主文 本件控訴をいずれも棄却する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人が,A株式会社に対して,平成16年2月9日になした原判決別紙埋立区域目録記載の公有水面の埋立を免許する旨の処分を取り消す。 第2事案の概要 事案の要旨本件は,被控訴人が平成16年2月9日付でA株式会社(以下「A」という。)に対してした原判決別紙埋立区域目録記載の公有水面(以下「本件公有水面」という。)の埋立を免許する旨の処分(以下「本件処分」という。)が違法であるとして,周辺に居住し磯草採取権あるいはこれを含む漁業権を有すると主張する控訴人らがその取消を求めた事案である。 訴訟経緯(1)原判決は,控訴人らが本件訴えにつき原告適格を有するといえるのは,控訴人らが公有水面埋立法(以下,適宜「法」という。)5条の「公有水面に関し権利を有する者」に該当する場合に限られると解するのが相当であり,法5条各号の定めは限定列挙であり,同条2号の「漁業権者又は入漁権者」とは,「漁業法に基づき,漁業権の設定を受けた者」と解するのが相当であるとした上で,控訴人らの主張する土地の所有権に基づく,ないし陸地における慣習法上(ないし慣習上・慣行上)の入会権に基づく「のり島の権利」,α地区の住民の陸地における慣習上の入会権に基づく「のり島の権利」,B漁業協同組合の組合員としての「漁業を営む権利」(この権利に関しては,控訴人Cを除く。以下,同じ。)はいずれも認められない(法5条各号のい ずれにも該当しない。)として,本件訴えは,原告適格を欠く不適法なものであるとして,これを却下した。 (2)控訴人らは,原判決を不服として,本件控訴を提起し,本件処分の取消しを求め,原審と同旨の主張をした。 い。)として,本件訴えは,原告適格を欠く不適法なものであるとして,これを却下した。 (2)控訴人らは,原判決を不服として,本件控訴を提起し,本件処分の取消しを求め,原審と同旨の主張をした。 前提事実等(1)Aは,D原子力発電所(以下「D原発」という。)3号機の増設(設置変更許可)計画をし,法2条1項に基づき,平成15年11月10日,本件公有水面の埋立(埋立面積約6.7ヘクタール)につき,免許を出願した(乙8,弁論の全趣旨)。 なお,Aは,平成15年3月24日,本件公有水面の埋立についてB漁業協同組合(以下「B漁協」という。)の同意を得た(弁論の全趣旨)。 (2)被控訴人は,上記出願に対し,平成16年2月9日,本件処分をし,同月20日,島根県告示第XXXX号をもって,本件処分を告示した。 なお,控訴人Eは,法3条3項に基づいて,被控訴人に対し,平成15年12月17日付け意見書を提出した(甲4)。 (3)控訴人らは,それぞれ以下の土地(以下「本件各土地」という。)を所有している。 ア控訴人E,同C,同Fは,松江市β×××番(雑種地2188平方メートル)を共有している(控訴人E持分99分の32,同C及び同F各持分3分の1)(甲1の1)。 イ控訴人Gは,松江市γ×××番(雑種地766平方メートル)を共有している(持分6分の1)(甲2,弁論の全趣旨)。 争点及び当事者双方の主張(1)原告適格当事者双方の主張は,原判決3頁18行目から同14頁10行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 (2)本件処分の違法性当事者双方の主張は,原判決14頁12行目から同17頁7行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 当審における控訴人らの補充主張(原判決批判)(1)原判決は,本件訴えにつき,原告適格を有するの の主張は,原判決14頁12行目から同17頁7行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 当審における控訴人らの補充主張(原判決批判)(1)原判決は,本件訴えにつき,原告適格を有するのは,法5条の「公有水面に関し権利を有する者」に限られる(限定列挙であり,類推解釈は許されない。)とし,法を極めて狭く解釈し,かつ,控訴人らは,法5条各号の権利者に該当しないと判断した。 また,原判決は,控訴人らが原告適格を有するか否かについて,「法律上の利益説」に立脚し,その有無を検討するに際し,行政事件訴訟法9条2項に規定されている考慮すべき事項について,一応検討しているものの,極めて形式的,表面的で,かつ,個々の各要素を切り離しての分断的,分析的な検討であり,大正10年に制定された埋立促進法の性格を有する公有水面埋立法の,現時点におけるあるべき法解釈について,控訴人らの権利の内実,実質,憲法上の価値を全く考慮せず,また,考慮すべき各要素を総合的に判断していない。 (2)環境基本法は,環境の保全について定めているところ,この中には,控訴人らが主張している岩のりの保護も含まれ,公有水面埋立法の昭和48年改正の趣旨と目的を共通にするものであると解することが相当であるから,環境基本法の目的も斟酌すべきである。また,原判決は,環境影響評価法と島根県環境影響評価条例について,本件埋立の面積は,対象としている規模に達しないとして,公有水面埋立法と目的を共通にする関係法令でないとし,また,仮に,目的を共通にする関係法令と見るとしても,本件埋立によって控訴人らの健康が害されることの主張,立証がないとして,原告適格を否定しているが,そもそも対象としている規模を設定していること自体が,環境影響評価の精神に反するものであり,環境影響評価法及び島根県環境影響評 の健康が害されることの主張,立証がないとして,原告適格を否定しているが,そもそも対象としている規模を設定していること自体が,環境影響評価の精神に反するものであり,環境影響評価法及び島根県環境影響評 価条例の環境保全の精神は,当然斟酌されるべきである。 (3)控訴人らは,のり島の権利を有しており,その権利に基づいて,永年に亘り,先祖代々から,岩のり等を採取し,加工し,製品化して販売したり,親戚,友人に配ったり,自家消費をしたりしてきたものである。 ア土地所有権に基づくもの原判決は,この権利について,本件各土地を所有していることから,直ちに本件各土地に成育する岩のり等を採取する独立した実体法上の権利が認められるものとは解されない,と判示している。しかしながら,控訴人らが所有している本件各土地上に成育する岩のり等を採取することは,本件各土地の使用,収益権の行使に他ならない。 イ慣習法上の入会権に基づくもの控訴人らが主張している慣習法上の権利は,海面における漁業をする権利ではなく,陸地において,入会的に岩のり等を採取する権利であって,漁業法が規定している共同漁業権とは,全く関係のない権利であり,この点において,原判決は誤った法的解釈をしている。 また,慣習法上の権利が,昭和24年の漁業法の成立によって一旦消滅したとしても,その後,約60年近くに亘り,今日まで,連綿として慣習が続いているのであるから,社会通念上,法的保護に値する権利にまで成熟したものとなり,慣習法上の権利として認められることになったというべきである。 さらに,A自体が,控訴人らののり島の権利を認めた上で,これまで,補償交渉等をしてきた経緯がある。 控訴人らが慣習法上の入会権者であることは,上記の諸事実と,法例2条,公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱等,漁業法14条11 ののり島の権利を認めた上で,これまで,補償交渉等をしてきた経緯がある。 控訴人らが慣習法上の入会権者であることは,上記の諸事実と,法例2条,公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱等,漁業法14条11項等に鑑みれば,一目瞭然である。 ウ漁業を営む権利に基づくもの 原判決は,最高裁昭和60年(オ)第781号平成元年7月13日第一小法廷判決を引用して,控訴人らの権利を否定しているが,その問題点は,甲15(意見書)記載のとおりである。 (4)控訴人らの権利は,公有水面埋立法が想定していない特殊な権利であるかも知れないが,現にそれが存在している以上,公有水面埋立法の解釈としては,限定的に解釈すべきではなく,「公有水面に関し権利を有する者」に該当する,あるいは準じるものとして,法5条2号,4号を類推適用して,法4条3項1号の埋立に同意を要する権利者であると解釈すべきである。 (5)さらに,法3条3項に基づいて意見書を提出した控訴人Eについては,公有水面埋立法に意見書に対する回答義務が定められていないとしても,憲法31条の適正手続の保障の観点からすれば,これを無視してなされた本件処分に対し,その違法性を争う原告適格が認められるべきである。 第3争点に対する判断 争点1(原告適格)について(1)行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,こ 処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。 そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみに よることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項参照)(最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁)。 (2)上記の見地に立って,控訴人らが本件処分の取消しを求める原告適格を有するか否かについて検討する。 ア昭和48年法律第84号による改正(以下「昭和48年改正」という。)前の公有水面埋立法の趣旨及び目的本件処分は,公有水面埋立法2条1項に基づくものであるところ,昭和48年改正前の公有水面埋立法の趣旨及び目的は,従前,公有水面埋立に関する法律が整備されておらず,官有地取扱規則中に「官に属する公有水面を埋立て民有地となさん事を乞う者あるときは公衆の妨害とならざる部分に限り之を許す事を得」(原 旨及び目的は,従前,公有水面埋立に関する法律が整備されておらず,官有地取扱規則中に「官に属する公有水面を埋立て民有地となさん事を乞う者あるときは公衆の妨害とならざる部分に限り之を許す事を得」(原文は片仮名。以下,引用に当たり,片仮名は適宜平仮名に改めることとする。)という規定があるのみであったため,公有水面埋立を円滑に行うことが困難であり,殊に埋立区域内に他人の権利が存在する場合には,その権利者の同意,承諾を得なければ埋立をすることができず,経済上有益な事業や公益の事業も,埋立区域内における既設の権利のために,阻害されてできないか,あるいは,不相当な冗費を負担しなければならないということがあったため,既存の権利利益と埋立事業との利害関係の調和を図る規定(昭和48年改正前の公有水面埋立法(以下,適宜「旧法」という。)4条ないし10条)を置くことによって,埋立を容易ならしめ,埋立地増大の必要性に応えるとともに,港湾,河川 等公共の利益と密接な関係を有する場所の埋立については,埋立免許を受けた者に対し,公益上の必要から,免許に条件を付し,かつ,これを第三者にも対抗できるようにすることなどにあった(乙14)。 イ旧法に基づく公有水面埋立を免許する旨の処分において考慮されるべき利益の内容上記の趣旨及び目的から,旧法は,公有水面に関し権利を有する者を,①法令により公有水面占用の許可を受けたる者,②漁業権者又は入漁権者,③法令により公有水面より引水を為し又は公有水面に排水を為す許可を受けたる者,④慣習により公有水面より引水を為し又は公有水面に排水を為す者の4者に限定し(法5条),これらの者が埋立に同意したことを公有水面埋立免許の要件の一つとした(法4条3項1号(旧法4条1号))。 すなわち,公有水面埋立免許を得ようとする者は,上記4者の同意 為す者の4者に限定し(法5条),これらの者が埋立に同意したことを公有水面埋立免許の要件の一つとした(法4条3項1号(旧法4条1号))。 すなわち,公有水面埋立免許を得ようとする者は,上記4者の同意を得るか,法4条3項(旧法4条)の他の要件を満たす必要があるが,公有水面に関し法5条に列挙された以外の権利あるいは利益を有する者の同意,承諾を得る必要はない旨定められたのである。 よって,旧法下での公有水面埋立を免許する旨の処分において考慮されるべき利益は,法5条各号に規定された権利又は利益であり,それ以外の権利又は利益はあえて考慮されるべき利益の対象から除外されたというべきである。 ウ昭和48年改正の趣旨及び目的ところで,公有水面埋立法は,昭和48年法律第84号により改正されたが,この改正の趣旨は,近年における埋立を取り巻く社会経済環境の変化に即応し,公有水面の適正かつ合理的な利用に資するため,特に自然環境の保全,公害の防止,埋立地の権利処分及び利用の適正化等を図ることにあり(乙15),主要な改正点は,都道府県知事は,埋立の免許の出願が,①国土利用上適正かつ合理的なること(法4条1項1号),②その埋 立が環境保全及び災害防止につき十分配慮せられたるものなること(同条項2号),③埋立地の用途が土地利用又は環境保全に関する国又は地方公共団体(港務局を含む)の法律に基づく計画に違背せざること(同条項3号)等の基準に適合すると認める場合でなければ免許をなすことはできない旨規定して,免許基準を法定するとともに,都道府県知事は,埋立の免許の出願があったときには,遅滞なくその事件の要領を告示するとともに,法定事項の記載された書面及び関係図書をその告示の日から起算して3週間公衆の縦覧に供し(法3条1項),その埋立に関し利害関係を有する者に都道府県 ときには,遅滞なくその事件の要領を告示するとともに,法定事項の記載された書面及び関係図書をその告示の日から起算して3週間公衆の縦覧に供し(法3条1項),その埋立に関し利害関係を有する者に都道府県知事に対する意見書の提出を認める(同条3項)など,当該埋立に利害関係を有する者に対する一定の手続的配慮がなされたこと,及び,主務大臣が政令をもって定める埋立に関し都道府県知事の職権に属する事項を認可しようとするときは,環境保全上の観点から,環境庁長官の意見を求めなければならない(法47条2項)としたことなどである。 ところで,公有水面の埋立による自然環境の保全,公害の防止という昭和48年改正と目的を共通にする関係法令として,環境影響評価法及び島根県環境影響評価条例が挙げられる(なお,環境基本法は,環境の保全について,基本理念を定め,地方公共団体や事業者等の責務を明らかにするとともに,環境の保全に関する施策の基本となる事項を定める基本法であり,基本理念の一つとして,現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを定めているところ(同法1条),環境影響評価法や島根県環境影響評価条例は,それを具体化したものと解される。)。環境影響評価法は,規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価が適切かつ円滑に行われるための手続その他所要の事項を定め,その手続等によって行われた環境影響評価の結果をその事業に係る決定に反映させるための措置をとること等により,その事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保し,もって 現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的としており(同法1条),公有水面埋立法による公有水面の埋立については,面積が50ヘクタールを超えるもの,及び,40ヘクター もって 現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的としており(同法1条),公有水面埋立法による公有水面の埋立については,面積が50ヘクタールを超えるもの,及び,40ヘクタール以上50ヘクタール以下であるもののうち,同法4条3項1号の措置がとられたものを環境影響評価を要する事業と規定している(本件公有水面の埋立は面積が約6.7ヘクタールであるから,環境影響評価法において環境評価を要する事業には当たらない。)。また,島根県環境影響評価条例は,規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価の手続等を定めることにより,その事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保し,もって現在及び将来の県民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的とし(同条例1条),環境影響評価法が環境影響評価を要する事業としていない一定の事業についても,環境影響評価を要する事業とし,対象事業の実施について,知事の許認可等を要する場合,その審査に際し,当該対象事業に係る評価書の内容について配慮するものとしているが(同条例29条),公有水面埋立法による公有水面の埋立については,面積が25ヘクタール以上であるものを対象としている(本件公有水面の埋立は,島根県環境影響評価条例の対象事業にも当たらない。)。 エ公有水面埋立を免許する旨の処分において考慮されるべき利益の内容前記のとおり,法5条各号に規定された権利又は利益は公有水面埋立を免許する旨の処分において考慮されるべき利益となるほか,昭和48年改正及びこれと目的を共通にする関係法令である環境影響評価法,島根県環境影響評価条例,さらにはこれらの基本法である環境基本法の趣旨及び目的,その内容に鑑みると,公有水面埋立事業(特に環境影響の程度が著しいもの と目的を共通にする関係法令である環境影響評価法,島根県環境影響評価条例,さらにはこれらの基本法である環境基本法の趣旨及び目的,その内容に鑑みると,公有水面埋立事業(特に環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある大規模のもの)から自然環境の保全,災害・公害の防止を図ることによって守られる,現在及び将来の国民の健康で文化 的な生活の確保をも保護しようとするものと解される。そして,公有水面埋立を免許する旨の処分が法に違反してされた結果,事業地の周辺地域に居住する住民の生命,身体の安全が脅かされ,又,健康や生活環境に著しい被害が発生する場合には,その内容,性質,程度等に照らし,当該住民の具体的利益を一般的公益の中に吸収解消させることは困難であるといわざるを得ないから,個々人の個別的利益としてもこれを保護する趣旨を含んでいると解すべきであるが,生命,身体の安全に影響を与えない,比較的小規模な公有水面埋立事業がもたらす生活環境に対する軽微な被害や,当該事業の環境への影響に起因する財産的被害(法5条各号に規定された権利又は利益以外のもの)については,専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめていると解するのが相当である。 オ控訴人らの権利について(ア)認定事実証拠(甲7,9,13,14,33,34,控訴人Eの本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ①控訴人らは,毎年11月26日から翌年の2月3日までの間,その所有土地及びこれと接する海面(春分・秋分時における満潮位面の水際線によって区別された海水の部分)に成育する岩のり等を採取し,毎年2月4日から11月25日までの間は,控訴人らの土地を含む12区画の「のり島」の土地の一部について,自己所有の土地のみならず,他人の土地及びこれと接する海面(春分・秋分時にお 岩のり等を採取し,毎年2月4日から11月25日までの間は,控訴人らの土地を含む12区画の「のり島」の土地の一部について,自己所有の土地のみならず,他人の土地及びこれと接する海面(春分・秋分時における満潮位面の水際線によって区別された海水の部分)に成育している岩のり等を無償で,自由に採取している。上記のような慣行は,昭和16年当時から行われていた。 ②控訴人Eの漁獲高は,平成17年2月には,平成16年2月に比較し,約3分の1に減少(約38万円が,約12万円に減少)した。 また,控訴人Gについても,その岩のり水揚げ金額は,平成10年には11万円あったものの,その後減少し,平成16年には,商品価値のある岩のりを採取することができなかった。 (イ)前記のとおり,法5条各号に規定された権利又は利益は,公有水面埋立を免許する旨の処分において考慮されるべき利益であると解されるところ,まず,控訴人らが陸地(春分・秋分時における満潮位面の水際線によって区別された陸地の部分)において岩のり等を採取する権利ないし利益は,そもそも公有水面に関する権利ないし利益ではなく,法5条各号のいずれにも該当しない。次に,控訴人らが海面(春分・秋分時における満潮位面の水際線によって区別された海水の部分)において岩のり等を採取する権利ないし利益は,公有水面に関するものであるが,控訴人らの主張する慣習法上の漁業権は,漁業法(昭和24年法律第267号)の立法の経緯,趣旨,内容等に鑑みれば,漁業法上の共同漁業権から別個独立した権利としては存在しないというべきであり,また,漁業法上の共同漁業権は法人としての漁業協同組合に帰属しており,被控訴人らには帰属していないというべきである(最高裁昭和60年(オ)第781号平成元年7月13日第一小法廷判決・民集43巻7号866頁参 法上の共同漁業権は法人としての漁業協同組合に帰属しており,被控訴人らには帰属していないというべきである(最高裁昭和60年(オ)第781号平成元年7月13日第一小法廷判決・民集43巻7号866頁参照)。よって,控訴人らが陸地及び海面において岩のり等を採取する権利ないし利益は,法5条各号に規定された権利又は利益には当たらない。 (ウ)また,前記のとおり,事業地の周辺地域に居住する住民の生命,身体の安全や,健康又は生活環境に係る著しい被害を受けないという具体的利益も,個々人の個別的利益として公有水面埋立を免許する旨の処分について考慮されるべき利益であると解されるところ,控訴人らの主張する陸地及び海面において岩のり等を採取する権利ないし利益は,生命,身体の安全や健康被害とは直接の関係を有しない,主として財産的性格を有するものであり,生活環境に係る被害としては比較的軽微なものというべきであ るから,公有水面埋立を免許する旨の処分において考慮されるべき利益には当たらないと解される。 結論 以上により,本件訴えは,原告適格を欠く不適法なものであるからこれを却下すべきであり,これと同旨の原判決は相当であって,本件控訴はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所松江支部裁判長裁判官古川行男裁判官橋本眞一裁判官三島恭子
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