令和4(行コ)18 生活保護変更決定取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和6年4月26日 大阪高等裁判所 棄却 神戸地方裁判所 平成27(行ウ)56
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判決文本文176,216 文字)

令和4年(行コ)第18号生活保護変更決定取消請求控訴事件令和6年4月26日大阪高等裁判所第8民事部判決 主文 1 控訴人らの本件各控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2(1) 原判決別紙処分一覧表2の「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が「処分 日」欄記載の年月日付けで「原告番号」欄C2記載の控訴人に対してした保護変更決定処分を取り消す。 (2) 原判決別紙処分一覧表3の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁が「処分日」欄記載の各年月日付けで「原告番号」欄C3、C4、C7、C8、B5、B7、B10及びB14記載の各控訴人に対してした各保護変更決定処 分をいずれも取り消す。 3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要以下で使用する略称は、特に断らない限り、原判決の例による。 1 事案の要旨 (1) 本件は、生活保護法(以下、単に「法」ということもある。)の委任に基づいて厚生労働大臣が定めた保護基準の改定により、原判決別紙処分一覧表の2及び3の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁から、それぞれ保護変更決定処分(本件各処分)を受けた控訴人らが、本件各処分は、憲法25条並びに生活保護法3条及び8条に違反し、生活扶助を健康で文化的な最低限 度の生活を維持するに足りない水準とする違法なものであると主張して、被控訴人らを相手に、本件各処分の取消しを求めた事案である。 (2) 原審は、控訴人B5の訴えは出訴期間を経過して提起された訴えであるから不適法であると判断して同人の訴えを却下し、その余の控訴人らの請求については、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断に (2) 原審は、控訴人B5の訴えは出訴期間を経過して提起された訴えであるから不適法であると判断して同人の訴えを却下し、その余の控訴人らの請求については、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の 逸脱又はその濫用があるとは認められないから同改定後の保護基準に基づく本件各処分は適法であると判断して、控訴人らの各取消請求をいずれも棄却したところ、これを不服とする控訴人らが本件各控訴を提起した。 なお、原審に併合されていた第1事件(神戸地方裁判所平成27年(行ウ)第30号)の原告らは、原告4名のうち3名が控訴を提起したが、後 に控訴を取り下げている。 2 関係法令の定め等関係法令の定め等は、原判決4頁8行目冒頭から同頁12行目末尾までを次のとおり改めるほか、原判決「事実及び理由」欄の第2の2(原判決2頁12行目から4頁12行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 「 控訴人C2、C3、C4、C7及びC8が居住する神戸市並びに控訴人B5、B7、B10及びB14が居住する尼崎市は、いずれも1級地-1に属する。」 3 前提事実前提事実は、次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」欄の第2の 3(原判決4頁13行目から8頁1行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決4頁16行目冒頭から同頁19行目末尾までを次のとおり改める。 「 控訴人C2、C3、C4、C7及びC8は、いずれも神戸市に、控訴人B5、B7、B10及びB14は、いずれも尼崎市に居住し、それぞれ生活保 護を受給している。 (甲B5の1、甲B7の1、甲B10の1、甲B14の1、甲C2の1・2、甲C3の1、甲C4の1、甲C7の1、甲C8の1)」(2) 原判決5頁3行目の「年間収 護を受給している。 (甲B5の1、甲B7の1、甲B10の1、甲B14の1、甲C2の1・2、甲C3の1、甲C4の1、甲C7の1、甲C8の1)」(2) 原判決5頁3行目の「年間収入階級第1・十分位層」を「年間収入階級第1・十分位層(調査対象者を年間収入額順に10等分した場合に最も収入の低いグループ)」に改める。 (3) 原判決5頁11行目の「第3・五分位」を「第3・五分位(調査対象者を年間収入額順に5等分した場合の中位グループ)」に改める。 4 本案前の争点及びこれに関する当事者の主張本案前の争点及びこれに関する当事者の主張は、次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」欄の第2の4(原判決8頁2行目から同頁24行目ま で)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決8頁3行目冒頭から同頁4行目末尾までを次のとおり改める。 「 本件の本案前の争点は、控訴人B5の訴えの提起が出訴期間を経過しているか否かである。」(2) 原判決8頁6行目冒頭から同頁10行目末尾までを次のとおり改める。 「(1) 平成26年改正前の行政不服審査法53条の「裁決があつたことを知つた日」とは、当該裁決が相手方の了知し得る状態に置かれただけでは足りず、相手方において現実に了知した日をいうが、裁決書が相手方の住所に送達されるなどして社会通念上了知可能な状態になったときには、反証のない限り、その日に現実に了知したものと推定される(最高裁昭和27 年11月20日第一小法廷判決・民集6巻10号1038頁)。 そして、裁決の相手方本人の代理権限を有する者に配達された場合には、相手方本人が知ったものと同視すべきであり(最高裁昭和35年11月22日第三小法廷判決・民集14巻13号2840頁参照)、相手方本 そして、裁決の相手方本人の代理権限を有する者に配達された場合には、相手方本人が知ったものと同視すべきであり(最高裁昭和35年11月22日第三小法廷判決・民集14巻13号2840頁参照)、相手方本人のために受領権限を有する者が裁決書謄本を受領した以上、これを開 披しなくとも裁決のあったことを知った場合と同視すべきは当然である と解される(東京高裁昭和54年5月28日判決・税務訴訟資料105号439頁、その上告審である最高裁昭和55年1月11日第三小法廷判決・税務訴訟資料110号1頁参照)。 (2) これにより本件について見ると、控訴人B5は、「尼崎生活と健康を守る会」を名乗るP2(以下「P2」という。)に審査請求を委任して おり、P2は、同委任により同控訴人から付与された受領権限に基づき、平成27年10月21日に同控訴人の審査請求に係る裁決書謄本の配達を受けている。そして、P2は、同郵便物を受け取った時点で、その中身が裁決書謄本であることを認識していたのであるから、P2が、同日、「審査請求についての裁決があったことを知った」ことは動かしようが ない事実である。そうすると、P2が平成27年10月21日に審査請求に係る裁決があったことを知ったと認められる以上、前記(1)の解釈に照らすと、控訴人B5は、審査請求代理人であるP2を介して、同日に審査請求に係る裁決があったことを現実に了知したものというほかない。 その後、控訴人B5は、改めてP2に再審査請求を委任し、同人を通じ て、審査請求に係る裁決書謄本の配達を受けた日の翌日から起算して30日を経過している同年12月2日に再審査請求をしたものであるが、その再審査請求は、平成26年改正前の行審法53条所定の「審査請求についての裁決があつたことを知った日の翌日から の翌日から起算して30日を経過している同年12月2日に再審査請求をしたものであるが、その再審査請求は、平成26年改正前の行審法53条所定の「審査請求についての裁決があつたことを知った日の翌日から起算して30日」を経過してされたもので、再審査請求期間を徒過した不適法なものである から、同控訴人の訴えに係る出訴期間の起算日は、同控訴人が審査請求についての裁決があったことを知った日である平成27年10月21日となる。そうすると、控訴人B5の訴えは、審査請求について採決があったことを知った日から6か月を経過した後に提起されているから、不適法である。」 (3) 原判決8頁12行目冒頭から同頁14行目の「審査請求を行った。」までを次のとおり改める。 「 控訴人B5を含む約120名の生活保護受給者から委任を受けたP2は、平成27年5月19日、一斉に保護変更決定処分について審査請求を行った。」 (4) 原判決8頁18行目の「P2弁護士」から同頁24行目末尾までを次のとおり改める。 「P2は、平成27年11月8日、上記生活保護受給者を集めて一斉に郵便物を開封し、裁決書の内容を確認した。その際、控訴人B5は、P2に委任して再審査請求を行うこととした。 したがって、控訴人B5が審査請求に対する裁決があったことを知った日は平成27年11月8日であり、本件訴えは再審査請求に対する裁決があったことを知った日から6か月を経過する前に提起されているから適法である。」 5 本案の争点及びこれに関する当事者の主張 本案の争点及びこれに関する当事者の主張は、次のとおり補正し、次項において当審における当事者双方の補足主張を付加するほか、原判決「事実及び理由」欄の第2の5(原判決8頁25行目から34頁3行目まで)に記 の争点及びこれに関する当事者の主張は、次のとおり補正し、次項において当審における当事者双方の補足主張を付加するほか、原判決「事実及び理由」欄の第2の5(原判決8頁25行目から34頁3行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決11頁18行目の「厚生労働省」を「財務省」に改める。 ⑵ 原判決33頁26行目の「実質的に増加したこと」を「相対的、実質的に増加したこと」に改める。 6 当審における本案の争点に対する当事者双方の補足主張(1) 控訴人ら別紙1「控訴人らの当審における補足主張」のとおり (2) 被控訴人ら 別紙2「被控訴人らの当審における補足主張」のとおり第3 当裁判所の判断 1 本案前の争点に対する判断当裁判所も、控訴人B5の訴えは、出訴期間を経過してされた不適法なものであるから却下すべきと判断する。その理由は、次のとおり補正するほか、原 判決「事実及び理由」欄の第3(原判決34頁4行目から36頁5行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決35頁3行目冒頭から同頁22行目末尾までを次のとおり改める。 「2 これを本件についてみると、前記前提事実及び証拠(乙B5)及び弁論の全趣旨によると、①控訴人B5は、P2を代理人として、平成27年5 月19日、兵庫県知事に対し、審査請求をしたこと、②同請求に対する裁決書謄本は、同年10月21日、P2が代理人として受領したこと、③控訴人B5は、P2を代理人として、同年12月2日、厚生労働大臣に対し、前記裁決について再審査請求をしたことが認められ、④控訴人B5が、平成28年4月29日、本件訴えを提起したことは当裁判所に顕著である。 上記認定事実によれば、控訴人B5は、P2が審査請求に対する 裁決について再審査請求をしたことが認められ、④控訴人B5が、平成28年4月29日、本件訴えを提起したことは当裁判所に顕著である。 上記認定事実によれば、控訴人B5は、P2が審査請求に対する裁決書謄本を受領した平成27年10月21日に審査請求について裁決があったことを知ったものと認められるから、控訴人B5が同年12月2日にした再審査請求は、審査請求に対する裁決があったことを知った日から30日の審査請求期間を経過した後にされた不適法なものである。 したがって、控訴人B5の訴えの出訴期間は、同控訴人が審査請求に対する裁決があったことを知った平成27年10月21日から起算すべきことになるところ、同控訴人の訴えは同日から6か月を経過した後である平成28年4月29日に提起されているから、出訴期間を経過してされた不適法なものとして却下すべきである。」 (2) 原判決35頁23行目の「原告B4ら5名は、原告B4ら5名」を「控訴人B5は、同人」に改める。 (3) 原判決35頁26行目の「受領権限を有する者が」を「受領権限を有するP2が、審査請求に対する裁決書であると認識しながら」に改める。 (4) 原判決36頁5行目の「原告B4ら5名」を「控訴人B5」と改める。 2 本案の争点に対する判断当裁判所も、控訴人B5を除く控訴人らの本件各処分の取消請求にはいずれも理由がないものと判断する。その理由は、当審における当事者双方の補足主張を踏まえて次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」欄の第4(原判決36頁6行目から77頁22行目まで)に記載のとおりであるから、これ を引用する。 (1) 原判決46頁15行目の末尾に改行して次のとおり加える。 「g 今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する 77頁22行目まで)に記載のとおりであるから、これ を引用する。 (1) 原判決46頁15行目の末尾に改行して次のとおり加える。 「g 今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある。」 (2) 原判決51頁8行目の「可処分所得が実質的に増加したと評価する」を「可処分所得が相対的、実質的に増加したと評価する」に改める。 (3) 原判決51頁11行目末尾に改行して次のとおり加える。 「 なお、厚生労働省では、平成23年12月から平成24年1月頃にかけて基準部会での検証作業に向けての平成21年全国消費実態調査の特別集計を 行う過程において、平成19年検証と同様に夫婦子1人世帯の一般低所得世帯(年収階級第1・十分位)の生活扶助相当支出額を算定する作業も行ったが、これにより同支出額が、平成16年から平成21年にかけて約11. 6%下落しており、生活扶助基準額を約12.6%下回るものとなっていることを把握していた。(乙共108・9~11頁、110・2頁)」 (4) 原判決51頁24行目の「実質的な可処分所得の増加分」を「相対的、実質的な可処分所得の増加分」に改める。 (5) 原判決53頁3行目末尾に改行して次のとおり加える。 「(3) 平成29年検証基準部会は、平成29年12月、本件保護基準改定を含むこれまでの保 護基準の見直しによる影響を把握した上で平成26年全国消費実態調査におけるデータを用い、生活扶助基準に関する評価検証を行って報告書(乙共80)を取りまとめたが、同検証では、本件保護基準改定後の生活扶助基準の水準に関し、夫婦子1人世帯の生活扶助基準額と、第1・十分位世帯の生活扶助相当 生活扶助基準に関する評価検証を行って報告書(乙共80)を取りまとめたが、同検証では、本件保護基準改定後の生活扶助基準の水準に関し、夫婦子1人世帯の生活扶助基準額と、第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額がおおむね均衡することが確認された (同号証17及び23頁)。また、生活扶助基準の展開部分については、年齢階級別、世帯人員別、級地別にみた一般低所得世帯の消費の実態による指数と生活扶助基準の指数との間にかい離があることが確認された(同号証17ないし22頁)。厚生労働大臣は、平成29年検証の結果を踏まえ、平成30年から令和2年にかけて、生活扶助基準の展開部分 の改定を行った。」(6) 原判決53頁4行目冒頭から54頁23行目末尾までを次のとおり改める。 「3 生活扶助基準の改定の違法性に係る判断枠組みについて(1)ア憲法25条は、全ての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営 み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言するが、かかる抽象的な概念を具体化する立法をするためには、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであるから、具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量に 委ねられており、個々の国民に対しては、同条の趣旨を実現するため に制定された生活保護法が具体的な権利を賦与しているところである(最高裁昭和39年(行ツ)第14号同42年5月24日大法廷判決・民集21巻5号1043頁(以下「朝日訴訟最高裁判決」という。)及び最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁(以下「堀木訴訟最高裁判決」と いう。)参照)。そして生活保護法は、その3条 訴訟最高裁判決」という。)及び最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁(以下「堀木訴訟最高裁判決」と いう。)参照)。そして生活保護法は、その3条において、同法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない旨規定し、要保護者に対して開始される保護(法7条)は、法8条1項において、「厚生労働大臣が定める基準により測定した要保護者の需要を基とし」と規定し、同条 2項において、保護基準は、「要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、且つ、これをこえないものでなければならない」と規定する。そうすると、仮に、保護基準が上記事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものを 超えている場合には、これに応じて保護基準を改定することが、同項の規定から要請されることになる。 イところで、これらの規定にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決 定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであるから(堀木訴訟最高裁判決、最高裁平成22年(行ツ)第392号、同(行ヒ)第416号同24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁(以下「老齢加算東京訴訟最 高裁判決」という。)、最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24 年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁(以下「老齢加算福岡訴訟最高裁判 0頁(以下「老齢加算東京訴訟最 高裁判決」という。)、最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24 年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁(以下「老齢加算福岡訴訟最高裁判決」といい、前者の最高裁判決と合わせて「老齢加算最高裁判決」ともいう。)、生活扶助基準の改定の必要があるか否か及び改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては、厚 生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである。また、生活扶助基準の減額改定がされた場合には、生活扶助費が現行の水準で支給されることを前提として生活を営んでいた被保護者にとっては、改定前の生活扶助基準によって具体化されていた期待的利益の喪失を来す側面があるばかり でなく、その生活に多大な影響が生ずることになるから、厚生労働大臣は、生活扶助基準の改定の必要性を踏まえつつ、生活扶助基準の改定による被保護者のこのような期待的利益や生活への影響についても可及的に配慮するため、その改定の具体的な方法等を定めるに当たり、激変緩和措置を講ずることの要否などを含め、上記のような専門技術 的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているものというべきである。 ウそして、生活扶助基準の改定の前提となる最低限度の生活の需要に係る評価及び生活扶助基準の改定に伴う被保護者の生活への可及的な配慮は、上記のような専門技術的な考察に基づいた政策的判断であるものの、生活扶助基準の展開部分の不均衡の有無やその程度及び物価 下落による生活保護受給者の可処分所得の相対的、実質的な増加の有無やその程度は、各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいてある程度客観的に推認し得るものであり、本 の有無やその程度及び物価 下落による生活保護受給者の可処分所得の相対的、実質的な増加の有無やその程度は、各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいてある程度客観的に推認し得るものであり、本件保護基準改定に当たってもこれらの資料に基づく検討がされているところであるから、これらの諸点に鑑みると、生活扶助基準の減額を内容とする保護基準の改定 は、①当該改定を行う必要があり、当該改定後の生活扶助基準の内容 が健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるとした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、②生活扶助基準の減額に際し激変緩和等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採 る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に、法3条、8条2項に違反し、違法となるものというべきである。そして、同大臣の上記①の裁量判断の適否に係る裁判所の審理においては、その判断の過程及 び手続に過誤、欠落があるか否か等の観点から、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等について審査されるべきであり、また、上記②の裁量判断の適否に係る裁判所の審理においては、本件保護基準改定に基づく生活扶助額の減額が被保護者の生活に看過し難い影響を及ぼすか否か等の観点から、本件保護基 準改定の被保護者の生活への影響の程度やそれが上記の激変緩和措置等によって緩和される程度等について審査されるべきである(老齢加算東京訴訟最高裁判決、老齢加算福岡訴訟最高裁判決参 、本件保護基 準改定の被保護者の生活への影響の程度やそれが上記の激変緩和措置等によって緩和される程度等について審査されるべきである(老齢加算東京訴訟最高裁判決、老齢加算福岡訴訟最高裁判決参照)。 もっとも、上記裁量判断の適否に係る裁判所の審理は、判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からするものであって、 過誤、欠落の有無のみによって決するものではないから、厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものであることを踏まえると、判断の過程及び手続において程度の如何を問わず何らかの過誤、欠落があることが認められるからといって直ちに同大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があって違法といえる わけではなく、上記過誤、欠落が重大なものであって、そのために現 実の生活条件を無視して著しく低い保護基準を設定したものとなっているなどの場合にはじめて、同大臣の判断が、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があって違法となると解するのが相当である(朝日訴訟最高裁判決、堀木訴訟最高裁判決参照)。また、判断の過程及び手続に何らかの過誤、欠落があることが認められるとしても、事後的な検証 により、改定された生活保護基準が「最低限度の生活の需要を満たす」ものであったことが認められるのであれば、その認められた判断の過程及び手続における過誤、欠落は重大なものではなく、なお裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があって違法というには足りないものであったと評すべきこととなる。 (2) 控訴人らは、厚生労働大臣の上記裁量判断において、国の財政事情は独立の考慮要素として加味されるべきではない旨主張する。 しかし、前記のとおり、憲法25条の規定を具体化して立法をするためには、国の財政事情を無視することがで の上記裁量判断において、国の財政事情は独立の考慮要素として加味されるべきではない旨主張する。 しかし、前記のとおり、憲法25条の規定を具体化して立法をするためには、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするもので あり、同規定を具体化して立法した生活保護法であっても、同法3条、8条2項における最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定すべきものであるから、これを保護基準において具体化するに当たっては、国の財政事情を含めた多方面にわたる複 雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである(堀木訴訟最高裁判決、老齢加算最高裁判決参照)。 したがって、前記の厚生労働大臣の裁量権は国の財政事情も独立した考慮要素として行使されるべきことはむしろ当然であるというべきである から、控訴人らの上記主張は採用できない。」 ⑺ 原判決54頁24行目の「(2)」を「(3)」に、55頁17行目の「(3)」を「(4)」にそれぞれ改める。 (8) 原判決56頁21行目末尾に改行して次のとおり加える。 「(1) 本件保護基準改定による生活保護受給者への健康影響の検討の欠如と本件保護基準改定の違法性に関する主張について 控訴人らは、本件保護基準改定に当たり、生活保護受給者の生活実態に係る調査を行うこと、とりわけ本件保護基準改定による被保護世帯の生活に看過し難い影響を及ぼしたか否かを検討する上で、高齢者への健康影響について検討することは不可欠であるのに、これを全く検討せずに生活扶助費を削減した点をもって厚生労働大臣の裁 による被保護世帯の生活に看過し難い影響を及ぼしたか否かを検討する上で、高齢者への健康影響について検討することは不可欠であるのに、これを全く検討せずに生活扶助費を削減した点をもって厚生労働大臣の裁量権の範囲の逸脱、 濫用は明らかである旨主張する(控訴人らの当審における補足主張第2の1)。 補正の上引用した原判決第4の3(原判決53頁4行目から56頁19行目)に判示したとおり、生活扶助基準の改定の必要があるか否か及び改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持すること ができるものであるか否かを判断するに当たっては、厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められ、生活扶助基準を改定した厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に違法というべきであり、そ の裁量判断の適否については、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等の観点から審査されるべきものであるが、その審査は、控訴人らの主張を踏まえながら、これまでの生活保護基準改定の経緯をも参考に、厚生労働大臣の判断過程を追試的に検証することによってなされるべきものである(老齢加算東京訴訟最高裁判決、 老齢加算福岡訴訟最高裁判決参照)。 しかし、上記主張に係る高齢者の健康への影響についての調査、検討は、過去の生活保護基準改定時において、これに特化した実情調査がされたり、検討されたりした事実はうかがえず、また、生活保護基準改定に当たり高齢者への健康への影響について調査、検討すべき旨を具体的に定めた法令上の根拠も見当たらない。 そうすると、高齢者の健康影響の調査、検討の欠如を 実はうかがえず、また、生活保護基準改定に当たり高齢者への健康への影響について調査、検討すべき旨を具体的に定めた法令上の根拠も見当たらない。 そうすると、高齢者の健康影響の調査、検討の欠如をいう控訴人らの主張は、実際になされた本件保護基準改定に至る厚生労働大臣の判断過程を追試的に検証するものではなく、控訴人ら自らが特定の考慮事項を選び出してこれを強調した上で厚生労働大臣のした政策的判断の不当をいうものにすぎないということができ、これをもって厚生労働大臣の判断 過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められず、上記主張は採用することができない(なお、控訴人らは、控訴人ら各自の生活実態の調査の必要性を主張し、これを踏まえずに「最低限度の生活」を下回っていないとする判断をすることができないかのようにさえ主張しているが、特定の生 活保護受給者の生活実態から憲法25条及び法3条、8条2項の規定にいう「最低限度の生活」を確定できるわけではないから、控訴人らの主張は採用の余地がない。)。」(9) 原判決56頁22行目の「(1)」を「(2)」に、58頁7行目の「(2)」を「(3)」に、67頁6行目の「(3)」を「(4)」にそれぞれ改める。 (10) 原判決59頁17行目冒頭から同頁26行目末尾までを次のとおり改める。 「 このように、厚生労働大臣は、平成16年報告書、平成19年報告書及び平成25年報告書で指摘された内容を踏まえて生活扶助基準の妥当性を検証し、その結果、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の間で消費実態と生活扶 助基準にかい離が生じ、生活保護受給世帯間で不公平が生じているとの検証 結果に基づいて、上記格差を解消するためにゆがみ調整を行った 階級別、世帯人員別及び級地別の間で消費実態と生活扶 助基準にかい離が生じ、生活保護受給世帯間で不公平が生じているとの検証 結果に基づいて、上記格差を解消するためにゆがみ調整を行ったものであって、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を否定すべき事情は認められず、ゆがみ調整を行おうとした判断が不合理なものとはいえない。」(11) 原判決66頁25行目冒頭から67頁5行目末尾までを次のとおり改 める。 「 以上によれば、厚生労働大臣がゆがみ調整を行おうとした判断は不合理なものとはいえず、また平成25年検証に誤りや不合理な点は認められないから、同検証に基づいてゆがみ調整を行った厚生労働大臣の判断過程及び手続に統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合 性に欠けるところはなく、判断の過程及び手続に過誤又は欠落があるとは認めることができない。」(12) 原判決67頁26行目の「継続していたこと、」の後に「夫婦子1人世帯の一般低所得世帯(年収階級第1・十分位)の生活扶助相当支出額では、平成16年から平成21年にかけて約11.6%下落し、生活扶助基準額を 約12.6%下回るものとなっていたこと、」を加える。 (13) 原判決68頁5行目から同頁7行目にかけての「厚生労働大臣は、平成20年以降の物価変動を生活扶助基準に反映させる改定を行うこととしたことが認められる」を「厚生労働大臣は、一般国民の生活水準との間の不均衡の是正を図りつつ、改定の減額幅が必要以上に大きくなることがないよう にするため、消費実態そのものではなく、消費の構成要素の一つである物価を指標として生活扶助基準の改定を行うこととしたことが認められる」に改める。 (14) 原判決68頁25行目の「厚 よう にするため、消費実態そのものではなく、消費の構成要素の一つである物価を指標として生活扶助基準の改定を行うこととしたことが認められる」に改める。 (14) 原判決68頁25行目の「厚生労働省」を「財務省」に改める。 (15) 原判決69頁20行目の「可処分所得が実質的に増加したと評価する」 を「可処分所得が相対的、実質的に増加したと評価する」に改める。 (16) 原判決76頁11行目末尾に改行して次のとおり加える。 「 また、昭和59年度以降、毎年度の生活扶助基準の改定が、生活保護により保障される最低生活の水準は一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるとの基本的考え方に立脚する水準均衡方式によりされてきたことからして、デフレ調整においても同様の 考え方に基づき、生活扶助相当CPIの設定に当たって総務省CPIにおける一般世帯の支出額を基に作成されたウエイトを用いたとする点について、不合理な点はないというべきである。」(17) 原判決77頁1行目の「なお」から同頁6行目末尾までを削る。 (18) 原判決77頁7行目冒頭から同頁22行目末尾までを次のとおり改め る。 「 ケ生活保護世帯における可処分所得の実質的変動について控訴人らは、生活扶助相当CPIは生活保護世帯における物価変動による可処分所得の実質的変動を測定する指標として明らかに不適切であり、これにより求めた平成20年から平成23年までの生活扶助 相当CPIの下落率4.78%をもって、平成20年以降のデフレによる「生活保護利用世帯の可処分所得の実質的増加」を示すものとはいえないから、本件デフレ調整は、「統計等の客観的な数値等との合理的関連性」や「専門的知見との整合性」に照らし、その判断の過程に過誤 よる「生活保護利用世帯の可処分所得の実質的増加」を示すものとはいえないから、本件デフレ調整は、「統計等の客観的な数値等との合理的関連性」や「専門的知見との整合性」に照らし、その判断の過程に過誤、欠落があり、裁量権の範囲を逸脱又はその濫用をしたもので あって、違法なものである旨主張する(控訴人らの当審における補足主張第3)。 しかしながら、物価変動率を算定するに当たって、統計数値の精度や信頼性との関連で生活保護受給世帯の消費構造を考慮するか、考慮するとしてどの程度考慮するかは、専門技術的知見に基づく厚生労働 大臣の裁量に委ねられているのであるから、補正の上引用した原判決 第4の4(3)アないしク(原判決67頁6行目から77頁6行目まで)の部分の判断も踏まえると、生活扶助相当CPIを用いてした物価変動率の把握を不合理ということはできず、そして、従来どおり消費を基礎とする改定を行った場合には減額幅が必要以上に大きくなることが想定されたことから(補正の上引用した原判決第4の4(3)ア)、 一般国民の生活水準との間の不均衡の是正を図りつつ、改定の減額幅が必要以上に大きくなることがないようにするために消費実態そのものではなく、消費の構成要素の一つである物価を指標として生活扶助基準の改定を行うこととし、上記方法で把握したマイナス4.78%の物価変動率をもって不均衡を調整するために相当なものと評価した 厚生労働大臣の判断は、専門委員会が公表した平成15年中間取りまとめにおいて、「消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることも考えられる」と指摘されていたこと(原判決第4の1(2)ア)も併せ考慮すると不合理ということはできない。なお、控訴人らの主張を前提とする別途の試算方法による試算結果に基づく違法主 して用いることも考えられる」と指摘されていたこと(原判決第4の1(2)ア)も併せ考慮すると不合理ということはできない。なお、控訴人らの主張を前提とする別途の試算方法による試算結果に基づく違法主 張は、本件保護基準改定に際しての厚生労働大臣の判断過程の過誤、欠落をいうものではなく、自ら妥当と考える計算方法を用いて得た計算結果を厚生労働大臣の判断と比較してその適否を論ずるものであって採用の限りではない。 コ小括 以上によれば、厚生労働大臣がデフレ調整を行おうとした判断が不合理なものとはいえず、また、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を否定すべき事情は認められないから、判断の過程及び手続に過誤又は欠落があるとは認めることができない。 (5) ゆがみ調整の2分の1処理の違法性について ア原判決第4の2(1)ウのとおり、厚生労働大臣は、ゆがみ調整とデフレ調整を行うことによる生活扶助基準の引下げの激変緩和措置として、①ゆがみ調整については基準部会の平成25年検証の結果を反映する比率を増額方向と減額方向のいずれについても2分の1とし(2分の1 処理)、②ゆがみ調整及びデフレ調整を併せて行うこと による増減額幅の上限を10%に調整し、③生活扶助基準の引下げを平成25年度から3年間かけて段階的に実施することとした。被控訴人らは、このうち2分の1 処理について、平成25年報告書には、貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子供のいる世帯への影響にも配慮する必要がある旨記載されていたところ(原判決第4の1(2) エf)、平成25年検証によって算出された指数を機械的にすべて反映させた場合には子どものいる世帯への減額率が大きくなることが予想されたこと、そして、減額分について ろ(原判決第4の1(2) エf)、平成25年検証によって算出された指数を機械的にすべて反映させた場合には子どものいる世帯への減額率が大きくなることが予想されたこと、そして、減額分について抑制する措置を執る以上、増額分についても抑制する措置を執らなければ、生活扶助基準の展開部分の適正化というゆがみ調整の趣旨を没却することにな ることから、次回の検証も見据えて増額方向及び減額方向のいずれについても2分の1 処理をしたと説明しており、この説明に係る厚生労働大臣の判断は、上記②、③とも合わさって急激な生活保護費の減額等による被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点に配慮したものとして合理的なものであるということができ、これにより 本件保護基準改定が及ぼす影響は緩和され、被保護者の生活に看過し難い影響は及ぼされることはないものと認められる。 イこれに対し、控訴人らは、2分の1処理は被控訴人らが主張するような子どものいる世帯に配慮した激変緩和措置とはいえず、その真の目的が生活扶助費の大幅な追加的削減にあったこと、そして、 2分の1処理が「ゆがみ調整」の趣旨を没却するとともに、増額と なる世帯に不利益を与えるものであって、そもそも「需要」に基づく改定でもなく、「最低限度の生活の需要」への合致も欠くことから法8条2項に違反する旨主張し、また「2分の1処理」の判断過程に関する被控訴人らの説明(論証過程)が著しく変遷している点、さらには基準部会に諮ることなく秘密裏に実施された点も問題点と して指摘する。 しかし、平成25年検証によって算出された指数を機械的にすべて反映させた場合には子どものいる世帯への減額率が大きくなることが予想されたものである以上、これを2分の1とする処理が子どものいる世帯に しかし、平成25年検証によって算出された指数を機械的にすべて反映させた場合には子どものいる世帯への減額率が大きくなることが予想されたものである以上、これを2分の1とする処理が子どものいる世帯に配慮した激変緩和措置とする説明に不合理な点はな く、2分の1処理がされたとしても、平成25年検証の結果として明らかとなったかい離の程度に比例して一定の割合でかい離を解消することに変わりない以上、これが生活保護受給世帯間の公平を図るため生活扶助基準の展開部分を改定するというゆがみ調整の本質的部分に沿う措置ということは妨げられない。控訴人らが主張する 2分の1処理の真の目的が生活扶助費の大幅な追加的削減にあったとする点についても、増減額幅の上限を10%とした上で、2分の1処理を実施した場合と実施しなかった場合に財政削減効果にいかなる違いが生じるかについては明らかとはいえないが、2分の1の処理によりゆがみ調整の結果の影響がより大きいと考えられる減額 方向の世帯において影響が減じられることは間違いがないことからすると、90億円以上の財政削減の効果があったとしても、そのことゆえに2分の1処理の真の目的が財政削減効果にあったと認めることはできない。また、増額分について2分の1 とする点についても、2分の1であっても従来の生活扶助基準額を増額するもので あって減額するわけではないし、また平成25年検証の検証方法に 一定の限界があること(補正の上引用した原判決第4の1(2)エg)からすると、その検証結果をそのまま反映させないからといって、直ちに「最低限度の生活の需要」への合致を欠き、ひいては法8条2項に違反するということにはならない。そして、本件訴訟における判断過程に関する被控訴人らの説明(論証過程)が変遷している らといって、直ちに「最低限度の生活の需要」への合致を欠き、ひいては法8条2項に違反するということにはならない。そして、本件訴訟における判断過程に関する被控訴人らの説明(論証過程)が変遷している との控訴人らの指摘は必ずしも当たらないが、仮にそうだとしても、そのことのみを理由として2分の1処理に関する厚生労働大臣の判断が不合理なものでないとする上記判断が妨げられるわけではない。 加えて、基準部会に諮ることなく秘密裏に実施されたとの点についても、生活保護基準改定に係る厚生労働大臣の裁量判断は、基準部 会のした検証の結果に法的に拘束されるものでないし、その点をおいても、前判示のとおり、平成25年報告書の概要に、子供のいる世帯への影響にも配慮する必要がある旨記載され(前記1(2)エf)、基準部会のした平成25年検証自体が激変緩和措置を講じることを求めていたと見る余地もあるし、激変緩和のために2分の1 処理をした厚生労働大臣の判断に一定の合理性が認められる以上、これを基準部会に諮ることなくしたからといって厚生労働大臣の判断に合理性がないということにはならない。 (6) 上記認定判断してきたところによれば、ゆがみ調整及びデフレ調整により生活扶助基準を改定した厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の 逸脱又はその濫用があるとは認められず、また、ゆがみ調整の2分の1処理を含む激変緩和措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。 なお、補正の上引用した原判決第4の2(3)のとおり、基準部会によ る平成29年検証によれば、本件保護基準改定後の生活扶助基準の水 準に関し、夫婦子1人世帯の生活扶助基準額と、第1・十分 、補正の上引用した原判決第4の2(3)のとおり、基準部会によ る平成29年検証によれば、本件保護基準改定後の生活扶助基準の水 準に関し、夫婦子1人世帯の生活扶助基準額と、第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額がおおむね均衡することが確認され、デフレ調整における水準が妥当であると評価されているところであるから、これのみで直ちに本件生活保護基準改定全体に違法がなかったと裏付けられているということができないとしても、少なくとも、事後的な検証 によって、本件保護基準改定におけるデフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があって違法というに足りるだけの重大な過誤、欠落があるとは認められないことが裏付けられているということができる。 したがって、本件保護基準改定は適法であるから、同改定後の保護 基準に基づきされた控訴人B5を除くその余の控訴人らに対する本件各処分は適法である。」 3 結論以上によると、控訴人B5の訴えについては不適法であるから却下すべきであり、その余の控訴人らの本件各処分の取消請求については理由がないからい ずれも棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当であって、本件各控訴には理由がない。 よって、本件各控訴をいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第8民事部 裁判長裁判官 森崎英二 裁判官 岩井一 裁判官 岩井一真 裁判官渡部佳寿子は転補につき署名押印することができない。 裁判長裁判官 森崎英二 (別紙1)控訴人らの当審における補足主張 第1 本件保護基準改定の審査で本来必要な裁量権に対する司法審査の枠組み 1 老齢加算東京訴訟最高裁判決が、堀木訴訟最高裁判決を引用するに当たり、 厚生労働大臣が「最低限度の生活」を「保護基準において具体化するに当たって」、「国の財政事情」を削除していること、老齢加算福岡訴訟最高裁判決は「国の財政事情」を考慮事項としていたが、同差戻上告審は「国の財政事情」を削除したことに加え、同京都訴訟の最高裁平成26年10月6日判決(甲共270)までもが「国の財政事情」を削除していることに明らかなように、厚 生労働大臣が「最低限度の生活」を「保護基準において具体化するに当たって」は、「国の財政事情」を独立の考慮要素として加味されるべきではないところ、原判決は、堀木訴訟最高裁判決を参照とはしているものの、同最高裁判決の判示内容である「具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれ に基づいた政策的判断を必要とするものである。」とする部分は引用せずに、「これを保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする」とのみ判示 に基づいた政策的判断を必要とするものである。」とする部分は引用せずに、「これを保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする」とのみ判示して(原判決53頁)、考慮事情として国の財政事情などは殊更に引用から除外している。 そして、原判決は、「ゆがみ調整及びデフレ調整による生活扶助基準の改定 の前提となる最低限度の生活の需要に係る評価及び生活扶助基準の改定に伴う被保護者の生活への可及的な配慮は、上記のような専門技術的な考察に基づいた政策的判断であるものの、生活扶助基準の展開部分の不均衡の有無やその程度及び物価下落による生活保護受給者の可処分所得の実質的な増加の有無やその程度は、各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいてある程度客観的に 推認し得るものであり、本件保護基準改定に当たってもこれらの資料に基づく 検討がされているところである。これらの諸点に鑑みると、本件保護基準改定は、①ゆがみ調整及びデフレ調整により生活扶助基準を改定した厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、②生活扶助基準の改定に際し、激変緩和措置をとるか否かについて の方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に、生活保護法3条、8条2項に違反し、違法となるものというべきである」(原判決54頁)、として、最高裁平成24年2月28日第三小法廷判決(老齢加算東京訴訟最高裁判決)、同4月2日 第二小法廷判決(老齢加算福岡訴訟最高裁判決)を 違法となるものというべきである」(原判決54頁)、として、最高裁平成24年2月28日第三小法廷判決(老齢加算東京訴訟最高裁判決)、同4月2日 第二小法廷判決(老齢加算福岡訴訟最高裁判決)を引用している。 2 原判決が判示した厚生労働大臣の裁量権の審査について(1) 原判決の判示するとおりに裁量権を審査すれば本件保護基準改定は違法となること以上のとおり、原判決は、厚生労働大臣の広範な裁量を認めたうえで国の 財政事情など生活外要素を考慮事情として判示しておらず、むしろ老齢加算最高裁判決の判断基準とその判断枠組みに沿って厚生労働大臣の裁量権について、その判断過程を厳格に審査すべきとする判断をしている。 そして、原判決が、その判示するとおりに「統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無」を基準として厚生労働大臣 の判断過程を厳格に審査し、厚生労働大臣の裁量権の適法性について審査を行っていれば、当然、本件保護基準改定は裁量権の範囲を逸脱、濫用し違法であるという判断に至ったはずである。この点で原判決は、本件保護基準改定に関する厚生労働大臣の裁量権に関する判断過程審査をするに当たり具体的な検討において誤ったために、本件保護基準改定が違法である と判断しなかったのである。 (2) 老齢加算最高裁判決が立てた審査基準原判決が採用している老齢加算最高裁判決が示した厚生労働大臣の本件保護基準改定に関する裁量権の審査基準を示すと次のとおりとなる。 老齢加算福岡訴訟最高裁判決は、原判決を破棄し、審理を福岡高裁に差し戻すに当たって、老齢加算に見合う特別な需要が認められるか否かに係 る審理においても、老齢加算の廃止に際して採るべき激変緩和措置の裁量判断の適否に係る審理においても、「統 、審理を福岡高裁に差し戻すに当たって、老齢加算に見合う特別な需要が認められるか否かに係 る審理においても、老齢加算の廃止に際して採るべき激変緩和措置の裁量判断の適否に係る審理においても、「統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等」を審査することを求めた。これは、厚生労働大臣が「高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断」において、まず行わなければならない「高度の専門技術的な考察」を行う に当たっての具体的な審査の基準を、最高裁が示したものと解され、行政機関の論証過程に司法的統制を及ぼすための審査基準として極めて重要な意義を持つものである。 この点、老齢加算東京訴訟の東京地裁平成20年6月26日判決(判例タイムズ1293号86頁)は、「生活扶助基準のうち、本体ともいうべき基 準生活費の減額が問題とされるのであれば、法の要求する生活水準を満たすかどうかという観点から、被保護者の生活実態に係る調査を行うことが極めて強く要請されるとも考えられる」とし、その控訴審判決(東京高裁平成22年5月27日判決(判例タイムズ1348号110頁))も、これを是認している。これらの判示するところによれば、生活扶助費本体の減額が問題 となっている本件保護基準改定においては、基準改定に先立って生活保護受給者の生活実態に係る調査を行うことが極めて強く要請されることになるが、厚生労働大臣は、こうした調査を一切行わなかったのであるから、その点で考慮すべき事情を考慮しなかった違法があるとともに(この点については、別項で健康影響調査について指摘する)、更にそれを補填する意味において も、「統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有 無等」の審査はより一層厳格に行われるべきである 健康影響調査について指摘する)、更にそれを補填する意味において も、「統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有 無等」の審査はより一層厳格に行われるべきである。 (3) 本件保護基準改定の審査で本来必要な裁量権に対する司法審査の枠組み以上を踏まえて本件保護基準改定における裁量権の審査において本来必要な司法審査の枠組みは、次のとおりとなる。 厚生労働大臣は、生活保護法8条1項によって生活保護基準の設定権限を 授権されるに当たり、同法3条及び8条2項等によって考慮すべき事項を義務付けられており、本件においては、㋐本件生活扶助基準の改定に対応する要保護者の需要の変動があるか否か及び㋑本件保護基準改定後の生活扶助基準の内容が生活保護受給者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるか否かを考慮・判断しなければならないところ、これをいずれも肯 定した厚生労働大臣の判断の過程及び手続における過誤、欠落がある場合に裁量権の範囲の逸脱、濫用が認められ、生活保護法3条及び8条2項に違反し、違法となる。 そして、かかる判断は、「高度の専門技術的な考察」を必要不可欠とするものであるから、上記㋐及び㋑の判断は、「統計等の客観的数値等との合理 的関連性や専門的知見との整合性」を有すると評価できるものでなければならないのである。 そして、本件保護基準改定が、生活保護基準の中核である生活扶助費の引き下げであること、したがって、被保護者の生活及び国民全体の社会保障に与える影響が重大であることに鑑みて、「統計等の客観的数値等との合理的 関連性や専門的知見との整合性の有無等」の審査は一層厳格に行われなければならないのである。 第2 本件保護基準改定による生活保護受給者への健康影響の検討の欠如と 計等の客観的数値等との合理的 関連性や専門的知見との整合性の有無等」の審査は一層厳格に行われなければならないのである。 第2 本件保護基準改定による生活保護受給者への健康影響の検討の欠如と本件保護基準改定の違法性 1 本件保護基準改定の判断過程審査において健康影響を検討すべき意味につい て (1) 上記第1の2の(2)の項で主張したとおり、老齢加算東京訴訟の東京地裁判決及びその控訴審判決の判示するところによれば、生活扶助費本体の減額が問題となっている本件保護基準改定においては、基準改定に先立って生活保護受給者の生活実態に係る調査を行うことが極めて強く要請されることになる。 そして、生活実態に係る調査として非常に重要なものは、本件保護基準改定によって生活保護支給額が減少するという生活保護受給者の経済状態の変化による影響によってその健康に悪影響が生じないかという点である。 この点で、老齢加算兵庫訴訟の大阪高裁平成27年12月25日判決(甲共30)は、同事件の控訴人らが老齢加算廃止による高齢者への健康 影響の検討が欠如している点が考慮事情不考慮として違法であると主張したことに対して、所得の減少など社会的要因が健康に及ぼす影響について縷々検討しているが(同判決16頁以下参照)。そのうえで、結論としては、「所得の減少や低所得であることが高齢者の健康に影響を及ぼす可能性があることは否定し得ないとしても、それゆえ、厚生労働大臣は、社会 保障審議会福祉部会内に生活保護制度の在り方に関する専門員会(専門委員会)を設置し、老齢加算の廃止に伴う影響についても検討課題とし、(中略)、特別集計や低所得者の生活実態に関する調査結果が説明資料として提示されていることからも、老齢加算の廃止による高齢者への健康影 会)を設置し、老齢加算の廃止に伴う影響についても検討課題とし、(中略)、特別集計や低所得者の生活実態に関する調査結果が説明資料として提示されていることからも、老齢加算の廃止による高齢者への健康影響について考慮しているものと認められる」と判示して(同判決18頁)、 「老齢加算の廃止が高齢者の健康に及ぼす影響について考慮していないとの控訴人らの主張は採用することができない。」旨結論づけている。 すなわち、老齢加算廃止においては、高齢者の健康影響を考慮したという点から、その廃止に至る判断過程に違法性はなかったと結論づけているのである。 翻って、本件保護基準改定では、「ゆがみ調整」、「デフレ調整」にお いて、厚生労働大臣は生活保護受給者の生活実態を全く考慮していないのであり、本件保護基準改定に当たって生活保護受給者への健康影響について全く考慮せず、その年齢、性別、世帯構成、地域などによって、生活扶助費の本体を減額することが生活保護受給者の健康にどのような影響を及ぼすか、について全く検討していない(後述のとおり、社会的要因が人の 健康に及ぼす影響は、その年齢、性別、社会的環境によって大きく異なる)。 (2) 健康影響不考慮の位置づけについてア本件保護基準改定の裁量権の範囲の逸脱、濫用の有無、及び、激変緩和措置の内容についての裁量権の範囲の逸脱、濫用の有無について、健 康影響に関する専門的知見は、「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見」として、厚生労働大臣の判断との整合性の有無について、審査すべき事項である。 イまた、生活扶助費本体の減額が問題となっている本件保護基準改定においては、健康影響に係る調査を行うことが極めて強く要請されること になるが、厚生労働大臣は、こうした調査を き事項である。 イまた、生活扶助費本体の減額が問題となっている本件保護基準改定においては、健康影響に係る調査を行うことが極めて強く要請されること になるが、厚生労働大臣は、こうした調査を一切行わなかったのであるから、それを補填する意味において、判断過程審査において、「統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等」の審査が、より一層厳格に行われるべきである、という観点からも重要である。 2 本件保護基準改定に当たって健康影響を検討する必要があること(要考慮事情)本件保護基準改定が検討されていた時点において、既に所得の減少や低所得にあること、など社会的経済的な要因が健康に重大な影響を及ぼすことについては、WHO報告や高齢者を対象とした統計調査であるAGES調査(その概 要は後述する)から明らかにされていた。そして、その健康影響の内容は、生 活保護世帯など第1段階の所得階層で他の所得階層と比較して死亡率や死亡及び要介護認定率が高率となるというように高齢の生活保護受給者の健康に回復出来ない致命的な悪影響を生じさせるような深刻な影響の発生である。更に、本件保護基準改定前の各種調査によって、本件保護基準改定前の生活保護受給の高齢者の所得階層では他の所得階層と比較して健康への悪影響が認められて いるから、本件保護基準改定によって生活扶助費の本体部分が削減されれば、一層の健康への悪影響が生じる可能性は高いことになる。そして、厚生労働省は、本件保護基準改定時点で、WHO報告やAGES調査の結果を把握していたか把握しうる立場にあった。ところが、生活扶助費の本体部分の減額という高齢者の健康に深刻な影響を及ぼす危険性が高い本件保護基準改定を実施する に当たって、厚生労働大臣は、一切、 を把握していたか把握しうる立場にあった。ところが、生活扶助費の本体部分の減額という高齢者の健康に深刻な影響を及ぼす危険性が高い本件保護基準改定を実施する に当たって、厚生労働大臣は、一切、WHO報告やAGES調査の結果など高齢者への健康影響に関する知見を考慮していない。 (1) 健康影響調査の重要性とこれを厚生労働省も本件保護基準改定時には認識していたこと所得格差など社会、経済、環境的な要因が健康に直接、間接に影響する ことは、国連機関であるWHO(世界保健機関)の報告(甲共230)によって明らかにされており、これを踏まえてWHOの方針文書では、政策決定において健康影響調査を実施することの重要性が指摘されている。 そして、このような国際的な動向をうけて本件保護基準改定が行われるよりも前の時点では我が国でも社会的要因による健康影響に着目した調査 に厚生労働省も補助金を投じるなどして取り組みを始めており、平成24年7月には厚生労働大臣が「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」(甲共247)を出すなど、本件保護基準改定が行われる以前において、厚生労働省も本件保護基準改定のように所得に影響を及ぼす政策の実施に当たっては健康影響調査を実施するべきことは十分に認 識していた。 ア WHO報告(1998年報告と2003年報告、甲共230)WHO報告書は、多数の信頼できる調査結果に基づき、低所得にあること自体だけではなく、所得格差が存在すること、所得水準が低下することが直接、間接に死亡を早めたり、疾病に罹患しやすくなるなど身体的、精神的な健康に重大な悪影響を及ぼすことを明らかにし、このような現 状を踏まえて、政府や行政機関の責務として、社会的・経済的な格差を縮小すること、社会 めたり、疾病に罹患しやすくなるなど身体的、精神的な健康に重大な悪影響を及ぼすことを明らかにし、このような現 状を踏まえて、政府や行政機関の責務として、社会的・経済的な格差を縮小すること、社会的孤立を解消し、物質的、経済的な不安を軽減するための施策を実施すること、貧困層に対して安価で栄養価の高い新鮮な食糧を供給することが健康を維持する上で重要であると指摘し、具体的な提言を行っている。 そこでは、例えば、「収入と富を再配分することによって、物質的な不公平と相対的貧困を縮小していかなければならない。より平等な社会ほど、健康の水準も高いのである。」とか、「地域社会において、住民と社会とのきずなを深め、より健康的な暮らしを実現するためには、所得格差を縮小し、社会的排除を取り除いていかなければならない。」とい う提言がされ、「どの政府も-中略-絶対的貧困を排除し物質的な不平等を無くすことが行政の責務であることを示している。」として、貧困をなくすこと、所得格差を縮小することが健康水準を維持し、また水準を高めるための行政の責務であるとまで提言されている。 したがって、低所得であること、所得格差が存在すること、所得水準が 低下することが身体的、精神的な健康を害することは、既に国際的な常識となっているといっても過言ではない。 イ WHO報告を踏まえたWHOの方針文書と勧告(甲共248「健康格差問題と社会政策」・近藤克則教授(以下「近藤教授」という。)著)WHO報告を踏まえて、2005(平成17)年には、WHOが「健康 の社会的要因に関する委員会」を設置し、2008(平成20)年には 最終報告書を発表し(甲共245)、その翌年には同報告書に基づいてWHO総会において「健康の社会的決定要因に取り組む活動を通じ 会的要因に関する委員会」を設置し、2008(平成20)年には 最終報告書を発表し(甲共245)、その翌年には同報告書に基づいてWHO総会において「健康の社会的決定要因に取り組む活動を通じた健康の不公平性の低減」に関する決議が行われている(甲共246)。 最終報告書では、1998年報告、2003年報告で取り上げられた多数の調査結果を踏まえて、社会的要因が健康格差を生じさせていること は明らかであるとして、健康の公平性を達成するために、「健康の社会的決定要因に関する委員会」を設置して、健康の社会的決定要因に関して国際的取り組みを進めるために最終報告書をまとめたことを指摘している。 そして、本件との関連で重要なことは、最終報告書が、所得格差などの 社会的要因が健康に直接影響することを明確に認め、それを前提として各国が取り組むべき施策を提言していることである。そして、提言している施策として、「すべての政策、システム、事業において健康の公平性を考慮すること」が求められている(甲共245・18頁以下)。そして、「何をなすべきか」、について、「健康の社会的決定要因に対し て、今行動を起こすために必要なエビデンスは十分揃った」として、各国における施策の実施を求めている(甲共245・31頁)。その施策として、健康の社会的決定要因について健康影響調査の実施を求めている(同頁)。 WHO総会決議(甲共246)では、最終報告書を考慮して、国連の機 関をはじめ、政府間組織、市民社会、民間部門を含む国際コミュニティに対して、①最終報告書とその勧告に留意すること、②WHO加盟国及びWHO事務局と協力して、各種の施策やプログラムが健康の不公平性に与える影響の評価と、健康の社会的決定要因への対処を進めることなどを求めている。 報告書とその勧告に留意すること、②WHO加盟国及びWHO事務局と協力して、各種の施策やプログラムが健康の不公平性に与える影響の評価と、健康の社会的決定要因への対処を進めることなどを求めている。 そして、2010(平成22)年にアデレイド宣言で保険医療の枠を越 えた取組みの必要性が提唱され、健康の社会的決定要因に影響する政策の多くは、保健・医療を専門としない部門が立案・施行する政策であることを指摘し、全ての政策において健康の視点を考慮する「HealthinALLPolicies」(HiAP)が必要であると宣言された(甲共248「健康格差問題と社会政策」)。 このように、所得格差など社会経済的要因によって健康に悪影響を及ぼし健康格差が生じることは既に多数の研究や調査によって明らかになっており、既にこの点は国際的にも常識であって、社会経済的要因による健康格差を是正するために、あらゆる政策の実施に当たっては健康影響調査を実施することが政府に対して求められていることも明らかである。 ウ健康影響調査の実施はWHOのみならず国際的な動きであること健康影響評価(健康インパクト評価、HIA)とは、WHOによれば、「政策・施策・事業による人々の健康への潜在的な影響と人々の間の影響の分布を評価するための手続、方法、ツールの組み合わせ」を言う(甲共236・日本公衆衛生雑誌54巻2号73頁「HearthImpa ctAssessmentの基本概念および日本での今後の取り組みに関する考察」)。 健康影響評価を巡る動きは、1995(平成7)年まで遡ることができ、1999(平成11)年には、WHOヨーロッパが合意文書を出している。それらの中では、労働・交通・税制・所得保障・再分配政策などま で、健 巡る動きは、1995(平成7)年まで遡ることができ、1999(平成11)年には、WHOヨーロッパが合意文書を出している。それらの中では、労働・交通・税制・所得保障・再分配政策などま で、健康に影響を及ぼす例が挙げられ、幅広い政策について健康への影響を評価する必要性が指摘された。その後、WHOやEUなどの国際機関、イギリス、米国を初めとする多くの政府に取り入れられ、WHO最終報告では健康格差に着目した諸政策のインパクトを評価・モニタリングすることが勧告されている。 そして、欧州諸国における健康影響評価や所得による健康格差の是正の ための取り組みがされている。 イギリスでは、政府が設置したアチェソン委員会によって、健康格差が拡大していることが報告され(1998年報告)、同時期に発表された白書では、貧困や環境、雇用など、社会環境因子が健康に影響を及ぼしていること、政府がそれらに責任を負うべき事などが明記され、同年に 行動計画が発表されている。そして、2003年には、政府がこの問題に取り組むプログラムが公表され、この政府文書では、この問題の責任は政府にあることを明言し、政府レベルでは、医療や健康政策担当の保健省だけではなく、首相官邸や内閣府から財務省、通商産業省まで関与する取り組みを行っている(甲共248「健康格差問題と社会政策」)。 スウェーデンにおいては、公衆衛生法を改正して、健康に影響する社会的要因を列記し、健康格差是正のために取り組むべき諸政策を定めている。健康に影響する社会的要因としては、所得保障政策など多くの項目が挙げられ、公衆衛生政策としては、11分野が挙げられているが、その中には、上位に、社会参加や所得保障など社会的要因に関わる政策が 位置づけられている(甲共237「マクロレベ 策など多くの項目が挙げられ、公衆衛生政策としては、11分野が挙げられているが、その中には、上位に、社会参加や所得保障など社会的要因に関わる政策が 位置づけられている(甲共237「マクロレベルにおける対策」728~729頁)。 その他ヨーロッパ諸国においては社会的要因によって健康影響があることを前提に政策決定において健康影響調査をすることはいわば常識となっている(甲共239「健康格差対策の総合戦略」445~447頁)。 WHO報告書の初版が出た1998年頃から、ヨーロッパ諸国には、健康の不平等を抑制する数値目標を掲げる動きも広がっていたし、法律に明文化している国も増えている。 このように、既にヨーロッパでは、遅くとも1990年代終わりから、健康格差への対策が不可欠と認識され、健康の公平の原則や健康格差削 減の目標を掲げ、年次推移をモニタリングし、取り組みのあり方を再評 価することの重要性とそれらのための対策がすでに取られていたのである。 エ厚生労働大臣の告示など我が国での対応このような国際的な動向をうけて、我が国でもWHOの勧告に沿った動きが学界からはじまり、日本学術会議が「わが国の健康の社会格差の現 状理解とその改善に向けて」と題する提言を平成23年に発表した(甲共248「健康格差問題と社会政策」、甲共249)。その中では、内閣府や厚生労働省に向けて健康の社会格差のモニタリングと施策立案の体制整備、健康影響評価(HIA)を政策決定時に積極的に行うことが提言されている。 厚生労働省も、平成24年度の厚生労働科学研究費補助金の公募課題に「健康の社会的決定要因」を掲げ、次期の「国民健康づくり運動」の「4つの目標」の中に「社会環境の質の向上」「健康格差の縮小」を掲げるに至っている(甲 成24年度の厚生労働科学研究費補助金の公募課題に「健康の社会的決定要因」を掲げ、次期の「国民健康づくり運動」の「4つの目標」の中に「社会環境の質の向上」「健康格差の縮小」を掲げるに至っている(甲共248「健康格差問題と社会政策」)。 そして、平成24年には厚生労働大臣の告示「国民の健康の増進の総合 的な推進を図るための基本的な方針」(甲共247)によって、社会経済的要因が健康格差を生じさせることを認め、その是正のための取り組みを実施する方針を明らかにしている。 同告示は、健康増進法7条1項に基づき、厚生労働大臣が、国民の健康の増進の総合的な推進を図るために策定した基本的な方針であって、同 年7月10日、厚生労働大臣により出され、平成25年4月1日から適用されている。 同告示では「第一国民の健康の増進の推進に関する基本的な方向」として、「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」を冒頭に掲げて、その中では、「健康格差」として「地域や社会経済状況の違いによる集団間の健 康状態の差をいう」と定義して、社会経済状況によって健康格差が生じ ていることを認めたうえで、その格差の縮小を実現することを目標として掲げている。 また、同告示の「第一国民の健康の増進の推進に関する基本的な方向」では、「個人の健康」が「社会環境の影響を受けること」を認めて、地域や世代間の相互扶助など、地域や社会の絆などにより、社会全体が相 互に支えあいながら国民の健康を守る環境を整備することを基本的な方向として提示している。 更に、同告示「第二国民の健康の増進の目標に関する事項」では、「目標設定の考え方」として「健康寿命の延伸及び健康格差の縮小の実現に向けて、生活習慣病の発症予防や重症化予防を図るとともに、社会 生活を営むために必 民の健康の増進の目標に関する事項」では、「目標設定の考え方」として「健康寿命の延伸及び健康格差の縮小の実現に向けて、生活習慣病の発症予防や重症化予防を図るとともに、社会 生活を営むために必要な機能及び向上を目指し、これらの目標達成のために、生活習慣の改善及び社会環境の整備に取り組むことを目標とする」としている。そして、「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」を実現するための社会環境の整備として、「居住地域での助け合いといった地域のつながりの強化」を挙げている。 所得格差、所得の減少などの社会経済的要因が健康格差を生じていること、そのために本件保護基準改定前に、生活扶助費減額による健康影響調査を実施すべきであったことは、同告示が「社会経済状況」によって健康格差が生じていることを認めたことでも裏付けられるし、社会経済的要因による健康影響の発生を厚生労働省自身が認識していたことも裏 付けられる。 また、同告示は、健康格差の是正のために社会環境の整備、そのために地域社会でのつながりの強化、地域や社会の絆を強化して、社会全体での相互の支え合いが重要であると指摘しているが、これは、生活保護受給者のなかでも特に高齢者の健康状態を維持するには、高齢者の社会的 接触をはかり、高齢者の閉じこもりや孤立化を防ぐことが高齢者の健康 に重要であることを裏付けている。 このように厚生労働大臣が、社会経済的要因によって健康格差が生じること、社会的接触が図られず、高齢者が孤独化することによる健康への悪影響を肯定することを認めた告示を出していることから、本件保護基準改定は、特に高齢者の健康に直接悪影響を及ぼす危険な措置であった こと、そのため、本件保護基準改定に当たっては、実際の高齢者の生活実態を調査し、本件保護基準改定に先 ていることから、本件保護基準改定は、特に高齢者の健康に直接悪影響を及ぼす危険な措置であった こと、そのため、本件保護基準改定に当たっては、実際の高齢者の生活実態を調査し、本件保護基準改定に先立って健康影響調査を行うべきであったことは、明らかになったと言わねばならない。 したがって、健康影響評価をせず、健康影響の検討をすることなく本件保護基準改定を行ったことが違法であることは、この告示からも裏付け られるというべきである。 オまとめ以上の通り、WHOの提言や多くの信頼できる調査結果などをうけて、社会的な要因が健康に影響し、健康格差を是正するために社会的な諸施策を実施することが重要であること、そして所得の減少や低所得である ことなど経済的な要因が健康に影響を及ぼすために、諸施策を実施する際には、それによる健康影響を把握するために健康影響評価を実施すべきこと、が、本件保護基準改定の相当以前から欧州諸国において当然視されていたことが明らかである。 そして、我が国においても社会経済的要因、そのなかでも所得の減少、 低所得であること、高齢者が社会的接触を図れず孤立化すること、が健康に重大な影響を与えること、そのため本件保護基準改定が特に高齢者の健康に重大な影響を及ぼす可能性がある施策であることは、本件保護基準改定を検討する時点で、厚生労働大臣において認識するところとなっていた。 (2) 所得減少や低所得など社会的要因と健康影響に関する我が国の研究 ア近藤教授グループによる国内における大規模調査について(甲共231~241、甲共242)同調査は、AGES(愛知老年学的評価研究)プロジェクトと呼ばれ、高齢者ケア政策の基礎となる科学的知見を得る目的で、愛知県など自治体の協力を得て平成11年 いて(甲共231~241、甲共242)同調査は、AGES(愛知老年学的評価研究)プロジェクトと呼ばれ、高齢者ケア政策の基礎となる科学的知見を得る目的で、愛知県など自治体の協力を得て平成11年度から開始された調査である。 調査対象は、要介護認定を受けている高齢者、その家族介護者、要介護認定を受けていない一般高齢者である。一般高齢者のデータは、平成15年度に3県15自治体から収集した代表サンプル3万2891人分、更に平成16年度に3自治体のデータが加わり、平成18年度には、これらのうち追跡調査に協力を得られた3県10自治体のデータに基づく。 近藤教授グループの調査分析の一つとして、「低所得と死亡率、死亡又は要介護割合の関係」の報告がある(甲共233)。 これは65歳以上の高齢者2万8000名余りを対象とした調査で、所得毎の死亡率や要介護になる率を調査している。 この調査において低所得の世帯は、「老齢福祉年金(年約40万円)や 生活保護受給レベル」であり、最も高所得の世帯は「課税対象の合計所得額200万円以上(年金受給なら年320万円以上)」のグループである。 その結果、死亡率でみると、男性については、最も所得が低い第1段階の男性の死亡率は、最も所得の高いグループの約3倍となっている。 また、死亡又は要介護となった割合は、最も所得が低い第1段階のグループは最も所得が高いグループの男性で約2.7倍、女性で約2倍高くなっている。 このように、生活保護の所得レベルにおいて、他の所得階層より死亡率、死亡及び要介護認定率が高く、それが統計的に有意であったということ は、生活扶助費を受給している高齢者の収入が、本件保護基準改定によ り減少したことで、死亡や要介護認定という高齢者の健康に重大な影響 定率が高く、それが統計的に有意であったということ は、生活扶助費を受給している高齢者の収入が、本件保護基準改定によ り減少したことで、死亡や要介護認定という高齢者の健康に重大な影響を及ぼす可能性が高いことが統計的に裏付けられている。 更に、近藤教授の調査では、所得が低いほど、うつ状態に陥りやすく、その理由として、主に、aストレス対処能力が低いこと、b社会的ネットワークが乏しいこと、c思考がネガティブになりやすいこと、が指摘 されている(甲共235、甲共242)。 ところで、70歳以上の高齢者の生活保護受給者に対しては老齢加算が支給されていたところ、平成16年から平成18年にかけて老齢加算が廃止された。元々老齢加算は、高齢者にとっての特別な需要、すなわち、「観劇、雑誌、(中略)茶、菓子、果物等のし好品」(甲共227、48 0頁以下)、「近隣、知人、親戚などへの訪問や墓参などの社会的費用が他の年齢層に比して余分に必要となる」(甲共229の7頁)、「教養娯楽費・・・孤独を免れるため、老人クラブ、旅行、観劇等、テレビ購入等、交際費・・・孤独を免れるため、子や孫との相互訪問、近隣の老人とのつき合い、同年輩者の死に伴う葬祭費、子や甥、姪等の冠婚費等 のつき合いの費用が多く必要、交通通信費・・・老人クラブ出席、旅行、子や孫、親戚等とのつき合いに伴う割高な交通費(タクシー使用等)、子や孫との通信費(電話代、葉書代等)」(甲共228「加算の定性的説明について」)、などを賄うために支給されていた。しかし、老齢加算が廃止されたことで、高齢者は、以上のため費用を生活扶助費から支出 しなければならなくなった。 したがって、生活保護受給者のうちでも特に高齢者にとっては、生活扶助費の支給額が高齢者の交際費や社会的接触の ことで、高齢者は、以上のため費用を生活扶助費から支出 しなければならなくなった。 したがって、生活保護受給者のうちでも特に高齢者にとっては、生活扶助費の支給額が高齢者の交際費や社会的接触のために必要な費用を賄うために十分なものであることは、高齢者の孤立化を防ぎ、社会とのつながりを維持して高齢者を社会的に孤立させない、社会的な支援を受けや すくし、趣味などを通じて高齢者に生き甲斐を持たせるという意味を有 している。そして、近藤教授の調査を通じて、高齢者の生活の実態に即して、このような社会的接触をするために必要な需要を満たすだけの生活扶助費を支給することが、高齢者の精神的、身体的な健康に直結することが明白となっているのである。 イ 「健康の社会的決定要因と医療経済・政策学」(甲共243) 「健康の社会的決定要因と医療経済・政策学」(甲共243)は、平成27年3月31日発行された近藤教授による論文である。 同論文では、前述した厚生労働大臣の告示として「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」(甲共247、前述のとおり同方針では、厚生労働大臣が、「健康格差」として、「地域や社会経済的 状況の違いによる集団間の健康状態の差」と定義して、社会経済的要因による健康格差を認めている)が平成26年版の厚生労働白書に取り上げられていること、この厚生労働白書では、「社会環境の改善を図り、健康格差の縮小を実現できる社会」を目指すことが我が国の政策として掲げられており、これまでWHOや近藤教授らが主張してきた社会経済 的要因のよる「健康格差」の縮小が、我が国の政策の基本的方向として取り上げられていることを紹介している。 そして、同論文では、我が国の政策として「健康格差の縮小」が掲げられるまでの経 経済 的要因のよる「健康格差」の縮小が、我が国の政策の基本的方向として取り上げられていることを紹介している。 そして、同論文では、我が国の政策として「健康格差の縮小」が掲げられるまでの経過、国内外での動向が紹介されており、WHOなど国際的動向として社会経済的要因によって健康格差が生じること、このような 健康格差を縮小させることが世界各国の政策として取り上げられていることを指摘している。 また、同論文では、国内の調査結果として、所得と健康格差をはっきり示す平成24年発表の調査結果が引用されている(甲共243・84~85頁、引用文献40)、近藤教授らのグループによる調査)。すなわち、 介護保険料データを用いた分析によって、死亡ハザード比は、所得の最 高の階層(引用文献によれば、第5レベルで、市町村民税本人課税で合計所得金額が250万円以上の者)と比べて最低層(第1レベルで、生活保護受給者と市町村民税非課税世帯かつ老齢福祉年金受給者)では、男性が3.5倍、女性が2.48倍となり、いずれも有意に死亡率が高かったことを示している。この調査結果は、所得水準が死亡という最も 深刻で致命的な健康影響という健康格差の原因となっていることを示す極めて重大な結果を示している。そして、この調査結果は、前述の高齢の男性が生活保護受給レベルの低所得の場合に死亡率が3倍となるとする近藤教授らグループによる調査結果(甲共233、234)を裏付ける結果となっている。 このように、近藤教授の論文によって、社会経済的要因、特に低所得、所得の低下などによって高齢者にとって致命的とも言える健康悪影響が生じること、これまでWHOや近藤教授が主張してきた社会経済的要因による健康格差をようやく厚生労働省も認め、厚生労働省の告示にも取 、所得の低下などによって高齢者にとって致命的とも言える健康悪影響が生じること、これまでWHOや近藤教授が主張してきた社会経済的要因による健康格差をようやく厚生労働省も認め、厚生労働省の告示にも取り上げられ、健康格差の縮小が我が国の政策に取り上げられたこと、が 明らかとなっており、本件保護基準改定によって生活扶助費を削減するには健康影響調査が必要であることを裏付けている。 ウ低所得、所得の減少が高齢者の心理的健康を害するという調査結果(甲共231、232)AGES調査の結果、男女とも、社会的経済的地位(教育年数や所得) が低い層ほど、心理的健康を害する可能性が高いとされている。 まず、「検証健康格差社会」(甲共231)17頁において、近藤教授は、「男女ともに、教育年数、所得(以下、社会的経済的地位)が低い層ほど、主観的健康観が悪い者やうつ状態の者の割合が有意に高い。また、社会的経済的地位が低い層で、健康指標が悪い者の割合が急増する傾向 が認められた。社会的経済的地位と健康指標の関連は男性よりも女性に おいて弱いことが、先行研究で指摘されている。本分析の結果でも、うつ状態の者の最低所得層(等価所得100万円未満)における最高所得層(等価所得400万円以上)に対する割合は、男性で6.9倍、女性で4. 1倍であった。」とする(なお、等価所得の意味については、甲共231の5頁参照)。 また、近藤教授は、「検証健康格差社会」(甲共231)102頁において、「経済的不安が強い者に鬱状態の者が多いことがわかる。」と述べている。 さらに、近藤教授は、「社会的経済的地位の低い層には、抑うつなどの心理的健康状態がよくない者が多い。そして、うつは、自殺の原因にな るだけでなく、虚血性心疾患などの身体疾患の 述べている。 さらに、近藤教授は、「社会的経済的地位の低い層には、抑うつなどの心理的健康状態がよくない者が多い。そして、うつは、自殺の原因にな るだけでなく、虚血性心疾患などの身体疾患の危険因子であり、予後不良因子であることもわかってきている。」(甲共232「健康格差社会」7頁)、「個人の因子として、社会的サポートが乏しいこと、低学歴であること、低所得者であること、経済的な困窮などの社会経済的因子が、抑うつの危険因子であるという報告は多い。」(同89頁)と述べる。 同調査で比較している最低所得層は等価所得100万円未満であり、生活保護受給レベルの所得階層を含んでいる。 このように、低所得者層ほど、うつ状態に至る可能性が高いのであり、したがって、生活保護費を削減することは、さらに低所得者層の困窮状態に拍車をかけることとなり、うつ状態など精神的健康を害する可能性 を高めるものということができる。 エ公衆衛生モニタリング・レポート(5)「高齢者における健康の社会格差」(甲共244)これは、日本公衆衛生学会公衆衛生モニタリング・レポート委員会により平成23年に発表された論文である。 同書では、海外での健康格差の研究結果と施策を紹介して、国際的には、 社会経済的な要因によって健康格差が生み出されているという多くの調査結果があり、その結果に基づき、健康格差を生み出す社会格差そのものの是正のための諸施策の実施、健康影響調査(諸施策の健康へのインパクト・アセスメント、HIA)の実施が求められていることを指摘している。 また、同書では、我が国の研究成果が紹介され、それらの研究結果から、我が国の高齢者において、社会経済状態により、死亡及び主要疾患(がん、脳卒中、高血圧など)、要介護状態やそれ 摘している。 また、同書では、我が国の研究成果が紹介され、それらの研究結果から、我が国の高齢者において、社会経済状態により、死亡及び主要疾患(がん、脳卒中、高血圧など)、要介護状態やそれをもたらす介護リスク(転倒・低栄養・口腔機能など)、主観的健康感、抑うつなど心理的健康、社会的健康(閉じこもり、社会参加、社会的サポート、虐待など) において、差異があることが指摘されている。そして、これらの研究結果から、「わが国の高齢者においても、社会経済状態により、健康に格差があることが明らかになった」として、これまでの我が国の研究結果、調査結果から、我が国においても社会経済的要因によって高齢者の健康格差が発生していることが明確であると指摘している。 そして、重要なのは、同書において、健康の社会格差の実態把握のために、① 社会経済状態による健康格差のモニタリングの必要性、② さまざまな社会・健康政策が高齢者の健康に与える影響の事前評価システム(健康インパクト・アセスメント、HIA)の導入の必要性、を強調して指摘されていることである。 特に、健康インパクト・アセスメント(健康影響調査、HIA)については、次のように指摘して必要性を認めている。すなわち、「健康問題をもつ高齢者は多く、保健医療福祉制度の改革によって高齢者の健康は直接に影響を受ける可能性がある。健康政策の制度設計、導入に当たっては、高齢者の健康への影響が事前にアセスメントされ、考慮される必 要がある。これはWHOも健康の社会格差の改善のために推奨している ことである。(中略)また健康政策以外の社会政策の変更や新規導入、例えば生活保護の高齢者加算廃止などによっても、高齢者の健康が影響を受ける可能性があり、健康への影響評価が求められる」(同 ことである。(中略)また健康政策以外の社会政策の変更や新規導入、例えば生活保護の高齢者加算廃止などによっても、高齢者の健康が影響を受ける可能性があり、健康への影響評価が求められる」(同論文565頁 「2)社会政策・健康政策の健康への影響評価」の項参照)。 そして、同書では、国への提言として、「2) 高齢者に関わる社会政 策の健康インパクト・アセスメントの実施」を求めており、その中でも「高齢者に関わる社会政策の全てにわたって高齢者の健康へのインパクト・アセスメントやその影響のモニタリングを行うことを提言する」として「生活保護の高齢者加算の廃止など、高齢者の健康への影響が予想される政策について、特に低所得の高齢者の健康に与える影響を事前に 評価し、また事後にはモニタリングし、必要に応じて社会保障制度の見直しにつなげる体制を整備することが必要である」と指摘している。 このように同論文(「3 今後の課題」565頁)では、WHOの提言、我が国での調査結果などを踏まえて、社会経済的要因によって我が国においても高齢者の間に健康格差が生じていることを明確に認め、国への 提言として、高齢者の健康に影響する諸施策を実施する際には健康影響調査を実施すべきことを求め、その中では、健康政策以外の社会政策の変更や新規導入、たとえば生活保護の高齢者加算廃止などによっても、高齢者の健康が影響を受ける可能性があり、高齢者への健康影響を調査すべきこと、を指摘している。 オ本件保護基準改定前の生活保護受給の高齢者への精神的な健康への影響、身体的健康への影響に関する調査結果は本件保護基準改定による高齢者への健康影響を裏付けていること以上の低所得層において精神的な健康への悪影響、身体的な健康への悪影響を明らかにする調査結果は、 、身体的健康への影響に関する調査結果は本件保護基準改定による高齢者への健康影響を裏付けていること以上の低所得層において精神的な健康への悪影響、身体的な健康への悪影響を明らかにする調査結果は、同時に本件保護基準改定による精神 的、身体的な健康影響の存在を裏付けている。 第一に、上記の各調査結果を見れば、現に生活保護受給レベルの所得層で低所得による健康への悪影響が認められているのである。そこで、本件保護基準改定によって生活保護を受給している所得階層の高齢者の所得が減少すれば、その減少によって健康被害が生じる可能性が極めて高いことを意味している。 この点は、近藤教授も意見書(甲共235)において次のとおり指摘している。「以上、所得水準が健康に与える影響、健康格差に対するWHOやヨーロッパの動き、健康インパクト評価の3点について述べてきた。 所得が減ることが、健康や生存に悪影響を及ぼすことは、既に科学的に確立した事実である」、「2004年時点で、生活保護をうけているよ うな低所得層の所得を減らせば、健康への悪影響があることは十分に予見された。かつ、先進国で広く取られてきた健康権・生存権への配慮に基づく施策の動向と比べると、日本で行われた「老齢加算の廃止」は、他の先進国の動きに逆行するものであった。それをあえてやるのであれば、他の先進国であれば、少なくとも健康への潜在的な悪影響がないこ とを確認することが求められた蓋然性が高い。」(甲共235・11~12頁)。 第二に、低所得が健康へ悪影響を及ぼす原因からみても、本件保護基準改定によって健康影響を生じることは裏付けられている。 すなわち、低所得が精神的な健康を害する理由として、近藤教授は、① ストレス対処能力が低いこと、② 社会的ネットワー ても、本件保護基準改定によって健康影響を生じることは裏付けられている。 すなわち、低所得が精神的な健康を害する理由として、近藤教授は、① ストレス対処能力が低いこと、② 社会的ネットワークが乏しいこと、③ 思考がネガティブになりやすいことを挙げている。 前述のとおり、元々老齢加算は、高齢者を社会的に孤立させない、社会的な支援を受けやすくし、趣味などを通じて高齢者に生き甲斐を持たせるという高齢者にとっての特別な需要を充たす役割を果たしてきた。こ の老齢加算が平成18年までに全廃された以降は生活扶助費によってこ れらの需要を賄わなければならなかったのである。したがって、老齢加算を廃止した時点では、この特別の需要は生活扶助費の本体部分で賄えるとしても、その生活扶助費を本件保護基準改定で更に削減すれば、その削減によって特別の需要が賄えるのかどうかが問題とされなければならず、特に本件保護基準改定による高齢者に対する健康影響の問題とし て検討されなければならないことである。 (3) 小括以上の通り、低所得者であること、所得格差が存在すること、所得水準が低下することが、直接、間接に身体的健康や精神的な健康に深刻で重大な悪影響を及ぼすことが明らかである。そして身体的な影響の中には、死 亡率や要介護認定を受ける率など、生命や身体に重大な悪影響を及ぼすことも含まれていることも明らかである。 そして、これらの死亡率や健康への悪影響は、単に現時点で最貧困層にいるということだけではなく、所得が下がることに伴って連続的に影響が認められることはWHO報告で紹介された各種調査結果から明らかで、同 報告でも直接に指摘しているところである。すなわち、WHO報告でも、「社会的・経済的に不利な条件下では、一生を通じて人々の 認められることはWHO報告で紹介された各種調査結果から明らかで、同 報告でも直接に指摘しているところである。すなわち、WHO報告でも、「社会的・経済的に不利な条件下では、一生を通じて人々の健康に影響を及ぼす。社会の最下層部に位置する人々は、最上層部に属する人々に比べて、重い病気にかかったり、早死にする割合が、少なくとも2倍に達する。」(甲共230・10頁、「社会格差」)と指摘し、所得水準が低下す ること自体によって健康に悪影響が生じることを指摘している。 このように現時点で貧困状態にあるというだけではなく、所得が引き下げられることによって、重大な健康影響を及ぼすという事実は、本件保護基準改定によって生活扶助費を減額するに当たって、特に高齢の受給者の健康への悪影響を考えるうえで極めて重大である。 また、老齢加算廃止後においては、生活扶助費の本体部分によって、高 齢者の食事内容、保健衛生、社会的交際、趣味などの特別な需要を賄ってきたところ、これらの特別な需要を充たすことは、高齢者の身体的健康、精神的健康に直接、間接に影響を及ぼすことも前述の通りであり、この点も本件保護基準改定をする際の高齢者の健康影響を考える上で極めて重要である。 そして、本件保護基準改定前の時点においてすら、生活保護受給の高齢者の所得階層で健康への悪影響が認められているのであるから、本件保護基準改定によって、生活扶助費の本体部分が減額されれば、その結果、健康への悪影響が更に増大する可能性が高いといえる。 このように、本件保護基準改定によって生活扶助費の本体部分を減額し て所得を削減することは、それによって高齢者の健康へ直接、間接に悪影響を及ぼす蓋然性が極めて高い政策であったことは、国際的にも、我が国における調査を見ても よって生活扶助費の本体部分を減額し て所得を削減することは、それによって高齢者の健康へ直接、間接に悪影響を及ぼす蓋然性が極めて高い政策であったことは、国際的にも、我が国における調査を見ても、明白であったことになる。 したがって、本件保護基準改定を決定する過程において高齢者への健康影響を考慮する必要があった(要考慮事情であった)ことは明らかである。 3 本件保護基準改定において健康影響調査をしなかったことによる本件保護基準改定の違法性(1) 本件保護基準改定が支給対象世帯の健康に深刻な影響を及ぼすおそれのある政策であること生活保護費受給者は、本件保護基準改定前の段階にあっても、他の所得 階層と比較して既に健康に悪影響を及ぼす程度の生活扶助費であったことは、既に前項で検討した各種調査結果から明らかである。 それにもかかわらず、本件保護基準改定によって更に生活扶助費が削減されているのであるから、本件保護基準改定は、高齢の生活保護費受給者の健康状態に極めて重大な悪影響を及ぼす可能性が高い施策である。 このことは、各種調査の実施期間からも裏付けられている。前述の近藤 教授ほか日本福祉大学の研究グループが行った死亡率、要介護認定率の調査対象期間(平成15年11月1日から平成19年10月31日)は、いずれも本件保護基準改定の実施前の期間である平成16年4月から平成18年4月までであり、この段階でも前述の通り生活保護世帯など第1段階の所得階層で他の所得階層と比較して死亡率や死亡率及び要介護認定率が 高率となっているのである。これは、本件保護基準改定前の所得水準ですら健康に悪影響があったことを意味し、その後に段階的に本件保護基準改定が実施されたことで支給対象者の健康に悪影響を与えた可能性を示すデー なっているのである。これは、本件保護基準改定前の所得水準ですら健康に悪影響があったことを意味し、その後に段階的に本件保護基準改定が実施されたことで支給対象者の健康に悪影響を与えた可能性を示すデータである。この調査結果を見ても、本件保護基準改定が、高齢の生活保護費受給者の健康状態に極めて重大な悪影響を及ぼすおそれが大きいこ とは明らかである。 (2) 健康影響は考慮すべき事情になること生活保護法3条では、生活保護法で保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないと規定され、これを検討するに当たっては、「要保護者の年齢別、性別、世帯 構成別、所在地域別、その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮」しなければならず(同法8条2項)、「保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人または世帯の実際の必要の相違を考慮して」行わなければならない(同法9条)。 そして、本件保護基準改定は、特に高齢者の身体及び精神的な健康への 悪影響を及ぼす可能性が高い社会政策であることは前述のとおりであり、更にその健康影響は、高齢者の死亡率や要介護認定率などその身体や精神状態に重大な悪影響を及ぼす危険性が高く、一旦健康影響が生じてしまえば取り返しのつかない重大な結果をもたらすものである。 したがって、生活扶助費を削減するに当たっては、年齢別、性別、健康 状態という点において、特に高齢者における健康影響が、当然に考慮事情 となるのであり、本件保護基準改定を決定するに当たり厚生労働大臣が、本件保護基準改定による健康影響調査を行うべきことは当然であった。 (3) 本件保護基準改定の違法性前述の通り、健康で文化的な最低限度の生活を保障する生活保護制度において、本件保護基準改 臣が、本件保護基準改定による健康影響調査を行うべきことは当然であった。 (3) 本件保護基準改定の違法性前述の通り、健康で文化的な最低限度の生活を保障する生活保護制度において、本件保護基準改定による生活扶助の削減、廃止など、名目はとも あれ、従来の保護内容に対して何らかの不利益な変更を行う場合には、それによる健康影響評価を慎重に行うべきことは、厚生労働省が本件保護基準改定を決定した時点では既に国際的にみれば当然のことであった。 特に、高齢者にとって本件保護基準改定で削減された費用で賄うことが予定されていた需要は、高齢者の身体的、精神的な健康に直接、間接に重 大な影響を及ぼすものであり、ここでの身体的な影響には死亡率や要介護となることなど、生命身体に回復が出来ない非常に深刻で重大な影響を及ぼすものが含まれていた。 そして、所得水準の低下など社会的な要因が健康に重大な影響を及ぼすことを厚生労働省も十分に承知していた。 したがって、本件保護基準改定に当たって、生活扶助費が削減されても高齢者の健康を維持するために必要な特別需要にみあう支出が可能であるか、その削減による高齢者の健康に及ぼす影響を調査し、評価するべきであった。 ところが、厚生労働省は本件保護基準改定に伴う健康影響に関する一切 の調査を行わず削減を実施した。 このように、厚生労働大臣が、本件保護基準改定を決定する際に考慮すべきであった健康影響を考慮せずに本件保護基準改定を決定していることは、本件保護基準改定の判断過程で考慮すべき事情を考慮しなかったことにより、本件保護基準改定は裁量権の範囲を逸脱、濫用するものであって 違法である。 4 結論老齢加算最高裁判決の判断基準に基づき本件保護基準改定による被保護世帯の生活に看過 により、本件保護基準改定は裁量権の範囲を逸脱、濫用するものであって 違法である。 4 結論老齢加算最高裁判決の判断基準に基づき本件保護基準改定による被保護世帯の生活に看過し難い影響を及ぼしたか否かを検討するうえで、高齢者への健康影響について検討することは不可欠である。 そして、前記のAGES調査やWHO報告などの各種調査や知見からは、所 得格差による健康影響が生じること、特に高齢者への健康影響が示されているのであり、本件保護基準改定により、特に高齢の生活保護受給者にとって重大な健康影響が生じる可能性がある。 他方で、厚生労働大臣は、本件保護基準改定による生活扶助費の削減に当たり、その高齢者の健康への影響は全く検討していない。 したがって、本件保護基準改定では、考慮すべき事項である高齢者への健康影響を全く検討せずに生活扶助費を削減した点で、厚生労働大臣の裁量権の範囲の逸脱、濫用は明らかである。 第3 デフレ調整の違法性について本件デフレ調整は、平成20年以降のデフレにもかかわらず、生活扶助基準 額が据え置かれたことにより、生活保護利用世帯の可処分所得が「生活扶助相当CPI」の下落率4.78%分だけ実質的に増加しているとして、なされたものであるが、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの下落率4.78%をもって、平成20年以降のデフレによる「生活保護利用世帯の可処分所得の実質的増加」を示すものとはいえないから、本件デフレ調整は、 「統計等の客観的な数値等との合理的関連性」や「専門的知見との整合性」に照らし、その判断過程に過誤・欠落があり、裁量権の範囲を逸脱、濫用したものであって、違法なものである。 【生活扶助相当CPIの問題点】 1 厚生労働省による算出方法 専門的知見との整合性」に照らし、その判断過程に過誤・欠落があり、裁量権の範囲を逸脱、濫用したものであって、違法なものである。 【生活扶助相当CPIの問題点】 1 厚生労働省による算出方法 本件のデフレ調整は、平成20年以降のデフレにもかかわらず生活扶助基準 額が据え置かれたことにより生活保護利用世帯の可処分所得が実質的に増加しているとして、「生活扶助相当CPI」の下落率4.78%分の生活扶助基準の引下げが行われたものである。 その算出方法は、総務省から公表されている消費者物価指数を基に、その対象品目から非生活扶助相当品目を除外したうえで、「平成22年基準消費者物 価指数の年報の「第7表-1 品目別価格指数(全国)」における、平成20年平均及び平成23年平均の全国の各品目別価格指数と、全国の各品目別ウエイトを用いて、「生活扶助相当CPI」を算定し」、「平成20年平均の生活扶助相当CPIは「104.5」、平成23年平均の生活扶助相当CPIは「99.5」となった」ことから、平成20年から平成23年までの生活扶助 相当CPIの下落率4.78%を算出したものである。 2 算出方法の違いによる算出結果(1) 厚生労働省による生活扶助相当CPIの算出方法は、平成20年の生活扶助相当CPIを求める際に、平成17年基準ではなく平成22年基準のウエイトが用いられている点で、総務省統計局が定める一般的な消費者物価指数 の算出方法(乙共27「消費者物価指数のしくみと見方」28頁、乙共28「平成22年基準消費者物価指数の解説」35頁)とは異なっている。 (2) 生活扶助相当CPIについて、このような算出方法の違いがどのような結果の違いを生み出すのかについては、古賀麻衣子・専修大学教授の意見書(甲共251)、も阿部太 」35頁)とは異なっている。 (2) 生活扶助相当CPIについて、このような算出方法の違いがどのような結果の違いを生み出すのかについては、古賀麻衣子・専修大学教授の意見書(甲共251)、も阿部太郎・名古屋学院大学教授の意見書(甲共250) も試算しているが、その結果は同一であり、以下のとおりとなる。また、これは上藤一郎・静岡大学大学院教授の意見書(甲共92・17頁表5)の試算結果とも一致している。 生活扶助相当CPI 厚労省方式 総務省方式(試算) H20年104.5 101.8 H22年100.0▲4.29%100.0▲1.77%H23年99.5▲0.50%99.5▲0.50%H20~23年の変化率▲4.78 % ▲2.26 % 3 消費者物価指数の設計と整合性のとれる算出方法ではないこと(1) この厚生労働省による生活扶助相当CPIの計算方法について、古賀意見書は、次のとおり指摘している。 「平成23年の生活扶助相当CPIの算出においては、その品目構成・価格情報とウエイトがいずれも平成22年基準となっている。一方、平成20年の 同CPIの算出については、品目構成・価格情報は平成17年基準にもとづき、ウエイトは平成22年基準を借りる形となっている。この結果、平成22年の家計支出が大きいものほど、平成20年の物価変動に影響を及ぼすという構造となっている」(2頁)。 一般に、「消費者物価指数の特定の項目を除去するという加工作業は、珍 しいものではな」く、「生活扶助相当CPIの算出は、消費者物価指数から一部の項目を除外し、それを基準改定時点をまたぐような期間で観察しようとしている点で、そうした加工作業と同様の取り組み 珍 しいものではな」く、「生活扶助相当CPIの算出は、消費者物価指数から一部の項目を除外し、それを基準改定時点をまたぐような期間で観察しようとしている点で、そうした加工作業と同様の取り組みといえる」(3頁)が、総務省統計局が定めている一般的なやり方は、「旧基準の期間は旧基準の情報を用いて計算し、新基準の期間は新基準の情報を用いて算出した指数をそ れぞれ比較するというもの」である。「この算出方法は、消費者物価指数の設計と整合性がとれるという点で理にかなっている。総務省は、基準時点をまたぐ消費者物価指数の扱いすなわち新旧接続の方法について、ホームページなどでも明示している。その考え方とは、各時点で推計された「物価変動の方向性」は維持して、新旧系列の連続性を保持しようとするものである」 (4頁)。 これに対し、「生活扶助相当CPIは、個々の品目や分類については、新基準に接続された旧基準指数を用いているものの、旧基準の期間である平成 20年において、新基準のウエイトを借りて指数を算出したために、全体としては「物価変動の方向性」が維持されなくなっている。その意味で、新旧接続の考え方からも結果的に乖離している」(4頁)。 したがって、「生活扶助相当CPIの算出方法は、平成20年の物価動向の把握においてウエイトの時点がずれており、消費者物価指数の設計と整合 性のとれる算出方法ではない」(5頁)。 (2) また、被控訴人らが、生活扶助相当CPIの計算に当たり平成22年のウエイトを用いたのは「直近の消費構造を反映するため」としている点についても、古賀意見書は、「平成22年の消費支出ウエイトは、平成20年にとっては「未来のウエイト」であり、家計が平成20年の時点ではまだ経験 していない経済環境の変化の影響を受 としている点についても、古賀意見書は、「平成22年の消費支出ウエイトは、平成20年にとっては「未来のウエイト」であり、家計が平成20年の時点ではまだ経験 していない経済環境の変化の影響を受けている。これを用いて平成20年の物価動向を計測することのデメリットは、大きい」(5頁)と指摘している。 それは古賀意見書の「後述の計算にて具体的に明らかに」されているが、「平成20年の時点では、家計がまだ直面していない制度変更の影響を先取りして」、「その後に生じる、テレビのウエイト増大の影響が反映され」た 結果、「生活扶助相当CPIで把握される物価動向は、生活保護世帯が直面した物価動向と明確に乖離するもの」(12頁)になってしまったという「デメリット」が「大きい」のである。 (3) また、被控訴人らが主張する「生活扶助相当CPIの算式について、ロウ指数の範疇にあるため、国際的にも認められた理論的根拠のある算式である との説明」についても、古賀意見書は次のように批判している。 すなわち、「ロウ指数は、ラスパイレス指数やパーシェ指数を含む固定バスケット型指数の一般型(上位概念)に過ぎないため、ロウ指数の範疇にあるならば、新たな算式を政策に適用してよいとするのは、やや議論に飛躍がある」、「そもそも、消費者物価指数の指数算式に関する議論は、米国ボス キン・レポートが米国CPI(ラスパイレス指数)について批判を行ったこ とに端を発し、国際的に多くの議論が蓄積されてきた」のであって、「総務省統計局も、米国ボスキン・レポートの指摘が、我が国のCPIに当てはまるか否かを詳細に検討し、複数の指数算式にもとづく推計値の比較」をして、「それらの算式の中で、ラスパイレス連鎖基準方式と中間年バスケット方式をCPIの参考系列として公表する 我が国のCPIに当てはまるか否かを詳細に検討し、複数の指数算式にもとづく推計値の比較」をして、「それらの算式の中で、ラスパイレス連鎖基準方式と中間年バスケット方式をCPIの参考系列として公表することとした」が、「これらの指数は、い ずれも学術的な根拠及び国際的な議論にもとづく、根拠ある算式であり、独自に加工したものではない」。したがって、「多くの指数算式が存在することをもって、任意の方法で算出してもよいと判断することはできない」(6頁)のである。 (4) さらに、「生活扶助相当CPIは、⒜平成20年を基準時点とし、平成2 2年を比較時点としたパーシェ指数と⒝平成22年を基準時点とし、平成23年時点を比較時点としたラスパイレス指数に分解できるとの説明もされてきたが」が、「ラスパイレス型もパーシェ型も、それぞれ確立した算式であるものの、両者を混合することは通常ない」(6~7頁)のであって、この点でも生活扶助相当CPIの計算方法には強い疑問を示している。 4 パーシェ指数による下方バイアス(1) 厚生労働省による生活扶助相当CPIの算出方法は、平成20年の生活扶助相当CPIを求めるのに平成22年基準のウエイトを用いたことにより、平成20年から平成22年までをパーシェ指数で求めたとの同じ計算をしていることになる。これに対し、阿部意見書や古賀意見書が試算した総務省統 計局が定める一般的な消費者物価指数の算出方法は、平成17年基準のウエイトを用いて平成20年の生活扶助相当CPIを求めているので、これはラスパイレス指数によるものである。 (2) パーシェ指数の下方バイアスについては、古賀教授が同じくパーシェ指数であるGDPデフレーターについて分析した前掲論文「GDPデフレーター の下落率はなぜ大きいのか?」( ものである。 (2) パーシェ指数の下方バイアスについては、古賀教授が同じくパーシェ指数であるGDPデフレーターについて分析した前掲論文「GDPデフレーター の下落率はなぜ大きいのか?」(甲共253)で分かりやすく解説している。 すなわち、「ラスパイレス指数とパーシェ指数は、①価格と数量が大幅かつ逆方向に変化し続けるIT関連財のような財が存在し、②かつ基準時点から時間が経過するほど、乖離が大きくなる」が、「CPIはラスパイレス指数であり、GDPデフレーターや各需要項目のデフレーターはパーシェ指数である。したがって、個人消費デフレーターの下落幅がCPIのそれよりも恒 常的にやや大きいのは、基本的には、この指数算式の違いによる面が大きいと考えられる」(2頁右欄)と指摘している。 (3) また、阿部意見書は、この点を「代替バイアス」によって説明している(3頁)。阿部意見書が引用するマンキュー「入門経済学」(甲共254)は、「消費者物価指数の目的は、生計費の変化を測定することである」との 立場から、「消費者物価指数は、一定の生活水準を維持するためには、所得がどれくらい増加しなければならないかを測ろうとするものである」が、「消費者物価指数は生計費の完全な尺度ではない」として、その第1の問題として「代替バイアス」をあげている。 それは、価格が変化したとき「消費者は相対的に安くなった財へと代替す る」ので、「もし財のバスケットを固定して物価指数が算出されるならば、消費者の代替の可能性を無視することになる」ので、価格が上昇する場合には、「ある年から次の年にかけての生計費の増大を過大に評価することになる」(298~301頁)というものである。 マンキューは消費者物価指数としてラスパイレス指数を前提にしているの する場合には、「ある年から次の年にかけての生計費の増大を過大に評価することになる」(298~301頁)というものである。 マンキューは消費者物価指数としてラスパイレス指数を前提にしているの で、ここでは「代替バイアス」としてラスパイレス指数の上昇バイアスが解説されているが、パーシェ指数の場合は、「代替バイアス」は下方バイアスとして現れる。「消費者物価指数マニュアル」(甲共95)も、「生計費指数」の解説において、「バイアスは、ラスパイレスを含む固定買い物かご指数が、定義により、相対価格の変化に応じて生産物の間のいかなる代替も許 さないという事実の結果である。それ故、通常、「代替バイアス」と言われ ている。パーシェ指数は下方の代替バイアスを持つと考えられる」と解説している。 (4) なお、古賀論文は、「GDPデフレーターに限らず、基準年から時間が経過することに伴うバイアスの拡大の問題は、基準時点をこまめに更新する連鎖指数にすれば緩和できる」と指摘し、「米国では、92年基準のGDPデ フレーターから、連鎖指数への変更を行っているほか、CPIについても、2002年7月分から、参考系列として連鎖指数を毎月公表している」ことを踏まえ、「連鎖指数は、IT時代における物価統計が目指すべき一つの方向であるように思われる」(4頁右欄~5頁左欄)と述べていた。そして、その後、我が国でも、GDPデフレーターは平成16年に固定基準年方式か ら連鎖方式に変更された。 この点につき、阿部意見書は、内閣府の経済社会総合研究所国民経済計算部「国民経済計算の実質化手法の連鎖方式への移行について」(平成16年11月18日)が、GDPデフレーターを連鎖方式に変更した理由として、「基準年から離れるに従って実質経済成長率が過大に評価される 部「国民経済計算の実質化手法の連鎖方式への移行について」(平成16年11月18日)が、GDPデフレーターを連鎖方式に変更した理由として、「基準年から離れるに従って実質経済成長率が過大に評価される(例えば、 コンピュータ等の価格低下の著しい品目の影響が過大に評価される)傾向がある」ことをあげていることを指摘し、「厚労省方式による生活扶助CPIは固定基準方式パーシェ指数であり、同様の弊害が生じている」(3頁)と指摘している。 (5) このようなパーシェ指数の下方バイアスは、「価格と数量が大幅かつ逆方 向に変化し続けるIT関連財のような財が存在」する場合に大きくなる。そこで、厚生労働省方式による生活扶助相当CPIの大きな下落率をもたらしたのは、どのような品目のどのような値動きによるのかという点を、古賀意見書も阿部意見書も、寄与度分析を行うことで明らかにしている。 5 テレビやノートパソコンの影響が大きいこと (1) 古賀意見書は、平成20年から平成22年までの生活扶助相当CPIの変 化率に対する寄与度をまず中分類項目で試算しているが、これによれば、以下のとおり、教養娯楽用耐久財の寄与度が際立って大きく、生活扶助相当CPIの下落率4.29%の半分以上を占めており、他方で、一般的な方法(総務省方式)ではこうした動きは確認できず、生活扶助相当CPIの大きな下落は「教養娯楽用耐久財の動きによってほぼ説明できる」(9~10 頁)。 平成20~22年の全体の変化率に対する寄与度(%) 厚労省方式総務省方式光熱・水道▲ 0.49▲ 0.500.01家具・家事用品▲ 0.52▲ 0.340.19教養娯楽用耐久財▲ 2.72▲ 0.38▲ 2.35教養娯楽サ 光熱・水道▲ 0.49▲ 0.500.01家具・家事用品▲ 0.52▲ 0.340.19教養娯楽用耐久財▲ 2.72▲ 0.38▲ 2.35教養娯楽サービス▲ 0.21▲ 0.19▲ 0.01野菜・海藻0.200.25▲ 0.05(参考)H20~22年の変化率▲ 4.29▲ 1.77▲ 2.52さらに、教養娯楽用耐久財の中で各品目の寄与度を試算すると、以下のとおり、「テレビの寄与度の違いが顕著に大き」く、テレビだけで生活扶助相当CPIの下落率4.29%のうち1.59%を占めており、「次に影響度 合いの差が大きいのは、パソコン(ノート型)」であり、0.56%を占めていた(10頁)。テレビとノートパソコンだけで生活扶助相当CPIの下落率4.29%のうち2.15%と、半分以上を占めているのである。 平成20~22年の全体の変化率に対する寄与度(教養娯楽用耐久財の内訳)厚労省方式総務省方式差テレビ▲1.59▲0.13▲1.46プレーヤー携帯型オーディオ▲0.02▲0.01▲0.01ビデオレコーダー/DVDレコーダー▲0.18▲0.04▲0.14パソコン(デスクトップ型)▲0.21▲0.06▲0.15パソコン(ノート型)▲0.56▲0.07▲0.49プリンタ▲0.01▲0.010.00カメラ▲0.13▲0.03▲0.10ビデオカメラ▲0.03▲0.01▲0.02ピアノ0.010.010.00学習机0.000.000.00教養娯楽用耐久財の合計▲2.72▲0.35▲2.37※古賀意見書10頁の表より作成。総務省方式の合計が▲0.38にならないのは、端数処理による。 学習机0.000.000.00教養娯楽用耐久財の合計▲2.72▲0.35▲2.37※古賀意見書10頁の表より作成。総務省方式の合計が▲0.38にならないのは、端数処理による。 なお、古賀意見書10頁の表「H20~22年の全体の変化率に対する寄与度(教養娯楽用耐久財の内訳)」で、価格指数の「変化率」は①(厚労省計算)と②(総務省計算)が同じにもかかわらず「寄与度」が大きく違うのは、厚労省方式と総務省方式では「ウエイト」が大きく違うからである。 (2) 阿部意見書では、生活扶助相当CPIのうち、テレビ、ノートパソコンな ど家電製品7品目について寄与度分析を行っている。 これによれば、以下のとおり、厚労省方式では平成20年から平成22年までの下落率▲4.29%うち、家電製品7品目の寄与度は▲2.90%を占めていたが、総務省方式では生活扶助相当CPIの下落率▲1.77%のうち、家電製品7品目の寄与度は▲0.44%にすぎず、家電製品7品目の 寄与度に大きな違いが出ていた(2頁)。 さらに、家電製品7品目の内訳を見ると、7品目すべてにおいて総務省方式よりも厚労省方式による寄与度が大きくなっていたが、試算結果を見ると、中でもテレビの寄与度が最も大きく、次いでノートパソコンの寄与度が大きくなっていた(3頁)。 当然のことながら、古賀意見書と共通する品目の寄与度の数字は、端数処理の関係で差がある程度で、ほとんど一致している。 生活扶助相当CPIの寄与度(平成20年-平成22年) 総務省方式厚労省方式家電製品(テレビ、ノートパソコンなど7項目)-0.44%-2.90%その他(261項目)-1.33%-1.39%合計-1.77%-4.29%生活扶助相当CPIの各家 家電製品(テレビ、ノートパソコンなど7項目)-0.44%-2.90%その他(261項目)-1.33%-1.39%合計-1.77%-4.29%生活扶助相当CPIの各家電製品の寄与度(平成20年-平成22年) 総務省方式厚労省方式テレビ-0.14%-1.59%ノートパソコン-0.07%-0.56%デスクトップパソコン-0.06%-0.21%ビデオレコーダー-0.04%-0.18%電気冷蔵庫-0.05%-0.12%冷暖房器具-0.06%-0.10% カメラ-0.03%-0.13% 6 テレビの一時的需要増大の影響(1) 以上の試算結果によれば、平成20年から平成22年までの生活扶助相当CPIの変化率については、まずテレビが大きな影響を与えていたことが明らかである。 古賀意見書が指摘するとおり、「ここでの寄与度の違いには、ウエイトの 差の影響が大き」く、「違いの主因であるテレビ」の「ウエイトは平成22年基準と平成17年基準とで著しく異なる」(11頁)。 この点につき、古賀意見書は、「消費者物価指数が平成17年基準から平成22年基準に改定された際に、テレビのウエイトが大幅に増大したことは、消費者物価指数年報(平成23年)にも記載があり、当時より、有識者の間 ではよく知られていた事象であった」が、それは、「家電エコポイント制度の開始や、地上デジタル放送への移行に備えた需要増加」によるものであり、「この頃、テレビのウエイトの増大が、テレビの価格下落と相まって、消費者物価指数を大きく押し下げたことは、経済財政白書平成24年版においても、約3頁を割いて記述されている」(11頁)と指摘している。 しかし、 エイトの増大が、テレビの価格下落と相まって、消費者物価指数を大きく押し下げたことは、経済財政白書平成24年版においても、約3頁を割いて記述されている」(11頁)と指摘している。 しかし、「それは平成22年以降の消費者物価指数の動き」なのであって、「生活扶助相当CPIでは、平成20年の物価動向の把握において、その後に生じる、テレビのウエイト増大の影響が反映されている」ため、「平成20年の時点では、家計がまだ直面していない制度変更の影響を先取りしてしまっている」(12頁)と指摘する。 出所:経済財政白書(2012)そのうえで、古賀意見書は、「そうした世帯が家電エコポイント制度の影響を受けて、テレビを買い替える行動をとるとはあまり想像できない。加えて、平成22年の地上デジタル放送への移行の際に、生活保護受給世帯には 無料チューナーが配布されるという施策がとられていた」ので、「この時期のテレビのウエイト増加は、生活扶助相当CPIの算出においてその反映時期がずれていることに加えて、そもそも生活保護世帯が経験した消費支出増加ではないと考えられる」(12頁)と指摘する。 そして、「以上のことを踏まえると、生活扶助相当CPIで把握される物 価動向は、生活保護世帯が直面した物価動向と明確に乖離するものであった」(12頁)と結論づけている。 (2) この点は、阿部意見書も、家電製品7品目の内訳を見ると、「7品目すべてにおいて通常の方法よりも厚生労働省の方法による寄与度が大きくなっている」が、「特にテレビの数値が大きく異なっている」ことについては、 「2011年(平成23年)からの地デジ化を控えていたことと、平成21年から始まったエコポイント制度の影響で平成22年はテレビが猛烈に売れた年だった 値が大きく異なっている」ことについては、 「2011年(平成23年)からの地デジ化を控えていたことと、平成21年から始まったエコポイント制度の影響で平成22年はテレビが猛烈に売れた年だったのである。つまり、厚生労働省による算出のテレビの寄与度が大きいのは、テレビが猛烈に売れた年をウエイト参照基準にしているからなの である」(3頁)と指摘している。 しかし、地デジ化やエコポイントによる平成22年の一時的な需要の増大は、生活保護利用世帯にはほとんど当てはまらない。 7 パソコンなど家電製品の品質調整による影響(1) また、テレビに次いでノートパソコンやカメラなどのデジタル家電の影響 も大きいが、これは品質調整によるものである。例えば、ノートパソコン、デスクトップパソコン、カメラの3品目とも、平成17年と平成22年の支出額割合(ウエイト)に大きな差がない一方、価格指数は激落しているが、出荷台数はそれほど増えておらず、品質調整で大幅に価格指数が下げられている。 (2) この点は、古賀教授も前掲論文(甲共253)で、「品質調整とは、例えばパソコンの表面価格が20万円のままで変化していなくても、機能が2倍になったと評価できる場合は、価格は半値になったとみなす統計処理のことである」が、「パーシェ指数の場合は、品質調整によって、パソコンの「価格水準」が低くなると、「数量」が増えるとみなされ」、パソコンの他の品 目に対するウエイトが「大幅に上昇していく」ので、「このウエイト上昇の効果によって、パソコンの影響力が先ほど(引用者注:ラスパイレス指数の場合)とは逆に高まっていく」(2頁右欄)と指摘しているところである。 また、阿部意見書も、「パソコン、カメラについては品質調整による影響である。モデルチェンジが頻繁に 引用者注:ラスパイレス指数の場合)とは逆に高まっていく」(2頁右欄)と指摘しているところである。 また、阿部意見書も、「パソコン、カメラについては品質調整による影響である。モデルチェンジが頻繁にあり、そのつど性能が急速に向上するよう なパソコンやカメラのような製品については、品質調整が行われる。品質向上による割安感を反映させて価格を下げるとともに、消費者の効用の増大を反映させて購入数量が増加したとみなす。この場合もテレビと同様の効果がもたらされる」(3頁)と指摘しているところである。 (3) ところで、総務省統計局が行っているパーシェ・チェックの結果によれば、 ラスパイレス指数とパーシェ指数の乖離は、通常はそれほど大きなものでは ないが、平成22年を比較時とした時期だけ、その前後の時期と比べて格段に大きくなっている。 阿部意見書は、この点について、家電製品7品目の寄与度を分析し、これは「パーシェ指数によるテレビやノートパソコンなどの下方バイアスが大きいためであり、生活扶助CPIのウエイト参照時点を2010年(平成22 年)とすることの問題点を如実に示している」(4頁)と指摘している。また、「2015年(平成27年)を比較時としたパーシェ・チェックの寄与度」と比較しても、「2010年(平成22年)を比較時とした時のテレビとノートパソコンのパーシェ指数の寄与度がいかに大きいかがわかる」(4頁)とも述べている。 (4) テレビの地デジ化需要で平成22年はテレビのウエイトが一時的に増大した年であることは上記したとおりであるが、この時期にパソコンやカメラなどのデジタル家電の品質調整が強力に実施されていたことについては、熊倉正修「デフレと消費者物価指数の品質調整」(甲共255)が明らかにしている。 とおりであるが、この時期にパソコンやカメラなどのデジタル家電の品質調整が強力に実施されていたことについては、熊倉正修「デフレと消費者物価指数の品質調整」(甲共255)が明らかにしている。 この熊倉論文は、「1990年代末から一般物価が緩やかに下落するようになったことにはIT・家電製品の価格が大きな影響を与えている」こと、「とりわけ2000年代の下落率が大きく、2000~2010年のIT機器指数の平均年間下落率は-17.1%、それに家電製品を加えた指数の下落率は-12.9%だった」こと(3頁左欄)、「IT・家電製品の物価指 数が2010年代初頭まであれほど激しく下落した後に突然反転したことには、個々の商品の店頭価格の変化だけでなく、品目別の価格指数をどのように作成するかという問題が深く関係して」いたこと(4頁左欄)、「主要国のCPIにおけるパソコンの価格指数の推移」を見ると「国によって長期的な価格下落率にきわめて大きな格差があり、日本の下落率が突出して高かっ た」が、「国際間で店頭価格に大きな違いがあるわけではなく、これらの違 いは主として価格調査の手法や新旧商品価格の接続方法の違いを反映している」こと(10頁右欄)を指摘し、「IT機器など少数の電子機器の価格が総合指数ベースの物価上昇率に無視できない影響を与えていたこと、その背景にこれらの品目に関する頻繁な銘柄変更と価格調整が関与していたことが明らかになった」(12頁左欄~右欄)としている。 (5) しかし、この品質調整による価格下落は、「需要者(利用者)からみれば架空の価格下落」にすぎず、「ヘドニック法により品質調整が過大に評価されすぎている」、「社会保障関係のデフレーターとして使うべきかは大いに疑問である」等の指摘もなされていた(甲共256 )からみれば架空の価格下落」にすぎず、「ヘドニック法により品質調整が過大に評価されすぎている」、「社会保障関係のデフレーターとして使うべきかは大いに疑問である」等の指摘もなされていた(甲共256「白井意見書」32頁、内閣府国民経済計算調査会議「基準改定課題検討委員会」第1回〔平成16年6 月28日〕議事要旨)。しかも、この品質調整による電化製品の価格下落が、パーシェ指数の下方バイアスによって、生活扶助相当CPIの大幅な下落率をもたらしているのであるから、それは、生活保護受給者の可処分所得の実質的な増加とは何の関係もないものである。 8 家計調査のウエイトをそのまま用いたことの問題 (1) 古賀意見書は、生活扶助相当CPI算出の際に、「消費者物価指数・総合における一般世帯の家計支出ウエイトをそのまま利用することの問題」も指摘しており、「家計調査の一般世帯のウエイトを利用することによって、生活保護受給世帯が直面する物価変動とは乖離が生じる」(12頁)としている。 古賀意見書が指摘するとおり、「一般に、消費支出の構成は所得水準によって異なり、所得の低い層では、特に食品などの生活必需品のウエイトが高まる一方で、奢侈品のウエイトは低くなる。こうしたことを踏まえて、総務省は、年間収入階級別の消費者物価指数の公表も行っている」(12頁)のであるから、本件デフレ調整を行うに当たっては、生活保護受給者の消費 構造を反映した支出ウエイトを用いるべきだったのであり、この点でも生活 扶助相当CPIには問題があったことは明らかである。 古賀意見書は、「試みに、平成21年の全国消費実態調査(現在の全国家計構造調査)にもとづいて、年間収入十分位階級別(2人以上世帯)のうち、最も低収入の区分(第Ⅰ区分、273万円以下)の かである。 古賀意見書は、「試みに、平成21年の全国消費実態調査(現在の全国家計構造調査)にもとづいて、年間収入十分位階級別(2人以上世帯)のうち、最も低収入の区分(第Ⅰ区分、273万円以下)の消費支出をみると、同時点の平均的な家計の消費支出と比べて、和服が18%、補習教育が21%の 消費支出にとどまっていた」(12~13頁)と例示的に指摘している。 (2) 阿部意見書も、古賀意見書と同じく、「生活扶助相当CPIのもう一つの問題点は、家計調査のウエイトをそのまま用いていることである」と指摘し、「家計調査のサンプルは生活保護受給世帯に限られてはいないので、家計調査のウエイトを用いて生活保護受給世帯の可処分所得の実質的な変化を把握 することは不可能である」(5頁)と厳しく批判している。 そもそも、「所得水準によって消費のウエイトが異なることは経済学的な常識」なのであって、「例えば、消費支出全体に占める食料支出の割合は所得階層が高くなるにしたがって低くなるというエンゲルの法則はよく知られている。また、所得が増えると消費が増える上級財や消費が減る下級財、ま た消費が変化しない中立財の存在が知られている」のであるから、「家計調査のウエイトをそのまま用いることは、生活保護受給世帯の可処分所得の実質的な変化を把握するというデフレ調整の前提に反する」(5頁)というべきである。 そして、「生活扶助相当CPIの算出において用いられた21品目の電気 製品のウエイトが4.19%であるのに対して、調査対象の生活保護利用世帯の同様のウエイトは平均0.82%であった。前述したように、厚労省による生活扶助相当CPIは、平成20年から平成22年の間をパーシェ方式で算出しているため、デジタル家電製品価格の大幅な下落によって大きく減少している 平均0.82%であった。前述したように、厚労省による生活扶助相当CPIは、平成20年から平成22年の間をパーシェ方式で算出しているため、デジタル家電製品価格の大幅な下落によって大きく減少しているが、デジタル家電製品のウエイトが高くないと考えられる生活保 護受給世帯の実態に即したウエイトを用いていないため、目的に合致しない 不適切な算出方法であると結論付けることができる」(5~6頁)と指摘している。 9 専門家の意見を踏まえていないこと(1) 阿部意見書は、今回のデフレ調整が専門家の意見を聴取していない「デフレ調整の実施手続き」の問題も指摘しており、「デフレ調整実施の有無や時 期、算出方法を大臣の一存に委ねるのには問題があり、今回の実施内容に関する問題がそのことを如実に示している」として、行政庁の独断で生活扶助基準の切り下げが決められてしまうことについて、「政治的意図によって、都合の良い算出方法や実施時期が操作され、ナショナル・ミニマムが恣意的にコントロールされてしまう恐れを否定できない」、「現状のような生活扶 助相当CPIの実施手続きが認められてしまうと、生活保護受給者に対する差別を肯定することになってしまう。これは社会の分断を助長するものであるとともに、生活保護が他の様々な制度と密接に関わっていることを考えると、国による市民生活の支配を意味し、民主主義に対する脅威である」(6頁)と批判している。 (2) この点は、古賀意見書も、「本件の検討において、専門家の見識を反映すべきだったという見解に同意する」と述べており、「有識者であれば、一般的な算出方法や、平成22年基準指数におけるテレビの影響拡大などについても知見を有していた可能性が高い」(13頁)と指摘している。 まとめ ( 」と述べており、「有識者であれば、一般的な算出方法や、平成22年基準指数におけるテレビの影響拡大などについても知見を有していた可能性が高い」(13頁)と指摘している。 まとめ (1) 古賀意見書は、以上の分析を踏まえて、「生活扶助相当CPIの算出方法と算出結果を精査した結果、その下落分をもって、生活保護受給世帯の可処分所得の増加分とはとらえられないと思われた」(13頁)と結論づけている。 また、「生活扶助相当CPIも、政策目的に応じて、統計を二次加工した もの」であるが、「こうした場合、統計のように事前に確固とした手法が定 まっていないからこそ、世の中でその統計が利用されている基本的な作法や考え方にのっとることは重要と思われる。また、それによって、算出結果に対する信頼性が担保され、世間に広く受け入れられるものと考える」、「本意見書で示した方法は、平易な作業によって算出可能」であり、「行政の調査としては、目的の重要性を鑑みたとしても、その作業負荷において一定の 限度を考慮することも必要」であるとしても、「少なくとも本件の算出においては、より妥当な方法の検討・選択余地があったと思われる」(13頁)と指摘している。 (2) 阿部意見書も、「以上、生活扶助相当CPIの問題点についてデフレ調整を中心に論じてきたが、2008年(平成20年)から2010年(平成2 2年)をパーシェ方式で計算しているとともに、生活保護受給世帯を対象としたウエイトを用いていないため、生活保護受給世帯がそれほど消費しないデジタル家電製品価格の下落による生活扶助相当CPIの大幅な下落が生じていることは明らかである。したがって、厚労省による算出方法では、生活保護受給世帯可処分所得の実質的な変化を把握し、それを生活保護に反映さ 電製品価格の下落による生活扶助相当CPIの大幅な下落が生じていることは明らかである。したがって、厚労省による算出方法では、生活保護受給世帯可処分所得の実質的な変化を把握し、それを生活保護に反映さ せるというデフレ調整の目的を果たすことができない」(6頁)と結論づけている。 (3) 以上のとおり、これら古賀意見書や阿部意見書の分析結果によっても、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの下落率4.78%は、その算出方法に問題があり、パーシェ指数による下方バイアスによって、テ レビの地デジ化に伴う一時的需要増やノートパソコンなどの品質調整の影響が大きく出てしまっており、これをもって生活保護利用世帯の可処分所得の増加分とは捉えられないものである。 【生活保護利用世帯の可処分所得の実質的変動について】 1 可処分所得の実質的変動と生計費の変動の関係 本件デフレ調整は、デフレによる生活保護利用世帯の可処分所得の実質的増 加を理由に行われたが、鈴木意見書は、この「可処分所得の実質的増加」をどのように捉えるべきかについて論じたものである。 物価の変動は可処分所得の実質的変動をもたらすが、それは生計費の変動を通じてもたらされる。鈴木意見書も、「可処分所得の実質的変動」は「生計費の変動」によって見るべきものであることをまず指摘する(10頁)。 ここでいう「生計費」とは、「一定の水準の生活があったとして、その生活を維持するために必要な費用」のことである。そして、「生計費は物価の変動による影響を受ける」が、「名目可処分所得一定のもとでは、ある世帯が購入している財・サービスの価格が上昇した場合、その財の購入量を維持しようとすれば生計費は上昇し、「可処分所得」は実質的に減少することになる。反対 に、 目可処分所得一定のもとでは、ある世帯が購入している財・サービスの価格が上昇した場合、その財の購入量を維持しようとすれば生計費は上昇し、「可処分所得」は実質的に減少することになる。反対 に、財・サービスの価格が下落した場合、生計費は下落し、可処分所得は実質的に増加することになる」(11頁)。 しかし、「ある世帯の生計費はその世帯が購入しないものの価格が変動したとしても、基本的に影響を受けない」から、本来、「生計費とは、それぞれの世帯ごとに算出されるものであって、世帯ごとに異なるもの」である。ただし、 「政策等について検討する際には、個別の世帯ごとに生計費を算出するということは非現実的であるから、購入している財・サービスの構成の同質性がある程度確保できると考えられるような集団ごとに生計費を算出することになる」。 具体的には、「「生活保護世帯」、あるいは生活保護世帯の中でもさらに消費構造の相違に着目して細分化し、母子世帯、父子世帯、高齢者世帯、などの集 団が想定されることになる」(11頁)。 そして、「生活保護世帯においては、毎年、「社会保障生計調査」によって消費支出の状況等が調査されており、母子世帯、高齢者単身世帯、傷病世帯等の世帯類型ごとの消費支出の状況等も公表されている」が、「各費目への支出割合は、各世帯の特徴を反映して相当相違していることが分かる」のであって、 「当然のことであるが、生活保護世帯と一括りにしても、消費構造は世帯類型 ごとに相当異なっている」ので、「物価の変動による生計費変動、可処分所得の実質的変動も、当然、これらの世帯類型ごとに異なる」(11~12頁)のである。 2 消費者物価指数と生計費の変動との関係これに対し、「CPIは消費者全体に関わる物価の変動を捉えようとするも 質的変動も、当然、これらの世帯類型ごとに異なる」(11~12頁)のである。 2 消費者物価指数と生計費の変動との関係これに対し、「CPIは消費者全体に関わる物価の変動を捉えようとするも のであり、家計調査における平均的な二人以上世帯の収支をもってこれを代理しようとするものである」から、「CPIと生計費の変動との間にある最大の相違点は、指数の対象となる世帯や集団が特定化されているか否かにある」(11頁)。 総務省統計局「消費者物価指数のしくみと見方-2015年基準消費者物価 指数-」によれば、CPIの主な利用目的は、①日本銀行の金融政策決定の重要な判断材料、②国や地方自治体の消費者行政、③家計収支や賃金などの実質化のデフレーター、④公的年金の給付額などを物価の動きに応じて改定するための算出基準の4点とされている(乙共27)「消費者物価指数のしくみと見方-平成22年基準消費者物価指数-」4~5頁参照)。 これにつき、鈴木意見書は、「CPIには、一国の消費段階におけるインフレーションを測定するという目的・性格と、物価の変動に対して国民の生活を保障するという目的・性格という、大きな2つの利用目的・性格が混在」しており、「CPIはこうした複数の性格の異なる目的に利用される「汎用指数」としての性格を持っている」が、「汎用指数であることはすなわち、ある特定 の目的に利用するという点においては最適化されたものではないことを意味する」(13頁)と指摘する。 そして、このことは、CPIを公的年金の給付額などを物価の動きに応じて改定するための算出基準としてしようとする場合にも問題となるが、本件デフレ調整のように、生活扶助基準を物価の動きによって引き下げようとする場合 には「深刻な問題」となる。それは、「CPIは消 改定するための算出基準としてしようとする場合にも問題となるが、本件デフレ調整のように、生活扶助基準を物価の動きによって引き下げようとする場合 には「深刻な問題」となる。それは、「CPIは消費者全体を対象としたもの であり、「生活保護世帯」の消費構造を前提にしたものではない」からであり、「「生活保護世帯」については、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するという目的をもった生活扶助基準額の改定が直接問題になる」からである。 そのため、鈴木意見書は、「収入水準が「最低限度の生活」レベルの極めて低い収入水準の集団に関する問題なのであるから、生活扶助の「下げ過ぎ」は決 して許されないという意味で、消費構造の相違は、年金受給者の場合とはまた異なる、深刻な問題となる」(13頁)と指摘する。 3 対象集団を特定化することの重要性したがって、「物価指数をもって可処分所得の実質的変動を見ようとするとき、十分に検討しなければならないことは「集団の特定化」である」と、鈴木 意見書は指摘する。それは、「一国全体の消費者物価の変動を見る場合、それはあらゆる属性を含む集団を対象としてみることが妥当である」が、「他方で、物価変動に対して生活を保障するという場合には、その対象となる集団にとって、他の属性の集団の動向は問題とならない」(13頁)からである。そのため、「総務省統計局も、「物価変動の影響は世帯属性によって異なる」と明言 し、それを前提に世帯属性別指数を作成している」(14頁)のである。 また、このように「対象となる集団ごとに指数を作成するという考え方は、物価指数研究の初期から現在に至るまで存在している」のであって、例えば、「ロウ指数の重要な点はウエイトを考慮した指数算式を用いることであるが、それは、農業労働者世帯とロ 数を作成するという考え方は、物価指数研究の初期から現在に至るまで存在している」のであって、例えば、「ロウ指数の重要な点はウエイトを考慮した指数算式を用いることであるが、それは、農業労働者世帯とロンドンの中流階級世帯のそれぞれのウエイトを用 いた指数を、それぞれ算出する必要があったからである」(14~15頁)。 ILO「消費者物価指数マニュアル」も、「指数の目的に応じて複数の指数が作成されているという例を提示」(15頁)している(甲共95・39頁)。 我が国でも、昭和12年の内閣統計局(当時)よる生計費指数の作成をはじめとして、「CPIと生計費の変動との相違や、特定の集団を対象とした指数の 必要性は、日本でもこれまで長く議論されてきた問題である」(16頁)と指 摘している。 4 「物価変動による可処分所得の実質的変動」の測定方法(1) 以上の論点を踏まえ、鈴木意見書は、「ある集団における物価変動による可処分所得の実質的変動を測定するという目的を設定したとき、どのような指標によってその目的を達成するべきか、すなわちそこで用いる指標がどの ような性質を持ったものでなければならないか」について検討し、「用いる指標が有するべき性質」を、①対象集団の設定、②対象品目の設定、③品目を代表する銘柄の設定、④指数を算出する際に用いる価格の特定、⑤ウエイトの設定、⑥指数算式の決定、⑦品質調整の扱い、の7点について整理している(16~17頁)。 (2) そして、「重要な点は、可処分所得の実質的な変動や、物価の変動に対する生活の保障といった目的に利用する指標は、その対象となる人々の「消費実態」に合致した指数でなければならないということである。この消費実態というのは、その集団の実際の消費行動に合致したものから算出されなけれ 保障といった目的に利用する指標は、その対象となる人々の「消費実態」に合致した指数でなければならないということである。この消費実態というのは、その集団の実際の消費行動に合致したものから算出されなければならない。上記の①~⑤はすべてこの点に関するものである」(17頁) と強調している。 このうち、①対象集団の設定は、要するに「対象となる集団をまず限定する必要がある」ということである。②対象品目の設定は、要するに「その人たちが購入しない品目の価格の変動は、その人たちには関係ない。その人たちが実際に購入している品目から算出されなければならない」ということで ある。③品目を代表する銘柄の設定は、要するに「その人たちが購入しない銘柄の価格の変動は、その人たちには関係ない。その人たちが実際に購入する銘柄から算出されなければならない」ということである。④指数を算出する際に用いる価格の特定は、要するに「その人たちが購入していない店舗での価格の変動は、その人たちには関係ない。その人たちが実際に購入する店 舗で、実際に購入している価格から算出されなければならない」ということ である。⑤ウエイトの設定は、要するに「その人たちと異なる集団の人たちの消費構造は、その人たちとは異なる。その人たちの消費構造に基づくウエイトから算出されなければならない。その人たちが購入している割合に応じて重要度を割り振る必要がある」ということである。 (3) また、⑥指数算式の決定については、「ILO「消費者物価指数マニュア ル」でも「最良指数」とされている「フィッシャー指数」や「ツルンクビスト指数」を使用することが望ましいとされている」ことを指摘する。それは、「最良指数は生計費指数の近似値を提供すると期待することができる」(18頁)からである。 る「フィッシャー指数」や「ツルンクビスト指数」を使用することが望ましいとされている」ことを指摘する。それは、「最良指数は生計費指数の近似値を提供すると期待することができる」(18頁)からである。「日本をはじめ、多くの国や地域において、CPIはラスパイレス指数によって算出されている。これは主に、「速報性の確保」と 「指数の持つ意味が分かりやすい」という2点が理由となっている」が、「他方で、速報性の確保が求められていないのであれば、最良指数によって指数を算出することが可能となる」(19頁)。 (4) さらに⑦品質調整の扱いについては、「品質調整を行った上で算出された指数(ここではCPIで説明する)によってデフレートされた値を可処分所 得の実質的な変化と考えるのは必ずしも正しいとは言えない」と指摘する。 それは、「CPIは品質一定の下での価格の変化を捉えている」からであるが、品質が向上したからといって、実際の価格が変わらなければ、可処分所得が増加したとは言えないからであり、「まして、それが「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するという目的をもった生活扶助基準額の改定にそ のまま反映されることは大きな問題である」(19頁)と指摘している。 5 生活保護利用世帯の「物価変動による可処分所得の実質的変動」の測定方法(1) 鈴木意見書は、以上の検討を踏まえて、生活保護利用世帯の「物価変動による可処分所得の実質的変動」を測定するための方法について、以下のとおり述べている。 (2) まず、①対象集団の設定では、「生活保護世帯、あるいは生活保護世帯の 世帯属性別の集団を特定して指数を算出する必要がある」。また、②対象品目の設定、③品目を代表する銘柄の設定、④指数を算出する際に用いる価格の特定、⑤ウエイトの設定で るいは生活保護世帯の 世帯属性別の集団を特定して指数を算出する必要がある」。また、②対象品目の設定、③品目を代表する銘柄の設定、④指数を算出する際に用いる価格の特定、⑤ウエイトの設定では、「理念的には生活保護世帯の消費実態を調査してデータを整備することが必要である」が、「個別の世帯や世帯属性別のデータの入手が困難であるということであれば、現状利用できる次善策と して「社会保障生計調査」の利用が考えられる」(21頁)としている。 (3) 社会保障生計調査については、「調査対象世帯を母集団となる生活保護世帯からランダムにサンプリングしていないことで、誤差精度を数学的に算出することはできない」と批判されているが、「被保護世帯の生活実態を明らかにすることによって、生活保護基準の改定等生活保護制度の企画運営のた めに必要な基礎資料を得るとともに、厚生労働調整の企画運営に必要な基礎資料を得ることを目的とする」調査であるため、「今回のような件にこそ有効に用いられるべき」ものであり、「生活保護世帯と一般世帯との消費構造、消費の水準の相違を考慮すれば、一般世帯を対象とした家計調査のデータと、生活保護世帯を対象とした社会保障生計調査のデータのどちらが実態に近い かは、明らか」であるから、「社会保障生計調査は、少なくとも今回の生活扶助相当CPIの数値の妥当性を評価するためには十分に使用可能なものであり、むしろ、同調査の結果を利用して積極的に検証しなければならない」(22頁)とされている。 (4) さらに、⑥指数算式の決定については、「速報性の確保が必要とされてお らず、比較時である2011年の各種統計が利用可能であることを考えれば、ILOマニュアル等にも記載されている、フィッシャー指数等の「最良指数」により指数を算出す 速報性の確保が必要とされてお らず、比較時である2011年の各種統計が利用可能であることを考えれば、ILOマニュアル等にも記載されている、フィッシャー指数等の「最良指数」により指数を算出すべきである。少なくとも、生活扶助相当CPIの数値の妥当性評価には不可欠であろう」(22頁)と指摘されている。 (5) ⑦品質調整の扱いについては、「品質調整の手法が品目によって個別的に 決定されており、その内容も異なる」ので、「品質に差がなく容量にのみ差 がある場合には、容量比を用いて品質調整を行う」べきであるが、「パソコンのような例は、容量比での比較のようにそのまま適用することは適切ではない」、「理念的には、これらをすべて精査して調整することが望ましいが、少なくとも品質調整済みの指数を用いてデフレ調整をする際には、実際の購入価格に関して過剰に調整している可能性を考慮する必要がある」(22 頁)。 ただし、鈴木意見書では、「品質調整は品目により個別的で統一的な対応が不可能である」ことから、「検討から除外」しているが、「品質調整による価格下落については、そのすべてが可処分所得の実質的な増加を意味するものではないことから重大な問題である」ことは改めて指摘されている(2 2~23頁)。 6 生活扶助相当CPIの理論的な誤り(1) 鈴木意見書は、このような生活保護利用世帯の「可処分所得の実質的変動の合理的な測定方法」と比較して、生活扶助相当CPIが持つ問題点を以下のとおり指摘している(34頁)。 まず、①対象集団の設定は、「家計調査のデータを用いているため、生活保護世帯とは全く別の集団を対象としている」ので「論外」である。②対象品目の設定は、「非生活扶助相当品目」を除外しているが、そもそもの品目の選定は「 設定は、「家計調査のデータを用いているため、生活保護世帯とは全く別の集団を対象としている」ので「論外」である。②対象品目の設定は、「非生活扶助相当品目」を除外しているが、そもそもの品目の選定は「一般世帯の消費構造を前提に選定された」家計調査に基づいているので、要求を一部しか満たしていない。③品目を代表する銘柄の設定、④ 指数を算出する際に用いる価格の特定も、「家計調査のデータをそのまま使用しており、全く調整が実施されていない」ので「要求を満たしていない」。 ⑤ウエイトの設定も、「家計調査のデータをそのまま使用しており、論外」である。「生活扶助相当CPIが対象とすべきは生活扶助世帯の消費に基づくウエイト」でなければならず、「生活扶助世帯の消費構造と、家計調査の 対象となっている「二人以上世帯」の消費構造は当然に異なることが想定さ れる」にもかかわらず、「生活扶助世帯の消費構造を反映するためとして、品目の除外は行っているにも関わらず、ウエイトの調整は全く行っていない点」が「特に問題」であって、「消費構造を反映させるための手段が不完全かつ不適切で、合理的な説明もなされていない」と批判している。 また、⑥指数算式の決定についても、用いられた算定方法が「最良指数」 ではなく、「統計局CPIと同一の手法でもなく、異なる指数算式を併用した厚生労働省独自の指数を用いている」点で「論外」である。 (2) なお、鈴木意見書は、生活扶助相当CPIが「可処分所得の実質的変動の合理的な測定方法」の要求を満たしていないことに加えて、「2つの理論的に重大な問題点が含まれる」として、第1に、「2010年のウエイトに対 し、2008年において価格データのない32にも及ぶ品目を「除外」している」点を、第2に、「物価指数論の学術的展開の中 的に重大な問題点が含まれる」として、第1に、「2010年のウエイトに対 し、2008年において価格データのない32にも及ぶ品目を「除外」している」点を、第2に、「物価指数論の学術的展開の中でも例のない指数を用いて指数を算出し、また、異なる指数を併用して指数を算出している」点を指摘し、これらの点でも「生活扶助相当CPIは、生活保護世帯における可処分所得の実質的変動を測定するという目的に対して、極めて不適切な指標 である」と指摘している(26~27頁)。 7 合理的方法による生活保護利用世帯における可処分所得の実質的変動の試算(1) 考え得る最良の方法による試算結果以上の検討を踏まえて、鈴木意見書は、「生活保護世帯における可処分所得の実質的変動を測定するという目的に対して、現状利用可能なデータを用 いて、考えられる最良の方法によって指数値を試算」している(28~29頁)。 それは、「生活扶助相当CPIと同様の2008年から2011年の期間について、対象集団を生活保護世帯に特定し、国から開示された社会保障生計調査の結果に基づきその消費支出をウエイトとして、最良指数である フィッシャー指数、ツルンクビスト指数によって指数を算出」したものであ り、試算結果は以下のとおりであった。鈴木意見書は、「新たな調査等を行わず、容易に利用可能なデータを活用して試算するという前提においては、これらの値が、生活保護世帯における2008年から2011年の「可処分所得の実質的変動」を適切に反映した値であると言える」としている。 なお、社会保障生計調査のウエイトを用いることについては、「少なくと も生活扶助相当CPIの計算結果の妥当性を検証するためには十分に利用できるデータであり、家計調査ウエイトを用いて生活保護世帯 なお、社会保障生計調査のウエイトを用いることについては、「少なくと も生活扶助相当CPIの計算結果の妥当性を検証するためには十分に利用できるデータであり、家計調査ウエイトを用いて生活保護世帯の可処分所得の実質的変動を測定するという「論外」ともいうべき不適切さと比較すれば、社会保障生計調査の統計精度の問題はとても小さな問題」であり、また、「個別品目レベルのウエイトがあればより正確な試算となることは間違いな いが、中分類費目レベルのウエイトでも十分に正確な試算となるし、10大費目のレベルでも十分参考となる値を試算することが可能である」と指摘されている。 フィッシャー指数による変化率 → -1.53%ツルンクビスト指数による変化率 → -1.33% (2) 社会保障生計調査平成22年ウエイトによる試算結果鈴木意見書は、社会保障生計調査のウエイトを用いた試算も併せて行っており、平成22年の二人以上世帯の社会保障生計調査によるウエイトを用いて算出された物価指数の変化率は以下のとおりであった(29頁)。なお、「同じ社会保障生計調査でも、単身世帯のウエイトと2人以上世帯のウエイ トでは指数が相当かけ離れた結果となって」おり、「生活保護世帯の実に約75%は単身世帯であるところ、単身世帯の可処分所得の実質的変動は、単身世帯のウエイトにより測定した結果により把握するのが適切であるし、単身世帯の消費構造と2人以上世帯の消費構造は明らかに異なっていることも端的に示している」ことから、単身世帯のウエイトを用いた試算も行ってい る。 社会保障生計調査ウエイトによる指数の変化率(2人以上世帯) → -1.83%(単身世帯) → -1.27%(3) 家計調査第1・五分位、第1・十分位の2010年ウ る。 社会保障生計調査ウエイトによる指数の変化率(2人以上世帯) → -1.83%(単身世帯) → -1.27%(3) 家計調査第1・五分位、第1・十分位の2010年ウエイトによる試算結果 鈴木意見書は、「社会保障生計調査のウエイトについては、前述のとおりとても小さな問題ではあるが統計精度の問題が指摘されていることから、念のため、試算値の妥当性を検討するために」、平成22年の家計調査における年間収入五分位・十分位階級別の「第1五分位・第1十分位」のデータをウエイトとした試算も行っており、その試算結果は以下のとおりであった (29~30頁)。 なお、「生活保護世帯の支出額は他の世帯と比較して小さく、第1五分位や第1十分位の消費構造の方が、より生活保護世帯の消費構造に近いと考えるのは当然である。家計調査においては生活保護世帯を除外しておらず、第1五分位、第1十分位とも、生活保護世帯が含まれており、特に第1十分位 となれば、より生活保護世帯の消費構造に近いと考えられる」。 第1・五分位ウエイトによる指数の変化率 → -1.95%第1・十分位ウエイトによる指数の変化率 → -1.78%(4) 総務省CPIで行われている接続方式による試算結果なお、鈴木意見書は、総務省統計局が定める物価指数の計算方法、すなわ ち、「2008年から2010年の期間を2005年基準のラスパイレス式によって算出し、2010年から2011年の期間を2010年基準のラスパイレス式によって算出した上で、2010年で両基準を接続する方法による試算値」とも比較している(32~33頁)。 上藤意見書(甲共92、17頁表5)は、この接続方式による総務省CP Iを試算した「総務省接続CPI」と、生活扶助相当CPI 準を接続する方法による試算値」とも比較している(32~33頁)。 上藤意見書(甲共92、17頁表5)は、この接続方式による総務省CP Iを試算した「総務省接続CPI」と、生活扶助相当CPIについて総務省 方式で計算した「生活扶助相当接続CPI」を試算しており、阿部意見書、古賀意見書でも「生活扶助相当接続CPI」と同様の試算が行われているが、鈴木意見書もその「算出の方法や結果に問題はなく、筆者もその論旨に同旨である」として、これを採用している。 生活扶助相当接続CPI → -2.26% 総務省接続CPI → -2.35%(5) 「基礎的支出」「選択的支出」分類による試算結果等の分析さらに、鈴木意見書は、「基礎的支出」「選択的支出」分類による試算結果等の分析を行っている(30~32頁)。 これによれば、「年間収入階級別の指数をみると、指数の下落率は年間収 入の高い階級の方が大きい」が、これは「基礎的支出」と「選択的支出」の関係から「整合的に理解することができる」。 すなわち、「消費者物価指数の結果において「基礎的・選択的支出項目別指数」が公表されている」が、「これは、消費支出の品目を「基礎的支出」(支出弾力性が1.00未満の支出項目)と、「選択的支出」(支出弾力性が 1.00以上の支出項目)に分類し、それぞれの分類ごとに物価指数を算出したものである」。 支出弾力性とは、「消費支出総額が1%変化する時に各財・サービス(以下「支出項目」という。)が何%変化するかを示した指標」であり、「支出弾力性が1.00未満の支出項目は基礎的支出(必需品的なもの)に分類され、 食料、家賃、光熱費、保健医療サービスなどが該当する。1.00以上の支出項目は選択的支出(贅沢品的なもの)に分類され、教育費 が1.00未満の支出項目は基礎的支出(必需品的なもの)に分類され、 食料、家賃、光熱費、保健医療サービスなどが該当する。1.00以上の支出項目は選択的支出(贅沢品的なもの)に分類され、教育費、教養娯楽用耐久財、月謝などが該当する」。 ところで、「基礎的支出と選択的支出の指数値の動きを見ると2008年から2011年にかけては選択的支出指数の下落幅が、基礎的支出指数の下 落幅よりも明らかに大きい」。他方で、「一般に、所得の少ない世帯ほど基 礎的支出(必需品的なもの)の支出割合が大きくなり、選択的支出の割合は小さくなる」。それは、「所得が少なくとも、必需品的なものに対して優先的に支出を行う必要があり、選択的支出(贅沢品的なものへの支出)は必然的に少なくなるから」であり、「これはデータによっても確認できる」。そのため、「生活保護世帯は年間収入が相対的に少ないので、基礎的支出の割 合が大きくなる」。 つまり、「2008年から2011年にかけては基礎的支出指数の下落幅よりも、選択的支出の下落幅の方が大きい」のであり、「収入が少ないほど選択的支出の割合は低くなり、基礎的支出の割合は高くなる」から、「収入が少ない世帯は、収入の多い世帯よりも選択的支出の割合が低いため、選択 的支出の下落の影響も小さい」のである。 ここから導かれる結論は、「年間収入の少ない生活保護世帯の可処分所得の実質的増加(物価下落率)が、より収入の多い一般世帯の可処分所得の実質的増加(物価下落率)よりも大きくなることは、ほぼ間違いなくあり得ない」ということである。 ⑹ 生活扶助相当CPIの妥当性検証鈴木意見書は、以上の試算結果に基づき、生活扶助相当CPIの妥当性検証として、次のように述べている(33頁)。 「これらと生活扶助相当 ことである。 ⑹ 生活扶助相当CPIの妥当性検証鈴木意見書は、以上の試算結果に基づき、生活扶助相当CPIの妥当性検証として、次のように述べている(33頁)。 「これらと生活扶助相当CPIとを比較すると、生活扶助相当CPIの下落率が突出して大きいことが明らかである」。「最良指数を用いた試算、社 会保障生計調査のウエイトを用いた試算、第1五分位・第1十分位のウエイトを用いた試算では、いずれも下落率は1%台である。これらのウエイトの調整をせず、CPIのウエイトをそのまま用いて、総務省CPIの方式に沿って作成した接続CPIでさえ、その下落率は2.26%であり、生活扶助相当CPIの下落率である4.78%には程遠い」。「現在の日本(日本 に限らず、先進国では)の物価指数における1%の誤差は、とても無視しえ ない巨大な誤差である。ましてや、2%~3%もの誤差が生じることは異常事態である」。 そもそも、「下落率の小さい支出分類(基礎的支出)により多くのウエイトがかかる低所得の世帯の指数が、そうでない世帯の指数よりも下落率が大きくなるなどということは通常想定されない」ことなのであって、「実際、 ここで示した下落率の試算値はいずれも総務省CPIを下回っている。それにもかかわらず、生活扶助相当CPIではそれが逆転しているだけでなく、その差が2~3%に及ぶなどという数値は到底あり得るものではない」。 8 結論-生活扶助相当CPIを用いた「デフレ調整」の看過できない誤り鈴木意見書は、以上の検討から得られる結論を、以下のように簡潔にまとめ ている(33~34頁)。 (1) デフレが及ぼす「可処分所得の実質的変動」は個々の家計ごとに、すなわち、本質的には個々の家計の消費構造の相違によって異なる。集団でみると、 に簡潔にまとめ ている(33~34頁)。 (1) デフレが及ぼす「可処分所得の実質的変動」は個々の家計ごとに、すなわち、本質的には個々の家計の消費構造の相違によって異なる。集団でみると、世帯類型によって、すなわち、その世帯類型の消費構造の相違によって異なる。 (2) 生活保護世帯にも、母子世帯、高齢者世帯など、消費構造が明らかに異なる様々な世帯類型が含まれ、それらをひとまとめにしてデフレが及ぼす「可処分所得の実質的変動」を考慮しようとすることは不適切である。 (3) 仮に生活保護世帯でひとまとめにして、デフレが及ぼす「可処分所得の実質的変動」の影響を測定するとしても、生活保護世帯とは異なる世帯類型 (家計調査の対象となっている二人以上世帯)の消費構造を前提に作成された「生活扶助相当CPI」でこれを適切に測定することは、到底不可能である。 (4) 生活扶助相当CPIは「生活保護世帯における物価変動による可処分所得の実質的変動」を測定する指標として求められる性質を全く有していない。 また、物価指数理論の中でも例がなく、論理的根拠もない独自の方法によっ て指数を算出しており、論理的に見て明らかに不適切である。 (5) 生活扶助相当CPIの下落率は、各種試算値と比較しても異常と言えるほど大きなものであり、妥当な値であると考えることは不可能である。 (6) 各種試算から、デフレによる「生活保護世帯における、物価変動による可処分所得の実質的変動」の妥当な値は1%台中盤から2%程度であり、生活 扶助相当CPIの4.78%との差に相当する約3%は過剰な「デフレ調整」である。つまり、デフレによる生活保護世帯の「可処分所得の実質的増加」が約3%過剰評価されているのである。 そして、「以上の点から、生活扶助 の4.78%との差に相当する約3%は過剰な「デフレ調整」である。つまり、デフレによる生活保護世帯の「可処分所得の実質的増加」が約3%過剰評価されているのである。 そして、「以上の点から、生活扶助相当CPIは「生活保護世帯における、物価変動による可処分所得の実質的変動」を測定する指標として明ら かに不適切である」と結論付けている。 第4 ゆがみ調整の2分の1処理の違法性 1 はじめに(1) 被控訴人らは、「ゆがみ調整」につき、第1・十分位世帯の消費実態に合わせて、生活扶助区分の年齢階層別の相互間・世帯人員別の相互間・級地 別の相互間の各調整を行ったのであり、生活扶助基準の「高さ」を調整したものではなく、「財政的にはニュートラル(プラスマイナスゼロ)」という条件の下で行われたと説明している。そして、被控訴人らは、90億円の「ゆがみ調整」の財政削減効果につき、「第1・十分位世帯と実際の被保護世帯との間における世帯構成及び地域分布(年齢、世帯人員及び級地)の違 いによって結果的に生じた」と説明している。そのうえで、被控訴人らは、「ゆがみ調整」の際に、子どものいる世帯への影響に配慮する観点からの激変緩和措置という理由で、基準部会報告書8頁の折れ線グラフの反映比率(以下、「基準部会報告書の反映比率」という)を2分の1にしたと主張している(以下「2分の1処理」という)。 (2) しかしながら、被控訴人らによる「ゆがみ調整」における「2分の1処 理」は、①手続面においては、基準部会に諮ることなく独自の判断で行ったという点で、「判断の過程及び手続における過誤、欠落」があるばかりでなく、②内容面においても、子どものいる世帯への影響に配慮する観点からの激変緩和措置になっておらず、生活保護世帯の53.4%を占め という点で、「判断の過程及び手続における過誤、欠落」があるばかりでなく、②内容面においても、子どものいる世帯への影響に配慮する観点からの激変緩和措置になっておらず、生活保護世帯の53.4%を占める高齢単身世帯の生活扶助基準の上げ幅を2分の1にするという不利益を与えることに より、全体として年間91億2100万円の追加的な財政削減効果を取得したという点で、「統計等の客観的数値等との合理的関連性」がなく、「専門的知見との整合性」を欠くものである。 (3) 被控訴人らは、後記2で後述するとおり、「2分の1処理」の判断過程に関する主張を変遷させており、被控訴人らの現時点での主張が厚生労働大 臣の判断当時のものであったかは強い疑問があるが、ここではその点を措くとして、仮に被控訴人らの現時点での主張を前提にすると、「2分の1処理」の主要な判断過程として、①子どものいる世帯に配慮して貧困の世代間連鎖を防ぐ観点からの激変緩和措置であることを挙げたうえで、付加的に、②平成25年検証には一定の統計上の限界が認められたこと、及び、③次の基準 部会の定期的な検証において更なる評価、検証が予定されていたことを挙げていることになる。 (4) しかしながら、「2分の1処理」は、「取扱厳重注意」文書(甲共332)の記載内容及び控訴人らが行った検証の結果(甲共322、甲共323、甲共324、甲共325)に照らすと、子どものいる世帯に対する激変緩和 措置とはいえないばかりか、基準部会に一切諮ることなく、生活保護世帯の53.4%を占める高齢単身世帯の生活扶助基準の上げ幅を2分の1にするという不利益を与えることにより、全体として年間91億2100万円の追加的な財政削減効果を実現したのである。 (5) 控訴人らは、以下において、①「2分の1処理」 活扶助基準の上げ幅を2分の1にするという不利益を与えることにより、全体として年間91億2100万円の追加的な財政削減効果を実現したのである。 (5) 控訴人らは、以下において、①「2分の1処理」の判断過程に関する被 控訴人らの説明(論証過程)が著しく変遷していて説得力を欠くこと、② 「2分の1処理」は被控訴人らが主張するような「子どものいる世帯に配慮した激変緩和措置」とはいえず、その論証過程(判断過程)に過誤があること、③「2分の1処理」の真の目的が生活扶助費の大幅な追加的削減にあったこと、④「2分の1処理」が合理的根拠なく基準部会が行った「ゆがみ調整」の趣旨を没却し、増額となる世帯に不利益を与えるものであって、そも そも「需要」に基づく改定でもなく、「最低限度の生活の需要」への合致も欠くことから生活保護法8条2項に違反することにつき、順を追って詳論する。 2 「2分の1処理」の判断過程に関する被控訴人らの説明が変遷していること(1) はじめに いわゆる「判断過程審査」における「判断過程」とは、行政機関による論理・論証の筋道であるところの「論証過程」をいうが、行政機関が現実に辿った「調査・検討過程」と「密接」で「不即不離」の関係にある。そのため、行政機関による「論証過程」の著しい変遷は、それ自体が論証過程の説得力を減殺又は喪失させ、「現実の調査・検討過程」の過誤・欠落 を意味するものである。 被控訴人らの「2分の1処理」をめぐる判断過程の説明は、以下に概観するとおり、不合理な変遷を繰り返しているのであり、この点は、被控訴人らによる「2分の1処理」の判断過程に関する説明が、真の動機を隠すための後付けの弁解であって、「一応の説得力」さえ欠いていることを示 すものである。 (2) 被控訴 あり、この点は、被控訴人らによる「2分の1処理」の判断過程に関する説明が、真の動機を隠すための後付けの弁解であって、「一応の説得力」さえ欠いていることを示 すものである。 (2) 被控訴人らの説明の変遷過程ア原審における被告ら第1準備書面での説明(2分の1処理に言及せず)まず、被控訴人らは、原審の第1準備書面において、本件保護基準改定の判断過程などを詳細に論ずる中で、「ゆがみ調整」における指数の反 映及びその内容につき、「基準部会の検証結果で明らかとなった年齢階 級別、世帯人員別、級地別の生活扶助基準額による指数と一般低所得世帯の消費実態による指数の乖離を是正するものである」(同40頁7~9行目)と明言し、「2分の1処理」に関しては一切論及していない。 しかも、被控訴人らは、同準備書面において、平成25年報告書の内容の合理性につき、「基準部会では、前2回の検証の指摘を踏まえて、専 門的議論の結果得られた透明性の高い妥当な検証手法を用いて、徹底した相対比較によるきめ細やかな検証が行われたものであり、その検証結果には十分な合理性、信頼性が認められる」(同40頁2~5行目)などと主張して、専ら積極的な評価をするのみであり、「当該手法が唯一のものであるということはできないし、特定のサンプル世帯に限定して 分析する際にサンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界も認められた」(当審の被控訴人ら第9準備書面43頁10~12行目)などという消極的な側面の指摘は一切していない。 また、被控訴人らは、原審の被告ら第1準備書面において、激変緩和措置の内容につき、「生活扶助基準の見直しに際して、平成25年度から 3年間をかけて段階的に実施(期末一時扶助を除く)するとともに、見直しの影響を一定程度に抑 ら第1準備書面において、激変緩和措置の内容につき、「生活扶助基準の見直しに際して、平成25年度から 3年間をかけて段階的に実施(期末一時扶助を除く)するとともに、見直しの影響を一定程度に抑える観点から、平成25年改定前の生活扶助基準からの増減幅に上限と下限を設けて、プラスマイナス10パーセントを超えないように調整する激変緩和措置を講じている。」(同54頁9~13行目)、「そこで、厚生労働大臣は、かかる指摘を踏まえ、今 般の生活扶助基準の見直しについては、生活保護受給世帯に対する激変緩和措置として、①平成25年度から3年間をかけて段階的に実施する(期末一時扶助を除く)とともに、②見直しの影響を一定程度に抑える観点から、現行基準からの増減幅は、プラスマイナス10パーセントを超えないように調整しているところである。」(同30頁22行目~3 1頁2行目)と主張するのみで、ここでも「2分の1処理」に関する論 及を一切していない。 このように、被控訴人らは、本訴訟の当初の時点では、「2分の1処理」の判断過程を説明しないばかりか、その存在自体も秘匿していたのであるから、「2分の1処理」の判断過程を特定する際には、被控訴人らによるこれらの不誠実な態度を考慮に入れなければならない。 イ北海道新聞の調査報道による「2分の1処理」の発覚ところが、北海道新聞のP3記者(P3記者)の調査報道によって、「2分の1処理」が初めて明らかとなった。 すなわち、P3記者は、平成25年8月、「厚労省と世耕弘成内閣官房副長官との協議、打ち合わせの全てのメモ、文書」の情報開示請求をし たところ、厚生労働省が非開示決定をしたため審査請求をした。総務省の審査会が、平成27年3月、認容答申を出したため、厚生労働省は、同年9月にな ち合わせの全てのメモ、文書」の情報開示請求をし たところ、厚生労働省が非開示決定をしたため審査請求をした。総務省の審査会が、平成27年3月、認容答申を出したため、厚生労働省は、同年9月になってようやく、「取扱厳重注意」と赤字で付記された「生活保護制度の見直し」についてと題する文書(以下でも「取扱厳重注意文書」という。甲共332は、後日、名古屋地裁係属事件における原告 代理人が同様に情報公開請求して入手したものである。)を開示交付した(以上、甲共332)。同文書の5枚目の(注2)に「年齢・世帯人員・地域差による影響の調整を1/2とし」とあったことから、P3記者が取材を重ねた結果、「2分の1処理」が判明し、平成28年6月18日、北海道新聞がこれを報道したのである(甲共141の2)。 ウ原審における被告ら第14準備書面による説明の変遷上記イのとおり、北海道新聞のP3記者の調査報道によって、「2分の1処理」が初めて明らかとなった後、被控訴人らは、原審の被告ら第14準備書面(令和2年2月27日付)(16頁19行目~17頁10行目)において、「(2) また、平成25年検証の結果の反映比率を2分の 1とする激変緩和措置を講じた経緯を見ても、平成25年報告書は、そ の検証結果をそのまま基準に反映することを求めていない。かえって、同報告書は、「検証結果に関する留意事項」の項目(乙共6・8~10頁)において、「今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配 慮する必要がある。」などと指摘していた。このような平成25年報告書の記載を踏まえ、平成25年検証の結果の反映比率を2分の1 貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配 慮する必要がある。」などと指摘していた。このような平成25年報告書の記載を踏まえ、平成25年検証の結果の反映比率を2分の1とする激変緩和措置を講じたものである。」「(3) 以上のとおり、基準部会の平成25年検証の結果は、厚生労働大臣の考慮要素の一つと位置づけられるから、その結果を忠実に生活扶助基準に反映させなければ違法とな るものではなく、厚生労働大臣は、平成25年報告書の内容を踏まえ、平成25年検証の結果に沿って本件保護基準改定を行ったものというべきである。したがって、ゆがみ調整の際に平成25年検証の結果の反映比率を2分の1とする激変緩和措置を講じたことが基準部会の意見を踏まえたものと言えない旨の原告らの主張には理由がない。」と主張し、 「2分の1処理」の判断過程につき、「子どものいる世帯への配慮と貧困の世代間連鎖の防止」などという説明を行い始めた。このように、被控訴人らは、本訴訟の当初の時点では、「2分の1処理」の判断過程を説明しないばかりか、その存在自体も秘匿していたのであるが、一度「2分の1処理」の存在が発覚し、控訴人らからこの点の不合理性に関 する詳細な主張を受けると、その判断過程につき、「子どものいる世帯への配慮」という観点からの激変緩和措置と主張するに至ったのである。 エ原審における被告ら第15準備書面における主張次いで、被控訴人らは、原審の被告ら第15準備書面(令和2年5月14日付)(31頁10~21行目)において、「(2) 激変緩和措置の内 容前記のとおり、厚生労働大臣は、ゆがみ調整、デフレ調整による生 活扶助基準の見直しを行うこととしたが、ゆがみ調整の結果をそのまま反映させた場合、子どもがいる世帯 変緩和措置の内 容前記のとおり、厚生労働大臣は、ゆがみ調整、デフレ調整による生 活扶助基準の見直しを行うこととしたが、ゆがみ調整の結果をそのまま反映させた場合、子どもがいる世帯の基準額が大きく減額となると考えられ、また、減額幅の上限を設けなかった場合には、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによって、基準額が大幅に減額となる世帯があると考えられた。そこで、厚生労働大臣は、子どもがいる世帯に配慮し て貧困の世代間連鎖を防ぐ観点から、平成25年検証の結果を反映する程度を2分の1とするとともに、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによって大幅な減額となる世帯に配慮する観点から、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによる減額幅の上限を10%とした上で、その結果の反映を3年にわたって実施するという激変緩和措置を講じる こととした。」と主張し、「2分の1処理」の判断過程につき、「子どもがいる世帯に配慮して貧困の世代間連鎖を防ぐ観点から、平成25年検証の結果を反映する程度を2分の1とする」こととしたとの説明を繰り返した。 オ被控訴人らの控訴審第9準備書面による更なる主張の変遷 被控訴人らは、控訴審の被控訴人ら第9準備書面(令和5年5月11日付)(43~46頁「ウ厚生労働大臣が2分の1処理を講じた経緯」)において、「平成25年検証は、生活扶助基準の「展開のための指数」(相対的な較差)について初めて詳細な分析を行ったところ、その手法は、専門的議論の結果得られた透明性の高い合理的なものであると評価 することができるものの、当該手法が唯一のものであるということはできないし、特定のサンプル世帯に限定して分析する際にサンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界も認められた(乙共6・9頁)。 また ことができるものの、当該手法が唯一のものであるということはできないし、特定のサンプル世帯に限定して分析する際にサンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界も認められた(乙共6・9頁)。 また、現に、生活扶助基準については、専門機関による検証が定期的に行われることとされており、展開部分についても、平成25年検証の結 果等を前提に、その後も更なる検証が行われることが予定されていた。 そのため、もとより平成25年検証の結果の取扱いとして、検証作業において算出された指数を機械的にすべて反映させることが求められるべきものではないことは明らかであった。」と主張し、初めて平成25年検証の問題点に論及したうえで、「2分の1処理」の判断過程として、付加的に「統計上の限界」及び「更なる評価、検証の予定」を挙げるに 至った。 また、被控訴人らは、同準備書面(44頁以下)において、「(イ)平成25年検証の結果の反映の程度を、減額か増額かを問わず、一律に2分の1とした理由」として、「また、ゆがみ調整については、平成25年検証の結果に関し、例えば、個別の指数ごとに、減額幅(減額の改定 率)については2分の1とし、増額幅(増額の改定比率)についてはそのまま反映させるといったように、反映の程度を部分的に変えるということは理論的にあり得る。もっとも、このような世帯によって改定比率を変える方法は、検証結果の取扱いの公平性を欠く。また、増額又は減額のいずれかに偏った反映をすることは、生活扶助基準の相対的な較差 の検証という平成25年検証の本質的な趣旨を改変することになる。すなわち、減額幅か増額幅かによって反映の程度を変えるとすれば、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)にも影響を及ぼしかねないところ(例えば、上記のように減額幅に 本質的な趣旨を改変することになる。すなわち、減額幅か増額幅かによって反映の程度を変えるとすれば、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)にも影響を及ぼしかねないところ(例えば、上記のように減額幅については2分の1とし、増額幅についてはそのまま反映させるとすれば、生活保護受給世帯全体としてみた場 合に減額幅に比べて増額幅が大きくなる結果、生活扶助基準の水準(絶対的な高さ)が引き上げられたと評価し得る。)、このような反映方法は、生活保護基準の年齢階級別、世帯人員別、級地別の「展開のための指数」(相対的な較差)について評価・検証を行うという平成25年検証の目的と相容れず、同検証の本質的な趣旨を改変することになる。そ のため、厚生労働大臣は、平成25年検証の結果の反映の程度を、減額 幅か増額幅かを問わず、一律に2分の1としたものである。」と主張し、「平成25年検証の結果の反映の程度を、減額か増額かを問わず、一律に2分の1とした理由」について、「検証結果の取扱いの公平性」を挙げ、また、「平成25年検証の本質的な趣旨」を改変しないためであると説明を初めて行うに至った。 (3) まとめ判断過程審査の対象が行政機関の説明する判断過程であるとしても、裁判所から判断過程の説明を求められた行政機関は、当該処理を採用した当時の判断に至った過程を説明するのであるから、本来、行政機関の説明内容が事後的に変遷することはあり得ない。その意味では、合理的理由なく 判断過程に関する説明が変遷することは、それ自体が当該説明内容の信用性、説得力を減殺する事情として考慮されるべきである。 また、従前の説明内容と矛盾ないし抵触し同一性を欠くほどに変遷した説明は、その信用性及び説得力を全く欠くものと扱われるべきであり、変遷後の説明は判断 得力を減殺する事情として考慮されるべきである。 また、従前の説明内容と矛盾ないし抵触し同一性を欠くほどに変遷した説明は、その信用性及び説得力を全く欠くものと扱われるべきであり、変遷後の説明は判断過程に関する論証として認められるべきではない。なぜ なら、これを許せば、当初の説明内容に対する控訴人(原告)側の反論反証が奏功するたびに、行政機関側は、新たな弁解(説明)を捻り出して判断の土俵をすり替えることで際限なく自らの行為を正当化することが可能となるという不正義な事態を招くからである。 したがって、前述のとおり、被控訴人らが「2分の1処理」をめぐる判 断過程の説明に当たり不合理な弁解と変遷を繰り返していること自体が、当該説明内容(論証過程)に合理性、信用性がなく、説得力を欠いていることを意味している。この点からも、「2分の1処理」の論証過程(判断過程)には、過誤、欠落が認められる。 3 「2分の1処理」に関する被控訴人らの説明(論証過程)に合理的な根拠が ないこと (1) そもそも「激変緩和措置」とはいえないことア 「激変緩和措置」とは、生活扶助基準額が減額となる世帯の負担を軽減することを目的とした措置をいう。この点、本件保護基準改定における「減額幅の上限を10パーセントにした措置」や「減額の反映を平成25年から3年にわたって実施することとした措置」は、生活扶助基準 額が減額となる世帯の負担を軽減することになるから、一応、「激変緩和措置」に当たることになる。 イこれに対し、「2分の1処理」は、「ゆがみ調整」において、低所得者層の消費実態を生活扶助基準に反映させる際の比率を修正するものであり、生活扶助基準額が減額となる年齢階層別・級地別・世帯人員別の 各指数の減額幅を2分の1にするだけで 調整」において、低所得者層の消費実態を生活扶助基準に反映させる際の比率を修正するものであり、生活扶助基準額が減額となる年齢階層別・級地別・世帯人員別の 各指数の減額幅を2分の1にするだけでなく、増額となる類型の各指数も同様に2分の1にしたのであるから、生活扶助基準額が減額となる世帯の負担を軽減することを目的とした「激変緩和措置」には当たらない。 特に、「2分の1処理」の結果、生活保護利用世帯の53.4%以上を占める60歳以上の高齢単身世帯について、「ゆがみ調整」による生活 扶助基準の増額幅が2分の1に減らされたばかりか、その他にも「ゆがみ調整」により生活扶助基準が減らされた生活保護世帯の類型が多数存在したことに照らすと、「2分の1処理」は、大半の生活保護利用世帯にとって、生活扶助基準額の減額をもたらすものなのであるから、本来の意味での「激変緩和措置」とは到底いえないことになる。 ウまた、平成24年12月に厚生労働省社会・援護局保護課が内閣官房副長官に示した「取扱厳重注意」文書(甲共332)には、「激変緩和措置」として、「減額幅の上限を10パーセントにした措置」と「減額の反映を平成25年から3年にわたって実施することとした措置」の二つが掲げられている一方で(同4枚目)、「2分の1の処理」は掲げら れていない。また、同省保護課が、平成25年3月11日に配布した会 議資料(乙共16・30頁)の記載内容も同様であって、この点は、被控訴人らが「2分の1処理」を「激変緩和措置」として位置づけていなかったことを明確に裏づけるものである。 エ以上より、「2分の1処理」は、「ゆがみ調整」を一部的に実施したものであり、「激変緩和措置」とはいえないから、これが「激変緩和措 置」であることを前提とする被控訴人 に裏づけるものである。 エ以上より、「2分の1処理」は、「ゆがみ調整」を一部的に実施したものであり、「激変緩和措置」とはいえないから、これが「激変緩和措 置」であることを前提とする被控訴人らの主張は、明らかに誤りである。 (2) 「子どものいる世帯」への「激変緩和」とはいえないことア被控訴人らの主張によると、「2分の1処理」の判断過程は、「子どものいる世帯への影響に配慮する観点からの激変緩和措置」となるが、「取扱厳重注意」文書(甲共332)の5枚目の左側の表と右側の表の 数値を基礎としても、「2分の1処理」による子どもいる世帯に対する緩和効果は、一切ないか、あっても極めて限定的なものである。したがって、「2分の1処理」が子どものいる世帯の負担を軽減することを目的とした「激変緩和措置」ということは到底できず、「2分の1処理」の判断過程には過誤があることは明らかである。 イすなわち、「取扱厳重注意」文書(甲共332)の5枚目の左側の表の①と右側の表の③の各平均値は、「いずれも児童養育加算、母子加算」が含まれているから(注3を参照)、生活扶助基準の増減額に限れば、「夫婦子1人」世帯については、「見直し後の基準額」から金1万円(当時の児童養育加算1人分のおおよその平均値)、「夫婦子2人世帯」 については、「見直し後の基準額」から金2万円(当時の児童養育加算2人分のおおよその平均値)、「母子世帯(18歳未満の子1人)」については、「見直し後の基準額」から金1万1000円(当時の母子加算1人分のおおよその金額)をそれぞれ控除した金額がより正確である。 この点、「取扱厳重注意」文書(甲共332)の5枚目の左側の表の① と右側の表の③の各平均値、及び右側の表の「検証結果の影響(③/ ①)」は、上記 ぞれ控除した金額がより正確である。 この点、「取扱厳重注意」文書(甲共332)の5枚目の左側の表の① と右側の表の③の各平均値、及び右側の表の「検証結果の影響(③/ ①)」は、上記の修正を反映させると、次の【表1】とおりとなる。 【表1】「2 分の1 処理」・「デフレ調整」後の世帯類型ごとの生活扶助基準額世帯類型①行基準額を適用した場合の平均値③見直し後基準額を適用した場合の平均値検証結果の影響(③/①)夫婦子1人 14 万7000 円 13 万4000 円91%夫婦子2人 16 万6000 円 14 万9000 円90%高齢単身(60 歳以上) 7 万3000 円 7 万1000 円97%高齢夫婦(60 歳以上)万6000 円万3000 円97%単身(20~50 代) 7 万8000 円 7 万4000 円94%母子世帯(18 歳未満の子1人) 11 万8000 円万8000 円92%これに対し、「取扱厳重注意」文書(甲共332)の5枚目の左側の表についても、同様に児童養育加算と母子加算の除去による修正を反映させると、以下の【表2】のとおりとなる。 【表2】「ゆがみ調整」前後の世帯類型ごとの生活扶助基準額 世帯類型① 現行基準額を適用した場合の平均値②証結果を完全に反映した場合の平均値検証結果の影響(②/①)デフレ調整を考慮(×0.952)夫婦子1人 14 万7000 円 13 万3000 円90%86%夫婦子2人 16 万6000 円 13 万9000 円84%80%高齢単身(60 歳以上) 7 万300 人 14 万7000 円 13 万3000 円90%86%夫婦子2人 16 万6000 円 13 万9000 円84%80%高齢単身(60 歳以上) 7 万3000 円 7 万7000 円105%100%高齢夫婦(60 歳以上)万6000 円万8000 円102%97%単身(20~50 代) 7 万8000 円 7 万7000 円98%93%母子世帯(18 歳未満の子1人) 11 万8000 円 11 万円93%89%そして、「取扱厳重注意」文書(甲共332)の5頁の左側の表の②の各数値には「デフレ調整」が考慮されていないため、表2の「検証結果 の影響(②/①)」の各数値に「デフレ調整」の調整比率0.952を乗じたものが表2の「デフレ調整を考慮」の数字となる。これによると、「デフレ調整」をした後の「夫婦子1人世帯」「夫婦子2人世帯」「母子世帯」は、いずれも90%を下回るが、「減額幅の上限を10パーセントにした措置」の適用により、これらはいずれも90%にとどまるこ とになる。 したがって、表1の数値を前提にしたとしても、「減額幅の上限を10パーセントにした措置」の適用により、「夫婦子2人世帯」については、「2分の1処理」の前後とも「90%」(10%の削減)となり、「2分の1処理」による緩和効果は一切ない。また、「夫婦子1人世帯」に ついては、「2分の1処理」の前が「90%」・後が「91%」、「母子世帯(18歳未満の子1人)」については、「2分の1処理」の前が「90%」・後が「92%」であって、前後の差は僅かであるから、「2分の1処理」による緩和効果は極めて限定的である。 ウまた、控訴人ら提出の各報告 満の子1人)」については、「2分の1処理」の前が「90%」・後が「92%」であって、前後の差は僅かであるから、「2分の1処理」による緩和効果は極めて限定的である。 ウまた、控訴人ら提出の各報告書(甲共322、甲共323、甲共32 4、甲共325)の内容に照らすと、「子どものいる世帯」の3割~4割の世帯類型において、減額幅の上限を10%とした激変緩和措置の影響もあり、「2分の1処理」によっても、生活扶助基準額の減額1ないしは不変の効果を受けたのであるから、「2分の1処理」を生活扶助基準額が減額となる世帯の負担の軽減を目的とした「激変緩和措置」という ことは到底できない。 しかも、控訴人ら提出の報告書(甲共327)の内容に照らすと、「2分の1処理」は、子ども全体の半数程度(49.63%)を占める「1 1 「子どものいる世帯」のうち、「夫婦子1 人」「夫婦子2 人」「母子世帯」の平均値では、ゆがみ調整の結果は減額になるが、年齢階級、世帯人員、級地の組み合わせによっては増額になる場合もあり、その場合には「2 分の1 処理」によってかえって減額となってしまう。 2歳~19歳」の年齢階層の子どもの実に67.1%に対し、激変緩和の効果を生ぜしめなかったのであるから、子ども自身に及ぼす影響からみた場合でも、「2分の1処理」を子どものいる世帯に対する「激変緩和措置」と評価できないことは明らかである。 エ以上より、子どものいる世帯類型及び子ども自身に及ぼす影響に照ら すと、「2分の1処理」は、「子どものいる世帯への影響に配慮する観点からの激変緩和措置」と評価することはできない。 なお、「2分の1処理」が「激変緩和措置」といえないことからすれば、その適法性については、 2分の1処理」は、「子どものいる世帯への影響に配慮する観点からの激変緩和措置」と評価することはできない。 なお、「2分の1処理」が「激変緩和措置」といえないことからすれば、その適法性については、「激変緩和措置等の適法性の場面における司法審査のあり方」ではなく、「改定の適法性の場面における司法審査のあ り方」が適用されることになる。 (3) 「統計上の限界」「更なる評価、検証が予定」は根拠にならないことア既述のとおり、被控訴人らは、原審の被告ら第14準備書面において、初めて平成25年検証の問題点に論及したうえで、「2分の1処理」の判断過程として、付加的に「平成25年検証には一定の統計上の限界が 認められたこと」及び「次の基準部会の定期的な検証において更なる評価、検証が予定されていたこと」を挙げるに至っている。しかし、この点に関する説明(判断過程)の付加は、被控訴人らの原審の準備書面(1)の趣旨に明らかに矛盾、抵触するものであるから、認められるべきではないし、それ自体が、被控訴人らの説明内容が説得力を欠くことを示し ている。 イすなわち、被控訴人らは、原審の第1準備書面において、平成25年報告書の内容の合理性につき、「基準部会では、前2回の検証の指摘を踏まえて、専門的議論の結果得られた透明性の高い妥当な検証手法を用いて、徹底した相対比較によるきめ細やかな検証が行われたものであり、 その検証結果には十分な合理性、信頼性が認められる」(同40頁2~ 5行目)などと主張することにより、専ら積極的な評価をするのみであり、「統計上の限界」及び「更なる評価、検証の予定」には一切論及してないのである。 したがって、「統計上の限界」及び「更なる評価、検証の予定」という理由については、被控訴人らが「後付け」 のみであり、「統計上の限界」及び「更なる評価、検証の予定」には一切論及してないのである。 したがって、「統計上の限界」及び「更なる評価、検証の予定」という理由については、被控訴人らが「後付け」の弁解として持ち出してきた ものであり、厚生労働大臣が「2分の1処理」を採用した時点の説明(判断過程)ではないことは明らかなのである。 ウそもそも、どのような専門家の検証であれ、常に「一定の統計上の限界」は認められるものであり、ある時期の検証について「次の基準部会の定期的な検証において更なる評価、検証が予定」されることも、また 当然のことである。このような事情があるからといって、平成25年検証がとくに問題があって、そのまま実施できないものであった、などということはできない。 被控訴人らの主張によっても、上記のとおり、平成25年検証は「前2回の検証の指摘を踏まえて、専門的議論の結果得られた透明性の高い妥 当な検証手法を用いて、徹底した相対比較によるきめ細やかな検証が行われたものであり、その検証結果には十分な合理性、信頼性が認められる」ものである。他方で、「2分の1処理」が、平成25年報告書のとおりの「ゆがみ調整」を行うよりも、より合理的であることを示す根拠は何もない。 被控訴人らの主張によれば、「ゆがみ調整」は、「平成25年検証の結果に基づき、生活保護受給世帯間の公平を図るため」、「一般低所得世帯の消費実態を「展開のための指数」(相対的な較差)に反映させて、生活扶助基準の展開部分の適正化を図る」ことにしたものである(被控訴人らの控訴審第9準備書面42頁7行目~11行目)。「2分1処理」 は、このような平成25年検証の結果を反映させる比率を一律2分の1 とするものであるから、2分の1だけしか「生活 訴人らの控訴審第9準備書面42頁7行目~11行目)。「2分1処理」 は、このような平成25年検証の結果を反映させる比率を一律2分の1 とするものであるから、2分の1だけしか「生活保護受給世帯間の公平」「生活扶助基準の展開部分の適正化」は実現されないこととなる。そして、「子どものいる世帯」への「激変緩和」という理由でこれを正当化できないことは上記したとおりである。また、「統計上の限界」や「更なる評価、検証が予定」されていたとしても、そのことで、「2分の1 処理」が、平成25年報告書のとおり「ゆがみ調整」を行うよりも、より合理的である理由にはならないのである。 (4) 「生活扶助受給者世帯の公平」も根拠にならないことア被控訴人らは、控訴審第9準備書面(令和5年5月11日付)において、基準部会の検証結果を「一律に」2分の1にする方法で「2分の1 処理」を採用した際の判断過程として、「検証の影響を受ける生活扶助受給世帯の公平の観点」を挙げるに至っている。 イしかし、「生活扶助受給世帯の公平」という点では、そもそも「ゆがみ調整」それ自体が、「平成25年検証の結果に基づき、生活保護受給世帯間の公平を図るため」、「一般低所得世帯の消費実態を「展開のた めの指数」(相対的な較差)に反映させて、生活扶助基準の展開部分の適正化を図る」ものなのであるから、増額か減額かを問わず一律2分の1とするよりも、減額についてだけ2分の1とし、増額については平成25年報告書どおりに反映させる方が、「生活保護受給世帯間の公平」、「生活扶助基準の展開部分の適正化」は、より実現することになるはず である。増額か減額かを問わず一律2分の1とすることは、一般低所得世帯の消費実態と比較して、生活扶助基準の展開において、より高い水 扶助基準の展開部分の適正化」は、より実現することになるはず である。増額か減額かを問わず一律2分の1とすることは、一般低所得世帯の消費実態と比較して、生活扶助基準の展開において、より高い水準にある展開部分の減額幅を半分に抑えるかわりに、より低い水準にある展開部分の改善(増額)を半分にとどめるということであって、このような措置は、かえって「生活保護受給世帯間の公平」に反することに なる。 (5) 「平成25年検証の本質的な趣旨」も根拠にならないことアなお、被控訴人らは、「増額幅か減額幅かによって反映の程度を変えるとすれば、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)にも影響を及ぼしかねない」から、「増額又は減額のいずれかに偏った反映をすることは、生活扶助基準の相対的な較差の検証という平成25年検証の本質的 な趣旨を改変することになる」(被控訴人らの控訴審第9準備書面44頁)とも主張する。 イ確かに、平成25年検証では「仮に第1・十分位の全ての世帯が生活保護を受給した場合の1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして、年齢、世帯人員体系及び級地の基準額の水準への影響を評価する方 法を採用」(原審における被告ら第1準備書面41頁)して、年齢階級別、世帯人員別、級地別の生活扶助基準額による展開のための指数と一般低所得世帯の消費実態による指数との間の乖離を算出している。しかし、これは、「第1・十分位のサンプル世帯」において「生活保護を受給した場合の基準額の平均」と「実際の生活扶助相当消費支出の平均」 とが同額になるように指数を算出したというにすぎず、実際の生活保護世帯が受給している「基準額の平均」が変わらないように指数を算出したということではない(原審における被告ら第1準備書面41頁)。そのた が同額になるように指数を算出したというにすぎず、実際の生活保護世帯が受給している「基準額の平均」が変わらないように指数を算出したということではない(原審における被告ら第1準備書面41頁)。そのため、被控訴人らも、「サンプル世帯と実際の被保護世帯との世帯構成及び地域分布の違い」のため、「ゆがみ調整」によって90億円もの 財政削減効果が生じたと主張しているのである(同16頁)。ただし、実際には、「サンプル世帯と実際の被保護世帯との世帯構成及び地域分布の違い」からくる平成25年検証そのものの財政効果は増額だったはずであり、90億円の財政削減効果は、「ゆがみ調整」それ自体ではなく「2分の1処理」によって発生している。 ウすなわち、被控訴人らは、「増額幅か減額幅かによって反映の程度を 変えるとすれば、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)にも影響を及ぼしかねない」と主張するが、平成25年検証は、「生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)」に影響を及ぼさないことを「本質的な趣旨」としていたものではない。平成25年検証は、「生活扶助基準の相対的な較差の検証」を行ったものではあるものの、(それが控訴人ら主張の ように増額方向で表れたか、被控訴人ら主張のように減額方向で表れたかはともかく、)もともと「サンプル世帯と実際の被保護世帯との世帯構成及び地域分布の違い」によって「生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)にも影響」を及ぼすことは想定されていたのである。 したがって、「増額又は減額のいずれかに偏った反映をすることは、生 活扶助基準の相対的な較差の検証という平成25年検証の本質的な趣旨を改変することになる」との被控訴人らの主張は、「平成25年検証の本質的な趣旨」を見誤ったものであり、増額か減額かを問わず一律「2 活扶助基準の相対的な較差の検証という平成25年検証の本質的な趣旨を改変することになる」との被控訴人らの主張は、「平成25年検証の本質的な趣旨」を見誤ったものであり、増額か減額かを問わず一律「2分の1処理」をすることを何ら正当化するものではない。 (6) 小括 以上見てきたとおり、被控訴人らが「2分の1処理」を行った理由として説明する内容には、いずれも合理的根拠がない(特に、被控訴人らは、「子どものいる世帯への激変緩和措置」であることを強調してきたが、(1)、(2)で述べたとおり、そうはいえない)。 このように、「2分の1処理」に関する被控訴人らが主張する論証過程 は、いずれも説得力を欠き破綻しており、「一応の説得力」すらない。 したがって、この一事をもってしても、「2分の1処理」をした厚生労働大臣の判断には、「判断の過程における過誤、欠落」があるものとして、裁量権の範囲の逸脱、濫用があり違法である。 4 「ゆがみ調整」の財政効果に関する被控訴人らの説明内容の変遷と内容の誤 り(1) 「ゆがみ調整」の財政効果に関する被控訴人らの説明内容の変遷ア 「ゆがみ調整」による約90億円の財政削減効果が発生した機序に関する被控訴人らの主張もまた、以下のとおり変遷している。 イまず、被控訴人らは、原審の第1準備書面(42頁2行目~6行目) において、「ゆがみ調整」は、「平均受給額が変わらないとの前提があるため、平成25年報告書の検証結果どおりに保護基準を改定した場合、……平均すれば基準は引上げでも引下げでもなく同額となり、財政的にはニュートラル(プラスマイナスゼロ)である」が、「サンプル世帯と実際の被保護世帯との世帯構成及び地域分布の違いによって結果的に」 90億円の財政効果が生じたと説明し なく同額となり、財政的にはニュートラル(プラスマイナスゼロ)である」が、「サンプル世帯と実際の被保護世帯との世帯構成及び地域分布の違いによって結果的に」 90億円の財政効果が生じたと説明していた。 ウところが、前述のとおり、北海道新聞の調査報道から「2分の1処理」が発覚したことから、本件と同種訴訟である名古屋地方裁判所係属の事件において、同事件の原告らは、原告第36準備書面で、「2分の1処理」によって年間90億円以上の財政削減効果があるとの試算を明らか にし、基準部会が行った「ゆがみ調整」自体の財政効果は増額であったことが判明したと主張した。 これに対し、同事件の被告らは、上記主張を積極的に争わないばかりか、令和2年1月27日の弁論終結をした第21回口頭弁論期日において、「削減幅10%を限度とする激変緩和もあり、歪み調整の幅を2分の1 に抑えた場合、それを行わない場合よりも、全体での支給額が減額となるということに争いはない」ことに合意した。 エところが、上記名古屋地方裁判所係属の事件の審理も大詰めとなった段階に至り、本件基準改定の実務を担当した厚生労働省保護課のP4課長補佐(当時)は、「2分の1処理」につき、「仮に平成25年報告書 において示された生活扶助基準における展開指数と一般低所得世帯にお ける消費実態の指数の乖離幅をすべて生活扶助基準に反映していたとすれば、実際のゆがみ調整と比較して増額分も減額分も一律に2倍の増減率が反映されるため、財政影響は90億円よりも大きくなります。要するに、ゆがみ調整では、2分の1反映とした結果、財政影響も小さくなったということです」と述べる陳述書(乙共107)を提出した。そ して、P4課長補佐は、上記名古屋地方裁判所係属の事件の控訴審の第10回口頭 調整では、2分の1反映とした結果、財政影響も小さくなったということです」と述べる陳述書(乙共107)を提出した。そ して、P4課長補佐は、上記名古屋地方裁判所係属の事件の控訴審の第10回口頭弁論期日(証人尋問期日)において、被控訴人ら代理人からの主尋問に対して、上記の陳述書の内容に沿う証言をする一方で(乙共108・7~8頁)、この点に関する控訴人ら代理人からの質問に対しては回答を拒否する旨の不誠実な態度を取り続けたのであるが(乙共1 08・37~44頁)、その後の裁判長からの補充質問に対して、「2分の1処理」をしなかった場合の財政削減効果について、「2倍である180億円前後ということにはなろうかと」と証言し、「180億円財政影響があると、90億円の2倍になると、そういうご理解ということですね」との裁判長からの確認に対しても、「おおよそ2倍くらいかと、 はい」と明言した(乙共108・87~88頁)。 これを受け、被控訴人らは、控訴審第9準備書面(46頁9行目~12行目)において、「仮に、2分の1処理を行わず、平成25年検証の結果を全て反映させた場合には、増額幅及び減額幅のいずれもおおむね2倍となるため、財政削減効果も約2倍になっていたものと考えられる」 と主張するに至った。 オ以上のとおり、説明の内容が著しく変遷していること自体から、「2分の1処理」による財政効果に関する被控訴人らの説明には、(上記ウの口頭弁論期日で合意した内容を除き)信用性や説得力が全く認められない。 とりわけ、訴訟終盤の直近に至って主張するに至った上記エの内容は、 上記ウの合意内容と真っ向から矛盾する。仮に、上記エの主張どおりであるなら、訴訟のもっと早い段階で、控訴人らが行ったのと同様に試算を示したうえで、「2分の 張するに至った上記エの内容は、 上記ウの合意内容と真っ向から矛盾する。仮に、上記エの主張どおりであるなら、訴訟のもっと早い段階で、控訴人らが行ったのと同様に試算を示したうえで、「2分の1処理」がもつ全体としての「激変緩和」効果を強調してしかるべきなのに、それをなし得ないのは、具体的数値をもって裏付けることができない主張にすぎないからである。 (2) 基準部会に一切諮ることなく秘密裏に実施されたことア 「取扱厳重注意」文書(甲共332)は、厚生労働省の当時のP5社会・援護局長とP6保護課長が、首相官邸で、当時の世耕弘成内閣官房副長官との協議において、生活保護基準の見直し方針について説明するために示した資料である(甲共141、甲共142の1ないし3)。 この点、当時の世耕官房副長官は、平成24年3月に自由民主党に設置された「生活保護に関するプロジェクトチーム」の座長であり、自由民主党は、平成24年12月16日に実施された衆議院総選挙で「生活保護給付水準の原則1割カット」をマニフェストに掲げ、同年12月26日に政権に復帰し第2次安倍内閣が組閣されたのであるから、「取扱厳 重注意」文書は、それ以降に、保護基準原則1割カットという自由民主党の政策の事実上の責任者の世耕官房副長官に対し、その政策を実現する方法について説明するために作成された文書と解される。 イまた、「取扱厳重注意」文書(甲共332)には、「今後のスケジュール案」として、「1月18日生活保護基準部会で報告書とりま とめ」と記載されているから(8枚目)、少なくとも、この文書が作成されたのは、平成25年1月18日よりも前の時点である。 ウ以上を前提にすると、「2分の1処理」の「検証結果の影響」が記載された「取扱厳重注意」文書(甲共33 8枚目)、少なくとも、この文書が作成されたのは、平成25年1月18日よりも前の時点である。 ウ以上を前提にすると、「2分の1処理」の「検証結果の影響」が記載された「取扱厳重注意」文書(甲共332)は、遅くとも平成24年12月16日ころから同25年1月18日の間に、厚生労働省内部で作成 されたものである。 しかも、平成25年1月16日に第12回の生活保護基準部会が開催されているから、厚生労働省は、「2分の1処理」を行うことの是非等について、基準部会に諮ることは十分に可能だったにもかかわらず、あえて基準部会の検討を経ずに「2分の1処理」を強行したことになる。 そして、「取扱厳重注意」文書の6枚目には「生活保護基準の見直しに よる財政効果」として、3年間の合計の財政効果が、「生活保護基準(本体)の見直し」で600億円、全体で847億円であることが記載されており、7枚目には、「施行が遅れると、その分、25年度の財政効果が縮減されることになる」と記載されている。 このように、生活保護基準部会に諮ることなく秘密裡に「デフレ調整」 と「2分の1処理」を行う一方、世耕官房副長官にはその内容を説明していることからずれば、自由民主党の選挙公約の実現による財政削減効果を導くためにこれらの処理が行われたことが強く推認されるのである。 (3) 財政削減効果に関する被控訴人らの説明が明らかに誤っていることア 「ゆがみ調整」前後の世帯類型ごとの生活扶助基準額 (ア) 厚生労働省の「取扱厳重注意」文書(甲共332)によると、基準部会報告書の反映比率による場合、「ゆがみ調整」が主な世帯類型に及ぼす生活扶助基準の増減効果は、「ゆがみ調整」をする前の生活扶助基準額を100%とした時の年齢階層・世帯人員・級地の平均値で、Ⓐ夫 準部会報告書の反映比率による場合、「ゆがみ調整」が主な世帯類型に及ぼす生活扶助基準の増減効果は、「ゆがみ調整」をする前の生活扶助基準額を100%とした時の年齢階層・世帯人員・級地の平均値で、Ⓐ夫婦子1人世帯が92%(8%減)、Ⓑ夫婦子2人世帯が86%(14% 減)、Ⓒ高齢単身世帯(60歳以上)が105%(5%増)、Ⓓ高齢夫婦世帯(60歳以上)が102%(2%増)、Ⓔ単身世帯(20~50代)が98%(2%減)、Ⓕ母子世帯(18歳未満の子1人)が95%(5%減)とされている(同5枚目の左側の表を参照)。 ただし、「取扱厳重注意」文書(甲共332)の5枚目の左側の表の 基準額は、「いずれも児童養育加算、母子加算」が含まれているから、 生活扶助基準の増減額に限れば、上記Ⓐについては、「ゆがみ調整」前後の金額から各金1万円(当時の児童養育加算1人分のおおよその平均値)、上記Ⓑについては、「ゆがみ調整」前後の金額から各金2万円(当時の児童養育加算2人分のおおよその平均値)、上記Ⓕについては、「ゆがみ調整」前後の金額から各金1万1000円(当時の母子加 算1人分のおおよその金額)をそれぞれ控除した金額がより正確である。 以上を前提にすると、「ゆがみ調整」が主な世帯類型に及ぼす生活扶助基準の増減効果は、上記3.(2)イ【表2】のとおりとなる。 (イ) 以上より、基準部会報告書の反映比率による場合、「ゆがみ調整」に より「生活扶助基準が上がる世帯」は、Ⓒ高齢単身世帯(60歳以上)及びⒹ高齢夫婦世帯(60歳以上)であり、「ゆがみ調整」により「生活扶助基準が下がる世帯」は、Ⓐ夫婦子1人世帯、Ⓑ夫婦子2人世帯、Ⓔ単身世帯(20~50代)及びⒻ母子世帯(18歳未満の子1人)となる。 イ生活扶助相当費の総額 「ゆがみ調整」により「生活扶助基準が下がる世帯」は、Ⓐ夫婦子1人世帯、Ⓑ夫婦子2人世帯、Ⓔ単身世帯(20~50代)及びⒻ母子世帯(18歳未満の子1人)となる。 イ生活扶助相当費の総額が改定前と同額になるという前提条件(ア) 被控訴人らは、「ゆがみ調整」につき、「仮に、検証対象である第1・十分位世帯の世帯構成及び地域分布(年齢、世帯人員及び級地)が被保護世帯と全く同じであれば、改定後の生活扶助基準額の平均は、引上げでも引下げでもなく改定前と同額となり、財政的にはニュートラル (プラスマイナスゼロ)となるはずである」と主張しているから、基準部会報告書の反映比率により「ゆがみ調整」を行った場合、全体として財政削減(増額)効果は生じないことになる。 したがって、上記3.(2)イ【表2】の数値により「ゆがみ調整」を行った場合、第1・十分位の世帯構成における生活扶助費の総額が改定 前と同額になるのである。 (イ) 具体的には、基準部会報告書の反映比率による「ゆがみ調整」は、主な世帯類型を掲げた表2の中で、「生活扶助基準が下がる世帯」[Ⓐ夫婦子1人世帯、Ⓑ夫婦子2人世帯、Ⓔ単身世帯(20~50代)及びⒻ母子世帯(18歳未満の子1人)]の生活扶助費の減額分の総額と「生活扶助基準が上がる世帯」[Ⓒ高齢単身世帯(60歳以上)及びⒹ高齢 夫婦世帯(60歳以上)]の生活扶助費の増額分の総額を同額にするという条件の下で行われたことになる。 ウ 90億円(まして180億円)もの財政削減効果が生じ得ないこと(ア) 被控訴人らは、90億円の「ゆがみ調整」の財政削減効果につき、「第1・十分位世帯と実際の被保護世帯との間における世帯構成及び地 域分布(年齢、世帯人員及び級地)の違いによって結果的に生じた」と説 訴人らは、90億円の「ゆがみ調整」の財政削減効果につき、「第1・十分位世帯と実際の被保護世帯との間における世帯構成及び地 域分布(年齢、世帯人員及び級地)の違いによって結果的に生じた」と説明しているところ、「取扱厳重注意」文書(甲共332)の5頁の左側の表の数値は、主な世帯類型につき、年齢階層・世帯人員・級地を平均して「ゆがみ調整」の前後の数値を示したものであり、上記3.(2)イ【表2】の数値はこれに忠実に算出されたものであるから、上記3. (2)イ【表2】の数値を生活保護世帯に当てはめれば、基準部会報告書の反映比率による「ゆがみ調整」の財政効果が算出されることになる。 (イ) そして、被控訴人らの主張する90億円の「ゆがみ調整」の財政削減効果は、生活保護世帯の構成につき、第1・十分位世帯の構成との比較において、分母となる全世帯に占める「生活扶助基準が上がる世帯類 型」[表2のⒸ高齢単身世帯(60歳以上)及びⒹ高齢夫婦世帯(60歳以上)]の割合がより少なく、かつ「生活扶助基準が下がる世帯」[表2のⒶ夫婦子1人世帯、Ⓑ夫婦子2人世帯、Ⓔ単身世帯(20~50代)及びⒻ母子世帯(18歳未満の子1人)]の割合がより多いということにならなければ、論理的に説明できないことになる。 (ウ) しかしながら、当時の生活保護世帯の構成は、第1・十分位世帯の構 成との比較において、分母となる全世帯に占める「生活扶助基準が上がる世帯類型」)[=上記3.(2)イ【表2】のⒸ高齢単身世帯(60歳以上)及びⒹ高齢夫婦世帯(60歳以上)]の割合がより多く、かつ「生活扶助基準が下がる世帯」[=上記3.(2)イ【表2】のⒶ夫婦子1人世帯、Ⓑ夫婦子2人世帯、Ⓔ単身世帯(20~50代)及びⒻ母子 世帯(18歳未満の子1人)]の 上)]の割合がより多く、かつ「生活扶助基準が下がる世帯」[=上記3.(2)イ【表2】のⒶ夫婦子1人世帯、Ⓑ夫婦子2人世帯、Ⓔ単身世帯(20~50代)及びⒻ母子 世帯(18歳未満の子1人)]の割合がより少なかったのであるから、基準部会報告書の反映比率による「ゆがみ調整」により、総額で生活扶助費の増額の財政効果が生じたのは明らかであり、被控訴人らの主張する90億円(又は180億円)の生活扶助費の財政削減効果が生ずることはあり得ないのである。 特に、平成25年の生活保護世帯の世帯構成に関するデータ(甲共346)によると、生活保護世帯全体に占める高齢単身世帯の割合は、実に53.4%に及んでいるのであり、第1・十分位世帯の構成を多人数世帯が75%程度・単身世帯が25%程度であると推認できることと比較すると(甲共347・2頁本文下から6行目~下から3行目)、第 1・十分位世帯から生活保護世帯に世帯構成を変更することにより、表2において「ゆがみ調整」により5%も生活扶助費が増額になる高齢単身世帯が大幅に増加し、必然的にその他の世帯構成の生活保護世帯が大幅に減少した結果、生活扶助費の総額が増額になり、90億円(又は180億円)の財政削減効果が生じる可能性がないことは、容易に理解で きる。 エ具体的な数値を用いたシミュレーション(ア) 控訴人らは、上記の主張の正当性及び被控訴人らの判断過程の説明の過誤をより明らかにするために、以下において、具体的な数値を用いたシミュレーション(以下「本件検証作業」という)を行うこととする。 この点、控訴人らは、証拠に基づき、以下のとおり、本件検証作業に おける、①第1・十分位世帯と生活保護世帯の各世帯類型、②第1・十分位世帯と生活保護世帯の各世帯類型の「ゆがみ調 この点、控訴人らは、証拠に基づき、以下のとおり、本件検証作業に おける、①第1・十分位世帯と生活保護世帯の各世帯類型、②第1・十分位世帯と生活保護世帯の各世帯類型の「ゆがみ調整」前後の生活扶助基準、③第1・十分位世帯の総世帯数と世帯類型別の世帯数、④生活保護世帯の総世帯数と世帯類型別の世帯数を設定した。 ㋐第1・十分位世帯と生活保護世帯の各世帯類型 「取扱厳重注意」文書(甲共332)の5枚目の左側の表及びこれに基づき合理的に作成された上記3.(2)イ【表2】の各世帯類型[Ⓐ夫婦子1人世帯、Ⓑ夫婦子2人世帯、Ⓒ高齢単身世帯(60歳以上)、Ⓓ高齢夫婦世帯(60歳以上)、Ⓔ単身世帯(20~50代)、Ⓕ母子世帯(18歳未満の子1人)]を用いた。 ㋑第1・十分位世帯と生活保護世帯の各世帯類型の「ゆがみ調整」前後の生活扶助基準「取扱厳重注意」文書(甲共332)の5枚目の左側の表に基づき合理的に作成された上記3.(2)イ【表2】の各世帯類型[Ⓐ夫婦子1人世帯、Ⓑ夫婦子2人世帯、Ⓒ高齢単身世帯(60歳以上)、Ⓓ高 齢夫婦世帯(60歳以上)、Ⓔ単身世帯(20~50代)、Ⓕ母子世帯(18歳未満の子1人)]を用いた。 ㋒第1・十分位世帯の総世帯数と世帯類型別の世帯数ⅰ)生活保護世帯は、我が国の総世帯数の2%程度を占める(乙共111の1・15頁下から2つめの〇の駒村部会長の発言)から、第 1・十分位世帯(生活保護世帯を含む)は、20%の生活保護世帯と80%のそれ以外の世帯により構成される。 生活保護世帯は、75%程度が単身世帯・25%程度が多人数世帯であるの対し、それ以外の世帯は、25%程度が単身世帯・75%程度が多人数世帯である(甲共347・2頁本文下から6行目 ~下から3行目(P 世帯は、75%程度が単身世帯・25%程度が多人数世帯であるの対し、それ以外の世帯は、25%程度が単身世帯・75%程度が多人数世帯である(甲共347・2頁本文下から6行目 ~下から3行目(P7保護課長の発言))。 その結果、第1・十分位世帯のうち、単身世帯の割合を35%(20%×75%+80%×25%)・多人数世帯の割合を65%(20%×25%+80%×75%)とした。 ⅱ)さらに、単身世帯全体と多人数世帯全体を各世帯類型[前者については、Ⓒ高齢単身世帯(60歳以上)・Ⓔ単身世帯(20~50 代)、後者については、Ⓐ夫婦子1人世帯・Ⓑ夫婦子2人世帯・Ⓓ高齢夫婦世帯(60歳以上)・Ⓕ母子世帯(18歳未満の子1人)]に分ける際の割合については、被控訴人らの判断過程である「基準部会報告書の反映比率により「ゆがみ調整」を行った場合、全体として財政削減(増額)効果は生じないという命題に基づき、 ゆがみ調整前後の生活扶助費の総額が同額になるように調整した。 ⅲ)加えて、第1・十分位世帯の総世帯数については、その20%を占める生活保護世帯の数を整数にするために、5の倍数とした。 ⅳ)以上を前提にして、本件検証作業において、第1・十分位世帯の総世帯数については、1695世帯とし、世帯類型別の世帯数につ いては、Ⓐ夫婦子1人世帯を130世帯・Ⓑ夫婦子2人世帯を52世帯・Ⓒ高齢単身世帯(60歳以上)を490世帯・Ⓓ高齢夫婦世帯(60歳以上)を872世帯・Ⓔ単身世帯(20~50代)を104世帯・Ⓕ母子世帯(18歳未満の子1人)を47世帯とした。 ㋓生活保護世帯の総世帯数と世帯類型別の世帯数 ⅰ)生活保護世帯の総世帯数については、第1・十分位世帯の総世帯数1695世帯の20%に相当する339世帯とした。 人)を47世帯とした。 ㋓生活保護世帯の総世帯数と世帯類型別の世帯数 ⅰ)生活保護世帯の総世帯数については、第1・十分位世帯の総世帯数1695世帯の20%に相当する339世帯とした。 ⅱ)平成25年の実際の生活保護世帯の世帯構成に関するデータ(甲共346)によると、実際の生活保護世帯全体156万3395世帯のうち、高齢単身世帯(60歳以上)は83万4363世帯(5 3.4%)・単身世帯(59歳以下)は36万2294世帯(2 3.2%)・2人世帯は24万4968世帯(15.7%)・3人世帯は7万4727世帯(4.8%)・4人世帯は2万9604世帯(1.9%)となる。 以上を前提として、本件検証作業における生活保護世帯の世帯類型別の世帯数については、Ⓐ夫婦子1人世帯を19世帯・Ⓑ夫婦子2人世帯 を7世帯・Ⓒ高齢単身世帯(60歳以上)を181世帯[339世帯×0534]・Ⓓ高齢夫婦世帯(60歳以上)を45世帯・Ⓔ単身世帯(20~50代)を79世帯・Ⓕ母子世帯(18歳未満の子1人)を8世帯とした。 (イ) 上記㋐ないし㋓のとおり設定された数値を用いて、本件検証作業を行 うと、以下の【表3】のとおり、基準部会報告書の反映比率による「ゆがみ調整」の前後において、第1・十分位世帯の生活扶助費の総額は、いずれも1億6960万2000円の同額となる。 【表3】第1・十分位世帯を対象とした「ゆがみ調整」の効果の試算(ウ) これに対し、上記㋐、㋑及び㋓のとおり設定された数値を用いて、 本件検証作業を行うと、以下の【表4】のとおり、生活保護世帯の生活世帯類型世帯数「ゆがみ調整」前の生活扶助費の合計額「ゆがみ調整」後の生活扶助費の合計額夫婦子1人 130 世帯 1911 万円(14 以下の【表4】のとおり、生活保護世帯の生活世帯類型世帯数「ゆがみ調整」前の生活扶助費の合計額「ゆがみ調整」後の生活扶助費の合計額 夫婦子1人 130世帯 1911万円(14万7000円×130世帯) 1729万円(13万3000円×130世帯) 夫婦子2人 52世帯 863万2000円(16万6000円×52世帯) 722万8000円(13万9000円×52世帯) 高齢単身(60歳以上) 490世帯 3577万円(7万3000円×490世帯) 3773万円(7万7000円×490世帯) 高齢夫婦(60歳以上) 872世帯 9243万2000円(10万6000円×872世帯) 9417万6000円(10万8000円×872世帯) 単身(20~50代) 104世帯 811万2000円(7万8000円×104世帯) 800万8000円(7万7000円×104世帯) 母子世帯(18歳未満の子1人) 47世帯 554万6000円(11万8000円×47世帯) 517万円(11万円×47世帯) 全体 1695世帯 1億6960万2000円 1億6960万2000円 扶助費の総額は、「ゆがみ調整」をする以前が2904万4000円になるのに対し、「ゆがみ調整」をした後が2926万円となり、基準部会報告書の反映比率による「ゆがみ調整」により、生活保護世帯の生活保護費の総額は、21万6000円の増額になる。 【表4】生活保護世帯を対象とした「ゆがみ調整」の効果の試算 世帯類型世帯数「ゆがみ調整」前の生活扶助費の により、生活保護世帯の生活保護費の総額は、21万6000円の増額になる。 【表4】生活保護世帯を対象とした「ゆがみ調整」の効果の試算 世帯類型 世帯数 「ゆがみ調整」前の生活扶助費の合計額 「ゆがみ調整」後の生活扶助費の合計額 夫婦子1人 19世帯 279万3000円(14万7000円×19世帯) 252万7000円(13万3000円×19世帯) 夫婦子2人 7世帯 116万2000円(16万6000円×7世帯) 97万3000円(13万9000円×7世帯) 高齢単身(60歳以上) 181世帯 1321万3000円(7万3000円×181世帯) 1393万7000円(7万7000円×181世帯) 高齢夫婦(60歳以上) 45世帯 477万円(10万6000円×45世帯) 486万円(10万8000円×45世帯) 単身(20~50代) 79世帯 616万2000円(7万8000円×79世帯) 608万3000円(7万7000円×79世帯) 母子世帯(18歳未満の子1人) 8世帯 94万4000円(11万8000円×8世帯) 88万円(11万円×8世帯) 全体 339世帯 2904万4000円 2926万円 以上より、具体的な数値を用いた本件検証作業によっても、基準部会報告書の反映比率による「ゆがみ調整」により、生活扶助費全体の削減効果は一切生じないことが理解できる。 よって、基準部会報告書の反映比率による「ゆがみ調整」により90億円(又は180億円)の財政削減効果が生じたとする被控訴人らの説明(判断) 効果は一切生じないことが理解できる。 オ小括よって、基準部会報告書の反映比率による「ゆがみ調整」により90億 円(又は180億円)の財政削減効果が生じたとする被控訴人らの説明(判断過程)に過誤があることは明らかである。 (4) 高齢単身世帯の生活扶助基準を大幅に削減するものであったことア 「取扱厳重注意」文書(甲共332)の5枚目の左側の表によると、「高齢単身世帯(60歳以上)」の生活扶助基準は、基準部会報告書の 反映比率による「ゆがみ調整」により、「5%」も大幅に上がることに なっていた。 しかも、平成25年の厚生労働省のデータ(甲共346)によると、「高齢単身世帯(60歳以上)」の世帯数は、83万4363世帯であり、生活保護世帯全体(156万3395世帯)に占める割合は実に53.4%に及んでいたのである。 イ以上のとおり、「2分の1処理」は、合理的な理由なくして、主に生活保護世帯の53.4%を占める高齢単身世帯の生活扶助基準を大幅に削減することにより、特にこれらの世帯の「最低限度の生活の需要」を一方的に切り下げた暴挙と評価されるべきである。 (5) 年間90億円以上の財政削減効果を取得したこと ア既述のとおり、「2分の1処理」は、「子どものいる世帯への影響に配慮する観点からの激変緩和措置」と評価することはできない以上、被控訴人らが基準部会報告書の内容に反してまで「2分の1処理」を採用した真の目的は、生活扶助費の追加的な削減効果を得ることにあったと評価される。 イこの点、被控訴人らは、「ゆがみ調整」において、結果として90億円の生活扶助費の削減効果が生じたことを自認しているが、この削減効果は、控訴人らの検証結果(「2分の1処理」の前後で年間91億2100万円の 、被控訴人らは、「ゆがみ調整」において、結果として90億円の生活扶助費の削減効果が生じたことを自認しているが、この削減効果は、控訴人らの検証結果(「2分の1処理」の前後で年間91億2100万円の財政削減効果が生じたという検証結果)からも明らかなとおり、「ゆがみ調整」における第1・十分世帯と生活保護世帯の世帯構成 の違いにより生じたものではなく、「2分の1処理」により生じたものである。要するに、「ゆがみ調整」については、恣意的に「2分の1処理」を採用することにより、年間91億2100万円もの生活扶助費の追加的な削減効果を生ぜしめたのである。 ウなお、「2分の1処理」が年間91億2100万円もの大幅な追加的 財政削減効果を生ぜしめた原因は、「2分の1処理」により、主に生活 保護世帯の53.4%を占める高齢単身世帯の生活扶助基準の従前の「ゆがみ調整」の増額幅である5%が半分にされた一方で、生活保護世帯の23.5%を占める多人数世帯の多くが減額幅の上限を10%とした激変緩和措置の影響で、従前の「ゆがみ調整」の減額幅が半分にならないという点にある。 この点、上記の点を図で示すと、以下の【図1】及び【図2】のとおりとなる。 【図1】高齢単身世帯に対する「2分の1処理」の効果 【図2】多人数世帯に対する「2分の1処理」の効果 エなお、既に指摘したとおり、本件と同種の訴訟である名古屋地裁係属事件の第21回口頭弁論期日において、同事件の原告らと被告らの双方で、「減額幅10%を限度とする激変緩和もあり、歪み調整の幅を2分の1に抑えた場合、それを行わない場合よりも、全体での支出額が減額 になるということに争いはない」と合意しているのは、被控訴人らが、上記の「2分の1処理」の財 激変緩和もあり、歪み調整の幅を2分の1に抑えた場合、それを行わない場合よりも、全体での支出額が減額 になるということに争いはない」と合意しているのは、被控訴人らが、上記の「2分の1処理」の財政削減効果を認めているということである。 (6) 小括以上より、被控訴人らが主張する90億円の財政削減効果は、「ゆがみ調整」自体により発生したものではなく、「2分の1処理」により意図的 に作出されたものであるから、「2分の1処理」の真の目的が生活扶助費の追加的削減にあったことは明らかである。 5 「2分の1処理」は、基準部会が行った「ゆがみ調整」の趣旨を没却するとともに増額となる世帯に不利益を与えるものであること(1) 「2分の1処理」に適用すべき判断枠組み 上記3(1)(2)のとおり、「2分の1処理」は「激変緩和措置」ではないから、「改定の適法性の場面における司法審査のあり方」が適用されるべきである。すなわち、政策的配慮に基づく考察ではなく、専門技術的な考察に基づく裁量のみが認められ、「2分の1処理」を行う前の生活扶助基準(ゆがみ調整の結果を全部反映した場合の基準)が「最低限度の生活の 需要を満たすに十分なもの」と評価できる程度を超えるものとなっているか(基準引下げの必要性)、「2分の1処理」を行った後の生活扶助基準(ゆがみ調整の結果の反映程度を2分の1とした場合の基準)が「最低限度の生活の需要を満たすに十分なもの」であるか、の二点に関し、これらを肯定した厚生労働大臣の判断過程について、専門技術的知見との整合性 及び統計等の客観的数値との合理的関連性の有無の観点から、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用が認められるか否かについて審査が行われるべきである。 この点、「ゆがみ調整」は、要保護者の需要を 合性 及び統計等の客観的数値との合理的関連性の有無の観点から、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用が認められるか否かについて審査が行われるべきである。 この点、「ゆがみ調整」は、要保護者の需要を測定して生活保護の給付水準(絶対水準)の調整を行うものではないが、絶対水準の検証を体系の 「ゆがみ」の調整の中に一体化させて行ったものである。すなわち、「ゆがみ調整」の結果として、基準額表の個々の金額に変動が生じ、個々の要保護者の生活扶助基準の絶対水準に影響を与えることが予定されていた以上、「ゆがみ調整」は、変動後の生活扶助基準の水準をもって「最低限度の生活の需要を満たすに十分なもの」であるとする判断を含んでいたもの であり、「2分の1処理」による改定の結果は、生活保護法8条2項が要求する「最低限度の生活の需要を満たすに十分なもの」でなければならない。また、厚生労働大臣が裁量権を行使するに当たっては、「専門技術的な考察」に基づかなければならないから、「2分の1処理」をした理由につき、「客観的な数値との合理的関連性」等の審査がなされなければなら ない。 もし、厚生労働大臣の判断が「専門技術的な考察」にすら基づいていないとすれば、「判断の過程及び手続における過誤、欠落」がある場合として違法となる。 (2) 「2分の1処理」には理由がないこと 既に述べたとおり、「2分の1処理」は、厚生労働大臣が「ゆがみ調整」 をするに当たり、基準部会が約1年9か月もの間12回にわたって検証を重ねて到達した平成25年報告書の結果をそのまま反映せずに、基準部会に諮ることなく、その反映比率を2分の1とすることで、生活扶助基準の水準と一般低所得世帯の消費実態との乖離を解消させる効果を2分の1にとどまらせたというものである。 そのまま反映せずに、基準部会に諮ることなく、その反映比率を2分の1とすることで、生活扶助基準の水準と一般低所得世帯の消費実態との乖離を解消させる効果を2分の1にとどまらせたというものである。 ところが、被控訴人らは、「2分の1処理」をした理由として、⒜子どものいる世帯に配慮して貧困の世代間連鎖を防ぐ観点からの「激変緩和措置」であること、⒝平成25年検証には一定の統計上の限界が認められたこと、⒞次の基準部会の定期的な検証において更なる評価、検証が予定されていたことを挙げるが、「2分の1処理」による改定の結果が、生活保 護法8条2項が要求する「最低限度の生活の需要を満たすに十分なもの」であることについては何ら立証していない。 つまり、「2分の1処理」は、平成25年報告書のもととなった「統計等の客観的な数値等との合理的関連性」がなく、「専門的知見である平成25年報告書との整合性」も欠くのである。 むしろ、「2分の1処理」は、ゆがみ調整による生活扶助基準の改定の内容に重大な影響を及ぼし、その本質的部分を改変する措置であり、特に、被保護世帯の過半数を占める60歳以上の高齢夫婦世帯及び高齢単身世帯の増額幅を半減させる不利益を与えることによる影響等について、追加的・専門的な分析や検証が何ら行われていないことは、「ゆがみ調整」の 目的を歪めるものになっていた可能性がある。 すなわち、基準部会が行った「ゆがみ調整」の結果、生活扶助基準額が増額されるべき世帯について「2分の1処理」がされた場合には、当該世帯は、同じ世帯構成の一般低所得層の世帯との均衡を回復しないこととなり2、ゆがみが残り、不公平な結果となると考えられる。このことは、生活 2 「ゆがみ調整」は、各生 低所得層の世帯との均衡を回復しないこととなり2、ゆがみが残り、不公平な結果となると考えられる。このことは、生活 2 「ゆがみ調整」は、各生活保護世帯の生活扶助の水準について、「同じ世帯構成 保護利用世帯間の公平を図るために生活扶助基準の展開部分を適正化するという「ゆがみ調整」の趣旨と相容れない。岩田正美部会長代理の証言(甲共139・岩田証人調書23頁)や平成29年検証における同年12月8日の第35回基準部会議事録(甲共348)によれば、平成29年検証で検討された生活扶助基準は、平成25年検証の対象となった生活扶助 基準と同じようなゆがみがあり、岩田部会長代理の指摘に対し、P8課長補佐が「半分反映した残りの差というものの影響が大きい」と回答していることは、上記検討結果に沿う。 また、被控訴人らが、平成25年検証で行なわれた回帰分析の決定係数に照らしても回帰分析は信用できる旨主張していることに照らすと、「2 分の1処理」が必要であると考えられた裁量判断の具体的根拠は明かでなく、2分の1に限って平成25年検証の結果を反映すべき具体的な根拠も明らかでない。 以上のとおり、「2分の1処理」は、「ゆがみ調整」の目的を歪めるものであり、かつ、同処理による改定の結果が、生活保護法8条2項が要求 する「最低限度の生活の需要を満たすに十分なもの」とは認められない点において、厚生労働大臣の判断に生活保護法8条2項に違反する違法がある。 (3) 基準部会に対する諮問がなかったことこのように「2分の1処理」には、「統計等の客観的数値」にも「専門 的知見」にも基づくものではない。これまで、生活扶助基準の改定について、各種の統計や専門家の作成した報告書等に基づいて ことこのように「2分の1処理」には、「統計等の客観的数値」にも「専門 的知見」にも基づくものではない。これまで、生活扶助基準の改定について、各種の統計や専門家の作成した報告書等に基づいて生活扶助基準と一 の一般低所得層の世帯との均衡を」図る目的で行われたものではなく、一般低所得世帯の消費実態(各類型の消費支出の比率)を用いて、生活保護世帯の各世帯類型間の「均衡」(あるべき比率の実現)を図る目的でなされたものであるから、正確に表現すれば、一般低所得世帯の消費実態(各類型の消費支出の比率)に照らした生活保護世帯間の「ゆがみ」が残り、生活保護世帯間で「不公平」であるということになる。 般国民の消費実態との比較検討がされてきたという経緯があった。このような事態が生じたのは、こうした経緯を無視して、「2分の1処理」を基準部会に諮らないまま行ったことことにあるから、この点をとらえて、判断の過程及び手続における過誤、欠落があったともいえる。 仮に、直ちにそう言えないとしても、基準部会等の専門機関に対する諮 問をしたにもかかわらず、諮問結果と異なる判断をする場合には、諮問結果が諮問の目的との関係で唯一の手法でないとしても、諮問結果と異なる判断をしたことについて十分な根拠が求められるというべきであるが、そのような理由は存在しない。 (4) 小括 以上のとおり、「2分の1処理」は、「激変緩和措置」とはいえないから、改定の適法要件を満たさなければならない。すなわち、「2分の1処理」は、平成25年検証の結果につき、基準部会等による追加的・専門的な検討を経ることなく行われたものであるから、「平成25年検証との整合性」や「その基礎資料との合理的関連性」が問われなければなら 処理」は、平成25年検証の結果につき、基準部会等による追加的・専門的な検討を経ることなく行われたものであるから、「平成25年検証との整合性」や「その基礎資料との合理的関連性」が問われなければならない。 ところが、被控訴人らは、「統計等の客観的な数値との合理的関連性」や「平成25年検証との整合性」を主張することなく、⒜激変緩和措置であるとか、⒝統計上の限界があるとか、⒞更なる評価・検証が予定されているといった、生活保護法8条2項が求める「需要」とは関係のない理由を述べるにとどまる。しかも、これらの理由は、いずれも「2分の1処理」 を正当化するものですらない。 結局のところ、厚生労働大臣による「2分の1処理」は、何らの合理的な根拠なく、生活保護世帯類型間の不公平を是正するという「ゆがみ調整」の趣旨を半減させるとともに、被保護世帯の過半数を占める高齢夫婦及び高齢単身等の世帯が相当の増額となるという「ゆがみ調整」の重要な結果 について、その増額幅を半減させる不利益を与える点において、最低限度 の生活の需要に合致するとはいえない。被控訴人らの説明する判断過程は、いずれも「一応の説得力」すらないことから、「判断の過程における過誤、欠落」がある。したがって、「2分の1処理」をすることとした厚生労働大臣の判断には、裁量権の範囲の逸脱又は濫用がある。 以上 (別紙2)被控訴人らの当審における補足主張 第1 本件保護基準改定の適法性に関する判断枠組み 1 厚生労働大臣には保護基準の改定について専門技術的かつ政策的な見地か らの裁量権が認められること憲法25条、法3条及び法8条2項の規定にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々に について専門技術的かつ政策的な見地か らの裁量権が認められること憲法25条、法3条及び法8条2項の規定にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当 たっては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。したがって、保護基準の改定については厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められる(以上につき、朝日訴訟最高裁判決、堀木訴訟最高裁判決、老齢加算 東京訴訟最高裁判決、老齢加算福岡訴訟最高裁判決)。 2 本件保護基準改定の適法性の判断枠組み(判断過程審査)(1) 老齢加算最高裁判決を踏まえた保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断の適法性の判断枠組みそして、前記1のような専門技術的知見に基づいた政策的判断として行 われる保護基準の改定については、①当該改定後の保護基準の内容が被保護者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであり、かつ、これを超えないものであるとした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、 ②激変緩和等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合にお いて現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に、法3条、8条2項に違反し、違法 お いて現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に、法3条、8条2項に違反し、違法となる(以上につき、老齢加算東京訴訟最高裁判決、老齢加算福岡訴訟最高裁判決参照)。 (2) 改定後の保護基準の内容に関する判断に係る判断枠組み(前記(1)の①) についてア判断過程審査においては、「被告」が説明する論証過程を追試的に検証し、それが一応納得できるものか否かという観点から、その適否が判断されること保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断については、その当不当が 直ちに裁判所の司法審査の対象となるわけではなく、当該判断が著しく合理性を欠き明らかに裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したと認められるような場合でなければ、その判断は違法とはなり得ない(朝日訴訟最高裁判決、堀木訴訟最高裁判決参照)。老齢加算最高裁判決は、厚生労働大臣が、専門機関である専門委員会における検討結果を踏まえて行った 老齢加算の廃止につき、前記1で述べた厚生労働大臣の裁量権を前提としつつ、老齢加算の廃止を内容とする保護基準の改定の適法性について、「最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続」における過誤、欠落の有無等の観点から審査すると判示して、いわゆる判断過程審査の手法を採用したものである。これは、行政庁の判断に専属させるべき実 体的な事柄の判断、すなわち、裁量権行使の内容面に立ち入らずとも、いわばその外側から適否を判断できる「手続」や「過程」については裁判所の審査・判断に服させて差し支えないとしたものと解される(岡田幸人・最高裁判所判例解説民事篇平成24年度(下)293及び294頁参照。以下、同解説を「岡田最高裁調査官解説」という 」については裁判所の審査・判断に服させて差し支えないとしたものと解される(岡田幸人・最高裁判所判例解説民事篇平成24年度(下)293及び294頁参照。以下、同解説を「岡田最高裁調査官解説」という。)。 そして、一般に、行政裁量が認められる行政処分の適否が問題となる場 合における判断過程審査とは、裁判所が、「原告」が納得できないと主張する点について、行政機関(「被告」)の説明する判断過程が一応の説得力を持つか否かを審査する形で、いわば行政機関の説明する判断過程をできるだけ生かす審査方法であると解されており(山本隆司「行政裁量の判断過程審査の理論と実務」司法研修所論集2019(第129 号)1頁(上記引用箇所は6頁))、同審査では、「被告」が説明する論証過程を追試的に検証し、それが一応納得できるものか否か、すなわち、「被告」が挙げる理由に論理の飛躍や連関を欠くところがあるか否かという観点から、その適否が判断されることになる(岡田最高裁調査官解説297頁参照)。 イ保護基準の改定に当たり基準部会等の専門機関による審議検討を経ていないことが直ちに保護基準の改定に係る厚生労働大臣の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があることを意味するものではないこと以上を踏まえて、専門機関の関与の有無という観点から保護基準の改定の適法性が問題となる余地があるかについて見ると、厚生労働大臣が 保護基準の改定に当たり基準部会等の専門機関に諮問し又はその意見を求めることなどを定める法令上の規定はなく、法やその関連法規には、保護基準の改定に当たり専門機関による分析及び検証が必要である旨の規定は見当たらない。また、基準部会は、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会に置かれる常設の部会であるが(厚生労働省設置法7 準の改定に当たり専門機関による分析及び検証が必要である旨の規定は見当たらない。また、基準部会は、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会に置かれる常設の部会であるが(厚生労働省設置法7 条、社会保障審議会令6条1項)、その設置の趣旨及び審議事項は、「生活保護基準の定期的な評価・検証」を行うことである(乙共22)。 すなわち、基準部会の設置の趣旨及び審議事項は、飽くまで、現在の保護基準の定期的な評価及び検証に限られるのであって、保護基準の評価及び検証を踏まえた保護基準の改定の在り方等については、基準部会の 設置の趣旨及び審議事項とされていない。ましてや、厚生労働大臣が行 おうとする保護基準の改定の当否等についての分析や検証は、基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではない。そして、この点については、老齢加算福岡訴訟最高裁判決も、専門委員会の意見の位置づけについて、「そもそも専門委員会の意見は、厚生労働大臣の判断を法的に拘束するものではなく、(中略)その意見は保護基準の改定に当たっての考慮要 素として位置づけられるべきものである」ことを明確に判示している。 そうすると、厚生労働大臣は、ⅰ)保護基準の改定に当たっての基準部会等の専門機関の関与の在り方、例えば、専門機関に対し保護基準の評価及び検証や保護基準の改定の在り方に関する検討を依頼するか否かや、ⅱ)これを依頼した場合における上記検証や検討に係る結果ないし 意見をどのように考慮するかについての専門技術的かつ政策的裁量を有しているというべきである。 したがって、厚生労働大臣が保護基準の改定に当たり基準部会等の専門機関による審議検討を経ていないことが直ちに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があることを意味するものではない。そして、前記アのよう な判断過程 生労働大臣が保護基準の改定に当たり基準部会等の専門機関による審議検討を経ていないことが直ちに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があることを意味するものではない。そして、前記アのよう な判断過程審査の在り方からすると、厚生労働大臣が、保護基準の改定に当たり、専門機関による審議検討を経ることなく判断した場合には、その判断の前提となる課題に関する事実認識やそれに対する評価、対策の課題解決手段としての適合性に一定の合理性が認められれば、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないというべきである。また、 厚生労働大臣が、保護基準の改定に当たり、専門機関による審議検討を経た上で判断した場合であっても、厚生労働大臣の判断が、上記審議検討に係る結果ないし意見等と積極的に抵触するものであることが明らかであり、かつ、厚生労働大臣の判断過程について一応の合理的理由すら認められないような場合でない限り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用 があるとはいえないというべきである。 ウ 「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等」の審査は、飽くまで厚生労働大臣の判断の過程において現に用いられた統計等の客観的な数値等や専門的知見を前提に、これらと同大臣の判断との間に「合理的関連性」や「整合性」が欠けるところがないかを審査するものであること また、老齢加算福岡訴訟最高裁判決が、「主として老齢加算の廃止に至る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否か等の観点から、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等について審査されるべきものと解される」と判示して、「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等」を審査 対象として位置づけているのも、老齢加算 見との整合性の有無等について審査されるべきものと解される」と判示して、「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等」を審査 対象として位置づけているのも、老齢加算の見直しが必要であるとする方針が閣議決定された上で、高齢者の特別需要が現時点においてもなお存在するかという点について専門機関である専門委員会の検討結果を踏まえて老齢加算が廃止されたという事案において、厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められるかを判断するに 当たり、判断過程審査(論証過程の追試的検証)の手法によることを明らかにしたものである。この点については、「判断の過程及び手続の過誤、欠落があるか否か等の観点から、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見の整合性の有無等について(中略)審理の上で決すべきものであるとしたのも、最高裁が自ら特定の衡量利益ないし考慮 事項を選び出してこれを一般的に強調するのではなく、Xらの主張を踏まえながら、専門委員会における議論のみならずこれまでの保護基準改定の経緯をも参考に、老齢加算廃止に至る厚生労働大臣の論証過程を追試的に検証しようとしたものであるとみることができるように思われる」(岡田最高裁調査官解説472頁)とされ、裁判所が独自の観点から特 定の衡量利益や考慮事項を選び出してこれをよりどころとすることが判 断過程審査に適合しないこと、「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等」が判断過程審査の手法の一環であることが指摘されているところである。 そして、このような考え方は、老齢加算東京訴訟最高裁判決が「単身無職の一般低所得高齢者世帯の消費支出額について70歳以上の者と6 0ないし69歳の者との間で比較す 指摘されているところである。 そして、このような考え方は、老齢加算東京訴訟最高裁判決が「単身無職の一般低所得高齢者世帯の消費支出額について70歳以上の者と6 0ないし69歳の者との間で比較すると前者の消費支出額の方が少なく、70歳以上の高齢者について現行の老齢加算に相当するだけの特別な需要があるとは認められない」とした専門委員会の中間取りまとめ意見が「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところはない」とし(ここでの「統計等の客観的な数値等」や 「専門的知見」としては、専門委員会において提出され、老齢加算廃止に係る厚生労働大臣の判断においても考慮された厚生労働省作成に係る各統計資料等が掲げられている。)、飽くまで老齢加算廃止に係る厚生労働大臣の判断の過程において考慮された上記各統計資料を前提に合理的関連性や整合性に欠けるところがないかを検討していたことにも沿う ものである。 したがって、老齢加算最高裁判決が「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等」を審査対象とするのは、飽くまで厚生労働大臣の判断の過程において現に用いられた統計等の客観的な数値等や専門的知見を前提に、これらと同大臣の判断過程との間 に論理の飛躍や連関を欠くところがないかという観点から、当該判断と「統計等の客観的な数値等との合理的関連性」や「専門的知見との整合性」に欠けるところがないかを問うことを意味するにとどまる。 エ保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断に違法の問題が生じるのは、当該判断の過程及び手続に過誤、欠落があり、そのために「現実の生活 条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣 旨・目的に反し」たと評価できるときであること更に 断の過程及び手続に過誤、欠落があり、そのために「現実の生活 条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣 旨・目的に反し」たと評価できるときであること更にいえば、判断過程審査によって行政機関の判断過程の一部に瑕疵があると判明しても、その瑕疵が判断の結論に影響する可能性がおよそない場合には、行政機関の判断を違法としない、判断過程の瑕疵により結論がおよそ左右されないにもかかわらず処分を違法として取り消すこ とは難しいとされている(山本・前掲7及び8頁)。そのため、論証過程の統制による審査においては、保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に上記のような過誤、欠落があり、そのために判断が左右されたといえるかどうかが審査されるところ(岡田最高裁調査官解説297頁)、保護基準の改定に係る同大臣の判断に違法の問題が生 じるのは、朝日訴訟最高裁判決がいうように「現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し」たと評価できるときであるから(同288及び302頁参照)、判断の過程及び手続における過誤、欠落が結果としてこのような評価をもたらすものであるかどうかについても検討されなければならない(換言 すれば、保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に、上記判断が「現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し」たと評価できるほど明らかに合理性を欠くと認められることになるような過誤、欠落がある場合でなければ、違法とはならないというべきである。)。 (3) 激変緩和措置に係る判断枠組み(前記(1)の②)についてアまた、保護基準の改定の際の激変緩和措置の採否等に係る厚生労働大臣の なければ、違法とはならないというべきである。)。 (3) 激変緩和措置に係る判断枠組み(前記(1)の②)についてアまた、保護基準の改定の際の激変緩和措置の採否等に係る厚生労働大臣の判断についても、専門技術的かつ政策的な見地から広範な裁量権が認められている(老齢加算東京訴訟最高裁判決、老齢加算福岡訴訟最高裁判決参照)。 イここに、生活扶助のうち、法12条1号にいう「衣食その他日常生活 の需要を満たすために必要なもの」としては、全ての生活保護受給世帯に対してその世帯類型に応じて支給される基準生活費のほか、特定の類型に該当する世帯に対し上記基準生活費に加えて支給される各種の加算等がある。老齢加算最高裁判決は、上記加算のうち、昭和35年度以降40年以上にわたり、一定の年齢のみを要件として形式的に支給されて きた老齢加算の支給を廃止したという事案であり、同判決は、このような老齢加算の性質に鑑みると、被保護者が給付内容の維持に関して強い信頼を置いていたであろうことは明らかと考えられることを前提として、「被保護者の期待的利益」という観点から厚生労働大臣の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められるかを審査するとしたものである。 これに対し、本件保護基準改定は、生活扶助のうち全ての生活保護受給世帯に支給される上記基準生活費について、その多寡を変更したものにすぎないところ、基準生活費は、社会経済情勢等の変化に伴って定期的に変更されることが法の規定上当然に予定されている(法8条2項は、「最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これを こえないものでなければならない」と規定している。)。このように、本件保護基準改定は、基準生活費についてその多寡を変更するという改定を行ったもの 要を満たすに十分なものであつて、且つ、これを こえないものでなければならない」と規定している。)。このように、本件保護基準改定は、基準生活費についてその多寡を変更するという改定を行ったものであり、このような改定は法の規定上当然に予定されているのであるから、老齢加算最高裁判決が判示した老齢加算についての「保護基準によって具体化されていたその期待的利益」と同様の期待あ るいは信頼を観念することはできないのであって、この点において老齢加算最高裁判決とは事案を異にすることに留意する必要がある。 すなわち、老齢加算は、一定の年齢に達すれば必ず支給される性質のものであり、被保護者が生活設計をする上での判断材料として強い信頼を置いていたであろうことは明らかと考えられるものであるが、それ以 外の加算に対する被保護者の信頼は、これと同列には論じられないもの とされているし(岡田最高裁調査官解説292及び308頁(注9))、法による保護に要する費用は、被保護者となった者が納付した保険料等によって賄われるものではなく、国民一般が納付する租税によって賄われるものであるから、法による保護として現に行われている給付が将来も存続することに対する信頼を保護すべき要請は、基本的には高いもの とはいえず(内野俊夫「生活保護申請却下処分、保護廃止処分をめぐる紛争」・定塚誠編著「裁判実務シリーズ7行政関係訴訟の実務」66頁)、基準生活費の多寡を変更するという改定においてはそのような要請は考えにくい。 そうすると、本件保護基準改定に当たり激変緩和措置を講じるか否か、 どのような内容の措置を講じるかの判断については、このような期待ないし信頼の程度も勘案して、その判断の過程及び手続に著しい過誤、欠落があるか、当該判断が明らかに合理性 和措置を講じるか否か、 どのような内容の措置を講じるかの判断については、このような期待ないし信頼の程度も勘案して、その判断の過程及び手続に著しい過誤、欠落があるか、当該判断が明らかに合理性を欠くか否かを検討すべきである。 第2 本件保護基準改定以前の生活扶助基準の改定の経緯等 1 生活扶助基準の設定方法(全体として、乙共216頁)生活扶助基準は、日常生活に必要な基本的かつ経常的な費用についての最低生活費を定めたものであるが、最低生活費は、具体的な世帯の構成(年齢、世帯人員、地域)によって異なり、このような世帯の構成は、年齢、世帯人員、地域の組合せによって無数といえるほどに多様である。そこで、生活扶助基準 については、標準世帯(現在は、夫33歳、妻29歳及び子4歳の3人世帯)の最低生活に要する費用を具体的な額として設定した上、これを年齢階級別、世帯人員別、級地別に「展開」することによって設定する方法を採用している。 すなわち、生活扶助基準は、標準世帯の最低生活費を具体的な額として設定して(本件保護基準改定前は16万2170円であった(乙共21)。)、 標準世帯の最低生活費として設定された生活扶助基準額を、一般世帯を参考に、 第1類費(食費、被服費等の個人的経費)と第2類費(光熱水費、什器等の世帯経費)に分解した上(本件保護基準改定前は、第1類費10万6890円、第2類費5万5280円と分解していた。)、年齢階級、世帯人員、級地別に、標準世帯と比較して最低生活に要する費用の多寡がどの程度になるかとの観点から、標準世帯を基軸として、第1類費については栄養所要量*3を参考とした 年齢別の指数、第2類費については消費支出を参考とした世帯人員別の指数(これらの指数を「展開のための指数」という。本件 から、標準世帯を基軸として、第1類費については栄養所要量*3を参考とした 年齢別の指数、第2類費については消費支出を参考とした世帯人員別の指数(これらの指数を「展開のための指数」という。本件保護基準改定前の各指数は乙共21のとおりである。)をそれぞれ設定し、それらの指数を標準世帯の第1類費、第2類費にそれぞれ適用することによって、年齢階級別、世帯人員別の生活扶助基準額を設定する。そして、級地についても、「1級地の1」に おいて、上記のとおり年齢階級別、世帯人員別の最低生活費を定めた上で、級地別の指数をその他の級地に適用する方法で級地別の生活扶助基準額を設定する(このような標準世帯の最低生活費たる生活扶助基準額を分解する過程を「展開」という。)。 *3 国民の健康の保持等のためにエネルギー及び各栄養素の摂取量を示すもの。 以上のとおり、生活扶助基準は、標準世帯の最低生活費を設定し、その最低生活費を第1類費と第2類費に分解した上、年齢階級別、世帯人員別、級地別に、標準世帯との最低生活費の差を踏まえて設定された指数(展開のための指数)を適用して「展開」することによって、あらゆる世帯に適用可能な基準として設定される。このような手法は、昭和23年にマーケットバスケット方 式が採用されてから現在まで一貫して採用されている。 2 生活扶助基準の改定における基本的な考え方生活扶助基準は、憲法25条や法3条、8条2項の規定にいう最低限度の生活を具体化したものであるところ、ここにいう最低限度の生活が抽象的かつ相対的な概念であることから、生活扶助基準は一般的な国民生活の状況等との相 関関係において判断決定されることとなる。そして、現在の生活扶助基準は あるところ、ここにいう最低限度の生活が抽象的かつ相対的な概念であることから、生活扶助基準は一般的な国民生活の状況等との相 関関係において判断決定されることとなる。そして、現在の生活扶助基準は、一般国民の生活水準との均衡を図るため、一般国民の消費の動向を踏まえた水準均衡方式に基づく毎年度の改定において、厚生労働大臣の専門技術的かつ政策的判断により、その時々の社会経済情勢を基準に取り込みつつ(後記3)、約5年に一度の頻度で、専門家により構成される専門機関において、保護基準 に関する客観的かつ専門的な評価及び検証を行われており、このような評価及び検証結果を踏まえた改定が行われている(後記4)。 このように、生活扶助基準が一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されることについては、以下に述べるとおり、累次の最高裁判決(朝日訴訟最高裁判決、堀木訴訟最高裁判決、老齢加算東京訴訟最高裁判 決、老齢加算福岡訴訟最高裁判決)においてもその旨が判示されている。 (1) 朝日訴訟最高裁判決朝日訴訟最高裁判決は、「なお、念のために、本件生活扶助基準の適否に関する当裁判所の意見を付加する。」とした上で、「原判決が本件生活保護基準の適否を判断するにあたって考慮したいわゆる生活外的要素とい うのは、当時の国民所得ないしその反映である国の財政状態、国民の一般 的生活水準、都市と農村における生活の格差、低所得者の生活程度とこの層に属する者の全人口において占める割合、生活保護を受けている者の生活が保護を受けていない多数貧困者の生活より優遇されているのは不当であるとの一部の国民感情および予算配分の事情である。以上のような諸要素を考慮することは、保護基準の設定について厚生大臣の裁量のうちに属 することであつて、そ 者の生活より優遇されているのは不当であるとの一部の国民感情および予算配分の事情である。以上のような諸要素を考慮することは、保護基準の設定について厚生大臣の裁量のうちに属 することであつて、その判断については、法の趣旨・目的を逸脱しないかぎり、当不当の問題を生ずるにすぎないのであつて、違法の題題を生ずることはない。」とし、生活扶助基準の設定に当たり「国民の一般的生活水準」を考慮することについて、基本的に厚生労働大臣の裁量の範囲内であると判示する。 (2) 堀木訴訟最高裁判決堀木訴訟最高裁判決は、「憲法25条の規定(中略)にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは、きわめて抽象的・相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決 定されるべきものであるとともに、右規定を現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。」と判示する。 (3) 老齢加算東京訴訟最高裁判決及び老齢加算福岡訴訟最高裁判決 老齢加算東京訴訟最高裁判決は、堀木訴訟最高裁判決を参照し、「これらの規定(引用者注:法3条、8条2項の意。)にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当 たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要と するものである」と判示し、また、老齢加算福岡訴訟最高裁判決も、 のであり、これを保護基準において具体化するに当 たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要と するものである」と判示し、また、老齢加算福岡訴訟最高裁判決も、「同項(引用者注:法8条2項の意)にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、国の財政事情を含めた多 方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである」と判示し、いずれも、生活扶助基準について、「一般的な国民生活の状況等との相関関係」において判断決定されるべきものであると明確に判示している。 3 水準均衡方式による毎年度の生活扶助基準の改定 (1) 昭和58年意見具申前保護基準の設定及び改定については、厚生労働大臣の広範な裁量権に委ねられており、法令上、改定の方法には特段の定めはない。厚生労働大臣は、毎年度の生活扶助基準の改定に当たり、その方法を個別的に検討するのではなく、一定の改定の方式を採用して改定の指標としてきた。 すなわち、厚生労働大臣は、従前、生活扶助基準の改定の方式として、その時々の社会情勢等も踏まえ、生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般的な国民生活の状況等との相関関係において捉えられるべきものであるという考え方(前記2)に立脚し、一般国民の生活水準との均衡を図るなどの観点から、①マーケットバスケット方式(最低生活を営む ために必要な飲食物費や衣類、家具什器、入浴料といった個々の品目を一つ一つ積み上げて最低生活費を算出する方式)、②エンゲル方式(栄養審議会の答申に基づ ーケットバスケット方式(最低生活を営む ために必要な飲食物費や衣類、家具什器、入浴料といった個々の品目を一つ一つ積み上げて最低生活費を算出する方式)、②エンゲル方式(栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて計算し、別に低所得世帯の実態調査から、この飲食物費を支出している世帯のエンゲル係数の理論値を求め、これから逆算して総生活費を算出する方 式)、③格差縮小方式(一般国民の消費水準の伸び率以上に生活扶助基準 を引き上げ、結果的に一般国民と被保護世帯との消費水準の格差を縮小させようとする方式)を順次採用してきた(乙共7の2・10頁)。 (2) 昭和58年意見具申後ア厚生労働大臣は、昭和58年意見具申を踏まえ、昭和59年度以降は、その当時の生活扶助基準が一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当で あったとの評価を前提に、一般国民の生活水準との均衡を図る観点から、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費実態との調整を図る水準均衡方式を採用しており、これに基づき毎年度の改定を行ってきた(乙共7の2・10頁)。 具体的には、生活扶助基準は、年度ごとに、予算編成時(12月頃) に翌年度のものが設定されるところ、水準均衡方式による改定についても、X年度の予算編成時((X-1)年12月頃)において、X年度の民間最終消費支出の伸び(X年度の消費動向の予測値及び(X-1)年度の消費動向の実績値)を考慮して改定率を算出することによって行われてきた(改定率は、乙共10参照)。また、民間最終消費支出の伸び を算定する際には、生活扶助で支出されない費用が除外されている(乙共35・1頁に「民間最終消費支出の伸びを基礎として、生活扶助以外の対象とな は、乙共10参照)。また、民間最終消費支出の伸び を算定する際には、生活扶助で支出されない費用が除外されている(乙共35・1頁に「民間最終消費支出の伸びを基礎として、生活扶助以外の対象となる家賃等を除外するとともに、人口増減の影響を調整して改定率を設定している。」と記載されているのは、この趣旨をいうものである。乙共107・10頁、乙共108・13頁)。 イこのように、消費を基礎とする水準均衡方式は、従前の生活扶助基準の改定方式と同様に、生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚し、一般国民の生活水準との均衡を図る観点から採用されたものであって、昭和59年度以降、毎年度の改定に当たって は、一般国民の消費の動向(民間最終消費支出の伸びの予測値及び実績 値)を改定の指標としてきたところである。 もっとも、一般国民の生活水準との均衡をみる際に基礎とすべき指標としては、消費のほかに賃金や物価も考えられるところであり、前記(1)のとおり、格差縮小方式が採用される前に採用されていたマーケットバスケット方式やエンゲル方式においては、消費そのものが改定の指標と されていたわけではない。そのため、消費を基礎として改定した結果、賃金や物価等の指標も併せて考慮してみると一般国民の生活水準とかけ離れてしまうという事態も想定し得るものであり、そのような場合にまで消費以外の指標を用いないとしていたものではなかった。例えば、消費を基礎とする水準均衡方式においても、消費は下落しているものの賃 金や物価は上昇しているような経済状況においては、消費を一応の指標としつつも、消費以外の指標を考慮して生活扶助基準を改定することもあり得たとこ 均衡方式においても、消費は下落しているものの賃 金や物価は上昇しているような経済状況においては、消費を一応の指標としつつも、消費以外の指標を考慮して生活扶助基準を改定することもあり得たところであり、消費が唯一で絶対的な基準であると考えられていたものではない。 実際に、厚生労働大臣は、水準均衡方式による改定においても、一般 国民の消費の動向(民間最終消費支出の伸びの予測値及び実績値)のみをもって改定率を算定するわけではなく、消費の動向以外の要素も含めた経済動向や社会情勢等を総合的に勘案して生活扶助基準の水準を改定してきた。そのため、後記(ア)ないし(エ)のように、一般国民の消費の動向を指標としつつも、当該年度の社会経済情勢等を勘案し、当該年度の 消費の動向が生活扶助基準の水準に反映されない場合もあることから、民間最終消費支出の伸び(予測値及び実績値)と生活扶助基準の改定率とは、必ずしも一致するものではない(乙共68・2頁)。 (ア) 厚生労働大臣は、平成20年度の生活扶助基準の改定について、当時の原油価格の高騰が消費に与える影響を見極めるため、生活扶助基準を 据え置くこととした(乙共73)。 (イ) 厚生労働大臣は、平成21年度の生活扶助基準の改定について、平成20年以降の生活関連物資を中心とした物価上昇が国民の家計へ大きな影響を与えており、また、「100年に一度」といわれる同年9月以降の世界的な金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼしており、国民の将来不安が高まっている状況にあると考えられたことから、生活 扶助基準を据え置くこととした(乙共74)。 (ウ) 厚生労働大臣は、平成22年度の生活扶助基準の改定について、完全失業率が高水準で推移するなど、現下の厳しい経済・雇用状況を踏まえ、国 生活 扶助基準を据え置くこととした(乙共74)。 (ウ) 厚生労働大臣は、平成22年度の生活扶助基準の改定について、完全失業率が高水準で推移するなど、現下の厳しい経済・雇用状況を踏まえ、国民生活の安心が確保されるべき状況にあることに鑑み、生活扶助基準を据え置くこととした(乙共75)。 (エ) 厚生労働大臣は、平成23年度及び平成24年度の生活扶助基準の改定について、いずれも当時の経済、雇用情勢等を総合的に勘案した上で、生活扶助基準を据え置くこととした(乙共76、77)。 4 専門機関による定期的な検証及びその結果を踏まえた生活扶助基準の改定(1) 平成15年中間取りまとめ(乙共13)、平成16年報告書(乙共4) ア平成16年検証の経緯水準均衡方式が採用された昭和59年以降の我が国の社会経済情勢は、昭和61年12月から始まった平成景気(いわゆるバブル景気)が平成2年10月頃に終えんし、その後遺症から、複合不況といわれる長期間の景気低迷期からなかなか脱却できず、賃金、物価及び家計消費がいず れも継続的に下落するデフレ状況にあった(乙共11・18、24及び25頁参照)。 このような社会経済情勢の中で、平成12年5月の社会福祉事業法等一部改正法案に対する衆議院及び参議院の附帯決議により、生活保護制度の在り方について十分検討を行うこととされ(乙共12の2・2枚 目)、平成15年6月の社会保障審議会意見及び財政制度等審議会建議 においても、同様に、生活保護制度の在り方の検討の必要性が指摘された(同共12の2・2及び3枚目)。また、同月27日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」において、「生活保護においても、物価、賃金動向、社会経済情勢の変化、年金制度改革な 同共12の2・2及び3枚目)。また、同月27日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」において、「生活保護においても、物価、賃金動向、社会経済情勢の変化、年金制度改革などとの関係を踏まえ、老齢加算等の扶助基準など制度、運営の 両面にわたる見直しが必要である」とされた(同共12の2・2枚目)。 こうした中、厚生労働大臣は、水準均衡方式に基づき、一般国民の消費の動向(民間最終消費支出の伸び)を踏まえながらも、その時々の社会経済情勢等を総合的に勘案の上、生活扶助基準について、昭和59年度から平成12年度までは増額改定(ただし、平成2年度以降は改定率 を暫時縮小)をし、平成13年度及び平成14年度は据え置き、平成15年度及び平成16年度は減額改定をしてきた(乙共10)。 イ平成15年中間取りまとめ(乙共13)平成15年に厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会の福祉部会の下に設置された「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」(専 門委員会)は、同年12月に中間取りまとめ(乙共13)を取りまとめた。 ここでは、「生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なものであり、具体的には、年間収入階級第1/10分位の世帯の消費水準に着目する ことが適当である」とされ、「第1/10分位の勤労者3人世帯の消費水準について詳細に分析して3人世帯(勤労)の生活扶助基準額と比較した結果」について、「第1/10分位の消費水準と生活扶助基準額とを比較すると、後者が高い」と指摘されていた。 また、昭和59年度以降の改定において、一貫して、一般国民の消費の 動向(政府経済見通しの民間最終消費支出の伸び)を指標としてきたが、 この点に 、後者が高い」と指摘されていた。 また、昭和59年度以降の改定において、一貫して、一般国民の消費の 動向(政府経済見通しの民間最終消費支出の伸び)を指標としてきたが、 この点について、「最近の経済情勢はこの方式を採用した当時と異なることから、例えば5年間に一度の頻度で、生活扶助基準の水準について定期的に検証を行うことが必要である」、「近年、民間最終消費支出の伸びの見通しがプラス、実績がマイナスとなるなど安定しておらず、また、実績の確定も遅いため、これによる被保護世帯への影響が懸念され ることから、改定の指標の在り方についても検討が必要である。」として、改定の指標として消費を用いることについての課題や改定の指標の在り方について検討する必要性を示していた(同号証2頁)。 さらに、専門委員会は、「この場合、国民にとってわかりやすいものとすることが必要なので、例えば、年金の改定と同じように消費者物価 指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる」として、水準均衡方式における改定の指標として物価を用いることを選択肢の一つとして指摘していた。 ウ平成16年報告書(乙共4)専門委員会は、平成16年12月、平成16年報告書(乙共4)を取 りまとめた。同報告書は、生活扶助基準の在り方について、「いわゆる水準均衡方式を前提とする手法により、勤労3人世帯の生活扶助基準について、低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であったが、今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極め るため、全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要がある」(同号証3頁)と指摘している。 また、同報告書では、生活 消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極め るため、全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要がある」(同号証3頁)と指摘している。 また、同報告書では、生活扶助基準の展開部分に関して、「現行の生活扶助基準の設定は3人世帯を基軸としており、また、算定については、世帯人員数分を単純に足し上げて算定される第1類費(個人消費部分) と、世帯規模の経済性、いわゆるスケールメリットを考慮し、世帯人員 数に応じて設定されている第2類費(世帯共同消費部分)とを合算する仕組みとされているため、世帯人員別にみると、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていない」との指摘がされた(同号証4頁)。 エ平成16年報告書を踏まえた生活扶助基準の改定等 厚生労働大臣は、平成16年報告書における前記指摘を踏まえた上で、平成17年度の生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)を据え置く一方、生活扶助基準の展開部分に関し、同年度以降、第1類費について4人世帯の場合に「0.95」、5人以上世帯の場合に「0.90」の各逓減率を導入し、第2類費については4人以上世帯の生活扶助基準を抑 制するとの見直しを行った(乙共7の3・14頁)。 また、厚生労働大臣は、その後の平成18年度及び平成19年度の生活扶助基準の各改定においても、当該年度の民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果、その水準を据え置いてきた(乙共71、72)。 (2) 平成19年報告書(乙共5、73)ア概要平成16年報告書による前記(1)ウの指摘を受け、生活扶助基準は、その後、専門機関において、約5年に一度の頻度で検証が行われてきた。 そこでは、生活扶助基準の水準だけで (乙共5、73)ア概要平成16年報告書による前記(1)ウの指摘を受け、生活扶助基準は、その後、専門機関において、約5年に一度の頻度で検証が行われてきた。 そこでは、生活扶助基準の水準だけでなく、展開部分も含めた生活扶助 基準全体の妥当性等が検証される。そして、厚生労働大臣は、水準均衡方式による毎年度の改定とは別に、専門機関による検証の結果を踏まえた生活扶助基準の改定の要否及びその内容を検討してきた。 具体的には、まず、生活扶助基準の見直しの分析・検討を行うため、平成19年に、厚生労働省社会・援護局に「生活扶助基準に関する検討 会」(生活扶助基準検討会)が置かれ、同検討会において同年11月、 「生活扶助基準に関する検討会報告書」(平成19年報告書・乙共5)が取りまとめられた。 平成19年検証では、平成16年検証と同様に、生活扶助基準の評価・検証の方法として、「国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全国消費実態調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、 年齢階級別、地域別などの様々な角度から詳細に分析することが適当である」(乙共5・3頁)との考え方が示されるとともに、「水準の妥当性」(生活扶助基準の水準と一般低所得世帯における消費実態との均衡が適切に図られているかどうか。)のほか、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の展開部分である「体系の妥当性」(第1類費と第2類費との 合算によって定められている生活扶助基準額が消費実態を適切に反映しているか。具体的には、年齢階級別、世帯人員別の基準額が妥当かどうか。)、「地域差の妥当性」(現行の級地制度が級地間における生活水準の差を反映しているかどうか。)についても評価・検討が行われた(同号証2頁)。 イ生活扶助基準の水準に関する 妥当かどうか。)、「地域差の妥当性」(現行の級地制度が級地間における生活水準の差を反映しているかどうか。)についても評価・検討が行われた(同号証2頁)。 イ生活扶助基準の水準に関する検証すなわち、まず生活扶助基準の水準については、平成16年全国消費実態調査のデータに基づいて夫婦子1人世帯及び単身高齢世帯(60歳以上)の生活扶助基準について検証が行われた結果、生活扶助基準額が一般低所得世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額の水準に比べて 「やや高め」(単身世帯については「高め」)となっていることが指摘された。具体的には、夫婦子1人世帯においては、生活扶助相当支出額が14万8781円であるのに対し、生活扶助基準額は15万0408円であり、約1.1%高く、単身高齢世帯においては、生活扶助相当支出額が6万2831円であるのに対し、生活扶助基準額が7万1209 円であり、約13.3%高いという結果であった(乙共5・5頁)。 ウ生活扶助基準の体系及び地域差に関する検証また、平成19年検証では、生活扶助基準の展開部分について、「生活扶助基準の体系に関する評価・検証に当たっては、世帯構成などが異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で、必要な見直しを行って いくことが必要である」(乙共5・5頁)との基本的な考え方が示されるとともに、一般低所得世帯と比較して、年齢階級別にみると、20歳~39歳及び40歳~59歳では生活扶助基準額が相対的にやや低めであるのに対し、70歳以上では相対的にやや高めであるなど消費実態からかい離していること(同号証7頁)、世帯人員別にみると、世帯人員 4人以上の多人数世帯に有利であるのに対し、世帯人員 や低めであるのに対し、70歳以上では相対的にやや高めであるなど消費実態からかい離していること(同号証7頁)、世帯人員別にみると、世帯人員 4人以上の多人数世帯に有利であるのに対し、世帯人員が少ない世帯に不利である実態がみられること(同号証6頁)のほか、地域別にみると、現行の級地制度における地域差を設定した当時と比較して、地域間の消費水準の差が縮小していること(同号証9頁)などが明らかになった。 エ平成19年検証を踏まえた生活扶助基準の改定等 (ア) 前記イ及びウで述べた平成19年検証の結果を踏まえると、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)を引き下げる見直しや、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の展開部分について見直しを行うことが考えられた。もっとも、厚生労働大臣は、平成20年度の予算が編成された平成19年12月当時、原油価格の高騰等が消費に与える影響等の社 会経済情勢を見極める必要性等も勘案して、上記のような見直しを行わず、基準額を据え置くこととした(乙共73)。 (イ) また、厚生労働大臣は、平成21年度の予算が編成された平成20年12月当時、同年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇が国民の家計へ大きな影響を与えていたことに加え、同年9月のリーマン ショックに端を発した世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼし、 国民の将来不安が高まっている状況にあったことを踏まえて、平成21年度の生活扶助基準についても、消費等の動向を基礎とした改定を行わず、これを据え置いた(乙共74)。 (ウ) そして、厚生労働大臣は、平成22年度の生活扶助基準についても、完全失業率が高水準で推移するなど、現下の厳しい経済・雇用状況を踏 まえ、国民生活の安心が確保されるべき状況にあることに鑑み、消費等の て、厚生労働大臣は、平成22年度の生活扶助基準についても、完全失業率が高水準で推移するなど、現下の厳しい経済・雇用状況を踏 まえ、国民生活の安心が確保されるべき状況にあることに鑑み、消費等の動向を基礎とした改定を行わずに据え置くこととした。同様に、厚生労働大臣は、平成23年度及び平成24年度の生活扶助基準についても、その時々の経済、雇用情勢等を総合的に勘案した上で、消費等の動向を基礎とした改定を行わず、据え置くこととした(以上につき、乙共75 ないし77)。 (3) 平成25年報告書(乙共6)ア基準部会の概要平成23年2月には、保護基準について専門的かつ客観的に評価、検証することを目的として、社会保障審議会令6条1項、社会保障審議会 運営規則2条に基づき、社会保障審議会の下に常設部会として基準部会(生活保護基準部会)が新たに設置された(乙共22)。基準部会の設置の趣旨及び審議事項は、「生活保護基準の定期的な評価・検証」であり(乙共22)、厚生労働大臣が行おうとする保護基準の改定の当否等について審議検討することは、基準部会の設置の趣旨及び審議事項では ない。 なお、社会保障審議会の委員、臨時委員及び専門委員は、学識経験のある者のうちから、厚生労働大臣が任命し(社会保障審議会令2条)、会長が指名する委員等が基準部会に属することとなる(同令6条2項)。 イ基準部会における生活扶助基準の検証の経緯 基準部会において平成25年報告書が取りまとめられるまでの経緯の 概略は次のとおりである。 (ア) まず、平成23年12月13日開催の第8回基準部会では、平成19年検証において生活扶助基準の水準、体系及び地域差等についてそれぞれ検証が行われたことが紹介され、生活扶助基準の水準の検証につい ア) まず、平成23年12月13日開催の第8回基準部会では、平成19年検証において生活扶助基準の水準、体系及び地域差等についてそれぞれ検証が行われたことが紹介され、生活扶助基準の水準の検証について、平成19年検証と同様に標準世帯を含む夫婦子1人世帯をモデ ル世帯として検証を行うという方針が議論された(乙共109、110)。 基準部会での検証作業に向けて、厚生労働省では、同月から平成24年1月頃にかけて平成21年全消調査の特別集計が開始されたが(乙共110・2頁)、その過程においては、平成19年検証と同様 に夫婦子1人世帯(前記第2の1で述べたとおり、生活扶助基準の設定に当たり基軸となる標準世帯が含まれる世帯である。)の一般低所得世帯(年収階級第1・十分位)の生活扶助相当支出額を算定する作業も行っていた。その結果として、同支出額は、平成16年から平成21年にかけて約11.6%下落しており、生活扶助基準額を約12. 6%下回るものとなっていた(なお、前記(2)エのとおり、平成19年検証以降、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)は据え置かれていた。以上につき、乙共107・9頁、乙共108・9ないし11頁)。 (イ) 次いで、平成24年5月8日開催の第9回基準部会において、「今回 の検証に向けての論点」として、集計対象とした世帯の消費水準と生活扶助基準額に差があるとすれば、「①生活扶助基準の体系(世帯人員による規模の経済性(=スケールメリット)や、年齢に応じた消費水準)と消費実態に差があること」、「②生活扶助基準額の級地間格差と消費実態の級地間格差に差があること」及び「③体系又は級地以 外の要因」によると考えられるのではないかとして、この検証の結果 を踏まえて水準の在り方について検討してはど 地間格差と消費実態の級地間格差に差があること」及び「③体系又は級地以 外の要因」によると考えられるのではないかとして、この検証の結果 を踏まえて水準の在り方について検討してはどうかという提案がされた(乙共33、111)。 そして、同年10月5日開催の第10回基準部会では、水準の検証と一体的な体系及び級地の検証を行うことが議論され、これを踏まえて、同年11月9日の第11回基準部会では、このような検証の方法 として、「ある特定の世帯類型を考えて現行の基準額の水準について検証する場合、まずは当該世帯類型(第1・十分位)が現行の生活扶助基準額で受給した場合の平均基準額を求めることとなる。しかし、仮に体系及び級地の検証の結果、基準額の体系や級地間較差が低所得世帯の消費の実態と合っていなかったとすれば、その世帯類型が受給 した場合の平均基準額の水準には、基準額の体系や級地間較差が低所得世帯の消費の実態と合っていないことの影響が含まれている」として、「ある特定の世帯類型の基準額の水準を考える際に、①現行の基準額の年齢体系が消費の実態に合っていないことの影響、②現行の基準額の人員数体系が消費の実態に合っていないことの影響、③現行の 基準額の級地間較差が消費の実態に合っていないことの影響をそれぞれ定量的に評価することが必要になる」と整理された(乙共32・2頁)。つまり、世帯類型別の生活扶助基準の水準の検証に際しては、まず、㋐現行の基準額の年齢別、世帯人員別、級地別の体系が消費の実態に合っているか否かを定量的に評価した上で、㋑その結果を踏ま えて水準の検証を行うという検証方法が確認された。 もっとも、基準部会の委員からは、平成21年全消調査のデータについて、「(生活扶助基準と比較し一般低所得世帯の消費支出 で、㋑その結果を踏ま えて水準の検証を行うという検証方法が確認された。 もっとも、基準部会の委員からは、平成21年全消調査のデータについて、「(生活扶助基準と比較し一般低所得世帯の消費支出が)高いとか低いとかという議論になるときに耐えられるだけのいろいろな世帯パターンや標本層を持っているかというと、やはりそれはすごく 難しいので、(中略)世帯類型ごとにこの残差を確かめるのは、もし かすると難しいかもしれないと思います。」など、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の検証を行うことに消極的な意見も出された(乙共112・18頁)(ウ) そして、基準部会は、平成25年1月、「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(平成25年報告書・乙共6)を取りまとめた(平成 25年検証)が、結果的に、同報告書においては、前記(イ)の㋐についての検証は行われたものの、同㋑についての検証を行うには至らなかった。平成25年報告書においても、「今回、本部会としては、年齢階級別、世帯人員別、級地別に基準額と消費実態の乖離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行った」 (乙共6・2頁)と記載されているとおり、上記㋐についての検証結果を取りまとめたものとされており、上記㋑については言及がない。 このように、平成25年検証においては、生活扶助基準の展開部分(相対的な較差)についての検証のみが行われ、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)についての検証は行われなかった。 その上で、平成25年報告書には、基準部会の見解として、「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠 準部会の見解として、「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。」と記載された(同号証8頁)。 ウ平成25年報告書の概要前記イ(ウ)のとおり、平成25年報告書は、生活扶助基準について、平成21年全消調査のデータに基づき、年齢階級別、世帯人員別、級地別に基準額と一般低所得世帯の消費実態のかい離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数(相対的な較差)を評価・検証したも のであり(乙共6・2頁)、その結果、年齢階級別、世帯人員別及び級 地別のいずれにおいても、生活扶助基準額による各指数の分布と一般低所得世帯の消費実態による各指数の分布との間にかい離が認められた、すなわち、生活扶助基準の「展開」部分において、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっておらず、その結果、生活保護受給世帯間の公平を欠く状態になっていることが判明した。 厚生労働大臣は、上記のかい離が認められるとの平成25年検証の結果を踏まえて、生活扶助基準の展開部分の適正化を図るべくゆがみ調整を行うこととしたが、平成25年検証における展開のための指数(相対的な較差)の分析手法には統計上の限界があり、また、同手法自体は一つの妥当な手法ではあるが唯一の手法ということではないこと、平成2 5年検証の結果等を前提に更なる評価、検証が行われることが予定されていたこと、平成25年検証の結果をそのまま反映させた場合に子どもがいる世帯の減額率が大きくなるといった影響が予測されたことを踏まえ、子どもがいる世帯に配慮して貧困の世代間連鎖を防ぐなどの観点を実現しつつ、「生活扶 5年検証の結果をそのまま反映させた場合に子どもがいる世帯の減額率が大きくなるといった影響が予測されたことを踏まえ、子どもがいる世帯に配慮して貧困の世代間連鎖を防ぐなどの観点を実現しつつ、「生活扶助基準の展開部分の適正化」というゆがみ調整の 本質的部分を改変しないようにするため、平成25年検証の結果を一律2分の1の範囲で生活扶助基準の展開部分に反映させる改定(本件保護基準改定におけるゆがみ調整)を行った。 (4) 平成29年検証(乙共80)基準部会は、本件保護基準改定後の平成29年にも、平成26年全国消 費実態調査におけるデータを用いて、生活扶助基準について評価・検討し、同年12月に報告書(乙共80)を取りまとめた。平成29年検証では、本件保護基準改定を含むこれまでの保護基準の見直しによる影響を把握した上で、生活扶助基準に関する検証等が行われた(同号証1及び7頁)。 その結果、本件保護基準改定後の生活扶助基準の「水準」(絶対的な高 さ)に関して、夫婦子1人世帯の生活扶助基準額と、第1・十分位世帯の 生活扶助相当支出額がおおむね均衡することが確認された(同号証17及び23頁)。また、生活扶助基準の展開部分については、年齢階級別、世帯人員別、級地別にみた一般低所得世帯の消費の実態による指数と生活扶助基準の指数との間にかい離があることが確認された(同号証17ないし22頁)。 厚生労働大臣は、平成29年検証の結果を踏まえ、平成30年から令和2年にかけて、生活扶助基準の展開部分の改定を行った。 5 保護基準の改定に関し、厚生労働大臣(所部の職員を含む。)に専門技術的知見があること(1) 厚生労働省は、国民生活の保障及び向上を図り、並びに経済の発展に寄与 するため、社会福祉、社会保障及び公衆衛 改定に関し、厚生労働大臣(所部の職員を含む。)に専門技術的知見があること(1) 厚生労働省は、国民生活の保障及び向上を図り、並びに経済の発展に寄与 するため、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進並びに労働条件その他の労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ること(厚生労働省設置法3条1項)等を任務として、国家行政組織法に基づき設置された行政機関であり(同法2条1項)、その任務を達成するため、「生活困窮者その他保護を要する者に対する必要な保護に関すること」等の事務をつ かさどっている(同法4条1項82号)。 また、厚生労働省は、生活保護だけでなく、ホームレスや生活困窮者の自立支援に関すること、また、高齢者、障害者等の福祉制度や、最低賃金制度等の労働施策等についても任務(所掌)としており、他制度の状況や影響等も踏まえつつ、生活保護の制度設計を行う事務を担当している(同 法4条1項)。 生活保護に関する国の行政事務についても、保護基準の設定、改定に限らず、法令(生活保護法等)の制定・改廃や、保護の決定実施(運用)に係る事務処理基準の策定、生活扶助以外の医療扶助、介護扶助等に関する事務等を所掌している。 (2) 厚生労働省の所掌は前記のとおり多岐にわたっており、その任務を達成す るためには、審議会等の専門機関における統計データ等による検証に限らず、幅広い分野における知見が必要である。 このため、厚生労働省においては、統計法に基づく一般統計調査として、被保護者調査(乙共100)、社会保障生計調査(乙共101)、家庭の生活実態及び生活意識に関する調査(乙共102)を行っているほか、行 政記録情報を用いた公的統計として医療扶助実態統計を行っており(乙共103)、これら統計調査の実施により 乙共101)、家庭の生活実態及び生活意識に関する調査(乙共102)を行っているほか、行 政記録情報を用いた公的統計として医療扶助実態統計を行っており(乙共103)、これら統計調査の実施により、生活保護制度の企画運営や保護基準の改定のために必要な生活保護制度に係る客観的な実態把握等を行っている。また、民間のシンクタンクを活用した調査研究を行っているほか(乙共104)、地方自治体との実務に関する会議や研修会(乙共105、 106)、監査(法23条1項)等を通じて生活保護行政の現場の実態把握等も行っている。 さらに生活保護制度については、国民の中にも制度の拡充を求める声がある一方、より厳格な制度の運用を求める声があるなど多様な考え方があるところ、様々な立場からの国民各層の声も踏まえ、制度の改善等に取り 組んでいる。 また、厚生労働省においては、上記のとおり幅広い分野での専門性が必要となることから、各分野での知見を有する職員が配置されており、生活保護関係の業務の遂行に当たっては、統計や経済、医療に関する知見を有する職員のほか、社会福祉の政策分野に精通した職員、福祉事務所等の現 場経験を有する職員が業務に当たっている。 (3) 厚生労働大臣は、これまでも毎年度の生活扶助基準の改定を含む生活保護の各扶助や各種加算の改定に当たって、その都度審議会等の専門機関に諮るのではなく、統計データを収集、分析した上で、社会経済情勢等を総合的に勘案して基準の改定を行ってきており、このような知見が蓄積されて いる。 また、審議会等の専門機関において統計データ等により検証を行い、その結果を踏まえて保護基準の設定、改定を行う場合であっても、前述のとおり、厚生労働大臣において、当該検証結果に限らない幅広い分野における 、審議会等の専門機関において統計データ等により検証を行い、その結果を踏まえて保護基準の設定、改定を行う場合であっても、前述のとおり、厚生労働大臣において、当該検証結果に限らない幅広い分野における知見を基に社会経済情勢等を総合的に勘案し、政策判断により改定をするものである(例えば、平成19年検証の結果に照らすと、平成20年度 の生活扶助基準については減額改定を行うことも充分考えられる状況にあったが、原油価格の高騰等が消費に与える影響等の社会経済情勢を見極める必要性に考慮して、減額改定は行わなかったところである(乙共73)。)。 さらに、審議会等の専門機関における議論に際しても、厚生労働省は、 その事務局として、蓄積した専門技術的知見等を活用し、検討課題の選定や統計データの収集・分析、具体的内容に係る審議資料の作成、各委員への説明、報告書案の起草、報告書作成に向けて各委員からの意見の取りまとめ等を行っていることから、このような専門技術的知見が蓄積されている。 (4) このように、厚生労働大臣(所部の職員を含む。)は、生活保護制度や生活保護受給世帯の状況について精通し、生活扶助基準を適切に設定する上で必要となる専門技術的知見を有している。 第3 本件保護基準改定に至る厚生労働大臣の判断過程 1 ゆがみ調整の概要及び厚生労働大臣がゆがみ調整に係る判断に至る経緯 (1) ゆがみ調整の概要前記第2の1で述べたとおり、生活扶助基準は、標準世帯の最低生活費を設定し、その最低生活費を第1類費と第2類費に分解した上、年齢階級別、世帯人員別、級地別に、標準世帯との最低生活費の差を踏まえて設定された指数を適用して「展開」することによってあらゆる世帯に適用可能 な基準として設定されるところ、その「展開のための指数」( 別、世帯人員別、級地別に、標準世帯との最低生活費の差を踏まえて設定された指数を適用して「展開」することによってあらゆる世帯に適用可能 な基準として設定されるところ、その「展開のための指数」(相対的な較 差)は、栄養所要量を参考として個人的経費(第1類費)の指数が設定されるなど、標準世帯との比較において、最低生活に要する費用を示すものとしては必ずしも適切なものとなっていなかった。 また、前記第2の4(2)のとおり、平成16年検証において、生活扶助基準の展開部分に関して見直しを検討する必要がある旨指摘されており、平 成19年検証においても、年齢階級別、世帯人員別、級地別の展開部分について、一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていないことが指摘されていたが、平成19年検証を踏まえた改定は行われなかった。 さらに、平成23年2月に設置された基準部会において、平成21年全消調査のデータを用いて、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級 地別の消費実態がどの程度異なるか(例えば、一般低所得世帯の「70歳~」と「20~40歳」の年齢階級間において消費実態がどの程度異なるか)について評価・検討したところ、生活扶助基準の「展開のための指数」(相対的な較差)は、必ずしも一般低所得世帯の消費実態の相対的な較差を反映したものとなっておらず、その結果、生活保護受給世帯間の公平を 欠く状態になっていることが判明した(仮に、前掲の表において、本件保護基準改定前の「20~40歳」の世帯の展開のための指数「100.0」と「70歳~」の世帯の展開のための指数「80.3」がそれらの世帯間の最低生活に要する費用(第1類費)を示すものとして適正さを欠く場合、これらの年齢階級間における公平を欠くことになる。)。 以上の経 ~」の世帯の展開のための指数「80.3」がそれらの世帯間の最低生活に要する費用(第1類費)を示すものとして適正さを欠く場合、これらの年齢階級間における公平を欠くことになる。)。 以上の経緯を踏まえ、厚生労働大臣は、生活保護受給世帯間の公平を確保するため、本件保護基準改定におけるゆがみ調整を行うことによって、基準部会の検証によって判明した一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態の相対的な較差を生活扶助基準の「展開のための指数」(相対的な較差)に反映し、生活扶助基準の展開部分の適正化を図っ たものである。 また、その際、厚生労働大臣は、平成25年報告書には、検証結果を踏まえて生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際の留意点として、「検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある」ことや「とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある」ことが指摘されていたことから、こうした留意 点も踏まえ、一律に、平成25年検証において算出された乖離幅の2分の1を生活扶助基準に反映することとした(2分の1処理)。 (2) 厚生労働大臣がゆがみ調整に係る判断に至る経緯ア平成25年検証(ア) 平成25年検証の目的 平成25年検証においては、平成19年検証の「世帯構成などが異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要」であるとの指摘を踏まえ、生活保護受給世帯間の実質的な公平を図る観点から、年齢階級別、世帯人員別、級地別 の「展開のための指数」(相対的な較差)について、評価・検証が行われることとなった。 (イ) 平成25年検証の方法 受給世帯間の実質的な公平を図る観点から、年齢階級別、世帯人員別、級地別 の「展開のための指数」(相対的な較差)について、評価・検証が行われることとなった。 (イ) 平成25年検証の方法基準部会は、平成19年検証における「生活扶助基準の評価・検証を適切に行うためには、国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そ のためには、全国消費実態調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別などの様々な角度から詳細に分析することが適当である」(乙共5・3頁)との指摘を踏まえ、平成21年全消調査を用いて、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態の違いを把握し、その要素ごとに消費実態の較差と比較することによって生 活扶助基準の「展開のための指数」の検証を行うこととした。具体的に は、全国消費実態調査を用いて、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態の較差を示す「一般低所得世帯の消費実態による指数」を把握し、それと「生活扶助基準額による指数」(展開のための指数)とを比較することとした。 そして、基準部会は、①平成25年検証においても、過去の検証に 倣って生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが現実的であると判断されたこと、②第1・十分位の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していること、③国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べておおむね遜 色なく充足されている状況にあること、④全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、特に第1・十分位のみが減少しているわけではないこと、⑤第1・十分 れている状況にあること、④全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、特に第1・十分位のみが減少しているわけではないこと、⑤第1・十分位に属する世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあること、⑥分散分析等の統計的手法(乙共69) による検証からは、各十分位間の中で、第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、ほかの十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なるものと考えられること(乙共6・4及び5頁)から、上記検証に当たって参照する一般低所得世帯として、年収階級第1・十分位の世帯を用いることとしたものである。 (ウ) 平成25年検証の結果(平成25年報告書・乙共6)a 基準部会での検証の結果、以下の表(同号証8頁)のとおり、年齢階級別(左上の表)、世帯人員別(右上及び左下の表)及び級地別(右下の表)のいずれにおいても、生活扶助基準額による各指数(展開のための指数。以下の表における青線)と一般低所得世帯の消費実 態による指数(以下の表における赤線)との間にかい離が認められた。 b また、平成25年報告書においては、前記aの検証結果に関する留意事項として、「今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある」、「今般、生活扶助基準 の見直しを具体的に検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある」とされた(乙共6・9及び10頁)。 イ本件保護基準改定におけるゆがみ調整の実施 以上 世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある」とされた(乙共6・9及び10頁)。 イ本件保護基準改定におけるゆがみ調整の実施 以上の経緯を踏まえて、厚生労働大臣は、基準部会による平成25年検証の結果に基づき、生活保護受給世帯間の公平を図るため、本件保護基準改定におけるゆがみ調整を行うことによって、一般低所得世帯の消費実態を「展開のための指数」(相対的な較差)に反映させて、生活扶助基準の展開部分の適正化を図ることにしたものである(ただし、後記ウ のとおり、平成25年検証を反映する程度を2分の1とするなどの措置を講じた。)。 なお、平成25年検証においては、「仮に第1・十分位の全ての世帯が生活保護を受給した場合の1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして、年齢、世帯人員体系及び級地の基準額の水準への影響を評価する方法」が用いられ(乙共6・3頁)、ゆがみ調整においては、このような検証により算出された年齢階級別、世帯人員別及び級地別の各区 分ごとの指数によって算出した改定率(展開のための指数(相対的な較差)の改定率)を、本件保護基準改定前の年齢階級別、世帯人員別、級地別の各第1類費及び第2類費の額に直接乗じるという改定手法が用いられた。すなわち、ゆがみ調整は、このような改定手法により、平成25年検証において平均受給額が不変となるようにして算出された指数を 基準額に反映させ、その結果として、これら第1類費及び第2類費を積み上げることによって算出される各世帯(標準世帯を含む。)の生活扶助費が変更されることになる。そのため、毎年度の改定において採用されていた消費を基礎とする水準均衡方式のように、標準世帯の生活扶助基準額に改定率を乗じた上で生活扶 各世帯(標準世帯を含む。)の生活扶助費が変更されることになる。そのため、毎年度の改定において採用されていた消費を基礎とする水準均衡方式のように、標準世帯の生活扶助基準額に改定率を乗じた上で生活扶助基準全体の水準(絶対的な高さ) として設定し、当該標準世帯の基準額を基軸としてこれを他の世帯類型に展開させるという改定手法は、そもそも用いられていない。 ウ厚生労働大臣が2分の1処理を講じた経緯(ア) 2分の1処理を講じた理由平成25年検証は、生活扶助基準の「展開のための指数」(相対的 な較差)について初めて詳細な分析を行ったところ、その手法は、専門的議論の結果得られた透明性の高い合理的なものであると評価することができるものの、当該手法が唯一のものであるということはできないし、特定のサンプル世帯に限定して分析する際にサンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界も認められた(乙共6・9 頁)。 また、現に、生活扶助基準については、専門機関による検証が定期的に行われることとされており、展開部分についても、平成25年検証の結果等を前提に、その後も更なる検証が行われることが予定されていた。 そのため、もとより平成25年検証の結果の取扱いとして、検証作 業において算出された指数を機械的にすべて反映させることが求められるべきものではないことは明らかであった。 さらに、平成25年検証は、前記(2)アのとおり、年齢階級別、世帯人員別、級地別の「展開のための指数」(相対的な較差)について検証を行ったものであるところ、その影響は、世帯員の年齢、世帯人員、 居住する地域の組合せによって様々であると見込まれた。しかも、平成25年報告書に記載されたとおり、平成25年検証において算出された指数をそのまま ところ、その影響は、世帯員の年齢、世帯人員、 居住する地域の組合せによって様々であると見込まれた。しかも、平成25年報告書に記載されたとおり、平成25年検証において算出された指数をそのまま反映させた場合、子どものいる世帯では、夫婦子1人世帯(子は18歳未満) 8.5%夫婦子2人世帯(子は18歳未満) 14.2% 母子世帯(18歳未満の子1人) 5.2%との減額率となることから、子どものいる世帯への影響が大きくなることが予想された(乙共6・7及び8頁)。この点、平成25年報告書には、平成25年検証の結果に関する留意事項として、「今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には(中略)とりわけ貧困 の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある」と明記されており(同号証9及び10頁)、平成25年検証自体が上記の観点からの対策を講じることを要求していたということができる。 (イ) 平成25年検証の結果の反映の程度を、減額か増額かを問わず、一律 に2分の1とした理由 また、ゆがみ調整については、平成25年検証の結果に関し、例えば、個別の指数ごとに、減額幅(減額の改定比率)については2分の1とし、増額幅(増額の改定比率)についてはそのまま反映させるといったように、反映の程度を部分的に変えるということは理論的にはあり得る。 もっとも、このような世帯によって改定比率を変える反映方法は、検証結果の取扱いの公平性を欠く。 また、増額又は減額のいずれかに偏った反映をすることは、生活扶助基準の相対的な較差の検証という平成25年検証の本質的な趣旨を改変することになる。すなわち、減額幅か増額幅かによって反映の程 度を変えるとすれば、生活扶助基準の「水 反映をすることは、生活扶助基準の相対的な較差の検証という平成25年検証の本質的な趣旨を改変することになる。すなわち、減額幅か増額幅かによって反映の程 度を変えるとすれば、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)にも影響を及ぼしかねないところ(例えば、上記のように減額幅については2分の1とし、増額幅についてはそのまま反映させるとすれば、生活保護受給世帯全体としてみた場合に減額幅に比べて増額幅が大きくなる結果、生活扶助基準の水準(絶対的な高さ)が引き上げられたと 評価し得る。)、このような反映方法は、生活保護基準の年齢階級別、世帯人員別、級地別の「展開のための指数」(相対的な較差)について評価・検証を行うという平成25年検証の目的と相容れず、同検証の本質的な趣旨を改変することになる。 そのため、厚生労働大臣は、平成25年検証の結果の反映の程度を、 減額幅か増額幅かを問わず、一律に2分の1としたものである。 なお、法3条及び8条2項の規定にいう「最低限度の生活」は抽象的かつ相対的な概念であり、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるから、上記「最低限度の生活」に相 当する生活扶助費の額は、特定の統計資料等から一義的に導かれるよ うな性質のものではない。そして、前記(ア)のとおり、平成25年検証の手法は透明性の高い合理的なものと評価することができる一方、当該手法が唯一のものであるということはできないし、統計手法やサンプル数に由来する一定の限界が認められるのであるから、平成25年検証の結果をそのまま反映させた生活扶助費の額が直ちに法3条及び 8条2項の規定にいう「最低限度の生活」に相当する生活扶助費の額であると に由来する一定の限界が認められるのであるから、平成25年検証の結果をそのまま反映させた生活扶助費の額が直ちに法3条及び 8条2項の規定にいう「最低限度の生活」に相当する生活扶助費の額であるということはできない。したがって、平成25年検証の結果を2分の1の限度で適用することは、増額幅が2分の1になる世帯において「最低限度の生活」を下回る生活を強いることを意味するものとはいえない。 (ウ) 小括厚生労働大臣は、以上を踏まえ、「生活扶助基準の展開部分の適正化」というゆがみ調整の本質的部分を維持しつつ、子どものいる世帯への配慮(貧困の世代間連鎖の防止)や次回の検証を見据えた措置*4として、本件保護基準改定におけるゆがみ調整においては、平成25年検証の結 果を反映する比率を一律2分の1とした。 なお、2分の1処理を含めたゆがみ調整により約90億円の財政削減効果が生じると試算された(乙共16)。この点、ゆがみ調整は、2分の1処理を含めて財政効果を目的として行われたものではなく、もとより、厚生労働大臣の実際の判断過程においては、2分の1処理 を行わない場合の財政影響の試算は行われていないが、このような判 *4 生活保護受給世帯への配慮として、数次にわたる検証とその結果の反映という作業を繰り返すことにより、漸次、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態とのかい離の是正を図っていくという考え方に基づく措置であり、2分の1措置にはこのような意味での「激変緩和措置」としての側面がある。 断過程を無視した場合の議論として、仮に、2分の1処理を行わず、平成25年検証の結果を全て反映させた場合には、増額幅及び減額幅のいずれもおおむね2倍となるため、財政削減効果も約2倍 断過程を無視した場合の議論として、仮に、2分の1処理を行わず、平成25年検証の結果を全て反映させた場合には、増額幅及び減額幅のいずれもおおむね2倍となるため、財政削減効果も約2倍になっていたものと考えられる(乙共107・7頁、乙共108・7及び8頁)。 2 デフレ調整の概要及び厚生労働大臣がデフレ調整に係る判断に至る経緯(1) デフレ調整の概要生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)については、平成25年検証の直前の専門機関による検証である平成19年検証において、一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという結果が得られていたものの、厚生労 働大臣は、原油価格の高騰等が消費に与える影響等の社会経済情勢を見極める必要性等を勘案して、平成20年度の生活扶助基準を据え置くこととした(乙共73)。その後、平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機の影響で、同年以降、賃金、物価、家計消費等がいずれも下落する経済情勢にあり、当時の最新の全国消費実態調査のデータであ る平成21年全消調査によれば、平成16年全国消費実態調査に比べ、二人以上世帯(生活扶助基準の設定に当たり基軸となる標準世帯が含まれる世帯である。)における消費支出が約6.0%下落するなどしていた(乙共94)。さらに、平成19年検証において生活扶助基準額と比較すべきとされた夫婦子1人世帯(上記標準世帯が含まれる世帯である。)の一般 低所得世帯(年収階級第1・十分位)の生活扶助相当支出額は、約11. 6%下落していた。このような経済動向(生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)を引き下げる改定の必要性を根拠づける事情)にもかかわらず生活扶助基準が据え置かれていた結果、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)と一般国民の生活水準との間 生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)を引き下げる改定の必要性を根拠づける事情)にもかかわらず生活扶助基準が据え置かれていた結果、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)と一般国民の生活水準との間の均衡が崩れる状態となった(平成 21年全消調査に基づく前記生活扶助相当支出額は、夫婦子1人世帯の生 活扶助基準額に比べて約12.6%下回るものになっていた。)。 このように、平成25年検証の時点では、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)を引き下げて一般国民の生活水準との不均衡を是正すべき状況にあったところ、水準均衡方式による生活扶助基準の毎年度の改定においては消費が指標として用いられており、平成19年検証においても一般 低所得世帯の消費支出との比較において生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の検証が行われていた経緯があった。しかしながら、上記のとおり、平成19年検証において生活扶助基準の水準の比較対象とされた夫婦子1人世帯の年間収入階級第1・十分位層については、生活扶助相当支出額が約11.6%も下落しており、前記生活扶助相当支出額は、夫婦子1 人世帯の生活扶助基準額を約12.6%下回るものとなっていたことからすれば、従前用いられてきた手法により消費を基礎として生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)を検証し、それに基づいた改定を行う場合には、減額幅が必要以上に大きくなることが想定された。 この点、消費の動向は、物価のほか、賃金の動向やこれらを踏まえた主 観的な要素を含む将来の予測等の様々な要素にも影響されるものであるが、リーマンショック後の賃金、物価、家計消費等が下落している状況下では、例えば、収入の不安定さを勘案して消費を減らすことなどが考えられた。 また、専門委員会による平成15年中間取りまとめにお であるが、リーマンショック後の賃金、物価、家計消費等が下落している状況下では、例えば、収入の不安定さを勘案して消費を減らすことなどが考えられた。 また、専門委員会による平成15年中間取りまとめにおいては、改定の指標として消費を用いることについての課題や改定の指標の在り方について 検討する必要性が示されており、改定の指標として物価を用いることも選択肢の一つとして指摘されていたところでもあった。そして、基準部会においても、「厚生労働省において生活扶助基準額の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明 確に示されたい。」(乙共6・8頁)として、平成25年報告書において 示した展開のための指数(相対的な較差)の適正化に加えて、さらに生活扶助基準の改定をするか否か、改定の指標としていかなる経済指標を用いるかについて、政府に委ねる旨の見解を明らかにしていた。 以上の経緯を踏まえ、厚生労働大臣は、平成20年以降の経済情勢により生じた生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)と一般国民の生活水準 との間の不均衡を是正するとともに、その減額幅が必要以上に大きくなることがないようにするため、消費実態そのものではなく、消費の構成要素の一つである物価を指標として改定を行うこととし、平成20年から平成23年までの間の生活扶助費で支出される品目の物価変動率(マイナス4. 78%)を算定して、当該数値に基づき生活扶助基準の「水準」(絶対的 な高さ)について適正化を図ったものである。 (2) 生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)に係る改定の経過ア平成20年度の改定後の社会経済情勢等平成20年9月のリーマンショックに端 な高さ)について適正化を図ったものである。 (2) 生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)に係る改定の経過ア平成20年度の改定後の社会経済情勢等平成20年9月のリーマンショックに端を発した「百年に一度」とも評される世界金融危機は、我が国の消費等の実体経済に大きな影響を与え ていた(乙共78の1及び2)。 以下の表は、平成20年から平成23年までの完全失業率(乙共11・8頁)、一般勤労世帯の賃金(事業者規模5人以上の調査産業計の1人平均月間現金給与総額。同号証18頁)、消費者物価上昇率(同号証24頁)及び全国勤労者世帯家計収支のうちの家計消費支出の推移 (同号証25頁)における前年度比の割合をまとめたものである。 完全失業率一般勤労世帯の賃金消費者物価上昇率家計消費支出の推移平成20年 4.0%-0.3%1.4%0.5%平成21年 5.1%-3.9%-1.4%-1.8%平成22年 5.0%0.5%-0.7%-0.2%平成23年 4.6%-0.2%-0.3%-3.0%この表のとおり、完全失業率は平成21年から急激に悪化し、一般勤労世帯の賃金は、平成21年に3.9%の減少となり、平成22年には 微増したものの、平成23年には再び減少に転じている。消費者物価上昇率は平成21年から平成23年まで3年連続で対前年比がマイナスとなり、家計消費支出も平成21年から平成23年まで名目値で3年連続の減少となるなど、賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落する状況となった。 このような社会経済情勢を背景として、生活保護受給者数は急激に増加し、平成23年7月には過去最高の205万人となり、その後も引き続き増加していった(乙共6・ も大きく下落する状況となった。 このような社会経済情勢を背景として、生活保護受給者数は急激に増加し、平成23年7月には過去最高の205万人となり、その後も引き続き増加していった(乙共6・1頁)。 また、平成21年全消調査においては平成16年全国消費実態調査に比べ、夫婦子1人世帯を含む二人以上世帯における消費支出が約6. 0%下落していた。さらに、平成21年全消調査における夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額は約13万1500円であり(乙共95)、平成16年から平成21年にかけて、夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額、すなわち消費が約11.6%下落しており*5、前記生活扶助相当支出額は、夫婦子一人世帯の生活扶助 基準額を約12.6%下回るものとなっていた(乙共107・9頁、乙共108・9ないし11頁)。そして、上記の経済動向を踏まえるならば、平成21年以降の消費支出額が増加することは考えにくい状況にあった。 イ生活扶助基準の据置き 他方、このように一般国民の生活水準が低下している間も、生活扶助基準の「水準」については据え置かれていた。 *5 平成16年全国消費実態調査における夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額は約14万8781円であったのに対し(乙共5・5頁)、平成21年全消調査における夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額は約13万1500円であり(乙共95)、平成16年から平成21年にかけて約11.6%下落していた。 すなわち、厚生労働大臣は、平成21年度の予算が編成された平成20年12月当時、同年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇が国民の家計へ大きな影響を与えてい .6%下落していた。 すなわち、厚生労働大臣は、平成21年度の予算が編成された平成20年12月当時、同年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇が国民の家計へ大きな影響を与えていたことに加え、同年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼし、国民の将来不安が高まっている状況にあったことを踏まえて、平成21 年度の生活扶助基準についても、消費等の動向を基礎とした改定を行わず、これを据え置いた(乙共74)。 また、厚生労働大臣は、平成22年度の生活扶助基準についても、完全失業率が高水準で推移するなど、現下の厳しい経済・雇用状況を踏まえ、国民生活の安心が確保されるべき状況にあることに鑑み、消費等の 動向を基礎とした改定を行わずに据え置くこととした。同様に、厚生労働大臣は、平成23年度及び平成24年度の生活扶助基準についても、その時々の経済、雇用情勢等を総合的に勘案した上で、消費等の動向を基礎とした改定を行わず、据え置くこととした(以上につき、乙共75ないし77)。 ウ社会保障制度改革推進法の附則平成24年6月に民主党、自民党及び公明党の三党で確認書が合意され、それに基づき、三党の提案で国会に提出され、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法(平成24年法律第64号)附則2条1号には、政府は、「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を 受けている世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に行うこと」と明記された(乙共6・2頁)。 (3) 厚生労働大臣がデフレ調整に係る判断に至る経緯ア生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の改定を判断した理由前記(2)で述べたとおり、平成20年9月のリーマンショックに端を発 する世界金融危機 働大臣がデフレ調整に係る判断に至る経緯ア生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の改定を判断した理由前記(2)で述べたとおり、平成20年9月のリーマンショックに端を発 する世界金融危機によって、賃金、物価、家計消費等が落ち込み、一般 国民の消費水準等が下落していた。取り分け、平成19年検証と同様の手法により一般低所得世帯の消費水準についてみると、平成21年全消調査における夫婦子1人世帯(年収階級第1・十分位)の生活扶助相当支出額は約13万1500円であり(乙共95)、平成16年から平成21年にかけて、夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出 額が約11.6%下落していた。その一方、生活扶助基準については、平成19年検証時点以降、結果的に変更されていなかったため、前記生活扶助相当支出額は、夫婦子1人世帯の生活扶助基準額を約12.6%下回る状況となっていた。すなわち、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)について、その間の経済動向を踏まえた減額改定が行われずに 据え置かれてきた結果、一般国民の消費実態との不均衡が顕著となっていた。 そして、平成24年6月の民主党、自民党及び公明党の三党の合意に基づき国会に提出され、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法附則2条1項により、生活扶助基準の「適正化」を早急に行うこと が明記されていた。上述した当時の社会経済情勢に照らせば、生活扶助基準の「適正化」とは、減額改定をいうものと解するのが当然といえる。 基準部会における平成25年検証では生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)についての検証が行われなかったものの、生活保護法8条2項に「基準は(中略)最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであ つて、且つ、これをこえないものでなければな の「水準」(絶対的な高さ)についての検証が行われなかったものの、生活保護法8条2項に「基準は(中略)最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであ つて、且つ、これをこえないものでなければならない。」と規定されている中で、前述のとおり、本件保護基準改定前における生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)と一般国民の生活水準との間の均衡が大きく崩れた状態(生活扶助基準の水準が高い状態)が確認されたことから、厚生労働大臣は、前記1で述べた「展開のための指数」(相対的な較差) を適正化するゆがみ調整を行ったとしても、なお生活扶助基準の「水準」 (絶対的な高さ)を改定する必要があると判断したものである。 イ生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の改定に当たり物価変動を指標とした理由(ア) 消費を指標とする改定を行わなかった経緯等a 平成25年改定に当たり、消費を基礎とする改定を行った場合には 減額幅が必要以上に大きくなることが想定されたこと水準均衡方式による生活扶助基準の毎年度の改定においては、改定の基礎となる指標として一般国民全体の消費支出の動向が用いられており、また、平成16年検証及び平成19年検証においては、一般低所得世帯の消費支出との比較において生活扶助基準の水準の検証が行 われていた経緯があった。しかしながら、前記アのとおり、平成19年検証と同様の手法により夫婦子1人世帯について一般低所得世帯(年収階級第1・十分位)の消費水準をみると、生活扶助相当支出が平成19年検証時点(平成16年全国消費実態調査)と比較して約11.6%も下落しており、結果として、生活扶助基準額を約12. 6%下回る状況であった。一般に、消費の動向は、物価や賃金の動向やこれらを踏まえた主観的な要素を含む将来の予測 査)と比較して約11.6%も下落しており、結果として、生活扶助基準額を約12. 6%下回る状況であった。一般に、消費の動向は、物価や賃金の動向やこれらを踏まえた主観的な要素を含む将来の予測等の様々な要素にも影響されるものであるが、平成20年以降の上記の経済状況下では、国民の将来不安が高まり、例えば、収入の不安定さを勘案して消費を減らすことなどが考えられ、消費を基礎として生活扶助基準を改定す る場合には減額幅が必要以上に大きくなることが想定された。 b 基準部会において、消費(平成21年全消調査)に基づく生活扶助基準の水準に係る検証が行われなかったこと前記第2の4(3)イのとおり、基準部会は、平成25年検証において、当初、平成19年検証と同様の手法により消費(平成21年全 消調査)に基づき生活扶助基準の水準について検証を行うことを検 討し、その後、生活扶助基準の水準の検証と一体的な展開部分(体系及び級地)の検証を行うことを検討していたが、結果的に、生活扶助基準の展開(相対的な較差)に関する部分(体系及び級地)についてのみ評価・検証が行われ、基準部会においても生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の評価・検証は行われなかった。ただ し、基準部会は、「厚生労働省において生活扶助基準額の見直しを検討する際には、本報告書の評価、検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい」(乙共6・8頁)として、平成25年報告書を踏まえた「展開のための指数」(相対的な 較差)の適正化に加えて、さらに生活扶助基準の改定をするか否か、改定の指標としていかなる経済指標を用いるかについて、政府の判断に委ねる旨の意向を示していた。 c のための指数」(相対的な 較差)の適正化に加えて、さらに生活扶助基準の改定をするか否か、改定の指標としていかなる経済指標を用いるかについて、政府の判断に委ねる旨の意向を示していた。 c 保護基準の改定の方式について法令上の定めはないこと厚生労働大臣には、保護基準の改定について専門技術的かつ政策的 な見地からの広範な裁量権が認められており、改定の方式についても法令上の定めはなく、具体的な改定の手法は特定の方法に限られるものではない。 そして、消費を基礎とする水準均衡方式についても、法令上定められたものではなく、厚生労働大臣が昭和58年意見具申以降採用 している事実上の改定指針の一つにすぎないものである。 d デフレ調整は、消費を基礎とする水準均衡方式が用いられてきた場面とは異なる場面で行われたものであったこと消費を基礎とする水準均衡方式が採用された経緯やその後の社会経済情勢等についてみると、以下に述べるとおり、デフレ調整が行 われた当時の社会経済情勢等は、昭和58年意見具申以降の消費を 基礎とする水準均衡方式が用いられてきた際の社会経済情勢等とは異なっていた上、デフレ調整は、約5年に一度行われる専門機関による検証に併せて行われたものであって、毎年度行われる改定とは異なるものである。 (a) 水準均衡方式が採用された経緯は前記第2の3のとおりである (乙共7の2・10頁)。 消費を基礎とする水準均衡方式は、生活保護において保障すべき最低生活の水準が一般的な国民生活の状況等との相関関係において捉えられるべきものであるという考え方に立脚しつつ、一般国民の生活水準との比較において妥当と評価された生活扶助基準を基に、 毎年度、比較対象である一般国民の消費水準の伸び(変化)を指標とし 捉えられるべきものであるという考え方に立脚しつつ、一般国民の生活水準との比較において妥当と評価された生活扶助基準を基に、 毎年度、比較対象である一般国民の消費水準の伸び(変化)を指標として、妥当とされた生活扶助基準の水準を将来に向かって維持しようとするものであって、昭和58年以降、基本的には毎年度の生活扶助基準の改定において用いられてきた考え方である。また、水準均衡方式が採用された昭和58年当時は、我が国の経済が右肩上 がりに成長を続けていた時期であり、一般国民の消費支出の増加に伴い、生活扶助基準も増額改定がされることが見込まれる状況であった(実際、昭和59年から平成12年までの間、生活扶助基準の額は毎年増額されている(乙共10)。)。 (b) ところが、その後、このような社会経済情勢に変化が生じ、専門 委員会による平成15年中間取りまとめは、「昭和59年度以降、(中略)毎年度の政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びを基礎とする改定方式が採られて(中略)きた」が、「最近の経済情勢はこの方式を採用した当時と異なる」と明確に指摘していた(乙共13・2頁)。 また、同取りまとめは、「近年、民間最終消費支出の伸びの見 通しがプラス、実績がマイナスとなるなど安定しておらず、また、実績の確定も遅いため、これによる被保護世帯への影響が懸念されることから、改定の指標の在り方についても検討が必要である。 この場合、国民にとってわかりやすいものとすることが必要なので、例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改 定の指標の一つとして用いることなども考えられる」として、消費者物価指数を生活扶助基準の改定の指標とする可能性に言及し、最近の経済情勢を踏まえて、消費を指標とする改定の在り方についての も改 定の指標の一つとして用いることなども考えられる」として、消費者物価指数を生活扶助基準の改定の指標とする可能性に言及し、最近の経済情勢を踏まえて、消費を指標とする改定の在り方についての課題や改定の指標の在り方について検討する必要性を示していた(乙共13・2頁)*6。 さらに、平成16年全国消費実態調査に基づく平成19年検証の結果、一般低所得世帯の消費実態と比較して高いとされながら、生活扶助基準について減額改定が行われなかったことによって、平成20年当時、生活扶助基準の水準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が崩れ、生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態に比 較して高くなっていた。このような状況の中、同年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって、賃金、物価、家計消費等が落ち込み、一般国民の消費水準等が下落する一方、生活扶助基準については、減額改定が行われずに据え置かれてきた結果、本件保護基準改定時においては、生活扶助基準の水準と一般国民の消 費実態との不均衡は、より一層顕著となっていた。 このように、デフレ調整は、平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって、賃金、物価、家計消費等 *6 本件保護基準改定後の事情ではあるが、基準部会の平成29年検証においても、結論において見送られたものの、物価も含めた経済指標の動向を生活扶助基準に反映させるかの検討が行われている(乙共80・10及び11頁)。 が落ち込むという経済状況にあり、生活扶助基準と一般国民との間の不均衡が存在しているという前提で、これを是正するために行われたものである。 (c) また、前記第2の4(1)イで述べたとおり、専門委員会において、 経済状況にあり、生活扶助基準と一般国民との間の不均衡が存在しているという前提で、これを是正するために行われたものである。 (c) また、前記第2の4(1)イで述べたとおり、専門委員会において、「例えば5年間に一回の頻度で、生活扶助水準の妥当性について定 期的に検証を行うことが必要である」と指摘されていたところ、デフレ調整は、このような指摘を受けて約5年に一度行われる専門機関による保護基準の検証(平成25年検証)に併せて実施されたものであり、消費を基礎とする水準均衡方式のように生活扶助基準の毎年度の改定として行われたものではない。 (d) 以上のとおり、消費を基礎とする水準均衡方式は、①我が国の経済が右肩上がりに成長を続けているという社会経済情勢を背景に、②生活扶助基準が一般国民の生活水準との比較において妥当であるとの評価を前提に、妥当とされた生活扶助基準の水準を将来に向かって維持しようとするものであって、③基本的には毎年度の生活 扶助基準の改定において用いられてきたものである。これに対し、デフレ調整は、①平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって、賃金、物価、家計消費等が落ち込むという経済状況にあり、②生活扶助基準と一般国民との間の不均衡が存在しているという前提でこれを是正するために行われたものであって、 ③生活扶助基準の毎年度の改定として行われたものでもない。 このように、デフレ調整は、消費を基礎とする水準均衡方式が用いられてきた場面とは異なる場面で行われたものである(ただし、デフレ調整も、消費を基礎とする水準均衡方式も、基本的な考え方(一般国民の生活水準との均衡を図ろうとする点)や手法(一般国 民の経済指標を用いつつ、生活扶助相当品目を用いて改定率を算出 整も、消費を基礎とする水準均衡方式も、基本的な考え方(一般国民の生活水準との均衡を図ろうとする点)や手法(一般国 民の経済指標を用いつつ、生活扶助相当品目を用いて改定率を算出 する点)は共通する。)。 (イ) 物価変動を考慮することとした経緯等a 生活扶助基準の改定において、消費を改定の指標とすることが唯一で絶対的な方法として考えられてきたものではないこと生活扶助基準の改定に当たっては、生活保護において保障すべき最 低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方が一貫してとられてきた。そして、一般国民の生活水準との均衡を評価するための指標としては、消費のほかに賃金や物価も考えられるところであって、過去にマーケットバスケット方式やエンゲル方式が採用されていたことからも明らかなと おり、消費そのものを改定の指標とすることが唯一で絶対的な方法として考えられてきたものではない(前記第2の3(2)イ)。 また、一般国民の生活水準と生活扶助基準との均衡を図るとした場合に着目すべき指標としては、従前の水準均衡方式に基づく改定において指標とされていた消費のほか、物価や賃金が考えられると ころ、前記(ア)d(b)のとおり、専門委員会の中間取りまとめは消費者物価指数を生活扶助基準改定の指標とする可能性に言及していた(乙共13・2頁)。 b 消費水準が大きく下落している状況においては、消費の構成要素の一つである物価を指標として生活扶助基準の「水準」(絶対的な 高さ)の改定を行うことが適切であると考えられたこと前記のとおり、水準均衡方式による生活扶助基準の毎年度の改定においては消費が指標として用いられており、また、平成19年検証においても一般低所得世帯の )の改定を行うことが適切であると考えられたこと前記のとおり、水準均衡方式による生活扶助基準の毎年度の改定においては消費が指標として用いられており、また、平成19年検証においても一般低所得世帯の消費支出との比較において生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の検証が行われていた経緯があっ たところ、消費の動向は、物価のほか、賃金の動向やこれらを踏ま えた主観的な要素を含む将来の予測等の様々な要素にも影響されるものであり、リーマンショック後の賃金、物価、家計消費等が下落している状況下では、例えば、収入の不安定さを勘案して消費を減らすことなどが考えられた。そして、現に、平成21年全消調査の結果では一般低所得世帯の消費水準が大きく下落していたところ、 このような状況においては、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の改定の減額幅が必要以上に大きくなることがないようにするため、消費実態そのものではなく、消費の構成要素の一つである物価を指標として改定を行うことには合理性があると考えられた。 c 物価を考慮した生活扶助基準の改定が行われた実績があったこと これまでも、生活扶助のうち各種加算については、物価の伸び率を基礎とした改定が行われてきた(乙共79)。 また、生活扶助基準の毎年度の改定においても、消費税が導入された平成元年度や、消費税率が引き上げられた平成9年度には、これら消費税の導入や消費税率の引上げを踏まえた生活扶助基準の増 額改定が行われている(乙共10)*7。これらは、上記消費税の導入等の事情を民間最終消費支出の伸びを予測する際の考慮要素としたものであり、消費を基礎とした水準均衡方式に基づく改定として実施されたものであるものの、生活保護受給世帯における実質的な可処分所得を維持するために財やサ 終消費支出の伸びを予測する際の考慮要素としたものであり、消費を基礎とした水準均衡方式に基づく改定として実施されたものであるものの、生活保護受給世帯における実質的な可処分所得を維持するために財やサービスの価格を考慮して生活扶助 基準を改定したものであり、本件保護基準改定以前の生活扶助基準の改定においても財やサービスの価格(物価)の変動に着目した改 *7 消費税が導入された平成元年度は4.2パーセントの増額改定(前年は1. 4%、翌年が3.1%の各増額改定であった。)、消費税率が引き上げられた平成9年度は2.2%の増額改定(前年は0.7%、翌年は0.9%の各増額改定であった。)がされている。 定が行われていたといえる*8。 d 基準部会の指摘に沿う指標であったこと基準部会は、「厚生労働省において生活扶助基準額の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、そ れらの根拠についても明確に示されたい。」(乙共6・8頁)として、厚生労働省において、平成25年報告書において示した展開のための指数(相対的な較差)の適正化に加えて、さらに生活扶助基準の改定をする場合には、合理的説明が可能な経済指標を用いるよう指摘していた。この点、前記aで述べた専門委員会の中間とりま とめの指摘を踏まえるならば、物価がこれに含まれることは明らかである。したがって、物価を指標とした改定を行うことは、基準部会の指摘にも沿うものである。 (ウ) まとめ(本件保護基準改定に当たり、物価を指標とするデフレ調整を行った理由) 以上のとおり、毎年度の生活扶助基準の改定は、従前、消費を基礎とする水準均衡方 摘にも沿うものである。 (ウ) まとめ(本件保護基準改定に当たり、物価を指標とするデフレ調整を行った理由) 以上のとおり、毎年度の生活扶助基準の改定は、従前、消費を基礎とする水準均衡方式に基づいて行われてきたところであるが、法令上定められたものではなく、厚生労働大臣が昭和58年意見具申以降採用している事実上の改定指針にすぎないものであり、保護基準の改定に係る同大臣の判断を拘束するものではないところ、本件保護基準改 *8 さらに、消費税率が引き上げられた令和元年10月には、消費税率の引上げと同時に軽減税率が適用されることも踏まえ、生活扶助相当支出に係る平均的な価格の上昇分を算定した上で、生活扶助基準の増額改定が行われている(乙共96)。すなわち、令和元年10月の消費税率の引上げ率は1.9%(110%÷108%)であったが、一般世帯における生活扶助相当支出に占める軽減税率の対象品目(酒類・外食を除く飲食料品等)の支出割合(28.4%)を加味して、生活扶助基準は1.4%(1.9%×(100%-28.4%))を加えた改定が行われた。 定に際し、仮に消費を基礎とする改定を行った場合、減額幅が必要以上に大きくなることが想定された。また、専門委員会の中間とりまとめでは消費者物価指数を指標として用いることが提案されており、過去に物価の変動に着目した改定を行ったこともあった上、物価を改定の指標とすることは、平成25年報告書における基準部会の指摘にも 沿うものであった。そこで、厚生労働大臣は、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の改定について、それまで行われてきた消費を基礎とする水準均衡方式の考え方(一般国民の生活水準との均衡を図る観点)を堅持しつつも、生活扶助基 、厚生労働大臣は、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の改定について、それまで行われてきた消費を基礎とする水準均衡方式の考え方(一般国民の生活水準との均衡を図る観点)を堅持しつつも、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の改定の減額幅が必要以上に大きくなることがないようにするため、消費 実態そのものではなく、消費の構成要素の一つである物価を指標として改定を行うこととしたものである。 なお、厚生労働大臣が、本件保護基準改定に際し、物価を指標として改定を行うこととした判断過程は以上のとおりであるが、平成20年以降の物価動向の範囲内で生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)を改 定することについては、可処分所得という観点からは、一般に、平成20年における実質的な可処分所得(購買力)を維持したと説明されるものである。また、生活扶助基準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方が一貫して採られてきた中で、平成20年以降の経済情勢に照らしても一般国民の生活水準 が改善していないと考えられる状況にあっては、デフレ調整は、当該状況との相対的な比較において生活保護受給世帯における実質的な可処分所得が増加していた分を調整したものとも説明されるものである。従前、被控訴人らにおいて、デフレ調整の趣旨、目的について「生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加」に基づく説明をして いたのは、厚生労働大臣が、平成20年以降の経済情勢を踏まえて物価 を指標として生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)を改定するという判断をしたことについて、前述のとおり物価と可処分所得の関係性に着目した説明が可能であるという理解に基づくものである。 ウ物価変動率を算定する期間を平成20年 準」(絶対的な高さ)を改定するという判断をしたことについて、前述のとおり物価と可処分所得の関係性に着目した説明が可能であるという理解に基づくものである。 ウ物価変動率を算定する期間を平成20年から平成23年までとした理由 (ア) 物価変動率を算定する期間の始期についてa 厚生労働大臣が物価変動率を算定する期間の始期を平成20年としたのは、デフレ調整の目的が、平成20年以降の経済情勢による生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)と一般国民の生活水準との間の不均衡を是正することにあったためである。 すなわち、5年に1度の頻度で行われることとなっていた専門機関による検証については、平成25年検証の直前は平成19年検証であり、専門機関による検証結果を踏まえた判断は、平成19年検証を踏まえた平成20年度が直前のものであった。平成20年度の改定に関しては、厚生労働大臣は、平成19年検証において、生活 扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費水準と比較して高いという結果が得られており、生活扶助基準の水準を引き下げる必要性が認められたことを踏まえつつも、平成20年当時の原油価格の高騰等を含む社会経済情勢等を総合的に勘案して、生活扶助基準の水準を据え置くという判断を行っており、同年までの社会経済情勢等は既 に同年度の改定において斟酌されているということができた。そして、厚生労働大臣は、このようにして定められた平成20年度の生活保護基準が生活保護法8条2項の規定に適合する妥当なものであることを前提として、平成19年検証以来となる定期的な検証を踏まえた改定である本件保護基準改定においては、平成20年以降の 経済情勢を斟酌することとしたものである(乙共16の2枚目に 「前回の検証の結果を踏まえた上で となる定期的な検証を踏まえた改定である本件保護基準改定においては、平成20年以降の 経済情勢を斟酌することとしたものである(乙共16の2枚目に 「前回の検証の結果を踏まえた上で、当時の政府の判断として、平成20年度以降の基準を据え置くことが妥当とされたことから、物価動向を勘案する起点は平成20年以降とする。」とあるのは、このような趣旨である。)。 あわせて、平成20年以降の社会経済情勢により生活扶助基準の 「水準」(絶対的な高さ)と一般国民の生活水準との間の不均衡が生じたのは、同年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が我が国の消費等の実体経済に大きな影響を与え、賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落する状況に至ったことによるものである。デフレ調整は、正にこのような平成20年以降の社会経済 情勢によって拡大した生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)と一般国民の消費実態との不均衡を是正するためにデフレ調整を行ったものである。 そこで、厚生労働大臣は、定期的な検証を踏まえた改定に係る従前の経緯やこのようなデフレ調整の目的を踏まえて、物価変動率の 算定の始期を平成20年とした。 b なお、消費者物価指数は、平成19年から平成20年にかけて1%を超える上昇をしていたが、上記のとおり、既に平成19年検証において、生活扶助基準と一般低所得世帯との不均衡(夫婦子1人世帯において約1.1%、単身高齢世帯において約13%)が確認されてい たところであり、厚生労働大臣は、このような平成19年検証の結果を踏まえつつ、同年における物価上昇を含む社会経済情勢等を総合的に勘案して、平成20年度の生活扶助基準を据え置くという判断をしたものであり、このようにして定められた平成20年度の生活扶助基準は、 を踏まえつつ、同年における物価上昇を含む社会経済情勢等を総合的に勘案して、平成20年度の生活扶助基準を据え置くという判断をしたものであり、このようにして定められた平成20年度の生活扶助基準は、生活保護法8条2項の規定に適合する妥当なものであるといえ る。したがって、平成19年から平成20年にかけて消費者物価指数 が上昇していたことをもって物価変動率を算定する期間の始期を平成20年としたことが不合理であるとはいえない。 (イ) 物価変動率を算定する期間の終期について一方で、厚生労働大臣は、平成25年改定が検討された当時において最新の総務省CPIのデータは平成23年のものであったため(平成2 4年1月27日公表。乙共40)、物価変動率の算定の終期を平成23年とした。 エ物価変動率の算定方法(生活扶助相当CPIの設定)物価及びその変動率を算定するためには、指数品目を選定し、その品目の価格指数及びウエイトを把握する必要があるところ、本件保護基準 改定が行われた平成25年当時、生活扶助費で支出される品目の価格指数及びウエイトを網羅した信頼性の高い客観的なデータとしては、総務省統計局が公表している消費者物価指数(総務省CPI)のデータが存在した一方、そのほかに信頼性等が担保された適切なデータは見当たらなかった。そこで、厚生労働大臣は、総務省CPIのうち生活扶助費で 支出される品目のデータを用いて、平成20年から平成23年までの物価変動率(マイナス4.78%)を算定し、本件保護基準改定におけるデフレ調整において、当該数値相当分を減額改定した。 (ア) 総務省CPIのうち生活扶助費で支出される品目のデータを用いた 理由 生活扶助基準の検討に当たり、生活扶助費で支出される費目に係るデータを用 いて、当該数値相当分を減額改定した。 (ア) 総務省CPIのうち生活扶助費で支出される品目のデータを用いた 理由 生活扶助基準の検討に当たり、生活扶助費で支出される費目に係るデータを用いる手法は、消費を基礎とする水準均衡方式において一貫して採用され、かつ、基準部会等の専門家においても一貫して採用されていた手法であった上、恣意性が入る余地のない手法であったから、厚生労働大臣においてかかる手法を用いたのは当然であり、合理的な 判断であった。 すなわち、総務省CPIの指数品目には、家賃、教育費、医療費、自動車関係費、NHK受信料等の生活扶助費で支出されない品目が多数含まれており*9、生活扶助基準の改定の指標とする物価変動率を把握するためには、上記のような品目を含めて算定することは相当ではないと考えられた。そして、被保護者の需要の有無及び程度を判断する 手法として、一般低所得者が支出する品目のうち生活扶助相当品目を用いるという手法は、従前から行われており、かつ、専門家においても是認されていたものである(乙共107・10頁、乙共108・13頁)。 すなわち、水準均衡方式による生活扶助基準の毎年度の改定におい ては、民間最終消費支出の伸びが改定の指標とされているところ、その際には生活扶助費で支出されない費用を除外して算出されている(乙共35・1頁に「民間最終消費支出の伸びを基礎として、生活扶助以外の対象となる家賃等を除外するとともに、人口増減の影響を調整して改定率を設定している。」と記載されているのは、この趣旨を いうものである。)。 また、老齢加算の廃止を提言した専門委員会は、「生活扶助相当消費支出額」に基づき被保護者の需要の有無等について検討しているところ、「生活扶助相当消費支出額」と 趣旨を いうものである。)。 また、老齢加算の廃止を提言した専門委員会は、「生活扶助相当消費支出額」に基づき被保護者の需要の有無等について検討しているところ、「生活扶助相当消費支出額」とは、一般低所得者層の消費支出全体から、生活扶助による支出がおよそ想定されない品目を除くこと によって算出したものである(岡田最高裁調査官解説269及び270頁参照)。この「生活扶助相当消費支出」という考え方は、「生活扶助基準に関する検討会」による平成19年検証にも引き継がれ(乙 *9 家賃は住宅扶助、教育費は教育扶助、医療費は医療扶助によって、それぞれ賄われる。 共5・6、7頁等に「生活扶助相当支出額」という言葉が用いられている。)、基準部会における平成25年検証でも踏襲されている(例えば、乙共32・9頁に「各級地に居住する世帯の実態の生活扶助相当消費支出額と「現行の級地別生活扶助基準額」をそれぞれ指数化し、比較する。」とある。)。 そして、生活扶助相当CPIの算出において対象とした具体的な品目についても、基準部会等の専門機関による検証において消費実態の分析に用いられている品目によるものである。このような品目の選定については、生活扶助費で支出されるか否かという客観的かつ明確な基準に従って判断されたものである。このような客観的かつ明確な基 準に従って判断されたということは、取りも直さず、当該判断においては恣意的な判断が入り込む余地がなかったことを意味する。 このように、生活扶助相当CPIの算出において対象とした品目は、基準部会等の専門機関による検証において用いられている品目によるものであり、これは、もとより制度運用上生活扶助費により支出され る品目を に、生活扶助相当CPIの算出において対象とした品目は、基準部会等の専門機関による検証において用いられている品目によるものであり、これは、もとより制度運用上生活扶助費により支出され る品目を対象としているものであって、恣意性を排除した客観的かつ明確な条件設定に基づいて行われたものである。そのため、品目の選定に係る判断自体に恣意的な判断が入り込む余地がなく、十分な合理性があると考えられた。 以上の理由から、厚生労働大臣は、総務省CPIの指数品目のうち、 生活扶助費で支出される品目(生活扶助費で支出想されない品目を除いた品目)の価格指数及びウエイトのデータを用いて、物価変動率を算定することとした(生活扶助相当CPI)。 (イ) 一般国民の消費実態を表す家計調査により算出されたウエイトを用いた理由(社会保障生計調査により算出されるウエイトを用いなかった理 由) a 生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)については、これまでも、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚して改定が行われてきており、一般国民の消費を表す家計調査により算出された消費者物価指数のウエイトデータを用いることは、従来の改定の考え方とも整合するもの である。 すなわち、生活扶助基準の改定は、生活保護により保障される最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に基づいて行われており、昭和59年度以降、毎年度の改定においては、このような考え方に立脚 する水準均衡方式が採用され、一般国民.... の消費水準(民間最終消費支出の伸び)が改定の指標とされている(一般低所得世帯....... の消費水準が改定の指標とされているわけではない する水準均衡方式が採用され、一般国民.... の消費水準(民間最終消費支出の伸び)が改定の指標とされている(一般低所得世帯....... の消費水準が改定の指標とされているわけではない。)(乙共107・11頁、乙共108・14及び15頁)。 この点、デフレ調整についても、水準均衡方式と同じく、生活保 護により保障される最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚しており、一般国民の生活水準の変化を通じた相対的なものとして生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)を改定するものである。そして、このような観点からすると、生活扶助相当CPIの設定に当 たっては、家計調査により算出された一般国民のウエイトのデータを用いるのが適切と考えられた。 これに対し、家計調査における低所得世帯(第1・十分位又は第1・五分位)のウエイトのデータや社会保障生計調査のデータについては、上述した従来の改定の考え方との整合性という観点からは、 生活扶助相当CPIの算定に用いるウエイトとして適切とはいえな かった。 b また、物価指数は、現実の消費実態を反映させるため、指数品目の価格指数に各品目のウエイト(消費の構造)を乗じて加重平均することで算定されるところ、総務省CPIの算定において用いられていたのが家計調査により算出されたウエイトであった。 家計調査は、総務省統計局が、国民生活における家計収支の実態を把握するために、一般国民の家計上の支出、収入、貯蓄等を調査する基幹統計の一つであり、詳細な品目別の支出額が調査の対象となっている。そして、その調査対象世帯の選定は、居住地域等による偏りを避け、国民全体の支出等が推計できるように統計上配慮さ れており る基幹統計の一つであり、詳細な品目別の支出額が調査の対象となっている。そして、その調査対象世帯の選定は、居住地域等による偏りを避け、国民全体の支出等が推計できるように統計上配慮さ れており、このように選定された約9000世帯を対象に調査票を配布してそれを回収、集計することによって行われている(以上につき、乙共81)。 この家計調査の結果は、一般国民の消費等の分析に広く用いられており、総務省CPIはもとより、内閣府の「国民経済計算」、「景気 動向指数」、経済産業省の「通商白書」等のほか、会社、研究所、労働組合等の民間においても広く利用されている(乙共82)。 このように、統計法上の基幹統計である家計調査は、調査対象世帯の選定方法も含め、統計資料としての精度が高いだけではなく、家計上の支出(詳細な品目ごとの支出額)等の把握を目的とした調査であ るから、総務省CPIないし生活扶助相当CPIの算定に用いられる各品目のウエイト(品目ごとの消費支出の割合)を把握するのに最も適したデータといえる。 c 一方、厚生労働省が実施している社会保障生計調査は、被保護世帯の生活実態を明らかにし、保護基準改定等の生活保護制度の企画 運営等のために必要な基礎資料を得る目的で、被保護世帯者の家計 収支の状況を調査する一般統計調査である。そして、その調査対象世帯の選定は、全国を10ブロックに分け、ブロックごとに都道府県、指定都市、中核市から1ないし3自治体を選定し(例えば、東北ブロックの青森県、岩手県、秋田市というように選定する。)、その選定された自治体から合計約1100世帯を抽出することに よって行われている。また、家計収支の状況は、被保護者の生活実態を明らかにする観点から、食料費、住居費等の支出金額、割合として )、その選定された自治体から合計約1100世帯を抽出することに よって行われている。また、家計収支の状況は、被保護者の生活実態を明らかにする観点から、食料費、住居費等の支出金額、割合として集計される(以上につき、乙共83)。 このような社会保障生計調査は、保護基準の改定等に用いられる統計資料ではあるものの、調査世帯の選定において地域等による偏 りが生じる可能性があることや、サンプル数が必ずしも多くないことなどを踏まえると、生活保護受給世帯全体の家計支出の状況を推測する精度に一定の限界があることは否定できない。 その上、社会保障生計調査は、生活保護受給世帯の「生活実態」を把握する調査であって、生活保護受給世帯の詳細な支出先や支出 額を把握するものではないから、調査の手法としても、個別品目の消費支出の割合等を正確かつ詳細に記載させるための措置が講じられておらず、その調査結果を分析しても、おおまかなウエイトは把握できても、家計調査のように詳細な品目ごとのウエイトは把握できない(例えば、食料(外食)のウエイトは把握できても、食料 (一般外食(うどん))のウエイトは把握できない。)。そのため、社会保障生計調査のウエイトを用いた場合には、消費者物価指数の詳細な品目ごとの価格データが存在するにもかかわらず、その詳細な品目ごとの消費の支出の割合を反映した物価指数を算出することができなくなると予想されるところである。 d なお、家計調査には、年間収入階級第1・十分位世帯のウエイト のデータもあるが、かかるデータを用いることは、生活保護により保障される最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという従前の改定の考え方とも一貫しなくなる上、同データは、いくつかの品 タを用いることは、生活保護により保障される最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという従前の改定の考え方とも一貫しなくなる上、同データは、いくつかの品目をまとめた「類」レベルでのウエイトのデータのみが存在し、品目別のウエイトの データは存在しない(乙共97)。そのため、家計調査の年間収入階級第1・十分位世帯のウエイトを用いた場合にも、消費者物価指数の詳細な品目ごとの消費の支出の割合を反映した物価指数を算出することができなくなると予想された。 例えば、平成23年の消費者物価指数の「類」としての「保健医 療サービス」は、診療代、出産入院料、マッサージ料金、人間ドック受診料、予防接種料の5品目で構成されているところ、家計調査の第1・十分位のウエイトデータでは、類としての「保健医療サービス」のウエイトは把握できても、これを構成する診療代等の5品目のウエイトデータは把握できない。ここで、マッサージ料金、人 間ドック受診料及び予防接種料は生活扶助相当品目であるが、診療代及び出産入院料については、生活扶助費で支出されていない品目であり*10、類(保健医療サービス)が同一でも生活扶助相当品目とそうでない品目が混在している。生活扶助相当CPIの算定においては、総務省CPIの指数品目のうち、生活扶助費で支出される品目 (生活扶助費で支出されない品目を除いた品目)の価格指数及びウエイトのデータを用いて、物価変動率を算定することとしたが、家計調査の第1・十分位のウエイトを用いた場合には、消費者物価指数の詳細な品目ごとのウエイトを反映した物価指数を算出すること *10 診療代は医療扶助、出産入院料は出産扶助によってそれぞれ賄われる。 物価指数の詳細な品目ごとのウエイトを反映した物価指数を算出すること *10 診療代は医療扶助、出産入院料は出産扶助によってそれぞれ賄われる。 はできない。 e 以上のとおり、厚生労働大臣は、社会保障生計調査の結果を分析したウエイトを用いて物価変動率を算出することが可能であったとしても、家計調査の統計資料としての精度や適格性、従来の改定の考え方との整合性等を総合的に勘案し、家計調査により算出された 消費者物価指数のウエイトデータを用いる判断をしたものである。 (ウ) 平成22年基準のウエイト(消費の構造)を用いた理由本件保護基準改定が行われた平成25年当時、家計調査(総務省CPI)のウエイトのデータとしては、平成17年以前の基準によるものと、平成22年基準によるものが存在した。 この点、国民の消費の内容は経時的に変化することから、現実の消費実態を反映した物価指数を算定するためには、物価指数の算定時点に可能な限り近接した時点の消費の構造を示すデータを用いるのが相当と考えられた。このような観点からみると、仮に、平成17年基準によるウエイトのデータを用いた場合には、平成17年以降の消費構造の変化が 反映されず(平成20年の指数は3年間、平成23年の指数は6年間の消費構造の変化が反映されないこととなる。)、物価変動率の算定期間における消費実態を正確に反映しないものとなることが予想された。これに対して、平成22年基準によるウエイトのデータは、物価変動率を算定する期間に接着したものであり(平成20年の指数は2年、平成2 3年の指数は僅か1年しか離れていない。)、現実の消費実態を反映したものとして相当と考えられた。 そこで、厚生労働大臣は、平成20年か 間に接着したものであり(平成20年の指数は2年、平成2 3年の指数は僅か1年しか離れていない。)、現実の消費実態を反映したものとして相当と考えられた。 そこで、厚生労働大臣は、平成20年から平成23年までの物価変動率を算定するに当たり、平成22年基準によるウエイトを用いることとした。そして、以下に述べるとおり、このような厚生労働大臣の判断は、 消費者物価指数マニュアル等の記載に照らしても適切なものといえる。 a 物価指数の算定時点とウエイト参照時点とは、できるだけ近接させることが望ましいといえること我が国を含む多くの国では、消費者物価指数を算出する際、ウエイトを指数算出の対象期間の期首に設定するラスパイレス指数を用いているが、これは、直近時点の取引ウエイトを知ることが困難で あるとの実務上の理由によるものにすぎず(乙共26・3頁の注釈4)、消費者物価指数を算出するための指数としてラスパイレス指数のみが正しく、他の指数が誤っていることを意味するものではない。このことは、消費者物価指数の選択に関し、消費者物価指数マニュアルにおいて、「過去2世紀にわたり、多くの様々な種類の数 学的算式が提案されてきた。あらゆる状況に向いている算式は1つもないかも知れない」などと説明されていることからも明らかである(甲共95〔1.13〕3頁)。 また、総務省CPI等では、ウエイトは、家計調査の結果を踏まえて5年ごとに改定されており、5年間は同じウエイトを用い続け ているが、これは、「ウェイトの更新は、特に、世帯支出調査を新たに実施しなければならないとしたら、時間が掛かるし費用も高くなる」ことから、「時間と費用の双方の節約」という「実際上の長所」によるものと認められるから(甲共95〔9.79〕291頁)、 調査を新たに実施しなければならないとしたら、時間が掛かるし費用も高くなる」ことから、「時間と費用の双方の節約」という「実際上の長所」によるものと認められるから(甲共95〔9.79〕291頁)、5年間同じウエイトを用い続けなければ消費者物価指数の算出方法 として合理性を欠くわけでもない。 むしろ、消費者物価指数マニュアルにおいて、「現在の消費パターンにできるだけ近づけるため」に「各年の初めにウェイトを更新する国もある」とされていることに照らすと(同頁)、「現在の消費パターンにできるだけ近づける」ためには、なるべく直近のウエイトを 用いる方が望ましいと考えられる。また、「価格参照時点より早い時 点で得られた数量を使うロウ指数は、ラスパイレスを上回り勝ちであり、その程度は、ウェイト参照時点が時間的に早く戻れば戻るほど、大きくなる」、「どんな買い物かご指数でも、関係する時点が時間的に過去に戻れば戻るほど、数量はますます時代遅れになり、適切さを欠くことになるのは避けられない。引き起こされるバイアスを最小に するために、ウェイトはできる限り頻繁に更新されるべきである」(同号証〔9.90〕294頁)と説明されていることからも、ウエイト参照時点を物価指数の算定時点にできるだけ近接させることが望ましいといえる。 このように、物価指数の算定時点にできるだけ近接した時点のウ エイトのデータを用いることが望ましいといえる。 b 平成22年をウエイト参照時点とする生活扶助相当CPIの方法は、消費者物価指数マニュアルにおいて「中間年指数」として紹介されている方法であることまた、生活扶助相当CPIは、平成22年をウエイト参照時点とし て平成20年及び平成23年の物価指数を算出しているところ、このように対象期間 中間年指数」として紹介されている方法であることまた、生活扶助相当CPIは、平成22年をウエイト参照時点とし て平成20年及び平成23年の物価指数を算出しているところ、このように対象期間の間の任意の時点でウエイトを採る方法は、消費者物価指数マニュアルにおいて「中間年指数」と紹介される方法である(乙共51〔15.49〕459及び460頁)。そして、このような中間年指数は、「パーシェ指数とラスパイレス指数のほぼ中間に来るロ ウ指数が得られ」、「それは0月とt月の間の理想的な目標指数に非常に近い」と説明される算定方式である(甲共147〔15.51〕460及び461頁)。 この点については、宇南山意見書においても、「生活扶助相当CPIは、平成20年を0時点、 平成23年をt時点、平成22年をウ エイト参照時点とした「ロウ指数」そのものである。言い換えれば、 生活扶助相当CPIに使われている指数算式は「CPIマニュアル」に掲載されている指数算式である」(乙共85・4頁)と評価されているところである。 (エ) 特定の品目について他の品目と異なる取扱いをすることの可否について a 多数ある指数品目のうち教養娯楽費等の特定の品目に限って他の品目と異なる取扱いをする必要性及び合理性を的確に説明することは必ずしも容易でないこと以上のとおり、生活扶助相当CPIにおける品目の算定やウエイトの選定は、従前の改定手法との整合性や専門機関における検証手 法等を踏まえたものであり、恣意的な判断が介在しないように配慮されている。 ここで、仮に、多数ある指数品目のうちある特定の品目(例えば、教養娯楽費)に限って生活扶助相当CPIの算定から除外し又はウエイトを調整するのであれば、厚生労働大臣には、その必要性や合 れている。 ここで、仮に、多数ある指数品目のうちある特定の品目(例えば、教養娯楽費)に限って生活扶助相当CPIの算定から除外し又はウエイトを調整するのであれば、厚生労働大臣には、その必要性や合 理性について統計等の根拠に基づいて的確に説明することが求められる(前記のとおり、平成25年報告書においても、「生活扶助基準の見直しを検討する際には(中略)他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい」とされていた(乙共6・8頁)。)。 しかるに、生活扶助相当CPIで用いられた家計調査のウエイトのデータ(乙共27・40頁以下)と社会保障生計調査に基づくウエイトのデータ(乙共98)を比較すると、両者のウエイトの違いは特定の品目(例えば、教養娯楽費)に限られるものではなく、その違いの程度も一様ではない。 また、厚生労働省が平成22年に実施した「家庭の生活実態及び生 活意識に関する調査」によれば、例えば、生活保護受給世帯のパソコンの普及率は約4割、ビデオレコーダーの普及率は約7割、電子レンジや洗濯機の普及率は約9割、カラーテレビや冷蔵庫の普及率はほぼ10割となっている(乙共99)。これらの事情に照らせば、生活保護受給世帯においても、テレビやパソコン等の教養娯楽用耐久財は一 般世帯と同様に普及しているということができ、生活保護受給世帯において教養娯楽用耐久財を生活扶助で購入することも十分予想されるところ、生活保護費のうちどの程度をテレビやパソコン等の教養娯楽用耐久財に充てるかは当該世帯ごとの個別の事情によるものであって、この点は教養娯楽用耐久財以外の生活扶助相当品目と変わりがない。 このように、仮に、多数ある指数品目のうち特定の品目(例えば、教 久財に充てるかは当該世帯ごとの個別の事情によるものであって、この点は教養娯楽用耐久財以外の生活扶助相当品目と変わりがない。 このように、仮に、多数ある指数品目のうち特定の品目(例えば、教養娯楽費)に限って生活扶助相当CPIの算定から除外し又はウエイトを調整することを検討したとしても、生活扶助費で支出される品目以外を機械的に除外するという、専門機関による検証において用いられている方法と比べて、かえって恣意的な方法となるおそれがあっ たといえる。 b 生活扶助基準の改定に当たっては、恣意的な判断が介在しないという意味での合理性や、国民に対する説明可能性(説明の分かりやすさという意味での簡便さ)も考慮要素となり得ること念のため付言すると、厚生労働大臣は、生活扶助相当CPIの設 定に当たり、これによって平成20年以降の物価変動率をより正確に把握することを一つの重要な考慮要素として斟酌しているものの、考慮すべき要素はそれに限られるわけではなく、前記(ア)及びaのとおり、恣意的な判断が介在しないという意味での合理性や、生活保護受給世帯を含む国民に対する説明可能性(説明の分かりやすさと いう意味での簡便さ)も考慮したものである。 (a) すなわち、平成20年以降における物価変動率を統計等の資料によって正確に把握するとしても、そこにはおのずから限界がある。 例えば、本件保護基準改定が行われた平成25年の時点においては、平成24年以降の総務省CPIが公表されていなかったから、平成23年から平成25年までの物価変動率を算定することはで きない。また、ウエイトのデータの選択についていえば、家計調査に基づく消費者物価指数の平成20年基準及び平成23年基準のデータは存しないから、近接する他の年のウエイトのデ 率を算定することはで きない。また、ウエイトのデータの選択についていえば、家計調査に基づく消費者物価指数の平成20年基準及び平成23年基準のデータは存しないから、近接する他の年のウエイトのデータを用いるほかなく、また、バイアスが生ずることも避けられない。 このように、統計等の資料を用いるとしても、平成20年以降の 物価変動率を正確に把握するには限界がある。 もとより、法3条、8条2項にいう「最低限度の生活」は抽象的かつ相対的な概念であり、一義的な定義づけや特定の要素(統計)から定量的、画一的に導かれるものではなく、基準部会による検証結果が保護基準の改定における考慮要素にとどまるのと同 様、生活扶助相当CPIの変動率も、本件保護基準改定における考慮要素の一つにすぎない。すなわち、厚生労働大臣は、デフレ調整を行うに当たり、生活扶助相当CPIの変動率(マイナス4. 78%)を前提に、これが生活保護受給世帯と一般国民との不均衡を是正するのに相当なものかという観点からの検討を行ってお り(後記カ参照)、さらに、本件保護基準改定における激変緩和措置として、ゆがみ調整とデフレ調整を併せた本件保護基準改定による減額幅の上限を10%としており、最終的には、このような激変緩和措置後の生活扶助基準額をもって法3条、8条2項にいう「最低限度の生活」を下回るものではないとの判断をしたも のである。 そして、基準部会の行う評価及び検証が、その時点における保護基準について専門技術的な見地から客観的に評価するものであり、そこに政策的な判断は介在しないのに対し、生活扶助相当CPIについては、平成20年以降の経済情勢により生じた生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡の是正を図りつつ、生活扶 助基準の「水準」(絶対 に政策的な判断は介在しないのに対し、生活扶助相当CPIについては、平成20年以降の経済情勢により生じた生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡の是正を図りつつ、生活扶 助基準の「水準」(絶対的な高さ)の改定の減額幅が必要以上に大きくなることがないようにするため、消費実態そのものではなく物価を指標として改定を行うという政策的判断があり、このような判断に基づいて設定されるものである。そのため、生活扶助相当CPIの設定に当たっては、その用いる資料等の取捨選択や 考慮する要素についても、厚生労働大臣の政策的判断に関する合目的的な裁量が認められるというべきである。 そうすると、生活扶助相当CPIの設定に当たっては、これにより算出される物価変動率の正確性が重要な考慮要素の一つであるものの、唯一絶対のものとはいえない。恣意的な判断が介在し ないという意味での合理性や、国民に対する説明可能性(説明の分かりやすさという意味での簡便さ)も考慮要素となり得るものである。この点、平成15年中間取りまとめにおいても、改定の指標の在り方について「国民にとってわかりやすいものとすることが必要」とされている(乙共13・2頁)。 (b) したがって、生活扶助相当CPIの設定に関する判断過程審査においても、このような前提を踏まえて判断されなければならない。 これに対し、生活扶助相当CPIにより求められる物価変動率の正確性の問題を殊更に強調することは、厚生労働大臣の判断過程を正解しないものであり、結果として、「自ら特定の衡量利益 ないし考慮事項を選び出してこれを一般的に強調する」(岡田最 高裁調査官解説472頁)ことになり、判断過程審査の判断枠組みを逸脱するものである。 (オ) 具体的な物価変動率(マイナス4.78%) 事項を選び出してこれを一般的に強調する」(岡田最 高裁調査官解説472頁)ことになり、判断過程審査の判断枠組みを逸脱するものである。 (オ) 具体的な物価変動率(マイナス4.78%)の算定過程以上のとおり、厚生労働大臣は、総務省CPIのデータ(生活扶助費で支出される品目の平成20年と平成23年の各価格指数のデータ及び 平成22年基準によるウエイトのデータ)を用いて、平成20年から平成23年までの物価変動率を算定することとした。その具体的な算定過程は、以下のとおりである。 まず、総務省統計局のホームページで公表されている平成22年基準消費者物価指数に係る年報の「第7表-1 品目別価格指数(全国)」 から、生活扶助費で支出される平成20年及び平成23年の各品目の価格指数及び平成22年基準によるウエイト(乙共29の黄色塗りした箇所)を抜き出し、表にまとめる(まとめた表が乙共30である。)。 次に、同表中の「②CPI」欄に記載されている各品目別の価格指数に、「ウエイト」欄記載のウエイトの値を乗じる(それが同号証の 「①×②」欄の数値である。)。 さらに、「①×②」欄の数値を合計する(その結果が、同号証18頁の欄外の水色塗りした箇所に記載した数値(平成20年が「646627.9」、平成23年が「635973.1」)である。)。 これらの数値を、生活扶助相当品目のウエイトの合計である618 9(平成20年)及び6393(平成23年)でそれぞれ除する。 そうすると、以下の計算式のとおり、平成20年の生活扶助相当CPIは「104.5」、平成23年の生活扶助相当CPIは「99.5」となる。 平成20年:646627.9÷6189=104.5 平成23年:635973.1÷6393=99.5 PIは「104.5」、平成23年の生活扶助相当CPIは「99.5」となる。 平成20年:646627.9÷6189=104.5 平成23年:635973.1÷6393=99.5 そして、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率は、次の計算式のとおり、マイナス4.78%と算定される。 {(99.5-104.5)÷104.5}×100=-4.78%オ平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率(マイナス4.78%)をもってデフレ調整における改定率とした理由 厚生労働大臣は、前記ウ及びエのとおり、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率をマイナス4.78%と算定した。 そして、厚生労働大臣は、前記アのとおり、平成21年全消調査によれば、夫婦子1人世帯について一般低所得世帯の消費水準が生活扶助基準額を大幅に下回る状況であることを確認しており、仮に消費実態に基づ いて基準額の改定を行えば、実際に行われた改定(ゆがみ調整及びデフレ調整)以上に大幅な減額改定となることを認識していた(加えて、平成21年以降の経済動向に照らしても、本件保護基準改定時に至るまでにこうした生活扶助基準額と消費実態のかい離が縮小したとは見込まれない。)。平成20年以降の物価下落は、同年9月のリーマンショック に端を発する百年に一度とも評される世界金融危機による実体経済への影響を反映したものであり、物価のみならず、賃金や消費等の経済指標も大きく下落している状況にあった(一般勤労世帯の賃金は平成21年に3.9%の減少となり、平成22年には微増したものの、平成23年には再び減少に転じ、家計消費支出も平成21年から平成23年まで3 年連続でマイナスとなった。)。こうした平成20年以 成21年に3.9%の減少となり、平成22年には微増したものの、平成23年には再び減少に転じ、家計消費支出も平成21年から平成23年まで3 年連続でマイナスとなった。)。こうした平成20年以降の経済情勢に照らして、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)と一般国民の生活水準との間に生じた不均衡を是正する改定をするに当たっては、その改定率を、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率と同じマイナス4.78%とするのが相当と判断した。 カデフレ調整について、基準部会等の専門機関に意見を求めなかった理 由なお、厚生労働大臣が、デフレ調整を行うに当たり、基準部会等の専門機関に意見を求めなかった理由は次のとおりである。 (ア) 平成25年検証において生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)についての検証が行われなかったこと 前記イ(ア)bのとおり、基準部会において、平成24年11月までは、消費(平成21年全消調査)に基づく生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)についても検証を行うことが検討されており、厚生労働大臣としては、このような基準部会による検証結果を踏まえて生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)を改定することも想定していたところである が、結果的に、基準部会において生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)については検証が行われなかった。 (イ) 厚生労働大臣は生活保護基準改定に係る専門技術的知見を有していること前記(ア)のとおり、平成25年検証においては生活扶助基準の「水準」 (絶対的な高さ)についての検証が行われなかったため、基準部会による検証結果を踏まえた生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の改定はできなかった。しかしながら、前記アのとおり一般国民の生活水準が大き 絶対的な高さ)についての検証が行われなかったため、基準部会による検証結果を踏まえた生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の改定はできなかった。しかしながら、前記アのとおり一般国民の生活水準が大きく低下していた状況を踏まえるならば、平成25年改定において、何らかの経済指標を用いて生活扶助基準の「水準」(絶対的 な高さ)の調整を図る必要があることは明らかであった。そして、厚生労働大臣が、本件保護基準改定を行うに当たり、消費ではなく物価を指標として生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)を改定することとした理由は前記イで述べたとおりである。 ここで、前記第2の5のとおり、厚生労働省は、法を所管しており (厚生労働省設置法4条1項)、厚生労働大臣はその長として(同法 2条2項)、生活保護行政(同法4条1項82号)の責任者たる立場にあり、各種の統計調査や現場において生活保護行政を担う地方自治体からの情報収集等を通じて生活保護受給世帯の生活実態を把握するとともに、専門機関から累次にわたり保護基準に関する分析及び検証の結果を聴取するなどしている。このように、厚生労働大臣は、生活 保護行政の責任者として必要となる専門技術的知見を有しており、保護基準の改定に係る同大臣の判断は、このようにして蓄積されてきた専門技術的知見を踏まえた考察に基づくものである。 (ウ) デフレ調整の内容はそれまでの生活扶助基準の改定の基本的な考え方や専門機関による検証の考え方と齟齬するものではなかったこと そして、デフレ調整についても、以下に述べるとおり、厚生労働大臣に蓄積されている専門技術的知見を踏まえたものである。 a デフレ調整の必要性についてまず、デフレ調整の必要性を判断した際の基礎となった、生活保護により保障される最低生活 るとおり、厚生労働大臣に蓄積されている専門技術的知見を踏まえたものである。 a デフレ調整の必要性についてまず、デフレ調整の必要性を判断した際の基礎となった、生活保護により保障される最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連 において捉えられるべき相対的なものであるという考え方については、これまでの生活扶助基準の改定において一貫して採られてきたものであり、専門機関による検証においても同様の考え方が前提とされている。 また、本件保護基準改定に際し、当時の最新の全国消費実態調査 のデータである平成21年全消調査によれば、夫婦子1人世帯(年収階級第1・十分位)の生活扶助相当支出額は、同世帯の生活扶助基準額を約12.6%下回るものとなっていた。この点、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の妥当性を検討するに当たって、標準世帯が含まれる夫婦子1人世帯に着目し、生活扶助基準額と一 般低所得世帯(年収階級第1・十分位)の生活扶助相当支出額とを 比較するという手法は、平成16年検証、平成19年及び平成29年検証において一貫して採用されているものである。 b 物価変動率を指標としたことについてまた、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の改定の指標として物価変動率を用いた点については、専門委員会による平成15 年中間取りまとめにおいて、最近の経済情勢を踏まえた場合に、生活保護受給世帯への影響という観点から消費を用いることについての課題や改定の在り方について検討する必要性が示されており、改定の指標として物価を用いることも選択肢の一つとして指摘されていた。 c 生活扶助相当CPIの設定について次に、生活扶助相当CPIの設定に関しては、総務省統計局が作成した総務省CPIが基となっており、生活扶 いることも選択肢の一つとして指摘されていた。 c 生活扶助相当CPIの設定について次に、生活扶助相当CPIの設定に関しては、総務省統計局が作成した総務省CPIが基となっており、生活扶助相当CPIと総務省CPIの主な違いは、①指数の算定品目と②ウエイトの基準年の2点である。 (a) このうち①指数の算定品目については、生活扶助相当CPIでは、総務省CPIの指数品目のうち生活扶助費で支出される品目のデータを用いているところ、前記エ(ア)で詳述したとおり、被保護者の需要の有無及び程度を判断する手法として、一般低所得者が支出する品目のうち生活扶助相当品目だけを用いるという手法は、 従前から行われており、かつ、専門家においても是認されていたものである。 (b) 次に、②ウエイトの基準年については、前記エ(ウ)のとおり、物価変動率の算定期間の間の時点におけるウエイトを採る方法は、消費者物価指数マニュアルにおいて「中間年指数」として紹介さ れている方法であり、「パーシェ指数とラスパイレス指数のほぼ 中間に来るロウ指数が得られ」、「それは0月とt月の間の理想的な目標指数に非常に近い」と説明される算定方式である(甲共147〔15.51〕460及び461頁)。 (c) さらに、ウエイトのデータの選択については、前記エ(イ)のとおり、厚生労働大臣は、生活扶助相当CPIに用いるウエイトの データについて、そもそも「生活保護受給世帯の消費実態を適切に反映したもの」である必要はなく、一般家庭の消費構造を示す家計調査のウエイトのデータを用いるのがむしろ適切であると判断したものであり、このような考え方は、①生活保護により保障される最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉 えられるべき相対 調査のウエイトのデータを用いるのがむしろ適切であると判断したものであり、このような考え方は、①生活保護により保障される最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉 えられるべき相対的なものであるという考え方、②一般国民の消費水準(民間最終消費支出の伸び)を改定の指標とする水準均衡方式に基づく従前の改定方式にも沿うものである。 d 平成25年報告書についてそして、平成25年報告書に「厚生労働省において生活扶助基準 の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい」(乙共6・8頁)とあるとおり、基準部会においても、平成25年報告書において示した展開のための指数(相対的な較差)の適正化に加えて、さ らに生活扶助基準の改定をするか否か、改定の指標としていかなる経済指標を用いるかについて、政府に委ねる旨の見解を明らかにしていた。 e 小括以上のとおり、デフレ調整の内容はそれまでの生活扶助基準の改定 に当たっての基本的な考え方や専門機関による検証の考え方と齟齬す るものではなかった。 (エ) 社会保障制度改革推進法の附則により、生活扶助基準について必要な見直しを早急に行うことが求められていたことさらに、平成24年6月、社会保障制度改革推進法案が、民主党、自民党及び公明党の三党の合意に基づき国会に提出され、平成24年 8月に同法(平成24年法律第64号)が成立したところ、その附則2条1号には、政府は、「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を受けている世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に行うこと」と明記されていた(乙共6・2頁)。当時の社会 の附則2条1号には、政府は、「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を受けている世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に行うこと」と明記されていた(乙共6・2頁)。当時の社会経済情勢に照らせば、「生活扶助(中略)の給付水準の適正化」とは、 減額改定をいうものと解するのが当然であるといえ、生活扶助基準について必要な見直しを早急に行うことが厚生労働大臣には求められていた。生活保護については予算措置を伴うことから、保護基準の改定内容を平成25年度予算案に盛り込むための時間的制約もあった*11。 (オ) 基準部会等の専門機関に意見を求めなければ保護基準の改定が行えな いものではないこと他方で、保護基準の改定は、厚生労働大臣の広範な裁量権に基づく専門技術的かつ政策的判断に委ねられており、厚生労働大臣が保護基準を改定するに当たり、基準部会等の専門機関に諮問し又はその意見を求めることなどを定める法令上の規定はなく、法及び関連法規には、 保護基準の改定に当たり専門機関からの意見聴取が必要である旨の規 *11 各年度の政府予算案は、通常、前年12月に閣議決定され、翌年1月の通常国会に提出される。平成25年度予算案は、平成25年1月29日に閣議決定され、国会審議を経て、同年5月15日に成立した。平成25年告示がされたのはその翌日(同月16日)である。 定は見当たらない。そのため、そもそも、基準部会等の専門機関に意見を求めなければ保護基準の改定が行えないものではなかった。 (カ) 厚生労働大臣が行おうとする保護基準の改定の当否等について意見を述べることは、基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではないことさらに、基準部会は、厚生労働大臣の諮問機関であ のではなかった。 (カ) 厚生労働大臣が行おうとする保護基準の改定の当否等について意見を述べることは、基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではないことさらに、基準部会は、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議 会に置かれる常設の部会であるが(厚生労働省設置法7条、社会保障審議会令6条1項)、その設置の趣旨及び審議事項は、「生活保護基準の定期的な評価・検証」である(乙共22)。すなわち、基準部会の設置の趣旨及び審議事項は、飽くまで、現在の生活扶助基準の定期的な評価及び検証であって、厚生労働大臣が行おうとする保護基準の 改定の当否等について審議検討することは、基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではなかった。 また、基準部会の委員は飽くまでも保護基準の評価・検証のために選任された各種学問分野の専門家であって、基準部会は、個々の専門的知見を活用した多角的視点に基づいた各種分析方法の提案、情報収 集、分析や提言を行うものである。経済的・社会的条件を通じた政策的判断をすることは基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではない。つまり、基準部会は、厚生労働大臣の判断における考慮要素の一つとして、専門的知見を集約して得られた事実の説明やその事実に係る分析、評価に関する意見を提供することが求められるものの、それを踏まえ た政策的判断を求められているものではない。 この点は、平成24年10月5日の第10回基準部会において、駒村部会長の「この部会の役割というのは検証するということでございますので、それをどう反映させるかというのは政策判断であろうと思います」との発言に端的に表れている(乙共23・13頁)。また、 平成25年1月16日の第12回基準部会において、山田委員が、 「この後にこの報告書(引用者注:平成25年報告 と思います」との発言に端的に表れている(乙共23・13頁)。また、 平成25年1月16日の第12回基準部会において、山田委員が、 「この後にこの報告書(引用者注:平成25年報告書の意。)を考慮していただきながら具体的な政策のプロセスに入っていくと思うのですけれども」との発言も同趣旨と理解できる(乙共25・30頁)。 そのため、仮にデフレ調整の当否等について専門家からの意見を聴取しようとすれば、いかなる専門家に対して意見を求めるか(専門家 個人にするか合議性の専門機関にするか、仮に合議性の専門機関にするとした場合に基準部会にするか新たな機関を立ち上げるかなどを含む。)についての検討が必要となり、専門家による検討に必要な期間も併せれば、専門家からの意見聴取には相当の期間を要することが見込まれたといえる。 (キ) まとめ以上のとおり、平成20年以降の社会経済情勢等に照らし生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)を改定する必要性が認められたものの、平成25年検証においてはその検証が行われておらず、基準部会による検証結果を踏まえた生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の改定は できなかった。そこで、厚生労働大臣は、自らの専門技術的知見を踏まえてデフレ調整を行うという判断をしたものであるところ、このデフレ調整の内容は、生活扶助基準の改定に当たっての基本的な考え方に立脚したものであり、また、それまでの専門機関による検証の考え方と齟齬するものでもない。そして、平成24年8月に成立した社会保障制度改 革推進法の附則において、生活扶助基準について必要な見直しを早急に行うことが厚生労働大臣には求められていたところ、もとより保護基準の改定に当たり専門機関から意見聴取を求める旨の法令上の規定はない上、厚生労 の附則において、生活扶助基準について必要な見直しを早急に行うことが厚生労働大臣には求められていたところ、もとより保護基準の改定に当たり専門機関から意見聴取を求める旨の法令上の規定はない上、厚生労働大臣が行おうとするデフレ調整の当否等について審議検討することは基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではなかった。 厚生労働大臣は、以上のような事実関係等に照らし、デフレ調整に ついて基準部会等の専門機関に意見を求めなかったものである。 キ本件保護基準改定におけるデフレ調整の実施以上のとおり、厚生労働大臣は、平成20年以降の物価変動率を用いて生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の適正化を図ることとし、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率(マイナス 4.78%)を算定の上、当該数値相当分を減額することが平成20年以降の経済情勢による同世帯と一般国民との間の不均衡を是正するのに相当であると評価・判断して、本件保護基準改定におけるデフレ調整(生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の見直し)を行うに至ったものである。 3 激変緩和措置厚生労働大臣は、本件保護基準改定における激変緩和措置として、①ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによって大幅な減額となる世帯に配慮する観点から、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによる減額幅の上限を10%とした上で、②その結果の反映を3年にわたる期間で段階的に実施するこ ととした。 第4 本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落が認められないこと 1 本件保護基準改定の適法性に関する判断枠組み(再掲)前記第2で述べたとおり、保護基準改定に係る最高裁判決を踏まえると、 ゆがみ調整及びデフレ調整の適法性に関しては が認められないこと 1 本件保護基準改定の適法性に関する判断枠組み(再掲)前記第2で述べたとおり、保護基準改定に係る最高裁判決を踏まえると、 ゆがみ調整及びデフレ調整の適法性に関しては、厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められるか否かという判断枠組みにより判断されるべきであり、具体的には、論証過程の追試的検証として、被控訴人が説明するゆがみ調整及びデフレ調整に係る厚 生労働大臣の判断過程について、それが一応納得できるものか否か、現に用 いられた統計等の客観的な数値等や専門的知見を前提に、これらと同大臣の判断過程との間に論理の飛躍や連関を欠くところがあるか否かという観点から、その適否が判断されることになる。そして、厚生労働大臣が専門機関の審議検討を経ることなく判断した場合には、その判断の前提となる課題に関する事実認識やそれに対する評価、対策の課題解決手段としての適合性に一 定の合理性が認められれば、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないというべきである。また、専門機関による審議検討を経て判断した場合であっても、厚生労働大臣の判断が、上記審議検討に係る結果ないし意見等と積極的に抵触するものであることが明らかであり、かつ、厚生労働大臣の判断過程について一応の合理的理由すら認められないような場合でない限 り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないというべきである。 また、激変緩和措置の適法性に関しては、正に政策的判断による広範な裁量が認められる場面であり、被保護者の期待ないし信頼の程度も勘案して(ただし、老齢加算についての「保護基準によって具体化されていたその期待的利益 和措置の適法性に関しては、正に政策的判断による広範な裁量が認められる場面であり、被保護者の期待ないし信頼の程度も勘案して(ただし、老齢加算についての「保護基準によって具体化されていたその期待的利益」と同様の期待あるいは信頼を観念することはできないことは前記第1の2(3) で述べたとおりである。)、保護基準の改定等に当たって激変緩和措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした厚生労働大臣の判断の過程及び手続に著しい過誤、欠落があるか、当該判断が明らかに合理性を欠くと認められる場合に限り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとされるべきである。 2 本件保護基準改定に当たり考慮すべきであった高齢者の健康影響を検討していないことが違法であるとする控訴人らの主張が失当であること本件保護基準改定に当たり考慮すべきであった高齢者の健康影響を検討していないことが違法であるとする控訴人らの主張は、本件保護基準改定の適法性の判断に当たっては、判断過程の合理性ないし過誤・欠落の審査を行う ものではなく、考慮要素に着目した審査を行うべきとの前提に立つものと解 されるが、これは一連の老齢加算最高裁判決と相容れないものである。控訴人らの主張は、厚生労働大臣の判断過程に過誤・欠落があることを追試的に検証し、それが一応納得できるものであるかどうかについて指摘するものではなく、控訴人らが自ら考える要考慮事項(ここでは「高齢者への健康影響」)を厚生労働大臣が考慮していないことをもって、厚生労働大臣の生活 扶助基準改定に係る判断過程に裁量権の範囲の逸脱、濫用がある旨をいうものにすぎないであって失当である。 3 ゆがみ調整に係る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえないこと 臣の生活 扶助基準改定に係る判断過程に裁量権の範囲の逸脱、濫用がある旨をいうものにすぎないであって失当である。 3 ゆがみ調整に係る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえないこと(1) 前記第3の1のとおり、ゆがみ調整は、基準部会の平成25年検証の結果 を踏まえ、生活扶助基準の「展開のための指数」(相対的な較差)の適正化を図ったものであるところ、基準部会は、保護基準につき専門的かつ客観的に評価、検証を行うため、法令に基づき設置された機関であり、学識経験者によって構成されていることから、その検証結果は基本的に信頼性が高いものと考えられた。 このような基準部会による平成25年検証は、年齢階級別、世帯人員別、級地別の「展開のための指数」(相対的な較差)について、平成19年検証においても是正の必要が指摘されていたことなどを踏まえ、一般低所得世帯の消費構造を手掛かりとして、それを生活扶助基準の展開部分に反映させることによって、世帯構成などが異なる生活保護受給者間において実 質的な給付水準の均衡を図る観点から行われたものであり、その検証結果を踏まえて、生活扶助基準の展開に関する指数を見直す必要性は高かった。 そして、基準部会は、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態の違いを把握するに当たり年収階級第1・十分位世帯を用いたが、前記のような生活保護受給世帯間の公平が図られているかを検証す るという平成25年検証の目的に照らすと、その手掛かりとする一般低所 得世帯としては、生活保護受給世帯と消費構造が近い世帯とするのが相当と考えられ、そのような観点からみると、基準部会が生活保護受給世帯に近い消費構造を持つものとして年収階級第1・十分位世帯を用いることに相応の根拠があった。 世帯と消費構造が近い世帯とするのが相当と考えられ、そのような観点からみると、基準部会が生活保護受給世帯に近い消費構造を持つものとして年収階級第1・十分位世帯を用いることに相応の根拠があった。 さらに、平成25年改定の検証の手法等をみても、過誤、欠落等をうか がわせる事情は見当たらなかった。 以上を踏まえて、厚生労働大臣は、基準部会の平成25年検証の結果に基づき、専門家が検討した分析手法に基づいて収集された消費実態に関する事実関係を前提に、専門家の示した方向性に沿う形で、生活扶助基準の「展開のための指数」(相対的な較差)について適正化を図ることとした ものであり、このような同大臣の判断過程に関して被控訴人が掲げる理由に論理の飛躍や連関を欠くところがあるとはいえない。したがって、本件保護基準改定におけるゆがみ調整に係る厚生労働大臣の判断過程に統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くところがあるとはいえず、上記判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえ ない。 (2) また、前記第3の1(2)ウのとおり、厚生労働大臣は、ゆがみ調整の前提となる平成25年検証における「展開のための指数」(相対的な較差)の分析手法の持つ統計上の限界が指摘されていたことや平成25年検証の結果等を前提に更なる評価、検証が行われることが予定されていたことなど に加えて、平成25年検証の結果をそのまま反映させた場合、子どもがいる世帯への影響が大きくなることが見込まれたことから、「生活扶助基準の展開部分の適正化」というゆがみ調整の本質的部分を維持しつつ、子どものいる世帯への配慮(貧困の世代間連鎖の防止)及び次回の検証を見据えた措置として、平成25年検証の結果の反映の比率を一律2分の1とし た。 み調整の本質的部分を維持しつつ、子どものいる世帯への配慮(貧困の世代間連鎖の防止)及び次回の検証を見据えた措置として、平成25年検証の結果の反映の比率を一律2分の1とし た。 以上のような2分の1処理に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に著しい過誤、欠落がある、あるいは当該判断が明らかに合理性を欠くとは認められず、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるとはいえない。 4 デフレ調整に係る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえないこと (1) 前記第3の2において詳述したとおり、平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって、一般国民の生活水準が下落する一方、生活扶助基準の減額改定が行われずに据え置かれてきた結果、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)と一般国民の生活水準との間の均衡が崩れていた。本件保護基準改定に際し、当時の最新の全国消費実態調査のデータであ る平成21年全消調査によれば、平成19年検証等において生活扶助基準額と対比すべきとされた一般低所得世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額は、夫婦子一人世帯(生活扶助基準の設定に当たり基軸となる標準世帯が含まれる世帯である。)の生活扶助基準額を約12.6%下回るものとなっており、かつ、平成21年以降本件保護基準改定時までに同支出額が増加す る社会経済情勢にはなかったといえることからすると、生活保護法8条2項の規定を踏まえ、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)を引き下げる必要があることは明らかであった。ところが、基準部会においては、「展開のための指数」(相対的な較差)に係る検証が行われたが、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の検証は行われなかった。そこで、厚生労働大臣 は、基準部会の平成25年報告書を踏ま いては、「展開のための指数」(相対的な較差)に係る検証が行われたが、生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)の検証は行われなかった。そこで、厚生労働大臣 は、基準部会の平成25年報告書を踏まえたゆがみ調整を行った上、平成20年以降の経済情勢により生じた生活扶助基準の「水準」(絶対的な高さ)と一般国民の生活水準との間の不均衡の是正を図りつつ、改定の減額幅が必要以上に大きくなることがないようにするため、消費実態そのものではなく、消費の構成要素の一つである物価を指標とし、同年以降の物価変動を生活扶 助基準の水準に反映させるデフレ調整を行うこととしたものであって、デフ レ調整を実施することとした判断の根拠となる社会経済情勢等の評価に誤りはなく、これを踏まえてデフレ調整を実施するとした判断には合理性が認められる。 (2) また、デフレ調整を実施するに当たり設定した生活扶助相当CPIは、平成20年以降の物価変動を生活扶助基準の水準に反映させることによりそ の適正化を図るというデフレ調整の目的に即したものとなっていた上、これまでの生活扶助基準の改定手法との整合性や専門機関による検証手法等を踏まえたものであり、恣意的な判断が介在しないように配慮されている。 その結果得られた平成20年から平成23年までの物価変動率(マイナス4.78%)をもってデフレ調整における改定率とした判断もまた当時の 社会経済情勢等に照らし合理的かつ相当なものである。 (3) したがって、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断過程に統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところがあるとはいえず、上記判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえない。 5 平成29年検証の結果等によっても本件保護基準改定におけるデフレ調整に の合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところがあるとはいえず、上記判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえない。 5 平成29年検証の結果等によっても本件保護基準改定におけるデフレ調整に 係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落が認められないことが裏付けられていること(1) 本件保護基準改定後に実施された平成29年検証では、平成26年度以降の経済指標(消費、物価及び賃金)の変化を生活扶助基準の水準に反映させるべきかについても議論が行われたが、その際の議論の基礎とされた統計資 料(乙共68・10及び11頁)によれば、本件保護基準改定におけるデフレ調整において検討対象とされた期間(平成20年から平成23年までの間)における経済指標については、下表のとおり、全ての変化率がマイナスを示しており、収入及び生活維持に必要な金額は、実質的に減少しているものと評価される状況にあった。 経済指標変化率(%)消費 二人以上世帯の消費支出(全体)-4.7二人以上世帯の消費支出(第1・十分位)-5.0二人以上世帯の生活扶助相当支出(全体)-5.2二人以上世帯の生活扶助相当支出(第1・十分位)-5.2物価 消費者物価指数-2.3生活扶助相当CPI(ウエイト参照時点は平成27年)*12 -4.4 賃金 一般労働者(事業者規模5人以上)-2.6パートタイム労働者(同上)-0.2(2) また、平成29年検証では、本件保護基準改定後の生活扶助基準の水準が妥当なものか否かについても評価・検証が行われたところ、そこでは、本件保護基準改定後の生活扶助基準の水準が一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の消費実態とおおむね均衡す 準改定後の生活扶助基準の水準が妥当なものか否かについても評価・検証が行われたところ、そこでは、本件保護基準改定後の生活扶助基準の水準が一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の消費実態とおおむね均衡することが確認されたと評価されており(乙共80・17、23頁)、統計等の客観的な数値等との合理的関連性 や専門的知見との整合性に欠けるところはない。 (3) そして、前記3で述べたとおり、平成16年以降、生活扶助基準額が基本的に据え置かれてきた状況下において、全国消費実態調査によれば、夫婦子1人世帯(年収階級第1・十分位)の生活扶助相当支出額が平成16年から平成21年にかけて約11.6%も下落していたことや、本件保護基 準改定後の平成26年全国消費実態調査においても、夫婦子1人世帯(年収階級第1・十分位)の生活扶助相当支出額が平成16年に比べて約8. 2%低下していたことに照らせば、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣 *12 デフレ調整率(マイナス4.78%)と異なる理由は、平成22年をウエイト参照時点とせず、機械的に消費者物価指数に基準を合わせて平成27年をウエイト参照時点としたことによる。 の判断について、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がおよそ認められないことがより一層明らかとなる。 (4) 以上のとおり、平成29年検証の結果等によっても、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断過程に過誤、欠落等がなかったことが裏付けられているということができる。 第5 結語以上のとおり、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとは認められない。よって、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認めら のとおり、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとは認められない。よって、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められないから、本件保護基準改定は適法である。 以上

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