平成13(ネ)402 中郷村元職員慰謝料請求

裁判年月日・裁判所
平成13年11月27日 東京高等裁判所
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判決文本文12,990 文字)

(原審・新潟地方裁判所高田支部平成11年(ワ)第4号慰謝料請求事件(原審言渡日平成12年12月7日)) 主文 一原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 二上記部分に係る被控訴人の請求を棄却する。 三訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。 事実及び理由 一申立て 1 控訴人主文と同旨 2 被控訴人(1) 本件控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は控訴人の負担とする。 二事案の概要 1 本件は、控訴人の元職員であった被控訴人が、「平成10年1月1日付けの控訴人の機構改革に伴う人事異動において、従前控訴人税務課長の職にあった被控訴人に対し、総務課参事とする旨の人事発令(本件発令)がされたところ、本件発令は、被控訴人を嫌悪する控訴人村長(第一審被告)が、嫌がらせのために行ったものであって違法である。」と主張して、控訴人及び村長に対し、慰謝料の支払を求めた事案である。原判決は、本件発令は違法であると認め、控訴人に対し慰謝料50万円の支払を命じた(村長に対する請求は、公務員として行った行為について個人責任を追及することはできないとして、これを棄却した。)ところ、これを不服とする控訴人が控訴の申立てをした。 2 事案の概要の詳細は、次のとおり付加するほかは、原判決の「事実及び理由」一、二に記載のとおりであるから、これを引用する。 (当審における付加主張)(1) 被控訴人ア)本件発令に当たって、任命権者である村長に裁量権が認められることは争わないが、そうだからといってどのような人事発令でも許されるものではなく、裁量権の行使に逸脱、濫用があれば、違法と評価されるべきであることは当然である。 イ)控訴人は、「被控訴人は税務課長として適格性を欠いていた。」などとして様々な事由 人事発令でも許されるものではなく、裁量権の行使に逸脱、濫用があれば、違法と評価されるべきであることは当然である。 イ)控訴人は、「被控訴人は税務課長として適格性を欠いていた。」などとして様々な事由を主張しているが、被控訴人は、税務課長として正しいと考える意見を具申したのにすぎないし、その内容も正当なものであって、「誤った見解に固執した。」と批判されるようなものではない。仮に被控訴人の述べた意見の中に、異論のあり得るものがあったとしても、それは、甲乙両説あり得る中で一つの見解を述べたという程度のものであって、税務課長や公務員としての適格性を疑われるような非常識な意見を述べたことはない。現に、税務課長としての在任中、誤った見解に固執したなどといった理由で、被控訴人に対して懲戒処分等が行われたり、そのための検討が行われたといった事実はないのであり、控訴人の主張は、本件発令を正当化するために、後になってこじつけたものとしか理解のしようのないものである。また、被控訴人が他の職員から反発を受けていたという事実もなく、この点に関する控訴人の主張は、すべて根拠のないものである。 ウ)被控訴人は、以下に述べるとおり、本件発令に当たって嫌がらせとしか考えられない異常な処遇を受けており、この事実に照らしてみても、本件発令の真の理由が、被控訴人を嫌悪する村長が、被控訴人に対する嫌がらせを行うことにあったことは明らかである。 第1に、控訴人における参事職は、一定数の部下を配置され、その部下を指揮監督しながら職務を行うものとされており、現に他の参事にはすべて部下が配置されたにも拘わらず、被控訴人一人が部下を全く持たない参事とされた。第2に、平成9年12月26日、翌年1月1日以降の職員の座席配置が決定された際、被控訴人の座席の位置のみが決まっておらず、被控訴人が抗 たにも拘わらず、被控訴人一人が部下を全く持たない参事とされた。第2に、平成9年12月26日、翌年1月1日以降の職員の座席配置が決定された際、被控訴人の座席の位置のみが決まっておらず、被控訴人が抗議をした結果、ようやく座席の位置が決められたものの、他の総務課職員は全員役場二階の事務室内に座席が定められたにも拘わらず、被控訴人ただ一人が役場一階の収入役席の横に座席を定められるという「島流し」としかいいようのない異常な座席配置となった。第3に、平成10年1月6日、新体制での職務が始まる時点においても、被控訴人の担当事務は定められておらず、村長や助役等に尋ねても要領を得ない状態であり、同月12日になってようやくA村地域防災計画の見直しと人材育成の基本計画の策定について計画策定することを命じられるに至ったが、この特命事項の内容も、本来総務課行政防災班の所管事項に属する事務を、被控訴人を同班に所属させることもないまま担当させるという異常なものであった。以上のとおり、本件発令に伴って行われた被控訴人に対する処遇は、いずれも明らかに異常なものであって、当事者である被控訴人はもちろん、他の職員の目から見ても、被控訴人が差別待遇を受けていると受け止められるような内容のものであったのであるから、そのような処遇を行わなければならない特段の事情があったのであれば、それについての説明があって然るべきであったにも拘わらず、そのような説明も全くなかったのである。以上のような事情を総合考慮すると、本件発令に当たっては、被控訴人の処遇について真面目な検討はされておらず、被控訴人を排除し閑職に追いやって嫌がらせをすることのみが考えられていたといわざるを得ないのであって、正当に裁量権が行使されたとは到底言い難いものである。そして、その理由は、村長が、被控訴人を嫌悪し、嫌 人を排除し閑職に追いやって嫌がらせをすることのみが考えられていたといわざるを得ないのであって、正当に裁量権が行使されたとは到底言い難いものである。そして、その理由は、村長が、被控訴人を嫌悪し、嫌がらせをすることのみを目的としていたためであると考えるほかはないのである。 エ)控訴人は、「本件発令によって被控訴人に経済的損害等は生じていないから、損害が発生する余地はない。」という趣旨の主張をしているが、本件発令によって被控訴人が多大な精神的打撃を受けたことは明らかであり、控訴人の上記主張は失当である。 (2) 控訴人ア)本件発令は、控訴人の課長職から参事職への異動を命ずるものであって、職制上の格付けや給与上の格付けには変更が生じない「転任」に当たるものであり、しかも、勤務場所に移動を生ずるものでもなく、被控訴人に対して損害を与えるものではないのであるから、このような発令を行うについては、任命権者である村長の広汎な裁量権が認められるべきものである。したがって、本件発令が違法とされるのは、それが地方公務員法13条に定める差別的取扱いに当たるとか、不当な動機、目的に基づくものであるとか、被控訴人に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を与えるものであるといった特段の事情が存する結果、任命権者に与えられた裁量権の行使に逸脱、濫用があると認められる場合に限られるものというべきである。 イ)被控訴人に対して本件発令を行った経緯は次のとおりであって、裁量権の逸脱、濫用はない。 すなわち、控訴人においては、行政改革の一環として機構改革を進めることとなり、平成10年1月1日から、従前の8課体制を4課1室体制に変更することとなったため、従前課長職にあった者の一部を他の職に異動させる必要が生じていた。被控訴人は、本件発令前は控訴人の税務課長職 となり、平成10年1月1日から、従前の8課体制を4課1室体制に変更することとなったため、従前課長職にあった者の一部を他の職に異動させる必要が生じていた。被控訴人は、本件発令前は控訴人の税務課長職にあったものであるが、既に主張したとおり(原判決の「事実及び理由」二)、所管事項である税務行政上の問題について誤った見解に固執し、村長や村議会の指示に従わず、また、村長が重要な施策として取り組んでいた行政改革のための業務改善事業に反対し、業務改善を進めるためにコンサルティング契約を締結していた民間会社社員の調査依頼にも協力せず、更に、控訴人の業務改善としての税務相談業務窓口の一本化や税務証明の発行窓口の一本化に関する施策に関し、根拠のない理由に基づいて村長の指示に従わないなど課長職としての適格性を欠く行為を繰り返していた上、このような独善的な行動のために他の職員からも激しい反発を受けており、課長職にとどめておくことはできない状態にあった。村長は、以上のような事情や、被控訴人が定年間近(定年まで約1年)であったことなどを考慮し、機構改革後は、被控訴人を総務課参事とし、特命事項を担当させることとしたものであって、本件発令は、人事権の行使として適切なものであり、裁量権の逸脱、濫用が認められる余地はない。 ウ)被控訴人は、「平成10年1月1日付けの人事異動に当たっては、被控訴人一人が部下を持たない参事とされたばかりか、他の総務課職員の座席はすべて役場二階事務室内と定められたにも拘わらず、被控訴人のみが役場一階に座席が定められるという「島流し」ともいうべき座席配置が行われ、担当事務も同月12日まで決まらないなどといった明らかに差別的な取扱いが行われたのであり、このような事情に照らしてみても、本件発令は、村長が被控訴人を嫌悪し、嫌がらせのために行ったもの 置が行われ、担当事務も同月12日まで決まらないなどといった明らかに差別的な取扱いが行われたのであり、このような事情に照らしてみても、本件発令は、村長が被控訴人を嫌悪し、嫌がらせのために行ったものであって、裁量権の逸脱、濫用があったことは明らかである。」という趣旨の主張をする。しかしながら、被控訴人の下に部下を配置せず、座席を役場一階に定めたのは、他の職員との軋轢が生ずることを避けることや、二階事務室に被控訴人の座席を配置できるだけのスペースがなかったことなどによるものであり、また、担当事務の決定が遅れたのは、担当者が多忙であったことや特命事項として被控訴人にふさわしい職務を定めるのに時間を要したことによるものであり、いずれもやむを得ない事情によるものであって、被控訴人に対する嫌がらせといわれるようなものではない。 エ)なお、既に主張したとおり、被控訴人は、本件発令によって何ら経済的損害等は受けておらず、被控訴人が「島流し」にあったとか「嫌がらせを受けた」というのは、被控訴人の主観的な受け止め方に過ぎないのであるから、本件発令によって被控訴人に損害が生ずる余地はなく、この点においても、被控訴人の本訴請求は失当である。 三当裁判所の判断 1 当裁判所は、被控訴人の本訴請求は棄却すべきものであると判断する。その理由は、次のとおりである。 (1) 控訴人においては、機構改革を実施する結果、平成10年1月1日以降、従前の8課体制が4課1室体制に変更されることになったこと、上記機構改革に伴う人事異動の一環として、従前税務課長の職にあった被控訴人に対し、総務課参事を命ずる旨の本件発令がされたことは当事者間に争いがない。 ところで、証拠(甲8、乙3、4、17)によれば、控訴人における課長職と参事職は、いずれも職制上の7級、8級職であって同 に対し、総務課参事を命ずる旨の本件発令がされたことは当事者間に争いがない。 ところで、証拠(甲8、乙3、4、17)によれば、控訴人における課長職と参事職は、いずれも職制上の7級、8級職であって同格の職として位置付けられており、被控訴人自身も本件発令によって職級や給与の格下げを受けたものではないことが認められるから、本件発令は地方公務員法上の「転任」に当たるものであり、また、同じ役場庁舎内での異動であって被控訴人に勤務場所における不利益が生ずるものでもないのであるから、このような人事発令を行うに当たっては、任命権者である村長の広汎な裁量権が認められるべきものであり、その裁量権の行使に逸脱、濫用があった場合に初めて違法と評価されるべきものである。 (2) この点に関し、被控訴人は、「本件発令は、根拠のない異常な人事発令である。」と主張し、控訴人は、「被控訴人は、税務課長としての適格性を欠いており、従前のままの処遇をすることはできなかった。」という趣旨の主張をするところ、当裁判所としては、本件発令は、少なくとも客観的に見る限り、相応の根拠に基づくものであったといわざるを得ないものであると判断する。その理由は次のとおりである。 ア)証拠(甲10ないし17、乙8の1、2、乙9、10、乙11の1、2、乙12、13、乙14の1、2、乙15の1ないし6、乙18の1、2、乙19の1ないし6、乙20の1ないし4、乙21、乙23の1、2、乙25、27、28、証人Dの証言、控訴人代表者(原審相被告本人)村長の本人尋問、被控訴人本人尋問(原審及び当審)の結果)によれば、被控訴人が税務課長在任当時次のような事実があったことが認められる。 a)平成8年1月ころ、控訴人に対してB県総務部による総合指導が行われたが、その際、被控訴人は、県の担当職員に対し、従前 よれば、被控訴人が税務課長在任当時次のような事実があったことが認められる。 a)平成8年1月ころ、控訴人に対してB県総務部による総合指導が行われたが、その際、被控訴人は、県の担当職員に対し、従前の経緯について調査することもないまま、固定資産税の不均一課税等を定めるA村村税条例13条の2、同42条の2ないし4の規定は、一部地主の利益のための規定であって問題があると考えている旨の発言をし、その結果、県から上記各規定の是正を求める旨の指導を受けるに至った。村長は、県の上記指導や被控訴人の意見具申を受けて上記各規定を削除する旨の条例改正案を策定し、平成9年3月の村定例議会に同改正案を上程したところ、議会及びその付託を受けた村総務文教常任委員会において、議員ないし委員らから、上記各規定を削除する必要があるかどうか更に調査検討する必要があるとの意見が出されたが、被控訴人は、県からの指導によるものであるなどと主張して譲らず、結局、上記各規定の削除規定を削除する旨の修正議決がされ、上記改正案は実質的に否決されるに至った。その後、村長は、あくまで上記各規定の削除に固執する被控訴人に任せておいては事態が進展しないと考え、被控訴人の前任の税務課長や助役に命じて、上記各規定制定の経緯を踏まえ、あくまでもその削除の必要があるのかどうかについて再検討をするよう命じ、同人らにおいてB県総務部市町村課と協議等を行った結果、同課から上記各規定を存続させることも可能であるとの意見を得ることとなった。そこで、村長は、平成10年6月の村定例議会において、上記各規定を削除する必要はないことが判明したという趣旨の報告をした。 b)平成8年9月ころ、控訴人が保育園用地の買収交渉をしていたC社から、土地の売却に応ずる代わりに代替地の提供を求められ、かつ、その代替地については特別土 ないことが判明したという趣旨の報告をした。 b)平成8年9月ころ、控訴人が保育園用地の買収交渉をしていたC社から、土地の売却に応ずる代わりに代替地の提供を求められ、かつ、その代替地については特別土地保有税の課税免除を受けることができないかどうかを検討してもらいたいとの申入れがされたため、用地取得の担当課長であった福祉保健課長が被控訴人に相談したところ、被控訴人は、課税免除はできないと主張し、買収交渉が進展しないまま時間が経過することとなった。事態を憂慮した村長は、平成9年6月13日、助役、福祉保健課長、被控訴人を集めて協議を行ったが、被控訴人は課税免除はできないと主張して譲らず、「もう少し調べてほしい。」という村長の話に対しても、「税のことは協議して決めるものではない。」と主張して応じなかった。そこで、村長は、D(前税務課長)、E(税務課住民税係長)、F(福祉保険課福祉係長)に調査検討を命じ、同人らにおいて検討をし、また、G税務署、H財務事務所に対して問い合わせをするなどした結果、上記代替地は、地方税法585条、同法施行令54条の32に定める非課税土地に当たるとの解釈が可能であるとの結論に至り、平成10年2月17日、C社に対し、特別土地保有税を賦課しない旨の通知をすることとなった(なお、G税務署、H財務事務所においても、上記見解に沿う処理が行われている。)。 c)村長は、村の行政改革による業務改善の推進を重要な事業として位置付け、I社との間でコンサルティング契約を締結して業務改善のための調査検討を依頼していたが、被控訴人は、同社の調査手法は、村の実情を無視した形式的、表面的なものにすぎないなどとして批判的な態度を執り、同社が提案した業務時間調査や、具体的な目標を掲げた業務時間削減について十分な協力をしないなど、行政改革について消極的な の実情を無視した形式的、表面的なものにすぎないなどとして批判的な態度を執り、同社が提案した業務時間調査や、具体的な目標を掲げた業務時間削減について十分な協力をしないなど、行政改革について消極的な態度を執った。 d)控訴人においては、従来職員が各集落に出向いて確定申告に関する税務相談を行っていたところ、平成9年2月からは、業務改善の一環として税務相談業務の受付窓口を一元化して、出張相談を廃止するとの計画が立てられた。村長は、この計画に関する起案文書を提出してきた被控訴人に対し、住民の理解を得るため、各集落の区長の了承を得、また、当分の間、マイクロバスを運行して相談に来る住民の送迎を行うことを検討するよう指示したが、被控訴人は、「申告は納税者の義務であるから、区長の了承を得たりマイクロバスによる送迎をする必要はない。」として譲らなかったため、相談業務一元化は見送られることになった。同年12月にも、再び相談業務一元化の問題が取り上げられたが、同様の経緯で見送られ、結局、平成10年2月、被控訴人の後任の税務課長の下で、区長らへの説得とマイクロバス運行の決定が行われ、相談業務の窓口一元化が実現するに至った。 e)同じく平成9年、控訴人の業務改善の一環として、税務証明の発行事務を生活福祉課の窓口において行う旨の窓口事務の移管統合が計画されたが、被控訴人は、「税については守秘義務があるから、税務課以外の窓口においてこれを取り扱うことは許されない。」として上記計画に反対し、結局、この案件も、被控訴人の後任の税務課長が就任した後に実現するに至った。 イ)以上の事実に基づいて検討するに、被控訴人が、税務課長として自らが正しいと考える見解を述べることは、その職責の一部であって、それが上司である村長の意向に反するものであったり、上級官庁や関係官庁等の見解と異な 実に基づいて検討するに、被控訴人が、税務課長として自らが正しいと考える見解を述べることは、その職責の一部であって、それが上司である村長の意向に反するものであったり、上級官庁や関係官庁等の見解と異なるものであったとしても、そのことから直ちに被控訴人に税務課長としての適格性が欠けていたと断ずることはできない。しかしながら、先に認定した諸事実に照らしてみると、被控訴人は、税務の専門家であることを自負する余り、従前の経緯に関する検討や幅広い観点からの検討を欠き、また、上級官庁や関係官庁への意見照会等の裏付調査もしないまま、独自の見解に基づいて、控訴人の条例の規定が違法であるとか、特別土地保有税を課税しない措置は許されないと決めつけ、更なる調査検討を求める村長や村議会の意向を無視する態度を執ったり(上記ア)のa)、b)。なお、b)については、当初意見を求められていた特別土地保有税の課税免除ではなく、非課税土地に当たるとの解釈によって問題が解決されたことは上記のとおりであるが、村長の問題意識は、C社に提供する代替地について特別土地保有税を課税しないことが許されないのかという点にあったものと認められるのであるから、税務行政の所管課長である被控訴人としては、上司である村長から調査検討を求められた以上、当初意見を求められていた課税免除措置の適否ばかりではなく、他の観点からの総合的な検討を求められていたものというべきであり、そのような検討も経ないまま、「税のことは協議して決めるものではない。」などと言って更なる調査検討をしようともしなかったことは、所管課長としての対応として適切ではなかったといわざるを得ない。)、控訴人の業務の円滑な遂行や業務改善に対する十分な配慮を欠いたまま、必ずしも相当とは言い難い納税義務論や守秘義務論に拘泥して村長の方針に反対する の対応として適切ではなかったといわざるを得ない。)、控訴人の業務の円滑な遂行や業務改善に対する十分な配慮を欠いたまま、必ずしも相当とは言い難い納税義務論や守秘義務論に拘泥して村長の方針に反対する態度を執り続け(上記ア)のd)、e))、その結果、誤った施策の実施や、必要な施策の遅延等をもたらしたものであって、村長が、これらの行為は税務課長としての適格性に疑問を生じさせるものであると受け止めたことには相応の根拠があるものといわざるを得ない(なお、被控訴人の主張中には、「被控訴人に公務員としての適格性がないということはできないから、本件発令は違法である。」とする部分もあるが、公務員としての適格性の有無は、本来分限処分において問題とされるべき事柄であって、被控訴人に公務員としての適格性が認められるからといって転任処分としての本件発令が違法となるものではないのであるから、上記主張は失当である。)。そして、これらの行為を通じて、他の職員との間に相当程度の軋轢が生じていたであろうことも容易に推認できることや、平成10年1月1日付けの機構改革によって、従前課長職にあった者の全員を課長職のまま処遇することはできない状況にあったことなどの事情を総合考慮すれば、村長が、被控訴人をラインの管理職である課長職ではなく、専門職的色彩の強い参事職として処遇し、特命事項を担当させるのが相当であると判断したことには相応の根拠があったものというべきであり、この判断自体に裁量権の逸脱、濫用があったということはできない。 (3) 被控訴人は、「被控訴人は、本件発令に関連して、異常ともいえる差別的取扱いを受けており、この事実は、本件発令が、被控訴人を嫌悪し、被控訴人に対する嫌がらせを目的として行われたものであることを裏付けるものである。」という趣旨の主張をするところ、 異常ともいえる差別的取扱いを受けており、この事実は、本件発令が、被控訴人を嫌悪し、被控訴人に対する嫌がらせを目的として行われたものであることを裏付けるものである。」という趣旨の主張をするところ、証拠(甲2、4ないし6、16、乙1、2、5、27、28、控訴人代表者(原審相被告)村長の本人尋問、被控訴人本人尋問(原審及び当審)の結果)によれば、他の参事には部下が配置されていたのに対し、被控訴人のみには部下が配置されなかったこと、平成10年1月1日付けの人事異動が内示された後である平成9年12月26日、他の職員については、平成10年1月1日以降の座席配置が決定されていたのに、被控訴人の座席のみが決まっておらず、被控訴人が助役等に抗議した結果、収入役の隣に座席が定まったこと、この座席は、従前の被控訴人の座席と同一であったが、他の総務課職員については全員役場二階事務室内に座席が置かれることとなったため、被控訴人一人が総務課参事であるにも拘わらず一階に座席を配置される結果となったこと、人事異動後である平成10年1月6日、被控訴人は、村長に対し、担当事務が何であるかを尋ねたが、「助役と総務課長に言ってある。」と言われ、助役に尋ねても回答がなく、結局担当事務が何であるかは分からないままであり、同月9日、助役から「特命事項を担当してもらう。」と告げられたものの、その具体的内容は告げられず、同月12日になって初めて、助役から、A村地域防災計画の見直し及び人材育成の基本計画の策定を特命事項とする旨が告げられるに至ったこと、これに対し、被控訴人は、「上記各事項は、総務課行政防災班の所管事項であるから、これらの事務を担当するのであれば、同班に所属させて欲しい。」という希望を述べたが、この希望が容れられなかったため、上記特命事項の担当を拒否したことが認められる 総務課行政防災班の所管事項であるから、これらの事務を担当するのであれば、同班に所属させて欲しい。」という希望を述べたが、この希望が容れられなかったため、上記特命事項の担当を拒否したことが認められる。 以上に認定した諸事実のうち、被控訴人にのみ部下が配置されなかったとの点については、控訴人における参事職は、「課長の指揮下に入り、課室の専門的な業務を担当し、課題解決に当たるとともに、所属職員を指揮監督する。」とされ(甲8)、原則として部下が配置されることが想定されてはいるものの、その専門職的性格に照らしてみれば、部下の配置を受けないまま、一人で特命事項を担当することもあり得るものというべきであるところ、上記(2)で認定した諸事実に基づいて検討してみれば、村長が、被控訴人については、他の職員との軋轢が予想されるため、一人で特命事項を担当させることが相当であると判断したことには相応の根拠があったものというべきであり、これを異常な処遇であると断ずるのは相当ではない。また、被控訴人が命じられた特命事項の内容は上記のとおりであって、本来的には総務課行政防災班の所管事項に当たるものであったとしても(甲7)、総務課参事が、村長の特命に基づき、これを担当することに妨げはないものというべきであるから、特命事項の内容が異常であったと断ずることも相当ではない。更に、総務課所属の職員のうち、被控訴人一人が一階事務室に座席を配置されたとの点についても、証拠(乙27、32、33、控訴人代表者(原審相被告本人)村長の本人尋問)によれば、役場二階の総務課事務室には、被控訴人の座席を配置するだけのスペースがないことなどの理由によるものであったことが認められ、被控訴人を「島流し」とすることを目的とした行為であったと断定することはできない。 もっとも、平成9年12月26日の 席を配置するだけのスペースがないことなどの理由によるものであったことが認められ、被控訴人を「島流し」とすることを目的とした行為であったと断定することはできない。 もっとも、平成9年12月26日の時点において被控訴人の座席が決まっていなかったとの点、及び平成10年1月6日の時点で被控訴人の担当事務が決定されていなかったとの点については、配慮に欠ける点があったといわざるを得ないところがあるが(これらの決定に長時間を要したのかどうかは疑問であるといわざるを得ないし、仮に決定に時間を要する事情があったとしても、座席や担当事務が決まらないという不安定な立場に置かれる被控訴人に対しては、事情を説明し、納得を得られるよう配慮をして然るべきものであるが、そのような配慮がされた節もうかがわれないのであって、被控訴人が、これを不当な取扱いであると受け止めたことにも、もっともな面があったといわざるを得ない。)、既に指摘した諸事情も併せ考えてみるならば、これらの事実のみに基づいて、被控訴人を嫌悪し、被控訴人に対する嫌がらせを目的として本件発令がされたと断定することはできないし、また、これらの配慮不足のみをとらえてこれを被控訴人に対する不法行為を構成し、国家賠償責任を生じさせるものであるとすることもできないものというべきである。 なお、被控訴人は、その本人尋問(原審及び当審)及び陳述書(甲18)において、「被控訴人は、平成9年1月、G税務署統括国税調査官の調査依頼に基づいて、控訴人のほ場整備の確定測量委託契約に関連した控訴人の経理処理について調査を行い、処理に問題がある旨をG税務署に報告し、村長に対しても、その旨の報告を行ったところ、叱責を受け、それ以来、村長の控訴人に対する態度が一変したものであり、この事実は、村長が、被控訴人の上記行為に対する復讐として本 ある旨をG税務署に報告し、村長に対しても、その旨の報告を行ったところ、叱責を受け、それ以来、村長の控訴人に対する態度が一変したものであり、この事実は、村長が、被控訴人の上記行為に対する復讐として本件発令をしたことを疑わせるものである。」という趣旨の供述ないし記載をしている。 しかしながら、証拠(24、25、証人村長(当審)の証言)によれば、被控訴人が指摘している経理処理に問題があったことは事実であるものの、その主たる部分は、村長が控訴人の助役に就任する前に行われたものであって、同村長はこれに関与しておらず、また、関係者に対しては懲戒処分がされており、同村長が、このことに対して復讐心を抱かなければならない筋合いのものではないことが認められる上に(被控訴人の報告に対して村長が不快感を示したことは事実であると認められるが、国税調査官から指摘を受けたことを村の責任者である村長に報告もせず、独自に調査を行ったことは独断専行と批判されてもやむを得ない側面があるのであって、村長が不快感を示したことには無理のないところがある。そして、仮にこのことが本件発令の際に考慮されたとしても、それは、被控訴人に対する個人的な恨みなどに基づくものと評価されるべきものではない。)、村長は、この一件があった後の同年3月、被控訴人の意見具申に基づき、村税条例改正案を村議会に上程していることなど既に認定した事情に照らしてみても、上記の経理処理問題後、村長の態度が一変したというのが事実であるかについても疑問があり、上記供述ないし記載を採用することはできない。また、被控訴人は、その本人尋問(当審)において、「村長から匿名で被控訴人を罵倒する手紙や葉書を送り付けられており、この事実も、本件発令が村長の個人的な恨みに基づくものであることを推認させる。」という趣旨の供述をし、甲22 尋問(当審)において、「村長から匿名で被控訴人を罵倒する手紙や葉書を送り付けられており、この事実も、本件発令が村長の個人的な恨みに基づくものであることを推認させる。」という趣旨の供述をし、甲22、23の各1、2、甲24の1、甲24の2の1、2(葉書及び手紙)を提出するが、上記各書証が村長の作成したものであると断ずるに足りるだけの証拠はないのみならず、上記葉書等は、被控訴人が本訴を提起した平成11年1月8日以後に発送されたものなのであるから、その内容に基づいて本件発令の是非を論ずることも相当ではないものというべきである。 そして、以上のほかに本件発令について裁量権の逸脱、濫用があったことを認めるに足りる証拠はない。 (4) 以上の次第で、本件発令が違法であるということはできないのであるから、被控訴人による本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく失当として棄却を免れない。 2 よって、原判決中被控訴人の請求を一部認容した部分は不当であるからこれを取り消した上、この部分に係る被控訴人の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法67条2項、61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第8民事部裁判長裁判官村上敬一裁判官鶴岡稔彦裁判官永谷典雄

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