令和3(ネ)3368 医療過誤に基づく損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和4年10月31日 東京高等裁判所 その他 東京地方裁判所 平成30(ワ)15489
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判決文本文22,490 文字)

- 1 -主 文1一審被告の控訴に基づき、原判決中、一審被告の敗訴部分を取り消す。 上記取消部分に係る一審原告の請求を棄却する。 2 一審原告の本件控訴を棄却する。 53 訴訟費用は、第1、2審とも一審原告の負担とする。 事実及び理由第1 控訴の趣旨1 一審原告 原判決を次のとおり変更する。 10 一審被告は、一審原告に対し、2541万円及びこれに対する平成20年8月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 一審被告主文同旨第2 事案の概要(以下、略語は、特に定めない限り、原判決の表記に従う。)151 本件は、摂食障害(神経性無食欲症)の治療を目的として、平成20年5月19日、一審被告の設置運営に係る公立学校共済組合関東中央病院(被告病院)に入院した一審原告(平成▲年▲月▲日生の女性。入院当時▲歳)が、入院(医療保護入院)中に被告病院において受けた平成20年5月24日から同年8月8日までの77日間の身体的拘束(本件拘束)が違法であり、診療契約20上許されないものであった旨主張して、一審被告に対し、当該診療契約に係る債務不履行による損害賠償請求権に基づき、損害金合計2541万円(慰謝料2310万円及び弁護士費用231万円の合計額)及びこれに対する同月9日(本件拘束が解除された日の翌日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求25める事案である。 - 2 -原審は、上記77日間のうち平成20年7月23日から同年8月8日までの17日間について、本件拘束が違法であったも 5分の割合による遅延損害金の支払を求25める事案である。 - 2 -原審は、上記77日間のうち平成20年7月23日から同年8月8日までの17日間について、本件拘束が違法であったものと認め、一審原告の上記請求について、損害金合計110万円及びこれに対する平成30年5月31日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余を棄却した。 5これに対し、一審原告及び一審被告がそれぞれ控訴した。 2 前提事実次のとおり補正するほか、原判決の「第2 事案の概要」の1記載のとおりであるから、これを引用する。 2頁19行目の「当時」を「一審原告の主治医となった当時」に改める。 10 2頁24行目の「別紙」を「原判決別紙」に改める。 4頁7行目の「伝えた」を「伝え、一審原告もこれを了承した」に改める。 4頁12行目の「また」の次に「、一審原告は」を加える。 5頁9行目の「8日」の次に「午前9時25分頃」を加える。 15 7頁19行目の「望ましい」の次に「、ただし、内科的合併症がある場合には、単に体重だけでなく、異常検査値の程度も考慮して判断すべきである」を加える。 3 争点及び争点に関する当事者の主張次のとおり補正し、当審における一審原告の主張の要旨を付加するほか、原20判決の「第2 事案の概要」の2記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決の補正ア 11頁24行目末尾に「身体拘束を検討するのは、実際に一審原告が拒食行動に走り、かつ、これを一定期間継続することで生命の危険が現実的なものとなった段階でも何ら遅くないのであり、拒食行動に走る危険25を未然に防がなければ生命 を検討するのは、実際に一審原告が拒食行動に走り、かつ、これを一定期間継続することで生命の危険が現実的なものとなった段階でも何ら遅くないのであり、拒食行動に走る危険25を未然に防がなければ生命に危険があるとはいえない。」を加える。 - 3 -イ 13頁11行目の「この点」の次に「について」を加える。 ウ 19頁7行目の「千葉県精神医療センター」を「千葉県精神科医療センター」に改める。 エ 20頁9行目の「低血圧(」の次に「血圧」を、同行目の「徐脈(」の次に「脈拍」を、10行目の「血清鉄低値(」の次に「血清鉄値」を、524行目の「徐脈(」の次に「脈拍」をそれぞれ加える。 オ 27頁25行目の「この点、」を削る。 当審における一審原告の主張の要旨ア 争点(本件拘束開始の違法性の有無)について ウ類型の解釈について10a 昭和62年に精神保健福祉法が改正された趣旨に鑑みると、入院患者の行動制限に関しては、患者の人権擁護の観点に立って必要最小限度にとどめるべきであり、ウ類型に該当すると認められるのは、真に必要最小限度の制約である場合でなければならず、精神保健指定医の単なる合理的な裁量に基づいて認められるものであってはならない。 15また、ウ類型においても、人権制約を必要最小限度にとどめなければならないとの上記改正の趣旨及び本件告示が発出された趣旨は守らなければならないから、ウ類型については、ア類型の著しい切迫性又はイ類型の顕著性を前提にしつつ、自殺企図、自傷行為、多動及び不穏に該当しない場合の中から、単に身体の安全に危険が及ぶ場合を除20き、生命にまで危険が及ぶ場合に限り、これを補充的に定めたものと理解すべきであって、必要最小限の 自殺企図、自傷行為、多動及び不穏に該当しない場合の中から、単に身体の安全に危険が及ぶ場合を除20き、生命にまで危険が及ぶ場合に限り、これを補充的に定めたものと理解すべきであって、必要最小限の制約を踰越しないために、他の類型以上に厳格な解釈運用が求められる。 そして、本件告示は、身体拘束が漫然と行われることがないように、医師は頻回の診察を行うことを定めており、頻回とは少なくとも25毎日1回よりも多い頻度を意味するところ、これは、頻回の診察の結 - 4 -果、身体拘束の要件を充たさない場合には、身体拘束をやめることができるようにしたものであるから、少なくとも身体拘束開始後は、1日を超えない時間単位で身体拘束の要件を見極め、不要になれば身体拘束を解くことが求められている。そうすると、本件告示は、身体拘束開始時においても、長くともそれに先立つ1日を超えない近接した5時間的範囲内の患者の状態から、身体拘束の要件充足性を判断することを前提としていると解すべきである。本件告示は、身体の拘束という人権制約の必要最小限度の限界として、ア類型の著しい切迫性又はイ類型の顕著性を定めているのであるから、日を隔てたエピソードはおよそ考慮し得ず、縊首や咬舌、床や壁への頭部の打ち付け等の法益10侵害の高度の可能性を異論なく認識させる外形的行為がある場合(明証性の要素)においてのみ、その該当性が認められるべきである。 b 精神科病院の管理者が身体拘束の告示基準に従う義務を定めた精神保健福祉法37条2項は、監督行政機関が、精神科病院管理者及び勤務医療従事者が本件告示の基準を遵守しているか否かを判断し、告示15基準に従っていない場合には改善を命じる前提として定められた規定であり、その義務を負う勤務医である精神保健指 科病院管理者及び勤務医療従事者が本件告示の基準を遵守しているか否かを判断し、告示15基準に従っていない場合には改善を命じる前提として定められた規定であり、その義務を負う勤務医である精神保健指定医には独自の裁量権は認められておらず、また、行動制限について複数の選択肢がある場合には、最も制約の少ない選択肢を選択しなければならないのであるから、精神保健指定医において裁量を働かせる余地はない。 20 本件拘束開始の違法性についてa 一審原告の病識及び治療継続の意思について神経性無食欲症の患者において、自身が神経性無食欲症にり患し、治療の必要性を認識・理解すること(病識)とそれでもなお太ることに恐怖を感じてしまうという精神症状(治療抵抗性)とは、併存・両25立するものである(両価性)。一審原告については、入院当初、命が - 5 -危険であることは分かっており体重を増やしたいと述べていたこと、入院後も、太ることに対する恐怖を口にしつつもA 医師の指示どおり常食8割以上の経口摂取を続けていたことに照らすと、治療抵抗性が特に高かったとはいえず、A 医師が一審原告に病識がないと判断したことは誤りである。 5また、一審原告は、5月24日に泣きながら点滴を抜去したものの、帰宅しようとはせず、A 医師の到着を待ち、A 医師との面談においても、点滴再挿入の説得には応じなかったものの、A 医師が席を外した後は穏やかで気弱な口調となり、最終的に入院治療の継続を受け入れるに至ったのであって、一審原告には治療継続の意思があったも10のであり、必要な治療に協力する意思がなかったなどということはない。 b ウ類型の「そのまま放置すれば、生命にまで危険が及ぶおそれ」との要件につ 原告には治療継続の意思があったも10のであり、必要な治療に協力する意思がなかったなどということはない。 b ウ類型の「そのまま放置すれば、生命にまで危険が及ぶおそれ」との要件について自殺や自傷のおそれについては、ア類型の要件該当性として検討さ15れるべきものであるから、これを理由にウ類型該当性を導くことはできない。 また、児童思春期精神科ないし児童青年期精神科の専門の医療機関の身体拘束例についての調査・報告(乙B12)は、たった一つの病院における調査結果にすぎない上、対象とされている患者の個別具体20的な状況が明らかでなく、本件拘束の違法性を判断するための根拠とはなり得ない。 c 一審原告について、身体拘束以外に的確に対応する方法がないとの判断の合理性について一審原告については、本件拘束開始直前、看護師の説得に応じて落25ち着きを取り戻し、入院継続を受け入れる発言をしていたことからす - 6 -れば、治療に協力する説得に応じなかったとはいえない。 本件は、病識をもって入院した一審原告に対し、A 医師が極端に制限的かつ強引な治療方針を押し付けたために、一審原告が治療抵抗性を高め、点滴抜去という行動に至った事案であり、一審原告を追い詰めたA 医師にはその治療方針を見直す責務があったところ、A 医師が5その責務を果たさず、身体拘束を開始したことに合理性はない。 また、一審原告については、体重その他の検査指標に照らし、身体拘束が必要であったということはできず、また、QTc延長に対する処置が誤りであったこと、リフィーディング症候群に対する配慮が欠如していたこと、一審原告に切迫した自殺リスクをうかがわせるよう10 拘束が必要であったということはできず、また、QTc延長に対する処置が誤りであったこと、リフィーディング症候群に対する配慮が欠如していたこと、一審原告に切迫した自殺リスクをうかがわせるよう10な言動がなかったことに照らし、身体拘束以外に的確に対応する方法がなかったということはできない。 イ 争点(本件拘束継続に係る違法性の有無)について 本件拘束に対する頻回な診察について本件告示が身体拘束について漫然と行われることがないようにと定15め、その趣旨が必要最小限度を超えた身体拘束からの解放という点にあることからすれば、本件告示は、医師に対し、診察の度に、本件告示に掲げる要件の充足性の検討を要求しているものと解される。 しかるに、A 医師ないし被告病院の他の医師が、1日に少なくとも2回、一審原告を診察していたとしても、その内容は、本件拘束の解除に20向けたものではなかったから、本件において、身体拘束の適法性につき一審被告が負う証明責任(1日最低2回の診察時における本件告示の要件の充足)は果たされておらず、本件拘束の継続は違法であると評価されるべきである。 栄養状態の危機的状態を脱した後の拘束の違法性について25原判決は、6月23日の時点では、栄養状態に関して危機的な状況で - 7 -はなくなったというべきである旨判断しているが、ウ類型は、精神障害のためにそのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶ場合であって、かつ、身体拘束以外によい代替方法がない場合に、身体拘束を許容しているのであるから、栄養状態の面で生命の危険がある状態を脱したのであれば、それ以降も本件拘束を継続することは違法というべきであ5る。 第3 当裁判所の判断1 当裁判 、身体拘束を許容しているのであるから、栄養状態の面で生命の危険がある状態を脱したのであれば、それ以降も本件拘束を継続することは違法というべきであ5る。 第3 当裁判所の判断1 当裁判所は、原審とは異なり、一審原告の請求は全部理由がないものと判断する。その理由は、以下のとおりである。 2 認定事実10次のとおり補正するほか、原判決の「第3 当裁判所の判断」の1記載のとおりであるから、これを引用する。 33頁26行目の「しかし、」の次に「一審原告が」を、34頁3行目の「過ごしていた。」の次に「一審原告は、」をそれぞれ加える。 34頁8行目の「始めた。」を「始め、」に、14行目の「なってい15た。」を「なり、」にそれぞれ改める。 34頁21行目の「また」の次に「、一審原告は」を、26行目の「しかし」の次に「、一審原告については」を、35頁1、2行目の「16日に」の次に「一審原告が」をそれぞれ加える。 35頁7行目の「頭痛」を「一審原告が激しい頭痛」に改め、12行目の20「述べた。」の次に「一審原告は、」を、17行目の「この頃の」の次に「一審原告の」をそれぞれ加える。 36頁18行目の「A 医師が」の次に「、その」を加え、20行目の「持ち込み」を「持込み」に、22、23行目の「ベッド上」を「床上」に、37頁3行目の「されている」を「され、「自殺念慮・自殺企図」の箇所には25チェックがされなかった」にそれぞれ改める。 - 8 - 37頁16行目の「食事」を「一審原告は、食事」に、17行目の「であった。」を「であり、」に、38頁5行目の「翌21日」を「一審原告は、翌21日」にそれぞれ改め、6行目の「他方」の次に「、一審原告は」を加え、14行目の「述 「一審原告は、食事」に、17行目の「であった。」を「であり、」に、38頁5行目の「翌21日」を「一審原告は、翌21日」にそれぞれ改め、6行目の「他方」の次に「、一審原告は」を加え、14行目の「述べた。」を「述べ、」に改め、17行目の「両日も、」の次に「一審原告の」を、20行目の「77」の次に「、164」を5それぞれ加える。 38頁24行目の「聞くと」の次、39頁6行目の「また」の次及び10行目の「答えると」の次にいずれも「、一審原告は」を加え、13行目の「その後、原告は、」を「また、一審原告は、上記のA 医師の診察後に一審原告の病室を訪れた」に、15行目の「述べた。さらに、約2時間後に10は」を「述べ、さらに、約2時間後の午後5時頃には、看護師に対し」にそれぞれ改める。 39頁25行目の「義母」を「一審原告の母は、自らとその義母(一審原告の祖母)」に、40頁2行目の「ベッド上安静」を「床上安静」にそれぞれ改め、4行目の「交渉したいので」の次に「A 医師を」を、4、5行目の15「繰り返した。」の次に「一審原告は、」を、16行目の「看護師は」の次に「、心電図モニターの状態等を踏まえて」を、18行目の「しかし」の次に「、一審原告は」を、25行目の「A 医師は」の次に「、一審原告に対し、約1時間にわたって」を、41頁2行目の「判断し」の次に「、午後5時頃」をそれぞれ加える。 20 41頁9行目の「同時に、」の次に「一審原告の」を、23行目の「訪室すると」の次に「、一審原告は」をそれぞれ加え、42頁4行目の「には」から6行目の「記載された」までを「は、その「現在の精神症状」欄の「Ⅸ食行動」の「1 拒食」の箇所に丸印が付され、また、「現在の状態像」欄の「10 その他」の箇所に丸印が付されるとともに「 には」から6行目の「記載された」までを「は、その「現在の精神症状」欄の「Ⅸ食行動」の「1 拒食」の箇所に丸印が付され、また、「現在の状態像」欄の「10 その他」の箇所に丸印が付されるとともに「(低栄養状態、治療拒25絶)」と追記されているが、「その他の重要な症状」欄の「2 自殺念慮」 - 9 -の箇所には丸印が付されていないものであった」に改める。 42頁14行目の「その後も」の次に「、同月28日及び同月29日には」を、16行目の「話していた。」の次に「一審原告は、」をそれぞれ加え、17行目の「同月29日」を「同日」に改め、43頁1行目の「答えた。」の次に「一審原告は、看護師に対し、」を加える。 5 43頁19行目の「それでも」の次に「、一審原告は」を加え、44頁5行目の「不満の訴えは続いたが」を「一審原告の不満の訴えは続いたが、一審原告は」に、6行目の「A 医師が」を「A 医師から」にそれぞれ改め、10行目の「述べた。」の次に「一審原告は、」を加え、16行目の「表情をし」を「表情をした。一審原告については」に改め、24行目の「また」の10次に「、一審原告は」を加える。 45頁10行目の「原告は」の次に「、同月13日午後3時頃」を加え、13行目の「同日」を「同月16日」に改め、19行目の「そして」の次に「、一審原告は」を加える。 46頁12、13行目の「喜んだ。そして」を「喜び」に改める。 15 46頁23行目の「そして」の次に「、一審原告は」を加える。 47頁10行目の「しかし」の次に「、一審原告は」を加え、13行目の「述べた。」を「述べ、」に改める。 47頁24行目の「一方で」の次及び48頁4行目の「同じ頃」の次にいずれも「、一審原告は」を加える。 「しかし」の次に「、一審原告は」を加え、13行目の「述べた。」を「述べ、」に改める。 47頁24行目の「一方で」の次及び48頁4行目の「同じ頃」の次にいずれも「、一審原告は」を加える。 20 49頁1行目の「しかし」の次に「、一審原告は」を加える。 49頁21行目の「話した。」の次に「一審原告は、」を、24、25行目の「指摘すると、」の次に「一審原告が」をそれぞれ加える。 50頁25行目の「見つかった母からは」を「母に見つかり、」に改める。 25 51頁18行目の「原告に」を削る。 - 10 - 51頁23行目の「この間」から24行目の「理由になる」までを「一審原告は、同月25日、A 医師に対し、肩拘束は早く外してほしいが、上肢の拘束があることによってナースコールを押す用件ができるので、上肢の拘束はすぐには外してほしくないこと、本当は寂しいことを理由にナースコールを押したいが、看護師に嫌われたくない、去られたくないため、それができ5ない」に、25、26行目の「することがあった」を「した」にそれぞれ改め、52頁1行目の「なると」の次に「、一審原告は、寂しいことを理由として2回ナースコールを押した。また、同日」を加え、3行目の「述べた。 また」を「述べ、さらに」に改める。 52頁13行目の「解除に際し」を「同日午後5時頃」に改め、14行目10の「そして、」の次に「一審原告は、同日」を加え、17行目の「話した。 さらに、」を「話し、さらに、同日」に、20行目の「カンファレンスで」を「同月29日朝のカンファレンスにおいて、一審原告が前の週末には「寂しい」と頻回に言っていたにもかかわらず、肩拘束の解除後に前向きな発言に切り替わったのは」にそれぞれ改め、21行目の「可能性 で」を「同月29日朝のカンファレンスにおいて、一審原告が前の週末には「寂しい」と頻回に言っていたにもかかわらず、肩拘束の解除後に前向きな発言に切り替わったのは」にそれぞれ改め、21行目の「可能性」の次に「があ15る旨」を加え、22行目の「7月29日」を「一審原告は、同日」に改め、同行目の「、原告は」を削り、24行目の「になり」の次に「、同月30日には、看護師に対し、拘束がだんだん外れてきてからきついことを言われるようになったと述べるなど、看護師の手が離れることに不安な様子を示し」を加え、26行目の「一方で」から53頁2行目の「していた」までを「A20医師は、同日朝のカンファレンスにおいて、一審原告の怒りの発言について、拘束を外される不安を訴えたすぐ後に肩拘束が解除されたことに対する不満もある可能性が考えられると指摘した」に改める。 53頁6行目の「話をし」の次に「、看護師に対し」を加える。 53頁14行目の「一方」の次に「、一審原告は」を加える。 25 53頁24行目の「A 医師は」の次に「、一審原告について」を、54頁 - 11 -2行目の「診察し」の次に「、一審原告に対し」をそれぞれ加える。 54頁19行目の「食事」を「一審原告の食事」に改め、20行目の「始まった。」の次に「一審原告については、」を加える。 55頁3行目の「問うと」の次に「、一審原告は」を加え、8行目の「話し合い」を「話合い」に改める。 53 争点(本件拘束開始の違法性の有無)について次のとおり補正し、当審における一審原告の主張に対する判断を付加するほか、原判決の「第3 当裁判所の判断」の2記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決の補正10ア 56頁20、 補正し、当審における一審原告の主張に対する判断を付加するほか、原判決の「第3 当裁判所の判断」の2記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決の補正10ア 56頁20、21行目の「生命に危険を及ぼす」を「精神障害のためにそのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶ場合に該当する」に改める。 イ 57頁4行目の「原告は」を「一審原告については」に改め、7行目の「否定し」の次に「、5月2日には東海大学八王子病院小児科におい15て」を、8行目の「されながら」の次に「、同月9日に同病院を再診した際には」を、12行目の「かかわらず、」の次に「一審原告の」を、13行目の「少なく」の次に「、一審原告については」を、13、14行目の「認められる。」の次に「また、一審原告については、」をそれぞれ加え、20行目の「点滴による水分補給や再栄養療法」を「少なく20とも点滴等による水分補給や再栄養療法等の摂食障害(神経性無食欲症)に対する相応の医療措置」に改める。 ウ 57頁22行目の「原告は、上記2」を「一審原告については、上記1」に改め、同行目の「とおり」の次に「、被告病院へ入院後」を加え、23行目の「初日」を「入院初日」に改め、58頁9行目の「して25おり」の次に「、一審原告については」を加え、58頁11行目の - 12 -「オ」を「エ」に改め、13行目の「状態」の次に「等」を加え、16行目の「その後のA 医師の説得を受けても点滴の再挿入に同意しなかった」を「その後、A 医師から約1時間にもわたって説得を受けたにもかかわらず、点滴の再挿入に同意しなかったものであり、このような一審原告の状況に加え、後記エのとおり、摂食障害(神経性無食欲症)の患5者については両価性が顕著であるとされており、 を受けたにもかかわらず、点滴の再挿入に同意しなかったものであり、このような一審原告の状況に加え、後記エのとおり、摂食障害(神経性無食欲症)の患5者については両価性が顕著であるとされており、一審原告が、被告病院に入院した後、5月24日までは食事の経口摂取に任意に応じていたとしても、そのことから一審原告がその後もこれに任意に応じることが予測されるべきであったとはいえない」に改め、17行目の「において」の次に「、一審原告が真の病識を有さず」を加える。 10エ 58頁20、21行目の「証拠(」の次に「甲B15、」を加える。 オ 59頁15、16行目の「自傷だからと」を「自傷だからとの」に、60頁2行目の「るいそう」を「るい痩」にそれぞれ改め、4行目末尾に改行の上、次を加える。 「摂食障害(神経性無食欲症)の患者は、治りたい気持ちと治りたくな15い気持ちの両方の気持ちが併存する両価性(アンビバレンツ)が顕著であり、治療に当たる者は、この両価性をよく理解しておく必要がある。」カ 60頁5行目の「上記イからエまでの説示を考慮すれば」を「上記イのとおり、一審原告については、点滴等による水分補給や再栄養療法等の20摂食障害(神経性無食欲症)に対する相応の医療措置を必要とする状態にあったものと認められるところ、上記ウのとおり、A 医師が一審原告に対する本件拘束を開始した5月24日の時点において、A 医師において、点滴や食事の経口摂取について一審原告から任意の協力を得ることは困難であると認識したことが不合理であったとは認められず、また、上記25エのとおり、摂食障害(神経性無食欲症)の患者については、その自殺 - 13 -率が一般に高いとされているとともに、両価性が顕著であるとされており、一審 あったとは認められず、また、上記25エのとおり、摂食障害(神経性無食欲症)の患者については、その自殺 - 13 -率が一般に高いとされているとともに、両価性が顕著であるとされており、一審原告が5月19日の入院時から5月24日の昼食まで経口により食事をとっていたとしても、引き続いて経口による食事の摂取に一審原告自身の任意の協力が得られるかどうかは不明であったといわざるを得ないこと、児童思春期精神科ないし児童青年期精神科に係る専門の医5療機関において摂食障害を主診断とするケースでの身体拘束例が報告されていたことからすれば、一審原告にとって必要な再栄養療法等の医療措置に一審原告自身の任意の協力が得られない場合には、当時の医療水準に照らして、身体拘束の手段を用いることも、一審原告の生命に危険が及ぶことを回避するためにはやむを得なかったものというべきであ10り、A 医師において、本件拘束開始時点で非代替性要件も満たしていると判断したことが不合理であるということはできない。以上によれば」に改め、6行目の「、真の病識を有さず」を削る。 キ 60頁19行目の「、精神科医療」から24行目の「また」までを削り、61頁2行目の「日本語的理解からすれば」を「文理を合理的に理15解すれば」に改め、3行目の「原告の」の次に「ウ類型の解釈に係る」を加える。 ク 61頁16、17行目の「28」の次に「、64」を、17行目末尾に「また、一審原告が提出するその余の医師の意見書(甲B19、20、27、63、66、70)にも、一審原告の上記主張に沿う記載があ20る。」をそれぞれ加え、18行目の「しかし」から23行目の「両医師とも」までを「確かに、上記アの被告病院入院時の一審原告の体重等については、自宅療養が望ましいとされる段階に に沿う記載があ20る。」をそれぞれ加え、18行目の「しかし」から23行目の「両医師とも」までを「確かに、上記アの被告病院入院時の一審原告の体重等については、自宅療養が望ましいとされる段階にとどまっており、本件拘束開始時点において、一審原告について直ちに生命に危険を及ぼすような身体状況にあったとはいい切れないということができる。しかしな25がら、上記に説示したとおり、ウ類型については、生命の危険が著し - 14 -く切迫している場合に限定したものとまで解することはできないところ、上記オにおける認定説示のとおり、一審原告については、点滴等による水分補給や再栄養療法等の摂食障害(神経性無食欲症)に対する相応の医療措置を必要とする状態にあったものと認められ、本件拘束開始時点において、A 医師が、点滴や食事の経口摂取について一審原告から5任意の協力を得ることは困難であると認識したことが不合理であったとはいえないから、A 医師において、上記の医療措置を施すことなくそのまま放置すれば、一審原告の生命にまで危険が及ぶと判断したことも、不合理であったということはできない(この点について、一審原告は、身体拘束を検討するのは、実際に一審原告が拒食行動に走り、かつ、これ10を一定期間継続することで生命の危険が現実的なものとなった段階でも何ら遅くないなどと主張するが、点滴や食事の経口摂取について一審原告から任意の協力を得ることが困難であるとの判断が合理的にされているにもかかわらず、一審原告の生命の危険が現実なものとなるまでは一審原告の状態に対して現に必要と考えられる相応の医療的措置を施すこ15とをも放棄して当該状態を放置することが、診療契約上の注意義務の観点からみて相当であるということはできないから、一審原告の上記主張を採 態に対して現に必要と考えられる相応の医療的措置を施すこ15とをも放棄して当該状態を放置することが、診療契約上の注意義務の観点からみて相当であるということはできないから、一審原告の上記主張を採用することはできない。)。また、B 医師及びC 医師は」に、24行目の「述べるが、両医師」を「述べ、家族療法等を選択すべきであったとするが、摂食障害において、家族療法等の特定の治療法が支持され、20医療水準となっていると認めるに足る証拠はなく(なお、児童青年精神科領域において世界的に評価されている教科書とされるマイケル・ラターらによる新版児童青年精神医学(乙B31添付資料1)には、特定の心理療法を支持するエビデンスも存在しないとの記述がある。)、これらの医師」にそれぞれ改め、26行目末尾に「かえって、上記エ25のとおり、児童思春期精神科ないし児童青年期精神科に係る専門の医療 - 15 -機関において摂食障害を主診断とするケースでの身体拘束例が報告されていることが認められるから、本件拘束当時の医療水準として、身体拘束を手段とする医療措置もその選択肢の一つとされていたことが認められる。なお、摂食障害の患者に対するあるべき治療法について、本件のような身体拘束を伴うものが適切かどうかを含めて、専門家による更な5る議論が必要であるということができるとしても、特定の医師による医療措置について債務不履行責任が問題となるか否かの判断においては、当該医療措置が当時の医療水準に照らして合理的な選択肢となり得るものであったのであれば、それにもかかわらず当該医療措置を採ったことに注意義務違反があったとしてこれを非難することはできないというべ10きである。」を、62頁1行目の「C 医師」の次に「並びにその余の医師」をそれぞれ加え、2行目の「ま 当該医療措置を採ったことに注意義務違反があったとしてこれを非難することはできないというべ10きである。」を、62頁1行目の「C 医師」の次に「並びにその余の医師」をそれぞれ加え、2行目の「また」から5行目末尾までを削る。 ケ 62頁7行目の「」の次に「並びに上記ア」を加える。 コ 63頁6行目の「ある」を「あり、一審原告は、当審における本人尋問でこれに沿った供述をしている」に改め、7行目の「記載部分」の次に15「及び本人尋問における上記供述」を、15行目の「陳述書」の次に「及び供述」をそれぞれ加える。 当審における一審原告の主張についてア ウ類型の解釈について 一審原告は、昭和62年に精神保健福祉法が改正された趣旨に照らせ20ば、入院患者の行動制限に関しては、患者の人権擁護の観点に立って必要最小限度にとどめるべきであって、ウ類型に該当すると認められるのは、真に必要最小限度の制約である場合でなければならず、また、ウ類型については、ア類型の著しい切迫性又はイ類型の顕著性を前提にしつつ、自殺企図、自傷行為、多動及び不穏に該当しない場合の中から、単25に身体の安全に危険が及ぶ場合を除き、生命にまで危険が及ぶ場合に - 16 -限って補充的に定めたものと理解すべきであって、必要最小限の制約を踰越しないために他の類型以上に厳格な解釈運用が求められる旨を主張するとともに、本件告示については、身体拘束開始時においても、長くともそれに先立つ1日を超えない近接した時間的範囲内の患者の状態から、身体拘束の要件充足性を判断することを前提としていると解すべき5であるとし、日を隔てたエピソードはおよそ考慮し得ず、縊首や咬舌、床や壁への頭部の打ち付け等の法益侵害の高度の可能性を異論なく認識 身体拘束の要件充足性を判断することを前提としていると解すべき5であるとし、日を隔てたエピソードはおよそ考慮し得ず、縊首や咬舌、床や壁への頭部の打ち付け等の法益侵害の高度の可能性を異論なく認識させる外形的行為がある場合(明証性の要素)においてのみ、ウ類型の該当性が認められるべきである旨等を主張する。 しかしながら、「そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶお10それがある場合」というウ類型の文言の文理を合理的に理解すれば、ウ類型の要件が、生命の危険が著しく切迫している場合に限定したものとまでは解することはできないこと、ウ類型該当性を含む本件告示所定の要件の該当性については、身体的拘束を受ける患者の人権に対する配慮を必要とすることは当然としても、精神保健指定医がその専門的知見に15基づき判断すべきものであって、その判断には、事柄の性質上、合理的な裁量が認められるべきものであるといえること、その判断は将来予測を前提とするものであり、万一予測が外れた場合には重大な結果が生じ得るものであることにも照らせば、ウ類型該当性の判断において、日を隔てたエピソードはおよそ考慮し得ないとか、法益侵害につき一審原告20が主張するような明証性の要素が必要であると解することはできないことは、前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」の2ア(61頁14行目から62頁5行目まで。当審における補正部分を含む。)において説示したとおりであって、一審原告の上記主張は、上記説示に照らし、採用することができない。 25 また、一審原告は、精神科病院の管理者が身体拘束の告示基準に従う - 17 -義務に係る規定(精神保健福祉法37条2項)について、監督行政機関が、精神科病院管理者及び勤務医療従事者が本件告示の基準を遵 一審原告は、精神科病院の管理者が身体拘束の告示基準に従う - 17 -義務に係る規定(精神保健福祉法37条2項)について、監督行政機関が、精神科病院管理者及び勤務医療従事者が本件告示の基準を遵守しているか否かを判断し、告示基準に従っていない場合には改善を命じる前提として定められたものであり、その義務を負う勤務医である精神保健指定医には独自の裁量権は認められておらず、また、行動制限について5複数の選択肢がある場合には、最も制約の少ない選択肢を選択しなければならないのであるから、精神保健指定医において裁量を働かせる余地はない旨主張するが、ウ類型該当性を含む本件告示所定の要件の該当性については、身体的拘束を受ける患者の人権に対する配慮を必要とすることは当然としても、精神保健指定医がその専門的知見に基づき判断す10べきものであって、その判断には、事柄の性質上、合理的な裁量が認められるべきものであるといえることは、上記の説示のとおりであって、精神保健福祉法及び本件告示もそのことを前提としているものと解されるから、一審原告の上記主張は、失当であり、採用することができない。 15イ 本件拘束開始の違法性について 一審原告の病識及び治療継続の意思について一審原告は、神経性無食欲症の患者において、自身が神経性無食欲症にり患し、治療の必要性を認識・理解すること(病識)とそれでもなお太ることに恐怖を感じてしまうという精神症状(治療抵抗性)とは併20存・両立するものであり(両価性)、一審原告については、治療抵抗性が特に高かったとはいえず、A 医師が一審原告に病識がないと判断したことは誤りであった旨、一審原告においては、5月24日に泣きながら点滴を抜去したものの、帰宅しようとはせず、A 医師との面談 抵抗性が特に高かったとはいえず、A 医師が一審原告に病識がないと判断したことは誤りであった旨、一審原告においては、5月24日に泣きながら点滴を抜去したものの、帰宅しようとはせず、A 医師との面談においても、点滴再挿入の説得には応じなかったものの、A 医師が席を外した後25は穏やかで気弱な口調となり、最終的に入院治療の継続を受け入れるに - 18 -至ったのであって、一審原告には治療継続の意思があり、必要な治療に協力する意思がなかったなどということはない旨等を主張する。 しかしながら、一審原告においては、点滴を受け入れ、常食の経口摂取を続けていたものの、入院初日から食事摂取・体重増加への不安を高めているとみられる言動を繰り返し、「私、自分の身体が危ないって全5然思ってないんですよね。」などと繰り返し看護師に述べるなど、真の病識に乏しい様子をみせ、5月24日にもA 医師との交渉を希望し、それがかなわないのであれば点滴を抜去して帰宅する旨述べ、看護師から自身の身体の危機について説明され、家に帰る途中にも心臓発作を起こしかねないとまで言われても、泣きながら点滴を自己抜去し、被告病10院で治療を受けることを拒絶し、その後、A 医師から約1時間にもわたって説得を受けたにもかかわらず、点滴の再挿入に同意しなかったこと、摂食障害(神経性無食欲症)の患者については両価性が顕著であるとされており、一審原告が被告病院に入院後5月24日までは食事の経口摂取に任意に応じていたとしても、そのことから一審原告がその後も15これに任意に応じることが予測されるべきであったとはいえないことなどを考慮すれば、A 医師において、この時点で点滴や食事の経口摂取について一審原告から任意の協力を得ることは困難であると認識したことが不合理であ 応じることが予測されるべきであったとはいえないことなどを考慮すれば、A 医師において、この時点で点滴や食事の経口摂取について一審原告から任意の協力を得ることは困難であると認識したことが不合理であったとは認められないことは、前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」の2ウ(57頁22行目から58頁19行20目まで。当審における補正部分を含む。)において認定説示したとおりであって、一審原告の上記主張は、上記の認定説示に照らし、採用することができない。 ウ類型の「そのまま放置すれば、生命にまで危険が及ぶおそれ」との要件について25一審原告は、自殺や自傷のおそれについては、ア類型の要件該当性と - 19 -して検討されるべきものであるから、これを理由にウ類型該当性を導くことはできない旨、児童思春期精神科ないし児童青年期精神科の専門の医療機関の身体拘束例についての調査・報告(乙B12)については、たった一つの病院における調査結果にすぎない上、対象とされている患者の個別具体的な状況が明らかでなく、本件拘束の違法性を判断するた5めの根拠足り得ない旨を主張する。 しかしながら、ウ類型の定めには「ア又はイのほか」という文言があり、当該定めについては、ア類型及びイ類型に準じた類型を補充的に定める趣旨のものと解するのが、その文理に照らして自然であり、合理的である。そうであれば、自殺や自傷のおそれについてはア類型の要件該10当性として検討されるべきものであるからこれを理由にウ類型該当性を導くことはできないとする一審原告の主張は、失当であり、採用することができない。 また、児童思春期精神科ないし児童青年期精神科の専門の医療機関の身体拘束例についての調査・報告(乙B12)につい はできないとする一審原告の主張は、失当であり、採用することができない。 また、児童思春期精神科ないし児童青年期精神科の専門の医療機関の身体拘束例についての調査・報告(乙B12)については、それ自体は15一つの病院における調査結果であるとしても、その報告が当時の医療水準に照らして不相当であるとされていたことをうかがわせる事情は見当たらないことからして、これにより、本件拘束当時の医療水準として、身体拘束を手段とする医療措置も選択肢とされていたことが認められるというべきである。そして、一審原告については、点滴等による水分補20給や再栄養療法等の摂食障害に対する相応の医療措置を必要とする状態にあったものと認められるところ、5月24日の時点において、A 医師において、点滴や食事の経口摂取について一審原告の任意の協力を得ることが困難であると認識したことが不合理であったとは認められないことなどからすれば、一審原告にとって必要な再栄養療法等の医療措置に25一審原告自身の任意の協力が得られない場合には、当時の医療水準に照 - 20 -らして、身体拘束の手段を用いることも、一審原告の生命に危険が及ぶことを回避するためにはやむを得なかったものというべきであり、A 医師において、本件拘束開始時点で非代替性要件も満たしていると判断したことが不合理ということはできないことは、前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」の2オ(60頁5行目から12行目まで。 5当審における補正部分を含む。)において説示したとおりであって、一審原告の上記主張は、上記説示に照らし、採用することができない。 一審原告について、身体拘束以外に的確に対応する方法がないとの判断の合理性について一審原告は、一審原告については、 上記主張は、上記説示に照らし、採用することができない。 一審原告について、身体拘束以外に的確に対応する方法がないとの判断の合理性について一審原告は、一審原告については、本件拘束開始直前、看護師の説得10に応じて落ち着きを取り戻し、入院継続を受け入れる発言をしていたことからすれば、治療に協力する説得に応じなかったとはいえないとし、本件は、病識をもって入院した一審原告に対し、A 医師が極端に制限的かつ強引な治療方針を押し付けたために、一審原告が治療抵抗性を高め、点滴抜去という行動に至った事案であり、一審原告を追い詰めたA15医師にはその治療方針を見直す責務があったところ、A 医師がその責務を果たさず、身体拘束を開始したことに合理性はない旨主張する。 しかしながら、A 医師において、本件拘束開始時点で点滴や食事の経口摂取について一審原告から任意の協力を得ることは困難であると認識したことが不合理であったとは認められないことは、上記の説示のと20おりであり、一審原告の上記主張は、上記説示を左右するものではなく、採用することができない。 また、一審原告は、一審原告については、体重その他の検査指標に照らし、本件身体拘束が必要であったとすることはできず、また、QTc延長に対する処置が誤りであったこと、リフィーディング症候群に対す25る配慮が欠如していたこと、一審原告には切迫した自殺リスクをうかが - 21 -わせるような言動がなかったことに照らし、身体拘束以外に的確に対応する方法がないということはできなかった旨を主張するが、これらの主張にいずれも理由がないことは、前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」の2イ(62頁6行目から63頁2行目まで。当審における補正部分 ないということはできなかった旨を主張するが、これらの主張にいずれも理由がないことは、前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」の2イ(62頁6行目から63頁2行目まで。当審における補正部分を含む。)において認定説示したとおりである。 5 その他、一審原告が主張するところは、いずれも上記の認定判断を左右するものではなく、採用することができない。 4 争点(本件拘束継続に係る違法性の有無)について ア 一審原告は、仮に一審原告が本件拘束開始時にはウ類型に該当する状態にあったとしても、その状態がその後77日間も継続するはずがなく、10本件拘束の継続は本件告示の要件を満たさない違法なものであった旨主張するので、以下検討する。 イ前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」の1(33頁15行目から56頁17行目まで。当審における補正部分を含む。以下「認定事実」という。)からまでのとおり、一審原告については、本件15拘束開始直後はともかく、その後は、点滴の刺替えや清拭等による一時解除後の再拘束に抵抗なく応じ、経管栄養は漸増されて6月16日には1800kcalとされ、同月23日にはアルブミン値が3.7(別紙一覧表)と上昇しており、栄養状態に関しては危機的な状況を脱しつつあり、7月14日にはセレネースの投与が中止され、翌15日の昼食か20ら経口摂取が再開となり、主食・副食ともほぼ全量摂取を継続し、同月18日以降は肥満に対する不安等を訴えず、食事をゆっくり味わって食べる様子が見られるようになり、A 医師は、同月22日夕食から毎食経口摂取とした上、同月23日、経鼻胃管を抜去したことが認められる。 また、認定事実のとおり、一審原告は、同月25日、A 医師に対25し、肩拘束は 医師は、同月22日夕食から毎食経口摂取とした上、同月23日、経鼻胃管を抜去したことが認められる。 また、認定事実のとおり、一審原告は、同月25日、A 医師に対25し、肩拘束は早く外してほしいが、上肢の拘束については、それがある - 22 -ことによってナースコールを押す用件ができるので、すぐには外してほしくないなどと訴え、同月26日には、実際に寂しいことを理由としてナースコールを押し、その後、A 医師は、同月28日に一審原告の肩拘束を解除したが、他方で、同月29日朝のカンファレンスにおいては、一審原告が肩拘束の解除後に前向きな発言をしたことについて、過大な5依存心の影響や不安の表出である可能性を指摘したことが認められる。 前記の事実経過におけるA 医師の対応については、A 医師において、入院後の一審原告の治療の経過及び心身の状況の推移等を踏まえた上、なお摂食障害の治療の継続を要する状態にある一審原告について、本件拘束の解除によって一審原告が見捨てられたと思い込むこと等によ10り、上記治療に対する拒否感が高まり、それによりそのまま放置すれば一審原告の生命に危険が及ぶことを回避するために、慎重にその心理状態の十分な見極めを行っていたものとみられるものである。 実際にも、認定事実イのとおり、一審原告は、同月30日には、看護師の手が離れることに不安な様子を示しており、A 医師は、8月1日15朝のカンファレンスにおいて、一審原告の怒りの発言について、拘束を外される不安を訴えたすぐ後に肩拘束を解除したことに対する不満もある可能性を指摘しているのであって、上記のようなA 医師の一審原告に対する対応は、合理的なものであったというべきである。 そして、認定事実エのとおり 拘束を解除したことに対する不満もある可能性を指摘しているのであって、上記のようなA 医師の一審原告に対する対応は、合理的なものであったというべきである。 そして、認定事実エのとおり、A 医師は、同月7日のカンファレン20スにおいて、一審原告には、拘束下で身を委ねたい気持ちと他者に身を委ねる怖さとがあり、拘束が外れても大丈夫と述べてはいるものの、かなり不安が大きいことがうかがえるなどとの認識を示した上で、一審原告を診察し、一審原告に対して点滴を外すことを伝え、本件拘束がもし外れたらどうなりそうかと質問するなどし、その回答も踏まえて、翌825日に本件拘束を解除している。 - 23 - これらの経過に鑑みると、A 医師は、本件拘束の継続中、一審原告が栄養状態について危機的な状況を脱しつつあった時期以降においても、本件拘束の解除によって一審原告の生命に危険が及ぶことを回避するために、一審原告の心理状態を十分に見極める必要があると考え、拘束の程度を徐々に緩和しながら、慎重にその心理状態の見極めを行っていた5ものと認めることができる。 ウ 以上のとおり、一審原告については、7月下旬頃にはその栄養状態が改善に向かっていたものの、A 医師においては、一審原告の言動等に照らし、本件拘束の解除によって前記治療に対する一審原告の拒否感が高まり、それによりそのまま放置すれば一審原告の生命に危険が及ぶことを10回避するために、慎重に一審原告の心理状態の見極めを続け、その上で、その見極めが十分と判断された8月8日に至って本件拘束を解除することとしたものと認められるところであって、前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」の2エ(58頁20行目から60頁4行目まで。当審における補正部分を含む。)認定 に至って本件拘束を解除することとしたものと認められるところであって、前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」の2エ(58頁20行目から60頁4行目まで。当審における補正部分を含む。)認定の知見に照らし、さら15に、ウ類型該当性の判断が、将来予測を前提とするものであって、万一予測が外れた場合には重大な結果が生じ得るものであることのほか、本件拘束が徐々に緩和されたことや、A 医師ないし被告病院の裁量をも考慮すれば、本件拘束が継続されていた期間を通じ、A 医師においてウ類型との関係で本件告示の要件に該当する旨の判断をしたことが違法であった20ものと認めることまではできないというべきである。 エ したがって、本件拘束が5月24日に開始されてから8月8日に解除されるまでの77日間継続したことが直ちに違法であるということはできない。 一審原告の主張について25次のとおり当審における一審原告の主張に対する判断を付加するほか、原 - 24 -判決の「第3 当裁判所の判断」の3記載のとおりであるから、これを引用する。 (当審における一審原告の主張について)ア 本件拘束に対する頻回な診察について一審原告は、本件拘束が継続されていた間の一審原告に対する診察に関5し、A 医師ないし被告病院の他の医師が、1日に少なくとも2回、一審原告を診察していたとしても、その内容は本件拘束の解除に向けたものではなかったなどとして、本件拘束の継続は違法であると評価されるべきである旨主張するが、認定事実からまでの事実経過に照らせば、前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」の3イ(65頁1110行目から18行目まで)における認定説示のとおり、A 医師(欠勤日は被告病院の他 認定事実からまでの事実経過に照らせば、前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」の3イ(65頁1110行目から18行目まで)における認定説示のとおり、A 医師(欠勤日は被告病院の他の医師)が、一日少なくとも2回一審原告を診察するなどしてその言動を観察し、その結果等を踏まえ、段階的に本件拘束を緩和していたと認められるから、一審原告の上記主張は採用することができない。 15イ 栄養状態の危機的状態を脱した後の拘束の違法性について一審原告は、ウ類型について、精神障害のためにそのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶ場合であって、かつ、身体拘束以外によい代替方法がない場合に、身体拘束を許容しているものであるから、栄養状態の面で生命の危険がある状態を脱したのであれば、本件拘束を継続す20ることは違法というべきである旨主張する。 確かに、一審原告については、前記イのとおり、6月23日にはアルブミン値が3.7(別紙一覧表)と上昇しており、栄養状態に関しては危機的な状況を脱しつつあったということができ、さらに、7月14日にはセレネースの投与が中止され、翌15日の昼食から経口摂取が再25開となり、主食・副食ともほぼ全量摂取を継続し、同月18日以降は肥 - 25 -満に対する不安等を訴えず、食事をゆっくり味わって食べる様子が見られるようになり、A 医師は、同月22日夕食から毎食経口摂取とした上、同月23日、経鼻胃管を抜去したことが認められる。 しかしながら、A 医師においては、その後も、一審原告の言動等に照らし、本件拘束の解除によって前記治療に対する一審原告の拒否感が高ま5り、それによりそのまま放置すれば一審原告の生命に危険が及ぶことを回避するために、慎重に一審原告の心 も、一審原告の言動等に照らし、本件拘束の解除によって前記治療に対する一審原告の拒否感が高ま5り、それによりそのまま放置すれば一審原告の生命に危険が及ぶことを回避するために、慎重に一審原告の心理状態の見極めを続け、その上で、その見極めが十分と判断された8月8日に至って本件拘束を解除することとしたものと認められるところであり、前記知見に照らし、さらに、ウ類型該当性の判断が、将来予測を前提とするものであって、万一10予測が外れた場合には重大な結果が生じ得るものであることなどからして、本件拘束が継続されていた期間を通じ、A 医師においてウ類型との関係で本件告示の要件に該当する旨の判断をしたことが違法であったものと認めることまではできないことは、上記において認定説示したとおりであって、一審原告の上記主張は、上記認定説示に照らし、採用する15ことができない。 ウ その他、一審原告が主張するところは、いずれも上記の認定判断を左右するものではなく、採用することができない。 5 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、一審原告の請求は全部理由がないものといわざるを得ない。 206 よって、一審原告の請求を一部認容した原判決は失当であって、一審被告の本件控訴は理由があるから、原判決中、一審被告の敗訴部分を取り消した上、同取消部分に係る一審原告の請求を棄却し、一審原告の本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 25東京高等裁判所第22民事部 - 26 - 裁判長裁判官 相 澤 哲 5裁判官 加 藤 聡 裁判官 内 田 め ぐ み 裁判長裁判官 相 澤 哲 5裁判官 加 藤 聡 裁判官 内 田 め ぐ み

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