平成23(ネ)10084等 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成24年7月4日 知的財産高等裁判所 4部 判決 原判決一部変更 東京地方裁判所 平成21(ワ)24860
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判決文本文54,541 文字)

平成24年7月4日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成23年(ネ)第10084号,平成24年(ネ)第10025号損害賠償請求控訴,同附帯控訴事件原審・東京地方裁判所平成21年(ワ)第24860号口頭弁論終結日平成24年6月6日判決当事者別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 1審原告ネクストの附帯控訴及び1審被告らの控訴をいずれも棄却する。 2 1審原告コミュニティの附帯控訴に基づき,原判決主文3項ないし5項のうち1審原告コミュニティと1審被告らに関する部分を次のとおり変更する。 (1) 1審被告らは,1審原告コミュニティに対し,連帯して475万1377円並びにうち474万5877円に対する平成21年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員及びうち5500円に対する同年9月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 1審被告レントレックス及び同 Y1 は,1審原告コミュニティに対し,連帯して2600円を支払え。 (3) 1審原告コミュニティのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用の負担は,次のとおりとする。 (1) 1審原告ネクストと1審被告らとの間の控訴費用は1審被告らの,同附帯控訴費用は1審原告ネクストの各負担とする。 (2) 1審原告コミュニティと1審被告らとの間の訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを5分し,その4を1審原告コミュニティの負担とし,その余を1審被告らの負担とする。 4 この判決は,主文2項の(1)及び(2)に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴及び附帯控訴の趣旨 1 1審被告らの控訴の趣旨(1) 原判決中,1審被告ら敗訴部分を取り消す。 (2) 前項の )及び(2)に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴及び附帯控訴の趣旨 1 1審被告らの控訴の趣旨(1) 原判決中,1審被告ら敗訴部分を取り消す。 (2) 前項の部分に係る1審原告らの請求をいずれも棄却する。 (3) 訴訟費用は,1,2審とも,1審原告らの負担とする。 2 1審原告らの附帯控訴の趣旨(1) 原判決を次のとおり変更する。 ア 1審被告らは,1審原告ネクストに対し,連帯して2348万1080円及びこれに対する平成21年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 イ 1審被告レントレックス及び同 Y1 は,1審原告ネクストに対し,連帯して1万2866円を支払え。 ウ 1審被告らは,1審原告コミュニティに対し,連帯して2418万3750円及びこれに対する平成21年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 エ 1審被告レントレックス及び同 Y1 は,1審原告コミュニティに対し,連帯 して1万3251円を支払え。 (2) 訴訟費用は,1,2審とも,1審被告らの負担とする。 (3) (1)項アないしエにつき仮執行宣言第2 事案の概要 1 当事者(証拠を掲記したものを除き,当事者間に争いがない。)(1) 1審原告ネクストは,投資用マンション「ガーラマンション」を中心とした不動産の売買等を業とする資本金の額が18億5897万円の株式会社であり,平成19年3月以来,東京証券取引所市場第2部に上場している(甲1,15,84)。 (2) 1審原告コミュニティは,1審原告ネクストが販売した不動産の管理及び賃貸等を業とする資本金の額が5000万円の株式会社であり,1審原告ネクストの完全子会社である(甲2,15)。 (3) 1審被告 Y1 は,平成14年3月, 審原告ネクストが販売した不動産の管理及び賃貸等を業とする資本金の額が5000万円の株式会社であり,1審原告ネクストの完全子会社である(甲2,15)。 (3) 1審被告 Y1 は,平成14年3月,1審原告ネクストに営業社員(従業員)として採用され,営業部に所属して投資用マンションの販売業務に携わり,平成18年2月,課長に就任したが,平成20年4月,カスタマーサポートグループへの異動を経て,同年7月9日,1審原告ネクストを退職した(甲59,60,66,乙62)。 (4) 1審被告 Y2 は,平成15年2月,1審原告ネクストに営業社員(従業員)として採用され,営業部に所属して投資用マンションの販売業務に携わった後,平成20年10月27日,1審原告ネクストを退職した(乙20,63)。 (5) 1審被告レントレックスは,投資用マンションを中心とした不動産の賃貸管理,仲介等を業とする資本金の額が990万円の株式会社であり,平成20年11月14日,代表取締役を務めている1審被告 Y1 によって設立され,同月頃,1審被告 Y2 を従業員として雇用したものであるが,1審原告コミュニティとは競争関係にある(甲3,乙10)。1審被告レントレックスは,創業から平成21年2月頃までは,1審被告 Y1 及び同 Y2 が稼働していたほかに1審被告 Y1 の妻が手 伝っていたが,その他に従業員はいなかった(乙62,原審1審被告 Y1 )。 2 1審原告らの請求本件は,1審原告らが,1審被告らに対し,後記の損害賠償責任に基づき,1審原告ネクストにおいては,①1審被告らの後記の各違法行為に対応を余儀なくされた費用相当額(48万1080円),②信用毀損による損害額(2000万円),③弁護士費用(300万円),以上合計2348万1080円及びこれに対する平成2 告らの後記の各違法行為に対応を余儀なくされた費用相当額(48万1080円),②信用毀損による損害額(2000万円),③弁護士費用(300万円),以上合計2348万1080円及びこれに対する平成21年8月1日(1審被告 Y2 に対する訴状送達の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払のほか,1審被告レントレックス及び同 Y1 に対しては,上記2348万1080円に対する平成21年7月28日(1審被告 Y1 及び同レントレックスに対する訴状送達の日)から同月31日(上記附帯請求の起算日の前日)までの民法所定の年5分の割合による遅延損害金1万2866円の連帯支払を求め,1審原告コミュニティにおいては,①1審被告らの後記の各違法行為に対応を余儀なくされた費用相当額(4万8730円),②信用毀損による損害額(2000万円),③逸失委託料相当額(832万1340円),④弁護士費用(300万円),以上合計3137万0070円のうち2418万3750円及びこれに対する上記平成21年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払のほか,1審被告レントレックス及び同Y1 に対しては,上記2418万3750円に対する上記平成21年7月28日から同月31日までの民法所定の年5分の割合による遅延損害金1万3251円の連帯支払を求める事案である。 (1) 第1次請求1審被告らにおいて,①1審原告らからは不正取得行為により,秘密保持義務を負った1審原告らの元従業員からはその不正取得行為について悪意重過失により,1審原告らの営業秘密である顧客情報を取得し,当該顧客情報に基づき1審原告らの顧客に連絡して使用し(不正競争防止法2条1項4,5号。不正取得行為による顧客情報使用),もって賃貸管理の委託先を1審原告 1審原告らの営業秘密である顧客情報を取得し,当該顧客情報に基づき1審原告らの顧客に連絡して使用し(不正競争防止法2条1項4,5号。不正取得行為による顧客情報使用),もって賃貸管理の委託先を1審原告コミュニティから1審被告レ ントレックスに変更するよう勧誘して賃貸管理委託契約を締結し,②1審原告らから開示され,秘密保持義務を負った1審原告らの元従業員からはその不正開示行為について悪意重過失により開示された,当該顧客情報に基づき,図利加害目的で1審原告らの顧客に連絡して使用し(同項7,8号。図利加害目的による顧客情報使用),もって賃貸管理の委託先を1審原告コミュニティから1審被告レントレックスに変更するよう勧誘して賃貸管理委託契約を締結し,③これらの連絡に当たり,1審原告ネクストが債務超過で倒産する可能性が高く,1審原告コミュニティも連鎖倒産するなどと,競争関係にある1審原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知した(同項14号。信用毀損)ことを理由とする不正競争防止法4条に基づく損害賠償責任(ただし,1審被告レントレックスについては,選択的に,一審被告 Y1 の行為に係る会社法350条に基づく損害賠償責任及び1審被告 Y2 の行為に係る民法715条1項に基づく損害賠償責任)(2) 第2次請求1審被告 Y1 及び同 Y2 において,前記(1)の行為が秘密保持義務や競業避止義務を定めた誓約書違反又は就業規則違反に当たることを理由とする債務不履行に基づく損害賠償責任 3 原判決の要旨原判決は,原判決別紙顧客移動一覧表及び顧客勧誘一覧表記載の顧客番号1ないし65の66名の顧客(顧客番号49の顧客は2名と数える。以下,当該各一覧表に記載の顧客を,その番号に従って「顧客番号1」などという。)のうち,51名に対する不正競争防止法2 表記載の顧客番号1ないし65の66名の顧客(顧客番号49の顧客は2名と数える。以下,当該各一覧表に記載の顧客を,その番号に従って「顧客番号1」などという。)のうち,51名に対する不正競争防止法2条1項7,8号所定の図利加害目的による顧客情報使用を認定したほか,同じく66名の顧客のうち,10名に対する同項14号所定の信用毀損を認定し,同法4条に基づき,1審原告らの請求を1審原告ネクストについては,信用毀損による損害(100万円)及び弁護士費用(10万円),1審原告コミュニティについては,逸失委託料相当額(303万3214円),信用毀損による損害(50万円)及び弁護士費用(40万円)及びこれに対する遅延損害金の 支払を求める限度で認容した。 これに対し,1審被告らは,原判決を不服として控訴し,1審原告らも,附帯控訴した。 4 前提となる事実(証拠を掲記したものを除き,当事者間に争いがない。)(1) 1審原告ネクストの秘密管理・競業禁止に関する規定平成19年2月1日に実施された1審原告ネクストの就業規則(以下「本件就業規則」という。)には,次の規定がある(甲27の2)。 (服務上の厳守事項)12条社員は常に次の事項を守らなければならない。 15号会社内外を問わず,在職中又は退職後においても,会社,取引先等の機密,機密性のある情報,顧客情報,企画案,ノウハウ,データ,ID,パスワード及び会社の不利益となる事項を第三者に開示,漏洩,提供しないこと,またコピー等をして社外に持ち出さないこと(退職・解雇後の義務)54条2項退職し又は解雇された者でも,在職中に知り得た会社の業務上の機密を他に漏らしてはならない。 (競業避止義務)55条社員のうち役職者,又は企画の職務に従事していた者が退職し,又は解雇された場合は 職し又は解雇された者でも,在職中に知り得た会社の業務上の機密を他に漏らしてはならない。 (競業避止義務)55条社員のうち役職者,又は企画の職務に従事していた者が退職し,又は解雇された場合は,会社の承認を得ずに離職後6ヵ月間は日本国内において会社と競業する業務を行ってはならない。また,会社在職中に知り得た顧客と離職後1年間は取引をしてはならない。 (金品等の返還等)56条4項退職し又は解雇された従業員は,退職し又は解雇された後も会社で知り得た機密を保持しなければならない。 (2) 1審被告 Y1 及び同 Y2 の誓約書の提出1審被告 Y1 は,平成20年5月14日,1審被告 Y2 は,同年9月16日,い ずれも1審原告ネクストに退職を申し入れるとともに,次の誓約事項を含む誓約書(以下「本件誓約書」という。)を提出し,以後各退職日までは有給休暇を取得した(甲4,5,66,乙62,63)。 1項貴社在職中に知り得た貴社および貴社の顧客についての機密を保持します。 この機密のなかには,貴社在職中知り得た個人情報を含みます。 2項貴社在職中に職務遂行上の必要から交付を受けた業務上の資料および貴社顧客から貴社が交付を受けた機密情報並びにそれらの複製物の一切を貴社に返還し,何らこれらの機密情報を有していません。 3項貴社在職中知り得た個人情報を記録した資料,電子ファイルは一切保有していません。 4項貴社在職中に知り得た顧客その他の個人情報,機密情報もしくは業務遂行上知り得た特別の技術的機密を基に競合的あるいは競業的行為を行いません。 (3) 1審被告 Y1 及び同 Y2 のその後の活動等ア日刊新聞ゲンダイ(以下「日刊ゲンダイ」という。)は,平成20年11月7日,同月6日発行の同紙において,「どこまで続く不動産倒 ません。 (3) 1審被告 Y1 及び同 Y2 のその後の活動等ア日刊新聞ゲンダイ(以下「日刊ゲンダイ」という。)は,平成20年11月7日,同月6日発行の同紙において,「どこまで続く不動産倒産」「PBR0.3以下危険信号48社」という見出しの下に,「今年に入ってから上場会社の倒産は27社。そのうち建設・不動産が18社にのぼる。危ない業界の筆頭だ。」「PBR(純資産倍率)…0.5倍を切るような会社は実態とかけ離れ過ぎています。 悪材料がひそんでいると判断したほうが賢明です。」「不動産を中心に市場が危険水域と判断する「0.5倍」より,さらに低い「0.3倍」以下を調べたところ48社もあった(別表)。」という記述部分や,PBRを0.25倍とする1審原告ネクスト等,PBRが0.3倍以下の上場不動産企業48社の一覧表を含む記事を掲載した(乙1)。 1審被告レントレックスは,平成20年12月頃から平成21年1月頃までの間,1審原告コミュニティの顧客らの一部に対し,この記事に基づき,「どこまで続く新築販売不振と不動産倒産」「上場不動産会社危険信号48社!!」という見出 しと「日刊ゲンダイ2008年11月6日号一部抜粋」という注釈の下に,倒産件数を加えた以外は,上記記述部分や上記一覧表と同旨の記述部分や一覧表を含む書面(以下「本件書面」という。)を送付した(甲8の1・2)。 イまた,1審被告レントレックスは,平成20年12月頃から平成21年2月頃までの間にかけて,原判決別紙顧客移動一覧表中の顧客氏名欄・住所地欄・解約届作成日欄・解約物件欄各記載のとおり,顧客番号1ないし62の63名(顧客番号49の顧客は2名と数える。)の1審原告コミュニティの顧客を代理して,1審原告コミュニティに対し,139件の投資用マンションに係る賃貸管理委託契約を 載のとおり,顧客番号1ないし62の63名(顧客番号49の顧客は2名と数える。)の1審原告コミュニティの顧客を代理して,1審原告コミュニティに対し,139件の投資用マンションに係る賃貸管理委託契約を解約するとともに,同別紙中の平成20年12月から平成21年2月頃までの1審被告レントレックス受託の有無欄記載のとおり,うち38名の顧客との間で,うち82件の投資用マンションに係る賃貸管理委託契約を締結した(甲7,弁論の全趣旨)。 5 本件訴訟の争点(1) 不正取得行為又は図利加害目的による顧客情報使用(不正競争防止法2条1項4,5,7,8号)についてア 1審原告らの顧客情報は,1審被告 Y1 及び同 Y2 の携帯電話や記憶に残っていたものも含め,1審原告らの営業秘密に該当するか(争点1)イ 1審被告 Y1 及び同 Y2 は,退職後に1審原告ら又は秘密保持義務を負った1審原告らの元従業員から取得した1審原告らの顧客情報を使用して1審原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったか(争点2)ウ 1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審原告らからその顧客情報を取得した場合,それは,不正の手段によるものか。仮に不正の手段によるものでない場合,1審被告Y1 及び同 Y2 が,1審原告らの顧客情報を1審原告らから示され,退職後に図利加害目的で1審原告らの顧客情報を使用して1審原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったといえるか,また,1審被告 Y1 及び同 Y2 が秘密保持義務を負った1審原告らの元従業員から1審原告らの顧客情報を取得した場合,それは悪意重過失に よるものか(争点3)エ 1審被告らの故意・過失(争点4)(2) 信用毀損(不正競争防止法2条1項14号)についてア 1審原告ネクストと1審被告らとは競争関係にあるか(争点5)イ よるものか(争点3)エ 1審被告らの故意・過失(争点4)(2) 信用毀損(不正競争防止法2条1項14号)についてア 1審原告ネクストと1審被告らとは競争関係にあるか(争点5)イ 1審被告らは1審原告らの顧客に対して1審原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したか(争点6)ウ 1審被告らの故意・過失(争点7)(3) 債務不履行についてア本件誓約書・本件就業規則は公序良俗に反して無効か(争点8)イ 1審被告 Y1 及び同 Y2 は退職後も1審原告らの顧客情報を保有してこれを基に競業的行為を行ったか(争点9)ウ 1審被告 Y1 及び同 Y2 が退職後も1審原告らの顧客情報を保有してこれを基に競業的行為を行ったことに正当な理由があるか(争点10)(4) 因果関係及び損害(争点11)第3 当事者の主張 1 原審における主張原審における当事者の主張は,審級に従って必要な読替えを行い,原判決8頁19行目「営業秘密の不正取得・使用の不正競争行為等に関して」を「不正取得行為又は図利加害目的による顧客情報使用(不正競争防止法2条1項4,5,7,8号)について」,同8頁20行目「争点①」を「争点1」,同11頁16行目「争点②」を「争点2」,同13頁2行目「争点③」を「争点3」,同16頁10行目「争点④」を「争点4」,同17頁12行目「信用毀損の不正競争行為等に関して」を「信用毀損(不正競争防止法2条1項14号)について」,同17頁13行目「争点①」を「争点5」,同18頁5行目「争点②」を「争点6」,同19頁4行目「争点③」を「争点7」,同20頁14行目「誓約書違反又は就業規則違反の債務不履行等に関して」を「債務不履行について」,同20頁15行目「争点①」を 「争点8」,同21頁13行目「争点②」を 「争点③」を「争点7」,同20頁14行目「誓約書違反又は就業規則違反の債務不履行等に関して」を「債務不履行について」,同20頁15行目「争点①」を 「争点8」,同21頁13行目「争点②」を「争点9」,同22頁4行目「争点③」を「争点10」,同23頁10行目「争点(因果関係・損害)について」を「争点11(因果関係及び損害)について」と,それぞれ改めるほかは,原判決8頁19行目ないし16頁21行目,同17頁12行目ないし20頁3行目,同20頁14行目ないし22頁19行目,同23頁10行目ないし25頁16行目に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 当審における主張(1) 争点1(1審原告らの顧客情報は,1審被告 Y1 及び同 Y2 の携帯電話や記憶に残っていたものも含め,1審原告らの営業秘密に該当するか)について〔1審原告らの主張〕ア 1審原告コミュニティは,1審原告ネクストの完全子会社であり,両者は,同一の執務空間で有機一体的に投資用不動産の販売(1審原告ネクスト)及びその後の管理(1審原告コミュニティ)を業務として行っており,密接不可分の関係にある以上,顧客情報を一体として共有して管理することは,当然の帰結であって,当該顧客情報は,両者の双方に帰属する。1審原告らは,従業員に対し,上記顧客情報及びその記憶が営業秘密に該当するものとして,これらが漏れないように徹底した情報管理教育を行ってきた。また,1審原告ネクストの営業部員は,電話をかける連絡先等の情報や営業に要した実費を全て1審原告ネクストから得ているのであって,1審原告ネクストに終身雇用されていないからといって,当該情報が1審原告らのものでなくなり,あるいは1審原告らの従業員(1審被告 Y1 及び同 Y2ら)との共有となるものではない。 イ 1審原告ネク 原告ネクストに終身雇用されていないからといって,当該情報が1審原告らのものでなくなり,あるいは1審原告らの従業員(1審被告 Y1 及び同 Y2ら)との共有となるものではない。 イ 1審原告ネクストの従業員が契約内容報告書の写しを保管していたとしても,然るべき管理体制や従業員教育が行われていれば,顧客情報に秘密管理性は認められるし,顧客情報は,全体が一体として記録されることで情報資産となっているのであって,その一部を取り出して秘密管理性を検討すべきものではない。 ウ 1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審原告ネクストの元従業員という立場を利用 して,1審原告らの顧客に関する情報を集中的に不正利用したものであって,1審原告ネクスト在職中の職務を離れた人的関係を利用した営業などではなく,1審被告レントレックスの顧客の多くが現在でも1審原告らの元顧客であることから明らかなように,1審原告らの顧客情報は,その数の多寡を問わずに有用性がある。また,インターネット等の媒体を利用したとしても,1審原告らの顧客であるか否かや,ましてその携帯電話番号などは,入手できるものではないから,1審原告らの顧客情報は,非公知性がある。 〔1審被告らの主張〕ア 1審原告ネクストの従業員は,1審原告ネクストから全ての営業先の連絡先を得ていたわけではなく,その営業活動も,従業員独自の経済的負担においてされていたのであって,終身雇用制が崩壊したといわれる昨今,業務上知り得た取引先に関する情報が全て元勤務先に帰属すると解することは,職業選択の自由を著しく制限するものである。よって,1審原告ネクストの顧客情報は,1審原告ネクスト並びにその従業員であった1審被告 Y1 及び同 Y2 の共有であると解するのが相当である。 イ 1審原告ネクストは,顧客ファイルを一 である。よって,1審原告ネクストの顧客情報は,1審原告ネクスト並びにその従業員であった1審被告 Y1 及び同 Y2 の共有であると解するのが相当である。 イ 1審原告ネクストは,顧客ファイルを一元管理していたとされるが,その従業員も,契約内容報告書の写しを保管していたし,1審原告ネクストの顧客情報は,氏名,連絡先又は住所等が単独でも営業秘密として明示されている必要があるのに,そのような明示はされていないから,当該顧客情報に秘密管理性は認められない。 ウ 1審被告 Y1 及び同 Y2 は,名簿や登記事項要約書に基づき調査した結果連絡先が判明した顧客を除き,1審被告 Y1 及び同 Y2 並びに元同僚らがその氏名や連絡先を記憶していた顧客か,あるいはその一部を記憶していた情報に基づきインターネット等を用いて連絡した顧客が多数である。そして,このようなインターネット等を利用して収集された1審原告ネクストのごく一部の顧客に関する情報は,それ自体,何ら有用性や非公知性が認められない。この点,原判決は,1審被告らが取得も利用もしていない,有機的一体的に機能することで有用性及び非公知性が 認められる約7000名の本件顧客情報について有用性及び非公知性を認定しているにすぎず,1審被告らが利用した51名というごく一部の顧客に関する情報については,不正に複写するなどされていたと認めるに足りる証拠はないから,本件に即した判断をしていない。むしろ,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審原告ネクストの従業員であったことに基づき,顧客との業務の枠を超えた人的関係を利用して営業活動をしたにすぎず(乙27,30,38),このことは,1審被告 Y1 及び同Y2 の携帯電話に登録されていた顧客の連絡先についても同様である。 (2) 争点2(1審被告 Y1 及び 利用して営業活動をしたにすぎず(乙27,30,38),このことは,1審被告 Y1 及び同Y2 の携帯電話に登録されていた顧客の連絡先についても同様である。 (2) 争点2(1審被告 Y1 及び同 Y2 は,退職後に1審原告ら又は秘密保持義務を負った1審原告らの元従業員から取得した1審原告らの顧客情報を使用して1審原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったか)について〔1審原告らの主張〕ア 1審原告ネクスト及び同コミュニティは,投資用不動産販売運用事業を行う上で有機的一体となって業務を遂行しており,現に,ISOといった情報品質評価に際しても1つの組織として評価を受けているし,両者の従業員についていずれに属するかを問わず,両者の情報管理体制について認識させるよう教育を施している。 したがって,1審原告ネクストの元従業員(1審被告 Y1 及び同 Y2 ら)は,原判決の認定のとおり,1審原告ネクストに対して本件就業規則上の秘密保持義務を負っている一方,1審原告コミュニティに対しても信義則上の秘密保持義務を負っていることが明らかである。 また,1審原告ネクストの従業員は,顧客が賃貸管理委託契約締結を決断した場合,顧客と1審原告コミュニティとの間の契約書を交付して,顧客による署名押印をもらうほか,1審原告コミュニティから得た情報に基づいて,当該顧客と1審原告コミュニティとの間の契約に関する賃料の設定などを行っているが,1審原告ネクストの従業員によるこのような1審原告コミュニティの業務の代行は,法的には,1審原告ネクストの従業員が1審原告コミュニティの代理人又は使者として当該契約を締結するなどしているものと評価される。したがって,1審原告ネクストの従 業員は,1審原告コミュニティに対し,委任類似の関係にあり,民法644条又はその類推適 代理人又は使者として当該契約を締結するなどしているものと評価される。したがって,1審原告ネクストの従 業員は,1審原告コミュニティに対し,委任類似の関係にあり,民法644条又はその類推適用によって善管注意義務を負っており,その内容として,顧客情報等について秘密保持義務を負っているものと解され,当該義務は,企業の秘密を保持するという性質上,在職中はもちろんのこと退職後であっても継続するのが当然である。そして,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審原告ネクストの従業員として,上記善管注意義務に基づく秘密保持義務を負っており,かつ,他の従業員も同様の義務を負っていたことを認識し,又は容易に認識することができた以上,1審被告らに不正競争防止法2条1項7号及び8号の不正使用行為についての故意又は過失があることは,明らかである。 イ原判決は,①顧客から1審被告 Y1 宛に電話がかかってきた事案(顧客番号1,6,9,11,21,41,42,48,51),②面識のある顧客についてNTT番号案内を利用して勧誘行為を行った事案(同43),③面識がない顧客に対してNTT番号案内等で勧誘行為を行った事案(同20,31,58,64),④「知人」を介して顧客情報を再取得した事案(同22)について不正使用行為があったとはいえない旨を認定している。 しかしながら,上記①は,顧客らが1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審原告ネクストの従業員であるとの前提で連絡してきたことを奇貨として勧誘行為がされたもので,連絡先を除く顧客情報が不正に使用されたことが強く窺われるし,上記②は,勧誘行為の時期に照らし,1審被告レントレックス設立のための営業目的をもってされたものというべきである。さらに上記③及び④は,1審被告レントレックス設立直後に集中的に勧誘行為が行われてい 上記②は,勧誘行為の時期に照らし,1審被告レントレックス設立のための営業目的をもってされたものというべきである。さらに上記③及び④は,1審被告レントレックス設立直後に集中的に勧誘行為が行われていることからすれば,1審被告らがこれらの顧客について1審原告らの顧客情報を不正使用したことが明らかである。 よって,上記①ないし④の各事案は,いずれも不正競争防止法2条1項7号又は8号に該当し,仮にそうではないとしても,本件就業規則に基づく競業避止義務違反として債務不履行責任が生ずる。 ウ 1審原告らの顧客情報が1審被告 Y1 及び同 Y2 に帰属する余地はないし, 1審原告らは,販売とその後の管理が一体となった投資商品として不動産を販売しており,1審原告ネクストが物件を販売する際に,1審原告コミュニティは,必ず賃貸管理契約の営業や契約締結業務を行っている。また,前記のとおり,1審原告らは,顧客情報を共有し,一体としてこれについての管理体制を確保しているから,1審原告ネクストの元従業員(1審被告 Y1 及び同 Y2 ら)は,退職後も,1審原告コミュニティに対する関係でも秘密保持義務があることが明らかである。さらに,A や B らは,1審原告ネクスト在職当時の顧客担当者として,秘密保持義務に反して顧客情報を1審被告 Y1 及び同 Y2 に開示したものである。 〔1審被告らの主張〕ア 1審原告らの顧客情報は,その従業員にも帰属するから,その利用には何ら違法性がない。 仮に,上記顧客情報が1審原告らに帰属するとしても,当該顧客情報のうち,年収等を除く氏名や連絡先等は,企業活動とは切り離された従業員と顧客との間の人的関係を営む上でも不可欠の情報である以上,当該従業員(1審被告 Y1 及び同Y2 並びにその元同僚ら)にも帰属すると理解さ 等を除く氏名や連絡先等は,企業活動とは切り離された従業員と顧客との間の人的関係を営む上でも不可欠の情報である以上,当該従業員(1審被告 Y1 及び同Y2 並びにその元同僚ら)にも帰属すると理解されるべきである。そして,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,人的関係に基づく限りにおいて顧客と接触したにすぎないから,1審被告 Y1 らによる営業活動は,何ら違法と評価されるものではない。 イ 1審原告ネクストの従業員が平成20年以前に1審原告コミュニティの賃貸管理委託契約の締結業務を行っていたと認めるに足りる的確な証拠はないし,仮に,関連企業として,単に業務上署名捺印を求めるように指導されていた賃貸管理委託契約の締結業務を一部行っていたからといって,それのみをもって,1審被告 Y1及び同 Y2 が1審原告コミュニティとの関係で,当然に信義則上秘密保持義務を負うとすることは,不合理である。むしろ,1審原告ネクストは,顧客との間で,売買契約締結時に,常に1審原告コミュニティの賃貸管理委託契約を締結していたわけではないし,1審原告らは,1審被告 Y1 及び同 Y2 が全ての顧客との関係で1審原告コミュニティの賃貸管理委託契約業務に携わっていたか否かについて,何ら 主張立証をしていない。仮に,1審原告ネクストの元従業員(1審被告 Y1 及び同Y2 ら)が1審原告コミュニティとの関係でも秘密保持義務を負うとしても,それは,1審原告ら双方の関係で顧客情報を示されたことが必要であると考えられるところ,そのような事実は,全ての顧客との関係では主張立証されていない。 また, A 及び B は,1審原告ネクスト退職後に知り得た顧客情報を1審被告Y1 に提供したものであり,1審原告ネクスト在職中に知り得た顧客情報を提供したものではないから,顧客番号1 いない。 また, A 及び B は,1審原告ネクスト退職後に知り得た顧客情報を1審被告Y1 に提供したものであり,1審原告ネクスト在職中に知り得た顧客情報を提供したものではないから,顧客番号15,23,26,30,35,38,39,44,45,50及び53ないし56については,1審原告らとの関係で秘密保持義務の対象とならない。他の顧客についても,同じく1審原告ネクスト退職後に顧客からの連絡を受けてその連絡先が判明した者もいるが,これらの顧客についても,1審原告らとの関係で秘密保持義務の対象とはならない。 ウ 1審原告コミュニティに係る賃貸管理委託契約の締結業務は,郵送等により別途されることも少なくなかったものであり,また,実際に締結業務の一部を行うとしても,それは,単に署名押印を求める程度のものにすぎないから,到底代理と評価されるものではないし,1審原告ネクストの従業員は,それ以上に,1審原告コミュニティの業務を代行するなどしていない。したがって,1審被告 Y1 及び同Y2 並びに元同僚を含む1審原告ネクストの従業員は,1審原告コミュニティに対し,善管注意義務の内容としての秘密保持義務を負っていない。 (3) 争点3(1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審原告らからその顧客情報を取得した場合,それは,不正の手段によるものか。仮に不正の手段によるものでない場合,1審被告 Y1 及び同 Y2 が,1審原告らの顧客情報を1審原告らから示され,退職後に図利加害目的で1審原告らの顧客情報を使用して1審原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったといえるか,また,1審被告 Y1 及び同 Y2 が秘密保持義務を負った1審原告らの元従業員から1審原告らの顧客情報を取得した場合,それは悪意重過失によるものか)について〔1審原告らの主張〕 ,また,1審被告 Y1 及び同 Y2 が秘密保持義務を負った1審原告らの元従業員から1審原告らの顧客情報を取得した場合,それは悪意重過失によるものか)について〔1審原告らの主張〕 ア原判決は,1審被告 Y1 及び同 Y2 が,営業報告書等を不正に複写するなどしていたとは認めるに足りず,また,その個人所有物である携帯電話に登録していた顧客の携帯電話番号を抹消していないが,そのことが不正の手段による顧客情報の取得には当たらない旨を説示する。 しかしながら,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,個人情報を記録したものを一切保有していないと明記された本件誓約書を1審原告ネクストに提出しているにもかかわらず,その携帯電話に顧客情報を保持し続けたのであって,これは,詐欺に類する不正の手段であるから,原判決は,訂正されるべきである。 イ 1審被告レントレックスが1審原告らと類似の業務を行っており,かつ,その顧客のうち多数が1審原告らから引き抜かれた者であることから明らかなように,1審被告らは,競業目的及び1審原告らに対する図利加害目的を有していた。また,1審原告ネクストの元従業員から1審原告ネクストの顧客情報を集中的に開示されれば不正開示を疑うのは当たり前であって,1審被告らは,悪意重過失があった。 さらに,1審原告ネクストは,全従業員に対してテスト等の教育を実施しているから,1審被告 Y1 及び同 Y2 が,他の従業員が教育を受けていたことを知らなかったはずがない。 〔1審被告らの主張〕ア前記のとおり,1審原告コミュニティは,顧客との間で,1審原告ネクストとの売買契約締結時に,常に賃貸管理委託契約を締結していたわけではないし,1審原告らは,1審被告 Y1 及び同 Y2 が全ての顧客との関係で1審原告コミュニティの賃貸管理委託契 で,1審原告ネクストとの売買契約締結時に,常に賃貸管理委託契約を締結していたわけではないし,1審原告らは,1審被告 Y1 及び同 Y2 が全ての顧客との関係で1審原告コミュニティの賃貸管理委託契約業務に携わっていたか否かについて,何ら主張立証をしていない。また,1審被告らは,1審被告レントレックス設立後に顧客に対してその立上げの挨拶をしていたにすぎず,本件書面の送付も,顧客に企業規模で判断されないようにするためにすぎないし,顧客の質問に対応するために敷金流用等の問題について触れただけであって,業務内容等の類似性も,投資用マンションの賃貸管理業において通常予定されている範囲内のものであって,顧客が1審被告レントレッ クスに賃貸管理委託契約を移行したのは,1審原告らが提供しないサービスを提供したからである。このように,1審被告らは,競業目的も図利加害目的も有していない。 イ 1審被告 Y1 及び同 Y2 は, A や B が1審原告ネクストを退職後に顧客と面識をもったとの説明を受けていたし,他の元同僚が1審原告コミュニティの業務を行っていたのかどうか明らかでなく,彼らが秘密保持義務を負っていたかどうかも認識できない。このように,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,元同僚らが1審原告コミュニティに対して秘密保持義務を負っているにもかかわらず,これに反して顧客情報を開示したと知っていたとは認められず,また,知らなかったことに過失もない。 (4) 争点4(1審被告らの故意・過失)について〔1審原告らの主張〕1審被告 Y1 及び同 Y2 は,自ら積極的に顧客に連絡を取って1審被告レントレックスのために営業活動を行っていたのであって,原判決認定のとおり,1審被告Y1 及び同 Y2 が1審原告ネクストの顧客情報を不正使用・不正取得し は,自ら積極的に顧客に連絡を取って1審被告レントレックスのために営業活動を行っていたのであって,原判決認定のとおり,1審被告Y1 及び同 Y2 が1審原告ネクストの顧客情報を不正使用・不正取得したことについて故意・過失があり,かつ,不正競争防止法に基づく責任があることは,明らかである。 〔1審被告らの主張〕前記のとおり,1審被告らが使用した顧客情報は,ごく限られたものにすぎず,営業秘密に該当しないし,仮に営業秘密に該当するとしても,1審被告 Y1 及び同Y2 は,そのような認識を持っておらず,そのことについて過失もない。さらに,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審原告ネクストの元従業員らが1審原告コミュニティに対して秘密保持義務を負わず,またその対象とならない顧客の連絡先の提供を受けたとの認識のもとにこれらを使用したのであるから,当該使用は,不正使用に該当せず,このことについて故意も過失も認められない。 (5) 争点5(1審原告ネクストと1審被告らとは競争関係にあるか)について 〔1審原告らの主張〕原判決も指摘するとおり,競争関係は,双方の営業につき,その需要者又は取引者を共通にする可能性があることで足りる。そして,1審原告ネクストと1審被告らとの間には,投資用マンションの賃貸営業,仲介及びコンサルティングに関する事業において競争関係があるといえる。 〔1審被告らの主張〕原判決が指摘する「競合が生じるおそれ」は,単に事業目的を抽象的に比較するのみならず,営業実態に即して判断されるべきであるところ,1審原告ネクストの事業は,投資用マンションの販売業に特化している一方,1審被告レントレックスの事業は,賃貸営業に特化しているから,競合が生じるおそれはない。 (6) 争点6(1審被告らは1審原告らの顧客に対して1 事業は,投資用マンションの販売業に特化している一方,1審被告レントレックスの事業は,賃貸営業に特化しているから,競合が生じるおそれはない。 (6) 争点6(1審被告らは1審原告らの顧客に対して1審原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したか)について〔1審原告らの主張〕原判決は,顧客番号7,28,29,38,39,44,53,54,64及び65の10名について,1審被告らが虚偽の事実を告知した事実を正当に認定している一方で,その余の顧客については信用毀損の事実が認められない旨を説示する。 しかしながら,①1審被告らは,1審原告らの信用を毀損する内容のチラシ(甲8)やパンフレット(乙10)という定型的ツールをわざわざ用意していること,②上記10名の顧客に対する信用毀損行為が,当該ツールに沿う定型的なものであること,③1審被告らが1審原告ネクストの顧客を狙い撃って違法な勧誘行為を行っていたこと,④1審原告コミュニティと1審被告レントレックスとのサービス内容を比較しても特段後者の方が優れている点はなく(甲30,乙13),むしろ後者が設立間もなく経済的な信用も高くはないにもかかわらず顧客が契約を変更していること,といった事情を総合して考えれば,1審被告らが全顧客に対して,定型的に1審原告ネクストの信用を毀損する事実を告知して勧誘行為を行っていたことが強く窺われる。 よって,上記10名以外の顧客については信用毀損の事実が認められないとする原判決の認定は,誤りであり,原判決は,変更されるべきである。 なお,1審被告らの信用毀損行為に関する弁解は,客観的証拠に反するものであって,検討する価値もない。 〔1審被告らの主張〕1審被告らは,原判決認定のような信用毀損行為をしていない。 上記信用毀損行為に関する C の陳述書 為に関する弁解は,客観的証拠に反するものであって,検討する価値もない。 〔1審被告らの主張〕1審被告らは,原判決認定のような信用毀損行為をしていない。 上記信用毀損行為に関する C の陳述書は,1審被告 Y2 が一般論として述べたことが誤解された上で作成されたものと推認され,信用性が認められない。むしろ,1審原告ネクストの従業員が,1審被告レントレックスの顧客に対して1審被告レントレックスが多数裁判を起こされているなどといった事実を告知していることも,上記推認を裏付ける。 (7) 争点7(1審被告らの故意・過失)について〔1審原告らの主張〕1審被告らの故意・過失を認定した原判決は,正当である。 1審被告らは,PBRが会社の財務状況と直結していないことを認識しながら,倒産のリスクを強調したチラシ(甲8)を顧客らに送付したものであって,日刊ゲンダイの記事内容を奇貨として,あえて有価証券報告書を確認せずに積極的に利用し,顧客らの不安を煽る故意があったことも明らかである。 〔1審被告らの主張〕1審被告らは,信用毀損行為を行っておらず,本件書面の送付も,1審原告コミュニティの顧客らを狙って競業を行う目的によるものでもない。また,1審被告Y1 及び同 Y2 は,1審原告ネクストの従業員であったにすぎないから,企業が倒産の危機に瀕しているかどうかについて認識していない。なお,本件書面に記載されたPBRの数値に誤りはないところ,日刊ゲンダイの記事は,かかるPBRの数値を前提に作成されているから,有価証券報告書を吟味したところで,その内容の正確性を確認することもできない。 (8) 争点8(本件誓約書・本件就業規則は公序良俗に反して無効か),争点9(1審被告 Y1 及び同 Y2 は退職後も1審原告らの顧客情報を保有してこれを 正確性を確認することもできない。 (8) 争点8(本件誓約書・本件就業規則は公序良俗に反して無効か),争点9(1審被告 Y1 及び同 Y2 は退職後も1審原告らの顧客情報を保有してこれを基に競業的行為を行ったか)及び争点10(1審被告 Y1 及び同 Y2 が退職後も1審原告らの顧客情報を保有してこれを基に競業的行為を行ったことに正当な理由があるか)について〔1審原告らの主張〕ア原判決も認定のとおり,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,本件誓約書及び本件就業規則に違反する行為があり,債務不履行責任を免れない。 イ原判決は,「役職者,又は企画の職務に従事していた者」について競業避止義務を負わせる1審原告ネクストの本件就業規則55条について,退職時点にこれらに該当する者に適用が限られるとの解釈を示して1審被告らの競業避止義務違反に基づく債務不履行責任を否定している。 しかしながら,上記条項は,原判決の解釈によれば,「従事している者」と規定されるべきであるばかりか,1審ネクスト在職中に一度でも役職に就いた者は,営業秘密である顧客情報に接するのであるから,上記条項は,このような者の退職後の競業を防ぐことを趣旨とするものである。そして,1審被告 Y1 は,課長職であり,1審被告 Y2 は,係長職であって,いずれも1審原告ネクストの役職者であったのだから,上記条項の適用を受ける。 したがって,1審被告 Y1 及び同 Y2 に上記条項の適用がないとの判断に基づく1審原告らの敗訴部分(顧客番号1,6,9,11,20~22,31,41~43,48,51,58)は,変更されるべきである。 〔1審被告らの主張〕1審被告 Y1 及び同 Y2 について本件誓約書違反又は本件就業規則違反の問題が生じる余地はない。 (9) 争点11(因果 ,48,51,58)は,変更されるべきである。 〔1審被告らの主張〕1審被告 Y1 及び同 Y2 について本件誓約書違反又は本件就業規則違反の問題が生じる余地はない。 (9) 争点11(因果関係及び損害)について〔1審原告らの主張〕 ア 1審原告ネクストの損害について(ア) 1審被告らの違法行為への対応費用について原判決は,1審被告らの違法行為への対応費用を損害として認定しなかった。 しかしながら,本件は,数十名にのぼる1審原告らの顧客に対して行われた組織的な顧客奪取事案であって,このような行為を行えば,1審原告らが弁護士を依頼するばかりか,多くの従業員が本来の業務を中止して対応せざるを得なくなることは,通常人ならば十分に予測できし,このような人件費等の費用は,弁護士費用とは別個に通常生ずべき損害である。 よって,1審原告ネクストは,その対応費用として,48万1080円(顧客1名当たり30分×各担当者の時給)を請求する。 (イ) 信用毀損による損害について原判決は,信用毀損行為が10名の顧客に行われたにとどまること,チラシ(甲8)の記載が日刊ゲンダイに記載されたものであること,売上げの減少等の実害が生じた形跡が窺われないことから,損害額を100万円と認定した。 しかしながら,信用毀損行為は,前記のとおり,66名の顧客に対して行われたし,チラシには日刊ゲンダイにはない記載があり,これによって1審原告らの倒産可能性を特に強調した資料として作り替えられている。そして,信用毀損行為により継続的に1審原告らと取引関係にあった顧客を奪われたことは,例えば買増し営業の機会を失うなど,それ自体が実害である。ことに,上場企業としての存続可能性や上場維持可能性を疑われるということは,1審原告らのような投資用不動産販売を営み た顧客を奪われたことは,例えば買増し営業の機会を失うなど,それ自体が実害である。ことに,上場企業としての存続可能性や上場維持可能性を疑われるということは,1審原告らのような投資用不動産販売を営み,顧客の信頼を唯一最大の基礎としている会社にとって致命的である。 したがって,信用毀損による損害は,到底100万円にとどまらないし,このことは,仮に信用毀損行為が10名の顧客に限定されるとしても同様であるから,1審原告ネクストは,信用毀損に基づく損害として2000万円を請求する。 (ウ) 弁護士費用について1審原告ネクストの損害が100万円にとどまらないこと及び事案の悪質性から, 弁護士費用は,損害額の1割に限定すべきではない。 よって,1審原告ネクストは,弁護士費用として300万円を請求する。 イ 1審原告コミュニティの損害について(ア) 逸失委託料について原判決は,一部の顧客について1審被告らの不正競争行為を認めず,また,不正競争行為を認定した顧客については,①損害額を賃貸管理委託契約の契約期間である2年間に限定し,②限界利益率による修正を加え,③寄与度を70%と認定して,逸失委託料相当の損害額を303万3214円と認定した。 しかしながら,不正競争行為は,66名の顧客に対して行われたし,少なくとも競業避止義務違反として債務不履行責任が認められるべきである。 上記①についてみると,投資用不動産事業の顧客は,副業である当該事業について長期間にわたって賃貸管理会社に管理を委託するのが通常であって,賃貸管理委託契約(甲40)自体に自動更新条項が定められているなど,賃貸管理が2年間で終了することは,皆無であるといってよい。1審原告コミュニティは,平成20年11月頃から行われた1審被告らによる顧客の引き抜き行為により,現実に3年以 更新条項が定められているなど,賃貸管理が2年間で終了することは,皆無であるといってよい。1審原告コミュニティは,平成20年11月頃から行われた1審被告らによる顧客の引き抜き行為により,現実に3年以上もの期間にわたって委託料収入を喪失しており,損害の期間を2年間に限定すべき理由はない。 上記②についてみると,逸失利益の算定において利益率を考慮する方法は,一般的には正当であるが,管理物件数と経費とは,直ちに比例するものではなく,1審原告コミュニティの1万戸以上の管理物件から100件程度の管理物件が減少しても,全体で要する経費は,減少せず,管理手数料(収益)が減少するのみである。 したがって,本件においては,賃貸管理という業態に鑑み,利益率の加味は行われるべきではなく,失われた管理手数料(収益)相当額全部が損害として認定されるべきである。 上記③についてみると,1審原告らが顧客に提供しているサービスは,1審被告レントレックスのサービスと同等か,顧客に有利なものであり(甲30,乙12), 本件で1審被告らが1審原告らの顧客の引き抜きが可能であったのは,1審被告らによる顧客情報の違法な利用と,「元1審原告ネクスト従業員」という一種のブランドを利用したことが大きいばかりか,1審被告らによる信用毀損行為によるものである。したがって,本件では,1審被告らのサービスの寄与度など一切認められる余地はなく,30%の寄与度を認めた原判決は,変更されるべきである。 よって,1審原告コミュニティは,本来,逸失委託料相当額として832万1340円を請求し得るし,仮に,上記損害が認められないとしても,不正競争防止法5条2項に基づき,1審被告レントレックスの管理委託料(毎月最低3500円)により,798万円を請求し得るが,本件訴訟においては,内金113万50 仮に,上記損害が認められないとしても,不正競争防止法5条2項に基づき,1審被告レントレックスの管理委託料(毎月最低3500円)により,798万円を請求し得るが,本件訴訟においては,内金113万5020円の請求にとどめるものである。 (イ) 1審被告らの違法行為への対応費用について1審原告ネクストについて主張したのと同様に,1審原告コミュニティは,対応費用として4万8730円を請求する。 (ウ) 信用毀損による損害について1審原告ネクストについて主張したのと同様に,信用毀損による損害は,原判決が認定した50万円にとどまるものではない。 よって,1審原告コミュニティは,信用毀損に基づく損害として2000万円を請求する。 (エ) 弁護士費用について1審原告ネクストについて主張したのと同様に,1審原告コミュニティは,弁護士費用として300万円を請求する。 〔1審被告らの主張〕ア 1審原告ネクストの損害について本件書面は,日刊ゲンダイの内容がそのまま記載された書面にすぎず,顧客の多くは,サービスを比較した上で,1審被告レントレックスに賃貸管理を移行したのであって,1審原告ネクストの信用は,毀損されていない。 よって,1審原告ネクストに損害はない。 イ 1審原告コミュニティの損害について(ア) 逸失委託料について原判決別紙顧客勧誘一覧表34の D は,独自の判断で管理会社を変更したものであって(乙47,原審証人 D ),同人との関係では,逸失委託料の損害金との間に因果関係がない。同17の E は,破産手続により管理物件が売却されて新所有者である1審原告ネクストにより,1審被告レントレックスとの賃貸管理委託契約が解約されているから,逸失委託料についての因果関係が遮断されている。 また,1審原告コミュニティは, 件が売却されて新所有者である1審原告ネクストにより,1審被告レントレックスとの賃貸管理委託契約が解約されているから,逸失委託料についての因果関係が遮断されている。 また,1審原告コミュニティは,原判決が認定した27名の顧客等に係る建物管理原価についても支出を免れた以上,建物管理原価額約2億6197万円(甲17)についても控除した上で,利益率が算定されるべきである。 さらに,1審被告レントレックスに管理委託契約を移行した多くの顧客は,1審原告らのサービスに不満を有していたところ,その自由意思により1審被告レントレックスに対して管理委託契約を移行したものであって,このような顧客から1審被告 Y1 及び同 Y2 に対して連絡をした事案も少なくないことを考慮すると,逸失委託料との間の因果関係は,それ自体否定されるべきである。仮にそうでないとしても,少なくとも80%の寄与度減額を行うべきであり,1審原告コミュニティに生じた損害は,逸失委託料として算定された損害金の20%に限定されるべきであり,さらに,契約期間(2年間)の50%である1年間に限定して算定されるべきである。 (イ) その余の請求についてそもそも信用毀損行為がない以上,その余の損害は,1審原告コミュニティに生じていない。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(1審原告らの顧客情報は,1審被告 Y1 及び同 Y2 の携帯電話や記憶に残っていたものも含め,1審原告らの営業秘密に該当するか)について (1) 認定事実ア 1審原告らにおける営業の流れと顧客情報の取扱い等証拠(甲13,18,22,24~26,28,29,31,38,40,41,53,54の1・3,甲55の1~3,甲59,60,67,69の1・2,甲79,82~85,87,乙3,5,7,15の1~6,乙29 13,18,22,24~26,28,29,31,38,40,41,53,54の1・3,甲55の1~3,甲59,60,67,69の1・2,甲79,82~85,87,乙3,5,7,15の1~6,乙29,30,36,37,41,43,50,62,63,原審証人 F ,同 G ,同 H ,原審1審被告 Y1本人,同 Y2 本人)によれば,次の事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 (ア) 1審原告ネクストでの投資用マンションの販売に係る営業には,大別して新規営業と買増し営業の2種類がある。 (イ) 新規営業は,従前,1審原告ネクストの営業部に所属する従業員が,教職員名簿や医療関係者名簿等を基に電話をかけ,販売が見込める客に対して継続的に電話をかけたり自宅や勤務先等を訪問したりしながら,新規契約の成立を目指すというものであった。しかし,個人情報保護の必要性が高まってきたことから,平成18年春頃から,電話とコンピュータを融合させて名簿情報等を取り込んだCTIシステムが導入され,50名以上の営業部所属の従業員が,モニター画面に現れた名簿情報等を基に,毎日200件ないし300件ほどの電話をかけ,うち数名ほどの販売が見込める客に対して継続的に電話をかけたり自宅や勤務先等を訪問したりしながら,新規契約の成立を目指すというものに変わった。 見込み客に対する営業活動は,投資用マンションの販売価格が1件約2000万円と高額なため,1件の販売でも少なくて3回,多ければ10回以上,客の自宅や勤務先等を訪問し,世間話や年賀状の送付,身上相談,交遊等を織り交ぜて信頼関係を構築しながら,契約の成立に至るというものであった。このため,営業部所属の従業員は,客の氏名や住所あるいは勤務先程度の情報であれば,自然に記憶するとともに,連絡の便宜上,客から携帯電話 て信頼関係を構築しながら,契約の成立に至るというものであった。このため,営業部所属の従業員は,客の氏名や住所あるいは勤務先程度の情報であれば,自然に記憶するとともに,連絡の便宜上,客から携帯電話の番号を教えてもらって自己の所有する携帯電話に登録することもよくあった。 また,営業部所属の従業員は,CTIシステムから見込み客の氏名や住所,固定電話の番号,勤務先等が記載された見込み用紙を適宜プリントアウトし,これを関係書類と共にとじ込んで交渉経過等を記載した見込み帳や上司に提出する営業報告書,見込み客の氏名や住所,電話番号等を転記した手帳等を作成していた。営業部所属の従業員は,見込み帳等を普段は机の引き出しや施錠付きキャビネットの中に保管していたものの,休日の電話営業のために自宅に持ち帰ったり,訪問営業のために訪問先に持って行ったり,部内の同僚との情報交換の際に写しをやりとりしたりして,営業活動に役立てていた。 (ウ) 1審原告ネクスト営業部所属の従業員は,見込み客との間で投資用マンションの売買契約を成立させると,併せて,1審原告ネクストの完全子会社である1審原告コミュニティから授権された代理人又は使者として,顧客との間で賃貸管理委託契約の締結にも当たっていた。 1審原告コミュニティは,1審原告ネクストが顧客に販売した投資用マンションについて,以後の管理を受託することを主たる業務としており,1審原告ネクストも,1審原告コミュニティが賃貸管理する投資用マンションを適宜買い取ることもあるから,1審原告らは,互いに一致協力することで投資用マンションにより投資の実を挙げようとする顧客の需要に応じているものであって,1審原告ネクストの有する顧客に関する情報は,当然に1審原告コミュニティの業務にも必要なものであって,かつ,投資用マンショ ンションにより投資の実を挙げようとする顧客の需要に応じているものであって,1審原告ネクストの有する顧客に関する情報は,当然に1審原告コミュニティの業務にも必要なものであって,かつ,投資用マンションの売買契約及び賃貸管理委託契約の一方の当事者である顧客も,このことを当然了解していた。 このようにして,顧客との間で1審原告ネクストとの売買契約及び1審原告コミュニティとの賃貸管理委託契約が新規に成立すると,当該顧客の情報は,CTIシステムから情報が削除されるとともに,営業部所属の従業員は,当該顧客の氏名や年齢,住所,固定電話・携帯電話の各番号,勤務先名・所在地,年収,所有物件,借入状況等の顧客情報を記載した契約内容報告書を作成し,売買契約書や住宅ローン申込書,賃貸管理委託契約書,各種証明書等の関係書類と併せた顧客ファイルを 上司に提出していた。 提出された顧客ファイルは,入口ドア上部に監視カメラが設置された営業本部・営業推進本部フロアに移され,営業部を統括する営業本部が顧客ファイルを一元管理するという方針の下に,営業副本部長が鍵を管理して営業本部所属の従業員だけが入室することのできる施錠付き書庫に保管されていた。営業本部は,営業部所属の従業員に対して顧客ファイルの閲覧・複写を認めていたものの,対象書類と目的等を記載するとともに複写する場合は使用後に破棄することも約束して職長の承認印を得た申請書が提出され,営業副本部長が顧客管理システムのデータを確認して承認することをその条件としていた。 (エ) 営業本部は,提出された顧客ファイルや1審原告コミュニティから提供される賃貸管理情報に基づき,顧客管理システムに約7000名に上る顧客の氏名や年齢,住所,固定電話・携帯電話の各番号,勤務先名・所在地,年収,所有物件,借入状況,賃貸状況等の 告コミュニティから提供される賃貸管理情報に基づき,顧客管理システムに約7000名に上る顧客の氏名や年齢,住所,固定電話・携帯電話の各番号,勤務先名・所在地,年収,所有物件,借入状況,賃貸状況等の顧客情報を入力し,電子データとして一元管理していた。 顧客情報に関する電子データが保存されているサーバーは,営業本部長とシステム管理者だけが入室することのできる,監視カメラが設置された施錠付きサーバー室に保管されていた。また,顧客管理システムのアクセス権者は,情報セキュリティ管理者と情報システム管理者の両者が承認した営業本部内のカスタマーサポートグループか顧客管理グループに所属する数名の従業員に限定されていた上,顧客管理システムにアクセスをする際には,端末へのログイン時と顧客管理システムへのログイン時の2度にわたって個別のIDとパスワードの入力が求められ,IDやパスワードの有効期間も90日と短期間に設定されていた。 (オ) 買増し営業は,営業部所属の従業員が,過去に投資用マンションを販売した顧客の購入余力を検討した上で,1日数件ほどの電話をかけ,販売が見込める顧客に対して複数回の電話営業や訪問営業を行うとともに,見込み帳や営業報告書等を作成しながら,追加契約の成立を目指すというものであった。 購入余力の検討は,営業部所属の従業員において,新規契約の成立後も,顧客か らの問い合わせに迅速に対応する必要があるため,契約内容報告書の写しを手元に保管しており,これに記載された借入状況等を参照し,買増しが見込める顧客を大まかに絞り込んだ上で,営業本部に対して源泉徴収票や住宅ローン償還表等の借入関係書類等を複写申請するなどし,買増しが見込める顧客を詳細に絞り込む方法で行われていた。 イ 1審原告らにおける情報管理体制の構築と運用等証拠(甲2 対して源泉徴収票や住宅ローン償還表等の借入関係書類等を複写申請するなどし,買増しが見込める顧客を詳細に絞り込む方法で行われていた。 イ 1審原告らにおける情報管理体制の構築と運用等証拠(甲24,28,32,33の1~3,甲34の1~4,甲42~49,50の1・2,甲51,52,59,66,68,70~74,77の1~3,原審証人 H )によれば,次の事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 (ア) 1審原告ネクストは,平成17年4月1日の個人情報保護法の完全実施を受け,同年6月29日,情報セキュリティ実施手順を定め,以後,定期的な内部監査を行ったり,1審原告コミュニティや関連会社を含めた全従業員に対する研修や試験を毎年実施したり,情報セキュリティに関する意思決定機関である情報セキュリティ委員会を毎月開催したりして改善を進めていった結果,登録審査を経て,同年11月18日,情報セキュリティマネジメントシステムの国内規格であるISMS認証を取得した。 また,1審原告ネクストは,移行審査を経て,平成18年11月2日,1審原告コミュニティや他の関連会社と共に,上記システムの国際規格であるISO/IEC27001認証を取得し,その後も,各種の情報セキュリティを継続して実施し,毎年行われる審査に合格していた。 (イ) 1審原告ネクストは,平成19年1月15日以降,1審原告コミュニティや関連会社を含めた全従業員に対して「ISO27001ハンドブック」を配布し,同年6月末から同年7月初めにかけて実施した試験では,上記ハンドブックを基にした出題がされ,1審被告 Y1 及び同 Y2 の各正答率は,それぞれ9割又は8割であった。 上記研修で配布されたレジュメには,脅威から守るべき情報資産として「業務上 知り得たお客様の情報(携帯電 がされ,1審被告 Y1 及び同 Y2 の各正答率は,それぞれ9割又は8割であった。 上記研修で配布されたレジュメには,脅威から守るべき情報資産として「業務上 知り得たお客様の情報(携帯電話番号…)」と記載されているとともに,しなければいけないこととして「情報の外部流出を防止する。」,してはいけないこととして「重要書類を机の上などに放置しない。」などと記載されている。また,上記ハンドブックには,情報記録書面の社外持ち出し申請手順が記載されているとともに,携帯電話の取扱いルールとして「携帯電話からの情報漏洩を防止するため…不要になった情報については速やかに削除すること」,してはいけないこととして「重要書類を机上等に放置しない。」などと記載されている。 また,本件就業規則は,1審原告ネクストの各部内に常備されていた。 (2) 検討ア顧客情報の帰属先について(ア) 前記認定の事実によれば,1審原告ネクストから投資用マンションを購入して1審原告コミュニティに賃貸管理を委託した顧客の氏名,年齢,住所,電話番号,勤務先名・所在地,年収,所有物件,借入状況,賃貸状況等から構成される情報(以下「本件顧客情報」という。)は,いずれも1審原告らの従業員が業務上取得した情報であるから,これを従業員が自己の所有する携帯電話や記憶に残したか否かにかかわらず,勤務先の1審原告らに当然に帰属するというべきである。 そして,前記第2の1(2)及び第4の1(1)ア(ウ)に認定のとおり,1審原告コミュニティは,1審原告ネクストの完全子会社であって,1審原告ネクストが顧客に販売した投資用マンションについて,1審原告ネクストの従業員が1審原告コミュニティの代理人又は使者として賃貸管理委託契約を締結し,以後の管理を受託することを主たる業務としており,1審原告 トが顧客に販売した投資用マンションについて,1審原告ネクストの従業員が1審原告コミュニティの代理人又は使者として賃貸管理委託契約を締結し,以後の管理を受託することを主たる業務としており,1審原告ネクストも,1審原告コミュニティが賃貸管理する投資用マンションを適宜買い取ることもあるから,1審原告らは,互いに一致協力することで投資用マンションにより投資の実を挙げようとする顧客の需要に応じているものであって,1審原告ネクストの有する本件顧客情報は,当然に1審原告コミュニティの業務にも必要なものであって,かつ,投資用マンションの売買契約及び賃貸管理委託契約の一方の当事者である顧客も,これを当然了解してい るものである。以上のような1審原告らの関係によれば,1審原告らは,本件顧客情報を相互に提供することで顧客の需要に応じているものと認められ,本件顧客情報は,1審原告らのうちのいずれの従業員が取得したかを問わず,1審原告ら双方に帰属するものといえる。 そして,1審被告 Y1 及び同 Y2 の各陳述書(乙62,63)によれば,1審被告 Y1 及び同 Y2 の携帯電話や記憶に残っていた本件顧客情報は,いずれも1審原告ネクストでの投資用マンションの販売業務に関連して取得されたことが認められるから,勤務先の1審原告ネクストに帰属するとともに,上記のとおり,1審原告コミュニティにも帰属するものといえる。 したがって,本件顧客情報は,1審被告 Y1 や同 Y2 の携帯電話や記憶に残っていたものを含めて,いずれも1審原告らに帰属するというべきである。 (イ) 以上に対して,1審被告らは,1審原告ネクストの従業員が全ての営業先の連絡先を得ていたわけではなく,独自の経済的負担で営業活動をしていたばかりか,業務上知り得た情報が全て勤務先に帰属すると解する ) 以上に対して,1審被告らは,1審原告ネクストの従業員が全ての営業先の連絡先を得ていたわけではなく,独自の経済的負担で営業活動をしていたばかりか,業務上知り得た情報が全て勤務先に帰属すると解することが職業選択の自由を著しく制限するから,1審原告ネクストの顧客情報がその元従業員であった1審被告 Y1 及び同 Y2 にも帰属する旨を主張する。 しかしながら,1審原告ネクストの従業員は,いずれも本件顧客情報の一部を1審原告ネクストの業務を遂行する上で取得したものであるばかりか,前記(1)ア(ウ)及び(エ)に認定の事実に照らせば,他の従業員が取得した顧客に関する情報について容易に知り得る立場にあったわけではない。また,その業務遂行に当たって独自の経済的負担があったからといって,1審原告ネクストの従業員は,直ちに本件顧客情報の帰属主体となるものではないし,1審原告らの事業内容及びそこにおける本件顧客情報の重要性に照らすと,本件において1審原告ネクストの従業員が業務上知り得た情報が1審原告らのみに帰属したとしても,憲法の規定を踏まえた私法秩序に照らして1審原告ネクストの従業員の職業選択の自由を看過し難い程度に著しく制限するものとまでは評価できない。 よって,1審被告らの上記主張は,採用できない。 イ秘密管理性について(ア) 不正競争防止法における「営業秘密」とは,秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,公然と知られていないものをいい,①秘密管理性,②有用性,③非公知性が要件とされている(同法2条6項)。 (イ) このうち,本件における秘密管理性についてみると,前記第2の1(1)及び(2)に認定のとおり,1審原告ネクストは,資本金の額が18億円を超える東京証券取引所市場 れている(同法2条6項)。 (イ) このうち,本件における秘密管理性についてみると,前記第2の1(1)及び(2)に認定のとおり,1審原告ネクストは,資本金の額が18億円を超える東京証券取引所市場第2部の上場企業であり,1審原告コミュニティも,資本金の額が5000万円の株式会社ではあるものの,1審原告らは,前記アに認定のとおり,本件顧客情報を共同して保有するものである以上,両者併せて相応の情報管理体制が求められるというべきである。 そして,前記(1)ア(ウ)及び(エ)に認定のとおり,本件顧客情報は,1審原告ネクストの営業部を統括する営業本部により,顧客ファイルや顧客管理システムに保管された電子データとして一元管理されており,顧客ファイルや顧客管理システムは,いずれも入室が制限された施錠付きの部屋に保管されている上,その利用も,前者は営業本部所属の従業員と所定の申請手続を経た営業部所属の従業員に限定され,後者も所定のログイン操作を経た営業本部所属の従業員に限定されている。 なお,本件顧客情報は,前記(1)ア(オ)に認定のとおり,営業部所属の従業員によって契約内容報告書の写しとして保管されてはいるものの,これは,顧客からの問い合わせに迅速に対応したり買増し営業が見込める顧客を絞り込んだりするという営業上の必要性に基づくものである上,1審原告らは,前記第2の4(1)及び(2)並びに前記第4の1(1)イに認定のとおり,各部内に常備された本件就業規則で秘密保持義務を規定するとともに退職時に秘密保持に関する誓約書を提出させたり,各種の情報セキュリティを実施してISMS認証やISO/IEC27001認証を取得し,毎年行われる審査に合格したり,従業員に対する「ISO27001ハ ンドブック」の配布やこれに基づく研修・試験といった周知・教育のた 施してISMS認証やISO/IEC27001認証を取得し,毎年行われる審査に合格したり,従業員に対する「ISO27001ハ ンドブック」の配布やこれに基づく研修・試験といった周知・教育のための措置を実施したりしていたのであるから,1審原告らは,従業員に対して,本件顧客情報が秘密であると容易に認識し得るようにしていたものといえる。 (ウ) 以上を総合すれば,1審原告らは,本件顧客情報に接し得る者を制限し,本件顧客情報に接した者に本件顧客情報が秘密であると認識し得るようにしていたといえるから,本件顧客情報は,1審原告らの秘密として管理されていたということができる。 (エ) 以上に対して,1審被告らは,本件顧客情報について,関係書類が机上に放置されていたり,写しが上司等に配布されたり,上司の指導で休日等における営業のために自宅に持ち帰られたり,手帳等で管理されて成約後も破棄されなかったり,本件就業規則が周知されていなかったりするなど,ずさんな方法で管理されていたことから,本件顧客情報は秘密管理性を欠く旨主張する。 しかしながら,上記関係書類が上司等に配布されたり自宅に持ち帰られたり手帳等で管理されて成約後も破棄されなかったりしていたとしても,それは営業上の必要性に基づくものである上,1審原告らの営業関係部署に所属する従業員以外の者が上記関係書類や手帳等に接し得たことを窺わせる事情も見当たらず,1審原告らがその従業員に本件顧客情報を秘密であると容易に認識し得るようにしていたことは前記(イ)に認定のとおりである。また,本件顧客情報の関係書類が机上に放置されていたことは,これを認めるに足りる証拠がない。 したがって,本件顧客情報が秘密管理性を欠くとの1審被告らの上記主張は,採用することができない。 (オ) また,1審被告らは,1審原 机上に放置されていたことは,これを認めるに足りる証拠がない。 したがって,本件顧客情報が秘密管理性を欠くとの1審被告らの上記主張は,採用することができない。 (オ) また,1審被告らは,1審原告ネクストの顧客情報である氏名,連絡先又は住所等が単独でも営業秘密として明示されている必要があるのに,そのような明示がされていないとして,当該顧客情報には秘密管理性が認められない旨を主張する。 しかしながら,1審原告ネクストは,前記(1)ア(ウ)及び(エ)に認定のとおり, 本件顧客情報について厳格に管理を行い,かつ,前記(1)ア(オ)及びイに認定のとおり,従業員に対して,本件顧客情報が秘密であると容易に認識し得るようにしていたから,本件顧客情報の個別の情報について秘密であることを明示するまでもなく,優に秘密管理性を認めることができる。 よって,1審被告らの上記主張は,採用できない。 ウ有用性・非公知性について(ア) 次に,本件における有用性及び非公知性についてみると,証拠(甲22,原審証人 H )によれば,1審原告らの顧客は,1審原告ネクストの販売する投資用マンションを買い増しして1審原告コミュニティに賃貸管理を委託することが多いため,本件顧客情報を用いて営業活動を行えば効率的に投資用マンションの売買契約や賃貸管理委託契約を成立させ得ること,本件顧客情報は,1審原告ネクストの販売する投資用マンションを購入した約7000名の個人情報であり,一般には知られていないことが認められるから,本件顧客情報は,1審原告らの事業活動に有用な営業上の情報であって,公然と知られていないものといえる。 (イ) 以上に対して,1審被告らは,顧客の氏名や住所,電話番号,勤務先名・所在地が登記事項要約書やNTTの番号案内,名簿業者,インターネットから容易 報であって,公然と知られていないものといえる。 (イ) 以上に対して,1審被告らは,顧客の氏名や住所,電話番号,勤務先名・所在地が登記事項要約書やNTTの番号案内,名簿業者,インターネットから容易に入手することができるので,本件顧客情報は有用な情報でも非公知の情報でもない旨主張する。 しかしながら,本件顧客情報は,単なる少数の個人に係る氏名等の情報ではなく,1審原告ネクストの販売する投資用マンションを購入した約7000名の個人に係る氏名等の情報であって,そのような情報を登記事項要約書やNTTの番号案内,名簿業者,インターネットで容易に入手することができないことは明らかである。 また,1審被告らは,1審被告らが利用した51名というごく一部の顧客に関する情報については有用性及び非公知性について事案に即した判断をしていない旨を主張する。 しかしながら,上記51名が上記約7000名の顧客に含まれるものであり,当 該約7000名の顧客情報(本件顧客情報)に有用性及び非公知性が認められる以上,当該51名について個別に有用性又は非公知性について論ずる必要はない。 よって,1審被告らの上記主張は,採用できない。 エ小括以上によれば,1審原告らの顧客情報である本件顧客情報は,1審被告 Y1 及び同 Y2 の携帯電話や記憶に残っていたものも含め,1審原告らの営業秘密に該当するというべきであって,1審被告 Y1 及び同 Y2 らは,その帰属主体ではないといわざるを得ない。 2 争点2(1審被告 Y1 及び同 Y2 は,退職後に1審原告ら又は秘密保持義務を負った1審原告らの元従業員から取得した1審原告らの顧客情報を使用して1審原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったか)について(1) 認定事実この点に関する当裁判所の認定事実は,原判決 持義務を負った1審原告らの元従業員から取得した1審原告らの顧客情報を使用して1審原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったか)について(1) 認定事実この点に関する当裁判所の認定事実は,原判決別紙顧客勧誘一覧表の顧客番号30の当裁判所の判断欄のうち事実認定部分の1行目を「面識がなかったが,1審被告 Y1 は,1審原告ネクストを退職後に顧客と面識を得た B の紹介で,平成20年末頃,顧客に電話連絡」と,同欄のうち顧客情報使用部分の「○」を「×」と改める一方,顧客番号43の当裁判所の判断欄のうち事実認定部分の1行目を「担当者だった1審被告 Y1 は,平成20年8月,1審原告ネクスト在職中に記憶していた顧客の住所に関する情報に基づきNTT番号案内で調べた顧客の自宅電話に」と改め,当該部分7行目及び8行目を削除し,同欄のうち顧客情報使用部分の「×」を「○」と改めるほかは,同欄記載のとおりであるから,これを引用する。 (2) 検討ア前記認定の事実によれば,1審被告 Y1 は,1審原告ネクスト営業部の元同僚である A ,I ,B ,J , K 及び L から,1審原告コミュニティとの間で賃貸管理委託契約を締結していた顧客の紹介や情報提供を受けている。 ところで,前記1(1)ア(ウ)に認定のとおり,1審原告ネクストの営業部所属の 従業員は,見込み客との間で投資用マンションの売買契約を成立させると,併せて,1審原告コミュニティから授権された代理人又は使者として,顧客との間で賃貸管理委託契約の締結にも当たっていたこと,前記1(1)イに認定のとおり,1審原告らは,その双方の従業員に対して本件顧客情報を含む営業秘密の管理について研修等を実施しており,前記1(2)ア(ア)に認定のとおり,本件顧客情報は,1審原告らに帰属しているものである以上 り,1審原告らは,その双方の従業員に対して本件顧客情報を含む営業秘密の管理について研修等を実施しており,前記1(2)ア(ア)に認定のとおり,本件顧客情報は,1審原告らに帰属しているものである以上,1審原告ネクストの営業部所属の従業員又は元従業員(1審被告 Y1 及び同 Y2 を含む。)は,いずれも,1審原告ネクストに対して,本件就業規則に基づき本件顧客情報についての秘密保持義務を負うほか,併せて,1審原告コミュニティの代理人又は使者としての善管注意義務に基づき,1審原告コミュニティのために賃貸管理委託契約の締結に当たり開示される本件顧客情報について,秘密保持義務を負うものと解するのが相当である。 そして, A , I , B , J , K 及び L は,1審原告ネクストを退職した1審被告 Y1 に対して本件顧客情報を開示したのであるから,いずれも,1審原告ネクストに対する本件就業規則上の秘密保持義務違反が成立するのみならず,1審原告コミュニティに対する代理人又は使者の善管注意義務に基づく秘密保持義務違反が成立するというべきである。 そうすると,前掲各証拠によれば,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,原判決別紙顧客勧誘一覧表中の当裁判所の判断の顧客情報使用欄に○と記載された1審原告らの顧客については,①本件顧客情報のうち1審被告 Y1 及び同 Y2 が記憶していた顧客の氏名や住所,勤務先の情報を基に,NTTの番号案内やインターネットで顧客の自宅や勤務先の電話番号を調べた上で連絡したり,本件顧客情報のうち1審原告ネクスト在職中に顧客から教えてもらって自己の携帯電話に登録していた顧客の携帯電話番号を基に,顧客の携帯電話に連絡したり,②本件顧客情報のうち元同僚が1審原告らに対する秘密保持義務に違反して開示した情報を元に,顧客の電話に連絡 もらって自己の携帯電話に登録していた顧客の携帯電話番号を基に,顧客の携帯電話に連絡したり,②本件顧客情報のうち元同僚が1審原告らに対する秘密保持義務に違反して開示した情報を元に,顧客の電話に連絡したりして,投資用マンションの賃貸管理の委託先を1審原告コミュニティから1審被告レントレックスに変更するよう勧誘したものであると認められるから,①1 審原告コミュニティから,又は,②1審原告コミュニティに対する代理人又は使者の善管注意義務に基づく秘密保持義務を負った1審原告ネクストの元従業員から,それぞれ取得した,1審原告コミュニティの本件顧客情報を使用して同1審原告の顧客に連絡し,営業活動を行ったものといわなければならない。なお,1審被告Y1 及び同 Y2 は,投資用マンションに関する賃貸管理の委託先を変更するよう勧誘したものであるから,1審原告ネクストの顧客に対する営業活動を行ったものとまでいうことはできない。 イ他方,前掲各証拠によれば,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,原判決別紙顧客勧誘一覧表中の当裁判所の判断の顧客情報使用欄に×と記載された1審原告らの顧客については,顧客の方から連絡を受けたり,知人からの情報提供,名簿業者から入手した名簿,不動産登記簿謄本とNTT番号案内の番号案内で知った面識のない顧客の自宅電話や携帯電話,勤務先の電話番号を基に連絡したりしたものであると認められるから,1審原告らや,1審原告らに対する秘密保持義務を負った1審原告らの元従業員から取得した本件顧客情報を使用して,1審原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったものとまでいうことはできない。なお,顧客から連絡を受けた場合,顧客の氏名と電話番号以外の本件顧客情報を使用した可能性も考えられなくはないが,これを認めるに足りる証拠はない上,図利加害目的があ 行ったものとまでいうことはできない。なお,顧客から連絡を受けた場合,顧客の氏名と電話番号以外の本件顧客情報を使用した可能性も考えられなくはないが,これを認めるに足りる証拠はない上,図利加害目的があるとはいい難く,上記判断を左右するものではない。 ウ以上に対して,1審原告らは,顧客から1審被告 Y1 宛に電話がかかってきた事案(顧客番号1,6,9,11,21,41,42,48,51),面識がない顧客に対してNTT番号案内等で勧誘行為を行った事案(同20,31,58,64),及び「知人」を介して顧客情報を再取得した事案(同22)について,いずれも顧客情報が不正に使用されたものである旨を主張する。 しかしながら,これらの各事案について,本件顧客情報が不正に使用されたと認めるに足りる的確な証拠はなく,1審原告らの上記主張は,採用できない。 また,1審原告らは,顧客番号30についても, B が1審原告ネクスト在職中 に得た顧客情報に基づいて1審被告 Y1 に紹介した旨を主張する。 そこで検討すると,顧客番号30は,平成21年2月上旬以降に B を介して1審被告 Y1 と連絡をとった旨の陳述書(乙46)を提出しており,1審被告 Y1 の陳述書(乙62)の記載もこれに沿うものであるところ,当該顧客は,同年1月7日には1審原告コミュニティに対する賃貸管理委託契約解約届等を作成しており(甲7)1審被告 Y1 と連絡をとるようになった時期については,不正確な記載となっていることは否めない。しかしながら,顧客番号30の上記陳述書は,他の投資用マンション管理会社の倒産に関連して1審原告らに不安を抱いた上記顧客が自ら当該倒産会社の関連会社に勤務していた B に連絡をとったところ, B から1審被告 Y1 を紹介された経緯を詳細に記載しており,当該記 管理会社の倒産に関連して1審原告らに不安を抱いた上記顧客が自ら当該倒産会社の関連会社に勤務していた B に連絡をとったところ, B から1審被告 Y1 を紹介された経緯を詳細に記載しており,当該記載からは, B が当該顧客に関する情報を1審原告ネクスト在職中に1審原告らから開示されていたとまでは直ちに認め難いばかりか,他に B が当該情報を1審原告ネクスト在職中に1審原告らから開示されたと認めるに足りる証拠はない。 よって,1審原告らの上記主張は,採用できない。 エ他方,1審被告らは,多数の1審原告らの顧客に対して一括して資料を送付していないから,本件顧客情報を使用していない旨を主張するほか,1審被告らは,顧客の連絡先等が1審原告ネクストの従業員と顧客との間の人的関係を営む上で不可欠である以上,これに基づく顧客との接触が違法なものとはならない旨を主張する。 しかしながら,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,前記アに認定のとおり,記憶していた顧客の氏名や住所,勤務先,携帯電話に登録していた顧客の携帯電話番号又は元同僚の紹介や情報提供を基に,原判決別紙顧客勧誘一覧表中の当裁判所の判断の顧客情報使用欄に○と記載された1審原告らの顧客(顧客番号43を含む。)に対して連絡したものであるところ,このような行為は,本件顧客情報の使用に該当することが明らかであって,その態様に照らすとき,1審被告 Y1 及び同 Y2 と顧客との間の人的関係に基づく接触にとどまるものとは到底評価できない。 よって,1審被告らの上記主張は,採用することができない。 オ 1審被告らは,1審原告ネクストの従業員が1審原告コミュニティの代理人又は使者であったことを否認するほか,単に賃貸管理委託契約に署名捺印を求めるよう指導されており,全ての顧客との間で当該契約を締 オ 1審被告らは,1審原告ネクストの従業員が1審原告コミュニティの代理人又は使者であったことを否認するほか,単に賃貸管理委託契約に署名捺印を求めるよう指導されており,全ての顧客との間で当該契約を締結していたわけではない1審原告ネクストの元従業員である1審被告 Y1 及び同 Y2 が,1審原告コミュニティに対する関係でも秘密保持義務を負うことはない旨を主張する。 しかしながら,前記1ア(ウ)及び(エ)に認定の1審原告らの業態及び前記1イ(イ)に認定の従業員に対する研修の在り方に照らせば,1審原告ネクストの従業員が1審原告コミュニティのために賃貸管理委託契約の締結業務に当たっていたとの原審証人 H の供述は,これを信用でき,1審原告ネクスト従業員がこのような業務を行うことは,法的には代理人又は使者と評価するのが相当であって,これを覆すに足りる証拠はない。そして,前記アのとおり,1審原告ネクストの営業部所属の従業員又は元従業員は,1審原告コミュニティに対し,代理人又は使者としての善管注意義務に基づき本件顧客情報についての秘密保持義務を負うものと認められるのであるから,これに反する1審被告らの上記主張は,採用できない。 カ 1審被告らは, A が,1審原告ネクスト退職後に知り得た顧客情報を1審被告 Y1 に提供したものであって,在職中に知り得た顧客情報を提供したものではないから,秘密保持義務の対象とはならない旨を主張する。 しかしながら, A (乙5)の陳述書の記載によっても, A は,1審原告ネクストを退職後も,1審原告ネクストから投資用マンションを購入した者の顧客情報を把握した上で,更に登記簿謄本等を入手して個別の顧客に対して連絡を取るなどしており,顧客番号15,23,26,35,38,39,44,45,50及び53ないし56の各顧客は を購入した者の顧客情報を把握した上で,更に登記簿謄本等を入手して個別の顧客に対して連絡を取るなどしており,顧客番号15,23,26,35,38,39,44,45,50及び53ないし56の各顧客は,いずれも例外なく1審原告ネクストから投資用マンションを購入していた者であったことを併せ考えると, A は,これらの顧客に関する情報を1審原告ネクスト在職中に1審原告らから開示されて知っていたものと認めることができる。 したがって,1審被告らの上記主張は,採用できない。 キ小括以上によれば,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審原告ネクストを退職した後,別紙顧客勧誘一覧表中の当裁判所の判断の顧客情報使用欄に○と記載された顧客(顧客番号30を除き,顧客番号43を含む。)に対し,1審原告コミュニティ又は同1審原告に対する秘密保持義務を負った1審原告ネクストの元従業員から取得した1審原告コミュニティの営業秘密である本件顧客情報を使用して1審原告コミュニティの顧客に連絡し,営業活動を行ったというべきである。 3 争点3(1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審原告らからその顧客情報を取得した場合,それは不正の手段によるものか,仮に不正の手段によるものでない場合,1審被告 Y1 及び同 Y2 が,1審原告らの顧客情報を1審原告らから示され,退職後に図利加害目的で1審原告らの顧客情報を使用して1審原告らの顧客に連絡し,営業活動を行ったといえるか,また,1審被告 Y1 及び同 Y2 が秘密保持義務を負った1審原告らの元社員から1審原告らの顧客情報を取得した場合,それは悪意重過失によるものか)について(1) 不正の手段による取得(不正競争防止法2条1項4号)についてア営業報告書や電子データ等のコピーについて原判決別紙顧客勧誘一覧表中の した場合,それは悪意重過失によるものか)について(1) 不正の手段による取得(不正競争防止法2条1項4号)についてア営業報告書や電子データ等のコピーについて原判決別紙顧客勧誘一覧表中の当裁判所の判断の事実認定欄記載のとおり,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審原告コミュニティから本件顧客情報を取得した場合において,担当者やその補助者として記憶していた顧客の氏名や住所,勤務先又は顧客から教えてもらって携帯電話に登録していた顧客の携帯電話番号を基に連絡したものである。 1審被告 Y1 及び同 Y2 が本件顧客情報に関する営業報告書や電子データ等を不正に複写するなどしていたことについては,これを認めるに足りる証拠がない。 イ携帯電話番号の抹消懈怠について前記第2の4(2)に認定のとおり,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審原告ネクス トに提出した本件誓約書2項及び3項において機密情報の返還と不保持を誓約したにもかかわらず,1審原告ネクストを退職する際に携帯電話に登録していた顧客の携帯電話番号を抹消していない。 しかしながら,上記携帯電話は,1審被告 Y1 又は同 Y2 の個人所有物であって,自由に管理し得るものであることを考慮すると,上記の事実をもって,窃取,詐欺又は強迫に類した不正の手段によるものとはいい難いというべきである。 ウしたがって,1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審原告コミュニティからその営業秘密である本件顧客情報を取得したのは,不正競争防止法2条1項4号所定の不正の手段によるものということはできない。 (2) 1審原告コミュニティからの開示による取得及び図利加害目的(不正競争防止法2条1項7,8号)についてア 1審原告コミュニティからの開示による取得について前記2に認定のとおり,1審原 (2) 1審原告コミュニティからの開示による取得及び図利加害目的(不正競争防止法2条1項7,8号)についてア 1審原告コミュニティからの開示による取得について前記2に認定のとおり,1審原告ネクスト営業部所属の従業員は,1審原告コミュニティからも本件顧客情報を開示されて取得しているものといえる。 したがって,1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審原告コミュニティの営業秘密である本件顧客情報を取得したのは,1審原告コミュニティから示されたことによるというべきである。 イ図利加害目的について(ア) 証拠(甲30,41,原審1審被告 Y1 本人)によれば,①1審被告レントレックスが賃貸管理委託契約の解約を代理した人数は,1審原告コミュニティと賃貸管理委託契約を締結していた者以外の者が数名であるのに対し,1審原告コミュニティと賃貸管理委託契約を締結していた者が38名に上ること,②原判決別紙顧客勧誘一覧表中の当裁判所の判断の信用毀損欄に○と記載された顧客(信用毀損行為が本件訴状送達後である平成21年9月14日にされた顧客番号64の顧客を除く。)の事実認定欄記載のとおり,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,平成20年11月頃から平成21年1月頃までの間,1審原告らの顧客9名(顧客番号7,28, 29,38,39,44,53,54,65)に対し,1審原告ネクストに倒産のおそれがあるという1審原告ネクストの営業上の信用を害する事実を記載した本件書面を送付したり,1審原告ネクストが,大量の在庫を抱えて中古の買取りもできなくなっている上,債務超過で倒産のおそれがあり,1審原告コミュニティも,敷金に手を着けたり家賃の送金も遅れたりしており,1審原告ネクストが倒産すれば,連鎖倒産するなどと1審原告らの営業上の信用を害する事実を電話で告知した 過で倒産のおそれがあり,1審原告コミュニティも,敷金に手を着けたり家賃の送金も遅れたりしており,1審原告ネクストが倒産すれば,連鎖倒産するなどと1審原告らの営業上の信用を害する事実を電話で告知したりしたこと,③1審原告コミュニティと1審被告レントレックスとは,投資用マンションの賃貸管理業において競争関係にあり,両者の各サービス内容は,いずれも,賃借人から家賃を集金して顧客に送金するだけの家賃保証がない集金代行方式と,顧客から賃借して賃借人に転貸することで家賃保証があるサブリース方式とに分類され,集金代行方式の管理委託料が最低で1か月3500円,サブリース方式の家賃保証が最高で家賃の95%相当額と類似していることが認められる。 以上の各事実に前記2(1)に認定の事実を総合すれば,1審被告 Y1 及び同 Y2は,1審原告コミュニティの顧客に対する営業活動を行っていた際,1審原告コミュニティを狙った競業を行う目的を有していたものと優に推認することができ,この認定を左右するに足りる証拠はない。 (イ) そして,前記第2の4(1)及び(2)並びに第4の1(1)イに認定のとおり,1審原告ネクストでは,本件就業規則や退職者が提出する誓約書で機密保持義務や競業避止義務が規定されるとともに,情報セキュリティに関する周知・教育のための措置が実施されていたものである。それにもかかわらず,1審被告 Y1 及び同Y2 は,1審原告コミュニティを狙った競業を行う目的で,1審原告コミュニティの顧客に対する営業活動を行っていることに加えて,1審被告 Y1 及び同 Y2 による本件顧客情報の使用は,顧客番号64を除き,1審被告レントレックスの設立直前ないし直後であって確たる顧客を有していない平成20年10月頃から平成21年2月頃に集中して行われていることことに照 による本件顧客情報の使用は,顧客番号64を除き,1審被告レントレックスの設立直前ないし直後であって確たる顧客を有していない平成20年10月頃から平成21年2月頃に集中して行われていることことに照らすと,1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審原告ネクストを退職した後に1審原告コミュニティの本件顧客情報を使用して 1審原告コミュニティの顧客に連絡し,営業活動を行ったことは,不正競争防止法2条1項7号所定の不正の利益を得る目的又は本件顧客情報の帰属主体である1審原告コミュニティに損害を加える目的(図利加害目的)によるものであるというべきである。 (ウ) 以上に対して,1審被告らは,①1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審原告コミュニティの顧客に連絡して営業活動を行ったのは,投資用マンションの販売にのみ重点を置いて買増しができない顧客には情報を提供せずに放置するという1審原告らの営業方針に疑念を抱いていたため,サービス面で競い合う目的によるものである上,②1審原告ネクストでは従業員が営業活動に用いる携帯電話の料金等は個人負担であり,成約した場合にも少額のインセンティブしか支払われず,退職後に顧客への対応を求められることもあるから,上記営業活動には正当な理由があり,図利加害目的がない旨主張する。 しかしながら,1審被告らの上記主張を前提としても,1審原告コミュニティを狙った競業が正当化されるものではない。したがって,この点に関する1審被告らの上記主張は,採用することができない。 また,1審被告らは,1審被告レントレックス設立後に業務の枠を超えた人的関係を有する顧客に対してその立ち上げの挨拶をしたにすぎず,本件書面の送付等も不正なものではなく,業務内容が類似することも通常予定される範囲内であるから,図利加害目的がなかった旨を主張する。 人的関係を有する顧客に対してその立ち上げの挨拶をしたにすぎず,本件書面の送付等も不正なものではなく,業務内容が類似することも通常予定される範囲内であるから,図利加害目的がなかった旨を主張する。 しかしながら,前記(ア)に認定の事実に照らすと,1審被告らの行為は,いずれも単なる立ち上げの挨拶等を遙かに超えるものであって,1審被告らの上記主張は,到底採用の限りではない。 (3) 悪意重過失による取得(不正競争防止法2条1項8号)についてア前記1(1)ア(ウ)に認定のとおり,1審原告ネクスト営業部所属の従業員は,顧客と1審原告コミュニティとの間における賃貸管理委託契約の締結業務も担当している上,前記1(1)イに認定のとおり,1審原告コミュニティの従業員等ととも に情報セキュリティに関する研修を受けたり共通のハンドブックを配布されたりしていたのであるから,1審原告コミュニティに対しても本件顧客情報の秘密保持義務を負っていることを認識していたものと優に推認することができる。このため,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審原告ネクスト営業部に所属していた A , I ,B , J , K 及び L から本件顧客情報を取得した場合において, A ほか上記5名が,1審原告コミュニティに対しても秘密保持義務を負っているにもかかわらず,これに反して本件顧客情報を開示していることを知っていたものということができる。 イしたがって,1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審原告コミュニティに対する秘密保持義務を負った1審原告ネクストの元従業員から本件顧客情報を取得したことは,悪意によるものというべきである。 4 争点4(1審被告らの故意・過失)について前記1(1)ア(ウ)及び(エ)並びに前記1(1)イに認定の事実に証拠(甲55の1・3,乙 客情報を取得したことは,悪意によるものというべきである。 4 争点4(1審被告らの故意・過失)について前記1(1)ア(ウ)及び(エ)並びに前記1(1)イに認定の事実に証拠(甲55の1・3,乙62,63,原審1審被告 Y1 ,同 Y2 各本人)を総合すれば,1審被告Y1 及び同 Y2 は,平成16年10月26日や同年12月20日に1審原告ネクストの営業本部が発出した社内通達や平成17年から毎年行われている情報セキュリティに関する研修等により,本件顧客情報が集約された顧客ファイルが平成16年末から営業本部によって一元管理されていることや本件顧客情報が非公知の情報資産であることを認識していたものと認められるから,本件顧客情報が1審原告らの営業秘密に該当する旨認識していたといえる。にもかかわらず,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審原告ネクストを退職した後,1審原告コミュニティを狙った競業を行う目的で,本件顧客情報を使用して1審原告コミュニティの顧客に対する営業活動を行ったのであるから,営業秘密の不正使用という不正競争(不正競争防止法2条1項7号)の故意があるものといえる。そして,1審被告 Y1 が代表者を務める1審被告レントレックスも,上記故意があるものといえる。 また,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,前記3(3)のとおり,1審原告コミュニティ に対する秘密保持義務を負った1審原告ネクストの元従業員から悪意によって本件顧客情報を取得し,これを使用して1審原告コミュニティの顧客に対する営業活動を行ったのであるから,不正開示された営業秘密の不正使用という不正競争(不正競争防止法2条1項8号)の故意があるものといえる。そして,1審被告 Y1 が代表者を務める1審被告レントレックスも,上記故意があるものといえる。 したがって,1 秘密の不正使用という不正競争(不正競争防止法2条1項8号)の故意があるものといえる。そして,1審被告 Y1 が代表者を務める1審被告レントレックスも,上記故意があるものといえる。 したがって,1審被告らには,営業秘密の不正使用又は不正開示された営業秘密の使用についての故意があるというべきである。 5 争点5(1審原告ネクストと1審被告らとは競争関係にあるか)について(1) 不正競争防止法2条1項14号の「競争関係」とは,事業者間の公正な競争を確保するという同法の目的に照らし(同法1条),現実の市場における競合が存在しなくとも,市場における競合が生じるおそれがあれば足りるものと解される。 (2) 証拠(甲1,3,6,8の1・2,甲15,23,28,29,59,61,81の1,甲85,乙10,36の1,乙40,原審証人 H )によれば,1審原告ネクストは,その目的に「不動産の売買,仲介,賃貸,管理およびコンサルティングに関する業務」を掲げ,実際に,投資用マンションの売買だけでなく,その賃貸営業,仲介及びコンサルティングに関する事業を行っている一方,1審被告レントレックスは,その目的に「1不動産の賃貸管理業,2不動産の売買,交換,仲介,保有ならびに運用,3不動産コンサルティング業」を掲げ,実際に,投資用マンションの賃貸管理だけでなく,その賃貸営業,仲介及びコンサルティングに関する事業を行っていることが認められる。 したがって,1審原告ネクストと1審被告レントレックスは,投資用マンションの賃貸営業,仲介及びコンサルティングに関する事業において,市場における競合が生じるおそれがあるといえる。また,1審被告 Y1 は,1審被告レントレックスの代表者として,1審被告 Y2 も,1審被告レントレックスの従業員として,その業務を行っている者である 場における競合が生じるおそれがあるといえる。また,1審被告 Y1 は,1審被告レントレックスの代表者として,1審被告 Y2 も,1審被告レントレックスの従業員として,その業務を行っている者であるから,1審原告ネクストと1審被告 Y1 及び同 Y2 の間でも,市場における競合が生じるおそれがあるといえる。 したがって,1審原告ネクストと1審被告らとは,競争関係にあるというべきである。 (3) 以上に対して,1審被告らは,1審原告ネクストと1審被告レントレックスとでは,それぞれ投資用マンションの販売業又は賃貸営業に特化しているから,競合が生じるおそれはない旨を主張する。 しかしながら,1審原告ネクストと1審被告レントレックスとは,上記のとおり,いずれも投資用マンションの賃貸営業,仲介及びコンサルティングに関する事業を行っているのであるから,市場における競合が生じるおそれがあることは,前記のとおりであって,1審被告らの上記主張は,その前提を欠くものとして,採用することができない。 6 争点6(1審被告らは1審原告らの顧客に対して1審原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したか)について(1) 1審被告 Y1 及び同 Y2 が平成20年11月ころから平成21年1月ころまでの間に1審原告らの顧客9名に対して1審原告らに倒産のおそれがあるという1審原告らの営業上の信用を害する事実を告知したことは,前記3(2)イ(ア)に認定のとおりである。また,原判決別紙顧客勧誘一覧表中の顧客番号64に係る当裁判所の判断欄記載のとおり,1審被告 Y2 は,平成21年9月14日,上記顧客に対し,1審原告らが多くのオーナーから訴えられているなどと1審原告らの営業上の信用を害する事実を電話で告知している。 (2) しかしながら,証拠(甲14,1 2 は,平成21年9月14日,上記顧客に対し,1審原告らが多くのオーナーから訴えられているなどと1審原告らの営業上の信用を害する事実を電話で告知している。 (2) しかしながら,証拠(甲14,15,17,18,乙62,原審証人 H ,弁論の全趣旨)によれば,①平成20年度(同年4月1日~平成21年3月31日)の1審原告ネクストは,総資産が約228億円,総負債が約64億円の約164億円の資産超過であり,同年度の1審原告コミュニティも,総資産が約37億円,総負債が約31億円の約6億円の資産超過であること,②PBR(株式純資産倍率)とは,株価を1株当たりの純資産額で除したものを指し,企業価値に対する株価の割高感・割安感を測る指標にすぎず,企業の財務状況と直結するものではない こと,③1審原告ネクストにおいて大量の在庫を抱えていた事実はなく,1審原告ネクストは,中古マンションの買取りを積極的に行っていたこと,④1審原告コミュニティにおいて敷金を着服したり家賃の送金が遅れたりしていた事実はないこと,⑤1審原告らが平成21年当時に多くの投資用マンション所有者から訴えられていた事実はないことが認められる。 これらの事実を総合すれば,平成20年当時の1審原告らに倒産のおそれはなかったものと優に推認することができ,この認定を左右するに足りる証拠はない。 よって,1審被告らは,1審原告らの顧客10名に対し,1審原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知した(不正競争防止法2条1項14号。信用毀損)というべきである。 (3) 以上に対して,1審原告らは,1審被告らによる信用毀損行為が定型的ツールを使用したものであり,1審原告ネクストの顧客を狙い撃ちしたものであるばかりか,1審原告コミュニティと1審被告レントレックスとではサービス内容に大きな は,1審被告らによる信用毀損行為が定型的ツールを使用したものであり,1審原告ネクストの顧客を狙い撃ちしたものであるばかりか,1審原告コミュニティと1審被告レントレックスとではサービス内容に大きな差異がないことから,全顧客に対して信用毀損行為をした旨を主張する。 しかしながら,前記の顧客10名を除く他の顧客に対して,1審原告らの信用を毀損するチラシ等の客観的な文書が配布されるなどしたと認めるに足りる証拠はないものというほかなく,1審原告らが指摘する事実をもってしても,これらの他の顧客に対しても信用毀損行為が行われたと認めるには足りない。 よって,1審原告らの上記主張は,採用できない。 (4) 他方,1審被告らは,本件書面で倒産するおそれがある企業として挙げたのは48社もあり,1審原告ネクストはその1社にすぎなかったから,1審原告らの営業上の信用は害されていない旨主張する。 しかしながら,前記3(2)イ(ア)に認定のとおり,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,本件書面の送付と併せて,1審原告ネクストに倒産のおそれがあり,1審原告ネクストが倒産すれば,1審原告コミュニティも連鎖倒産するなどと電話で告知していたのであるから,1審原告らの営業上の信用は優に害されているというべきである。 したがって,この点に関する1審被告らの上記主張は,採用することができない。 また,1審被告らは,信用毀損行為に関する C の陳述書(甲65)等が信用できないなどと主張する。 しかしながら,1審被告らによる信用毀損行為は,本件書面等の客観的な証拠からも明らかであって,1審被告らの上記主張は,採用し得ない。 7 争点7(1審被告らの故意・過失)について(1) 前記第2の1(2)及び(3)並びに第4の3(2)イ(ア)に認定のとおり,1審被告 Y1 は1審 って,1審被告らの上記主張は,採用し得ない。 7 争点7(1審被告らの故意・過失)について(1) 前記第2の1(2)及び(3)並びに第4の3(2)イ(ア)に認定のとおり,1審被告 Y1 は1審原告らへの信用毀損行為を始める平成20年12月頃(顧客番号43,53,54)の約7か月前に当たる同年5月14日まで,1審被告 Y2 も1審原告らへの信用毀損行為を始める同年11月ころ(顧客番号7の顧客)の約1か月半前に当たる同年9月16日まで,それぞれ1審原告ネクストの従業員として稼働し,いずれもそれまで1審原告らの概況を内部から知り得た上,1審被告 Y1 及び同Y2 は,1審原告コミュニティを狙った競業を行う目的を有していたものである。 これらの事実を総合すれば,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審原告らの顧客に対して告知した1審原告らの営業上の信用を害する事実が虚偽であったことを認識していたものと優に推認することができ,この認定を左右するに足りる証拠はない。 よって,1審被告らには,1審原告ネクストに対する信用毀損についての故意があるというべきである。 (2) 以上に対して,1審被告らは,1審被告 Y1 及び同 Y2 が,1審原告ネクストが倒産の危機に瀕しているかどうかについて認識しておらず,また,本件書面につき,1審被告レントレックスが設立されたばかりで倒産する可能性があると思われかねないため,顧客に対して大手企業でも倒産する可能性があり,規模で選ぶのではなくてサービスで選ぶよう訴える趣旨で作成されたものであるから,その目的は正当であり,1審被告らに故意も過失もない旨を主張する。 しかしながら,1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審被告レントレックス設立直前まで1審原告ネクストの従業員であった以上,その信用状態について認識を欠いていた 被告らに故意も過失もない旨を主張する。 しかしながら,1審被告 Y1 及び同 Y2 が1審被告レントレックス設立直前まで1審原告ネクストの従業員であった以上,その信用状態について認識を欠いていた とは到底認め難い。また,本件書面についてみると,1審被告らの主張を前提としても,本件書面の記載内容は,明らかに1審原告ネクストの信用を毀損するものであることが明らかであって,このような虚偽の事実で信用毀損行為を行うことが正当化されるものではない。この点に関する1審被告らの上記主張は,採用することができない。 (3) 小括前記1ないし4に認定のとおり,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,1審被告レントレックスの業務として,不正の利益を得る目的又は1審原告コミュニティに損害を加える目的(図利加害目的)をもって,1審原告コミュニティから示され,あるいは1審原告コミュニティに対する秘密保持義務を負っている原告ネクストの元従業員から取得した,その営業秘密である本件顧客情報を使用した(不正競争防止法2条1項7,8号)ほか,前記5ないし7に認定のとおり,1審原告らと競争関係にあるところ,故意により,1審原告らの顧客に対し,1審原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したものである(同項14号)。 そして,1審被告 Y1 は,1審被告レントレックスの代表者として自ら,あるいは当時自己の妻を除けば唯一の従業員であった1審被告 Y2 と意思を相通じて前記図利加害目的による本件顧客情報の使用又は信用毀損を実行したものであるから,不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者に当たり,不正競争防止法4条に基づき,1審被告レントレックスと連帯して,1審原告らに生じた前記損害の全てについて賠償する責任を負う。 また,1審被告 Y2 は,1審被告レントレ の利益を侵害した者に当たり,不正競争防止法4条に基づき,1審被告レントレックスと連帯して,1審原告らに生じた前記損害の全てについて賠償する責任を負う。 また,1審被告 Y2 は,1審被告レントレックスの従業員として,前記図利加害目的による本件顧客情報の使用又は信用毀損の一部を実行したにとどまるものではある。しかしながら,前記3(2)イ(イ)に認定のとおり,1審被告 Y1 及び同 Y2は,いずれも不正競争防止法2条1項7号所定の不正の利益を得る目的又は本件顧客情報の帰属主体である1審原告コミュニティに損害を加える目的(図利加害目的)でこれらの各行為に及んでいることや,信用毀損については本件書面など定型 的な手段も用いられていることに加えて,これらのうち1審被告 Y1 が直接実行した各行為がいずれも1審被告 Y2 が1審被告レントレックスのほぼ唯一の従業員であった時期にされていることに照らすと,1審被告 Y2 は,上記各行為をいずれも1審被告 Y1 と意思を相通じて実行したものと推認され,この認定を妨げるに足りる証拠はない。したがって,1審被告 Y2 は,以上の全ての不正競争行為について不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者に当たり,やはり不正競争防止法4条に基づき,1審被告レントレックス及び同 Y1 と連帯して,1審原告らに生じた前記損害の全てについて賠償する責任を負うものというべきである。 8 争点8(本件誓約書・本件就業規則は公序良俗に反して無効か),争点9(1審被告 Y1 及び同 Y2 は退職後も1審原告らの顧客情報を保有してこれを基に競業的行為を行ったか)及び争点10(1審被告 Y1 及び同 Y2 が退職後も1審原告らの顧客情報を保有してこれを基に競業的行為を行ったことに正当な理由があるか)について(1) 有してこれを基に競業的行為を行ったか)及び争点10(1審被告 Y1 及び同 Y2 が退職後も1審原告らの顧客情報を保有してこれを基に競業的行為を行ったことに正当な理由があるか)について(1) 本件誓約書2ないし4項各違反並びに本件就業規則12条15号,54条2項及び56条4項各違反の債務不履行に基づく損害賠償請求について前記のとおり,1審被告らは,1審原告らに対し,図利加害目的による本件顧客情報の使用(不正競争防止法2条1項7,8号)及び信用毀損(同項14号)により損害賠償責任を負うものであるから,これと競合する本件誓約書2項ないし4項の各違反並びに本件就業規則12条15号,54条2項及び56条4項の各違反の債務不履行に基づく損害賠償請求については,判断を要しない。 (2) 本件就業規則55条(競業避止義務)前段及び後段各違反の債務不履行に基づく損害賠償請求について本件就業規則55条前段は,「社員のうち役職者,又は企画の職務に従事したことのある者が退職し,又は解雇された場合」ではなくて「社員のうち役職者,又は企画の職務に従事していた者が退職し,又は解雇された場合」と規定していることから,1審原告ネクストを退職した時に役職者又は企画の職務に従事していた者を 対象とするものと解される。そして,本件就業規則を通覧しても「役職者,又は企画の職務に従事していた者」の定義は見当たらないところ,同条が元従業員について一定期間の競業等を禁止して営業の自由等を制限していることに鑑みると,ここにいう「役職者,又は企画の職務に従事していた者」の範囲については謙抑的に理解すべきものである。そして,1審原告ネクストには多数の課長及び係長がいることや,これらの者がいずれも専ら又は主として特定の見込み客又は顧客に対する営業活動等に当たっており, 囲については謙抑的に理解すべきものである。そして,1審原告ネクストには多数の課長及び係長がいることや,これらの者がいずれも専ら又は主として特定の見込み客又は顧客に対する営業活動等に当たっており,例えば前記1(1)ア(ウ)及び(オ)並びにイに認定のとおり,本件顧客情報についても制限的なアクセスしか得られないことに照らすと,これらの者による退職又は解雇後の競業が1審原告ネクストに与え得る損害は,相対的には限定されており,これらの者による退職又は解雇後の競業による1審原告ネクストの損失を予防するには,本件就業規則の他の条項及び本件誓約書により秘密保持義務を課することで対処することで足りるものというべきであって,ここにいう「役職者」は,少なくとも課長以下の従業員を含まないものと解するのが相当である。 そして,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,いずれも1審原告ネクストを退職した時,上記の意味における「役職者」ではなく,また,「企画の職務に従事していた者」でもないから,同条前段違反の債務不履行責任を負う余地はない。 次に,本件就業規則55条後段は,対象者が明記されていないものの,対象者が同条前段のそれと異なる場合,明記されるのが通常である上,禁止行為のみが「また」という接続詞で同条前段の禁止行為と並べて規定されているから,対象者が同条前段のそれと同じであると解するのが自然である。また,同条前段が禁じる1審原告ネクストの承認を得ない離職後6か月間の日本国内における競業と同条後段が禁じる1審原告ネクスト在職中に知り得た顧客との離職後1年間の取引は,禁止の強度がおおむね同程度と解されるから,そのような観点からも対象者が同条前段のそれと同じであると解するのが相当である。そして,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,いずれも1審原告ネクストを退職した時,上 強度がおおむね同程度と解されるから,そのような観点からも対象者が同条前段のそれと同じであると解するのが相当である。そして,1審被告 Y1 及び同 Y2 は,いずれも1審原告ネクストを退職した時,上記の意味における「役職者」ではなく, また,「企画の職務に従事していた者」でもないから,同条後段違反の債務不履行責任を負う余地もないというべきである。 9 争点11(因果関係及び損害)について(1) 1審原告ネクストの損害ア 1審被告らの違法行為への対応費用 0円1審原告ネクストとの関係で生じ得る1審被告らの違法行為への対応費用は,1審原告らの顧客10名に対して1審原告ネクストの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したことによって生じ得る費用がこれに当たる。しかしながら,10名の顧客への事実関係の確認や陳述書の準備等の対応に要する費用につき,弁護士費用を超えて通常生じる損害と認めることはできないというべきであり,これに反する1審原告ネクストの主張は,採用できない。 イ信用毀損による損害 100万円前記のとおり,1審原告ネクストは,1審被告らの前記信用毀損行為により,顧客に企業の存続可能性を疑われるなど,上場企業として大切な信用を毀損されたものである。もっとも,本件書面に記載された事実は,実際,日刊ゲンダイに掲載されたものである上,1審被告らの信用毀損行為は,10名という特定少数の顧客に対してそれぞれ特定の時期に書面の送付や電話での告知をしたにとどまり,これによって,その後の売上げの減少等といった実害が生じた形跡はうかがわれない。これらの事情にその他本件口頭弁論に顕れた諸般の事情を併せて総合考慮すれば,1審原告ネクストの信用毀損による損害額は100万円(顧客番号6 後の売上げの減少等といった実害が生じた形跡はうかがわれない。これらの事情にその他本件口頭弁論に顕れた諸般の事情を併せて総合考慮すれば,1審原告ネクストの信用毀損による損害額は100万円(顧客番号64については,うち1万円)とするのが相当である。 ウ弁護士費用 10万円本件事案の内容,審理経過,前記認容額その他諸般の事情を総合考慮して10万円(顧客番号64に係る信用毀損の弁護士費用は,うち1000円)とするのが相当である。 エ 1審原告ネクストの損害合計 110万円 (2) 1審原告コミュニティの損害ア逸失委託料 385万1377円(ア) 損失としての逸失委託料1審原告コミュニティは,1審被告らの前記図利加害目的による本件顧客情報の使用により,顧客に賃貸管理委託契約を解約され,原判決別紙顧客移動一覧表中の当裁判所の判断の限界利益額欄に金額(顧客情報の不使用による棄却を意味する0円を除く。なお,顧客番号30の当裁判所の判断の不正競争行為欄の「顧客情報使用」を「×」と,その余の部分をいずれも「0」と,それぞれ改め,顧客番号43の当裁判所の判断の不正競争行為欄の「×」を「顧客情報使用」と,2年分の逸失委託料欄の「0」を「84,000」と,限界利益額欄の「0」を「71,400」と,それぞれ改める。)が記載されている27名の顧客から得ていた管理委託料を失った(顧客番号2,3,5,10,12ないし14,17,19,24,25,27,32ないし37,43,45,47,49,50,52,55,57の顧客。顧客番号49の顧客は2名と数える。)。そして,証拠(甲19)によれば,1審原告コミュニティが上記顧客との間で締結していた 27,32ないし37,43,45,47,49,50,52,55,57の顧客。顧客番号49の顧客は2名と数える。)。そして,証拠(甲19)によれば,1審原告コミュニティが上記顧客との間で締結していた賃貸管理委託契約の契約終了日及び以後の逸失委託料は,同別紙中の1審原告らの主張欄記載のとおりであると認められる。 (イ) 相当因果関係ある損害としての逸失委託料1審原告コミュニティは,1審被告らが前記図利加害目的による本件顧客情報の使用をしなければ,前記顧客27名から相当期間賃貸管理を受託して管理委託料を得ることができたものと認められる。上記相当期間は,1審原告コミュニティが顧客との間で締結する賃貸管理委託契約の契約期間が2年であり,自動更新条項はあるものの(甲40),顧客は2年満了時に更新の是非を判断するのが通常であるから,2年をもって相当と認める。その上で,2年を限度とする前記逸失委託料に1審原告コミュニティの限界利益率(粗利から変動経費を除いた限界利益が収入に対して占める割合)を乗じたいわゆる限界利益の額の限度で,上記行為等に起因する 損害と認めるのが相当であり,1審原告らの主張等によっても,この認定を左右するには足りない。 本件についてこれをみると,1審被告レントレックスは,いずれの前記顧客からも,2年以上賃貸管理を受託していたから,相当因果関係ある損害としての逸失委託料は2年分となり,合計503万4480円となる(別紙顧客移動一覧表中の当裁判所の判断の2年分の逸失委託料欄に記載の「5,097,840」を「503,4480」と改める。)となる。また,証拠(甲17)によれば,平成20年度の1審原告コミュニティは,賃貸管理業に係る賃貸管理収入と賃貸収入の合計約9億4594万円から賃貸営業費約1億3863万円を控除した限界利益 める。)となる。また,証拠(甲17)によれば,平成20年度の1審原告コミュニティは,賃貸管理業に係る賃貸管理収入と賃貸収入の合計約9億4594万円から賃貸営業費約1億3863万円を控除した限界利益額(約8億0731万円)の上記賃貸管理収入と賃貸収入の合計額に対する限界利益率は,約85%であることが認められる(小数点以下四捨五入)。 そうすると,相当因果関係ある損害としての逸失委託料は,前記2年分の逸失委託料に前記限界利益率を乗じた合計427万9308円となる(別紙顧客移動一覧表中の当裁判所の限界利益額欄に記載の「4,333,164」を「4,279,308」と改める。)となる。 以上に対して,1審被告らは,顧客番号17の管理物件について1審原告ネクストにより1審被告レントレックスとの賃貸管理委託契約が解約されている(乙69~71)から,逸失委託料についての因果関係が遮断されている旨を主張する。 しかしながら,顧客の賃貸管理委託契約の解除などしたことは,1審被告レントレックスにおいても不正競争行為の時点で予見不可能であり,後記の顧客等の事情による減額における一事情として考慮すれば足りる。 また,1審被告らは,1審原告コミュニティが建物管理原価についても支出を免れた以上,建物管理原価額約2億6197万円(甲17)についても控除した上で,利益率が算定されるべきである旨を主張する。 しかしながら,1審原告コミュニティは,顧客を失うことで直ちに上記建物管理原価の全てについて支出を免れるものではないから,1審被告らの上記主張は,失 当である。 (ウ) 顧客等の事情による減額等証拠(甲28,乙10,21,22,24,26ないし32,34,36の1,乙38,39,43,45ないし47,55,62,63,原審証人 D ,同 G )によれ (ウ) 顧客等の事情による減額等証拠(甲28,乙10,21,22,24,26ないし32,34,36の1,乙38,39,43,45ないし47,55,62,63,原審証人 D ,同 G )によれば,前記顧客27名が1審原告コミュニティとの賃貸管理委託契約を解約するに当たり,これらの顧客が有していた1審原告らのサービスに対する一定程度の不満や,1審被告レントレックスが売却の際の仲介手数料を6万円のみと相当安くするサービスを提供していたこと等の顧客側の事情も,ある程度影響していたことが認められる。そこで,前記の相当因果関係ある損害としての逸失委託料の発生には,1審被告らの前記図利加害目的による本件顧客情報の使用が90%の限度で寄与しているものと認め,10%を控除するのが相当である。 そうすると,逸失委託料としての損害額は,前記限界利益額に前記10%の減額を行い,合計385万1377円(1円未満切捨て)となる(別紙顧客移動一覧表中の当裁判所の判断の損害額欄の記載のうち,「49,980」を「64,260」と,「75,684」を「97,308」と,「62,118」を「79,866」と,「86,108」を「110,7108」と,顧客番号30の「87,679」を「0」と,顧客番号43の「0」を「64,260」と,合計欄の「3,033,214」を「3,851,377」と,それぞれ改める。なお,仮に不正競争防止法5条2項に基づいて損害額を算定したとしても,1審被告レントレックスの得た委託管理料についても限界利益率を乗じた上で上記の顧客等の事情による減額を行えば,結局,上記金額と径庭はない金額となる。)。 イ 1審被告らの違法行為への対応費用 0円1審原告コミュニティとの関係で生じ得る1審被告らの違法行為への対応費用は, ば,結局,上記金額と径庭はない金額となる。)。 イ 1審被告らの違法行為への対応費用 0円1審原告コミュニティとの関係で生じ得る1審被告らの違法行為への対応費用は,1審被告 Y1 及び同 Y2 において1審原告コミュニティや元同僚から取得した営業秘密である本件顧客情報を使用したことによって生じ得る費用がこれに当たるものといえる。しかしながら,27名の顧客への事実関係の確認や陳述書の準備等の対 応に要する費用を,弁護士費用を超えて通常生じる損害とは認め難い上,1審原告らは上記27名の顧客に係る陳述書を作成していないから,これらの費用を損害として認めることはできないというべきであり,これに反する1審原告コミュニティの主張は,採用できない。 ウ信用毀損による損害 50万円1審原告コミュニティは,1審被告らの前記信用毀損行為により,顧客に企業の存続可能性を疑われ,賃貸管理委託契約を解約されかかったなど,企業として大切な信用を毀損されたものである。もっとも,本件書面には,1審原告コミュニティに関する記載がなかった上,1審被告らの信用毀損行為は,10名という特定少数の顧客に対してそれぞれ特定の時期に電話での告知をしたにとどまり,これによって,賃貸管理委託契約が解約されてしまうなどといった実害が生じた形跡はうかがわれない。これらの事情にその他本件口頭弁論に顕れた諸般の事情を併せて総合考慮すれば,1審原告コミュニティの信用毀損による損害額は50万円(顧客番号64の顧客については,うち5000円)とするのが相当である。 エ弁護士費用 40万円本件事案の内容,審理経過,前記認容額その他諸般の事情を総合考慮して40万円(顧客番号6 ち5000円)とするのが相当である。 エ弁護士費用 40万円本件事案の内容,審理経過,前記認容額その他諸般の事情を総合考慮して40万円(顧客番号64の顧客に係る信用毀損の弁護士費用は,うち500円)とするのが相当である。 オ 1審原告コミュニティの損害合計 475万1377円 10 1審原告らの請求の当否以上によれば,1審原告ネクストの請求は,1審被告らに対しては,連帯して損害賠償金110万円並びにうち108万9000円に対する不正競争行為の後の日である平成21年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金及びうち1万1000円に対する不正競争行為の日である同年9月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,1審被告レントレックス及び同 Y1 に対しては連帯して上記108万9000円に対する不正競争 行為の後の日である同年7月28日から同月31日まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金596円の支払を,それぞれ求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却されるべきである。 また,1審原告コミュニティの請求は,1審被告らに対しては,連帯して損害賠償金475万1377円並びにうち474万5877円に対する不正競争行為の後の日である平成21年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金及びうち5500円に対する不正競争行為の日である同年9月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,1審被告レントレックス及び同 Y1 に対しては連帯して上記474万5877円に対する不正競争行為の後の日である同年7月28日から同月31日まで民法所定の年5 の年5分の割合による遅延損害金の支払を,1審被告レントレックス及び同 Y1 に対しては連帯して上記474万5877円に対する不正競争行為の後の日である同年7月28日から同月31日まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金2600円の支払を,それぞれ求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却されるべきである。 11 結論以上の次第であるから,1審被告らの本件控訴及び1審原告ネクストの附帯控訴は棄却されるべきものであるが,原判決は,1審原告コミュニティの附帯控訴に基づき,本判決の主文2項のとおり変更されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官滝澤孝臣 裁判官井上泰人 裁判官荒井章光 別紙当事者目録被控訴人兼附帯控訴人(以下「1審原告ネクスト」という。)株式会社エフ・ジェー・ネクスト同所被控訴人兼附帯控訴人(以下「1審原告コミュニティ」という。)株式会社エフ・ジェー・コミュニティ上記2名訴訟代理人弁護士岡本政明実野現岡本直也佐藤匠大城季絵控訴人兼附帯被控訴人(以下「1審被告レントレックス」という。)株式会社レントレックス控訴人兼附帯被控訴人(以下「1審被告 Y1 」という。)Y1控訴人兼附帯被控訴人(以下「1審被告 Y2 」という。)Y2上記3名訴訟代理人弁護士土釜惟次佐 々 木良行一瀬太 控訴人兼附帯被控訴人(以下「1審被告 Y2 」という。)Y2上記3名訴訟代理人弁護士土釜惟次佐 々 木良行一瀬太一飯田健司

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