平成13(行ウ)46 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年8月1日 大阪地方裁判所
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判決文本文6,976 文字)

主文 1 被告は,大阪府に対し,456万円を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを3分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,大阪府に対し,1432万円を支払え。 第2 事案の概要本件は,大阪府が被告に対し発注した大阪府立東淀川高等学校教室棟外壁改修工事に関して,請負契約締結に先立って行われた入札に際し,被告を含む入札参加業者によって談合が行われたことにより,大阪府が損害を被ったとして,大阪府の住民である原告が,地方自治法242条の2第1項4号後段により,大阪府に代位して,被告に対し不法行為に基づく損害賠償の支払を求めたものである。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実)(1) 原告は,大阪府の住民である。 被告,株式会社A,B建設株式会社は,それぞれ建築工事の請負を業とする会社であって,大阪府の競争入札指名業者である。 (2) 平成12年7月5日,大阪府立東淀川高等学校教室棟外壁改修工事(以下「本件工事」という。)の指名競争入札 (予定価格7645万円,最低制限価格6168万円)が行われた。被告が7600万円,Aが7619万円,Bが 7608万円でそれぞれ入札し,その他11の指名業者も入札したが,被告が最低入札価格で落札し,同日,大阪府との間で請負契約を締結した(甲10及び11)。 (3) 原告は,同年,AのBに対する本件工事に関する談合調整金支払請求権をAから譲り受けたとして,その支払を求める訴えを当庁に提起したが,平成13年3月7日,原告の主張 。 (3) 原告は,同年,AのBに対する本件工事に関する談合調整金支払請求権をAから譲り受けたとして,その支払を求める訴えを当庁に提起したが,平成13年3月7日,原告の主張する債権の存否について判断することなく,上記債権が公序良俗に反する債権であることなどを理由として,原告の請求を棄却する旨の判決が言い渡された(甲 1)。 (4) 原告は,同年5月25日,大阪府監査委員に対し,教育委員会が被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠っているとして,損害賠償の請求をすべきことを勧告することを求める監査請求を行った。監査委員は,同年6月22日,原告の監査請求は損害又は損害発生のおそれが客観的に認められることを具体的に摘示しているとはいえないとして,原告の監査請求を却下し,これを原告に通知した(甲2の1及び2)。 2 争点及び当事者の主張(1) 談合の有無(原告の主張)被告及びBは大阪市a区を本拠とする建設会社であり,Aは豊中市を本拠とする建設会社である。被告,B及びA は,本件工事に係る入札に際し,被告が本件工事を落札するため,Bがa区を本拠とする建設会社に対し,Aが豊中市を本拠とする建設会社に対し,被告の入札金額以上の金額で入札するように働きかけ,被告が本件工事を落札した場合には,BがAに対して,談合調整金として,落札金額の6パーセントを支払うことを約束したものである。Bが Aに談合調整金を支払う旨の確約書も作成されており,本件工事に係る入札において談合が行われたことは明らかである。 (被告の主張) 約束したものである。Bが Aに談合調整金を支払う旨の確約書も作成されており,本件工事に係る入札において談合が行われたことは明らかである。 (被告の主張)本件工事に係る入札において談合が行われたことはない。 仮に行われたとしても,被告は関与していない。BがAに対し落札金額の6パーセントを支払う旨の確約書は,B が本件工事を落札した場合にBがAに談合調整金を支払うというものであって,被告の関与を裏付けるものではない。そもそも,Bが本件工事を落札できなかった以上,BからAに対し談合調整金が支払われることはない。それにもかかわらず,原告及びAの代表者Cは,談合の存在をにおわす確約書が手元にあるのに乗じ,確約書をBに示して金員を要求すれば,同社が談合の存在が明るみに出るのを恐れてその要求に従うと考え,Bに支払を求めたのである。しかし,Bがその要求に応じなかったために,原告がCに対し,確約書以外の多数の書面を作成させ,あたかも被告が関与した談合があったような外形を作出し本件訴訟を提起したものである。 (2) 損害額(原告の主張)大阪府は,被告の談合によって,最低制限価格と落札金額の差額相当額1432万円の損害を被った。 (被告の主張)否認する。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(談合の有無)について(1) CとDとの間の談合の有無について証拠(甲3,5,証人C,原告本人)によれば,本件工事の入札日の前日である平成12年7月4日,Bの専務取締役のDと て(1) CとDとの間の談合の有無について証拠(甲3,5,証人C,原告本人)によれば,本件工事の入札日の前日である平成12年7月4日,Bの専務取締役のDとAの代表取締役のCがアイボリーホテルで会談したこと,その際,Dは確約書(甲3)を作成してCに交付し,Cは誓約書(甲5はその写し)を作成してDに交付したことが認められる。 確約書は,Dが同ホテルの名入りの便せんに「東淀川高等学校外壁改修工事の落札金額の6%を平成12年7月10 日現金にてAM10:30にアイボリホテルで御支払致します。尚領収書はいりません。」と書いてB建設(株)専務取締役Dと署名した文書である。また,誓約書は,Cが同じく同ホテルの名入りの便せんに「東淀川高等学校,外壁改修工事物件より今後発注する工事についてのa物件は今後一済おゆずり致します。と共にa業者一同様と仲良くモラルを以って接して参ります。」と書いて株式会社A代表取締役Cと署名押印した文書である。 以上の事実,書面の記載内容によれば,DとCとの間で本件工事の入札に関して何らかの談合の協議が行われ,Bが Aに落札金額の6パーセント相当額の現金を支払う旨の合意がされたものと認められる。 (2) 談合の内容及び被告の関与について原告は,7月4日にDとCとの間で行われた談合の内容は,被告が本件工事を落札するため,Bがa区を本拠とする建設会社に,Aが豊中市を本拠とする建設会社にそれぞれ根回しし,被告が本件工事を落札した場合に,BがAに対して,談合調整金として落札金額の6パーセントを支払うというものであると主張している。そして,原告本人は,Cか 拠とする建設会社にそれぞれ根回しし,被告が本件工事を落札した場合に,BがAに対して,談合調整金として落札金額の6パーセントを支払うというものであると主張している。そして,原告本人は,Cから聞いた話としてその主張に沿う供述をしている。一方,被告は,DとCとの間で,本件工事に係る入札に関し何らかの談合が行われていたとしても,それは,Bが本件工事を落札した場合に,BがAに対し談合調整金を支払うというものであって,被告は全く関与していないと主張し,被告代表者及び証人Cもおおむねその主張に沿う供述をしている。 そこで,談合の内容について更に検討する。 ア甲6(誓約書)は,「誓約書平成12年7月5日 a建設業組合一同様今般,大阪府教育委員会施設課の発注の,「大阪府立東淀川高等学校外壁改修工事」について,入札談合調整金として,落札金額¥76,000,000 の6%¥4,560,000をお支払い下さい。尚,次回よりの工事落札分に於いて返戻する事を豊中の5業者の連名により確約することを誓います。」と印字され,その下に記名押印欄が5か所作られている。更に,右下余白に手書きで「H12.7.10.支払い日にB建設Dよりいただいた書類で尚お金は一切もって来ておらず。 C」との記載がある。手書き部分はCが記載したものであることは,C自身が認めている。 甲6の作成者について,証人Cは,甲7(誓約書),甲8(誓約書)と共に,本件工事について談合が行われたことを作出するために,C自身が作成した旨述べる。しかし,甲7と甲8とでは書式がほぼ一致するのに対して,甲6 については書式が全く異なり,甲6ないし 件工事について談合が行われたことを作出するために,C自身が作成した旨述べる。しかし,甲7と甲8とでは書式がほぼ一致するのに対して,甲6 については書式が全く異なり,甲6ないし8が同一人物によって作成されたとは認められず,証人Cの供述は信用できない。甲8にはAの印鑑が押されていること,甲6の余白部分にはBのDが持参した旨のCの記載があること及び原告本人の供述に照らし,甲7,8はCが作成し,甲6はDが作成したと認めることができる。 そして,甲6の日付,落札金額の記載から,甲6は本件工事の入札結果が判明した後に作成されていることが認められ,Dが,被告が7600万円で落札したことを認識しながら甲6を作成していることからは,被告が7600万円で落札することがDとCの談合内容に反するものでなかったことが推認される。 更に,甲6が豊中5業者の連名によるa建設業組合一同様に対する誓約書となっており,甲4によればAを含めて豊中市に事務所を有する入札参加業者が5社あること,Cが作成した誓約書(甲7)が,逆にa建設業組合一同の連名による豊中各業者に対する豊中物件を譲る旨の内容になっており,Cにおいてa及び豊中の各業者間の談合との認識があったことが伺われること,また,談合調整金が落札金額の6パーセントで,指名業者14社のうちの1社にすぎないA1社に対する支払とすれば過大なものといわざるを得ないことに照らせば,DとCの談合内容は,豊中とaの各業者間の調整を含んだ内容のもので,Dが支払を約した談合調整金は,豊中の各業者の調整に当たったAに対し,豊中の各業者分として支払う性質のも DとCの談合内容は,豊中とaの各業者間の調整を含んだ内容のもので,Dが支払を約した談合調整金は,豊中の各業者の調整に当たったAに対し,豊中の各業者分として支払う性質のものであったことが推認できる。 イ更に,甲4(名刺写)は,本件工事に係る入札の指名業者の一部の名刺が並べられ,各業者の入札金額が記載されている。名刺のない業者についても,業者名と入札金額が記載されている。そして,被告の名刺に「落札 7600 万」と記載され,太い線で囲まれている。 甲4について,証人Cは,甲6と同様に,本件工事について談合が行われたことを作出するために,本件工事に係る入札終了後に,大阪府庁に張り出された入札結果表を見ながら,あるいは,原告に資料として渡すためにメモを参照して作成した旨述べる。しかし,本件工事の入札指名業者の1つであるFの実際の入札金額が7630万円であるのに対し(甲10),甲4に入札金額として記載された金額は7608万円であり,また,入札結果を記載したり, 原告に資料として交付するなら本来必要のない担当者の携帯電話の番号や,本件工事の現地説明会の日付等入札前の日時が手書きで記載されていることに照らすと,上記Cの供述を信用することはできない。甲4は,Cらが談合調整の際,連絡先として電話番号を記入したり,調整結果を日付と共に記入したりして,談合調整過程で作成された可能性を否定できないところであり,被告を含めた談合が行われたことを裏付ける1つの資料ということができる。 ウそして,原告本人は,Cから事前に聴取した話として,談合内容に関する原告の主張に沿 ころであり,被告を含めた談合が行われたことを裏付ける1つの資料ということができる。 ウそして,原告本人は,Cから事前に聴取した話として,談合内容に関する原告の主張に沿う内容の供述を一貫してしており,上記の各認定事実に照らせば,その内容は信用できるものである。 これに対し,証人Cは,BのDとの間で,本件工事に係る入札に際して談合をしたことは一応認めるものの,その内容は,Bが本件工事を落札した場合に,BがAに対し談合調整金を支払うというものであったと供述する。しかし,同証人は,自ら作成したと認める甲5についても,平成12年7月4日に行われたBとの話合いの内容についても詳細を語ろうとしない。また,甲4の作成時期についても,入札終了後の3,4日であるとか,2日後であるとか,また一転して原告に甲3の確約書を見せた後であるとか,その供述内容は一貫しない。その供述態度は,公の場で談合を認めることのできない立場上,原告に話した内容と異なる供述をせざるを得ず,首尾一貫しない弁明に終始したことを示すものであって,証人Cの供述は信用できない。 また,被告代表者は,被告が関与した談合はなかった旨供述するが,具体的な根拠を示すものではなく,前記の各証拠の証拠価値を覆す内容のものとはいえない。 更に,本件の談合の中心人物と目されるDが,証人として呼出しを受けたにもかかわらず,正当な理由を示すことなく証拠調期日に出頭しないこと,被告も自らDの尋問を申請し,その出頭の確保に努めるなど,入札談合への関与の疑惑を否定するために積極的な訴訟活動を行おうとする 理由を示すことなく証拠調期日に出頭しないこと,被告も自らDの尋問を申請し,その出頭の確保に努めるなど,入札談合への関与の疑惑を否定するために積極的な訴訟活動を行おうとする姿勢に乏しいこと,以上の点は弁論の全趣旨として考慮せざるを得ない。 エ以上の点を総合すると,DとCとの間で行われた談合の内容は,aの業者である被告に本件工事を落札させることとし,そのためにDがaの業者の調整を,Cが豊中の業者の調整を担当し,談合が成功した場合にはBが談合調整金として落札金額の6パーセントをAに支払うというものであったと認められる。本件工事の入札結果は,14業者の入札価格が予定価格(7645万円)に極めて近い7640万円から7600万円(被告の落札価格)の間に集中しており,談合の存在を裏付けるものというべきである。そして,このような入札の状況及び結果として被告が7600万円で本件工事を落札していることからすれば,被告がCらの談合と関わりなく入札した結果がたまたま最低入札価格になったとは到底考えられず,被告も上記談合に関与したものと推認すべきである。 (3) 以上によれば,被告に,本件工事の入札に際し,他の指名業者と談合した不法行為を認めることができる。 2 争点(2)(損害額)について前述のように,被告を含む入札参加業者は,本件工事の入札に際し違法に談合を行い,自由競争を排除した上で被告が落札したものである。したがって,大阪府は,被告らの談合によって,被告との間で現実に締結された請負契約の金額と談合がなければ競争入札において形成されたであろう金額との差額について損害を被ったものと認 のである。したがって,大阪府は,被告らの談合によって,被告との間で現実に締結された請負契約の金額と談合がなければ競争入札において形成されたであろう金額との差額について損害を被ったものと認められる。 原告は,被告らの談合によって,大阪府が最低制限価格と落札金額の差額相当額の損害を被ったと主張するが,本件工事に係る入札において,被告らによる談合がなく,自由競争のもとで入札が行われた場合,最低制限価格で落札されたことを認め得る証拠はなく,原告の主張は採用できない。 被告が本件工事を落札した場合,落札金額の6パーセントに相当する金額を談合調整金としてBがAに支払うという約束がなされていたことは前述したとおりである。そして,本件工事を落札することによって利益を得るのは被告であるから,BがAに対し談合調整金を支払う窓口になるとしても,談合調整金の実質的な原資は本件工事代金であり,その出捐者は被告であったと考えるのが合理的である。そして,本件工事の落札金額は,談合調整金6パーセントを負担してもなお利益となるものであったというべきで,被告らによる談合がない場合には,本件工事の請負契約の金額は現実の請負契約の金額と比べて,少なくとも談合調整金の限度で低額となっていたであろうと推認される。 よって,被告らの談合によって大阪府が被った損害額は,落札金額の6パーセントである談合調整金相当額456万円と認めるのが相当である。 3 結論以上によれば,原告の請求は,大阪府に代位して被告に対し,456万円の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないから棄却し,なお,仮執行宣言は相当でないので付さない 以上によれば,原告の請求は,大阪府に代位して被告に対し,456万円の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないから棄却し,なお,仮執行宣言は相当でないので付さないこととして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官山下郁夫 裁判官山田明 裁判官小泉満理子・

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