令和6(わ)320 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害、加重収賄、贈賄

裁判年月日・裁判所
令和6年9月20日 広島地方裁判所
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判決文本文4,190 文字)

主文 被告人Aを懲役2年6か月に、被告人Bを懲役1年6か月に処する。 この裁判が確定した日から、被告人Aに対し4年間、被告人Bに対し3年間、それぞれその刑の執行を猶予する。 被告人Aから金6万円を追徴する。 理由 (罪となるべき事実)被告人Aは、令和4年4月1日から尾道市Jとして、同市が発注する一般道路工事の設計及び同工事の予定価格の算出の基礎となる工事価格の積算等の職務に従事していたもの、被告人Bは、平成20年11月20日から令和6年2月29日までの間、土木、建築、浚渫及び水道施設工事の請負等を目的とする株式会社C代表取締役として、その業務全般を統括していたものであるが第1 被告人Aは、同市が令和5年3月16日に執行した「K道路改良工事」の条件付一般競争入札に関し、前記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに、その職務に反し、被告人Bと共謀の上、同年2月下旬頃から同年3月上旬頃までの間に、同市D丁目E番F号所在の病院駐車場において、被告人Bに対し、入札に関する秘密事項であり、同入札の最低制限価格を算定する基準となる同工事の直接工事費、共通仮設費、現場管理費及び一般管理費等の各内訳金額が記載された金額入り設計書を交付し、前記各内訳金額に基づき同入札の最低制限価格を推認させ、よって、Cに、同月14日、電子入札システムにより、最低制限価格に近似した金額である997万6000円(税抜き)で入札させ、同月16日、同工事を落札させ、もって入札等に関する秘密を教示するとともに、偽計を用いて、公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした。 第2 被告人Bは、被告人Aと共謀の上、前記第1記載の条件付一般競争入札に関し、同年2月下旬頃から同 ともに、偽計を用いて、公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした。 第2 被告人Bは、被告人Aと共謀の上、前記第1記載の条件付一般競争入札に関し、同年2月下旬頃から同年3月上旬頃までの間に、前記第1記載の病院駐車場において、被告人Aから、前記第1記載の金額入り設計書の交付を受け、前記各内訳金額に基づき同入札の最低制限価格を推認し、よって、Cに、同月14日、電子入札システムにより、最低制限価格に近似した価格である997万6000円(税抜き)で入札させ、同月16日、同工事を落札させ、もって偽計を用いて、公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした。 第3 被告人Aは、前記第1記載の条件付一般競争入札に関し、同年2月下旬頃から同年3月上旬頃までの間に、同市又はその周辺において、被告人Bから、入札に関する秘密事項であり、同入札の最低制限価格を算定する基準となる金額等の教示を受けたい旨の請託を受け、前記第1記載の職務上不正な行為をしたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら、同年3月下旬頃、同市久保1丁目15番1号尾道市役所において、同人から、現金3万円の供与を受け、もって職務上不正な行為をしたことに関し、賄賂を収受した。 第4 被告人Bは、同月下旬頃、前記尾道市役所において、被告人Aに対し、前記第3記載の趣旨の下に、現金3万円を供与し、もって同人が職務上不正な行為をしたことに関し、賄賂を供与した。 第5 被告人Aは、同市が同年6月15日に執行した「K道路改良工事」の条件付一般競争入札に関し、前記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに、その職務に反し、被告人Bと共謀の上、C従業員であるGを介して、同年5 執行した「K道路改良工事」の条件付一般競争入札に関し、前記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに、その職務に反し、被告人Bと共謀の上、C従業員であるGを介して、同年5月下旬頃、同市D丁目H番I号同社事務所において、被告人Bに対し、入札に関する秘密事項であり、同入札の最低制限価格を算定する基準となる同工事の直 接工事費、共通仮設費、現場管理費及び一般管理費等の各内訳金額が記載された金額入り設計書を交付し、前記各内訳金額に基づき同入札の最低制限価格を推認させ、よって、同社に、同年6月14日、電子入札システムにより、最低制限価格に近似した金額である1276万4000円(税抜き)で入札させ、同月15日、同工事を落札させ、もって入札等に関する秘密を教示するとともに、偽計を用いて、公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした。 第6 被告人Bは、被告人Aと共謀の上、前記第5記載の条件付一般競争入札に関し、前記Gを介して、同年5月下旬頃、前記C事務所において、被告人Aから、前記第5記載の金額入り設計書の交付を受け、前記各内訳金額に基づき同入札の最低制限価格を推認し、よって、同社に、同年6月14日、電子入札システムにより、最低制限価格に近似した価格である1276万4000円(税抜き)で入札させ、同月15日、同工事を落札させ、もって偽計を用いて、公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした。 第7 被告人Aは、前記第5記載の条件付一般競争入札に関し、同年5月下旬頃、同市又はその周辺において、被告人Bから、入札に関する秘密事項であり、同入札の最低制限価格を算定する基準となる金額等の教示を受けたい旨の請託を受け、前記第5記載の職務上不正な行為をしたことに対する謝礼及び今後も同様の いて、被告人Bから、入札に関する秘密事項であり、同入札の最低制限価格を算定する基準となる金額等の教示を受けたい旨の請託を受け、前記第5記載の職務上不正な行為をしたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら、同年6月下旬頃、前記尾道市役所において、同人から、現金3万円の供与を受け、もって職務上不正な行為をしたことに関し、賄賂を収受した。 第8 被告人Bは、同月下旬頃、前記尾道市役所において、被告人Aに対し、前記第7記載の趣旨の下に、現金3万円を供与し、もって同人が職務上不正な行為をしたことに関し、賄賂を供与した。 (証拠の標目)省略(法令の適用) 1 被告人Aについて罰条判示第1及び第5の各行為入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反の点いずれも入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律8条公契約関係競売入札妨害の点いずれも刑法60条、96条の6第1項判示第3及び第7の各行為いずれも刑法197条の3第2項、第1項科刑上の一罪の処理判示第1及び第5について、いずれも刑法54条1項前段、10条(1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから、1罪として重い入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反の罪の刑で処断(ただし、罰金刑の任意的併科については、公契約関係競売入札妨害罪について定めたそれによる。)) 刑種の選択判示第1及び第5についていずれも懲役刑を選択併合罪の加重刑法45条前段、47条本文、 公契約関係競売入札妨害罪について定めたそれによる。)) 刑種の選択判示第1及び第5についていずれも懲役刑を選択併合罪の加重刑法45条前段、47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い判示第7の罪の刑に法定の加重)刑の全部執行猶予刑法25条1項追徴刑法197条の5後段(被告人Aが判示第3及び第7の犯行により収受した賄賂は、既に費消して没収することができないので、その価額6万円を被告人Aから追徴) 2 被告人Bについて罰条判示第2及び第6の行為いずれも刑法60条、96条の6第1項判示第4及び第8の行為いずれも刑法198条刑種の選択いずれも懲役刑を選択併合罪の加重刑法45条前段、47条本文、10条(犯情の最も重い判示第8の罪の刑に法定の加重)刑の全部執行猶予刑法25条1項(量刑の理由)本件は、市が発注する公共工事に関し、市職員である被告人Aが、建築会社代表者である被告人Bに対して、2件の公共工事について、秘密事項である工事費の内訳金額を教示した入札妨害と、その謝礼としての贈収賄からなる事案である。 現に、被告人Bの会社がいずれの入札でも、最低制限価格より数千円高いだけの価格で入札して受注するに至り、その謝礼として賄賂が授受されたのであって、入札の公正を害し、公務員の職務の公正とこれに対する信頼を大きく損なう犯行である。被告人Aは、地元の優良な業者が落札することで自分の仕事が楽になると考えて、被告人Bは、自社の売り上げの多くを占める公共工事を確実に受注しようと考えて、本件以前から、工事費の内訳金額の教示等を繰り返す中で、本件各犯行に及んだ。官民癒着により競争を歪 事が楽になると考えて、被告人Bは、自社の売り上げの多くを占める公共工事を確実に受注しようと考えて、本件以前から、工事費の内訳金額の教示等を繰り返す中で、本件各犯行に及んだ。官民癒着により競争を歪め、公務に対する信頼を揺るがすことよりも、自己の利益を優先したその態度は強く非難されるべきである。 以上の事情からすると、被告人両名の刑事責任を軽く見ることはできないが、公務員側が賄賂を要求した類型ではなく、その金額も高額とはいえないことのほか、被告人両名が罪を認めていること、当然のこととはいえ、被告人Aが懲戒免職処分を受け、被告人Bの会社が公共工事の指名除外の措置を受けるなどしたこと、被告人Aには前科がなく、被告人Bにもみるべき前科はないこと等の事情もある。そこで、被告人両名にそれぞれ主文の刑を科してその責任を明確にした上で、今回に限り、その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 (検察官の求刑被告人A:懲役2年6か月、金6万円の追徴、被告人B:懲役1年6か月)令和6年9月25日広島地方裁判所刑事第1部 裁判長裁判官石井寛 裁判官横井裕美 裁判官高田優

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