平成14(わ)542 農薬取締法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成15年3月31日 新潟地方裁判所
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判決文本文2,890 文字)

主文 被告会社Aを罰金5万円に,被告人B及び同Cをそれぞれ懲役1年に処する。 被告人B及び同Cに対し,この裁判確定の日から3年間それぞれその刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人A(以下「被告会社」という。)は,前橋市a町に本店を置き,農薬販売業等を営む事業者,被告人Bは,同会社農薬部販売3課長代理,被告人Cは,同会社b支店販売1課長であるが,被告人両名は,共謀の上,被告会社の業務に関して, 1 平成14年3月29日ころ,新潟県c市dの有限会社Dにおいて,同会社に対し,農薬である商品名ホールエイト40袋を価格9万2000円で,その容器又は包装に法定の表示がないのに販売した, 2 同年4月4日ころ,同所において,同会社に対し,農薬である商品名ホールエイト80袋を価格18万4000円で,その容器又は包装に法定の表示がないのに販売したものである。 (証拠の標目)略(法令の適用)1(1)罰条被告会社Aについて平成14年法律第141号による改正前の農薬取締法17条1号,9条1項,19条(包括して)被告人B及び同Cについて刑法60条,平成14年法律第141号による改正前の農薬取締法17条1号,9条1項,19条(包括して)(2)刑種の選択被告人B及び同Cについていずれも懲役刑を選択 2 刑の執行猶予被告人B及び同Cについて刑法25条1項(量刑の理由)本件は,農薬の販売業を営んでいた被告会社の従業員である被告人両名が,被告会社の業務に関し,薬効が人体に悪影響を及ぼすおそれがあるとして登録が失効した農薬である「ダイホルタン水和剤」と主成分を )本件は,農薬の販売業を営んでいた被告会社の従業員である被告人両名が,被告会社の業務に関し,薬効が人体に悪影響を及ぼすおそれがあるとして登録が失効した農薬である「ダイホルタン水和剤」と主成分を同じくする「ホールエイト」なる農薬を,その包装等に法定の表示がないにもかかわらず,合計120袋を小売業者に販売した農薬取締法違反の事案である。 もとより農薬取締法は,農薬についての登録制度を設け,販売及び使用の規制等を行い,農薬の品質の適正かとその安全かつ適正な使用の確保を図り,農業生産の安定と国民の健康の保護に資するとともに,国民の生活環境の保全に寄与することを目的としているところ,被告人両名は,農薬販売業務の経験等から本件のような無表示農薬販売が違法であることを承知していたにもかかわらず,営業担当者としてより強力な薬効のある農薬を求める小売業者からの要望に押され,顧客を失いたくないなどと考え,あるいは,その営業担当者から仕入れることを頼まれ,同じ営業担当者として手助けをしたいなどと考えて本件犯行に及んだものであり,その動機は,安全な農薬販売業務を遂行すべき営業担当者としての本分を失念したいずれも身勝手かつ短絡的なものであり,酌量の余地は乏しい。その犯行は,小売業者から被告人Bに「ホールエイト」の注文が入ると,被告人Bが被告人Cに連絡をして仕入れができるかを確かめ,被告人Cが業者に注文し,手に入った「ホールエイト」を前記小売業者に直送して販売したというものであって,また,本件無表示農薬販売の犯行により,その薬害が懸念される農薬が関係農家の間で広く使用されるに至り,本県の特産物である梨の栽培にも使用され,その具体的な薬害等は判然としないものの,その危険性が社会に拡散したとの事情があり,しかも,「ホールエイト」の代替農薬も存在し,避けようと思え 用されるに至り,本県の特産物である梨の栽培にも使用され,その具体的な薬害等は判然としないものの,その危険性が社会に拡散したとの事情があり,しかも,「ホールエイト」の代替農薬も存在し,避けようと思えば避けられた犯行であり,その犯行は執拗で悪質である。また,本件では,被告人両名が行った本件無表示農薬の販売行為それ自体が問題であることは勿論であるが,被告会社においても,被告人B及びその前任者等の本社営業担当者とb支店の被告人Cとが協力して,「ホールエイト」を繰り返し販売してきた事情が窺われ,被告会社における日常の営業体制の点検等の甘さがこれを見過ごしたといわざるを得ず,被告会社が結果としてこれを放置したことの責任は大きい。そして,本件発覚後,被告人両名が違法に販売した本件農薬が行き着いた先の果物等の生産農家に対し与えた影響は深刻であり,本件犯行が一因となった経済的損害も非常に大きく,本件で発生した結果は誠に深刻であり,被告会社及び被告人両名が惹起した本件犯行は,農業・農産物に対する安全に関する信頼を大きく損なうものであって,社会的影響も大きい。そして,近年の「食の安全」に関する関心の高まりに鑑みると,市民が安心して食物を口にできる環境を確保するために,今後は官民一体となった確実な監督体制の構築が望まれるところである。以上の諸事情に照らすと,本件犯情は誠に悪質であって,被告会社及び被告人両名の刑事責任はいずれも重い。 一方,被告人両名は,当公判廷において反省の態度を示し,今後は,本件のような違法な農薬販売をしないよう努めることを誓っていること,被告人両名のこれまでの稼働態度は,本件犯行を除いては真面目と評価し得るものであり,それ自体に特段の問題はなく,今後も被告会社で稼働することが予想されること,被告人両名は,営業担当者として得意先からの要請 名のこれまでの稼働態度は,本件犯行を除いては真面目と評価し得るものであり,それ自体に特段の問題はなく,今後も被告会社で稼働することが予想されること,被告人両名は,営業担当者として得意先からの要請に応えようとして本件犯行に及んだものであり,闇雲に農薬の違法販売をして暴利を追及したとの事情は認められないこと,被告人両名は,稼働先である被告会社で今後然るべき処分が為される見込みであること,それぞれの家庭の事情など被告人両名それぞれのために斟酌すべき諸事情が認められる。また,被告会社においては,本件を重大視し,農薬等の取扱に関する指導教育体制の充実,日常の営業活動に対する監督体制の整備等により一層の関心を払うことを確認し,既に従業員等に対する指導教育を実践していること,本件が,広く社会の注目を集めて報道され,被告会社の経営も相当の打撃を受けたものであり,この点で一定の社会的制裁を受け,さらに,然るべき行政処分も受けることが予想されること,これまでに行政処分や刑事罰を受けたことがないことなど被告会社のために斟酌すべき諸事情が認められる。 そこで,これらの諸事情を併せ考慮の上,被告会社及び被告人両名をそれぞれ主文に掲げたとおりの刑に処し,被告人両名に対しては,その刑の執行を猶予することが相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑-被告会社Aについて罰金5万円,被告人B及び同Cについていずれも懲役1年)平成15年3月31日新潟地方裁判所刑事部 裁判官金子大作

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