平成19(わ)45 銃砲刀剣類所持等取締法違反、建造物損壊、殺人

裁判年月日・裁判所
平成20年3月6日 前橋地方裁判所
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判決文本文12,526 文字)

平成19年(わ)第45号,第87号,第146号銃砲刀剣類所持等取締法違反,建造物損壊,殺人被告事件(平成20年3月6日宣告)主文被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中320日をその刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は,指定暴力団A1会A2一家二代目A3組組長(肩書きは当時のもの。 以下同じ。)であるが,A2一家が指定暴力団B1組B2組B3会B4会B5総業と抗争中であった中,第1 二代目A3組若頭補佐C,同組組員D,A2一家A4組組長E,同組組長代行F,同組若頭G,同組本部長代行Hらと共謀の上,法定の除外事由がないのに,平成17年9月5日午後6時20分ころ,群馬県安中市a所在の住宅地内にある畑内において,同畑南側に隣接し,周囲に多数の住宅及び道路がある同市ab番地c所在のB5総業組長であるI方に向けて,所携の回転弾倉式けん銃で弾丸5発を発射し,もって不特定若しくは多数の者の用に供される場所に向けてけん銃を発射し,前記弾丸のうち3発をJ所有に係る木造瓦葺2階建居宅である前記I方(延床面積179.90平方メートル)北側2階の鼻隠及び軒天井等に命中させ,それぞれ穿孔を生じさせて損壊し(損害額合計24万3600円),もって他人の建造物を損壊した。 前記C,前記Dらと共謀の上,法定の除外事由がないのに,同日,前記I方北側畑内において,前記回転弾倉式けん銃1丁及びこれに適合するけん銃実包3個を共に携帯して所持した。 第2当時B5総業との関係を深めていたKを殺害しようと企て,二代目A3組内A5組組長L,二代目A3組内A6組組長M及び二代目A3組組員Nと共謀の 上,法定の除外事由がないのに, 同年10月13日午後9時ころ,不特定または多数の者の用に供される場所である群馬県高崎市d町e番地f所在のO北側駐車場内において 及び二代目A3組組員Nと共謀の 上,法定の除外事由がないのに, 同年10月13日午後9時ころ,不特定または多数の者の用に供される場所である群馬県高崎市d町e番地f所在のO北側駐車場内において,Lが,殺意をもって,同所に駐車中の普通乗用自動車に乗車していたK(当時56歳)に向け,いきなり所携の回転弾倉式けん銃で弾丸5発を発射し,その胸部,背部及び右顔面に命中させ,よって,そのころ,同所において,同人を右背面の右腋窩後端の盲管射創及び右側胸部の盲管射創のいずれか一方または両者によって生じた,主として,両肺,心臓及び大動脈の破裂に基づく失血により死亡させて殺害した。 同日,前記O北側駐車場内等において,前記第2の1の回転弾倉式けん銃1丁及びこれに適合するけん銃実包5個を共に携帯して所持した。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明) 弁護人は,判示第2の1の犯行(以下この補足説明で「本件」というときは同事件を指すものとする。)について,被告人がLらにけん銃を持たせてKのいた場所に向かわせた事実関係は認めつつも,Lは何もできないか,Kの足でも撃つ程度で,殺害はできるはずがないと思って送り出したものであるとの主張を前提とし,被告人の殺意及び殺人についての共謀の成立を否認し,被告人もこれに沿う旨公判廷で述べている。そこで,本件犯行について,前記のとおり,被告人の殺意及び殺人の共謀を認めた理由を補足して説明する。 関係各証拠によれば,本件犯行状況及びその犯行に至る経緯等について,以下の事実が争いなくまたは容易に認められる。 (1)KをめぐるA2一家及びB5総業の動きKは,かつてA1会A7一家に属するA8組の組長であったが,同一家がA2一家として組織を再編したころ,同一家と反目して同一家から破門・所払の 処分を受けた。 しかし ぐるA2一家及びB5総業の動きKは,かつてA1会A7一家に属するA8組の組長であったが,同一家がA2一家として組織を再編したころ,同一家と反目して同一家から破門・所払の 処分を受けた。 しかし,Kは,その所払の処分が解けないうちから,A2一家の対立組織であったB1組系の暴力団組織であるB5総業の関係者と関係を持ち,A2一家の縄張りである前橋市内でB5総業関係者と飲み歩くなど,暴力団社会では禁じられている行動を繰り返した。さらに,暴力団社会では,組織から破門処分を受けた者を他の組織が拾い上げることは禁じられていたのに,KがB5総業の組長であるIの舎弟になったという風聞が立った。 その上,B5総業は,平成17年8月上旬ころ,A2一家に対してKの借金を肩代わりするよう求め,それができなければ同人の破門処分を解除するよう要求するなど,同一家に対する挑発ととれる行動をとった。 被告人は,上記のようなKの行動等から,B5総業がKを利用してA2一家に因縁をつけ,同総業が前橋市内にも進出を企てているものと考えていた。 当時のA2一家は代表をPとし,複数の暴力団組織を束ねる上位団体であり,その傘下に二代目A3組をはじめ,A9組及びA4組など約10の組織があった。二代目A3組の組長は被告人であり,同組内に被告人の配下としてL,M,N等がいた。なお,Lは,被告人と同じ年齢で,十代のころからの幼なじみの関係にあり,かつて住んでいた岐阜県から被告人を頼って群馬県に移り住み,被告人に仕事面や金銭面での支援を受けながら生活していた者であり,少なくとも本件直前には犯罪事実で認定したような肩書きを許されていた(被告人はLと二代目A3組との暴力団組織上の関係を否定する趣旨の供述をしているが,詳細で信用できるL及びMの各公判供述等からすれば前記のように認定できる。)。 認定したような肩書きを許されていた(被告人はLと二代目A3組との暴力団組織上の関係を否定する趣旨の供述をしているが,詳細で信用できるL及びMの各公判供述等からすれば前記のように認定できる。)。 (2)A2一家とB5総業との抗争及びその前後における被告人の行動等そのような中,平成17年8月,A2一家A4組組長を始めとする同組組員らがKを襲撃してけがを負わせる事件を起こしていたところ,同年9月4日,A2一家傘下の組長であるQが,B5総業関係者との接触後,A2一家関係者 の前から姿を消すという事態が生じ,その後徐々にA2一家関係者らにも,QはB5総業関係者によって射殺されたことが判明してきた(以下この事件を「Q殺害事件」という。)。被告人は,このころ,Qが殺害された現場にKがいたらしいという噂を聞いていた。 そして,同月5日,被告人の指示を受けたA2一家傘下組織組員らが,I宅にけん銃を発射して弾丸を撃ち込むなどの判示第1の犯行(以下「I宅襲撃事件」という。)に及んだ。 同月6日ころ,Q殺害事件に関して,A2一家の上位団体であるA1会側と,B5総業の上位団体であるB1組側との間で,いわゆる手打ち(その時点以降はそれ以上問題を大きくしない旨の話合いと解される。)が行われた。なお,被告人は,手打ち成立後,配下組員に対し,報復行為に出ないよう指示したことはなかった。 同月8日,Q組長の葬儀が執り行われたが,そのころ,被告人の指示に基づいて,二代目A3組組員のCがけん銃を調達し,Nがこのけん銃及び実包十数発をCから受け取って預かり保管することとなった。 また,Q殺害事件後,二代目A3組組員の中には,同事件の報復のため,IやKらB5総業関係者の居場所を探し出そうとする者もいた。 被告人は,同月中旬ころ,Lから,「おれがやったろか。」などとして,I宅 また,Q殺害事件後,二代目A3組組員の中には,同事件の報復のため,IやKらB5総業関係者の居場所を探し出そうとする者もいた。 被告人は,同月中旬ころ,Lから,「おれがやったろか。」などとして,I宅襲撃事件後も改めてB5総業に対する何らかの報復行為を実行する意思のあることを伝えられた。 被告人は,同月中旬あるいは下旬ころ,Lとともに,B5総業関連箇所の様子をみるためB5総業事務所があるとされていた安中市方面に赴いたことがあった。また,このころ,被告人がLに対して,B5総業関係者が写った写真を見せたことがあった。Lは,これらを被告人が自分を報復の実行役と見ていると受け取った。 (3)本件犯行当日である平成17年10月13日における被告人及びA2一 家関係者の行動等ア被告人,N及びA2一家A9組組長Rらは,平成17年10月13日(以下時刻のみを記載した場合には断りのない限り同日を指すものとする。),千葉県内での行事に参加した後,数台の車両に分乗し,群馬県へと向けて帰路についた。 イRは,午後7時前ころ,知人のSから,群馬県高崎市内のOにKがいることを知らされ,午後7時過ぎころ,被告人に電話を架けてその旨報告した。 ウRからの連絡を受けた被告人は,午後7時15分ころ,A3組配下のMに電話を架けて,「OにKがいる。」,「Lと一緒に行ってくれ。」,「道具はLに持たせろ。」,「必ず連れて帰ってこい。」,「堅気に迷惑をかけるな。」,「道具のことはNから聞いてくれ。」と言い,Mから「分かりました。」との返答を受け,続いてその場にいたNに対し,「おまえに預けてある物をMに渡せるよう準備してくれ。」,「Mが取りに行くから。」と言って,かねてからNに保管させていたけん銃及び実包をMに渡すよう伝えた。 Mは,被告人から,けん銃の用法や,Kに対して加える 預けてある物をMに渡せるよう準備してくれ。」,「Mが取りに行くから。」と言って,かねてからNに保管させていたけん銃及び実包をMに渡すよう伝えた。 Mは,被告人から,けん銃の用法や,Kに対して加える報復行為の内容について,具体的な指示は受けなかったが,即座にK殺害を命じられたものと理解した。 被告人からの指示を受けたNは,当時同棲していた女性に電話を架け,けん銃及び適合実包の入った小包をMに渡すよう指示し,小包内にけん銃等が入っていることを知らないこの女性から小包を受領したMは,そのけん銃に適合実包5発を装てんした上,LとともにOに向かった。前記女性からMに小包が渡されたことは,Nを通じて被告人に報告された。 エM及びLは,午後8時30分ころ,プロレス興業が行われていたOの駐車場に到着し,堅気の人間に銃弾を当てて巻き込む事態は避けようと互いに確認した後,KがOのプロレス会場から出てくるのを見つけ,Kの跡をつけて殺害の機会をうかがい,午後9時ころ,Lが,Oの駐車場において,駐車中 の車両の運転席に座っていたKに対し,その頭部に向け1発の弾丸を,引き続きその身体に向け4発の弾丸を,立て続けに発射し,同人を殺害した。 Lの前記発砲状況を離れた場所から確認していたMは,午後9時過ぎころ,被告人に対し,Kをおそらく殺害した旨報告したが,これに対して被告人はMらを叱責するようなことはなかった。 同じころ,Rは,SとともにOにいたA9組組員から,Kが殺害されたことを知らされ,被告人に電話を架けてその旨報告した。 (4)本件犯行後のLらの状況被告人は,Lに対し,まず本件後程ない時期にNを介して現金50万円を渡し,本件後1週間ないし10日後ころに岐阜県内で直接現金200万円を渡すなどしたほか,平成17年11月からは毎月約20万円を送金していた。 また 対し,まず本件後程ない時期にNを介して現金50万円を渡し,本件後1週間ないし10日後ころに岐阜県内で直接現金200万円を渡すなどしたほか,平成17年11月からは毎月約20万円を送金していた。 また,本件後,被告人が逮捕されるに至るまで,M,Lらが二代目A3組内で処分を受けたということはなく,被告人がA1会から処分を受けたこともなく(かえって,その後A2一家の代表,さらに同一家初代総長に昇格している。),B1組から手打ち破りだなどと苦情が来たこともない。 検討(1)前記認定事実に基づく検討以上認定したところによれば,被告人は,暴力団組織の中での配下であるMに対し,前記のような電話での言葉により,対立する組織の関係者とされていたKの居場所を知らせ,同様の配下であり,Kに対する報復行為を自ら行う意思を表明していたLにけん銃を持たせてその場に行かせるよう指示し,この際に堅気の者には迷惑をかけないよう指示したが,けん銃の用法やKに対して行うべき行為の具体的内容は指示しておらず,その直後同様の配下であるNにも指示をして,かねて被告人の指示で保管させていたけん銃及び適合実包がMらの手に渡るよう手はずを整えたのであって,けん銃の殺傷能力の高さなども踏まえると,前記の指示行為自体が,K殺害の結果に結び付く危険性が高い性質 のものとみるのが自然かつ合理的である(この点,弁護人は,Mに対する短時間の電話のやり取りでは具体的なK殺害の指示は見て取れないなどと主張しているが,前記のような被告人の指示内容自体で十分な危険性をはらんでいるといえる以上,具体的な殺害に関する言葉の有無は弁護人が主張するほどには大きな意味を持たない。)。 そして,既に認定したような背景事情,特に,本件当時,KのA2一家に対する挑発ととれる行動等に端を発し,A2一家とB5総業と 害に関する言葉の有無は弁護人が主張するほどには大きな意味を持たない。)。 そして,既に認定したような背景事情,特に,本件当時,KのA2一家に対する挑発ととれる行動等に端を発し,A2一家とB5総業との間での組織的対立が深刻化しており,その中でQ殺害事件もあったことや,A2一家組員らの少なからぬ者が同事件に対する報復を考えるに至っていたこと,それに対して被告人が,報復行為をしないように明示的に指示したことはないこと,本件直後にMらを叱責することもなかったなどの被告人の反応,その後被告人がLに多額の現金を供与して厚遇し(Lは,法廷において,被告人から200万円を受け取った際,被告人から両手で自分の右手を握られ,「本当によくやってくれた,ありがとう。」と言われたとか,Lが逮捕された後は,毎月20万円をLの母親に届けて「一生おれが面倒見るから。」と言われたとまで証言しているが,この証言に特に疑義を差し挟む事情はない。),MやLらを処分していなかったことなども併せ考えれば,本件に先立って,Kを含めたB5総業関係者に対して,殺害行為を含む強力な報復行為を行う必要があることはA2一家内で共通認識となっており,被告人もそのような認識を抱いていたという推認を強める根拠となる。 以上検討した事情からすれば,被告人は,Mらに対する指示の際,Kに対する殺意を有していたと認められ,前記のようなその指示行為自体の性質や被告人とL,Mらとの関係等も併せ考慮すれば,被告人の指示行為はLによるK殺害の指示であり,Lがその指示に基づいてKの殺害を遂げたといえ,被告人を含めてK殺害の共謀が成立していたと認めることができる。 (2)被告人の供述及び弁護人の主張の検討 アこれに対し,被告人は,Lを低く評価しており,(指示をした際にも)殺害などできず,Kの足でも撃つ程度の 害の共謀が成立していたと認めることができる。 (2)被告人の供述及び弁護人の主張の検討 アこれに対し,被告人は,Lを低く評価しており,(指示をした際にも)殺害などできず,Kの足でも撃つ程度のことしかできないと考えていた旨供述し(これは,Lに対し,客観的には「殺せ。」と受け取れる指示をしたとしても,LにKの胴体等を狙って引き金を引く度胸などなく,意図的にKの身体を狙って撃つことがあったとしても,精々足を狙って撃つに止まると思っていたというような趣旨であろう。),弁護人も同供述を援用して,被告人には傷害致死の幇助犯が成立するにとどまる旨主張する。 しかし,Lの能力に関して被告人が指摘するのは,貸金業,ゲーム店及び飲食店等を任せて経済的援助をしてきたが,すべて中途半端に終わったなどという,Lの経営面や経済面における能力に関する事情にすぎず,同人が殺害の指示を受けたとしても実行に及ぶ度胸がないということを裏付ける特別な事情は見当たらない。また,被告人は,指示行為に関し,Lの度胸を試すためであった旨や,同人が何もできずに戻ってくることを期待し,それを同人と縁を切るきっかけにしようと思っていた旨供述しているが,この説明は,先に検討したような被告人の指示行為自体がはらんでいる危険性や,既に認定した当時の客観的状況からして明らかに不自然である。被告人がその後Lを厚遇していることとも整合しない。結局,Lが指示を実行できないと考えていたことに関する前記のような被告人の供述及びこれを基礎とした弁護人の主張は信用ないし採用できない。 イまた,弁護人は,暴力団社会の論理として,いったん手打ちが成立した以上それ以上抗争等を行ってはならず,この約束を破れば上部組織の体面をつぶすものであり,決して違反することはできない厳格なものであるなどと主張し,被告人も 社会の論理として,いったん手打ちが成立した以上それ以上抗争等を行ってはならず,この約束を破れば上部組織の体面をつぶすものであり,決して違反することはできない厳格なものであるなどと主張し,被告人も同旨の供述をしており,それぞれ,被告人がK殺害など指示するわけがないという主張の根拠としている。 しかし,被告人自身,LがKの足をけん銃で撃つかもしれないと思った旨,当公判廷で認めているところであるが,一方で,そのような事態になった場 合であっても手打ちに違反することに変わりはないとも認めており,この点に関する被告人の供述は矛盾している(なお,この点に関して,弁護人は,当時被告人はまさかLがKを殺害するとは思っていなかったことや,仮にLがKに何らかの危害を加えることになったとしてもLは組員でないので手打ちに反することにはならないと弁解できることなどを挙げて,被告人の指示行為が手打ちと矛盾しない旨主張している。しかし,被告人がLのK殺害がLの能力面からして実現しないと思っていた旨の供述ないし主張が信用ないし採用できないことは既に述べたとおりであるし,既に認定したような被告人とLとの関係や,Lが正式な組員でないとしても,被告人の指示に基づきLがKに危害を加えた事実は暴力団組織内においても全く意味を持たないとは想像できないこと等に照らして,前記の弁護人の主張は採用できない。)。 また,本件後に被告人が上位組織から処分を受けたとは認められないことなども,前記のような手打ちの存在を根拠とした被告人の供述ないし弁護人の主張と整合するとはいい難い。結局,この点に関する被告人の供述ないし弁護人の主張も信用ないし採用できない。 ウなお,弁護人は,いずれも被告人の供述を前提として,被告人がLとともに安中市に赴いたのはI宅襲撃事件が報道されておらずLも事件に疑問 する被告人の供述ないし弁護人の主張も信用ないし採用できない。 ウなお,弁護人は,いずれも被告人の供述を前提として,被告人がLとともに安中市に赴いたのはI宅襲撃事件が報道されておらずLも事件に疑問を抱いていたので確認に行ったに過ぎない旨,被告人がLにB5総業関係者の写真を見せたのは既に手打ちが終わって不要なものであるが一応関係者はこういう顔をしているくらいの趣旨である旨,被告人が本件後Lに金銭を交付しているのはLに身辺整理をして一刻も早く警察に出頭するためにその間生活費援助の趣旨で交付したものである旨など主張している。しかし,いずれの主張も,内容自体または当時のA2一家とB5総業との抗争状況等の客観的事実に照らして不自然であり,前記の認定を覆すようなものではない。 エその他弁護人の主張や被告人の供述を検討しても,前記認定を覆すに足りるものは見当たらない。 (法令の適用)該当罰条判示第1の1の行為のうちけん銃発射の点刑法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31条1項,3条の13建造物損壊の点刑法60条,260条前段判示第1の2及び第2の2の各行為のうち各けん銃加重所持の点いずれも刑法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項,1項前段,3条1項各けん銃実包所持の点いずれも刑法60条,平成19年法律第120号による改正前の銃砲刀剣類所持等取締法31条の8,3条の3第1項(刑法6条,10条により,軽い行為時法の刑による)判示第2の1の行為のうち殺人の点刑法60条,199条けん銃発射の点刑法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31条1項,3条の13科刑上一罪の処理判示第1の1,第1の2,第2の1及び第2の2についていずれも刑法54条1項前段,10条(第1の1については重いけん銃発射罪の刑で,第1の2 所持等取締法31条1項,3条の13科刑上一罪の処理判示第1の1,第1の2,第2の1及び第2の2についていずれも刑法54条1項前段,10条(第1の1については重いけん銃発射罪の刑で,第1の2及び第2の2については重いけん銃加重所持罪の刑で,第2の1については重い殺人罪の刑で,それぞれ1罪として処 断)刑種の選択判示第1の1について有期懲役刑判示第2の1について無期懲役刑併合罪加重刑法45条前段,46条2項本文(判示第2の1の罪について無期懲役に処すので他の罪について刑を科さない。)未決勾留日数の算入刑法21条訴訟費用の不負担刑訴法181条1項ただし書(量刑の理由) 事案の概要本件は,暴力団組織であるA2一家二代目A3組組長であった被告人が,A2一家関係者らと共謀の上,①対立暴力団組織であるB5総業の組長であるI方にけん銃を発射して同人方を損壊した事実(判示第1の1),その犯行に関してけん銃1丁及びこれに適合する実包を所持した事実(判示第1の2),②公共の場においてB5総業関係者と目されていたKをけん銃で射殺した殺人,けん銃発射の事実(判示第2の1),それらの犯行に関して判示第1とは別のけん銃1丁及びこれに適合する実包を所持した事実(判示第2の2。以下判示第2の1と合わせて「K殺害等事件」という。)から成る事案である。 各事件に至る経緯・動機Kは,A2一家から破門されたことを契機に,同一家と対立関係にあったB5総業と関係を深め,同総業組長の舎弟になったとの風聞も立ったことなどから,A2一家A4組によって襲撃されてけがを負わされ,これに対し,平成17年9月4日ころには,B5総業関係者によってA2一家の組長が殺害されたとされるQ殺害事件が敢行された。 このような中,被告人を中心とする 家A4組によって襲撃されてけがを負わされ,これに対し,平成17年9月4日ころには,B5総業関係者によってA2一家の組長が殺害されたとされるQ殺害事件が敢行された。 このような中,被告人を中心とするA2一家側は,同月5日,A2一家の体面 を保つため,同総業に対して報復なり威嚇なりをしておく必要があるなどとしてI宅襲撃事件を敢行した。 しかし,その後も,A2一家内においては,未だ報復としては十分でないという雰囲気があったところ,A2一家関係者が,同年10月13日,偶然,OにいたKを発見し,被告人にその情報が伝えられたことから,同人の指示のもと,Q殺害事件に対する更なる報復を遂げるとともに,対立抗争を激化させた原因となったKに私的な制裁を加え,ひいてはA2一家の権勢を保持して組織の維持を図る目的でK殺害等事件が敢行された。 以上のとおり,本件各事件は,相次いだ暴力団抗争の一環として,暴力団特有の組織的かつ暴力的思想に基づき敢行されたものであり,その経緯及び動機に酌量すべき点は乏しく,厳しい非難に値する。 K殺害等事件について(1)犯行態様実行犯であるLは,Kに対し,至近距離から5発もの弾丸を立て続けに発射しており,その犯行態様は必殺を期した残虐なもので,強固な殺意に基づいた冷酷非道な犯行である。 また,そもそも犯行場所である駐車場は,公共施設に併設された不特定かつ多数の人が利用する場であり,現にプロレス興行が終了して見物を終えた観客が周辺にいたのであって,Lは,介添役のような立場の共犯者Mが今なら殺れやる旨言ったのに対し,一般人の巻き添えを極力防ごうと考えてこれを拒否し,さらにKの跡をつけ,Kが1人で車に乗り込むところを見計らって犯行に及んではいるものの,それでもなお跳弾等による人身被害の危険があったことは払拭できない上,Lは えを極力防ごうと考えてこれを拒否し,さらにKの跡をつけ,Kが1人で車に乗り込むところを見計らって犯行に及んではいるものの,それでもなお跳弾等による人身被害の危険があったことは払拭できない上,Lは,それまでKと直接会ったことはなかったところ,以前に見た写真の印象や,プロレス会場から出てきた人物をMからKだとして指し示されたこと,発射直前において「Kさん」と声を掛けたのに対してKが無言で振り返り目があったことのみを頼りとして,確信もないままにKであると断定 して発射行為に及んでおり,けん銃を撃ち込む相手が真実K本人であるかどうかの確認もずさんというほかはない。本件は,無関係な者を巻き添えにする危険性が高いものであったのであり,目的実現のためには時と場所を選ばず,周囲の者に対する影響を無視した傍若無人の犯行ともいえる。 また,本件は,被害者の居場所が判明すると,被告人において,実行役であるLや運転手役等であるMらを手配した上,前記Nに保管させていたけん銃等がLらの手に渡るよう指示するなどして,速やかに実行されており,高度の組織性が認められる。 (2)結果・処罰感情この事件によって,1人の生命が奪われており,もはやこの結果はどのように償っても回復不可能であるし,前記のように弁解の余地もなく立て続けに5発の弾丸を浴びせられて絶命したKの肉体的,精神的苦痛は察するに余りある。 加えて,本件発射行為によって発生した公共の危険も,その発射弾数や当時における前記の周辺状況からして極めて大きく,結果は重大というほかはない。 Kの遺族も被害者を失った悲痛な心情を供述し,「やったことに見合った厳しい処罰を与えてほしい。」として,厳罰を求めている。 I宅襲撃事件の態様,結果実行犯は,周囲に多数の住宅が建ち並ぶ住宅街に隣接する畑において,けん銃に実包を を供述し,「やったことに見合った厳しい処罰を与えてほしい。」として,厳罰を求めている。 I宅襲撃事件の態様,結果実行犯は,周囲に多数の住宅が建ち並ぶ住宅街に隣接する畑において,けん銃に実包をこめて所持し,その畑から5発もの弾丸をI宅に向け発射したもので,実に危険性が高く,その態様は悪質極まりない。また,Qとの連絡が途絶えたとの情報を入手した後速やかに共犯者らが集められるとともにけん銃が用意されており,暴力団の組織性を活かした手際のよい犯行である。本件犯行の結果,I宅に24万円余りの財産的損害が発生し,それ自体軽視し得ない上,周辺住民らに強い不安感を感じさせており,結果は重い。 両事件における共犯者間での被告人の責任被告人は,二代目A3組組長という本件各事件の共犯者らの中で最上位の立場 にあって,I宅襲撃事件において,犯行を決意した上,A4組関係者らを含む各共犯者に各役割を指示し,K殺害等事件においても,犯行を決意した上,配下の者である共犯者らに,Kの居場所を伝え,各役割を指示したのであり,いずれの事件についてもその首謀者として犯行全般を統括したといえ,その責任は,全共犯者中で最も,そして格段に重い。 その他の刑事責任を重くする方向の事情被告人は,Lに逃走資金を援助して逮捕を免れさせるなどしており,K殺害等事件の犯行後の情状も悪質である。 また,被告人には,21歳のころにA3組組員となって以来,一時は破門されながらも二代目A3組組長に就任し,平成17年には,組員総勢100名を数えたA2一家の代表にまでなったことからすると,暴力団の環境に深くなじんでいることが認められる上,約1か月の間に立て続けに,そして躊躇なく本件各事件に及んだことからしても,その規範意識には極めて大きな問題がある。 被告人のために酌むべき事情他方 の環境に深くなじんでいることが認められる上,約1か月の間に立て続けに,そして躊躇なく本件各事件に及んだことからしても,その規範意識には極めて大きな問題がある。 被告人のために酌むべき事情他方,Kにも,暴力団社会に身を置き,暴力団組織内でのしきたり等については熟知していたにもかかわらず,A2一家に対してこのしきたりに反する挑発的行動をとり続け,一連の抗争事件を激化させK殺害等事件に至る原因を敢えて自ら作り出していた面は否定できない。 また,被告人には,MにK等殺害事件を指示するに際し,一般人に迷惑をかけないよう付言しており,これがLが実行に際して一般人を巻き添えにする危険が多少なりとも減じるように,Kが1人で車に乗り込むところという状況を選んでけん銃を発射してはいることに影響している可能性は否定できないこと,現時点で示談は未成立ではあるものの,被告人からKの遺族に見舞金として1000万円を支払う意思は表明されていること,被告人は,K殺害等事件についての殺意と殺人の共謀の成立は争っているものの,基本的事実関係自体は概ね認め,I宅襲撃事件については事実を認めていること,賭博罪及び入札妨害罪による前科は あるが,昭和63年の罰金刑及び平成8年10月の執行猶予付きのものであり,服役歴はないこと,妻及び幼い子がいること,情状証人として実弟が出廷して援助を約束していることなどの酌むべき事情も認められる。 しかし,このような被告人のために酌むべき事情を考慮してもなお,前記のようなK殺害等事件の極めて高い危険性や,被告人の果たした主導的役割等に鑑みれば,被告人には主文のとおり無期懲役刑を科するのが相当である。 (求刑無期懲役)(公判出席検察官石井寛也私選弁護人高橋勉[主任],同松本和英,同山田有宏)平成20年3月6日前橋地方裁判所 れば,被告人には主文のとおり無期懲役刑を科するのが相当である。 (求刑無期懲役)(公判出席検察官石井寛也私選弁護人高橋勉[主任],同松本和英,同山田有宏)平成20年3月6日前橋地方裁判所刑事部裁判長裁判官久我泰博裁判官三上潤裁判官武村重樹

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