主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人細川清,同富田善範,同高野伸,同久留島群一,同小笠原正喜,同大竹たかし,同浜秀樹,同小濱浩庸,同高田秀子,同福本修也,同冨永環,同森和雄,同伊藤泰久の上告理由について本件は,被上告人が,賃借していた建物の賃貸人が死亡した後にその相続人であるなどと主張する複数の者から賃料の支払請求を受けたため,過失なくして債権者を確知することができないことを原因として供託をした後,その取戻しを請求したところ,供託金取戻請求権は各供託の時から10年の時効期間の経過により消滅したとしてこれを却下されたため,その取消しを求めている事案である。 弁済供託は,債務者の便宜を図り,これを保護するため,弁済の目的物を供託所に寄託することによりその債務を免れることができるようにする制度であるところ,供託者が供託物取戻請求権を行使した場合には,供託をしなかったものとみなされるのであるから,供託の基礎となった債務につき免責の効果を受ける必要がある間は,供託者に供託物取戻請求権の行使を期待することはできず,供託物取戻請求権の消滅時効が供託の時から進行すると解することは,上記供託制度の趣旨に反する結果となる。そうすると,【要旨1】弁済供託における供託物の取戻請求権の消滅時効の起算点は,過失なくして債権者を確知することができないことを原因とする弁済供託の場合を含め,供託の基礎となった債務について消滅時効が完成するなど,供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時と解するのが相当である(最高裁昭和40年(行ツ)第100号同45年7月15日大法廷判決・民集24巻7号771頁参照)。 - 1 -【要旨2】本件においては,各供託金取戻請求権の消滅 が消滅した時と解するのが相当である(最高裁昭和40年(行ツ)第100号同45年7月15日大法廷判決・民集24巻7号771頁参照)。 - 1 -【要旨2】本件においては,各供託金取戻請求権の消滅時効の起算点は,その基礎となった賃料債務の各弁済期の翌日から民法169条所定の5年の時効期間が経過した時と解すべきであるから,これと同旨の見解に基づき,その時から10年が経過する前にされた供託に係る供託金取戻請求を却下した処分が違法であるとした原審の判断は,正当として是認することができ,原判決に所論の違法はない。論旨は,採用することができない。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官千種秀夫裁判官金谷利廣裁判官奥田昌道裁判官濱田邦夫)- 2 -
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