平成24(ワ)25506 商標権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年12月4日 東京地方裁判所
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判決文本文16,029 文字)

平成26年12月4日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成24年(ワ)第25506号商標権侵害差止等請求事件口頭弁論の終結の日平成26年11月10日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり主文 1 被告は,原告Aに対し,29万7240円及びうち8480円に対する平成24年2月11日から,うち3万8760円に対する平成24年10月28日から,うち25万円に対する平成25年5月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告有限会社マス大山エンタープライズに対し,5万7400円及びうち2万6040円に対する平成24年2月11日から,うち3万1360円に対する平成24年10月28日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告国際空手道連盟極真会館に対し,100万円及びこれに対する平成24年2月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告A及び原告有限会社マス大山エンタープライズのその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は各自の負担とする。 6 この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,原告Aに対し,705万円及びうち93万円に対する平成24年2月11日から,うち112万円に対する平成24年10月28日から,うち5 00万円に対する平成25年5月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告有限会社マス大山エンタープライズに対し,61万5000円及びうち27万9000円に対する平成24年2月11日から,うち33万6000円に対する平成24年10月28日から各支払済みまで年5分の割合によ 限会社マス大山エンタープライズに対し,61万5000円及びうち27万9000円に対する平成24年2月11日から,うち33万6000円に対する平成24年10月28日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 主文第3項同旨第2 事案の概要本件は,商標権を有する原告A(以下「原告A」という。)及び原告有限会社マス大山エンタープライズ(以下「原告会社」という。)が,それぞれ,被告が別紙被告標章目録1-1ないし4-4記載の標章(以下「被告標章」という。)を使用して空手を教授する道場を運営し,空手の興行たる大会を開催したことは商標権を侵害する行為であると主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償金の支払を求め,さらに,被告との契約により「極真」等の標章の使用を許諾した原告国際空手道連盟極真会館(以下「原告極真会館」という。)が,被告に対し,契約違反に基づく違約金の支払を求める事案である。 1 前提事実(以下の各事実については,当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。)(1) 原告Aは,以下の商標権を有している。 ア本件商標権1(以下これに係る登録商標を「本件商標1」という。)出願年月日平成16年10月15日登録年月日平成21年2月27日登録番号第5207705号指定商品・役務第25類被服,空手衣第41類空手の教授,空手の興行の企画・運営又は開催登録商標別紙原告商標目録1記載のとおり イ本件商標権2(以下これに係る登録商標を「本件商標2」という。)出願年月日平成16年10月15日登録年月日平成21年2月27日登録番号第5207706号 イ本件商標権2(以下これに係る登録商標を「本件商標2」という。)出願年月日平成16年10月15日登録年月日平成21年2月27日登録番号第5207706号指定商品・役務第25類被服,空手衣第41類空手の教授,空手の興行の企画・運営又は開催登録商標別紙原告商標目録2記載のとおりウ本件商標権3(以下これに係る登録商標を「本件商標3」という。)出願年月日平成16年10月15日登録年月日平成21年12月4日登録番号第5284760号指定商品・役務第25類被服,空手衣第41類空手の教授,空手の興行の企画・運営又は開催登録商標別紙原告商標目録3記載のとおり(2) 原告会社は,以下の商標権(以下「本件商標権4」といい,これに係る登録商標を「本件商標4」という。また,本件商標権1ないし4を併せて「本件商標権」といい,本件商標権に係る登録商標を併せて「本件各商標」という。)を有している。 出願年月日平成15年7月17日登録年月日平成22年10月22日登録番号第5362507号指定商品・役務第41類空手の教授,空手の興行の企画・運営又は開催登録商標別紙原告商標目録4記載のとおり(3) 原告極真会館は,原告Aが代表を務める権利能力なき社団である。原告Aは,平成6年4月26日に死亡したBの子であり,相続によりBの一切の 権利義務を単独で承継した者である。 (4) 原告極真会館と被告は,平成16年2月29日,被告を国内本部直轄道場(以下「直轄道場」という。)の責任者とする国内本部直轄道場規約書(以 権利義務を単独で承継した者である。 (4) 原告極真会館と被告は,平成16年2月29日,被告を国内本部直轄道場(以下「直轄道場」という。)の責任者とする国内本部直轄道場規約書(以下「本件誓約書」という。)を取り交わした。本件誓約書には,規約として,以下の記載がある。 ア直轄道場は,各道場の名称として「極真会館宗家道場」を表示,使用することとし,同名称以外の道場名の表示,使用を希望する場合には事前に書面による宗家(本部)の許可を得なければならない(11条)。 イ直轄道場は,「B」及びその略称,「極真」,「極真会」,「極真会館」,「国際空手道連盟極真会館」,「極真マーク(観空マーク,連盟マーク,胸章等)」,その他「B」或いは「極真」に関わる商標,マーク,標識,ロゴ,スローガン,用語,及びBの氏名,写真,略称,略語等の「B」或いは「極真」を表象するマーク(以下「極真マーク等」という。)を宗家(本部)の許諾なしに無断で使用できないものとする(13条1項)。 ウ直轄道場又は責任者がこの規約書に違反したときは,宗家(本部)は,100万円の違約金を徴することがあるものとする(18条)。 エ本規約に基づく直轄道場の許可が期間満了又は取消しにより失効した場合,本規約により当該直轄道場に許諾された名称及び極真マーク等の使用権その他の権利は全て失効し,以後直轄道場は,極真に関わる名称及び極真マーク等を一切使用できなくなるものとする(20条)。 (5) 被告は,原告極真会館の石神井公園道場(以下被告が別途営む空手道場「South大泉道場」と併せて「被告道場」という。)として空手道場を営んでいたが,遅くとも平成22年4月に原告極真会館を退館し,本件誓約書を失効させた。被告は,その後,平成25年4月こ む空手道場「South大泉道場」と併せて「被告道場」という。)として空手道場を営んでいたが,遅くとも平成22年4月に原告極真会館を退館し,本件誓約書を失効させた。被告は,その後,平成25年4月ころまで,業として,以下のとおり,被告標章を使用して被告道場を継続して営んでいた。 ア空手の教授① その教授を受ける者の利用に供する道着に別紙被告標章目録4-1記載の標章(以下「被告標章4-1」という。)を付し,② ブロック塀に掲げた被告道場の看板に別紙被告標章目録3-1記載の標章(以下「被告標章3-1」という。)及び同目録4-2記載の標章(以下「被告標章4-2」という。)を付し,③ 被告道場の入口扉の上に掲げた被告道場の看板に別紙被告標章目録3-2記載の標章(以下「被告標章3-2」という。)を付し,④ 被告道場に別紙被告標章目録1-1記載の標章(以下「被告標章1-1」という。)を付した旗を掲示し,⑤ 空手の教授に関する広告,価格表,取引書類に本件各商標又はこれに類似する商標を使用するために,被告標章1-1及び別紙被告標章目録3-3記載の標章(以下「被告標章3-3」という。)を付した封筒を所持し,⑥ 被告が管理する被告道場ホームページのウェブサイト(「(URLは省略)」。以下「被告ホームページサイト」という。)に,別紙被告標章目録1-2記載の標章(以下「被告標章1-2」という。),同目録2記載の標章(以下「被告標章2」という。),同目録3-4記載の標章(以下「被告標章3-4」という。)及び被告標章4-1を付し,⑦ 被告が管理する被告道場オフィシャルブログのウェブサイト(「(URLは省略)」。以下「被告ブログサイト」という。)に,被告標章3-3を付したものを用いて空手の教授を行った。 また,被告は,被告道場 が管理する被告道場オフィシャルブログのウェブサイト(「(URLは省略)」。以下「被告ブログサイト」という。)に,被告標章3-3を付したものを用いて空手の教授を行った。 また,被告は,被告道場の看板に原告極真会館の名称を表示した印影を付し,Bが生前創作し空手の教授に際して使用した道場訓を記した稽古出席簿を被告道場の道場生に発行し,被告道場(旗を含む。),封筒及び大会用パンフレット並びに被告ホームページサイト,被告ブログサイトにてBの氏名, 肖像写真やBが生前創作し空手の教授に際し使用した観空マーク,連盟マーク,道場訓及び標語等を使用していた(甲6の1ないし7の2,9,10,12,13)。 イ空手の興行の企画,運営又は開催(ア) 被告は,平成23年11月23日に東京都練馬区所在の光が丘体育館において「第一回空手道選手権東京大会」を開催するに際し,その大会用パンフレットに,被告標章1-1,3-3,3-4,4-1及び別紙被告標章目録4-3記載の標章(以下「被告標章4-3」という。)を付したものを頒布した。 (イ) 被告は,平成24年10月28日に東京都練馬区所在の光が丘体育館において「第二回空手道選手権東京大会」を開催するに際し,①大会用パンフレットに,被告標章3-3,3-4,4-1及び別紙被告標章目録4-4記載の標章(以下「被告標章4-4」という。)を付したものを頒布し,②大会用旗に被告標章1-1を付して使用し,③大会用賞状に,被告標章3-4及び「B」との名称を付したものを頒布した。 (6) 本件各商標と被告標章の対比被告標章1-1及び被告標章1-2は,本件商標1に類似し,被告標章2は,本件商標2に類似し,被告標章3-1ないし被告標章3-4は,本件商標3に類似し,被告標章4-1ないし被告標章4-4は,本件商標4に 告標章1-1及び被告標章1-2は,本件商標1に類似し,被告標章2は,本件商標2に類似し,被告標章3-1ないし被告標章3-4は,本件商標3に類似し,被告標章4-1ないし被告標章4-4は,本件商標4に類似する。 (7) 本件商標権の指定役務との対比被告による空手の教授は,本件商標権の指定役務である第41類「空手の教授」に当たり,被告による「第一回空手道選手権東京大会」及び「第二回空手道選手権東京大会」の開催は,本件商標権の指定役務である第41類「空手の興行の企画・運営又は開催」に当たる。 (8) 原告らの請求原告らは,平成24年2月10日,被告に対し,被告標章の使用差止め等及 び損害賠償を求めた。 2 争点(1) 本件各商標の商標登録が商標登録の無効の審判により無効にされるべきものと認められるか(争点1)(2) 被告標章が普通名称又は慣用商標であり商標権の効力が及ばない商標に当たるか(争点2)(3) 原告らの本訴請求が権利の濫用に当たるか(争点3)(4) 本件誓約書による合意が合意解除された又は錯誤によるものであるか(争点4)(5) 原告Aの損害(争点5)(6) 原告会社の損害(争点6) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(本件各商標の商標登録が商標登録の無効の審判により無効にされるべきものと認められるか)について(被告の主張)Bが昭和39年に創設した国際空手道連盟極真会館は,Bが平成6年4月26日に死亡した後に内部分裂しており,原告Aが代表を務める原告極真会館は,「宗家」と呼ばれる極真会館諸派の一つに過ぎない。本件各商標は,Bが創設した国際空手道連盟極真会館から分裂した諸派全体を示すものとして需要者に認識されており,原告極真会館 表を務める原告極真会館は,「宗家」と呼ばれる極真会館諸派の一つに過ぎない。本件各商標は,Bが創設した国際空手道連盟極真会館から分裂した諸派全体を示すものとして需要者に認識されており,原告極真会館等の特定の会派を示すものとして独占的に需要者に認識されているものではない。本件各商標の商標登録は,極真会館や極真のブランドネームを独占することにより他の会派の道場の活動を妨害し,ロイヤリティ名目で金銭を請求する等の不正の目的でなされたものであるから,本件各商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標(商標法4条1項7号)及び他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であって,不正の目的 をもって使用をするもの(同項19号)に当たる。 (原告らの主張)原告極真会館は,Bが創設した国際空手道連盟極真会館と同一の団体であり,被告の主張によっても,原告極真会館は分裂した国際空手道連盟極真会館の一派なのであるから,本件各商標は他人の業務に係る役務を表示する商標には当たらない。被告が不正の目的の根拠として主張する事実はいずれも証拠に基づかないものである。 (2) 争点2(被告標章が普通名称又は慣用商標であり商標権の効力が及ばない商標に当たるか)について(被告の主張)被告が教授する空手流派はBが創設したものであるが,これは慣用的にも「極真」「極真カラテ」「極真会館」と表現されており,こう表現する以外に表現のしようがないから,被告標章は普通名称又は慣用商標であり,商標法26条1項3号,4号により,本件商標権の効力が及ばない。 (原告らの主張)空手には極真空手以外にも様々な流派があり,「極真」の文字を要部とする被告標章は,その指定商品・役務である 法26条1項3号,4号により,本件商標権の効力が及ばない。 (原告らの主張)空手には極真空手以外にも様々な流派があり,「極真」の文字を要部とする被告標章は,その指定商品・役務である第25類の「被服,空手衣」,第41類の「空手の教授,空手の興行の企画・運営又は開催」の普通名称又は慣用商標のいずれにも当たらない。 (3) 争点3(原告らの本訴請求が権利の濫用に当たるか)について(被告の主張)被告は,原告極真会館を退館したものの,別の会派に加盟していて,未だ需要者に極真会館ないし極真空手と認識されているグループの一員である。 そして,複数の事業者から構成されるグループが特定の役務を表す主体として需要者の間で認識されている場合,その中の特定の者が,当該表示の独占的な表示主体であるといえるためには,需要者に対する関係又はグループ内 部における関係において,その表示の周知性や著名性の獲得がほとんどその特定の者に集中して帰属し,グループ内の他の者は,その者からの使用許諾を得て初めてこれを使用することができるという関係にあることを要し,そのような関係が認められない場合には,グループ内の者が商標権を取得したとしても,当該表示の独占的な表示主体として,グループ内の他の者に対して商標権に基づく権利行使を行うことは,権利の濫用に当たるというべきである。被告は,昭和57年から極真空手を実践し,極真会館の周知性や著名性獲得に寄与してきた者に他ならず,また,B存命中から国際空手道連盟極真会館の支部長として活動してきた者から傘下の道場として認可,許諾を得ているから,原告らの被告に対する本訴請求は権利の濫用に当たり許されない。 (原告らの主張)原告極真会館は,Bが創設した国際空手道連盟極真会館と同一の団体であり の道場として認可,許諾を得ているから,原告らの被告に対する本訴請求は権利の濫用に当たり許されない。 (原告らの主張)原告極真会館は,Bが創設した国際空手道連盟極真会館と同一の団体であり,被告の主張によっても,被告は,Bの死亡後に,原告極真会館に所属し,本件誓約書を取り交わして本件各商標の使用を許諾された者であるから,原告らが原告極真会館退館後なお本件各商標を使用する被告に対して本件商標権を行使することは正当な権利行使であり,権利濫用には当たらない。 (4) 争点4(本件誓約書による合意が合意解除された又は錯誤によるものであるか)について(被告の主張)原告Aは,平成20年12月6日,本件誓約書を白紙にする旨を被告を含む各道場の責任者に対して通告し,被告はこれを了承した。その際,極真マーク等の使用については特段言及がなく,被告を含む各道場はその後も極真マーク等を使用し続けたが,原告Aは,これに何ら異議を唱えていないから,本件誓約書による合意は,同日合意解除された。 また,本件誓約書には,原告極真会館が極真マーク等の商標権を有してい ることを前提とする規約が多数あり,被告は,これを誤信して本件誓約書を取り交わしたものであるが,その当時,原告らは本件商標権を取得していなかったのであるから,本件誓約書による合意は錯誤によるものである。 (原告極真会館の主張)否認ないし争う。 (5) 争点5(原告Aの損害)について(原告Aの主張)ア商標法38条2項の適用について原告Aが本件商標権1ないし3を保有しているのは,自らが代表を務める原告極真会館が権利能力なき社団であってその名義で商標登録をすることができないからであり,原告A個人が空手の教授等を行っ 原告Aが本件商標権1ないし3を保有しているのは,自らが代表を務める原告極真会館が権利能力なき社団であってその名義で商標登録をすることができないからであり,原告A個人が空手の教授等を行っていないとしても,商標法38条2項が適用される。 また,被告が開催した空手大会は,本件各商標と同一ないし類似する標章を前面に掲げることによって参加者を募っていたものであって,仲間内の大会で本件各商標を使用する理由はないから,このことをもって被告標章の使用を正当化できるものではない。 イ被告が侵害行為により受けた利益について(ア) 被告道場での空手の教授に係る侵害行為により受けた利益被告が,原告極真会館を退館した平成22年4月から標章使用を中止したと主張する平成25年4月までの間に,被告が被告道場での空手の教授によって得た利益は,500万円を下らない。 被告道場の入門生は,被告による空手の教授に当たり,原告極真会館が継承する極真空手を想起させる本件各商標が使用されているからこそ,被告道場に入門したのであり,空手の教授によって被告が得た利益は全て侵害行為により受けたものである。原告極真会館の他に本件各商標を使う者がいるとしても,それは原告らの許諾を得た者か,違 法使用者であって,これを理由に原告の損害額が減額されるべきではない。被告は,原告極真会館を退館した後もあえて被告標章を使用しているのであって,被告自身に本件各商標の顧客吸引力を利用する意思があったことは明らかである。 (イ) 空手の興行の企画,運営又は開催に係る侵害行為により受けた利益被告が第一回大会開催により得た売上げは,一人当たりの大会参加料が1万円で,参加者が186名だったから,186万円であり,これから諸経費を控 運営又は開催に係る侵害行為により受けた利益被告が第一回大会開催により得た売上げは,一人当たりの大会参加料が1万円で,参加者が186名だったから,186万円であり,これから諸経費を控除しても,利益の額は50%である93万円を下らない。また,被告が第二回大会開催により得た売上げは,一人当たりの大会参加料が1万円で,参加者が224名だったから,224万円であり,これから諸経費を控除しても,利益の額は50%である112万円を下らない。 これらの大会参加者は,被告による空手の興行の企画,運営又は開催に当たり,原告極真会館が継承する極真空手を想起させる本件各商標が使用されているからこそ,大会に参加したのであり,大会の開催によって被告が得た利益は全て侵害行為により受けたものである。このことは,前記(ア)記載の各事情に加えて,被告が被告標章を使用することによって各大会の参加者を募り本件各商標の顧客吸引力を利用していた事実からも明らかである。 (ウ) そうすると,商標法38条2項に基づき,被告の侵害行為により原告Aが受けた損害の額は,705万円を下らないと推定される。 (被告の主張)ア商標法38条2項の適用について原告A自身は,空手の教授等を行っておらず本件各商標を使用していないから,原告Aについて同項は適用されない。 また,被告が開催した空手大会の参加者は,被告道場の道場生及び友好 道場の道場生のみで,一般参加者は存在しないから,同項は適用されない。 イ被告が侵害行為により受けた利益について(ア) 被告道場での空手の教授に係る侵害行為により受けた利益被告が被告標章使用期間中に被告道場での空手の教授によって得た利益は,500万円を下らない。 により受けた利益について(ア) 被告道場での空手の教授に係る侵害行為により受けた利益被告が被告標章使用期間中に被告道場での空手の教授によって得た利益は,500万円を下らない。 しかしながら,国際空手道連盟極真会館は,Bの死後多くの会派等に分裂し,原告極真会館以外にも多くの流派,道場が極真会館を名乗って活動していることなどから,極真会館という名称が有する顧客吸引力のうち,原告らの権利に帰属するものはごくごく一部である。また,空手の教授は,高度に専門的かつ人間的サービスであり,指導者の指導力や人格などに加えて立地条件が重要な要素となるから,本件各商標に起因する利益はない。さらに,被告道場の周辺に原告らの道場は存在せず,極真会館の名称で活動する松井派の道場が複数存在するところ,被告が極真会館という名称を掲げただけで道場生を集められる状況になく,仮に極真会館という名称によって被告道場を選択した者がいたとしても,その大部分は被告道場でなければ近接する松井派の道場を選択していたはずであるから,被告の利益が原告Aの損害とはならない事情が存在する。 (イ) 空手の興行の企画,運営又は開催に係る侵害行為により受けた利益第一回大会及び第二回大会ともに参加者数は認めるが,大会参加料はいずれも一人当たり7000円である。また,各大会開催のための経費は,別紙大会の経費額一覧記載のとおりであり,第一回大会が117万1044円,第二回大会が80万0857円であった。 しかしながら,前記イ記載の事情に加えて,各大会の参加者が被告道場及びその友好道場の道場生のみで,一般参加者は存在しないことから,被告標章の寄与が存在しない。また,原告極真会館を退館した道 場の道場生が原告らの開催する大会に参加することはあり得な 道場及びその友好道場の道場生のみで,一般参加者は存在しないことから,被告標章の寄与が存在しない。また,原告極真会館を退館した道 場の道場生が原告らの開催する大会に参加することはあり得ないから,被告の利益が原告Aの損害とならない事情がある。 (6) 争点6(原告会社の損害)について(原告会社の主張)第一回大会及び第二回大会開催による売上げは合計410万円に及び,原告会社が本件商標4の各大会への使用に対し受けるべき使用料相当額は,15%の割合を乗じた61万5000円であるから,商標法38条3項により,被告の侵害行為によって原告会社が受けた損害の額は61万5000円を下らない。 (被告の主張)前記(5)被告の主張イ(イ)記載のとおり,原告会社の主張する売上げが過大である上,大会開催における被告標章の寄与度は著しく低いから,原告の主張する使用料は,不相当に過大である。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件各商標の商標登録が商標登録の無効の審判により無効にされるべきものと認められるか)について被告は,本件各商標が,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標(商標法4条1項7号)又は他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であって,不正の目的をもって使用をするもの(同項19号)に当たる旨主張するが,被告の主張する各事情のうち,国際空手道連盟極真会館がB死亡後に内部分裂したことや本件各商標が原告極真会館を含む内部分裂後の諸派全体を示すものとして需要者に認識されていることが認められるとしても,その余の事実を認めるに足りる証拠がないから,本件各商標の商標登録が無効にされるべきものとは認められない。そうであるから,被告の主張には理由がない。 需要者に認識されていることが認められるとしても,その余の事実を認めるに足りる証拠がないから,本件各商標の商標登録が無効にされるべきものとは認められない。そうであるから,被告の主張には理由がない。 2 争点2(被告標章が普通名称又は慣用商標であり商標権の効力が及ばない商 標に当たるか)について被告は,被告が教授する空手流派は極真空手と表現する以外に表現のしようがないから,被告標章は普通名称又は慣用商標であり商標権の効力が及ばない旨主張するが,そもそも,極真空手は空手流派の一派なのであるから,本件商標権の指定商品・役務である第25類の「被服,空手衣」,第41類の「空手の教授,空手の興行の企画・運営又は開催」の普通名称又は慣用商標のいずれにも当たらないし,証拠(甲19,20)によれば,極真空手を修めた者が,本件各商標と類似しない標章を用いる例があることが認められる。そうであるから,被告の主張には理由がない。 3 争点3(原告らの本訴請求が権利の濫用に当たるか)について被告は,本件各商標は原告極真会館を含む内部分裂後の諸派全体を示すものとして需要者に認識されていることを前提に,被告が昭和57年から極真空手を実践し極真会館の周知性や著名性獲得に寄与してきたこと,B存命中から国際空手道連盟極真会館の支部長として活動してきた者から傘下の道場として認可,許諾を得ていることを理由として,原告らの本訴請求が権利の濫用に当たると主張する。 しかしながら,前提事実(4)記載のとおり,被告は,Bの死亡後(内部分裂後)の平成16年2月29日に,原告極真会館との間で本件誓約書を取り交わして,原告らから本件各商標の使用を許諾された者であるところ,前提事実(5)記載のとおり,被告は,平成22年4月ころに原告極真会館を退館して本件誓約書が失効 原告極真会館との間で本件誓約書を取り交わして,原告らから本件各商標の使用を許諾された者であるところ,前提事実(5)記載のとおり,被告は,平成22年4月ころに原告極真会館を退館して本件誓約書が失効した後も,なお本件各商標を使用していたというのであって,このような使用行為が原告らとの関係で違法性を欠いた正当な行為であるということはできない。すなわち,本件全証拠によっても,被告が,B存命中から極真空手の周知性や著名性の形成にB等と共に寄与してきた団体内部の者であるとは認められないし,また,被告が原告極真会館と本件誓約書を取り交わした経緯や原告極真会館を退館した経緯等に関する証拠(甲27,乙1ないし3, 16ないし18)を検討しても,原告らが被告に対し原告極真会館退館後に本件各商標を使用しないよう求めること等が権利の濫用に当たるということはできない。このような事実関係のもとにおいて,被告が原告極真会館退館後に別の極真会館の会派に所属している(乙15)としても,それだけでは原告らの本訴請求が権利の濫用には当たるとは認められない。そうであるから,被告の主張は理由がない。 4 争点4(本件誓約書による合意が合意解除された又は錯誤によるものであるか)について被告は,本件誓約書による合意が合意解除されたとか,錯誤によるものである旨主張するが,このことを認めるに足りる証拠はない。そうであるから,被告の主張は理由がない。 5 争点5(原告Aの損害)について(1) 商標法38条2項の適用について被告は,被告標章を使用して入門者を誘引していたと認められるから,原告Aが本件商標権侵害と相当因果関係のある損害を受けたことが認められる。 被告は,原告A自身は空手の教授等を行っていないから,商標法38条2項は適用されないなどと主張 誘引していたと認められるから,原告Aが本件商標権侵害と相当因果関係のある損害を受けたことが認められる。 被告は,原告A自身は空手の教授等を行っていないから,商標法38条2項は適用されないなどと主張するが,同項の適用が認められるためには,原告Aにつき,被告の商標権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が認められれば足りるというべきであり,原告Aは権利能力なき社団である原告極真会館の代表者として空手道場を運営していると認められるから,被告の商標権侵害行為がなかったならば原告Aが利益を得られたであろうという事情が認められ,同項の適用がある。 また,被告は,空手大会の参加者は被告道場及びその友好道場の道場生のみで一般参加者は存在しないから,商標法38条2項は適用されないなどとも主張するが,もともと,被告は被告標章を使用して入門生を誘引し,これに応じて入門した者や友好道場の道場生に対して被告標章を使用して大会へ の参加を誘引したと認められるから,空手大会における一般参加者が存在しなかったとしても,同項の適用がある。 (2) 被告が侵害行為により受けた利益についてア被告道場での空手の教授に係る侵害行為により受けた利益被告が原告極真会館を退館した平成22年4月から被告標章の使用を中止した平成25年4月までの間に,被告道場での空手の教授によって得た被告の利益が500万円を下らないことについては,当事者間に争いがない。 しかしながら,空手の教授は,指導者の直接的対面的指導が必須であるという性質上,立地条件が重要な要素となる役務であり,また,周辺における他の空手道場の存否や教授方法等によっても売上げが左右されるというべきであるから,商標法38条2項の適用に当たっては,被告の利益のうちの一部のみが本件各 要な要素となる役務であり,また,周辺における他の空手道場の存否や教授方法等によっても売上げが左右されるというべきであるから,商標法38条2項の適用に当たっては,被告の利益のうちの一部のみが本件各商標に起因するものとして原告の損害となると考えられる。本件についてこれを見るに,証拠(乙4ないし13,19ないし21,34の1ないし35)及び弁論の全趣旨によれば,被告道場の周辺には原告らの道場は存在しないこと,かつ,極真を名乗り需要者から極真空手を実践していると認識されている会派は原告らの他に複数存在するところ,そのうちの一派で原告らとの関係で本件各商標の違法使用者とは認められない可能性を十分に有するC派の極真空手道場が原告道場付近に複数存在することが認められるから,空手の教授という役務における立地条件の重要性に鑑みると,被告標章に誘引された被告道場の入門生についても,本件商標権侵害行為がなければ原告らの道場を選択したはずであるとの推定を覆す事情があるというべきである。そして,このような事情は,原告らとC派との間に訴訟等が係属しておらず,緩やかな協力関係にある(甲31)としても異なるものではない。そうであるから,本件各商標は,直接打撃制の武道空手を特徴とするBの創始した極真空手を想起さ せ,空手の教授を受けようとする需要者に対する顧客誘引力が大きいと考えることができるとしても,商標法38条2項の適用に当たっては,本件各商標の誘引力によって被告が得た利益については,その大部分は原告の損害と見ることができない事情があると言わざるを得ない。 そこで,以上の事情を総合考慮すると,被告の利益のうちの5%が原告Aの損害と認めるのが相当であり,そうであるから,25万円が原告Aが受けた損害の額になる。 イ空手の興行の企画,運営又は開催に係 そこで,以上の事情を総合考慮すると,被告の利益のうちの5%が原告Aの損害と認めるのが相当であり,そうであるから,25万円が原告Aが受けた損害の額になる。 イ空手の興行の企画,運営又は開催に係る侵害行為により受けた利益証拠(乙22)及び弁論の全趣旨によれば,第一回大会及び第二回大会の参加料はいずれも一人当たり7000円であると認められ,第一回大会につき130万2000円,第二回大会につき156万8000円の参加料収入があったと認められる。大会運営に係る経費については,別紙大会の経費額一覧記載のとおり,第一回大会が113万2303円,第二回大会が79万2775円とするのが相当と認める。そうすると,第一回大会開催による被告の利益は16万9697円であり,第二回大会開催による被告の利益は77万5225円である。 被告は,被告が開催した空手大会の参加者は被告道場の道場生及び友好道場の道場生のみで,一般参加者は存在しないから,被告標章の寄与率は全く存在しないか著しく低いなどと主張するが,被告は,被告標章を使用して入門生を誘引し,これに応じて入門した者や友好道場の道場生に対して被告標章を使用して大会への参加を誘引したものであり,空手大会開催に際して極真空手大会と銘打つことは大きな顧客誘引力を有すると考えられるから,被告標章の寄与がないとはいえない。 もっとも,商標法38条2項の適用に当たっては,前記アと同様の事情を考慮すべきであり,一般参加者が存在しなかったと認められること(甲9,24)をも考慮すると,被告の利益のうちの5%を原告Aの損害と認 めるのが相当であり,そうであるから,第一回大会につき8480円,第二回大会につき3万8760円の合計4万7240円が原告Aの損害の額になる。 6 争点6(原告会社の損害)につ と認 めるのが相当であり,そうであるから,第一回大会につき8480円,第二回大会につき3万8760円の合計4万7240円が原告Aの損害の額になる。 6 争点6(原告会社の損害)について前記5(2)イ記載のとおり,第一回大会につき130万2000円,第二回大会につき156万8000円の参加料収入があったところ,前記5記載の各事情に加えて,本件商標4は相応の顧客誘引力を有すると考えられるものの,本件商標4のみの実施料率であることその他一切の事情を考慮すれば,使用料率は2%と認めるのが相当であるから,商標法38条3項により,第一回大会につき2万6040円,第二回大会につき3万1360円の合計5万7400円が原告会社の損害の額になる。 7 以上のとおりであって,原告Aの請求は,29万7240円及びうち8480円に対する不法行為の後である平成24年2月11日から,うち3万8760円に対する不法行為の日である平成24年10月28日から,うち25万円に対する不法行為の後である平成25年5月1日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,原告会社の請求は,5万7400円及びうち2万6040円に対する不法行為の後である平成24年2月11日から,うち3万1360円に対する不法行為の日である平成24年10月28日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,原告極真会館の請求は,全て理由がある。 よって,原告らの請求を上記の限度で認容し,その余は失当として棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官高野輝久 裁判官三井大有 は失当として棄却することとして,主文のとおり判決する。 主文 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官高野輝久 裁判官三井大有 裁判官宇野遥子 (別紙)当事者目録 東京都豊島区<以下略>原告国際空手道連盟極真会館東京都豊島区<以下略>原告有限会社マス大山エンタープライズ東京都豊島区<以下略>原告A上記3名訴訟代理人弁護士平野高志那須健人東京都練馬区<以下略>被告D同訴訟代理人弁護士中澤佑一松本紘明滝下加代子柴田佳佑同訴訟復代理人弁護士船越雄一 以上 (別紙)被告標章目録 1-1 1-2 3-1 3-2 3-3 3-4 4-1 4-2 4-3 4-4 以上 (別紙)原告商標目録 以上 (別紙)大会の経費額一覧 1 第一回大会の経費 原告の主張証拠(乙25の枝番)認定金額説明366,000 366,000 大会パンフレット作成費用39,520 会の経費額一覧 1 第一回大会の経費 原告の主張証拠(乙25の枝番)認定金額説明366,000 大会パンフレット作成費用39,520 試合備品代88,040 試合備品代200 駐車場代21,108 表彰品代200 駐車場代300 駐車場代52,050 ゼッケン代1,810 郵便代262,500 試合場用マットレンタル代1,625 茶菓子代100,240 表彰品代2,520 事務用品代5,568 飲料代(当日配布用)798 試合備品代1,155 事務用品代13,200 会場使用料84,000 表彰品代44,000 会場使用料2,000 会場使用料2,100 駐車場代400 乙25の24に係る駐車場代32,199 大会終了後の参加道場関係者との懇親会費6,250 当日スタッフ飲食代2,490 整骨院への贈答品代760 書籍代(大会掲載雑誌)35,487 運営スタッフの慰労会費用との主張であるが,乙の23,24と重複し,日付からしても大会開催のための経費 主文 運営スタッフの慰労会費用との主張であるが、乙の23,24と重複し、日付からしても大会開催のための経費とは認められない。 備品配送料 試合備品代との主張であるが明細不明で日付の記載もなく関連性を認めるに足りない。 第二回大会の経費 原告の主張証拠(乙26の枝番)認定金額説明 駐車場代 郵便代 運営スタッフ飲食代 来賓宿泊費 表彰品代 試合備品 大会事務用品代 駐車場代 駐車場代 事務用品代 事務用品代 事務用品代 空手ステージ代 御礼状等郵便代 試合備品代との主張であるが、明細不明で日付の表記もなく関連性を認めるに足りない。 施設使用料 施設使用料 主文 理由 事実 争点 判断

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