令和5(わ)98 住居侵入、強盗致傷、強盗未遂

裁判年月日・裁判所
令和5年11月13日 東京地方裁判所 立川支部
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判決文本文6,429 文字)

令和5年11月13日宣告東京地方裁判所立川支部刑事部判決令和5年第98号、同第322号、同第323号各住居侵入、強盗致傷、強盗未遂被告事件 主文 被告人両名をそれぞれ懲役9年に処する。 被告人両名に対し、未決勾留日数中各230日を、それぞれその刑に算入する。 訴訟費用のうち、証人Cに関する分は被告人Bの負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人両名は、金品を強取する目的で、第1(令和5年2月8日付け起訴状記載の公訴事実関係[令和5年3月22日付け請求書に基づく訴因変更後のもの])D、E、F及び氏名不詳者らと共謀の上、令和4年10月20日午後4時頃から同日午後4時7分頃までの間、東京都稲城市(住所省略)G方に、宅配業者を装ってH(当時36歳)に玄関ドアを開けさせ、同ドアから侵入し、その頃、同所において、前記Hに対し、はさみを振りかざし、同人を床に倒して押さえ付けるなどの暴行を加え、さらに、I(当時17歳)及びJ(当時11歳)に対し、両名の手首を粘着テープで緊縛するなどの暴行を加えて、前記Hら3名の反抗を抑圧した上、別紙被害品一覧表(添付省略)記載のとおり、前記G所有又は管理の現金約3541万2000円、ベトナム社会主義共和国約2000万ドン、アメリカ合衆国約1000ドル、商品券約50枚(額面合計約5万円)及び金塊1個等39点在中の金庫2個(時価合計約864万1780円相当)を奪い、その際、前記暴行により、前記Hに加療約10日間を要する左下腿打撲傷等の傷害を負 わせ(以下、これを「稲城事件」という。)、第2(令和4年11月28日付け起訴状記載の公訴事実)K、D、L及び氏名不詳者らと共謀の上、令和4年11月7日午前2時1分頃から同日午前2時24分頃までの (以下、これを「稲城事件」という。)、第2(令和4年11月28日付け起訴状記載の公訴事実)K、D、L及び氏名不詳者らと共謀の上、令和4年11月7日午前2時1分頃から同日午前2時24分頃までの間、Mが看守する山口県岩国市(住所省略)同人方に無施錠の1階掃き出し窓から侵入し、その頃、同人方1階において、N(当時49歳)に対し、持っていたカッターナイフを示し、「黙れ。」などと言って脅迫した上、その両腕を手でつかむ暴行を加え、引き続き、前記M(当時61歳)に対し、前記カッターナイフを示しながら、「殺すぞ。」と言って脅迫した上、その両腕をつかんで壁に押し付けるなどの暴行を加え、さらに、同人方2階において、O(当時25歳)に対し、持っていたカッターナイフを示しながら、「静かにしろ。」などと言って脅迫した上、その両手首を結束バンドで緊縛するなどの暴行を加え、前記Nら3名の反抗を抑圧して金品を強取しようとしたが、同人らが抵抗したため、その目的を遂げなかった(以下、これを「岩国事件」という。)。 (判示第1〔稲城事件〕の事実認定の補足説明) 1 争点稲城事件において、被告人両名が被害者方から別紙被害品一覧表の番号1及び24の金庫を奪ったこと、両金庫内に同番号6、8、9、11ないし13、17、20、22、25、32及び33の各被害品が在中していたことは、証拠により容易に認められ、両被告人の弁護人も争っていない。 本件の争点は、別紙被害品一覧表の番号2ないし5、7、10、14ないし16、18、19、21、23及び26ないし31の金品在中の有無及びその被害額である。 2 争点に対する判断Gの証言の信用性 稲城事件の被害金品を所有又は管理するGは、当公判廷において、大きさや色の異なる2つの金庫に、別紙被害品一覧表に記載さ の被害額である。 2 争点に対する判断Gの証言の信用性 稲城事件の被害金品を所有又は管理するGは、当公判廷において、大きさや色の異なる2つの金庫に、別紙被害品一覧表に記載された現金等を保管していたと証言しているところ、Gの証言する被害金品の保管状況や保管理由等はいずれも具体的なエピソードを伴うものであって、記憶の混乱や思い違いがあったとは考えにくい上、個々の物品について明確に区別して証言していることからすると、金庫の在中物については定期的に確認するなど意識的に管理していたことも認められる。また、金庫の大きさや構造からしても、Gが述べるような保管態様で、現金や物品が保管されたとみて何ら不合理なところはなく、被害金品の申告が変遷している様子がないことや、実際に多くの被害品について他の証拠によって裏付けられていることからすれば、Gの証言は全体として十分信用することができる。 そこで、以下において、Gの証言を前提として各被害金品について具体的に検討する。 現金について両被告人の弁護人は、別紙被害品一覧表記載の現金(番号2ないし5、14、18、21、23、28。以下、単に「被害現金」という。)に関するGの証言は、不合理であいまいであり、被害現金の存在や金額については証明が不十分である旨主張する。 そこでまず、番号2の現金約3300万円についてみると、Gは、稲城事件の約8か月前にそれまで使っていた金庫が壊れ、その中身を番号1の金庫に移し替えた際、現金を数え直し、その後金庫の大きさに合わせて1400万円のかたまり2列とその半分よりも少し低い高さのかたまり1列になるように3列に並べて金庫内の左端にいれ、定期的に確認していた旨明確に証言している。Gの述べる3列目の現金の使用方法などからすると、3列目の現 まり2列とその半分よりも少し低い高さのかたまり1列になるように3列に並べて金庫内の左端にいれ、定期的に確認していた旨明確に証言している。Gの述べる3列目の現金の使用方法などからすると、3列目の現金について正確な金額を把握していたとまではいえないものの、日々目視によってその高さを確認し、少なくとも約3300万円があると 認識していたとするGの証言は信用性が高い。 次に、Gは、番号14の現金約200万2000円について、友人から1万円札200枚が入る財布があると聞いて番号13の財布を購入し、実際それに200万円を入れてみたら入ったのでそのままにしておき、珍しい2000円札も一緒に入れておいた旨証言し、番号18の現金約20万円については、普段使う番号17の財布にはいつもその程度の現金を入れておいた旨、又、番号21の現金約5万円については最後に見たときに番号20の財布には大体5万円入っていることを確認し、そのときから使用していない旨証言していて、いずれも金額について具体的な根拠を述べている。 また、Gは、番号4の約2000万ドンはベトナムに実習生の面談に行ったときに使用した残りであり、番号5の約1000ドルはアメリカ旅行に行ったときに使用した残りである旨述べていて、いずれも外国紙幣を保管しておく理由としては納得できるものであるし、番号28のディズニーの缶に入った約10万円の硬貨については、Gが実際に子供たちと数えたことがある旨証言している上、小さい金庫にジャラジャラと音のなる缶が入っていたと述べる被告人Aの供述内容とも一致している。 さらに、稲城事件では、犯行後に複数名の実行犯役にそれぞれ百数十万円ずつの報酬がその場で分配されていることや、被告人Aには強取した被害金品は2人の指示役である「P」と「Q」及び情報提供者が3分割で取 さらに、稲城事件では、犯行後に複数名の実行犯役にそれぞれ百数十万円ずつの報酬がその場で分配されていることや、被告人Aには強取した被害金品は2人の指示役である「P」と「Q」及び情報提供者が3分割で取得することが事前に示されており、実際に被告人Bの属する「Q」のグループに現金約1500万円が渡されていることからすると、被害現金は少なくとも3000万円以上の相当高額であった事実が推測され、これらは被害現金に関するGの証言と概ね整合し、これを裏付ける事情といえる。 以上によれば、被害現金の存在及びその額については、いずれも証拠によって認められ、弁護人の主張には理由がない。 その他の被害品(別紙被害品一覧表の番号7、10、15、16、19、26、27、29ないし31)についてその他の被害品のうち、番号7の商品券については、被害品の処分役である関係者が稲城事件の翌日に同種類の商品券20枚を金券ショップで売却し、残りの商品券は近くの別の買取業者に持って行った旨供述していることと整合するし、番号10のプラチナ製ネックレスについては、稲城事件の被害品である財布(番号13、17及び20)などを関係者が売却した際にプラチナネックレス1本も併せて売却されたことを示す買取明細書があり、その際の買取店舗の防犯カメラ映像にGの証言するネックレス保管袋と似た色や形状の袋が映っていることによって裏付けられている。 そして、番号15及び19のクレジットカード7枚、番号26の預金通帳10通、番号27のキャッシュカード5枚、番号29の印鑑カード、番号31のゴルフクラブの会員証は、いずれもその存在を示す発行元からの資料等も併せ、被害品であると認めることができる。 また、番号16のロレックスの会員証及び番号30の土地権利証は、Gの証言する金庫の使用状 ゴルフクラブの会員証は、いずれもその存在を示す発行元からの資料等も併せ、被害品であると認めることができる。 また、番号16のロレックスの会員証及び番号30の土地権利証は、Gの証言する金庫の使用状況からして、それらが金庫内に保管されていることが自然である上、ロレックスの会員証については、番号9の腕時計を購入した際のものであるというのであるから、その存在についても疑いは生じず、いずれも被害品であると認めることができる。 3 結論したがって、別紙被害品一覧表の番号2ないし5、7、10、14ないし16、18、19、21、23及び26ないし31の金品在中の有無及びその被害額については、判示のとおりに認定することができ、合理的な疑いを容れない。 (量刑の理由) 1 本件は、金銭に困窮した被告人両名が、それぞれ犯罪組織の指示役から強盗案件として紹介を受け、同指示役により集められた他の実行犯役の共犯者らとともに、住居に侵入して強盗致傷の犯行(判示第1)を実行し、その後わずか3週間足らずで、再び住居に侵入して強盗の犯行に及んだものの、未遂に終わった(判示第2)という事案である。いずれの犯行も、被害者宅に多額の金品があるとの情報提供を受けた指示役が、実行犯役を募り、凶器や逃走車両等を周到に準備して行われたもので、多数の者が関与する組織的かつ計画性の高い悪質な犯行である。 各犯行の態様についてみると、稲城事件は、日中、宅配業者を装って訪問し、はさみを振りかざして男性5名で民家に押し入り、抵抗する被害者らを床に押し倒し、手首を粘着テープで縛るなどの暴行を加えたものであり、岩国事件は、深夜、無施錠の窓から男性4名で侵入し、被害者らにカッターナイフを示して、抵抗する被害者らを押さえつけ、結束バンドで縛る暴行を加えたというものである。 縛るなどの暴行を加えたものであり、岩国事件は、深夜、無施錠の窓から男性4名で侵入し、被害者らにカッターナイフを示して、抵抗する被害者らを押さえつけ、結束バンドで縛る暴行を加えたというものである。両事件において凶器として用いられたはさみやカッターナイフは、それ自体の殺傷能力は必ずしも高いとはいえず、抵抗する被害者らに対し、殴る蹴るといった強度の暴行は行われていないことを考慮しても、各犯行態様は粗暴といわざるを得ない。 一連の犯行における被告人らの役割は、現場での実行犯のまとめ役であり、侵入方法や犯行内容に関する指示役からの指示に従い、必要な用具を準備し、指示役からの指示を他の実行犯に伝えただけではなく、下見をして犯行に及ぶなど、主体的に犯行に関わっている。被告人らは、犯行の中止や延期を指示役に掛け合い、金品の持ち出し方法を変更するなど、犯行現場の状況に応じ、自らの判断を加えながら積極的に行動している上、稲城事件の犯行後には、それぞれ他の実行役よりやや高額な報酬を得ている。このような被告人両名の立場や役割からすると、上位者である指示役とは異なるとはいえ、実行役として果たした役割は相応に重要であるといえる。 また、稲城事件の被害者の傷害結果は、幸いにも加療約10日間にとどまっているが、被害額の合計は現金と金品を合わせて約4500万円近くにも及んでおり、財産的損害は相当多額であるところ、被害弁償は一切なされていない。突如として自宅に侵入され、刃物を示されて暴行を受けるなどした両事件の被害者らの精神的苦痛は大きく、処罰感情は依然として厳しい。 2 このような犯情に照らすと、本件は、凶器等が用いられた共犯類型の侵入強盗致傷事件で強盗の点が既遂であり、処断罪と同一又は同種の罪の件数が2~4件の同種類型のうち、中程度に位置付けられる事 い。 2 このような犯情に照らすと、本件は、凶器等が用いられた共犯類型の侵入強盗致傷事件で強盗の点が既遂であり、処断罪と同一又は同種の罪の件数が2~4件の同種類型のうち、中程度に位置付けられる事案というべきである。 被告人両名が犯行に至るまでに担った役割や各犯行現場での暴行内容に関し若干の違いはみられるものの、指示役からの指示内容や現場の状況に応じて生じたものにすぎないことからすれば、責任は等しく重い。 3 犯情等に関するこれらの判断により定められた刑責の枠内において、さらに被告人両名の量刑について検討する。 被告人両名は、基本的な事実関係については認め、両事件の被害者らに対する謝罪の言葉を述べている。 被告人Aは、岩国事件で逮捕された後、当時余罪であった稲城事件についても捜査機関の取調べに応じ、組織性や計画性に関する中心部分について事案の真相解明に協力している。公判廷でも、現時点の心情や反省の言葉を素直に述べるなど、罪と向き合おうとする姿勢が見て取れる。被告人Aが、今回犯罪を行うこととなった一因である友人関係を改善することができるかについては不安が残るものの、母が出廷し、被告人Aが社会復帰した際には同居して更生の助けをする旨証言したことや、被告人Aが今回の裁判について真剣に受け止めている様子がみられることを評価すれば、更生に期待することができる。 また、被告人Bについては、遠方に住む父が出廷し、服役中も手紙のやり取りを続け、社会復帰後も相談にのることなどを証言しており、立ち直るた めに支えとなる周囲の者が存在する。被告人Bにおいて、これまで多くの人からの助けを得ていながら、今回の犯行に及んだ事実を振り返り、犯罪行為に至った原因について内省を深める必要はあるが、当公判廷において事実を認め、供述するに至ったことは、更生に いて、これまで多くの人からの助けを得ていながら、今回の犯行に及んだ事実を振り返り、犯罪行為に至った原因について内省を深める必要はあるが、当公判廷において事実を認め、供述するに至ったことは、更生に向けた心境の現れといえるし、受刑中に各種資格の取得に取り組みたいと述べるなど、更生に向けた前向きな姿勢を示しているという事情もある。 以上の諸情状に加え、被告人両名に前科がないことを考慮の上、被告人両名に対しては、それぞれ主文の刑が相当であると判断した。 (求刑被告人両名につきそれぞれ懲役12年)令和5年11月13日東京地方裁判所立川支部刑事第3部 裁判長裁判官竹下雄 裁判官朝倉静香 裁判官中野彩華

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