令和5(う)479 恐喝未遂、威力業務妨害、恐喝

裁判年月日・裁判所
令和7年11月18日 大阪高等裁判所
ファイル
hanrei-pdf-95238.txt

判決文本文60,916 文字)

- 1 - 主文 原判決中、被告人A1に関する部分を破棄する。 被告人A1を懲役3 年に処する。 被告人A1に対し、原審における未決勾留日数中270日をその刑に算入する。 被告人A1に対し、この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。 本件公訴事実中、恐喝の点(平成31 年4 月26 日付け起訴状記載の公訴事実)について、被告人A1は無罪。 その余の被告人らの本件各控訴を棄却する。 理由 本件各控訴の趣意及びこれに対する答弁は、別紙2・書面目録記載の各書面を引用する。論旨は、理由の不備ないし食い違い、訴訟手続の法令違反、事実誤認及び法令適用の誤りの各主張である。 (事案概要等)第1 各事件の概要原判決が認定した「罪となるべき事実」の要旨は、次のとおりである(各事件の呼称は原判決の表記により、各被告人の氏名、本判決本文中の関係者の氏名、団体等の名称及び略語等は、別紙3・略称等一覧表の記載による。添付の各別表は、原判示の各事実に係るコンプラ活動等の行為(別表1 は原判決が「補足説明」第3 の1⑶で認定した同活動、別表2 ないし5 は原判示第2 ないし第5 記載の各行為)を要約摘示したものである。)。 1 E事件(原判示第1)被告人A1は、B1と共謀の上、かねてよりEが生コンを納入する工事現場でO支部関係者らが軽微な不備の指摘を繰り返すなどの嫌がらせをした結果、F1が同支部を畏怖していることに乗じ、同社から解決金名目で現金を脅し取ろうと考え、平成27年5月上旬頃、F5らを介して、滋賀県内にいたF1に現金1000万円の支払と引換え - 2 -に前記嫌がらせを中止する旨伝えた上、同月21日、大阪市a区所在のホテル1階メインラウンジにおいて、F1に、B1が「今回E生コンがこういうこと たF1に現金1000万円の支払と引換え - 2 -に前記嫌がらせを中止する旨伝えた上、同月21日、大阪市a区所在のホテル1階メインラウンジにおいて、F1に、B1が「今回E生コンがこういうことになった理由は分かるか」などと告げ、被告人A1が高圧的口調で道路が汚れているとかステッカーの位置が悪いなどと指摘し、前記要求に応じなければ今後もEが生コンを搬入する工事現場の工事を繰り返し妨害する旨を暗に示してF1を怖がらせ、同日同所において、F1から現金1000万円を脅し取った。 2 G事件(原判示第2)被告人A1、被告人A2、被告人A3及び被告人A4は、Gの業務を妨害しようと企て、B2、B3、B4、B5、C1、C2、C3及びO支部関係者である氏名不詳者らと共謀の上、①別表2番号1の記載の日及び場所において、「行為者」欄記載の者(以下、各別表番号の「行為者」欄記載の者を単に「行為者」という。)が行為欄記載のとおり告げて軽微な不備の指摘を繰り返し、H1らに対応を余儀なくさせるなどしてその業務を中断させるとともに、打設途中の生コンを廃棄して新たに生コンを追加納入せざるを得ないようにさせ、②同表番号2記載の日及び場所において、行為者が、H2に行為欄記載のとおりビラを手渡して、これを配布する旨の気勢を示し、H4に同欄記載のとおり告げ、軽微な不備を指摘して、H2らに対応を余儀なくさせるなどし、その業務を中断させて、作業工程を変更せざるを得ないようにさせ、威力を用いて人の業務を妨害した。 3 I事件(原判示第3)被告人A1、被告人A2、被告人A3は、I大阪支店が施工するQ4第2期工事に関し、同工事に使用する生コンの供給契約担当者を脅迫し、同支店から生コン調達の委託を受けていたQ7商事大阪支店と、O支部と提携関係にあるP2協組の登録販売店・Q1の 大阪支店が施工するQ4第2期工事に関し、同工事に使用する生コンの供給契約担当者を脅迫し、同支店から生コン調達の委託を受けていたQ7商事大阪支店と、O支部と提携関係にあるP2協組の登録販売店・Q1の間で同契約を締結させ、同社に財産上不法な利益を得させようと考え、B1、B2、C1、C4、C5、C2、C6、B6、B3、B7、B8、O支部組合員(以下、単に「組合員」ともいう。)のB4、B9、B10、B19、B11、B12、B13、B14、B15、B16、B17及びB5並びに同支部関係者である氏名不詳者らと共謀の上(ただし、B7、B8、B14、B15、B16及びB17は威力業務妨害の限度で共謀)、①別表3番号1記載の日及び場所において、他社と契約する予定である旨述べたJ1に、C5が、 - 3 -大変なことになるなどと告げ、②同表番号2記載の各日及び場所において、行為者が行為欄記載のとおり告げるなどして軽微な不備に因縁を付け、J3らに対応を余儀なくさせて、その間業務を中断させる嫌がらせを繰り返し、③同表番号3記載の日及び場所において、C6が電話でJ1に行為欄記載の生コン供給契約の締結等を要求し、④同表番号4記載の日及び場所において、C5がJ1に行為欄記載のとおり告げ、⑤同表番号5記載の各日及び場所において、行為者がJ4らに行為欄記載のとおり告げて、軽微な不備に因縁を付け、⑥同表番号6記載の各日及び場所において、行為者が行為欄記載のとおり告げ、軽微な不備に因縁を付けて、J6らに対応を余儀なくさせ、その間業務を中断させる嫌がらせを繰り返し、⑦同表番号7記載の各日及び場所において、行為者が通行人にI等の信用を害する内容のビラを配布し、⑧同表番号8記載の日及び場所において、B3がJ7に電話で行為欄記載のとおり告げ、工事現場へのポンプ車供給を中止させて 載の各日及び場所において、行為者が通行人にI等の信用を害する内容のビラを配布し、⑧同表番号8記載の日及び場所において、B3がJ7に電話で行為欄記載のとおり告げ、工事現場へのポンプ車供給を中止させて工事進行を妨害し、⑨同表番号9記載の日及び場所において、B2がJ8に、行為欄記載のとおりビラを示したり告げたりし、これら一連の行為により、前記生コン供給契約の決定権を有するJ5らに対し、同契約を締結しなければ、今後も各工事現場における工事等を繰り返し妨害するとともに、I等の信用に害を加える旨気勢を示して脅迫したが、同人らが同契約締結に応じず、その目的を遂げなかった。 4 K事件(原判示第4)被告人A1、被告人A4及び被告人A5は、K大阪支店の業務を妨害しようと企て、B19、B4、B11、B18、B5及びO支部関係者である氏名不詳者らと共謀の上、①別表4番号1記載の日及び場所において、行為者が行為欄記載のとおり告げ、軽微な不備に因縁を付けて、L1らに対応を余儀なくさせ、その間業務を中断させる嫌がらせをし、②同表番号2記載の日及び場所において、行為者がL2に、行為欄記載のK等の信用を害する内容が記載されたビラを渡し、同欄のとおり告げ、③同表番号3記載の日及び場所において、行為者が、Q10(前記①の場所欄記載の店舗新築工事施主)代表取締役方等に同②記載のビラを投かんし、同人らからL3らに対し、Q10役員への同ビラ投かんの事実を伝達させ、これら一連の行為により、同新築工事に関してP1協組未加入のQ8との生コン供給契約を継続すれば、今後も同工事現場における工事等の妨害行為及びK等の信用を害する行為を繰り返す旨の気勢を示し、K大阪支店の同工事の - 4 -遂行を困難にさせ、威力を用いて人の業務を妨害した。 5 M事件(原判示第5)被告人A1 事等の妨害行為及びK等の信用を害する行為を繰り返す旨の気勢を示し、K大阪支店の同工事の - 4 -遂行を困難にさせ、威力を用いて人の業務を妨害した。 5 M事件(原判示第5)被告人A1及び被告人A3は、M電建の業務を妨害しようと企て、B19、B4、B11及びB5と共謀の上、①別表5番号1記載の日及び場所において、行為者が行為欄記載のとおり告げて軽微な不備に因縁を付け、N3に対応を余儀なくさせて、その間業務を中断させ、②同表番号2記載の日及び場所において、行為者が行為欄記載のビラをMd従業員らに配布し、N1らからN2らに同ビラ配布の事実を伝達させ、これら一連の行為により、同表番号1の場所欄記載の工事に関してP1協組未加入のQ8との生コン供給契約を継続すれば、今後も同工事現場における工事等の妨害行為及びM電建等の信用を害する行為を繰り返す旨の気勢を示し、M電建の同工事の遂行を困難にさせ、威力を用いて人の業務を妨害した。 第2 審理等の概要原審では、概要、①E事件につき、平成27年当時、O支部組合員らがEの建設工事現場でコンプラ活動(O支部ないしその地域ブロックの執行部メンバーであった被告人らが、意思疎通の上、同支部組織の活動として、工事現場の不備を指摘したりその旨を記載したビラを配布したりした活動)をしていたこと、F1がコンプラ活動をやめさせるため、業界有力者らを介してB1に面会を求めたこと、平成27年5月21日、被告人A1がB1と共にホテルでF1と面会し、被告人A1が離席した際、B1がF1から現金1000万円の交付を受けたことは争いがなく、争点は、脅迫行為(害悪の告知)の有無及び現金交付の趣旨と共謀の有無とされた。また、②G、I、K及びM各事件について、コンプラ活動が実施されたこと自体はおおむね争いがなく、共通する主な争点 いがなく、争点は、脅迫行為(害悪の告知)の有無及び現金交付の趣旨と共謀の有無とされた。また、②G、I、K及びM各事件について、コンプラ活動が実施されたこと自体はおおむね争いがなく、共通する主な争点は、㋐前提となる事実関係に関し、コンプラ活動の目的とその行為態様(評価)、㋑㋐を踏まえた実行行為該当性、故意及び共謀の有無、憲法28条・労働組合法1条2項による刑事免責該当事由の有無とされ、さらに、③全事件につき公訴権濫用の有無であると確認された。 原判決は、前記の各争点につき、原審弁護人(当審と同じ。以下、単に「弁護人」という。)の主張を排斥して、原判示のとおり各事実を認め、被告人A1を懲役4年(求刑・懲役8 年)に、被告人A2を懲役2年6月(4 年間刑執行猶予。求刑・懲役4 - 5 -年)に、被告人A3を懲役2年(3 年間刑執行猶予。求刑・懲役3 年6 月)に、被告人A4を懲役2年(3 年間刑執行猶予。求刑・懲役2 年6 月)に、被告人A5を懲役1年(3 年間刑執行猶予。求刑・懲役1 年6 月)にそれぞれ処した(確定した原審相被告人B2の刑は、懲役3 年・5 年間刑執行猶予)。 第3 本判決の構成以下では、原判決の「補足説明」の項の構成に沿い、E事件(恐喝)、I事件(恐喝未遂)、G、K及びMの各事件(威力業務妨害)の順で検討する。 (E事件(原判示第1)に関する控訴趣意について)第1 控訴趣意論旨は、要するに、①原判示第1の事実を認めた原判決には、恐喝の手段としての脅迫の事実を示していない理由の不備ないし食い違いがある、②原審の訴訟手続には、伝聞証言を実質的に事実認定に採用した法令違反がある、③E事件におけるコンプラ活動は脅迫行為に該当しないし、F1が同活動を畏怖し、被告人A1がF1の畏怖に乗じた事実はなく、面会前やその 訟手続には、伝聞証言を実質的に事実認定に採用した法令違反がある、③E事件におけるコンプラ活動は脅迫行為に該当しないし、F1が同活動を畏怖し、被告人A1がF1の畏怖に乗じた事実はなく、面会前やその当時に現金交付を要求したり、被告人A1がB1と共謀したりした事実もなかったのに、これらを認めた点において事実誤認ないし法令適用の誤りがあるとし、いずれも判決に影響を及ぼすことが明らかであると主張する。 以下、E事件の事案及び主張の内容に鑑み、②、③、①の順で検討する。 第2 原判決の判断概要 1 原判決は、前提事実として、O支部の性格、活動単位、各種の機関等の内容、同支部における各被告人の立場・役割等、共犯者らの地位・役割等のほか、協同組合及びO支部にとって、協同組合に加入していない「アウト業者」の対策(「アウトサイダー」、「員外社」等といわれる生コン製造販売業者への対策(アウト対策)。なお、協同組合員の業者は「イン」と呼ばれる。)は重要な課題であったこと、O支部は、生コンが納入される建設工事現場で諸法令や品質管理基準等の遵守事項を監視し、その是正を求めるコンプライアンス啓蒙活動(コンプラ活動)やビラ配布等の広報宣伝活動を行っていたが、協同組合と提携し、アウト対策への協力の一環として、ターゲット企業として選んだ特定のアウト業者の生コンを使用する工事現場に同支部組合員らが赴き、コンプラ - 6 -活動を行って工事を中断させたり、ビラを配布したりしていたこと、また、O支部では、カムフラージュとしてイン業者の生コンを使用する工事現場にもコンプラ活動に行くなどし、これを「ダミー」と呼んでいたこと、P2協組及びP1協組とO支部の関係について認定した(「補足説明」第2)。 2 原判決は、E事件の経緯等に関し、概要次のとおり認定した(「補足説明」第3 くなどし、これを「ダミー」と呼んでいたこと、P2協組及びP1協組とO支部の関係について認定した(「補足説明」第2)。 2 原判決は、E事件の経緯等に関し、概要次のとおり認定した(「補足説明」第3 の1。 後記第3 の3 まで、平成27 年当時にO支部組合員らがEの生コン納入先の建設工事現場で行ったコンプラ活動を併せて「本件コンプラ活動」という。)。 ⑴ 組合員らは、別表1記載のとおり、平成27年(後記3⑶まで同年)3月25日から5月18日にかけて、Eが生コンを納入する滋賀県内の工事現場5箇所に赴き、同表「行為」欄記載の各コンプラ活動を行った。 別表1番号1の工事現場では、生コン納入業者がEから別業者に変更されると、O支部組合員らの対応をする事態がなくなり、同表番号2の工事現場では、生コン納入業者の変更が検討されたが、生コン打設工事の予定がなく、業者変更には至らなかった。 また、別表1番号3 の工事現場では、4月上旬頃、生コンの仕入先をEから別業者に変更すると、5月連休明け頃には組合員らが同現場を訪れることはなくなった。 ⑵ F1は、F2と相談し、警察に相談したが、本件コンプラ活動が収まること等はなかった。 4月頃、F1とF2は、F3に本件コンプラ活動を止める方法を相談することとし、F2がF3にO支部から狙われて嫌がらせを受けている旨相談した。F3は、F4に、EがO支部から出荷妨害を受けて困っているとし、O支部OB としてB1と交流があり、Q11物産関連会社とO支部のトラブルの解決を仲介した経験を有するF5の紹介を依頼した。F4は、F5から仲介の了承を得、その旨をF3に連絡して、詳細を直接F5に説明するよう告げた。F5は、B1に電話をかけて、滋賀の生コン業者がトラブル解決のため面会を希望している旨を伝え、B1が了承したことから、5月21 の了承を得、その旨をF3に連絡して、詳細を直接F5に説明するよう告げた。F5は、B1に電話をかけて、滋賀の生コン業者がトラブル解決のため面会を希望している旨を伝え、B1が了承したことから、5月21日午前9時に原判示第1のホテル喫茶室における面会が決まった。 5月上旬頃、F2は、F3から1000万円で解決できる旨を聞いてF1に報告した。F1は、F2と相談して面会時に1000万円を支払うこととし、5月19日、F5に電話で面会の日時場所を確認して、翌20日、同額を準備した。 - 7 -⑶ 5月21日午前9時頃、F1、F2、B1、被告人A1及びF5が前記喫茶室で面会した(後記第3 の3 まで「本件面会」という。)。 B1は、F1に、Eがこうなった理由は分かるかなどと告げ、被告人A1が工事現場におけるコンプラ違反を高圧的な口調で指摘すると、F2が反論して口論となったことから、B1又はF5の指示で被告人A1は離席した。その後、F1がB1に紙袋に入った菓子と1000万円を渡し、B1はこれを受け取ったが、同人がその中身を確認したり、会館カンパとして受領する旨を発言したりしたことはなかった(以下、本件面会時のB1及び被告人A1の言動を併せて「本件言動」といい、1000 万円の現金授受を「本件金銭支払」という。)。 B1は、F1から領収書の交付を求められて了承し、後日、O支部がEに領収書(5月21 日付けで政策協力金として1000 万円を受領した旨)を交付した。 F1は、謝礼として、本件面会終了後、F5に50万円を手渡し、F4に同額を送金して、後日F3に50万円を渡した。 ⑷ 6月ないし7月頃に実施されたO支部争法対会議において、本件コンプラ活動等の結果、同支部とEが折衝し、行動を留保することとなったなどと報告され、11月頃に実施された京津ブ に50万円を渡した。 ⑷ 6月ないし7月頃に実施されたO支部争法対会議において、本件コンプラ活動等の結果、同支部とEが折衝し、行動を留保することとなったなどと報告され、11月頃に実施された京津ブロック定期大会における争議対策部の活動報告等において、本件コンプラ活動の成果として、担当常任と企業代表者が折衝を行い、滋賀県の業界が生コン価格の値戻しに賛同するなど、O支部と協調して産業政策運動推進の方向に変化したこと等が報告された。 3 そして、原判決は、前記2の事実を基に概要次のとおり説示し、原判示第1の恐喝罪の成立を認めた(「補足説明」第3 の2)。 ⑴ 本件コンプラ活動の目的や開始及び終了に至る経緯についてのB4の証言は、本件金銭支払の前後でP5工組におけるF2のO支部に対する方針が一変したというD3の証言と整合するほか、同支部の複数の会議でされた報告とも合致し、信用できるから、同活動の目的は、P1協組やP5工組におけるF2のO支部に対する方針を変更させるため、Eに圧力を掛けることにあったと認められる。コンプラ活動が再開されなかった理由は、F2がP1協組やP5工組においてO支部との協調路線に転じたことにあったとみるほかない。 - 8 -⑵ 本件コンプラ活動の実施規模や頻度、態様、結果に加え、コンプラ活動を受ける理由や終期が示されず、終息が見込めない状況であったことに照らすと、これらはF1を困惑させるにとどまらず、畏怖させるに十分なものであったというべきである。 各現場でのコンプラ活動が平穏に行われたかなどや、現場監督らが畏怖したかどうかは結論に影響を及ぼさず、嫌がらせも繰り返されれば畏怖を生じさせ得るし、F1が畏怖した旨明言したかなどにより判断は左右されない。本件コンプラ活動の中に個々の指摘自体として正当なものが含まれていた かは結論に影響を及ぼさず、嫌がらせも繰り返されれば畏怖を生じさせ得るし、F1が畏怖した旨明言したかなどにより判断は左右されない。本件コンプラ活動の中に個々の指摘自体として正当なものが含まれていたとしても、直ちにその対応を甘受すべきとはいえず、これとF1が畏怖したかどうかは別である。 ⑶ 本件金銭支払の目的はコンプラ活動を止めてもらうためであった旨のF1及びF2の各証言は、認定した事実経過と整合し、その信用性を疑わせる事情は見当たらない。EがO支部に1000万円を支払ったり、仲介者に多額の謝礼を負担してまで同支部と接触を図ろうとしたりする事情は、コンプラ活動の中止を求めること以外に存在せず、F5も、本件金銭支払はO支部に対する金銭的解決と理解していた旨証言している。本件コンプラ活動は5月18日を最後に実施されておらず、その中断時期と金銭支払の合意時期が近接することも、本件金銭支払がコンプラ活動中止の対価であったことを裏付ける事情といえる。 本件金銭支払の趣旨が、O支部50周年記念事業(会館新築)のためのカンパとは到底認められず、その旨の被告人A1及びB1の供述は信用できない。 ⑷ O支部側がF1らに1000万円の支払を要求したことを直接認めるべき証拠はないが、本件金銭支払はコンプラ活動中止の対価であり、本件コンプラ活動は、Eに圧力を掛け、F2にP1協組及びP5工組のO支部への方針を変更させる目的で行われたから、コンプラ活動を中止する条件につき同支部の意向を抜きに決定できたとは考え難く、前記支払の要求が同支部の意向と無関係にされたと解することは困難である。以上の事情を踏まえると、本件1000万円の要求は、本件コンプラ活動に畏怖したF1がその中止を強く望み、金銭支払も含む解決を模索していると知ったO支部側がこれに乗じたものと強く推認され 困難である。以上の事情を踏まえると、本件1000万円の要求は、本件コンプラ活動に畏怖したF1がその中止を強く望み、金銭支払も含む解決を模索していると知ったO支部側がこれに乗じたものと強く推認される。 B1とF1の間に介在した人物らが1000万円の支払による解決案を提案した可能性についてみると、F2が本件金銭支払を提案したとは認められず、F4が、F3と - 9 -F5の間に入って金銭の話をし、1000万円の解決案を提案したとは認められない。 F3と直接連絡を取ったことはない旨のF5の証言は信用できず、他にF3と金銭に関するやり取りが可能な人物が認められないことに照らし、F5とF3が金銭解決について直接やり取りしたと認められる。他方、F5とF4に謝礼が支払われたのはF3の指示であったというF1証言から、F5は結果的に謝礼を得たにすぎず、F5が謝礼目当てに1000万円の解決案を提案したとみるには無理がある。F3への謝礼は指示がなく、F4とF5に渡したためF3にも渡すことにしたというF2証言から、F3も結果的に謝礼を得たにすぎず、謝礼目当てに1000万円の解決案を提案したとは認められない。F2、F5、F4及びF3に1000万円の解決案を提案する独自の利益があったとは認められず、同人らがO支部の意向を確認せずに解決案を提案できる立場にあったと認められないことに照らすと、F1とB1の間に複数の人物が介在したことやこれらの者が謝礼金を得たことは、O支部による金銭要求を否定する事情といえない。 以上によれば、O支部が、本件面会前にEに1000万円の支払を要求したと認められる。 ⑸ 本件面会に至るまでの経緯を踏まえれば、被告人A1らの言動はそれ自体が、本件コンプラ活動に畏怖し、多額の金銭を支払ってでもその中止を希望するF1に対し、コンプラ活動の 要求したと認められる。 ⑸ 本件面会に至るまでの経緯を踏まえれば、被告人A1らの言動はそれ自体が、本件コンプラ活動に畏怖し、多額の金銭を支払ってでもその中止を希望するF1に対し、コンプラ活動の再開を暗に示し、更に畏怖させるものであったと認められ、恐喝の実行行為に該当する。本件面会に際し、相手が誰か知らなかったとか、本件コンプラ活動に深く関わっていながら、面会相手がE関係者と思い至らなかったとの被告人A1の供述は不自然不合理であり、B4らの証言とも反し、信用できない。 本件は、そもそも直接的な暴行脅迫を用いて金銭を喝取した事案ではないし、F1が本件面会時の被告人A1らの言動のみによって畏怖したわけでもない。F1は、本件コンプラ活動によってEの業務運営が妨げられ、大きな経済的損失を被ること等を畏怖し、やむなく1000万円の支払に応じたもので、本件面会時に名刺交換等の社会的儀礼が交わされたこと、F1が領収証交付を求めたこと、仲介人に謝礼を支払ったこと、F1が本件面会時に改めて畏怖した旨述べていないことにより左右されない。 ⑹ B4の証言等によれば、被告人A1は、本件コンプラ活動の開始、対象の拡大、中断等について、B4に指示し、その報告を受けるなど同活動を主導していたことが認めら - 10 -れ、その中止や条件を決定し得る立場にあったといえる。そして、本件コンプラ活動中止の指示から間もない時期に行われた本件面会においても、B1に同席したばかりか、Eのコンプラ違反を具体的に指摘したことに照らすと、被告人A1は、Eから金銭を喝取することを認識し、かつ、B1と意思を通じていたと認められ、恐喝の故意及び共謀が認められる。 第3 当裁判所の判断 1 訴訟手続の法令違反の控訴趣意について所論は、本件面会までの経緯に関するF2の原審証言には、 かつ、B1と意思を通じていたと認められ、恐喝の故意及び共謀が認められる。 第3 当裁判所の判断 1 訴訟手続の法令違反の控訴趣意について所論は、本件面会までの経緯に関するF2の原審証言には、F3の供述(F3が「向こうは金を要求しとるで」、「1000 万要求されてる」と言ったとする部分)を内容とした伝聞証拠に当たる部分があるのに、これを基に間接事実を認定し、O支部による金銭要求行為を認めた原判決には、刑訴法320条1項違反があると主張する。 しかし、原判決は、O支部による金銭要求行為の有無との関係で、F2の原審証言に表れたF3の供述部分が伝聞証拠に当たることを前提に、「本件面会に至るまでの経緯」の一事情として、「F2は、F3から、1000万円で解決できる旨を聞き、これをF1に報告した」とF2が直接体験した限度で事実を認めたのであり(「補足説明」第3 の1⑷オ)、F3の供述部分の内容を事実として認定したものでないことは、他の説示(「補足説明」第3 の2⑷アの「O支部側がF1らに1000 万円の支払いを要求したことを直接認めるべき証拠は存しない」の部分、同イ(ア)の「向こう(O支部)が 1000 万円を要求しているとのF3の発言部分は伝聞に当たり、同証言によってO支部が金銭要求をしたと直接認定することはできないとしても、F3から1000 万円の支払について連絡を受けたという点については、F2自身の体験であり、その旨認定することは妨げられない」の部分)も併せれば明らかである。 また、原判決は、本件面会までの経緯をO支部側の支払要求を推認する根拠の一つとしたものと解されるが(「補足説明」第3 の2⑷ア)、F2がF3から話を聞いた点は経緯の一部にすぎず、F3の供述部分を事実とみたわけではないことも、その理由説示から十分くみ取れる。 原判決が つとしたものと解されるが(「補足説明」第3 の2⑷ア)、F2がF3から話を聞いた点は経緯の一部にすぎず、F3の供述部分を事実とみたわけではないことも、その理由説示から十分くみ取れる。 原判決がF2の原審証言中のF3の供述部分(伝聞供述部分)を実質的な事実認定の証拠に供したとは認められず、伝聞法則に違反する点はない。所論は採用することが - 11 -できず、論旨は理由がない。 2 事実誤認の控訴趣意について⑴ 原判決の問題点は、本件面会前の金銭要求と同面会時の恐喝行為の存否に関する部分にあると考えられるので、これらに焦点を当てて判断する。 原審記録を調査し検討すると、O支部側が本件面会前に現金1000万円の支払を要求したとし、同面会時の被告人A1らの言動が恐喝の実行行為に当たると認めた原判決の認定・判断は、論理則経験則等に反する不合理なものといえ、是認することができない。その理由は次のとおりである。 ⑵ 所論は、本件面会前の金銭要求や同面会時の恐喝行為の存否について、次の諸点を挙げ、原判決の認定・判断の誤りを主張する。 ① 本件コンプラ活動は、P1協組の主要構成員であるEが、協同組合の存在意義に反して自社の利益を図る行動をしていたことに端を発したものであり、その経緯を踏まえれば、O支部側が金銭解決を提案するとは考えられない。また、F1は、O支部側の要求がないのに解決のため金銭支払意思を形成しており、財物交付を要求され、その諾否の選択を迫られていたわけではない。 しかるに、原判決は、本件コンプラ活動の目的がEに圧力を掛け、F2の方針を変更させることにあったと認定した一方、これと相反するO支部側からの金銭要求を認め、F1が金銭支払の意思を形成した経緯等も検討しなかったのであり、重大な論理則経験則等の違反がある。 ② 原判決 を変更させることにあったと認定した一方、これと相反するO支部側からの金銭要求を認め、F1が金銭支払の意思を形成した経緯等も検討しなかったのであり、重大な論理則経験則等の違反がある。 ② 原判決は「O支部側」が金銭支払を要求したと推認したが、これにB1、被告人A1の双方又は一方が含まれるかなどは不明であり、本件面会前の恐喝行為を認めることはできないし、両名とも同面会までF1と面識がなかったから、それ以前の同人の状況を認識していたはずはなく、B1及び被告人A1とも、F1が畏怖していた状況を利用する意思を持つこともあり得ない。また、O支部側の行為が恐喝に当たるというためには、支払がなければ本件コンプラ活動を継続する旨を告知して金銭を要求したと評価し得る態様で行われる必要があるが、その証拠はなく、原判決も何ら認定・判断していない。 原判決は、B1及び被告人A1の認識や要求行為の態様を明らかにしないまま、 - 12 -その恐喝行為を認めており、重大な事実誤認がある。 ③ 仲介者が謝礼目当てに金銭解決を提案した可能性は否定することができず、仲介者には、EとO支部の紛争解決に寄与したとして、同社に貸しを作ったり同支部に顔が効くと評価されたりする金銭以外の独自の利益を得ることも考えられる。仲介者全員が単なるパイプ役にすぎず、積極的な解決案を示せる立場にないと認めるに足りる証拠がない以上、仲介者が1000万円の支払による解決を提案した可能性は否定することができない。 原判決は、F1とB1の間の複数の者の介在や、これらの者が謝礼金を得たことは、O支部による金銭要求を否定する事情といえないとしたが、これは論理則経験則等に反する重大な事実誤認である。 ④ 原判決は、面会同席者の関係性、その場の状況や前後の文脈等の具体的な事情(互いに名刺を交換し による金銭要求を否定する事情といえないとしたが、これは論理則経験則等に反する重大な事実誤認である。 ④ 原判決は、面会同席者の関係性、その場の状況や前後の文脈等の具体的な事情(互いに名刺を交換したこと、被告人A1がコンプラ違反を指摘した意味やその相手、F1がB1に領収証を求めたこと、被告人A1が本件面会中に離席した時期及び理由、F1が1000 万円を持参して本件面会に臨んだこと、F1がF5らに謝礼金を渡したこと)を考慮せず、理由も示さないまま、本件言動が恐喝の実行行為に当たると認め、前記の諸事情は結論を左右しないと説示したが、これは論理則経験則等に反する不合理なものであり、事実誤認がある。 ⑤ 被告人A1が、本件当時、O支部において本件コンプラ活動を主導し、その中止等を決定し得る立場にあったとしても、本件面会までにF5が連絡した相手はB1であり、同被告人が両者の話の内容を直接知り得る立場にはなかったし、B1から、F2がO支部との協調路線に転じたと伝えられれば、EからO支部への金銭支払につき認識がなくとも、コンプラ活動の中止を決定するはずである。また、被告人A1は、本件面会の際、B1又はF2に求められてコンプラ違反を指摘したにすぎず、金銭授受の前にB1又はF5に指示され、離席している。 これらの事情は、被告人A1に恐喝の故意及び共謀を認める余地がないと示すものであるのに、同被告人にB1との共謀による恐喝を認めた原判決には、論理則経験則等に反する事実誤認がある。 - 13 -⑶ 所論①ないし③について原判決は、E事件の「罪となるべき事実」において、被告人A1がB1と共謀の上、5月上旬頃、F5らを介してF1に、現金1000万円の支払と引き換えに嫌がらせ(本件コンプラ活動の趣旨)を中止する旨を伝えたと認定し、「補足説明」において 事実」において、被告人A1がB1と共謀の上、5月上旬頃、F5らを介してF1に、現金1000万円の支払と引き換えに嫌がらせ(本件コンプラ活動の趣旨)を中止する旨を伝えたと認定し、「補足説明」において、「本件面会に至るまでの経緯」(「補足説明」第3 の1⑷)等の事実関係を基に、O支部側がF1らに金銭支払を要求したと直接認めるべき証拠はないとしながら、本件コンプラ活動によって畏怖したF1が、その中止を強く望み金銭支払も含む解決を模索していると知った同支部側がこれに乗じたものと強く推認される旨説示し、結論として、同支部側が本件面会前にE側にその支払を要求したと認めた(「補足説明」第3 の2⑷ア、ウ)。 この認定・説示からすれば、原判決は、「罪となるべき事実」で認定した被告人A1らの行為(同被告人がB1と共謀し、F5らを介して、F1に現金1000万円の支払と引換えに本件コンプラ活動を中止する旨を伝えたこと)と、本件面会前にO支部側がE側に金銭の支払を要求した行為が同義のものと判断していることになる。 しかし、原判決の「補足説明」では、所論も指摘するように、O支部のどの人物が、誰に対し、何をどのように伝えたかなどの点に関する判断は明示されていない。 また、「本件面会に至るまでの経緯」に関する主要な証拠は、F1、F2、F4及びF5の各原審証言であるが、これらによっては、各自の立場、O支部との関係性、相談内容や連絡の経過の概要、F2がF3から1000万円で解決できる旨を聞いたこと等の原判決が挙げた程度の事実が認められるだけで、具体的な交渉の経過や内容は明らかではない。F1の原審証言は、B1とのパイプができそうだというF2の報告を聞き、F3に確認するようF2に指示した結果、最低1000万円で話ができると聞いたので、その後の話を進めるよう同人に指示した かではない。F1の原審証言は、B1とのパイプができそうだというF2の報告を聞き、F3に確認するようF2に指示した結果、最低1000万円で話ができると聞いたので、その後の話を進めるよう同人に指示した旨のものにとどまり、本件コンプラ活動に相当困惑していたといえるものの、原判決も説示したように、O支部側のF1らに対する金銭支払の要求行為を直接認め得る証拠はなく、本件面会までの過程において、被告人A1やB1がE側に金銭支払を要求したことをうかがわせる事実は記録上認め難い(F2の原審証言には、「(電話でF3から)『向こうは金を要求してるで』と聞いた」、「(F3との電話で)1000 万円出せと言うとるでということはあった」旨述べた部分 - 14 -があるが、原判決も指摘したように、F3の発言内容は伝聞に当たるから、F2がF3からその言葉を聞いた限度で事実が認められるにすぎない。なお、原審においてF3の証人尋問は請求されていない。)。 そして、本件コンプラ活動によって畏怖したF1が、その中止を強く望み金銭支払も含む解決を模索していると知ったO支部側がこれに乗じたと強く推認されるとした原判決の認定は、本件面会までの経緯に加え、同支部が同活動の主体であること、同活動の中止を強く求めるF1の意向や、これを受けて本件面会の場に赴いた被告人A1及びB1の言動等を間接事実としたものと解されるが、これらによっては、同支部側がF1の態度に乗じる姿勢にあったといえても、更に進んで、金銭支払要求行為があったことまで推認し得るわけではない。 人を畏怖させるに足りる害悪を告知して財物の交付を要求する行為が恐喝であるから、これに該当するO支部側の行為があったというには、単にF1の態度に乗じて金銭の受領を了承しただけでは足りないというべきであるが、既述したように、本件面 知して財物の交付を要求する行為が恐喝であるから、これに該当するO支部側の行為があったというには、単にF1の態度に乗じて金銭の受領を了承しただけでは足りないというべきであるが、既述したように、本件面会に至るまでの交渉経過等は明らかではなく、同支部側がF1に支払を要求したと認め得る直接証拠もない。原判決は、F2、F5、F4及びF3に解決案を示す独自の利益がなく、O支部の意向を確認せずに提案できる立場にあったとも認められないとし、F1とB1の間の複数人の介在やその者らが謝礼金を得たことは、同支部による金銭要求を否定する事情といえないと説示したが、他方でこれを肯定する事情(同支部の金銭要求を推認させる間接事実)が説得的に示されたとも認め難い(なお、交渉の仲介者の観点からすれば、金銭解決は容易に思い付くことであるし、中間的な立場の方が提案しやすいという面もある。そして、F3、F4、F5にはO支部と生コン業者間のトラブル解決に関わった経験があるというから、金銭支払の提案がさして難しいこととはいえず、これらの仲介者が提案した可能性も残る。)。 原判決は、本件面会までにF1が現金1000万円を用意し、同面会の際に持参した事実をもって、同面会前にO支部側がその支払をE側に要求したと認め、これが「罪となるべき事実」で認定した被告人A1らの実行行為に当たると判断したが、推認力の乏しい間接事実による推論といわざるを得ず、論理則経験則等に反し不合理である。所論①ないし③は、これと同旨をいう限度で妥当である。 - 15 -⑷ 所論④⑤について原判決は、本件面会までの経緯を基に、本件言動自体が、本件コンプラ活動に畏怖し、多額の金銭を支払ってもその中止を希望するF1に対し、同活動の再開を暗に示し、更に畏怖させるものであったとして、恐喝の実行行為に当たると 会までの経緯を基に、本件言動自体が、本件コンプラ活動に畏怖し、多額の金銭を支払ってもその中止を希望するF1に対し、同活動の再開を暗に示し、更に畏怖させるものであったとして、恐喝の実行行為に当たると認めた。 しかし、前記のとおり、本件面会前にO支部側がE側に金銭支払を要求した行為があったとは認め難く、同面会前の経緯として表われた事情は、F1やF2のE側とF5、F4及びF3の仲介者らの連絡状況等にとどまるから、本件言動が、同面会までに抱いていたF1の畏怖状態を更に強めたと認めるには足らない。 また、記録上、本件面会までにEがO支部に金銭を支払う方向で話が進み、同面会の日時場所が設定されたこと、本件面会の際、F1は現金を用意しており、名刺交換や本件言動等の後、本件金銭支払があったことが認められ、これらの経緯に照らせば、被告人A1及びB1は、本件面会の場で金銭授受が予定されていたことは知っていたものとみるのが相当であるから、同被告人らが更に金銭交付に向けた脅迫行為をする必要性は乏しい(面会相手がE関係者であるとは知らなかった旨の被告人A1の原審供述が不自然不合理とした原判決の判断は、正当である。)。そして、本件面会の際、F1が、なおも本件コンプラ活動の中止に向けた交渉をしようとしたり、現金交付をためらったりした様子はなく、本件言動は、その内容、朝のホテルラウンジ内の出来事であったことやF1が受けた印象(B1はそれほど高圧的ではなく、被告人A1は高圧的で強い口調はあったが、場所柄、大声ではなかった旨のもの)に鑑みても、現金交付に向けた直接的な害悪の告知ないし同活動の継続を暗に示したものとまでは認め難い。 そうすると、本件言動自体をみても、F1に対する恐喝の実行行為があったと認めることはできず、原判決の認定は、証拠評価を誤った不合理なものというべ ないし同活動の継続を暗に示したものとまでは認め難い。 そうすると、本件言動自体をみても、F1に対する恐喝の実行行為があったと認めることはできず、原判決の認定は、証拠評価を誤った不合理なものというべきである。 所論④⑤は、前記と同旨をいう限度において妥当である。 ⑸ なお、検察官は、本件面会前の金銭要求の有無に関し、本件コンプラ活動をどのような条件で中止するかについて、その主体であるO支部の意向を抜きに決定することができたとは考え難く、F1とB1の間の仲介者は、O支部とEの紛争の原因や経緯等の詳細を把握していなかったから、両者の紛争解決のため必要とされる具体的な金額が提示できたとは考えられないとし、O支部側が納得するような金額を判断し得たのはB1し - 16 -かいなかった旨主張する。 しかし、O支部とE間の交渉の具体的経緯は明らかではなく、被告人A1やB1が、金銭の支払と引き換えに本件コンプラ活動を中止する旨伝えた事実を認め得る程度の立証はないから、検察官の主張は推論にとどまるし、F4やF5が関わったO支部と生コン業者のトラブルの解決で取りざたされた金額(F4は1800 万円と、F5は1500 ないし1600 万円と述べた。)に照らせば、仲介者が具体的な金額を示すことが不可能であったともいい難い。検察官の主張は採用することができない。 3 結論以上によれば、被告人A1及びB1が、本件面会の前後を通じ、F1(E側)に対して金銭の支払を要求し、その交付に向けた恐喝の実行行為を行ったと認め得る程度の証拠はないのに、原判示第1の事実を認めた原判決の判断は、論理則経験則等に反する不合理なものといえ、是認することができず、判決に影響を及ぼす事実誤認があることは明らかである。 論旨は理由があり、その余の事実誤認の主張及び控訴趣意を判断する 判決の判断は、論理則経験則等に反する不合理なものといえ、是認することができず、判決に影響を及ぼす事実誤認があることは明らかである。 論旨は理由があり、その余の事実誤認の主張及び控訴趣意を判断するまでもなく、原判決中、原判示第1 の事実を認めた部分は破棄を免れない。 (I事件(原判示第3)に関する控訴趣意について)第1 控訴趣意論旨は、要するに、①原判決には、「罪となるべき事実」で脅迫の事実を示さなかった理由の不備ないし食い違いがある、②I事件におけるコンプラ活動は、目的、手段及び態様とも正当であり、その違法性は阻却されると主張したのに、この点に関する判断を示さなかった原審の訴訟手続には法令違反がある、③脅迫に当たらない事実を基に恐喝未遂を認めた原判決には、事実誤認ないし法令適用の誤りがある、④被告人らには本件に関する共謀がなかったのに、これを認めた原判決には、理由不備、事実誤認ないし法令適用の誤りがあると主張する。 事案及び主張の各内容に鑑み、①の理由不備等、③④に関する事実誤認等、②の訴訟手続の法令違反の順で検討する。 - 17 -第2 原判決の判断要旨原判決は、O支部とP2協組の提携の経緯等、Q4第2期工事開始までの経緯、同工事の生コン供給契約獲得に向けた関係者の行動等、各工事現場におけるコンプラ活動やI本社前等におけるビラ配布等、ポンプ車の供給停止、Q5への訪問等やO支部における情報伝達の状況等に関する諸事実を認定した(「補足説明」第4 の1⑴ないし⑻。 後記第4 の3⑶まで、前記の生コン供給契約を「本件契約」という。また、後記第5 まで、各工事現場で行われたコンプラ活動を併せて「本件コンプラ活動」といい、ビラ配布を含め「本件コンプラ活動等」ともいう。)。 そして、原判決は、概要次のとおり説示し、原判示第3の また、後記第5 まで、各工事現場で行われたコンプラ活動を併せて「本件コンプラ活動」といい、ビラ配布を含め「本件コンプラ活動等」ともいう。)。 そして、原判決は、概要次のとおり説示し、原判示第3の恐喝未遂罪の成立を認めた。 1 アウト対策の一環として行われるコンプラ活動の目的は、アウト業者の取引先に圧力を掛けて、生コンの仕入先を協組加入業者に変更させ、これを通じてアウト業者を協組に加入させることにあったと認められ、O支部におけるアウト対策の目的に生コン契約を変更させることが含まれているのは明らかである(「補足説明」第4 の2⑴)。 2 本件コンプラ活動等の実施規模や頻度、態様及び結果等に加え、C5のJ1に対する発言は、それ自体不穏当で、コンプラ活動の更なる実施、拡大を示唆し、現にこれに対応する形で同活動が行われたこと、B2のJ8に対する発言も、Q5にI大阪支店をして本件契約に関する交渉に応じさせるよう求め、対応しなければQ5への攻撃を示唆するものであったこと、O支部幹部らの要請で第2期工事現場へのポンプ車供給が停止したこと、前記のコンプラ活動の目的から、O支部組合員ら及びP2協組関係者らの一連の行為は、本件契約をQ9からQ1に変更させることに向けられ、同契約締結の決定権限を有するJ5を畏怖させるに十分な恐喝の実行行為と評価できる(「補足説明」第4の2⑵)。 3 O支部におけるコンプラ活動の実施目的、P2協組からO支部にアウト対策費用が支払われ、コンプラ活動の実施はその支払と密接に関わる事柄であること、本件コンプラ活動の実施規模等に照らすと、同活動は、これに従事した組合員らが独断で行ったとは到底考え難く、組織的計画的に行われたものと認められる。 被告人らは、会議等を通じて本件コンプラ活動の存在を認識するにとどまらず、そ - 18 同活動は、これに従事した組合員らが独断で行ったとは到底考え難く、組織的計画的に行われたものと認められる。 被告人らは、会議等を通じて本件コンプラ活動の存在を認識するにとどまらず、そ - 18 -の目的も認識していたと認められ、O支部は、P2協組から多額の費用支払を受けていたから、本件契約をQ9からQ1に変更させることにつき、同支部も強い利害関係を有していたといえる(「補足説明」第4 の2⑶)。 被告人A1は、O支部副執行委員長、争議対策部・京津ブロック担当常任として会議等に出席した上、B4らに第2期工事現場に対するコンプラ活動実施を指示し、これを他のIの現場、更にQ5関係先に拡大することも指示していたもので、本件コンプラ活動を含む一連の活動により、P2協組登録販売店に契約を獲得させることにつき、他の組合員らと意思を通じた上、その実現に向けた重要な役割を果たしたというべきであるから、弁護人らの主張を踏まえても、本件の故意及び共謀が認められる。 B2は、O支部執行委員・政策調査部長として会議等に出席し、本件コンプラ活動の実施を指示した上、C5に契約を得るため不穏当な発言をするよう伝えたり、自らQ5を訪問し、J8に同社への攻撃を示唆する発言をしたりするなど、同支部組合員らやP2協組関係者らと意思を通じ、本件の実行行為の一部を担ったから、故意及び共謀が認められる。被告人A2は、湖東ブロック担当執行委員として京津湖東対策会議に出席し、同ブロック組合員らにコンプラ活動を行うよう指示したもので、本件コンプラ活動を含む一連の活動により、P2協組登録販売店に契約を獲得させることにつき、他の組合員らと意思を通じ、その実現に向けて重要な役割を果たしたから、故意及び共謀が認められる。そして、被告人A3は、京津ブロックの執行部会議に出席し、意思統一の場 店に契約を獲得させることにつき、他の組合員らと意思を通じ、その実現に向けて重要な役割を果たしたから、故意及び共謀が認められる。そして、被告人A3は、京津ブロックの執行部会議に出席し、意思統一の場でもコンプラ活動の経緯等を聞いた上、第2期工事現場においてコンプラ活動を実施したのであり、本件コンプラ活動を含む一連の活動により、P2協組登録販売店に契約を獲得させることにつき、他の組合員らと意思を通じ、本件の実行行為の一部を担ったから、故意及び共謀が認められる。 4 本件コンプラ活動等の実施規模や頻度、態様等に加え、C5がJ1に、B2がJ8にした各発言はいずれも不穏当であり、O支部側の要求に応じなければ攻撃の拡大を示唆するものであったこと等から、O支部組合員らによる一連の行為は、Iに対し、生コンの仕入先の変更を目的に執ようかつ継続的に圧力を加えたものといえ、恐喝の実行行為にも該当する。個々のコンプラ活動が平穏に行われたり、指摘の一部にそれ自体正当なものが含まれていたりしても左右されず、被告人らの行為を正当とみることはできない - 19 -(「補足説明」第4 の2⑷)。 5 O支部では、ダミーのコンプラ活動を行うことで、アウト業者に対する活動が正当であるかのような外形を取っていたから、その措置自体、コンプラ活動が違法となり得る可能性を認識していたことを端的に表すし、D4事件決定も、およそO支部組合員らのコンプラ活動一般について社会通念上相当と認めたものでないことに照らすと、同決定に従ったためコンプラ活動につき違法性の意識の可能性を欠くとはいえない(「補足説明」第4 の2⑸)。 第3 理由の不備ないし食い違いの控訴趣意について所論は、J5が被告人らやO支部、P2協組の組合員らと接触したり、直接コンプラ活動等を受けたりしたことはなく、工 (「補足説明」第4 の2⑸)。 第3 理由の不備ないし食い違いの控訴趣意について所論は、J5が被告人らやO支部、P2協組の組合員らと接触したり、直接コンプラ活動等を受けたりしたことはなく、工事現場の報告を受けただけであったから、この場合、「罪となるべき事実」には同人が間接的に脅迫を受けた旨を記載すべきであるのに、原判決は、同人が直接脅迫行為の相手方であるかのように記載して脅迫の事実を示さなかったとし、理由の不備ないし食い違いがあると主張する。 しかし、原判決は、原判示第3の「罪となるべき事実」として、恐喝(未遂)の構成要件該当性を判定するに足りる程度の具体的事実を記載しており、理由不備等はない。 所論は採用することができず、論旨は理由がない。 第4 事実誤認ないし法令適用の誤りの控訴趣意について 1 原審記録を調査し検討すると、原判決の認定・判断はおおむね正当として是認することができ、論理則経験則等に反する不合理な点があるとは認められない。 以下、所論に鑑み、順次検討する。 2 所論は、概要次のとおり主張し、原判決の認定・判断を論難する。 ① O支部は、セメント・生コン産業及び運輸・一般産業関連の労働者で組織される産業別・職業別労働組合であり、その特性を生かして産業全体を見渡した政策を提言し、中小企業と労働組合の協力関係によって業界を再建する運動(産業政策運動)に取り組んできたのであり、これには生コン業界の安定を図る部分とアウト対策で生コン価格の値上げを勝ち取る部分が含まれる。また、O支部が行ってきたコンプラ活動は、生コンの品質確保、建設工事現場における労働者の安全や地域住民の生活環境の保護、環境破壊防止、生コン価格の適正化と不公正競争の防止を目指した - 20 -ものである。このようなO支部のアウト対策及びコンプラ活動は 設工事現場における労働者の安全や地域住民の生活環境の保護、環境破壊防止、生コン価格の適正化と不公正競争の防止を目指した - 20 -ものである。このようなO支部のアウト対策及びコンプラ活動は、労働組合としての団体行動の一環であり、その目的は正当であって、憲法21条・16条・28条の保障が及ぶから、被告人らの行為につき労働組合法1条2項・刑法35条を適用すべきであるのに、これらの法条を適用しなかった原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある。 ② 恐喝罪における脅迫に当たるとするには、本件コンプラ活動の内容だけでなく、相手方の状況、O支部やP2協組との関係、同活動の経緯、社会情勢等に加え、生コン産業の実態、本件当時の湖東地区やQ9の違法行為の状況等の具体的事情を総合的に考慮すべきであるのに、原判決は、恐喝罪と評価される事実を想定し、矛盾なく説明し得るとして同罪の成立を断定したのであり、偏ぱな論理に基づく不合理な判断である。 ③ 原判決が脅迫行為とした個々の事実の認定は、次のとおり、論理則経験則等に反する不合理なものである。 ア P2協組がO支部に支払った金銭は、協力関係を結んだ証として労働組合の産業政策運動を支持し、その活動資金の一部を負担する支援金・協力金(立米基金)であり、同支部が湖東地区で実施するコンプラ活動と必ずしも対価関係になかったのに、これをアウト対策費用の支払とした原判決の認定は不合理である。 イ C5がQ7商事を訪れた際、J1にした発言(㋐平成29 年(後記3⑵まで同年) 3 月10 日の「大変なことになりますよ」と、㋑同月23 日の「滋賀だけでも済みませんよ。大阪で何か起こるか分かりませんよ」の各発言)は、その内容及び態様とも被害者を畏怖させるに足りる脅迫には当たらない。 ウ本件コンプ とになりますよ」と、㋑同月23 日の「滋賀だけでも済みませんよ。大阪で何か起こるか分かりませんよ」の各発言)は、その内容及び態様とも被害者を畏怖させるに足りる脅迫には当たらない。 ウ本件コンプラ活動は、いずれも法令上の根拠に基づき、違反の有無を確認して工事責任者に指摘し、違反の是正を求めただけであり、軽微な不備に因縁を付ける脅迫行為を行ったものではなく、その対応を強要したわけでもないのに、同活動を脅迫行為と認めた原判決の認定・判断は論理則経験則等に反し、不合理である。 エビラの配布行為は憲法21条が保障する表現行為であり、それ自体が抗議活動としての意味を有する上、少人数でごく短時間にI本社前やQ5という限定された場所の公道で行われたものであって、脅迫行為とならない。原判決の認定は、 - 21 -表現行為を犯罪と断定し、萎縮させる不当なものである。 オポンプ車の供給停止を判断したのはQ3であり、J7が電話でB3やB2と話した内容も至極丁寧な依頼程度のものにすぎなかったのに、強制力をもってポンプ車の供給を中止させたかのような原判決の認定は誤っている。 カ 4月18日の運営委員会でQ4の件は既に決着済みとされており、コンプラ活動の対象がQ5に拡大したことと併せれば、この件は終了事項とするのが自然であるのに、原判決は、6月23日以降の会食等で話題になったという一事をもって、さかのぼって恐喝行為を認める独りよがりな判断をした。 また、B2は、J8と数度面談して、その都度コンプライアンス違反の事実の情報を提供し、Q5も指摘された場合は申し送りで対応しており、従前から行われていたことであったのに、本件に限って恐喝と決め付けるのは不自然不合理である。 ④ 本件契約の決裁権者であるJ5は、直接生コン業者と折衝せず、経済的観点からその諾 りで対応しており、従前から行われていたことであったのに、本件に限って恐喝と決め付けるのは不自然不合理である。 ④ 本件契約の決裁権者であるJ5は、直接生コン業者と折衝せず、経済的観点からその諾否を冷静に判断し得る状況にあり、警察と連携を取ることも可能であった。また、本件コンプラ活動は少人数による短時間の平穏なものであり、これによって現場の者が畏怖したなどの報告はなく、J5が直接現場を見分したわけでもなかったから、同活動は同人の意思決定に何ら影響を与えなかった。本件コンプラ活動等が、J5に対し、P2協組と契約しなければそれ以上の損害が避けられない状況を示し、同人の有効な意思表示を行えない状況に陥らせたとはいえず、害悪の告知に当たらないのに、脅迫行為と認めた原判決には事実誤認がある。 ⑤ 被告人A1、被告人A2及び被告人A3に恐喝の共謀を認めるためには、被告人らが、P2協組と契約をさせるため本件コンプラ活動を実施していることを認識していただけでは足りず、C5やB2のJ1やJ8に対する発言、ポンプ車供給を停止させる要請についても認識していたことが認められる必要がある。また、被告人らやP2協組関係者には、本件コンプラ活動が本件契約の折衝に与える影響等について認識がなく、相互に促進し合う関係にあったともいえない。しかるに、原判決は、これらの点を認定・判断せずに被告人らの共謀を認めており、法令適用の誤り又は事実誤認がある。 - 22 - 3 当裁判所の判断⑴ コンプラ活動の目的に関する主張(所論①)について協同組合及びO支部におけるアウト対策の趣旨、O支部が行ったコンプラ活動やビラ配布等の広報宣伝活動の概要、各協組とO支部の関係等のほか、Q4第2期工事開始の経緯等、C5らがQ7商事大阪支店に赴いた際の出来事(3 月10 日。別表3 対策の趣旨、O支部が行ったコンプラ活動やビラ配布等の広報宣伝活動の概要、各協組とO支部の関係等のほか、Q4第2期工事開始の経緯等、C5らがQ7商事大阪支店に赴いた際の出来事(3 月10 日。別表3 番号1)から、B2がQ5に赴いた際の出来事(4 月25 日。同番号9)までの間の本件コンプラ活動等を含む事実経過、その後の事情、O支部における情報共有等の状況は、おおむね原判決が認定したとおりである(「補足説明」第2 の2、第4 の1⑵、⑶アないしオ、⑷ないし⑹、⑺ア、イ(ア)、⑻ア、ウ)。 原判決は、前記経緯等から、アウト対策の一環として行われるコンプラ活動の目的につき、アウト業者の取引先に圧力を掛けて、生コンの仕入先を協組加入業者に変更させ、これを通じてアウト業者を協組に加入させることにあるとし、生コン契約を変更させることも含むと認めた(「補足説明」第4 の2⑴)。 労働組合としてのO支部の性格・特質、協組との関係等に鑑みると、所論が主張するように、同支部によるアウト対策やコンプラ活動及び関連する諸活動が労働組合の活動として正当と判断される場合はあり得、これらを通じて、協組関係企業と生コンの供給等の契約に関する働き掛けをすることも一概に否定されるものではないと考えられる。 もっとも、該当する活動等が正当行為といえるかどうかは、その目的及び実際に行われた行為全体を併せ、具体的に検討して判断するのが相当であり、労働組合活動として行われたことから、直ちにその目的が正当であったと評価すべきではない。 本件についてみると、アウト企業に対する「コンプライアンス啓蒙活動及び広報宣伝活動」の成果等に関するO支部の内部文書の記載内容(「旺盛に圧力行動を取り組んでいる」、「圧力行動と広報宣伝活動の両輪で取り組んでいる」、「現場での圧力行動」、「連日、行動を ス啓蒙活動及び広報宣伝活動」の成果等に関するO支部の内部文書の記載内容(「旺盛に圧力行動を取り組んでいる」、「圧力行動と広報宣伝活動の両輪で取り組んでいる」、「現場での圧力行動」、「連日、行動を展開」等)のほか、アウト企業やその現場を対象としていることを隠すため、イン業者にもコンプラ活動を行っていた旨のB4及びB5’(B5の証言時の旧姓)の各原審証言等に鑑みれば、O支部は、コンプラ活動を単に一般的な啓蒙活動とみるだけではなく、これがアウト企業に対する有効な圧力となると認識し、選定した企業やその関係箇所に対する同活動を、広報宣伝活動も併せて組織的計画的に展開す - 23 -ることにより、同支部の意向に沿う結果を得るための方策として活用していたものと認められる。P2協組がQ4第1期工事の生コン契約を獲得できなかったこと、I大阪支店は、Q9とQ1の見積回答から、第2期工事についてもQ9から生コンを購入する方針としたこと、第2期工事現場等でコンプラ活動等が行われたことは、原判決認定のとおりであり、また、関係証拠によれば、第2期工事の規模は湖東地区として大きく、その契約獲得の要望は強かったこと、J5がD2(P3協副理事長)やD1と会い、Q5やIに対する行為を一切中止するのであれば、警察に被害届は出さないなどと告げた後の8 月2日ないし3日頃には、Iの工事現場におけるO支部の活動がなくなったことも認められる。 これらの事情を併せれば、O支部による本件コンプラ活動は、ビラの配布を含め、本件契約の相手方をアウト企業であるQ9からP2協組(Q1)に変更させることを直接的、積極的に意図したものと認められる。これと同旨の原判決の前記認定は正当であり、不合理な点はない。 そして、被告人A1らの一連の行為が恐喝の実行行為に当たるかどうかや、刑法35条 せることを直接的、積極的に意図したものと認められる。これと同旨の原判決の前記認定は正当であり、不合理な点はない。 そして、被告人A1らの一連の行為が恐喝の実行行為に当たるかどうかや、刑法35条等により違法性が阻却されるかどうかは、このような本件コンプラ活動等の目的を併せて検討すべきである。 ⑵ 脅迫行為に関する主張(所論②③)についてア原判決は、公訴事実に記載された被告人らの行為につき、その経緯等を含めて詳細に認定し、これを前提事実とした上で、コンプラ活動の目的を認め、次いで、本件コンプラ活動が行われた期間・場所、その態様・結果、ビラ配布の態様等に、C5らの発言、ポンプ車の供給停止を併せ、これらを一連の行為とみて、本件契約をQ1に変更させることに向けられ、同契約の決定権限を有するJ5を畏怖させるに十分なものであったと評価し、恐喝の実行行為に当たると認めたが、その認定・判断の在り方に不合理な点はなく、独自に脅迫行為に当たる事実を認定・評価したわけではないことは、理由説示全体から十分理解し得る。 また、原判決は、被告人らの行為だけではなく、その経緯等を併せて認定したから、O支部の労働組合活動の一環として行われた背景がある点を踏まえても、所論が指摘する諸事情を更に認定すべき必要性があるとはいえない。所論②は採用することができな - 24 -い。 そこで、恐喝の実行行為性に関する原判決の当否を判断する前提として、所論が指摘する諸点を検討する。 イ金銭支払に関する主張(所論③ア)について原判決は、P2協組がO支部にアウト対策への協力を求めた経緯、D5(O支部書記長)とC1の交渉経過や、P2協組理事会が生コン1 ㎥当たり100円の範囲でR経営者会及びS総研の加入を承認したこと等の事実を基に、これらの経緯から、P2協組がO支 力を求めた経緯、D5(O支部書記長)とC1の交渉経過や、P2協組理事会が生コン1 ㎥当たり100円の範囲でR経営者会及びS総研の加入を承認したこと等の事実を基に、これらの経緯から、P2協組がO支部にアウト対策を依頼し、その費用を支払う趣旨であったと認め、経営者会等は便宜上ないし名目上のものにすぎなかったとして、所論と同旨の弁護人の主張を排斥した(「補足説明」第4 の1⑴ア)。 記録を検討すると、P2協組がO支部にアウト対策協力を求めた事情や同協組が経営者会等への加入を承認するまでの経緯に関し、原判決の認定に誤りがあるとは認められない。すなわち、原判決が認定した前記の経緯等に、金銭支払の趣旨等に関するC1(P2協組理事)及びC5(同協組副理事長)の各原審証言(C1は、「P2協組では自助努力で値上げすることは無理と思い、アウト対策のためO支部に頼んだ」、「O支部は、アウト対策としてコンプライアンス違反をしてくれる。現場で指摘されると、数回行くことにより納期が遅れ、コストが高く付く。これにより次の契約が協組に来ることもある」、「D5から、月間3 名ほど現場回りをすると、人件費と燃料費で100 万以上の経費が掛かると言われた」、「理事会で直接O支部に月100 万円を支払うことは承認されなかったとD5に伝えると、100 万を経営者会に会費制として入れてもらうのはどうかと提案された」旨を、C5は、「アウト対策の効果がほとんど上がっていなかった打開策として、O支部に協力してもらう話が出た。協力を求めると、コンプライアンス違反活動をやってくれるということだった」、「自分としては、いわゆる嫌がらせのことかと思っていた」、「各現場や業者に行き、しつこくコンプライアンス違反を追及したり、嫌がらせ的なことをやったりと思っている」、「(アウト対策の対価として) た」、「自分としては、いわゆる嫌がらせのことかと思っていた」、「各現場や業者に行き、しつこくコンプライアンス違反を追及したり、嫌がらせ的なことをやったりと思っている」、「(アウト対策の対価として)金額的に立米当たり200 円くらい必要だと聞いた。理事会では、最終的に立米100 円で承認された。会費という形で支払っていたと思う」旨をそれぞれ述べた。)を併せれば、P2協組が経営者会等に参加し、会費を支払うことにした趣旨は、当時の同協組にとっ - 25 -て、O支部にアウト対策への協力を求めるための実質的な費用の意味合いを持つものであったとみることができる。 経営者会等は便宜上ないし名目上のものにすぎなかったとした原判決の説示は、表現はともかく、P2協組が支払った金銭の実質的な趣旨がアウト対策の費用に当たると評価した点において不合理といえない。 ウ C5の発言に関する主張(所論③イ)についてC5らP2協組関係者が、3月10日及び同月23日にQ7商事大阪支店を訪れた際の状況やその前後の事実経過は、原判決認定のとおりである(「補足説明」第4 の1⑶アないしオ)。 また、原審において、C5は、B2が3月7日の情報交換会の場で述べた内容(「大変なことになるというニュアンスで言ったらいい」旨のもの)や、3月23日にQ7商事に行く前、同人から電話で告げられた内容(「滋賀も済んでないような状態で、大阪でも何かあるかも分からないぐらいは匂わせて」という旨のもの)は、いずれもコンプラ活動をする趣旨と理解した旨を述べ、J1も、C5の前記発言を聞いた際の印象を述べた(所論③イ㋐の発言につき「1 期工事でO支部の嫌がらせがあったので、また起こるかと思った」旨を、同㋑の発言につき「次の週、大阪の建築現場に国交省職員と数名が来て、周りの道が汚れているなどと を述べた(所論③イ㋐の発言につき「1 期工事でO支部の嫌がらせがあったので、また起こるかと思った」旨を、同㋑の発言につき「次の週、大阪の建築現場に国交省職員と数名が来て、周りの道が汚れているなどと嫌がらせに入ってきているがどういうことかと現場所長から連絡があり、このことかと思った」旨を述べたもの)。C5及びJ1の各原審証言の信用性を疑わせるべき事情はなく、これによれば、C5、J1とも、C5の前記発言が、Q1と本件契約を締結しなければ、I大阪支店施工の工事現場でO支部によるコンプラ活動が行われる意味合いとして理解したと認められる。 この点、所論は、B2とC5の間で「大変なこと」の中身が何も語られていないから共通認識はなく、C5が別の解釈(アウト業者から生コンを購入した場合、不測の事態が生じても他社の応援を得ることができない旨)から発言したとすれば害悪の告知とはいえないし、「大変なこと」がコンプラ活動に当たると認識していても、工事現場で法令違反行為の指摘・是正を求める行為は違法ではないから、いずれにしてもC5の前記発言が脅迫行為と評価される余地はないと主張する。 しかし、C5の前記発言に至るまでの事実経過、とりわけ、IはQ1が提示した生 - 26 -コン価格を受け入れず、同社もその引下げが困難であったことに照らせば、J1が認識したように、C5の各発言は、契約締結の方向に進まなければO支部によるコンプラ活動が行われることを示唆し又は想起させるものといえ、C5がB2の意図を誤解して発言したと理解するには無理がある。そして、個々のコンプラ活動が直ちに違法とはいえないとしても、これが継続的に実施される場合はI施工の工事現場の業務に支障が生じ得る以上、C5の前記発言を不穏当と捉えた原判決が不合理とはいえない。 なお、所論は、3月10日のC5ら に違法とはいえないとしても、これが継続的に実施される場合はI施工の工事現場の業務に支障が生じ得る以上、C5の前記発言を不穏当と捉えた原判決が不合理とはいえない。 なお、所論は、3月10日のC5らの訪問の際に同席したJ2(Q7商事大阪支店次長)が、C5の発言に記憶がない旨述べた点を指摘するが、発言自体はC5自身が認めているから、J2の記憶の有無に関わらない。また、C5は脅すつもりではなかった旨述べたが、B2の意図を理解し、同人に言われたとおり発言した以上、自らの発言の趣旨は理解していたものといえる。 エコンプラ活動に関する主張(所論③ウ)についてO支部関係者が行ったコンプラ活動の日時場所や態様、各現場の対応等の個々の事実は、原判決が認定したとおりであり、個別にみれば、少人数の組合員が、各現場で見受けられた違反等を指摘したもので、長時間に及んでいたわけではなく、その態様もおおむね平穏に行われていたとみることはできる。 他方、O支部がコンプラ活動をアウト企業に対する圧力と認識して活用しており、本件コンプラ活動等は、本件契約の相手方をP2協組に変更させる目的で行われたと認められることは、既述したとおりであり、関係証拠によれば、第2期工事開始前後の会議において、コンプラで圧力を掛ける旨、Iの現場やQ5に行動を広げる旨の指示があり、現場におけるコンプラ活動では、ささいなことでも見付け、行政や警察に連絡するよう事前に意思統一されていたことが認められる。そして、本件コンプラ活動が実施された期間、回数や場所に、現場監督者らが実際にその対応に当たったことに鑑みると、個々に正当な指摘を含むものであっても、総体としてみれば、Iに本件契約の変更を迫るための圧力行動とみることができる。 原判決は、恐喝の実行行為を構成する主要な事実として本件コンプラ活動を 鑑みると、個々に正当な指摘を含むものであっても、総体としてみれば、Iに本件契約の変更を迫るための圧力行動とみることができる。 原判決は、恐喝の実行行為を構成する主要な事実として本件コンプラ活動を捉えたものと解され、その評価に不合理な点はない。 - 27 -オビラの配布行為に関する主張(所論③エ)についてビラの配布行為を個別にみれば、所論が指摘するように、表現行為や労働組合の活動としての意味合いがあり、その態様も平穏であったとみることはできる。 しかし、配布されたビラでは、IやQ5の工事現場に法令違反が存在し、行政官庁が問題視したと指摘されており、各社の信用を害するおそれがある内容といえるし、前記⑴のとおり、O支部内部ではコンプラ活動と広報宣伝活動を「両輪」として扱っていたことに照らせば、本件のビラ配布行為は、本件コンプラ活動と一体となり、本件契約の変更に向けたIに対する圧力として作用したものと認められる。原判決は、ビラの配布を含め、コンプラ活動として一連のものと評価したのであり、不合理な点はなく、ビラ配布行為自体が脅迫行為に当たるとしたわけではないことは、その説示から理解することができる。所論は採用することができない。 カポンプ車の供給停止に関する主張(所論③オ)について第2期工事現場へのポンプ車の供給が停止された経緯は、原判決認定のとおりであり(「補足説明」第4 の1⑸。なお、関係証拠によれば、第2 期工事現場へのポンプ車供給に関する契約自体は、Iの第1 次下請であるQ12建設とQ3間で締結されたものであり、Iが解除した契約は、Q12建設との間の下請契約であったと認められる。)、Q3がP4協に加入した経緯(J7は「P4協から加入を勧誘されたが、その期限の平成27 年3 月末までに加入しなかった。4 月1 日からポ 契約は、Q12建設との間の下請契約であったと認められる。)、Q3がP4協に加入した経緯(J7は「P4協から加入を勧誘されたが、その期限の平成27 年3 月末までに加入しなかった。4 月1 日からポンプ車を供給している現場にO支部の妨害が入るようになったので、結局9 月にP4協に入った」旨を述べた。)も併せてみれば、同社は、O支部幹部の要請を受ける形で第2期工事現場へのポンプ車の供給をやめることにしたものと認められ、これと同旨の原判決の認定に誤りはない。 キ運営委員会等に関する主張(所論③カ)について4月18日の情報交換会以降、B2がQ5を訪問したこと、第2期工事現場等でコンプラ活動が行われていたこと、I大阪支店前や本社前でビラが配布されたこと、会議等での報告状況や、J5がD2やD1と会った後にIの工事現場におけるO支部の活動がなくなったことという原判決が認定し、関係証拠から認められる事実経過に照らせば、前記情報交換会(運営委員会)以降も本件契約の変更に向けた諸活動が行われていたことは十分認められる。 - 28 -また、所論が指摘するように、J8が4月以前にもB2と数回面談し、同人がQ5の施工現場におけるコンプライアンス違反を指摘したこと等は認められるが、同月25日の訪問の際、B2がJ8に示した資料や要望した内容は、同社が直接関係しないIの現場4箇所(原判決「補足説明」第4 の1⑹ア)やQ4の件であり、それまでの面談と異なっていたことは明らかといえる。 ⑶ 恐喝の成否に関する主張(所論④)について前記のとおり、原判決が認定した一連の行為、すなわち、C5がQ7商事大阪支店を訪問し、J1に大変なことになるなどと発言したこと(別表3(以下同じ)番号1)から、第2期工事現場でコンプラ活動が開始されたこと(番号2)、C6やC5のJ 連の行為、すなわち、C5がQ7商事大阪支店を訪問し、J1に大変なことになるなどと発言したこと(別表3(以下同じ)番号1)から、第2期工事現場でコンプラ活動が開始されたこと(番号2)、C6やC5のJ1に対する言動(番号3、4)、第2期工事現場や別のI施工現場における複数回のコンプラ活動の実施(番号5、6)、I大阪支店前等でのビラ配布(番号7)、第2期工事現場へのポンプ車の供給停止(番号8)、B2がQ5を訪問した際の言動(番号9)までの行為は、本件コンプラ活動等の目的が本件契約の変更に向けられたものであったことと併せれば、同契約の一方当事者であり、その締結の権限を有するJ5に対し、同契約の相手方をQ9からQ1に変更しなければ、第2期工事現場等におけるコンプラ活動等が継続され、工事遅延による業務の支障や自社の信用毀損に至るという畏怖を生じさせるに足りる脅迫行為とみることができる。 この点、所論は、本件コンプラ活動等はJ5の意思決定に影響を与えておらず、同人に対する害悪の告知には当たらない旨主張する。 しかし、J5は、第2期工事現場で行われたコンプラ活動の状況につき、作業所等の関係部署を通じて報告を受け、他の工事現場やIの営業所、支店及び本社、Q5におけるものについても、ビラの配布を含む報告を受けて、これらをO支部による業務妨害行為と認識していたことが認められ、第2期工事現場へのポンプ車の供給が停止された際は、その報告を受けると、自らD2に別の業者による調達を依頼し、D1と面会したことも、原判決認定のとおりである。そうすると、本件コンプラ活動等を直接的に体験することがなくとも、J5は、各現場等における状況を把握するのに十分な情報を認識していたものと認められる。 そして、O支部は、コンプラ活動をアウト企業に対する圧力とし、広報宣伝活動と 的に体験することがなくとも、J5は、各現場等における状況を把握するのに十分な情報を認識していたものと認められる。 そして、O支部は、コンプラ活動をアウト企業に対する圧力とし、広報宣伝活動と - 29 -併せ、同支部の意向に沿う結果を得る方策として利用しており、同支部が本件契約の変更を直接的積極的に意図していたことは、前記のとおりであるから、このような意図を併せ考えれば、J5に対する本件コンプラ活動等の一連の行為は脅迫に当たり、社会通念に照らしてみても、労働組合の活動として正当と評価すべき程度を越えたものと認めるのが相当である。 本件コンプラ活動等、O支部組合員及びP2協組関係者らの一連の行為が、J5を畏怖させるに足りる恐喝の実行行為に当たるとした原判決の認定は正当であり、論理則経験則等に反する不合理な点があるとは認められない。原判決の説示部分(「補足説明」第4 の2⑷イ)は、被告人らの行為に正当とみる部分があっても全体として違法と評価されるため、正当行為として違法性が阻却されるものではないとする判断を示した趣旨と解することができる。所論③④は、他に主張する点を含め、いずれも採用することができない。 ⑷ 共謀等に関する主張(所論⑤)について原判決は、O支部とP2協組の関係、コンプラ活動を実施していた目的、費用の支払、本件コンプラ活動の実施規模等から、同活動は組織的計画的なものであり、その進捗状況や成果が各種の会議等で報告されていたことを前提に、被告人らがこれらを通じて同活動の存在及び目的を認識していたと認め、各被告人のO支部における立場・役職、会議等の出席状況や指示等の内容から、本件に関する各自の故意及び共謀の存在を認定した。 これは、第1期工事では、生コンの仕入先をQ9からP2協組に変更させることができず、第2期工事開 立場・役職、会議等の出席状況や指示等の内容から、本件に関する各自の故意及び共謀の存在を認定した。 これは、第1期工事では、生コンの仕入先をQ9からP2協組に変更させることができず、第2期工事開始前後の会議等において、同社から協組に契約を変えさせるためコンプラ活動を行う旨を被告人A1やB2が指示し、被告人A2もQ5の方に行動を広げる旨の指示をしたこと、会議等では随時活動報告がされ、その内容は各ブロック員に周知されて、コンプラ活動前には意思統一として伝達されたこと、被告人A2及び被告人A3が実際にコンプラ活動に参加したこと等の関係証拠から認められる事実から裏付けられており、被告人らにおいて、本件コンプラ活動等を含む一連の行為の細部を認識していなかったとしても、直ちに共謀の成立が妨げられることはなく、これらの行為は、I施工の現場やその本支店、親会社であるQ5が対象とされていたから、その目的が第 - 30 -2期工事の生コン供給契約の獲得(変更)に向けられていたことも認識していたと認められる。 なお、所論は、O支部組合員らはコンプラ活動が労働組合活動として正当であると確信していたから故意が阻却されるとも主張するが、被告人らが、本件コンプラ活動等を含む一連の行為の目的や、会議等を通じてその概要を認識していたと認められることは前記のとおりであり、故意が阻却されることはない。 また、所論は、㋐B4がO支部脱退後に同支部と関係の良くないP3協の副理事長らが取締役を務める企業で雇用され、同支部組合員らと対立する立場にあり、別件事件(和歌山県内の事件)の判決では証言の信用性が否定されたこと、㋑I事件に関し、原審証言後にB4がした別の被告人に係る後行事件の証言内容に不利益な変遷があること等を指摘し、原判決が依拠したB4の原審証言には信用性がない旨 の判決では証言の信用性が否定されたこと、㋑I事件に関し、原審証言後にB4がした別の被告人に係る後行事件の証言内容に不利益な変遷があること等を指摘し、原判決が依拠したB4の原審証言には信用性がない旨主張する。 しかし、㋐について、B4の原審証言は、その雇用先に関する指摘を踏まえても、O支部の内部文書の記載等の客観的証拠やB5、D6らの原審証言と整合しているし、別件事件は本件と事案を異にしており、B4の原審証言の信用性を減殺させるものではない。また、㋑は、コンプラ活動現場における一作業に関する指摘であり、本件の核心部分に関わらないし、B4の原審証言から3年後の別事件において、より不利に変遷したものにすぎず、原判決が依拠したB4の原審証言の信用性には影響しない。 所論⑤は、前記の主張を含め、いずれも採用することができない。 4 結論以上のとおり、被告人らに恐喝未遂罪の成立を認め、原判示第3のとおり認定した原判決は正当であり、論理則経験則等に反する不合理な点があるとはいえない。原判決に事実誤認及び法令適用の誤りはなく、論旨は理由がない。 第5 訴訟手続の法令違反の控訴趣意について所論は、弁護人が、原審において、被告人らの行為が恐喝未遂の構成要件に該当するとしても、コンプラ活動の目的は正当で、その手段・態様も、法令違反が疑われる客観的状態、法令の性質、同活動の具体的実施方法に照らして正当であり、正当行為として違法性が阻却されると主張したのに、原判決は、恐喝の実行行為に該当するから正当な行為ではないと説示したにすぎず、弁護人の主張に対する判断を示さなかった点にお - 31 -いて刑訴法335条2項に反し、判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反があると主張する。 被告人らが行った本件コンプラ活動等を含む一連の行為が脅迫に当 なかった点にお - 31 -いて刑訴法335条2項に反し、判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反があると主張する。 被告人らが行った本件コンプラ活動等を含む一連の行為が脅迫に当たり、労働組合活動として正当と評価すべき限度を超えたものとみるべきこと、原判決は、被告人らの行為が全体として違法と評価されるため、正当行為として違法性が阻却されないとする判断を示したものと解されることは、既述したとおりである。原判決の説示は、弁護人の主張を正面から答えたものとはいい難いが、刑訴法335条2項に反する違法があるとまでは認められない。 なお、所論は、株式会社D4建設を債権者とし、O支部を債務者とする業務妨害禁止等仮処分申立事件において、債権者の申立てを却下した第1 審決定(大阪地方裁判所平成26 年11 月28 日決定)及びこれを維持した抗告審決定(大阪高等裁判所平成27 年月14 日決定)を基に、債権者が主張した債務者の活動(広報宣伝活動の名目で街宣車により街頭宣伝を行うなどしたものと、現場における違法行為の指摘及び改善要請(コンプライアンス活動)の名目で工事関係者を呼び出すなどしたもの)について社会通念上相当と認める判断が示されたとし、民事裁判で相当と認められた行為に刑事違法は認められない旨主張する。 しかし、前記各決定は、コンプライアンス活動等の対象とされた主体、同活動が行われた日時場所、内容、その関与者等を異にする別個の事案に関するものであるから、同決定と同じ事実関係を基に起訴された事件において主張するのであればともかく、同決定で示された判断が本件に当然当てはまるわけではない。 所論はいずれも採用することができず、論旨は理由がない。 (G事件(原判示第2)に関する控訴趣意について)第1 控訴趣意論旨は、要する 決定で示された判断が本件に当然当てはまるわけではない。 所論はいずれも採用することができず、論旨は理由がない。 (G事件(原判示第2)に関する控訴趣意について)第1 控訴趣意論旨は、要するに、①G事件におけるコンプラ活動は、目的、手段及び態様とも正当であり、その違法性が阻却されると主張したのに、この点に関する判断を示さなかった原審の訴訟手続には法令違反がある、②原判決は、威力業務妨害に関する事実並びに被告人らの共謀及び故意の存否につき、事実誤認ないし法令適用の誤りがあるとし、い - 32 -ずれも判決に影響を及ぼすことが明らかであると主張する。事案及び主張の内容に鑑み、②、①の順で検討する。 第2 原判決の判断要旨原判決は、O支部とP1協組の提携の経緯等、Gに対するコンプラ活動等の実施経緯とその内容等、同社が生コンの購入先を変更した後の経過等を認定して、同社に対するコンプラ活動は、現場監督らを工事現場外に呼び出し、軽微な不備を繰り返し指摘して、対応等を求め、現場の作業が中断するなど業務の円滑な進行を妨げ、ビラの交付は作業員らに心理的圧迫を与えるものといえるとし、アウト業者の取引相手に圧力を掛け、生コン契約をP1協組の加入業者に変更させることにあったコンプラ活動の目的に照らすと、O支部組合員らによる一連の行為は、これを受けた相手方の意思を制圧するに足りるとした(「補足説明」第5 の1⑴⑵⑷、同2⑴ア、エ)。 次いで、原判決は、コンプラ活動が、その実施規模や、O支部がP1協組から多額のアウト対策費用の支払を受けていることに照らし、組織的計画的に行われたものであり、被告人らは、会議等への出席やコンプラ活動前の意思統一等を通じ、同活動の存在、その目的、相手方の意思を制圧するに足りるものと認識していたと認め、O支部はP1協組か 組織的計画的に行われたものであり、被告人らは、会議等への出席やコンプラ活動前の意思統一等を通じ、同活動の存在、その目的、相手方の意思を制圧するに足りるものと認識していたと認め、O支部はP1協組から多額の支払を受け、本件に強い利害関係を有していたとした。 そして、原判決は、被告人A1、B2、被告人A2及び被告人A3につき、それぞれ本件犯行に関する故意及び共謀があったと認め、被告人A4につき、同犯行の意思連絡及び正犯性に欠けるところはないとして、違法性阻却事由の有無及び違法性の意識の可能性に関する弁護人の主張をI事件と同様のものとして排斥し、原判示第2の威力業務妨害罪の成立を認めた(「補足説明」第5 の2⑵アないしカ、同⑶)。 第3 事実誤認ないし法令適用の誤りの控訴趣意について 1 原審記録を調査し検討すると、原判決の認定・判断は、適切ではない点はあるものの、おおむね正当として是認することができる。 2 所論は、次の諸点を挙げ、原判決の認定・判断の誤りを主張する。 ① P1協組からO支部に支払われた業務委託費の性質は、同支部の産業政策運動全般に対する支援金・協力金(立米資金)であり、同協組の地区におけるコンプラ活動等の費用負担ではなく、必ずしも対価関係にないのに、その支払をもって同活動の - 33 -組織性計画性を裏付けようとした原判決の判断は、論理則経験則等に反し不合理である。 ② 原判決が罪となるべき事実として認定した現場行動は、証拠に基づいていないか、趣旨が判然としない誤ったものである。 すなわち、㋐平成29年(後記3⑵まで同年)2月25日に関する事実のうち、作業員が生コンの打設作業の続行を懇願したことと、O支部組合員が現場の作業員にブルーシートの道路へのはみ出しを指摘したことは、明らかに場面が異なるのに、前後関係等を )2月25日に関する事実のうち、作業員が生コンの打設作業の続行を懇願したことと、O支部組合員が現場の作業員にブルーシートの道路へのはみ出しを指摘したことは、明らかに場面が異なるのに、前後関係等を無視した認定をした。作業員は、ブルーシートに関する指摘を受けるとすぐ対応しており、収めるようになどと組合員らが告げたことはない。また、側溝の掃除の指摘は、強アルカリ性の水を流したからであり、軽微な不備ではなく、道路清掃は道路使用許可の条件となっていたし、ミキサー車のサイドミラーが敷地外に出ていると指摘しただけで、現場作業員が自主的に対応し、作業中断はなかった。原判決は「軽微な不備の指摘を繰り返し」たというだけで、何を何回繰り返したか認定していない。㋑3月3日に関する事実では、被告人A3らは、穏やかな口調で話し掛け、ビラを配布するなどと述べたり、その態度を示したりせず、ビラを手渡してコンプラ違反がないよう依頼しただけで、気勢を示したことはない。 ③ 原判決は、G事件におけるコンプラ活動の目的をアウト業者の取引相手に圧力を掛けるためと認めたが、誤っており、同活動はせいぜい嫌がらせ程度にすぎない。仮にその目的が認められるとしても、相手方の意思を制圧するに足りる行為か否かは客観的態様で決まり、目的によって評価が変わるわけではない。原判決は、組合員らの個別具体的な行動を評価せず、目的の不当性から威力該当性を認めたもので誤っている。 ④ 被告人らと実行行為者間の共謀が認められるためには、本件の威力業務妨害を遂行する共同意思を有し、その点の相互の意思連絡が必要であって、会議参加やコンプラ活動の了知にとどまり、同活動の具体的な態様等が認識できない場合は、威力業務妨害の遂行意思の連絡があるとはいえない。 被告人A1及び被告人A4は、コンプラ活動を了知していた って、会議参加やコンプラ活動の了知にとどまり、同活動の具体的な態様等が認識できない場合は、威力業務妨害の遂行意思の連絡があるとはいえない。 被告人A1及び被告人A4は、コンプラ活動を了知していただけで具体的態様等の認識はなく、同活動を実行した者らと相互の意思連絡はなかったし、組合員らが - 34 -Q6等の現場でコンプラ活動をすると認識していても、およそ同活動一般が違法といえない以上、本件の意思連絡を意味しない。また、被告人A2及び被告人A3について、コンプラ活動に係る意思統一や参加があったとしても、同活動自体に違法性はなく、威力業務妨害の意思連絡はなかった。被告人らに本件の共謀を認めた原判決は誤っている。 3 当裁判所の判断⑴ 所論①について原判決は、P1協組がO支部と提携するまでの経緯、同協組とP6共済が業務委託契約を締結し、その委託費が支払われたこと等を認定し、会合時のやり取りや前記契約締結後にO支部以外の労働組合がP1協組のための活動をした実態がないこと、アウト対策が急務とされる状況下で、P1協組加入社の経営悪化にかかわらず多額の費用を継続的に支払ってまで提携を決断したこと、O支部がP1協組のためコンプラ活動以外のものを行ったとうかがわれないことを併せ、P1協組のO支部に対する協力依頼は、生コン価格値上げのためアウト対策を依頼し、その費用を支払う趣旨であったと認め、所論と同旨の弁護人の主張を排斥した(「補足説明」第5 の1⑴イ)。 記録を検討すると、原判決の認定に誤りがあるとは認められない。そして、原判決が認定したように、1月17日にC3、C2、C1、B2及び被告人A4がホテルで会合した際の発言(「5 労組やなく、労組だけにしとってください」、「O支部いうとアレルギーがあるから労組で」、「ほな労組でいきましょか に、1月17日にC3、C2、C1、B2及び被告人A4がホテルで会合した際の発言(「5 労組やなく、労組だけにしとってください」、「O支部いうとアレルギーがあるから労組で」、「ほな労組でいきましょか」、「皆分かっとんやから」等や、「値段上げるにはアウト対策や」、「動いてもうたんやったら、実費がいるやろ」等)や、P1協組の㋐1月19日及び㋑2月9日の各理事会議事録の内容(㋐には「5労組との協力関係の構築(員外社対策含む)について」の議案につき、陪席として参加したC1が、P2協組では値戻しの方法として5 労組の政策委員会に協力要請したなどの説明を、同様に参加したB2が、和歌山、奈良、大阪、京都の各地区の状況説明をそれぞれ行ったこと、1 社を除き、おおむね方向性が了承され、相互扶助を踏まえた5 労組の協力を仰ぐ方向で進めるとされたこと等が、㋑には陪席として参加したC1が、5労組との会費(支援活動費)について交渉し、3 月分の出荷数㎥当たり200 円をP6共済に支払うことで了承してもらいたい旨を述べ、承認可決されたこと等が記載されてい - 35 -る。)等に照らせば、協力要請先の「5労組」とはO支部を想定したものであり、P1協組がP6共済と業務委託契約を締結して高額の金銭を支払うとしたのは、同支部によるアウト対策のための実質的な費用負担の趣旨とみることができる。 業務委託費に関する原判決の認定・判断に不合理な点はない。所論①は採用することができない。 ⑵ 所論②③についてア原判決が「罪となるべき事実」で認定した内容をみると、原判決は、関係証拠を基に、コンプラ活動として2月25日に行われた個々の行為につき、これらが軽微な不備に当たり、総体として繰り返されたと評価した上、現場作業員がその対応をし、小型のミキサー車の到着までコンクリート打 を基に、コンプラ活動として2月25日に行われた個々の行為につき、これらが軽微な不備に当たり、総体として繰り返されたと評価した上、現場作業員がその対応をし、小型のミキサー車の到着までコンクリート打設作業が止まったこと等を併せて業務を中断させたと認めたものと解される。本件では、各行為の前後関係が特段の意味を有するわけではないから、その認定の在り方が不合理とはいえない。ブルーシートの道路へのはみ出しの点は、記録上、O支部組合員(B4)から道路使用許可を取っているか尋ねられると、現場作業員がすぐに直す旨を答えて対応したことが認められ、原判決の認定の一部(「ブルーシートがはみ出ているのが道路使用許可を取っていないのであればすぐに収めるようになどと告げ」の部分)に誤認が含まれるが、判決に影響する程度のものではない。組合員が指摘した現場の不備自体は存在していたが、多くは清掃や所定の場所に収めること等によりその場で是正可能なものであったといえ、これらを軽微とした原判決の評価が不合理とは認められない。 また、3月3日に行われたコンプラ活動のうち、ビラ配布の態様自体は、被告人A3がH2に告げた内容等を含め、平穏なものであり、更なるビラ配布を明示した言動があったとはうかがわれないが、Gの工事現場に関する内容を記載した印刷物として存在し、H2に手渡しされた点を踏まえると、その後に当該ビラの配布が想定されていたとみ得るから、「ビラを配布する旨の気勢を示し(た)」とする原判決の認定が誤っているとまではいえない。所論②は採用することができない。 イそこで、所論③についてみると、O支部が、コンプラ活動等を同支部の意向に沿う結果を得るための方策として活用していたと認められることはI事件において説示したとおりであり(同事件の控訴趣意に関する前記第4 の3⑴)、これは てみると、O支部が、コンプラ活動等を同支部の意向に沿う結果を得るための方策として活用していたと認められることはI事件において説示したとおりであり(同事件の控訴趣意に関する前記第4 の3⑴)、これはG事件でも同様に当 - 36 -てはまるものといえる。 そして、原判決が認定したO支部とP1協組の提携の経緯、Gに対するコンプラ活動等の実施経緯や内容に加え、B4らが2月25日に赴いた同社施工の工事現場には「Q6」の社名が入ったミキサー車が駐車されていたこと(なお、B4は、原審(第27回)において、2班体制でQ6に向かう途中、同社のミキサー車とすれ違い、追跡したらbの現場に着いた旨を述べた。)、2月末開催の京津・湖東対策会議では、同月21日から連日、Q6に対する行動を展開した旨が報告され、その際、同社の主要取引業者の一つとしてGが挙げられていたこと、コンプラ活動等が行われた後のGの対応等の事実経過(「補足説明」第5の1⑵ウないしオ)、とりわけ、H1が同社の生コン購入先の変更を指示した経緯、その後、同社の工事現場に組合員らが訪れなくなった一方、Q6の現場に対するコンプラ活動は、同社がP1協組加盟の意思を表示した7月頃まで継続されたことに、B5の原審証言(「Q6の現場にコンプラ活動を行って圧力を掛け、閉めるかインに入るかまでとことんやるという話をしていた」、「(そのような話を)B4やA1が言っていた」、「(合同会議では)G自体がアウト買いであり、戸建て住宅でも大きな企業で名も売れており、大津圏内で現場も多く持っているので、そこに圧力掛けてインに変えさせたら、かなり大きな影響を与えるだろうという話が出ていた」旨や、「会議では、B4が、Q6はアウト企業であり、工場自体も大きく、現場もかなり持っているという話をしていた」、「コンプラ活動を行う中で させたら、かなり大きな影響を与えるだろうという話が出ていた」旨や、「会議では、B4が、Q6はアウト企業であり、工場自体も大きく、現場もかなり持っているという話をしていた」、「コンプラ活動を行う中で、Q6が協組に加入するか、工場を閉めるかというところまでやるという話が出ていた」、「Gは大手で名前も知れており、大津圏内ではbに大きな宅地造成があるので行動を行っていくという話をしていた」旨を述べた。)を併せれば、O支部のGに対するコンプラ活動等は、アウト対策の一環として行われ、同社に直接的な圧力を掛けて、その生コン購入先をQ6からP1協組加盟業者に変更させ、これを手段の一つとしてQ6をP1協組に加盟させること等を積極的に意図したものと認めるのが相当である。 コンプラ活動の目的に関する原判決の説示は少ないが、その認定事実を踏まえれば、前記と同旨をいうものと解することができる。 ウさらに、原判決認定の事実(Gの工事現場におけるコンプラ活動等の内容、現場作業員らの対応及び現場作業に生じた影響)のほか、H3、H1及びH2のO支部に関する - 37 -認識程度(原審において、H3は、「組合に加盟していないプラントを使う現場に来ると聞いていた」、「同業者から無視して作業するとちょっと声を荒げることもあると聞いていたので、(現場では)従うことにした」旨を、H1は、「(O支部は)組合外の生コン会社を組合に入れる目的で生コン打設時に現われ、嫌がらせをすると思っていた」、「O支部の者が現場に来る理由は、組合外の生コン会社を組合に入れさせるのが目的と認識していた」、「当時は本当に勘弁してくれという思いしかなかった」旨を、H2は、現場に現われた男性3名がO支部の者と思った理由として、「今までにも同様の嫌がらせを受けていたり、造成して間もない所で、住人や車も 」、「当時は本当に勘弁してくれという思いしかなかった」旨を、H2は、現場に現われた男性3名がO支部の者と思った理由として、「今までにも同様の嫌がらせを受けていたり、造成して間もない所で、住人や車も少ないので、近所の者や通行車両の者とは思えなかった」、「見るからに近隣や通行している者と違い、O支部の者から現場で嫌がらせがあったと聞いていたからである」旨をそれぞれ述べた。)に鑑みると、前記イの目的・意図により組合員らが行ったコンプラ活動等の一連の行為は、社会通念に照らし、その人数、時間及び態様等を踏まえてみても、嫌がらせにとどまらず、労働組合活動として正当とみるべき程度を越えており、相手となった現場作業員らの意思を制圧するに足りるものと認められ、これらの一連の行為が正当行為に当たるとはいえず、その違法性が阻却されることはない。 原判決は、Gに対するコンプラ活動等の内容、現場作業員らの対応や業務に与えた影響等の諸事情を指摘し、同活動の目的と併せ、O支部組合員らが行った行為が威力業務妨害の実行行為に当たると判断したと解され、前記と同旨をいうものとして是認することができる。所論③は採用することができない。 ⑶ 所論④について原判決が認定したとおり、O支部内における被告人らの地位・立場(「補足説明」第2 の1⑶)、同支部とP1協組の提携経緯、Q6に対するコンプラ活動の目的、被告人A1の指示状況、被告人A4の関与状況、被告人A2及び被告人A3がGへのコンプラ活動に参加し、実行行為の一部を担ったことからすれば、O支部組合員ら共犯者と意を通じ、Q6に対するアウト対策の一環として、Gの工事現場にコンプラ活動を行い、その生コン仕入先をP1協組加盟業者に変更するよう圧力を掛けることを、被告人らも認識し認容していたものと認められる。被告人A1や被告人A4が アウト対策の一環として、Gの工事現場にコンプラ活動を行い、その生コン仕入先をP1協組加盟業者に変更するよう圧力を掛けることを、被告人らも認識し認容していたものと認められる。被告人A1や被告人A4が、コンプラ活動等を実行した組合員らの具体的な態様等まで認識していなかったとしても、これにより同被 - 38 -告人らの共謀の成立が直ちに妨げられるわけではない。 被告人A1、被告人A4、被告人A2及び被告人A3の故意及び共謀を認めた原判決に誤りはなく、所論④は採用することができない。 4 結論以上のとおり、被告人らに威力業務妨害罪の成立を認め、原判示第2のとおり認定した原判決は正当であり、論理則経験則等に反する不合理な点があるとはいえない。原判決に事実誤認及び法令適用の誤りはなく、論旨は理由がない。 第4 訴訟手続の法令違反の控訴趣意について所論は、コンプラ活動の目的は労働組合の活動として正当であり、G事件における各行為の手段・態様も、客観的に法令違反が疑われる場合に、少人数で短時間、平穏に指摘して是正を求めたものにすぎず、正当行為として違法性が阻却されると主張したのに、これに対して何も判断を示さなかった原判決には、刑訴法335条2項に反し、判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反があると主張する。 既述したように、O支部組合員らがGの工事現場で行った一連の行為は威力業務妨害の実行行為に当たり、正当行為として違法性が阻却されることはないと認められるが、原判決の説示(「補足説明」第5 の2⑴エ、⑶)は、弁護人の主張に対し、的確な理由を示したものとはいい難い。 もっとも、原判決が、コンプラ活動で組合員らが指摘した諸点が違反であっても軽微であり、同人らが求める対応を含め、警察官等によるものと同様とはいえないとして、その行為 由を示したものとはいい難い。 もっとも、原判決が、コンプラ活動で組合員らが指摘した諸点が違反であっても軽微であり、同人らが求める対応を含め、警察官等によるものと同様とはいえないとして、その行為態様の特質を示し、同活動の目的(アウト業者の取引相手に圧力を掛けることにより、生コン契約をアウト業者からP1協組の加入業者に変更させるもの。「補足説明」第5 の2⑴ア)と併せ、一連の活動が威力に当たるとした説示に鑑みると、同活動の目的及び態様の双方から、労働組合の活動としてみても正当とはいえないとする判断を示したと解することはできるから、原判決に刑訴法335条2項に反する違法があるとまではいえない。所論は採用することができず、論旨は理由がない。 - 39 -(K事件(原判示第4)に関する控訴趣意について)第1 控訴趣意論旨は、要するに、①K事件で行われた各行為は、目的、手段及び態様とも正当であり、その違法性が阻却されると主張したのに、この点の判断を示さなかった原審の訴訟手続には法令違反がある、②証拠に基づかず、威力業務妨害罪の構成要件にも該当しないのに、原判示第4のとおり認定して、被告人らの共謀及び故意並びに同罪の成立を認めた原判決には、事実誤認ないし法令適用の誤りがあるとし、いずれも判決に影響を及ぼすことが明らかであると主張する。事案及び主張内容に鑑み、②から検討する。 第2 原判決の判断要旨原判決は、O支部とP1協組の提携の経緯等(G事件と同じ)、Kに対するコンプラ活動等の実施経緯とその内容、同社による生コン購入先の変更とその後の状況を認定した。その上で、原判決は、Kに対するコンプラ活動は、現場監督らを工事現場外に呼び出して軽微な不備を繰り返し指摘し、市役所職員を臨場させ、現場所長らに対応を余儀なくさせたものであったこと、 況を認定した。その上で、原判決は、Kに対するコンプラ活動は、現場監督らを工事現場外に呼び出して軽微な不備を繰り返し指摘し、市役所職員を臨場させ、現場所長らに対応を余儀なくさせたものであったこと、一見すれば施主のQ10がコンプライアンス違反をしたとみられ得るビラをQ10役員方に投かんした行為は、同役員らに企業イメージを低下させるビラの配布を示唆し、これを避けるためKに圧力を掛けることを暗に求めるものと認められ、同社に一定の違反があったとしても、その是正を求める手段として不穏当であり、同社に強い心理的圧力を与えるものであることを指摘し、コンプラ活動の目的に照らすと、O支部組合員らによる一連の行為は、これを受けた相手方の意思を制圧するに足りるとした。 そして、原判決は、被告人A1及び被告人A5に、それぞれ本件犯行に関する故意及び共謀があったと認め、被告人A4につき、同犯行の意思連絡及び正犯性に欠けるところはないとして、違法性阻却事由の有無及び違法性の意識の可能性に関する弁護人の主張をI事件と同様として排斥し、原判示第4の威力業務妨害罪の成立を認めた(「補足説明」第5 の1⑴、3⑶ア、イ、2⑴イ、エ、同⑵ア、イ、カ、キ、同⑶)。 第3 事実誤認ないし法令適用の誤りの控訴趣意について 1 原審記録を調査し検討すると、原判決の認定・判断はおおむね正当として是認することができる。 - 40 - 2 所論は、次の諸点を挙げ、原判決の事実認定等は誤っていると主張する。 ① O支部組合員らの行為は、いずれも威力業務妨害罪の構成要件に該当しないのに、同罪の成立を認めた原判決には、事実誤認及び法令適用の誤りがある。 すなわち、㋐平成29年(後記3⑵まで同年)11月17日のコンプラ活動で組合員らがした指摘、確認、提案は、全て法的根拠があり、丁寧な対応 の成立を認めた原判決には、事実誤認及び法令適用の誤りがある。 すなわち、㋐平成29年(後記3⑵まで同年)11月17日のコンプラ活動で組合員らがした指摘、確認、提案は、全て法的根拠があり、丁寧な対応で必要最小限の時間のものであって、相手方の意思は制圧されておらず、通報を受けた市役所等の担当者も自由意思の下でKに指導改善を求めており、威力に当たらないし、行政の指導等への対応は、同社現場監督らの本来的業務であるから業務妨害にも当たらない。㋑11月28日に被告人A5らがした行為は、真実が記載されたビラ1枚の交付にすぎず、これにより相手方の自由意思が制圧されることはないし、過去に生じさせた法令違反への対処はKの本来的業務の一つであるから、業務妨害もない。㋒11月29日頃に行われたQ10の役員方へのビラの投かん行為は、同社に向けられたもので、これによりKの自由意思が制圧されることはあり得ない。また、Q10は、施主としてKに法令違反等の改善を求めたのであり、これに応じるのは同社の本来的業務であるから、前記行為は威力に当たらず、業務妨害にもならない。 ② 個々の行為が積み重なって相手方の自由意思を制圧する場合があり得るとしても、本件では、コンプラ活動において丁寧なコミュニケーションが尽くされ、行政も組合員の指摘どおりの指導をしたこと、ビラの内容は真実で、その交付等は短時間の平穏なものであり、投かん行為もQ10に向けられていたことからすれば、各行為の自由意思への圧力は極めて小さく、他方でその社会的正当性は高い。これらを一連の行為と評価しても、Kの自由意思を制圧するに足りる勢力とならず、同社は本来的業務を行ったにすぎないから、威力業務妨害罪の構成要件を充足しない。 ③ 原判決は、罪となるべき事実の中で「Q8との生コン供給契約を継続すれば、今後も工事現場 するに足りる勢力とならず、同社は本来的業務を行ったにすぎないから、威力業務妨害罪の構成要件を充足しない。 ③ 原判決は、罪となるべき事実の中で「Q8との生コン供給契約を継続すれば、今後も工事現場における工事等の妨害行為及びK等の信用を害する行為を繰り返す旨の気勢を示し」たと認めたが、契約継続に関する話やビラの記載はなく、証拠に基づかない、予断と偏見による誤った認定である。 ④ コンプラ活動が、客観的外形的に原判決が認めた目的(アウト業者の取引相手に圧力を掛けることにより、生コン契約を同業者からP1協組加盟業者に変更させるこ - 41 -と)で行われたことが明らかとはいえない限り、行為者の内心にとどまる動機目的を威力業務妨害罪における威力該当性の考慮要素とすべきではなく、仮にこれが明らかと認めるとしても、過大評価すべきではない。しかるに、原判決は、コンプラ活動の内容等のごく一部を考慮して、心理的な圧迫ないし圧力を与えたとのみ認定し、同活動の目的から相手方の意思を制圧するに足りると過大な評価をしたのであり、事実誤認及び法令適用の誤りがある。 ⑤ 被告人A1は、コンプラ活動を了知していただけで具体的態様等の認識はなく、同活動等を実行した組合員らと相互の意思連絡はなかった。被告人A5は、上位者の指示に従ってビラを作成し、K大阪支店に持参しただけであり、威力業務妨害の実行行為に当たらず、建設現場における組合員らの行動や、ビラ配布が違法なアウト対策の一環であることにつき具体的な認識や予見はなかった。そして、被告人A4は、B4にQ8に対するコンプラ活動を依頼したことがなく、同人がQ10の新築工事現場に行ったと知ったのも事後の報告によるし、ビラの作成等は事前に一切知らされていなかったから、意思連絡を欠いており、具体的なコンプラ活動等に対する 活動を依頼したことがなく、同人がQ10の新築工事現場に行ったと知ったのも事後の報告によるし、ビラの作成等は事前に一切知らされていなかったから、意思連絡を欠いており、具体的なコンプラ活動等に対する認識もなかった。被告人らにK事件の共謀を認めた原判決は誤っている。 3 当裁判所の判断⑴ 所論①ないし④についてアまず事実関係についてみると、Q10店舗新築工事現場(ウまで「本件現場」という。)にコンプラ活動等が行われた経緯、同活動等の内容、Kの対応等は、原判決認定(「補足説明」第5 の1⑶ア、イ)のとおりであり、また、関係証拠によれば、更に次の事実が認められる。 ㋐ O支部組合員らがQ8の生コン納入先を調査していた際、本件現場の存在が判明したことから、B19とB5は、11月11日、違反の有無を確認するため同現場に赴いた。B19は、本件現場内で重機がモード切替え未了の状態でつり荷作業を行っていた状況を見ると、コンプライアンス違反としてその様子を動画で撮影した。 この映像の一部は、後記㋑のビラ(原判示第4 記載のもの)に使用された。 ㋑ L2は、11月28日、発注担当者を訪ねてきたという組合員男性2名(被告人A5とB5)とK大阪支店内で会い、本件現場における違反等の指摘や、その内容が - 42 -記載されたビラの交付を受けた。その後、L2は、面会の様子とビラの写しを添付した電子メールをL3宛てに送り(K特建事業部長にも送付)、現場の様子を確認した。 ㋒ B4らは、11月29日、Q10の商業登記簿から役員の住所を調べ、役員方やその周辺の住宅に前記㋑のビラを投かんする広報宣伝活動を行った。 ㋓ L3は、営業の者からQ10の役員方等にビラがまかれたと聞くと、11月30日、同社に赴いて社長らに事情を説明し、早急に対策を考える旨を告げた。そ に前記㋑のビラを投かんする広報宣伝活動を行った。 ㋓ L3は、営業の者からQ10の役員方等にビラがまかれたと聞くと、11月30日、同社に赴いて社長らに事情を説明し、早急に対策を考える旨を告げた。そして、L2は、L3及び部長2名と対応を協議し、生コンをアウト工場から納入し続けると嫌がらせが続くなどとして、生コンの購入先を変えることとし、指摘された工事現場の不備についても、安全を第一にして清掃等を徹底する旨を決めた。 ㋔ Kは、以前から取引のあったコンクリート販売会社(Q13)を通じて生コン業者を変更することにした。そして、前記販売会社とKの下請業者(Q8を生コン業者に選定したQ2)の関係者らは、P1協組事務所を訪れて被告人A4らと会い、今後は同協組から生コンを購入する旨を告げ、その際、同協組宛の12月4日付け書面(「このたびは、Q10㈱発注案件でご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした」、「生コン工事に関して下請け会社へ全面委託しており、地域事情に合わない発注をおこなった為と原因が判明いたしました」、「今後は弊社から発注する生コンに関して、御社購買部および地域事情に詳しい販売店に相談を行い協同組合を優先的に選定する所存です。地域性のある商取り引きの基本を無視したとも言えるミスであり、多大なご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」、「本工事は80%以上が終了し土間コンを残すのみとなっております。この対応につきましては、御協同組合の判断に依存いたしたくご判断の程よろしくお願いいたします」等の本文と、末尾に施工業者としてK大阪支店、販売店としてQ13の各記載があり、担当としてL3の個人印とQ13の代表者印がそれぞれ押されたもの)を交付した。 イ Kに対するコンプラ活動等を個別にみると、本件現場では、組合員が指摘した不備は 販売店としてQ13の各記載があり、担当としてL3の個人印とQ13の代表者印がそれぞれ押されたもの)を交付した。 イ Kに対するコンプラ活動等を個別にみると、本件現場では、組合員が指摘した不備は存在しており、組合員の言動はおおむね平穏で、長時間に及んだともいえない。また、K大阪支店におけるビラの交付等は、L2が短時間対応した程度で、事後対応のほか、 - 43 -業務に特段の支障が生じたとはいえず、役員方等へのビラの投かんも、その態様に問題があったとはうかがわれない。 しかし、現場監督らは組合員の対応を余儀なくされたし、道路等を清掃した後で、その汚水が川に流れていると指摘した点は不条理であり、組合員らの言動を嫌がらせと認めた原判決が不合理とはいえない。 また、既述したように(I事件の控訴趣意に関する前記第4 の3⑴)、O支部は、コンプラ活動等を同支部の意向に沿う結果を得るための方策として活用していたと認められ、これはK事件でも同様に当てはまる。そして、原判決の認定を含む前記アの事実、特に、Q10の役員方等へのビラの投かん後、K側が収拾に向けて早期に対応したこと、K関係者らがP1協組に赴いて生コン購入先の変更を申し入れると、本件現場に対するコンプラ活動等がなくなり、11月17日の同活動開始から短期間で事態が終息したことに鑑みると、同現場におけるコンプラ活動、K大阪支店におけるビラの交付と、これに続いて行われたQ10に向けたビラの投かん行為(広報宣伝活動)は、施主である同社からKに問合せ等が行われるとの見込みの下、これが同社に対する強力な圧力となるとみて実施されたものと十分推認することができる(B4も、原審(第37 回)において同趣旨の供述をした。)。 そうすると、O支部のKに対する一連のコンプラ活動等は、アウト対策の一環として行 となるとみて実施されたものと十分推認することができる(B4も、原審(第37 回)において同趣旨の供述をした。)。 そうすると、O支部のKに対する一連のコンプラ活動等は、アウト対策の一環として行われ、本件現場及びK大阪支店におけるコンプラ活動等や、施主に対するビラの投かんを通じてその影響力を利用することにより、Kに直接的な圧力を掛け、その生コン購入先をQ8からP1協組加盟業者に変更させることを積極的に意図したものと認めるのが相当である。また、本件現場で組合員らの対応に当たったL4(Q2従業員で、Q10店舗新築工事の現場所長を務めていた者)やL3は、同現場に生コンを納入していたQ8がアウト業者と知っており、O支部の存在も認識していたこと、組合員らは「Q14」から来ている旨を述べ、ビラにも同協議会名及びO支部等の記載(略)があったことからすると、一連の行為がO支部により行われた点は外部的にも明らかといえる。 前記のような目的及び意図の下で行われたO支部のKに対するコンプラ活動等の一連の行為は、同社にとって、Q8との生コン供給契約の継続が、本件現場へのコンプラ活動や施主及び自社の信用に影響するビラの配布を更に招き、同現場の工事の遂行に支 - 44 -障が生じかねないとする強い心理的圧力を与えたものと認められる。そして、実際にKが生コン購入先を変えたことも併せれば、前記の一連の行為は、社会通念に照らし、労働組合活動として正当といえる限度を超えたものとみるべきであり、社会的相当性を認めることはできず、正当行為として、その違法性が阻却されることもない。 ウ原判決は、Kに対するコンプラ活動等及び配布されたビラの内容から、これらが、本件現場の業務の円滑な遂行を妨げ、Q10の役員らにKへの圧力を掛けることを暗に求めるものであり、同社に強い心理的 。 ウ原判決は、Kに対するコンプラ活動等及び配布されたビラの内容から、これらが、本件現場の業務の円滑な遂行を妨げ、Q10の役員らにKへの圧力を掛けることを暗に求めるものであり、同社に強い心理的圧力を与えたとし、コンプラ活動の目的と併せ、組合員らが行った行為が威力業務妨害の実行行為に当たるとした。この原判決の説示は、実質的にみると前記イと同趣旨のものと解することができる。所論はいずれも採用することができない。 ⑵ 所論⑤について原判決が認定した被告人A1の地位・役割、コンプラ活動の目的、O支部とP1協組の提携経緯、Q8に対するコンプラ活動の経緯とこれに関する被告人A1の指示状況に加え、同被告人とB4の間の指示・報告等の内容(B4は、原審(第37 回)において、「A1には、Q8の現場は多いので、軒並み行くのではなく、まず現場調査を行い、施工業者に影響力があるかどうかを見極めた上、明らかなコンプライアンス違反があるときだけコンプラを打つと報告した」、「A1からはミスをしないようになどと指示を受けた」、「11 月初旬から中旬辺りに、A1の運転手をしているD7を通じ、A1にKでコンプラ活動をする旨を伝えた」旨を述べた。)に鑑みれば、被告人A1と共犯者らの間には、コンプラ活動等によりQ8の取引先に圧力を掛け、生コンの仕入先を同社からP1協組側に変更させることにつき、意思の連絡があったと認められる。被告人A1が、組合員らの行った具体的態様を認識していなかったとしても、共謀の成立を妨げない。 被告人A4については、原判決が認定したO支部等における立場、同支部とP1協組の提携への関与、会合等に参加し、アウト対策の趣旨・目的を了知していたことのほか、B4との連絡状況(B4の原審証言(第37 回)によれば、被告人A4は、京津ブロックの組合員がほぼ 、同支部とP1協組の提携への関与、会合等に参加し、アウト対策の趣旨・目的を了知していたことのほか、B4との連絡状況(B4の原審証言(第37 回)によれば、被告人A4は、京津ブロックの組合員がほぼ和歌山に行っていた間、Q8が出荷数を伸ばしている旨をB4に連絡し、KがP1協組の物件になった後は、その旨や同社に行かないようB4に求めた - 45 -ことが認められる。)に鑑みると、共犯者らとの間に、被告人A1と同様の意思連絡があったと認められ、コンプラ活動等の具体的な態様について認識がなかったとしても、共謀の成立が妨げられるわけではない。 そして、被告人A5については、O支部における立場、K事件以前にコンプラ活動に参加し、コンプラ違反を追及するビラの作成に関わった経験があること、11月15日の執行部会議にも参加し、Q8に対するコンプラ活動の目的や被告人A1の指示状況を聞いていたとうかがえることに加え、B4の依頼を受けてKに関係するビラを作成した上、11月28日にはB5と共に同社大阪支店を訪れて、前記ビラをL2に渡すなどした場に立ち会い、Kに対するコンプラ活動等の一連の行為の一部に直接関与したことからすれば、共犯者らとの共謀及び故意を認めた原判決に誤りはない(なお、原判決は、被告人A5の関与程度を踏まえて量刑を判断しており、不合理な点はない。)。所論は採用することができない。 ⑶ 以上のとおり、原判示第4につき、被告人らに威力業務妨害罪の成立を認めた原判決は正当であり、論理則経験則等に反する不合理な点があるとはいえない。原判決に事実誤認及び法令適用の誤りはなく、論旨は理由がない。 第4 訴訟手続の法令違反の控訴趣意について所論は、G事件と同様、コンプラ活動の目的は労働組合の活動として正当であり、K事件における各行為の手段・態様も社会 適用の誤りはなく、論旨は理由がない。 第4 訴訟手続の法令違反の控訴趣意について所論は、G事件と同様、コンプラ活動の目的は労働組合の活動として正当であり、K事件における各行為の手段・態様も社会的相当性の範囲内で行われたものであるから、正当行為として違法性が阻却されるのに、同旨の弁護人の主張に対して判断を示さなかった原判決には、刑訴法335条2項に反し、判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反があると主張する。 原判決の説示が弁護人の主張に的確に答えたものといえないことは、G事件の場合と同様である(「弁護人の主張」に関する部分(「補足説明」第5 の2⑴エ)は、組合員らが行ったコンプラ活動につき、その目的を踏まえると、一連の活動が威力に当たるとの認定は左右されないとする結論を示したとみることはできるが、I事件における説示と同様とした部分(同2⑶)は、同事件に関する認定事実を基にした判断を引用した形となっており、そのままではK事件に当てはまらず、不適切である。)。 しかし、労働組合の活動とみても、Kに対するコンプラ活動等の一連の行為が正当 - 46 -とはいえず、社会的相当性を認め難いこと、正当行為として違法性が阻却されるともいえないことは既述したとおりであり、これは、原判決が認定し、関係証拠から認められる諸事実によって判断されるものである。原判示第4の行為が威力業務妨害に当たり、該当する法令が適用されることは原判決に示されており、その結論は正当であるから、刑訴法335条2項の趣旨に沿う判断が十分示されていないとしても、判決に影響を及ぼすことが明らかとはいえない。 所論は採用することができず、論旨は理由がない。 (M事件(原判示第5)に関する控訴趣意について)第1 控訴趣意論旨は、要するに、①M事件で行われた各行 を及ぼすことが明らかとはいえない。 所論は採用することができず、論旨は理由がない。 (M事件(原判示第5)に関する控訴趣意について)第1 控訴趣意論旨は、要するに、①M事件で行われた各行為は、目的、手段及び態様とも正当であり、その違法性が阻却されると主張したのに、この点の判断を示さなかった原審の訴訟手続には法令違反がある、②証拠に基づかず、威力業務妨害罪の構成要件にも該当しないのに、原判示第5のとおり認定し、被告人らの共謀及び故意並びに同罪の成立を認めた原判決には、事実誤認ないし法令適用の誤りがあるとし、いずれも判決に影響を及ぼすことが明らかであると主張する。K事件と同様、②から検討する。 第2 原判決の判断要旨原判決は、O支部とP1協組の提携の経緯等(G事件と同じ)、M電建に対するコンプラ活動等の実施経緯とその内容、これに対する同社の対応とその結果を認定し、同社に対するコンプラ活動は、現場監督を呼び出して軽微な不備の指摘を繰り返し、市役所職員を臨場させて、現場所長らに対応を余儀なくさせ、現場における作業がその都度中断するなど業務の円滑な遂行を妨げたとした。また、O支部組合員らによるビラ(原判示第5 記載のもの。後記第3 の3⑵まで「本件ビラ」という。)の配布は、一見すればグループ会社のMホテルにコンプライアンス違反があったとみられ得るもので、同ホテル関係者らに、ホテルのイメージを低下させるビラの配布を示唆し、これを避けるためM電建に圧力を掛けることを暗に求めるものと認められ、その内容は行政指導の有無につき誇張されていたことも踏まえると、同社に強い心理的圧力を与えるものといえるとし、コンプラ活動の目的に照らすと、組合員らによる一連の行為は、これを受けた相 - 47 -手方の意思を制圧するに足りるとした。 そして、原 えると、同社に強い心理的圧力を与えるものといえるとし、コンプラ活動の目的に照らすと、組合員らによる一連の行為は、これを受けた相 - 47 -手方の意思を制圧するに足りるとした。 そして、原判決は、被告人A1及び被告人A3に、それぞれ本件犯行に関する故意及び共謀があったと認め、違法性阻却事由の有無及び違法性の意識の可能性に関する弁護人の主張をI事件と同様に排斥して、原判示第5の威力業務妨害罪の成立を認めた(「補足説明」第5 の1⑴、3⑶ア、ウ、2⑴ウ、エ、同⑵ア、イ、オ、同⑶)。 第3 事実誤認ないし法令適用の誤りの控訴趣意について 1 原審記録を調査し検討すると、原判決の認定には適切ではない部分があるものの、被告人らに威力業務妨害罪の成立を認めた判断は、正当として是認することができる。 2 所論は、次の点を挙げ、原判決の事実認定等の誤りを主張する。 ① 原判決は、罪となるべき事実の中で「Q8との生コン供給契約を継続すれば、今後も工事現場における工事等の妨害行為及びM電建の信用を害する行為を繰り返す旨の気勢を示し」たと認めたが、このような言動やビラの記載はなく、証拠に基づかない認定である。 ② 原判決は、目的から威力該当性を認めた点で誤っており、「軽微な不備の指摘を繰り返し」たとするだけで具体的な内容を明らかにしていない。被告人らが行ったコンプラ活動は11月20日のみであり、アルカリ性の水を側溝に流すことは軽微な不備ではなく、組合員らは違法行為の有無の確認を求めただけで、客観的にみて自由意思が制圧される状況になかった。また、抗議や非難を含むビラの配布は、憲法21条で保障されるものであり、その内容やMホテルの支配人の抗議によってビラ配布をやめたことからしても、M電建等の信用を害する行為を繰り返す旨の気勢を示したとはいえない。 含むビラの配布は、憲法21条で保障されるものであり、その内容やMホテルの支配人の抗議によってビラ配布をやめたことからしても、M電建等の信用を害する行為を繰り返す旨の気勢を示したとはいえない。 ③ 組合活動の一環としてコンプラ活動を行ったとしても、被告人らには威力業務妨害を行っているという共通認識がなく、共謀はない。 3 当裁判所の判断⑴ M電建に対するコンプラ活動等の状況や同社側の対応は、原判決認定(「補足説明」第5 の1⑶ウ)のとおりである。また、関係証拠により補足すると、次の事実も認められる。 ㋐ M電建は、株式会社Mのグループ会社としてMのホテルの建設を行っていた。M電 - 48 -建は、原判示第5記載の工事現場(⑶まで「本件現場」という。)において、平成29年(㋔まで同年)8月初旬から1年程度の工期で、外部法人(Q15)を施主とし、完成後にMがホテルとして使用する予定のビル(cビル)を元請として建築施工しており、生コンは、アウト業者であるが単価の安いQ8から納入していた。 ㋑ O支部組合員がQ8のミキサー車を追跡し、その納入先を調査する中、本件現場の存在が判明した。B4は、11月17日(金曜日)、組合員らと共にKのQ10店舗新築工事現場でコンプラ活動を行うなどした後、本件現場に赴くと、現場内から外に向けてサニーホースが側溝に刺さる様子を見たが、時間が遅かったなどの理由から、日を改めてコンプラ活動を実施することにした。 ㋒ 11月20日朝、B4は、B11、B5及び被告人A3と共に、事前の意思統一を経て車で本件現場に赴き、高所作業をしていた作業員の様子等をビデオ撮影したが、現場からサニーホースが出ていなかったため、いったん別の現場に行くなどした後、本件現場に戻った。そして、B11、B5及び被告人A3が本件現場に出向き 所作業をしていた作業員の様子等をビデオ撮影したが、現場からサニーホースが出ていなかったため、いったん別の現場に行くなどした後、本件現場に戻った。そして、B11、B5及び被告人A3が本件現場に出向き、B4は、車内に残って、B11らの報告を受けながら指示を出した。 ㋓ B4は、本件現場のコンプラ活動後、被告人A5にビラ(本件ビラ)の作成を指示し、11月28日、同被告人とB5が、K事件で使用したビラと合わせて印刷した。 本件ビラには、前記㋒で撮影した画像の一部が使用された。 ㋔ M電建代理人弁護士は、12月1日、B11らが11月30日にMd店前で配布した本件ビラに関し、虚偽の風説を流布してM電建の信用を毀損したものであり、刑事告訴の準備をしている旨や、今後同様の書面等を配布等しないよう厳重に警告する旨等を記載した警告書をO支部(Q14宛)に送付した。 これに対し、O支部は、12月5日、建設現場における法令遵守を求めた啓蒙活動を行っており、信用毀損、偽計業務妨害を目的としているのではない旨や、言いがかりや開き直りをする前に指摘した事案の内部調査と再発防止に努め、法令遵守を徹底するよう付言する旨を記載した回答書を前記代理人に送付した。 この後、B4は、被告人A1から一切やめるようにと指示を受け、M電建に対するコンプラ活動等を中止した。 - 49 -⑵ 所論①②について本件現場のコンプラ活動をみると、N3が組合員と直接対応した時間は短く、その際の組合員の言動はおおむね平穏であったといえる。もっとも、N3やN2が、組合員やその要請で臨場した行政職員らとの対応、事後確認等を余儀なくさせられたことに変わりはなく、業務の円滑な遂行を妨げたとする原判決の認定が不合理とはいえない(なお、組合員が本件現場でN3に指摘したのは、生コンの洗い水が外に出 職員らとの対応、事後確認等を余儀なくさせられたことに変わりはなく、業務の円滑な遂行を妨げたとする原判決の認定が不合理とはいえない(なお、組合員が本件現場でN3に指摘したのは、生コンの洗い水が外に出ていないか、その水のpH を測ったか、側溝の蓋(グレーチング)の赤さびから、水を流していたのではないかという点であり、N3はこれらを否定したことが認められ、不備があったとはいえず、組合員がN3に不備の指摘を繰り返したわけでもない。「軽微な不備に因縁をつけ」、「軽微な不備の指摘を繰り返し」たとする原判決の認定等(原判示第5、「補足説明」第5 の2⑴ウ)には不正確な部分があるが、判決に影響しない。)。 また、本件ビラの配布では、ホテル支配人とB11の間で言い合いになった場面はあったが、短時間の出来事で、それ以上にもめたなどの様子はうかがわれない。しかし、記録上、本件現場に明確なコンプライアンス違反があったとは認められず、本件ビラの配布日までに労働基準監督署職員が同現場を訪れたり、現場責任者に改善指導を行ったりしたことはなかったから、同ビラの内容は不正確であり、見出し等の体裁も併せ、これを見た者に誤解を生じさせるものというべきである。 そして、O支部が、コンプラ活動等を同支部の意向に沿う結果を得るための方策として活用していたことは、M電建に対する同活動等にも当てはまるものといえ、原判決の認定を含む前記⑴の事実に、これらがK事件と時期が重なることも併せると、本件現場に対するコンプラ活動及びその後の本件ビラの配布行為は、アウト対策の一環として行われ、M電建に対して直接的に、またグループ会社であるMを通じて間接的に圧力を掛け、同現場の生コン購入先をQ8からP1協組加盟業者に変更させること等を積極的に意図したものと認められる。 このような目的及び意図の下 して直接的に、またグループ会社であるMを通じて間接的に圧力を掛け、同現場の生コン購入先をQ8からP1協組加盟業者に変更させること等を積極的に意図したものと認められる。 このような目的及び意図の下で行われたO支部のM電建に対するコンプラ活動等の一連の行為は、Q8との生コン供給契約の継続が、本件現場へのコンプラ活動や自社の信用に影響するビラの配布を更に招いて、同現場の工事遂行に支障を生じさせかねないとする強い心理的圧迫をM電建に与えたものと認められ、同社がビラ配布を受けた直後 - 50 -に警告書を送付し、これを受けた同支部が回答書を返しながら、その後の活動をやめた経過にも照らせば、労働組合活動として社会的相当性があったとみることはできず、正当行為に当たり違法性が阻却されるともいえない。原判決の判断は、これと同旨のものと解することができ、是認し得る。所論は採用することができない。 ⑶ 所論③についてM事件について、被告人A1と共犯者らの間に意思の連絡があったことは、K事件と同様の理由(同事件の控訴趣意に関する前記第3 の3⑵)が当てはまり(B4は、原審(第37 回)において、11 月18 日にD7と被告人A1に電話をかけ、M電建の現場にコンプラ活動に行く旨を伝えた旨や、同社から警告文が送付されたことを被告人A1に報告した旨を述べた。)、B4が被告人A1からコンプラ活動等の中止を指示されたことからも認められる。また、被告人A3については、その地位・立場、会議や活動前の意思統一を経て、本件現場のコンプラ活動に参加し、実行行為の一部に関わったことから、M事件に関し、共犯者らと意思連絡があったものと認められる。 被告人A1及び被告人A3の故意及び共謀を認めた原判決に誤りはなく、所論は採用することができない。 ⑷ 以上のとおり、原判示第 とから、M事件に関し、共犯者らと意思連絡があったものと認められる。 被告人A1及び被告人A3の故意及び共謀を認めた原判決に誤りはなく、所論は採用することができない。 ⑷ 以上のとおり、原判示第5につき、被告人A1及び被告人A3に威力業務妨害罪の成立を認めた原判決は正当である。原判決に事実誤認及び法令適用の誤りはなく、論旨は理由がない。 第4 訴訟手続の法令違反の控訴趣意について所論はK事件と同旨の主張であり、原判決の説示が弁護人の主張に的確に答えたものといえないこと等も、同事件に関して説示したとおりである。 しかし、既述したように、原判決の認定及び関係証拠から認められる諸事実によれば、M電建に対するコンプラ活動等の一連の行為は正当といえず、社会的相当性があったとみることはできないし、正当行為として違法性が阻却されるともいえない。K事件の場合と同様、原判示第5の行為が威力業務妨害罪に当たることは原判決に示され、その結論は正当であるから、判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反があるとはいえない。所論は採用することができず、論旨は理由がない。 - 51 -(公訴権濫用に関する主張について)論旨は、本件各事件、少なくともI事件に係る起訴は、捜査側が、労働組合を嫌悪する一部生コン業者とゼネコンの意向を基に、O支部から組合員を脱退させ、組合を弱体化させることを目的とした違法・不当なものであり、公訴権の濫用にほかならず、公訴棄却の判決を言い渡すべきであるのに、原判示の各事実を認め、被告人らを有罪とした原判決は、違法であるからこれを取り消し、本件各公訴を棄却すべきであると主張する。 しかし、本件各事件の起訴が検察官の訴追裁量を逸脱したものといえず、捜査の過程に公訴提起の効力に影響を及ぼすような職務違反があったといえない れを取り消し、本件各公訴を棄却すべきであると主張する。 しかし、本件各事件の起訴が検察官の訴追裁量を逸脱したものといえず、捜査の過程に公訴提起の効力に影響を及ぼすような職務違反があったといえないことは、原判決説示のとおりであり、記録を検討しても、その判断に不合理な点は認められない。論旨は理由がない。 (結論)第1 前記のとおり、被告人A1について原判示第1の恐喝の事実を認めた原判決には事実誤認があり、この部分の破棄は免れないものの、その余の事実を認めた点は正当として是認することができる。しかし、原判決は、原判示の各事実を併合罪として1個の刑を言い渡したから、結局、被告人A1については全部破棄を免れない。 そこで、刑訴法397条1項、382条により、原判決中、被告人A1に関する部分を破棄し、同法400条ただし書に従い、更に次のとおり判決する。 (罪となるべき事実)次の点(略)を改めるほかは、原判決が認定した「罪となるべき事実」の冒頭部分及び原判示第2ないし第5の各記載のとおりなお、原判示第2ないし第5の各行為に係る違法性阻却事由の主張に対する判断は、該当する各事件の控訴趣意に対する判断において説示したとおりである。 (証拠の標目)略(法令の適用)略(無罪の言渡し)E事件に関する控訴趣意について判断したとおり、原判示第1 と同旨の公訴事実につい - 52 -ては、被告人A1及びB1が恐喝の実行行為を行ったと認めるに足りる証拠はなく、犯罪の証明がないことに帰するから、刑訴法336条後段により無罪の言渡しをする。 第2 被告人A2、被告人A3、被告人A4及び被告人A5については、それぞれの控訴に理由がないから、刑訴法396条により本件各控訴を棄却し、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第3刑事部(裁判長裁判官石 被告人A2、被告人A3、被告人A4及び被告人A5については、それぞれの控訴に理由がないから、刑訴法396条により本件各控訴を棄却し、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第3刑事部(裁判長裁判官石川恭司・裁判官中川綾子・裁判官國分進) (別紙1)当事者目録略(別紙2)書面目録略(別紙3)略称等一覧表略別表1(平成27年。場所は滋賀県内)番号日 時場 所行為者行 為 3月25日3月27日3月30日e新築工事現場B4らO支部組合員3名3回にわたり、左記工事現場監督であったQ16建設株式会社のF6に対し、道路占用許可の取得範囲から工事関係車両がはみ出ている、生コン車のナンバープレートが汚れて見えにくい、道路が汚れている、現場から側溝に排水が流れ出た可能性がある旨指摘した。また、現場にいたEの生コン車誘導員がO支部組合員の写真撮影をしたなどとして、謝罪文の作成を要求したり、道路の清掃について話し掛けたりなどした。 3月25日4月11日栗東市f新築等建設工事現場O支部組合員3名左記工事現場監督であったQ17工務店のF7に対し、道路が汚れている、工程表が掲示されていない、掲示板に記載された工期が過ぎている、工程表が掲示されていないなどと指摘した。 3月31日4月1日頃野洲市g宅地造成工事現場O支部組合員3名Q12建設の下請業者で、左記工事の現場責任者であるQ18建設工業株式会社のF8に対し、道路の汚れや工事現場からの排水が汚染水である疑いを指摘したり、道路の汚れ、これを洗った水が側溝に流れるのはどうするのかなどと指摘したりした。 その後も、O支部組合員らは、約1か月にわたり、ほぼ毎日か二日に1回くらいの頻度で同工事現場を訪れ、道路使用許可の有無を確認したり、 れを洗った水が側溝に流れるのはどうするのかなどと指摘したりした。 その後も、O支部組合員らは、約1か月にわたり、ほぼ毎日か二日に1回くらいの頻度で同工事現場を訪れ、道路使用許可の有無を確認したり、建設業許可の看板が掲示されていないなどと指摘したりした。 4月6日守山市のh工事現場B4らO支部組合員ら左記工事現場責任者である株式会社Q19のF9に対し、コンプラ違反のパトロールであるとして、Q12建設が産業廃棄物を川に投棄したなどと記載したビラを渡した上、生コン車に積載荷重の数字が貼られていないものがある、生コン車後部に付いているシュートの下に袋を付けて走行することは道路交通法違反ではないか、生コン車が工事現場に左折進入する際に大回りして反対車線に入るのは違反ではないか、工事現場から汚染水を流しているのではないかなどと指摘した。また、現場にいたEの生コン試験官が、組合員らの写真撮影をしたとして、謝罪文を出すよう要求し、Q19に断られると、F9に対し、謝罪文又はEに対する改善指導書の提出を求め、出さない場合は毎日来るなどと告げた。 その後、約2か月にわたり、O支部組合員らが同現場を複数回訪れ、生コン車の運転席のひさしの大きさ等、法令違反の疑いがある旨指摘するなどした。 5月18日野洲市iの集合住宅工事現場O支部組合員2名左記工事現場の責任者であったQ5のF10に対し、道路の汚れを指摘し、F10らが清掃するのを確認するまで約一、二時間現場に滞在した。 E事件(原判示第1)関係 別表2(平成29年)番号日 時場 所行為者行 為 2月25日午前9時15分頃から午後零時頃までの間大津市所在のG施工の一般住宅工事現場B4B5氏名不詳者1名G工事部京滋工事課長のH1及びGの下請業者である 所行為者行 為 2月25日午前9時15分頃から午後零時頃までの間大津市所在のG施工の一般住宅工事現場B4B5氏名不詳者1名G工事部京滋工事課長のH1及びGの下請業者であるQ20工務店従業員のH3らに対し、道路使用許可証のとおりに作業ができていないのですぐに車を移動するように、道路の汚れ防止のため工事現場の敷地内に敷いたブルーシートがはみ出ているのが道路占有許可を取っていないのであればすぐに収めるようになどと告げ、打設途中の生コンの打設作業だけでも続行させてほしい旨懇願するH3に対し、直ちに作業を中断するよう告げた上、側溝の蓋を全部上げて掃除をするように、道路が汚れているので洗うように、敷地内にとめたミキサー車のサイドミラーが道路にはみ出ているなどと告げた。 G現場監督者のH2に対し、「G㈱ 強アルカリ性の反応が!現場前側溝に生コン汚水を垂れ流し!!」などと記載したビラを手渡し、Gの現場では道路を汚したり側溝に汚水を流したりしているなどと告げ、同ビラを配布する旨の気勢を示した。 さらに、左記現場への資材搬入車両運転手のH4に対し、運転席と助手席の間のカーテンが閉まっている、安全窓が見えない、車検証のシールが貼っていないなどと告げた。 G事件(原判示第2)関係 3月3日午前11時30分頃から午後零時22分頃までの間大津市所在のG施工の一般住宅工事現場被告人A2被告人A3B3 別表3(平成29年)番号日 時場 所行為者行 為 3月10日大阪市a区所在のQ7商事大阪支店C5他社と契約する予定である旨述べたQ7商事大阪支店長・J1に対し、大変なことになるなどと告げた 3月21日3月22日滋賀県東近江市所在のQ4第2期工事現場氏名不詳者らI大阪支店 C5他社と契約する予定である旨述べたQ7商事大阪支店長・J1に対し、大変なことになるなどと告げた 3月21日3月22日滋賀県東近江市所在のQ4第2期工事現場氏名不詳者らI大阪支店従業員でQ4第2期工事現場所長のJ3に対し、ゲートに置いたカラーコーンが敷地からはみ出ており道路使用許可がいるのではないか、1㎝程度はみ出ていた仮囲いについて、はみ出ているから中に入れるよう告げるなどした。 3月22日滋賀県内C6電話で、J1に対し、前記嫌がらせを中止する条件として、Q7商事大阪支店とQ1の間の生コン供給契約の締結等を要求した。 3月23日大阪市a区所在のQ7商事大阪支店C5前記契約に否定的な態度を示すJ1に対し、滋賀だけでは済まない、大阪で何か起こるかもしれないなどと告げた。 3月25日3月27日3月29日3月30日4月4日4月13日4月27日7月3日滋賀県東近江市所在のQ4第2期工事現場被告人A2被告人A3B4、B9B10、B1 B11、B1 B5氏名不詳者ら8回にわたり、I大阪支店従業員でQ4第2期工事現場監督者のJ4らに対し、ダンプカーの車検証のステッカーが見えない、ゲートの先端が道路に越境しているが道路占有許可を取っているのかなどと告げた。 5月24日5月25日5月26日5月29日5月30日京都府八幡市所在のj工事現場被告人A3B11B13I大阪支店従業員で左記現場監理技術者のJ6らに対し、ますや水路に汚泥が入っている、建設業許可の看板が掲示されていないのではないかなどと告げた。 5月15日6月 7日6月19日大阪市a区所在のI大阪支店前路上等B6、B7B8B14B15、B1 B17氏名不詳者ら3回にわたり、 れていないのではないかなどと告げた。 5月15日6月 7日6月19日大阪市a区所在のI大阪支店前路上等B6、B7B8B14B15、B1 B17氏名不詳者ら3回にわたり、通行人に「㈱I(Q5グループ)施工の現場汚泥が道路に散乱している!」などのI等の信用を害する内容のビラを配布した。 4月5日京都府内B3当時Q4第2期工事現場に生コン打設のためのポンプ車を供給していたQ3代表取締役のJ7に電話をかけ、同人に同現場へのポンプ車供給を止めるよう告げ、同現場へのポンプ車の供給を中止させて、同工事の進行を妨害した。 I事件(原判示第3)関係 別表3(平成29年)番号日 時場 所行為者行 為I事件(原判示第3)関係 4月25日大阪市a区所在のQ5工業B2Q5マンション事業推進部マンション技術部施工推進グループ長のJ8に対し、同社グループ会社のIがコンプライアンス違反をしている旨の内容のビラを示し、Q4の件についてIからQ1に連絡するように伝えてほしい、そうすれば予定されている同ビラの配布は中止する旨告げた。 注記 一部氏名の表記は常用漢字による。 別表4(平成29年)番号日 時場 所行為者行 為 11月17日大津市所在のK大阪支店が施工するQ10店舗新築工事現場B4、B11B18K大阪支店の下請業者Q2建設従業員で現場監督のL1らに対し、道路の汚れやこれを洗った汚水が側溝に流れ出ているなどと告げた。 11月28日大阪市k区所在のK大阪支店被告人A5B5K大阪支店購買積算部購買課長のL2に対し、「K㈱施工現場発注者Q10㈱でコンプライアンス違反が発覚!」、「施工業者のK㈱に順法精神は無いのでしょうか?」などとK等の信用を害する内容が記 B5K大阪支店購買積算部購買課長のL2に対し、「K㈱施工現場発注者Q10㈱でコンプライアンス違反が発覚!」、「施工業者のK㈱に順法精神は無いのでしょうか?」などとK等の信用を害する内容が記載されたビラを渡した上、こういうことをしてていいのかなどと告げた。 11月29日頃から11月30日頃までの間滋賀県栗東市に居住するQ10の代表取締役方等氏名不詳者ら前記1の工事の施主であるQ10代表取締役方等に前記2のビラを投かんした。 K事件(原判示第4)関係 別表5(平成29年)番号日 時場 所行為者行 為 11月20日M電建が施工する滋賀県草津市所在のcビル新築工事現場被告人A3B11、B 左記工事現場の工事長であるN3に対し、生コンの洗い水が側溝に出ているのではないか、pHを測ったのかなどと告げた。 11月30日M電建のグループ会社であるMが経営する大津市所在のMd前路上B11、B 左記ホテル従業員らに対し、「㈱M電建施工ビジネスホテル建設工事」、「建設現場内に大量の産業廃棄物が堆積!」、「現場前側溝の際まで迫る強アルカリ性の汚水・汚泥!」などとM電建の信用を害する内容が記載されたビラを配布した。 M事件(原判示第5)関係

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る