- 1 - 主文 1 厚生労働大臣が令和2年9月1日付けで原告に対してした行政文書不開示決定(厚生労働省発医政0901第15号)のうち、別表1の②(ただし、厚生労働省と株式会社興和との間の布製マスクの値下げに係る変更契約に関する変更理由書を除く。)、③ないし⑥及びAを不開示とした部分を取り 消す。 2 厚生労働大臣が令和2年8月27日付けで原告に対してした行政文書開示決定(厚生労働省発医政0827第4号)のうち、別表2の⑦ないし⑪を不開示とした部分を取り消す。 3 厚生労働大臣が令和2年9月29日付けで原告に対してした行政文書開 示決定(厚生労働省発医政0929第2号)のうち、別表2の⑦ないし⑪を不開示とした部分を取り消す。 4 文部科学大臣が令和2年8月27日付けで原告に対してした行政文書不開示決定(2受文科初第623号)のうち、別表1の③、⑤及びAを不開示とした部分を取り消す。 5 文部科学大臣が令和2年9月28日付けで原告に対してした行政文書開示決定(2文科初第929号)のうち、別表2の⑦及び⑩を不開示とした部分を取り消す。 6 被告は、原告に対し、11万円及びこれに対する令和4年11月1日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 7 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 8 訴訟費用は、これを4分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 甲事件(取消訴訟) - 2 - (1) 厚生労働大臣が令和2年9月1日付けで原告に対してした行政文書不開示決定(厚生労働省発医政0901第15号)を取り消す。 (2) 厚生労働大臣が令和2年8月27日付けで原告に対してした行政文書開示決定(厚生労働省発医政082 日付けで原告に対してした行政文書不開示決定(厚生労働省発医政0901第15号)を取り消す。 (2) 厚生労働大臣が令和2年8月27日付けで原告に対してした行政文書開示決定(厚生労働省発医政0827第4号)のうち、「布マスク購入に関し販売業者との間でやりとりした文書(以上、電子メールとその添付文書を含 む)」について、見積書、契約書、変更契約書及び納品書以外の文書を不開示とした部分を取り消す。 (3) 厚生労働大臣が令和2年9月29日付けで原告に対してした行政文書開示決定(厚生労働省発医政0929第2号)のうち、「布マスク購入に関し販売業者との間でやりとりした文書(以上、電子メールとその添付文書を含 む)」について、見積書、契約書、変更契約書及び納品書以外の文書を不開示とした部分を取り消す。 (4) 文部科学大臣が令和2年8月27日付けで原告に対してした行政文書不開示決定(2受文科初第623号)を取り消す。 (5) 文部科学大臣が令和2年9月28日付けで原告に対してした行政文書開 示決定(2文科初第929号)のうち、「布マスク購入に関し販売業者との間でやりとりした文書(以上、電子メールとその添付文書を含む)」について、見積書、契約書、変更契約書及び納品書以外の文書を不開示とした部分を取り消す。 2 乙事件(国家賠償請求訴訟) 被告は、原告に対し、110万円及びこれに対する令和4年11月1日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本判決で用いる略語本判決においては、次の略語を用いる。 (1) 別紙「開示請求文書目録」(以下「文書目録」という。)記載3及び6の - 3 - 「新型コロナウイルス感染拡大への対策の一環として…配布される布マスクの契約 略語を用いる。 (1) 別紙「開示請求文書目録」(以下「文書目録」という。)記載3及び6の - 3 - 「新型コロナウイルス感染拡大への対策の一環として…配布される布マスクの契約、発注及び回収等について御庁が業者との間でやりとりした内容を記録した文書(応接録を含む。)。」を総称して「やり取り記録文書」という。 (2) 文書目録記載1(2)④、2(2)④、4(2)④及び5(2)④の「…布マスク購入 に関し販売業者との間でやり取りした文書(以上、電子メールとその添付文書を含む。)」(ただし、見積書、契約書、変更契約書及び納品書を除く。)を総称して「購入やり取り文書」という。 (3) やりとり記録文書に該当するか否か等に争いのある、別表1「やりとり記録文書」記載の①ないし⑥及びAの文書を、それぞれ「本件文書①」「本件 文書A」などといい、購入やり取り文書に該当するか否か等に争いのある、別表2「購入やり取り文書」記載の⑦ないし⑫の文書を、それぞれ「本件文書⑦」などという。 また、本件文書①ないし⑫及びAの文書を総称して「本件各文書」という。 (4) 別表1及び2に記載された原告の開示請求を、それぞれ各別表の「対象文 書の記載開示請求の略称」欄のとおり「本件開示請求1」などといい、本件開示請求1ないし6を併せて「本件各開示請求」という。 別表1及び2に記載された一部開示決定又は不開示決定を、それぞれ各別表の「一部開示又は不開示決定処分の略称」欄のとおり「本件処分1」などといい、本件処分1ないし6を併せて「本件各処分」という。 (5) 厚生労働大臣及び文部科学大臣を併せて「各大臣」といい、厚生労働省及び文部科学省を併せて「各省」という。 (6) 証人として証言したa、b、c、d、e及びf 「本件各処分」という。 (5) 厚生労働大臣及び文部科学大臣を併せて「各大臣」といい、厚生労働省及び文部科学省を併せて「各省」という。 (6) 証人として証言したa、b、c、d、e及びfについては、「a」又は「証人a」のように、姓のみで表記する。 (7) その他の略語については、本文中に適宜記載する。 2 事案の要旨 - 4 - 原告は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)に基づき、各大臣に対し、新型コロナウイルス感染症対策の一環として配布された布製マスク(いわゆるアベノマスク)の購入等に関する、文書目録記載の行政文書の開示請求(本件各開示請求)をしたところ、各大臣から、やり取り記録文書や購入やり取り文書については保有していないなどとして、 不開示決定又は一部開示決定(本件各処分)を受けた。 甲事件(取消訴訟)は、原告が、被告を相手に、本件各処分(本件処分4を除く。)のうちやり取り記録文書及び購入やり取り文書を不開示とした決定又は部分の取消しを求めるものであり、具体的には、①厚生労働大臣がやり取り記録文書を不開示とした本件処分3(請求1(1))、②厚生労働大臣がした本件 処分1及び2のうち購入やり取り文書を不開示とした部分(請求1(2)及び(3))、③文部科学大臣がやりとり記録文書を不開示とした本件処分6(請求1(4))、④文部科学大臣がした本件処分5のうち購入やり取り文書を不開示とした部分(請求1(5))の各取消しを求める事案である。 乙事件(国家賠償請求訴訟)は、原告が、①各大臣が本件各処分において開 示すべき本件各文書を不開示としたこと、②本件各処分の理由の記載に誤りや不備があったこと、③訴訟係属中に存在が明らかになった文書等(本件 償請求訴訟)は、原告が、①各大臣が本件各処分において開 示すべき本件各文書を不開示としたこと、②本件各処分の理由の記載に誤りや不備があったこと、③訴訟係属中に存在が明らかになった文書等(本件文書⑧、⑩~⑫。別表2の黄色部分。以下、併せて「本件発見文書等」という。)について各大臣が開示決定の打直しをしなかったこと、④各大臣が本件訴訟提起時に電子メール(本件文書⑦及び⑨)のバックアップファイルの保全等をしなか ったことは、いずれも国家賠償法上違法であると主張して、被告に対し、同法1条1項に基づき、慰謝料等110万円及びこれに対する令和4年11月1日(上記①ないし④の違法行為の終期)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 3 情報公開法の定め 情報公開法2条2項本文は、この法律において「行政文書」とは、行政機関 - 5 - の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう旨定める。 情報公開法4条1項は、行政機関の保有する行政文書の開示の請求(以下「開 示請求」という。)は、同項各号に掲げる事項を記載した書面(以下「開示請求書」という。)を行政機関の長に提出してしなければならない旨定める。そして、同項2号は、「行政文書の名称その他の開示請求に係る行政文書を特定するに足りる事項」を掲げる。 4 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容 易に認められる事実。なお、証拠番号は特記なき限り枝番号を含む。)(1) 新型コロ するに足りる事項」を掲げる。 4 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容 易に認められる事実。なお、証拠番号は特記なき限り枝番号を含む。)(1) 新型コロナウイルス感染症の発生に伴うマスク等の需給のひっ迫とこれに対する措置等ア新型コロナウイルス感染症の拡大等新型コロナウイルス感染症は、令和元年12月以降、その感染が国際的 な広がりを見せ、我が国においても令和2年1月に感染者が確認された。 その後、新型コロナウイルス感染症は全国的に拡大し、これに伴って、マスク等が品薄状態となった。(甲36・566頁)イ政府の対策等政府は、令和2年2月以降、「新型コロナウイルス感染症に関する緊急 対応策」(令和2年2月13日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)及び「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」(令和2年2月新型コロナウイルス感染症対策本部決定)等を順次定め、新型コロナウイルス感染症の感染者が多数に上っている地域に滞在歴のある外国人等の上陸拒否等の水際対策の強化、感染症指定医療機関等の治療体制等の強化、マスク、 医薬品等の迅速かつ円滑な供給体制の確保等の対策を講じた(甲36・5 - 6 - 66頁、乙23)。 さらに、政府は、「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策-第2弾-」(令和2年3月10日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)として、①感染拡大防止策と医療提供体制の整備、②学校の臨時休業に伴って生じる課題への対応、③事業活動の縮小や雇用への対応、④事態の変 化に即応した緊急措置等を定め、上記に基づく措置として、マスクの転売行為を禁止するとともに、再利用可能な布製マスクを国が一括して購入し、介護施設等(介護施設や障害者施設、保育所等 、④事態の変 化に即応した緊急措置等を定め、上記に基づく措置として、マスクの転売行為を禁止するとともに、再利用可能な布製マスクを国が一括して購入し、介護施設等(介護施設や障害者施設、保育所等、放課後児童クラブ等をいう。以下同じ。)の利用者及び職員に配布するとともに、医療機関向けのマスクについて国内メーカーに増産を要請するなどした。また、政府は、 「『新型コロナウイルス感染症緊急経済対策』について」(令和2年4月7日閣議決定)に基づく措置として、介護施設等の利用者及び職員に加えて、妊婦、学校の児童生徒及び教職員のほか、国内の全世帯を対象に布製マスクを配布することとした(以下、これらの布製マスクの配布に係る事業を総称して「布製マスク配布事業」といい、介護施設等の利用者及び職 員を対象とするものを「介護施設等向け配布事業」と、妊婦を対象とするものを「妊婦向け配布事業」と、国内の全世帯を対象とするものを「全戸向け配布事業」と、学校の児童生徒及び教職員を対象とするものを「学校向け配布事業」という。)。なお、布製マスク配布事業のうち、学校向け配布事業は文部科学省の所管であり、その余はいずれも厚生労働省の所管 である。(甲36・566~568頁、乙25)ウ布製マスク配布事業布製マスク配布事業は、令和2年3月下旬以降、被告(国)が布製マスクの調達業者(以下「調達業者」という。なお、調達業者の個別の名称については、「株式会社」を省略し、「興和」「伊藤忠商事」などと表記する。) からこれを調達し、調達した布製マスクを、配布等業務を請け負った業者 - 7 - において、配布対象である世帯、施設等に配布するという流れにより実施された。そのための膨大な量の布製マスクの調達・配布を関係省庁が連携して行うために 配布等業務を請け負った業者 - 7 - において、配布対象である世帯、施設等に配布するという流れにより実施された。そのための膨大な量の布製マスクの調達・配布を関係省庁が連携して行うために、厚生労働省医政局経済課(以下「医政局経済課」という。)の中に、厚生労働省、経済産業省及び総務省の各職員からなる厚生労働省合同マスクチーム(以下「合同マスクチーム」という。)が立ち上げられ、 その後、合同マスクチームには、文部科学省等の職員も所属することとなった。(甲36・567~569頁)(2) 厚生労働省及び文部科学省のメールシステム合同マスクチームの各職員並びに文部科学省において布製マスクの調達・配布及び契約締結事務を担当していた各職員(以下、併せて「合同マスクチ ーム等職員」という。)は、当時、調達業者との間で、電子メールによる連絡等を行っていた。 厚生労働省では、当時、各職員が送受信した電子メールのバックアップファイルが、電子メールシステムとは別系統のバックアップサーバに保存されていた。 文部科学省では、当時、各職員の電子メールを含むメールシステム全体について、バックアップシステムにより1日単位のバックアップファイルが作成されていたほか、「メール監視システム」により、各電子メール単位のバックアップファイルも作成されて専用のバックアップサーバに保存されていた。 (3) 厚生労働大臣の本件処分1ないし3に至る経緯等ア本件開示請求1ないし3(ア) 原告は、令和2年4月30日、厚生労働大臣に対し、同月28日付け行政文書開示請求書(開第372号)により、情報公開法4条1項に基づき、文書目録記載1の文書の開示請求(本件開示請求1)をした(甲 51、乙1)。 - 8 - し、同月28日付け行政文書開示請求書(開第372号)により、情報公開法4条1項に基づき、文書目録記載1の文書の開示請求(本件開示請求1)をした(甲 51、乙1)。 - 8 - (イ) 原告は、令和2年7月29日、厚生労働大臣に対し、同月28日付け行政文書開示請求書(開第1682号)により、情報公開法4条1項に基づき、文書目録記載2の文書の開示請求(本件開示請求2)をした(甲22、乙2)。 (ウ) 原告は、令和2年8月3日、厚生労働大臣に対し、同年7月31日付 け行政文書開示請求書(開第1775号)により、情報公開法4条1項に基づき、文書目録記載3の文書の開示請求(本件開示請求3)をした(甲19、乙3)。 イ本件処分1ないし3(ア) 厚生労働大臣は、令和2年8月27日付けで、原告に対し、本件開示 請求1について、情報公開法9条1項に基づき、文書目録記載1の文書のうち見積書、契約書、変更契約書、納品書(ただし、法人及び法人の代表者の印影等に係る部分を除く。)、事務連絡、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策(抜粋)」と題する書面及び「布製マスク供給企業の募集について」と題する書面を開示し、「厚生労働省が布マスクを 購入するために行った入札結果を含む入札に関する文書」(文書目録記載1(2)②)及び購入やり取り文書(文書目録記載1(2)④)については、事務処理上作成又は取得した事実はなく、実際に保有していないという理由により不開示とする本件処分1(厚生労働省発医政0827第4号)をした(甲23の1・2)。 なお、本件処分1のうち購入やり取り文書を不開示とした部分の取消しを求める請求が、請求1(2)である。 (イ) 厚生労働大臣は、令和2年9月29日付けで、原告に対し、本件開示請求2 なお、本件処分1のうち購入やり取り文書を不開示とした部分の取消しを求める請求が、請求1(2)である。 (イ) 厚生労働大臣は、令和2年9月29日付けで、原告に対し、本件開示請求2について、情報公開法9条1項に基づき、文書目録記載2の文書のうち見積書、契約書、変更契約書、納品書(ただし、それらのうち法 人及び法人の代表者の印影等に係る部分は不開示)及び事務連絡を開示 - 9 - し、「厚生労働省が布マスクを購入するために行った入札結果を含む入札に関する文書」(文書目録記載2(2)②)及び購入やり取り文書(文書目録記載2(2)④)については、事務処理上作成又は取得した事実はなく、実際に保有していないという理由により不開示とする本件処分2(厚生労働省発医政0929第2号)をした(甲24)。 なお、本件処分2のうち購入やり取り文書を不開示とした部分の取消しを求める請求が、請求1(3)である。 (ウ) 厚生労働大臣は、令和2年9月1日付けで、原告に対し、本件開示請求3について、情報公開法9条2項に基づき、文書目録記載3の文書(やりとり記録文書)については、事務処理上作成又は取得した事実はなく、 実際に保有していないという理由により不開示とする本件処分3(厚生労働省発医政0901第15号)をした(甲20)。 なお、やり取り記録文書を不開示とした本件処分3の取消しを求める請求が、請求1(1)である。 (エ) 本件処分1ないし3の通知書に付記された理由のうち、やり取り記録 文書及び購入やり取り文書について、「事務処理上作成又は取得した事実はなく」との部分は、いずれも誤りである(争いがない)。 (4) 文部科学大臣の本件処分4ないし6に至る経緯ア本件開示請求4ないし6(ア) 原告は について、「事務処理上作成又は取得した事実はなく」との部分は、いずれも誤りである(争いがない)。 (4) 文部科学大臣の本件処分4ないし6に至る経緯ア本件開示請求4ないし6(ア) 原告は、令和2年5月12日、文部科学大臣に対し、同月11日付け 行政文書開示請求書により、情報公開法4条1項に基づき、文書目録記載4の文書の開示請求(本件開示請求4)をした(乙6)。 (イ) 原告は、令和2年7月29日、文部科学大臣に対し、同月28日付け行政文書開示請求書により、情報公開法4条1項に基づき、文書目録記載5の文書の開示請求(本件開示請求5)をした(甲28、乙7)。 (ウ) 原告は、令和2年8月3日、文部科学大臣に対し、同年7月31日付 - 10 - け行政文書開示請求書により、情報公開法4条1項に基づき、文書目録記載6の文書の開示請求(本件開示請求6)をした(甲25、乙8)。 イ本件処分4ないし6(ア) 文部科学大臣は、令和2年7月13日付けで、原告に対し、本件開示請求4について、情報公開法9条1項に基づき、布製マスクの購入及び 無償譲与、ガーゼマスクの購入の随意契約及びその変更契約並びに布製マスク梱包配送業務の随意契約及びその変更契約についての文書のうち、契約の相手方の印影等に係る部分を不開示とし、その余を開示する旨の本件処分4(2受文科初第675号)をした。本件処分4では、購入やり取り文書(文書目録4(2)④)は開示する行政文書に含まれておら ず、黙示的に不開示とされている。(甲29)なお、本件処分4については、甲事件の取消請求の対象とはされていない(ただし、乙事件の国家賠償請求の違法行為の対象には含まれている。)。 (イ) 文部科学大臣は、令和2年9月28日付けで、原告に対し、本件 件処分4については、甲事件の取消請求の対象とはされていない(ただし、乙事件の国家賠償請求の違法行為の対象には含まれている。)。 (イ) 文部科学大臣は、令和2年9月28日付けで、原告に対し、本件開示 請求5について、情報公開法9条1項に基づき、布製マスクの購入及び無償譲与、ガーゼマスクの梱包発送、ガーゼマスク配布に関するコールセンター窓口業務、国が実施する布製マスクの配布事業に係る検品等業務一式の随意契約、ガーゼマスク購入の随意契約、ガーゼマスク梱包配送業務の随意契約及びその変更契約並びにガーゼマスクの配布に関する コールセンター窓口業務の随意契約についての文書のうち、契約の相手方の印影等に係る部分を不開示とし、その余を開示する旨の本件処分5(2文科初第929号)をした。本件処分5では、購入やり取り文書(文書目録5(2)④)は開示する行政文書に含まれておらず、黙示的に不開示とされている。(甲30) なお、本件処分5のうち購入やり取り文書を不開示とした部分の取消 - 11 - しを求める請求が、請求1(5)である。 (ウ) 文部科学大臣は、令和2年8月27日付けで、原告に対し、本件開示請求6について、情報公開法9条2項に基づき、文書目録記載6の文書(やりとり記録文書)を保有していないという理由により不開示とする本件処分6(2受文科初第623号)をした(甲26)。 なお、やり取り記録文書を不開示とした本件処分6の取消しを求める請求が、請求1(4)である。 (5) 本件訴訟の提起(顕著な事実)ア原告は、令和3年2月22日、本件各処分(本件処分4を除く。)の一部又は全部の取消しを求める甲事件を提起した。 イ原告は、令和5年2月2日、本件各処分に関して国家賠償を求める乙事件 ア原告は、令和3年2月22日、本件各処分(本件処分4を除く。)の一部又は全部の取消しを求める甲事件を提起した。 イ原告は、令和5年2月2日、本件各処分に関して国家賠償を求める乙事件に係る請求の追加的併合の申立てをした。 (6) 厚生労働省における対象文書の再度の探索等ア原告は、令和3年12月16日、各調達業者を嘱託先として、布製マスクの調達に関して各省との間で送受信した電子メール全て(添付ファイル を含む)の送付嘱託(以下「本件送付嘱託」という。)を申し立て、採用された。これに対し、各調達業者は、各省との間の電子メール及びこれに添付されたファイル(注文書、見積書、通関手続関係文書、生産体制に関する文書、納入枚数に関する文書、サンプル品等の画像データ、調達業者と検品業者との間の発注書・契約書・見積書)を当裁判所に送付した(甲 37~43。本件文書⑨)。 イ厚生労働省は、令和4年3月以降、本件開示請求1ないし3に係る対象文書の再度の探索(以下「本件再探索」という。)を実施した。その結果、厚生労働省は、同年4月時点で、同省が調達業者17社から受領した請求書(乙16。本件文書⑩の厚生労働省分)及び暴力団等に該当しない旨の 誓約書(乙17。本件文書⑪)並びに国が委託した検品業者による布製マ - 12 - スクの検品検査基準(乙18。本件文書⑫)を保有していたことが判明した。 また、令和4年6月30日時点で、合同マスクチームに所属していた厚生労働省職員甲(令和2年3月9日から同月31日まで所属)及び同省職員乙(同年4月1日から同年5月21日まで所属)の各執務用パソコンに、 調達業者との間でやり取りした電子メール(本件文書⑧)のデータが蔵置されていることが判明した。 ウなお、文部科学省は 職員乙(同年4月1日から同年5月21日まで所属)の各執務用パソコンに、 調達業者との間でやり取りした電子メール(本件文書⑧)のデータが蔵置されていることが判明した。 ウなお、文部科学省は、本件処分4及び5の時点で、同省が調達業者から受領した請求書(乙39。本件文書⑩の文部科学省分)を保有していた。 5 甲事件(取消訴訟)の争点 (1) やり取り記録文書(請求1(1)及び(4))について別表1「やり取り記録文書」記載のとおり。 (2) 購入やり取り文書(請求1(2)、(3)及び(5))について別表2「購入やり取り文書」記載のとおり。 6 乙事件(国家賠償請求訴訟)の争点 (1) 本件各文書を不開示としたことが国家賠償法上違法であるか否か(違法行為①)。 (2) 本件各処分の理由の記載が国家賠償法上違法であるか否か(違法行為②)。 (3) 本件発見文書等につき開示決定の打直しをしなかったことが国家賠償法上違法であるか否か(違法行為③) (4) 本件訴訟提起時に電子メールのバックアップファイルの保全等をしなかったこと等が国家賠償法上違法であるか否か(違法行為④)(5) 損害の有無及びその額 7 甲事件(取消訴訟)の争点に関する当事者の主張別表1及び2記載のとおり。 なお、別表2の本件文書⑦及び⑨(調達業者との電子メール及びその添付文 - 13 - 書)に関し、電子メールのバックアップファイルの行政文書該当性についての当事者の主張は、以下のとおり。 (原告の主張)本件文書⑦及び⑨に係る電子メールのバックアップファイルは、「電磁的記録」(情報公開法2条2項)として「行政文書」(同項)に該当するから、本 件処分1、2、4及び5の対象文書に該当する。 (1 本件文書⑦及び⑨に係る電子メールのバックアップファイルは、「電磁的記録」(情報公開法2条2項)として「行政文書」(同項)に該当するから、本 件処分1、2、4及び5の対象文書に該当する。 (1) 「電磁的記録」該当性情報公開法は、新たに行政文書を作成又は加工する義務を課すものではないが、だからといって「電磁的記録」を通常の設備、技術等により一般人が認識可能になるものに限定すること(被告の主張)には理由がない。そして、 電子メールのバックアップファイルから電子メールのデータを取り出すのは、あるがままの形で行政文書を開示するだけであり、新たに行政文書を作成又は加工するわけではないから、本件文書⑦及び⑨に係る電子メールのバックアップファイルは、情報公開法2条2項の「電磁的記録」に該当する。 仮に「電磁的記録」を通常の設備、技術等により一般人が認識可能になる ものに限定するとしても、バックアップファイル内の電子メールデータは高速で検索でき、その復元は委託業者に依頼するなどすることによって容易に行うことができるものであるから、電子メールを復元して写しを開示可能な状態にすることは極めて容易である。したがって、本件文書⑦及び⑨に係る電子メールのバックアップファイルは、やはり「電磁的記録」に該当する。 (2) 「行政文書」該当性電子メールのバックアップファイルは、各省が委託業者に指示して復元するものであるから、各省が管理・運用しているものである。また、その元となる電子メール自体は、各職員が通常の業務に利用しているものである。したがって、本件文書⑦及び⑨に係る電子メールのバックアップファイルは、 「行政文書」に該当する。 - 14 - 組織共用性の要件は、職員個人のメモ等を開示対象から外す である。したがって、本件文書⑦及び⑨に係る電子メールのバックアップファイルは、 「行政文書」に該当する。 - 14 - 組織共用性の要件は、職員個人のメモ等を開示対象から外すために採用されたものであるから、職員が直接アクセスできないようなデータは組織共用性を欠くという被告の主張は理由がない。 (被告の主張)本件文書⑦及び⑨に係る電子メールのバックアップファイルは、以下のとお り、「電磁的記録」にも「行政文書」にも該当しないから、本件処分1、2、4及び5の対象文書には該当しない。 (1) 「電磁的記録」該当性情報公開法が、通常の設備や技術ではその情報内容を直接認識することができないような方式で作成される電磁的記録についてまで、その実質的な情 報内容の開示のためにあらゆる措置を講ずべき義務を行政機関に課しているとは解し難いことからすると、「電磁的記録」とは、それを保有する行政機関において、通常の設備、技術等により、その情報内容を一般人の知覚により認識できる形で提示することが可能なものに限られると解される。そして、本件文書⑦及び⑨に係る電子メールのバックアップファイルは、判読可 能な状態にするために、システム構成や操作方法に習熟した、システムの保守・管理に係る委託業者が専用の端末を使用して復元作業をする必要があるから、情報公開法2条2項の「電磁的記録」には該当しない。 (2) 「行政文書」該当性行政機関の職員が直接アクセスできないようなデータは、職員が組織的に 用いるものではなく、行政文書に当たらないとされているところ、本件文書⑦及び⑨に係る電子メールのバックアップファイルは、コンピュータシステムによって、電子メールシステムとは別系統のバックアップサーバに自動的に作成・ 、行政文書に当たらないとされているところ、本件文書⑦及び⑨に係る電子メールのバックアップファイルは、コンピュータシステムによって、電子メールシステムとは別系統のバックアップサーバに自動的に作成・保存され、当該電子メールの送受信者である職員を含め、各省の職員にアクセス権限はなく、各職員が通常の業務に使用することはおろか、自 由に改変したり削除したりすることもできなかった上、一定期間が経過する - 15 - とコンピュータシステムにより自動的に削除されるものであったから、行政機関の職員が組織的に用いるものであるとは認められず、情報公開法2条2項の「行政文書」には該当しない。 8 乙事件(国家賠償請求訴訟)の争点に関する当事者の主張(1) 本件各文書を不開示としたことが国家賠償法上違法であるか否か(違法行 為①)について(原告の主張)ア別表1及び2の原告の主張のとおり、本件各文書はいずれも本件各処分の当時存在し、本件各開示請求の対象文書であった。しかし、各大臣は、あえてこれを不存在とし又は必要な探索をすることなく漫然と不存在とし ており、注意義務に違反している。したがって、各大臣が本件各処分において本件各文書を不開示としたことは、国家賠償法上違法である。 イ各大臣は、本件開示請求1、2、4及び5を受けたのに、購入やり取り文書である調達業者との間の電子メール(本件文書⑦ないし⑨)を全く探索しておらず、必要な探索をすべき義務を怠った。また、仮に、各大臣が、 本件開示請求1、2、4及び5を受けた当初から、購入やり取り文書を別表2の「購入やり取り文書の意義」の「被告の主張の骨子」欄のとおり限定解釈し、その解釈を前提に、1年未満文書に当たる電子メールの探索を行わなかったのだとしても、各大臣は、そのよう 入やり取り文書を別表2の「購入やり取り文書の意義」の「被告の主張の骨子」欄のとおり限定解釈し、その解釈を前提に、1年未満文書に当たる電子メールの探索を行わなかったのだとしても、各大臣は、そのような誤った解釈に基づいて、必要な探索をすべき義務を怠ったものであり、その結果、対象文書が廃棄 されるという取り返しのつかない事態となっている。 また、厚生労働大臣は、その対象文書の探索当時合同マスクチームに所属していた職員だけでなく、他部署に異動していた職員についても、そのメールフォルダの探索をすべき義務があったが、これを怠った。また、文部科学大臣も、その対象文書の探索当時の担当職員だけでなく、探索当時 他部署に異動していた職員についても、そのメールフォルダの探索をすべ - 16 - き義務があったが、これを怠った。 したがって、各大臣が本件処分1、2、4及び5において本件文書⑦ないし⑨を不開示としたことは、必要な探索をすべき義務に違反したものであり、国家賠償法上違法である。 ウ本件文書⑦及び⑨に係る電子メールのバックアップファイルは、上記7 の原告の主張のとおり、電磁的記録として行政文書に該当するものである。 そして、当該バックアップファイルは、送受信から1年間は残っていることが明らかであった。そのため、各大臣は、これを復元するか、あるいは原告にこれを復元するかどうか確認を取る義務があったが、復元も確認もしなかった。したがって、各大臣は本件処分1、2、4及び5において上 記義務に違反したものであり、国家賠償法上違法である。 エ開示請求時に対象文書が存在したにもかかわらず、行政機関が、その開示又は不開示の決定時までに(不服申立てや取消訴訟が提起されればその確定時までに)これを廃棄した場合には、そのよ 上違法である。 エ開示請求時に対象文書が存在したにもかかわらず、行政機関が、その開示又は不開示の決定時までに(不服申立てや取消訴訟が提起されればその確定時までに)これを廃棄した場合には、そのような行為は、開示請求者の開示請求権を侵害するものとして、国家賠償法上違法である。本件では、 本件開示請求1、2、4及び5の対象文書(本件文書⑦及び⑨)である電子メールや添付文書が存在したことが推認されるのであるから、これを保有する各省が、本件処分1、2、4及び5までに、あるいは、本件訴訟(甲事件・取消訴訟)の係属中に、これを保存せず廃棄していたとすれば、これは原告の開示請求権を侵害する行為であり、国家賠償法上違法である。 (被告の主張)ア別表1及び2の被告の主張のとおり、本件各文書は、いずれも本件各開示請求の対象文書には該当しないか、本件各処分時に存在しなかった。したがって、本件各処分において本件各文書を不開示としたことは、国家賠償法上違法ではない。 イ特定の事務に関する行政文書の開示請求を受けた行政機関の長として - 17 - は、前任者又はそれ以前に当該事務を担当したことのある職員が当該行政文書を保有している蓋然性が高いと認められるような特段の事情がない限り、現に当該事務を担当している職員に当該行政文書の保有の有無を確認すれば足りると解するのが相当である。そして、合同マスクチーム等職員の電子メールの取扱い等からすると、上記特段の事情は認められないから、 本件各開示請求に対して合同マスクチーム等から他部署に異動していた職員を探索の対象としなかったとしても各大臣が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件各処分をしたとは認められない。 合同マスクチーム等職員は、令和2年4月から同 署に異動していた職員を探索の対象としなかったとしても各大臣が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件各処分をしたとは認められない。 合同マスクチーム等職員は、令和2年4月から同年6月下旬頃までの間、多忙を極めており、各職員が送受信する電子メールの件数は、1日に少な くとも数百通、多い時で1000通近くと、極めて膨大なものになっていた。このような大量の電子メールを行政文書として保存するとなると、文書管理等の業務が極めて煩雑となる上、各職員に割り当てられたメールボックスの保存領域の容量が圧迫されることで、電子メールの送受信ができなくなるなど、職務遂行に重大な支障を来すおそれがあった。そこで、合 同マスクチーム等職員は、数日に1回、少なくとも1週間に1回の頻度で、職務遂行上利用しなくなった電子メールを、数百通単位でまとめて廃棄していた。このような状況に加えて、調達業者との間の電子メールは、事務的な連絡等を行っていたもので、異動後も保存しているとは考え難かったことや、現に合同マスクチーム等に所属していた職員でさえ、探索対象の 電子メールを保有していない旨回答していたことからすると、既に他の部署に異動した職員を探索の対象としなかったことにつき、職務上尽くすべき注意義務を尽くさなかったとはいえない。 ウ本件文書⑦及び⑨に係る電子メールのバックアップファイルは、上記7の被告の主張のとおり、電磁的記録でも行政文書でもなく、本件開示請求 1、2、4及び5の対象文書には該当しないから、その復元をし、あるい - 18 - は原告にこれを復元するかどうか確認を取るべき職務上の法的義務はない。また、仮に上記バックアップファイルが行政文書として本件開示請求1、2、4及び5の対象文書に該当するとしても、電子 18 - は原告にこれを復元するかどうか確認を取るべき職務上の法的義務はない。また、仮に上記バックアップファイルが行政文書として本件開示請求1、2、4及び5の対象文書に該当するとしても、電子メールのバックアップファイルが行政文書に該当しないとの解釈は相当の根拠に基づくものである。したがって、上記バックアップファイルを復元して開示しなかっ たことは、国家賠償法上違法ではない。 エ本件開示請求1、2、4及び5当時の合同マスクチームにおいては、布製マスクを含めた衛生用品の調達・配布事業のほか、国会対応、マスコミ対応、多数の行政文書開示請求への対応等の多岐にわたる業務に忙殺され、本件各開示請求よりも優先して対応せざるを得ない事務が多数存在してい た。その結果、合同マスクチームの職員は、過労死ラインを超える超過勤務が慢性的に発生するような極めて異常な状況であった。また、本件各開示請求の対象文書の項目は多数に上るのみならず、対象となる文書をその表題や文書番号等によって特定するものではなく、対象となる文書の特定作業等に相当な時間を要するものであった。このような状況を踏まえると、 仮に、本件文書⑦及び⑨が本件開示請求1等の対象文書に該当するとして、各大臣やその補助者が、本件開示請求1等を受けて本件文書⑦及び⑨の保存期間を延長するなどの措置を執らず、結果として本件処分1等までの間に対象文書が廃棄されたことがあったとしても、各大臣において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件処分1等をしたとは 認められず、国家賠償法上違法と評価されるものではない。 (2) 本件各処分の理由の記載が国家賠償法上違法であるか否か(違法行為②)について(原告の主張)ア厚生労働大臣がした本件処分1ないし3の理由の記 賠償法上違法と評価されるものではない。 (2) 本件各処分の理由の記載が国家賠償法上違法であるか否か(違法行為②)について(原告の主張)ア厚生労働大臣がした本件処分1ないし3の理由の記載は、やり取り記録 文書及び購入やり取り文書について、事務処理上作成又は取得した事実が - 19 - あるのに、この事実がないとするものであり、国家賠償法上の違法がある。 イ各大臣は、本件各処分(特に本件処分1、2、4及び5)において、廃棄された電子メールのバックアップファイルが現存していたにもかかわらず、これを対象文書としていないところ、そのバックアップファイルを対象文書としなかった理由の記載がなければ、原告が不服申立てをするかど うかの検討をすることはできないから、行政手続法8条の要請により、その理由を記載すべき義務があった。本件各処分の理由の記載は、その義務に違反したものであり、国家賠償法上違法である。 (被告の主張)ア厚生労働大臣がした本件処分1ないし3の理由の記載において、事務処 理上作成又は取得した事実があるのに、この事実がないと記載したことが国家賠償法上違法であることは、積極的には争わない。 イ上記7の被告の主張のとおり、廃棄された電子メールのバックアップファイルは行政文書に該当せず、当該バックアップファイル自体が本件各開示請求の対象文書として特定されていたわけでもないのであるから、各大 臣において、その存在等を本件各処分の決定通知書に記載する職務上の法的義務はない。また、仮にバックアップファイルが行政文書に該当するとしても、バックアップファイルが行政文書に該当しないとの解釈は相当の根拠に基づくものである。したがって、各大臣が、本件各処分の決定通知書にバックアップファイルに関する記載 イルが行政文書に該当するとしても、バックアップファイルが行政文書に該当しないとの解釈は相当の根拠に基づくものである。したがって、各大臣が、本件各処分の決定通知書にバックアップファイルに関する記載をしなかったことは、国家賠償法 上違法ではない。 (3) 本件発見文書等につき開示決定の打直しをしなかったことが国家賠償法上違法であるか否か(違法行為③)について(原告の主張)本件再探索により発見されるなどした本件発見文書等(別表2の黄色部 分。本件文書⑧、⑩~⑫)は、別表2の原告の主張のとおり、本件開示請求 - 20 - 1、2、4及び5の対象文書であるから、各大臣には、その発見後速やかに開示決定を打ち直す注意義務があった。したがって、各大臣が本件発見文書等について開示決定の打直しをしなかったことは、国家賠償法上違法である。 (被告の主張) 本件再探索により発見されるなどした本件発見文書等は、別表2の被告の主張のとおり、本件開示請求1、2、4及び5の対象文書ではないから、各大臣が本件発見文書等について開示決定の打直しをしなかったことは、国家賠償法上違法ではない。 仮に本件発見文書等が本件開示請求1、2、4及び5の対象文書に該当す るとしても、被告は、本件発見文書等が発見された後、これを秘密裏に廃棄するなどして意図的に隠蔽しようとしたわけではない上、これらが対象文書に該当するか否かについて終局的な司法判断を仰ぐため、本件文書⑩及び⑪については書証として提出し、本件文書⑧についてはヴォーンインデックスをもって可能な限り具体的にその内容を明らかにしているのであるから、こ れらについて開示決定の打直しをしなかったことは、国家賠償法上違法ではない。 (4) 本件訴訟提起時に電子メー デックスをもって可能な限り具体的にその内容を明らかにしているのであるから、こ れらについて開示決定の打直しをしなかったことは、国家賠償法上違法ではない。 (4) 本件訴訟提起時に電子メールのバックアップファイルの保全等をしなかったこと等が国家賠償法上違法であるか否か(違法行為④)について(原告の主張) 本件訴訟提起時において、合同マスクチーム等職員と調達業者との間の電子メールが仮に廃棄されていたとしても、そのバックアップファイルが未だ存在していたから、被告がその時点でバックアップファイルを復元し又は保全していれば、原告は、その電子メールの開示を受けることができたものであり、被告にはそのような義務があった。しかし、被告は、その時点で、バ ックアップファイルの復元や保全をせず、その後もバックアップファイルの - 21 - 存在について明らかにせず、原告がその保全を求める機会すら奪ったものであり、このような被告の対応は、国家賠償法上違法である。 (被告の主張)廃棄された電子メールのバックアップファイルは、上記7の被告の主張のとおり、電磁的記録にも行政文書にも該当せず、本件開示請求1、2、4及 び5の対象文書には該当しないから、被告が本件訴訟の提起を知ったからといって、バックアップファイルの復元や保全をしたり、その存在を原告に指摘したりする職務上の法的義務はない。また、仮にバックアップファイルが行政文書として本件開示請求1、2、4及び5の対象文書に該当するとしても、バックアップファイルが行政文書に該当しないとの解釈は相当の根拠に 基づくものである。したがって、本件訴訟提起時にバックアップファイルの復元や保全をしなかったこと等に係る被告の対応は、国家賠償法上違法ではない。 (5) に該当しないとの解釈は相当の根拠に 基づくものである。したがって、本件訴訟提起時にバックアップファイルの復元や保全をしなかったこと等に係る被告の対応は、国家賠償法上違法ではない。 (5) 損害の有無及びその額について(原告の主張) 原告は、違法行為①(本件各文書を不開示としたこと)により、適時にかつ適切に、行政が持つ正確な情報をもとに政府の政策を監視し、批判・論説し、意見を発信する機会を失い、有形無形の損害を被ったものであり、これを金額に換算すると60万円を下らず、その弁護士費用は6万円を下らない。また、違法行為②(処分理由に誤りがあること)によって被った原告の 有形無形の損害を金額に換算すると10万円を下らず、これに係る弁護士費用は1万円を下らない。さらに、違法行為③(開示決定の打直しをしなかったこと)によって被った原告の有形無形の損害は、違法行為①に係る損害とは別に、金額に換算すると30万円を下らず、これに係る弁護士費用は3万円を下らない。 なお、違法行為④(バックアップファイルの保全等をしなかったこと)に - 22 - 係る損害は、違法行為①や②に係る損害と重なるものであるから、違法行為④について、違法行為①や②とは別に損害が生じたとは主張しないが、違法行為①や②の損害額を大きく評価する事由になる。 (被告の主張)違法行為①に関し、被告は、本件訴訟において、本件文書①、②、⑩~⑫ を書証として提出し、本件文書⑧についてはヴォーン・インデックスをもって可能な限り具体的にその内容を明らかにしているから、少なくとも本件訴訟の口頭弁論終結時においては、これらの文書の開示を受けられなかったことによる原告の精神的損害は慰謝されたものであり、その他の損害については具体的な その内容を明らかにしているから、少なくとも本件訴訟の口頭弁論終結時においては、これらの文書の開示を受けられなかったことによる原告の精神的損害は慰謝されたものであり、その他の損害については具体的な主張立証がない。 違法行為②のうち、処分理由が誤っていた点については、原告が本件各処分の取消しを求める本件訴訟を適法に提起していること、被告が本件訴訟の比較的初期の段階で上記誤りを自認していること、誤った理由も正しい理由もいずれも本件各処分時における行政文書の物理的不存在をいうものであることなどからすると、原告に格別の不利益が生じたとは考えられず、原告 に損害が発生したとは認められない。 違法行為③の被侵害利益は、対象文書の一部の開示を受ける権利ないし法的利益であり、違法行為①の被侵害利益に包含されるから、違法行為③により新たな損害が生じたとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる(1) 合同マスクチーム立ち上げの経緯等(乙11、12、21~26)ア令和2年1月15日、我が国で初めて新型コロナウイルスへの感染者が 確認された。その後、新型コロナウイルス感染症は国内でも拡大を続けた - 23 - ことから、政府は、同月30日、内閣に新型コロナウイルス感染症対策本部(以下「感染症対策本部」という。)を設置した。また、同年2月1日、新型コロナウイルス感染症が指定感染症に指定された。 この頃、国内では、マスク等衛生用品の需要が急増し、これに対する供給の不足が目立つようになり、特にマスクの品薄状態は進行を続け、その 買い占めや転売等の事態も発生していた。 イこのような情勢の中で、令和2年3月5日、感 生用品の需要が急増し、これに対する供給の不足が目立つようになり、特にマスクの品薄状態は進行を続け、その 買い占めや転売等の事態も発生していた。 イこのような情勢の中で、令和2年3月5日、感染症対策本部第17回会議において、政府が布製マスク2000万枚、医療機関向けマスク1500万枚を確保・配布する旨の発表がされた。これを受け、同月9日、マスク等衛生用品の調達、配布を関係省庁が連携して行うことを目的として、 医政局経済課の中に、厚生労働省、経済産業省、総務省の各職員からなる合同マスクチームが立ち上げられた。 合同マスクチームの立ち上げ以降、文部科学省等からの職員派遣などを受けるようになり、布製マスク配布事業を含む、新型コロナウイルス感染症対策の衛生用品の調達、配布事業については、医政局経済課の職員及び 合同マスクチームに派遣された職員によって行われることになった。 ウその後、令和2年3月10日、感染症対策本部第19回会議において、マスクの転売行為の禁止や増産支援とともに、介護施設向けに再利用可能な布製マスク2000万枚を、医療機関向けにマスク1500万枚を政府がそれぞれ一括購入して配布を行うことなどの需給両面からの総合的なマ スク対策が発表された。また、同年4月1日には、感染症対策本部第25回会議において、布製マスクを全国の5000万余りの全世帯を対象に、1世帯当たり2枚ずつ配布することが発表された。 この間にも新型コロナウイルス感染症は拡大を続け、令和2年4月7日、7都道府県に、同日から同年5月6日までを期間とする新型コロナウイル ス感染症緊急事態宣言が発出され、同年4月16日には全都道府県に区域 - 24 - が拡大された。また、同宣言の期間はその後に延長され、同年5月25日ま を期間とする新型コロナウイル ス感染症緊急事態宣言が発出され、同年4月16日には全都道府県に区域 - 24 - が拡大された。また、同宣言の期間はその後に延長され、同年5月25日まで継続した。 (2) 布製マスクの調達契約締結の経緯等ア調達契約の締結(甲36、乙27、28)合同マスクチームは、その立ち上げ(令和2年3月9日)以降、大量の マスクを確保し、全国に計画的に配布するため、布製マスクの配布計画を策定した上で、配布計画に間に合うスケジュールで必要枚数を納入できる業者を選定していった。 そして、厚生労働省は、布製マスク配布事業(学校向け配布事業を除く。)のための布製マスクについて、令和2年3月16日から19日までの間に 6社との間で、同年4月7日及び同月15日に4社との間で、それぞれ随意契約の方法により調達契約を締結した。また、文部科学省は、学校向け配布事業のための布製マスクについて、同月3日に3社との間で、それぞれ随意契約の方法により調達契約を締結した。 合同マスクチームは、令和2年4月1日から同月10日までの間、繊維 関係の業界を通じて調達業者の一般募集を行い、提出された商品サンプルや見積書等により、布製マスクの調達業者の追加選定を行った。 最終的に、厚生労働省は、令和2年3月16日から6月22日までの間に、調達業者17社との間で調達契約27件をいずれも随意契約の方法により締結した。文部科学省は、令和2年4月3日及び6月10日に、調達 業者3社との間で調達契約5件をいずれも随意契約の方法により締結した。 イ瑕疵担保責任等を追及しない旨の特約(甲36)調達業者である興和は、令和2年3月上旬頃、布製マスクの質より量が求められる中、十分な態勢を整えることが れも随意契約の方法により締結した。 イ瑕疵担保責任等を追及しない旨の特約(甲36)調達業者である興和は、令和2年3月上旬頃、布製マスクの質より量が求められる中、十分な態勢を整えることができないまま生産を開始せざる を得ない状況であり、布製マスクの生産地である中国での移動の規制や国 - 25 - 際輸送手段の激減等の様々なリスクを踏まえると、どのような事態が発生するか見込めなかったことから、各省に対し、興和に対して瑕疵担保責任又は契約不適合責任(以下、併せて「瑕疵担保責任等」という。)を追及しない旨の特約を付した契約の締結を希望する旨申し出た。 各省は、当時、興和から短期間に大量の布製マスクを調達することを予 定していたところ、興和に対し瑕疵担保責任等を追及できる内容の契約を締結した場合には、短期間での大量調達が困難になると考え、迅速な布製マスクの調達を優先し、興和の上記申出を了解した。その結果、厚生労働省が令和2年3月17日に興和と締結した調達契約及び文部科学省が同年4月3日に興和と締結した調達契約には、納入後の布製マスクについて隠 れた瑕疵を発見し又はこれが契約の内容に適合しないものであっても、興和に対して瑕疵担保責任等を追及しない旨の特約(以下「本件担保責任等免除特約」という。)が付されることとなった。なお、それ以外の調達契約には、同様の特約は付されていない。 ウ布製マスクの単価の値下げ(甲71、72、78、79) 厚生労働省が令和2年3月17日に興和と締結した調達契約は、布製マスクを1枚当たり300円で1500万枚の調達を予定するというものであったが、同年4月3日付け変更契約書により、布製マスク1枚当たりの単価が300円から130円に変更(以下「本件値下げ」という。)され クを1枚当たり300円で1500万枚の調達を予定するというものであったが、同年4月3日付け変更契約書により、布製マスク1枚当たりの単価が300円から130円に変更(以下「本件値下げ」という。)された。 文部科学省が令和2年4月3日に興和と締結した調達契約は、布製マスクを1枚当たり220円で650万枚の調達を予定するというものであったが、同月20日付け変更契約書により、布製マスク1枚当たりの単価が220円から143円に変更された。上記変更契約に係る文部科学省の決裁に際しては、変更理由書が作成されており、「(調達契約締結)後、 厚労省内に設置されているマスクチームから、業者とのの(原文まま)交 - 26 - 渉により、単価が143円(税込み)になる連絡があり、4月17日に業者より見積書の提出があった。これに伴い、4月20日付けで変更契約を行うものである。」などと記載されている。 エユースビオに関する報道等(甲13、14、36、76、77、乙33)厚生労働省は、調達業者であるユースビオとの間で、令和2年3月16 日、同年4月7日及び同月15日にそれぞれ調達契約を締結し、同じく調達業者であるシマトレーディングとの間で、同年3月16日に調達契約を締結した。これに先立ち、厚生労働省は、両社から提出された資料等により、布製マスクの製造体制や納期が妥当なものであること等を確認し、ユースビオ及びシマトレーディングを調達業者として選定した。なお、厚生 労働省は、当初、シマトレーディングのみと調達契約を締結する予定であったが、ユースビオから、布製マスクの原料調達等の業務をユースビオが、縫製が完了した製品の輸入業務をシマトレーディングがそれぞれ担当していることから、調達契約を2社に分けて行いたい旨の申出があっ あったが、ユースビオから、布製マスクの原料調達等の業務をユースビオが、縫製が完了した製品の輸入業務をシマトレーディングがそれぞれ担当していることから、調達契約を2社に分けて行いたい旨の申出があったため、厚生労働省が同日に両社との間で締結した調達契約では、両社において布 製マスクを納品することとされた。 被告(国)は、令和2年4月27日、妊婦向け配布事業に係る調達契約をユースビオとの間で締結したことを公表した。その後、ユースビオに関し、無名の会社で布製マスクの輸入等の実績に乏しく、同月に入って同社の目的に「輸入」を加える登記変更がされた会社であるなどとして、政府 との癒着を疑う報道がされた。また、国会においても、調達業者としてユースビオを選定した理由やその契約締結過程について質問がされ、厚生労働大臣は、同月28日の衆議院予算委員会において、要旨、ユースビオが布製マスクの原料の調達等を、シマトレーディングがその生産や輸入を行っていたこと、経済産業省が布製マスクの供給の声掛けをし、ユースビオ が手を挙げたので、品質及び価格、企業の供給能力及び迅速な対応が可能 - 27 - であるかという観点から選定を行い、随意契約を行ったことなどを答弁し、政府参考人のhは、同年5月14日の参議院厚生労働委員会において、同様の答弁をした。 (3) 布製マスクの配布等の経緯(甲36)ア全戸向け配布事業 全戸向け配布事業により、令和2年4月17日から同年6月20日までの間に、6091万7831か所に合計1億2183万5662枚の布製マスクが配布された。ただし、下記(4)の不良品の発生等により、東京都以外の道府県への配布開始日は同年5月12日以降になった。 イ介護施設等向け配布事業 介護施設等 5662枚の布製マスクが配布された。ただし、下記(4)の不良品の発生等により、東京都以外の道府県への配布開始日は同年5月12日以降になった。 イ介護施設等向け配布事業 介護施設等向け配布事業により、令和2年3月26日から同年5月31日までの間に、50万8058か所の介護施設等に合計2013万3652枚の布製マスクが配布され、同年6月30日から同年9月30日までの間に、53万4311か所の介護施設等に合計4049万0655枚の布製マスクが配布された。なお、同年6月30日以降は、配布することとさ れていた6か月分の布製マスクのうち4か月分約8000万枚について、マスクの需給状況が好転してきたとして、同年7月末に一律配布が取りやめられ、同年8月5日以降は配布を希望する介護施設等にのみ配布するよう方針が変更され、同月から令和3年3月までに、配布希望の申出があった介護施設等に対して約1049万枚の布製マスクが配布された。 ウ妊婦向け配布事業妊婦向け配布事業により、令和2年4月14日から30日までの間に、1642市町村に合計49万2070枚の布製マスクが配布され、同年5月19日から31日までの間に、1704市町村に合計173万9640枚の布製マスクが配布され、同年6月29日から7月8日までの間に、1 434市町村に合計160万1630枚の布製マスクが配布され、同月2 - 28 - 2日から8月21日までの間に、1475市町村に合計256万2620枚の布製マスクが配布された。 エ学校向け配布事業学校向け配布事業により、令和2年4月11日から6月15日までの間に、4万1530校の学校に合計1542万7334枚の布製マスクが配 布され、同月17日から9月9日までの間に、3万7638 学校向け配布事業により、令和2年4月11日から6月15日までの間に、4万1530校の学校に合計1542万7334枚の布製マスクが配 布され、同月17日から9月9日までの間に、3万7638校の学校に合計1529万7980枚の布製マスクが配布された。 (4) 布製マスクの不良品の発生等(甲7~10、13、36、乙33)ア厚生労働省は、妊婦向け配布事業において、令和2年4月14日から布製マスクの配布を始めたが、配布事務を行っていた市町村から、配布した 布製マスクの中に汚れの付着、髪の毛の混入、変色、異臭等の問題のあるものが含まれているとの報告を受けた。また、厚生労働省は、全戸向け配布事業についても、布製マスクの封入業者から、糸くず、髪の毛、虫が混入するなどしたものが含まれているとの報告を受けた。そのため、厚生労働省は、同月16日頃に、文部科学省は、同月20日頃に、それぞれ布製 マスクの配布作業を中断した(以下、これらの事態を「不良品問題」という。)。 イ厚生労働省は、市町村に配布した妊婦向け布製マスクについて、まず問題のあったものを回収し、その後、問題のなかったものについても原則として回収し、後日、回収した枚数と同数の布製マスクを改めて配布した。 また、調達業者である興和及び伊藤忠商事は、納品した布製マスクに不良品が含まれていたことをそれぞれ独自に公表し、布製マスクの納品先(配布等業務の請負先)から未配布の布製マスクをそれぞれ自らの負担により回収し、後日、回収した枚数と同数の布製マスクを改めて納品した。 また、厚生労働省は、令和2年4月23日、株式会社宮岡(以下「宮岡」 という。)との間で、布製マスクの検品等業務に係る契約を締結し、調達 - 29 - 業者による検品とは別に検品を行っ また、厚生労働省は、令和2年4月23日、株式会社宮岡(以下「宮岡」 という。)との間で、布製マスクの検品等業務に係る契約を締結し、調達 - 29 - 業者による検品とは別に検品を行ったが、同年5月下旬以降に納品される布製マスクについては、改めて調達業者と協議するなどして、調達業者と宮岡との間の契約により検品を行った。文部科学省も、調達業者と協議するなどした上で、同月24日、宮岡との間で布製マスクの検品等業務に係る契約を締結し、調達業者による検品とは別に検品を行ったが、同日以降 に納品される布製マスクについては、調達業者と宮岡等との間の契約により検品を行った。そして、各省は、検品において良品とならなかった布製マスクの一部について、調達業者の負担において補修、交換等を行わせた。 ウ不良品問題は、マスコミにおいて広く報道された。国会においても、令和2年5月14日及び21日の参議院厚生労働委員会において、g参議院 議員が不良品の内容、原因、検品費用等について質問をするなど、複数回にわたり取り上げられた。 (5) 合同マスクチームの業務の流れ等(乙22、33、34、36、53~56、証人a、証人c、証人f)ア合同マスクチームは、令和2年3月9日に立ち上げられたが、同年4月 から8月までの職員数(うち布製マスク担当の職員数)は、次のとおりである。 令和2年4月28日 97名(24名)5月22日 97名(30名)6月29日 134名(31名) 7月31日 98名(17名)8月31日 90名(17名)イ合同マスクチームの担当業務は、布製マスクの調達及び配布のほか、サージカルマスク、N95等マスク、ガウン、フェイスシールド、医療用手袋、 (17名)8月31日 90名(17名)イ合同マスクチームの担当業務は、布製マスクの調達及び配布のほか、サージカルマスク、N95等マスク、ガウン、フェイスシールド、医療用手袋、手指消毒用エタノールの調達及び医療機関向け配布事業、それらの事 業のための予算要求、国会対応、マスコミ対応及び情報公開請求への対応 - 30 - 等であった。 合同マスクチームは、これまでに前例のない膨大な布製マスク等の調達・配布業務を行っていた上、サージカルマスク等の医療用物資の調達・配布業務も行い、さらに、それらの予算折衝、国会・マスコミ対応、情報公開等の業務も担当したため、極めて繁忙な状況にあった。 例えば、医政局経済課が対応した国会質問は、令和元年度は10問であったが、令和2年度は、4月から8月までの間だけで203問に上り、そのうち布製マスク関連の質問は114問であった。また、合同マスクチームは、当時、野党ヒアリング等の国会外での質問等にも対応していた。 また、医政局経済課が担当した行政文書開示請求は、令和元年度はわず か1件であったが、令和2年度は、4月から8月までの5か月間で60件に上った。 こういった様々な業務が集中したことにより、合同マスクチームに所属する職員の時間外労働時間は、1か月当たり80時間(いわゆる過労死ライン)を優に超える水準にあった。 ウ合同マスクチームにおいて布製マスクの調達等に関わっていた職員は、大きく分けて、調達担当と会計担当に分かれていた(証人のうち、dは調達担当、fは会計担当である。eは合同マスクチームではなく経済産業省において調達業務を行っていた。)。調達担当は、調達業者とやり取りして履行期限、単価、調達枚数といった契約条件を詰め、担当者間で契 達担当、fは会計担当である。eは合同マスクチームではなく経済産業省において調達業務を行っていた。)。調達担当は、調達業者とやり取りして履行期限、単価、調達枚数といった契約条件を詰め、担当者間で契約条 件が決まると、医政局経済課長であったaや、その下で合同マスクチーム全体を統括していたcに報告し、cやaの了解を得てからその契約条件を会計担当に引き継いでいた。合同マスクチームは、当時、全体の調達状況を一元的に管理するため、全ての調達業者に係る履行期限、単価、調達枚数などを一覧表形式で記載した調達管理表を随時作成し、調達契約の変更 等があればこれを更新していたところ、cやaへの報告の際には、この調 - 31 - 達管理表を見ながら全体の調達状況を確認し、契約を締結するか否かなどを協議していた。また、会計担当は、調達担当から引き継いだ契約条件を基に契約書を作成し、決裁に回していた。 一度締結した契約を変更する場合には、調達担当が調達業者とやり取りして変更内容を詰め、cやaに報告してその了解を得た後、その変更内容 を会計担当に引き継ぎ、会計担当が変更契約書を作成し、決裁に回していた。 エ合同マスクチームは、文部科学省が所管する学校向け配布事業のための布製マスクについても、調達業者の選定や契約条件の交渉等を行っており、合同マスクチームにおいて、文部科学省に納入する布製マスクの枚数や時 期を決定し、文部科学省から合同マスクチームに派遣されていた職員を通じてその情報を文部科学省に伝え、その後、文部科学省において、契約書作成等の業務が行われていた。 文部科学省において学校向け配布事業に従事した同省初等中等教育局健康教育・食育課では、学校向け配布事業のほか、令和2年4月の緊急事態 宣言後の学校の臨時 書作成等の業務が行われていた。 文部科学省において学校向け配布事業に従事した同省初等中等教育局健康教育・食育課では、学校向け配布事業のほか、令和2年4月の緊急事態 宣言後の学校の臨時休業状況の把握、臨時休業措置の運用方針の策定、学校の感染症対策に必要な環境整備(資金的な支援)と学校における感染症対策のための衛生管理マニュアルの整備など学校における新型コロナウイルス感染症への対応に係る業務が集中し、学校の臨時休業や感染症対策に関する国会対応業務も頻発した。そのため、文部科学省内から応援職員が 増員されたが、同月から8月まで、日々増加する業務に全ての職員が忙殺されていた。 2 開示請求の対象とされた行政文書を行政機関が保有していたことについての主張立証責任の所在等情報公開法において、行政文書とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は 取得した文書、図画及び電磁的記録であって、当該行政機関の職員が組織的に - 32 - 用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいうところ(2条2項本文)、行政文書の開示を請求する権利の内容は同法によって具体的に定められたものであり、行政機関の長に対する開示請求は当該行政機関が保有する行政文書をその対象とするものとされ(3条)、当該行政機関が当該行政文書を保有していることがその開示請求権の成立要件とされていることからすれば、 開示請求の対象とされた行政文書を行政機関が保有していないことを理由とする不開示決定の取消訴訟においては、その取消しを求める者が、当該不開示決定時に当該行政機関が当該行政文書を保有していたことについて主張立証責任を負うものと解するのが相当である。 そして、ある時点において当該行政機関の職員が当該行政文書を作成し、又 は取得し 定時に当該行政機関が当該行政文書を保有していたことについて主張立証責任を負うものと解するのが相当である。 そして、ある時点において当該行政機関の職員が当該行政文書を作成し、又 は取得したことが立証された場合において、不開示決定時においても当該行政機関が当該行政文書を保有していたことを直接立証することができないときに、これを推認することができるか否かについては、当該行政文書の内容や性質、その作成又は取得の経緯や上記決定時までの期間、その保管の体制や状況等に応じて、その可否を個別具体的に検討すべきものである(以上につき、最 高裁平成26年7月14日第二小法廷判決・集民247号63頁参照)。 この点に関し、原告は、不開示決定(又は部分開示決定)の時点ではなく、開示請求時において当該行政文書が存在したことが立証されれば、不開示決定は違法となる旨主張するが、情報公開法上そのように解すべき根拠は見当たらず、上記最高裁判決の説示からもそのような解釈は困難であり、採用すること ができない(ただし、行政機関が、開示請求の対象となる行政文書が存在するのに、これを意図的に廃棄して不開示とすることは許されず、そのような行為が行われた場合には、開示請求者に対する国家賠償責任を問われることになる。)。 3 本件各開示請求の対象文書の探索における保存期間1年未満の文書(電子メ ール等)の扱いについて - 33 - (1) 厚生労働省行政文書管理規則15条6項は、歴史的公文書(同条4項)や「意思決定に至る過程並びに事務及び事業の実績の合理的な跡付け又は検証に必要となる」もの(同条5項)を除き、「意思決定に至る過程で作成した文書であって、当該意思決定に与える影響がないものとして、長期間の保存を要しないと判断されるもの」( 実績の合理的な跡付け又は検証に必要となる」もの(同条5項)を除き、「意思決定に至る過程で作成した文書であって、当該意思決定に与える影響がないものとして、長期間の保存を要しないと判断されるもの」(6号)について、保存期間を1年未満と 設定することができる旨規定する(甲31)。また、文部科学省行政文書管理規則15条6項は、歴史的公文書等(同条4項)や「意思決定過程や事務及び事業の実績の合理的な跡付けや検証に必要となる行政文書」(同条5項)を除き、「意思決定の途中段階で作成したもので、当該意思決定に与える影響がないものとして、長期間の保存を要しないと判断される文書」(6号) について、保存期間を1年未満と設定することができる旨規定する(甲33)。 (2) 各省においては、調達業者と取り交わした契約書や納品書といった文書については、1年以上保存すべき行政文書として位置付けられていたが、他方、合同マスクチーム等職員が保有する大量の電子メールや、組織内での検討や 報告に用いる簡易な文書等については、厚生労働省行政文書管理規則15条6項6号及び文部科学省行政文書管理規則15条6項6号が定める保存期間1年未満の文書(以下「1年未満文書」という。)と位置付けられ、職務執行上利用しなくなった時点で、これを保有する職員の判断で、その都度廃棄することができるものとされていたことが認められる(弁論の全趣旨。後 述する証人a28頁、33頁の証言も参照)。 ところで、1年未満文書は、飽くまでも保存期間が1年未満と設定されているにすぎず、情報公開法2条2項の「行政文書」に該当するものであり、本件各開示請求の対象から一律に除外されるわけではない。 しかし、医政局経済課の課長であり合同マスクチームの責任者であったa は、本件開 公開法2条2項の「行政文書」に該当するものであり、本件各開示請求の対象から一律に除外されるわけではない。 しかし、医政局経済課の課長であり合同マスクチームの責任者であったa は、本件開示請求1ないし3の対象文書を特定し探索を指示する最終判断を - 34 - 行う立場にあったところ(証人a14頁等)、調達管理表とみられる文書につき、「内部で進捗管理をするためのいわゆる内部管理のメモなので、一般論で言えばそれが直ちに行政文書に当たるというのはないんじゃないかなと思います。」と証言し(証人a28頁。ただし、直後に原告代理人から解釈の誤りを指摘されて訂正している。)、「当時あなたとしてはその表はそ もそも行政文書に当たらないと考えていたという理解でいいですか。」との質問に対しても、「内部メモ的な認識だというような記憶もありますし…少しそういう認識があったかもしれません。」と証言している(同33頁)。 また、合同マスクチームで調達担当をしていたdは、「電子メールについても、当然、先ほど申し上げた基準に該当するもの(注:1年以上保存する必 要があるもの)は行政文書に当たるという認識を当時も持っていました。」と証言し、1年未満文書としての電子メールは行政文書に当たらないかのような認識を述べている(証人d8頁)。 また、aは、電子メールについて、「組織としての意思決定表示、契約締結から納入までのプロセスが跡付け検証できるようなメールという趣旨で 探してもらったというふうに記憶しております。」と証言するなど、共有フォルダに保存すべき電子メール(要するに、1年未満文書に当たらない電子メール。厚生労働省行政文書管理規則15条5項等参照)のみを探索し、その他の電子メールについては探索していない旨を証言している(証人 ルダに保存すべき電子メール(要するに、1年未満文書に当たらない電子メール。厚生労働省行政文書管理規則15条5項等参照)のみを探索し、その他の電子メールについては探索していない旨を証言している(証人a15、37~38頁)。また、会計担当であったfも、合同マスクチーム在籍 中に電子メールについて確認された際、業者とやり取りした電子メール自体はもちろんあったが、価格決定や業者選定の経緯が分かるような開示請求の対象文書となるものはなかったので、持っていないと回答した旨を証言している(証人f12、22~23頁)。 さらに、厚生労働省は、本件処分1ないし3の通知書において、やり取り 記録文書及び購入やり取り文書につき、「事務処理上作成又は取得した事実 - 35 - はない」とする不開示理由を記載しているところ(前提事実(3)イ(エ))、被告は、この不開示理由につき、実際には業者との間で事務的な連絡等を電子メールで行っていたため、上記の不開示理由は誤りであり、この誤りは、合同マスクチーム担当者間の意思疎通の不手際によるものであったとしている(被告第1準備書面18頁)。しかし、aの上記証言内容を踏まえると、 電子メールやその添付文書等については、共有フォルダに保存すべき重要なもの(1年未満文書ではないもの)を除いて、そもそも開示請求の対象ではないか、対象とする必要がないと理解されていたため、上記のような不開示理由とされたとみる方が自然である。また、この点に関し、aは、上記不開示理由が誤りであったことについて問われた際、「そこの趣旨は多分保存す べき行政文書としては、ということを付けないと間違い、不正確だと思います。」と証言し(証人a29頁)、「保存すべき行政文書」と記載すれば正しい記載であるかのような証言をしてお 旨は多分保存す べき行政文書としては、ということを付けないと間違い、不正確だと思います。」と証言し(証人a29頁)、「保存すべき行政文書」と記載すれば正しい記載であるかのような証言をしており、現在においても、1年未満文書については、開示請求の対象ではないか、対象とする必要がないと理解しているように見受けられる。 このように、本件開示請求1ないし3の対象文書を特定し探索を指示する最終判断を行う立場にあったaの証言のほか、当時合同マスクチームに所属していたdやfの証言、処分通知書に記載されたやり取り記録文書や購入やり取り文書の不存在理由等を全体としてみると、厚生労働省(合同マスクチーム)においては、本件開示請求1ないし3につき、1年未満文書として扱 われていた文書(電子メールや内部検討に用いる文書等)については、開示請求の対象となる行政文書ではないか、あるいは、その対象とする必要がないものとして、一律に探索の対象としていなかったものと認めるのが相当である。また、文部科学省も、本件開示請求4ないし6につき、厚生労働省(合同マスクチーム)の対応方針に従って、1年未満文書として扱われていたこ れらの文書を、探索や開示の対象としなかったものと推認される(乙55、 - 36 - 証人b19頁)。 (3) そうすると、本件各処分時において、やり取り記録文書や購入やり取り文書に該当する文書が、合同マスクチーム等職員の執務用パソコン等に実際に存在していたとしても、それが1年未満文書として扱われている限りは、そもそも探索の対象とされず、存否の確認がされることなく一律に不存在であ ると判断されたものと考えられる。 そのため、やり取り記録文書や購入やり取り文書のうち、本件各処分時に文書が存在しなかった(物理 の対象とされず、存否の確認がされることなく一律に不存在であ ると判断されたものと考えられる。 そのため、やり取り記録文書や購入やり取り文書のうち、本件各処分時に文書が存在しなかった(物理的不存在)との主張がされているものについては、このことを十分考慮に入れて判断する必要がある。 4 やり取り記録文書(本件開示請求3及び6関係・別表1)について (1) やり取り記録文書の意味ア情報公開法4条1項は、開示請求は、同法4条1項各号に掲げる事項を記載した書面(開示請求書)を行政機関の長に提出してしなければならない旨規定し、同項2号は、「行政文書の名称その他の開示請求に係る行政文書を特定するに足りる事項」を掲げている。 このように、情報公開法は、開示請求権の行使という重要な法律関係の内容を明確にするため、開示請求は必ず書面を提出して行わなければならないものとし(総務省行政管理局編「詳解情報公開法」32頁参照)、その書面には、公開を求める行政文書を特定するに足りる事項(以下「特定事項」という。)を記載すべきものとしているのであるから、開示請求に 係る行政文書の意味の確定は、開示請求者が開示請求書により表示した意思の解釈問題というべきであって、基本的に、開示請求書に記載されている特定事項の文言に即し、特定事項の記載全体の趣旨からその文言の意味を合理的に解釈して確定すべきものと解される。 イ本件開示請求3及び6に係る各開示請求書に記載された、やり取り記録 文書に係る特定事項は、「新型コロナウイルス感染拡大への対策の一環と - 37 - して各世帯、妊婦、介護施設等に配布される布マスクの契約、発注及び回収等について御庁が業者との間でやり取りした内容を記録した文書(応接録を含む)。」であるとこ の対策の一環と - 37 - して各世帯、妊婦、介護施設等に配布される布マスクの契約、発注及び回収等について御庁が業者との間でやり取りした内容を記録した文書(応接録を含む)。」であるところ、「御庁が業者との間でやり取りした内容を記録した文書」の意味について、被告は、業者との間でやり取りした内容そのものが記録されたものをいう旨主張するのに対し、原告は、業者との 生のやり取りが記録された文書に限定する趣旨ではなく、業者とのやり取りの結果や要点が記録された文書も含む旨主張する。 そこで、「御庁が業者との間でやり取りした内容」の意味をその文言の意味から合理的に解釈すると、この文脈での「やり取り」とは、「言葉をとりかわすこと」(新村出編「広辞苑第7版」2973頁)であると解さ れるから、上記部分の意味は、各省と業者との間で行われた言葉のやり取り(交渉、依頼、要請、拒否、確認、連絡等)の内容をいうものと解される。そして、これには、各省と業者との間で交わされた言葉(口頭での発言や電子メールの文面)そのものの内容だけでなく、それがある程度抽象化されたもの、すなわち、その概要や要点を含むものと解されるが、他方 で、その言葉のやり取りにより決定された事項や方針(やり取りの結果)は、これに含まれないというべきである。 以上によれば、やり取り記録文書の特定事項にいう「御庁が業者との間でやり取りした内容を記録した文書」とは、各省の担当者と業者との間で行われた言葉のやり取り(交渉、依頼、要請、拒否、確認、連絡等)の内 容が記録された文書をいい、ある程度抽象化されたもの(やり取りの概要や要点)でもよいが、これにより決定された事項や方針(やり取りの結果)だけが記録された文書は、上記特定事項には含まれないものと解するのが相 された文書をいい、ある程度抽象化されたもの(やり取りの概要や要点)でもよいが、これにより決定された事項や方針(やり取りの結果)だけが記録された文書は、上記特定事項には含まれないものと解するのが相当である。原告と被告の主張は、上記説示に反する限りにおいて、いずれも採用することができない。 (2) 本件文書①(調達管理表・本件処分3及び6について) - 38 - ア認定事実(2)アのとおり、厚生労働省の合同マスクチームは、全体の調達状況を一元的に管理するため、調達管理表を作成し、必要に応じて随時更新していたと認められる。そして、令和2年9月1日(本件処分3)時点の調達管理表は、その後一度又は数度にわたり内容が更新され、同年12月18日時点の調達管理表(乙43)となったものと推認される。 令和2年12月18日時点の調達管理表(乙43)には、縦方向の項目に調達業者の名称が、横方向の項目に契約日、履行期限、単価、調達枚数等が記載され、具体的な年月日や金額等が一覧表形式で記載されているが、調達契約において合意された内容等が記載されているにとどまり、調達担当の職員と調達業者との交渉等の内容や経過は記載されていない。そして、 同年9月1日時点の調達管理表の各項目も、同年12月18日時点の調達管理表のそれと同一であったものと推認される。 そうすると、本件文書①(調達管理表)は、調達担当の職員と調達業者との交渉等により決定された事項や方針(やり取りの結果)が記載されている文書であって、調達業者との交渉等の内容や概要等が記載されている とは認められないから、やり取り記録文書には該当しないというべきである。 また、本件文書①は、上記のとおり、厚生労働省の合同マスクチームにおいて保有されていた文書である 記載されている とは認められないから、やり取り記録文書には該当しないというべきである。 また、本件文書①は、上記のとおり、厚生労働省の合同マスクチームにおいて保有されていた文書であるところ、文部科学省が、本件処分6の時点(令和2年8月27日)において、独自に調達管理表又はこれに類する 文書を保有していたとは認められない。 なお、aは、調達管理表とみられる文書につき、行政文書であるとは認識していなかった旨証言しているが(証人a28、33頁)、このことは、上記判断を左右するものではない。 イこれに対し、原告は、先行訴訟において、aが証人として証言した内容 (乙36・28頁)を指摘し、調達管理表には調達業者とのやり取りの内 - 39 - 容や経過が記載されていた旨主張する。 しかし、この証言は、「各業者、業者もたくさんありますので、かなり時期によってもいろいろやり取り動かれると思うんですけれども、そういう経過についても記載がされるようなものだったとお聞きしていいんでしょうか。」との質問に対し、「そのような表だったと思います。」と回答 したものであるところ、あいまいな内容の短い回答である上、何をもって「経過」というのかも判然とせず、この証言をもって、令和2年9月1日(本件処分3)時点の調達管理表に、調達業者とのやり取りの内容や概要等が記載されていたとは認められない。原告の上記主張は採用することができない。 ウ以上によれば、厚生労働省が本件処分3の時点で保有していた本件文書①(調達管理表)は、やり取り記録文書に該当せず、また、文部科学省が本件文書①を保有していたとは認められないから、本件処分3及び6のうち本件文書①を不開示とした部分は、適法である。 (3) 本件文書②(変更理由書 は、やり取り記録文書に該当せず、また、文部科学省が本件文書①を保有していたとは認められないから、本件処分3及び6のうち本件文書①を不開示とした部分は、適法である。 (3) 本件文書②(変更理由書・本件処分3について) 本件文書②は、変更理由書であるところ、証拠(乙41)によれば、変更理由書(実際の文書の表題は「変更契約理由書」である。)には、変更契約に至る経緯やその理由を説明するために、「その声がけに応じた中で、条件を満たす十数社との間で契約に向けた調整を続けたところ」、「検品体制の強化の要請を行うとともに、不良品については交換対応を行うことで合意し た」、「今般、マツオカコーポレーションから履行期限以内の納品が困難である旨申出があったが、同社と協議を行った結果」などと、合同マスクチームの職員と調達業者とのやり取りの概要や要点の記載が含まれていると認められる。 したがって、本件文書②(変更理由書)は、本件開示請求3の対象文書に 含まれるものといえ、本件処分3のうち本件文書②を不開示とした部分は、 - 40 - 違法である。これに反する被告の主張は採用することができない。 なお、本件文書②(変更理由書)については、厚生労働省と興和の間の本件値下げに関する変更理由書の存否も争われているが(別表1の本件文書②欄参照)、この点については、後記(7)において、本件文書⑥(本件値下げに関する経緯記載文書)の存否と併せて判断する。 (4) 本件文書③(布製マスク回収に関する経緯記録文書・本件処分3及び6について)ア本件開示請求3及び6に係る各開示請求書に記載された、やり取り記録文書に係る特定事項は、「新型コロナウイルス感染拡大への対策の一環として各世帯、妊婦、介護施設等に配布される布マスクの ついて)ア本件開示請求3及び6に係る各開示請求書に記載された、やり取り記録文書に係る特定事項は、「新型コロナウイルス感染拡大への対策の一環として各世帯、妊婦、介護施設等に配布される布マスクの契約、発注及び回 収等について御庁が業者との間でやり取りした内容を記録した文書(応接録を含む)。」であるところ、被告は、本件文書③に係る「布マスクの…回収」の意味について、各省が主体となる回収行為(一度配布を行った布製マスクを手元に取り戻す行為)を意味し、調達業者が主体となる回収行為を指すものではない旨主張する。 しかし、被告が指摘する点(契約や発注の主体は各省であること等)を考慮しても、「…各世帯、妊婦、介護施設等に配布される布マスクの契約、発注及び回収等について」という文言から、「回収」の意味につき、各省が主体となる回収行為に限定する趣旨(調達業者が主体となる回収行為を含まない趣旨)を見出すことは困難である。また、本件開示請求3及び6 がされた令和2年8月当時、調達業者による布製マスクの回収が広く報道されていたこと(例えば、同年6月1日の朝日新聞デジタルの記事には、「配布開始の直後から見つかった異物混入や汚れについて、興和は自社の負担で全品を回収し再検品を実施」などと記載されている。甲7)からしても、上記「回収」は、各省が主体となる回収行為だけではなく、調達業 者が主体となる回収行為を含むものというべきである。 - 41 - したがって、本件開示請求3及び6の上記特定事項にいう「回収」は、各省が主体となる回収行為だけでなく、調達業者が主体となる回収行為も含むと解するのが相当であり、これに反する被告の主張は採用することができない。 イ上記アによれば、本件文書③は、各省又は調達業者が行った布 となる回収行為だけでなく、調達業者が主体となる回収行為も含むと解するのが相当であり、これに反する被告の主張は採用することができない。 イ上記アによれば、本件文書③は、各省又は調達業者が行った布製マスク 回収に係る、各省と調達業者との間でやり取りした内容を記録した文書をいうこととなる。 被告は、本件文書③の存否に関し、調達業者である興和及び伊藤忠商事は、それぞれ自らの負担により自主的に回収しており、これに関して合同マスクチーム内で検討・決定した事実はなく、また、厚生労働省と調達業 者との間で布製マスクの回収に関する調整や代金の減額を行った事実もないから、その経緯について記載した文書を各省の職員が作成又は取得したことはない旨主張する。 しかし、会計検査院の報告書(甲36)には、「厚生労働省は、良品とならなかった同省分1089万余枚のうち、未配布であったため納品業者 を特定でき、かつ納入業者が、契約条項に基づく協議により補修、交換等に同意した920万余枚については、納入業者の負担において補修、交換等を行わせていた」(同587頁)とか、「文部科学省は、良品とならなかった同省分18万余枚のうち、17万余枚については納入業者に良品と交換させていた」(同588頁)などと記載されており、各省が調達業者 に対して、相当な枚数の布製マスクを調達業者の負担で回収し交換等するよう働きかけていたことがうかがわれる。また、aも、調達業者が布製マスクを回収することについて、厚生労働省と調達業者の打合せは当然していただろうと思う旨証言している(証人a45頁)。これらの点からすれば、少なくとも、調達業者による布製マスクの回収に関しては、各省と調 達業者との間で、その回収枚数や費用負担等につき交渉や協議が行われて - している(証人a45頁)。これらの点からすれば、少なくとも、調達業者による布製マスクの回収に関しては、各省と調 達業者との間で、その回収枚数や費用負担等につき交渉や協議が行われて - 42 - いたと推認される。 そして、布製マスクの回収に関する協議等の内容を記録した文書が作成されていたか否かについては、これを直接裏付けるような明確な証拠は見当たらないが、合計約1000万枚もの布製マスクを調達業者の負担で回収(交換等)させるというのであるから、例えば、職員間で情報を共有す るために、申入れの経過や調達業者の反応等を記録した電子メールを関係職員宛てに送付したり、管理職に報告し方針を確認するために、簡潔に経緯等を記録した簡易な報告書を作成して交付したり、後日説明を求められたときのために、調達業者との交渉経緯を記録した文書を作成したりすることは、当時いかに繁忙であったとしても、ある程度は行われていたと考 える方が自然であって、一通もそのような電子メールや報告書等が作成されなかったとは考え難い。そして、これらの電子メールや報告書等については、1年未満文書として扱われ、本件開示請求3及び6における探索の対象とされなかったものと考えられるから(上記3参照)、本件処分3及び6において不存在と判断されたことも特に不自然ではない。 また、aは、本件文書③に関する質問として、「(布製マスクの回収に関して行われた)打合せのやり取りの文書が対象になるとは思いませんでしたか。」と問われたのに対し、「対象にならないと思って判断したと思います。」と証言しており(証人a45頁)、必ずしも趣旨が明確ではないものの、本件文書③が存在したことを前提とするような証言をしている し、会計検査院の報告書(甲36)に記載されてい したと思います。」と証言しており(証人a45頁)、必ずしも趣旨が明確ではないものの、本件文書③が存在したことを前提とするような証言をしている し、会計検査院の報告書(甲36)に記載されている調達業者の回収の経緯等についても、担当した職員がその記憶に基づいて説明したというよりは、経緯が記載された何らかの文書に基づいて説明したと考える方が自然である。 以上によれば、各省において、不良品問題が発生した令和2年4月中旬 以降、布製マスクの回収に関し、各省と調達業者との間でやり取りした内 - 43 - 容を記録した電子メールや報告書等(本件文書③)を作成していたと認めるのが相当であり、これに反する被告の上記主張は採用することができない。 ウ上記のとおり、各省において、令和2年4月中旬以降、本件文書③が作成されていたと認められるところ、本件処分3及び6の時点でも、少なく ともその一部の文書又はデータは廃棄又は削除されずに職員の執務用パソコン等に保存されていたと推認されるから(下記5(3)も参照)、本件処分3及び6のうち本件文書③を不存在として不開示とした部分は、違法である。 (5) 本件文書④(打合せ記録〔いわゆる応接録〕・本件処分3及び6について) ア厚生労働省行政文書管理規則11条2項及び文部科学省行政文書管理規則11条2項は、公共事業の実施や契約に関する事項等(上記各規則別表第1)に関する業務に係る政策立案並びに事務及び事業の実施の方針等に影響を及ぼす打合せ等(職員と職員以外の者との折衝を含む。)の記録については、文書を作成するものとする旨規定する(甲31、33)。 被告は、合同マスクチームの職員が調達業者と直接会って面談や打合せ(以下「打合せ等」という。)を行うことはあったもの 録については、文書を作成するものとする旨規定する(甲31、33)。 被告は、合同マスクチームの職員が調達業者と直接会って面談や打合せ(以下「打合せ等」という。)を行うことはあったものの、これらの打合せ等は、飽くまでも布製マスクの調達の一環として行われたにすぎず、布製マスク配布事業という政策の立案や同事業の実施の方針に影響を及ぼすものではなかったから、各省の職員が、厚生労働省行政文書管理規則11 条2項等に基づいて打合せ記録を作成又は取得した事実はないと主張し、証人らもこれに沿う証言をする(証人c6~7頁、証人d6~8頁、証人f5~6頁)。 しかし、調達業者との間で行われた打合せ等において、どのような内容の協議や交渉が行われたのか、調達契約の諸条件や布製マスクの検品等に ついてどのような申出や回答があったのかといった事情は、これらの打合 - 44 - せ等が、上記各規則にいう「政策立案並びに事務及び事業の実施の方針等に影響を及ぼす打合せ等」に該当するか否かにかかわらず、調達業務の遂行上必要な範囲で、職員間で情報共有しておく必要があったと考えられるし、管理職に報告し方針を確認するなどの必要もあったと考えられる。もちろん、打合せ等の中には、そのような情報共有や報告が必要ないものや、 簡単な口頭報告で足りるものもあったとは思われるが、文字による情報共有や報告が必要なものもあったと考えられ(例えば、dは、エクスプラスの担当者との間で、布製マスクの単価、納入時期、検品等に関し、令和2年5月21日に打合せを行っている〔甲37の2・47~52頁〕。)、その情報共有や報告等のため、職員間の電子メールや報告書等が作成され たことはあったと考えられるし、当時の合同マスクチームの繁忙状況等を考慮しても、一 ている〔甲37の2・47~52頁〕。)、その情報共有や報告等のため、職員間の電子メールや報告書等が作成され たことはあったと考えられるし、当時の合同マスクチームの繁忙状況等を考慮しても、一通もそのような電子メールや報告書等が作成されなかったとは考え難い。そして、これらの電子メールや報告書等については、1年未満文書として扱われ、探索の対象とされなかったものと考えられるから(上記3参照)、不存在と判断されたことも特に不自然ではない。 そうすると、厚生労働省(合同マスクチーム)において、当時、調達業者との間で行われた打合せ等の内容を記録した文書(本件文書④)が作成されたことはあったと認めるのが相当であり、これに反する被告の主張や証人らの証言は採用することができない。 なお、証拠上、調達業者との打合せ等は、厚生労働省(合同マスクチー ム)において行われていたと認められ、文部科学省において調達業者との打合せ等が行われていたと認めるに足りる証拠はないから、文部科学省において本件文書④が作成されたとは認められない。 イしたがって、厚生労働省において、令和2年3月以降、本件文書④が作成されていたと認められるところ、本件処分3の時点でも、一部は廃棄又 は削除されずに職員の執務用パソコン等に保存されていたと推認されるか - 45 - ら、本件処分3のうち本件文書④を不存在として不開示とした部分は、違法である。 他方、文部科学省において本件文書④が作成されていたとは認められず、これを合同マスクチーム等から取得したとも認められないから、本件処分6のうち本件文書④を不開示とした部分は、適法である。 (6) 本件文書⑤(本件担保責任等免除特約に関する経緯記録文書・本件処分3及び6について)ア本件 たとも認められないから、本件処分6のうち本件文書④を不開示とした部分は、適法である。 (6) 本件文書⑤(本件担保責任等免除特約に関する経緯記録文書・本件処分3及び6について)ア本件文書⑤は、各省と興和との間の調達契約に付された本件担保責任等免除特約(認定事実(2)イ)に関し、各省が興和との間でやり取りした内容を記録した文書である。 被告は、興和から瑕疵担保責任等を免除する旨の契約内容を希望するとの申出があった際、当該申出は合同マスクチームの責任者であるc及びaにも情報共有され、当該申出を了解する旨の意思決定が行われたが、その際のやり取りは口頭で行われており、各省の職員が、当該申出に関する情報共有や検討等のために本件文書⑤を作成又は取得した事実はない旨主張 し、証人cもこれに沿う証言をする(証人c7~9頁)。 しかし、当時、布製マスクの調達契約において本件担保責任等免除特約が付されたのは興和との調達契約だけであり、通常は付されないような被告に不利益な特約であるから、合同マスクチーム内でその要否を検討したり協議したりする上で、また、合同マスクチームが文部科学省と協議した り情報共有したりする上で、興和の申出内容やその後の交渉経緯等を記録した電子メールや報告書等が作成され、各省又は各職員間で共有されていたと考えるのが自然かつ合理的である。また、このような異例の特約を付すに当たっては、後日国会等で説明が求められることもあり得るから、将来の説明等のために、その申出内容や交渉経緯等について上記のような文 書を作成し保管しておくことは、当然に想定されることである(なお、会 - 46 - 計検査院の報告書には、おおむね認定事実(2)イで認定したとおりの経過が記載されているところ〔甲36〕、 書を作成し保管しておくことは、当然に想定されることである(なお、会 - 46 - 計検査院の報告書には、おおむね認定事実(2)イで認定したとおりの経過が記載されているところ〔甲36〕、会計検査院の調査の際には、担当職員が上記のような文書を基に交渉経緯等の説明をしたと考えるのが自然である。)。そして、これらの電子メールや報告書等については、1年未満文書として扱われ、本件開示請求3及び6における探索の対象とされなかっ たと考えられるから(上記3参照)、本件処分3及び6において不存在と判断されたことも特に不自然ではない。 以上によれば、各省において、令和2年3月頃、本件担保責任等免除特約に係る興和の申出内容やその後の交渉経緯等を記録した文書(本件文書⑤)を作成又は取得していたと認めるのが相当であり、これに反する被告 の主張や証人cの証言は採用することができない。 イこの点に関し、被告は、調達業者との間で行われた協議の内容を文書として記録に残すかどうかは、当該協議が政策立案並びに事業の実施の方針等に影響を及ぼすものと判断されるか否かによるとし、その上で、文書管理者や文書管理担当者が、本件担保責任等免除特約を付すことが布製マス ク配布事業の実施の方針等に影響を及ぼすものではないと判断し、その経緯を記載した文書を作成しなかったとしても、必ずしも不自然とはいえないなどと主張する。 しかし、本件担保責任等免除特約が付された布製マスクの調達契約は、代金額の合計が数十億円にも及ぶものであり、しかも、通常は付されない ような被告に不利益な特約を付すというのであるから、当時合同マスクチームがいくら繁忙であったとしても、合同マスクチーム内での検討や協議のため、あるいは、各省や各職員間の情報共有等のため、その申出 ような被告に不利益な特約を付すというのであるから、当時合同マスクチームがいくら繁忙であったとしても、合同マスクチーム内での検討や協議のため、あるいは、各省や各職員間の情報共有等のため、その申出内容や交渉経緯等を記録した電子メールや報告書等が作成され共有されることは当然あったと考えられ、被告が主張する点を踏まえてもなお、一通もその ような電子メールや報告書等が作成されなかったとは考え難い。被告の上 - 47 - 記主張は、本件文書⑤が1年以上保存すべき行政文書として作成ないし保存されなかった理由としてはともかく、1年未満文書としても一切存在しないことの合理的な理由とはいえないというべきである。 また、被告は、会計検査院の調査は興和に対しても行われたから、その調査において担当職員が本件文書⑤を参照したとはいえないなどと主張す るが、本件担保責任等免除特約という特殊な特約を付すに至った経緯等に関し、行政側が十分な説明ができないというのは不自然であり、この主張は上記認定判断を左右するに足りず、採用することができない。 ウしたがって、各省は、当時、本件文書⑤を作成又は取得していたと認められるところ、本件処分3及び6の時点でも、一部は廃棄又は削除されず に職員の執務用パソコン等に保存されていたと推認されるから、本件処分3及び6のうち本件文書⑤を不存在として不開示とした部分は、違法である。 (7) 本件文書⑥(本件値下げに関する経緯記録文書・本件処分3について)ア 1年未満文書としての本件文書⑥について 本件文書⑥は、厚生労働省と興和との間の令和2年4月3日付け変更契約による本件値下げ(認定事実(2)ウ)に関し、厚生労働省(合同マスクチーム)が興和との間でやり取りした内容を記録した文書である。 本件文書⑥は、厚生労働省と興和との間の令和2年4月3日付け変更契約による本件値下げ(認定事実(2)ウ)に関し、厚生労働省(合同マスクチーム)が興和との間でやり取りした内容を記録した文書である。 被告は、本件値下げの合意に至ったことについては、c及びaにも情報共有されたが、その際のやり取りは口頭で行われており、合同マスクチー ムの職員が、当該合意に関する情報共有等のために本件文書⑥を作成又は取得した事実はないと主張し、証人cもこれに沿う供述をする(証人c9頁)。 しかし、本件値下げは、厚生労働省が令和2年3月17日に興和と締結した調達契約において、布製マスク1枚の単価が300円とされていたの を130円に変更したものであり(認定事実(2)ウ)、値下げ割合は50% - 48 - を超え、値下げ額は約28億円にも及ぶ。しかも、このような大幅な値下げを、何らの働きかけや交渉もなく調達業者が自発的に行うとは考え難く、本件値下げについては、合同マスクチームから興和に対し、値下げについて何らかの働きかけがあり、交渉の上で決定されたものと考えられる(なお、文部科学省の調達契約の変更理由書には、業者との交渉により単価が 減額された旨の記載がある。甲79)。そうすると、本件値下げに関し、合同マスクチーム内で対応を検討したり協議したりするため、また、職員間で情報を共有しておくため、興和への働きかけやその後の交渉経緯等を記録した電子メールや報告書等が作成され、職員間で共有されていたと考えるのが自然であって(この点に関し、aは、先行訴訟の証人尋問におい て、本件値下げに関する交渉経緯は、特に調達担当の間ではある程度共有されていたと思う旨証言している。乙36・34頁)、一通もそのような電子メールや報告書等が作成されな 行訴訟の証人尋問におい て、本件値下げに関する交渉経緯は、特に調達担当の間ではある程度共有されていたと思う旨証言している。乙36・34頁)、一通もそのような電子メールや報告書等が作成されなかったとは考え難い。そして、これらの電子メールや報告書等については、1年未満文書として扱われ、本件開示請求3における探索の対象とされなかったものと考えられるから(上記 3参照)、本件処分3において不存在と判断されたことも特に不自然ではない。 以上によれば、厚生労働省(合同マスクチーム)において、本件値下げに関し、興和との間でやり取りした内容を記録した電子メールや報告書等(本件文書⑥)が作成されていたと認めるのが相当であり、これに反する 被告の主張や証人cの証言は採用することができない。 イ本件値下げに係る変更理由書(本件文書②のうち本件値下げに関するもの)について被告は、変更契約を締結する場合、通常は決裁資料として変更理由書が作成されることになっているが、本件値下げに係る変更理由書は作成され ていないと主張し、その理由について、定かではないが、当時極めて繁忙 - 49 - な状況であったために作成されなかったと考えられるとか、価格の減額という国に有利な変更を内容とするものであるため、変更理由書の作成を失念していることにつき特段の指摘がされないまま、決裁が進められたものと推察されるなどと主張する。 しかし、文部科学省は、興和との調達契約の単価の変更(値下げ)につ いて変更理由書を作成しているし(甲79)、厚生労働省も、他の変更契約については変更理由書を作成しており(乙41)、本件値下げに係る変更理由書だけ作成されていないというのは、明らかに不自然である(合同マスクチームで令和2年4月頃から会 )、厚生労働省も、他の変更契約については変更理由書を作成しており(乙41)、本件値下げに係る変更理由書だけ作成されていないというのは、明らかに不自然である(合同マスクチームで令和2年4月頃から会計担当をしていた証人fも、変更理由書を作らないといけない業務に関しては、全て変更理由書を作成したと 証言している。証人f18頁)。しかも、被告は、本件値下げに係る変更契約(令和2年4月3日付け変更契約)につき、決裁文書を起案した職員や関与した職員を特定し、変更理由書が作成されなかった理由や経緯を確認するなどし、その結果を基に具体的な主張立証をすることがあり得ると思われるのに、上記のとおり、推測によるあいまいな主張を行うにとどま っている。 もっとも、本件値下げに係る変更契約は、令和2年4月3日という、合同マスクチームがとりわけ繁忙であったと考えられる時期のものであるし、合同マスクチームは新型コロナウイルス感染症の流行により急遽立ち上げられた組織であり、他省庁からの応援職員も多く、決裁事務の混乱等 により、実際に変更理由書の作成が失念されたり省略されたりした可能性がないとはいいきれない。また、厚生労働省が保有する他の変更理由書は、いずれも履行期限の延長など調達契約を国に不利に変更する内容のものであるが、本件値下げは国に有利なものであるし、決裁者が事実上変更理由を了解していたことなどから、変更理由書がないまま決裁された可能性等 も一概に否定できない。そうすると、被告の主張は上記のとおり相当に疑 - 50 - わしい面があるが、本件値下げに係る変更理由書が実際に作成されなかった可能性がないわけではないし、被告は、本件訴訟の審理において、他の変更理由書についてはその写しを証拠提出しており、本件値下げに係る変更 面があるが、本件値下げに係る変更理由書が実際に作成されなかった可能性がないわけではないし、被告は、本件訴訟の審理において、他の変更理由書についてはその写しを証拠提出しており、本件値下げに係る変更理由書が現に存在するにもかかわらず、その存在をあえて否定する虚偽の主張をしているとも断じ難い。 したがって、厚生労働省において本件値下げに係る変更理由書が作成されていた可能性はあるが、作成されていなかった可能性も否定し難く、本件の証拠関係の下では、本件値下げに係る変更理由書が作成されていたと認めるには足りない。 ウ小括 以上によれば、1年未満文書としての本件文書⑥については、厚生労働省(合同マスクチーム)において作成されていたと認められ(上記ア)、本件処分3の時点でも、一部は廃棄又は削除されずに職員の執務用パソコン等に保存されていたと推認されるから、本件処分3のうち本件文書⑥を不開示とした部分は、違法である。 他方、厚生労働省において本件値下げに係る変更理由書(本件文書②のうち本件値下げに関するもの)が作成されていたとは認められないから(上記イ)、本件処分3のうち上記変更理由書を不開示とした部分は、適法である。 (8) 本件文書①ないし⑥以外のやり取り記録文書 ア交渉状況をまとめた一覧表(原告準備書面(8)14頁・本件処分3及び6について)原告は、証人a、証人c及び証人fの証言によれば、調達業者との交渉状況をまとめた一覧表(調達業者が提示した調達可能枚数や納入可能時期を記録した一覧表)が存在した旨主張する。 しかし、上記(2)アのとおり、合同マスクチームでは、履行期限、単価、 - 51 - 調達枚数などを一覧表にした調達管理表が作成、利用されていたことが認めら 在した旨主張する。 しかし、上記(2)アのとおり、合同マスクチームでは、履行期限、単価、 - 51 - 調達枚数などを一覧表にした調達管理表が作成、利用されていたことが認められるところ、調達管理表は随時更新されていたのであるから、原告が主張する上記一覧表は、更新前の調達管理表である可能性が高く、その他の証拠等を精査しても、調達管理表とは別に、原告が主張する上記一覧表が作成されていたとは認められない。したがって、原告が、調達管理表と は異なる一覧表の存在を主張しているのであれば、そのような一覧表が存在したとは証拠上認められないし、本件処分3(令和2年9月1日)の時点で厚生労働省(合同マスクチーム)が保有していた調達管理表が、原告が主張するような内容の一覧表であったとも認められない。 また、原告は、上記一覧表には、調達業者が提示した調達可能枚数や納 入可能時期が記載されていた旨主張するが、このような枚数や時期の記載だけでは、「御庁が業者との間でやり取りした内容」(各省の担当者と調達業者との間で行われた言葉のやり取りの内容又はその概要等)に該当するとはいい難く、いずれにしても、原告が主張する上記一覧表がやり取り記録文書に該当するとは認められない。 したがって、原告が主張する上記一覧表が、調達管理表とは別に存在したとは認められず、仮に存在したとしてもやり取り記録文書には該当しないから、本件処分3及び6のうち当該一覧表を不開示とした部分は、適法である。 イ fが引継ぎのために共有フォルダに保存したファイル(原告準備書面(8) 19頁・本件処分3について)会計担当であったfは、要旨、厚生労働省の共有フォルダ内に個人のフォルダを作成し、後任者へ引き継ぐ必要性が生じた場合に備え、引き継 イル(原告準備書面(8) 19頁・本件処分3について)会計担当であったfは、要旨、厚生労働省の共有フォルダ内に個人のフォルダを作成し、後任者へ引き継ぐ必要性が生じた場合に備え、引き継ぐ必要のある事項をメモしたファイル(以下「本件引継ファイル」という。)を保存していた旨証言するところ(証人f30、31頁)、原告は、本件 引継ファイルについて、fが後任に引き継ぐ目的で作成したもので、共有 - 52 - することを目的に作成された記録であるから、行政文書であって、やり取り記録文書に該当する旨主張する。 しかし、fの証言によれば、本件引継ぎファイルは、引継ぎに備えて一時的に作成したメモだというのであり、上司の指示等により作成したものではないとみられ、また、時の経過により自ら削除したり書き直したりす ることもあり得ると考えられるから、組織共用性を備えていない個人的な作成途中の一時的なメモにとどまるとみる余地がある。また、その記載内容の詳細も不明であって、調達業者とのやり取りの内容が記載されていたかどうかも明確でない。したがって、本件引継ぎファイルは、fの上記証言だけでは、行政文書に当たるとは認め難く、また、やり取り記録文書に 当たるかどうかも明らかでない。 したがって、本件引継ファイルが、本件開示請求3の対象文書に該当するとは認められないから、本件処分3のうち本件引継ファイルを不開示とした部分は、適法である。 ウその他のやり取り記録文書(本件文書A・本件処分3及び6について) 原告は、本件文書①ないし⑥のほかに、「布マスクの購入等に関し、価格や数量、納品時期、方法等について、業者との交渉等の経過について記録として残した文書・電磁的記録」が存在したと主張する(上記ア及びイで検討し 件文書①ないし⑥のほかに、「布マスクの購入等に関し、価格や数量、納品時期、方法等について、業者との交渉等の経過について記録として残した文書・電磁的記録」が存在したと主張する(上記ア及びイで検討した文書を除く。本件文書A)ところ、これに対し、被告は、布製マスク調達ユニット内での協議や、同ユニット担当者からc及びaに対す る報告、契約チーム担当者への引継ぎ等においては基本的に口頭で情報共有がされており、情報共有等のために、調達業者との交渉等の経過を記載した文書が作成され、又は合同マスクチーム内で共有されたことはない旨主張し、証人らもこれに沿う証言をする(証人c6頁、証人d6、37~38頁、証人f5、28頁)。 しかし、布製マスクの調達契約は、1件の契約代金が数億円から数十億 - 53 - 円にも及ぶものであり、調達業者は最終的に17社にも及び、発注枚数、単価、納期、検品方法などといった様々な契約条件に係る交渉等が、複数の職員により同時並行的に行われ、その契約条件は調達業者や調達契約によって異なっていた(認定事実(1)、(2))。そうすると、本件文書③ないし⑥について説示したところと同様、例えば、職員間で情報を共有するた めに、契約条件に関する交渉経緯等を記録した電子メールを関係職員宛てに送付したり、管理職に報告し方針を確認するために、簡潔に経緯等を記録した簡易な報告書を作成して交付したり、調達業者からの申出について対応を相談するために、その申出の内容等を記載した電子メールや報告書等を共有したり、後日説明を求められたときのために、調達業者との交渉 経緯を記録した文書を作成したりすることは、当時いかに繁忙であったとしても、ある程度は行われていたと考える方が自然であって、一通もそのような電子メールや報告 たときのために、調達業者との交渉 経緯を記録した文書を作成したりすることは、当時いかに繁忙であったとしても、ある程度は行われていたと考える方が自然であって、一通もそのような電子メールや報告書等が作成されなかったとは考え難い(なお、ユースビオとの間の調達契約については、認定事実(2)エのとおり、その選定経緯等について国会において答弁がされ、また、会計検査院の報告書には、 おおむね同エで認定したとおりの経過が記載されているところ〔甲36〕、国会答弁や会計検査院の調査の際には、担当職員が上記のような文書を基に交渉経緯等の説明をしたと考えるのが自然である。)。そして、これらの電子メールや報告書等については、1年未満文書として扱われ、本件開示請求3及び6における探索の対象とされなかったものと考えられるから (上記3参照)、本件処分3及び6において不存在と判断されたことも特に不自然ではない。 以上によれば、各省において、「布マスクの購入等に関し、価格や数量、納品時期、方法等について、業者との交渉等の経過について記録として残した文書・電磁的記録」(本件文書A)を作成又は取得していたと認める のが相当であり、これに反する被告の上記主張及び証人らの証言は採用す - 54 - ることができない。 上記のとおり、各省において、令和2年3月以降、本件文書①ないし⑥のほかに、本件文書Aが作成されていたと認められるところ、本件処分3及び6の時点でも、少なくともその一部は廃棄又は削除されずに職員の執務用パソコン等に保存されていたと推認されるから、本件処分3及び6の うち当該文書を不存在として不開示とした部分は、違法である。 5 購入やり取り文書(本件開示請求1、2、4及び5関係・別表2)について(1) 購入やり たと推認されるから、本件処分3及び6の うち当該文書を不存在として不開示とした部分は、違法である。 5 購入やり取り文書(本件開示請求1、2、4及び5関係・別表2)について(1) 購入やり取り文書の意義ア本件開示請求1、2、4及び5に係る各開示請求書に記載された購入やり取り文書の特定事項は、「その他、厚生労働省(又は文部科学省)が布 マスク購入に関し販売業者との間でやり取りした文書(以上、電子メールとその添付文書を含む)。」であるところ、その意義について、原告は、布製マスクの購入に関連して各省と調達業者との間でやり取りした文書を広く含むものである旨主張し、被告は、各省の組織としての意思表示や意思決定が記載された文書のうち、布製マスクの購入契約締結から納品に至 るまでの実質的な過程が分かるものである旨主張する。 そこで、「(各省が)布マスク購入に関し販売業者との間でやり取りした文書(以上、電子メールとその添付文書を含む)」の意味をその文言の意味から合理的に解釈すると、この文脈での「やり取り」とは、「物をとりかわすこと」(新村出編「広辞苑第7版」2973頁)、すなわち、文 書を送付したり受領したりすることであると解される。また、「販売業者」とは、文脈上、布製マスクの調達業者の意味であると解される。 そうすると、購入やり取り文書の特定事項は、各省が布製マスクの購入に関し調達業者との間で送付し又は受領した文書(電子メールとその添付文書を含む。)を意味するものと解するのが相当である。 イこれに対し、被告は、「③各布マスク業者の見積書、契約書、納品書な - 55 - ど厚生労働省(又は文部科学省)が布マスクを購入した際の文書」に並列して購入やり取り文書の特定事項が記載されており、このよう 告は、「③各布マスク業者の見積書、契約書、納品書な - 55 - ど厚生労働省(又は文部科学省)が布マスクを購入した際の文書」に並列して購入やり取り文書の特定事項が記載されており、このような記載全体の趣旨を客観的かつ合理的に解釈すれば、購入やり取り文書の特定事項は、見積書、契約書及び納品書に代表されるような、各省の組織としての意思表示や意思決定が記載された文書のうち、布製マスクの購入契約締結から 納品に至るまでの実質的な過程が分かるものを指すと解される旨主張する。 しかし、購入やり取り文書の特定事項には、単に、「その他、厚生労働省(文部科学省)が布製マスク購入に関し販売業者との間でやり取りした文書」としか記載されておらず、その前の③の部分(見積書、契約書、納 品書など…布マスクを購入した際の文書)と併せ読んでも、被告が主張するような限定の趣旨を読み取ることはできない。 加えるに、被告は、前記3(2)でも指摘したとおり、本件訴訟の審理の序盤では、本件処分1ないし3の通知書に記載されている「事務処理上作成又は取得した事実はない」との不開示理由につき、「実際には業者との間 で契約書の様式に関する形式的な確認などの事務的な連絡等を電子メールで行っていたため、『事務処理上作成又は取得した事実はない』との理由は誤りである。」としていた(被告第1準備書面18頁)。これは、合同マスクチームが調達業者との間でやり取りした電子メールは、それが形式的な確認などの事務的な連絡等にすぎなくとも(すなわち、布製マスクの 購入契約締結から納品に至るまでの実質的な過程が分かるものではなくとも)、購入やり取り文書に該当するという理解を前提に、上記不開示理由の誤りを認めたものと解される。その後、被告は、本件再探索により本件発 約締結から納品に至るまでの実質的な過程が分かるものではなくとも)、購入やり取り文書に該当するという理解を前提に、上記不開示理由の誤りを認めたものと解される。その後、被告は、本件再探索により本件発見文書等が発見された後に、従前の主張を変更し、「組織としての意思表示や意思決定が記載された文書のうち、布製マスクの購入契約締結から 納品に至るまでの実質的な過程が分かるもの」に限定する解釈を主張する - 56 - ようになったが、これは、本件再探索により本件発見文書等が発見されるなどしたため、開示決定の打直し(不開示決定を取り消して開示決定をすること)をするかどうかの選択に迫られ、不開示決定が適法であるとの主張を維持するという判断に至り、本件発見文書等が対象文書から一律に除外されるような解釈を事後的に考え出し、主張するに至ったものと考えざ るを得ない。このような被告の主張の不自然な変遷等からしても、また、被告が審理の序盤において原告の主張と同様の理解に基づく認否をしていたことに照らしても、被告が主張する上記解釈は採用し難い。 ウまた、被告は、購入やり取り文書の特定事項にいう「布マスク購入に関し」との記載について、関連性の程度には種々のものが想定されることか ら、仮に上記特定事項が「(各省が)布マスク購入に関し販売業者との間でやり取りした一切の文書」を指していると解釈するならば、開示を求める行政文書の特定として不十分であり、被告の主張のように解釈して初めて、他の行政文書と識別できる程度に対象文書が特定される旨主張する。 確かに、購入やり取り文書の特定事項は、前述のとおり、各省が布製マ スクの購入に関し調達業者との間で送付し又は受領した文書であると解され、その対象文書の範囲は広範囲に及び、その対象文書も多数か 確かに、購入やり取り文書の特定事項は、前述のとおり、各省が布製マ スクの購入に関し調達業者との間で送付し又は受領した文書であると解され、その対象文書の範囲は広範囲に及び、その対象文書も多数かつ大量であると考えられるが、他の行政文書と識別できる程度には対象文書の範囲は特定されているといえ、被告が主張するような限定をしなくとも、対象文書の特定として不十分とまではいえない。 そもそも、各省としては、対象文書の特定として不十分であると考えるのであれば、購入やり取り文書の上記解釈を原告に示して確認したり、原告に対象文書の範囲を明確にするよう補正を求めたりすべきであり(情報公開法4条2項参照)、繁忙等によりそのような対応が難しかったとしても、そのような対応を行わなかった以上(証人a12、13、16~24 頁)、購入やり取り文書の特定事項の文言どおりの解釈(原告の主張)が - 57 - 正当とされてもやむを得ないというべきである。被告の上記主張は採用することができない。 (2) 電子メールのバックアップファイルの行政文書該当性ア 「電磁的記録」該当性について(ア) 証拠(乙45、46)及び弁論の全趣旨によれば、当時、①厚生労働 省の電子メールのバックアップファイルは、通常のパソコンで開いても判読不能な英数字等の羅列しか表示されないものであり、同省の職員にアクセス権限は付与されておらず、これを判読可能な状態にするためには、システム構成を理解した委託業者が、職員からの申請等に基づき、運用管理を行う専用の端末から、専用のアカウントを利用してバックア ップサーバにアクセスし、専用のソフトを用いてデータを抽出する必要があること、②文部科学省の電子メールのバックアップファイル(バックアップシステムにより1 専用のアカウントを利用してバックア ップサーバにアクセスし、専用のソフトを用いてデータを抽出する必要があること、②文部科学省の電子メールのバックアップファイル(バックアップシステムにより1日単位で作成されるバックアップファイルと、メール監視システムにより電子メール単位で作成されるバックアップファイルの両方)は、特別な形式で保存されているため一般のパソコ ンで利用することができないものであり、同省の職員にアクセス権限はなく、バックアップされたデータを利用するためには、同省により委託を受けた業者が、同省の特別な指示に基づき、専門の技術者において、専用の運用管理端末から、専用のアカウントを利用し、専用のソフトを用いて作業をする必要があることが認められる。 (イ) 被告は、情報公開法2条2項の「電磁的記録」とは、それを保有する行政機関において、通常の設備、技術等により、その情報内容を一般人の知覚により認識できる形で提示することが可能なものに限られるとし、各省の上記バックアップファイルは、上記「電磁的記録」には当たらないと主張する。これに対し、原告は、各省の上記バックアップファ イルは同項の「電磁的記録」の定義に当てはまり、被告が主張するよう - 58 - な限定解釈をすることは誤りであるなどと主張する。 そこで検討するに、確かに、情報公開法2条2項本文括弧書きは、「電磁的記録」の定義として、「電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。」と定めているにすぎず、電子メールのデータを復元するために上記(ア)のような 委託業者による専用のソフトを用いた作業が必要となることは、上記バックアップファイルが「電磁的記録」に該当することの妨げとはならないよう 、電子メールのデータを復元するために上記(ア)のような 委託業者による専用のソフトを用いた作業が必要となることは、上記バックアップファイルが「電磁的記録」に該当することの妨げとはならないようにも思われる。 しかし、情報公開法14条1項は、行政文書の開示は、電磁的記録についてはその種別、情報化の進展状況等を勘案して政令で定める方法に より行う旨規定し、行政機関の保有する情報の公開に関する法律施行令9条3項3号及び4号は、電磁的記録の開示方法につき、「次に掲げる方法であって、行政機関がその保有する処理装置及びプログラムにより行うことができるもの」とし、具体的な方法として、用紙への出力、機器による再生、光ディスク等の記憶媒体への複写等を定めている。この ような電磁的記録の開示方法の定めからすれば、情報公開法2条2項の「電磁的記録」については、行政機関が保有する処理装置及びプログラムによりその情報内容を直接認識できるものであることが、情報公開制度上当然の前提とされているものと解される。 また、情報公開法が定める開示請求権については、「あるがままの形 で行政文書を開示することを求める権利であり、行政機関の長は、第6条に規定する部分開示による場合及び第14条1項に規定する特別の開示の実施の方法による場合を除き、新たに行政文書を作成又は加工する義務はない」と解説されているところ(総務省行政管理局編「詳解情報公開法」30頁)、委託業者による復元作業によりバックアップファイ ルを判読可能なデータとすることは、バックアップファイルを開示可能 - 59 - なデータ(電磁的記録)に「加工」していることにほかならないというべきであり、あるがままの形で行政文書を開示するという開示請求権の範疇を超えるものという プファイルを開示可能 - 59 - なデータ(電磁的記録)に「加工」していることにほかならないというべきであり、あるがままの形で行政文書を開示するという開示請求権の範疇を超えるものというべきである。 実際にも、委託業者による復元作業を行わなければ判読可能な状態にならないバックアップファイルについて、情報公開法2条2項の「電磁 的記録」に該当すると解した場合には、実施機関は、開示請求があれば、バックアップファイルの基となったデータ自体の探索に加えて、対象文書が含まれている可能性がある全てのバックアップファイルを業者に依頼して復元した上で、その内容を逐一精査して対象文書が含まれていないかを確認しなければならないこととなる。しかし、原則として開示請 求があった日から30日以内に開示決定等をすることを義務付け、バックアップファイルの復元に要する期間や費用について特段の定めを置いていない情報公開法が、そのような対応を想定しているとは考え難い。 したがって、情報公開法2条2項の「電磁的記録」に該当するには、当該行政機関が保有する処理装置及びプログラムによりその情報内容を 直接認識できるものであることを要すると解するのが相当であり、これに反する原告の主張は採用することができない。 これを本件についてみると、上記アのとおり、各省の電子メールのバックアップファイルは、いずれも各省の職員にアクセス権限がなく、各省から委託を受けた事業者が、専用の端末で専用のソフトを用いてデー タを抽出し、データを復元しない限り、その内容を認識することができないと認められるから、各省が保有する処理装置及びプログラムによりその情報内容を直接認識できるものではない。したがって、各省の電子メールのバックアップファイルは、情報公開法 内容を認識することができないと認められるから、各省が保有する処理装置及びプログラムによりその情報内容を直接認識できるものではない。したがって、各省の電子メールのバックアップファイルは、情報公開法2条2項の「電磁的記録」には該当しない。 イ小括 - 60 - 以上によれば、各省の電子メールのバックアップファイルは、情報公開法2条2項の「電磁的記録」に該当しないから、同項の「当該行政機関の職員が組織的に用いるもの」に該当するかについて検討するまでもなく、同項の「行政文書」には該当しないというべきである。 (3) 本件文書⑦及び⑨(本件処分1及び2について本件文書⑦及び⑨、本件処 分4及び5について本件文書⑦)ア購入やり取り文書該当性について本件文書⑦は、各省が調達業者との間で送受信した電子メール及び添付文書(ただし、本件文書⑧及び⑨を除く。)であり、本件文書⑨は、本件送付嘱託に対して調達業者が送付した各省との間の電子メール及びこれに 添付されたファイル(注文書、見積書、通関手続関係文書、生産体制に関する文書、納入枚数に関する文書、サンプル品等の画像データ、調達業者と検品業者との間の発注書・契約書・見積書)である(前提事実(6)ア)。 購入やり取り文書は、上記(1)で説示したとおり、各省が布製マスクの購入に関し調達業者との間で送付し又は受領した文書(電子メールとその添 付文書を含む。)を意味するものと解されるから、本件文書⑦及び⑨は、いずれも購入やり取り文書に該当すると認められる。 イ処分時において各省が本件文書⑦及び⑨を保有していたと認められるか(処分時までに全て削除されていたか)について(ア) 被告は、開示請求の対象となる調達業者との間の電子メールは各開示 請求 処分時において各省が本件文書⑦及び⑨を保有していたと認められるか(処分時までに全て削除されていたか)について(ア) 被告は、開示請求の対象となる調達業者との間の電子メールは各開示 請求時点までに各省の職員が作成又は取得したものであるところ、そのような電子メールは保存期間が1年未満の文書(1年未満文書)であり、各職員が都度廃棄していたから、本件処分1、2、4及び5の各時点において各省がそれぞれ保有していたと推認することはできない旨主張するので、この点について以下検討する。 証人ら(証人a15頁、証人b8~10、21~23頁、証人c11、 - 61 - 12、37、38頁、証人d8、9、34~38頁、証人f8~11、28~30頁)は、要旨、業務に関して作成又は取得した電子メールについて、組織として保存を要するものは共有フォルダに保存し、そうでないものは1年未満文書として職務執行上の必要がなくなった後に適宜のタイミングで廃棄していた旨、1日に数百通以上の電子メールを送受 信していたが、各職員に割り当てられたメールボックスの容量が数ギガ程度であり、放置しているとメールボックスの容量が圧迫され、電子メールの送信ができなくなってしまうため、数日から1週間程度の間に1回程度、職務執行上の必要がなくなった電子メールをまとめて削除していた旨証言する。また、被告が提出した情報管理担当職員の陳述書(乙 45〔厚生労働省情報システム管理室i〕、乙46〔文部科学省サイバーセキュリティ・情報化推進室長j〕)には、当時、各職員に割り当てられていたメールボックスの容量は、厚生労働省においては1.3ギガバイト(1通当たり100キロバイトとして約1.3万通)、文部科学省においては2ギガバイト(同じく約2万通)であり、容量がい 割り当てられていたメールボックスの容量は、厚生労働省においては1.3ギガバイト(1通当たり100キロバイトとして約1.3万通)、文部科学省においては2ギガバイト(同じく約2万通)であり、容量がいっぱい になると電子メールの送信ができなくなる旨記載されており、上記各証言に沿う内容の説明がされている。 しかし、送受信した電子メールを削除するかどうかは、当該電子メールを保有する職員の判断に委ねられていたのであり、送受信から一定期間経過した電子メールは全て消去せよとか、どこにも保存してはならな いといったような指示はなかったようであり(証人d8頁、証人f11、16頁等参照)、自ら担当した調達契約に関する一連の電子メールや、後に確認したり参照したりする可能性があるものについては、たとえ1年未満文書として削除することができるものであっても、これを削除しないでメールボックス内で一部保存しておいたり、メールボックスから 削除する前に執務用パソコンのハードディスクに保存しておいたりする - 62 - ことは、ごく普通にあり得る対応と考えられる。 実際にも、令和2年3月又は5月に合同マスクチームを離れた職員甲と職員乙は、合同マスクチーム在籍中に送受信した電子メール(職員甲につき96通、職員乙につき5通)を、異動後2年以上経過した令和4年6月30日時点においても執務用パソコンに保存していたのであり (乙19、37)、将来見返す必要が生じた場合のために電子メールを執務用パソコンに保存するなどしていた職員が、のべ数十人以上に及ぶ合同マスクチームの布製マスク担当職員において、わずかに職員甲と職員乙だけであったとは考え難いし、なぜ合同マスクチームを離れた職員甲と職員乙だけが電子メールを保存しており、他の数十人以上に及ぶ 及ぶ合同マスクチームの布製マスク担当職員において、わずかに職員甲と職員乙だけであったとは考え難いし、なぜ合同マスクチームを離れた職員甲と職員乙だけが電子メールを保存しており、他の数十人以上に及ぶ職 員がこれを保存していなかったのか、その理由や経緯について被告から納得し得るような具体的な説明もない。 また、各省が調達業者との間で送受信した電子メールは、残しておくだけで調達契約の交渉経緯等を直截に明らかにし得るものであり、後日、調達契約の締結や納品等に問題が生じた場合に、その経緯等を確認する といった目的で見返すことがあり得るし、同種の調達契約を締結する際に、参考として見返すこともあり得る(dも、他の調達業者の契約条件を確認するために、過去に送受信した電子メールをたどっていくことがあった旨証言している。証人d19頁)。そうすると、調達契約締結後も、相当の期間にわたり、個々の職員の判断で、調達業者からの電子メ ールの一部又は全部をどこかに保存しておくことは当然に考えられるし、繁忙のため文書を作成する余裕がないのであれば、なおさら、調達業者からの電子メールだけでもとりあえずどこかに保存しておくというのが、むしろ普通の対応であるように思われる。 さらに、本件処分1は令和2年8月27日付けで、本件処分2は同年 9月29日付けで、本件処分4は同年7月13日付けで、本件処分5は - 63 - 同年9月28日付けでされたものであるが、布製マスクの調達契約は、厚生労働省では同年6月22日まで、文部科学省では同月10日まで締結されていたのであり、本件処分1及び2(厚生労働省関係)については調達契約締結から処分まで2ないし3か月程度が、本件処分4及び5(文部科学省)については1ないし3か月程度が経過しているにす まで締結されていたのであり、本件処分1及び2(厚生労働省関係)については調達契約締結から処分まで2ないし3か月程度が、本件処分4及び5(文部科学省)については1ないし3か月程度が経過しているにすぎな い(認定事実(2)ア)。また、介護施設等向け配布事業(厚生労働省)の布製マスクの配布は同年9月30日まで行われており、本件処分1及び5の時点ではまだ終了しておらず、学校向け配布事業(文部科学省)の配布は同月9日まで行われており、本件処分4の時点ではまだ終了しておらず、本件処分5の時点でも配布が終わってから3週間程度しか経っ ていない(同(3)イ、エ)。しかも、布製マスクの調達に関しては、国内の全世帯を対象に布製マスクを配布することが発表された令和2年4月以降、与党との癒着の疑惑があるなどとして様々な報道がされたり(甲6~18等)、不良品問題が発生して回収や検品が問題となったり、これらの関係で国会で質問として取り上げられたりしていたのであるか ら、後に経緯等について説明を求められる可能性が十分にあり、担当職員として、契約締結からわずか数か月程度で調達業者とやり取りした電子メールを全て削除することは当然ためらわれるはずであるし、少なくともその一部については、何らかの方法で保存しておくことが、担当職員としての通常の対応であると思われる。調達契約締結から数か月程度 経過した時点で、調達業者との電子メールの全てを、合同マスクチーム等職員の布製マスクに関与した全員(職員甲及び職員乙を除く。)が、記録に残らない形で完全に削除してしまうということは、メールボックスの容量制限が被告の主張のとおりであったとしても、明らかに不自然といわざるを得ない。 以上からすると、前述の証人らの証言内容を踏まえても、合同マスク うということは、メールボックスの容量制限が被告の主張のとおりであったとしても、明らかに不自然といわざるを得ない。 以上からすると、前述の証人らの証言内容を踏まえても、合同マスク - 64 - チーム等職員(職員甲及び職員乙を除く。)が、本件処分1、2、4及び5までに、調達業者との間の電子メールの全てを完全に削除したとは考え難いから(なお、合同マスクチーム在籍中に電子メールの探索を求められた際、業者とやり取りした電子メール自体はあった旨をいうものとして、証人f23頁)、本件処分1、2、4及び5がされた時点にお いて、各省は本件文書⑦及び⑨(調達業者との間の電子メール等)を保有していたと認めるのが相当である。 (イ) ところで、証拠(乙37、38、証人a14~16、45~47頁)によれば、本件開示請求1、2、4及び5の対象文書の探索において、その当時在籍していた合同マスクチーム等職員に対し、調達業者との間 の電子メールの有無を確認したところ、いずれの職員も「ない」と回答したとされている。 しかし、aは、1年以上保存すべき(1年未満文書に当たらない)電子メールは基本的には共有フォルダに保存することになっていたので、共有フォルダを探索し、さらに、共有フォルダへ移すのを失念していた 場合に備えて、当時の調達担当の職員に開示対象となる電子メールがないか確認した旨証言しており(証人a14頁)、合同マスクチーム等職員に対してその有無が確認された電子メールは、共有フォルダに保存すべき(1年以上保存すべき)電子メールに限られており、1年未満文書としての電子メールについては、そもそも探索の対象とせず、その存否 を確認しなかったものと認められる(前記3参照)。 そうすると、合同マスクチーム等職員は、 ルに限られており、1年未満文書としての電子メールについては、そもそも探索の対象とせず、その存否 を確認しなかったものと認められる(前記3参照)。 そうすると、合同マスクチーム等職員は、共有フォルダに保存すべき(1年以上保存すべき)電子メールは存在しない旨回答したにすぎず、1年未満文書としての電子メールの存否については回答していないから、探索の際の職員らの回答をもって、本件文書⑦及び⑨が存在しなか ったとはいえない。これに反する被告の主張や証人の証言はいずれも採 - 65 - 用することができない。 (ウ) 以上によれば、本件文書⑦及び⑨(調達業者との間の電子メール等)は、本件処分1、2、4及び5の時点において、各省が保有していたと認められるから、本件処分1及び2のうち本件文書⑦及び⑨を不開示とした部分並びに本件処分4及び5のうち本件文書⑦を不開示とした部分 は、いずれも違法である。 なお、本件文書⑦及び⑨に関しては、電子メールのバックアップファイルの行政文書該当性についても争われているが、前記(2)で説示したとおり、各省の電子メールのバックアップファイルは、情報公開法2条2項の電磁的記録に該当せず、行政文書には該当しないと解される。 (4) 本件文書⑧、⑩及び⑪(本件処分1及び2について本件文書⑧、⑩及び⑪、本件処分4及び5について本件文書⑩)本件文書⑧は、合同マスクチーム等職員であった職員甲と職員乙が調達業者との間で布製マスクに関して送受信した電子メールであり、本件文書⑩は、調達業者から各省に対する請求書であり(乙16、39)、本件文書⑪ は、調達業者が厚生労働省に提出した暴力団でないことの誓約書である(乙17)。これらの文書は、いずれも布製マスクの購入に関し、各省が調達業 各省に対する請求書であり(乙16、39)、本件文書⑪ は、調達業者が厚生労働省に提出した暴力団でないことの誓約書である(乙17)。これらの文書は、いずれも布製マスクの購入に関し、各省が調達業者との間で送付し又は受領した文書であるから、購入やり取り文書に該当し、本件処分1、2、4及び5の対象文書に含まれる。 したがって、本件処分1及び2のうち本件文書⑧、⑩及び⑪を不開示とし た部分並びに本件処分4及び5のうち本件文書⑩を不開示とした部分は、いずれも違法である。 なお、本件文書⑧は、合同マスクチーム等職員であった職員甲と職員乙が調達業者との間で「布製マスクに関して」送受信した電子メールであるから、この職員らの執務用パソコンから発見されたメールのうち、布製マスクでは ないマスク(サージカルマスクや医療機関向けマスク)の調達に関する電子 - 66 - メールについては、本件文書⑧には含まれないものと解される。 (5) 本件文書⑫(本件処分1、2、4及び5について)本件文書⑫は、検品検査基準であるところ(乙18、40)、証拠(乙37)によれば、本件文書⑫は、厚生労働省が布製マスクの検品業者に対して検品契約を締結する際に示した基準に係る文書であると認められる。 そうすると、本件文書⑫は、調達業者(購入やり取り文書の特定事項にいう「販売業者」)との間でやり取りした文書ではないから、購入やり取り文書に該当するとは認められない。したがって、本件処分1、2、4及び5のうち本件文書⑫を開示しなかった部分は、適法である。 6 甲事件(取消請求)の帰結について (1) 上記4(やり取り記録文書)によれば、厚生労働省に係る本件処分3のうち、本件文書②(変更理由書。ただし、本件値下げに関する変更理由書を除く。) 6 甲事件(取消請求)の帰結について (1) 上記4(やり取り記録文書)によれば、厚生労働省に係る本件処分3のうち、本件文書②(変更理由書。ただし、本件値下げに関する変更理由書を除く。)、本件文書③(布製マスク回収に関する経緯記載文書)、本件文書④(打合せ記録〔いわゆる応接録〕)、本件文書⑤(本件担保責任等免除特約に関する経緯記載文書)、本件文書⑥(本件値下げに関する経緯記録文書) 及び本件文書A(その他のやり取り記録文書)を不開示とした部分は違法であるから、これを取り消すべきであるが、その余は適法であるから、これを棄却すべきである。 また、文部科学省に係る本件処分6のうち、本件文書③(布製マスク回収に関する経緯記載文書)、本件文書⑤(本件担保責任等免除特約に関する経 緯記載文書)及び本件文書A(その他のやり取り記録文書)を不開示とした部分は違法であるから、これを取り消すべきであるが、その余は適法であるから、これを棄却すべきである。 (2) 上記5(購入やり取り文書)によれば、厚生労働省に係る本件処分1及び2のうち、本件文書⑦ないし⑪を不開示とした部分は違法であるから、これ を取り消すべきであるが、その余は適法であるから、これを棄却すべきであ - 67 - る。 また、文部科学省に係る本件処分5(なお、本件処分4は取消請求の対象に含まれていない。)のうち、本件文書⑦及び⑩を不開示とした部分は違法であるから、これを取り消すべきであるが、その余は適法であるから、これを棄却すべきである。 7 乙事件(国家賠償請求)について(1) 国家賠償法上の違法性の判断枠組み国家賠償法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背し 乙事件(国家賠償請求)について(1) 国家賠償法上の違法性の判断枠組み国家賠償法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定す るものであるから、公務員による公権力の行使に同項にいう違法があるというためには、公務員が、当該行為によって損害を被ったと主張する個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違反したと認められることが必要である(最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁等参照)。そして、上記の職務上の法的義務に違反した場合とは、当該 公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような事情がある場合をいい(最高裁平成5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁参照)、このような事情が存することの主張立証責任は、損害賠償を求める原告が負うものと解すべきである。 (2) 本件各文書を不開示としたことが国家賠償法上違法であるか否か(違法行為①)について以下、本件各処分のうち違法と判断した部分につき、違法行為①により国家賠償法上の違法性が認められるか否かについて検討する(なお、本件各処分のうち適法とした部分については、違法行為①により国家賠償法上違法で あるとは認められない。)。 - 68 - ア厚生労働大臣が本件文書②(本件値下げに関するものを除く。)を不開示としたこと(本件処分3について)厚生労働大臣は、やり取り記録文書について、各省が調達業者との間でやり取りした内容そのものが記載された文書であると解釈し、本件文書②(変更理由書)はこれに含まれないとして、 件処分3について)厚生労働大臣は、やり取り記録文書について、各省が調達業者との間でやり取りした内容そのものが記載された文書であると解釈し、本件文書②(変更理由書)はこれに含まれないとして、本件処分3においてこれらを 不開示にしている(上記4(1)及び(3)参照)。 ところで、本件開示請求3に係る開示請求書に記載された、やり取り記録文書に係る特定事項は、「新型コロナウイルス感染拡大への対策の一環として各世帯、妊婦、介護施設等に配布される布マスクの契約、発注及び回収等について御庁が業者との間でやり取りした内容を記録した文書(応 接録を含む)。」であるところ、「やり取りした内容」の意味については、その前後の内容(応接録を含むこと等)を踏まえても、必ずしも一義的に明確であるとはいえず、調達業者との間で「やり取りした内容そのもの」という被告の解釈は、当裁判所の解釈とは異なるが、当該特定事項の読み方として明らかに誤りとはいえない。 したがって、厚生労働大臣が本件文書②(本件値下げに関するものを除く。)を不開示としたこと(本件処分3)は、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然とされたものとはいえず、国家賠償法上違法であるとは認められない。 イ厚生労働大臣が本件文書③ないし⑥及びAを不開示としたこと(本件処 分3について)並びに文部科学大臣が本件文書③、⑤及びAを不開示としたこと(本件処分6について)本件文書③ないし⑥及びAは、いずれもやり取り記録文書であるところ、前記3で認定したとおり、厚生労働省(合同マスクチーム)においては、1年未満文書として扱われていた文書について、開示請求の対象となる行 政文書ではないか、あるいは、対象とする必要がないものとして、一律に - 69 - 働省(合同マスクチーム)においては、1年未満文書として扱われていた文書について、開示請求の対象となる行 政文書ではないか、あるいは、対象とする必要がないものとして、一律に - 69 - 探索の対象としていなかったものと認められる。また、文部科学省も、そのような対応に従って、1年未満文書として扱われていた文書を、探索や開示の対象としなかったものと認められる。その結果、上記4(4)ないし(8)のとおり、本件文書③ないし⑥及びAに該当する職員間の電子メールや報告書等が、実際には職員の執務用パソコン等に存在していたのに、これが 探索されることなく、存在しないものとして一律に不開示とされたものと認められる。 しかし、前記3(2)で指摘したとおり、1年未満文書は、飽くまでも保存期間が1年未満と設定されているにすぎず、情報公開法2条2項の「行政文書」に該当するのであって、開示請求の対象から一律に除外されるわけ ではない。したがって、1年未満文書を一律に探索や開示の対象から除外することは、職務上通常尽くすべき注意義務に違反するものと評価せざるを得ない。 そうすると、厚生労働大臣が本件文書③ないし⑥及びAを不開示としたこと(本件処分3について)並びに文部科学大臣が本件文書③、⑤及びA を不開示としたこと(本件処分6について)は、職務上通常尽くすべき注意義務に違反して必要な探索を行わなかったことによるものであるから、国家賠償法上違法である。 なお、被告は、本件文書③(布マスク回収に関する経緯が記載された文書)について、ここでいう「回収」とは各省が主体となる回収行為(一度 配布を行った布製マスクを手元に取り戻す行為)を意味するとして、各大臣が本件処分3及び6においてこれを不開示としたことは適法であると いて、ここでいう「回収」とは各省が主体となる回収行為(一度 配布を行った布製マスクを手元に取り戻す行為)を意味するとして、各大臣が本件処分3及び6においてこれを不開示としたことは適法であると主張している(上記4(4)ア参照)。しかし、本件文書③に係る特定事項の記載や、本件開示請求3及び6当時の報道の状況等からすると、「回収」を上記の意味に解釈するのは困難というべきであり、本件文書③がやり取り 記録文書に該当することは、容易に認識可能であったといえる。したがっ - 70 - て、本件文書③を不開示としたことは、「回収」の解釈を誤ったことに原因があるとしても、やはり国家賠償法上違法である。 ウ厚生労働大臣が本件文書⑦ないし⑨を不開示としたこと(本件処分1及び2について)並びに文部科学大臣が本件文書⑦を不開示としたこと(本件処分4及び5について) 本件文書⑦ないし⑨は、購入やり取り文書のうち、調達業者からの電子メール及びその添付文書であるところ、前記3のとおり、各省においては、1年未満文書として扱われていた文書については、開示請求の対象となる行政文書ではないか、あるいは、対象とする必要がないものとして、一律に探索の対象としていなかったものと認められる。その結果、1年未満文 書として扱われていた本件文書⑦ないし⑨に該当する電子メールやその添付文書が、実際には職員の執務用パソコン等に存在していたのに、これが探索されることなく、存在しないものとして一律に不開示とされたものと認められる(他方、共有フォルダに保存されているものなど、1年以上保存すべき電子メール等については、探索されなかったとは認められない。 上記3参照)。 しかし、前記3(2)で指摘したとおり、1年未満文書は、飽くまでも保存期間 ているものなど、1年以上保存すべき電子メール等については、探索されなかったとは認められない。 上記3参照)。 しかし、前記3(2)で指摘したとおり、1年未満文書は、飽くまでも保存期間が1年未満と設定されているにすぎず、情報公開法2条2項の「行政文書」に該当するのであって、開示請求の対象から一律に除外されるわけではない。したがって、1年未満文書を一律に探索や開示の対象から除外 することは、職務上通常尽くすべき注意義務に違反するものと評価せざるを得ない。 そうすると、厚生労働大臣が本件文書⑦ないし⑨を不開示としたこと(本件処分1及び2について)並びに文部科学大臣が本件文書⑦を不開示としたこと(本件処分4及び5について)は、職務上通常尽くすべき注意義務 に違反して必要な探索を行わず、その結果として不開示としたものである - 71 - から、国家賠償法上違法である。 原告のその他の注意義務違反の主張についてみると、①他の部署に異動した職員を探索の対象としなかったことに関しては、そのような職員が1年以上保存すべき文書を単独で保有し続けている蓋然性は高くないと考えられるが、1年未満文書としての電子メール等を単独で保有し続けている 蓋然性は十分にあったと考えられるから、他の部署に異動した職員を探索の対象としなかったことについては、その限度で注意義務違反があったと認めるのが相当である。また、②開示請求時に存在した対象文書たる電子メール等を保存せず削除したことに関しては、1年未満文書を一律に探索や開示の対象から除外した結果、削除してはいけない文書として認識され ず、個々の職員の判断で削除されていったものと推認され、そのような探索等からの除外につき注意義務違反があったと認められる。 また、③原告は 外した結果、削除してはいけない文書として認識され ず、個々の職員の判断で削除されていったものと推認され、そのような探索等からの除外につき注意義務違反があったと認められる。 また、③原告は、違法行為①に関し、電子メールのバックアップファイルを復元しなかったことや、復元するかどうか原告に確認しなかったことなどを注意義務違反として主張するが、前記5(2)で説示したとおり、各省 の電子メールのバックアップファイルは情報公開法2条2項の「電磁的記録」に該当せず、行政文書には該当しないから、この点に関する原告の主張はいずれも採用することができない。 エ厚生労働大臣が本件文書⑩及び⑪を不開示としたこと(本件処分1及び2について)並びに文部科学大臣が本件文書⑩を不開示としたこと(本件 処分4及び5について)本件文書⑩は、調達業者から各省に対する請求書であり、本件文書⑪は、調達業者が厚生労働省に提出した暴力団でないことの誓約書である。これらの文書は、本件再探索の後に各省が保有を認めたものであり、本件処分1、2、4及び5の時点よりも前から、各省において保管されていたと認 められる(前提事実(6)。ただし、本件処分1、2、4及び5の時点で、紙 - 72 - の文書として保管されていたのか、電子メールの添付文書など電磁的記録であったのかは定かでない。)。 被告は、購入やり取り文書の特定事項について、「各省の組織としての意思表示や意思決定が記載された文書のうち、布製マスクの購入契約締結から納品に至るまでの実質的な過程が分かるもの」であると解釈し、本件 文書⑩及び⑪はこれに含まれなかったため、本件処分1、2、4及び5においてこれらを不開示にしたと主張し、aもこれに沿う証言をする(証人a13、43、44頁) が分かるもの」であると解釈し、本件 文書⑩及び⑪はこれに含まれなかったため、本件処分1、2、4及び5においてこれらを不開示にしたと主張し、aもこれに沿う証言をする(証人a13、43、44頁)。 しかし、被告の上記解釈は事後的に考え出されたものと考えられるが(上記5(1)参照)、そのことをひとまず措くとしても、被告の上記解釈は、購 入やり取り文書の特定事項の文言から導き出すことが困難なものであり、各省において、そのような解釈で合っているか原告に確認することもしていないし、上記特定事項の文言からは、本件文書⑩及び⑪が購入やり取り文書に該当することは容易に認識可能であったというべきである。 そうすると、各大臣は、本件文書⑩及び⑪を不開示とするに当たり、職 務上通常尽くすべき注意義務を尽くしていなかったものといわざるを得ない。 したがって、厚生労働大臣が本件文書⑩及び⑪を不開示としたこと(本件処分1及び2)並びに文部科学大臣が本件文書⑩を不開示としたこと(本件処分4及び5)は、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫 然とされたものというべきであって、国家賠償法上違法である。 (3) 本件各処分の理由の記載が国家賠償法上違法であるか否か(違法行為②)についてア合同マスクチームにおいてやり取り記録文書及び購入やり取り文書を事務処理上作成又は取得した事実があるのに、本件処分1ないし3の理由に これらを事務処理上作成又は取得した事実がないと記載したこと(前提事 - 73 - 実(3)イ(エ))は、国家賠償法上違法であると認められる(被告も、この点は積極的に争っていない。)。 イ原告は、本件各処分において、電子メールのバックアップファイルを対象文書としなかった理由の記載がなかったことは 、国家賠償法上違法であると認められる(被告も、この点は積極的に争っていない。)。 イ原告は、本件各処分において、電子メールのバックアップファイルを対象文書としなかった理由の記載がなかったことは国家賠償法上違法である旨主張する。 しかし、各省の電子メールのバックアップファイルが行政文書に該当しないことは前述のとおりである。また、本件各開示請求の内容は、文書目録記載のとおりであり、電子メールのバックアップファイルについては何ら記載されておらず、これを対象文書とする意図を読み取ることは困難であるから、本件各処分において、各大臣に、上記バックアップファイルを 対象文書としなかった理由を記載すべき職務上の注意義務があったとは認められない。したがって、その不記載が国家賠償法上違法であるとは認められない。 (4) 本件発見文書等につき開示決定の打直しをしなかったことが国家賠償法上違法であるか否か(違法行為③)について 原告は、本件発見文書等(本件文書⑧、⑩及び⑪)は、本件開示請求1、2、4及び5の対象文書であるから、各大臣が本件発見文書等について開示決定の打直し(不開示決定を職権で取り消して開示決定をすること)をしなかったことは、国家賠償法上違法である旨主張する(なお、本件文書⑫についても同様の主張がされているが、本件文書⑫は購入やり取り文書に該当し ない。)。 そこで検討するに、前記5(1)で説示したとおり、被告は、本件訴訟の審理の序盤では、調達業者との間でやり取りした電子メールは、形式的な確認などの事務的な連絡等であっても、購入やり取り文書に該当するという理解を前提としていたが、本件発見文書等が発見された後、「各省の組織としての 意思表示や意思決定が記載された文書のうち、布製マスクの購入契 的な連絡等であっても、購入やり取り文書に該当するという理解を前提としていたが、本件発見文書等が発見された後、「各省の組織としての 意思表示や意思決定が記載された文書のうち、布製マスクの購入契約締結か - 74 - ら納品に至るまでの実質的な過程が分かるもの」という、購入やり取り文書から本件発見文書等が全て除外されるような解釈を新たに主張し、その上で、本件文書⑧、⑩及び⑪は対象文書ではないとして、開示決定の打直しをしなかったものである。しかるに、被告が主張する購入やり取り文書の解釈は、その特定事項の文言から合理的に導き得る範囲を超えているといわざる を得ず、上記の経緯も踏まえれば、被告は、本件発見文書等の不開示の判断を維持するために、あえて限定的な解釈を事後的に考え出して主張し、開示決定の打直しを回避したものと推認される。 上記のような経緯等からすれば、厚生労働大臣が本件文書⑧、⑩及び⑪について開示決定の打直しをしなかったこと、及び文部科学大臣が本件文書⑩ について開示決定の打直しをしなかったことは、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなくされたものとして、国家賠償法上違法と評価し得るというべきである。 これに対し、被告は、本件発見文書等を意図的に隠蔽したものではないし、終局的な司法判断を仰ぐため、本件文書⑩及び⑪については書証として提出 し、本件文書⑧についてはヴォーンインデックスをもって可能な限り具体的にその内容を明らかにしているから、これらについて開示決定の打直しをしなかったことは、職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然とされたものではなく、国家賠償法上違法ではない旨主張する。しかし、これらの主張は、慰謝料の額に影響することがあるにとどまり、国家賠償法上の違法性 の判断を すべき注意義務を尽くすことなく漫然とされたものではなく、国家賠償法上違法ではない旨主張する。しかし、これらの主張は、慰謝料の額に影響することがあるにとどまり、国家賠償法上の違法性 の判断を左右するものではない。被告の上記主張は採用することができない。 (5) 本件訴訟提起時に電子メールのバックアップファイルの保全等をしなかったこと等が国家賠償法上違法であるか否か(違法行為④)について原告は、被告が本件訴訟提起時に電子メールのバックアップファイルの復 元や保全をせず、バックアップファイルの存在について原告に明らかにせ - 75 - ず、原告がその保全を求める機会すら奪ったことは、国家賠償法上違法である旨主張する。しかし、各省の電子メールのバックアップファイルが情報公開法2条2項の電磁的記録に該当せず、行政文書に該当しないことは前記5(2)のとおりであるから、原告の上記主張は採用することができない。 (6) 損害の有無及びその額について ア行政文書の開示を受ける権利ないし法的利益を侵害されたことによる損害について(ア) 上記(2)イのとおり、厚生労働大臣が本件文書③ないし⑥及びAを不開示としたこと(本件処分3について)並びに文部科学大臣が本件文書③、⑤及びAを不開示としたこと(本件処分6について)は、国家賠償 法上違法であり、また、各大臣に過失も認められる。また、上記(2)ウ・エのとおり、厚生労働大臣が本件文書⑦ないし⑪を不開示としたこと(本件処分1及び2について)並びに文部科学大臣が本件文書⑦及び⑩を不開示としたこと(本件処分4及び5について)は、国家賠償法上違法であり、また、各大臣に過失も認められる。さらに、上記(4)のとおり、厚 生労働大臣が本件文書⑧、⑩及び⑪について開示決定 ⑩を不開示としたこと(本件処分4及び5について)は、国家賠償法上違法であり、また、各大臣に過失も認められる。さらに、上記(4)のとおり、厚 生労働大臣が本件文書⑧、⑩及び⑪について開示決定の打直しをしなかったこと並びに文部科学大臣が本件文書⑩について開示決定の打直しをしなかったことは、いずれも国家賠償法上違法であり、また、各大臣に過失も認められる。 そして、これらの違法行為による損害は、要するに、行政文書の開示 を受ける権利ないし法的利益を侵害されたことによる損害であり、被侵害利益の性質が共通するから、損害の有無及び額については、まとめて検討するのが相当である。 (イ) そこで検討するに、まず、本件各開示請求においては、原告に対する確認等がされることなく、1年未満文書とされる電子メールなど多くの 文書が探索の対象とされず、数多くの開示されるべき文書が違法に不開 - 76 - 示とされたこと、その多くは1 年未満文書であり、現時点においては既に廃棄又は削除され、失われている可能性が高いこと、対象文書が一部発見されたにもかかわらず、特定事項の文言からは合理的に導き得ない解釈により開示決定の打直しに至らなかったこと、本件処分1ないし3の理由付記に誤りがあったこと(違法行為②。後記イ参照)などは、慰 謝料を増額すべき事情として考慮する必要がある。 他方で、本件各開示請求の内容は文書目録記載のとおりであるが、その対象文書の範囲は広範囲に及び、合同マスクチーム等職員が日々大量に送受信する電子メールなど1年未満文書を含めて正しく探索すれば、探索の対象となる文書は多数かつ大量になるとみられ(なお、本件送付 嘱託により調達業者の一部から送付された本件文書⑨だけでも相当な量である。甲37~43)、 未満文書を含めて正しく探索すれば、探索の対象となる文書は多数かつ大量になるとみられ(なお、本件送付 嘱託により調達業者の一部から送付された本件文書⑨だけでも相当な量である。甲37~43)、その開示に至るまでの負担や労力は相当なものと考えられるところ、当時、合同マスクチームにおいては、過労死ラインを超えるほどの過重な勤務状況にあり、文部科学省においても相当繁忙な状況であったから(認定事実(5)イ、エ)、1年未満文書としての 電子メール等を探索の対象としなかったことは、当時の状況に照らしてやむを得ない面もあったと考えられる。また、被告は、本件訴訟において、開示されるべき文書の一部(本件文書②、⑩及び⑪)を書証として提出しており、その内容は既に明らかになっている。 以上のほか、本件に現れた一切の事情を総合考慮すれば、各大臣が対 象文書を違法に開示せず(違法行為①)、開示決定の打直しもしなかった(違法行為③)ことによって原告が被った精神的損害に対する慰謝料は、10万円とするのが相当である。また、上記違法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、1万円とするのが相当である。 イ違法な理由付記による損害について 上記(3)アのとおり、合同マスクチームにおいてやり取り記録文書及び購 - 77 - 入やり取り文書を事務処理上作成又は取得した事実があるのに、本件処分1ないし3の理由にこれらを事務処理上作成又は取得した事実がないと記載したこと(違法行為②)は、国家賠償法上違法である。 もっとも、この理由付記の違法によって、原告が不服申立てや訴訟提起を妨げられるといった格別の不利益が生じたとは認められず、また、被告 が審理の序盤に明確に誤りを認めたことも考慮すると、違法行為②のみをもって直ちに原告に金 によって、原告が不服申立てや訴訟提起を妨げられるといった格別の不利益が生じたとは認められず、また、被告 が審理の序盤に明確に誤りを認めたことも考慮すると、違法行為②のみをもって直ちに原告に金銭をもって慰謝すべき損害が生じたとも認め難い。 そこで、この点については、上記アの慰謝料の増額事由として考慮するにとどめることとした。 8 結論 以上によれば、原告の甲事件(取消訴訟)に係る請求については、主文第1項ないし第5項の限度でいずれも理由があるからこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却すべきである。また、原告の乙事件(国家賠償請求訴訟)に係る請求については、主文第6項の限度でいずれも理由があるからこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却す べきである。 よって、訴訟費用の負担につき民訴法64条本文、61条を適用し(なお、本件再探索後の審理の経過等を一部考慮した。)、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官徳地淳 - 78 - 裁判官三木裕之 裁判官中村雅人
▼ クリックして全文を表示