令和4合(わ)102 殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反

裁判年月日・裁判所
令和5年6月13日 東京地方裁判所
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判決文本文8,169 文字)

- 1 -令和5年6月13日東京地方裁判所刑事第7部宣告令和4年合第102号殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件 主文 被告人は無罪。 理由 第1 本件公訴事実本件公訴事実は、「被告人は、第1 令和3年12月17日午後1時17分頃、東京都葛飾区ab丁目c番d号付近路上において、被害者(当時48歳の女性)に対し、殺意をもって、その背部をペティナイフ(刃体の長さ約12.8センチメートル) で1回突き刺したが、同人に全治まで約2週間を要する背部刺創の傷害を負わせたにとどまり、殺害の目的を遂げなかった第2 業務その他正当な理由による場合でないのに、前記日時場所において、前記ペティナイフ1本を携帯した」というものである。 第2 争点 被告人が本件公訴事実の各行為を行ったことに争いはない。本件の争点は、本件犯行当時、被告人が心神喪失の状態になかったといえるか否かである。この点、検察官は、被告人は統合失調症による幻覚(以下では幻聴、幻視等を含む概念として用いる。)の著しい影響を受けて本件犯行を行ったため心神耗弱の状態にはあったが、残された正常な精神機能(統合失調症の症状以外の部分)によって本件犯行を 行った部分もあり、心神喪失の状態にはなかったと主張する。これに対し、弁護人は、被告人は統合失調症による幻覚の圧倒的な影響を受けて本件犯行を行ったものであり、心神喪失の状態にあった疑いがあると主張する。なお、被告人に本件犯行の故意が認められるか否かについても争いがある。 第3 当裁判所の判断 当裁判所は、弁護人の主張を採用したので、その理由を補足して説明する。 - 2 - 1 本件犯行及びその経緯本件犯行及びその経緯について、被告人の公判供述 第3 当裁判所の判断 当裁判所は、弁護人の主張を採用したので、その理由を補足して説明する。 - 2 - 1 本件犯行及びその経緯本件犯行及びその経緯について、被告人の公判供述を含む関係証拠によれば次の事実が容易に認められる。 統合失調症の発症(平成29年)被告人は、平成24年、母親の背中を包丁で突き刺す殺人未遂事件を起こしたた め懲役7年の判決を受け、平成25年から横浜刑務所で受刑していたところ、平成29年に統合失調症を発症して幻聴を訴えるようになり、「母親を刺したんだからおまえも死ね。」という幻聴により首をつるという自殺未遂事件を起こしたり、「殴ってやれ。」という幻聴により刑務官を殴るという公務執行妨害事件を起こすなどした。 出所後の入退院被告人は、令和2年6月に横浜刑務所を出所し横浜市内の簡易宿泊所で生活するようになったものの、約1年半後に本件犯行に及ぶまでのほとんどを同市内にある精神医療の専門病院に入院していた。すなわち、被告人は、出所後、「人を殺せ。」、「殺してろう屋に入っちゃえ。」などという幻聴が度々聞こえ、その影響で実際に 包丁を買ってしまったことから診療所の医師に相談したところ、出所後2か月足らずの令和2年8月、専門病院に医療保護入院となった。そして、3か月後の同年11月に退院し簡易宿泊所で生活するようになったものの、その後も幻聴や女子中学生の幻視はあり、令和3年1月には「刑務所に入れ。」、「悪さしてやれ。」という幻聴が聞こえるようになったため再び専門病院に医療保護入院となった。約10か月 間の入院中、投薬量の増減等薬の調整はされないまま経過し、女の子から攻撃される幻視や「人を殺せ。」などという幻聴を度々訴える一方で、他の患者や病院スタッフの態度に腹を立てて った。約10か月 間の入院中、投薬量の増減等薬の調整はされないまま経過し、女の子から攻撃される幻視や「人を殺せ。」などという幻聴を度々訴える一方で、他の患者や病院スタッフの態度に腹を立てて殴りかかるなどのトラブルも度々起こしたことから、令和3年11月11日、強制退院となった。 二度目の退院から本件犯行前日まで その後、被告人は、簡易宿泊所での生活と診療所での治療を再開させたが、女子- 3 -中学生の幻視や幻聴がひどいことなどを訴え、令和3年12月7日に以前トラブルとなった簡易宿泊所の元居住者と偶然出会ったこともあって、やがて「aに行って人を殺してやれ。」、「東京都葛飾区にあるaに行って人を刺せ。」、「刑務所に入るんだから荷物をまとめろ。」という男性の声による幻聴が聞こえるようになり、本件犯行前日の同月16日には、「ナイフを買え。」という幻聴が何度も聞こえ、その影 響でディスカウントストアでペティナイフ1本を購入したほか、葛飾区eの実家に住む父親に宛てて漫画本等を梱包した段ボール1箱を発送した。 本件犯行当日本件犯行当日の令和3年12月17日朝、被告人は、簡易宿泊所の管理人に対し、東京の病院に入院すると適当なうそをついて部屋の鍵を返却した上、「aに行け。」 という男性の声による幻聴の指示に従って、ペティナイフや下着等を入れたバッグ及びリュックサックを持って簡易宿泊所を出て電車でaに向かったが、途中で実家に立ち寄り、父親に対し、段ボールが届くから預かっていてほしいなどと伝えて実家を後にした。そして、被告人は、A駅のショッピングセンター内の書店で人を刺せという幻聴の指示によって、f経由でaに歩いて向かい、途中、fのスポーツセン ターの東屋で、コンビニエンスストアで購入した弁当等を昼食として食べ は、A駅のショッピングセンター内の書店で人を刺せという幻聴の指示によって、f経由でaに歩いて向かい、途中、fのスポーツセン ターの東屋で、コンビニエンスストアで購入した弁当等を昼食として食べたが、その後、被告人の幻聴はひどくなり、aに向かう途中で、「あいつを刺せ。」、「こいつを刺せ。」という幻聴がどんどん聞こえてくるようになった。被告人がA駅高架下のゲートボール場のような公園に来たところでは、それまで公の場では見ることのなかった女子中学生の幻視も見え始め、その女子中学生の幻視から、公園の外を歩 いていた女子中学生か高校生を「刺しなさい。」と言われて刺しに行こうとしたが、ポールに荷物が引っ掛かってしまい刺せなかった。被告人がA駅付近に来た頃、今まで見えていた人の姿が見えなくなり、気付くと黒い人影が見え始め、そのような人影に向かって、男性の声による幻聴から「あの人を刺せ。」、「この人を刺せ。」と何度も言われ、その幻聴と重なるように女子中学生の幻視からも「あの人を刺しな さい。」、「あの人は幻覚だから刺しても大丈夫。」と言われ、バッグからペティナイ- 4 -フを取り出し、その人影の背後からペティナイフを前方に突き出して本件犯行に及んだ。被告人の認識としては、その人影はそのまま足早に前に進んでいき、途中で痛い痛いという声を上げ、黒い色からベージュのような明るい色になった。刺した後、被告人の幻聴や幻視は消え、被告人は、何が起きているのか分からず、警察官が駆け付けるまでのしばらくの間その場で呆然と立ち尽くしていた。 2 B鑑定について B鑑定の概要当裁判所の依頼により、被告人の精神鑑定を行ったB医師は、概要、次のとおり証言した(B鑑定)。 ア本件犯行当時の精神障害の有無及び程度 被告人は、本 について B鑑定の概要当裁判所の依頼により、被告人の精神鑑定を行ったB医師は、概要、次のとおり証言した(B鑑定)。 ア本件犯行当時の精神障害の有無及び程度 被告人は、本件犯行当時、統合失調症にり患していたほか、境界線の知的機能(境界知能)であった。その程度については、統合失調症による幻覚が悪化した状態では自傷他害につながる行動を繰り返し誘発する程度にこの精神障害による症状は被告人の行動に影響していた。また、被告人の知的機能は、元来、正常と軽度知的能力障害の境界域にあったが、本件犯行当時は統合失調症発症後の認知機能障害 の結果として更に低下していた。 イ精神障害と本件犯行の関連・機序被告人は、令和2年6月に横浜刑務所を出所後、統合失調症からくる「殺せ。」などの幻聴によって専門病院への入退院を繰り返し、令和3年11月の強制退院後も幻聴はひどく、本件犯行の約3週間前から、「殺してやれ。」、「人を刺してくれ。」、 「刑務所に入るんだから。」という男性の声の幻聴が出現するようになったが、これは現実の葛藤として、慣れない横浜や簡易宿泊所での生活の緊張感、統合失調症による社会機能の低下によって感じやすくなっていたストレスを背景として、幻聴が具体的になってどんどん悪化していった可能性がある。本件犯行の10日前には以前トラブルとなった元居住者と偶然出会ってしまい、このまま横浜にいるとまた 会うかもしれない、横浜刑務所は環境が良くないから捕まるなら東京がいいなどと- 5 -考えて、その後から事件を起こす場所を東京都葛飾区と指示する幻聴が聞こえるようになるなど幻聴が更に悪化していった。強制退院となった被告人には入院して対処する選択肢がなくなり、孤立し、幻聴が激しさを増す中、統合失調症の症状として 場所を東京都葛飾区と指示する幻聴が聞こえるようになるなど幻聴が更に悪化していった。強制退院となった被告人には入院して対処する選択肢がなくなり、孤立し、幻聴が激しさを増す中、統合失調症の症状として、ストレスへの対処の弱さや対人過敏性の強さが相互作用して更に緊張感が強くなっていき、これを契機として、人を刺して刑務所に入れという幻聴が聞こえてき て、幻聴が強制的となって、幻聴が指示するまま行動すれば幻聴が治まると思ってナイフを準備したりするようになった。本件犯行当日は、被告人が実家に立ち寄った後、幻聴が一層激しさを増し、以前から、A駅のショッピングセンター内の書店に行けという男性の声による幻聴があったが、それに加えて女子中学生の幻視も出現し、その女子中学生からの「あの人を刺せ。」、「あの人は幻覚だから刺しても大 丈夫。」という幻聴が重なった。このように、視覚と聴覚という二つの知覚領域にまたがって幻覚が出現していることや、当初は男性の声による幻聴によって刑務所に入るとかA駅の書店に行くといった目的がありながら、途中から女子中学生の幻視や、幻覚だから刺しても大丈夫という幻聴も加わって、その目的から外れるような行動をとっていることからすると、被告人は、統合失調症の病状が悪化(急性増 悪)する中で、どちらの指示に従ってよいか分からずに混乱、すなわち幻覚が激しくなってよく分からない状態になったものといえる。統合失調症の症状は、本件犯行当時、幻聴や幻視の異常体験が非常に活発となって最も悪化していたといえ、幻聴等の程度は非常に混乱を来す程度に重かったと考えられる。 さらに、境界知能の被告人は衝動を制御したり批判的に吟味したりする力が弱い ことも多少影響した可能性もある。 ⑵ B鑑定の信用性ア B医師は、精神医学の専門家医師であ ったと考えられる。 さらに、境界知能の被告人は衝動を制御したり批判的に吟味したりする力が弱い ことも多少影響した可能性もある。 ⑵ B鑑定の信用性ア B医師は、精神医学の専門家医師であって、統合失調症の臨床経験も豊富である。そして、B鑑定が用いた事実経過、中でも重要となる、被告人が横浜刑務所を出所してから本件犯行に至るまでの事実経過はほぼ当裁判所の認定事実と同 じである。その上で、B鑑定は、被告人の統合失調症等が本件犯行に与えた影響の- 6 -仕方について、直接的な原因とそうでない原因とに分けて、非常に分かりやすく納得のできる説明をしており、これを覆すような材料もない。したがって、B鑑定の信用性は高い。 イこの点、検察官は、B鑑定は、①被告人の元々の暴力的な傾向が犯行に直接影響したのではなく、幻聴の内容に影響したにとどまると判断した理由につい て説明していない、②命令性幻聴があるとなぜそれに従わないといけないような感覚が生じるのか説明していないと主張する。しかし、これらについてはB医師が豊富な臨床経験に基づき専門家の判断を示したものとして疑問に思うところはない。 検察官がそれらの点を問題視するのであればB医師に尋問すればよかったことである。 3 責任能力の判断 信用できるB鑑定によって認められる前記2イの機序を前提とした上で、本件犯行及びその経緯等を総合的に検討すると、被告人は、本件犯行当時、統合失調症の症状が急性増悪した影響により、幻聴や幻視の異常体験が非常に活発となってかなり混乱する中で、女子中学生の幻視による「あの人は幻覚だから刺しても大 丈夫。」という幻聴に逆らえずに従い、自らがペティナイフで刺している対象が実在の人であると認識できず、あるいは人である可能性を考える余裕がな 子中学生の幻視による「あの人は幻覚だから刺しても大 丈夫。」という幻聴に逆らえずに従い、自らがペティナイフで刺している対象が実在の人であると認識できず、あるいは人である可能性を考える余裕がなく、それ以外の行動もとれない状態のまま本件犯行に及んだ可能性が否定できない。よって、被告人は、本件犯行当時、統合失調症による幻覚の圧倒的な影響を受けて本件犯行を行ったものであり、心神喪失の状態にあった疑いがある。 なお、本件犯行について、精神障害の影響を除き当時の状況の下で外形的、客観的にみれば、故意の存在は肯定できることを前提に責任能力を検討した。 ⑵ 検察官の主張(論告)の検討アこれに対し、検察官は、被告人にはストレスを感じる生活から抜け出すため暴力的な犯罪に及ぶ傾向があり、実際に母親を刺してストレスを感じていた生 活から抜け出す経験をした被告人が、簡易宿泊所での生活にストレスを感じて抜け- 7 -出したいと考え、その時点で入院するという選択肢はなく、刑務所に入ることもやむを得ないと考え、そのための手段として、犯行前日にペティナイフを購入して人を刺そうと決意したのであり、その時点における決意については、被告人の病状は急性増悪しておらず、正常な精神機能による部分があったと主張する。 検察官も、被告人がペティナイフを購入するなどの行動に幻覚の影響もあったこ とは否定していないと思われるが、検察官のこの主張をより支える証拠として被告人の捜査段階における供述がある。すなわち、被告人は、捜査段階において、本件犯行前から人を刺しなさいという幻聴もあったと述べる一方で、横浜での生活が嫌になったため幻聴とは関係なく自分自身の考えとして通行人を刺して刑務所に入ろうと思ってナイフを買った旨を述べている。もっとも、境界知能の被告人 なさいという幻聴もあったと述べる一方で、横浜での生活が嫌になったため幻聴とは関係なく自分自身の考えとして通行人を刺して刑務所に入ろうと思ってナイフを買った旨を述べている。もっとも、境界知能の被告人は言語化 を不得手としていることからすると、被告人がどこまで自分の記憶を正確に供述できたのか疑問であり、横浜での生活が嫌になったなどの現実の葛藤と幻聴による影響をうまく区別できずに供述した可能性もあって、その供述の信用性は低い。そのような供述が信用できたとしても、B鑑定は、本件犯行当時における統合失調症の急性増悪によって、幻聴自体がそれに従わないといけないという病的な意味合いを 持つようになったところを重視しており、それ以前に、被告人が横浜での生活にストレスを抱えていたなどといった現実の葛藤は、幻聴の内容に影響を与えた程度であって、現実の葛藤によって被告人自身の考えとして刑務所に入りたいと考えていたとしても、本件犯行の直接の原因に余り関わっていないとしている。したがって、本件犯行以前のペティナイフを購入するなどの行動に被告人の正常な精神機能によ る部分が残っていたとしても、本件犯行当時の責任能力の判断を左右しない。 イ検察官は、①犯行直前まで、被告人は正常な精神機能により説明できない異常な言動はとっていないこと、②犯行時点においても、被告人は被害者の背後に回り込んだ上で、ぶつかるようにして相当強い力を込めて刺していることから、被告人は被害者が実体のある人である可能性及び周囲の状況を認識して状況に応じ た行動をとっていること、③被告人の幻覚の内容は脅迫的な内容や犯行の具体的な- 8 -行動を指示する内容ではないことから、被告人の犯行は幻覚の圧倒的な影響を受けていたとまではいえず、正常な精神機能による部分があったと主 ③被告人の幻覚の内容は脅迫的な内容や犯行の具体的な- 8 -行動を指示する内容ではないことから、被告人の犯行は幻覚の圧倒的な影響を受けていたとまではいえず、正常な精神機能による部分があったと主張する。 しかし、①については、B鑑定は、統合失調症の幻覚があっても、他の機能は通常保たれるため日常的な行動をとることはできるが、本件犯行については、その直前から病状が急激に悪化して急性増悪の状態で及んでおり、本件犯行以前の場面に おいて、例えば被告人が正常な精神機能により管理人等にうその説明をしていても、本件犯行当時の精神機能は本件犯行当時のものとして別に考えるべきであるとしており、これを正解しないものである。②については、検察官は、捜査段階において、被告人が被害者の背後に回り込んで刺したと供述し、自ら図面に経路を描いてその旨説明していることから信用できると主張する。しかし、被告人は、検察官の指摘 する供述調書においても、幻聴の指示により刺したことや刺した相手が幻覚として見えている女性である旨、公判供述と同趣旨の供述をしている上に、背後に回り込んだと述べている点については、被告人は、公判において、幻聴の指示により黒い人影を刺そうとした際、双方に動きがあったため結果として黒い人影の後ろに回っていたと述べており、被告人の前記特性も踏まえると、このことを的確に表現する のは難しく、同じように説明する意図で背後に回り込んだと表現したに過ぎない可能性がある。また、被告人が強い力で刺したことは、被告人が被害者のことを実体のある人である可能性を認識していたことに必ずしもつながらない。③については、B鑑定によれば、命令性幻聴というのは、従わなくてはいけないと感じることに病的意味合いがあるのであって、そのことは幻聴の内容が脅迫的であるか否かに 識していたことに必ずしもつながらない。③については、B鑑定によれば、命令性幻聴というのは、従わなくてはいけないと感じることに病的意味合いがあるのであって、そのことは幻聴の内容が脅迫的であるか否かによっ て左右されず、この点もB鑑定を正解しないものである。 ウ検察官は、被告人には本件犯行の前後で病識があるため本件犯行当時も病識があったと考えるのが自然であり、本件犯行当時の幻覚による影響の程度は、被告人の正常な精神機能が介在する余地のないほど強いものではないと主張する。 しかし、B鑑定によれば、幻聴等に対する病識があったとしても、病状が悪化す ればその認識が使えなくなることはあるとされている。そうすると、本件犯行当時、- 9 -統合失調症の急性増悪期にあった被告人が、幻聴や幻視の異常体験が非常に活発となる中で、通常は有していた病識を使えなくなっていた可能性は否定できない。 よって、検察官の主張は理由がない。 第4 結論したがって、本件公訴事実については犯罪の証明がないこととなるから、刑事訴 訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。 (求刑懲役6年、ペティナイフ1本の没収)令和5年6月13日東京地方裁判所刑事第7部 裁判長裁判官浅香竜太 裁判官鎌倉正和 裁判官村上亜優

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