主文 被告人を懲役5年に処する。 未決勾留日数中210日をその刑に算入する。 押収してある小切手9通(平成13年押第217号の1ないし8,11)の各偽造部分を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1(平成13年11月5日付け起訴状記載の公訴事実)不正に入手した偽造小切手を使用して,普通乗用自動車の購入名下に自動車販売業者を欺いて普通乗用自動車を交付させようと企て,平成7年8月5日午後1時7分ころ,神戸市a区b町×番×号所在のホテルcにおいて,自動車販売業を営むA(当時46歳)に対し,同人所有の普通乗用自動車(ポルシェ,大阪○○n○○○○号)の購入方を申し入れた上,偽造に係るB信用金庫d支店支店長C振出名義の小切手(額面金額530万円,平成13年押第217号の1)を真正に成立したものであるかのように装い,同車の購入代金として交付して行使し,前記Aをして,前記小切手が確実に代金決済されるものと誤信させ,よって,即時同所において,同人から同車1台(時価約530万円相当)の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた第2(平成13年12月14日付け起訴状記載の公訴事実)代金決済できない小切手を使用して,軽四輪乗用自動車の購入名下に,自動車専門雑誌の自動車個人売買欄に連絡先等を掲載してその所有に係る軽四輪乗用自動車の販売を希望していたDを欺いて同車を交付させようと企て,平成7年7月25日午後6時30分ころ,兵庫県e市d町×丁目×番×号所在のf店において,同人(当時35歳)に対し,同人所有の軽四輪乗用自動車(ミラ,神戸○○s○○○○号)の購入方を申し入れた上,E株式会社代表取締役F振出名義の小切手(額面金額42万 ×丁目×番×号所在のf店において,同人(当時35歳)に対し,同人所有の軽四輪乗用自動車(ミラ,神戸○○s○○○○号)の購入方を申し入れた上,E株式会社代表取締役F振出名義の小切手(額面金額42万円。同押号の11)が確実に代金決済されるものであるかのように装い,同車の購入代金として交付し,前記Dをして,前記小切手が確実に代金決済されるものと誤信させ,よって,即時同所において,同人から同車1台(時価約42万円相当)の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた第3(平成14年3月8日付け起訴状記載の公訴事実)代金決済できない小切手を使用して,購入名下に普通乗用自動車を詐取しようと企て,平成7年8月20日午後3時ころ,富山市g町×丁目×番×号所在の飲食店hにおいて,G(当時41歳)に対し,同人所有の普通乗用自動車(ポルシェ,富山○○f○○○○号)の購入方を申し入れた上,B信用金庫d支店支店長C振出名義の小切手(額面金額400万円,同押号の3)が確実に代金決済されるものであるかのように装い,同車の購入代金として交付し,前記Gをして,前記小切手が確実に代金決済されるものと誤信させ,よって,同日午後4時ころ,富山市i町×番地所在のjビル(仮称)南側路上において,同人から同車1台(時価約380万円相当)の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた第4(平成14年2月6日付け起訴状記載の公訴事実)不正に入手した偽造小切手を使用して,購入名下に自動車を詐取しようと企て,平成7年9月29日午後6時ころ,石川県金沢市k町×番地所在の喫茶店lにおいて,有限会社H代表取締役I(当時51歳)に対し,同社所有の普通乗用自動車(アルファ・ロメオ,石川○○h○○○○号)の購入方を申し入れた上,偽造に係るB信用金庫d支店支店長C振出名義の小切手( おいて,有限会社H代表取締役I(当時51歳)に対し,同社所有の普通乗用自動車(アルファ・ロメオ,石川○○h○○○○号)の購入方を申し入れた上,偽造に係るB信用金庫d支店支店長C振出名義の小切手(額面金額500万円,同押号の2)を真正に成立したものであるかのように装い,「これで支払います。これは銀行の保証小切手だから間違いない。現金で持ってくるのは危ないから銀行で保証小切手に換えてもらった。」などと嘘を言い,同車の購入代金として交付して行使し,前記Iをして,前記小切手が確実に代金決済されるものと誤信させ,よって,同日午後7時30分ころ,同市m×丁目×番×号所在のnホテル前駐車場において,同人から同車1台(時価約450万円相当)の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた第5(平成14年4月16日付け起訴状記載の公訴事実)不正に入手した実在しないE株式会社振出名義の偽造小切手を使用して,購入名下に普通乗用自動車を詐取しようと企て,平成7年7月9日ころ,東京都o区p×丁目×番×号所在のq店において,J(当時53歳)に対し,E株式会社代表取締役Kと記載のある名刺を交付し,「東京とアメリカに事務所があって,パワーボートやクルーザーを販売している。」と申し向けて,同社が実在し,被告人が同社の代表取締役であるかのように装って,同人所有の普通乗用自動車(BMW,川崎○○n○○○○号)の購入方を申し入れ,さらに,同月15日ころ,横浜市r区s×丁目×番地×所在の和食処t店内において,同人に対し,偽造に係るE株式会社の代表印のある同社振出名義の小切手(額面金額420万円,同押号の4)を真正に成立したものであるかのように装い,同車の購入代金として交付して行使し,前記Jをして,前記小切手が確実に代金決済されるものと誤信させ,よって,即時同所にお (額面金額420万円,同押号の4)を真正に成立したものであるかのように装い,同車の購入代金として交付して行使し,前記Jをして,前記小切手が確実に代金決済されるものと誤信させ,よって,即時同所において,同人から同車1台(時価約420万円相当)の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた第6(平成14年5月23日付け起訴状記載の公訴事実)不正に入手した偽造小切手を使用して,購入名下に普通乗用自動車を詐取しようと企て,平成7年9月26日ころ,東京都内から東京都u市v×番地の×所在のw10×号室L方に電話をかけ,同人(当時33歳)に対し,同人所有の普通乗用自動車(BMW,八王子○○t○○○○号)の購入方を申し入れた上,同月27日ころ,u市y×丁目×番地の×所在のx店内において,同人に対し,偽造に係るB信用金庫d支店支店長C振出名義の小切手(額面金額380万円,同押号の5)を真正に成立したものであるかのように装い,「この小切手で支払います。振出人がこの信用金庫ですから心配ありません。」などと嘘を言い,同車の購入代金として交付して行使し,前記Lをして,前記小切手が確実に代金決済されるものと誤信させ,よって,そのころ,u市y×丁目×番地所在の東日本旅客鉄道株式会社u駅バスロータリー内において,同人から同車1台(時価約370万円相当)の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた第7(平成14年7月8日付け起訴状記載の公訴事実)不正に入手した偽造小切手を使用して,購入名下に自動車を詐取しようと企て,平成7年9月5日ころ,静岡県z市a1×番地の×所在の有限会社Mにおいて,N(当時56歳)に対し,同人所有の普通乗用自動車の購入方を申し入れた上,偽造に係るB信用金庫d支店支店長C振出名義の小切手(額面金額750万円,同押号の6) 1×番地の×所在の有限会社Mにおいて,N(当時56歳)に対し,同人所有の普通乗用自動車の購入方を申し入れた上,偽造に係るB信用金庫d支店支店長C振出名義の小切手(額面金額750万円,同押号の6)を真正に成立したものであるかのように装い,同車の購入代金として交付して行使し,前記Nをして,前記小切手が確実に代金決済されるものと誤信させ,よって,即時同所において,同人から同車1台(時価約750万円相当)の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた第8(平成14年8月1日付け起訴状記載の公訴事実)不正に入手した偽造小切手を使用して,購入名下に普通乗用自動車を詐取しようと企て,平成7年8月21日ころ,広島市b1区c1町×番×号所在のd1ホテルにおいて,O(当時26歳)に対し,同人所有の普通乗用自動車の購入方を申し入れた上,偽造に係るB信用金庫d支店支店長C振出名義の小切手(額面金額600万円,同押号の7)を真正に成立したものであるかのように装い,同車の購入代金として交付して行使し,前記Oをして,前記小切手が確実に代金決済されるものと誤信させ,よって,即時同所において,同人から同車1台(時価約600万円相当)の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた第9(平成14年8月27日付け起訴状記載の公訴事実)不正に入手した偽造小切手を使用して,購入名下に普通乗用自動車を詐取しようと企て,平成7年10月2日ころ,群馬県e1市f1町×番地所在のg1店において,P(当時33歳)に対し,同人管理の普通乗用自動車の購入方を申し入れた上,偽造に係るB信用金庫d支店支店長C振出名義の小切手(額面金額500万円,同押号の8)を真正に成立したものであるかのように装い,同車の購入代金として交付して行使し,前記Pをして,前記小切手が確実に代金決済され B信用金庫d支店支店長C振出名義の小切手(額面金額500万円,同押号の8)を真正に成立したものであるかのように装い,同車の購入代金として交付して行使し,前記Pをして,前記小切手が確実に代金決済されるものと誤信させ,同人から同車1台(時価約500万円相当)を交付させようとしたが,前記小切手が偽造されたものであることを看破されたため,その目的を遂げなかった第10 福岡県h1市i1×丁目×番×号にQ九州支店なる事務所を設け,同支店の支店長Rと称していたものであるが,取引名下に商品を詐取しようと企て,1(平成14年12月11日付け起訴状記載の公訴事実第1)平成10年10月23日ころ,前記事務所において,S株式会社社員T(当時46歳)に対し,真実は仕入れた商品を入手後直ちに他に廉売処分する意図であるのにその情を秘し,代金支払いの意思も能力もないのにあるように装って,「11月と12月の2回払いでいいですよ。」と申し向けるなどして同人との間でノートパソコン1台(価格33万円)の売買契約を締結し,同人をして約定どおりに代金の支払いを受けられるものと誤信させ,そのころ,同所において,同人から前記ノートパソコン1台の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた2(平成14年12月11日付け起訴状記載の公訴事実第2)平成10年10月26日ころ,前記事務所において,前記Tに対し,前同様に装って,「こないだのと同じノートパソコンを会社のほうで買おうと思うんだけど,何台買えますか。」「じゃあ2台下さい。代金は11月30日に1回で払いますよ。」などと申し向け,同人との間でノートパソコン2台(価格合計66万円)の売買契約を締結し,同人をして約定どおりに代金の支払いを受けられるものと誤信させ,同月27日ころ,同所において,同人から前記ノートパ どと申し向け,同人との間でノートパソコン2台(価格合計66万円)の売買契約を締結し,同人をして約定どおりに代金の支払いを受けられるものと誤信させ,同月27日ころ,同所において,同人から前記ノートパソコン2台の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させたものである。 (証拠の標目)―括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号―省略(補足説明) 1 弁護人は,判示第2の事実について,被告人は代金支払いのために交付した小切手が決済されない小切手であるとの認識はなく,被害者を騙す意図はなかったから,被告人は無罪である旨主張し,被告人も当公判廷においてこれにそう供述をするが,前掲関係各証拠によれば,弁護人の指摘する点を含め,判示第2の事実を認めるに十分である。被告人は,「ポンテ」と呼ばれる小切手は取引停止後の小切手とは異なる通常の小切手であると認識しており,決済されない手形であるとの認識はなかった旨主張するが,被告人の供述を前提にしても,被告人に,このいわゆる「ポンテ」が通常の小切手とは異なり,少なくとも確実に決済される小切手ではない旨の認識があったことは明白であって,被告人に詐欺の犯意のあったこともまた明らかである。弁護人及び被告人の主張は理由がない。 2 弁護人は判示第4の事実について,被告人は犯行場所である金沢市内に犯行当時行ったことはなく,事実無根であるから無罪である旨主張するが,証人Iは当公判廷において,Sと称する犯人から,「E株式会社代表取締役S」と記載された名刺や,自己宛小切手発行依頼書の写しを渡され,被告人の写真が貼付された「S」名義の偽造旅券の写し等を見せられた旨供述し,判示第4の犯行の犯人が被告人である旨を断言するところ,前記自己宛小切手発行依頼書の写しから被告人の指紋が検出されたことその他前掲関係各証拠 された「S」名義の偽造旅券の写し等を見せられた旨供述し,判示第4の犯行の犯人が被告人である旨を断言するところ,前記自己宛小切手発行依頼書の写しから被告人の指紋が検出されたことその他前掲関係各証拠に照らすと,証人Iの当公判廷における供述の信用性は十分である。弁護人は前記証人Iの犯人識別供述は信用できない旨主張するが,理由がない。 3 弁護人は判示第5の事実について,被告人は自己の当座を使用した有効な小切手を使用しているとの認識であったから,被害者を騙す意図もなかったのであり,被告人は無罪である旨主張するが,前掲関係各証拠によれば,弁護人主張の点を含め,判示第5の事実についてこれを認めるに十分である。被告人は,小切手の振出人が架空会社であるE株式会社(代表取締役K)であると記載されていること等に気付かなかったなどと供述するが信用できず,被告人が偽造小切手であることを認識しつつこれを使用したことのほか,判示の詐欺文言を申し述べるなどしたことは明白であって,被告人の前記供述は採用の限りではない。弁護人及び被告人の主張は理由がない。 (確定裁判)被告人は,平成13年9月14日大阪地方裁判所で窃盗,有印公文書偽造,偽造有印公文書行使の各罪により懲役5年に処せられ,その裁判は平成14年11月11日確定したものであって,この事実は検察事務官作成の前科調書(検察官請求証拠番号252)及び判決書謄本2通(同253,254)によって認める。 (法令の適用)被告人の判示第1,第4ないし第8の各所為中,各偽造有価証券行使の点はいずれも刑法163条1項に,各詐欺の点はいずれも同法246条1項に,判示第2,第3,第10の1及び第10の2の各所為はいずれも同法246条1項に,判示第9の所為中,偽造有価証券行使の点は同法163条1項に,詐欺未遂の点は同法250 点はいずれも同法246条1項に,判示第2,第3,第10の1及び第10の2の各所為はいずれも同法246条1項に,判示第9の所為中,偽造有価証券行使の点は同法163条1項に,詐欺未遂の点は同法250条,246条1項に各該当するところ,判示第1,第4ないし第8の各偽造有価証券行使と各詐欺との間及び判示第9の偽造有価証券行使と詐欺未遂との間には,それぞれ順次手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により,前記各罪についてそれぞれ1罪として,いずれも重い各偽造有価証券行使罪の刑で処断することとし,これらは前記確定裁判があった窃盗,有印公文書偽造,偽造有印公文書行使の各罪と同法45条後段の併合罪であるから,同法50条により確定裁判を経ていない判示各罪につき更に処断することとし,なお,判示各罪もまた同法45条前段により併合罪の関係にあるから,同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第7の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役5年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中210日をその刑に算入し,押収してある小切手7通(平成13年押第217号の1,2,4ないし8)の各偽造部分は,それぞれ判示第1,第4ないし第9の偽造有価証券行使の犯罪行為を組成した物で,いずれも何人の所有をも許さないものであるから,同法19条1項1号,2項本文を適用して,押収してある小切手2通(同押号の11,3)の各偽造部分は,それぞれ判示第2,第3の詐欺の犯行の用に供した物で,いずれも何人の所有をも許さないものであるから,同法19条1項2号,2項本文を適用して,いずれもこれらを没収し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,偽造小切手を使用して,平成7年7月9日か を適用して,いずれもこれらを没収し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,偽造小切手を使用して,平成7年7月9日から同年10月2日にかけて,前後7回にわたり,自動車購入名下に各被害者を騙して自動車6台を詐取し,1台については未遂に終わった偽造有価証券行使,詐欺,詐欺未遂の事案(判示第1,第4ないし第9。判示第9が未遂),平成7年7月25日及び同年8月20日の二度にわたり,支払いを受けられない小切手を使用して,自動車購入名下に各被害者を騙して自動車2台を詐取した詐欺の事案(判示第2,第3)並びに,平成10年10月23日ころ及び同月26日ころの二度にわたり,取引名下にノートパソコン3台を詐取した詐欺の事案(判示第10の1,2)である。 被告人は,確定裁判欄記載の各罪についての公判で保釈中,その判決宣告期日に出頭せず,逃走中,判示の各犯行に及んだものであり,犯情は極めて悪いこと,犯行態様は,ポンテと称する偽造小切手等を使用して,自動車の個人売買を装って,各被害者から自動車を詐取するなどしたものであり,その手口は手慣れており,職業的犯行というべく巧妙,悪質であること,被害品はその多くが高級車であって,被害額の総額は約3641万円にも及んでおり,多額であること,被害弁償は一切なされていないし,その見込みもないこと,被告人には前記確定裁判のほか昭和61年にも高級車の窃盗等の前科があるなどこの種の犯行に及ぶ性癖は固着化しているというべきこと,犯行の一部について不合理な弁解に終始して恥じるところがないこと等に徴すると,被告人の刑事責任は重大であるというべきである。そうすると,本件は前記確定裁判の余罪に当たること,被告人の早期の社会復帰を願う妻の心情,被告人が社会福祉 始して恥じるところがないこと等に徴すると,被告人の刑事責任は重大であるというべきである。そうすると,本件は前記確定裁判の余罪に当たること,被告人の早期の社会復帰を願う妻の心情,被告人が社会福祉法人読売光と愛の事業団に贖罪寄付し,アイバンク登録等の各臓器提供をするなどして,被告人なりの反省悔悟の情を示していること等の被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても,主文の懲役刑はやむを得ないところである。 よって,主文のとおり判決する。 平成15年7月16日神戸地方裁判所第11刑事係甲裁判官杉森研二
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