令和5年2月20日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成30年(ワ)第10590号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和4年11月15日判決原告トラタニ株式会社 同訴訟代理人弁護士今西康訓同宇津呂修同渡邉りつ子同細場健太同補佐人弁理士鈴江正二 同木村俊之同吉村哲郎同渡辺容子被告株式会社タカギ同訴訟代理人弁護士藤本英二 同富永夕子同金順雅同補佐人弁理士藤本英夫同西村幸城 主文 1 被告は、別紙被告製品目録記載の各製品を製造し、輸入し、販売し、又は販売のための申出をしてはならない。 2 被告は、前項の各製品を廃棄せよ。 3 被告は、原告に対し、2766万7645円及びこれに対する平成30年12月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は、これを5分し、その2を原告の、その余を被告の負担とする。 6 この判決は、第3項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1、2項と同旨 2 被告は、原告に対し、4400万円及びこれに対する平成30年12月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、後記特許権(以下「本件特許権」という。)の共有者である原告が、被告が製造販売する別紙被告製品目録記載の各製品(以下総称して「被告製品」といい、 個別には目録記載の番号に応じて「被告製品1-1」などという。)が後記本件発明の技術的範囲に属すると主張して、被告に対し、特許法100条1項及び2項に基 品(以下総称して「被告製品」といい、 個別には目録記載の番号に応じて「被告製品1-1」などという。)が後記本件発明の技術的範囲に属すると主張して、被告に対し、特許法100条1項及び2項に基づき、被告製品の製造販売等の差止め等を求めるとともに、民法709条に基づき損害金4400万円及びこれに対する上記販売行為の後日である平成30年12月8日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5 分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。(損害賠償請求は、債権譲渡を受けた相共有者の持分に基づく分を含んでいる。) 1 前提事実(争いのない事実、後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実。枝番号のある証拠で枝番号の記載のないものは全ての枝番号を含む。)(1) 当事者 原告は、衣料品の製造、販売等を目的とする株式会社である。 被告は、メリヤス製品及び布帛製品の製造販売等を目的とする株式会社である。 (2) 本件特許権原告は、以下の特許(以下「本件特許」といい、その特許出願の願書に添付 された明細書及び図面を「本件明細書」という。また、本件特許の特許請求の 範囲請求項1に係る発明を「本件発明」という。)に係る特許権(本件特許権)を共有する。本件明細書の記載は、別紙特許公報記載のとおりである。 特許番号特許第4213194号発明の名称下肢用衣料出願日平成17年8月22日 登録日平成20年11月7日特許権者原告、株式会社ゴールドウイン(令和2年4月1日、株式会社ゴールドウインテクニカルセンターを吸収合併して承継。甲64、弁論の全趣旨。)(3) 構成要件の分説 本件発明を構成要件に分説すると、次のとお ールドウイン(令和2年4月1日、株式会社ゴールドウインテクニカルセンターを吸収合併して承継。甲64、弁論の全趣旨。)(3) 構成要件の分説 本件発明を構成要件に分説すると、次のとおりである。 A 大腿部が挿通する開口部の湾曲した足刳りとなる足刳り形成部を備えた前身頃と、B この前身頃に接続され臀部を覆うとともに前記前身頃の足刳り形成部に連続する足刳り形成部を有した後身頃と、 C 前記前身頃と前記後身頃の各足刳り形成部に接続され大腿部が挿通する大腿部パーツとを有し、D 前記前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置し、E 前記後身頃の足刳り形成部の下端縁は臀部の下端付近に位置し、F 前記大腿部パーツの山の高さを前記足刳り形成部の前側の湾曲深さより も低い形状とし、G 前記足刳り形成部の湾曲部分の幅よりも前記山の幅を広く形成し、H 取り付け状態で筒状の前記大腿部パーツが前記前身頃に対して前方に突出する形状となることを特徴とするI 下肢用衣料。 (4) 被告の行為 被告は、遅くとも平成27年9月頃から被告製品1-1、同2-1及び同3-1の、遅くとも同年12月頃から被告製品1-2、同2-2及び同3-2の、製造、輸入、販売及び販売のための申し出を行った。 (5) 被告製品の構成及び構成要件の充足原告が主張する被告製品の構成は、別紙被告製品の構成(原告主張)のとお りである。被告製品の構成のうち、本件発明に対応する部分の構成はいずれも同一であり、被告製品における構成要件の充足性の争点は共通である。 被告製品は、本件発明の構成要件A~C、E~G及びIを充足する。 (6) 原告による原告製品の販売原告は、平成21年5月頃には商 であり、被告製品における構成要件の充足性の争点は共通である。 被告製品は、本件発明の構成要件A~C、E~G及びIを充足する。 (6) 原告による原告製品の販売原告は、平成21年5月頃には商品名をそれぞれ「美尻ローライズショーツ」 (以下「107番製品」という。)及び「美尻ショーツ」(以下「407番製品」という。)とする製品の販売を開始し、平成25年5月頃には商品名を「もっちりレースボックスショーツプレーン」とする製品(以下そのうち「セミ丈」とされるものを「220番製品」、「普通丈」とされるものを「420番製品」といい、これらと前記2つの製品を併せて「原告製品」という。)の販売を開始し た(甲11、12、48~50)。 (7) 相共有者の損害賠償請求権の譲渡相共有者は、平成28年6月15日、被告に対する本件特許権侵害に基づく損害賠償請求権を原告へ譲渡し、同月23日、その旨を被告に通知した(甲52)。 また、相共有者は、令和3年1月15日、被告に対する本件特許権侵害に基づく損害賠償請求権を原告へ譲渡し、同月18日、その旨を被告に通知した(甲72)。 なお、相共有者は、本件発明を実施していない。 2 争点 (1) 被告製品が構成要件Dを充足するか(争点1・請求原因) (2) 被告製品が構成要件Hを充足するか(争点2・請求原因)(3) 本件特許に明確性要件違反(特許法36条6項2号)の無効理由が存するか(争点3・抗弁)(4) 原告の被った損害額(争点4)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告製品が構成要件Dを充足するか)について【原告の主張】(1) 「腸骨棘点付近」の意義構成要件Dの「腸骨棘点」とは、人体の腸骨にある4つの棘である腸骨棘のうち、上前 1 争点1(被告製品が構成要件Dを充足するか)について【原告の主張】(1) 「腸骨棘点付近」の意義構成要件Dの「腸骨棘点」とは、人体の腸骨にある4つの棘である腸骨棘のうち、上前腸骨棘点を意味し、「腸骨棘点付近」とは、上前腸骨棘点を中心とし つつ、下前腸骨棘点をも含む意味である。 本件明細書の記載によれば、本件発明の下肢用衣料は、大腿部を屈曲した姿勢に沿う立体形状に作られるものである。大腿部の屈曲により体表上に表れる鼠径溝が「お腹側の足の付け根」として上前腸骨棘と下前腸骨棘の間付近を通る部分とされること、及び本件発明の実施形態につき前身頃の足刳り形成部2 4の一番高いところが足の付け根の腸骨棘点a付近を通過し、腸骨棘点a付近から前方の生地の立体方向性が確保される旨の本件明細書の記載を考慮すれば、「腸骨棘点a」とは、足の付け根である鼠径溝に位置すると理解できる。 また、腸骨棘の一つである下前腸骨棘も鼠径溝に沿った位置にあるといえること、上前腸骨棘と下前腸骨棘とは2~3センチメートル離れているにとどま ること、下肢用衣料の形状は着用者の身体的個体差や実際の着用方法ないし着用状態に左右されること、屈曲により体表上に表れる鼠径溝の形状ないし深さが屈曲の程度に左右されると考えられること等の事情を踏まえると、大腿部を屈曲した姿勢に沿う立体形状とすることを発明の効果とする本件発明の下肢用衣料につき、腸骨棘点「付近」の意義を限定的に解するのではなく、一定程 度の広がりを有するものとして、前記のとおり解するのが相当である。 (2) 構成要件Dの充足性前記(1)のとおり、本件発明の下肢用衣料の形状は、着用者の身体的個体差等に左右されることから、構成要件Dの充足性の判断に当たっては、被告製 相当である。 (2) 構成要件Dの充足性前記(1)のとおり、本件発明の下肢用衣料の形状は、着用者の身体的個体差等に左右されることから、構成要件Dの充足性の判断に当たっては、被告製品の設計時に想定されたであろう着用状態を前提として検討するべきである。 被告製品の着用写真等からすると、設計時に想定された着用状態において、 足刳り形成部の湾曲部分、すなわち脚口パーツと身頃部のパーツとの縫合線は、鼠径溝に沿うように位置している。 また、被告製品のMサイズについて、人体の模型(服飾用途のボディ・フォーム)に着用させたものを撮影した写真と、成人女性のレントゲン写真とを重ね合わせた結果、被告製品の前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点は、上前腸 骨棘付近から下前腸骨棘付近までに位置している。 したがって、被告製品は、いずれも、前身頃12の足刳り形成部24の湾曲した頂点が、下前腸骨棘付近、すなわち「腸骨棘点付近」に位置しているといえる。 よって、被告製品は、本件発明の構成要件Dを充足する。 【被告の主張】(1) 「腸骨棘点付近」についてア 「腸骨棘点付近」の意義構成要件Dの「腸骨棘点」は上前腸骨棘点を意味し、「腸骨棘点付近」は、上前腸骨棘点の位置ないしその付近を指し、少なくとも下前腸骨棘点を含ま ない。 「腸骨棘点」の語は、上前腸骨棘点を指す意味で用いられる場合があり、上前腸骨棘の最下端の点を指す。「腸骨棘点」が、その余の3つの腸骨棘を意味する語として用いられる例は見当たらない。 イ本件明細書の記載 本件明細書には、本件発明の下肢用衣料は、股関節の屈伸運動が円滑に行 われ、運動に適したものを提供することを目的として、大腿部を屈曲した姿勢に沿う立体形 イ本件明細書の記載 本件明細書には、本件発明の下肢用衣料は、股関節の屈伸運動が円滑に行 われ、運動に適したものを提供することを目的として、大腿部を屈曲した姿勢に沿う立体形状に作られるものであり、その実施形態について、基本の立体形状が、着用者が前屈みに軽く屈曲した姿勢に沿い、足の運動性に適した形状に形成されることや、足刳りのパターンの形状の工夫により身体の腸骨棘点a付近から前方の生地の立体的方向性が確保されるため、着用時に股関 節の前方への屈伸抵抗が少なく運動しやすい等の記載がある。 このような記載からすれば、本件発明の下肢用衣料は、着用者が軽く前屈みになり大腿部を屈曲させた姿勢に沿うという作用効果を実現するために、「前記前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点」が、着用者が前屈みの姿勢をとったときに大腿部が前方に突出する起点となる大腿部の最も高い位置(以 下「起点」という。)にある必要がある。そして、人体の大腿部は、前屈みの姿勢をとると、その屈曲の深浅にかかわらず、上前腸骨棘の位置ないしその付近から前方に突出する。そのため、前記起点は、上前腸骨棘の位置付近にあるといえる。 これに対し、「前記前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点」が起点よりわ ずかでも下方にある場合、大腿部パーツが前方に突出する位置と起点とが合わず、着用者が大腿部を屈曲した姿勢に沿い、足の運動性に適した形状に形成されるという本件発明の作用効果は得られない。したがって、「腸骨棘点付近」に、起点よりも下方の位置は含まれない。 ウ技術常識 下肢用衣料において、脚開口部のカット状態がハイレグカットと言われる転子点から殿溝、陰部大腿溝及び上前腸骨棘点を通り、転子点に至る線に沿ってカットされたものにしなければ、脚の付け根 識 下肢用衣料において、脚開口部のカット状態がハイレグカットと言われる転子点から殿溝、陰部大腿溝及び上前腸骨棘点を通り、転子点に至る線に沿ってカットされたものにしなければ、脚の付け根部分(鼠径部)が圧迫され、足の動きが妨げられることは技術常識である。 本件明細書には、実施例における前身頃12の足刳り形成部24について、 股底点脇から上方に延出して足の付け根の腸骨棘点a付近を通過し、大腿部 外側上方の転子点b付近の上方を通過して湾曲し、後側下向きに延出して、後身頃14の足刳り形成部32に連続すること、後身頃14の足刳り形成部32は、臀部の下端部に沿って股底点付近に達していること、足刳り形成部24の一番高いところは腸骨棘点a付近であることが記載されている。当該記載にかかる「腸骨棘点a」、「転子点b」、「臀部の下端部」及び「股底点付 近」は、前記ハイレグカットの「上前腸骨棘点」、「転子点」、「殿溝」及び「陰部大腿溝」に相当する。これに加え本件明細書上の図1及び図2の記載をも考慮すると、前記のとおりの本件明細書の記載は実質的にはハイレグカットかそれより深いカットラインの採用に言及するものと把握される。本件明細書上、前記記載以外に、ハイレグカットより浅いカットラインの採用に言及 するような記載は見当たらない。 したがって、本件発明の「腸骨棘点付近」とは、ハイレグカットかそれより深いカットラインに対応するものであると理解できる。 (2) 被告製品は構成要件Dを備えないこと消費者が実際に被告製品を着用する場合、被告製品における前身頃12の足 刳り形成部24の湾曲した頂点は、上前腸骨棘及び下前腸骨棘よりも下方にある転子点に最も近い位置にある。 したがって、被告製品の「足刳り形成部の湾 する場合、被告製品における前身頃12の足 刳り形成部24の湾曲した頂点は、上前腸骨棘及び下前腸骨棘よりも下方にある転子点に最も近い位置にある。 したがって、被告製品の「足刳り形成部の湾曲した頂点」は、上前腸骨棘の位置を意味する「腸骨棘点付近」に位置するとは言えない。このことは、仮に「腸骨棘点付近」に下前腸骨棘付近を含む場合でも、同様である。 よって、被告製品は構成要件Dを充足しない。 (3) 原告の主張に対する反論原告は、被告製品の「足刳り形成部の湾曲した頂点」について、「被告製品の設計時に想定されたであろう着用状態」を前提として検討するべきであると主張する。 しかし、被告製品は、幅広い年齢層の一般女性消費者を念頭に置いたはき心 地の良さという抽象的な着用状態を意識して設計されたものの、具体的着用状態を明確に特定して設計されたものではないため、原告が主張する着用状態を想定して検討するのは相当でない。 仮に、被告製品の設計時に想定されたであろう着用状態を想定した場合でも、被告において開発担当者と販売広告担当者は異なり、被告製品に係る宣伝文句 は設計時に想定されたであろう着用状態を反映するものではない。また、被告製品は、消費者の動きによってヒップ部分がずり上がらない状態を保持できるよう、前身頃と脚口パーツの縫合部がそれほど上方に位置せず、少なくとも鼠径溝よりも下方に位置する状態で着用することが想定される。 原告が提出する写真報告書は、使用された人体の模型のⅤラインが標準的な 女性の鼠径溝のラインを示すものであるかが不明であるし、比較に用いられているレントゲン写真がインターネット上から引用された出所不明のものであり、一部が変形性股関節症と称する人物のもので標準的な体型 女性の鼠径溝のラインを示すものであるかが不明であるし、比較に用いられているレントゲン写真がインターネット上から引用された出所不明のものであり、一部が変形性股関節症と称する人物のもので標準的な体型のものとはいえなかったり、皮下組織の厚みを考慮しない縮尺が不正確な状態で照合していたりするなど、信用性が認められない。 2 争点2(被告製品が構成要件Hを充足するか)について【原告の主張】(1) 構成要件Hの意義本件発明は、大腿部パーツの山の高さ(h1)を足刳り形成部の前側の湾曲の深さ(h2)よりも低い形状とし(構成要件F)、足刳り形成部の前側の湾曲 部分の幅(w2)よりも大腿部パーツの山の幅(w1)が広く形成されること(構成要件G)、すなわち、特定の範囲において一定に保たれた足刳り形成部の湾曲部分の高さ及び幅と、大腿部パーツの山の高さ及び幅との関係(h1<h2、w1>w2)に起因して、足刳り形成部に取り付けられた筒状の大腿部パーツが、前身頃に対して前方に突出するという形状(構成要件H)が実現さ れるという点に技術的意義を有する。 このように、本件発明は、構成要件F及びGにより構成要件Hを得ることを基本的な技術思想にしているが、このことは、構成要件F及びGが構成要件Hを得るための十分条件であることを意味しない。衣料には様々な構成が考えられる上、各パーツが有機的に結合していることから、例えば、構成要件F及びGによる大腿部パーツを前方へ突出させようとする作用に対し、それを妨げる 方向に作用する構成が採用される等、構成要件F及びGを充足する場合でも、構成要件Hを充足しない場合があり得るが、構成要件Hは、このような構成を除外する独自の技術的意義を有する。 (2) 被告製品が構成要件Hを備えるこ 採用される等、構成要件F及びGを充足する場合でも、構成要件Hを充足しない場合があり得るが、構成要件Hは、このような構成を除外する独自の技術的意義を有する。 (2) 被告製品が構成要件Hを備えること被告製品は構成要件F及びGを充足する。また、被告製品には、構成要件F 及びGを充足した場合でも、脚口パーツの前方突出を阻害する構成は設けられていない。 被告製品の宣伝広告には、「平らなところに超立体ショーツを置くと、脚口がこんなにも立つんです。」、「脚口が超立体化」との宣伝文句や、脚口パーツが前方に突出していることを強調している写真が掲載されている。実際に、原告 が保有する被告製品の現物は、前記の被告製品の宣伝広告写真と同様に、脚口パーツが前身頃に対して前方に突出している。 以上より、被告製品は、前身頃と後身頃の各足刳り形成部と、大腿部パーツとを取り付けた状態で、大腿部パーツが前身頃に対して前方に突出する形状となっていることから、構成要件Hを充足する。 【被告の主張】(1) 構成要件Hの意義原告は、構成要件F及びGより構成要件Hが得られる旨を主張するが、構成要件Fと構成要件Hとの間に相関関係が存在することを本件明細書の記載から理解することができない。すなわち、本件明細書の記載によれば、本件発明 の大腿部パーツ18はわずかに内側に湾曲する曲線で形成された裾部36が 設けられているところ、この裾部36を直線にした場合や外側に湾曲する曲線で形成した場合、裾部36の形状によって大腿部パーツの山の高さ(h1)は異なる。このh1の変化に伴い、足刳り形成部の前側の湾曲の深さ(h2)も変化するか否かは不明であるが、変化しない場合はh1がh2より大きくなる場合があり、変化する場合には変化したh の高さ(h1)は異なる。このh1の変化に伴い、足刳り形成部の前側の湾曲の深さ(h2)も変化するか否かは不明であるが、変化しない場合はh1がh2より大きくなる場合があり、変化する場合には変化したh2をどのように特定すればよいのか が本件明細書の記載からは理解できない。しかし、いずれの場合でも、足刳り形成部24及び25に縫い付けられる大腿部パーツの山40aの縁部の形状は同一であるから、裾部36の形状の違いによってh1<h2が成立するか否かにかかわらず、縫い付け後の大腿部パーツの前方突出の有無が変わらないのは自明である。したがつて、構成要件Fに係る大腿部パーツの山の高さ(h1) と足刳り形成部の前側の湾曲の深さの関係と、大腿部パーツの前方突出(構成要件H)との間に相関関係はない。 構成要件Gは、大腿部パーツの山の幅(w1)が足刳り形成部の前側の湾曲部分の幅(w2)よりも広く形成されることを規定するが、その差の大きさについては何ら規定していない。故に、w1とw2の差が均一かつ僅少である場 合も含まれ、この場合構成要件Gによって得られる構成要件Hに係る大腿部パーツの突出は、目視で確認することができないような微小突出で足りる(以下当該解釈を「第1解釈」という。)。 一方、本件明細書には、本件発明の作用効果について、本件発明に係る下肢用衣料が「大腿部を屈曲した姿勢に沿う立体形状」に作られ、股関節の屈伸運 動に対して生地の伸長が少なく、生地に係る張力が小さい状態で運動を行うことができることにより、屈伸運動等の際に生地による抵抗が少なく、体にかかる負担が少なく円滑に運動することができる旨の記載がある。大腿部を屈曲した姿勢では、体幹部と大腿部とが「く」の字に折れ曲がった状態になること等を踏まえれば、この「大腿部を屈曲し 抗が少なく、体にかかる負担が少なく円滑に運動することができる旨の記載がある。大腿部を屈曲した姿勢では、体幹部と大腿部とが「く」の字に折れ曲がった状態になること等を踏まえれば、この「大腿部を屈曲した姿勢に沿う立体形状」を実現するため、 構成要件Hに係る大腿部パーツは、一律に前方に突出する形状をいうのではな く、その下側ほど前方に大きく突出する形状をしている必要がある(以下当該解釈を「第2解釈」という。)。 第1解釈を採った場合、構成要件Hに係る大腿部パーツの突出が、下側ほど前方に大きく突出する形状ではない、目視で確認することができないような微小突出を含むため、本件発明が発明の効果を奏しないことになる。また、第2 解釈を採った場合、w1とw2の差の大きさについて何ら規定しない構成要件Gによっては大腿部パーツがその下側ほど前方に大きく突出する形状をしているとの構成要件Hが得られないことになる。 このように、第1解釈及び第2解釈のいずれにも問題があり、他の解釈が存在する可能性もあるが、その内容が不明である。したがって、構成要件Hは合 理的に解釈することができない。 (2) 被告製品が構成要件Hを備えないこと被告製品が、前記(1)のとおり合理的に解釈することができない構成要件Hを充足することはない。 3 争点3(本件特許に明確性要件違反(特許法36条6項2号)の無効理由が存 するか)について【被告の主張】構成要件Hは、「取付状態で筒状の前記大腿部パーツが前記前身頃に対して前方に突出する形状となる」というものであるが、前記2【被告の主張】のとおり合理的に解釈することができない。 原告は、構成要件F及びGを充足しながら、それを阻害する要因がある場合には大腿部パーツが前方に となる」というものであるが、前記2【被告の主張】のとおり合理的に解釈することができない。 原告は、構成要件F及びGを充足しながら、それを阻害する要因がある場合には大腿部パーツが前方に突出しない場合があり、構成要件Hを独立に規定する意義がある旨を主張するが、構成要件F及びGによる大腿部パーツを前方突出させようとする作用と、これを妨げる作用の大小の比較方法が不明であるため、構成要件Hの充足性を明確に判断することができない。このように、構成要件Hは、 第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 以上のとおり、構成要件Hを含む本件発明は明確でなく、本件特許には、特許法36条6項2号違反の無効理由(特許法123条1項4号)があることとなり、その権利行使は制限されるべきである(特許法104条の3第1項)。 【原告の主張】被告主張の、第1解釈についてみると、本件発明においては、大腿部の山の頂 点と、足刳り形成部の前側の湾曲部分の頂点とは互いに縫い合わされることを前提とするものであり、そのような場合にw1とw2の差が均一となることはないから、このような場合が含まれることを前提とする解釈は失当である。 第2解釈については、構成要件Fを考慮していないため失当である。すなわち、構成要件Gは、構成要件Fにより、同じ頂点から出発した場合に、足刳り形成部 の前側の湾曲部分の深さよりも、大腿部パーツの山の高さ(長さ)が短い状態で実現されるため、大腿部パーツの山の形状は、裾の部分に近づくほど大腿部パーツの山の幅(w1)と足刳り形成部の前側の湾曲の幅(w2)の差が大きくなり、取付状態において大腿部パーツが下側ほど前方に大きく突出する形状となることから、第2解釈もとれない。 構成要件Hは、最終 (w1)と足刳り形成部の前側の湾曲の幅(w2)の差が大きくなり、取付状態において大腿部パーツが下側ほど前方に大きく突出する形状となることから、第2解釈もとれない。 構成要件Hは、最終的に「取り付け状態で筒状の大腿部パーツが前身頃に対して前方に突出する形状となること」が示されれば充足性を判断できるため、構成要件F及びGの作用とこれを阻害する作用の大きさを個別に比較できる必要はない。以上のとおり、構成要件Hは明確である。 4 争点4(原告の被った損害額)について 【原告の主張】(1) 特許法102条1項の推定が適用できることア許法102条1項1号の特許権者等が「その侵害の行為がなければ販売することができた物」とは、侵害行為によってその販売数量に影響を受ける特許権者等の製品、すなわち、侵害品と市場において競合関係に立つ特許権者 等の製品であれば足りる。 イ原告が平成21年5月頃から販売する製品(107番製品及び407番製品)及び平成25年5月から販売する製品(220番製品及び420番製品)は、被告製品のスタンダード丈又はショート丈に相当する。原告製品及び被告製品は、いずれも①脚口の部分が前方に突出するように構成され、②脚口部分及びお尻の部分がずり上がらないという特徴(以下「本件特徴①」など といい、総称して「本件各特徴」という。)を有し、広告宣伝においても本件各特徴を強調して需要者を勧誘している。 ECサイト「楽天市場」内の被告のインターネット通販サイトに掲載されたユーザーレビューによれば、被告製品の購入動機として原告の製品と比較するため又は乗り替えを挙げる需要者が数多く存在する。これは、被告製品 の販売によって原告の利益が直接奪われていることを示すものである。 ウ以上 ば、被告製品の購入動機として原告の製品と比較するため又は乗り替えを挙げる需要者が数多く存在する。これは、被告製品 の販売によって原告の利益が直接奪われていることを示すものである。 ウ以上より、原告製品は、特許法102条1項1号の「侵害行為がなければ販売することができた物」に該当し、同項の適用がある。 (2) 推定される損害額ア被告製品の譲渡数量 平成27年9月から現在までの被告製品の譲渡数量は4万7073枚である。 イ原告製品の単位数量当たりの利益の額本件で採用された計算鑑定の結果を以下のとおり修正したものが原告製品の単位数量当たりの利益の額となり、その額は1枚当たり●(省略)●円 である。 (ア) 送料及び手数料送料手数料は原告がサービスの一環としてその一部を負担していること等を踏まえると、当該送料手数料を除いた場合の限界利益率を採用するべきである。 (イ) 外注工賃(派遣費用) 「外注工賃(派遣費用)」は、主に派遣従業員に関する費用である。派遣従業員の作業内容の約8割が検品作業であり、検品作業の対象には、ネット販売分のみならず卸売販売分も含まれるから、これを考慮する必要がある。 (ウ) 広告宣伝費 原告が行っているインターネット上の宣伝広告は、原告製品に直接向けられたものではない。特に、原告が楽天市場において広告枠を一定期間買い取る定額方式で支出した分については、掲載期間、場所及び時期等によって金額が変動するものの、需要者のクリック数や表示回数によって変動するものではなく、既に投入済みの固定費である。 (エ) 荷造運賃後納郵便は、卸売販売に要した送料や梱包費も含まれているため、卸売販売された原告製品の数を含めて按分 によって変動するものではなく、既に投入済みの固定費である。 (エ) 荷造運賃後納郵便は、卸売販売に要した送料や梱包費も含まれているため、卸売販売された原告製品の数を含めて按分するべきである。 (オ) ECサイト手数料、代引手数料これらの費用は、原告が顧客に対するサービスの一環としてその一部を 負担しているものであり、特許権の侵害者が販売した分までこのようなサービスを行うことを前提として経費として控除することは公平に反し、相当でない。 (カ) 給料手当・賞与固定給の従業員2名の業務は管理業務であり、その給与賞与は原告製品 の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費ではない。 また、パート従業員の作業内容は前記(イ)の派遣従業員と同様、卸売り販売分も含める必要がある。 (3) 原告の実施能力原告は、複数の下請メーカーに製造委託する方法で原告製品を生産しており、 平成27年9月1日から平成28年8月末日までの1年間における原告製品 の販売総数は合計●(省略)●枚である。同じ期間における原告の製品の総販売枚数は●(省略)●枚である。したがって、仮に被告製品の販売数量に相当する分の需要が原告製品に向かったとしても、原告は、それに対応できる実施能力を有する。 (4) 「販売することができないとする事情」について(被告主張に対する反論) アハイウエストタイプの存在被告製品には、原告製品にはないハイウエストタイプの製品が含まれる。 この点につき、特許権者である原告が販売することができないとする事情に該当すると認められるとしても、当該事情による影響はかなり限定的なものである。当該事情に相当する数量が被告製品の譲渡数量全体の5パーセント を超え ある原告が販売することができないとする事情に該当すると認められるとしても、当該事情による影響はかなり限定的なものである。当該事情に相当する数量が被告製品の譲渡数量全体の5パーセント を超えることはない。仮に、原告製品よりも低価格であることが販売することができないとする事情として認められる場合でも、前記割合の範囲内である。 イ競合品の存在被告は、ショーツの外形構造を無視して、原告製品及び被告製品とは類似 しない製品を競合品というものであって相当でない。 市場に多種多様な外形構造を有するショーツが販売されている事実を踏まえれば、ショーツの外形構造が需要者の購買動機に大きく影響しているのは明らかである。現に、被告も「超立体ショーツ」という商品の外形構造を端的に示す商品名を前面に打ち出して需要者を勧誘している。 ウ被告製品固有の特徴被告製品の主たる特徴は、「超立体ショーツ」という製品名に示されるとおり、本件各特徴にあり、この点が主要な顧客誘引力を有している。被告各特徴はいずれも目新しいものではなく、仮に、被告製品が肌に優しい、履きやすいという特徴を有していたとしても、その顧客誘引力は、本件各特徴に よるものを凌駕するほどのものではない。 エ価格差価格差が「販売することができないとする事情」に該当するためには、単に原告製品と被告製品との間に価格差が存在するというだけでは足りず、その相違によって両製品の市場が同一であるとは評価し得ないほどのものである必要がある。 本件では、原告製品と被告製品の需要者が共通し、被告製品によって原告製品の需要者が直接奪われている関係にあるため、両製品の価格差は本来「販売することができないとする事情」には該当せず、仮にこれが考慮され では、原告製品と被告製品の需要者が共通し、被告製品によって原告製品の需要者が直接奪われている関係にあるため、両製品の価格差は本来「販売することができないとする事情」には該当せず、仮にこれが考慮されるとしても、その影響は限定的である。 オ被告の営業努力 被告が主張する事情は、被告製品のみに限られるものではなく、被告が製造販売する製品全てに言えるものである。当該事情により被告製品に対する需要者の購買動機が形成されているとは言い難く、また通常の営業努力を超えた格別の営業努力もない。 (5) 特許法101条1項2号の適用に係る料率について 被告は、本件発明を実施することにより、被告製品において本件各特徴を実現している。本件各特徴は、需要者に対する大きな訴求力となっている。 また、原告と被告は、その製品の市場が共通する完全な競合関係にあり、通常であれば、被告は原告からの実施許諾を期待できない。 さらに、原告と被告の間には、本件に先立ち、本件特許権侵害を理由とする 別の被告製品に係る侵害訴訟が係属していた経緯があり、被告は、当該訴訟係属中に被告製品を製造販売していたと考えられるから、その製造販売につき故意又は重過失がある。 以上より、本件における実施料率は20パーセントを下らない。 (6) まとめ 以上より、下記アないしエの合計4336万5763円が、原告の被った損 害額である(なお、原告は、請求2項記載の請求額は維持している。)。 ア特許法102条1項1号に基づく損害額被告製品の譲渡数量4万7073枚×原告製品1枚当たりの限界利益の額●(省略)●円×特定数量を控除した割合(95パーセント)=●(省略)●円 イ特許法102条1項2号に基づく損害額 被告製品の譲渡数量4万7073枚×原告製品1枚当たりの限界利益の額●(省略)●円×特定数量を控除した割合(95パーセント)=●(省略)●円 イ特許法102条1項2号に基づく損害額被告製品の譲渡数量4万7073枚×特定数量(5パーセント)×被告製品の平均価格(加重平均)1104円×相当実施料率(20パーセント)=51万9685円ウ消費税相当額 消費税法上、無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金については、資産の譲渡等の対価に該当する。 本件において原告が受けるべき損害賠償金は、判決が確定して初めて収受し得るものであり、それによって初めて課税対象となるため、適用すべき消費税率は10パーセントが相当である。 アとイの合計●(省略)●円×10パーセント=●(省略)●円エ弁護士費用等原告は、被告による本件特許権侵害行為により、本件訴訟の提起を余儀なくされ、その遂行のために弁護士及び弁理士に依頼せざるを得なかった。 本件の弁護士費用等は、アないしウの合計額●(省略)●円の10パーセ ントである●(省略)●円が相当である。 【被告の主張】(1) 特許法102条1項の推定適用の基礎を欠くこと被告製品は、本件特徴②のほか、原告製品と異なり、①ウエスト・脚口にはゴムを使用せず、②繊維が長くソフトな生地となる高級なスーピマコットンを 使用し、③縫い目が肌に直接当たらず、④品質タグを転写プリントに変更する (以下番号に応じて「被告特徴①」などといい、総称して「被告各特徴」という。)など、素材及び縫合等の観点からも改良及び工夫を重ね、肌に優しい履きやすさを兼ね備えている点に特徴があり、被告のウェブサイトにおいても、こ て「被告特徴①」などといい、総称して「被告各特徴」という。)など、素材及び縫合等の観点からも改良及び工夫を重ね、肌に優しい履きやすさを兼ね備えている点に特徴があり、被告のウェブサイトにおいても、この点を需要者に強く訴求している。 原告製品は、肌に優しい履きやすさを特徴として販売しているわけではなく、 被告製品の代替性を有するとはいえない。 また、原告が指摘する楽天市場のユーザーレビューは、被告が販売する複数の商品のうちどの品番の商品を対象とするものか不明であるし、総数のうちわずかなものにすぎない。 したがって、原告製品は、特許法102条1項1号の「侵害行為がなければ 販売することができた物」には該当しない。 (2) 被告製品の譲渡数量被告は、被告製品を海外にある工場及び国内の関連会社から仕入れているところ、平成27年9月から現在まで、被告製品の仕入数量●(省略)●から、サンプル品や不良品等として販売されなかった分として5パーセントを控除 した●(省略)●が実際に販売されたことは争わない。 (3) 単位数量当たりの利益の額限界利益の算出にあっては、計算鑑定の結果に示された考え方を援用する。 原告製品のうち、原告が直接管理運営するサイトのみで販売されているとする107番製品及び407番製品の販売総数は合計●(省略)●枚であり、楽 天市場で販売されている220番製品及び420番製品の販売枚数合計●(省略)●枚の1パーセント以下であることから、107番製品及び407番製品を考慮すべき実質的な理由はない。 以上より、原告製品に係る送料手数料を含んだ場合の220番製品及び420番製品の1枚当たりの限界利益は●(省略)●円及び●(省略)●円である。 したがって、原告製品の1枚当た 由はない。 以上より、原告製品に係る送料手数料を含んだ場合の220番製品及び420番製品の1枚当たりの限界利益は●(省略)●円及び●(省略)●円である。 したがって、原告製品の1枚当たりの限界利益は、これらのおおよその平均で ある●(省略)●円とするのが相当である。 (4) 販売することができないとする事情についてア競合品について機能性ショーツは、一定の機能が備わっているかどうかが重要であり、外形構造に特定の特徴があるか否かは需要者が求める実質的なポイントでは ない。したがって、動いてもずり上がらない、くい込まない、裾が巻き上がらないといった、需要者が求める機能が備わっていると理解される商品であれば、商品の外形において、脚口パーツを含みかつ脚口部分が前方に突出するように構成されているか否かにかかわらず需要者の購入動機となり得、競合品といえる。 平成28年当時、前記の機能を備える商品は多数存在し、アツギ、ワコール、グンゼといった大手メーカーが販売する商品を含む複数の商品は、ずり上がらない等の機能に関する宣伝文句に加えて、「立体」等の表現を用いてショーツの構造に関して宣伝広告をしていた。 したがって、仮に被告製品が販売されていなかったとしても、需要者は、 前記のとおりの多数の競合品の中から、原告製品よりも安価な商品を選択して購入する蓋然性が高い。よって、原告製品が購入された可能性があるとしても、その数量はわずかというべきである。 イ被告製品固有の特徴被告製品は、被告各特徴を有し、肌に優しい特徴を備えている一方、原告 製品は、ウエストにゴムが使用され、素材は被告製品よりも低品質のコットンを使用し、縫い目や品質タグも肌に直接当たるなど、被告製品のような特徴を備え 有し、肌に優しい特徴を備えている一方、原告 製品は、ウエストにゴムが使用され、素材は被告製品よりも低品質のコットンを使用し、縫い目や品質タグも肌に直接当たるなど、被告製品のような特徴を備えていない。そのため、被告製品は、原告製品よりも格段に履き心地が良い。 楽天市場において「肌にやさしいショーツ」との文言で検索した結果と して4925件の記事が掲載されることからしても、肌に優しいことはショ ーツの需要者にとって関心の高いキーワードであるといえる。原告製品を販売するウェブサイト等には、「肌にやさしい」というキーワードがほとんど使用されていない。被告は、これらのキーワードやこれらに関する説明を被告のウェブサイト等で複数回使用し、需要者からの支持を得ている。 被告製品のような肌に優しい履きやすさを特徴としない原告製品を購入 する需要者は、被告製品の購入者の半数以下と考えられる。 ウハイウエストタイプの存在被告製品には、原告製品と異なり、ハイウエストタイプが存在するため、原告に販売することができないとする事情が認められる。 エ販売価格 原告製品及び被告製品の販売価格は、普通丈について、原告製品のうち407番製品が2500円、420番製品が1500円であるのに対し、被告製品1-1が平均1079円、被告製品1-2が平均1079円であり、ショート丈の製品について、原告製品のうち107番製品が2500円、220番製品が1500円であるのに対し、被告製品2-1が平均1005円、 被告製品2-2が平均1005円である。 ショーツは日常的に使用する消耗品であり、被告製品の想定顧客層は特に価格に敏感である。当該層が代替品を探す場合は同価格のものを購入するケースが大半であると考えられ -2が平均1005円である。 ショーツは日常的に使用する消耗品であり、被告製品の想定顧客層は特に価格に敏感である。当該層が代替品を探す場合は同価格のものを購入するケースが大半であると考えられる。 また、価格が需要者の商品購入において極めて重要な要素であることは、 どちらもずり上がり防止等を宣伝した普通丈のショーツである原告製品の407番製品(価格2500円)と420番製品(価格1500円)とを比較した場合、価格が安価な420番製品が約●(省略)●倍売れていること等からも明らかである。これらの原告製品は、価格差が約1.7倍の差で販売数量差が約●(省略)●倍であるところ、被告製品の普通丈の平均販売価 格(1079円)は、1500円の420番製品と約1.4倍の価格差があ ることから、約●(省略)●倍の販売数量差が生じる計算となる。そうすると、仮に被告製品のうち普通丈の製品が販売されていない場合でも、420番製品が購入される数量は当該被告製品の販売数量の●(省略)●程度となる。同様に、原告製品のうちショート丈の107番製品と220番製品の価格差及び販売数量差を踏まえると、仮に被告製品のうちショート丈の製品が 販売されていない場合でも、ショート丈の原告製品のうちより安価かつ売れている220番製品が購入される数量は、当該被告製品の販売数量の●(省略)●程度と考えられる。 オ被告の営業努力被告は、肌に優しい履きやすい下着を合理的な価格、かつ安定的に需要者 へ提供するため、日本国内のみならずベトナムや中国といった海外においても優良な仕入先を獲得し、長崎、ベトナム、中国に自社工場を設け、商品のコンセプトコストにあった生産体制を徐々に構築してきた。被告製品は、かかる被告の営業努力によって、良質な製品 といった海外においても優良な仕入先を獲得し、長崎、ベトナム、中国に自社工場を設け、商品のコンセプトコストにあった生産体制を徐々に構築してきた。被告製品は、かかる被告の営業努力によって、良質な製品の安定供給を実現した結果販売に繋がったのであり、このような被告の営業努力は「原告が販売することがで きないとする事情」として考慮されるべきである。 カ本件発明の技術的意義が被告製品の利益に貢献する程度構成要件Dの「腸骨棘点付近」につき、仮に、上前腸骨棘を中心としつつ、下前腸骨棘付近をも含むものと解される場合、本件発明は、その作用効果を奏する範囲と奏しない範囲の両方を含むことになる。具体的には、足刳りラ インにハイレグカットを採用した場合はその作用効果を奏するものの、ハイレグカットを採用せずこれより浅いラインにした場合は、足刳り形成部の前側の湾曲するラインが足を曲げたときの太もも付け根の屈曲位置よりも下方を通り、太ももが構成要件Hにおいて大腿部パーツを前方に突出させた位置よりも上方から前方に突出し、構成要件Hにおいて大腿部パーツを前方に 突出させていることが無駄になり、股関節の屈曲運動への追従性が不十分と なるため、その作用効果を奏しない。 足刳りラインにハイレグカットを採用していない被告製品は、本件発明に係る技術的手段によってその作用効果を奏するものではないから、被告製品に対する本件特許発明の寄与度は零である。 キ実際の着用状態からみた本件発明の貢献度 被告製品の着用状態は、着用する個人の体形差に影響される。また、ショーツは、着用方法があることを前提として売買されるものではなく、購入者も宣伝文句にとらわれることなく履きやすいように履いていると考えるのが自然である。 以上の事情から に影響される。また、ショーツは、着用方法があることを前提として売買されるものではなく、購入者も宣伝文句にとらわれることなく履きやすいように履いていると考えるのが自然である。 以上の事情から、身体的個体差等の影響により、少なくとも一定以上の割 合の被告製品については、構成要件Dの「湾曲した頂点」が「腸骨棘点付近」に位置しない着用がされる可能性は否定されない。このように本件発明の構成要件を充足しない状態で被告製品が着用される場合、本件特許権の侵害が成立せず、当該侵害に基づく損害も発生しないため、被告製品について、構成要件Dを充足しない状態で着用される割合に応じて損害額の推定が覆滅 されるべきである。 (5) 特許法101条1項2号の規定による損害が観念できないこと特許権者が侵害者に対しライセンスの意思がないことが明白であり、ライセンスの機会を自ら放棄したものであって喪失したと評価できない場合には、特許法102条1項2号括弧書に該当し、同号に基づく実施料相当額の損害は認 められない。 原告は、自社のウェブサイトにおいて、本件特許権侵害に基づく訴訟を被告に提起し、徹底的に争う旨の意思表明をしており、ライセンスの機会を自ら放棄したものであり、喪失したとは言えない。 よって、本件において、特許法102条1項2号に基づく損害は認められな い。仮に、本件において同号が適用されるとしても、前記エのとおりの事情を 踏まえると、相当実施料率は1パーセントを超えない。 (6) その余の原告の主張について特許法102条1項に基づく損害額については前記のとおりであり、原告が主張する消費税相当額並びに弁護士費用等は争う。 なお、消費税相当額を考える際は、被告製品が販売されていた期間の消費税 特許法102条1項に基づく損害額については前記のとおりであり、原告が主張する消費税相当額並びに弁護士費用等は争う。 なお、消費税相当額を考える際は、被告製品が販売されていた期間の消費税 率である8パーセントが適用されるべきである。 第4 判断 1 本件発明について(1) 本件明細書の記載本件明細書には、次の記載がある。 ア技術分野この発明は、大腿部を覆う形状のインナーやスポーツウエア等の下肢用衣料に関する(【0001】)。 イ背景技術従来、市場に出ているスパッツ類の大半は、下胴部と大腿部が一枚の布で 繋がっており、運動性は素材の伸びに頼っているものが大半である。その中で、大腿部の動きを阻害しない工夫としては、高い伸縮性を有する素材を使用する程度であった(【0002】)。 その他、例えば所定形状のパーツを縫い合わせて着用感を良好なものにするスパッツ…がある(【0003】)。 上記従来のスパッツ類は、基本が直立姿勢に合わせたパターンであるため、これら個々の工夫では股関節の屈曲運動への追従は不十分であった。特に、前屈みになる姿勢をとったり、足を前に上げたりしゃがんだりして、股関節を大きく屈伸することが多いスポーツ種目では、より身体の動きに対応した形状が求められていた(【0004】)。 また、従来のスパッツ類は、臀部には生地が伸びて張力が発生して圧力が かかり、大腿部にも押さえられる方向に力がかかり、運動を妨げる抵抗が身体に生じていた。その他、足刳り部を切り替えて下胴部と大腿部を別々のパーツとし、繋ぎ合わせた製品も提案されているが、伸縮性や運動追従性が十分なものではなかった(【0005】)。 この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてな 部を切り替えて下胴部と大腿部を別々のパーツとし、繋ぎ合わせた製品も提案されているが、伸縮性や運動追従性が十分なものではなかった(【0005】)。 この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、股関 節の屈伸運動が円滑に行われ、運動に適した下肢用衣料を提供することを目的とする(【0006】)。 ウ課題を解決するための手段本発明は、大腿部が挿通する開口部の湾曲した足刳りとなる足刳り形成部を備えた前身頃と、この前身頃に接続され臀部を覆うとともに前記前身頃の 足刳り形成部に連続する足刳り形成部を有した後身頃と、前記前身頃と前記後身頃の各足刳り形成部に接続され大腿部が挿通する大腿部パーツとを有し、前記前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置し、前記後身頃の足刳り形成部の下端縁は臀部の下端付近に位置し、前記大腿部パーツの山の高さを前記足刳り形成部の前側の湾曲深さよりも低い形状とし、 前記足刳り形成部の湾曲部分の幅よりも前記山の幅を広く形成し、取り付け状態で筒状の前記大腿部パーツが前記前身頃に対して前方に突出する形状となる下肢用衣料である(【0007】)。 エ発明の効果本発明の下肢用衣料は、大腿部を屈曲した姿勢に沿う立体形状に作られ、 股関節の屈伸運動に対して生地の伸張が少なく、生地にかかる張力が小さい状態で運動を行うことができる。これにより、屈伸運動等の際に生地による抵抗が少なく、体にかかる負担が少なく円滑に運動することができる(【0011】)。 (2) 本件発明の技術的意義 本件明細書の記載(前記(1))によれば、従来、大腿部を覆う形状の下肢用衣 料において、着用者が運動した場合の身体の動きの追従性については、素材の伸縮性に頼るものが大半 意義 本件明細書の記載(前記(1))によれば、従来、大腿部を覆う形状の下肢用衣 料において、着用者が運動した場合の身体の動きの追従性については、素材の伸縮性に頼るものが大半であり、また基本の形状が直立姿勢に合わせたパターンであるため、股関節の屈曲運動への追従が不十分である等の課題を有していたところ、本件発明は、股関節の屈伸運動が円滑に行われ、運動に適した下肢用衣料を提供することを目的として、前身頃及び後身頃に設けられた各足刳り 形成部の形状や、大腿部パーツの形状等を工夫することにより、取り付け状態で筒状の大腿部パーツが前身頃に対して前方に突出する形状とすることで、大腿部を屈曲した姿勢に沿う立体形状の下肢用衣料、すなわち股関節の屈伸運動等に対して生地の伸張が少なく、生地に係る張力が小さいため、抵抗が少なく体にかかる負担が少ない状態で、円滑に運動をすることを可能とし、前記の目 的に沿う下肢用衣料を提供するものである。 2 争点1(被告製品が構成要件Dを充足するか)について(1) 「腸骨棘点付近」の意義ア特許請求の範囲の記載本件発明の特許請求の範囲の記載によれば、本件発明の「前身頃」は、「大 腿部が挿通する開口部の湾曲した足刳り」となる「足刳り形成部」を備え(構成要件A)、当該「前身頃の足刳り形成部」の「湾曲した頂点」が「腸骨棘点付近」に位置すること(構成要件D)が理解できる。また、構成要件Dの「腸骨棘点付近」は、その文言から、「腸骨棘点」の「付近」であることが理解できる。 当該「腸骨棘点」が上前腸骨棘を意味することについては当事者間に争いがないものの、本件発明の特許請求の範囲には、「腸骨棘点付近」の意義について規定した記載はない。 イ本件明細書の記載(ア) 本件 「腸骨棘点」が上前腸骨棘を意味することについては当事者間に争いがないものの、本件発明の特許請求の範囲には、「腸骨棘点付近」の意義について規定した記載はない。 イ本件明細書の記載(ア) 本件明細書には、「腸骨棘点付近」及び本件発明の下肢用衣料の形状等に 関し、次のとおりの記載がある。 足刳り形成部は、身体の転子点付近から腸骨棘点付近を通り股底点脇付近に至る湾曲した足刳り部分と、前記転子点付近から股底点脇まで膨らんだ曲線で臀部裾ラインを包み込み、且つ臀部裾部分に密着する形状である(【0009】)。 この発明の実施形態…の下肢用衣料…スパッツ10は、伸縮性を有する編 地等の生地で作られ…下胴部の前側から両脇までを覆う前身頃12と、下胴部の後側を覆う後身頃14と、…股部パーツ16から成る。さらに、前身頃12と後身頃14、股部パーツ16で形成され大腿部が挿通する開口部に、大腿部を覆うように筒形に形成された一対の大腿部パーツ18が設けられている(【0014】)。 図3はスパッツ10を展開した状態を示したものであり、前身頃12は、ウエスト部20と、ウエスト部20の両側の大腿部付け根の腸骨棘点a付近で、ウエスト部20に対してほぼ直角に裁断された腰部前側縁22が設けられている。腰部前側縁22の身体前中央側には、腰部前側縁22の下端部から連続して切り欠かれた一対の足刳り部を形成する足刳り形成部24が 各々設けられている(【0015】)。 スパッツ10の製造方法は、…一連に連結された各足刳り形成部24、25、32、46に大腿部パーツ18の足付根部40を縫い合わせる(【0023】)。 縫い合わされたスパッツ10は、後身頃14の足刳り形成部32が丸く下方に回り込み、筒状に形成された大腿部パ 、25、32、46に大腿部パーツ18の足付根部40を縫い合わせる(【0023】)。 縫い合わされたスパッツ10は、後身頃14の足刳り形成部32が丸く下方に回り込み、筒状に形成された大腿部パーツ18が前方の斜め下方に突 出する立体形状となる。即ち、基本の立体形状が、着用者が前屈みに軽く屈曲した姿勢に沿う形状になっており、足の運動性に適した形状に形成される(【0025】)。 縫製されたスパッツ10を着用したとき、前身頃12の足刳り形成部24は、図1に示すように、股底点脇から上方に延出して足の付け根の腸骨棘点 a付近を通過し、大腿部外側上方の転子点b付近の上方を通過して湾曲し、 後側下向きに延出して、後身頃14の足刳り形成部32に連続する。…足刳り形成部24の一番高いところは腸骨棘点a付近である(【0026】)。 この実施形態のスパッツ10によれば、伸縮性のある素材を使用し、臀部の生地分量を確保し、足刳りのパターンの形状の工夫により、身体の腸骨棘点a付近から前方の生地の立体的方向性が確保されるため、着用時に股関節 の前方への屈伸抵抗が少なく運動しやすく、疲れにくいものである(【0027】)。 【図1】 【図3】 (イ) 前記(ア)の記載からすれば、「腸骨棘点a付近」は「腸骨棘点付近」と同義であり、「大腿部付け根」又は「足の付け根」と表現される部位に位置すると 理解できる(【0009】【0015】【0026】)。また、本件発明の下肢用衣料の足刳り形成部は、大腿部パーツとの縫合線と一致し(【0023】)、筒状に形成された大腿部パーツが腸骨棘点付近を頂点として前方斜め下方に突出する立体形状となることで、着用者が前屈みに軽く屈曲した姿勢に沿うこと(【0025】 パーツとの縫合線と一致し(【0023】)、筒状に形成された大腿部パーツが腸骨棘点付近を頂点として前方斜め下方に突出する立体形状となることで、着用者が前屈みに軽く屈曲した姿勢に沿うこと(【0025】ないし【0027】)が理解できる。 以上を踏まえると、「腸骨棘点付近」とは、腹部と大腿部の境目であり、大 腿部を屈曲したときに折れ曲がる部分に位置するものと解することができる。 ウ技術常識等人体の「腸骨」には、「腸骨棘」といわれる4つの棘(上前腸骨棘、下前腸骨棘、上後腸骨棘及び下後腸骨棘)がある。このうち、上前腸骨棘及び下前 腸骨棘は、人体の正面側(腹側)に位置し、上前腸骨棘は腸骨稜の前端であり、上前腸骨棘から寛骨臼にたどる途中の前縁の膨らみが下前腸骨棘である(甲20(医学大辞典))。 また、証拠によれば、人体の「鼠径溝」は、「足と体幹との間の皺」(甲29)、「腹壁と大腿前面との境界」(甲43)、「下肢と腹部との境は前面では前 腸骨棘から恥骨結合に向かって引いた直線で、この線は内部にある鼠径靭帯にほぼ一致した浅い溝である。これを鼠径溝といい、大腿を前に上げると皮膚がここで折れ曲がる。」(乙31)及び「大腿前面と腹壁との間の溝」(乙32)等と定義されていること、鼠径溝は鼠径靭帯よりも1~3センチメートル尾側(身体の下側)にあること(甲28、29。ただし、ほぼ一致すると 表現する文献(乙31)もある。)、鼠径靭帯は上前腸骨棘から恥骨の間を張っていること(乙21、32、34、35)、下前腸骨棘は上前腸骨棘から2~3センチメートル下内方(身体の奥側)に位置していること(甲19、乙18)、股関節を屈曲する際の主動作筋である大腿直筋の近位付着部が下前腸骨棘であること(甲30、乙35)がそれぞれ認め 骨棘から2~3センチメートル下内方(身体の奥側)に位置していること(甲19、乙18)、股関節を屈曲する際の主動作筋である大腿直筋の近位付着部が下前腸骨棘であること(甲30、乙35)がそれぞれ認められる。 エ検討前記ア及びイのとおり、「腸骨棘点付近」とは、上前腸骨棘の「付近」を意味し、「大腿部付け根」又は「足の付け根」と表現される部位に位置し、腹部と大腿部の境目であり、大腿部を屈曲したときに折れ曲がる部分に位置することが理解できる。 そもそも、本件発明の下肢用衣料は、伸縮性を有する生地で作られている ことに加え(【0014】)、衣料である以上、その形状が着用者の身体的個体差や実際の着用方法ないし着用状態に一定程度左右されることが当然に想定されているといえる。「腸骨棘点付近」のうち「付近」との文言も、足刳り形成部の湾曲した頂点の位置について「腸骨棘点」という指標を定めつつ、当該位置に完全に一致しない場合が当然に想定されることから、一定の幅を持つ ために付加された文言と理解できる。 そして、前記ウのとおり、人体の鼠径溝は、腹壁と大腿部との境界であり、大腿部を曲げた際に皮膚が折れ曲がる溝であると理解でき、本件明細書において腸骨棘点(上前腸骨棘)付近が位置する「大腿部付け根」又は「足の付け根」と表現される部位に一致するといえる。前記ウのとおり、鼠径溝は、 上前腸骨棘から延びる鼠径靭帯とほぼ一致するか、その1~3センチメートル尾側に位置しているところ、下前腸骨棘が上前腸骨棘から下内方に2~3センチメートルの箇所に位置していること等を踏まえれば、下前腸骨棘も、概ね鼠径溝に沿った位置にあるといえる。そのため、「腸骨棘点付近」に下前腸骨棘が含まれる場合でも、大腿部を屈曲した姿勢に沿う立体形状に チメートルの箇所に位置していること等を踏まえれば、下前腸骨棘も、概ね鼠径溝に沿った位置にあるといえる。そのため、「腸骨棘点付近」に下前腸骨棘が含まれる場合でも、大腿部を屈曲した姿勢に沿う立体形状に作られ、 円滑な運動を可能とする下肢用衣料という本件発明の効果を奏するといえる。 一方で、「スパッツ10を着用したとき、前身頃12の足刳り形成部24は、…股底点脇から上方に延出して足の付け根の腸骨棘点a付近を通過し、大腿部外側上方の転子点b付近の上方を通過して湾曲し…」との本件明細書 の記載(【0026】)及び図1を踏まえれば、「転子点b付近」に含まれる場所は「腸骨棘点a付近」とは異なる範囲として記載されていると理解できる。ここで、「転子点b」について本件明細書上明確な定義はされていないが、前記の「大腿部外側上方の転子点b」との文言、図1及び大腿骨の「大転子」の位置(甲27、乙21)等を踏まえると、「転子点b」とは、大転子の最も外 側の点をいうものと解される。 以上より、「腸骨棘点付近」とは、上前腸骨棘を中心としつつ、下前腸骨棘付近をも含み、下前腸骨棘付近から外れた大転子の最も外側の点付近は含まないものと解される。 オ被告の主張について被告は、本件明細書の記載を踏まえれば、本件発明に係る下肢用衣料の「足 刳り形成部の湾曲した頂点」が、着用者が前屈みの姿勢をとったときに大腿部が前方に突出する起点となる大腿部の最も高い位置(起点)にある必要があること、当該起点が上前腸骨棘点の位置付近にあること、起点よりもわずかでも下方にある場合には、本件発明の作用効果が得られないため、下前腸骨棘付近は「腸骨棘点付近」に含まれないこと等を主張する。 しかし、被告が主張する「起点」は、その位置が当 よりもわずかでも下方にある場合には、本件発明の作用効果が得られないため、下前腸骨棘付近は「腸骨棘点付近」に含まれないこと等を主張する。 しかし、被告が主張する「起点」は、その位置が当業者の通常の理解において明確に特定できるとは認めるに足りず、また、前記本件明細書の記載その他技術常識等から、当該「起点」からわずかでも下方にある場合に本件発明の作用効果が得られないとも認め難い。また、足刳り形成部の湾曲した頂点が下前腸骨棘付近に位置する場合でも本件発明の効果を奏するといえる こと(前記ウ及びエ)等を踏まえれば、「腸骨棘点付近」に下前腸骨棘付近が含まれないとする被告の主張は採用できない。 そのほか、被告は、下肢用衣料において、脚開口部がいわゆるハイレグカットと言われる形状でない場合、足の付け根部分が衣料に圧迫され、足の動きが妨げられることが技術常識であると主張する。しかし、このような技術 常識が存するとは認めるに足りず、この点の被告の主張も採用できない。 (2) 構成要件Dを備えるかどうかについてア構成要件Dは、着用状態における本件発明の足刳り形成部の湾曲した頂点の位置を特定したものであるところ、前記のとおり下肢用衣料の着用状態は着用者の身体的個体差等に左右されることに鑑みると、その充足性の判断に 当たっては、被告製品の設計時に想定されたであろう着用状態を前提として、 検討することが相当である。 イ被告製品の前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点は、いずれも、前身頃パーツと後身頃パーツの縫合線と、各身頃パーツの足刳り形成部と脚口パーツとが縫合された縫合線との交点であると認められる(弁論の全趣旨)。 ウ被告製品は、いずれも、販売するウェブサイトにおいて、「超立体ショー ツ」、「ヒップず 身頃パーツの足刳り形成部と脚口パーツとが縫合された縫合線との交点であると認められる(弁論の全趣旨)。 ウ被告製品は、いずれも、販売するウェブサイトにおいて、「超立体ショー ツ」、「ヒップずり上がらない!!」、「裾口ピタッとフィット!!」、「平らなところに超立体ショーツを置くと、脚口がこんなにも立つんです」、「これが人間の身体=立体“超立体ショーツ”のはきやすさの理由です」、「特殊なパターン設計で超立体のシルエットを実現。裾口がピッタリフィットし、ヒップずり上がらない!」、「脚口が超立体」等と説明されている。また、被告製 品を実在の人物が着用した上で、身体をやや斜めに傾け大腿部を前側に出した様子を撮影した着用写真が掲載されている。(甲3~8、23、24)。 このような説明及び着用写真からすれば、被告製品は、裾口ないし脚口、すなわち大腿部パーツが大腿部にしっかりと沿い、かつ脚口が立体化していることが理解できる。また、臀部の生地(パーツ)が上方に上がらないこと を実現するには、体前部の生地についても、裾口が上方へずり上がらないことが必要であって、被告製品はそのために裾口(脚口)と身頃部分の縫合線が、鼠径溝に沿うよう構造を採用し、そのように着用することを想定した製品であると理解できる。前記着用写真からうかがわれる着用状態を見ても、被告製品の脚口部のパーツと身頃部のパーツとの縫合線が鼠径溝に沿うよ うに着用されており、少なくとも、当該縫合線の頂点(各身頃部の縫合線との交点)が転子点寄りに位置していないと認められる。 以上に加え、被告製品を人体の模型に着用させた状態を撮影した写真(甲32、乙26)を観察すると、被告製品の前身頃パーツの足刳り形成部の湾曲した頂点が、前述の意義における腸骨棘点付近に位置するとみて差 以上に加え、被告製品を人体の模型に着用させた状態を撮影した写真(甲32、乙26)を観察すると、被告製品の前身頃パーツの足刳り形成部の湾曲した頂点が、前述の意義における腸骨棘点付近に位置するとみて差し支え ないといえる。 エ以上によれば、被告製品は、身頃部のパーツと脚口部のパーツとの縫合線が鼠径溝に沿うように着用することを想定した製品であるといえ、被告製品の足刳り形成部の湾曲した頂点は、上前腸骨棘と下前腸骨棘の間、すなわち「腸骨棘点付近」に位置すると認められる。 したがって、被告製品は、構成要件Dを充足する。 (3) 上記判断の補足説明(被告の主張について)被告は、被告製品を実際に消費者が着用する場合、被告製品の足刳り形成部の湾曲した頂点は、上前腸骨棘及び下前腸骨棘よりも下方にある転子点に近い位置にあると主張する。しかし、前記(1)エのとおり下肢用衣料の形状は着用者の身体的個体差や着用感に対する好み等に影響されるため、個別の着用者の 具体的な着用状態をもってその充足性一般を判断することは相当でなく、主張は採用できない。 また、被告は、被告製品が設計時において具体的着用状態を明確に特定して設計されたものではないとも主張する。しかし、下肢用衣料の形状等が着用者の身体的個体差等に左右されることは前記のとおりであり、各下肢用衣料メー カーは、かかる状況を前提として、最大公約数的な構成、デザインを想定して製品を設計するものと考えられる。また、通常、製品の宣伝広告は製品の設計思想を反映したものであると考えられ、宣伝広告の内容から設計時に想定された着用状態を想定することに不合理な点はない。 したがって、この点に係る被告の主張はいずれも採用できない。 3 争点2(被告製品が構成要 と考えられ、宣伝広告の内容から設計時に想定された着用状態を想定することに不合理な点はない。 したがって、この点に係る被告の主張はいずれも採用できない。 3 争点2(被告製品が構成要件Hを充足するか)について(1) 構成要件Hについて本件発明の特許請求の範囲の記載によれば、構成要件Hは、「取り付け状態で筒状の前記大腿部パーツが前記前身頃に対して前方に突出する形状となることを特徴とする」と規定され、下肢用衣料の構成及び縫製等に係るその余の 条件が反映された最終形態(取付状態)として、筒状の大腿部パーツが前身頃 に対して前方に突出する形状となる構成を備えることを規定していると理解できる。 (2) 被告製品について証拠(甲3~8、23、24、40)によれば、被告製品を販売するウェブサイトでは、前記のとおり「平らなところに超立体ショーツを置くと、脚口が こんなにも立つんです。」、「脚口が超立体」という説明と共に、被告製品を平面に置いた状態で、大腿部パーツに相当すると解される筒状の「脚口」のうち、前身頃及び後身頃の各足刳り形成部の湾曲部分と縫合される山40a部分が、前身頃と同方向、すなわち前身頃に対して前方に立ち上がっている写真が掲載されている。また、原告が所持する被告製品の現物を水平に平置きした状態で 撮影した写真撮影報告書においても、被告製品の大腿部パーツは、前身頃と同じ方向に立ち上がった状態であることが確認できる。 以上によれば、被告製品は、大腿部パーツと前身頃及び後身頃の各足刳り形成部が取り付けられた状態において、筒状の大腿部パーツが前身頃に対して前方に突出する形状となっていると認められる。 よって、被告製品は、構成要件Hを充足する。 (3) 上記判断の補足説 成部が取り付けられた状態において、筒状の大腿部パーツが前身頃に対して前方に突出する形状となっていると認められる。 よって、被告製品は、構成要件Hを充足する。 (3) 上記判断の補足説明被告は、構成要件Hの解釈に関し、構成要件Fとの間に相関関係はなく、大腿部パーツの突出に寄与するのは構成要件Gのみであるとした上で、構成要件Hに関して2つの解釈を主張し、いずれの解釈にも問題があるため、構成要件 Hを合理的に解釈することができない旨主張する。 この点、本件発明の特許請求の範囲の記載及び技術的意義(前記1(2))等を踏まえると、本件発明は、大腿部パーツの山の高さ(h1)を足刳り形成部の前側の湾曲の深さ(h2)よりも低い形状とし(構成要件F)、かつ足刳り形成部の湾曲部分の幅(w2)よりも大腿部パーツの山の幅(w1)を広く形成す ること(構成要件G)によって、構成要件Hに係る形状を実現するものである と理解できるものの、構成要件Hは、前記のとおり製品の最終形態として、筒状の大腿部パーツが前身頃に対して前方に突出する形状となる構成を備えることを規定していると理解でき、その充足性の判断において殊更構成要件F及びGとの相関関係を問題とする必要があるとは認められない。 この点を措くとしても、被告は、構成要件Fについて、足刳り形成部24及 び25に縫い付けられる大腿部パーツの山40aの縁部の形状は同一であるから、大腿部パーツの山の高さ(h1)と足刳り形成部の前側の湾曲の深さ(h2)の関係が「h1<h2」であるか否かにかかわらず縫い付け後の大腿部パーツの前方突出が変わらない旨主張しており、当該主張は、h1<h2の構成等をもって大腿部パーツの前方突出を実現しようとする本件発明と前提を異 にする見解 か否かにかかわらず縫い付け後の大腿部パーツの前方突出が変わらない旨主張しており、当該主張は、h1<h2の構成等をもって大腿部パーツの前方突出を実現しようとする本件発明と前提を異 にする見解であって採用できない。 被告主張の、構成要件Hに係る第1解釈については、構成要件Fを捨象している点で相当でない上、被告が主張するような大腿部パーツの突出が目視で確認することができないような微小な突出である場合に構成要件Hを充足するか否かは構成要件Hの充足性において個別に判断すれば足り、仮に構成要件G を充足しつつ構成要件Hを充足しない下肢用衣料が存在するとしても、これをもって構成要件Hが合理的に解釈できないとすることは相当でない。 また、被告主張の第2解釈についても、構成要件Fを捨象している点で相当でない上、本件明細書の図3等を踏まえれば、大腿部パーツの山40a部分並びに前身頃及び後身頃の各足刳り形成部24及び25の湾曲部分は、「山型」 すなわち裾(下側)に向けてなだらかに広がる形状をしていることから、構成要件F及び構成要件Gが規定する大腿部パーツの山の高さと幅、及び前身頃の足刳り形成部の湾曲の深さと幅の関係を満たす場合、大腿部パーツは、前身頃及び後身頃に取り付けた状態で、必然的に下側ほど前方に大きく突出する形状であると理解できるため、構成要件F及びHの関係に起因して構成要件Hが実 現されるという点に問題はない。 以上のとおり、被告の主張は独自の見解に立つものであって、いずれも採用できない。 4 争点3(本件特許に明確性要件違反(特許法36条6項2号)の無効理由が存するか)について(1) 被告は、本件発明に係る構成要件Hが明確性を欠く理由として、前記第1解 釈及び第2解釈のいずれも合理的に 本件特許に明確性要件違反(特許法36条6項2号)の無効理由が存するか)について(1) 被告は、本件発明に係る構成要件Hが明確性を欠く理由として、前記第1解 釈及び第2解釈のいずれも合理的に解釈することができない旨主張するが、当該被告の主張が採用できないことは前記のとおりである。 (2) 被告は、構成要件F及びGを充足し、大腿部パーツを前方へ突出させる作用が働きながらも、同時にこれを妨げる方向に作用する構成がされ、大腿部パーツが前方に突出せず、本件発明の作用効果を奏しないような下肢用衣料を除 外するために構成要件Hが規定されている旨の原告の主張に対し、構成要件F及びGによる大腿部を前方突出させようとする作用と、これを妨げる作用の大小の比較方法が不明であるため、構成要件Hの充足性を明確に判断することができない旨主張する。 しかし、前記3のとおり、構成要件Hの充足性は、構成要件F及びGによる 作用とその余の作用を比較対照しなければ判断できないものではない。 (3) 本件構成要件Hが製品の最終形態として、筒状の大腿部パーツが前身頃に対して前方に突出する形状となる構成を備えることを規定していると理解できることは前記のとおりである。 (4) よって、被告が主張する明確性要件違反の無効理由は認められない。 5 争点4(原告の被った損害額)について(1) 推定適用の前提事実特許法102条1項は、民法709条に基づき販売数量減少による逸失利益の損害賠償を求める際の損害額の算定方法について定めた規定であり、同項1号が定める特許権者等が「侵害行為がなければ販売することができた物」とは、 侵害行為によってその販売数量に影響を受ける特許権者等の製品、すなわち、 侵害品と市場において競合関係に立つ製品 定める特許権者等が「侵害行為がなければ販売することができた物」とは、 侵害行為によってその販売数量に影響を受ける特許権者等の製品、すなわち、 侵害品と市場において競合関係に立つ製品であれば足りると解される(知的財産高等裁判所令和2年2月28日特別部判決参照)。 (2) 原告製品は被告製品と競合関係に立つものであるかア被告製品被告製品は本件発明の技術的範囲に属し、証拠(甲3~8、23、24) によれば、女性用ショーツとして販売され、被告製品を販売するウェブサイトには、「超立体ショーツ」、「ヒップずり上がらない!!」、「裾口ピタッとフィット!!」などの特徴が、ページの冒頭に、目立つように記載されている。 また、当該ウェブサイトの中には、被告製品を平面に置いた状態で、脚口パーツの前面が上方に立ち上がっている様子を撮影した写真(別の場所に2 枚)とともに、「平らなところに超立体ショーツを置くと、脚口がこんなにも立つんです」、「これが人間の身体=立体“超立体ショーツ”のはきやすさの理由です」との文字や、「脚口が超立体」の文字が記載され、「超立体ショーツの特徴」として「特殊なパターン設計で超立体のシルエットを実現。裾口がピッタリフィットし、ヒップずり上がらない!」と記載されている。 以上からすれば、被告製品は、①脚口部分が前方に突出するような立体な形状に構成され、②脚口(裾口)部分及びお尻の部分がずり上がらないという特徴(本件各特徴)を有するものであり、広告宣伝においてもその点が強調されている。 イ原告製品 原告は、107番製品及び407番製品を平成21年5月から、220番製品及び420番製品を平成25年5月から販売している(前記第2「1前提事実」(6))。 原告製品 イ原告製品 原告は、107番製品及び407番製品を平成21年5月から、220番製品及び420番製品を平成25年5月から販売している(前記第2「1前提事実」(6))。 原告製品は、女性用ショーツであり、このうち107番製品及び407番製品は原告が管理運営するウェブサイトにおいて、220番製品及び420 番製品は楽天市場内のウェブサイトにおいてそれぞれ販売されている(甲4 8~50)。原告のウェブサイトでは、107番製品及び407番製品について、いずれも「お尻がはみ出さない、ヒップに優しく快適なショーツです」、「ゴムを使っていないので若干上がりますが、お尻がはみ出すことはありません」、「前足繰りは動きやすい特許の立体裁断で巻きついたり、痛くなることはありません」等と特徴が記載されている。 また、原告のウェブサイトでは、107番製品及び407番製品が含まれる「ボックスショーツ」という分野の原告の商品について、「足回りの締付け、ストレスが最も少ないタイプ」、「足口、ヒップともに特許の立体裁断」、「足の付け根部分の立体裁断は特許だから、座っても巻き上がらず、立っても足にフィットします。」、「巻き上がらないから、そけい部を圧迫すること もなく、ラクラク快適です。」、「裾線がお尻の形になっているので、しっかりフィットし、はみ出しません。」等と記載されているほか、220番製品及び420番製品を販売する楽天市場内のウェブサイトでは、これに加え、「激しく動いても巻き上がらない!トラタニの立体裁断!」等と記載されている(甲48~51)。 以上からすれば、原告製品は、被告製品と同じく、①脚口部分が前方に突出する立体的な形状に構成され、②脚口(裾口)部分及びお尻の部分がずり上がらないという特 れている(甲48~51)。 以上からすれば、原告製品は、被告製品と同じく、①脚口部分が前方に突出する立体的な形状に構成され、②脚口(裾口)部分及びお尻の部分がずり上がらないという特徴(本件各特徴)を有するものであり、広告宣伝においてもその点が強調されているといえる。 ウそうすると、原告製品と被告製品とは、本件各特徴を需要者に強く訴求し て販売される女性用ショーツという点で共通しており、市場において競合関係に立つ。また、本件各特徴は、大腿部パーツが前身頃に対して前方に突出する形状とすることで、大腿部を屈曲した姿勢に沿う立体形状の下肢用衣料を作り、股関節の屈伸に対して生地の伸張が少なく、生地にかかる張力が小さい状態で円滑に運動を行うことができるという本件発明の作用効果に含 まれる。 以上より、原告は、被告製品と競合する原告製品を継続して販売しており、被告による特許権侵害行為がなかったならば利益を得られたであろうという事情が存在したといえ、特許法102条1項の適用が認められる。 エ被告の主張被告は、被告製品が本件特徴②のほか被告各特徴を備えており、かつ被告 各特徴を強く需要者に訴求して販売されていること等を理由に、原告製品が被告製品の代替性を有するとはいえないなどとして、原告製品が「侵害行為がなければ販売することができた物」には該当しない旨主張する。 しかし、被告製品が本件特徴①を備えることは前記のとおりであり、また、被告製品の別の特徴等は、推定を覆滅する事情として考慮される余地がある のは格別、本件において特許法102条1項を適用すべきとする上記判断を左右しない。 (3) 権利行使の範囲原告は、本件特許権に係る原告の持分権及び債権譲渡を受けた相共有者の持分 る のは格別、本件において特許法102条1項を適用すべきとする上記判断を左右しない。 (3) 権利行使の範囲原告は、本件特許権に係る原告の持分権及び債権譲渡を受けた相共有者の持分権に基づく各損害賠償請求権を併せて行使している。 本件においては、共有に係る特許権を実施する特許権者が損害賠償請求権を行使するに当たり、特許法102条1項の推定の適用を求めているが、被告による本件特許権の侵害に基づく損害としては、相共有者の持分割合に応じた実施料相当額の逸失利益を観念することができるから、その限度で当該推定が影響を受ける余地はある。もっとも、本件においては、原告が相共有者から譲渡 を受けた損害賠償請求権をも行使しているから、このような影響は考慮を要しないものと解される。 そして、被告製品の販売終期は平成30年1月31日であるから(計算鑑定の結果)、被告製品に係る相共有者の本件特許権の持分権侵害に基づく損害賠償請求権は全て原告に譲渡されたと認められ(前提事実(7))、結局、相共有者 があることによって特許法102条1項の推定の効果が左右されることはな い。 (4) 被告製品の譲渡数量計算鑑定の結果及び弁論の全趣旨によれば、平成27年9月から本件口頭弁論終結時まで(以下「本件対象期間」という。)における被告製品の譲渡数量は、●(省略)●であると認められる。 原告が主張する譲渡数量は、計算鑑定の結果と齟齬し、かつこれを裏付ける証拠がないので採用できない。また、被告は、サンプル品等として販売されなかった分として5パーセントを控除すべきと主張するが、根拠がない。 (5) 原告製品の単位数量当たりの利益の額ア特許法102条1項所定の「単位数量当たりの利益の額」は、特許権者等 売されなかった分として5パーセントを控除すべきと主張するが、根拠がない。 (5) 原告製品の単位数量当たりの利益の額ア特許法102条1項所定の「単位数量当たりの利益の額」は、特許権者等 の製品の売上高から特許権者等において前記製品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した額(限界利益の額)であり、その主張立証責任は、特許権者等の実施の能力を含め特許権者側にあるものと解すべきである(前掲知財高裁特別部判決参照)。 イ計算鑑定の結果、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件対象期間中 の原告製品の単位数量当たりの利益の額は、別紙損害額一覧表記載の「原告製品利益計算表」の「単位数量当たりの利益の額」欄のとおり、●(省略)●円であると認められる。 なお、計算鑑定において経費として控除されている「広告宣伝費」のうち原告が楽天市場の広告枠を一定期間買い取る方式(定額方式)で支出した● (省略)●円、並びに「人件費(給与手当+賞与)」のうち固定給の従業員に係る給与及び賞与分(合計●(省略)●円)については、それぞれ原告製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった費用とは認められないことから(甲83~89、弁論の全趣旨)、経費として控除しないことが相当である。 ウ原告の主張について (ア) 送料及び手数料原告は、計算鑑定の結果のうち、原告製品販売に係る送料及び手数料について、これらの料金を原告がサービスの一環としてその一部を負担していることから、経費として控除されるべきではない等と主張している。 しかし、これらの送料及び手数料が、原告製品の製造販売に直接関連して 追加的に必要となる類の経費であることは明らかである(原告製品の販売金 費として控除されるべきではない等と主張している。 しかし、これらの送料及び手数料が、原告製品の製造販売に直接関連して 追加的に必要となる類の経費であることは明らかである(原告製品の販売金額にもこれらの送料手数料を含む金額を採用している。)。なお、計算鑑定は原告製品に係る送料及び手数料をネット販売分の販売数量で按分しているが、この点に不相当な点は見当たらない。 したがって、計算鑑定の結果のうち、原告製品に係る送料及び手数料を経 費として控除したものを採用するのが相当である。 (イ) 外注工賃(派遣費用)原告は、計算鑑定対象期間の「外注工賃(派遣費用)」の総額及び「給与手当・賞与」のうちパート従業員に係る費用について、ネット販売された原告製品の数量で除す方法で単位当たりの外注工賃が算出されており、母数に卸 売りされた原告製品が含まれていない点で相当でないと主張する。しかし、本件の計算鑑定は、計算鑑定人が原告の事業所における実地調査並びに原告従業員及び原告代理人からの事情聴取等を踏まえて派遣従業員及びパート従業員に係る費用が主にネット販売に係る出荷作業に関する費用であるとの判断の上に算定されたものであり、当該鑑定結果を左右する事情は認めら れない。 (ウ) 荷造運賃計算鑑定は、荷造運賃として控除する経費として後納郵便のみを対象とし、当該後納郵便に係る費用をネット販売された原告製品の数量で除している。 これに対し原告は、当該費用には、卸売販売された原告製品についての送料 及び梱包費も含まれているから、卸売販売された原告製品を含む数量で除す べきであると主張する。 しかし、計算鑑定は前記(イ)のとおりの調査を踏まえたものであるのに対し、卸売販売分に係る卸先への送料が当該後納郵 ら、卸売販売された原告製品を含む数量で除す べきであると主張する。 しかし、計算鑑定は前記(イ)のとおりの調査を踏まえたものであるのに対し、卸売販売分に係る卸先への送料が当該後納郵便に係る費用に含まれることを裏付ける的確な証拠はない。また、後納郵便に係る費用に梱包費が含まれるとする原告の主張も相当とは解されない。 (6) 原告の実施能力の限度特許法102条1項にいう「実施の能力」は、潜在的な能力で足り、生産委託等の方法により、侵害品の販売数量に対応する数量の製品を供給することが可能な場合も実施の能力があるものと解すべきであり、その主張立証責任は特許権者側にある(前掲知財高裁特別部判決参照)。 原告は、販売製品の製造を複数の下請けメーカーに委託しているところ、原告が平成27年9月1日から平成28年8月末日までの一年間で販売した製品の合計数は●(省略)●枚であり、原告製品に限ってみても、●(省略)●枚を超えている(計算鑑定、甲63、弁論の全趣旨)。これに対し、本件対象期間中の被告製品の譲渡数量は●(省略)●である。 以上を踏まえれば、原告は、被告が本件対象期間中に販売した被告製品の数量の原告製品を販売する能力を有していたと認められる。 (7) 原告が販売することができないとする事情ア競合品の存在被告が競合品であると主張する製品のうち、アツギが販売する「大人のス ポパン」(乙60の2の1)、イーゲートが販売するショーツ(乙60の4の1)、ワコールが販売する「すそピタショーツ」(乙61の1)、千趣会が販売するショーツ(乙61の2、61の3)及びグンゼが発売する「超立体ぴったりフィットショーツ」(乙61の5)は、脚口(裾口)ないし臀部部分が立体的な構造であり、脚口(裾口 (乙61の1)、千趣会が販売するショーツ(乙61の2、61の3)及びグンゼが発売する「超立体ぴったりフィットショーツ」(乙61の5)は、脚口(裾口)ないし臀部部分が立体的な構造であり、脚口(裾口)部分のずりあがりが防止されることなど本 件各特徴に相当する作用効果を有することを特徴とする商品であるといえ、 価格帯も、ワコールが販売する製品を除き、概ね同一であり、競合品であると認められる。ワコールが販売する製品は、3000円前後と原告製品よりも高額であるものの、同社が女性用下着メーカーとして有名でありその商品に高いブランド力があると認められること等を踏まえると、なお競合品に含まれるといえる。 したがって、原告製品と被告製品とが販売される市場において、原告製品と競合する製品が複数存在することが認められ、かかる競合品の存在は、原告が販売することができない事情に該当するといえる。 もっとも、原告製品のうち、220番製品及び420番製品は、楽天市場内の「ボックスショーツ」で区分される製品のランキングにおいて、平成2 5年5月15日から令和元年7月7日までの長期間にわたり連続1位を獲得している(甲50、73)等、原告のブランドは需要者に相応に知られており、かつ需要があると認められることを踏まえると、競合品の存在を理由とする覆滅の程度が大きいとまではいえない。 イ被告製品固有の特徴 証拠(甲3~8、23、24、)によれば、被告製品は、本件各特徴に加えて被告各特徴(①ウエスト・脚口にはゴムを使用せず、②綿の中でも、繊維長が長く、吸湿性が高く、やわらかい風合い等の特徴を持つスーピマコットンを使用し、③各パーツの縫い目の縫い糸が肌側に当たらない仕様であり、④品質表示を記載するタグをタグから製品本体に の中でも、繊維長が長く、吸湿性が高く、やわらかい風合い等の特徴を持つスーピマコットンを使用し、③各パーツの縫い目の縫い糸が肌側に当たらない仕様であり、④品質表示を記載するタグをタグから製品本体に転写してプリントする方 法に変更していること)を備えており、かつ当該被告特徴について、本件各特徴に次いで、需要者に訴求されていることが認められる。 また、証拠(甲48~50)及び弁論の全趣旨によれば、原告製品は、①少なくともウエスト部分にゴムを使用し、②スーピマコットンは使用されておらず、③パーツの縫い目の縫い糸が肌側に当たる仕様であり、④品質表示 を記載するタグが付けられていることが認められる。 原告商品及び被告商品は、余多ある女性用ショーツの中で、装飾的な意味でのデザイン性よりも、履き心地、肌触り等の機能面、実質面を重視した商品を購入しようとする需要者を販売対象とした商品であると認められ、そのような需要者にとって、被告各特徴は、購入動機の形成にそれなりに寄与するものであるといえる(乙67)。 よって、被告製品が原告製品とは異なる被告各特徴を備えることは、原告が販売することができない事情に該当すると言い得る。 ただし、被告各特徴に基づく顧客誘引力は、商品の形状・機能に直接かかわる本件各特徴と比較すると限定的であると考えられること、被告特徴②について、素材それ自体で見れば、被告製品と原告製品のうち220番製品及 び420番製品は綿95%、ポリウレタン5%と同一であり、その余の原告製品も綿92%、ポリウレタン8%と大差がないこと、被告特徴④について、本件対象期間中に販売された被告製品の一部はタグ付きである可能性があること(甲40)等をふまえると、その覆滅の程度は限定的に解すべきである。 ポリウレタン8%と大差がないこと、被告特徴④について、本件対象期間中に販売された被告製品の一部はタグ付きである可能性があること(甲40)等をふまえると、その覆滅の程度は限定的に解すべきである。 ウハイウエストタイプの存在被告製品には、原告製品にない、ウエスト丈がハイウエストのもの(被告製品3-1及び3-2。ハイウエストタイプ)が存在し、当該ハイウエストタイプの存在が、原告が販売することができないとする事情に該当することは争いがない。 被告製品のうちハイウエストタイプは、被告製品の販売数量合計●(省略)●のうち、●(省略)●であり、約26.8%である(計算鑑定の結果)。 被告製品においてハイウエストタイプを好む需要者が一定程度存在すると認められることを踏まえると、被告製品にのみハイウエストタイプが存在するという事情は、特許法102条1項1号に基づく推定を一定程度覆滅す るものと認められる。 エ販売価格証拠(甲3~8、48~50、75)によれば、原告のウェブサイトで販売される107番製品(ローライズ丈)及び407番製品(普通丈)の販売価格は2500円(税込)、楽天市場で販売される220番製品(セミ丈)及び420番製品(普通丈)の販売価格は1500円~1520円(税込)で あるのに対し、被告製品の一般向けの販売価格はレギュラー丈(被告製品1-1及び1-2)が1080円(税抜)、ショート丈(被告製品2-1及び2-2)が平均980円(税抜)、ハイウエストタイプ(被告製品3-1及び3-2)が平均1280円(税抜)であると認められる。なお、原告製品のローライズ丈及びセミ丈と被告製品のショート丈、原告製品の普通丈と被告製 品のレギュラー丈が、それぞれ対応関係にある。 -2)が平均1280円(税抜)であると認められる。なお、原告製品のローライズ丈及びセミ丈と被告製品のショート丈、原告製品の普通丈と被告製 品のレギュラー丈が、それぞれ対応関係にある。 同種かつ同程度の機能等の製品相互間で価格が顧客誘引力に影響を与えること、これが女性用下着一般及びその中でも原告商品及び被告商品の想定需要者層に妥当することは明らかである(乙67)。原告商品の販売数量を見ても、価格以外の要素があり得るといえるものの、高額(2500円)の 407番製品及び107番製品の販売数量が●(省略)●枚、●(省略)●枚であるのに対し、低価格(約1500円)の220番製品及び420番製品が●(省略)●枚、●(省略)●枚と非常に高い比率を占める(計算鑑定の結果)。 もっとも、販売量の多い220番製品及び420番製品と、被告製品(ハ イウエストタイプを除く)の価格差は、420円~540円であり、両製品の価格帯自体が1000円~1500円程度の範囲であること等を踏まえても、その差が大きいとはいえず、顧客誘引力に大きな影響を及ぼすとまではいえない。 したがって、被告製品が原告製品よりも低価格であることは、原告が販売 することができないとする事情に該当するといえるものの、当該事情を理由 として推定された損害が覆滅される程度は高いとは言えない。 オ被告の営業努力特許権者等が販売することができない事情として認められる侵害者の営業努力とは、通常の範囲を超える格別の工夫や営業努力を行い、製品の購買動機の形成に寄与したと認められるものをいうところ、被告指摘の事情を勘 案しても、このような事情には該当しない。 カ本件発明の技術的意義が被告製品の利益に貢献する程度被告は、構成要件Dの「 の形成に寄与したと認められるものをいうところ、被告指摘の事情を勘 案しても、このような事情には該当しない。 カ本件発明の技術的意義が被告製品の利益に貢献する程度被告は、構成要件Dの「腸骨棘点付近」について、上前腸骨棘を中心としつつ下前腸骨棘付近を含むものと解釈した場合、仮に被告製品が構成要件Dを充足するとしても、本件発明の作用効果を奏さないため、被告製品に対す る本件発明の寄与度が零であると主張する。 しかし、「腸骨棘点付近」に下前腸骨棘付近を含む場合でも本件発明の作用効果を奏するものであることは前記2(1)のとおりであるから、被告の主張は採用できない。 キ実際の着用状態からみた本件発明の貢献度 被告は、一定以上の割合の被告製品については、需要者が着用した場合に身体的個体差等の影響により着用状態において本件発明の技術的範囲に属しない場合があり得、当該事情をもって原告が販売することができないとする事情に該当と主張する。 しかし、被告製品は、その設計時に想定された着用状態において、本件発 明の技術的範囲に属するものであり、実際の個別具体的な着用状況において、被告製品の足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置しない場合があることをもって販売することができない事情が存すると解することは相当でない。 ク推定覆滅の割合(まとめ) 以上によれば、本件においては、競合品の存在、被告製品が被告各特徴を 有すること、ハイウエストタイプが存在すること及び原告製品よりも低価格であることについて原告が販売することができない事情に該当すると認められ、前記イで認定した事情を踏まえると、当該事情に相当する数量は、全体の15パーセントであると認めるのが相当である。 (8) 特許法1 ことについて原告が販売することができない事情に該当すると認められ、前記イで認定した事情を踏まえると、当該事情に相当する数量は、全体の15パーセントであると認めるのが相当である。 (8) 特許法102条1項1号に基づく損害額の算定 以上より、本件特許権の侵害について、特許法102条1項1号により算定される原告の損害額は、譲渡数量●(省略)●のうち、15パーセントについては販売することができない事情があるからその分を控除し、控除後の販売数量に原告製品の単位数量当たりの利益●(省略)●円を乗じると、次の計算式のとおり、●(省略)●であると認められる(一円未満切り捨て。以下同様)。 〔計算式〕●(省略)●×0.85×●(省略)●円≒●(省略)●(9) 特許法102条1項2号に基づく損害額の算定(実施料相当額)ア被告製品の価格計算鑑定及び証拠(甲3~8)の結果によれば、別紙損害額一覧表記載の「被告製品の販売価格」の「1枚当たりの平均販売価格」欄のとおり、被告 製品の1枚当たりの平均一般販売価格は●(省略)●と認められる。 イ実施料相当額証拠(甲11、12)及び弁論の全趣旨によれば、本件発明の実施に対し受けるべき実施料率は6パーセントと認めるのが相当である。 なお、被告は、原告がそのウェブサイトにおいて本件特許権侵害に基づく 訴訟を被告に提起し、徹底的に争う旨の意思表明をしていることから、ライセンスの機会を自ら放棄したとして、特許法102条1項2号が規定する「特許権者…が、当該特許権者の特許権についての専用実施権の設定若しくは通常実施権の許諾…をし得たと認められない場合を除く」に該当し、同号に基づく実施料相当額の損害は認められない旨主張する。 しかし、被告が主張する事情は についての専用実施権の設定若しくは通常実施権の許諾…をし得たと認められない場合を除く」に該当し、同号に基づく実施料相当額の損害は認められない旨主張する。 しかし、被告が主張する事情は、原告の被告に対するライセンスの機会の 喪失を否定する事情に該当するとはいえず、同号の括弧書に該当する場合であるとは認められない。 以上によると、同号により算定される原告の損害額は、次の計算式のとおり●(省略)●であると認められる。 〔計算式〕●(省略)●×(●(省略)●×0.15)×0.06=●(省 略)●(10) 小括ア 102条1項の規定による損害額以上のとおり、特許法102条1項による損害額は、合計2328万9264円(●(省略)●)である。 イ消費税相当額本件の損害賠償金は、資産の譲渡等(消費税法2条8号)の対価の性質を有し、消費税の課税対象となる。被告製品が販売された期間(平成27年9月~平成30年1月31日)の消費税率は8パーセントであるから、消費税相当額は186万3141円である。 ウ弁護士費用等本件事案に鑑みると、前記アとイの合計額(2515万2405円)の10パーセントに相当する251万5240円を被告による本件特許権侵害行為と相当因果関係ある弁護士費用等相当の損害と認める。 エそうすると、本件特許権侵害による損害額は、合計2766万7645円 である。 第5 結論原告の請求中、被告製品の製造販売等の差止及び廃棄(請求1項)は全部理由があり(主文1項、2項)、損害賠償請求(請求2項)は主文3項掲記の限度で理由があり、その余は理由がない。主文1項及び2項については、仮執行宣言を付するの は相当でないからこれを付さないこととする り(主文) 損害賠償請求(請求2項)は主文3項掲記の限度で理由があり、その余は理由がない。主文1項及び2項については、仮執行宣言を付するのは相当でないからこれを付さないこととする。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 松阿彌隆 裁判官 杉浦一輝 裁判官 布目真利子 (別紙)被告製品目録 1-1 商品名 超立体ショーツスタンダード(「ジャストウエストタイプ」、「スタンダード丈」又は「レギュラー丈」と呼ばれることもある。) 品番 D9871-2 商品名 超立体ショーツスタンダード(「ジャストウエストタイプ」、「スタンダード丈」又は「レギュラー丈」と呼ばれることもある。) 品番 D971 2-1 商品名 超立体ショーツショート丈(「やや浅履きタイプ」と呼ばれることもある。) 品番 D9882-2 商品名 超立体ショーツショート丈(「やや浅履きタイプ」と呼ばれることもある。) 品番 D9723-1 商品名 超立体ショーツハイウエスト 品番 D9863-2 商品名 超立体ショーツハイウエスト 品番 D973 以上 スト 品番 D9863-2 商品名超立体ショーツハイウエスト 品番 D973 以上 【別紙特許公報省略】 (別紙)被告製品の構成(原告主張) 1 被告製品1-1、2-1及び3-1a1 大腿部が挿通する開口部の湾曲した足刳りとなる足刳り形成部24を備えた前身頃12を有している。前身頃12には、クロッチ部16が一体化されてい る。 b1 この前身頃12に接続され臀部を覆うとともに前身頃12の足刳り形成部24に連続する足刳り形成部25を有した後身頃14を有している。 c 前身頃12と後身頃14の各足刳り形成部24・25に接続され大腿部が挿通する脚口パーツ18を有している。 d 前身頃12の足刳り形成部24の湾曲した頂点が下前腸骨棘付近aに位置している。 e 後身頃14の足刳り形成部25の下端縁は臀部の下端付近に位置している。 f 脚口パーツ18の山40aの高さh1を足刳り形成部24・25の前側の湾曲深さh2よりも低い形状としている。 g 前記足刳り形成部24・25の湾曲部分の幅w2よりも前記脚口パーツ18の山40aの幅w1を広く形成している。 h 取り付け状態で筒状の脚口パーツ18が前身頃12に対して前方に突出する形状となっている。 ⅰ ショーツである。 2 被告製品1-2、2-2及び3-2a2 大腿部が挿通する開口部の湾曲した足刳りとなる足刳り形成部24を備えた前身頃12を有している。 b2 この前身頃12に接続され臀部を覆うとともに前身頃12の足刳り形成部24に連続する足刳り形成部25を有した後身頃14を有している。後身頃12 にはクロッチ部16が一体化されている。 その余の構成は、前記1の構成c~ もに前身頃12の足刳り形成部24に連続する足刳り形成部25を有した後身頃14を有している。後身頃12にはクロッチ部16が一体化されている。その余の構成は、前記1の構成c~iと同じである。以上
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