平成26年1月29日判決言渡平成25年(行コ)第12号法人税並びに消費税の更正処分等取消請求控訴事件 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 広島南税務署長が控訴人に対して平成21年3月31日付けでした平成15年9月1日から平成16年8月31日まで,平成16年9月1日から平成17年3月31日まで,平成17年4月1日から平成18年3月31日まで及び平成18年4月1日から平成19年3月31日までの各事業年度の法人税の重加算税の各賦課決定処分(ただし,平成15年9月1日から平成16年8月31日まで及び平成16年9月1日から平成17年3月31日までの各事業年度については,平成22年2月8日付けでされた法人税の重加算税の各変更決定処分後のもの)をいずれも取り消す。 (3) 広島南税務署長が控訴人に対して平成21年7月3日付けでした平成13年9月1日から平成14年8月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,所得金額9700万7377円及び納付すべき税額2935万3000円を超える部分並びに同事業年度の法人税の重加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 (4) 広島南税務署長が控訴人に対して平成21年7月3日付けでした平成14年9月1日から平成15年8月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,所得金額5853万8219円及び納付すべき税額1697万3600円を超える部分並びに同事業年度の法人税の重加算税の賦課決定処分を いずれも取り消す。 (5) 広島南税務署長が控訴人に対して平成21年3月31日付 219円及び納付すべき税額1697万3600円を超える部分並びに同事業年度の法人税の重加算税の賦課決定処分を いずれも取り消す。 (5) 広島南税務署長が控訴人に対して平成21年3月31日付けでした平成17年4月1日から平成18年3月31日まで及び平成18年4月1日から平成19年3月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の各賦課決定処分をいずれも取り消す。 (6) 広島南税務署長が控訴人に対して平成21年7月3日付けでした平成13年9月1日から平成14年8月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分のうち,納付すべき消費税の額7551万4000円及び納付すべき地方消費税の額1887万8500円を超える部分並びに同課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 (7) 広島南税務署長が控訴人に対して平成21年7月3日付けでした平成14年9月1日から平成15年8月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分のうち,納付すべき消費税の額7203万2600円及び納付すべき地方消費税の額1800万8100円を超える部分並びに同課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 (8) 広島南税務署長が控訴人に対して平成21年7月3日付けでした平成15年9月1日から平成16年8月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分のうち,納付すべき消費税の額7328万4300円及び納付すべき地方消費税の額1832万1000円を超える部分並びに同課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 (9) 広島南税務署長が控訴人に対して平成21年7月3日付けでした平成16年9月1日から平成17年3月31日までの課税期間の 間の消費税及び地方消費税の重加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 (9) 広島南税務署長が控訴人に対して平成21年7月3日付けでした平成16年9月1日から平成17年3月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分のうち,納付すべき消費税の額4201万3700円及び 納付すべき地方消費税の額1050万3400円を超える部分並びに同課税期間の消費税及び地方消費税の重加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 (10) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 2 被控訴人主文と同旨第2 事案の概要等 1 事案の概要(1) 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,広島南税務署長が控訴人に対してした法人税並びに消費税及び地方消費税に係る更正処分及び重加算税の賦課決定処分が違法であるとして,その取消しを求める事案である。 上記処分の対象となったのは,平成13年9月1日から平成19年3月31日までの各事業年度の法人税並びに各課税期間の消費税及び地方消費税(以下,両税を合わせて「消費税等」ということがある。)であり,その処分理由は,当該年度ないし期間において,架空の取引に基づく架空外注費や架空売上が計上され,申告が過少であるというものであった。なお,上記処分には,国税通則法(平成23年法律第114号による改正前のもの。以下「通則法」という。)70条1項及び4項所定の期間を経過した後になされたものも含まれていた。 (2) 本件の主たる争点は,控訴人の代表権を有しない役員が主導して架空取引を行い,これに基づいて架空外注費や架空売上が計上された場合,①通則法68条1項所定の重加算税の賦課要件に該当するか,②通則法70条5項所定の更正,決定等の期間制限の例外規定が適用されるかという点である。 (3) 原 て架空外注費や架空売上が計上された場合,①通則法68条1項所定の重加算税の賦課要件に該当するか,②通則法70条5項所定の更正,決定等の期間制限の例外規定が適用されるかという点である。 (3) 原審は,上記(2)①②の争点についていずれもこれを肯定し,上記の各処分は適法であると判断して控訴人の請求を棄却した。これを不服として,控訴人が本件控訴を提起した。 2 前提事実(争いのない事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)以下のとおり付加・訂正するほか,原判決4頁10行目から11頁2行目までのとおりであるから,これを引用する(以下,略称については,特に明示するもののほか,引用する原判決の例による。)。 (1) 原判決5頁2行目の末尾に「(以下,総称して「本件架空取引」という。)」を加える。 (2) 11頁2行目の末尾の次に,行を改めて,下記のとおり付加する。 「(7) A元常務に対する告訴と刑事処分控訴人は,平成25年1月,本件架空取引のうちBに関する取引について,A元常務を業務上横領罪で告訴した。A元常務は,同罪の容疑で身柄を拘束された上,東京地方裁判所に同罪で起訴され(被害額は約2230万円),同裁判所は,同年7月23日,A元常務に対して有罪の実刑判決をした。同判決は,同年8月7日確定した(甲142)。」 3 争点(1) 控訴人は,法人税及び消費税等の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を仮装したか(通則法68条1項該当の有無)(2) 控訴人は,偽りその他不正の行為によりその全部又は一部の税額を免れたか(通則法70条5項適用の可否)(3) 本件各処分の適法性 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(控訴人は,法人税及び消費税等の課税標準等又は税額等の 全部又は一部の税額を免れたか(通則法70条5項適用の可否)(3) 本件各処分の適法性 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(控訴人は,法人税及び消費税等の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を仮装したか)について(被控訴人)原判決11頁18行目から,14頁20行目までのとおりであるから,これを引用する。 (控訴人)ア通則法68条1項は,同項所定の国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし,又は仮装する行為(以下,単に「仮装行為」という。)の主体を「納税者」と限定しており,これを安易に拡大することは許されない。同項の合理的解釈としては,仮装行為を行った者が,本人の代理人,補助者等の立場にある者で,納税者本人の身代わりたる地位にある者,会社の場合でいえば,実質的に代表者に準ずるとみられる相当な権限を有する者である場合に限って,納税者自身の行為と同視し得るというべきである。 A元常務は控訴人の取締役ではあるが,代表権がないことはもちろん,実質的にはC支店長としての権限しか有しておらず,控訴人の本社においては,ナンバー2であるD専務が指揮命令を発していたから,A元常務は,本件において実質的に代表者に準ずる地位にあったとはいえない。 イ納税者の家族や従業員等が本人のために仮装行為を行ったような場合,すなわち利害関係を同一にする集団に属する者の行為については,納税者本人の知不知にかかわらず,本人の行為と同一視できるとの見解もあるが,A元常務は,E社長の実弟であるものの,自らの私的利益を図るために本件架空取引を行ったものであって,上記見解を前提としても,A元常務の行為を控訴人の行為と同視することはできない。 本件のような場合,納税者本人( の実弟であるものの,自らの私的利益を図るために本件架空取引を行ったものであって,上記見解を前提としても,A元常務の行為を控訴人の行為と同視することはできない。 本件のような場合,納税者本人(E社長)がその仮装行為に通謀加担し,又は少なくとも事情を知っていることが必要であると解すべきである。 本件においては,以下のとおり,本件架空取引は,徹頭徹尾A元常務が独断で行っていたものであり,E社長は全く事実を知らず,架空取引の事実について悪意も重過失もなかった上,A元常務に対する監督義務の懈怠も認められない。 (ア) 平成18年8月,控訴人のF相談役がC支店の外注費について不審な点を発見し,A元常務に確認したが,明確な返答がなかったため,控訴人は,必要な調査を尽くした上,平成19年1月の会議でA元常務を追求した。これに対し,A元常務は,同月17日付けの弁明書で,E社長はじめ控訴人の役員やC支店幹部にも知らせず,独断で架空取引を行っていたことを認め,謝罪した。 (イ) E社長は,これを受けて,翌日,直ちに取引相手への支払の凍結,A元常務(C支店長)に対する報酬減額の懲戒処分という措置を取った。 (ウ) A元常務は,架空取引の相手方担当者等の協力を得て,架空の領収書をC支店の経理担当者に示し,取引先を装った口座に振り込ませて環流させるという巧妙な手口で着服行為をしていたものであり,控訴人の本社において容易にこれを認識することはできなかった。 ウまた,法人の事業活動として行われている場合には,たとえ末端の従業員の行為であっても法人の行為と同視すべきとの見解もあるが,本件のように,行為者が自己の私的利益を図る目的で行った行為まで法人の行為と同視して法人に重加算税を課することは極めて不合理であり,採用できない見解というべきである 為と同視すべきとの見解もあるが,本件のように,行為者が自己の私的利益を図る目的で行った行為まで法人の行為と同視して法人に重加算税を課することは極めて不合理であり,採用できない見解というべきである。 エ以上のとおり,A元常務の行った本件架空取引については,控訴人自身が仮装行為を行った場合と同視することはできず,これを前提とする重加算税賦課処分は違法となる。 (2) 争点(2)(控訴人は,偽りその他不正の行為によりその全部又は一部の税額を免れたか)について(被控訴人)原判決15頁10行目から17頁2行目までのとおりであるから,これを引用する。 (控訴人)上記(1)のとおり,通則法68条1項は,仮装行為の主体を納税者に限定しており,同法70条5項は68条1項を受けての条文であるから,同法70条5項所定の偽りその他不正の行為(以下「不正行為」という。)の主体も納税者に限定されていると解すべきである。 A元常務のした不正行為が納税者たる控訴人の行為と同視されるためには,控訴人代表者であるE社長に悪意・重過失のある場合に限られるところ,上記(1)で主張するとおり,E社長に悪意・重過失が認められないことは明らかである。 したがって,本件各処分のうち同法70条1項及び4項の期間経過後になされたものは違法となる。 (3) 争点(3)(本件各処分の適法性)について(被控訴人)原判決17頁11行目から48頁10行目までのとおりであるから,これを引用する。 (控訴人)ア上記(2)のとおり,控訴人について通則法70条5項は適用されないから,本件各処分のうち次の各処分は,同条所定の期間を徒過したものであり,違法である。 (ア) 平成14年8月期及び平成15年8月期に係る法人税の法定申告期限から5年(同条1項1 項は適用されないから,本件各処分のうち次の各処分は,同条所定の期間を徒過したものであり,違法である。 (ア) 平成14年8月期及び平成15年8月期に係る法人税の法定申告期限から5年(同条1項1号)を経過した後に行われた本件各法人税更正処分(イ) 平成14年8月課税期間ないし平成17年3月課税期間に係る消費税等の法定申告期限から3年(同条1項1号)を経過した後に行われた本件各消費税等更正処分(ウ) 平成14年8月期及び平成15年8月期に係る法人税の重加算税の 納税義務の成立の日(法人税の法定申告期限の経過の時)から5年(同条4項2号)を経過した後に行われた第二次法人税賦課決定処分(エ) 平成14年8月課税期間及び平成15年8月課税期間に係る消費税等の重加算税の納税義務の成立の日(法人税の法定申告期限の経過の時)から5年(同条4項2号)を経過した後に行われた第二次法人税賦課決定処分(ただし,平成14年8月課税期間及び平成15年8月課税期間に係る消費税等の重加算税に関する部分)イ上記(1)のとおり,控訴人は通則法68条1項の重加算税賦課要件に該当しないので,本件各処分のうち本件各法人税賦課決定処分及び本件各消費税等賦課決定処分はその要件を欠くものとして違法である。 ウよって,本件各処分は,上記第1の1(2)~(9)のとおり,取り消されるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(控訴人は,法人税及び消費税等の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を仮装したか-通則法68条1項該当の有無)について(1) 通則法68条(以下,この項において「本条」という。)は,納税者が仮装行為を行った場合,本来納付すべき税額に対して100分の35を乗じた額の重加算税を課する旨を定めている。 通則 ついて(1) 通則法68条(以下,この項において「本条」という。)は,納税者が仮装行為を行った場合,本来納付すべき税額に対して100分の35を乗じた額の重加算税を課する旨を定めている。 通則法は,法の趣旨に従った納税手続が行われなかった場合や所定の納期限までに国税が完納されなかった場合に,過少申告加算税(65条),無申告加算税(66条),不納付加算税(67条)を課することを定めているところ,重加算税の税率(100分の35)は,他の加算税の税率(100分の10ないし15)より2倍以上高いこと,本条1項は,他の加算税の規定(65条ないし67条)と異なり,その課税要件である仮装行為の主体を「納税者」と明示していること(本条1項の重加算税は,過少申告加算税の 賦課要件がある場合において,納税者が仮装行為を行った場合に,同加算税に代えて賦課されるものであるが,通則法65条は,過少申告の主体については特に明示していない。)などからすれば,重加算税は,納税義務違反の発生を防止し,納税の実を上げようとする趣旨のものであることは当然として,納税に関して仮装行為という反社会的,反道徳的な不正行為を行い,納税を免れようとした者に対する一種の制裁的規定の性質も有するものといえる。したがって,本条1項に定める「納税者」は,基本的に納税者本人(法人の場合は,その代表者)を指すものと解される。 (2) しかしながら,現代における事業活動,経済活動は,組織的活動として行われ,その活動に複数の人間が有機的に関与することが多いことは周知のとおりであり,特に相応の規模を有する法人の事業活動の場合,その代表者が事業活動の細部にわたるまで逐一把握して,直接にこれを管理することはほとんど不可能に近いといえ,現実には,組織に所属する複数の者がそれぞれの部署において一 を有する法人の事業活動の場合,その代表者が事業活動の細部にわたるまで逐一把握して,直接にこれを管理することはほとんど不可能に近いといえ,現実には,組織に所属する複数の者がそれぞれの部署において一定の権限を与えられ,その権限と裁量に基づき,法人としての有機的な事業活動を担っているのが常態であるといえる。 法人が納税義務者である場合,その「納税者」とは,いうまでもなく代表者個人ではなく,代表者を頂点とする有機的な組織体としての法人そのものであるから,法人の意思決定機関である代表者自身が仮装行為を行った場合に限らず,法人内部において相応の地位と権限を有する者が,その権限に基づき,法人の業務として行った仮装行為であって,全体として,納税者たる法人の行為と評価できるものについては,納税者自身が行った行為と同視され,本条1項の重加算税の対象となるものと解するのが相当である。 そして,その場合,少なくとも法人の事業活動において代表者に準ずるような包括的な権限を有する者が,その権限内において行った行為については,その仮装行為について,代表者自身がこれを認識し,あるいは認識する可能性があったか否かにかかわらず,法人自身の行為と評価されるものとい うべきである。なぜなら,上記のとおり,相応の規模の法人の事業活動においては,代表者自身がその細部にわたって逐一把握することが不可能である場合が多く,納税の対象となる法人の事業活動に関して本条1項所定の仮装行為が行われた事実がありながら,代表者自身がこれを現実に把握することが不可能であったことを理由に重加算税の賦課を免れるとすれば,規模が大きく,事業内容が多岐にわたるような大規模法人ほど重加算税の賦課を免れる可能性が大きくなるといえ,課税の公平性に反する不合理な結果となるからである。 なお,これ の賦課を免れるとすれば,規模が大きく,事業内容が多岐にわたるような大規模法人ほど重加算税の賦課を免れる可能性が大きくなるといえ,課税の公平性に反する不合理な結果となるからである。 なお,これに関し,最高裁平成18年4月20日第1小法廷判決・民集60巻4号1611頁は,納税申告事務を委任された税理士が仮装行為を行って過少申告をした場合,納税者自身が,当該税理士がそのような行為を行うことを認識し,又は容易に認識することができ,法定申告期限までにその是正や防止の措置を講ずることができたのに,そのようにしなかった結果,過少申告がなされた場合に限り,上記税理士の行為を納税者本人の行為と同視することができ,重加算税を賦課することができるが,当該税理士の選任又は監督について,納税者に何らかの落ち度があったというだけでは足りない旨判示する。 しかしながら,上記判決の事例は,税務事務の専門家であり,納税者本人から納税事務処理の委任を受けた税理士の行為に関するものであり,このような場合,税務手続を依頼した納税者本人としては,専門家である税理士の行為を信頼するのが普通であると解されるのに対し,法人内部の者の行為の場合には,その行為者自身が法人を構成する要素であり,その者の行為が対外的には法人自身の行為と評価されるわけであるから,法人の代表機関である代表者と,法人に属し,法人内において一定の地位・権限を有する行為者との関係を,納税者本人と受任者である税理士との関係と同列に考えることはできないというべきである。 (3) これを本件についてみるに,前記前提事実(2)のとおり,A元常務が,控訴人C支店の業務として,本件各事業年度ないし本件各課税期間において本件架空取引を行い,控訴人は,本件架空取引にかかる架空外注費及び架空売上が計上された控訴人 前提事実(2)のとおり,A元常務が,控訴人C支店の業務として,本件各事業年度ないし本件各課税期間において本件架空取引を行い,控訴人は,本件架空取引にかかる架空外注費及び架空売上が計上された控訴人の総勘定元帳の記載に基づき,法人税及び消費税等の納付すべき税額をそれぞれ計算して,法定申告期限内に,その計算に基づく確定申告書を広島南税務署長へ提出し,これにより本件各事業年度にかかる法人税及び本件各課税期間にかかる消費税等について,過少申告がなされたものである(当事者間に争いがない。)。したがって,本条1項所定の仮装行為の行為者は,A元常務であるところ,A元常務の上記行為が,同項の「納税者」の行為と同視できるかについて,以下検討する。 (4) 本件各架空取引についての具体的検討ア G及びHとの架空取引について本件架空取引のうち上記2社との取引については,E社長自身が,事後的にせよこの取引の事実を認識し,これを了承していたことが認められ(甲64,乙9,弁論の全趣旨),これを納税者である控訴人自身の行為と同視できることは明らかである。 イ B,I及びJとの架空取引について(ア) 一方,上記3社との架空取引については,A元常務が自分自身の判断で行ったものであり,控訴人代表者であるE社長自身がその事実を把握していた事実は認められない。 (イ) しかしながら,証拠(甲14,20,28,29,43の1・2,44,46,47,77,83,106の1~3,143の1,144,151,152,乙3の1~6,12,13,14の1・2,19の1~69,20の1~7,21の1~64,22の1~24,23の1~20)及び弁論の全趣旨によれば,本件において,前記前提事実のほか,以下の事実が認められる。 aA元常務は,当時控訴人の代表権は有して の1~7,21の1~64,22の1~24,23の1~20)及び弁論の全趣旨によれば,本件において,前記前提事実のほか,以下の事実が認められる。 aA元常務は,当時控訴人の代表権は有していなかったものの,常務取締役C支店長の地位にあり,C支店の業務全般について,E社長から一任されていた。 また,控訴人の定款には,常務取締役の職務権限として「社長を補佐し会社の業務を処理する」と定められており,A元常務は,当時定期的に控訴人の取締役会にも出席していた。 b 控訴人のC支店は,従業員の人数構成としては比較的小規模な組織であったが,その売上高は,本件各事業年度(本件各課税期間)において,控訴人全体の売上高の約2割を占めていた。 c 控訴人は,E社長の一族が支配する同族会社であるところ,A元常務は,控訴人の創業者一族でE社長の実弟という身分関係にあり,控訴人の発行済株式の11.5%(E社長の28.5%に次ぐ同族中2番目)を保有していた。 (ウ) 上記(イ)のとおり,A元常務は,控訴人の代表権は有していなかったものの,社長,専務に次ぐ有力役員として,また,同族企業の創業者一族の一員として,控訴人の経営に大きな影響力を有していたものと認められ,特に控訴人の有力事業部門の一角であるC支店の業務については,E社長から包括的に一任されていたものであるから,A元常務がC支店の業務として行った本件架空取引については,本条1項の重加算税の課税要件に関して,納税者である控訴人自身の行為と同視し得るものというべきである。そして,E社長は,C支店の業務全般に関してA元常務に一任していたのであるから,A元常務による仮装行為について,E社長自身が具体的にこれを認識し,又は認識し得たか否かは,上記の判断に影響しないものというべきである。 また,本件架 に関してA元常務に一任していたのであるから,A元常務による仮装行為について,E社長自身が具体的にこれを認識し,又は認識し得たか否かは,上記の判断に影響しないものというべきである。 また,本件架空取引は,A元常務が私的な利益を図るためにその権限を濫用して行ったものであることがうかがわれるが,これは外部的には その権限内の行為といえるから,A元常務の内心的な意図がその私的利益を図るためであったとしても,本条1項適用の有無に影響するものとはいえない。 (5) 以上によれば,A元常務による本件架空取引は,いずれも本条1項所定の納税者(控訴人)による仮装行為と評価でき,重加算税の課税要件を充足すると認められるから,これにかかる本件各法人税賦課決定処分及び本件各消費税等賦課決定処分には違法性は認められない。 2 争点(2)(控訴人は,偽りその他不正の行為によりその全部又は一部の税額を免れたか-通則法70条5項適用の可否)について(1) 通則法70条(以下,この項において「本条」という。)は,国税の更正,決定等につき,原則として3年ないし5年の期限を経過した場合にはすることができない旨定めるとともに(本条1項ないし4項),不正行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた場合などにおいては,法定申告期限等所定の日から7年を経過するまで更正,決定等をすることができる旨規定している(本条5項)。 本条の規定は,国税の申告,納税等に関する法律関係を迅速に確定させ,税務事務処理の安定・円滑化と納税者の利益を図る目的で,課税庁による国税の更正,決定等に一定の期間制限をもうけたものと解され,本条5項が,不正行為による場合にはその期間を通常よりも長い7年と定めているのは,国税の申告手続等に不正行為があった場合,課税庁が不正行為を調査してこれ 定等に一定の期間制限をもうけたものと解され,本条5項が,不正行為による場合にはその期間を通常よりも長い7年と定めているのは,国税の申告手続等に不正行為があった場合,課税庁が不正行為を調査してこれを把握し,本来納付すべき正しい税額を確定するため,適切な更正,決定等を行うには通常の場合よりも長期間を要すること及び不正行為があった場合には,納税義務者側に帰責事由があり,納税義務者としても,通常よりも更正,決定等に要する期間が長くなったとしても,これを甘受すべきであると考えられることによると解される。 このような本条5項の趣旨に加え,同項が不正行為の主体について特に明 示していないことも考慮すれば,同項は,納税者本人(法人の場合は,その代表者。以下,特に断らない限り同じ。)に限らず,納税者と一定の関係(親族関係や,雇用,委任等の関係)にあって,納税者のために,その代理人,補助者等として一定の事務を行う者が不正行為を行った場合にも適用され,これは,納税者本人がその事実を認識しているか否かに関わらないものと解すべきである。なぜなら,今日において,納税義務を発生させる経済活動等は,組織として行われ,特に法人等の団体の場合,その代表者が当該法人等の活動全般について把握している場合はむしろ稀であって,組織内の構成員が,内部的に一定の権限を与えられ,当該権限に基づいて,自らの裁量判断によって行う行為も多いところ,課税庁との関係においては,納税者本人が内部的にその詳細を把握しているか否かにかかわらず,その行為は,納税義務者としての行為であることに変わりはないからである。 なお,控訴人は,本条5項を,通則法68条を受けた規定であり,本条5項所定の不正行為について,68条1項の仮装行為と同様に解釈すべきであると主張するが,本条は,国税諸手続の期間制 ないからである。 なお,控訴人は,本条5項を,通則法68条を受けた規定であり,本条5項所定の不正行為について,68条1項の仮装行為と同様に解釈すべきであると主張するが,本条は,国税諸手続の期間制限に関する規定(通則法7章)であって,附帯税(同法6章)の規定である68条とは,その趣旨,目的を異にするものであり,同条の解釈がそのまま本条5項の解釈に当てはまるものとはいえない(もっとも,68条所定の重加算税賦課要件を満たす場合には,本条5項の不正行為に該当することは明らかである。)。 (2) 上記(1)の本条5項の趣旨を踏まえ,本件における同項適用の有無について検討するに,本件架空取引はいずれもA元常務が行ったものであり(前記前提事実(2)),控訴人は,これに基づいて本件にかかる法人税及び消費税等の申告をしたこと(同(3)),A元常務は,本件架空取引当時において控訴人の代表者たる地位になかったことが認められる。 しかしながら,A元常務は,当時控訴人の常務取締役C支店長の要職にあり,控訴人代表者であるE社長から,C支店の業務全般について一任されて いたことが認められる(上記1(4)イ(イ))ところ,A元常務による本件架空取引は,その取締役C支店長としての職務上の権限に基づいて,控訴人の業務として行われたものである。したがって,それについて代表者であるE社長自身がどの程度認識・把握していたか否か,あるいは,A元常務が実際には自らの私的利益を図る目的で本件架空取引を行ったか否かにかかわらず,本条5項の適用に関しては,納税義務者である控訴人が不正行為を行ったものと評価するのが相当である。そうすると,控訴人は,本件架空取引に基づいて所定の申告を行い,その結果,税額の一部を免れたものであるから,本件架空取引にかかる本件各処分については,本条 行為を行ったものと評価するのが相当である。そうすると,控訴人は,本件架空取引に基づいて所定の申告を行い,その結果,税額の一部を免れたものであるから,本件架空取引にかかる本件各処分については,本条5項が適用されるものと解すべきである。 そして,本件各処分は,いずれも本条5項所定の期間内になされたものであるから,本件各処分のいずれについても,本条違反の違法は認められず,これに関する控訴人の主張は理由がない。 3 争点(3)(本件各処分の適法性)について当裁判所も,上記1,2の判断を前提とし,本件各処分はいずれも適法であると判断する。その理由は,原判決55頁23行目から86頁6行目までのとおりであるから,これを引用する。 4 結論以上によれば,本件各処分はいずれも適法であり,控訴人の請求は棄却すべきところ,これと同旨の原判決は相当であるから,本件控訴は理由がなく,これを棄却することとする。 広島高等裁判所第3部 裁判官曳野久男 裁判官木村哲彦 裁判長裁判官筏津順子は,転補のため署名押印することができない。 裁判官曳野久男
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