平成16(行コ)177 各障害基礎年金不支給決定取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成13年(行ウ)第190号ないし第192号)

裁判年月日・裁判所
平成17年3月25日 東京高等裁判所 その他
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判決文本文19,468 文字)

主文 1 被控訴人国の控訴に基づき原判決主文第3項を取り消す。 2 上記取消しに係る控訴人らの各金員請求をいずれも棄却する。 3 控訴人らの各控訴をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,第1,2審とも,控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人らの控訴の趣旨 (1) 原判決主文2項ないし4項を次のとおり変更する。 ア東京都知事が,平成10年12月3日に控訴人aに対してした障害基礎年金を支給しない旨の決定を取り消す。 イ東京都知事が,平成10年12月7日に控訴人bに対してした障害基礎年金を支給しない旨の決定を取り消す。 ウ千葉県知事が,平成10年11月4日に控訴人cに対してした障害基礎年金を支給しない旨の決定を取り消す。 エ被控訴人国は,控訴人らそれぞれに対し,各2000万円を支払え。 (2) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人らの負担とする。 (3) (1)エにつき仮執行の宣言 2 被控訴人らの答弁 (1) 主文第3項と同旨。 (2) 控訴費用は控訴人らの負担とする。 (3) 被控訴人国につき,担保を条件とする仮執行免脱宣言又は仮執行の開始時期を被控訴人国に判決が送達された日から14日を経過したときとする。 3 被控訴人国の控訴の趣旨主文第1項,第2項及び第4項と同旨。 4 控訴人らの答弁 (1) 被控訴人国の各控訴をいずれも棄却する。 (2) 控訴費用は被控訴人国の負担とする。 第2 事案の概要 本件は,それぞれ大学在学中に疾病にかかり,又は受傷して障害を負った控訴人ら及び原審相原告dが障害基礎年金の支給裁 却する。 (2) 控訴費用は被控訴人国の負担とする。 第2 事案の概要本件は,それぞれ大学在学中に疾病にかかり,又は受傷して障害を負った控訴人ら及び原審相原告dが障害基礎年金の支給裁定を申請したところ,いずれも国民年金に任意加入していなかったことから被保険者資格が認められないなどとして同年金を支給しない旨の各処分を受けたため,控訴人ら及び原審相原告dが,①控訴人a及び原審相原告dについては国民年金法30条の4所定の受給要件を充たしているにもかかわらず,その要件該当性の判断を誤った違法がある,②学生には任意加入をしない限り国民年金の被保険者資格を認めないこととした上記処分当時の国民年金法の規定は,20歳以上の学生と他の国民とを不当に差別するもので,法の下の平等を定める憲法14条に違反し,また,20歳以上の学生を何らの合理的理由もなく国民年金法の強制適用の対象とせず,その結果として,上記の学生に社会保障としての障害保障給付を与えないという点において,生存権を保障した憲法25条に違反する,③その違憲性を解消するために国民年金法30条の4の規定を類推解釈又は拡張解釈して,20歳を超えた後に疾病又は傷害によって障害を負った学生についても障害基礎年金の受給資格が認められるべきであるなどと主張して,被控訴人社会保険庁長官に対し,上記各処分の取消しを求めるとともに,被控訴人国は,国民年金に任意加入しなかったため,障害基礎年金の支給を受けられない者が生ずることのないよう適切な立法措置を講ずるべきであったにもかかわらず,長年にわたって学生の被保険者資格に関する適切な立法措置を講ずることを怠り,その結果,控訴人らを障害基礎年金を受けられない状況に陥らせた上,無年金者となった控訴人らに対し,適切な救済措置を講ずることも怠ったものであって,これ 資格に関する適切な立法措置を講ずることを怠り,その結果,控訴人らを障害基礎年金を受けられない状況に陥らせた上,無年金者となった控訴人らに対し,適切な救済措置を講ずることも怠ったものであって,これにより控訴人らは多大な損害を被ったなどと主張して,被控訴人国に対し,それぞれ国家賠償法に基づく損害賠償金2000万円の支払を求めた事案である。原審裁判所は,原審相原告dに対する不支給処分は国民年金法30条の4所定の要件該当性の判断を誤った違法があるとして取り消したが,控訴人aについては法30条の4所定の要件該当性がないとした。また,国民年金法が憲法14条及び25条等に違反する旨の控訴人らの前記主張も理由がない。しかし,昭和60年法律第34号による改正後の国民年金法は,学生に対して障害に関する保険給付が容易に受けられるような措置を講じなかった点で憲法14条に違反し,立法不作為の違法が存在したものというべきであるが,かかる是正措置は一義的に定まるものではないので特定の是正措置が採用されたことを前提として控訴人らに対する各不支給処分の適否を判断して各処分を取り消すことはできず,控訴人らの救済措置は立法不作為に基づく国家賠償請求によるべきであるとして,立法不作為の違法を認め,国家賠償法に基づき,控訴人ら3名に対し,それぞれ慰謝料各500万円の支払を求める限度で認容し,その余の各金員請求を棄却した。なお,原審相原告dに対しては,前記のとおり本来,現行法下において障害基礎年金を受給し得る地位を有していたと認められるので,立法不作為により何らの損害も受けていないとして,国家賠償請求については全部棄却した。これに対し,控訴人ら及び被控訴人国がそれぞれ敗訴部分に対する控訴を提起した。その理由とするところは,被控訴人社会保険庁長官に対しては,控訴人aについては原 て,国家賠償請求については全部棄却した。これに対し,控訴人ら及び被控訴人国がそれぞれ敗訴部分に対する控訴を提起した。その理由とするところは,被控訴人社会保険庁長官に対しては,控訴人aについては原審相原告dと同様に国民年金法30条の4所定の受給要件に該当しているとして前記処分を,控訴人らについては前記各処分の根拠となった国民年金法が憲法14条,25条及び31条等に違反するとして前記各処分をいずれも取り消すべきである,他方,被控訴人国に対しては,国家賠償法に基づく前記立法不作為の違法を理由とする損害賠償の認容額が少なすぎるとしてその増額を求めるというにある。これに対して,被控訴人国は,控訴人ら主張の立法不作為による違法はないので,控訴人らに対する国家賠償法に基づく損害賠償義務はなく,被控訴人国に対して損害賠償金の支払を命じた原判決は取り消されるべきであるとするものである。なお,原判決中原審相原告dの請求に係る部分については当事者双方から控訴がなく,確定した。そのほか事案の概要は,次のとおり訂正し,又は付加するほかは,原判決の事実及び理由欄の「第2 事案の概要」及び「第3 本件の争点と争点に関する当事者双方の主張」の控訴人らと被控訴人ら関係部分に記載のとおりであるから,これをここに引用する。 1 原判決15頁7行目の括弧内を「昭和60年法改正附則23条。同法30条の4の規定についてはここでは触れない。」に改める。 2 原判決16頁18行目から同19行目にかけての「症状が治った日は」を「症状が固定した日は」に改める。 3 原判決20頁1行目の「鼻血の診療を受けた日が」を「4歳のころ鼻血が大量に出てe耳鼻咽喉科に通院して受診した日をもって」に改める。 4 原判決21頁17行目冒頭から同18行目の「明らかではない上、」までを「控訴人 の「鼻血の診療を受けた日が」を「4歳のころ鼻血が大量に出てe耳鼻咽喉科に通院して受診した日をもって」に改める。 4 原判決21頁17行目冒頭から同18行目の「明らかではない上、」までを「控訴人aは,4歳のころ鼻血が大量に出てe耳鼻咽喉科に通院して受診した日が『初診日』に当たると主張するが,その受診日や治療内容は明らかではない上,」に改める。 5 原判決28頁9行目の「障害福祉年金が支給するもの」を「障害福祉年金が支給されるもの」に,同32頁15行目及び同36頁13行目から同14行目にかけての「国民保険」をいずれも「国民年金」に,同38頁25行目から同26行目にかけての「憲法31条」を「適正手続を保障した憲法31条」に,同41頁6行目の「生活しているいるが」を「生活しているが」にそれぞれ改める。 6 原判決45頁16行目末尾に「被控訴人国がその主張の根拠とする最高裁判所昭和60年11月21日第一小法廷判決(民集39巻7号1512頁)は,議会(国会)の立法不作為の違法性を審査すべきであるのにもっぱら『国会議員の立法行為』を問題とするなどの誤りがあり,立法不作為に対する国家賠償請求による救済の道を事実上閉ざしたものであって,先例としての価値はない。」を加える。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,控訴人らの各請求はいずれも理由がないから,これらを棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり訂正し,又は付加するほかは,原判決の事実及び理由欄の「第4 争点に対する判断(その1)」及び「第5 争点に対する判断(その2)」の控訴人らと被控訴人ら関係部分に記載のとおりであるから,これをここに引用する。 (1) 原判決51頁5行目冒頭から同19行目末尾までを次のとおり改める。 「 前記第2の2基礎となる事実関係の2) において認定 ら関係部分に記載のとおりであるから,これをここに引用する。 (1) 原判決51頁5行目冒頭から同19行目末尾までを次のとおり改める。 「 前記第2の2基礎となる事実関係の2) において認定のとおり,控訴人aは,脳動静脈奇形破裂による四肢体幹機能障害により身体障害等級1級の障害を負ったものであるところ,証拠(甲19,31,控訴人a本人)によれば,同控訴人は,幼稚園に入る前の4歳ころから鼻血を出すことがあり(控訴人aの母f作成の陳述書《甲31》には,控訴人aが4歳のころ,時々大量の鼻血を出すようになり,シーツが鼻血で真っ赤になっていることが何度かあったとの記載部分がある。),週に1回以上東京都西東京市α所在のe耳鼻咽喉科の医師の診療を受けていたもので,このような状態が小学校5年生になるころまで続いていたという。控訴人aは,上記の受診をもって法30条の4第1項所定の『初診日』に当たると主張するのであるが,e耳鼻咽喉科における具体的な受診時期や診療内容は明らかでないばかりではなく,鼻出血と脳動静脈奇形とは関連がないとの医師gの意見(乙40)も考慮すれば,そもそも控訴人aの上記鼻血による受診と脳動静脈奇形との間に何らかの関係があると認めることは困難であるといわざるを得ない。医師h作成の『脳橋部動静脈奇形に関する鑑定意見書』(甲114)には,控訴人aについて,頭蓋骨の内外の血液循環が正常な流れを示さず,かつ脳の深部の静脈と顔面近くを流れる静脈が短絡的につながっていた可能性が相当程度高い蓋然性としてあったと推論され,精密検査をすれば脳動静脈奇形の診断に到達できた『可能性が高い』と推定できるとの記載部分がある。しかし,同医師の鑑定意見書は,文献の記述にも脳動静脈奇形の破裂は乳幼児からもあり得る,脳の深部の静脈と,顔面近くを流れる静脈が物理的 断に到達できた『可能性が高い』と推定できるとの記載部分がある。しかし,同医師の鑑定意見書は,文献の記述にも脳動静脈奇形の破裂は乳幼児からもあり得る,脳の深部の静脈と,顔面近くを流れる静脈が物理的に短絡的につながっている場合は全くあり得ないとは言い切れないとしているにとどまっているにもかかわらず,なぜか結論は,控訴人aの上記の2つの静脈が短絡的につながっていた可能性が相当程度高い蓋然性としてあったと推論されるとするまで結論付けられており,前提事実と結論とを結び付ける理由付けが十分とはいえない。さらに,同鑑定意見書に疑問が生じる点を上げると,同医師は,上記鑑定意見の前提条件となる鼻血の量について,上記fの陳述書の記載に基づき,控訴人aが4歳のころから小学校5年生になるころまで,時々大量の鼻血を出すようになり,朝同控訴人のシーツが鼻血で真っ赤になっていることが何度かあったことを所与の事実として,自ら試験管に水を入れて寝ころんで実験した上,大量(同意見書添付資料5の鼻血Bの程度)であったと推定しているのであるが,この正確性を認めるに足りる的確な証拠はない。f作成の平成17年1月24日付け陳述書(甲132)には上記h医師作成の鑑定意見書記載の鼻血Bがfの記憶する上記のシーツの鼻血の量であるとの記載部分があるが,40年前の子供の鼻血の量についての記憶の正確性ないし信ぴょう性について直ちに肯定し難いといわざるを得ない。控訴人aの4歳ころからの鼻血の量がh医師が鼻血Bとして想定するほど大量のものであれば,小学校5年生のころまで毎週1回以上診療していたという耳鼻科の医師においてそれ以上の診療をしないとは考え難いところであり,それほどの多量の出血が続いたとすれば,仮に当時医者から検査を勧められてなかった(甲31)としても,親としてe耳鼻咽喉科ないし別の 耳鼻科の医師においてそれ以上の診療をしないとは考え難いところであり,それほどの多量の出血が続いたとすれば,仮に当時医者から検査を勧められてなかった(甲31)としても,親としてe耳鼻咽喉科ないし別の医院で検査を受けさせたであろうと想像されるところである。ちなみに,h医師の上記鑑定意見書には,前記のとおり控訴人aの母作成の陳述書(甲31)の『当時医師からは検査を勧められなかった。』旨の記載をとらえて,いとも簡単に『e耳鼻咽喉科は明らかに不作為による医療ミスと断ぜざるを得ない。』旨の判断が記載されている箇所も見受けられ,果たして同鑑定意見書は具体的な根拠を積み重ねて結論を導き出しているのか疑問を抱かざるを得ない記載も見受けられることを指摘せざるを得ない。また,i医師作成の回答書(甲2の2《27頁》)には,脳出血の発症後控訴人aの診療を行った同医師による『脳出血の発生に先立って眼球運動障害,聴力障害,めまい,耳鳴り,顔面感覚障害などの症状があった可能性がある。』という趣旨の記載があるが,これによっても,控訴人aの脳動静脈奇形と鼻血との間に関係があることを認めるには足りず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。h医師の上記鑑定意見書には,g医師作成の意見書(乙40)につき,当該分野の最新の基本的文献を引用していない,控訴人aの脳動静脈奇形の存在する部位を誤認しているなどとして批判する記載があるが,g意見書に記載されている脳動静脈奇形がかなりまれな疾患であるという認識自体は,上記のh鑑定意見書の脳の深部の静脈と顔面近くを流れる静脈が物理的に短絡的につながっている場合は全くあり得ないとは言い切れないとの見解と趣旨を同じくするものであり,g医師の意見書が上記の認識から被控訴人aの脳動静脈奇形が鼻出血と関連がある可能性は非常に低いとの結論に至ったことは ている場合は全くあり得ないとは言い切れないとの見解と趣旨を同じくするものであり,g医師の意見書が上記の認識から被控訴人aの脳動静脈奇形が鼻出血と関連がある可能性は非常に低いとの結論に至ったことは不合理なものではない。 なお,控訴人aは,平成17年1月24日の当審第3回口頭弁論期日において,e耳鼻咽喉科に対する控訴人aの診療録等の送付嘱託を申請したが,e耳鼻咽喉科に30年ないし40年前の控訴人aの診療録等が保存されていると認めることができない(控訴人らの当審における証拠申出書《その1》において同診療録等がないことを認めている。)ことから,当裁判所は上記申請を却下し,同日口頭弁論を終結した。 したがって,控訴人aの4歳のころ鼻血が大量に出てe耳鼻咽喉科に通院して受診した日が法30条の4第1項所定の『初診日』に該当するとの主張を採用することはできない。」(2) 原判決52頁6行目の次に行を改めて「 なお,社会保険審査会が『請求人の20歳到達時までには,当然専門医の診断を受けるべき状態にあったことは明らかであるので,この期間内に当然傷病の初診があったものと取り扱うのが相当である。』として障害基礎年金不支給処分を取り消した当審における控訴人ら提出に係る平成10年6月30日付け裁決例(甲107)があるが,この事例は,請求人が20歳前に当該傷病につき医師の診療を受けたことを示す資料が存在したというものであり,また,愛媛県県民福祉部国民年金課作成の『障害給付関係質疑要望事項』と題する冊子(乙43の2)には,平成8年12月開催の障害年金認定審査医員事務打合会議において,『精神障害については,20歳前に発病が認められる場合において,20歳前に医療機関を受診することが困難であり,やむを得ない事情があった場合については,20歳前に初 定審査医員事務打合会議において,『精神障害については,20歳前に発病が認められる場合において,20歳前に医療機関を受診することが困難であり,やむを得ない事情があった場合については,20歳前に初診があったもの(発病日を初診日とみなす)として20歳前障害を認める』取扱いをすると記載されている(上記冊子22頁)が,これはいわば研修会の性質を有する会議におけるやりとりを愛媛県県民福祉部国民年金課がまとめたものであり(乙41),上記見解が直ちに障害認定審査における実務の在り方を直接決定する性質を有するものとは考えられない(乙44)から,いずれも上記認定を左右するものではない。」を加え,同10行目から同12行目にかけての括弧内を「甲23の1~27,32の1・2,33ないし39,40の1~13,41の1・2,42,43,46ないし52,59ないし69,71ないし77,78の1・2,79ないし81,乙6ないし8,9及び10の各1・2,11ないし15,25及び26の各1~4,27,28,29の1・2,30,33,34,36,37並びに証人j及び同k」に改める。 (3) 原判決58頁8行目の「55歳を超えない者は、」から同9行目末尾までを「50歳を超える者は強制適用の対象からは除外されていたものの《上記(2)ク)》,55歳を超えない者については任意加入が認められ」に改める。 (4) 原判決70頁18行目の「障害者基本法3条や20条」の次に「《同法は平成16年法律第80号により改正されたが,改正後の同法3条及び13条に控訴人らの主張第3,2,1)(1)ア)と同趣旨の規定がある。》」を加える。 (5) 原判決72頁25行目冒頭から同79頁16行目末尾までを次のとおり改める。 「1)学生を国民年金法の強制適用の対象から除外したことについて )ア)と同趣旨の規定がある。》」を加える。 (5) 原判決72頁25行目冒頭から同79頁16行目末尾までを次のとおり改める。 「1)学生を国民年金法の強制適用の対象から除外したことについて控訴人らは,学生を国民年金法の強制適用の対象から除外したことには合理的な理由はなく,他の20歳以上の国民との間で不合理な差別をしたものであって憲法14条に違反し,また,憲法25条にも違反する旨を主張する。 昭和34年法は,前記1,2)のとおり,立法の経緯から老齢年金を中心とした制度設計がされているところ,学生の場合は多くの者が卒業後に被用者保険等の被保険者となるほか自ら相応の収入を得て老後に備えることが可能となるのであって,学生の期間中に保険料を納付しないことによって生ずる不利益はほとんど生じない,又は生じたとしてもそれほど大きなものではなく,未だ自らの収入のない状況下で保険料を負担してまで老後に備える必要性は乏しいと考えられることから,制度の中心としての老齢年金に着目して学生に被保険者資格を認めなかったことにはそれなりの合理性があるということができる。 もっとも,学生が障害を負い,稼得能力を失った場合には,卒業後も将来にわたって稼得能力を喪失することになるのであるから,少なくとも障害年金に関する限りでは,学生についても稼得能力喪失のリスクは存在したものということはできる。したがって,障害年金について被保険者となる必要性は学生以外の者と変わりがないことから,あえてその必要性のみに着目すれば,控訴人ら主張のとおり学生に被保険者資格を付与することも選択肢として十分考えられるところである。しかし,上記のとおり同法における保険料の額もまた適切な額の老齢年金を支給できるように設定されているのであって, 張のとおり学生に被保険者資格を付与することも選択肢として十分考えられるところである。しかし,上記のとおり同法における保険料の額もまた適切な額の老齢年金を支給できるように設定されているのであって,保険料の大部分は老齢年金のためのものであり,障害年金のためにのみ必要な保険料はそのうちのごく一部分にすぎず,しかも学生のうちに障害を受ける者の割合もかなり低いものであることからすると(平成元年の試算によると,障害年金の支給のみに必要な費用から国庫負担分を差し引いた被保険者1人当たりの保険料月額は189円であり,当時の保険料月額6800円の3%未満となり,厚生年金被保険者中の障害年金受給者数から推計した障害者の発現率は障害等級1級につき0・001249,2級につき0・0035334である。乙5《240頁》),このような選択をすることは,必要性に見合う限度を遥かに超える負担を強いる結果を招く不適切なものという見解も肯定できるところであり,しかも保険料は実質的には学生の親が負担することになるのであるから,障害年金のみに着目して被保険者資格を与えるよりも主たる制度である老齢年金に着目して被保険者資格を付与しない制度を選択することも適切であるといえる。このことは,平成元年法が学生を強制加入の対象としたところ,運用の実際において多くの未加入者や保険料未納者が発生するという問題が生じたことから,総務庁の行政監察に基づく勧告もあって,現行法の学生納付特例制度を設けて学生については広汎に保険料免除を認めるという強制加入制度と矛盾するともみられる制度を導入せざるを得なかったこと《前記1,6)》からも裏付けられる。 また,学生である間に国民年金の保険料を納付させた場合,当該学生が卒業後就職して被用者年金制度に加入すると,国民年金の対象者からはず かったこと《前記1,6)》からも裏付けられる。 また,学生である間に国民年金の保険料を納付させた場合,当該学生が卒業後就職して被用者年金制度に加入すると,国民年金の対象者からはずれることになり,保険料が掛け捨てになってしまうことも考慮されたものである。控訴人らは,この点につき,被保険者期間の通算措置が講じられれば容易に解消されるものであると主張する(第3,2,1)(2)イ))ところ,昭和34年法制定時には通算措置が設けられず,通算措置に関しては別に法律をもって処理されるべきものとされたにとどまり(昭和34年法7条3項),昭和36年に通算年金通則法が制定されたことは前記1,3)のとおりである。しかし,被保険者期間の通算を行うためには,それぞれ異なる各種年金制度相互間に利害得失が衝突し,その調整が必要であり,通算制度の設計は,控訴人らが主張するほどに容易に解決できるような性質のものではないことは被控訴人国が主張するとおりであり,通算年金通則法もこの点を完全に解決していたわけではないから,昭和34年法制定時に必ず通算措置を設けて学生を被保険者とすべきであったいうことは難きを強いるものであり,これまでに検討してきた国民年金法の制度改正作業にも見受けられる立法過程における多種多様の利害調整の困難さを軽く見るものであって,控訴人らの上記主張は採用することができない。 以上によると,昭和34年法が学生に被保険者資格を与えなかったこと自体には合理的な理由があり,憲法14条若しくは25条に違反するものとはいえない。 控訴人らは,学生を国民年金法の強制適用の対象から除外したことが憲法違反であるといえないとしても,国民年金に任意加入をした学生について,他の被保険者と同様の保険料納付義務免除を認めなかった 控訴人らは,学生を国民年金法の強制適用の対象から除外したことが憲法違反であるといえないとしても,国民年金に任意加入をした学生について,他の被保険者と同様の保険料納付義務免除を認めなかったことは差別的取扱いであり,憲法14条,25条に違反する旨の主張もしている。しかし,学生に老齢年金を中心とした制度の被保険者資格を付与する必要性が乏しいことは上記認定のとおりであるから,あえてこの関係において保険料納付義務免除制度を設ける必要性も乏しいものといわざるを得ない。なお,控訴人らの主張が,学生を強制適用の対象にしないのであれば,障害年金又は障害福祉年金の受給がより容易になるような制度を設けるべきであり,そのような制度を設けなかったことが他の法律上当然には被保険者資格を有しない者との間に不合理な差別を定めたものであるというのであれば,次の2)において検討するところである。 2)20歳未満の者との間の差別的取扱いに関する主張について控訴人らは,20歳未満のうちに障害を負った者は,国民年金に加入していなくとも障害福祉年金の支給を受けられるのに,20歳以上の学生が障害を負った場合には,その支給を受けられないのは差別的取扱いであり,憲法14条,25条に違反する旨主張する。 まず,20歳前に障害を負った者に障害福祉年金を支給することとした趣旨については,『若年において重度の障害にあることは,通常その障害が回復することはきわめて困難であり,したがって稼働能力はほとんど永久的に奪われていると考えるのが常識的である。他方,年齢的にみても親の扶養を受ける程度をできるだけ少なくしなければならないし,この意味から所得保障の必要度はこのような者にこそ最も高い。しかもかかる事例は,恒常的に発生するものである。』との説明 方,年齢的にみても親の扶養を受ける程度をできるだけ少なくしなければならないし,この意味から所得保障の必要度はこのような者にこそ最も高い。しかもかかる事例は,恒常的に発生するものである。』との説明がされている(乙8,167頁)。控訴人らは,以上の説明は20歳を超えてから重度の障害を負った者にも全く同様に当てはまると主張する。しかし,年齢を問わずすべての障害者に対して障害福祉年金を支給することが憲法25条の要請するところであるということができないことは前記2のとおりである。また,昭和34年法が被保険者の下限を20歳と設定したのは,20歳になれば大部分の者が稼得活動に入っているとの想定の下にしたものであり,その上で,学生については定型的にみて稼得活動を行っていないことから20歳に達しても強制加入の対象とすることなく,任意加入の道を設けたのであるから,それなりの合理性があることは前記1)のとおりである。したがって,上記の障害福祉年金制度の採用は,社会保障制度についての立法者の裁量の範囲内の問題というべきである。 なお,昭和34年法の立案段階で作成された案のうち,前記1の1)の厚生省の要綱第一次案においては無拠出障害年金の受給資格として『22歳になるまでに障害になったため拠出制の障害年金を受けられなかったとき』とされていたが,この案は,拠出制の障害年金の支給要件である保険料納付期間が最も短くても『事故発生前まで引き続いて2年間』とされていた(乙8。105頁下段②ニ)ことから20歳時に加入した者が22歳までに障害を受けたときについて配慮したものであり,未加入の22歳までの学生に無拠出障害年金を給付することにしたものではないことは被控訴人国が主張するとおりである。また,自由民主党の要綱においても『保険料拠出の能力又は期間がなかっ したものであり,未加入の22歳までの学生に無拠出障害年金を給付することにしたものではないことは被控訴人国が主張するとおりである。また,自由民主党の要綱においても『保険料拠出の能力又は期間がなかったため』に『拠出制の障害年金を受けることができない者』に無拠出の障害年金を支給することとされており,同要綱案を立法化すれば,学生時代に障害を負った者にも障害福祉年金を支給することとなったと考えられるが,いずれにせよこれら採用されなかった要綱案に示された考え方により20歳前に障害を負った者と20歳以後に障害を負った学生との間で障害福祉年金受給の取扱いに差異を設けることは許されないものとすることはできない。20歳以後に障害を負った学生に障害福祉年金を支給することとすると,同年齢の学生以外の者が保険料を未納付の場合にこれを受給し得ないこととの均衡を失することになるという議論にも発展しかねず,立法者は,各案の得失を考慮の上,結局上記各要綱案をいずれも採用しなかったのである。 また,被控訴人国は,昭和34年法制定のころは,20歳に達しながらあえて稼得活動に従事することなく自ら学生であることを選択した者はいわゆる『エリート』であり,そのような学生やその父母は経済的に余裕を有する者が多く,あえて社会の保護の手を差し伸べる必要がないという社会通念が存し,上記立案の背景にはそのような社会通念があったものということができる旨主張する。このような当時の学生やその父母に対する評価,特に学生が『エリート』であることについては,種々の見方があり,その評価の当否を結論づけることは困難というほかなかろう。しかし,高等教育には相当な費用が必要であって,そのことのために高等教育を受けることを断念する者も多く,当時大学に進学する者は同年齢の者の1割にも満たない を結論づけることは困難というほかなかろう。しかし,高等教育には相当な費用が必要であって,そのことのために高等教育を受けることを断念する者も多く,当時大学に進学する者は同年齢の者の1割にも満たないいわば希少な存在であって(乙13),実際上も高等教育を受ける者の父母には一般の水準以上の所得を有する者が少なくなかったことは公知の事実である。もっとも,父母からの援助をほとんど得られないために各種の奨学金や自らのアルバイト等によって苦労して勉学を続ける者がいたことも公知の事実であり,昭和36年の調査による大学生の家庭の収入状況は,その職業によってかなりの差異があり,その平均収入が全勤労者世帯の平均収入とほとんど異ならないものもあることが認められる(乙31,32)のであるが,上記のような進学率や大学生の父母には一般水準以上の所得を有するものが少なくなかった実情からすると,昭和34年法制定当時において一般人が大学生とその父母に対して経済的に余裕を有する者であるとの観念を抱いていたものであり,このような観念に対する具体的な疑問が呈されたことも認められず,立法者がそのような社会通念を前提として年金制度を設計したことを不合理であるということはできない。 このように控訴人らの指摘する不利益の程度と立法の前提とされた上記の社会の実情ないし社会通念の内容からすると,任意加入に伴う保険料免除制度がなかったことも含めて,上記障害福祉年金制度が憲法14条若しくは25条に違反するものとはいえない。」(6) 原判決81頁14行目の括弧内を「乙21の1~9,22の1~4,23の1~9,24の1・2」に改め,同23行目の「しかしながら、」の次に「学生を国民年金法の強制適用の対象に加える義務があったとまでいうことはできないし,その他無年金者が生じな 9,22の1~4,23の1~9,24の1・2」に改め,同23行目の「しかしながら、」の次に「学生を国民年金法の強制適用の対象に加える義務があったとまでいうことはできないし,その他無年金者が生じないような方法を配慮することについても,」を加える。 (7) 原判決82頁3行目冒頭から同89頁10行目末尾までを次のとおり改める。 「 1)控訴人らは,昭和60年法についても違憲であると主張する。 まず,学生を強制適用の対象としなかったこと自体が違憲であるとの主張については,前記3,1)で昭和34年法について説示したとおりであり,昭和60年法についてもそのこと自体をとらえて憲法違反と断じることはできない。 2)次に,学生について障害を理由とする年金の受給がより容易になるような制度を何ら設けなかったことの違憲性又はそのことが学生以外の法律上当然には被保険者資格を有しない者との間に不合理な差別が存在するか否かという主張については,前記3,2)で説示したとおり,昭和34年法制定当時,障害福祉年金の受給につき20歳前に障害を負った者と20歳以後に障害を負った学生との間に取扱いの差異を設けることが不合理であったということはできず,その後の社会状況の変化を考慮しても,昭和60年法制定時において,結果として立法的手当がされなかったことが憲法14条に違反する状態となっていたものと認めることはできない。その理由は以下のとおりである。 20歳前に障害を負った者は,昭和34年法においては,制度の根幹をなす障害年金自体は任意加入していない学生と同様に受給し得ず,給付額のより低額な付加的な制度としての障害福祉年金の支給を受けられたにすぎなかったが,昭和60年法においては,障害年金に代わって設けられた障害基礎年金を受給し得る していない学生と同様に受給し得ず,給付額のより低額な付加的な制度としての障害福祉年金の支給を受けられたにすぎなかったが,昭和60年法においては,障害年金に代わって設けられた障害基礎年金を受給し得ることとなり,従来障害福祉年金の給付を受けていた者は障害の程度に応じて障害基礎年金の給付を受けることとなった。この点は一見すると,昭和60年法においては,20歳前に障害を負った者については,給付の額が大幅に増加したのみならず,被保険者資格がないにもかかわらず,制度の根幹ということもできる障害基礎年金の給付を受けられることとなったのであり,20歳以後に障害を受けた学生との取扱いの差異が拡大したといえる。しかし,この差異は,従前の障害福祉年金が廃止され,国民年金法における障害給付の種類が障害基礎年金に一本化されたことによるものであり,いずれも被保険者になり得る前の事故による障害に対する給付であることには変わりがない。 ところで,文部省の平成12年度学生基本調査報告書によると,大学への進学率(大学《学部》入学者数を3年前の中学校卒業者数で除した比率)は昭和34年には8・1%であったところ,その後は徐々に増加し,昭和47年に20%を超えた以降は平成6年に30%を超えるまでの間,20数%で安定的に推移しており,昭和60年には26・5%と昭和34年の3倍を超えたことが認められ,昭和50年ころまでには大学への進学が特殊なことであるとの社会通念も薄らいだことが推認されるが,それでも,大学進学者は昭和60年において全体の4分の1,平成6年においても全体の3分の1弱にすぎず,昭和60年当時においても大学に進学するのは4人中の1人強であり,3人弱は中卒又は高卒にとどまっている実情があり,相変わらず大学進学者は少数であると評価することができるので 体の3分の1弱にすぎず,昭和60年当時においても大学に進学するのは4人中の1人強であり,3人弱は中卒又は高卒にとどまっている実情があり,相変わらず大学進学者は少数であると評価することができるのであり,昭和34年法が前提とした社会の実情ないし社会通念は,確かに薄れたことは容易に想像されるが,もはや通用ないし妥当しなくなったということはできない。 また,厚生省が昭和58年11月28日に国民年金審議会及び社会保険審議会に対して年金制度改正案についての諮問を行い,昭和59年1月24日には社会保険審議会会長から,同月26日には国民年金審議会会長から,それぞれ厚生大臣あて答申がされ,同審議会会長の答申において,今後の検討課題として『学生の適用のあり方については,引き続き検討すべきである。』との指摘がされたこと,同月25日に厚生大臣から社会保障制度審議会会長あてに国民年金法等の一部を改正する法律案要綱の諮問が行われ,同年2月23日に同審議会会長から厚生大臣に対し,要綱案に対する意見が提出されたが,その中で残された重要な問題点の1つとして,『20歳未満で障害の状態になったときには障害基礎年金が受給できるのに対し,任意加入しなかった学生がその期間中に障害の状態になったときには障害基礎年金が受給できない。』という問題があるとの指摘がされたことも踏まえて,国民年金法改正案が国会に上程され,一部修正の上,昭和60年法が成立したこと,昭和60年法においては,無年金者問題に関する特段の措置は講じられなかったが,衆参両院は,昭和60年法案を可決する際の附帯決議において,この点に言及する決議を行っていたことは前記1,5)とおりである。 以上によれば,昭和60年の法改正時点においても,控訴人ら主張の点について是正すべきかどうかは立 附帯決議において,この点に言及する決議を行っていたことは前記1,5)とおりである。 以上によれば,昭和60年の法改正時点においても,控訴人ら主張の点について是正すべきかどうかは立法者が各種年金制度相互間の調整を含め多種多様な利害得失の衝突の調整等の立法政策を取捨選択して総合的に考慮して判断すべきことであり,また,上記のとおり立法の検討作業も積み重ねており,国民年金法上学生に関する上記問題に対する是正措置を結果として講じていないことをもって憲法14条に違反する状態が生じていたということはできないし,昭和60年法が従来障害福祉年金を受給していた者につき障害基礎年金を支給することとしながら,同法制定以前に20歳に達してから在学中に障害を受けたいわゆる学生無年金者につき結果として何らの措置を講じなかったことも,両者間に憲法14条に違反する状態をもたらしたものと評価することもできない。 3)なお,昭和60年法においてはもとより昭和34年法においても学生は任意加入が可能であり,任意加入をして保険料を納付していた者については,在学中の20歳以後に障害を負った学生にも障害福祉年金又は障害基礎年金が支給されることとなっていた。確かに,これらの当時の任意加入制度には保険料免除制度が伴っていなかったために,本人にも父母にも資力がない者には任意加入をすること自体ができず,その場合には障害に関する年金を受給することができないということになるが,このような制度を選択したことが違法といえないことは前記3,1)のとおりである。そして,学生の任意加入者はわずか1%程度にすぎなかったが,その理由は主に卒業後は被用者年金制度に加入することが通常となっていたこと,学生に自らの将来の危険を保険するという意識がそれほど高くなく,学生の国民年金制度 加入者はわずか1%程度にすぎなかったが,その理由は主に卒業後は被用者年金制度に加入することが通常となっていたこと,学生に自らの将来の危険を保険するという意識がそれほど高くなく,学生の国民年金制度に対する関心が低かったことにあるとも十分に考えられ,このように加入率が著しく低いことをもって直ちに当該制度が機能していなかったものであり,当時の任意加入の制度が不合理であったとまで断ずる根拠も見当たらない。 また,当該制度において一部の者にのみ救済が与えられ,救済が必要とされる者に対して何らの救済も与えられていない場合には,代替する制度において同等の救済が付与されていることが認められない限り,平等原則違反による違憲違法の問題が生ずるのであり,年金制度に代わる他の制度において,20歳以後に障害を負った学生に対し,障害福祉年金と同等の救済が与えられていると認められない以上,憲法14条に違反するとの考え方は,前記2)のとおり採用することができない。 さらに,障害による稼得能力の喪失に対する備えは,本来,各個人又はその扶養義務者においてもなすべきものであり,国家がこれに救済措置を講ずるのは,後見的な見地からの社会福祉的措置ということもできる。たとえ社会福祉的措置であっても,国家が行うものである以上はそれが平等原則に反するものであってはならないが,昭和60年法における20歳前に障害を負った者と20歳以後に障害を負った学生との取扱いの差異は,立法者による裁量の範囲内の制度選択の結果であることは前記2)のとおりである。 したがって,昭和60年法制定時に立法不作為の違法が存在したとの控訴人らの主張は,その余について判断するまでもなく,採用することができない。 7 控訴人らに対する本件不支給処分の適否 したがって,昭和60年法制定時に立法不作為の違法が存在したとの控訴人らの主張は,その余について判断するまでもなく,採用することができない。 7 控訴人らに対する本件不支給処分の適否控訴人aは昭和60年法による改正前の国民年金法30条に基づき(前記第2,2,2)(3)),控訴人b及び同cは昭和60年法に基づき(前記第2,2の3)(3)及び4)(3))それぞれ障害基礎年金の支給を求めるところ,昭和60年法制定時に憲法14条に違反する状態が生じていたと認めることができないことは前記6のとおりであるから,上記憲法違反を前提にして本件不支給処分の各取消しを求める控訴人a,同b及び同cの各請求は,その余について判断するまでもなく,いずれも理由がないというべきである。 8 平成元年法について控訴人らは,平成元年法において学生を法の強制適用の対象に含めることとしたが,立法者は過去の無年金者に対しても保険料の特例納付制度を設けるなどして救済措置を講ずべき義務があったところ,これを怠るという違法な立法不作為があったと主張する。 しかし,昭和34年法及び昭和60年法において学生を法の強制適用の対象にしていなかったことが違憲ということはできないことは前記3及び6のとおりであり,平成元年法において学生を法の強制適用の対象に含めることとした際に適法な法の下に生じた過去の無年金者に対してどのような取扱いをするかについては立法者の広範な裁量判断の範囲内の問題であり,当然に保険料の特例納付制度を設けるなどして遡及措置を講ずべき義務があったということはできないというべきである。保険制度は将来の危険を予測して定められた保険料をもってその後に発生した保険事故に保険金として支給するものであるから,既に発生した保険 措置を講ずべき義務があったということはできないというべきである。保険制度は将来の危険を予測して定められた保険料をもってその後に発生した保険事故に保険金として支給するものであるから,既に発生した保険事故に対する措置のあり方は一義的に明確なものではなく,昭和60年法案を可決する際の附帯決議において,衆議院では『無年金者の問題については,今後とも更に制度・運用の両面において検討を加え,無年金者が生ずることのないよう努力すること』との,参議院では『無年金者の問題については,適用業務の強化,免除の趣旨徹底等制度・運用の両面において検討を加え,無年金者が生ずることのないよう努力すること』との各附帯決議をしており(前記1,5)(2)ウ)),国会は,その問題意識を有した上で,立法の検討作業を積み重ね,平成元年法を制定したのであって,当該立法行為ないし立法不作為が違法であるということはできない。したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。 9 国家賠償請求について(争点④)控訴人らは,昭和34年法の制定並びに昭和51年ころまでに又は昭和60年の法改正に際して救済措置を講じなかった立法不作為及び平成元年法において遡及的な救済措置を講じなかった立法不作為がいずれも違法であると主張して国家賠償法に基づく損害賠償を請求する。 しかし,昭和34年法の制定,昭和51年ころまでに又は昭和60年の法改正又は平成元年法においてそれぞれ控訴人らの主張するような措置を講じなかったことが違法であると認めることができないことは前記4ないし6及び8のとおりである。 控訴人らは,現在は控訴人らも国民年金の強制適用の対象者となったため国民年金の保険料納付義務を負わされているが,これは,障害基礎年金の受給者は当然に保険料 し6及び8のとおりである。 控訴人らは,現在は控訴人らも国民年金の強制適用の対象者となったため国民年金の保険料納付義務を負わされているが,これは,障害基礎年金の受給者は当然に保険料の納付義務を免除されること(法89条1項1号)とは著しく異なる差別的取扱いというべきである上,障害基礎年金の支給さえ受けられず,経済的に困窮している控訴人らに対し,保険料の納付義務を負わせるという追い打ちともいうべき非情で苛酷な措置といわなければならないと主張する。 しかし,障害基礎年金受給者が保険料納付義務を免除されているのは,障害基礎年金を受けている者の場合,障害が回復することはほとんど期待できず,一生障害基礎年金を受給することが予想されるところ,障害基礎年金受給者がそれに加えて老齢基礎年金を受給することはできないため(法20条),将来受給できる可能性が低い老齢基礎年金のために保険料を納付させることは相当ではないものと考えられたことによるものであるところ,控訴人らは国民年金の保険料を納付することにより老齢基礎年金を受給することができるものであり,収入がない場合には法90条に基づいて保険料納付義務の免除を受けることが可能なのである(学生については平成元年法において申請による免除の制度が制定されたが,総務庁の勧告等を踏まえて,平成12年法により納付猶予制度が導入されたことは前記1,6)のとおりである。)から,控訴人らと障害基礎年金の受給者との上記取扱いの差をもって違法なものであるということはできない。 したがって,控訴人らの国家賠償法に基づく損害賠償請求は,その余について判断するまでもなく,いずれも理由がなく,被控訴人国の控訴は理由があることに帰する。」 2 よって,被控訴人社会保険庁長官に対する上記各処分の取消し 国家賠償法に基づく損害賠償請求は,その余について判断するまでもなく,いずれも理由がなく,被控訴人国の控訴は理由があることに帰する。」 2 よって,被控訴人社会保険庁長官に対する上記各処分の取消し並びに被控訴人国に対する国家賠償法に基づく各損害賠償金2000万円の支払を求める控訴人らの各請求はいずれも理由がなく,当裁判所の上記判断と異なる原判決主文第3項は不当であるから,被控訴人国の控訴に基づき原判決主文第3項を取り消し,上記取消しに係る控訴人らの各金員請求をいずれも棄却し,控訴人らの各控訴はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第20民事部 裁判長裁判官宮崎公男 裁判官上原裕之裁判官長谷川誠

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