメラの損壊に係る損害金971万5320円の支払を求める反訴を提起した(当庁令和3年(ワ)第2434号。甲12 年(ワ)第12426号)。これに対し、Kネクストは、原告に対し、Kネクスト 監視カメラの損壊に係る損害金971万5320円の支払を求める反訴を提起した(当庁令和3年(ワ)第2434号。甲12の2)。 イ原告とKネクストとの間において、上記アの訴訟につき、(省略)、原告がKネクストに対して解決金100万円(以下「本件解決金」という。)を支払うことを内容とする調停が成立し(省略)、原告は本件解決金をKネクストに支払った。 (甲4)(5) 原告と被告との間の別件訴訟被告は、令和4年、原告に対し、2億1519万1381円の損害賠償を求める訴訟を提起し(当庁同年(ワ)第8853号)、現在、係属中である。 2 争点 (1) 本件請負契約において、Kネクスト監視カメラの残置が合意されていたか(争 点1)(2) 原告の損害額(争点2)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件請負契約において、Kネクスト監視カメラの残置が合意されていたか)について (原告の主張)本件請負契約においてKネクスト監視カメラの残置が合意されていたかを明示する書面は存在しないから、当事者の合理的意思を解釈して判断すべきである。 令和2年8月中旬ころの打合せにおいて、P1は「監視カメラ」の撤去を別業者に依頼すると述べており、別業者に「監視カメラ」の撤去を依頼して残置すべき「監 視カメラ」が存在しないからこそ、本件リストに上記「監視カメラ」が列挙されなかった。また、原告が有価物である空調機の残置を被告に指示したことに照らせば、有価物である「監視カメラ」についても同様に解体撤去の対象外とするのが当事者の合理的な意思といえる。 以上によれば、本件請負契約において、「監視カメラ」の残置が合意されていた。 たことに照らせば、有価物である「監視カメラ」についても同様に解体撤去の対象外とするのが当事者の合理的な意思といえる。 以上によれば、本件請負契約において、「監視カメラ」の残置が合意されていた。 よって、Kネクスト監視カメラを撤去した被告には、契約不適合責任が成立する。 (被告の主張)否認ないし争う。 原告は、本件請負契約において、被告に対し、本件リストに記載された機材及び備品並びに空調機を残置し、これら以外のすべての機材等の撤去を依頼し、被告は これを承諾して工事を完成させた。 この点、P1が別業者に撤去依頼すると述べた「監視カメラ」は、Kネクスト監視カメラではなく原告の設置した監視カメラのことである。原告は、被告による工事の着工に先立ち、別業者に依頼して原告の設置した監視カメラを移動させた。 以上のとおり、本件請負契約において、Kネクスト監視カメラの残置の合意はな く、その撤去が合意されていたことは明らかである。よって、被告の契約不適合責 任は成立しない。 2 争点2(原告の損害額)について(原告の主張)被告によるKネクスト監視カメラの撤去により、原告は次の損害を被った。 (1) Kネクストから返還されるべき保証金 320万円 (2) 本件解決金相当額 100万円(被告の主張)否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(本件請負契約において、Kネクスト監視カメラの残置が合意されて いたか)について(1) 本件請負契約において、Kネクスト監視カメラの残置が合意されていたことを明示する書面はなく、前記前提事実に加えて、証拠(乙2、証人P1)及び弁論の全趣旨によれば、被告が見積書を作成した令和2年8月7日から同 契約において、Kネクスト監視カメラの残置が合意されていたことを明示する書面はなく、前記前提事実に加えて、証拠(乙2、証人P1)及び弁論の全趣旨によれば、被告が見積書を作成した令和2年8月7日から同月末までの間に、原告と被告との間において具体的な工事内容に関する打合せが行われて本件請 負契約が締結された事実、上記打合せにおいて、原告(担当者P1)が被告(被告代表者)に対し、①本件リストに記載された機材及び備品並びに空調機を残置して残りをすべて撤去すること、②「監視カメラ」は別業者に依頼して予め撤去させることをそれぞれ伝えた事実、本件リストには監視カメラが列挙されていなかった事実、原告が本件請負契約の工事着工前に依頼した第三者により原告設置の監視カメ ラを撤去させた事実、がそれぞれ認められる。 これらの事実関係によれば、原告と被告は、原告設置の監視カメラは原告において工事着工前に移動させることを前提に、本件リストに記載された機材及び備品並びに空調機は残置するが、それ以外の動産は残置せず、すべて撤去する工事を本件請負契約の内容とする旨合意したと認められる。そうすると、本件請負契約におい て、Kネクスト監視カメラの残置が合意されていたとはいえないから、Kネクスト 監視カメラの撤去について被告に契約不適合責任は成立しない。 (2) これに対し、原告は、「監視カメラ」が本件リストに列挙されていないのは別業者に依頼して撤去予定だったためであり、空調機と同様に有価物である監視カメラを残置させることが当事者の合理的意思であるから、本件請負契約において、Kネクスト監視カメラの残置が合意されていたと主張する。 しかしながら、原告の主張は、これを裏付ける証拠がなく、採用できない。 2 まとめ以上によれば、原告の請求は 本件請負契約において、Kネクスト監視カメラの残置が合意されていたと主張する。しかしながら、原告の主張は、これを裏付ける証拠がなく、採用できない。 2 まとめ 以上によれば、原告の請求は、その余の点を検討するまでもなく理由がない。 第5 結論 よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官 武宮英子 裁判官 阿波野右起 裁判官 島田美喜子
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