- 1 -平成25年9月5日判決言渡平成25年(行ケ)第10045号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成25年7月9日判決 原告カガミクリスタル株式会社 訴訟代理人弁理士小谷 武木村吉宏伊東美穂長谷川綱樹永露祥生 被告特許庁長官指定代理人前山るり子大橋信彦堀内仁子守屋友宏 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の求めた判決 - 2 -特許庁が不服2012-422号事件について平成24年12月28日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要本件は,商標登録出願の拒絶査定を不服とする審判請求を成り立たないとした審決の取消訴訟である。 争点は,本願商標と引用商標との類否(商標法4条1項11号)及び本願商標が他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標に該当するか(商標法4条1項15号)である。 1 特許庁における手続の経緯原告は,平成23年1月24日,下記の本願商標につき,登録出願をし(商願2011-4144号・乙1),指定商品につき同年7月20日に補正(乙3)をしたが,同年10月7日,拒絶査定を受けた。原告は,平成24年1月10日に不服審判請求をするとともに(不服2012-422号),同年3月2日付けの手続補正書(乙5)により,指定商品を補正し 乙3)をしたが,同年10月7日,拒絶査定を受けた。原告は,平成24年1月10日に不服審判請求をするとともに(不服2012-422号),同年3月2日付けの手続補正書(乙5)により,指定商品を補正し,本願商標の指定役務は下記のとおりのものになったが,特許庁は,同年12月28日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は平成25年1月21日に原告に送達された。 - 3 -【本願商標】 指定商品:第21類「切子模様を備えるクリスタルガラス製品,切子模様を備えるグラス,切子模様を備えるコップ類,その他の切子模様を備える食器類,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製の像,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製の造形品,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製の置物,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製の花瓶・水盤・風鈴,切子模様を備える食品保存用ガラス瓶,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製の容器,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振出し容器,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製調味料入れ,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製コースター,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製ろうそく立て,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製化粧用具,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製愛玩動物用食器,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製水槽」 2 審決の理由の要点【引用商標(登録第5085277号)】「江戸切子」(標準文字) - 4 -・平成18年6月5日登録出願(地域団体商標)・平成19年10月19日設定登録・指定商品役務別紙「引用商標指定商品及び指定役務」記載のとおり・商標権者東京カット -・平成18年6月5日登録出願(地域団体商標)・平成19年10月19日設定登録・指定商品役務別紙「引用商標指定商品及び指定役務」記載のとおり・商標権者東京カットグラス工業協同組合(本件組合)(1) 商標法4条1項11号について本願商標において,「カガミクリスタル」の片仮名と「江戸切子」の文字とは,視覚上分離して把握されるものであり,本願商標全体を称呼すると「カガミクリスタルエドキリコ」と13音と冗長である上,本願商標にあっては,常に一体のものとして看取されるとする特段の事情もないものであるから,これに接する取引者,需要者は,その構成中,「カガミクリスタル」の文字よりも太く,大きく書された「江戸切子」の文字に着目し,該部分をもって取引に資する場合も少なくないと判断するのが相当である。両商標は,「江戸切子」の文字において共通するものであり,「エドキリコ」の称呼及び観念を共通にする類似の商標である。そして,本願商標の指定商品中,「切子模様を備えるグラス,切子模様を備えるコップ類,その他の切子模様を備える食器類,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製の置物,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製の花瓶・水盤・風鈴,切子模様を備える食品保存用ガラス瓶,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製の容器,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振出し容器,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製調味料入れ,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製コースター」は,引用商標の指定商品と同一又は類似のものであるから,本願商標は,商標法4条1項11号に該当するものである。 (2) 商標法4条1項15号について本願商標は,その構成中に,取引者,需要者間に広く認識されている引 同一又は類似のものであるから,本願商標は,商標法4条1項11号に該当するものである。 (2) 商標法4条1項15号について本願商標は,その構成中に,取引者,需要者間に広く認識されている引用商標と同一の綴り字からなる「江戸切子」の文字を有するものであり,しかも,本願商標の指定商品と引用商標の指定商品及び指定役務とは,密接な関連性を有するものであることからすれば,本願商標をその指定商品に使用する場合には,これに接する - 5 -取引者,需要者は,周知・著名となっている引用商標を連想,想起し,該商品が引用商標の商標権者又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく,その出所について誤認,混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。 したがって,本願商標は商標法4条1項15号に該当するものである。 (3) 以上によれば,本願商標は,商標として登録を受けることはできない。 第3 原告主張の審決取消事由 1 取消事由1(商標法4条1項11号該当性判断の誤り)(1) 本願商標の「江戸切子」部分についての分離観察の可否についてア原告について原告は,創業以来80年近くの伝統を有し,戦前は皇室御用達の指示を受け,戦後は宮内庁・官邸・外務省等に主にクリスタルガラス食器やグラスを納入する,日本を代表し,世界に知られているガラス食器メーカーである。日本全国で高級クリスタルガラス製品を販売し,我が国において最も高級なクリスタルガラス製品メーカーとして知らぬ者はいないというほどの著名性を有しているといっても過言ではない。原告は,長年に亘る積極的な宣伝・販売活動を行い,自身の日本全国に広がる販売ネットワークを通じて「カガミクリスタル」ブランドによる江戸切子を販売してお どの著名性を有しているといっても過言ではない。原告は,長年に亘る積極的な宣伝・販売活動を行い,自身の日本全国に広がる販売ネットワークを通じて「カガミクリスタル」ブランドによる江戸切子を販売しており,原告によるこれらの活動が,江戸切子が日本全国に広く知られるようになる上で,非常に大きく貢献していることは明らかである。その結果,「カガミクリスタル」=「江戸切子」,あるいは「江戸切子」=「カガミクリスタル」という構図をもって,伝統的な高級カットグラス器を愛好する需要者や取引者に広く知られているのである。 イ 「江戸切子」の自他商品識別力について引用商標「江戸切子」は引用商標権者である本件組合が有する地域団体商標であるところ,江戸切子の「江戸」は,産地や時代を表するものではなく,江戸時代に - 6 -その起源を持つ伝統的なガラス細工の技法と,これによって製造されたカットグラス製品,といった意味合いを表すにとどまる。しかも,江戸切子が周知性を獲得する過程において,本件組合員ではない原告が大きく貢献している。また,過去から現在に至るまで,原告や引用商標権者以外にも,江戸切子の製造販売を行っている事業者が,東京以外においても存在しているのである。 そうとすれば,「江戸切子」の文字が付されたカットグラス製品について,我が国の需要者等は,それから明確な出所や地域を想起するというよりも,所定のカットグラス技法とこれを用いて製作されたカットグラス製品一般を意味するものとして認識されるとするのが自然である。その意味で,「江戸切子」の文字は,カットグラス製品について出所表示機能を果たしているとはいい難く,その結果,自他商品等識別力を欠くか,極めて乏しいものである。 ウ分離観察の可否について以上の事実を踏まえると,次のように考え ラス製品について出所表示機能を果たしているとはいい難く,その結果,自他商品等識別力を欠くか,極めて乏しいものである。 ウ分離観察の可否について以上の事実を踏まえると,次のように考えるべきである。 本願商標は,「カガミクリスタル」の片仮名文字,及び「江戸切子」の漢字を縦書きしてなる。これらは2列に分けて配置され,文字の大きさも異なってはいるが,いずれも筆文字風の同一の書体でまとまりよく書されている。審決では,両者は視覚上分離して把握されるものと認定されているが,「カガミクリスタル」の文字が,同じ書体からなる「江戸切子」の文字の右上に小さめに配置されているという構成からすれば,本願商標に接する需要者等は,両者を一体的に結合されたものとして認識すると考えるのが自然である。 また,「江戸切子」が一定の技法を用いて製作されたカットグラス製品の一般的な名称であって,その指定商品について自他商品識別力に乏しく,かつ,「カガミクリスタル」が指定商品に係るガラス関連商品について広く知られており,江戸切子とも密接な関係にあるという取引の実情からすれば,「カガミクリスタル」と「江戸切子」とはさらに強く結び付けられて把握される。その結果,本願商標は特に冗長なものとは認識されず,商標全体で「カガミクリスタルエドキリコ」と一連に称呼さ - 7 -れ,その観念には「カガミクリスタル株式会社が製造販売する江戸切子製品」といった内容が想起される。 そして,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から 部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁判所平成20年9月8日判決(平成19年(行ヒ)第223号))とされているところ,「江戸切子」は自他商品識別力に乏しい表示である一方,上記のとおり,「カガミクリスタル」は我が国において最も高級なクリスタルガラス製品メーカーとして知られる原告を指すものと認識され,強く識別力を発揮する部分であるから,具体的な出所を示す「カガミクリスタル」よりも「江戸切子」の方が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるということはあり得ない。「カガミクリスタル」から出所識別標識としての称呼,観念が生ずるため,「それ(「江戸切子」)以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合」にも該当しない以上,本願商標において,「江戸切子」のみを分離抽出して類否判断を行うべき事情は見受けられない。 (2) 本願商標と引用商標の類否について本願商標は,筆文字風の書体で,「カガミクリスタル」の片仮名文字,及び「江戸切子」の漢字を縦書きしてなり,その称呼は「カガミクリスタルエドキリコ」又は「カガミクリスタル」,観念は「日本を代表するガラス製品メーカーであるカガミクリスタル株式会社が製造販売する高級な江戸切子製品」又はその出所である「カガミクリスタル株式会社」である。これに対し,引用商標は「江戸切子」の文字を標準文字で書してなり,これより「エドキリコ」の称呼及び「江戸切子」の観念を生ずる。 外観については,本願商標と引用商標とは,明らかに構成が異なり ある。これに対し,引用商標は「江戸切子」の文字を標準文字で書してなり,これより「エドキリコ」の称呼及び「江戸切子」の観念を生ずる。 外観については,本願商標と引用商標とは,明らかに構成が異なり,両者は一見 - 8 -して区別できるから,両商標は外観上非類似の商標である。 称呼については,本願商標からは「カガミクリスタルエドキリコ」又は「カガミクリスタル」の称呼が生ずるのに対して,引用商標からは「エドキリコ」の称呼が生ずる。両称呼は音構成及び音数において明らかな差異を有し,明確に区別し得るものであるから,両商標は称呼上非類似の商標である。 観念については,本願商標からは「日本を代表するガラス製品メーカーであるカガミクリスタル株式会社が製造販売する高級な江戸切子製品」又はその出所である「カガミクリスタル株式会社」の観念が生ずるのに対して,引用商標からは「江戸切子」の観念が生ずる。両観念が同一でないことから,両商標は観念においても非類似の商標である。 以上のとおり,本願商標と引用商標とは,外観・称呼・観念のいずれにおいても非類似であり,商標法4条1項11号に該当するとした審決の認定は誤りである。 2 取消事由2(商標法4条1項15号該当性判断の誤り)地域団体商標は,本来であれば,全国的な周知性を獲得して商標法3条2項の適用を受けなければ登録を受けられない性質の商標について,登録要件である周知性の程度を引き下げて,隣接都道府県に及ぶ程度で周知性を獲得していれば商標登録を認めるものである。 それに対して,商標法4条1項15号の制度趣旨は,類似範囲のほか,非類似範囲であっても出所混同のおそれが生じ得るほどに高い周知性を有する商標を保護し,該当する商標の登録を阻却することを目的としている。そのため,同号が適用されるの 号の制度趣旨は,類似範囲のほか,非類似範囲であっても出所混同のおそれが生じ得るほどに高い周知性を有する商標を保護し,該当する商標の登録を阻却することを目的としている。そのため,同号が適用されるのは,相当程度の周知性を有する商標に限られる。商標審査基準では,同号の適用例として全国的に周知となっている場合を例示しているように,同号に該当するためには,相当程度の周知性を獲得していることが前提となる。 とすれば,地域団体商標の登録に求められる周知性の程度は,商標法4条1項15号における周知性の程度よりも低いと考えられ,地域団体商標として登録を受け - 9 -ているとはいえ,その認定のみをもって商標法4条1項15号を適用し得るほどの周知性を獲得しているということはできない。 以上のことからすれば,第三者が「江戸切子」の表示を使用したとしても,引用商標権者又はその構成員の業務に係る商品又は役務であると誤認し,その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれ(狭義の混同),若しくは,引用商標権者又はその構成員と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認し,その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれ(広義の混同)があるということはできない。 したがって,本願商標が商標法4条1項15号に該当するとした審決の認定は誤りである。 第4 被告の反論 1 取消事由1に対し(1) 分離観察の可否について本願商標は,「カガミクリスタル」の片仮名を縦書きし,その左に,「カガミクリスタル」の文字よりも3倍程度の大きさで顕著に大きく表された「江戸切子」の漢字を,筆書き風の書体で,「カガミクリスタル」の「ミ」の文字部分を書き始めとし,低い位置に縦書きしてなるものであ カガミクリスタル」の文字よりも3倍程度の大きさで顕著に大きく表された「江戸切子」の漢字を,筆書き風の書体で,「カガミクリスタル」の「ミ」の文字部分を書き始めとし,低い位置に縦書きしてなるものであるところ,「カガミクリスタル」の文字部分と「江戸切子」の文字部分とは,文字種が異なり,2行に分けて書されており,文字の大きさも異なり,文字の書き始めの位置も異なるものである。そうすると,外観上,極めて容易に分離されて観察され,本願商標に接する需要者は,本願商標が,「カガミクリスタル」の文字部分と,「江戸切子」の文字部分の,2つの文字部分から構成されていると,一見して直ちに看取し得るといえる。そして,本願商標の構成中,「江戸切子」の文字部分は,やや特徴的な筆書き風の書体で,「カガミクリスタル」の文字に比して,3倍程度の大きさで書されているから,強い印象を与えるものといえる。 - 10 -「江戸切子」は,本件組合が主催又は参加した展示会・販売会等や,構成員が参加した展覧会・販売等においてPRされており,そのことは新聞によって本件組合及びその構成員の名称とともに報道されている。これにより,引用商標権者の業務に係る商品を表示するものとして,また,伝統的工芸品として,需要者の間に広く知られているから,この意味においても,「江戸切子」の文字部分は,強い印象を与えるといえる。 そうすると,本願商標は,「江戸切子」の文字部分が強く支配的な印象を与えるものといえるから,本願商標と引用商標との類否判断の際には,本願商標のうち「江戸切子」の部分だけを引用商標と比較することも,許されるというべきである。 (2) 本願商標と引用商標との類否について本願商標と引用商標の外観は,本願商標の外観が前記のとおりであることから,差異を有するが,本願商標は と比較することも,許されるというべきである。 (2) 本願商標と引用商標との類否について本願商標と引用商標の外観は,本願商標の外観が前記のとおりであることから,差異を有するが,本願商標は,その構成中に,引用商標と同一の綴り字からなる「江戸切子」の文字を有するものであり,一定程度の類似性を有するといえる。 また,称呼・観念について,本願商標は,需要者に強く支配的な印象を与える「江戸切子」の文字部分から「エドキリコ」の称呼が生じ,「東京(江戸)の切子」といった程度の観念が生ずる。これに対し,引用商標は,「江戸切子」の文字を表してなるから,これより「エドキリコ」の称呼が生じ,「東京(江戸)の切子」といった程度の観念が生ずるのであり,本願商標と引用商標は,「エドキリコ」の称呼及び「東京(江戸)の切子」の観念において共通する。 さらに,「江戸切子」は,引用商標権者の業務に係る商品を表示するものとして,また,伝統工芸品として,需要者の間に広く知られているものといえる。 そうすると,本願商標に接する需要者は,「江戸切子」の文字部分に着目して記憶し,取引に当たることも決して少なくないといえる。 以上によれば,本願商標は,引用商標と,その称呼及び観念を共通にし,外観も一定程度の類似性を有するから,取引の実情も考慮すれば,引用商標の指定商品と同一又は類似の商品に使用されるときは,その出所について混同を生ずるおそれが - 11 -あり,引用商標に類似する商標というべきである。したがって,審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2に対し前記のとおり,本願商標と引用商標は,類似性が高く,引用商標は,引用商標権者に係る商品を表示するものとして著名であり,引用商標権者の業務に係る商品と本願商標の指定商品の関連性は高いから,需要者におい 前記のとおり,本願商標と引用商標は,類似性が高く,引用商標は,引用商標権者に係る商品を表示するものとして著名であり,引用商標権者の業務に係る商品と本願商標の指定商品の関連性は高いから,需要者においてこれらのことを普通に支払われる注意力を基準として総合的に判断すれば,本願商標は,原告がその指定商品に使用するときは,引用商標権者の業務に係る商品を示すものとして著名である「江戸切子」を連想,想起し,その商品が引用商標権者又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生ずるおそれが極めて高いものといわなければならない。 したがって,本願商標が商標法4条1項15号に該当するとの審決の判断に誤りはない。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(商標法4条1項11号該当性判断の誤り)について(1) 商標法4条1項11号に係る商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に,商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,そのためには,まずその外観,観念,称呼の対比を基準にして需要者等に与える印象,記憶,連想等を総合し,要部が抽出できるならばそれに基づいて考察すべく,その商品又は役務の取引の実情を明らかにし得る場合には,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである。 (2) 本願商標の要部について本願商標は,「カガミクリスタル」の片仮名文字と「江戸切子」の漢字文字とが縦書き二段に配列されてなるところ,「江戸切子」の文頭はその右上にある「カガミク - 12 -リスタル」の「ミ」の位置あたりから始まり,「江戸切子」が字下げされた段違いの配列となっている。「カガミクリスタル」の文字は,「江戸切 ,「江戸切子」の文頭はその右上にある「カガミク - 12 -リスタル」の「ミ」の位置あたりから始まり,「江戸切子」が字下げされた段違いの配列となっている。「カガミクリスタル」の文字は,「江戸切子」の文字と比較して,一文字につき高さで約2分の1,幅で約3分の1の大きさで示され,文字の太さも2分の1程度である。いずれも筆文字体であるところ,やや特徴のある字体であるため,「江戸切子」部分は,漢字で大きく示されていることや「江戸切子」製品自体が全国的に周知であること(争いがない)から,当該文字が「江戸切子」との表記であるとすぐに判読できるが,「カガミクリスタル」部分は,一見して判読が容易であるとまではいえない。そして,「切子」は,広辞苑において「(1)四角な物の,かどかどを切り落とした形,(2)切籠灯籠の略,(3)切り子グラスの略」(甲1)とされ,「切り子グラス」について,「彫琢または切込細工を施したクリスタルガラス。きりこガラス。」(甲2)とされていることから,「江戸」と結びついて,江戸時代又は江戸地方の切り子ガラスとの観念が自然に生じるほか,東京及びその周辺地域で製作される金属や砥石の円盤を用いて表面をカットする技法により製作される伝統工芸品としての江戸切子(甲3,5)を想起するものと解される。 以上からすると,「江戸切子」部分の文字は,「カガミクリスタル」の文字から明瞭に区別することができ,本願商標に接した需要者等は,大きく記された「江戸切子」の漢字部分を強く意識することが多いものと認められる。 「カガミクリスタル」部分についても,後記(4)で認定するところを踏まえると,自他識別機能があることは否定し得ないが,「カガミクリスタル」の文字と「江戸切子」の間には,上記のとおりの配置や大きさ等の違いがあり,片仮名と漢字の違いもあるこ (4)で認定するところを踏まえると,自他識別機能があることは否定し得ないが,「カガミクリスタル」の文字と「江戸切子」の間には,上記のとおりの配置や大きさ等の違いがあり,片仮名と漢字の違いもあることからして,需要者や取引者は,両者を分離して観察し,外観上,大きく注目され,かつ製品としてその名が知られていて観念上も注目される「江戸切子」文字が,一見して判読しにくい「カガミクリスタル」文字を凌駕して,取引者,需要者の注意をひく部分として本願商標の要部をなすというべきである。したがって,以下の判断においては,この要部を中心に対比するのが相当である。 (3) 本願商標と引用商標の対比 - 13 -本願商標は,前記(2)に述べた外観であるのに対し,引用商標は標準文字で示されるものであるから,前記に述べたとおり,本願商標の要部が「江戸切子」部分であることからすれば,漢字で「江戸切子」と記載されている点において共通しており,外観において共通する部分がある。 また,称呼は,本願商標の要部である「エドキリコ」において共通し,「江戸切子」という観念についても共通する。 さらに,本願商標の指定商品のうち「切子模様を備えるグラス,切子模様を備えるコップ類,その他の切子模様を備える食器類,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製の置物,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製の花瓶・水盤・風鈴,切子模様を備える食品保存用ガラス瓶,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製の容器,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振出し容器,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製調味料入れ,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製コースター」は,引用商標の指定商品と同一又は類似のものである。そして,次の(4)で認定するところを 容器,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製調味料入れ,切子模様を備えるクリスタル製又はガラス製コースター」は,引用商標の指定商品と同一又は類似のものである。そして,次の(4)で認定するところを踏まえると,原告の本願商標と本件組合又はその組合員の使用する引用商標とで,いずれかが他方を凌駕して圧倒的に顕著な著名性を有するとまではいえず,取引における誤認混同のおそれが存在している。 そうすると,本願商標と引用商標は,外観において共通する部分があり,称呼と観念を共通にする類似の商標というべきであり,また,指定商品は同一又は類似していると認められるから,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした審決の判断に誤りはない。 (4) 原告は,引用商標が地域団体商標であることから,本件組合の引用商標は周知性を獲得していないとし,他方で,江戸切子が周知性を獲得する過程において,本件組合員でない原告の貢献が大きい旨主張する。この主張は,引用商標の登録要件欠如までの主張ではなく,本願商標と引用商標との類否判断における総合判断要素として考慮すべきものとの主張と理解されるので,検討を加える。 - 14 -本件組合は,大正7年に東京硝子研磨業組合として発足し,昭和30年に現名称である「東京カットグラス工業協同組合」と名称変更した団体で(乙9),平成18年に地域団体商標として引用商標の登録出願をしているところ,証拠(甲6,乙10ないし乙63)によれば,同組合は,ホームページや店舗における直販により江戸切子製品を販売し,東京及び東京以外でも開催される各種の展示会を開催し,その案内や成果が東京版に限定されず各種新聞に掲載されているほか,昭和60年に東京都の伝統工芸品指定を受け,平成14年1月に経済産業省の伝統的工芸品指定を受けるなどしており,本 種の展示会を開催し,その案内や成果が東京版に限定されず各種新聞に掲載されているほか,昭和60年に東京都の伝統工芸品指定を受け,平成14年1月に経済産業省の伝統的工芸品指定を受けるなどしており,本件組合による「江戸切子」商品は周知性を有しているといえ,「江戸切子」文字自体に自他識別機能がある。 他方で,原告が取消事由1(1)アで主張するような創業以来80年近くの伝統を有するクリスタル製品メーカーとして全国的に知られる会社であり,「カガミクリスタル」のブランドで商品展開していることは証拠上明らかである(甲7ないし56,66ないし70,73,76ないし79,89)。 しかし,現に引用商標が地域団体商標として登録され,本件組合の商標として江戸切子が一定程度の周知性を保っていることも否定することができない以上,原告の本願商標が,要部と認めざるを得ない「江戸切子」部分において引用商標の自他識別機能を凌駕していると認めることはできないといわなければならない。原告の上記商品展開の経緯をもってしても,前記類否判断の結論は動かないといわざるを得ない。 2 取消事由2(商標法4条1項15号該当性判断の誤り)について前記のとおり,本願商標が商標法4条1項11号に該当する以上,同項15号の適用についての判断は必要がない。 第6 結論以上によれば,審決の判断に誤りはないから,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 - 15 - 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官塩月秀平 裁判官 塩月秀平 裁判官中村 恭 裁判官中武由紀 - 16 -平成25年(行ケ)第10045号判決別紙 引用商標指定商品及び指定役務第14類「東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製ブローチ,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製ループタイ,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製ペンダント,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製時計」第21類「東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製酒瓶,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製冠水瓶,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製徳利,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製ぐい呑み,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製盃,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産さ 呑み,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製盃,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製グラス,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製皿,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製小鉢,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製菓子鉢,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製銚子,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製 - 17 -三段重,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製水指,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製ボンボニエール,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製なつめ,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製水差し,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製ナプキンホルダー,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製花瓶,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製飾り皿,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田 川区及びその周辺で生産されたガラス製花瓶,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製飾り皿,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製室内装飾用置物,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製飾箱,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製風鈴,東京地方に由来する製法により東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で生産されたガラス製香炉」第40類「東京都江東区・墨田区・葛飾区・江戸川区及びその周辺で行われる東京地方に由来するガラスの加工」
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