令和2(行コ)209 元号制定差止請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和3年9月30日 東京高等裁判所
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判決文本文4,198 文字)

1令和3年9月30日判決言渡令和2年(行コ)第209号 元号制定差止請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成31年(行ウ)第145号) 主 文51 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由第1 控訴の趣旨1 原判決を取り消す。 102 被控訴人は,元号を制定してはならない。 3 元号を「令和」に改める政令(平成31年政令第143号)が無効であることを確認する。 4 法務省民事局長が法務局長・地方法務局長に宛てて発した通達(昭和54年6月9日付け法務省民二第3313号「元号法の施行に伴う戸籍事務の取扱いにつ15いて」)が無効であることを確認する。 第2 事案の概要(以下,理由説示部分を含め,原判決の略称をそのまま用いる。)1 本件は,控訴人が,元号の制定は憲法13条が保障する人格権を侵害するなどと主張して,行政事件訴訟法3条7項の差止めの訴えとして元号制定の差止めを求めるとともに,同条4項の無効等確認の訴えとして,元号を「令和」に改める20政令(平成31年政令第143号。本件政令)及び元号法の施行に伴う戸籍事務の取扱いについて定めた通達(昭和54年6月9日付け法務省民二第3313号通達。本件通達)の無効確認を求めた事案である。 原審は,本件訴えを却下した。そこで,控訴人が控訴した。 2 前提事実及び当事者の主張は,原判決を次のとおり補正し,後記3のとおり当25審における控訴人の主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第2 2の2に記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決2頁14行目の「連続している時間」を「連続している時間の意識」と改める。 原判決4頁5 ほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第2 2の2に記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決2頁14行目の「連続している時間」を「連続している時間の意識」と改める。 原判決4頁5行目の次に改行の上,次のとおり加える。 「 なお,控訴人は,本件政令のみを差止めの対象としているのではなく,今5後の元号を定める一切の政令の制定行為の差止めを求めるものである。」同4頁11行目の次に改行の上,次のとおり加える。 「 なお,本件政令に限らず,今後,元号法に基づき元号を定める政令が新たに制定されたとしても,それにより国民の法律上の地位に対して直接的具体的な影響を及ぼすものではなく,特定の者の具体的な権利義務ないし法律上10の利益に直接的な影響を及ぼすものでもないから,それらの政令の制定行為に処分性はなく,差止めの訴えとして不適法である。」3 当審における控訴人の主張行政庁の行為が一般的な規範の定立,すなわち立法行為としての性質を有するものであったとしても,それが同時に特定の者の具体的な権利義務ないし法15律上の利益に直接的な影響を及ぼす場合には,上記の行政庁の行為には処分性(行政事件訴訟法3条2項)が認められるべきである。そうすると,本件政令の制定及び本件通達の発出が,直接国民(控訴人)の権利義務に重大な影響を及ぼしているものである以上,これらが行政処分に当たることは明らかである。 元号法による元号の制定は,憲法13条に違反する。すなわち,天皇が交代20するごとに国が元号を変えるということは,控訴人ら国民が有している「連続していた時間の意識」を突然断ち切られるということである。世界史の中における連続した時間を生きている控訴人のような国民にとって,改元によりもたらされるこのような時間の意識の切断は耐え している「連続していた時間の意識」を突然断ち切られるということである。世界史の中における連続した時間を生きている控訴人のような国民にとって,改元によりもたらされるこのような時間の意識の切断は耐え難いものであり,元号の制定は,憲法13条が保障する人格権を侵害するものである。 25昭和54年3月16日に開かれた衆議院本会議における国務大臣三原朝雄の 3答弁(乙5)をみれば,国等の公的な機関において,元号を使用することが実質上義務付けられていることが明らかであり,現に,今日に至るまでそのように実施されている。そして,同大臣は,国民に元号の使用を強く要請しているのであって,その何よりの証拠が,国民は出生から死亡に至る戸籍上の各種の届出において,西暦を用いて届出をしても,受理はされるが戸籍上の記載は全5て元号に変えられてしまうことである。これは,国が元号の使用を国民に強制しているのと何ら変わりはない。 被控訴人は,国民は,元号の使用を強制されるものではなく,元号と西暦を自由に使い分けることができるから,本件政令の制定に処分性はないと主張するが,天皇の即位の時点を年の出発点とする元号と紀元である西暦との間には10本質的に互換性がなく,このように互換性のない元号と西暦を転換しなければならないということを国民が強制されていることが根本的な問題であって,これを踏まえれば,本件政令の制定は行政処分といえる。 第3 当裁判所の判断1 当裁判所も,本件訴えは不適法であると判断する。その理由は,次項において15当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第3の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決6頁19行目から20行目にかけての「連続している時間」を「連続して 対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第3の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決6頁19行目から20行目にかけての「連続している時間」を「連続している時間の意識」と,7頁9行目の「本件差止めの訴えが,」を「控訴人は,本件差止めの訴えは,」と,11行目の「求めるものと解したとしても,」を20「求めるものであるとするが,」とそれぞれ改める。 2 当審における控訴人の主張について控訴人は,一般的な規範の定立としての性質を有する行為であっても,それが同時に特定の者の具体的な権利義務ないし法律上の利益に直接的な影響を及ぼす場合には処分性が認められるべきであるから,本件政令の制定及び本件通25達の発出はいずれも行政処分に当たる旨主張する。 4しかしながら,本件政令が特定の者を対象としているものでないことは明らかであるし,本件政令の制定及び本件通達の発出は,いずれも直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものではなく,これらが行政処分に当たらないことは,引用に係る原判決の「事実及び理由」欄の第3の1ないし3で説示するとおりである。 5したがって,控訴人の主張は採用することができない。 控訴人は,元号が変わることにより国民の有している「連続している時間の意識」は切断され,これにより憲法13条が保障する人格権が侵害されると主張する。 しかしながら,元号は年の表示方法の一つにすぎず,元号が新たに制定され10たからといって,国民の権利や法律上保護された利益に何らかの影響があるものではなく,法律上保護された利益の侵害があるとはいえないことは,引用に係る原判決の「事実及び理由」欄の第3の2で説示するとおりである。したがって,控訴人の主張 護された利益に何らかの影響があるものではなく,法律上保護された利益の侵害があるとはいえないことは,引用に係る原判決の「事実及び理由」欄の第3の2で説示するとおりである。したがって,控訴人の主張は採用することができない。 控訴人は,衆議院本会議における国務大臣三原朝雄の答弁(乙5)をみれば,15国等の公的な機関において元号を使用することが実質上義務付けられており,また,同大臣は,国民に元号の使用を強く要請しているのであって,そのために,国が元号の使用を国民に強制しているのと何ら変わりはないことになっている旨主張する。 しかしながら,前記の国務大臣の答弁は,法律案(元号法)が一般国民に元20号の使用を義務付けるものではないとした上で,一般国民が公的機関に書類等を提出する際には元号の使用につき協力願いたい旨を述べたものにとどまり(乙5),これをもって国民に対して元号の使用を強制したものとみることはできない。また,本件通達によれば,西暦を用いた届出等がされた場合でも,市町村長はこれをそのまま受理するものとされ,受理した場合において,これ25を戸籍に記載する際には元号をもって記載するものとされるところ(乙1), 5このような取扱がされることをもって,国民が元号の使用を強制されているのと変わりはないなどということはできないし,また,かかる取扱を定めた本件通達の発出が直接国民の権利義務に影響を及ぼすものといえないことは,引用に係る原判決の「事実及び理由」欄の第3の3で説示するとおりである。 したがって,控訴人の主張は採用することができない。 5控訴人は,元号と西暦との間には本質的に互換性がなく,このように互換性のない元号と西暦を転換しなければならないということを国民が強制されているから,本件政令の制定は行政処分といえ きない。 5控訴人は,元号と西暦との間には本質的に互換性がなく,このように互換性のない元号と西暦を転換しなければならないということを国民が強制されているから,本件政令の制定は行政処分といえる旨主張する。 しかしながら,上記の主張が控訴人の独自の見解であって,本件政令によって国民が元号の使用を強制されることとなるものでないことは,引用に係る原10判決の「事実及び理由」欄の第3の2で説示するとおりである。したがって,控訴人の主張は採用することができない。 3 よって,本件訴えを却下した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第14民事部15 裁判長裁判官 石 井 浩 裁判官 塚 原 聡20 裁判官 飯 畑 勝 之 25

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