平成18(受)1398 建物収去土地明渡請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年7月6日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄自判 仙台高等裁判所 平成18(ネ)36
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判決文本文3,084 文字)

- 1 -主文原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。 被上告人の請求をいずれも棄却する。 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。 理由 上告代理人佐藤正明の上告受理申立て理由について 本件は,競売により土地を買い受けた被上告人が,その上に存する建物の共有者である上告人らに対し,建物収去土地明渡しを求める事案であり,同建物のための法定地上権の成否が争われている。 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。 (1)第1審判決別紙物件目録1記載の土地(以下「本件土地」という。)は上告人Yが,その上に存する同物件目録2記載の建物(以下「本件建物」とい う。)はAが,それぞれ所有していたところ,昭和44年5月29日,本件土地及び本件建物について,Aを債務者,Bを根抵当権者とする共同根抵当権(以下「本件1番抵当権」という。)が設定され,同月30日その旨の登記がされた。 (2)Aは昭和53年9月26日に死亡し,妻である上告人Y及び子であるその 余の上告人らがこれを相続して本件建物の共有者となった。 (3)平成4年10月12日,本件土地について,Cを債務者,Dを根抵当権者とする根抵当権(以下「本件2番抵当権」という。)が設定され,同月15日その旨の登記がされた。 (4)本件1番抵当権の設定契約は,平成4年10月30日に解除され,同年11月4日に根抵当権設定登記の抹消登記がされた。 - 2 -(5)その後,本件2番抵当権が実行され,平成16年7月2日,被上告人が本件土地を競売により買い受けてその所有権を取得した。 原審は,次のとおり判断して法定地上権の成立を否定し,被上告人の請求を認容すべきものとした。 土地について二つの抵当権が設定され,先順位抵当権設定当時は土地と地上建物の所有者が異なっていたが,後順位抵当権設定当 とおり判断して法定地上権の成立を否定し,被上告人の請求を認容すべきものとした。 土地について二つの抵当権が設定され,先順位抵当権設定当時は土地と地上建物の所有者が異なっていたが,後順位抵当権設定当時は同一人の所有に帰していた場合,抵当権の実行により先順位抵当権が消滅するときには,法定地上権の成立は認められないとするのが判例(最高裁昭和62年(オ)第452号平成2年1月22日第二小法廷判決・民集44巻1号314頁)であるところ,このことは,後順位抵当権の設定後に先順位抵当権の設定契約が解除された場合においても同様であると解すべきである。なぜなら,この場合に法定地上権の成立を認めると,法定地上権の負担のない土地としての担保余力を把握していた後順位抵当権者の利益を不当に害する結果となるからであり,これを避けるために,将来の法定地上権の成立を仮定して担保余力を評価すべきものとすると,担保価値の完全な活用が阻害される不都合が生じる。また,建物所有者としても,もともと先順位抵当権を基準にすれば法定地上権の成立は認められなかったのであり,たまたま先順位抵当権の設定契約が後に解除されたからといって,法定地上権成立の利益を認める必要性はない。 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 (1)土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後,甲抵当権が設定契約の解除により消滅し,その後,乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において,当該土地と建物が,甲抵当権の- 3 -設定時には同一の所有者に属していなかったとしても,乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは,法定地上権が成立するというべきである。その理由は,次のとおりである。 上記のような場合,乙抵当権 設定時には同一の所有者に属していなかったとしても,乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは,法定地上権が成立するというべきである。その理由は,次のとおりである。 上記のような場合,乙抵当権者の抵当権設定時における認識としては,仮に,甲抵当権が存続したままの状態で目的土地が競売されたとすれば,法定地上権は成立しない結果となる(前掲平成2年1月22日第二小法廷判決参照)ものと予測していたということはできる。しかし,抵当権は,被担保債権の担保という目的の存する限度でのみ存続が予定されているものであって,甲抵当権が被担保債権の弁済,設定契約の解除等により消滅することもあることは抵当権の性質上当然のことであるから,乙抵当権者としては,そのことを予測した上,その場合における順位上昇の利益と法定地上権成立の不利益とを考慮して担保余力を把握すべきものであったというべきである。したがって,甲抵当権が消滅した後に行われる競売によって,法定地上権が成立することを認めても,乙抵当権者に不測の損害を与えるものとはいえない。そして,甲抵当権は競売前に既に消滅しているのであるから,競売による法定地上権の成否を判断するに当たり,甲抵当権者の利益を考慮する必要がないことは明らかである。そうすると,民法388条が規定する「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する」旨の要件(以下「同一所有者要件」という。)の充足性を,甲抵当権の設定時にさかのぼって判断すべき理由はない。 民法388条は,土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において,その土地又は建物につき抵当権が設定され,その抵当権の実行により所有者を異にするに至ったときに法定地上権が設定されたものとみなす旨定めており,競売前に消滅していた甲抵当権ではなく,競売により消滅する最先順位の抵当権で つき抵当権が設定され,その抵当権の実行により所有者を異にするに至ったときに法定地上権が設定されたものとみなす旨定めており,競売前に消滅していた甲抵当権ではなく,競売により消滅する最先順位の抵当権であ- 4 -る乙抵当権の設定時において同一所有者要件が充足していることを法定地上権の成立要件としているものと理解することができる。原判決が引用する前掲平成2年1月22日第二小法廷判決は,競売により消滅する抵当権が複数存在する場合に,その中の最先順位の抵当権の設定時を基準として同一所有者要件の充足性を判断すべきことをいうものであり,競売前に消滅した抵当権をこれと同列に考えることはできない。 (2)これを本件についてみるに,同一所有者要件の充足性の判断は,本件2番抵当権の設定時を基準とすべきであり,この時点では,本件建物の共有者の一人である上告人Yが本件土地を単独で所有していたのであるから,本件では法定地上 権の要件を充足している(最高裁昭和46年(オ)第844号同年12月21日第三小法廷判決・民集25巻9号1610頁参照)。よって,本件建物のために法定地上権が成立しているというべきである。 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,被上告人の請求は理由がないというべきであるから,これを認容した第1審判決を取り消し,被上告人の請求をいずれも棄却することとする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官今井功裁判官津野修裁判官中川了滋裁判官古田佑紀) 功 裁判官 津野修 裁判官 中川了滋 裁判官 古田佑紀

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