平成29(わ)115 殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反,殺人未遂,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反,窃盗,現住建造物等放火,非現住建造物等放火,殺人未遂(変更後の訴因 傷害)

裁判年月日・裁判所
令和5年8月29日 福岡地方裁判所
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判決文本文35,181 文字)

令和5 年8 月29 日宣告平成26 年第1284 号・組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件(「看護師事件」と表記)、平成27 年第918 号・窃盗、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(窃盗被告事件を除き「元警察官事件」と表記)、同年第1732 号・現住建造物等放火、非現住建造物等放火被告事件(「放火事件」と表記)、平成28 年第128 号・窃盗被告事件、同年第809 号・殺人未遂被告事件(変更後の訴因・傷害、「b1 事件」と表記)、平成29 年第115 号・殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(「b3 事件」と表記)、同年第718 号・組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件(「b2 事件」と表記し、放火事件及びb1 事件と合わせて「標章3 事件」と表記)、同年第1080 号・殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(「b4 事件」と表記) 判決 主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中270 日をその刑に算入する。 理由 【罪となるべき事実】被告人は、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律所定の指定暴力団であって、平成24 年12 月27 日以降は同法所定の特定危険指定暴力団である甲會の、主要かつ最大の二次団体である乙組の組員であり、平成23 年7 月以降は同組若頭であったところ、第1(b4 事件)乙組本部長と同組内丙組の組長を兼ねるX1、乙組組員のX2、X3、丙組組員の X4 及びX5 と被告人が順次共謀の上、X1 の指示下で移動用の自動二輪車を用意するなどの準備を経て、法定の除外事由がないのに、 丙組の組長を兼ねるX1、乙組組員のX2、X3、丙組組員の X4 及びX5 と被告人が順次共謀の上、X1 の指示下で移動用の自動二輪車を用意するなどの準備を経て、法定の除外事由がないのに、 1 平成23 年2 月9 日午後7 時12 分頃、不特定又は多数の者の用に供される北九州市h 区(住所省略)d1 病院移転新築工事作業所2 階事務所において、同所の従業員等の殺害に至ってもやむを得ないとする殺意をもって、事務所内出入口付近に立った被告人が、持っていた回転弾倉式けん銃で、事務机等が並ぶ横長の空間に向かって弾丸1 発を発射した上、その方向にある従業員G(当時50歳)が執務していた事務机付近まで駆け寄り、椅子から立ち上がって数歩退いた同人と同事務机やサイドテーブルを挟んで向かい合い、同人がいる方向に更に弾丸1 発を発射し、その後、出入口方向に引き返す途中で立ち止まり、床面に置かれた空気清浄機付近に向けて弾丸1 発を発射し、殺意に基づく先行の2発のうち同サイドテーブル上の書類を貫通した2 発目の弾丸を同人の下腹部に命中させたが、被告人退去後に救急搬送されたGに全治約23 日間を要する下腹部挫創の傷害を負わせたにとどまり、殺害の目的を遂げなかった。 2 同日時、場所において、同けん銃1 丁を、これに適合するけん銃実包3 発と共に携帯して所持した。 第2(b3 事件)X1、X4、X5 のほか、乙組組員のX6、X7、X8 及びX9 と被告人が順次共謀の上、被告人及びX1 の指示下で移動用の自動二輪車を用意するなどの準備を経て、法定の除外事由がないのに、 1 平成23 年11 月26 日午後9 時頃、不特定又は多数の者の用に供される北九州市h 区(住所省略)のW1 方前路上付近において、相撲観戦から自動車で帰り着き、助手席 除外事由がないのに、 1 平成23 年11 月26 日午後9 時頃、不特定又は多数の者の用に供される北九州市h 区(住所省略)のW1 方前路上付近において、相撲観戦から自動車で帰り着き、助手席から降車した同人(当時72 歳)に対し、殺害に至ってもやむを得ないとする殺意をもって、同所に乗り付けた自動二輪車から降車したX8 が、持っていた回転弾倉式けん銃で、W1 がいる方向に弾丸2 発を発射し、うち1 発を同人の頚部に命中させ、よって同日午後10 時3 分頃、同市g 区(住所省略)のd2 病院において、同人を右内頚静脈及び右鎖骨下動脈の離開に基づく失血により死亡させて殺害した。 2 同路上付近の発射の日時、場所において、同けん銃1 丁を、これに適合するけん銃実包2 発と共に携帯して所持した。 第3(窃盗被告事件及び元警察官事件) 1 乙組組員のX10 及びX11 と共謀の上、平成24 年4 月19 日午前零時過ぎ頃、北九州市g 区(住所省略)a1 団地f 号室前踊り場付近から、W2 所有の原動機付自転車1 台(時価約5000 円相当)を窃取した。 2 甲會の総裁のX12 及び会長のX13 が、直接のやり取りをする間柄にあった警察官W3 の振る舞いに関し、甲會に係る警察の取締り強化と並んで同人が情報収集するなどの過程で、X12 及びX13 の地位を知りながら軽んじる言動がW3 に現れたと捉え、これに銃撃等の加害で報いるのを通じて甲會並びにその頂点に立つX12 及びX13 の威勢や統制を保持する活動として、X12 の意思決定の下、退職後のW3 の銃殺を含む加害行為が企てられ、X12 及びX13 に加えて甲會の理事長と乙組の組長を兼ねるX14 のほか、X8、X7、X11、X10、X9、同組組員のX15及びX16 と被告人が順 退職後のW3 の銃殺を含む加害行為が企てられ、X12 及びX13 に加えて甲會の理事長と乙組の組長を兼ねるX14 のほか、X8、X7、X11、X10、X9、同組組員のX15及びX16 と被告人が順次共謀の上、X12 の指揮命令に基づいて、被告人の指示下でX8、X11 及びX16 がW3 の行動等の確認を行い、加害前後の実行役の送迎等をX10 及びX9 が担い、X7 が実行役の着衣等を処分するなどと打ち合わせるほか、X15 が加害の実行役を担当し、X14 の統率下であらかじめ定められた以上の任務分担に従って、法定の除外事由がないのに、⑴ 平成24 年4 月19 日午前7 時5 分頃、不特定又は多数の者の用に供される北九州市g 区(住所省略)付近路上において、出勤のため最寄り駅まで歩行中のW3(当時61 歳)に対し、殺害に至ってもやむを得ないとする殺意をもって、前記窃取に係る原動機付自転車で近付いたX15 が、持っていた自動装てん式けん銃で、W3 の身体を目掛けて弾丸2 発を発射し、さらに、地面に向けて弾丸1 発を発射し、もって団体の活動として、組織によりけん銃発射の違 反行為をするとともに、殺意に基づく先行の2 発を同人の左腰部及び左大腿部に1 発ずつ命中させたが、X15 退去後に救急搬送されたW3 に約1 か月間の入院及び通院加療を要する左股関節内異物残留、左大腿部銃創の傷害を負わせるにとどまり、もって団体の活動として、組織により殺人未遂を犯した。 ⑵ 同日時、場所において、同けん銃1 丁を、これに適合するけん銃実包3 発と共に携帯して所持し、もって団体の活動として、組織によりけん銃加重所持の違反行為をした。 第4(標章3 事件等)1(窃盗被告事件及び放火事件)知人のX17 と共謀の上、平成24 年8 月1 共に携帯して所持し、もって団体の活動として、組織によりけん銃加重所持の違反行為をした。 第4(標章3 事件等)1(窃盗被告事件及び放火事件)知人のX17 と共謀の上、平成24 年8 月13 日頃、熊本市j 区(住所省略)a2西側駐輪場において、W4 所有の自動二輪車1 台(時価約10 万円相当)を窃取した。 ⑵ 乙組事務所がある北九州市h 区内の、暴力団追放運動に賛同する者らが飲食店経営の拠点とするビルであって、営業中の店舗の在所を含む建造物に放火する計画に加わり、ア X14、X8 のほか、乙組組員のX18、X19 及びX20 と被告人が順次共謀の上、平成24 年8 月14 日午前4 時半頃、W5 ら10 名がいた同市h 区(住所省略)所在のa3 ビル(鉄筋コンクリート造陸屋根6 階建及び木造平屋建家屋、床面積合計約1025.39 ㎡)において、バイクで出向いたX18 又はX20が、営業中の店舗のある同ビル3 階に停止していたエレベーター内に灯油をまいた上、火をつけた発炎筒を同エレベーター内に投げ込んで同所に火を放ち、その火を同エレベーターの天井及び開扉したエレベーター前の床面等に燃え移らせ、よって同ビルの構成部分に含まれる同エレベーターを全焼させるとともに3 階エレベーター前床面の一部を焼損し(焼損面積合計約3.2 ㎡)、もって現に人がいる建造物に放火して焼損した。 イ X14、X8、X10、X19 のほか、乙組組員のX21 と被告人が順次共謀の上、 同日時頃、現に人が住居に使用せず、現に人がいない同市h 区(住所省略)所在のa4 ビル(鉄筋コンクリート造陸屋根6 階建、床面積合計1313.31㎡、c1 株式会社の所有名義登記、その後同社をc2 株式会社が吸収合併)において、前記窃取に係る自動二輪車で出向いた )所在のa4 ビル(鉄筋コンクリート造陸屋根6 階建、床面積合計1313.31㎡、c1 株式会社の所有名義登記、その後同社をc2 株式会社が吸収合併)において、前記窃取に係る自動二輪車で出向いたX21 及びX10 のうち、X21が同ビル3 階に停止していたエレベーター内に灯油をまいた上、X10 が火をつけた発炎筒を同エレベーター内に投げ込んで同所に火を放ち、その火を同エレベーターの内壁等に燃え移らせ、よって同ビルの構成部分に含まれる同エレベーターを全焼させて焼損し(焼損面積約1.7 ㎡)、もって非現住建造物に放火して焼損した。 2(b2 事件)前記a3 ビル3 階にラウンジ「b2」を構える同店経営者Bが、来店客であったX14 を含む暴力団員の立入りを拒否するとともに、同旨の立入り禁止の表示を掲げる条例所定の標章制度に基づいて同店に標章を掲示したため、X14 の地位を知りながら軽んじる言動がBに現れたと捉え、これに加害で報いるのを通じて付近に拠点を置く乙組及びその頂点に立つX14 の威勢や統制を保持する活動として、また、同市h 区の同様の店から用心棒代名目のいわゆるみかじめ料を徴収するなどして支配する乙組の権益を維持・拡大する目的で、X14 の意思決定の下、Bの殺害を含む加害行為が企てられ、X14、X8、X6、X7、X18、X21 及びX9と被告人が順次共謀の上、X14 の指揮命令に基づいて、X8 及びX6 がBの行動等の確認を行い、被告人が加害前後の移動用の自動車を調達し、その指示下で同車の保管や移動をX7 及びX9 が担い、X21 が自動車手配時のX9 との電話連絡を担い、X7 及びX9 が加害後に車両や凶器等を処分するなどと打ち合わせるほか、X18 が加害の実行役を担当し、X14 の統率下であらかじめ定められた以上の任務分 自動車手配時のX9 との電話連絡を担い、X7 及びX9 が加害後に車両や凶器等を処分するなどと打ち合わせるほか、X18 が加害の実行役を担当し、X14 の統率下であらかじめ定められた以上の任務分担に従って、平成24 年9 月7 日午前零時58 分頃、北九州市h 区(住所省略)a5 東側駐車場において、退勤してタクシーで帰り着き、降車したB(当時35 歳)に対 し、殺害に至ってもやむを得ないとする殺意をもって、X18 が、持っていた刃物でBの左顔面を1 回切り付け、臀部を1 回突き刺したが、X18 退去後に救急搬送されたBに入院加療約114 日間を要する左顔面切創、左顔面神経損傷、右臀部刺創等の傷害を負わせるにとどまり 同日時、場所において、Bの殺害を制止しようとする前記タクシーの運転手C(当時40 歳)に対し、前同様の殺意をもって、X18 が、前記刃物でⅭの左側頭部等を切り付けたが、前同様に搬送された同人に入院加療約14 日間を要する左側頭部・左耳介・左頚部・手背部切創等の傷害を負わせるにとどまりもって団体の不正権益を維持・拡大する目的で、かつ団体の活動として、組織により各殺人未遂を犯した。 3(b1 事件)前記暴力団追放運動及び標章制度に同様の姿勢を示してみかじめ料の支払をしない同市h 区内のクラブ「b1」の、運営会社関係者に対する加害行為の計画に加わり、X14、X8、X11、X18、X6、X9 のほか、乙組組員のDと被告人が順次共謀の上、平成24 年9 月26 日午前零時38 分頃、北九州市h 区(住所省略)a6 出入口前において、帰宅しようとする同社営業部長のW6(当時54 歳)に対し、自動車で出向いて待機していたDが、W6 の背後に駆け寄った上、持っていた刃物で同人の左臀部及び右大腿部を3 回突 a6 出入口前において、帰宅しようとする同社営業部長のW6(当時54 歳)に対し、自動車で出向いて待機していたDが、W6 の背後に駆け寄った上、持っていた刃物で同人の左臀部及び右大腿部を3 回突き刺すなどし、よって同人に入院加療15日間を要する臀部・大腿部刺創、頭部挫創の傷害を負わせた。 第5(看護師事件)X12 が通うクリニックでその脱毛施術を担当していた看護師W7 の振る舞いに関し、X12 が追加した亀頭増大術も合わせて各施術の予後が思わしくなく、不具合を生じたなどと苦情を述べる過程で、X12 の地位を知りながら軽んじる言動がW7 に現れたと捉え、これに加害で報いるのを通じて甲會及びその頂点に立つX12 の威勢や統制を保持する活動として、X12 の意思決定の下、W7 の殺害を 含む加害行為が企てられ、X12、X13、X14、X1、X7、X8、X15、X21、X18、X4 のほか、乙組組員のX22 と被告人が順次共謀の上、X12 の指揮命令に基づいて、X18 及びX21 がW7 の行動等の確認を行い、被告人の助言を受けるX8 がX22 に下見をさせるとともに凶器の刃物を渡し、X1 の配下のX4 が加害時の接近に用いるバイクを用意し、連動して移動に用いる自動車の手配及び加害後の刃物等の処分をX7 が担い、X15 が加害前後の実行役の送迎をするなどと打ち合わせるほか、X22 が加害の実行役を担当し、X14 の統率下であらかじめ定められた以上の任務分担に従って、平成25 年1 月28 日午後7 時4 分頃、福岡市i 区(住所省略)のa7 北側歩道上において、帰宅のため最寄りのバス停から歩行中のW7(当時45 歳)に対し、殺害に至ってもやむを得ないとする殺意をもって、X22が、持っていた刃物でW7 の左側頭部辺りを目掛けて )のa7 北側歩道上において、帰宅のため最寄りのバス停から歩行中のW7(当時45 歳)に対し、殺害に至ってもやむを得ないとする殺意をもって、X22が、持っていた刃物でW7 の左側頭部辺りを目掛けて突き刺すなどしたが、X22退去後に救急搬送されたW7 に約3 週間の入院及び通院加療を要する左眉毛上部刺切創、顔面神経損傷、右前腕部刺切創及び左臀部刺創の傷害を負わせるにとどまり、もって団体の活動として、組織により殺人未遂を犯した。 【証拠の標目】(省略)【事実認定の補足説明】判示各事件につき有罪を認めた判断の理由の要点を、補足して述べる。 1 検討の対象特に検討が求められる事柄は、窃盗被告事件を除く判示各事件の実行役に該当の罪の犯意が認められるかどうかであり、被告人が実行役を担ったb4 事件のほか、b3事件及び元警察官事件でこの点の争いを呈し、b2 事件及び看護師事件でも吟味を要する。また、被告人と判示共犯者との間に共謀や組織的犯罪該当性が認められるか否かの点、及び被告人に等しく犯意が備わっていたか否かの点が広く争われているので、吟味が必要である。そこで、b1 事件以外の罪の成立を争う弁護人の主張及びこれに沿う被告人の供述を踏まえて精査したが、以下述べるとおり認定に至る。 2 各実行役の殺意について⑴ b4 事件、b3 事件及び元警察官事件の各実行役の殺意について関係証拠によれば、b4 事件、b3 事件及び元警察官事件は、いずれもけん銃が凶器に用いられた犯行の事案である。内部の火薬の爆発で押し出される弾丸を高速度で、離れた地点まで瞬時に届けて対象に到達させ、それが人体であれば弾丸で肉体を貫くなどし、血管や臓器等に重大な損傷を負わせ得るけん銃が用いられた点で共通する。他方で、火薬の爆発等による反動で銃口が動 、離れた地点まで瞬時に届けて対象に到達させ、それが人体であれば弾丸で肉体を貫くなどし、血管や臓器等に重大な損傷を負わせ得るけん銃が用いられた点で共通する。他方で、火薬の爆発等による反動で銃口が動き、狙いどおりに弾丸を命中させられない可能性もあると認められる。これらを交えて検討すると、以下のとおり、いずれの事件も、具体的なけん銃発射の態様等から各実行役の殺意が認定できる。 認定を争う弁護人の主張には事実関係の評価等に誤りがみられ、採用できるものはない。 アすなわち、b4 事件の判示新築工事作業所は、横長の直方体からなる2 階建プレハブの建物であり、午後7 時過ぎであった判示当時、1 階部分に並ぶ作業員休憩所等の辺りには控えめな照明が灯り、2 階部分の判示事務所には明るさのある照明が広く灯っていて、これらが外から見て取れる状態であった。実行役の被告人は、やや速い歩みで1 階部分の脇を滞りなく通り過ぎ、階段を上がり、判示2 階事務所のガラス張りの引き戸を開けて中に立ち入った。続いて、被告人は、目の前の高さ90cmほどのカウンター机を挟んだ奥側の空間、すなわち、事務机等が並ぶのに沿って広がる横長の空間に向かって判示けん銃発射に及んだが、この1 発目の発射は立入り後まもなく、辺りを見渡すなどの動作もないまま行われた。顔の部位は幾らか透明性のあるシールド付きフルフェイス型のヘルメットを被り、ほぼ直立の姿勢の下、胸の前辺りに伸ばして掲げた両手で判示けん銃を支え持ち、やや左斜め前方に銃口を向けてこの発射に及んでいるところ、その方向にある事務机で事務作業中であった被害者の手前の、ファイルワゴンなどの足元の床から50cm前後の高さに弾丸が着弾した。発射に気付いた被害者が立ち上がり、後退するのと並行して、被告人は左に踏み出しながらカウンター机を回り込み であった被害者の手前の、ファイルワゴンなどの足元の床から50cm前後の高さに弾丸が着弾した。発射に気付いた被害者が立ち上がり、後退するのと並行して、被告人は左に踏み出しながらカウンター机を回り込み、被害者に駆け寄る動きをして 更に奥の空間に立ち入ったが、途中で右に顔を向けて視線を送り、再び顔を戻しつつ3m弱ほどの距離まで被害者に近づいた上、前同様に支え持つけん銃の銃口を、水平よりやや下に向けて2 発目の発射に及んだ。弾丸は股下程度の高さのサイドテーブル上の書類束を貫いて進み、同人着用の作業着やベスト等を破損し、左下腹部に接触して判示傷害を負わせた。これにより同人は軽度の痛みを覚えるにとどまるも、重傷を装って後難を免れるために大声を上げて机の陰に倒れこむ動きをし、すると被告人は後ずさりをして離れる動きをした上、判示3 発目の発射に及び、小走りで出入口から戸外に出て立ち去ったと認められる。 関係証拠から認められる以上の事実によれば、従業員等の存在が見込まれる事務所内への立入り直後、それら人の着座や佇立が見込まれる空間に銃口を向けて即座に1 発目の発射が行われ、その際の被告人に人体への着弾を防ごうとする所作はなかったから、当該発射は、事務所内の人の身体の枢要部に命中させることも厭わない内心状態で行われたと推認できる。推認を妨げる事情を探ってみても、着弾方向に姿があった被害者の存在が被告人の予想外であったことをうかがわせるものはなく、むしろ、立ち上がった被害者を視界に捉えたと認められる被告人の次の動きは、被害者に更に接近してけん銃を近づけ、反動が働いても身体の枢要部に着弾し得る向きに銃口を構え、2 発目の発射に及ぶものであり、枢要部への命中を容認していたものとみられる。より怖がらせる意図に出た動きであったと被告人は供述するが、被害者 動が働いても身体の枢要部に着弾し得る向きに銃口を構え、2 発目の発射に及ぶものであり、枢要部への命中を容認していたものとみられる。より怖がらせる意図に出た動きであったと被告人は供述するが、被害者に近づき、その身体がある方向に銃口が向く状態で発射に及ぶ行為は、脅し目的の限りとみるには整合せず、銃口を大きく逸らした3 発目と対照的である。2発目の弾丸が枢要部に当たらないことを確信している行為とはみられず、既述の推認が同じく当てはまる。弁護人は、被告人に射撃の経験があったことなどを指摘し、狙い通りに2 発目を枢要部以外への着弾にとどめたものと主張するが、狙いを定める様子もなく発射した1 発目の状況や、その後に視線を送るなどの周囲をうかがう動きをして2 発目に及んでいることなどに照らし、弾道の厳密な統制を予定していたとか、現になされていたなどという見方は当たらない。そこで、3 発目の発射を 除外しつつ、先行の2 発の発射は判示の殺意に基づくものと認め、被告人の行為は判示の殺意を備えた殺人未遂であったと認定した。 イ b3 事件の被害者方前路上付近は住宅街の市道が通る場所であり、上り坂の市道と、ほぼ直角に接するコンクリート通路が交わり、市道から通路に入って進めば被害者方家屋に達するが、交わる辺りが平坦であることを除き、当該通路も緩やかな上り坂である。判示の午後9 時頃、被害者及び妻が同乗する四輪自動車が、市道から当該通路にやや乗り入れて停止し、運転席側後部座席から妻が降車し、助手席から被害者が降りたところで、実行役のX8 が判示けん銃発射に及んでいる。X8は、二人乗りのバイクの座席後部から降り、市道と通路の接点辺りの、傍らの樹木の枝に触れない位置に身を置き、前同様のヘルメットを被る姿でその場にほぼ直立し、降り立った被害者の方を向いて んでいる。X8は、二人乗りのバイクの座席後部から降り、市道と通路の接点辺りの、傍らの樹木の枝に触れない位置に身を置き、前同様のヘルメットを被る姿でその場にほぼ直立し、降り立った被害者の方を向いていた。妻は、X8 らの存在に気付いていたが事態を飲み込めず、被害者に逃走するよう促すなどの声掛けまではしていなかった。そして、X8 は、胸の前辺りに掲げるように両手でけん銃を支え持ち、前方の通路内の被害者との距離が4m程度であり、かつ、被害者に向ける視線が幾らか上向きになる位置関係で判示の2 発の発射に及び、うち1 発の弾丸が被害者の身体に到達して頚部に命中し、判示のとおり死亡に至らせたと認められる。 関係証拠から認められる以上の事実によれば、X8 による発射は、被害者との間に幾らか距離があるが長くはなく、障害物もない状況下、安定した立ち位置で体勢を整え、反動が働いても被害者の身体の枢要部に着弾し得る方向及び位置関係で銃口を構え、発射に及んだものであって、大きな変動なく続いた2 発の発射は、いずれも身体の枢要部への命中を容認していた態様であったと認められる。車から降りた被害者がX8 の予想外の動きをした等々の事情も見当たらないから、現に生じた弾丸1 発の命中及び致死の結果は、X8 の想定内にあると認められる。通路で発見された金属片2 点の位置関係を指摘し、それが通路上方であったことを指摘し、よって被害者に命中させる意図のない発射であった旨、弁護人は主張するが、確かさを備えない論理をいうものであって当たらない。そこで、2 発の発射は判示の殺意に基 づくものと認め、X8 の行為は判示の殺意を備えた殺人であったと認定した。 ウ元警察官事件の現場の路上は被害者方近くの直線道路に属し、同所を徒歩で移動する被害者と、バイクを運転して向かい合う づくものと認め、X8 の行為は判示の殺意を備えた殺人であったと認定した。 ウ元警察官事件の現場の路上は被害者方近くの直線道路に属し、同所を徒歩で移動する被害者と、バイクを運転して向かい合うように進んできた実行役のX15が接近する場面で判示の発射が行われたが、X15 から見てやや下り坂の地点であった。X15 は、海外の射撃場で静止した的に対するけん銃発射を行った経験を有しており、本件前日には、高速道路の欄干の下で本件けん銃の2 発の試射を行い、反動の程度を確かめていたが、本件時は、事後の逃走に用いる想定下でバイクを運転して現場に赴き、停車したバイクにまたがったままで発射に及んでおり、この発射の態様は過去のいずれとも異なる。X15 は、被害者からの制止等を免れるため、その一歩では届かない1m余りの距離を保ってバイクを止め、左側に位置する被害者の方に向かって上半身を約90 度ひねり、けん銃を持つ側の右腕を伸ばしつつ、曲げた左腕の先の手を添えてけん銃を支え持つ体勢により、水平よりも少し下を向く銃口の延長上に被害者がいる状況で、判示の2 発の連続発射に及んだ。これらは、撃鉄を起こす必要のない自動装てん式けん銃の利点を用いたものと認められ、また、被害者がいない方向の地面に向けられた3 発目との差異が大きいものと認められる。 関係証拠から認められる以上の事実によれば、X15 が始めた発射は、被害者との距離が短い位置関係で同人の方向に先端を向け、銃口を逸らさずに行う発射であるから、その身体の枢要部への命中を容認していた態様であったと認められる。この点について、弁護人は、X15 が姿勢の固定等を尽くした安定性の極めて高い状態下で、枢要部以外への着弾に確実にとどめられる発射をしたものと指摘する。しかし、その発射は、過去に試していない不安定な体勢 点について、弁護人は、X15 が姿勢の固定等を尽くした安定性の極めて高い状態下で、枢要部以外への着弾に確実にとどめられる発射をしたものと指摘する。しかし、その発射は、過去に試していない不安定な体勢の、余裕が乏しい状況下である以上、反動が働いて身体の枢要部に当たる可能性が十分見込まれる発射であったと認められ、その事情はX15 自身も認識していたと認められる。しかも、連続発射の2 発目は一層大きな反動で銃口が動き、枢要部に弾丸が当たる可能性が高まると考えられるところ、その事情をX15 も認識の上、あえて連続発射に及んだと認められる。弾道の厳密な統制を予定していたとか、現になされていたなどという見方は当たらな い。そこで、もはや人体に対する命中を意図していなかったとみられる3 発目の発射を除外しつつ、先行の2 発の発射は枢要部への命中を容認する内心状態の、判示の殺意に基づくものと認め、X15 の行為は殺人未遂であったと認定した。 ⑵ b2 事件及び看護師事件の各実行役の殺意について関係証拠によれば、b2 事件及び看護師事件は、いずれも鋭利な刃物が凶器に用いられた犯行の事案であるところ、以下述べるとおり、具体的な犯行態様等から各実行役の殺意が認定できる。 ア b2 事件の実行役のX18 は、タクシーから降りたBがその間近に迫るまでX18 の存在に気付かない状況下、すなわち、Bに身構える余裕を与えないまま、振り返った同人の左顔面に対し、上から下に大きく振り下ろすように鋭利な刃物の刃先を突き刺し、長さ約20cm、深さ約5cmの切創を負わせる力で切り付けており、これが最初の加害行為であった。その行為は、重要な血管や神経が集まる頭部や頚部を切り裂く可能性が非常に高いが、状況から見て、X18 は当初からこの危険な加害行為の実行を狙って る力で切り付けており、これが最初の加害行為であった。その行為は、重要な血管や神経が集まる頭部や頚部を切り裂く可能性が非常に高いが、状況から見て、X18 は当初からこの危険な加害行為の実行を狙っていたと認められる。Bの臀部にも、意図的に刃先を突き刺すなどして生じたとみられる深い刺創があったから、最初のものだけにとどめることなく刃物で身体に深い傷を負わせようとする加害行為が、X18 により行われたと認められる。また、被害者Cの受傷の状況等からすると、先行のBに対する加害行為を察知してその制止に入ったCに対し、X18 は同様に刃物で切り付け、左頚部の長さ約12cm、深さ約2cmの切創を含む受傷に至らせているところ、これらは、制止のために少なからずX18 に接近していたCに対し、同人の手などに切創を生じさせるのと並行して負わせた複数の受傷であるが、奥まった位置の頚部に重い程度の受傷が存在することに鑑み、X18 は、Cの制止の動きに対し刃物で威嚇するなどして逃れようとするにとどまらず、刃物を能動的に動かして刃先を奥の方へ届かせようとしていたと認められる。 関係証拠から認められる以上の事実によれば、X18 は、Bに対する複数の加害行為時、その頭部や頚部を切り裂いて失血させるなどの機序により死亡に至らせるこ とも容認する意思を有していたと認められる。Cに対しても、その制止の動きを見て即座にBに対するのと同様の加害行為に及ぶこととし、死亡の事態を容認する意思で複数の加害行為を行ったと認められる。X18 の各行為は、判示の殺意を備えた各殺人未遂であったと認定した。 イ看護師事件の被害者は、速くも大きくもない動きによる帰宅時の歩行中に、左後方から実行役のX22 の接触を受け、左横辺りに並んだ刹那に、その左耳上部から下方に刃先が差し入れら あったと認定した。 イ看護師事件の被害者は、速くも大きくもない動きによる帰宅時の歩行中に、左後方から実行役のX22 の接触を受け、左横辺りに並んだ刹那に、その左耳上部から下方に刃先が差し入れられる態様で左側頭部に刃物で切り付けられている。これによる長さ7cmほどの刺切創の深さは側頭筋に達し、動脈を切断していたから、重要な血管や神経等が集まる頭部や頚部を切り裂く可能性が高い加害行為の存在が、その最初の接触の場面に認められる。状況から見て、X22 は、当初からこの危険な加害行為の実行を狙っていたと認められる。その後に続く両名の短時間の接触を通じて、被害者の身辺には、最初の加害行為の場面とはそれぞれ異なる場面で当該刃物により負わされたとみられる痕跡が複数生じており、すなわち、真冬の厚着をする右前腕部に長さも深さも大きい切創が生じ、左臀部にも深さのある刺創が生じていたから、かなり強い力で意図的に当該刃物の刃先で切り付ける加害行為が対応して存在したと認められる。また、左肩にかけていた革製ショルダーバッグの表面中央部には、長さが限られる一方で、内側にも傷が及ぶ裂け目状の破損が生じており、これは、刃物の刃先を強く突き刺す動きを受けて生じており、その動きは被害者の胴部に向かうものであったと認められる。 関係証拠から認められる以上の事実によれば、X22 は、最初の接触の場面の危険な加害行為の実行を狙って遂げたにとどまらず、更に被害者の身体の枢要部に対し、強い力を込めて刃物で切り付ける加害行為を連続させているから、あらかじめ、その連続する加害行為により被害者の頭部や頚部を切り裂き、又は胴部に刃物を突き刺し、よって失血させるなどの機序により死亡に至らせることも容認する意思を有していたと認められる。X22 の行為は判示の殺意を備えた殺人未遂であったと認 者の頭部や頚部を切り裂き、又は胴部に刃物を突き刺し、よって失血させるなどの機序により死亡に至らせることも容認する意思を有していたと認められる。X22 の行為は判示の殺意を備えた殺人未遂であったと認定した。 ⑶ その余の事件における各実行役の犯意についてその余の被告事件の各実行役の犯意に係る検察官立証は、概ね遂げられていたが、放火事件の現住建造物等放火の公訴事実に現に人が住居に使用する建造物である旨を掲げながら、その事情の認識が実行役を含む関与者らに備わっていたことの立証が欠けるので、これを結論に反映している。 3 窃盗被告事件を除くその余の事件の共謀等について⑴ 窃盗被告事件を除くその余の事件の共謀や任務分担等の組織的犯罪該当性、及びこれに関連して殺意等の犯意が被告人に等しく備わっていたか否かの検討をするに、否認する被告人の供述及び弁護人の主張は、次のとおりに理解できる。 すなわち、①被告人が犯行を実行した事実や現場で指揮した事実を肯定しつつ、他の関与者との間で共謀に値する相互の意思疎通や連携はないとするもの(b4 事件、元警察官事件)、②他の者による犯行の実行や関与の事実を肯定しつつ、被告人の関与はなかった、あるいは末端のものであったなどとして、犯意を備えた意思疎通や寄与の欠落により共謀が否定されるとするもの(b3 事件、放火事件、b2 事件、看護師事件)、以上のとおりに理解できる。 ⑵ そこで、各事件について、動かし難い事実を列挙しながら主張を検討する。 ア b4 事件の関係証拠によれば、犯行から1 週間ないし10 日ほど遡る時期に、けん銃発射に及ぶことを被告人に指示した人物が存在し、その指示の延長上で被告人は判示事務所の存在を伝えられ、発射に出向くのに用いる着替えを渡され、けん銃の手渡しを受け、事 し10 日ほど遡る時期に、けん銃発射に及ぶことを被告人に指示した人物が存在し、その指示の延長上で被告人は判示事務所の存在を伝えられ、発射に出向くのに用いる着替えを渡され、けん銃の手渡しを受け、事前に試し乗りをした人物の運転によるバイクに同乗し、現場に出向いて判示殺人未遂に及んでいる。これらは被告人の供述に現れる疑いようのない事実であるが、加えて、犯行時、現場付近の道路で停止して被告人が降りた後の当該バイクは、被告人同様のヘルメット姿の運転者が操って間近の路外共同住宅の駐車場出入口前に至り、車体前方を道路側に向け、エンジンをかけて前照灯を点ける状態で同運転者がまたがり、停車していたことが認められる。その背後の区域に判示事務所があるものの、道路から分け入る狭い通路を経なければ到達できず、 当該建物の姿も見通せない位置関係である。そして、バイクから降りた被告人が当該通路の方へ姿を消した後、しばらくして爆竹の破裂音のような音が3 回、辺りに響いたのに続き、被告人が小走りでバイクに戻ってきて座席後部に乗ると、運転者はすぐに発進させて道路を進み、前方の交差点の赤色信号に従わずに進行して立ち去っており、当該バイクは車両番号の表示が見て取れない外観のものであったことが認められる。 そうすると、番号からの特定を妨げる細工がなされたバイクの準備があったと推認できるのみならず、バイクの運転者は、降車した被告人が間を置かずに戻ることを予想しつつ、その場合には直ちに発車する用意をして待機していたと推認できる。 異常な音と並行して被告人が急ぎ戻ってきたのに問い掛ける様子もなく発進し、信号無視をして走り去ったあたりからは、被告人が姿を消した先で重大な出来事が生じることを予想の上、これに関与する被告人の速やかな退去の実現を意図していたとの推認が働く。併 い掛ける様子もなく発進し、信号無視をして走り去ったあたりからは、被告人が姿を消した先で重大な出来事が生じることを予想の上、これに関与する被告人の速やかな退去の実現を意図していたとの推認が働く。併せて、被告人も、バイクの運転者が退去の準備をして待機する事情を認識し、これを頼みにしていたとの推認が働く。被告人の供述に現れる指示の存在にとどまらず、少なくとも被告人、指示者及びバイクの運転者の間で、バイク関連の円滑な動きの実現に向かう意思疎通及び連携を遂げていたと推認できるのであって、意思疎通の範囲が限定的であったかのようにいう被告人の供述及び弁護人の主張(①)は整合的でない。 イ b3 事件の関係証拠によれば、当時、自家用車で連日の相撲観戦に出掛けていた被害者は、事件当日に限っては友人の運転する自動車に乗車して北九州市内の自宅を発ち、高速道路を経由して福岡市内の会場で相撲を観戦し、飲食店で夕食を済ませた後、再び高速道路を経由して帰宅し、同日午後9 時頃、前記コンクリート通路辺りで降車し、まもなく現れた乗員2 名のバイクの後部から降りた実行役により既述の銃撃を受けている。状況に照らしてみれば、被害者が相撲観戦から帰宅する時を狙って銃撃するという計画の下、その帰宅時刻や帰宅手段等の行動を事前に把握し、しかも、当日の急な事情の変動も漏らさず、把握した情報を実行役に伝え るとともに、実行役が被害者と動きを合わせて臨場できる仕組みがあったとの考察が働く。併せて、高速道路の通行の痕跡から、当日の同道路上の被害者乗車車両をX1 が運転車両で追尾していたと認められ、これは同考察と整合する事情である。そうすると、少なくとも、実行役、バイクの運転者及びX1 を含む行動確認役の間で、被害者の帰宅時を捉えるための意思疎通及び連携を遂げていたことがうか いたと認められ、これは同考察と整合する事情である。そうすると、少なくとも、実行役、バイクの運転者及びX1 を含む行動確認役の間で、被害者の帰宅時を捉えるための意思疎通及び連携を遂げていたことがうかがわれる。 この点に関連して被告人が、平成23 年11 月の相撲開催期間中に、自宅と相撲会場を往復する被害者の経路を調べるよう他者から指示を受け、事件当日までの複数回にわたり、配下組員の運転車両に乗って被害者乗車車両を追尾したことが、疑いようのない事実として被告人の供述等に現れており、この事実は事前の行動把握の一環であると認められる。そうであるなら、その他者の指示は、やがて事件当日のX1 の追尾を含む行動確認につなげるためのものと考えられるから、把握すべき事柄の理解が、その狙いの理解と共になければならず、この点の了解が指示者と被指示者の間にあったからこそ、漏れのない行動確認が遂げられたと推認できる。 以上に照らすと、指示に従っただけであるとし、犯意を伴う意思疎通はなかったかのようにいう被告人の供述及び弁護人の主張(②)は整合的でない。 ウ元警察官事件の関係証拠によれば、被害者の通勤時、自宅の最寄り駅に徒歩で向かう途中で判示殺人未遂が生じているところ、被告人の指示下で配下組員複数が事件に関与したものと認められる。すなわち、X11 及びX16 が被害者の自宅付近で通勤時の行動確認を繰り返し行う、X8 がX11 らに被害者の容貌を教える、事件当日の朝、X10 及びX9 がX15 を自動車で迎えに行き、X11 が用意したバイクの保管場所まで運ぶ、被害者の自宅付近で待機するX11 が、駅に向かって歩く被害者を確認し、被告人指定の電話番号に架電する、この着信を受けたX15 が現場に赴き、銃撃後、X10 及びX9 との合流場所であるホテル付近までバイク 自宅付近で待機するX11 が、駅に向かって歩く被害者を確認し、被告人指定の電話番号に架電する、この着信を受けたX15 が現場に赴き、銃撃後、X10 及びX9 との合流場所であるホテル付近までバイクで逃走する、合流後にX10 がX15 を自動車に乗せて自宅に送り届け、X9 がバイクを投棄する、以上が被告人の指示に基づいてほぼ滞りなく行われており、これらは被告人の供述等に現れる疑いようのない事実である。 このように組員が連携し、被告人によって分割された役割を分担しているところ、日常と異なるそれら役割が遂げられていく過程そのものに相互の了解が見て取れる。 すなわち、指定暴力団の組員が、若頭の指示に基づき手間暇をかけて被害者の行動を把握しようとすることは、それ自体、重大な加害の計画の存在をうかがわせるのであって、行動確認を行った当のX11 らにとってそのような計画の存在が認識の範囲外であったとは想定し難い。また、X10 及びX9 も、合流場所に現れるX15 をかくまうように運び、その使用バイクの投棄を手掛けているのであって、包み隠すべき重大な犯罪に関する役割分担であることを察知していたと推認できる。 以上に照らすと、X15 を除く組員には事件内容を伝えていないなどと指摘し、関与者相互の意思疎通がなかったかのようにいう被告人の供述及び弁護人の主張(①)は整合的でない。 エ放火事件の関係証拠によれば、いずれも北九州市h 区内の、複数の飲食店店舗の在所を含む判示各ビルは、同じ時刻頃に放火に遭ったと認められる。焼損状況等から、各放火の態様は、各ビル3 階に停止していたエレベーター内に灯油をまいた上で火を放ったものと推認でき、また、各放火の際、各ビル3 階の飲食店店舗壁面に赤色スプレーで落書きが残されていたと認められる。このような放火の 各ビル3 階に停止していたエレベーター内に灯油をまいた上で火を放ったものと推認でき、また、各放火の際、各ビル3 階の飲食店店舗壁面に赤色スプレーで落書きが残されていたと認められる。このような放火の態様等の共通性に鑑みると、2 件の放火は共通の準備及び計画に基づいて遂行されたものと推認できる。併せて、事件直前の午前4 時25 分頃、判示a3 ビル南側及び東側の各路地を順に走行して同ビル前で停車した乗員2 名のバイクから、1 名が降車して同ビル方向に走り、次いで他の1 名が降車し、その一分数十秒後、同バイクが同ビル東側路地を北上後、交差点を左折して西方に向かった状況が認められ、この2名が同ビルの放火に直接関わったと推認できる一方、同バイクが向かう先に位置していない判示a4 ビルに対する放火は、2 名とは別の者が示し合わせるように実行したと考えられる。そうすると、各ビルの放火の実行は、燃料等の用具の準備はもとより、速やかな臨場及び退去を可能にするバイクなどの準備を、組み合わせ複数を揃えて遂げていたものであり、かつ、二か所に示し合わせて出向くことのできる物 品と人員の統制が事前に行われていたと推認できる。 この点に関連して事件発生の数時間前頃、北九州市h 区内の高架下において、X17が熊本市内から運んできた黒色バイクを、X9 ほか2 名を伴っている被告人が受け取って入手し、X9 が用意したナンバープレートを同バイクに装着したことや、そのように入手した同バイクが最終的に海中に投棄されたことが、疑いようのない事実として被告人の供述を含む関係証拠に現れている。これらは、バイクの入手が不穏な態様で行われ、その処分もまた不穏に行われたことを示している。入手後に重大な犯罪に用いられたとの見立てを導くそれら出来事が、事件発生と近接する日時、場 拠に現れている。これらは、バイクの入手が不穏な態様で行われ、その処分もまた不穏に行われたことを示している。入手後に重大な犯罪に用いられたとの見立てを導くそれら出来事が、事件発生と近接する日時、場所で生じているから、見過ごせない。別の用途の存在も見当たらない以上、同じ夜間に発生した放火事件が用途であるとの考察が働き、被告人によるバイクの入手もその犯行に向けられた意図的な関与であるとの考察が働く。 以上に照らすと、放火事件に関与しておらず、犯意を伴う意思疎通もないかのようにいう被告人の供述及び弁護人の主張(②)は整合的でない。 オ b2 事件の関係証拠によれば、Bは、事件当日午前0 時42 分頃、勤務先のラウンジ「b2」を退勤し、付近のコンビニエンスストアに立ち寄り、同店前路上でC運転のタクシーに乗って移動し、自宅マンション駐車場に帰着した同車後部座席から降りたところ、後方から駆け寄ってきた実行役から判示殺人未遂の被害を受けている。金品奪取を伴わない加害の状況等に照らすと、あらかじめBを対象に据え、帰宅時を狙って刃物で切り付ける計画の下、Bの帰宅時刻や帰宅手段等を把握して加害が実行されたと推認できるが、実行役がタクシーを継続的に追尾していた痕跡は現れない。しかし、深夜のタクシーの外観上、Bの乗車の事情を判別するのは困難であるのにそれが遂げられて実行役が居合わせているから、退勤時のBの行動を確認してその情報を実行役に伝えるとともに、実行役が動きを合わせて臨場できる仕組みがあったとの考察が働く。 この点に関連して、被告人は、平成24 年8 月下旬頃、X17 から四輪自動車を入手し、乙組に属する丁組の事務所の駐車場に同車を保管させたのに続き、X9 に指示し て同車をa8 団地駐車場に移動させている。Bの自宅マンションから約51 下旬頃、X17 から四輪自動車を入手し、乙組に属する丁組の事務所の駐車場に同車を保管させたのに続き、X9 に指示し て同車をa8 団地駐車場に移動させている。Bの自宅マンションから約510m先の同駐車場に移動していた同車は、その後、被告人の指示下でX9 及びX11 により投棄されている。これらと合致する説明を、通話履歴等の支えを伴って述べるX9 の供述によれば、同駐車場に移動させたのはb2 事件発生当夜であって、以上が疑いようのない事実として被告人の供述を含む関係証拠に現れている。不穏な処分がなされた同車の、入手及び移動にも不可解さがあるところ、特に、事件発生と近接する日時、場所でその移動が生じているから、見過ごせない。別の用途も見当たらない以上、b2 事件がその用途であるとの考察が働き、車両の移動等に係る被告人の指示も、犯行に向けられた意図的な関与であるとの考察が働く。 以上に照らすと、b2 事件に関与しておらず、犯意を伴う意思疎通もないかのようにいう被告人の供述及び弁護人の主張(②)は整合的でない。 カ看護師事件の関係証拠によれば、被害者は、勤務先の判示クリニックから退勤し、新幹線でe1 駅からe2 駅に移動し、バスに乗り換えて自宅最寄りのバス停で降車し、自宅マンションに向かって歩いていたところ、後方から駆け寄ってきた者から判示殺人未遂の被害を受けている。この加害の状況等に照らすと、被害者の勤務先からの帰宅時を狙って刃物で切り付ける計画の下、その帰宅時刻や帰宅手段等を把握して加害が実行されたものと推認できるが、複数の公共交通機関の利用に残る痕跡をみても、前同様に実行役の継続的な追尾は現れない。しかし、X21 が、平成25 年1 月15 日、24 日、25 日及び27 日の4 回にわたり、被害者が同クリニックを退勤する 関の利用に残る痕跡をみても、前同様に実行役の継続的な追尾は現れない。しかし、X21 が、平成25 年1 月15 日、24 日、25 日及び27 日の4 回にわたり、被害者が同クリニックを退勤する頃、ときに携帯電話で通話をしながら、e1 駅構内等を通過する被害者又は同僚の後方で距離を取りつつ同じ方向へ進むなどの、行動確認を行っていたとみられる事実が現れているから、これらで得られた情報が実行役に伝えられ、実行役が被害者と動きを合わせて現場に臨場できる仕組みがあったとの考察が働く。 この点に関連して、被告人は、事件に先立つ頃、女性を襲う計画が存在し、X8 がその指示役であることを把握しており、のみならず、被告人は、同月22 日、X8 に対し、襲う対象者の顔を実行役に事前に直接見せるよう助言していて、以上が被告 人の供述に現れている。この助言は、対象者の面識のない者が、面識を得ておくことが難しい状況下で実行役を担当し、加害の場面を迎える構造の計画であることを把握した上でなされたものと推認できる。そのような構造下で加害対象の識別が求められることをX8 に認識させ、又は再認識させるものであって、同人の上位の若頭の立場から軽んじることのできない的確かつ具体的な助言をし、X8 以下の任務分担に働き掛けるものであったと考えられる。既にX8 において顔見せを検討していた事情や、結局、その顔見せが実現しなかった事情等を踏まえても、被告人の助言につき、心理的な寄与もなかったとする弁護人の主張(②)及び被告人の供述は整合的でない。 ⑶ したがって、各事件ともに、犯行の実現をもたらし、又は容易ならしめようとする関与者の、少なからぬ範囲にわたる意思疎通及び連携があり、被告人による関与とそれに伴う意思疎通や寄与もあったとうかがわれるのであるが、これら 件ともに、犯行の実現をもたらし、又は容易ならしめようとする関与者の、少なからぬ範囲にわたる意思疎通及び連携があり、被告人による関与とそれに伴う意思疎通や寄与もあったとうかがわれるのであるが、これらとまさに整合的な多数名の関与を述べ、その者らが判示組員の集合体であった旨を述べる関与者の供述が、事件ごとに得られている。 ア b4 事件にX2 及びX4 の供述が存在し、実行役の被告人に絡む連携として、X2 がバイクで加害前後の送迎を担い、X3 が実行役の着衣等を用意し、X1 の指示下でX4 及びX5 がバイクの用意や犯行関連物品の事後の処分等を行ったことなどが述べられている。 イ b3 事件にX9、X4、X16 及びY1 の供述が存在し、実行役のX8 に絡む連携として、被告人が自ら又はX9 に指示して被害者の行動等の確認を行い、X7 が同様の確認を配下組員に指示し、X6 がバイクで加害前後の送迎を担い、X1 の指示下でX4及びX5 がバイクの用意、実行役の逃走支援、犯行関連物品の事後の処分等を行ったことなどが述べられている。被告人の関与を詳しくみると、平成23 年11 月16 日頃から複数回にわたり、配下組員を伴って被害者の行動等の確認を行い、事件当日の夕方頃にはX9 に携帯電話機を手渡し、特定の車両の車種やナンバーを伝えてe3料金所の出口付近で待機させ、被害者方への経路に通じるその出口に車両が現れた ら同電話機で連絡するよう指示したことなどが述べられている。 ウ元警察官事件にX8、X7、X10、X9、X16 及びX11 の供述が存在し、実行役のX15 に絡む連携として、被告人の指示下でX8、X11 及びX16 が被害者の行動等の確認を行い、X10 及びX11 が加害時の接近に用いるバイクを用意し、加害前後の送迎等 供述が存在し、実行役のX15 に絡む連携として、被告人の指示下でX8、X11 及びX16 が被害者の行動等の確認を行い、X10 及びX11 が加害時の接近に用いるバイクを用意し、加害前後の送迎等をX10 及びX9 が担い、X7 が実行役の着衣等を処分したことなどが述べられている。 エ放火事件にX8、X7、X21、X9、X19、X20 及びX17 の供述が存在し、実行役のX18 又はX20、X21 及びX10 に絡む連携として、被告人がX17 運搬の既述のバイクを調達するなどし、X8 の指示下でX19 が灯油、発炎筒、実行役の着衣等を準備し、被告人の指示下でX9 が赤色スプレーを購入して準備し、X7 が事後に実行役の着衣等を処分したことなどが述べられている。 オ b2 事件にX7、X9、X17、Y2 及びY3 の供述が存在し、実行役のX18 に絡む連携として、X8 及びX6 がBの行動等の確認を行い、被告人が加害前後の移動用の自動車を調達し、同車の保管や移動をX7 及びX9 が担い、X21 が自動車手配時のX9との電話連絡を担い、X7 及びX9 が加害後に車両や凶器等を処分したことなどが述べられている。被告人の関与を詳しくみると、X17 に依頼して実行役の移動用の自動車を調達し、X7 に指示して同車を丁組の事務所倉庫に保管させ、X9 に指示して別途用意のナンバープレートを装着させ、a8 団地駐車場までの移動の指示をするほか、X7 に指示して特定の場所で待機させ、同所で受け取る着衣や刃物等の処分をさせたことなどが述べられている。 カ看護師事件にX8、X7、X21、X15、X22 及びX4 の供述が存在し、実行役のX22 に絡む連携として、X18 及びX21 が被害者の行動等の確認を行い、X8 がX22 に凶器を渡し、X1 の配下のX 件にX8、X7、X21、X15、X22 及びX4 の供述が存在し、実行役のX22 に絡む連携として、X18 及びX21 が被害者の行動等の確認を行い、X8 がX22 に凶器を渡し、X1 の配下のX4 が加害時の接近に用いるバイクを用意し、これと連動して移動に用いる自動車の手配をX7 が担い、更に加害後の刃物等の処分を担い、X15 が加害前後の送迎をしたことなどが述べられている。被告人の関与を詳しくみると、既述の助言をするほか、事件に先立つ平成25 年1 月中旬頃、あらかじめ、X7 に対し、自動車の手配及び物品の処分の関連で、特定の場所で落ち合う相手から使用車両を引き取って別の場所へ移動させ、着衣等の荷物を受け取って捨てることなどを指示し、その関係場所を案内していたことが述べられている。 キ以上のいずれの供述も、動かし難いものとして現れている関与者間の意思疎通及び連携の痕跡と整合的であり、又は痕跡から導き出される考察と整合的であって、自然かつ合理的な内容の供述といえる。 クまた、これらの供述は、各犯行に用いられ、又は備えられた凶器や車両等の物品に関し、犯行後の処分先へ捜査機関を案内し、実際に物品の発見につながる内容を述べた者らの供述を中核としており、すなわち、捜査機関が知り得なかった事情を自発的に述べ、根幹の信用性が確かめられたものを含んでいる。 具体的にみると、平成23 年2 月9 日発生のb4 事件及び同年11 月26 日発生のb3事件に関し、X4 は、あらかじめ、両事件で用いたバイクの海中投棄の事実を捜査機関に申告し、続いてX4 がb4 事件で用いたバイクの投棄場所として平成29 年に案内した海中からバイク1 台が引き揚げられ、これを確認したX4 はb4 事件ではなくb3 事件で用いたものと同定し、記憶違い し、続いてX4 がb4 事件で用いたバイクの投棄場所として平成29 年に案内した海中からバイク1 台が引き揚げられ、これを確認したX4 はb4 事件ではなくb3 事件で用いたものと同定し、記憶違いがあったと述べているところ、同バイクは平成23 年11 月上旬から12 月下旬までに盗難に遭っていたことが判明している。 この経過は、実質的にみてb3 事件に係る秘密の暴露であるし、併せて、X4 は、b4事件の数日前、盗んで入手したバイクであるが使用後はすぐに処分する旨、知人に漏らしていた事実が認められるから、同事件で用いたバイクを同様に投棄したとするその供述に疑問はない。 以下、同様に、元警察官事件はX15 が案内した川の中から自動装てん式けん銃1丁の発見が、放火事件はX10 が案内した海中から盗難バイクの発見が、b2 事件はX9が案内した海中から盗難自動車の発見が、看護師事件はX15 及びX22 が案内した海中から盗難バイクの発見が、それぞれもたらされているから、X4 以降の供述者らは客観的な事実経過を率直に述べる姿勢を示したといえる。そして、これらけん銃やバイク等の物品の盗難や隠蔽等の事情は、それに見合う計画的で重大な用途をうか がわせるから、これと整合的な暴力団特有の加害行為の事情を、すなわち、狙いを定めた他者に連携して危害を加える暴力団特有の犯罪行為が、組織の規模等に合致して行われた事情をいう各供述は、核心部分で整合的な内容である。供述にいう関与者相互間の連絡の痕跡が、携帯電話の通話履歴等に現れ、裏付けが得られているから、高度の信用性が認められる。 ケ以上のX4 ほかの供述は、広く行き渡る意思疎通や連携等の存在を推認させるところの、動かし難い事実に沿うものであり、かつ、客観的事実関係を進んで暴露するなどの根幹が確かなもの 性が認められる。 ケ以上のX4 ほかの供述は、広く行き渡る意思疎通や連携等の存在を推認させるところの、動かし難い事実に沿うものであり、かつ、客観的事実関係を進んで暴露するなどの根幹が確かなものを含み、相互につながりのある内容であって、裏付けも備えているから、整合的な範囲に関し、各供述の信用性を肯定できる。 コ信用性に関し、弁護人は、㋐末端関与者の立場から推測等を交えた事実関係を述べた疑いがある、㋑捜査機関が手元の証拠を提示するなどして推測含みの供述を引き出した疑いがある、㋒関与する案件の目的や全体像を知らなかったと併せ述べている以上、この部分を含めて信用性を肯定するのならともかく、つまみ食いのようにして同部分のみ信用性を否定し、その余を有罪認定に用いるのは許されない、などと指摘する。 しかし、㋐及び㋑についてみると、各自が推測等を交えて供述を作出したとみるには整合しない程度に、各供述は独自の具体的な内容を盛り込みつつ他の供述と噛み合う有機的な構造である。そのような構造の供述を捜査機関が誘導等により引き出した疑いを吟味しても、供述ごとに独自の内容が現れて膨大な裏付け捜査が求められる筋合いのものとなっており、捜査機関にしてみれば迂遠で煩雑といえるこれら供述を、あえて誘導等により作出させるとは考え難い。また、いずれの事件も組長等の最上位者の共謀関与が嫌疑として浮上する事案であったと認められるのに、結局、組長等の関与を明示的に述べる内容はもとより、その関与を示す痕跡の存在を述べるものすら存在しないから、誘導等の疑いは当たらない。 ㋒についてみると、X4 ほかの供述者の関与案件に対する認識の供述は、弁護人指摘のとおり全体像を知らなかったとする供述が並ぶ一方で、何かしら不穏な 案件であろうと察知していた旨述べる供 ㋒についてみると、X4 ほかの供述者の関与案件に対する認識の供述は、弁護人指摘のとおり全体像を知らなかったとする供述が並ぶ一方で、何かしら不穏な 案件であろうと察知していた旨述べる供述や、察知しつつも問い返せなかった旨述べる供述を含んでいる。そこで吟味すると、b3 事件や元警察官事件の検討で既に示したとおり、平素の活動と似つかわしくない役割分担が、特に不審がられずに円滑に遂げられていく過程そのものに相互の了解が見て取れるのであって、このことはその余の事件の考察にも当たる。加えて、X4 ほかの供述者は、広範囲の加害行為反復のおそれがあると看做された指定暴力団の構成員であるところ、そのような組織に所属し団結している者らが、各事件に現れた特異な役割分担の過程において、それらが何を狙いとするものか思案しないはずはない。むしろ、上位者の断片的な指示から狙いを察知し、口外することも控えるべきであろうと推測し、縦の指示関係及び横の協力関係に相互の了解を交えて進み、加害行為の計画の成就に至ったと推認できる。そのような了解がないまま役割に取り組むのでは、必要な情報が十分に集まらないとか、途中で周囲に事情を漏らして支障を来すなどのあい路を生じ得るが、該当の事情はうかがわれず、推認は妨げられない。この推認と整合的な察知の事情を述べる者は、内心についても率直な供述をしていると評価できるのに対し、そうでない者は、内心の叙述に限り率直な供述を避けようとし、できる限りの罪責軽減を図っているとみられるのであって、このような供述態度の差異が現れるのは不合理ではない。その差異があるからといって、X4 ほか供述者の、客観的事実関係の叙述の信用性が揺るがせられるとはいえない。また、消極的な姿勢に基づく内心の叙述を排斥することが、恣意的な信用性評価に当たるもので い。その差異があるからといって、X4 ほか供述者の、客観的事実関係の叙述の信用性が揺るがせられるとはいえない。また、消極的な姿勢に基づく内心の叙述を排斥することが、恣意的な信用性評価に当たるものでもない。 要するに、X4 ほかの供述にいうところの、指定暴力団の要職が情報伝達を抑えながら時間と労力をつぎ込み、隠蔽等を交えながら非日常的な役割分担又は任務分担をする客観的事実関係からすると、組織関連の秘密裏かつ重大な加害行為の計画があるとの考察が働くのであって、被告人を含む関与者各自はこれと合致する認識を持ち得ていたと考えられる。そのような加害の計画に関与する旨の認識を少なくとも未必的に有していたと認められ、実行役の殺意に基づく加害行為もまた、認識の範囲内であったと認められる。過去に所属組織が関与した銃撃による他害行 為について、その存在を把握している組員が含まれていたことを併せみると、同様の態様の加害行為も認識の範囲内であったと認められる。明示的に交わされていたとまではいえないものの、実行役による銃撃、刃物を用いた襲撃、放火行為につき、これを容認する意思疎通が順次行き渡っていたと推認できるのであって、そのような意思疎通に基づく連携が相互利用補充関係を構築し、共謀又は任務分担を成立させていたと推認できる。 ⑷ 個別に精査すると、元警察官事件に関し、被告人は、足に向けて2 発発射するか、それが無理なら地面に向けて2 発発射し、絶対に殺さないようX15 に指示したと述べ、現に生じた着弾の結果は想定外であった旨述べている。X15 の供述も同様であるので検討したが、被告人はX15 の事前の試射に立ち会いつつ、これと異なる不安定な態様で現場の発射が行われることを見通していたと認められる。そうであるなら、反動が働くけん銃発射を足に向けて行 様であるので検討したが、被告人はX15 の事前の試射に立ち会いつつ、これと異なる不安定な態様で現場の発射が行われることを見通していたと認められる。そうであるなら、反動が働くけん銃発射を足に向けて行うよう仕向ける被告人の指示は、身体の枢要部に弾丸が命中することも厭わないものと考えられるし、のみならず、連続する2 発の発射を指示しているのであるから、弾道を抑えることが難しいそれら発射を容認する点において、やはり同様の命中を視野に入れて是認していたと認められる。判示殺意が被告人にも備わっていたと認めるのに疑問はない。 また、その指示の事実のほか、X10 及びX9 による送迎担当等の事実から明瞭に認められる元警察官事件の共謀及び任務分担の存在は、被告人が実行役を担当し、バイクの運転者ら周囲との連携が優に認められるb4 事件の共謀の存在と合わせて、これらを認定することに疑問はない。 関連して、元警察官事件の実行役の着衣等の処分をX7 が担当した経緯につき、事前にその担当を依頼していた旨をいう被告人の捜査段階供述と、その事前依頼を否定するX7 の証言及び被告人の公判供述との間に対立があるが、当該物品を事件後に丁組の事務所に運んだと述べるX10 は、その運搬は被告人からの事前の指示によるものと述べる。そうすると、運搬後の処分の依頼についても事前に届いていたとみるのが自然であって、被告人の捜査段階供述に依拠できる。この点を網羅して認 定できる元警察官事件及びb4 事件の各共謀や任務分担につき、相反する被告人の供述及び弁護人の主張(①)はいずれも採用できない。 ⑸ b3 事件、放火事件、b2 事件及び看護師事件に関し、被告人の関与や寄与はなかったとか、末端の関与者であったなどとして共謀不存在をいう弁護人の主張に鑑み、なお個別に精査した。 できない。 ⑸ b3 事件、放火事件、b2 事件及び看護師事件に関し、被告人の関与や寄与はなかったとか、末端の関与者であったなどとして共謀不存在をいう弁護人の主張に鑑み、なお個別に精査した。 ア b3 事件に関し、X4 ほかの供述によれば、被告人は、事件当日のX1 の追尾を含む被害者の行動等の確認につながることとなる同様の確認を、前もって繰り返していた上、料金所出口付近にX9 を配置して被害者乗車車両の動きを捉えようとするなどの、事件当日の関与も果たしているから、その共謀を認めるのに疑問はない。X9 の供述について、弁護人は、捉える車両の車種等の記憶が不鮮明と述べている点に合理性がないなどと指摘し、車両を見張っていた事実も被告人からの配置の指示の事実も存在しないのに捜査機関の誘導等によって供述が作出されている旨指摘する。しかし、X1 の追尾とは異なり、明瞭な痕跡のない見張りの事実を捜査機関が誘導するのは難しく、その供述はX9 の自発的な申告に基づくとみられるし、そのようにして現れた供述と部分的に合致するものを含む内容がY1 の供述に現れ、見張りの結果の電話連絡をいう点が通話履歴に現れる等々の支えが認められる。記憶不鮮明と述べる点は、当日に初めて被告人から指示を受けて従事したと述べる内容を併せみれば、また、X9 は他事件でも多数回の車両関連の関与をし、混同等を来しても不可解でない立場であることを併せみれば、弁護人指摘の信用性評価及び供述作出の疑いは当たらない。 イ放火事件及びb2 事件に関し、被告人は、X17、X10 又はX9 等の供述に現れるとおりの、車両等の用意を含む事前の準備のみならず、事後の犯行関連物品の処分等を指示して手配しておくなどの全体にまたがる統制を果たしているから、その共謀等を認めるのに疑問はない。b2 事件の任 れるとおりの、車両等の用意を含む事前の準備のみならず、事後の犯行関連物品の処分等を指示して手配しておくなどの全体にまたがる統制を果たしているから、その共謀等を認めるのに疑問はない。b2 事件の任務分担中のX7 の関与について、これを自認するX7 の供述に信用性はない旨弁護人は指摘するが、車両及び犯行関連物品の事前事後の取扱いを内容とするその任務分担は、信用性が高いX9 の供述にも 整合的な内容が現れて支えられているから、指摘は当を得ない。 ウ看護師事件に関し、X8 に対する助言をもって十分な寄与と認められる点は既述のとおりであるし、更にX7 の供述によれば、移動に用いる自動車の手配や事後の物品の処分をX7 に事前に指示したのは、被告人であったと認められる。弁護人指摘のとおり、被告人は、X8 に対する助言後の平成25 年1 月23 日に別件公務執行妨害の被疑事実で逮捕され、同年2 月1 日まで勾留され、その間の同年1 月28 日に事件が発生しているのであるが、X7 の供述はこの事実経過とも整合的である。すなわち、X7 は、計画遂行を何度か試みたうちの序盤は、実行役の移動の関係場所へ自らも出向く深い関与を予定していたが、やがてその関与を取りやめており、この取りやめを現場指揮役のX8 に申し出ているという動かし難い事実がある。上位の被告人から指示された関与の一部の取りやめを、折しもその被告人の不在中に、自分よりも下位のX8 に申し出て応じてもらった旨の自然な内容を、X7 は述べている。 別途、上位者の被告人からX8 に対し助言がなされていた序列相応の流れに即して、X7 に対する当初の指示者もまた被告人であった旨の整合的な内容を、X7 は述べている。このようないきさつの中で、被告人の助言を受けていたX8 において、面識のない実行役 た序列相応の流れに即して、X7 に対する当初の指示者もまた被告人であった旨の整合的な内容を、X7 は述べている。このようないきさつの中で、被告人の助言を受けていたX8 において、面識のない実行役が被害者と動きを合わせて臨場し、加害行為に及ぶことを可能ならしめる任務分担がなお整えられ、X7 による物品の処分を含む各任務が遂げられたと認められる。結局、逮捕勾留前の被告人のX8 に対する助言が、加害行為の企ての内容を踏まえない浅薄なものであったとか、さしたる寄与のないものであったとか、途中でその寄与が排除されたなどとみるべき事情はないから、共謀等を認めるのに疑問はない(看護師事件の公訴事実に共謀関与者として掲げられたX6 及び乙組の組長秘書のX3 については、任務分担及び共謀関与として評価するのに足りる事実の立証が欠けているが、被告人は同列ではない。)。 以上と相反する被告人の供述及び弁護人の主張(②)はいずれも採用できない。 付言するに、有罪認定に用いた通信傍受関連の証拠の収集過程に違法があるとする弁護人の主張が当たらないことは、看護師事件第12 回公判期日における証拠採 用決定の理由として明示したとおりである。 ⑹ よって、X12、X13 及びX14 以外の、被告人を含む判示組員らが既述の役割分担又は任務分担をしたことの認定及びそれらに基づく共謀の認定を導くことができる。 ⑺ 続いて、X12 ほか最上位者の関与が問われる元警察官事件以降のけん銃関連の罪、殺人未遂関連の罪、放火事件及びb1 事件の罪について、同人らを含む共謀及び組織的犯罪該当性の検討結果を述べる。 ア標章3 事件について、関係証拠によれば、次のとおりX14 の関与に係る検察官立証を是認できる。 h 区を拠点にする乙組は、組員が飲食店からみかじめ料を 的犯罪該当性の検討結果を述べる。 ア標章3 事件について、関係証拠によれば、次のとおりX14 の関与に係る検察官立証を是認できる。 h 区を拠点にする乙組は、組員が飲食店からみかじめ料を徴収して組織にも納めていたところ、条例に基づく標章制度が始まり、標章を掲示する飲食店が多数現れたのに対応して、標章の有無の統一的な把握等に努めていたと認められる。 その折、若頭の被告人以下の組員は共謀して各犯行に及んだと認定できるところ、被害に遭った者は暴力団追放運動を推進し又は賛同する姿勢の飲食店関係者等であるから、各犯行は、組織の膝元で高まっていた同運動に与し、乙組に敵対し又は支障を及ぼす姿勢の者らに害を加えて威迫し萎縮させ、この事情を界隈に知らしめることにより、みかじめ料の収受等からなる乙組の不正権益の維持・拡大を狙うものと認められる。かかる明快な観点によれば、関与した組員らの側も狙いを認識していたと考えられるし、警察に狙いを見透かされることも認識していたと考えられる。 乙組が程度の強い捜査の対象になることを招き、組長のX14 にも捜査が及ぶ可能性を導くと自覚できる対象であったと考えられるが、様々に思慮を巡らせて連携等を遂げる組員らが、多大な影響が及ぶ組織の最上位者の立場を無視し、意向を諮ることなく独自の凶行を繰り返す短慮に出ていたとは想定し難い。X14 の関与に係る推認が働いている。 また、現場の痕跡や加害の順序等に照らすと、放火事件では判示ラウンジ「b2」を主な標的とし、b2 事件では経営者のBを加害対象として、各犯行の計画が 遂行されたと認められるが、Bは、前身の店の頃から来店頻度が高いX14 との間で、贈り物のやり取りなどの付き合いを重ねていた。要するに、X14 との間に好意的な関係があったと認められるから、X14 を 行されたと認められるが、Bは、前身の店の頃から来店頻度が高いX14 との間で、贈り物のやり取りなどの付き合いを重ねていた。要するに、X14 との間に好意的な関係があったと認められるから、X14 を頂点とする組員らにしてみれば、加害の標的に据えることをためらうはずの対象であるが、それにもかかわらず放火事件以降の連続する3 事件の加害に及んだのは、X14 の意思決定及び指揮命令が存在したためであると考えられる。推認は一層明瞭である。 そして、標章を貼付するほか、かつて付き合いのあったX14 と対峙し、その意向に逆らうものとわきまえつつ、それでも店への立入りを控えてもらえるよう面前で告知した事実が、信用性の高いBの供述に現れている。この事実を併せみれば、b2 事件の犯行は、X14 の地位を知りながら軽んじる言動をしたBに加害で報いるのを通じ、X14 の指揮命令に基づく乙組組員による加害であることをB及び地域の同業者に暗に伝え、乙組及びその頂点に立つX14 の威勢や統制が強いことを顕示してそれらの保持を図るとともに、みかじめ料関連の乙組の不正権益の維持・拡大を図り、併せて、加害に関与する組員らにも同様に顕示し、上位者の地位を軽んじることは許されないとの認識を抱かせ、もって組織内でもX14 の威勢や統制の保持を図る犯行であったとの認定を導き出せる。 以上のとおりにX14 の関与に係る検察官立証を是認できる。 イ元警察官事件及び看護師事件について元警察官事件及び看護師事件について、関係証拠によれば、次のとおりX12 等の関与に係る検察官立証を是認できる。 元警察官事件の被害者は、事件当時は退職していたが、警察官としての在職中、甲會関連の捜査に長く携わるうちにX12 と直接のやり取りができる関係を構築し、X13 から見ても腹を割って話せ できる。 元警察官事件の被害者は、事件当時は退職していたが、警察官としての在職中、甲會関連の捜査に長く携わるうちにX12 と直接のやり取りができる関係を構築し、X13 から見ても腹を割って話せる相手に位置付けられていた。また、看護師事件の被害者は、美容形成皮膚科等の設置を主とする判示クリニックの看護師であって、その担当下でX12 はレーザー脱毛の施術を、追加して医師による亀頭増大術の施術を希望して受けており、診療が続く1 年ほどの間、被害者がほぼ専属的な担 当であった。要するに、被害者らはX12 又はX13 と好意的な関係を有し、あるいは個人的な接触があったから、X12 らを頂点とする組員らにしてみれば、加害の標的に据えること自体が想定されないか、据えようとしてもためらうはずの対象であって、それにもかかわらず加害に及んだのは、X12 の意思決定及び指揮命令が存在したためであると考えられ、その旨の推認が働く。 また、元警察官事件では被害者の徒歩による出勤時を狙い撃つように加害が行われ、看護師事件でも退勤時を狙い撃つように女性に対する加害が行われているところ、既述の関係性を有する者らである以上、X12 及びX13 が関与した嫌疑を浮上させて警察の徹底した捜査を招く可能性があることは、加害に関与した組員の側でも見通していたと推認できる。様々に思慮を巡らせて連携等を遂げている組員らが、多大な影響が及ぶ組織の最上位者の立場を無視し、意向を諮ることなく独自の凶行を繰り返す短慮に出ていたとは想定し難い。推認は一層明瞭である。 加えて、元警察官事件に関し、組織を脱退した組員と接触した際の被害者の言動が録音されていたところ、その中にX12 を軽んじるものがあるとの受け止め方を同人がしていた等の事実が、信用性の高い被害者の供 加えて、元警察官事件に関し、組織を脱退した組員と接触した際の被害者の言動が録音されていたところ、その中にX12 を軽んじるものがあるとの受け止め方を同人がしていた等の事実が、信用性の高い被害者の供述に現れる。また、看護師事件に関し、判示の各施術に係る不満を訴え、男性器の増大を願ったのにかえって不具合を来した事態等に強い抗議を表すやり取りがあった事実が、信用性の高い被害者の供述に現れる。 これらの事実を併せみれば、各犯行は、X12 及びX13 の地位を知りながら軽んじる言動をした相手方に対し、あえて組織による加害で報いるのを通じ、X12 の指揮命令に基づく甲會組員による加害であることを相手方及び周囲の関係者に暗に伝え、甲會及びその頂点に立つX12 及びX13 の威勢や統制が強いことを顕示してそれらの保持を図るとともに、各加害に関与する組員らにも同様に顕示し、上位者の地位を軽んじることは許されないとの認識を抱かせ、もって組織内でもX12 及びX13 の威勢や統制の保持を図る犯行であったとの認定が導き出せる。 そのようにしてX12 及びX13 の関与があったと認められるところ、計画性 を備え、加害の対象を特定して行う各犯行の実現のためには、指示者と加害担当者の間で被害者に関する情報等の相応のやり取りが欠かせないが、組員らとの接点が限られるX12 やX13 が各犯行に資するやり取りを直接的に行うのは不可能であったと考えられる。これを成立させ得るのは、X12 と個別のやり取りができるX13 と、甲會理事長及び乙組組長を兼務し、X13 との間で同様のやり取りができるX14 を順に経由し、X14 から組員らに加害の指示を具体的に伝達する経路であったと考えられ、ほかに見合うものは考え難い。X14 がX12 及びX13 から指示の伝達を受け で同様のやり取りができるX14 を順に経由し、X14 から組員らに加害の指示を具体的に伝達する経路であったと考えられ、ほかに見合うものは考え難い。X14 がX12 及びX13 から指示の伝達を受け、具体化して組員らに行き渡らせた事実を推認できる。 以上のとおりにX12、X13 及びX14 の関与に係る検察官立証を是認できる。 ウそして、各事件につき、被告人を含む乙組組員又は甲會組員は、過去に銃撃による加害行為を生じたこともある指定暴力団の要職を含む組員が尽力し、秘密裏に連携して任務分担に及ぶなどの事実に各自が直面することにより、所属組織の権益の維持・拡大目的を含めた組織のための、組織に効果を帰属させるための銃殺等の重大な加害行為の計画があり、最上位者の指揮命令に基づくそれら計画に関与しているとの認識を、少なくとも未必的に持ち得ていたと認められる。よって判示のとおりの共謀及び組織的犯罪該当性を認定した。 4 窃盗被告事件の共謀等について元警察官事件及び放火事件の各関連の窃盗被告事件について、被告人の故意や共謀が争われているので検討したが、以下のとおり認定に至る。 ⑴ 元警察官事件関連の判示第3 の1 の窃盗について、X11 の裁判官調書等によれば、同事件発生前日の午後、被告人がX11 に対し、捨てても構わないような動くバイクを、できれば当日中に用意するよう指示し、バイクを探しに行くX11 に同行するようX10 に指示し、それ以上の詳しい指示やバイクの購入資金の受渡しもないまま、両名が判示バイクの窃盗を実行した事実が認められる。若頭の被告人が、品質も権利関係も問わないバイクを急ぎ求めること自体、似つかわしくなく、組員に入手依頼をする点も同様であるから、正規の購入等によらない秘密裏の入手の指示 であるとの理解が浮かぶ。 告人が、品質も権利関係も問わないバイクを急ぎ求めること自体、似つかわしくなく、組員に入手依頼をする点も同様であるから、正規の購入等によらない秘密裏の入手の指示 であるとの理解が浮かぶ。X11 及びX10 も同旨の理解をしたと推認できるし、そのような特異な指示をする被告人自身も、X11 らが察知して同旨の理解に至る想定をしていたと推認できる。被告人は、放置車両を入手して戻るであろうとの限定的な想定をしていたかのように述べるが、事実関係と整合的でない。また、盗んだバイクが、組員らの連携やけん銃試射等の準備を経て翌朝に発生した元警察官事件の犯行に使用されており、これは被告人が予定していた流れであると認められるところ、その犯行成就のためにも速やかなバイクの入手が求められていたと考えられるから、確実性の劣る放置車両の回収に限定して事に臨んでいたとは考え難い。被告人の供述並びにこれに依拠して窃盗の故意及び共謀を争う弁護人の主張は採用できないと判断し、判示窃盗の共同正犯を認定する。 ⑵ 放火事件関連の判示第4 の1⑴の窃盗について、X17 は、平成24 年7 月末頃に被告人からバイクの入手を求められ、その後の複数回の催促に続き、同年8 月11日には被告人の意を受けたとみられる乙組組員のY4 から強い催促を受け、急いで探して盗んだバイクを同月13 日にトラックに積み込み、被告人の指示に従って車台番号を削った後、被告人の元に運んで渡した旨を述べているところ、供述にいう催促の事実や車台番号関連の事実が通話履歴等で裏付けられている。他方の被告人は、運ばれてきたバイク収受の事実は争わないものの、従前、X17 からバイクの買い取りを持ち掛けられていた顛末として、先方から前記運搬の予定が伝えられ、折しもX8 からバイクの融通を頼まれていたため、X1 ばれてきたバイク収受の事実は争わないものの、従前、X17 からバイクの買い取りを持ち掛けられていた顛末として、先方から前記運搬の予定が伝えられ、折しもX8 からバイクの融通を頼まれていたため、X17 と落ち合ってバイクの収受に至った旨を述べる。しかし、X17 が届けた当該バイクが、数時間後、計画的に行われたa4 ビル放火の実行役の移動に用いられている以上、このバイクの確保は、X8 ら組員が放火のために連携し、準備を進める過程の欠かせない一部であって、犯行に間に合う確実なバイク入手が求められていたと推認できる。その入手を手掛ける位置付けになる被告人が、犯行直前まで能動的に動くことがなかったとは考え難く、動きがない事態を周囲の組員らが放置していたとも考え難い。むしろ、前もってX17に対し、犯行に用立てても足がつかないバイクの入手を依頼し、その入手が確実に なるよう取り計らうものと考えられる。被告人から入手の依頼があり、催促されつつその依頼に応じた旨を述べるX17 の供述は整合的であって、被告人の供述には逆の評価が当たる。信用性が認められるX17 の供述によれば、自動車窃盗等の罪で服役している事情を刑務所内で被告人に伝えていたことや、出所後、盗難車を扱う仕事の原資に充てる予定を伝えつつY4 を介して被告人から金銭の融通を受けていたことなどが認められ、そのような関係性の下で若頭の被告人が、前同様に似つかわしくないバイクの入手を手段の限定なくX17 に要望し、その特異な要望に込められた窃盗等の依頼をX17 が察知し、よって判示窃盗を実行し、前記運搬及び受渡しに至ったと認められる。このような経緯を踏まえてX17 と被告人の間の共謀及び被告人の犯意を認定するのに疑問はなく、判示窃盗の共同正犯を認定する。 結論 被告人及び弁護人の 運搬及び受渡しに至ったと認められる。このような経緯を踏まえてX17 と被告人の間の共謀及び被告人の犯意を認定するのに疑問はなく、判示窃盗の共同正犯を認定する。 結論 被告人及び弁護人の主張を通覧し、審理に現れた事情全てを精査しても、以上述べたとおりの有罪の認定に至る論理を揺るがせるものはないと判断した。 そこで、検察官が組織的殺人未遂等の犯罪構成要件該当性に関し釈明をし、被告人及び弁護人に防御の機会が付与された事柄も網羅して、各判示の犯罪事実を認定する。 【累犯前科及び確定裁判】(省略)【法令の適用】(省略)【量刑の理由】本件は、指定暴力団又は特定危険指定暴力団の組員である被告人が関与した殺人、殺人未遂及び傷害各1 件、現在及び非現住建造物放火各1 件並びに窃盗2 件のほか、 3 回の機会にわたる組織的殺人未遂を主な内容とする事案であるが、罪の内実には更に指摘すべきものがある。すなわち、組織的殺人未遂のうちの一つには、暴力団組織の不正権益の維持・拡大目的を併せ有していた悪質性がある。また、殺人関連 にけん銃発射及びけん銃加重所持を伴うものが3 件含まれており、うち1 件が被害者死亡に至らせたもの、別の1 件はそのけん銃の発射、所持及び殺人未遂が全て組織的犯罪であったとして処罰を受ける罪である。加えて、いずれの人身被害も一般市民に及んでいることを指摘しなければならず、組織の独善的な思考に基づいて計画的にそれら加害行為が行われたと認められる。重大な法益侵害の結果を招いた反社会的な犯行の連続であって、秩序に背いた程度が非常に大きい。被告人は、これほどの罪の累積を、けん銃発射等を伴う殺人未遂1 件の実行役を務める関与により、また、要職である若頭の立場で計画遂行を統率し、あるいは前に推し進める重要な に背いた程度が非常に大きい。被告人は、これほどの罪の累積を、けん銃発射等を伴う殺人未遂1 件の実行役を務める関与により、また、要職である若頭の立場で計画遂行を統率し、あるいは前に推し進める重要な関与を果たしてもたらしており、責任は大きい。重罪に当たるものを含む様々な加害行為反復のおそれありと看做された暴力団組織の、そのおそれを具現化するようにして犯行を積み重ねたのであるから、社会から寄せられる強い非難に見合う処罰を科さなければならない。被告人が被害者の一部に係る謝罪の意を表し、途中の受刑で得た作業報奨金14 万円余りを充てて弁償したことなどの酌むべき事情をよく踏まえても、法律が許容する上限近くの刑の選択が相当である。 よって、主文のとおり判決する(求刑無期懲役)。 令和5 年8 月29 日福岡地方裁判所第3 刑事部 裁判長裁判官伊藤寛樹 裁判官林直弘 裁判官小西隆博

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