主文 1 被告人Aを懲役2年に処する。 同被告人に対し,この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 2 被告人Bを懲役1年6月に処する。 同被告人に対し,この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 3 被告人Cを懲役1年に処する。 同被告人に対し,この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予し,その猶予の期間中同被告人を保護観察に付する。 4 被告人Dを懲役1年に処する。 同被告人に対し,この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)第1 被告人Aは,弁護士として,長崎市a町b番c号dマンションe号に法律事務所を設けていたものであるが,別紙犯罪事実一覧表1(略)記載のとおり,平成11年7月7日ころから同年12月16日ころまでの間,前後7回にわたり,北九州市f区gh丁目i番j号F株式会社事務所ほか3か所において,いずれも弁護士でなく報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務の周旋をすることを業としていた被告人B,被告人C,被告人D及びEから,依頼者としてGほか3名の紹介を受け,前記GがHに対して損害賠償等を求める訴訟事件等合計10件の法律事件を受任し,もって,弁護士でなく報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務の周旋をすることを業としていた者から事件の周旋を受けた。 第2 被告人B,被告人C及び被告人Dは,Eと共謀の上,いずれも弁護士でなく,かつ,法定の除外事由がないのに,報酬を得る目的で,別紙犯罪事実一覧表2(略)記載のとおり,平成11年6月下旬ころから同年12月16日ころまでの間,前後14回にわたり,北九州市f区gh丁目i番j号F株式会社事務所ほか4か所において,同一覧表「勧誘者」欄記載の各勧誘者がそれぞ 記載のとおり,平成11年6月下旬ころから同年12月16日ころまでの間,前後14回にわたり,北九州市f区gh丁目i番j号F株式会社事務所ほか4か所において,同一覧表「勧誘者」欄記載の各勧誘者がそれぞれ同一覧表「依頼者」欄記載の各依頼者と面談して,当時弁護士であった被告人Aへの依頼を勧誘し,そのころ各依頼者をして同一覧表「周旋をした法律事務の内容」欄記載の訴訟事件等の法律事件合計10件を被告人Aに委任させ,もって,弁護士でないのに,報酬を得る目的で,法律事件に関して法律事務の周旋をすることを業とした。 (証拠の標目)(略)(法令の適用) 1 被告人Aについて罰条第1の1ないし10 弁護士法77条,27条前段(72条後段)刑種の選択第1の1ないし10 懲役刑を選択併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い第1の10の罪の刑に法定の加重)刑の執行猶予刑法25条1項 2 被告人B,被告人Dについて罰条刑法60条,弁護士法77条,72条後段刑種の選択懲役刑を選択刑の執行猶予刑法25条1項 3 被告人Cについて罰条刑法60条,弁護士法77条,72条後段刑種の選択懲役刑を選択刑の執行猶予刑法25条2項保護観察刑法25条の2第1項後段(量刑の理由) 1 本件は,弁護士であった被告人Aが,平成11年7月から同年12月までの間,前後7回にわたり,いずれも弁護士でなく報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務の周旋をすることを業としていた被告人B,被告人C,被告人D及びEから,依頼者として4名の紹介を受け,合計10件の 間,前後7回にわたり,いずれも弁護士でなく報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務の周旋をすることを業としていた被告人B,被告人C,被告人D及びEから,依頼者として4名の紹介を受け,合計10件の法律事件を受任し,もって,被告人Aは報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務の周旋をすることを業としていた者から事件の周旋を受け(第1),被告人B,被告人C及び被告人Dは,同年6月から同年12月までの間,前後14回にわたり,依頼者と面談して被告人Aへの依頼を勧誘し,前記10件の法律事件を同人に依頼させ,もって,報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務の周旋をすることを業とした(第2),といういずれも弁護士法違反の事案である。 2 本件は,被告人Aと被告人Bが中心となって,各自の経済的利欲のために,判示のとおりの各犯行に及んだものであるが,法律事件の周旋をする者が被告人Bのみでは多額の利益をあげられないとの考えから,被告人C,被告人D及びEをも仲間に引き入れた上,被告人Aの法律事務所での各肩書を表示した名刺を作成したり,辞令を交付するなど,正規の法律事務所職員であることを装うなどして犯行に及んだもので,巧妙な組織的・計画的犯行である。前示のとおり,公訴提起されているものだけでも,前後7回にわたり,合計10件もの法律事件を被告人Aが受任するに至っている上,平成12年1月20日,被告人Aが長崎県弁護士会から退会命令を受け,弁護士資格を喪失したことにより,その全ての事件について,各依頼者に新たな代理人の選任などの対応を余儀なくさせているのであって,その結果は極めて重大である。殊に,近年,司法的救済の重要性が認識され,国民の司法に対する期待が高まる中で,このような司法への信頼を踏みにじる犯行を敢行したことに照らせば,一般予防の見地からも厳しい非難を免れ 極めて重大である。殊に,近年,司法的救済の重要性が認識され,国民の司法に対する期待が高まる中で,このような司法への信頼を踏みにじる犯行を敢行したことに照らせば,一般予防の見地からも厳しい非難を免れ難いところである。 3 次に,個別の情状をみるに,被告人Aは,平成10年暮れころ以降,多額の負債を抱える一方で受任する事件がなく,経済的に困窮する中で,本件犯行に至ったものであるが,同人がそのように経済的に困窮するに至ったのは,同人の不誠実な訴訟活動など,偏に同人の責めに帰せられるべきものであり,弁護士としての自覚の片鱗さえ窺うことのできないその動機にはもとより酌量すべき余地など全くないといわざるを得ない。当時弁護士資格を有していた被告人Aは,いうまでもなく本件犯行に不可欠な立場にある上,全ての事件について,依頼者と面談して同人らを信用させ,被告人Aへの委任を決断させているものであり,被告人Bと共に本件犯行において中心的役割を果たしたものである。また,受任した事件について,訴えを提起するなどの訴訟活動を行っていたとはいうものの,被告人A作成名義の訴状などを見る限り,その質は一般の水準に比し著しく低いといわざるを得ないのであって,依頼者の期待に応えていたとは到底いうことはできない。加えて,意図していたものでないとはいえ,被告人Aが退会命令を受けたことにより,前記の如く,各依頼者に新たな代理人の選任などの対応を余儀なくさせている点も,被告人Aの責めに帰せられるべきものである。 以上に照らせば,同人の刑事責任は重く,実刑に処することも十分に考えられるところである。 しかしながら,同人は捜査段階から一貫して本件犯行を認め,被害弁償の意思を示し,当公判廷においても一応反省の情を示していること,被告人Cの出捐により被告人A名義で依頼者の1人に対して1 ころである。 しかしながら,同人は捜査段階から一貫して本件犯行を認め,被害弁償の意思を示し,当公判廷においても一応反省の情を示していること,被告人Cの出捐により被告人A名義で依頼者の1人に対して10万円の弁償をしていること,同人にはもとより前科前歴はなく,昭和49年に長崎県弁護士会に登録して以来,I市役所生活相談室の担当弁護士として,平成6年に解任されるまでの間,市民相談を担当するなどしてきたこと,別居していた同人の妻が情状証人として出廷し,2人の娘と共に,被告人Aを受け入れる意向を表明していること,同人の身柄拘束が既に逮捕以来約7か月間に及んでいることなど,同人のために酌むことのできる事情も認められる。 そこで,これらの事情を総合考慮し,被告人Aについては,主文の刑に処した上,今回に限り,法定の最長期である5年間その刑の執行を猶予して,自力更生の機会を与えることとした。 4 被告人Bは,自ら被告人Aに訴訟事件を委任していたことから,同人が平成10年12月に業務停止2月の懲戒処分を受けたことを知りながら,自らの経済的利欲のため,本件犯行を計画し,名刺作成や辞令交付に始まり,全ての法律事件について依頼者の勧誘に関わるなど,被告人Aと共に本件犯行において中心的な役割を果たした者であり,その刑事責任は当然のことながら軽くないというべきである。 他方,被告人Bは,捜査段階から一貫して本件犯行を認め,一部の依頼者に対して直接あるいは謝罪文を送ることにより謝罪した上,20万円を贖罪寄付するなど,反省の情が認められること,被告人Bには前科前歴がなく,逮捕以来約4か月間にわたり初めての身柄拘束を受けていること,同人の更生については,情状証人として出廷した内縁の妻の協力が期待できること,被告人Bは本件による保釈中に不動産会社に就職していることなど, 以来約4か月間にわたり初めての身柄拘束を受けていること,同人の更生については,情状証人として出廷した内縁の妻の協力が期待できること,被告人Bは本件による保釈中に不動産会社に就職していることなど,同人のために酌むことのできる事情も認められる。 そこで,これらの事情を総合考慮し,被告人Bについては,主文の刑に処した上,今回に限り,その執行を猶予して,自力更生の機会を与えることとした。 5 被告人Cは,平成11年1月14日,詐欺罪により懲役2年6月,4年間執行猶予の判決を受け(同月18日確定),厳に身を慎むべき期間内であったにもかかわらず,大学の先輩である被告人Bから本件への加担を持ちかけられるや,自らそれに応じたのみならず,被告人D及びEをも犯行に加担させ,同判決のわずか半年後から,次々に,合計5件の法律事件の周旋を行っているのであって,その刑事責任は決して軽くなく,実刑に処することも十分に考えられるところである。 しかしながら,被告人Cは,当公判廷では本件犯行を認め,依頼者らに対して合計65万円の弁償をした上,50万円を贖罪寄付するなど,反省の情が認められること,一部の依頼者からは嘆願書の作成を受けたとみられること,逮捕以来約4か月間にわたり身柄拘束を受けたこと,内縁の妻が情状証人として出廷し,今後の監督を約していること,不動産業を実質的に経営しており,正業に就いていることなど,被告人Cのために酌むことのできる事情も認められる。 そこで,これらの事情を総合考慮し,被告人Cについては,主文の刑に処した上,その情状に特に酌量すべきものがあると認め,法定の最長期である5年間その刑の執行を猶予し,その間保護観察に付して,自力更生の機会を与えることとした。 6 被告人Dは,公訴提起されている事件のうち自ら周旋したものは1名の依頼者との関 と認め,法定の最長期である5年間その刑の執行を猶予し,その間保護観察に付して,自力更生の機会を与えることとした。 6 被告人Dは,公訴提起されている事件のうち自ら周旋したものは1名の依頼者との関係に止まっているものの,50万円もの多額の報酬を現に受け取っているのであって,違法性の認識に欠けるところがあったとは考え難いにもかかわらず,当公判廷においては殊更に自己の罪責を軽減しようとするような態度が見られ,真摯に反省しているとは認めがたいのであって,その刑事責任は決して軽くない。 しかしながら,前示のとおり,被告人Dが現に周旋したのは1名の依頼者との関係に止まり,共犯者の中では関与の度合いが最も低いこと,前記の依頼者に対しては50万円を弁償し,同人から嘆願書を作成してもらったとみられること,逮捕以来約4か月間の身柄拘束を受けたこと,内縁の妻が情状証人として出廷し,今後の監督を約していることなど,被告人Dのために酌むことのできる事情も認められる。 そこで,これらの事情を総合考慮し,被告人Dについては,主文の刑に処した上,今回に限り,その執行を猶予して,自力更生の機会を与えることとした。 7 よって,主文のとおり判決する。 (検察官壬生隆明,私選弁護人林健一郎〔被告人A〕,同林正孝〔被告人B〕,同田中義信〔被告人Cの主任,被告人D〕,同徳永響〔被告人C〕各出席)(求刑-被告人Aに対し懲役2年,被告人Bに対し懲役1年6月,被告人C及び被告人Dに対し各懲役1年)平成13年11月5日 福岡地方裁判所第1刑事部裁判長裁判官谷敏行裁判官家令和典裁判官古庄研 裁判長 裁判官 谷敏行 裁判官 家 令和典 裁判官 古庄研
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