主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告株式会社みずほ銀行は,原告Aに対し,500万円及びこれに対する平成14年5月9日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 被告株式会社三井住友銀行は,原告株式会社大東コア技研に対し,300万円及びこれに対する平成14年4月8日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 3 被告株式会社三井住友銀行は,原告Bに対し,150万円及びこれに対する平成14年4月8日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,(1) 大阪弁護士会が,原告Aの代理人弁護士の申出を受けて,被告株式会社みずほ銀行(以下「被告みずほ銀行」という。)に対し同被告に設けられた預金口座の開設者の名称及び住所等につき弁護士法23条の2に基づいて照会した(以下,弁護士法23条の2に基づく照会を「23条照会」という。)のに対して,被告みずほ銀行が,預金口座の開設者の承諾が得られないことを理由にその報告を拒否したところ,その報告拒否は違法なものであるなどとして,原告Aが,被告みずほ銀行に対し,不法行為に基づく損害賠償として500万円及びこれに対する23条照会に対する報告を拒否した日である平成14年5月9日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を(2) 大阪弁護士会が,原告株式会社大東コア技研(以下「原告会社」という。)の代理人弁護士の申出を受けて,被告株式会社三井住友銀行(以下「被告三井住友銀行」という。)に対し同被告に設けられた預金口座の開設者の住所及び電話番号について23条照会をし,また,大阪地方裁判所が,被告三井住友銀行に対し同口座の開設者の住所及び電話番号について調査を嘱託した 」という。)に対し同被告に設けられた預金口座の開設者の住所及び電話番号について23条照会をし,また,大阪地方裁判所が,被告三井住友銀行に対し同口座の開設者の住所及び電話番号について調査を嘱託した(民事訴訟法186条)のに対して,被告三井住友銀行が,預金口座の開設者の承諾が得られないことを理由にその報告をいずれも拒否したところ,その報告拒否はいずれも違法なものであるなどとして,ア原告会社が,被告三井住友銀行に対し,不法行為に基づく損害賠償として300万円及びこれに対する23条照会に対する報告を拒否した日である平成14年4月8日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払をイ原告会社の代表取締役である原告B(以下「原告B」といい,原告会社と原告Bとを併せて「原告Bら」という。)が,被告三井住友銀行に対し,不法行為に基づく損害賠償として150万円及びこれに対する23条照会に対する報告を拒否した日である平成14年4月8日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を各求めている事案である。 1 前提となる事実等(当事者間に争いのない事実及び証拠等により容易に認められる事実等。以下,書証番号は特記なき限り枝番を含むものとする。)(1) 原告A関係ア原告Aは,平成14年4月22日ころ,大阪弁護士会所属の前川清成弁護士(以下「前川弁護士」という。)に対し,破産及び免責の申立ての代理を委任した。【甲A1の1,甲A10,11,弁論の全趣旨】イ(ア) 前川弁護士は,平成14年4月26日,大阪弁護士会に対し,照会先を被告みずほ銀行上六支店,相手方を「C」,事件名を未提訴破産免責申立事件,申出の理由を,要旨,①依頼者は相手方を始め19名の高利貸しから約350万円の借入があるが,返済を継続することができないので,大阪 ほ銀行上六支店,相手方を「C」,事件名を未提訴破産免責申立事件,申出の理由を,要旨,①依頼者は相手方を始め19名の高利貸しから約350万円の借入があるが,返済を継続することができないので,大阪地方裁判所に自己破産を申し立てるべく用意している,② 自己破産を申し立てるに際しては裁判所に対して債権者一覧表を提出すべきであり,また,貸金業規制法に基づく取立規制を生じさせるために相手方に対して代理人就任通知書を送付したいが,相手方は無登録のいわゆる「システム金融」と思われ,依頼者に対してその名称と送金先銀行口座のみを知らせていたにすぎないため,相手方の名称及び所在が判明しない,などと照会書に記載して,下記の預金口座(以下「本件預金口座①」という。)につき,これを有する者の名称(氏名あるいは商号)及び所在地(住所)の報告を求めるよう23条照会を申し出た。同弁護士会は,同日,上記申出を受け付けた。【争いのない事実,甲A1の1】記銀行名被告みずほ銀行(旧富士銀行)上六支店種類普通預金口座番号 1658445名義人 C(イ) 大阪弁護士会は,上記(ア)の申出を受け付けた後,被告みずほ銀行上六支店に対し,上記(ア)の照会書を送付して23条照会をし,本件預金口座①を有する者の名称(氏名あるいは商号)及び所在地(住所)を報告するよう要求した(以下,この23条照会を「本件23条照会①」という。)。【争いのない事実,甲A1の1】ウ被告みずほ銀行上六支店は,平成14年5月10日,大阪弁護士会に対し,相手方の承諾が得られないため本件23条照会①に対する報告をすることはできないなどと記載した同月9日付けの回答書を送付した。【争いのない事実,甲A1の2】エ(ア) 原告A代理人(前川弁護士ら)は,平成14年6月7日,被告みずほ 本件23条照会①に対する報告をすることはできないなどと記載した同月9日付けの回答書を送付した。【争いのない事実,甲A1の2】エ(ア) 原告A代理人(前川弁護士ら)は,平成14年6月7日,被告みずほ銀行に対し,原告Aが同月2日に「東洋」の従業員と名乗る者から取立行為を受けたこと及び本件預金口座①の預金者が無登録の貸金業者と思われることを記載した上,この書面が到達してから3日以内に本件預金口座①を有する者の氏名及び住所を原告A代理人あてに文書で報告するよう求める旨の同月5日付けの書面を内容証明郵便で送付したが,被告みずほ銀行は,原告A代理人に対し,本件預金口座①の開設者の氏名及び住所を報告しなかった。【争いのない事実,甲A2】(イ) 原告A代理人(前川弁護士ら)は,平成14年6月19日,被告みずほ銀行に対し,上記(ア)の内容証明郵便による通知と被告みずほ銀行の回答拒絶の事実を確認し後日の証拠とするなどと記載した同月18日付けの書面を内容証明郵便で送付したが,同被告の従業員は,同月20日,前川弁護士に電話をかけ,本件預金口座①の開設者の氏名及び住所を報告しない旨回答した。【争いのない事実,甲A3】オ大阪弁護士会は,平成14年9月27日,被告みずほ銀行上六支店に対し,本件23条照会①に対しては拒否するにつき正当な理由がない限り法的に回答する義務があり,一律かつ抽象的に回答拒否をすることは許されない,本件23条照会①は,貸金業規制法に基づく取立規制を生じさせ,また,破産申立書添付の債権者一覧表を作成する目的があるから,照会の必要性がある,本件預金口座①の開設者の住所等を報告したからといって同人のプライバシーを侵害することにはならず,むしろ同人に対する文書の送達を確実にし,破産申立事件における同人ないしその関係者の手続保障の確保の観点から利益にな の開設者の住所等を報告したからといって同人のプライバシーを侵害することにはならず,むしろ同人に対する文書の送達を確実にし,破産申立事件における同人ないしその関係者の手続保障の確保の観点から利益になるものである,本件23条照会①に早急に回答していただきたい,本件においては,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の適用の可能性があるから照会の必要性は一層高く,単に預金者のプライバシー保護等の問題としては処理できない点がある,などと記載した大阪弁護士会会長及び同司法委員会委員長作成に係る同月26日付けの「申入書」と題する書面を送付した。【争いのない事実,甲A4】カ被告みずほ銀行上六支店は,平成14年10月17日,大阪弁護士会に対し,本件預金口座①の開設者であるCの氏名及び住所を記載した同日付けの回答書を送付した。【争いのない事実,甲A5】(2) 原告Bら関係ア当事者(ア) 原告会社は,とび・コンクリート工事業等を目的とする株式会社であり,原告Bは,原告会社の代表取締役である。【甲B22の1,弁論の全趣旨】(イ) 被告三井住友銀行は,平成15年3月17日の株式会社三井住友銀行との合併により存続会社となった株式会社わかしお銀行(ただし,その後の商号変更により,商号は株式会社三井住友銀行となっている。)である(以下,上記合併前の株式会社三井住友銀行と被告三井住友銀行とを併せて「被告三井住友銀行」という。)。【争いのない事実】イ原告会社は,平成14年1月7日,「エース企画」と称する金融業者(電話番号a。以下「エース企画」という。)に電話をかけ,同社に対して60万円の借入れを申し込み,同日,同社の指示に従い,下記の各小切手(以下,下記の小切手のうち②の小切手を「本件小切手」という。)を各振り出し,それらを品川郵便局留置「エース企 話をかけ,同社に対して60万円の借入れを申し込み,同日,同社の指示に従い,下記の各小切手(以下,下記の小切手のうち②の小切手を「本件小切手」という。)を各振り出し,それらを品川郵便局留置「エース企画」あてに送付した。エース企画は,同日,原告会社名義の当座預金口座に59万5000円を振り込んだ。【甲B1ないし3,22の1,甲B23,弁論の全趣旨】記① 小切手番号 EB16486額面 40万円振出日平成14年1月15日支払地大阪厚生信用金庫四条畷支店② 小切手番号 EB16487額面 40万円振出日平成14年1月21日支払地大阪厚生信用金庫四条畷支店ウ原告会社は,平成14年1月17日ころ,大阪弁護士会所属の植田勝博弁護士(以下「植田弁護士」という。)に対し,同社の債務整理等を委任した。【甲B6の1,甲B22の1,甲B23,弁論の全趣旨】エ(ア) 被告三井住友銀行芝支店は,平成14年1月29日ころ,本件小切手の持参人から本件小切手の取立委任を受けたため,手形交換所において本件小切手の支払呈示をした。【争いのない事実】(イ) 原告会社は,平成14年1月29日ころ,大阪厚生信用金庫に40万円を預託して小切手の異議申立手続を委任し,これを受けた同金庫が,大阪手形交換所に対し,契約不履行を理由として上記40万円を提供して異議申立てをしたところ,本件小切手の裏面に「D」と記載されていることが判明した。【争いのない事実,甲B4,5,22の1】オ植田弁護士は,平成14年3月4日,大阪弁護士会に対し,「a」の電話番号で東日本電信電話株式会社と契約している者の氏名,住所及び電話番号等について23条照会を申し出た。これを受けた同弁護士会が,同社に対し,23条照会をして上記事項を報告するよう に対し,「a」の電話番号で東日本電信電話株式会社と契約している者の氏名,住所及び電話番号等について23条照会を申し出た。これを受けた同弁護士会が,同社に対し,23条照会をして上記事項を報告するよう要求したところ,同社は,同月13日,同弁護士会に対し,電話番号「a」の契約者名が「株式会社アイ・エス・プラン」であること,及びその設置場所が「東京都渋谷区bc丁目d-efg階」であること等を報告した。【甲B6,22の1】カ(ア) 植田弁護士は,平成14年3月22日,大阪弁護士会に対し,照会先を被告三井住友銀行芝支店,相手方を株式会社アイ・エス・プランニング,事件名を「出資法違反及び貸金業法違反の刑事告訴事件並びに契約無効確認訴訟事件」,申出の理由を,要旨,原告会社は同社が振り出した下記の小切手につき異議提供金を提供しているが,異議提供金の取戻しのため契約無効確認請求訴訟の提起の準備中であるところ,その小切手を被告三井住友銀行に持ち込んだ者を特定する必要がある,などと照会書に記載して,被告三井住友銀行芝支店に設けられたD名義の預金口座(以下「本件預金口座②」という。)につき,開設者の住所及び電話番号の報告を求めるよう23条照会を申し出た。同弁護士会は,同日,上記申出を受け付けた。【争いのない事実,甲B7の1】記金額 40万円振出日平成14年1月21日振出地大東市振出人株式会社大東コア技研代表取締役B支払場所大阪厚生信用金庫四条畷支店小切手番号 EB16487(イ) 大阪弁護士会は,上記(ア)の申出を受け付けた後,被告三井住友銀行芝支店に対し,上記(ア)の照会書を送付して23条照会をし,本件預金口座②の開設者の住所及び電話番号を報告するよう要求した(以下,この23条照会を「本件23条照会 申出を受け付けた後,被告三井住友銀行芝支店に対し,上記(ア)の照会書を送付して23条照会をし,本件預金口座②の開設者の住所及び電話番号を報告するよう要求した(以下,この23条照会を「本件23条照会②」という。)。【争いのない事実,甲B7の1】(ウ) 被告三井住友銀行は,平成14年4月11日,大阪弁護士会に対し,同被告は顧客に対する守秘義務を負っており,顧客の了解が得られないので,本件23条照会②に対する報告をすることはできないなどと記載した同月8日付けの回答書を送付した。【争いのない事実,甲B7の2】(エ) 被告三井住友銀行は,上記(ウ)の後から現在に至るまで,本件23条照会②に対する報告をしていない。【弁論の全趣旨】キ(ア) 原告会社(代理人植田弁護士ら)は,平成14年6月19日,大阪地方裁判所に対し,エース企画こと株式会社アイ・エス・プラン(住所東京都渋谷区bc-d-e)及びD(住所東京都渋谷区bc-d-e(株)アイ・エス・プラン方)等を被告として,本件小切手に係る債務が存在しないことの確認並びに本件小切手の返還等を請求する訴訟(大阪地方裁判所平成14年(ワ)第6063号。以下「別件訴訟」という。)を提起したところ,被告のDに対しては訴状副本が送達されなかった。【甲B8,9,11,13,15,22の1,弁論の全趣旨】(イ) 原告会社(代理人植田弁護士ら)は,平成14年7月19日,大阪地方裁判所に対し,Dの住所及び電話番号について調査の嘱託の申出をし,これを受けた同裁判所は,同月30日,被告三井住友銀行に対し,Dの住所及び電話番号について調査を嘱託した(以下,この調査の嘱託を「本件調査嘱託」という。)。【甲B9,10,22の1,乙B1】(ウ) 被告三井住友銀行は,平成14年8月16日,大阪地方裁判所に対し,Dの了承が得られな いて調査を嘱託した(以下,この調査の嘱託を「本件調査嘱託」という。)。【甲B9,10,22の1,乙B1】(ウ) 被告三井住友銀行は,平成14年8月16日,大阪地方裁判所に対し,Dの了承が得られなかったので,本件調査嘱託に対して回答することはできないなどと記載した同月13日付けの回答書を送付した。【争いのない事実,甲B10】(エ) 原告会社(代理人植田弁護士ら)は,平成14年10月7日,大阪地方裁判所に対し,別件訴訟についてDに対する公示送達を申し立てた。【甲B11,15,22の1】(オ) 原告会社代理人(植田弁護士ら)は,平成14年11月12日,被告三井住友銀行芝支店に対し,Dの住所及び電話番号を報告するよう求める旨の同月11日付けの書面を内容証明郵便で発送したが,被告三井住友銀行浜松町支店副支店長は,同月21日,原告会社代理人の浅葉律子弁護士(以下「浅葉弁護士」という。)に電話をかけ,本件23条照会②及び本件調査嘱託に対する報告はしない旨を告げた。【争いのない事実,甲B12】(カ) 原告会社代理人(植田弁護士ら)は,平成14年12月10日,被告三井住友銀行芝支店に対し,Dの住所及び電話番号を開示するよう再度求める旨の同月6日付けの書面を内容証明郵便で発送したが,被告三井住友銀行は,同月24日,原告会社代理人に対し,同被告は顧客に対する守秘義務を負っていることから顧客情報を開示することはできないなどと記載した同日付けの書面を内容証明郵便で発送した。【争いのない事実,甲B13】(キ) 別件訴訟においては,Dに対して訴状の公示送達がされ,平成14年12月18日に第1回口頭弁論期日が開かれ,平成15年1月27日の第4回口頭弁論期日に原告会社の請求を認める旨の判決が言い渡された。【争いのない事実】 2 本件の争点(1) 原告Aの被告みずほ銀行 12月18日に第1回口頭弁論期日が開かれ,平成15年1月27日の第4回口頭弁論期日に原告会社の請求を認める旨の判決が言い渡された。【争いのない事実】 2 本件の争点(1) 原告Aの被告みずほ銀行に対する損害賠償請求権が成立するか否か,及び成立するとした場合にその額はいくらか。 (2) 原告Bらの被告三井住友銀行に対する各損害賠償請求権が成立するか否か,及び成立するとした場合にその額はいくらか。 3 争点についての当事者の主張(1) 争点(1)(原告Aの被告みずほ銀行に対する損害賠償請求権の成否及びその額)について(原告Aの主張)被告みずほ銀行は,原告Aに対して不法行為責任を負う。 ア事実関係(ア) 原告Aは,平成11年ころから借金が増加し,平成13年夏ころ,いわゆるヤミ金融業者(貸金業者としての登録の有無を問わず,出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの。以下「出資法」という。)5条2項の制限利率年29.2%を超える割合の利息による貸付けを業として行う者をいい,単に「ヤミ金業者」あるいは「ヤミ金」ということもある。以下同じ。)である東洋ことCから,元金6万円を一括して返済しない限り10日ごとに1万円の利息を支払うなどの約定で6万円を借り入れたが,平成14年2月ころ,上記借入金を精算した。 上記の取引において,東洋ことCは,原告Aに対し,振込先として本件預金口座①を指定し,連絡先として東洋の従業員の携帯電話番号を知らせるのみで,東洋の営業所所在地,住所,代表者氏名,法人か個人か等を一切明らかにしなかった。 さらに,原告Aは,平成14年3月初めころ,上記と同一の条件で,東洋から4万円を借り入れた。 (イ) 原告Aは,平成14年4月22日ころ,借金の合計が365万円に達したため,前川 らかにしなかった。 さらに,原告Aは,平成14年3月初めころ,上記と同一の条件で,東洋から4万円を借り入れた。 (イ) 原告Aは,平成14年4月22日ころ,借金の合計が365万円に達したため,前川弁護士に破産及び免責の申立ての代理を委任した。前川弁護士は,同月25日,商号ないし屋号等と所在地が判明していた貸金業者に限って受任通知書を発送したところ,上記貸金業者からの取立てはすべて停止した。しかし,Cについては,「東洋」という屋号と本件預金口座①の存在が判明していたのみであり,氏名と住所が特定していなかったため,受任通知書を発送することができなかった。 (ウ) そのため,前川弁護士は,被告みずほ銀行に対する23条照会(本件23条照会①)を申し出るなどしたが,被告みずほ銀行は,相手方(C)の承諾が得られないことを理由に報告を拒否した(前記前提となる事実等(1)参照)。 (エ) 平成14年6月2日午後10時40分ころ,東洋の従業員等が原告Aの自宅に押し掛け,「金,返さんかい。」,「電話しても出ないし,どないなってんや。」,「連絡したら電話くらい出たらどうやねん。」,「払ってくれへんというのは,人間としておかしいのと違うか。」などと原告Aの自宅前の路上で大声で騒いだ。これに対し,原告Aが弁護士に債務整理を依頼している旨述べると,上記従業員等は,「弁護士なんて知らん。俺ら関係ない。払うもんは払え。」,「6万円になっているから,1万円ずつ6回に分けてでも払え。」,「払わへんかったら,家の中で暴れたる。」などと怒鳴るなどして,原告Aを脅迫した。これにより,原告Aは,今後も東洋により暴力的なことをされることを恐れた。 (オ) さらに,前川弁護士らは,被告みずほ銀行に対して本件23条照会①に対する報告を督促するなどしたが,被告みずほ銀行は報告を拒否した(前記 Aは,今後も東洋により暴力的なことをされることを恐れた。 (オ) さらに,前川弁護士らは,被告みずほ銀行に対して本件23条照会①に対する報告を督促するなどしたが,被告みずほ銀行は報告を拒否した(前記前提となる事実等(1)参照)。 (カ) 平成14年6年26日午後9時30分ころ,東洋の従業員等が再び原告Aの自宅に押し掛け,上記(エ)と同様に原告Aの自宅前の路上で大声で騒いだ。これに対し,原告Aが弁護士と対応するよう要請すると,同従業員等は,「弁護士なんて関係あらへん。おたくに聞いているのや。」,「借りて返さんのは許さん。一銭も返さんとは何事や。」,「今度払ってくれへんかったらヤクザに回るで,その方がどんだけ怖いか。」などと大声で述べ,原告Aを脅迫した。これにより,原告Aは,上記(エ)と同様に恐怖心を抱いた。 (キ) 平成14年10月17日,被告みずほ銀行は,大阪弁護士会からの督促を受けて,ようやくCの氏名及び住所を回答した(前記前提となる事実等(1)参照)。 イ 23条照会に対する報告義務の存在(ア) 23条照会の制度は,弁護士が基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命とするものである(弁護士法1条)ことにかんがみ,弁護士が受任事件について,訴訟資料を収集し,事実を調査する等その職務活動を円滑に執行処理するために,刑事訴訟法197条2項の捜査機関による照会の制度にならって設けられた公共的性格を有するものである。また,23条照会の制度は,弁護士の受任事件が訴訟事件になった場合には,当事者の立場から真実の発見に努め,また,裁判所の行う真実の発見と公正な判断に寄与する結果をもたらすことを目指すものである。 そして,弁護士法は,23条照会の制度の重要性にかんがみ,相手方を公務所又は公私の団体に限定し,かつ,請求の権能を直接個々の弁護士ではなく, な判断に寄与する結果をもたらすことを目指すものである。 そして,弁護士法は,23条照会の制度の重要性にかんがみ,相手方を公務所又は公私の団体に限定し,かつ,請求の権能を直接個々の弁護士ではなく,弁護士の指導,連絡及び監督に関する事務を行う公的機関としての性格を有する弁護士会に与え,弁護士会は弁護士からの照会申出について必要性,相当性を判断し,適当でない場合は申出を拒絶し,その他の場合は必要事項の報告を求めるものとするなど,同制度につき慎重な配慮を加えている。 上記のような目的と手続の下にされた23条照会に対しては,被照会者は,自己の職務の執行に支障がある場合,及び照会に応じて報告することの持つ公共的利益にも勝り保護しなければならない法益が他に存在する場合を除き,照会の趣旨に応じた報告をすべき義務があるというべきである。 なお,法律上報告を直接強制する手段がないことや報告拒否に対する罰則規定がないことは,被照会者が報告義務を負うことを否定する理由とはならない。 (イ) 被告みずほ銀行は,被照会者は23条照会に対する法律上報告義務がないなどと主張する。 しかし,法律上報告義務がないとすると,いかなる理由に基づく報告拒否も違法の評価を受けないこととなり,銀行に対して23条照会をする場合において報告拒否が一般化し,23条照会の制度の機能を完全に失わせることとなる。 ウ被告みずほ銀行の報告義務違反被告みずほ銀行には,本件23条照会①に対する報告を拒否すべき正当な理由はなく,同被告による報告拒否は違法である。 (ア) 23条照会に対する報告義務違反の判断基準a 上記イのとおり,23条照会の被照会者はこれに応じる法律上の義務を負っているから,被照会者は原則として報告しなければならず,報告を拒絶する行為は原則として違法となると解すべきである。ま 判断基準a 上記イのとおり,23条照会の被照会者はこれに応じる法律上の義務を負っているから,被照会者は原則として報告しなければならず,報告を拒絶する行為は原則として違法となると解すべきである。また,23条照会の制度は,その対象としてプライバシー性を有する事項が含まれることを当然に予定していると解されるから,単に照会を求める事項がプライバシー性を有するものであるとか,守秘義務の対象事項であるなどといったあいまいかつ広範な内容の基準で報告拒否を正当化することを認めることは,ほとんどすべての場合において報告拒否を許す結果となり,弁護士法23条の2を死文化させるに等しいことになる。 そうであるとすれば,被照会者は,報告することによってもたらされる具体的事件における真実発見等の公共的利益と報告を拒絶することによって守られる個々のプライバシー等の利益とを比較して,報告することによってもたらされる公共的利益が報告を拒絶することによって守られる利益に優越すると判断される場合には,報告を拒絶することは許されないというべきである。具体的には,① 報告を拒絶することによって守られる利益が報告することによってもたらされる公共的利益と同じかそれを優越するほど高度のプライバシー性,秘密性を有する重要なものであることを前提として,② その報告事項の有無が具体的事件における真実発見等の公共的利益の実現のための重要な争点(報告事項の重要性)ではないこと(具体的には,当該報告事項が具体的事件における真実発見等の公共的利益の実現にとって何ら関連性がなく重要ではないこと),又は,③ 当該事項について照会をして報告を得る方法以外に他に立証方法がない(他の代替的立証方法の存否の問題)とはいえないことが明らかな場合に限り,報告を拒絶することができるにすぎない。 なお,上記①の報告 当該事項について照会をして報告を得る方法以外に他に立証方法がない(他の代替的立証方法の存否の問題)とはいえないことが明らかな場合に限り,報告を拒絶することができるにすぎない。 なお,上記①の報告することによってもたらされる公共的利益と同じかそれを優越するほど高度のプライバシー性,秘密性を有する事項は,前科,前歴の有無等ごく限られたものであると考えられ,取引の相手方である口座開設者の住所,氏名,電話番号等は,そのプライバシー性,秘密性は全く問題とならないくらい低いものであるから,このような事項についての23条照会に対する報告拒絶が認められる余地はほとんどないというべきである。また,上記③の他の代替的立証方法の存否の問題については,報告事項の性質によって,その要求される厳格性の程度が異なると考えるべきである。すなわち,前科等のプライバシー性,秘密性が最も高い事項については,他の代替的立証方法の不存在が要求されると解すべきであるが,それと異なり高度のプライバシー性が要求されない事項については,必ずしも当該事項について23条照会によって報告を求めることが唯一の立証方法であることまでは要求されず,23条照会によって報告を求めることが真実発見のための立証方法となり得る場合であれば足り,被照会者が当該事項についての情報を把握,保持していないことを明らかにするなど23条照会によって報告を求めること自体が立証方法となり得ないことを明らかにした場合に限って,報告を拒絶することが許される。さらに,上記②の報告事項の重要性及び③の代替的立証方法の不存在の問題については,23条照会が各単位弁護士会における厳格な審査を受け,適当な申出であると認められている以上,具体的な回答義務を認めるべき条件を満たしているものと推定される。 b 23条照会は弁護士会が必要性等を判 ,23条照会が各単位弁護士会における厳格な審査を受け,適当な申出であると認められている以上,具体的な回答義務を認めるべき条件を満たしているものと推定される。 b 23条照会は弁護士会が必要性等を判断した上で行っているものであり,23条照会の被照会者において報告すべきか否かの判断をさせることは,結局は報告拒否が正当であるという判断がされることになり,23条照会の制度を否定することにもなる。 よって,被照会者が23条照会に対する報告を拒否することの正当性につき立証責任を負うというべきである。 c 以上によれば,23条照会の被照会者は,① 報告を求められている事項が極めて高度のプライバシー性を有する事項であり,それを拒絶することによって守られる利益が報告することによってもたらされる公共的利益を優越する可能性があるという極めて例外的な場合に限り,一旦報告を留保し,照会を求めた弁護士会に対し,報告事項の重要性及び他の代替的立証方法の存否に関する事情,情報の提供を求め,② その報告事項の有無が具体的事件における真実発見等の公共的利益の実現のための重要な争点(報告事項の重要性)ではないこと,又は,③ 当該事項について照会をして報告を得る方法以外に他に立証方法がない(他の代替的立証方法の存否の問題)とはいえないことが明らかであることを立証した場合でなければ,報告を拒絶することは許されないというべきである。 なお,「法務省所轄の事業者等に対する個人情報の保護に関するガイドライン」においては,銀行が扱う預金口座開設者の氏名及び住所よりもはるかにセンシティブな個人情報につき,あらかじめ本人の同意を得ずに当該本人の個人情報の利用目的外の利用が許される場合として「法令に基づく場合」と挙げ,その例として,「弁護士法23条の2第2項による報告の求め」が明記されている につき,あらかじめ本人の同意を得ずに当該本人の個人情報の利用目的外の利用が許される場合として「法令に基づく場合」と挙げ,その例として,「弁護士法23条の2第2項による報告の求め」が明記されている(甲126)。そして,同ガイドラインには,23条照会に対する報告については,個人情報取扱事業者が「嘱託(や照会)に応じる公共的利益と応じないことにより保護される利益とを比較考量して,前者が優越する場合」には「法令に基づく場合」として,当該個人情報につき当該個人本人の同意を得ずに利用目的外の利用が許されると明記されている。このような基準は,原告Aが提示する上記の基準とその内容を同じくするものであり,上記基準が正しいことの根拠となる。 (イ) ヤミ金に係る事件の特殊性a ヤミ金被害者が破産を申し立てるには,債権者一覧表に債権者であるヤミ金業者の氏名及び住所等を記載しなければならず,ヤミ金被害者である債務者が過払金の不当利得返還請求訴訟ないし債務不存在確認訴訟等を提起するためには,被告であるヤミ金業者を特定する必要があり,また,ヤミ金被害者がヤミ金業者からの違法な取立てを停止させるためには,ヤミ金業者に対し,債務処理に関する権限を弁護士に委任した旨を記載した書面(貸金業の規制等に関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの。以下「貸金業規制法」という。)21条1項,48条3号,当時の金融庁事務ガイドライン(以下「金融庁ガイドライン」という。)3-2-2(3)②。以下,この書面を「受任通知書」という。)を送付することが必要であるところ,そのためには,ヤミ金被害者はヤミ金業者の氏名及び住所を把握する必要がある。つまり,ヤミ金業者がどこの誰であるのかということを特定することは,ヤミ金被害者の法的救済のために必要不可欠な最低限の情報である。 しかし ミ金被害者はヤミ金業者の氏名及び住所を把握する必要がある。つまり,ヤミ金業者がどこの誰であるのかということを特定することは,ヤミ金被害者の法的救済のために必要不可欠な最低限の情報である。 しかし,ヤミ金業者は自己の氏名及び住所等を隠ぺいするため,ヤミ金被害者においてこれを把握することは基本的に困難である。 b ヤミ金被害者がヤミ金業者を把握するための手がかりとなる情報としては,屋号,電話番号,担当者の名前,振込先として指定されている預金口座のいずれかしかなく,これをもとにヤミ金業者を特定するしかないが,上記のうち預金口座がヤミ金業者を特定するための唯一かつ必要不可欠の手段であるというべきである。 まず,屋号については,ヤミ金は当然貸金業の登録をしていないから,営業所の所在地及び経営者に関する情報を都道府県の金融課に問い合わせるなどしても,ヤミ金業者を特定するには至らないのが通常である。担当者の名前については,犯罪を行うものが本名を名乗るとは考えられないから,これを把握してもヤミ金業者の特定には至らない。さらに,ヤミ金業者が借主と連絡を取るための携帯電話番号は,その電話番号が頻繁に変わること,その電話はプリペイド式の携帯電話やヤミ金業者以外の者が名義人となっている電話(電話レンタル業者の電話,他の被害者を欺罔又は脅迫して使用させている被害者名義の携帯電話等)であること等からして,上記電話番号の名義人を調査しても,ヤミ金業者の氏名及び住所の把握には至らないのがほとんどであり,ヤミ金特定のための有益な情報とはいい難いというべきである。 これに対し,ヤミ金の回収のための預金口座は,銀行の口座について住民票その他の身分証明書の提示がなければ口座の開設が許されないとされていることからして,当該預金口座の開設者の氏名及び住所等はヤミ金業者の真実の情報 ミ金の回収のための預金口座は,銀行の口座について住民票その他の身分証明書の提示がなければ口座の開設が許されないとされていることからして,当該預金口座の開設者の氏名及び住所等はヤミ金業者の真実の情報ということができ,これを調査すれば,ヤミ金業者を確実に特定することができる。 したがって,ヤミ金被害者の法的救済措置を講ずるに際しては,当該預金口座の開設者の氏名及び住所を把握することこそが,特に強力な調査能力及び権限を持たない債務者やその代理人弁護士にとって最も効果的かつ確実な唯一の方法であるといえる。 c 貸金業者は,借主に対して自己の名称や住所等を明示すべき義務を負っている(貸金業規制法17条1項,49条3号)ことから,銀行が貸金業者の名称及び住所に相当する預金口座開設者の氏名及び住所を開示することは,上記の趣旨にそうものであり,法律上全く問題とはならない。 d ヤミ金業者は犯罪者である(出資法5条2項参照)から,犯罪行為に利用されている預金口座の氏名及び住所を開示することは,犯罪被害の拡大防止という公益にもそうものであり,また,犯罪者のプライバシーないし信用を保護する必要がないこと等からしても,ヤミ金業者の氏名及び住所の秘密を保護すべき理由はない。 (ウ) 本件への当てはめa 本件においては,本件23条照会①に対する報告を拒絶することによって守られる利益は,報告することによってもたらされる公共的利益と同じかそれを優越するほど高度のプライバシー性,秘密性を有するものではない。 被告みずほ銀行が本件23条照会①に対する報告をすることによってもたらされる利益としては,原告A代理人が受任通知書を東洋ことCに送付することによって,原告Aの違法な取立てを受けない利益,債務処理事件における真実発見等の公共的利益が認められる。他方,被告みずほ銀行が本件 る利益としては,原告A代理人が受任通知書を東洋ことCに送付することによって,原告Aの違法な取立てを受けない利益,債務処理事件における真実発見等の公共的利益が認められる。他方,被告みずほ銀行が本件23条照会①に対する報告を拒否することによって守られる利益としては,東洋ことCのプライバシーであるところ,その内容はCの氏名及び住所並びにCが被告みずほ銀行上六支店に預金口座を有しているという事実のみであって,そのプライバシー性は,前科前歴などとは比較にならないほど低いと考えられる。したがって,本件においては,被告みずほ銀行が本件23条照会①に対する報告をすることによってもたらされる公共的利益の方が,それを拒否することによって守られるプライバシーよりもはるかに優越する。 また,振込人である原告Aからすれば,自己の金員が着金した預金契約者に関する情報は,自己情報というべきものでもあり,預金契約者には氏名及び住所等を秘匿すべき法益はないというべきである。このことは,過誤入金の場合において,銀行等の金融機関が預金契約者の同意不同意を問わず23条照会に応じていることからも明らかである。 b 預金口座の開設者の氏名及び住所のような情報については,23条照会を求めることが唯一の立証方法であることまでは要求されない(上記(ア)参照)が,本件においては,唯一の立証方法であった。 すなわち,上記(イ)の事情に加え,東洋は,原告Aに対し,振込先として本件預金口座①を指定しているだけで,東洋の氏名及び住所を一切明らかにしていなかったから,東洋の氏名及び住所の手がかりとなるのは同口座のみであり,原告A及びその代理人としては,破産免責手続における正確な債権者一覧表を作成し,また,東洋に対して受任通知書を送付するためには,被告みずほ銀行に対し本件23条照会①をし,Cの氏名及 同口座のみであり,原告A及びその代理人としては,破産免責手続における正確な債権者一覧表を作成し,また,東洋に対して受任通知書を送付するためには,被告みずほ銀行に対し本件23条照会①をし,Cの氏名及び住所の報告を得る以外には他に立証方法がなかった。 c 以上のとおり,本件においては,本件23条照会①に対する報告によってもたらされる公共的利益と同じかそれに優越するほど高度のプライバシー性,秘密性を有する利益自体が存在せず,被告みずほ銀行が本件23条照会①に対する報告を拒絶することによって守られる利益自体が存在しないから,被告みずほ銀行の報告拒否は弁護士法23条の2に基づく報告義務に違反し,違法である。 (エ) 被告みずほ銀行の主張に対する反論a 被告みずほ銀行は,銀行は顧客との関係で守秘義務を負っているのであるから,請求主体(照会申出弁護士又はその依頼者)において,被照会者が報告しなかったことにつき相当かつ合理的な理由が存在しないことを立証した場合に当該報告拒否が違法となるのであり,上記の相当かつ合理的な理由の有無の判断に当たっては,照会書の記載内容及び添付資料の有無,照会申出弁護士との交渉内容,訴訟提起の有無,他の代替的立証方法の有無及び難易度等を総合的に考慮すべきであるなどと主張する。 しかし,そもそも被告みずほ銀行の主張する守秘義務の内容ないし守秘義務によって守られるべき預金者の利益の具体的内容が明らかでなく,被告みずほ銀行の判断基準によっては個別具体的な利益衡量をすることができず,基準として無意味である。 また,23条照会に対して報告をすることは正に法律を遵守する行為であること,預金口座の開設者の住所及び氏名はプライバシー性の低い最低限の情報であること等からすれば,顧客からの損害賠償請求が認められる可能性はないというべきである。なお ことは正に法律を遵守する行為であること,預金口座の開設者の住所及び氏名はプライバシー性の低い最低限の情報であること等からすれば,顧客からの損害賠償請求が認められる可能性はないというべきである。なお,報告義務違反の判断基準として考慮されるべき利益に銀行の利益を含めることはできないというべきであり,銀行が顧客から損害賠償請求を受ける可能性があることを根拠として報告拒否することを認めると,常に報告拒否を正当化することになり,弁護士法23条の2が死文化する。 さらに,23条照会の照会書の記載内容及び添付資料の有無は,弁護士会が当該照会を求める理由を判断するためのものであり,23条照会に対する報告拒否の正当性の判断材料としては意味を成さないし,照会申出弁護士との交渉内容,訴訟提起の有無が報告拒否の正当性の有無の判断材料となる理由が明らかでない。 被告みずほ銀行の主張によると,いかなる場合に守秘義務が免責されるのか明らかでなく,立証責任についても,「相当な理由が存在しないこと」の証明を照会申出弁護士側に負わせるものであって,立証責任の原則に反する。 b 被告みずほ銀行は,本件では,原告AとCとの間で訴訟等の法的手続がとられていなかったこと,Cの電話番号につき23条照会をするという代替的手段が存在していたことを挙げ,報告拒否は正当であったなどと主張する。 しかし,23条照会は,訴訟の提起の有無を問わずに認められているものであり,それが報告拒否の違法性の判断に何ら影響を与えるものではないというべきである。また,電話番号につき23条照会をしても実効性を欠くことは,前記(イ)a,bのとおりである。 c 被告みずほ銀行は,本件23条照会①に対して報告することによってもたらされる利益は原告Aの私益にすぎない,本件23条照会①に対する報告を拒否することによってもた ,前記(イ)a,bのとおりである。 c 被告みずほ銀行は,本件23条照会①に対して報告することによってもたらされる利益は原告Aの私益にすぎない,本件23条照会①に対する報告を拒否することによってもたらされる利益は預金者のプライバシーであり憲法上保護に値する基本的人権である,原告の判断基準では報告拒否が自動的に違法となってしまい基準として無意味である,などと主張する。 しかし,本件23条照会①に対して報告することによってもたらされる利益は公共的利益である(前記(イ),(ウ)参照)し,23条照会に対して報告することは法律上の義務であることからすれば,報告拒否が原則として違法となるのは当然のことであり,原告の基準によっても例外が認められており,すべての報告拒否が違法となるものではない。 d 被告みずほ銀行は,照会書の記載内容だけではCがシステム金融(甲22,59によれば,同一の多重債務者に対しグループ内のヤミ金業者を紹介し次々に貸し付けて法外な金利を支払わせる形態の金融をいうものとされるが,本件においては,借主に手形又は小切手を振り出させ,銀行等の金融機関に上記手形又は小切手の取立委任を行って利息を取り立てるヤミ金業者をいう。以下同じ。)であるかどうかが分からないなどと主張する。 しかし,システム金融であっても小口ヤミ金であっても,ヤミ金業者であること自体は明らかであるから,照会書の申出の理由において,Cが原告Aに対して東洋という名称と送金先の預金口座を知らせていたにすぎず,当事者の特定ができないことが記載されていれば必要かつ十分であるというべきである。 エ被告みずほ銀行の報告義務違反と原告Aに対する不法行為(ア) 被告みずほ銀行は,同被告が不法行為の違法性を基礎づける作為義務を負っていないから,不作為による不法行為責任を負わないなどと主張する エ被告みずほ銀行の報告義務違反と原告Aに対する不法行為(ア) 被告みずほ銀行は,同被告が不法行為の違法性を基礎づける作為義務を負っていないから,不作為による不法行為責任を負わないなどと主張するが,被告みずほ銀行の行為は,本件23条照会①に対する報告の拒否という作為であって不作為ではない。 (イ) 被告みずほ銀行の行為を不作為と構成するにしても,以下のとおり被告みずほ銀行は原告Aに対する不法行為責任を負う。 a 被告みずほ銀行は,被照会者に23条照会に対する報告義務があるとしても,それは弁護士会に対する義務であって照会申出弁護士又はその依頼者に対する義務ではないから,上記義務に違反しても,照会申出弁護士又はその依頼者に対して損害賠償義務を負うことはないなどと主張する。 しかし,23条照会は,照会権の濫用を防止するために,照会の申出に対する審査権限及び照会権限を弁護士会に専属させているにすぎないから,被照会者の報告拒否によって具体的な不利益を被るのは,義務の名あて人である弁護士会ではなく,照会申出弁護士の依頼者である。よって,23条照会に対する報告義務が弁護士会に対する義務であるとしても,同義務違反の結果,照会申出弁護士の依頼者に損害が発生した場合は,当然不法行為責任が発生するというべきである。 b 被告みずほ銀行は,被照会者の23条照会に対する報告義務は一般公法上の義務に違反するにすぎないから,被照会者が上記義務に違反しても,私法上の不法行為責任を負わないなどと主張する。 しかし,故意又は過失によって特定の義務に違反する行為は,原則として違法の評価を受け,その結果,特定の私人が損害を被った場合には,上記義務が私法上の義務か公法上の義務かを論ずるまでもなく,当然に被照会者は不法行為責任を負う。よって,仮に23条照会に対する報告義務が公法 評価を受け,その結果,特定の私人が損害を被った場合には,上記義務が私法上の義務か公法上の義務かを論ずるまでもなく,当然に被照会者は不法行為責任を負う。よって,仮に23条照会に対する報告義務が公法上の義務であったとしても,本件では,被告みずほ銀行の報告義務違反により,照会申出弁護士(前川弁護士)の依頼者である原告Aが具体的に不利益及び損害を被ったのであるから,被告みずほ銀行は,原告Aが被った損害の賠償責任を負う。 オ信義則に基づく開示義務違反被告みずほ銀行の報告拒否は,信義則に基づき認められる報告義務(情報開示義務)に違反し,違法である。 (ア) 開示義務の存在被告みずほ銀行は,原告Aに対し,信義則上,23条照会という手続を用いるまでもなく,ヤミ金の特定のための必要不可欠な立証手段であるヤミ金の氏名及び住所という情報を開示する義務を負っている。 a 金銭消費貸借契約に基づく借入金の返済として,特定の口座に振込送金を行っていた者が,自らの借入先すなわち貸主が誰であるかを把握することができないという事態が発生した場合において,貸主がだれであるかを特定するために,当該口座が開設されている銀行に対して,当該口座の開設者の氏名及び住所についての照会を求めることは,自己の振込行為の相手方がだれであるかという当事者の特定のために必要な情報を開示するという意味において,自己情報の開示請求にほかならない(これは,債務者が消費者金融業者に対して自己の取引履歴の開示を請求する場合と利益状況は全く同じである。)。 また,ある取引関係にある当事者がその取引の相手方の氏名及び住所を知ることは当然の権利であるというべきであり,その取引関係に介在する者(受任者,弁済の代理受領者等)も,信義則上当然に,当事者に対し取引の相手方本人の氏名及び住所といった相手方本人を特 氏名及び住所を知ることは当然の権利であるというべきであり,その取引関係に介在する者(受任者,弁済の代理受領者等)も,信義則上当然に,当事者に対し取引の相手方本人の氏名及び住所といった相手方本人を特定する情報を開示する義務がある。 上記のような事項は,23条照会という迂遠な手続を用いるまでもなく,本来,銀行は直接請求者に対して開示しなければならないものである。 b 多重債務等の理由からヤミ金被害に苦しむ債務者に対して,弁護士を通じて任意整理ないしは自己破産手続等の被害救済のための措置を講じて経済的更生を図らせることは,単に当該債務者の利益になるだけではなく,それを超えて経済的困窮から起こる犯罪や家庭崩壊を防止し,国民全体の利益である公共の安寧を維持する上で不可欠であると解される。殊に,ヤミ金に係る事案においては,被害救済のために最大の問題となっているのはヤミ金の当事者を容易に把握,特定することができない(ヤミ金の匿名性)ことにあることは,前記ウ(イ)のとおりであり,ヤミ金が返済金の振込先としてしている預金口座が開設されている銀行等が,当該口座の開設者の住所,氏名というヤミ金の当事者を特定するための情報を債務者に開示することなくしては,ヤミ金被害救済のための実効的な法的措置を講じることはできない状況にある。 そして,上記のような情報取得の必要性を銀行等は十分に知悉しており,銀行等は上記のような情報を開示することは極めて容易である。また,銀行等は,当該銀行等に設けられた預金口座が違法,不正な手段のために利用されたことが分かった場合においては,違法行為による被害拡大の防止,マネーロンダリングの防止等のために,当該口座に係る預金契約を強制解約したり,取引停止にしたりすべき立場にある。 c 23条照会は,照会申出弁護士の依頼者と報告を求められた銀行との る被害拡大の防止,マネーロンダリングの防止等のために,当該口座に係る預金契約を強制解約したり,取引停止にしたりすべき立場にある。 c 23条照会は,照会申出弁護士の依頼者と報告を求められた銀行との間の法律関係を直接規定するものではないが,23条照会の制度の趣旨が,基本的人権を擁護し社会正義を実現するという弁護士の使命,職務の高い公共性,裁判における真実発見の実現にあると解され,この趣旨は,報告を求められた銀行と報告を求めている依頼者との間の法律関係にも反映され,その法律関係を考察する場合にも生かされなければならない。 d 以上を総合考慮すれば,ヤミ金に係る預金口座の開設者の氏名及び住所の開示を請求された銀行等は,信義則上,同情報を開示する義務を負うというべきである。 (イ) 開示義務違反の違法性上記(ア)の開示義務違反が不法行為の成立要件である違法性を有するか否かの判断基準は,前記ウ(ア)で述べたところと同じであり,原告Aが被る不利益ないし公共上の影響を考量すれば,被告みずほ銀行の報告拒否には正当な理由はなく,違法性を有する。 カ損害原告Aが被った損害500万円の内訳は以下のとおりである。 (ア) 内容証明郵便送付費用 3190円原告Aは,平成14年6月2日に東洋の従業員から取立てを受け,その違法な取立てを止めさせるため,被告みずほ銀行に対し,同月5日及び同月18日の2度にわたり,Cの氏名及び住所を報告するよう督促する内容証明郵便を発送した。原告Aは,上記の費用として,以下の金額を支払った。 a 平成14年6月5日付け内容証明郵便 1720円b 同月18日分付け内容証明郵便 1470円(イ) 無形的損害 499万6810円a 原告Aは,平成14年6月2日及び同月26日の2度にわたり,東洋の従業員等から取立てを受け,その際,同人ら 円b 同月18日分付け内容証明郵便 1470円(イ) 無形的損害 499万6810円a 原告Aは,平成14年6月2日及び同月26日の2度にわたり,東洋の従業員等から取立てを受け,その際,同人らが原告Aの自宅前の路上で大声で騒いだため,近所の住人らにヤミ金から借金があり,かつ,その支払を遅延していることを知られ,原告Aの社会的評価が著しく低下した。さらに,原告Aは,上記の取立ての際,東洋の従業員から脅迫されるなどしたため,不安感,恐怖感等の精神的損害を受けた。 また,原告Aは,上記の取立ての後も,脅迫電話や取立ての恐怖におびえながら生活せざるを得ず,精神的損害を受けた。この損害は,被告みずほ銀行がCの氏名及び住所を開示するまで継続して発生し続けたものである。 b 被告みずほ銀行がCの氏名及び住所の報告を拒否したことにより,原告A代理人弁護士による原告Aの救済手続に支障が生じ,これにより原告Aは精神的苦痛を受けた。 c 上記の精神的損害等を金銭的に評価するならば,499万6810円を下らない。 キ相当因果関係の存在被告みずほ銀行の報告拒否と原告Aの損害との間には相当因果関係が存在する。 (ア) 条件関係の存在a 被告みずほ銀行が平成14年5月9日に本件23条照会①に対して報告していたならば,原告A代理人は遅くとも同月10日には東洋の氏名及び住所を了知し,遅くとも平成14年6月2日までには東洋ことCに対して受任通知書を送付することができ,同人が取立行為を継続することを断念していたはずであり(現に,他のヤミ金業者については受任通知書を送付することによって取立行為が止まっている。),そうであるとすれば,原告Aは,平成14年6月2日及び同月26日に東洋の従業員等から取立てを受けず,また,被告みずほ銀行に対して報告を督促する内容証明郵便を送付して よって取立行為が止まっている。),そうであるとすれば,原告Aは,平成14年6月2日及び同月26日に東洋の従業員等から取立てを受けず,また,被告みずほ銀行に対して報告を督促する内容証明郵便を送付していなかったはずである。 この点につき,被告みずほ銀行は,原告Aが東洋の従業員等に受任の事実を伝えたにもかかわらず違法な取立てが中止されなかったことからすれば,仮に受任通知書を送付しても取立行為は止まらなかったなどと主張する。しかし,ヤミ金被害者の代理人弁護士がヤミ金業者の氏名及び住所を把握していれば,ヤミ金は,当該弁護士からの告訴,告発及び民事上の責任追及等をおそれ,違法な取立行為を断念するから,被告みずほ銀行がCの氏名及び住所を報告していれば,原告A代理人がCに対して受任通知書を送付し,原告Aに対する違法な取立行為は止んでいたはずである。 b 被告みずほ銀行は,捜査機関等に協力を要請していれば違法な取立てを防ぐことができたなどと主張する。 しかし,警察を始めとする捜査機関の民事不介入及び捜査の秘密という方針からすれば,捜査機関への捜査の依頼によって直ちにヤミ金業者を特定,把握することができるというものではない。また,捜査機関は,平成14年当時,小口のヤミ金業者の事件については,業務性が難しいなどの理由により,これを受理しないというのが実態であり,捜査機関に連絡することがヤミ金被害者救済のための実効的措置ということはできなかった。さらに,平成15年8月の貸金業規制法の改正以降,警察もヤミ金被害者に対する保護支援を打ち出したが,それでも,警察は,「ヤミ金を相手にするな。」というアドバイスをするのみで,個別の捜査を行うことはほとんどなかった。よって,捜査機関がヤミ金業者を検挙することが期待できる状況にはなかったというべきであり,相当因果関係がないと を相手にするな。」というアドバイスをするのみで,個別の捜査を行うことはほとんどなかった。よって,捜査機関がヤミ金業者を検挙することが期待できる状況にはなかったというべきであり,相当因果関係がないとの被告の主張は失当である。 (イ) 予見可能性の存在被告みずほ銀行が原告Aがヤミ金業者から取立行為を受けることを予見することは可能であった。 a 本件23条照会①の照会書には,Cが「システム金融業者」であると思われる点,破産申立書添付の債権者一覧表作成の必要性,取立て規制を生じさせる必要性が具体的に記載されていることから,被告みずほ銀行としては,本件預金口座①の取引履歴を調査すれば,同口座が貸金の回収に利用されている事実等を確認することは容易であった。さらに,原告A代理人は,被告みずほ銀行に対し,書面で,複数回(平成14年6月5日及び同月18日)にわたり,同月2日にCによる違法な取立てがあったこと等を明記した上で報告するよう強く督促している(甲A2,3)。 よって,被告みずほ銀行は,遅くとも平成14年6月26日時点において,自己が報告義務を負っていること及び報告を拒否することによって,原告A代理人が受任通知書を送付することができず,原告Aが引き続き取立てを受ける可能性があることを十分認識し得たはずである。 b ヤミ金問題は,平成12年ころから全国的に広がり,同年12月14日に「全国ヤミ金対策会議」が結成され,平成13年には爆発的なヤミ金被害に対してその撲滅のための運動が繰り広げられていたのであるから,平成14年当時は,ヤミ金被害の状況等は日常的に発生し,大きな社会問題となっていた。 そうであるとすれば,被告みずほ銀行は,本件当時,ヤミ金が当該銀行口座をもってヤミ金被害者から集金している実態を知っており,ヤミ金が使用している口座に関する情報の開 ,大きな社会問題となっていた。 そうであるとすれば,被告みずほ銀行は,本件当時,ヤミ金が当該銀行口座をもってヤミ金被害者から集金している実態を知っており,ヤミ金が使用している口座に関する情報の開示を拒否すれば,ヤミ金による恐喝的取立行為が継続すること,ヤミ金被害者に対する法的救済措置を講ずることが不可能となること等を知悉していたというべきである。 c 被告みずほ銀行は,Cがシステム金融業者であることを裏付ける資料の提出がなく真偽が分からなかったから,報告を拒否せざるを得なかったなどと主張するが,内容証明郵便に資料を付すことなど不可能であるし,被告みずほ銀行の担当者は原告A代理人に対して具体的な資料の提示を求めるなどしていないことからすると,上記主張は失当である。 ク遅延損害金の起算点被告みずほ銀行は,原告Aが主張する本件損害賠償請求権の遅延損害金の起算点を問題にするが,意思表示の効果の発生時期の問題と遅延損害金の発生時期の問題とを混同しており,失当である。 (被告みずほ銀行の主張)被告みずほ銀行は,原告Aに対して不法行為責任を負わない。 ア本件23条照会に対する報告義務の不存在被告みずほ銀行は,本件23条照会①に対して報告する義務を負っていない。 (ア) 報告義務の不存在弁護士法23条の2第2項は「報告を求めることができる」と定めるのみであること,23条照会に対する報告を直接強制する手段がないこと,報告拒否に対する罰則規定が存在しないことからして,同項に基づき報告を求められた団体は法律上報告の義務を負わない。 (イ) 報告拒否と合理的理由仮に被照会者が23条照会に対する報告義務を負っているとしても,後記のとおり銀行は顧客との関係で守秘義務を負っているのであるから,報告しないことにつき相当かつ合理的な理由があるときは,報告 的理由仮に被照会者が23条照会に対する報告義務を負っているとしても,後記のとおり銀行は顧客との関係で守秘義務を負っているのであるから,報告しないことにつき相当かつ合理的な理由があるときは,報告しないことは報告義務違反とはならず,違法ではない。 すなわち,銀行は,顧客との関係において,顧客との間にした取引及びこれに関連して知り得た情報を正当な理由なく他に漏らしてはならない義務(守秘義務)を負っており,銀行が守秘義務を負う範囲は,取引先の預金,貸出金,その他の資産状態,取引振り,会社内の設備,技術,業務計画,経営等の経済的秘密のみならず,銀行取引に関連して知り得た経済的秘密以外の身分関係,家庭の事情,会社の内紛,病気,婚姻等の私的秘密も含まれ,預金者の住所及び氏名も当然に守秘義務の対象となる。そして,当該顧客の同意がないにもかかわらず,銀行が上記義務に違反して情報を開示した場合には,当該顧客から損害賠償請求を受ける可能性があるから,銀行が23条照会を受けた場合において,報告することにつき顧客の了解が得られないときは,原則として銀行は報告すべきではなく,弁護士会ないし照会申出弁護士によって報告の必要性等が十分明白にされない限り,すなわち,銀行が顧客に対して負担している守秘義務が免責されるに足りるだけの材料が存在していることが明白にならない限り,報告をすることはできない。このことは,23条照会に対する報告について常に免責されるとは限らないとした最高裁判例(最高裁昭和52年(オ)第323号同56年4月14日第三小法廷判決・民集35巻3号620頁。以下「昭和56年最判」という。)が存在していることからも明らかである。 なお,被告みずほ銀行は,捜査機関からの照会や裁判所からの調査の嘱託等公益的要請が特に強い場合には,守秘義務が免責される蓋然性があ 昭和56年最判」という。)が存在していることからも明らかである。 なお,被告みずほ銀行は,捜査機関からの照会や裁判所からの調査の嘱託等公益的要請が特に強い場合には,守秘義務が免責される蓋然性があるとして,回答する取扱いをしている。 (ウ) 上記のとおり,銀行は,顧客との関係で守秘義務を負っているのであるから,23条照会に対し報告しないことにつき相当かつ合理的な理由があるときは,報告しないことは報告義務違反とはならず,違法ではない。そして,上記の相当かつ合理的な理由が存在するか否かについては,23条照会の照会書の記載内容,添付資料の有無,照会申出弁護士との交渉内容,訴訟提起の有無,他の代替的立証方法の有無及び難易度等の当該事案における諸事情を総合的に判断すべきである(昭和56年最判参照)。 なお,後記イ(ア)のとおり,被照会者の23条照会に対する報告義務は,弁護士会に対する一般公法上の義務であって,被照会者は照会申出弁護士及びその依頼者に対する作為義務を負っていないこと,被照会者が報告をしないことが直ちに不法行為の要件である違法性を導くものではないこと等からすると,被照会者が報告しなかったことが原則として違法となるのではなく,請求主体(照会申出弁護士又はその依頼者)において,被照会者が報告しなかったことにつき相当かつ合理的な理由が存在しないことを立証した場合に違法となるというべきである。このことは,一般的に,不法行為における過失及び違法性については,請求主体に主張立証責任があるとされていること等からも裏付けられる。 (エ) 本件への当てはめa 本件では,本件預金口座①の開設者(C)から氏名及び住所の報告を拒否する明確な意思が表明されていた。 そして,本件23条照会①の照会書(甲A1の1)には,「相手方は,無登録のいわゆる『システム金融』 件では,本件預金口座①の開設者(C)から氏名及び住所の報告を拒否する明確な意思が表明されていた。 そして,本件23条照会①の照会書(甲A1の1)には,「相手方は,無登録のいわゆる『システム金融』と思われ」と抽象的に記載されているだけであって「システム金融」の意味するところが不明である上,その具体的根拠となる資料(例えば,原告AがCに対して振り出した手形又は小切手の写し,本件預金口座①に振り込んだことを示す振込明細書の写し等)も全く提供されていない(現に,本件訴訟における原告Aの主張によれば,東洋ことCはシステム金融ではない。)から,被告みずほ銀行としては,顧客の明確な意思に反してまで報告しても守秘義務が免責されるに足りるだけの材料が存在していると判断することはできなかった。 また,原告A代理人から被告みずほ銀行に対し,本件23条照会①に対する報告の督促の書面(甲A2,3)が送付されているが,その内容は報告の請求権のない原告A代理人(前川弁護士)あてに報告するよう督促するという不正確なもので,Cがシステム金融であることを疎明する資料等がなく,被告みずほ銀行としては報告の必要性を判断することができなかった。 さらに,原告A代理人は,被告みずほ銀行に対して一方的に回答を要求するだけであり,疎明資料の提示を打診ないし提案するなど被告みずほ銀行が回答しても差し支えないような状況を作出する配慮は全くなかった。 b 本件では,原告AとCとの間においては,訴訟等の何らの法的手続が行われておらず,Cの氏名及び住所が訴訟等で重要な争点となっていたわけではなく,裁判手続上における真実発見等の公益的要請は存在しない。 また,本件においては,原告Aが把握していた東洋の電話番号について23条照会の申出を原告A代理人にしてもらうことによってCの氏名及び住所を特定する 続上における真実発見等の公益的要請は存在しない。 また,本件においては,原告Aが把握していた東洋の電話番号について23条照会の申出を原告A代理人にしてもらうことによってCの氏名及び住所を特定する手段があったから,容易な代替的手段が存在していた。 c 以上のとおり,被告みずほ銀行は,本件23条照会①に対して報告することにつき守秘義務が免責されるとは判断しかねたところから,同照会に対しては報告をしなかったのであり,そのことについては相当かつ合理的な理由があった。 (オ) 原告Aの主張に対する反論原告Aの主張する報告義務違反の判断基準は失当である。 a 原告Aは,① 報告を拒絶することによって守られる利益が報告することによってもたらされる公共的利益と同じかそれを優越するほどの高度のプライバシー性等を有する重要なものである必要があるなどとする。 しかし,本件23条照会①に対する報告によってもたらされる利益の内容は,原告Aという1人の個人の破産申立ての準備がスムーズに進むことや債権者からの取立行為が止まる可能性があるというものであり,実質的には単なる私的な利益である。一方,報告を拒否することによって守られる利益は,預金者のプライバシーであり,憲法上保障された十分保護に値する基本的人権である(なお,原告A及びその代理人(前川弁護士)は,Cの氏名を認識しており,その照会の必要性は全くなかった。)。そして,口座開設者の氏名及び住所は,預金契約における根本的な個人情報であり,プライバシー性,秘密性が低いはずもなく,これを低く扱う原告Aの主張は独自の見解にすぎない。よって,本件において,報告することによって得られる利益と報告を拒否することによって守られる利益は,優劣をつけることができない。 なお,原告Aは,利益衡量において被告みずほ銀行の立場を考慮するこ い。よって,本件において,報告することによって得られる利益と報告を拒否することによって守られる利益は,優劣をつけることができない。 なお,原告Aは,利益衡量において被告みずほ銀行の立場を考慮することはできないなどと主張するが,被告みずほ銀行は報告義務の主体なのであるから,同被告の法的な立場についても利益衡量の対象となるのは当然のことである。また,原告Aは,その主張する判断基準の根拠として,ヤミ金被害者の保護の必要性を強調するが,本件23条照会①の照会書(甲A1の1)には添付資料が一切存在しなかったから,被告みずほ銀行が報告拒否をした平成14年5月9日時点においては,Cがヤミ金業者であることは一切明らかではなかったのであり,原告の主張は,平成14年5月9日時点では被告みずほ銀行が認識していなかった事実につき,それをあたかも認識していたかのごとく主張しているものにすぎない。 また,原告Aの主張する基準では,23条照会を受けた銀行が報告拒絶することができる場面が全く存在しないことになり,すべての報告拒否が違法という結論になるから,基準として全く無意味である。 さらに,原告Aは,貸金業者が債務者に対して自己の名称や住所等を明らかにする義務を負っていることを23条照会に対する報告義務違反の根拠とするが,それらは別次元の問題である上,そもそも,貸金業者が開示すべき住所とは事務所のことであって自宅ではないから,借主に対して開示する義務を負わない自宅の住所を銀行が開示することが法律上問題となることは明らかである。 b 原告Aは,② 報告事項の有無が具体的事件における真実発見等の公共的利益の実現のための重要な争点ではないことが明らかな場合に限り,報告を拒絶することができるなどとする。 しかし,原告Aによれば,23条照会につき各単位弁護士会が照会の適切性 おける真実発見等の公共的利益の実現のための重要な争点ではないことが明らかな場合に限り,報告を拒絶することができるなどとする。 しかし,原告Aによれば,23条照会につき各単位弁護士会が照会の適切性,必要性等を厳格に審査しているというのであり,これによれば弁護士会が認めた23条照会はすべて基準を満たすことになるから,基準として意味がない。 c 原告Aは,③ 当該事項について照会をして報告を得る方法以外に他に立証方法がないとはいえないことが明らかな場合に限り,報告を拒絶することができるなどとする。 しかし,原告Aによれば,23条照会につき各単位弁護士会が照会の適切性,必要性等を厳格に審査しているというのであり,これによれば弁護士会が認めた23条照会はすべて基準を満たすことになるから,基準として意味がない。 さらに,本件では,原告Aは,東洋ことCの電話番号について23条照会の申出をすることにより,Cの氏名及び住所を特定するに至った可能性が十分に存在し,また,東洋の従業員が乗っていた自動車の登録番号を調査するなどにより東洋を特定するに至った可能性もあるのであるから,本件23条照会①がCの氏名及び住所を特定する唯一の手段であったとはいえない。 d 以上のとおり,原告Aの主張する基準は,23条照会に対する報告を拒否することはすべて報告義務に違反し違法であるという結論にたどり着くものであり,基準として不合理であり失当である。 この点につき,原告Aは,例外的な場合も存在するなどと主張するが,原告Aの基準によれば,各単位弁護士会が23条照会の申出を認めた場合にはすべて報告拒否が違法になることは上記のとおりである。 イ原告Aに対する不法行為の不成立被告みずほ銀行は,不法行為の違法性を基礎付ける作為義務を負っていないから,被告みずほ銀行の報告拒否には違 すべて報告拒否が違法になることは上記のとおりである。 イ原告Aに対する不法行為の不成立被告みずほ銀行は,不法行為の違法性を基礎付ける作為義務を負っていないから,被告みずほ銀行の報告拒否には違法性はない。 原告Aの請求は,不作為の不法行為を理由とする損害賠償請求であるところ,不作為の不法行為の成立が認められるためには,法令等によって作為義務があるとされた者が,結果の発生を防止し得る状態であるにもかかわらず防止行為をせずに,その結果として損害を発生させたことが認められなければならない。そして,上記作為義務とは,損害という結果の発生を未然に防止すべき行為をすべき義務(侵害回避義務,結果発生防止義務)のことをいい,一定の行為をすべきあらゆる作為義務が不作為の不法行為の成立要件としての作為義務と評価されるのではない。 この点,23条照会の被照会者に報告義務があるとしても,その義務は,基本的人権を擁護し社会正義を実現するという弁護士の使命の遂行を容易にするという目的のための協力義務であるから,その義務は,弁護士法23条の2に基づく一般公法上の義務にすぎない。また,弁護士法23条の2は照会事項の報告を請求する権能を各単位弁護士会に専属させたから,23条照会に対する報告義務は,照会事項を特定の私人(照会申出弁護士又はその依頼者)に報告すべき義務ではなく,同事項を各単位弁護士会に対して報告すべき義務にすぎない。よって,23条照会に対する報告義務は,23条照会を申し出た弁護士の依頼者に損害が発生することを未然に防止すべき作為義務ではない。 そして,23条照会の被照会者は,上記のような義務を超えて23条照会を申し出た弁護士の依頼者に損害が発生することを未然に防止すべき作為義務を負っていると解することもできない。 したがって,被告みずほ銀行が本件23 会の被照会者は,上記のような義務を超えて23条照会を申し出た弁護士の依頼者に損害が発生することを未然に防止すべき作為義務を負っていると解することもできない。 したがって,被告みずほ銀行が本件23条照会①に対する報告をしないことが,不法行為の要件としての違法と評価されることはない。 ウ信義則に基づく開示義務の不存在原告Aは,信義則上,被告みずほ銀行はCの氏名及び住所を開示する義務を負っているなどと主張するが,失当である。 (ア) 信義則は,契約関係又は契約関係にあると同視することができる程度に熟した法律関係にある者の間の法律関係について適用されるべき法理であり,契約関係も契約関係にあると同視することができる程度に熟した法律関係もない者の間の関係には適用されない。 弁護士法23条の2は,照会申出弁護士又はその依頼者と被照会者との間の法律関係を直接規定したものと解することはできないことからすれば,原告Aと被告みずほ銀行との間には,契約関係も契約関係と同視することができる程度に熟した法律関係も存在しないのであるから,信義則が適用される場面ではない。 (イ) 原告Aは,自己が振込みを行った預金口座開設者の氏名及び住所について開示を求めることは自己情報の開示請求にほかならないなどと主張する。 原告Aの上記主張を前提とすれば,弁護士が自己名義の預金口座に受任事件の相手方から弁済金の入金を受けた場合において,依頼者や相手方から当該弁護士の住所(自宅の住所)の開示を求められたとき,銀行は上記の住所を開示することができることになるが,このような結論が不当であることは明らかであることからしても,原告の主張は失当である。 なお,原告Aは,本件は,債務者が消費者金融業者に自己の取引情報の開示を請求する場合と利益状況は全く同じであるなどと主張するが,消費者金融 ことは明らかであることからしても,原告の主張は失当である。 なお,原告Aは,本件は,債務者が消費者金融業者に自己の取引情報の開示を請求する場合と利益状況は全く同じであるなどと主張するが,消費者金融業者と債務者は金銭消費貸借契約という直接の契約関係にある当事者であるのに対し,本件では原告Aと被告みずほ銀行との間には直接の契約関係は存在しないのであるから,利益状況が同じであるということはできない。 (ウ) 原告Aは,被告みずほ銀行は債権者の弁済の代理受領者であるなどと主張する。 しかし,原告Aは,Cから本件預金口座①に振込入金するよう指示されただけであり,被告みずほ銀行に対して支払うよう指示されたわけではなく,実際にも被告みずほ銀行に対して支払っていたわけではない。さらに,被告みずほ銀行はCから弁済金受領についての代理権を与えられていたわけでもなく,そもそも被告みずほ銀行はCの原告Aに対する貸金債権の存在を全く認識していなかった。 よって,原告Aの上記主張は,被告みずほ銀行の原告Aに対する預金開設者の氏名及び住所の開示義務を何ら導くものではない。 エ損害について原告Aの損害の発生については争う。 オ相当因果関係の不存在被告みずほ銀行の報告拒否と原告Aの損害との間に相当因果関係は存在しない。 (ア) 条件関係の不存在a 一般的に,ヤミ金業者の中には,弁護士からの受任通知書を受領した後も債務者の自宅等に電話をかけるなどして取立行為を行う者も存在すること,本件においても,原告Aが東洋の従業員等に対して原告A代理人(前川弁護士)に債務整理を依頼している旨を伝えたにもかかわらず,東洋が違法な取立行為を止めることはなかったことからすれば,被告みずほ銀行が本件23条照会①に対する報告をし,Cに対して受任通知書を送付したとしても,必ずしも原告Aに いる旨を伝えたにもかかわらず,東洋が違法な取立行為を止めることはなかったことからすれば,被告みずほ銀行が本件23条照会①に対する報告をし,Cに対して受任通知書を送付したとしても,必ずしも原告Aに対する取立行為が停止しなかったというべきであり,被告みずほ銀行の報告拒否と原告Aが取立てを受けたこととの間には因果関係は存在しない。 b 原告Aがヤミ金業者から違法な取立てを受けるおそれがあったのであれば,原告A又はその代理人は,直ちに警察等の捜査機関に連絡して協力を要請するなどしていれば,被告みずほ銀行が捜査機関からの照会に応じてCの氏名及び住所を回答し,Cが検挙されるなどして,原告Aに対する違法な取立行為が行われることを防止できた可能性があったといえるから,被告みずほ銀行の報告拒否と原告Aが取立てを受けたこととの間には因果関係は存在しないというべきである。 c 原告Aの主張によれば,原告Aが弁済を止めてから約1か月半の間,被告みずほ銀行が本件23条照会に対する報告を拒否してから1か月間,東洋は原告Aに対して何らの取立行為もしておらず,しかも,平成14年6月26日以降は一度も取立てをしていない。このような本件の事実関係の下においては,被告みずほ銀行の報告拒否と原告Aが取立てを受けたこととの間には,相当因果関係はないというべきである。 (イ) 予見可能性の不存在被告みずほ銀行は,本件23条照会①に対する報告をしなかったことにより原告Aに対する取立行為が継続することを予見することができなかった。 a 本件においては,被告みずほ銀行の予見可能性の有無は,同被告が本件23条照会①に対する報告を拒否した平成14年5月9日時点を基準とすべきである。 よって,同日以降の事情を主張して予見可能性を肯定しようとする原告Aの主張は失当である。 b 本件23条照会① が本件23条照会①に対する報告を拒否した平成14年5月9日時点を基準とすべきである。 よって,同日以降の事情を主張して予見可能性を肯定しようとする原告Aの主張は失当である。 b 本件23条照会①の照会書には,相手方がシステム金融と思われる程度のことしか記載されておらず(なお,現時点においてもCがヤミ金業者であることは明らかになっていない。),相手方がシステム金融であること及び原告AがCから違法な取立行為を受けること等を具体的に裏付ける資料の提示がなかったこと,被告みずほ銀行は,本件23条照会①を受けた当時はヤミ金業者の実態(取立ての手口等)を十分把握し切れていなかったこと等から,被告みずほ銀行は,原告AがCから違法な取立てを受ける可能性を具体的に予見することはできるはずもなかった。 また,仮に被告みずほ銀行が本件預金口座①の取引履歴を見ていたとしても,多数の個人から定期的に一定金額の入金がされることも多々ある(例えば,団体の会費の納入)ことからすれば,その開設者であるCがヤミ金業者であると判断することはできなかったというべきである。 よって,被告みずほ銀行には,原告Aが違法な取立行為を受けることにつき,具体的に予見し得る可能性はなかったというべきである。 カ遅延損害金の起算点本件損害賠償請求権の遅延損害金の起算点は,平成14年5月9日ではない。 不法行為に基づく損害賠償請求権は,損害が生じた時に発生するところ,原告Aの損害は,早くても原告Aが被告みずほ銀行による報告拒否の事実を知った日以降に発生し,その時点から遅延損害金が発生するというべきである。しかし,原告Aの請求は,被告みずほ銀行が本件23条照会①に対する報告を拒否する旨の書面を作成した日付である平成14年5月9日からの遅延損害金を請求しており,失当である。 キ被告みずほ べきである。しかし,原告Aの請求は,被告みずほ銀行が本件23条照会①に対する報告を拒否する旨の書面を作成した日付である平成14年5月9日からの遅延損害金を請求しており,失当である。 キ被告みずほ銀行は,被告三井住友銀行の主張(後記(2)参照)を自己に有利に援用する。 (2) 争点(2)(原告Bらの被告三井住友銀行に対する各損害賠償請求権の成否及びその額)について(原告Bらの主張)被告三井住友銀行は,原告Bらに対し不法行為責任を負う。 ア事実関係(ア) 原告会社は,平成13年12月ころから,多数のシステム金融から借金をするようになり,不渡りを恐れて次々とシステム金融から金員を借り入れていた。そして,原告会社は,平成14年1月7日,システム金融のエース企画から60万円を借り入れた。 (イ) その後の事実経過は,前記前提となる事実(2)のとおりである。 (ウ) 植田弁護士は,平成14年1月17日ころに原告会社から債務整理等を受任した後,原告会社が把握していた屋号及び電話番号に基づき,原告会社が借入をしていたシステム金融業者に対し電話により受任した旨の通知を行ったところ,その後,原告Bに対し,「社長を出せ。いないのなら家族を出せ。」,「金返せ。」,「今から行くぞ。」,「殺すぞ。」などという脅迫電話が,昼夜を問わず頻繁にかかってきた。原告会社が別件訴訟を提起したころにも,原告Bに対し,数回にわたり,無言電話や,「社長おるか,社長を出せ。」などという脅迫電話がかけられ,その後も,同原告に対して脅迫電話がかかってくることがあった。上記の行為により,原告Bは今後危害が加えられるのではないかという恐怖心,不安感等を抱いた。 イ被告三井住友銀行の本件23条照会②に対する報告義務違反被告三井住友銀行には,本件23条照会②に対する報告を拒否すべき正当な理由 今後危害が加えられるのではないかという恐怖心,不安感等を抱いた。 イ被告三井住友銀行の本件23条照会②に対する報告義務違反被告三井住友銀行には,本件23条照会②に対する報告を拒否すべき正当な理由はなく,同被告による報告拒否は違法である。 (ア) 23条照会に対する報告義務の存在被告三井住友銀行が本件23条照会②に対して報告する義務を負っていることは,前記(1)(原告Aの主張)イのとおりである。 (イ) 23条照会に対する報告義務違反の判断基準23条照会に対する報告義務違反の判断基準は,前記(1)(原告Aの主張)ウ(ア)のとおりである。 (ウ) ヤミ金に係る事件の特殊性ヤミ金に係る事件の特殊性は,前記(1)(原告Aの主張)ウ(イ)のとおりである。 (エ) 本件への当てはめa 本件においては,本件23条照会②に対する報告を拒絶することによって守られる利益は,報告することによってもたらされる公共的利益と同じかそれを優越するほど高度のプライバシー性,秘密性を有するものではない。 被告三井住友銀行が本件23条照会②に対する報告をすることによってもたらされる利益としては,原告会社が速やかに本件小切手及び異議申立提供金の返還を受けるという法的利益並びに債務処理事件,債務不存在確認及び小切手金返還請求事件についての真実発見等の公共的利益が認められる。他方,被告三井住友銀行が本件23条照会②に対する報告を拒否することによって守られる利益としては,Dのプライバシーであるところ,その内容はDの住所及び電話番号に関する情報のみであり,そもそも,貸金業者であるエース企画ことDは,貸金業規制法により,貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たり,相手方の請求があったときは,貸金業者の商号,名称又は氏名及びその取立てを行う者の氏名等を相手方に明らかにしな ース企画ことDは,貸金業規制法により,貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たり,相手方の請求があったときは,貸金業者の商号,名称又は氏名及びその取立てを行う者の氏名等を相手方に明らかにしなければならないことが,罰則の制裁をもって規定されているのであるから,そのプライバシー性は前科前歴などとは比較にならないほど低いと考えられる。したがって,本件においては,被告三井住友銀行が本件23条照会②に対する報告を拒否することによってもたらされる公共的利益の方が,それを拒否することによって守られるプライバシーよりもはるかに優越する。 また,小切手の振出人である原告会社としては,自己の振り出した小切手の所持人(口座開設者)に関する情報は,自己情報というべきものであり,預金契約者には氏名及び住所等を秘匿すべき法益はないというべきである。 bDの住所及び電話番号のような情報については,23条照会を求めることが唯一の立証方法であることまでは要求されない(上記(イ)参照)が,本件においては唯一の立証方法であった。 すなわち,上記(ウ)の事情に加え,原告会社代理人は判明しているエース企画の電話番号につき23条照会をしたものの,その加入者はエース企画でもDでもない単なる電話回線のレンタル業者(電話代行業者)であったから,エース企画の特定の手がかりとなるのは本件預金口座②のみであり,原告会社代理人としては,別件訴訟の被告であるエース企画(及びD)を特定し,また,同社を刑事告訴するためには,被告三井住友銀行に対し23条照会をし,Dの住所及び電話番号の報告を得る以外には他に立証方法がなかった。 c 以上のとおり,本件においては,本件23条照会②に対する報告によってもたらされる公共的利益と同じかそれに優越するほど高度のプライバシー性,秘密性を有する利益自体が存在せ 他に立証方法がなかった。 c 以上のとおり,本件においては,本件23条照会②に対する報告によってもたらされる公共的利益と同じかそれに優越するほど高度のプライバシー性,秘密性を有する利益自体が存在せず,被告三井住友銀行が本件23条照会②に対する報告を拒絶することによって守られる利益自体が存在しないから,被告三井住友銀行の報告拒否は弁護士法23条の2に基づく報告義務に違反し,違法である。 (オ) 被告三井住友銀行の主張に対する反論a 被告三井住友銀行は,銀行は顧客に対して守秘義務を負っているから,照会申出弁護士又はその依頼者において報告拒否に合理的理由がないことを立証した場合には当該報告拒否は違法になる,顧客の同意を得られない場合には報告拒否には合理的な理由がある,などと主張する。 しかし,銀行が顧客に対して守秘義務を負うことを定めた明文規定は存在しないから,守秘義務には法的根拠がないし,その内容も明らかではない。 また,そもそも,23条照会は,情報の開示によって不利益が生じる可能性がある(したがって,顧客等から苦情等が出る可能性もある)ことを当然の前提としているのであるから,顧客の不同意のために報告することができないという理由は銀行の営業政策的配慮にほかならず,報告拒否を正当化するものではない。特に,本件においては,被告三井住友銀行は,ヤミ金とのトラブルを避けるために報告拒否をしているにすぎないというべきである。そして,被告三井住友銀行が主張する基準は,漠然,広範,不明確,あいまい,主観的なものであり,銀行が自己がリスクを負うと感じれば常に報告拒否が正当化されるものであって,基準として無意味である。また,同基準は,23条照会の高度の公共的利益と報告拒否によって守られる預金者の利益を個別具体的に比較考量するという姿勢が欠如しており,不合理で 否が正当化されるものであって,基準として無意味である。また,同基準は,23条照会の高度の公共的利益と報告拒否によって守られる預金者の利益を個別具体的に比較考量するという姿勢が欠如しており,不合理である。 さらに,立証責任の点についても,23条照会に対する報告義務は法律上の義務であって,これに違反することが直ちに正当化されることはないのが原則であることからすれば,報告を拒絶する側において,報告拒否につき合理的な理由があることを立証しなければならないのは当然のことであるというべきである。 b 被告三井住友銀行は,Dがヤミ金であるかどうかが明らかでなかったから報告することはできなかったなどと主張する。 しかし,被告三井住友銀行としては,本件預金口座②の口座一つを確認すれば足りる(特に,銀行等の金融機関には,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律に基づき疑わしい取引の届出義務がある。)ことからすれば,上記事由が報告を拒否する理由にはならない。 c 被告三井住友銀行は,捜査機関による捜査が効果的であり,ヤミ金業者の預金口座を調査することがヤミ金を把握する唯一の手段ではないなどと主張する。 しかし,本件当時においては,捜査機関はヤミ金被害者による告訴の受理を拒むのが通常であり,また,捜査機関が捜査対象者の情報を漏らすことがないこと等からすれば,預金口座の調査こそがヤミ金特定のための唯一の手段であった。 ウ被告三井住友銀行の本件調査嘱託に対する報告義務違反被告三井住友銀行には,本件調査嘱託に対する報告を拒否すべき正当な理由はなく,同被告による報告拒否は違法である。 (ア) 調査の嘱託に対する報告義務の存在調査の嘱託は,証拠資料の特別な簡易の採集方法としての証拠調べ手続であって,十分な資料と設備を持つ官公庁や会社など,広く公私の団体を 報告拒否は違法である。 (ア) 調査の嘱託に対する報告義務の存在調査の嘱託は,証拠資料の特別な簡易の採集方法としての証拠調べ手続であって,十分な資料と設備を持つ官公庁や会社など,広く公私の団体を利用して,争いのある事実の真否判断に必要な事実の調査を嘱託し,その報告を得て証拠を採集すること,経験法則,学識経験や法規に関する知識の報告を求めることを目的とするものであって,民事訴訟の目的である真実の解明,適正,迅速な裁判,訴訟経済に資するためのものであり,裁判所において,円滑に誤りのない裁判をするために必要不可欠な制度である。そうであるとすれば,調査の嘱託に対する報告義務があるのは明らかである。 昭和56年最判は,前科等の有無が訴訟等の重要な争点となっていて,市区町村長に照会して回答を得るのでなければ他に立証方法がないような場合には,裁判所から前科等の照会を受けた市区町村長はこれに応じて前科等につき回答をすることができるとしており,同最判は,裁判所の裁判という公共性,公益性から,裁判所の照会の報告義務について高度の報告義務があると判示していることは明らかである。 よって,調査の嘱託を受けた官公庁その他の団体は,裁判の公共性,公益性を超える法益がある場合を除いて,これに報告すべき義務がある。 (イ) 調査の嘱託に対する報告義務違反の判断基準上記(ア)のとおり,調査の嘱託の被嘱託者はこれに応じる法律上の義務を負っていることからすれば,被嘱託者は,裁判の公共性,公益性を超える法益がある場合を除いて,嘱託に係る事項を報告する義務があるというべきである。 そして,上記の法益の有無は調査の嘱託を行う裁判所が判断するのであって,被嘱託者が判断することは許されないから,調査の嘱託に対する報告を拒否する行為は原則として違法である。 (ウ) ヤミ金に係る事 そして,上記の法益の有無は調査の嘱託を行う裁判所が判断するのであって,被嘱託者が判断することは許されないから,調査の嘱託に対する報告を拒否する行為は原則として違法である。 (ウ) ヤミ金に係る事件の特殊性ヤミ金に係る事件の特殊性は,前記(1)(原告Aの主張)ウ(イ)のとおりである。 (エ) 本件への当てはめDは,原告会社との金融の取引をした業者(あるいはその関係者)であるから,貸金業規制法によって自己の氏名及び住所等を明らかにすることを義務付けられており,仮にDが登録貸金業者でなかったとしても,取引の当事者が相手方に対してその氏名及び住所を開示することは取引の基本的義務というべきである。 そして,振込人と銀行との間には直接の契約関係はないものの,振込人にとっては,自己が振り込んだ金員に係る情報は自己情報ということができ,振込を受けた預金契約者が振込人に対して氏名及び住所を秘匿すべき法益は考えられない。 さらに,ヤミ金への返済は,支払義務のない弁済あるいは争いのある債務の弁済であることが一般的であるから,これは振込人が支払義務がないにもかかわらず入金した誤入金の場合(誤入金の場合には,銀行は預金口座開設者の情報を開示する扱いをしている。)と同じということができる。 したがって,ヤミ金に係る事件の特殊事情(特に,他にヤミ金特定のための代替手段がないこと)をも併せかんがみると,本件において裁判の公共性等を超える法益があるとはいえないから,被告三井住友銀行が本件調査嘱託に対する報告を拒否したことには正当な理由がなく,被告三井住友銀行の報告拒否は調査の嘱託に対する報告義務に違反し,違法である。 (オ) 被告三井住友銀行の主張に対する反論被告三井住友銀行の主張が失当であることは,前記イ(オ)のとおりである。 エ被告三井住友銀行の報告義務違 調査の嘱託に対する報告義務に違反し,違法である。 (オ) 被告三井住友銀行の主張に対する反論被告三井住友銀行の主張が失当であることは,前記イ(オ)のとおりである。 エ被告三井住友銀行の報告義務違反等と原告Bらに対する不法行為(ア) 被告三井住友銀行は,被照会者が法律上23条照会ないし調査嘱託に対する報告義務を負っているとしても,これらの義務は一般公法上の義務であり,報告拒否につき何ら制裁がないことからすると,被照会者が報告義務に違反しても私法上の不法行為責任を負わないなどと主張する。 しかし,故意又は過失によって法律上の義務に違反する行為は,原則として違法の評価を受け,その結果,特定の私人が損害を被った場合には,上記義務が私法上の義務か公法上の義務かを論ずるまでもなく,当該行為は不法行為責任を発生させるのであって,仮に23条照会ないし調査嘱託に対する報告義務が公法上の義務であったとしても,本件では,被告三井住友銀行の報告義務違反により,照会申出弁護士(植田弁護士)の依頼者である原告Bらが具体的に不利益及び損害を被ったのであるから,被告三井住友銀行は,原告Bらが被った損害の賠償責任を負う。 また,法律上の義務違反に対して国家が制裁を与えるかどうかは,国家が当該義務を制裁(過料,罰金及び刑罰)を課してまで遵守させるべき義務と考えているかどうかという立法政策上の問題にすぎず,義務違反の結果損害が発生した場合に不法行為責任が発生するか否かという問題とは無関係である。そして,法律上義務が課せられているということは,法が特定の法益を保護することを目的としているということであり,必ず何らかのサンクション(民事上の損害賠償責任も当然含まれる。)が伴うのであって,それが伴わなければもはやそれを義務ということはできない。よって,報告拒否の場合に法律上制 しているということであり,必ず何らかのサンクション(民事上の損害賠償責任も当然含まれる。)が伴うのであって,それが伴わなければもはやそれを義務ということはできない。よって,報告拒否の場合に法律上制裁規定がないからといって,民事上の損害賠償責任が発生しないとはいえないことは明らかである。 (イ) 被告三井住友銀行は,23条照会に対する報告義務は弁護士会に対する義務であり,また,調査嘱託に対する報告義務は裁判所に対する義務であるから,当該義務違反の効果はその名あて人である弁護士会ないし裁判所に対してしか及ばず,同被告の報告拒否が当該義務違反に当たるとしても,同被告は第三者である原告Bらに対しては不法行為責任を負わないなどと主張する。 しかしながら,23条照会に関する上記主張が失当であることは,前記(1)(原告Aの主張)エ(イ)のとおりである。 また,調査の嘱託は,訴訟を主宰し訴訟指揮を行う権限を有するのが裁判所であることにかんがみ,このような権限を有する立場にある裁判所が審理を行う上で必要であると判断した調査事項についての報告を嘱託することになっているにすぎないから,被嘱託者の報告拒否によって具体的な不利益を被るのは,義務の名あて人である裁判所ではなく,調査事項についての立証責任を負う当事者である。したがって,調査の嘱託に対する報告義務が裁判所に対する義務であるとしても,同義務違反の結果,当事者に損害が発生した場合は,当然不法行為責任が発生するというべきである。 オ信義則に基づく開示義務違反被告三井住友銀行は,原告会社に対し,信義則上,23条照会及び調査嘱託という手続を用いるまでもなく,ヤミ金の特定のための必要不可欠な立証手段であるヤミ金の氏名及び住所という情報を開示する義務を負っている。その理由は,前記(1)(原告Aの主張)オのとおり 会及び調査嘱託という手続を用いるまでもなく,ヤミ金の特定のための必要不可欠な立証手段であるヤミ金の氏名及び住所という情報を開示する義務を負っている。その理由は,前記(1)(原告Aの主張)オのとおりである。 そして,被告三井住友銀行の報告拒否には正当な理由がなく,違法であることも,前記(1)(原告Aの主張)オのとおりである。 カ損害(ア) 原告会社の損害原告会社が被った損害300万円の内訳は以下のとおりである。 a 23条照会送付費用等 5380円原告会社は,被告三井住友銀行が違法な報告拒否を行ったため,当然に報告を得られたはずのDの住所及び電話番号を取得できず,本件23条照会②を申し出るために要した以下の費用が無駄になった。 (a) 23条照会送付費用 5300円(b) 郵便切手代 80円b 内容証明郵便送付費用 3700円原告会社は,本件23条照会②に対する報告を督促するため,被告三井住友銀行に対して2度内容証明郵便を送付し,その費用として合計3700円を支出した。 c 商業登記簿謄本取寄費用 4040円原告会社は,被告三井住友銀行が本件23条照会②に対する報告を拒絶したことにより,別件訴訟及び本件訴訟の提訴を余儀なくされたため,訴状の添付書類としての商業登記簿謄本の取寄費用を以下のとおり支払った。 (a) 被告三井住友銀行分 1720円(b) 原告会社分 2320円(=1160円×2通)d 印紙代及び郵券代 4万7478円原告会社は,被告三井住友銀行が本件23条照会②に対する報告を拒絶したことにより,別件訴訟及び本件訴訟の提訴を余儀なくされたため,以下のとおり印紙代及び郵券代を支払った。 (a) 別件訴訟 9328円(b) 本件訴訟 3万8150円e 弁護士費用 36万4000円原告会社は,被告三井住友銀行 の提訴を余儀なくされたため,以下のとおり印紙代及び郵券代を支払った。 (a) 別件訴訟 9328円(b) 本件訴訟 3万8150円e 弁護士費用 36万4000円原告会社は,被告三井住友銀行が本件23条照会②に対する報告を拒絶したことにより,別件訴訟及び本件訴訟の提訴を余儀なくされたため,以下のとおり弁護士費用を支払った。 (a) 別件訴訟 11万2000円(着手金及び報酬)(b) 本件訴訟 25万2000円(着手金=本件訴訟の請求額300万円の8%+消費税)f 異議申立提供金運用利益 1972円原告会社は,異議申立提供金40万円を取り戻すために別件訴訟を提起したが,被告三井住友銀行が本件調査嘱託の回答を拒否したため,公示送達の手続を余儀なくされた。この手続を経たことにより,別件訴訟の手続は,原告会社が公示送達の申立を行った日である平成14年10月7日から少なくとも1か月間の遅延を余儀なくされ,その期間分だけ,原告会社による異議申立提供金の取戻しが遅れ,異議申立提供金を運用する機会及びその利益を奪われた。これにより原告会社が被った損害は,商事法定利息年6%で計算すると1972円となる。 (計算式)40万円×6%×30日/365日=1972円g 無形的損害 257万3430円原告会社及びその代理人は,本件小切手及び預託した異議申立提供金の返還を受けるためにDと交渉する必要があったが,被告三井住友銀行の本件23条照会②に対する報告拒否により,別件訴訟の提起を余儀なくされた。さらに,原告会社は,被告三井住友銀行の本件調査嘱託に対する報告拒否により,別件訴訟の訴状の必要的記載事項である被告の住所が明らかとならず,結局公示送達手続によらざるを得なくなり,別件訴訟の判決が言い渡されるまで10か月間もの期間を費やすなど,早期に本件小切手及び により,別件訴訟の訴状の必要的記載事項である被告の住所が明らかとならず,結局公示送達手続によらざるを得なくなり,別件訴訟の判決が言い渡されるまで10か月間もの期間を費やすなど,早期に本件小切手及び異議申立提供金の返還を受けることができず,迅速な法的手続を受ける権利が侵害された。さらに,原告会社は,被告三井住友銀行が現在に至ってもDの住所及び電話番号を明らかにしないため,小切手の返還について強制執行手続をとることもできない状況にある。上記のように,原告会社は,法的救済を受ける権利を侵害され,多くの労力と時間を費やし,長期にわたり法的に不安定な地位にとどめおかれるなど多大な無形の損害を受けた。 上記の損害を金銭的に評価するならば,257万3430円を下らない。 (イ) 原告Bの損害原告Bは,被告三井住友銀行の報告拒否により,エース企画との間の本件小切手及び異議申立提供金の返還交渉並びに別件訴訟が円滑に進まず,長期にわたり精神的に不安定な地位におかれるなど,精神的損害を受けた。また,現在においても,エース企画と思われる者からの嫌がらせの電話(無言電話)に悩まされるなど,エース企画からの取立ての恐怖ないし不安等を抱きつつ生活せざるを得ないという精神的損害を受けている(この損害は,被告三井住友銀行がDの住所及び電話番号を開示するまで,継続して発生し続けるものである。)。 上記の損害を金銭的に評価するならば,150万円を下らない。 キ相当因果関係の存在被告三井住友銀行の報告拒否と原告Bらの損害との間には相当因果関係がある。 (ア) 条件関係の存在a 本件23条照会②に対する報告拒否について被告三井住友銀行が本件23条照会②に対する報告をしていたならば,原告会社代理人は,遅くとも平成14年4月中には,受任通知書をDに対して送付し,Dの取立行為 本件23条照会②に対する報告拒否について被告三井住友銀行が本件23条照会②に対する報告をしていたならば,原告会社代理人は,遅くとも平成14年4月中には,受任通知書をDに対して送付し,Dの取立行為を停止させて本件小切手及び異議申立提供金の返還の交渉をしたり,速やかに債務不存在確認訴訟等を提起し,直ちにDに別件訴訟の訴状を送達させて円滑に訴訟手続を進行させるなど,早期に原告会社の法的救済を図ることができるとともに,原告Bがヤミ金業者からの取立てに怯えることもなかったはずである。 この点,被告三井住友銀行は,受任通知書を送付しても取立てが止まることはなかったなどと主張するが,ヤミ金は,受任通知書を受け取った後は自己が検挙されるリスクをおそれ,違法な取立てを断念するのであるから,上記主張は失当である。 b 本件調査嘱託に対する報告拒否について被告三井住友銀行が本件調査嘱託に対する報告をしていたならば,早期にDに訴状が送達されて別件訴訟手続が円滑に進行するとともに,早期に強制執行手続によって原告会社の権利の実現を図ることができたはずである。 (イ) 予見可能性の存在被告三井住友銀行は,原告会社が取立行為を受けることを予見することは可能であった。 原告会社代理人は,被告三井住友銀行に対し,書面で,複数回(平成14年11月11日及び同年12月6日)にわたり,Dはヤミ金業者であり本件預金口座②は犯罪者が取立てに利用している預金口座であること,同口座の開設者の住所及び電話番号のみがDを特定する唯一の方法であること等を示して,Dの住所及び電話番号の報告及び回答を督促している(甲B12,13)。そうであるとすれば,これを受領した被告三井住友銀行としては,Dの住所及び電話番号が別件訴訟の当事者を特定し同訴訟を進行させるために必要かつ重要な事項であること 答を督促している(甲B12,13)。そうであるとすれば,これを受領した被告三井住友銀行としては,Dの住所及び電話番号が別件訴訟の当事者を特定し同訴訟を進行させるために必要かつ重要な事項であること,Dの住所及び電話番号を開示しなければ他に立証方法がないこと,原告Bらが前記の損害を被ること等を十分に了知し又は予見し得たというべきである。 また,被告三井住友銀行としては,本件預金口座②の取引履歴をみれば,支払呈示された小切手が少額で一定していること,端数がなく不渡率が極端に高いこと等を確認することができ,当該預金口座がシステム金融の貸金の回収に利用されている事実を認識することは容易であったといえる。 (被告三井住友銀行の主張)被告三井住友銀行は,原告Bらに対して不法行為責任を負わない。 ア本件23条照会②に対する報告義務の不存在被告三井住友銀行は本件23条照会②に対して報告する義務を負っていない。 (ア) 報告義務の不存在弁護士法23条の2第2項は「報告を求めることができる」と規定しているのみで,報告義務を正面から規定していないから,23条照会を受けた団体は,法律上これに対して報告すべき義務を負わないというべきである。 (イ) 報告拒否と合理的理由仮に23条照会を受けた団体等に報告すべき義務があるとしても,少なくとも,報告しないことに合理的な理由がある場合には,報告しないことは義務違反にならない。これを敷えんすると,銀行が23条照会に対して報告しないことは原則として義務違反とはならず,報告することによって銀行がリスクを負担することがないことが明らかな例外的な場合に限って義務違反が問題となるのである。 しかるところ,銀行は,顧客との間にした取引及びこれに関連して知り得た情報を正当な理由なくして他に漏らしてはならない義務(守秘義務)を が明らかな例外的な場合に限って義務違反が問題となるのである。 しかるところ,銀行は,顧客との間にした取引及びこれに関連して知り得た情報を正当な理由なくして他に漏らしてはならない義務(守秘義務)を顧客に対して負っており,顧客の情報を開示すると,守秘義務違反として顧客から損害賠償請求を受ける可能性があるから,銀行は,合理的な理由がある場合(当該顧客の承諾を得ているなど上記義務が免除されることが明らかな場合)でない限り,他からの照会等に対し上記の情報を第三者に開示することはできない。本件23条照会に係る照会事項である預金口座開設者の住所及び電話番号は,預金取引に関して銀行が知り得た情報であり,かつ,預金者としてはみだりに第三者に知られたくない情報であるから,銀行の守秘義務の範囲に含まれることは明らかである。そして,守秘義務に属する事項について第三者に開示するか否かの判断は,銀行自身が自己の立場に立って行うものであり,直接顧客の個人情報の保護を目的として行うものではない。 そうであるとすれば,銀行が上記守秘義務の対象となる情報について23条照会に対する報告を拒否することは原則として報告義務違反とならず,照会申出弁護士又はその依頼者が上記の合理的な理由がないことについて主張立証した場合に限り,銀行の報告拒否が報告義務違反になるものというべきである(昭和56年最判参照)。そして,合理的な理由がないとして義務違反が問題となるのは,報告することによって銀行が守秘義務違反を理由とする責任を負わされることについてのリスクを負担することがないことが明らかな例外的な場合に限られるというべきである。 本件の場合,被告三井住友銀行は,本件23条照会②を受けた際,Dに連絡を取り,同人にDの住所及び電話番号の開示についての意思を確認したところ,同人はいずれも開示を拒 合に限られるというべきである。 本件の場合,被告三井住友銀行は,本件23条照会②を受けた際,Dに連絡を取り,同人にDの住所及び電話番号の開示についての意思を確認したところ,同人はいずれも開示を拒否する旨の意思を表示したから,同被告は報告することができない旨回答したのであり,上記報告拒否には合理的な理由があった。 (ウ) 原告Bらの主張に対する反論a 原告Bらは,23条照会の必要性は弁護士会が判断すれば足りるから,銀行がそれを判断することはできないなどと主張するが,この主張は,上記(イ)のとおり銀行が顧客から損害賠償請求を受けるおそれがあるという銀行のリスクを無視しており,失当である。 b 原告Bらは,Dは犯罪者であるからそのプライバシー,信用等を保護する必要はないなどと主張するが,本件23条照会②において,Dが犯罪者であることは明らかではなく,それを証明ないし疎明する資料は何ら提供されていないのであって,被告三井住友銀行は,原告会社の主張の正否を判断することができなかった。 c 原告Bらは,本件預金口座②の取引履歴をみれば,当該口座がシステム金融業者の貸金の回収に利用されている事実等を確認すること等は容易であったなどと主張するが,銀行が顧客の取引履歴を一々チェックすることは不可能であるし,上記のような義務は銀行にはない。 d 原告Bらは,ヤミ金業者を特定する方法としては預金口座開設者の氏名及び住所を知ることが唯一の手段であるなどと主張するが,ヤミ金業者が犯罪者であるならば,捜査機関に告訴等を行い捜査を行わせるのが最も早くかつ効果的であるというべきである。また,それが効果的に行われていないとすれば,立法によって解決すべき問題である。 イ本件調査嘱託に対する報告拒否について(ア) 報告義務の不存在調査の嘱託を受けた団体は,法律上これに対し ある。また,それが効果的に行われていないとすれば,立法によって解決すべき問題である。 イ本件調査嘱託に対する報告拒否について(ア) 報告義務の不存在調査の嘱託を受けた団体は,法律上これに対して報告すべき義務を負わない。 (イ) 報告拒否と合理的理由本件調査嘱託に対する被告三井住友銀行の報告拒否は,合理的な理由に基づくものであることは,前記ア(イ)のとおりである。 ウ原告Bらに対する不法行為の不成立(ア) 23条照会に対する報告義務があるとしても,その義務は被照会者に協力を求めるという一般公法上の義務であり,報告拒否について何ら制裁がないことからすると,上記報告義務は当然に損害賠償請求権という私法上の効果を発生させる義務ではない。 また,調査の嘱託も,制裁を課さずに公私の団体に協力を求めるものであり,これに応じる義務があるとしても,それは一般公法上のものにすぎないから,当然に損害賠償請求権という私法上の効果を発生させるものではない。 この点,原告は,法的義務に違反して他人に損害を与えれば,当然にその損害を賠償する義務を負うなどと主張するが,一般公法上の義務違反が当然に私法上の効果を有するものではなく(法的義務違反の相対性),法的義務に違反した行為のすべてが不法行為に該当するわけではないことは当然のことである。 そして,報告義務違反は,報告すべきであるという作為義務を前提としてこれを履行しないという不作為であるから,このような不作為につき不法行為が成立するためには,報告すべきであるという私法上の作為義務の存在が必要である(この点において,本件は,23条照会に対し報告したことにつき不法行為の成否を論じている昭和56年最判とは事案を異にする。)。しかるに,上記のとおり,本件23条照会②及び本件調査嘱託を受けた被告三井住友銀行には原告 本件は,23条照会に対し報告したことにつき不法行為の成否を論じている昭和56年最判とは事案を異にする。)。しかるに,上記のとおり,本件23条照会②及び本件調査嘱託を受けた被告三井住友銀行には原告Bらが主張する損害賠償請求権の前提となる私法上の報告義務がないから,本件23条照会②及び本件調査嘱託に対して報告を拒否したことについて被告三井住友銀行はBらに対して損害賠償義務を負うものではない。 (イ) 23条照会は,弁護士会に認められた制度であり,個々の弁護士に認められた制度ではない。したがって,仮に23条照会を受けた団体が,同照会に対して報告する義務を負うとしても,被照会者は同義務を照会をした弁護士会に対して負っているのであって,照会申出弁護士やその依頼者を含むその他の第三者に対して負っているのではない。 また,民訴法186条に基づく調査の嘱託は,裁判所が職権で行うものであり,仮に調査嘱託を受けた団体が調査嘱託に対して報告する義務を負うとしても,当該義務は,真実発見のための証拠の収集という目的のための公法上の義務であり,被嘱託者はこの義務を裁判所に対して負っているのであって,調査の嘱託の職権発動を促した代理人弁護士あるいは当事者ないしその代表者を含むその他の第三者に対して負っているのではない。 上記(ア)のとおり,報告義務違反という不作為について不法行為が成立するためには,当該相手方に対して報告すべきであるという私法上の作為義務の存在が必要であるから,本件23条照会②及び本件調査嘱託に対して報告を拒否したことについて被告三井住友銀行はBらに対して損害賠償義務を負うものではない。 エ信義則に基づく開示義務の不存在原告Bらは,信義則上,被告三井住友銀行はDの住所及び電話番号を開示する義務を負っているなどと主張するが,本件は,そもそも信義則を 害賠償義務を負うものではない。 エ信義則に基づく開示義務の不存在原告Bらは,信義則上,被告三井住友銀行はDの住所及び電話番号を開示する義務を負っているなどと主張するが,本件は,そもそも信義則を適用することができる場面ではない。すなわち,信義則は,権利を行使し義務を履行するという一定の法律関係にある当事者間に適用されるものであるが,本件の被告三井住友銀行と原告会社との間には直接の取引関係はなく,また,権利を行使し義務を履行するという関係にもない。したがって,原告Bらの信義則に基づく開示義務の主張は,それ自体失当である。 オ損害について原告Bらの損害の発生については争う。 カ相当因果関係の不存在原告会社に損害が発生していたとしても,被告三井住友銀行の報告拒否と損害との間に相当因果関係はない。 (ア) 原告会社の損害との間の因果関係被告三井住友銀行がDの住所及び電話番号を報告していたとしても,原告会社代理人がDと小切手の返還の交渉をしたり,速やかに債務不存在確認請求訴訟を提起したり,直ちに別件訴訟の手続が円滑に進行したかどうかは不明である(Dがヤミ金業者ならなおさら不明である。)から,被告三井住友銀行の報告拒否と原告会社について早期救済を図ることができなかったこととの間には因果関係はない。 (イ) 原告Bの損害との間の因果関係被告三井住友銀行がDの住所及び電話番号を報告していたとしても,受任通知書がDに到達していたとはいい切れないし,仮に到達していたとしても,Dがヤミ金業者であれば,原告会社に対する取立てが止んでいたとはいえないから,被告三井住友銀行の報告拒否と原告Bがヤミ金業者の取立てにおびえていたこと等との間には因果関係はない。 キ被告三井住友銀行は,被告みずほ銀行の主張(前記(1)参照)を自己に有利に援用する。 第3 当 被告三井住友銀行の報告拒否と原告Bがヤミ金業者の取立てにおびえていたこと等との間には因果関係はない。 キ被告三井住友銀行は,被告みずほ銀行の主張(前記(1)参照)を自己に有利に援用する。 第3 当裁判所の判断 1 前記前提となる事実等,証拠(甲A1ないし11,甲B1ないし15,18ないし20,22,23,乙B1)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(なお,前記前提となる事実等を適宜含めて記載する。)。 (1) 原告A関係ア(ア) 原告Aは,平成11年ころから生活費が不足するようになり,消費者金融業者から金員を借り入れるようになった。しかし,原告Aは,その消費者金融業者からの借入金の返済にも窮するようになり,その返済資金を捻出するため,平成13年ころからは携帯電話の番号のみしか明らかにしないような貸金業者からも金員を借り入れるようになった。 (イ) 原告Aは,平成13年夏ころ,「東洋」と名乗る貸金業者(以下「東洋」という。)から,元金を一括して返済しない限り10日ごとに1万円を支払わなければならないなどの約定で,4万円(ただし,6万円の借用証を差し入れた。)を借り入れた。原告Aは,平成14年2月ころ,上記借入金を完済した。 原告Aは,同年3月ころ,再度東洋から4万円を借り入れた。 (ウ) 東洋は,上記(イ)の各貸付けの際,原告Aに対し,連絡先として東洋の従業員の携帯電話の番号を,返済金の振込先として本件預金口座①を指定するのみであった。 (エ) 原告Aは,上記(イ)の各借入金の弁済として,本件預金口座①に下記のとおり金員を振り込んだ。なお,原告Aは,上記の振込送金以外にも,東洋の従業員に対して直接現金を手渡して弁済したこともあった。【甲A9ないし11】記平成13年11月 1日 1万円平成13年11月12日 1万円平成1 原告Aは,上記の振込送金以外にも,東洋の従業員に対して直接現金を手渡して弁済したこともあった。【甲A9ないし11】記平成13年11月 1日 1万円平成13年11月12日 1万円平成13年12月 3日 1万円平成13年12月13日 1万円平成13年12月25日 1万円平成14年 1月 8日 1万4000円平成14年 1月17日 1万円平成14年 1月30日 1万2000円平成14年 3月18日 1万円平成14年 3月28日 1万円イ原告Aは,自己の借入金債務の金利の返済にも窮するようになったことなどから,平成14年4月22日ころ,大阪弁護士会所属の前川弁護士に借入金債務の返済について相談し,同日ころ,前川弁護士に対して破産及び免責の申立ての代理を委任した。しかしながら,前川弁護士は,東洋の氏名及び住所等が判明していなかったため,東洋に対しては代理人就任通知書(受任通知書)を送付することができなかった。 ウ(ア) 前川弁護士は,平成14年4月26日,東洋の氏名及び住所等を把握するため,大阪弁護士会に対し,照会先を「株式会社みずほ銀行上六支店」,所属弁護士を「前川清成」,依頼者を「A」,相手方を「C」,事件名を「未提訴破産免責申立事件」,申出の理由を「1依頼者は,相手方を始め19名の高利貸しから約350万円の借入がある。ところが,依頼者には収入も資産もなく,返済を継続することができないので,追って大阪地方裁判所に自己破産を申し立てるべく,用意している。2 自己破産を申し立てるに際しては,裁判所に対して債権者一覧表を提出すべきところ,相手方は,無登録のいわゆる「システム金融」と思われ,依頼者に対してその名称と下記送金先銀行口座のみを知らせていたに過ぎない。加えて,貸金業規制法に基づく取立 対して債権者一覧表を提出すべきところ,相手方は,無登録のいわゆる「システム金融」と思われ,依頼者に対してその名称と下記送金先銀行口座のみを知らせていたに過ぎない。加えて,貸金業規制法に基づく取立規制を生じさせるため,相手方に対して代理人就任通知書を送付したいが,上記の通り相手方の名称,所在が判明しない。」などと照会書に記載して,被告みずほ銀行上六支店に設けられた「C」名義の預金口座(本件預金口座①)につき,これを有する者の名称(氏名あるいは商号)及び所在地(住所)の報告を求めるよう23条照会を申し出た。同弁護士会は,同日,上記申出を受け付けた。【甲A1の1】(イ) 大阪弁護士会は,上記(ア)の申出を受け付けた後,被告みずほ銀行上六支店に対し,上記(ア)の照会書を送付して23条照会をし,本件預金口座①を有する者の名称(氏名あるいは商号)及び所在地(住所)を報告するよう要求した(本件23条照会①)。 エ被告みずほ銀行上六支店の従業員が平成14年5月7日に前川弁護士に電話をかけたところ,前川弁護士は,同従業員に対し,単に相手方の承諾が得られないことだけでは,本件23条照会①に対する報告を拒否することはできないなどと説明した。 オ被告みずほ銀行上六支店は,平成14年5月10日,大阪弁護士会に対し,相手方の承諾が得られないため本件23条照会①に対する報告をすることはできないなどと記載した同月9日付けの回答書を送付した。 カ東洋の従業員は,平成14年6月2日午後10時40分ころ,原告Aの自宅に赴き,「金返さんかい。」,「払わへんかったら,家の中で暴れたる。」などと近所に聞こえるような大声で怒鳴るなどした。 キ(ア) 原告A代理人(前川弁護士ら)は,平成14年6月7日,被告みずほ銀行に対し,原告A代理人は,「東洋」という屋号で貸金業を営む者を特定す 。」などと近所に聞こえるような大声で怒鳴るなどした。 キ(ア) 原告A代理人(前川弁護士ら)は,平成14年6月7日,被告みずほ銀行に対し,原告A代理人は,「東洋」という屋号で貸金業を営む者を特定するため,「東洋」が入金口座として使用している本件預金口座①につき,その氏名及び住所を照会している,本件23条照会①に対して報告することは弁護士法に基づく義務であり,本件預金口座①の開設者の承諾が得られないことは回答拒絶の正当事由とはなり得ない,被告みずほ銀行が報告を拒絶すれば,原告A代理人は上記開設者に受任通知書を発送することができず,原告Aは上記開設者から取立てを受け続けることになる,原告Aは,現に同月2日午後10時40分ころ,「東洋」の従業員を名乗るE某という者から取立てを受けた,被告みずほ銀行が回答を拒絶しているため,原告A代理人は,上記取立行為について刑事告訴をすることも不可能である,上記開設者は無登録の貸金業者であると思われる,この書面が到達してから3日以内に本件預金口座①を有する者の氏名及び住所を原告A代理人あてに文書で報告することを求める,などと記載した同月5日付けの書面を内容証明郵便で送付した。しかし,被告みずほ銀行は,原告A代理人に対し,本件預金口座①の開設者の氏名及び住所を報告しなかった。【甲A2】(イ) 原告A代理人(前川弁護士ら)は,平成14年6月19日,被告みずほ銀行に対し,原告A代理人は,同月5日付け内容証明郵便をもって,原告Aが貸金業者から取立てを受け続けていること,その貸金業者は貸金業規制法に基づく貸金業の登録を受けていないと思われることを通知したが,いまだに本件預金口座①の開設者に関して一切回答がない,原告A代理人はこの書面をもって上記通知と被告みずほ銀行の回答拒絶の事実を確認し,もって後日の証拠とする,などと いと思われることを通知したが,いまだに本件預金口座①の開設者に関して一切回答がない,原告A代理人はこの書面をもって上記通知と被告みずほ銀行の回答拒絶の事実を確認し,もって後日の証拠とする,などと記載した同月18日付けの書面を内容証明郵便で送付した。しかし,同被告の従業員は,同月20日,前川弁護士に電話をかけ,本件預金口座①の開設者の氏名及び住所を報告しない旨回答した。【甲A3】ク東洋の従業員は,平成14年6月26日午後9時40分ころ,原告Aの自宅に赴き,「6万円返す気あるのか。」,「今度払ってくれへんかったらその筋に回るで。その方がどんだけ怖いか。」などと近所に聞こえるような大声で怒鳴るなどした。 ケ大阪弁護士会は,平成14年9月27日,被告みずほ銀行上六支店に対し,本件23条照会①に対しては拒否するにつき正当な理由がない限り法的に回答する義務があり,一律かつ抽象的に回答拒否をすることは許されない,本件23条照会①は,貸金業規制法に基づく取立規制を生じさせ,また,破産申立書添付の債権者一覧表を作成する目的があるから,照会の必要性がある,本件預金口座①の開設者の住所等を報告したからといって同人のプライバシーを侵害することにはならず,むしろ同人に対する文書の送達を確実にし,破産申立事件における同人ないしその関係者の手続保障の確保の観点から利益になるものである,本件23条照会①に早急に回答していただきたい,本件においては,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の適用の可能性があるから照会の必要性は一層高く,単に預金者のプライバシー保護等の問題としては処理できない点がある,などと記載した大阪弁護士会会長及び同司法委員会委員長作成に係る同月26日付けの「申入書」と題する書面を送付した。 コ被告みずほ銀行上六支店は,平成14年10月 等の問題としては処理できない点がある,などと記載した大阪弁護士会会長及び同司法委員会委員長作成に係る同月26日付けの「申入書」と題する書面を送付した。 コ被告みずほ銀行上六支店は,平成14年10月17日,大阪弁護士会に対し,本件預金口座①の開設者であるCの氏名及び住所を記載した同日付けの回答書を送付した。 (2) 原告Bら関係ア原告会社は,平成13年ころから資金繰りに窮するようになったため,そのころより複数のいわゆるシステム金融業者から金員を借り入れるようになった。 イ原告会社は,平成14年1月7日,エース企画(電話番号a)に電話をかけ,同社に対して60万円の借入れを申し込み,同日,同社の指示に従い,本件小切手を含む小切手2通(額面金額合計80万円)を各振り出し,それらを品川郵便局留置「エース企画」あてに送付した。これを受けたエース企画は,同日,原告会社名義の当座預金口座に59万5000円を振り込んだ。 ウ原告会社は,平成14年1月,借入金の返済に窮するようになり,同月15日ころ,大阪弁護士会所属の植田弁護士に借入金債務の返済について相談した。そして,原告会社は,同月17日ころ,植田弁護士に対して同社の債務整理等を委任した。 エ(ア) 被告三井住友銀行芝支店は,平成14年1月29日ころ,本件小切手の持参人から本件小切手の取立委任を受けたため,手形交換所において本件小切手の支払呈示をした。 (イ) 原告会社は,不渡りによる手形取引停止処分を回避するため,平成14年1月29日ころ,大阪厚生信用金庫に40万円を預託して小切手の異議申立手続を委任した。これを受けた同金庫が,大阪手形交換所に対し,契約不履行を理由として上記40万円を提供して異議申立てをしたところ,本件小切手の裏面に「D」と記載されていることが判明した。 オ植田弁護士は,平成14年 れを受けた同金庫が,大阪手形交換所に対し,契約不履行を理由として上記40万円を提供して異議申立てをしたところ,本件小切手の裏面に「D」と記載されていることが判明した。 オ植田弁護士は,平成14年3月4日,エース企画の住所等を把握するため,大阪弁護士会に対し,「a」の電話番号で東日本電信電話株式会社と契約している者の氏名,住所及び電話番号等について23条照会を申し出た。これを受けた同弁護士会が,同社に対し,23条照会をして上記事項を報告するよう要求したところ,同社は,同月13日,同弁護士会に対し,電話番号「a」の契約者名が「株式会社アイ・エス・プラン」であること及びその設置場所が「東京都渋谷区bc-d-efg階」であること等を報告した。 カ(ア) 植田弁護士は,平成14年3月22日,大阪弁護士会に対し,照会先を「株式会社三井住友銀行芝支店」,所属弁護士を「植田勝博」,依頼者を「株式会社大東コア技研」,相手方を「株式会社アイ・エス・プランニング」,事件名を「出資法違反及び貸金業法違反の刑事告訴事件並びに契約無効確認訴訟事件」,事件番号を「提訴準備中」,申出の理由を「上記事件につき,原告(告訴人)は,同人が振り出した下記小切手(係争中)につき異議提供金を提供していますが,異議提供金の取戻しのため,契約無効確認請求訴訟の提起の準備中であるところ,その小切手を貴行に持ち込んだ者を特定する必要があります。[小切手の表示]金額金400,000円,振出日平成14年1月21日,振出地大東市,振出人株式会社大東コア技研代表取締役 B,支払場所大阪厚生信用金庫四条畷支店,小切手番号 EB16487」などと照会書に記載して,被告三井住友銀行芝支店に開設されたD名義の預金口座(本件預金口座②)につき,開設者の住所及び電話番号の報告を求めるよう23条照 用金庫四条畷支店,小切手番号 EB16487」などと照会書に記載して,被告三井住友銀行芝支店に開設されたD名義の預金口座(本件預金口座②)につき,開設者の住所及び電話番号の報告を求めるよう23条照会を申し出た。同弁護士会は,同日,上記申出を受け付けた。【甲B7の1】(イ) 大阪弁護士会は,上記(ア)の申出を受け付けた後,被告三井住友銀行芝支店に対し,上記(ア)の照会書を送付して23条照会をし,本件預金口座②の開設者の住所及び電話番号を報告するよう要求した(本件23条照会②)。 (ウ) 被告三井住友銀行は,平成14年4月11日,大阪弁護士会に対し,同被告は顧客に対する守秘義務を負っており,顧客の了解が得られないので,本件23条照会②に対する報告をすることはできないなどと記載した同月8日付けの回答書を送付した。 (エ) 被告三井住友銀行は,上記(ウ)の後から現在に至るまで,本件23条照会②に対する報告をしていない。 キ(ア) 原告会社(代理人植田弁護士ら)は,平成14年6月19日,前記エ(イ)の異議申立提供金40万円の返還を受けるため,大阪地方裁判所に対し,エース企画こと株式会社アイ・エス・プラン(住所東京都渋谷区bc-d-e)及びD(住所東京都渋谷区bc-d-e(株)アイ・エス・プラン方)等を被告として,本件小切手に係る債務が存在しないことの確認並びに本件小切手の返還等を請求する訴訟(別件訴訟)を提起した。しかし,別件訴訟においては,被告のDに対して訴状副本が送達されず,また,被告の株式会社アイ・エス・プランは電話代行業者である旨答弁した。 (イ) 原告会社(代理人植田弁護士ら)は,平成14年7月19日,大阪地方裁判所に対し,Dの住所及び電話番号について調査の嘱託の申出をし,これを受けた同裁判所は,同月30日,被告三井住友銀行に対し,Dの ) 原告会社(代理人植田弁護士ら)は,平成14年7月19日,大阪地方裁判所に対し,Dの住所及び電話番号について調査の嘱託の申出をし,これを受けた同裁判所は,同月30日,被告三井住友銀行に対し,Dの住所及び電話番号について調査を嘱託した(本件調査嘱託)。 (ウ) 被告三井住友銀行は,平成14年8月16日,大阪地方裁判所に対し,Dの了承が得られなかったので,本件調査嘱託に対して回答することはできないなどと記載した同月13日付けの回答書を送付した。 (エ) 原告会社(代理人植田弁護士ら)は,平成14年10月7日,大阪地方裁判所に対し,別件訴訟についてDに対する公示送達を申し立てた。 (オ) 原告会社代理人(植田弁護士ら)は,平成14月11月12日,被告三井住友銀行芝支店に対し,原告会社は「エース企画」という屋号のヤミ金からの借入れに際して同社の指示により本件小切手を振り出した,エース企画の取得する利息は年利1000%以上のもので出資法に明らかに違反するから同社は犯罪金融である,原告会社代理人が照会をしたDは本件小切手を被告三井住友銀行芝支店に持ち込んだ者でヤミ金という犯罪行為に加担する者である,現在1000%以上の明らかな出資法違反の高利を取るヤミ金が大きな社会問題となっている,ヤミ金の住所はほとんどが郵便局留であり,その電話番号も電話代行業の電話回線を利用するなどしており,ヤミ金は巧みにその身元を隠す,そのためヤミ金の正体をつかむにはその者の預金口座から究明せざるを得ない状況にある,犯罪金融に加担するDが開示を了解するはずがなく,その者の了解を得られないことを理由に本件23条照会②に対する回答を拒否することは許されない,被告三井住友銀行が「D」の住所等を開示しないことは犯罪者を隠匿しヤミ金の貸金回収に加担するものといわざるを得ない,原告会社代理 いことを理由に本件23条照会②に対する回答を拒否することは許されない,被告三井住友銀行が「D」の住所等を開示しないことは犯罪者を隠匿しヤミ金の貸金回収に加担するものといわざるを得ない,原告会社代理人はDの住所及び電話番号を明らかにするよう再度要求する,本書送付後2週間以内に処理されないときは法的手続を行う所存である,などと記載した同月11日付けの書面を内容証明郵便で発送した。これを受けた被告三井住友銀行浜松町支店の副支店長は,同月21日,原告会社代理人の浅葉弁護士に電話をかけ,本件23条照会②及び本件調査嘱託に対する報告はしない旨を告げた。【甲B12】(カ) 原告会社代理人(植田弁護士ら)は,平成14年12月10日,被告三井住友銀行芝支店に対し,原告会社は「エース企画」という屋号のヤミ金からの借入れに際して同社の指示により本件小切手を振り出した,エース企画の取得する利息は年利1000%以上のもので出資法に明らかに違反するから同社は犯罪金融である,Dが同支店に本件小切手を持ち込み請求してきたため,原告会社は異議申立提供金を提供し,不渡りを回避し,その後,「エース企画」が小切手の取戻しを拒絶したため,原告会社代理人は別件訴訟を提起した,原告会社代理人が照会をしたDは本件小切手を被告三井住友銀行芝支店に持ち込んだ者でヤミ金という犯罪行為に加担する者である,ヤミ金の住所はほとんどが郵便局留であり,その電話番号も電話代行業の電話回線を利用するなどしており,ヤミ金は巧みにその身元を隠す,そのためヤミ金の正体をつかむにはその者の預金口座から究明せざるを得ない状況にある,被告三井住友銀行の回答拒否により原告会社は別件訴訟に係る被告の特定,送達先が明らかにならず訴訟手続が進行しない状況にある,現在1000%以上の明らかな出資法違反の高利を取るヤミ金が大きな 況にある,被告三井住友銀行の回答拒否により原告会社は別件訴訟に係る被告の特定,送達先が明らかにならず訴訟手続が進行しない状況にある,現在1000%以上の明らかな出資法違反の高利を取るヤミ金が大きな社会問題となっている,犯罪金融業者又はこれに加担するDが開示を了解するはずがなく,その者の了解を得られないことを理由に本件23条照会②及び本件調査嘱託に対する回答を拒否することは,犯罪者を隠匿しヤミ金の貸金回収に加担するものであり,原告会社の裁判を受ける権利を侵害するものといわざるを得ない,原告会社の被害がなお発生する状況において被告三井住友銀行に対しDの住所及び電話番号の開示を再度求める,などと記載した同月6日付けの書面を内容証明郵便で発送した。これを受けた被告三井住友銀行は,同月24日,原告会社代理人に対し,同被告は営業上知り得た顧客情報につき顧客に対する守秘義務を負っており,第三者に対してそのような顧客情報を明らかにすることはできない,特定の人物の住所及び電話番号は顧客情報に該当することは明らかである,などと記載した同日付けの書面を内容証明郵便で発送した。【甲B13,14】(キ) 別件訴訟においては,Dに対して訴状の公示送達がされ,平成14年12月18日に第1回口頭弁論期日が開かれ,平成15年1月27日の第4回口頭弁論期日に原告会社の請求を認める旨の判決が言い渡された。 2 23条照会及び調査の嘱託に対する報告義務の存否(1) 23条照会に対する報告義務の存否についてア弁護士法23条の2第1項は,「弁護士は,受任している事件について,所属弁護士会に対し,公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めること申し出ることができる。申出があった場合において,当該弁護士会は,その申出が適当でないと認めるときは,これを拒絶することができる 会に対し,公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めること申し出ることができる。申出があった場合において,当該弁護士会は,その申出が適当でないと認めるときは,これを拒絶することができる。」旨規定し,同条2項は,「弁護士会は,前項の規定による申出に基き,公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。」旨規定しているが,同法は,弁護士会から同法23条の2第2項に基づく照会を受けた公務所又は公私の団体が当該照会により報告を求められた事項について当該弁護士会に対して報告する法的義務を負うか否かについては何ら規定しておらず,公務所又は公私の団体が照会を受けたにもかかわらず報告しなかった場合についての法的制裁を定めた規定もない。 しかしながら,23条照会の制度は,弁護士が基本的人権を擁護し社会正義を実現することを使命とする(同法1条1項)ことにかんがみ,弁護士が,受任している事件を処理するために必要な事実の調査及び証拠の発見,収集を容易にし,当該事件の適正な解決に資することを目的として設けられたものであり,その適正な運用を確保する趣旨から,照会する権限を弁護士会に付与し,その権限の発動を個々の弁護士の申出にかからせるとともに,個々の弁護士の申出が23条照会の制度の趣旨に照らして適当でないか否かの認定を当該弁護士会の自律的判断にゆだねたものと解される。このような弁護士法23条の2の規定の趣旨に加えて,弁護士会が,弁護士及び弁護士法人の使命及び職務にかんがみ,その品位を保持し,弁護士及び弁護士法人の事務の改善進歩を図るため,弁護士及び弁護士法人の指導,連絡及び監督に関する事務を行うことを目的として設立された法人であり(弁護士法31条),同法により所属する弁護士又は弁護士法人に対する懲戒権を付与されている(同法56条)こと 士及び弁護士法人の指導,連絡及び監督に関する事務を行うことを目的として設立された法人であり(弁護士法31条),同法により所属する弁護士又は弁護士法人に対する懲戒権を付与されている(同法56条)こと,及び弁護士会がした懲戒の処分についての日本弁護士連合会の裁決等に対しては抗告訴訟としての取消しの訴えを提起することができるものとされている(同法61条)ことなどを併せ考えると,23条照会を受けた公務所又は公私の団体は,当該照会により報告を求められた事項について,当該照会をした弁護士会に対して報告する法的義務を負うものと解するのが相当である。 イ以上のとおりであるから,23条照会を受けた被照会者は照会をした弁護士会に対して当該23条照会に係る事項を報告する法的義務を負わない旨の被告らの主張は,採用することができない。 (2) 調査の嘱託に対する報告義務の存否についてア民訴法186条は,「裁判所は,必要な調査を官庁若しくは公署,外国の官庁若しくは公署又は学校,商工会議所,取引所その他の団体に嘱託することができる」旨規定しているが,同法は,裁判所から同法186条に基づく調査の嘱託を受けた官庁若しくは公署又は団体等が嘱託に応じて調査をし報告する法的義務を負うか否かについては何ら規定しておらず,官庁若しくは公署又は団体等が嘱託に応じなかった場合についての法的制裁を定めた規定もない。 しかしながら,調査の嘱託は,証拠方法として規律される必要のない程度の公正さを有する者に,その報告書作成過程において過誤のないことが期待される手許にある客観的資料から容易に結果の得られる事項について報告させることにより,簡易迅速な証拠調べを行うことができるものとする趣旨で設けられた,簡易かつ特殊な証拠調べの方法であり,このような調査の嘱託制度の趣旨及び性質からすれば,調査の られる事項について報告させることにより,簡易迅速な証拠調べを行うことができるものとする趣旨で設けられた,簡易かつ特殊な証拠調べの方法であり,このような調査の嘱託制度の趣旨及び性質からすれば,調査の嘱託を受けた内国の官庁若しくは公署又は団体は,嘱託をした裁判所に対し,嘱託に応じて調査をしその結果得られた事項について報告する法的義務を負うものと解すべきである。 イ以上のとおりであるから,調査の嘱託を受けた被嘱託者は嘱託をした裁判所に対して当該調査の嘱託に係る事項を報告する法的義務を負わない旨の被告三井住友銀行の主張は,採用することができない。 3 顧客の特定に資する情報の開示を求める内容の23条照会又は調査の嘱託に対する銀行の報告義務について銀行その他の金融機関(以下「銀行」という。)が顧客の氏名若しくは名称又は住所若しくは事務所の所在地等当該顧客の特定に資する情報の開示を求める内容の23条照会又は調査の嘱託に対して報告する法的義務を負うか否かについて検討する。 (1) 前記2で説示したとおり,23条照会を受けた公務所又は公私の団体は,当該照会により報告を求められた事項について,当該弁護士会に対して報告する法的義務を負い,また,調査の嘱託を受けた内国の官庁若しくは公署又は団体は,嘱託をした裁判所に対し,嘱託に応じて調査をしその結果得られた事項について報告する法的義務を負うものと解されるが,当該報告義務は性質上絶対無制約のものではなく,当該公務所又は公私の団体は23条照会に対する報告義務を免れ,また,当該官庁若しくは公署又は団体は調査の嘱託に対する報告義務を免れる場合があることは否定することができない。 ところで,銀行は,顧客と預金等の受入れを内容とする契約や金銭消費貸借契約を締結する等その業務を遂行するに当たり,氏名,住所,資産状態その他 告義務を免れる場合があることは否定することができない。 ところで,銀行は,顧客と預金等の受入れを内容とする契約や金銭消費貸借契約を締結する等その業務を遂行するに当たり,氏名,住所,資産状態その他顧客に関する様々な情報を取得し,保有することになる。他方で,顧客は,個人の人格の尊重の理念に由来するものとして,銀行が取得,保有するこれらの自己に関する情報をみだりに第三者に提供,開示等(以下「開示」という。)されないことについて法的利益を有しているというべきであるから,銀行は,顧客に対し,当該顧客との間の取引契約に付随する義務として,当該顧客との間の取引及びこれに関連して知り得た当該顧客に関する情報を正当な理由がなく第三者に開示してはならないという秘密保持義務を負っており,銀行が上記義務に違反して顧客に関する情報をみだりに第三者に開示した場合には,当該顧客は銀行に対して債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を請求し得るものと解される。のみならず,このような顧客に関する情報は,銀行の事業活動に有用な営業上の情報として銀行が保有する営業秘密に該当するものであって,銀行は,これらの情報を秘密として管理することによって顧客との間の信頼関係を維持し,その業務を円滑に遂行するという営業上の利益を有しており,当該営業上の利益は,営業の自由に由来するものとして,法的に保護されるべきものである。 以上述べたところからすれば,銀行は,顧客に関する情報について23条照会又は調査の嘱託により報告を求められた場合には,当該情報を報告することについて当該顧客の同意を得た場合を除いて,原則として報告する義務を免れるものと解される。 (2) 本件23条照会①において報告を求められた事項は,被告みずほ銀行に開設された本件預金口座①の開設者(名義人C)の「名称(氏名あるいは商号) いて,原則として報告する義務を免れるものと解される。 (2) 本件23条照会①において報告を求められた事項は,被告みずほ銀行に開設された本件預金口座①の開設者(名義人C)の「名称(氏名あるいは商号)及び所在地(住所)」であり,本件23条照会②及び本件調査嘱託において報告が求められた事項は,被告三井住友銀行に開設された本件預金口座②の開設者(名義人D)の「住所及び電話番号」である。しかるところ,銀行は,金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律(平成14年法律第32号。平成15年1月6日施行。)により,顧客等との間で預金等の受入れを内容とする契約の締結等を行うに際しては,運転免許証の提示を受ける方法等により,当該顧客等について,自然人については氏名,住居及び生年月日,法人については名称及び本店又は主たる事務所の所在地の確認を行わなければならず(同法3条),本人確認を行った場合には,本人特定事項その他の本人確認に関する事項に関する記録を作成し,保存しなければならないものとされており(同法4条),同法施行前においても,本件23条照会①及び②が行われた当時には,銀行が顧客との間で預金等の受入れを内容とする契約を締結して当該顧客の預金口座を開設するに際しては,運転免許証ないし住民票の提示を受ける方法等により,当該顧客について氏名及び住所等又は名称及び本店又は主たる事務所の所在地等により当該顧客の本人確認を行った上,当該本人確認に関する事項を記録し保存する取扱いが確立していた事実が認められる(弁論の全趣旨)。そして,銀行が顧客等との間で預金等の受入れを内容とする契約の締結等をするに当たり取得した当該顧客の氏名又は名称,住所又は所在地,電話番号等の情報は,前記(1)において説示したとおり,顧客に関する情報として,当該顧 客等との間で預金等の受入れを内容とする契約の締結等をするに当たり取得した当該顧客の氏名又は名称,住所又は所在地,電話番号等の情報は,前記(1)において説示したとおり,顧客に関する情報として,当該顧客はこれをみだりに第三者に開示されないことについて法的利益を有し(中でも,当該顧客の住所は,当該顧客の取引活動に限らず,当該顧客の生活に最も関係の深い一般的生活,全生活の中心を成す生活の本拠を表示するものであるから,これをみだりに第三者に開示されないことについての法的利益は特に保護されるべきものということができ,電話番号についても住所と同様の性格を有するものが存するところである。),銀行は,当該顧客に対してこれを正当な理由がなく第三者に開示してはならないという秘密保持義務を負うのみならず,これを営業秘密として管理することについて法的利益を有するものである。 もっとも,前記2において説示したとおり,23条照会の制度は,弁護士が,受任している事件を処理するために必要な事実の調査及び証拠の発見,収集を容易にし,当該事件の適正な解決に資することを目的として設けられたものであり,また,調査の嘱託の制度は,簡易かつ特殊な証拠調べの方法として設けられたものである。そして,本件23条照会①は,原告Aから破産及び免責の申立ての代理の委任を受けた弁護士が,依頼者の借入金債務の債権者に対して代理人就任通知書(受任通知書)を送付することにより当該債権者の依頼者に対する債権の取立てを制止するとともに(貸金業規制法21条1項,金融庁ガイドライン3-2-2(3)②)破産手続における債権者の特定に資するため,当該債権者の特定に資する情報を得ることを目的として,大阪弁護士会に申し出たものであり,本件23条照会②は,原告会社から債務整理等の委任を受けた弁護士が,依頼者の小切手金債 債権者の特定に資するため,当該債権者の特定に資する情報を得ることを目的として,大阪弁護士会に申し出たものであり,本件23条照会②は,原告会社から債務整理等の委任を受けた弁護士が,依頼者の小切手金債務の不存在確認等を求める訴訟を提起するに当たり,被告とすべき者(当該小切手金に係る債権者)の特定に資する情報を得ることを目的として,大阪弁護士会に申し出たものであり,本件調査嘱託は,上記債務不存在確認請求等訴訟の提起を受けた裁判所が,上記弁護士の申出を受けて,被告とすべき者の特定に資する情報を得ることを目的として行ったものである。このように,本件23条照会①及び②並びに本件調査嘱託は,いずれも,原告A及び原告会社が債権者との間の債権債務関係をめぐる紛争を法的手段により解決する前提として当該債権者を特定するために必要な情報を得ることを目的として行われたものであるということができる。しかるところ,何人も,裁判制度の趣旨,目的に照らして著しく相当性を欠くような場合を除いて,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争について裁判制度により解決することを求める権利(裁判を受ける権利)を保障されている(憲法32条)のであり,裁判制度を利用するに当たり,当該紛争の相手方(民事訴訟の被告等)を特定することが不可欠であるから,相手方との間の具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争について裁判制度による解決を求めようとする者が当該相手方を特定するに足りる資料を有していない場合,これを取得することが裁判を受ける権利を実現するための不可欠の前提となる。このような場合,23条照会により当該相手方を特定するために必要な事項の報告を求めることは,23条照会の制度の趣旨,目的に照らして許容されるものと解され,また,裁判所が官庁若しくは公署又は団体に対して当該相手方( ,23条照会により当該相手方を特定するために必要な事項の報告を求めることは,23条照会の制度の趣旨,目的に照らして許容されるものと解され,また,裁判所が官庁若しくは公署又は団体に対して当該相手方(被告)を特定するために必要な事項の調査を嘱託することも,訴訟要件の存否に関する事実の調査として,調査の嘱託制度の趣旨,目的に照らし,許容されるところと解される。ところが,上記のような23条照会を受けた公務所若しくは公私の団体又は調査を嘱託された官庁若しくは公署若しくは団体が照会又は嘱託に応じず当該相手方を特定するために必要な事項を報告しない場合,当該相手方との間で具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の存する者にとって当該紛争を裁判制度により解決する権利(裁判を受ける権利)が制約され,殊に当該23条照会又は調査の嘱託による以外他に適当な方法がないような場合には,その者が当該紛争を裁判制度により解決するみちが事実上閉ざされることになる。なお,上記にいう紛争の裁判制度による解決は,当該紛争の解決のために民事訴訟を提起する場合に限らず,本件における原告Aの場合のように,破産手続において用いる債権者一覧表の作成や債権者に対して受任通知書を送付して依頼者に対する取立てを停止させるような場合についても,それが最終的には債権者との間に生じている紛争を裁判制度により法的に解決することを目的とするものであることからすれば,紛争の裁判制度による解決に含まれるものというべきである。 そうすると,銀行の顧客との間で具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の存する者が当該顧客との間の当該紛争を裁判制度により解決するための前提として,当該顧客を特定するために必要な事項について当該銀行に対し23条照会又は調査の嘱託がされた場合において,当該紛争の相手方である当該顧客を 顧客との間の当該紛争を裁判制度により解決するための前提として,当該顧客を特定するために必要な事項について当該銀行に対し23条照会又は調査の嘱託がされた場合において,当該紛争の相手方である当該顧客を特定するための他に適当な方法がないときは,当該銀行が当該顧客の同意が得られないことを理由として当該事項の報告を拒否することは,当該顧客との間で上記紛争の存する者の裁判を受ける権利を損なう面があることは否定することができず,このような場合,そのような者の裁判を受ける権利の確保の観点から,当該顧客に関する情報が開示されないことについての当該顧客及び当該銀行の法的利益が一定限度の制約を受けることもやむを得ないものと解される。 (3) そこで,銀行が顧客等との間で預金等の受入れを内容とする契約の締結等をするに当たり取得した当該顧客の氏名又は名称,住所又は所在地,電話番号等当該顧客の特定に資する情報についてこれを開示することを求める内容の23条照会又は調査の嘱託を受けた場合,いかなる要件の下に当該事項について報告する義務を負うと解すべきかにつき検討する。 ア上記のような事項について直接規律した実定法の規定は見当たらないが,類似の状況について立法的解決を図ったものとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成13年法律第137号。以下「プロバイダ責任制限法」という。)の定める発信者情報の開示請求の制度が存在する。すなわち,同法4条1項は,特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は,① 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき(同項1号),②当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受け よって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき(同項1号),②当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき(同項2号),のいずれにも該当するときに限り,当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し,当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報の開示を請求することができる(以下,この請求権を「発信者情報開示請求権」という。)と規定する。なお,a 「特定電気通信」とは,不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信(有線,無線その他の電磁的方式により,符号,音響又は映像を送り,伝え,又は受けることをいう。電気通信事業法2条1号)の送信(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)をいい(プロバイダ責任制限法2条1号),b 「特定電気通信設備」とは,特定電気通信の用に供される電気通信設備(電気通信を行うための機械,器具,線路その他の電気的設備をいう。電気通信事業法2条2号)をいい(プロバイダ責任制限法2条2号),c 「特定電気通信役務提供者」とは,特定電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し,その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者をいい(プロバイダ責任制限法2条3号),d 「発信者」とは,特定電気通信役務提供者の用いる特定電気通信設備の記録媒体(当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を記録し,又は当該特定電気通信設備の送信装置(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を入力した者をいい(プロバイダ責任制限法2条4号),e 「侵害情報」とは に情報を記録し,又は当該特定電気通信設備の送信装置(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を入力した者をいい(プロバイダ責任制限法2条4号),e 「侵害情報」とは,特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害したとする情報をいい(プロバイダ責任制限法3条2項2号),f「発信者情報」とは,氏名,住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいい(プロバイダ責任制限法4条1項),特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第4条第1項の発信者情報を定める省令(平成14年総務省令第57号)において,① 発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称,② 発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所,③ 発信者の電子メールアドレス(電子メールの利用者を識別するための文字,番号,記号その他の符号をいう。),④ 侵害情報に係るIPアドレス(インターネットに接続された個々の電気通信設備を識別するために割り当てられる番号をいう。),⑤ ④のIPアドレスを割り当てられた電気通信設備から開示関係役務提供者の用いる特定電気通信設備に侵害情報が発信された年月日及び時刻,をいうものとされている。 イところで,プロバイダ責任制限法4条1項の定める発信者情報の開示請求の制度の趣旨については,次のとおり解することができる。すなわち,通常の不法行為においては,当該不法行為の被害者が当該不法行為の加害者を直ちに特定することができない場合であっても,不法行為の態様や加害行為の痕跡等を手がかりとして,加害者の範囲をある程度絞り込むことができる場合を一定程度想定することができるのに対し,特定電気通信を用いて他人の権利を侵害するような匿名又は仮名の情報発信が行われた場合においては を手がかりとして,加害者の範囲をある程度絞り込むことができる場合を一定程度想定することができるのに対し,特定電気通信を用いて他人の権利を侵害するような匿名又は仮名の情報発信が行われた場合においては,加害者の範囲の絞り込みが極めて困難な場合がむしろ通常であると考えられ,他方で,特定電気通信においては,加害者と被害者との間に立って情報等の媒介を行っている特定電気通信役務提供者が存在しており,この特定電気通信役務提供者が発信者情報を保有している可能性が高いということができる。このように,特定電気通信を用いて行われた加害者不明の不法行為においては,加害者に関する情報を類型的に保有している者が存在している一方,被害者にとってはこの者から情報を取得することができなければ加害者の絞り込みすらできないことになるという点において,他の不法行為類型と明らかに異なっており,被害者が特定電気通信役務提供者から発信者情報の開示を受けることの必要性は極めて高いということができる。他方,発信者は,発信者情報を含む自己に関する情報をみだりに第三者に対して開示されないことについて法的利益を有するのみならず,匿名表現の自由や通信の秘密としても発信者情報が保護される利益を有しており,また,特定電気通信役務提供者は,発信者に対し,当該発信者との間の契約に付随する義務として,当該発信者に係る発信者情報を正当な理由がなく第三者に開示してはならないという秘密保持義務を負っていることに加えて,発信者情報は,特定電気通信役務提供者の事業活動に有用な営業上の情報として特定電気通信役務提供者が保有する営業秘密に該当するものであって,特定電気通信役務提供者は,発信者情報を秘密として管理することによって発信者との間の信頼関係を維持し,その業務を円滑に遂行するという営業上の利益を有している。このよ る営業秘密に該当するものであって,特定電気通信役務提供者は,発信者情報を秘密として管理することによって発信者との間の信頼関係を維持し,その業務を円滑に遂行するという営業上の利益を有している。このような利益状況等にかんがみ,プロバイダ責任制限法4条1項は,一定の厳格な要件が満たされる場合に限って,正当業務行為として特定電気通信役務提供者に課せられた発信者情報に係る秘密保持義務が解除されるものとするとともに,特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者に当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(開示関係役務提供者)に対して侵害情報に係る発信者情報の開示を裁判上又は裁判外において請求することができる私法上の請求権(発信者情報開示請求権)を付与し,特定電気通信役務提供者(開示関係役務提供者)に開示請求者の請求に応じて発信者情報の開示に応じるべき法的義務を課したものと解される。 そこで,プロバイダ責任制限法4条1項の定める発信者情報開示請求権が認められるための要件についてみると,同項1号の「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき」の要件は,訴訟外において本来開示すべきでない場合にまで開示関係役務提供者が開示する範囲が広がることを防止し,もって,発信者が有する発信者情報をみだりに第三者に対して開示されないことについての法的利益及び特定電気通信役務提供者が有する発信者情報に係る営業上の利益と特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者が当該権利の回復を図る必要性との調和を図ったものと解され,また,同項2号の「当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な が当該権利の回復を図る必要性との調和を図ったものと解され,また,同項2号の「当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき」の要件は,発信者情報の開示を認めることにより制約される上記のような発信者の利益及び特定電気通信役務提供者の利益を考慮して,開示請求者が発信者情報を入手することについて合理的な必要性及び相当性が認められることを要件として明確化したものであり,不当な自力救済等を目的とする開示請求権の濫用のおそれがある場合や賠償金の支払等により開示請求者が発信者情報の開示を受ける利益が消滅しているような場合等を除く趣旨のものと解される。そして,特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者(被害者)は,侵害情報の発信者の特定に資する情報(発信者情報)を得るため開示関係役務提供者に対して同項に基づく発信者情報の開示請求をすることにより,侵害情報の発信者(加害者)を特定した上,当該発信者に対し損害賠償請求訴訟等を提起するなどして,裁判制度による当該権利の回復を図ることができることになるのであって,開示関係役務提供者が発信者情報の開示請求に応じない場合,被害者は,開示関係役務提供者を被告とする民事訴訟(発信者情報開示請求訴訟)を提起して同項各号の定める要件を立証しなければならず,殊に,同項1号の要件については,上記の趣旨から,被害者において不法行為等の成立を阻却する事由の存在をうかがわせるような事情が存在しないことについても立証しなければならない(同号にいう「権利が侵害されたことが明らかであるとき」については上記の趣旨に解される。)という制約を受けるものの,被害者が侵害情報により侵害された権利の回復を裁判制度により図ることができる権利(裁 (同号にいう「権利が侵害されたことが明らかであるとき」については上記の趣旨に解される。)という制約を受けるものの,被害者が侵害情報により侵害された権利の回復を裁判制度により図ることができる権利(裁判を受ける権利)は,その限りにおいて確保されているものということができる。 以上検討したところによれば,プロバイダ責任制限法4条1項の規定する発信者情報の開示請求制度は,加害者の特定が通常困難と考えられ,他方で,加害者の特定に資する情報を保有している可能性が高い事業者が存在する不法行為類型について,加害者の有する自己に関する情報をみだりに第三者に開示されない等の法的利益及び事業者の有する営業上の利益と被害者の有する裁判を受ける権利との調和を絶妙に図った実定法上の制度であるということができる。そして,同項により私法上の請求権としての発信者情報開示請求権が創設された趣旨及び目的にかんがみると,特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者が侵害情報の発信者の特定に資する情報を得ようとする場合は,同項の定める発信者情報の開示請求制度によるべきであって,発信者情報開示請求権の行使によらずに23条照会や調査の嘱託により開示関係役務提供者に対して発信者情報を開示することを求めることは許されない(すなわち,開示関係役務提供者は,プロバイダ責任制限法4条1項が適用される限りにおいて,発信者情報の開示を内容とする23条照会又は調査の嘱託に対して報告する義務を負わない)ものと解される。 ウ以上を前提に,銀行が顧客等との間で預金等の受入れを内容とする契約の締結等をするに当たり取得した当該顧客の氏名又は名称,住所又は所在地,電話番号等当該顧客の特定に資する情報についてこれを開示することを求める内容の23条照会又は調査の嘱託を受けた場合における銀行 の締結等をするに当たり取得した当該顧客の氏名又は名称,住所又は所在地,電話番号等当該顧客の特定に資する情報についてこれを開示することを求める内容の23条照会又は調査の嘱託を受けた場合における銀行の報告義務の存否について考えると,前記のとおり,銀行は,顧客等との間で預金等の受入れを内容とする契約の締結等をする際の本人確認等を通じて当該顧客の氏名又は名称,住所又は所在地,電話番号等の当該顧客の特定に資する情報をその業務の遂行上取得し,保有する立場にある者であるということができる。しかるところ,前記のとおり,顧客は,氏名又は名称,住所又は所在地,電話番号等の個人情報をみだりに第三者に開示されないことについて法的利益を有しており(中でも,当該顧客の住所は,当該顧客の取引活動に限らず,当該顧客の生活に最も関係の深い一般的生活,全生活の中心を成す生活の本拠を表示するものであるから,これをみだりに第三者に開示されないことについての法的利益は特に保護されるべきものということができ,電話番号についても住所と同様の性格を有するものが存するところである。),銀行も,当該顧客に対して当該情報を正当な理由がなく第三者に開示してはならないという秘密保持義務を負うのみならず,これを営業秘密として管理することについて法的利益(営業上の利益)を有するものである。他方で,銀行の顧客との間で具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の存する者が当該顧客との間の当該紛争を裁判制度により解決するための前提として,当該顧客を特定するために必要な事項について当該銀行に対し23条照会又は調査の嘱託がされた場合において,当該紛争の相手方である当該顧客を特定するための他に適当な方法がないときは,当該銀行が当該顧客の同意が得られないことを理由として当該事項の報告を拒否することは,当該顧客と の嘱託がされた場合において,当該紛争の相手方である当該顧客を特定するための他に適当な方法がないときは,当該銀行が当該顧客の同意が得られないことを理由として当該事項の報告を拒否することは,当該顧客との間で上記紛争の存する者の裁判を受ける権利を損なう面があることは否定することができない。すなわち,このような場合においては,銀行の顧客との間で具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の存する者の裁判を受ける権利の確保の観点から,当該顧客に関する情報が開示されないことについての当該顧客及び当該銀行の法的利益が一定限度の制約を受けることもやむを得ないものと解されるのであって,上記のような当該顧客の法的利益及び当該銀行の法的利益を不当に損なわない限度で当該顧客との間で具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の存する者の裁判を受ける権利の確保が図られるよう,弁護士法23条の2及び民訴法186条の規定を解釈しなければならないものというべきである。そして,その解釈に当たっては,特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害された者が侵害された権利の回復を図るため開示関係役務提供者に対して侵害情報の発信者の特定に資する情報(発信者情報)の開示を請求するという類似の利益状況の下において,権利を侵害された者,特定電気通信役務提供者及び発信者がそれぞれ有する法的利益の間に調和点を見いだし,発信者情報の開示請求制度として規定することにより立法的解決を図ったプロバイダ責任制限法4条1項の規定の趣旨及び理念を参酌するのが相当である。 もっとも,前記イにおいて説示したとおり,特定電気通信を用いて他人の権利を侵害するような匿名又は仮名の情報発信が行われた場合においては,加害者の範囲の絞り込みが極めて困難な場合がむしろ通常であると考えられ,特定電気通信役務提供者から侵 り,特定電気通信を用いて他人の権利を侵害するような匿名又は仮名の情報発信が行われた場合においては,加害者の範囲の絞り込みが極めて困難な場合がむしろ通常であると考えられ,特定電気通信役務提供者から侵害情報の発信者の特定に資する情報(発信者情報)の開示を受けない限り,加害者の絞り込みすらできないことになるのに対して,銀行の顧客との間で具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の存する者については必ずしも当該銀行から当該顧客の特定に資する情報の開示を受けることなく当該顧客の特定に資する情報を取得することが可能な場合も少なくないのであって(むしろそのような場合が通常であろう。),そのような場合には,以上説示したような当該情報に係る顧客の法的利益及び銀行の法的利益に照らして,当該情報の開示を内容とする23条照会又は調査の嘱託に対して銀行が報告義務を負うとするのは適当とはいい難い。また,銀行が顧客の特定に資する情報を不当に報告した場合,当該銀行は秘密保持義務違反を理由に顧客から法的責任の追及を受ける立場にあることはもとより,当該情報はいったん開示されてしまうとその原状回復は不可能であることから,これによって当該情報に係る当該顧客の法的利益が回復不可能なまでに侵害されることは,開示関係役務提供者が発信者情報を不当に開示した場合と異なるところがないと考えられるが,他方で,前記2において説示したとおり,23条照会は,個々の弁護士の申出を受けた弁護士会が,当該申出が23条照会の制度の趣旨に照らして適当でないか否かを判断した上で行うものであり,また,調査の嘱託は,簡易かつ特殊な証拠調べの方法として裁判所の判断(職権)により行うものであるとはいえ,プロバイダ責任制限法4条1項に基づく発信者情報の開示請求とは異なり,照会又は嘱託を受けた者とその者の利益のために照 かつ特殊な証拠調べの方法として裁判所の判断(職権)により行うものであるとはいえ,プロバイダ責任制限法4条1項に基づく発信者情報の開示請求とは異なり,照会又は嘱託を受けた者とその者の利益のために照会又は調査を求める者(申出弁護士の依頼者又は訴訟当事者)との間の私法上の請求権を前提とするものではないから(前記のとおり同項に基づく発信者情報の開示については裁判上の請求が可能である。),23条照会又は調査の嘱託を受けた銀行が不当に顧客の特定に資する情報の報告を拒否した場合において,当該顧客を特定するために他に適当な方法がないときは,当該銀行の顧客との間で具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の存する者にとって当該紛争を裁判制度により解決するみちが事実上閉ざされてしまうことになる。 以上にかんがみると,銀行が顧客等との間で預金等の受入れを内容とする契約の締結等をするに当たり取得した当該顧客の氏名又は名称,住所又は所在地,電話番号等当該顧客の特定に資する情報についてこれを開示することを求める内容の23条照会又は調査の嘱託を受けた場合,23条照会に係る照会書やその添付書類等又は調査の嘱託書やその添付書類等からして,① 当該顧客の行為によって23条照会又は調査の嘱託により当該顧客の特定に資する情報の開示を求める者(当該照会申出をした弁護士の依頼者又は当事者。以下「開示請求者」という。)の権利ないし法的利益が侵害されていることが明らかであるとみえること,② 当該情報が開示請求者の権利ないし法的利益の裁判制度による回復を求めるために必要である場合その他これに準じる当該情報の開示を受けるべき正当な理由があること,③ 当該銀行に対して当該顧客の特定に資する情報の開示を求める以外に当該顧客を特定するための他に適当な方法がないこと,の要件をいずれも満たす場合に じる当該情報の開示を受けるべき正当な理由があること,③ 当該銀行に対して当該顧客の特定に資する情報の開示を求める以外に当該顧客を特定するための他に適当な方法がないこと,の要件をいずれも満たす場合には,当該銀行は,23条照会又は調査の嘱託に対して当該照会又は嘱託により報告を求められた顧客の特定に資する情報について照会をした弁護士会又は嘱託をした裁判所に報告する義務を負うものと解するのが相当である。そして,上記各要件を満たす場合において,銀行が23条照会又は調査の嘱託に応じて顧客の特定に資する情報を報告したときは,銀行の当該報告行為は正当業務行為に該当し,銀行は当該顧客に対し秘密保持義務違反を理由とする法的責任を免れるものというべきである。 なお,上記のとおり,銀行が顧客の特定に資する情報を不当に報告した場合,当該銀行は秘密保持義務違反を理由に顧客から法的責任の追及を受ける立場にあることはもとより,当該情報はいったん開示されてしまうとその原状回復は不可能であることから,これによって当該情報に係る当該顧客の利益が回復不可能なまでに侵害されることにかんがみると,23条照会又は調査の嘱託に当たっては,銀行において上記各要件(殊に①の要件)の具備について容易に判断することができるよう,照会書や調査の嘱託書の記載等において必要かつ十分な事実を具体的に記述し必要に応じて裏付資料を添付するなど相応の配慮がされなければならないことはいうまでもない(もっとも,プロバイダ責任制限法4条1項に基づく発信者情報の開示請求の場合とは異なり,23条照会又は調査の嘱託の場合には,当該制度の趣旨,目的からして,特段の事情がない限り②の要件を具備するものと認められるのが通常であろう。)。 4 本件23条照会①,②及び本件調査嘱託に対する報告義務の存否について上記で説示したと 当該制度の趣旨,目的からして,特段の事情がない限り②の要件を具備するものと認められるのが通常であろう。)。 4 本件23条照会①,②及び本件調査嘱託に対する報告義務の存否について上記で説示したところを前提に,本件において,被告みずほ銀行が本件23条照会①につき大阪弁護士会に対して本件預金口座①の開設者の「名称(氏名あるいは商号)及び所在地(住所)」を報告する義務を負うか否か,被告三井住友銀行が本件23条照会②及び本件調査嘱託につき大阪弁護士会及び別件訴訟の受訴裁判所に対して本件預金口座②の開設者の「住所及び電話番号」を報告する義務を負うか否かについてそれぞれ検討する。 (1) 被告みずほ銀行の本件23条照会①に対する報告義務についてア前記1(1)等において認定した事実によれば,原告Aは,東洋から元金を一括して返済しない限り10日ごとに1万円を支払わなければならない等の約定で金員を借り入れ,約定に従った返済を余儀なくされていたところ,東洋は,原告Aに対し,連絡先として東洋の従業員の携帯電話の番号を,返済金の振込先として本件預金口座①を指定するのみであったため,原告A代理人に対して破産及び免責の申立ての代理を委任した際,債権者である東洋を特定することができず,原告A代理人は,原告Aの借入金債務の債権者である東洋に対して代理人就任通知書(受任通知書)を送付することにより東洋の原告Aに対する債権の取立てを制止するとともに破産手続における債権者の特定に資するため,東洋の特定に資する情報を得ることを目的として,大阪弁護士会に対し,本件預金口座①の開設者(名義人C)の「名称(氏名あるいは商号)及び所在地(住所)」の開示を求める内容の本件23条照会①を申し出たものである。 しかるところ,本件23条照会①に係る照会書には,前記1(1)ウ(ア)のとおり,原告 義人C)の「名称(氏名あるいは商号)及び所在地(住所)」の開示を求める内容の本件23条照会①を申し出たものである。 しかるところ,本件23条照会①に係る照会書には,前記1(1)ウ(ア)のとおり,原告Aは照会の相手方である「C」を始め19名の高利貸しから約350万円の借入れがあるが,原告Aには収入も資産もなく,返済を継続することができないので,裁判所に破産を申し立てる用意をしていること,「C」は無登録のいわゆる「システム金融」と思われ,原告Aに対してその名称と本件預金口座①のみを知らせていたにすぎないこと,貸金業規制法に基づく取立規制を生じさせるため,「C」に対して代理人就任通知書を送付したいが,その名称,所在が判明しないこと,などが記載されていたというのである。また,前記認定事実によれば,被告みずほ銀行が大阪弁護士会に対して相手方の承諾が得られないため本件23条照会①に対する報告をすることはできないなどと回答したのを受けて,原告A代理人が平成14年6月5日付け内容証明郵便で被告みずほ銀行に送付した書面には,原告Aが同月2日午後10時40分ころに「東洋」の従業員を名乗るE某という者から取立てを受けたこと,本件預金口座①の開設者は無登録の貸金業者であると思われること,などが記載されていたというのである。 上記認定事実によれば,本件23条照会①に係る照会書には,原告Aが19名の高利貸しから約350万円の借入れがあるいわゆる多重債務者であって返済を継続することができない資産状態にあること,原告Aが本件23条照会①の相手方である「C」に対しても高利の借入金債務を負担していること,「C」は原告Aに対してその名称と本件預金口座①のみを知らせていたにすぎないこと(貸金業規制法17条1項1号により,貸金業者は,貸付けに係る契約を締結したときは,遅滞なく,そ 債務を負担していること,「C」は原告Aに対してその名称と本件預金口座①のみを知らせていたにすぎないこと(貸金業規制法17条1項1号により,貸金業者は,貸付けに係る契約を締結したときは,遅滞なく,その商号,名称又は氏名及び住所等を記載した書面をその相手方に交付しなければならないとされている。),以上の事実が記載されているのであり,これらの事実を前提とすれば,「C」がその相手方に対して取引主体の特定に資する情報を明らかにせずに法令上その取立てが許容されないような高利の金利で貸付けを行っている者である事実が容易に推認される。このことに加えて,証拠(甲1,9ないし11,13,19,23,24,35ないし37,39,61ないし63,70,80ないし118)及び弁論の全趣旨によれば,本件23条照会①が行われた当時,出資法5条が処罰の対象として規定するような高金利による貸付けを業として行いながら,借主に対し連絡先としての電話番号や返済金の振込先としての預金口座ないし返済のための小切手等の送付先としての留置郵便局名等を知らせるのみで,それ以上に当該業者の特定に必要な情報を借主に提供しない,いわゆるヤミ金業者による被害の発生が社会問題となっていた事実が認められること,貸金業者又は債権の取立てについて委託を受けた者等は債務処理に関する権限を弁護士に委任した旨の通知又は調停,破産その他裁判手続をとったことの通知を受けた後に債務者に対し正当な理由なく支払請求をすることを禁止する内容のいわゆる金融庁事務ガイドライン(金融庁ガイドライン3-2-2(3))が定められていたこと,前記のとおり,23条照会は,個々の弁護士の申出を受けた弁護士会が,当該申出が23条照会の制度の趣旨に照らして適当でないか否かを判断した上で行うものであることをも併せ考えると,原告Aが「C」から法 ,前記のとおり,23条照会は,個々の弁護士の申出を受けた弁護士会が,当該申出が23条照会の制度の趣旨に照らして適当でないか否かを判断した上で行うものであることをも併せ考えると,原告Aが「C」から法令上その取立てが許容されないような高利の金利による貸付けを受けたものであって,貸金業規制法21条1項による規制の対象とされているような取立てを受ける具体的危険が存在していることが明らかであるとみえるものということができる。そうであるとすれば,本件23条照会①については,当該照会に係る照会書の記載に照らしても,前記3(3)ウにおいて説示した3要件のうち②及び③の要件,すなわち,本件23条照会①により開示を求める本件預金口座①の開設者(名義人C)の「名称(氏名あるいは商号)及び所在地(住所)」が原告Aの上記権利ないし法的利益の裁判制度による回復を求めるために必要であること,被告みずほ銀行に対して本件預金口座①の開設者(名義人C)の「名称(氏名あるいは商号)及び所在地(住所)」の開示を求める以外に上記開設者を特定するための他に適当な方法がないこと,の各要件を満たしていることはもとより,①の要件,すなわち,本件預金口座①の開設者の行為によって原告Aの権利ないし法的利益が侵害されていることが明らかであるとみえること,をも満たしているものということができるものと解すべきである(もっとも,23条照会に当たっては,銀行において上記各要件(殊に①の要件)の具備について容易に判断することができるよう,照会書や調査の嘱託書の記載等において必要かつ十分な事実を具体的に記述し必要に応じて裏付資料を添付するなど相応の配慮がされなければならないことは,前記のとおりである。)。なお,少なくとも上記平成14年6月5日付け内容証明郵便による書面の記載をも併せ考えると,本件23条照会 に応じて裏付資料を添付するなど相応の配慮がされなければならないことは,前記のとおりである。)。なお,少なくとも上記平成14年6月5日付け内容証明郵便による書面の記載をも併せ考えると,本件23条照会①は上記3要件を満たすことが明らかというべきである。 したがって,被告みずほ銀行は,本件23条照会①を受けた平成14年4月下旬ないし同年5月上旬ころには,本件23条照会①に対して本件預金口座①の開設者(名義人C)の「名称(氏名あるいは商号)及び所在地(住所)」を大阪弁護士会に対して報告する義務を負っていたものというべきであり,遅くとも,上記平成14年6月5日付け内容証明郵便による書面を受領した時点(同月7日)においては,上記の報告義務を負っていたことが明らかである。 イ被告みずほ銀行は,原告Aは東洋の電話番号につき23条照会をすることによりCを特定することができたから,容易な代替的手段があったなどと主張する。 しかしながら,原告Aが東洋から連絡先として知らされていた東洋の従業員の携帯電話の番号につき23条照会をしたとしても,前記認定のような東洋と原告Aとの間の取引の内容及び態様等に加えて,前記1(2)オ及びキ(ア)において認定した事実(エース企画がいわゆる電話代行業者の電話回線を利用していた事実)にもかんがみると,東洋の特定に資する情報を得ることはできなかったものと容易に推認されるから,当該方法が東洋を特定するための他に適当な方法であるということはできない。 したがって,被告みずほ銀行の上記主張を採用することはできない。 (2) 被告三井住友銀行の本件23条照会②及び本件調査嘱託に対する報告義務についてア前記1(2)等で認定した事実によれば,原告会社は,金融業者のエース企画に対して60万円の借入れを申し込み,エース企画から59万5000円の振 23条照会②及び本件調査嘱託に対する報告義務についてア前記1(2)等で認定した事実によれば,原告会社は,金融業者のエース企画に対して60万円の借入れを申し込み,エース企画から59万5000円の振込みを受け,その返済のために振出日をその1週間後及び2週間後とする額面金額各40万円の小切手2通(額面金額合計80万円)をエース企画に交付していたものであるところ,エース企画は,原告会社に対し,電話代行業者の電話回線に係る電話番号及び小切手の送付先として品川郵便局留置を知らせるのみであったため,原告会社は,植田弁護士に対して債務整理等を委任した際,債権者であるエース企画を特定することができず,植田弁護士は,原告会社のエース企画に対する小切手金債務の不存在確認等を求める訴訟(別件訴訟)を提起するに当たり,被告とすべき者(エース企画)の特定に資する情報を得ることを目的として,大阪弁護士会に対し,本件預金口座②の開設者(名義人D)の「住所及び電話番号」の開示を求める内容の本件23条照会②を申し出たものであり,また,別件訴訟において,被告とすべき「エース企画」を特定するため,受訴裁判所に対して上記「住所及び電話番号」の開示を求める内容の調査の嘱託の申出をし,裁判所が本件調査嘱託を行ったものである。しかるところ,本件23条照会②に係る照会書には,前記1(2)カ(ア)のとおり,事件名として「出資法違反及び貸金業法違反の刑事告訴事件並びに契約無効確認訴訟事件」と記載され,申出の理由として,原告会社は同社が振り出した本件小切手につき異議申立提供金を提供しているが,その取戻しのため契約無効確認請求訴訟の提起を準備しているところ,本件小切手を被告三井住友銀行に持ち込んだ者を特定する必要がある,などと記載されていたというのである。また,前記認定事実によれば,被告三井住 戻しのため契約無効確認請求訴訟の提起を準備しているところ,本件小切手を被告三井住友銀行に持ち込んだ者を特定する必要がある,などと記載されていたというのである。また,前記認定事実によれば,被告三井住友銀行が大阪弁護士会に対して顧客の了解が得られないので本件23条照会②に対する報告をすることはできない旨回答し,また,別件訴訟の受訴裁判所に対してDの了承が得られなかったので,本件調査嘱託に対して回答することはできないなどと回答したのを受けて,原告会社代理人(植田弁護士ら)が平成14年11月11日付け内容証明郵便で被告三井住友銀行に送付した書面には,原告会社が「エース企画」という屋号のヤミ金からの借入れに際して同社の指示により本件小切手を振り出したこと,エース企画の取得する利息は年利1000%以上のもので出資法に明らかに違反すること,被告三井住友銀行に対して住所及び電話番号の開示を求めているDは本件小切手を被告三井住友銀行芝支店に持ち込んだ者であること,現在出資法違反の高利を取るヤミ金が社会問題となっていること,ヤミ金の住所はほとんどが郵便局留であり,その電話番号も電話代行業の電話回線を利用するなどしていること,などが記載されており,原告会社代理人(植田弁護士ら)が同年12月6日付け内容証明郵便で被告三井住友銀行に送付した書面にもほぼ同旨の記載がされていたというのである。 上記認定事実によれば,本件23条照会②に係る照会書の記載によっては,いまだ,本件23条照会②が前記3(3)ウにおいて説示した3要件のうち少なくとも①及び③の要件を満たすものと解することはできず,また,本件調査嘱託に係る嘱託書にも,上記3要件のうち少なくとも①及び③の要件の存在を認めるに足りる記載等がされていた事実を認めるに足りる証拠もない。しかしながら,上記平成14年11月1 とはできず,また,本件調査嘱託に係る嘱託書にも,上記3要件のうち少なくとも①及び③の要件の存在を認めるに足りる記載等がされていた事実を認めるに足りる証拠もない。しかしながら,上記平成14年11月11日付け内容証明郵便による書面の記載をも併せ考えると,同書面には,上記認定のとおり,原告会社が「エース企画」からの借入れに際して同社の指示により本件小切手を振り出したこと,エース企画の取得する利息は年利1000%以上のものであること,Dは本件小切手を被告三井住友銀行芝支店に持ち込んだ者であること,現在出資法違反の高利を取るヤミ金が社会問題となっているところ,ヤミ金の住所はほとんどが郵便局留であり,その電話番号も電話代行業の電話回線を利用するなどしていること,などの事実が記載されているのであり,これらの事実を前提とすれば,Dが「エース企画」の名称でその相手方に対して取引主体の特定に資する情報を明らかにせずに出資法5条が処罰の対象として規定するような年利1000%以上の高金利による貸付けを行っている者ないしその関係者であり,原告会社はDから上記のような高金利の貸付けを受け,その返済のために本件小切手を振り出した事実が容易に推認される。このことに加えて,前記(1)アのとおり,本件23条照会②が行われた当時,出資法5条が処罰の対象として規定するような高金利による貸付けを業として行いながら,借主に対し連絡先としての電話番号や返済金の振込先としての預金口座ないし返済のための小切手等の送付先としての留置郵便局名等を知らせるのみで,それ以上に当該業者の特定に必要な情報を借主に提供しない,いわゆるヤミ金業者による被害の発生が社会問題となっていた事実が認められること,貸金業者又は債権の取立てについて委託を受けた者等は債務処理に関する権限を弁護士に委任した旨の通知又は 借主に提供しない,いわゆるヤミ金業者による被害の発生が社会問題となっていた事実が認められること,貸金業者又は債権の取立てについて委託を受けた者等は債務処理に関する権限を弁護士に委任した旨の通知又は調停,破産その他裁判手続をとったことの通知を受けた後に債務者に対し正当な理由なく支払請求をすることを禁止する内容の金融庁ガイドラインが定められていたこと,前記のとおり,23条照会は,個々の弁護士の申出を受けた弁護士会が,当該申出が23条照会の制度の趣旨に照らして適当でないか否かを判断した上で行うものであり,また,調査の嘱託は,簡易かつ特殊な証拠調べの方法として裁判所の判断(職権)により行うものであることをも併せ考えると,原告会社がDらにより出資法5条が処罰の対象として規定するような年利1000%以上の高金利による借入金債務を負担させられ,その返済のために本件小切手を振り出させられたものであって,貸金業規制法21条1項による規制の対象とされているような取立てを受ける具体的危険が存在していることが明らかであるとみえるものということができる。そうであるとすれば,本件23条照会②及び本件調査嘱託は,上記平成14年11月11日付け内容証明郵便による書面の記載を併せ考えると,上記3要件,すなわち,① 本件預金口座②の開設者(D)の行為によって原告会社の権利ないし法的利益が侵害されていることが明らかであるとみえること,② 本件23条照会②ないし本件調査嘱託により開示を求める本件預金口座②の開設者(D)の住所が原告会社の上記権利ないし法的利益の裁判制度による回復を求めるために必要であること,③被告三井住友銀行に対して本件預金口座②の開設者(D)の住所の開示を求める以外に上記開設者を特定するための他に適当な方法がないこと,の要件をいずれも満たしているものという ために必要であること,③被告三井住友銀行に対して本件預金口座②の開設者(D)の住所の開示を求める以外に上記開設者を特定するための他に適当な方法がないこと,の要件をいずれも満たしているものということができるものと解すべきである。 したがって,被告三井住友銀行は,上記平成14年11月11日付け内容証明郵便による書面を受領した時点(同月12日)においては,本件23条照会②及び本件調査嘱託に対して本件預金口座②の開設者(D)の住所を大阪弁護士会及び別件訴訟の受訴裁判所に対して報告する義務を負っていたものというべきである(なお,23条照会ないし調査の嘱託に当たっては,銀行において上記各要件(殊に①の要件)の具備について容易に判断することができるよう,照会書や調査の嘱託書の記載等において必要かつ十分な事実を具体的に記述し必要に応じて裏付資料を添付するなど相応の配慮がされなければならないことは,前記のとおりである。)。これに対し,本件23条照会②及び本件調査嘱託により開示を求める情報のうち本件預金口座②の開設者の「電話番号」については,当該開設者の住所が開示されれば,特段の事情がない限り,当該開設者の氏名と併せて当該開設者を特定することができるから,上記特段の事情についての主張,立証を欠く本件においては,被告三井住友銀行は,大阪弁護士会及び別件訴訟の受訴裁判所に対する報告義務を負わないものというべきである。 イ被告三井住友銀行は,ヤミ金業者を特定する方法としては捜査機関に告訴等を行い捜査を行わせるのが最も早くかつ効果的であるから,本件23条照会②及び本件調査嘱託が本件預金口座②の開設者の氏名及び住所を知る唯一の方法ではないなどと主張する。 しかしながら,捜査機関に対し金融業者から出資法違反の高利で貸付けを受けたなどといった趣旨の被害申告をしたとし 査嘱託が本件預金口座②の開設者の氏名及び住所を知る唯一の方法ではないなどと主張する。 しかしながら,捜査機関に対し金融業者から出資法違反の高利で貸付けを受けたなどといった趣旨の被害申告をしたとしても,直ちに捜査機関から当該金融機関の特定に資する情報の提供を受けることができる手続制度は存在しておらず,そのような運用が確立していることを認めるに足りる証拠もないから,捜査機関に対する被害申告をもって前記3(3)ウにおいて説示した3要件のうちの③の要件にいう他に適当な方法に該当するということはできない。 もっとも,犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(平成12年法律第75号)3条1項の規定に基づいて,出資法違反等の刑事被告事件の訴訟記録を閲覧又は謄写することにより,加害者の特定に資する情報を取得する方法も考えられなくはないが,当該手続によるためには,少なくとも当該金融業者が出資法違反等の罪により起訴されて刑事被告事件が係属していることがその前提となるものであるから,そのような方法は,特段の事情がない限り,他に適当な方法にそもそも該当しないというべきであり,また,本件においては,エース企画ないしDが出資法違反等の罪で起訴されたことを認めるに足りる証拠はないから,上記規定に基づく手続をもって他に適当な方法があるということができないことはいうまでもない。 したがって,被告三井住友銀行の上記主張を採用することはできない。 5 被告みずほ銀行の原告Aに対する不法行為責任及び被告三井住友銀行の原告Bらに対する不法行為責任について(1) 前記4(1)において認定,説示したとおり,被告みずほ銀行は,本件23条照会①を受けた平成14年4月下旬ないし同年5月上旬ころないし遅くとも前記同年6月5日付け内容証明郵便による書面を受領した同月 前記4(1)において認定,説示したとおり,被告みずほ銀行は,本件23条照会①を受けた平成14年4月下旬ないし同年5月上旬ころないし遅くとも前記同年6月5日付け内容証明郵便による書面を受領した同月7日以降,大阪弁護士会に対し,弁護士法23条の2に基づき,本件預金口座①の開設者(名義人C)の「名称(氏名あるいは商号)及び所在地(住所)」を報告する義務を負っていたにもかかわらず,前記1(1)コにおいて認定したとおり同年10月17日に大阪弁護士会に対してCの氏名及び住所を報告するまでこれを履行しなかったものというべきであり,また,前記4(2)において認定,説示したとおり,被告三井住友銀行は,本件23条照会②及び本件調査嘱託を受けた後の前記同年11月11日付け内容証明郵便による書面を受領した同月12日以降,大阪弁護士会に対し弁護士法23条の2に基づき本件預金口座②の開設者(D)の住所を報告する義務を負うとともに,別件訴訟の受訴裁判所に対し民訴法186条に基づき上記開設者の住所を報告する義務を負っていたにもかかわらず,これを履行しなかったものというべきである。 もとより,23条照会を受けた公務所又は公私の団体が当該照会により報告を求められた事項を報告する義務は,弁護士法23条の2に基づき当該照会をした弁護士会に対して負う法的義務であり,また,調査の嘱託を受けた内国の官庁若しくは公署又は団体が嘱託に応じて調査をしその結果得られた事項について報告する義務は,民訴法186条に基づき当該嘱託をした裁判所に対して負う法的義務であるから,当該義務に違反したことが直ちに当該報告により利益を受ける者(当該23条照会を申し出た弁護士の依頼者ないし当該調査の嘱託の発動を求めた訴訟当事者)に対する不法行為を構成するものではないが,23条照会を受けた者又は調査の嘱託を受 当該報告により利益を受ける者(当該23条照会を申し出た弁護士の依頼者ないし当該調査の嘱託の発動を求めた訴訟当事者)に対する不法行為を構成するものではないが,23条照会を受けた者又は調査の嘱託を受けた者が報告を求められた事項について報告すべき義務を負うにもかかわらず故意又は過失により当該義務に違反して報告しないことによって当該23条照会を申し出た弁護士の依頼者ないし当該調査の嘱託の発動を求めた訴訟当事者の権利ないし法的利益を違法に侵害し損害を与えたものと評価することができるような事実関係が認められる場合においては,23条照会を受けた者又は調査の嘱託を受けた者は,そのような損害を受けた者に対し,不法行為に基づく損害賠償責任を負うことがあるものというべきである。 もっとも,前に説示したとおり,本件のように銀行が顧客等との間で預金等の受入れを内容とする契約の締結等をするに当たり取得した当該顧客の氏名又は名称,住所又は所在地等当該顧客の特定に資する情報についてこれを開示することを求める内容の23条照会又は調査の嘱託を受けた場合については,銀行が顧客の特定に資する情報を不当に報告した場合,当該銀行は秘密保持義務違反を理由に顧客から法的責任の追及を受ける立場にあることはもとより,当該情報はいったん開示されてしまうとその原状回復は不可能であることから,これによって当該情報に係る当該顧客の法的利益が回復不可能なまでに侵害されるということができることに加えて,開示関係役務提供者の場合とは異なり,銀行は,開示請求訴訟によらずに常に裁判外で対応することを余儀なくされるから,それだけ慎重な対応が要請されるものということができる(なお,開示関係役務提供者が開示請求に応じなかった場合については,プロバイダ責任制限法4条4項により,当該開示の請求をした者に生じた損害に から,それだけ慎重な対応が要請されるものということができる(なお,開示関係役務提供者が開示請求に応じなかった場合については,プロバイダ責任制限法4条4項により,当該開示の請求をした者に生じた損害について故意又は重大な過失がある場合でなければ賠償の責めに任じないものとして,その責任が軽減されているところでもある。)。 (2) そこで,被告みずほ銀行が本件23条照会①に対して平成14年4月下旬ないし同年5月上旬ころないし遅くとも同年6月7日以降同年10月17日まで当該照会をした大阪弁護士会に対して当該照会に係るCの氏名及び住所を報告せず,また,被告三井住友銀行が本件23条照会②及び本件調査嘱託に対して同年11月12日以降当該照会をした大阪弁護士会及び当該調査を嘱託した別件訴訟の受訴裁判所に対して当該照会及び嘱託に係るDの住所を報告しなかったことが,それぞれ原告A及び原告Bらに対する不法行為を構成するか否かについて検討するに,確かに,前記認定のとおり,平成14年当時,いわゆるヤミ金業者による被害の発生が社会問題となっていた事実が認められ,また,貸金業者又は債権の取立てについて委託を受けた者等は債務処理に関する権限を弁護士に委任した旨の通知又は調停,破産その他裁判手続をとったことの通知を受けた後に債務者に対し正当な理由なく支払請求をすることを禁止する内容の金融庁ガイドラインが定められていた上,証拠(甲123,124,甲A6ないし8,甲B18ないし20)及び弁論の全趣旨によれば,本件と類似の状況の下において23条照会又は調査の嘱託を受けて一定の場合に預金口座開設者の氏名及び住所等当該預金口座開設者の特定に資する情報を報告する扱いをしていた銀行も存在していた事実が認められるところである。 しかしながら,平成14年当時のみならず今日においても,銀行が 座開設者の氏名及び住所等当該預金口座開設者の特定に資する情報を報告する扱いをしていた銀行も存在していた事実が認められるところである。 しかしながら,平成14年当時のみならず今日においても,銀行が顧客等との間で預金等の受入れを内容とする契約の締結等をするに当たり取得した当該顧客の氏名又は名称,住所又は所在地,電話番号等当該顧客の特定に資する情報についてこれを開示することを求める内容の23条照会又は調査の嘱託を受けた場合,いかなる要件の下に当該事項について報告する義務を負うかについての解釈が確立していたとは認められない上,平成14年当時の銀行実務において一定の運用基準が確立していたことを認めるに足りる証拠もなく,顧客に対する秘密保持義務を果たすことは銀行の重要な責務の一つであり,顧客の同意が得られない限り報告をしてはならないとする考え方も有力であったことがうかがわれる(甲7)。このことに加えて,前記のとおり,銀行が顧客の特定に資する情報を不当に報告した場合,当該銀行は秘密保持義務違反を理由に顧客から法的責任の追及を受ける立場にあることはもとより,当該情報はいったん開示されてしまうとその原状回復は不可能であることから,これによって当該情報に係る当該顧客の法的利益が回復不可能なまでに侵害されるということができること,23条照会又は調査の嘱託を受けた銀行は,開示関係役務提供者の場合とは異なり,開示請求訴訟によらずに常に裁判外で対応することを余儀なくされるから,それだけ慎重な対応が要請されることなどをも総合考慮すれば,本件事実関係の下において,本件23条照会①を受けた被告みずほ銀行が上記のとおり当該照会をした大阪弁護士会に対して当該照会に係るCの氏名及び住所を報告せず,また,本件23条照会②及び本件調査嘱託を受けた被告三井住友銀行が上記のとおり当 会①を受けた被告みずほ銀行が上記のとおり当該照会をした大阪弁護士会に対して当該照会に係るCの氏名及び住所を報告せず,また,本件23条照会②及び本件調査嘱託を受けた被告三井住友銀行が上記のとおり当該照会をした大阪弁護士会及び当該調査を嘱託した別件訴訟の受訴裁判所に対して当該照会及び嘱託に係るDの住所を報告しなかったことについて,少なくとも被告らには過失がなかったものというべきである。 そうであるとすれば,その余の点について判断するまでもなく,原告Aの被告みずほ銀行に対する不法行為に基づく本件損害賠償請求及び原告Bらの被告三井住友銀行に対する不法行為に基づく本件損害賠償請求は,いずれも理由がないことに帰する。 6 結論以上によれば,原告らの被告らに対する本訴請求は,いずれも理由がないから,これを棄却すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部裁判長裁判官西川知一郎裁判官田中健治裁判官和久一彦
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