【DRY-RUN】主 文 請求人Aに対し金二八〇、八〇〇円を、同Bに対し金五一〇、〇〇〇円 をそれぞれ交付する。 理 由 本件請求の趣旨及び理由は、請求人ら代理人内田雅敏及び同
主 文 請求人Aに対し金二八〇、八〇〇円を、同Bに対し金五一〇、〇〇〇円 をそれぞれ交付する。 理 由 本件請求の趣旨及び理由は、請求人ら代理人内田雅敏及び同小野正典連名の刑事 補償請求書に記載されているとおりであるから、これを引用する。 そこで、検討するに、関係記録によると、次の事実が認められる。すなわち、 一 請求人らは、「ほか約二〇名と共謀のうえ、昭和五一年四月一〇日午後四時 二〇分ころ、立川市内で雑貨商を営んでいるC方店舗兼住居に押しかけ、同人の制 止を無視して同店舗入口から店内に立ち入り、もつて故なく人の住居に侵入した」 ことと強要未遂の被疑事実で、同日現行犯人として逮捕され、引続いて同月一三日 右被疑事実で勾留された後、同年五月一日、右被疑事実のうち住居侵入の事実のみ で、身柄拘束のまま、東京地方裁判所八王子支部へ起訴されたが、同年七月二〇日 保釈により釈放された。 二 さらに、請求人Aは、同年五月六日、同年四月三日に犯した建造物侵入、暴 力行為等処罰ニ関スル法律違反、傷害と翌四日に犯した建造物侵入、暴力行為等処 罰ニ関スル法律違反の各被疑事実で通常逮捕され、引続いて同年五月八日右被疑事 実と同年四月三日及び翌四日に犯した威力業務妨害の各被疑事実で勾留された後、 同年五月一七日、右被疑事実のうち住居侵入、威力業務妨害、傷害の各事実で、身 柄拘束のまま、同支部へ追起訴されたが、これについても同年七月二〇日保釈によ り釈放された。 三 東京地方裁判所八王子支部は、昭和五六年五月一九日、請求人らに対する前 記各公訴事実の全てについて有罪の判決を言い渡したが、請求人らの控訴に基づ き、東京高等裁判所第六刑事部は、昭和五八年二月二四日、請求人らに対する一審 判決を破棄したうえ、昭和五一年五月一日付起訴の請求人両名に対する住 てについて有罪の判決を言い渡したが、請求人らの控訴に基づ き、東京高等裁判所第六刑事部は、昭和五八年二月二四日、請求人らに対する一審 判決を破棄したうえ、昭和五一年五月一日付起訴の請求人両名に対する住居侵入の 公訴事実については無罪の、同月一七日付起訴の請求人Aに対する住居侵入、威力 業務妨害、傷害の各公訴事実については有罪(懲役一年、執行猶予三年)の判決を 言い渡した。そして、請求人Aは、右有罪判決につき、昭和五八年三月九日上告の 申立てをしたので、現在最高裁判所に係属中であるが、請求人らに対する無罪の判 決は、上告期間の経過により同年三月一一日確定した。 以上の事実によれば、請求人Bは、刑事補償法一条一項、四条により、抑留・拘 禁を受けた昭和五一年四月一〇日から同年七月二〇日までの一〇二日全部につき刑 事補償を請求できることは明らかである。他方、請求人Aは、無罪となつた住居侵 入の事実で一〇二日間抑留・拘禁されているけれども、そのうち無罪部分の事実の みで抑留・拘禁された二六日分については、実質的に有罪部分の捜査・審理等のた めに利用されたよう<要旨>な事情は認められないから、その分の刑事補償をすべき ことは明らかであるが、同年五月六日から同年七月二</要旨>〇日までの七六日間 は、無罪部分と密接不可分の関係にある有罪部分の住居侵入、威力業務妨害、傷害 の事実でも抑留・拘禁されており、しかもその有罪部分が未だ確定していないので あるから、このような場合、その無罪部分に対し、刑事補償を認めるべきか否か問 題がないわけではなく、現に刑事補償法三条二号を根拠に消極に解する見解があ る。しかしながら、同号は、抑留・拘禁が有罪部分と無罪部分の双方の捜査又は審 理に利用されたときは、その利用関係の実質に応じて補償すれば足り、無罪の裁判 が確定したという一事から、直ちに当該抑留・拘 あ る。しかしながら、同号は、抑留・拘禁が有罪部分と無罪部分の双方の捜査又は審 理に利用されたときは、その利用関係の実質に応じて補償すれば足り、無罪の裁判 が確定したという一事から、直ちに当該抑留・拘禁の全部について補償する必要が ない旨を規定したものであつて、有罪部分の裁判が確定しなければ刑事補償ができ ないことまで規定したものとはいえないうえ、たとえ併合罪の一部無罪部分と他の 有罪部分とが密接不可分の関係にあるとしても、無罪部分の抑留・拘禁が捜査・公 判を通じて有罪部分のために利用された比率などを勘案すれば、有罪部分の裁判が 未だ確定していない事件の無罪部分に対する刑事補償の有無及びその額等を決し得 ないものではない。要するに、本件のような場合、同号の規定の存在は刑事補償を 認めることの妨げとはならないと解するのが相当である。 ところで、請求人Aについて、無罪部分の抑留・拘禁と有罪部分のそれとが重複 する部分は、そのいずれもが抑留・拘禁の法律上の要件を充しており、かつ、その 必要性も肯認できるので、その重複部分のすべてについて補償することは相当でな い。なんとなれば服役中の者が他の事件で逮捕・勾留された場合と同様に、それは 観念的に併存しているに過ぎず、したがつて、その部分に全面的な刑事補償を認め ると、請求人に不当な利益を与える結果にもなりかねないからである。さりとて無 罪部分の抑留・拘禁が併存していることを全く考慮しないことも妥当を欠くものと いわなければならない(たとえば無罪部分で抑留・拘禁されていることをも考慮し た結果、保釈の許可が遅れるような場合も考えられる。)。そこで、本件の場合、 重複する抑留・拘禁中、無罪部分の占める割合(無罪とされた訴因は一個であるの に対し、有罪とされている訴因は五個であるうえ、法定刑も有罪部分の方に重いも のがあること等)や、無 )。そこで、本件の場合、 重複する抑留・拘禁中、無罪部分の占める割合(無罪とされた訴因は一個であるの に対し、有罪とされている訴因は五個であるうえ、法定刑も有罪部分の方に重いも のがあること等)や、無罪部分への利用関係、釈放されるに至つた経緯等の事情を 考慮して、重複部分七六日のうち、その六分の一に相当する一三日分について補償 するのが相当である。 そこで、進んで刑事補償法四条二項所定の一切の事情を考慮して請求人らに対す る補償額を決すべきところ、関係記録によると、請求人Bは、昭和五一年四月一〇 日住居侵入の被疑事実で現行犯逮捕された当時、東京都公立学校の教員(D中学校 勤務)をしていた者であるが、同年六月八日起訴休職処分に処せられ、それが昭和 五八年三月一一日まで続いたこと、右休職処分の発令される直前には月額一三四、 六三八円の給与を支給されていたが、休職期間中はその一〇〇分の六〇に相当する 給与が支給されていたので、本件抑留・拘禁期間中に少なくとも合計三四〇、〇〇 〇円を下らない給与を得ていたことが認められるので、この事情も併せて考慮し、 請求人Bに対しては金五一〇、〇〇〇円(一日金五〇〇〇円の割合による一〇二日 分)を、請求人Aに対しては金二八〇、八〇〇円(一日金七、二〇〇円の割合によ る三九日分)をそれぞれ交付することとし、同法一六条により主文のとおり決定す る。 (裁判長裁判官 海老原震一 裁判官 杉山英巳 裁判官 新田誠志)
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