令和4(行ケ)10078 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年1月17日 知的財産高等裁判所 4部 判決 審決取消
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令和5年1月17日判決言渡令和4年(行ケ)第10078号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和4年11月7日判決 原告全薬工業株式会社 同訴訟代理人弁理士高野登志雄同松尾貫治同巽明子 被告株式会社ハッピーイノベーション 主文 1 特許庁が無効2021-890060号事件について令和4年6月 27日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨 第2 事案の概要本件は、商標法4条1項10号、11号、15号及び19号を理由とする商標登録無効審判請求を不成立とした審決の取消しを求める事案である。 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)。 ⑴ 被告は、令和2年7月30日に登録出願され、同年10月29日に設定登 録された、別紙1のとおりの商標登録第6310297号商標(以下「本件 商標」という。)の商標権者である。 ⑵ 原告は、令和3年11月5日付けで本件商標の商標登録無効審判請求をしたところ、特許庁は、上記請求を無効2021-890060号事件として審理を行い、令和4年6月27日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年7月 ところ、特許庁は、上記請求を無効2021-890060号事件として審理を行い、令和4年6月27日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年7月7日、原告 に送達された。 ⑶ 原告は、令和4年8月4日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決は、本件商標が商標法4条1項10号、11号、15号又は19号 のいずれにも該当しない商標であるとしたが、その理由の要旨は、次のとおりである。 ⑴ 本件商標の周知性ア原告は、1950年設立の基礎化粧品等の製造、販売を行う会社であり、2001年に、敏感肌用基礎化粧品「アルージェ」シリーズを発売したこ とはうかがえる。 イしかしながら、Arougeシリーズ商品(以下「原告商品」という。)の我が国における販売量、売上高、市場シェアについて、原告作成の売上等一覧表に係る内容が事実であることを裏付ける客観的な資料の提出はないことから、原告商品の我が国における販売実績を、客観的な使用事実 に基づいて把握することができない。なお、仮に、原告商品に係る販売実績が原告の主張どおりである場合においても、市場シェア等について、化粧品業界全体の販売金額等を示す証拠の提出はないことから、原告商品の販売実績の多寡について評価をすることができない。 ウまた、原告商品に係る広告宣伝については、2015年ないし2019 年の5年間において、計4回、雑誌に広告記事が掲載されたにすぎず、2 017年度ないし2020年度に全国で放映されたテレビCMについても、その内容の一部に別紙2の6のとおりの使用商標(以下、単に「使用商標」という。)及び原告商品 たにすぎず、2 017年度ないし2020年度に全国で放映されたテレビCMについても、その内容の一部に別紙2の6のとおりの使用商標(以下、単に「使用商標」という。)及び原告商品の映像が含まれていることはうかがえるが、その全体の内容は明らかでない。その他の広告宣伝活動については、提出された証拠からは、詳細を確認することができない。 そして、原告商品は、化粧品のランキングを集計したムック本や化粧品の評価を内容とする記事を掲載した雑誌において紹介されているものの、いずれの掲載方法においても、原告商品は、多数の他社の商品とともに掲載されているものであって、他の多くの商品と比較して原告商品を印象付ける方法により掲載されているというものでもないから、これらの掲載ペ ージによって、原告商品のみが需要者に強く印象付けられるとは認められない。 エ以上からすれば、原告提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、別紙2の1ないし6のとおりの引用商標又は使用商標が、原告の業務に係る商品を表すものとして、我が国及び外国に おける取引者、需要者において、広く認識されていたとは認めることはできない。 ⑵ 本件商標の構成について本件商標は、別紙1のとおり、「AROuSE」の文字をスクリプト書体風に表してなるところ、該文字は、「目覚めさせる、刺激する」等を意味する語 (「研究社新英和大辞典」株式会社研究社)として辞書類に載録されているとしても、我が国において一般に広く親しまれた語であるとはいい難いものであるから、本件商標は、特定の意味を有しない一種の造語として理解、認識されるというのが相当である。 そして、特定の意味を有しない造語にあっては、我が国に 親しまれた語であるとはいい難いものであるから、本件商標は、特定の意味を有しない一種の造語として理解、認識されるというのが相当である。 そして、特定の意味を有しない造語にあっては、我が国において広く親し まれているローマ字読み又は英語読みに倣って称呼されるとみるのが自然で あるから、本件商標は、その構成文字に相応して「アロウズ」又は「アラウズ」の称呼を生じるものである。 そうすると、本件商標は、「アロウズ」又は「アラウズ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 ⑶ 引用商標の構成について ア引用商標1別紙2の1のとおりの登録第4469078号商標(以下「引用商標1」という。)は、「アルージェ」の片仮名と「AROUGE」の殴文字を上下二段に横書きしてなるところ、上段の「アルージェ」の文字部分は、下段の「AROUGE」の読みを特定したものと無理なく認識し得るものであ るから、引用商標1は、その構成文字に相応し、「アルージェ」の称呼を生ずるとみるのが相当である。 また、該文字は、辞書等に載録された成語とは認められず、また、特定の意味合いを想起させるものとして一般に知られているということもできない。 そうすると、引用商標1は、「アルージェ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 イ別紙2の2ないし5のとおりの登録第4865806号商標(以下「引用商標2」という。)、登録第4865807号商標(以下「引用商標3」という。)、登録第4873487号商標(以下「引用商標4」という。)及 び登録第5851670号商標(以下「引用商標5」という。)のいずれにも表された四角形又は長方形は、背景図形として看取され いう。)、登録第4873487号商標(以下「引用商標4」という。)及 び登録第5851670号商標(以下「引用商標5」という。)のいずれにも表された四角形又は長方形は、背景図形として看取され、リング形状図形部分は、一見して特定の事物を表したものと認識することは困難であり、それ自体から、特定の称呼及び観念を生じるものとは直ちにいい難いから、これらの図形部分からは、出所識別標識としての称呼及び観念は生じない。 一方、引用商標5の上段の片仮名部分は、下段の欧文字部分の読みを特定 したものと無理なく認識し得るものであり、また、引用商標2ないし引用商標4に表された「Arouge」の文字部分は、その構成文字に相応し、いずれも「アルージェ」の称呼を生ずるとみるのが相当であり、特定の観念は生じない。 そうすると、引用商標2ないし引用商標5は、「アルージェ」の称呼を生 じ、特定の観念は生じないものである。 ⑷ 商標法4条1項11号該当性について本件商標と引用商標1ないし5の外観を比較すると、全体として、片仮名の有無の差異又は図形の有無の差異という明らかな差異を有するものであり、また、本件商標と、引用商標2ないし5の構成中の欧文字部分との比較にお いても、それぞれの書体を異にし、本件商標はその構成文字中の5字が大文字で表されているのに対し、引用商標2ないし5は語頭の文字以外は小文字で表されていること、また、互いに比較的少ない文字数の構成において5文字目の「S」と「g」が相違すること等の差異から、両者にその綴りにおいて共通する点があることを考慮してもなお、外観上、異なる印象を与える場 合も少なくないとみるのが相当である。 次に、称呼においては、本件商標は「アロウズ」又は「 、両者にその綴りにおいて共通する点があることを考慮してもなお、外観上、異なる印象を与える場 合も少なくないとみるのが相当である。 次に、称呼においては、本件商標は「アロウズ」又は「アラウズ」の称呼を生じるのに対し、引用商標1ないし5は「アルージェ」の称呼を生じるものであり、その構成音数及び音構成が明らかに異なるものであるから、両商標は、明確に聴別し得るものである。 さらに、本件商標及び引用商標1ないし5は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上、比較することができない。 そうすると、本件商標と引用商標1ないし5とは、観念において比較することができないとしても、外観において異なる印象を与える場合も少なくなく、さらに、称呼において明確に聴別し得るものであるから、これらを総合 勘案すれば、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであ る。 ⑸ 商標法4条1項10号該当性について使用商標は、原告商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の取引者、需要者の間に広く知られているものと認めることはできないものである。また、本件商標と使用商標と の類否判断においても、本件商標と使用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 したがって、本件商標は、商標法4条1項10号に該当しない。 ⑹ 商標法4条1項15号該当性について使用商標は、原告商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び 登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものであり、また、本件商標と使用商標とは、非類似の商標であって、別異のもの 商標の登録出願時及び 登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものであり、また、本件商標と使用商標とは、非類似の商標であって、別異のものである。 そうすると、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、使用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商 品が原告又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。 したがって、本件商標は、商標法4条1項15号に該当しない。 ⑺ 商標法4条1項19号該当性について 使用商標は、原告商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の取引者、需要者の間に広く知られているものと認めることはできないものである。また、本件商標と使用商標とは、非類似の商標である。さらに、原告が審判手続中に提出した証拠からは、被告が、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他 の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実は見いだ せない。 したがって、本件商標は、商標法4条1項19号に該当しない。 3 取消事由⑴ 商標法4条1項11号該当性判断の誤り(取消事由1)⑵ 商標法4条1項10号該当性判断の誤り(取消事由2) ⑶ 商標法4条1項15号該当性判断の誤り(取消事由3)⑷ 商標法4条1項19号該当性判断の誤り(取消事由4)第3 当事者の主張 1 原告⑴ 取消事由1(商標法4条1項11号該当性判断の誤り)の有無について (取消事由3)⑷ 商標法4条1項19号該当性判断の誤り(取消事由4)第3 当事者の主張 1 原告⑴ 取消事由1(商標法4条1項11号該当性判断の誤り)の有無について ア外観本件商標「AROUSE」(「U」は他の文字と同じ大きさの大文字で筆記体風に表されているものであるから、小文字ではない。)と引用商標1の要部「AROUGE」とを比較すると、両者は6文字構成中、「A」「R」「O」「U」「E」の5文字を共通にし、僅かに5文字目において「S」と 「G」の微差が認められるにすぎない。しかるところ、当該「S」と「G」がいずれも「U」と「E」の間に位置して全体の文字列中に埋没しているため、いずれも一見して個別認識され難い結果、全体として観察した場合、「AROUSE」と「AROUGE」はほぼ同一のアルファベット文字列との印象を与え、明確には識別することができない。したがって、本件商 標「AROUSE」と「AROUGE」は外観上見誤りやすく、外観類似の商標である。 次に、本件商標「AROUSE」と引用商標2ないし5の「Arouge」を比較すると、両者は語頭の文字「A」を共通にし、わずかに2文字目以下における大文字と小文字の差と5文字目における「S」と「g」の 微差が認められるにすぎない。そして、上記「S」は「U」と「E」の間、 また上記「g」は「u」と「e」の間に位置し、それぞれ全体の文字列中に埋没しているため、いずれも一見して個別認識され難い。また、全体として観察した場合、両者は特定の意味を有しない一種の造語として理解、認識されることから、大文字と小文字の差はあるものの語頭の文字「A」を共通にするほぼ同一のアルファベット文字列との印象を与え、明確に して観察した場合、両者は特定の意味を有しない一種の造語として理解、認識されることから、大文字と小文字の差はあるものの語頭の文字「A」を共通にするほぼ同一のアルファベット文字列との印象を与え、明確には 識別することができない。 したがって、本件商標「AROUSE」と引用商標2ないし5の要部「Arouge」は外観上見誤りやすく、外観類似の商標である。 イ称呼本件商標「AROUSE」の商標構成によれば、本件商標から「アロウ ゼ」、「アラウゼ」又は「アルーゼ」の称呼が生じることは否定できない。 他方、引用商標1の要部「AROUGE」及び引用商標2ないし5の要部「Arouge」の商標構成によれば、引用商標1ないし5の要部から「アロウジェ」、「アラウジェ」又は「アルージェ」の称呼が生じることも否定することができない。 そうすると、本件商標と引用商標1ないし5の要部とは、いずれも第1ないし第3音の「アロウ」、「アラウ」、「アルー」を共通にし、わずかに尾音において「ゼ」と「ジェ」の微差が認められるにすぎない。 上記「ゼ」と「ジェ」は母音「e」を共通にし、しかも尾音であるため、母音「e」は余韻の「エ」音として特に強く印象付けられ、耳に残るもの である。そうすると、両者を時と所を異にして全体として一連に称呼するときは、相似た語韻語調となり、明確には聴別することができない。 したがって、本件商標の称呼と引用商標1ないし5の要部の称呼は相紛らわしく、称呼類似の商標である。 ウ類否判断 前記ア及びイのとおり、本件商標と引用商標1ないし5とは、それぞれ、 外観及び称呼を類似とするにもかかわらず、本件審決は両者を非類似 る。 ウ類否判断 前記ア及びイのとおり、本件商標と引用商標1ないし5とは、それぞれ、 外観及び称呼を類似とするにもかかわらず、本件審決は両者を非類似と判断したものであって、本件審決の類否判断には誤りがあり、本件審決はこの誤った非類似の判断に基づいて、本件商標が商標法4条1項11号に該当しないと判断したのであるから、本件審決の当該判断には誤りがある。 ⑵ 取消事由2(商標法4条1項10号該当性判断の誤り)の有無について ア使用態様原告は、本件商標出願前の2001年9月から2020年6月にかけて、使用商標を原告商品(化粧品、せっけん)及びその包装箱(甲56)並びに原告商品の包装袋及びパンフレット(甲3)に付して原告商品を譲渡し、また使用商標を原告商品に関する商品広告に付して展示するなどして使 用してきた。 イ使用実績原告商品の2001年度から2020年度にかけての累計販売数、累計売上高は、それぞれ、4334万4000個、588億4700万円に達している(甲6、56)。 このうち、原告商品の敏感肌用スキンケア化粧品市場における2015年度ないし2019年度の累計売上、平均売上シェア率は、それぞれ、155億5800万円、9.6%であり、シェア率は第3位に達している(甲7、59)。 ウ広告宣伝 原告商品に係る2017年度から2020年度にかけての広告費用は次のとおりである(甲57)。 ① 2017年度 5億5782万4924円② 2018年度 3億6318万8715円③ 2019年度 3億1171万8498円 ④ 2020年度 2億9379万 2017年度 5億5782万4924円② 2018年度 3億6318万8715円③ 2019年度 3億1171万8498円 ④ 2020年度 2億9379万4739円 また、原告商品に係る2011年度から2020年度にかけての広告の媒体、回数等は次のとおりである。 ① 2011年から2019年にかけて雑誌17誌(甲9ないし13、67ないし114)② 2017年及び2018年に新聞広告4回(甲14、63ないし66) ③ 2017年から2020に日本全国にテレビCM合計3万3358回(甲16、17、45、60)④ 2017年から2019年のTwitter広告表示回数1305万4000回(甲18、46)⑤ 2010年から2020年までのサンプル配布数39万件(甲58) ⑥ 2019年及び2020年までレース出場車両への商標広告ステッカー貼付(甲8、61)及びレース会場でのサンプル配布(甲19)。 ⑦ 展示会「JapanDrugstoreSHOW」第2回(2002年)ないし第14回(2014年)、第18回(2018年)及び第19回(2019年)での原告商品の展示(甲62)。 ⑧ 株式会社マイナビグローバルが発行する訪日観光客向けフリーマガジン「暢游日本」に掲載(甲35)⑨ 2019年に中国版LINEであるWeChat(微信)に公式アカウント設定(甲36ないし39)エ第三者からの評価等 第三者によりされた原告商品の評価、紹介等は次のとおりである。 ① 2013年及び2015年に株式会社アイスタイルが運営するアットコスメ(@ エ第三者からの評価等 第三者によりされた原告商品の評価、紹介等は次のとおりである。 ① 2013年及び2015年に株式会社アイスタイルが運営するアットコスメ(@cosme)に掲載(甲20ないし23)② 2019年に晋遊舎から発行されている「LDKtheBeauty」に掲載(甲24ないし27) ③ 2014年にダイヤモンド社が発行する「DRUGSTORENE WS」2014年8月号vol.59に掲載(甲28)④ 2019年及び2020年に中国現地のニュースサイトに掲載(甲40ないし42)オ商標法4条1項10号該当性について前記アないしエからみて使用商標は周知商標であり、前記⑴からみて使 用商標と本件商標とは類似する。それにもかからず、本件審決は使用商標を周知商標と認めず、また使用商標と本件商標とが類似しないと判断したものであって、本件審決には周知性の判断と商標の類否判断において誤りがあり、本件審決はこの誤った判断に基づいて、本件商標は商標法4条1項10号に該当しないと判断したのであるから、本件審決の当該判断には 誤りがある。 ⑶ 取消事由3(商標法4条1項15号該当性判断の誤り)の有無について使用商標が周知商標でなく、使用商標と本件商標とは類似しないとの本件審決の判断は、前記⑵のとおり誤りであり、本件審決はこれらの誤った判断に基づいて、本件商標が商標法4条1項15号に該当しないと判断したので あるから、本件審決の当該判断には誤りがある。 ⑷ 取消事由4(商標法4条1項19号該当性判断の誤り)の有無について前記⑵のとおり使用商標は周知商標であるところ、前記⑴のとおり使用 あるから、本件審決の当該判断には誤りがある。 ⑷ 取消事由4(商標法4条1項19号該当性判断の誤り)の有無について前記⑵のとおり使用商標は周知商標であるところ、前記⑴のとおり使用商標と本件商標とは外観及び称呼において極めて類似するから、本件商標がその指定商品「化粧品」に使用された場合、シリーズ商品等、原告商品と何ら かの関係があるような印象を取引者・需要者に与え、使用商標に化体した信用、顧客吸引力等を毀損させることは避けられない。このことに照らせば、本件商標は不正の目的をもって出願されたものといい得る。 したがって、使用商標が周知商標でなく、使用商標と本件商標とは類似せず、不正の目的は認められないとした本件審決の判断はいずれも誤りであり、 本件審決はこれらの誤った判断に基づいて、本件商標が商標法4条1項19 号に該当しないと判断したのであるから、本件審決の当該判断には誤りがある。 2 被告取消事由1ないし4に係る原告の主張は全て争う。 被告は、香港、台湾及び中国に雑貨、化粧品、マスク、洗剤等の輸出を行っ ている会社であり、本件商標は、5、6年前から被告の自社ブランドのボディーソープに使用しているものであり、使用商標については知らなかった。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(商標法4条1項11号該当性判断の誤り)の有無について⑴ 本件商標について 本件商標は、別紙1のとおり「AROUSE」の文字をスクリプト書体風に表してなるところ(本件審決は「U」が小文字である旨認定するが、「U」は大文字と小文字が同一であるところ、本件商標においては他の大文字と等しい大きさで表されているから、大文字の「U」とみるのが自然である。)、同文 (本件審決は「U」が小文字である旨認定するが、「U」は大文字と小文字が同一であるところ、本件商標においては他の大文字と等しい大きさで表されているから、大文字の「U」とみるのが自然である。)、同文字は、「アラウズ」と称呼され、「目覚めさせる、刺激する」等を意味す る英単語として英和辞典に載録されているものの、この語が我が国において一般に広く親しまれた語であるとまではいい難いものであるから、広く一般には特定の意味を有しない一種の造語として理解、認識されるというのが相当である。そして、特定の意味を有しない造語にあっては、我が国において広く親しまれているローマ字読み又は類似の英単語の読みに倣って称呼され るとみるのが自然であるところ、ローマ字読みに倣えば「アロウゼ」と称呼され、また、「AROU」については、我が国において「around」(~の周囲、およそ~)との語が非常に馴染み深い英単語として定着していることを考慮すると、この英単語の読み「アラウンド」に倣えば「アラウゼ」と称呼されると認められ、「アラウズ」との称呼は、前示のとおり、一般に広く 親しまれたものとはいい難い。 そうすると、本件商標は、一般には「アロウゼ」又は「アラウゼ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 ⑵ 引用商標2ないし4について引用商標2ないし4は、別紙2の2ないし4のとおり、いずれも、長方形の図形の中に、上段に「Arouge」の文字を、下段にリング形状の図形 を配したものであるが、長方形の図形は背景図形として看取され、リング形状図形部分は、一見して特定の事物を表したものと認識することは困難であり、指定商品との関係においても特定の意味合いを想起させるものではないから、それ自体から直ちに特定 景図形として看取され、リング形状図形部分は、一見して特定の事物を表したものと認識することは困難であり、指定商品との関係においても特定の意味合いを想起させるものではないから、それ自体から直ちに特定の称呼及び観念を生じるものとはいい難い。 そうすると、これらの図形部分からは出所識別標識としての称呼及び観念は 生じないと認められる。 一方で「Arouge」の文字部分については、上段に目立つ態様で配されており、文字が本来的に強い訴求力を有することに鑑みると、需要者又は取引者は、引用商標2ないし4のうち「Arouge」の文字部分に着目するといえ、この部分が要部と認められるが、この文字は、辞書等に載録され た成語とは認められず、また、特定の意味合いを想起させるものとして一般に知られているということもできない。もっとも、特定の意味を有しない造語にあっては、我が国において広く親しまれているローマ字読み又は類似の英単語の読みに倣って称呼されるとみるのが自然であるところ、ローマ字読みに倣えば「アロウジェ」又「アロウゲ」と称呼され、また、前記のとお り、我が国においては「around」(~の周囲、およそ~)との語が非常に馴染み深い英単語として定着していることを考慮すると、「アラウジェ」又は「アラウゲ」と称呼されると認められ、フランス語風に「アルージュ」という称呼が生じ得ないではないとしても、一般的なものとはいい難く、「アルージェ」という称呼が生じることは、更に想定し難い。 なお、本件審決は、引用商標2ないし4の称呼を「アルージェ」と認定す るが、その理由は審決文からは必ずしも明らかではないものの、同2ないし5を一体として捉え、同5の上段にカナ文字で併記された「アルージェ」の文字をもって、同2ない ェ」と認定す るが、その理由は審決文からは必ずしも明らかではないものの、同2ないし5を一体として捉え、同5の上段にカナ文字で併記された「アルージェ」の文字をもって、同2ないし4についても「アルージェ」の称呼を生じると解しているかのようにも読める。しかしながら、別個独立の商標についての称呼等の判断はそれぞれ個別に行われるべきであるし、商標法は、商標のみの 移転を可能とし、同一の範囲のみならず類似の範囲まで商標権に排他的効力を付すなど、当該商標の商標権者の本来的使用範囲よりも広い範囲の効力を付しているから、その認定は需要者又は取引者を基準として客観的にされるべきものであり、同一商標権者が有する他の商標(甲第29号証ないし33号証によると、引用商標1及び5と引用商標2ないし4の商標権者はいずれ も原告である。)を参酌して、当該商標権者の意図にのみ従ってその認定をすることは相当ではない。したがって、カナ文字が併記されている引用商標1及び5が「アルージェ」と称呼されることは明らかであるが、そうであるからといって、別個独立の商標である引用商標2ないし4の称呼を「アルージェ」と認定できるものではない。 そうすると、引用商標2ないし4は、「アロウジェ」若しくは「アロウゲ」又は「アラウジェ」若しくは「アラウゲ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 ⑶ 商標の類否について前記⑴及び⑵のとおり、本件商標と引用商標2ないし4の要部の称呼を対 比すると、本件商標が「アロウゼ」と、引用商標2ないし4が「アロウジェ」と称呼される場合や、本件商標が「アラウゼ」と、引用商標2ないし4が「アラウジェ」と称呼される場合があり得る。「ゼ」と「ジェ」はいずれもサ行濁音で母音「e」を共通にする 標2ないし4が「アロウジェ」と称呼される場合や、本件商標が「アラウゼ」と、引用商標2ないし4が「アラウジェ」と称呼される場合があり得る。「ゼ」と「ジェ」はいずれもサ行濁音で母音「e」を共通にするため、両商標を時と所を異にして全体として一連に称呼するときは、相似た語韻・語調となり、明確には聴別することがで きず、称呼において酷似するといえる。 また、本件商標と引用商標2ないし4の要部の外観とを対比すると、それぞれの書体を異にし、本件商標はその構成文字中の5字が大文字で表されているのに対し、引用商標2ないし4は語頭の文字以外は小文字で表されているとの差異はあるが、商標の使用に当たっては、書体の相違やアルファベットの大文字・小文字の相違があっても同一の称呼を生じる場合は社会通念上 同一の商標とみなされるのであるから(商標法38条5項かっこ書、50条参照)、上記のとおり両商標が酷似する称呼を生じる場合がある以上、このような相違を殊更に重視すべきものではない。一方で、本件商標及び引用商標はいずれも6文字と同じ文字数で構成されており、文字数が僅少とはいい難いところ、文字の相違は語中の5文字目のみが相違するというのであるから、 5文字目が全体に埋没して、外観上、両商標を見誤ることも多いとみるのが相当である。 そして、本件商標と引用商標2ないし4の要部は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上、比較することはできない。 ⑷ 指定商品の類否について 本件商標の指定商品に含まれる「せっけん類、化粧品、洗濯用柔軟剤、洗濯用漂白剤、洗濯用でん粉のり、つけまつ毛用接着剤、靴クリーム、つや出し剤、歯磨き、つけづめ、つけまつ毛」と引用商標2ないし4の指定商品に含まれる「 に含まれる「せっけん類、化粧品、洗濯用柔軟剤、洗濯用漂白剤、洗濯用でん粉のり、つけまつ毛用接着剤、靴クリーム、つや出し剤、歯磨き、つけづめ、つけまつ毛」と引用商標2ないし4の指定商品に含まれる「洗濯用柔軟剤、洗濯用漂白剤、つけまつ毛用接着剤、洗濯用でん粉のり、靴クリーム、つや出し剤、せっけん類、歯磨き、化粧品、つけづめ、 つけまつ毛」とは同一である。 ⑸ 小括以上からすると、本件商標と引用商標2ないし4の要部は、観念において比較することができず、外観において見誤ることも少なくないと想定され、さらに、称呼において酷似するものであるところ、引用商標2ないし4は、 それら要部に出所識別機能を有しない図形部分が加わっているにすぎないも のであるから、全体としても要部が与える印象を覆すものではない。そうすると、本件商標を引用商標2ないし4の指定商品に使用した場合には出所を混同させるおそれがあり、両商標は、相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。 したがって、本件商標が商標法4条1項11号に該当しないとした本件審 決の判断には、誤りがある。 2 結論以上によれば、取消事由1に理由があることは明らかであるから、その他の点について判断するまでもなく、本件審決の結論には誤りがある。よって、本件審決を取り消すこととして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官 菅野雅之 裁判官 本吉弘行 菅野雅之 裁判官 本吉弘行 裁判官 中村恭 (別紙1)本件商標 登録第6310297号商標商標の構成 登録出願日令和2年 7月30日登録査定日令和2年 9月28日設定登録日令和2年10月29日指定商品第3類 せっけん類、せっけん、化粧品、パック用化粧料、洗濯用柔軟剤、洗濯用漂白剤、洗濯用でん粉のり、つけまつ毛用接着剤、口臭用消臭剤、動物用防臭剤、靴クリーム、つや出し剤、歯磨き、香料、薫料、つけづめ、つけまつ毛第21類 台所用品(「ガス湯沸かし器・加熱器・調理台・流し台」を除く。)、デンタルフロス、化粧用具、家事用手袋、清掃用具及び洗濯用具、アイロン台、霧吹き、浴室用腰掛け、浴室用手おけ、ろうそく立て、洋服ブラシ、せっけん用ディスペンサー、トイレットペーパーホルダー、香炉、靴ブラシ 第9類、第11類及び第20類商標登録原簿に記載の商品のとおり(以上) (別紙2)引用商標 1 登録第4469078号商標(引用商標1)商標の構成 登録出願日平成12年 2月21日設定登録日平成13年 4月20日指定商品第3類せっけん類、香料類、化粧品、つけづめ、つけまつ毛、かつ ら装着用接着剤、 平成12年 2月21日設定登録日平成13年 4月20日指定商品第3類せっけん類、香料類、化粧品、つけづめ、つけまつ毛、かつ ら装着用接着剤、つけまつ毛用接着剤、洗濯用でん粉のり、洗濯用ふのり、歯磨き、家庭用帯電防止剤、家庭用脱脂剤、さび除去剤、染み抜きベンジン、洗濯用柔軟剤、洗濯用漂白剤、つや出し剤、研磨紙、研磨布、研磨用砂、人造軽石、つや出し紙、つや出し布、靴クリーム、靴墨、塗料用剥離剤 第5類薬剤、歯科用材料、医療用油紙、衛生マスク、オブラート、ガーゼ、カプセル、眼帯、耳帯、生理帯、生理用タンポン、生理用ナプキン、生理用パンティ、脱脂綿、ばんそうこう、包帯、包帯液、胸当てパッド、医療用腕環、失禁用おしめ、 人工受精用精液、乳児用粉乳、乳糖、防虫紙 2 登録第4865806号商標(引用商標2)商標の構成 登録出願日平成16年 8月19日 設定登録日平成17年 5月20日指定商品第3類家庭用帯電防止剤、家庭用脱脂剤、さび除去剤、染み抜きベンジン、洗濯用柔軟剤、洗濯用漂白剤、かつら装着用接着剤、つけまつ毛用接着剤、洗濯用でん粉のり、洗濯用ふのり、塗 料用剥離剤、靴クリーム、靴墨、つや出し剤、せっけん類、歯磨き、化粧品、香料類、研磨紙、研磨布、研磨用砂、人造軽石、つや出し紙、つや出し布、つけづめ、つけまつ毛、化粧用コットン第5類 薬剤、医療用油紙、衛生マスク、オブラート、ガーゼ、カプセル、眼帯、耳帯、生理帯、生理用タンポン、生理用ナプキン、生理用パンティ、脱脂綿、ばんそう 第5類 薬剤、医療用油紙、衛生マスク、オブラート、ガーゼ、カプセル、眼帯、耳帯、生理帯、生理用タンポン、生理用ナプキン、生理用パンティ、脱脂綿、ばんそうこう、包帯、包帯液、胸当てパッド、歯科用材料、医療用腕環、失禁用おしめ、防虫紙、乳糖、乳児用粉乳、人工受精用精液 3 登録第4865807号商標(引用商標3)商標の構成 登録出願日平成16年 8月19日 設定登録日平成17年 5月20日指定商品第3類家庭用帯電防止剤、家庭用脱脂剤、さび除去剤、染み抜きベンジン、洗濯用柔軟剤、洗濯用漂白剤、かつら装着用接着剤、つけまつ毛用接着剤、洗濯用でん粉のり、洗濯用ふのり、塗 料用剥離剤、靴クリーム、靴墨、つや出し剤、せっけん類、歯磨き、化粧品、香料類、研磨紙、研磨布、研磨用砂、人造軽石、つや出し紙、つや出し布、つけづめ、つけまつ毛、化粧用コットン第5類 薬剤、医療用油紙、衛生マスク、オブラート、ガーゼ、カプセル、眼帯、耳帯、生理帯、生理用タンポン、生理用ナプキン、生理用パンティ、脱脂綿、ばんそうこう、包帯、包帯液、胸当てパッド、歯科用材料、医療用腕環、失禁用おしめ、防虫紙、乳糖、乳児用粉乳、人工受精用精液 4 登録第4873487号商標(引用商標4)商標の構成 登録出願日平成16年 8月19日 設定登録日平成17年 6月24日指定商品第3類家庭用帯電防止剤、家庭用脱脂剤、さび除去剤、染み抜きベンジン、洗濯用柔軟剤、洗濯用漂白剤、かつら装着 設定登録日平成17年 6月24日指定商品第3類家庭用帯電防止剤、家庭用脱脂剤、さび除去剤、染み抜きベンジン、洗濯用柔軟剤、洗濯用漂白剤、かつら装着用接着剤、つけまつ毛用接着剤、洗濯用でん粉のり、洗濯用ふのり、塗 料用剥離剤、靴クリーム、靴墨、つや出し剤、せっけん類、歯磨き、化粧品、香料類、研磨紙、研磨布、研磨用砂、人造軽石、つや出し紙、つや出し布、つけづめ、つけまつ毛、化粧用コットン第5類 薬剤、医療用油紙、衛生マスク、オブラート、ガーゼ、カプセル、眼帯、耳帯、生理帯、生理用タンポン、生理用ナプキン、生理用パンティ、脱脂綿、ばんそうこう、包帯、包帯液、胸当てパッド、歯科用材料、医療用腕環、失禁用おしめ、防虫紙、乳糖、乳児用粉乳、人工受精用精液 5 登録第5851670号商標(引用商標5)商標の構成 登録出願日平成27年 6月17日 設定登録日平成28年 5月20日指定商品第3類家庭用帯電防止剤、家庭用脱脂剤、さび除去剤、染み抜きベンジン、洗濯用柔軟剤、洗濯用漂白剤、口臭用消臭剤、動物用防臭剤、せっけん類、歯磨き、化粧品、香料、つけづめ、 つけまつ毛、化粧用コットン 第5類薬剤、医療用試験紙、医療用油紙、衛生マスク、オブラート、ガーゼ、カプセル、眼帯、耳帯、生理帯、生理用タンポン、生理用ナプキン、生理用パンティ、脱脂綿、ばんそうこう、包帯、包帯液、胸当てパッド、綿棒、乳幼児用粉乳、サプリ メント、食餌療法用飲料、食餌療法用食品、乳幼児用飲料、乳幼 帯、生理用タンポン、生理用ナプキン、生理用パンティ、脱脂綿、ばんそうこう、包帯、包帯液、胸当てパッド、綿棒、乳幼児用粉乳、サプリ メント、食餌療法用飲料、食餌療法用食品、乳幼児用飲料、乳幼児用食品、栄養補助用飼料添加物(薬剤に属するものを除く。) 6 使用商標 商標の構成 使用商品敏感肌用化粧品(以上)

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