主文 被告は,原告に対し,3億4104万円及びこれに対する平成17年2月19日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,これを5分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,原告に対し,4億2630万円及びこれに対する平成17年2月19日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,原告が,その設置する灰溶融施設(以下「本件施設」という)の。 運転維持管理業務を受託した被告が手順書の記載等に従わないで本件施設の灰溶融炉設備の運転操作を行ったことにより,炉内で水蒸気爆発が発生して同設備が破損するなどしたとして,被告に対し,債務不履行責任に基づき,損害賠償及び訴状送達の日の翌日から支払済みまでの民法所定の遅延損害金の支払を求める事案である。 争いのない事実等(当事者間に争いのない事実及び証拠等によって容易に認められる事実)(1)当事者ア原告は,し尿処理施設,ごみ処理施設の設置及び管理の事務を共同処理する目的のために設立された青森県内の2市3町1村(弘前市,平川市,大鰐町,藤崎町,板柳町及び西目屋村)をもって組織された環境整備事務組合であり,青森県弘前市大字a字bc番地dに弘前地区環境整備センター(以下「本件センター」という)を設置し,ごみ焼却施設,灰溶融施。 設等の管理運営を行っている。 イ被告は,機械類メンテナンスを業とする株式会社である。 (2)本件施設の概要ア本件センターにおけるごみ処理のうち,灰溶融処理の概要は次のとおりである(甲4,5。 )すなわち,本件センターに搬入されたごみが焼却施設において完全に燃焼されたことにより生じる焼却灰は,灰搬送コンベアにより ーにおけるごみ処理のうち,灰溶融処理の概要は次のとおりである(甲4,5。 )すなわち,本件センターに搬入されたごみが焼却施設において完全に燃焼されたことにより生じる焼却灰は,灰搬送コンベアにより本件施設に搬送され,所要の処理を経た後,灰溶融炉に投入されて1300℃以上の高温で溶融され,ガラス状の無害な溶融固化物(スラグ)となり,また,溶融によって生じた飛灰は,金属安定化剤が添加されて混練・固化された上で搬出される,というものである。 イ(ア)本件施設のうち,上記ア記載の灰溶融処理を行うための灰溶融炉設備の概要は,次のとおりとされている。なお,その設計施工は,Aが行った。 a形式空気プラズマ式電気溶融炉b処理能力(40t/24h)×2炉(うち1炉は予備基)c電極トランスファー型(水冷式,出力1800kW×2本)/炉((ア)につき,甲6)(イ)上記灰溶融炉設備は,プラズマトーチ(電極。以下「トーチ」という。1炉につき2本あり,それぞれA系,B系と呼ばれる)を灰溶融。 炉内に挿入してプラズマを発生させることにより,炉内に置かれた焼却灰を溶融させる装置である。 すなわち,同設備を起動させる際には,炉内底部にベースメタルを置,,()きトーチ内に冷却水を循環させるとともにプラズマガス圧縮空気を流した上,トーチを炉内に挿入し,これに通電してトーチと炉底電極間に高電圧をかけてプラズマを発生させ,また,同設備の運転中にトー チの先端部分が損耗して冷却水が漏れたため,トーチ電圧が不安定になり火が消失した場合には,トーチの損耗部分を交換した後,再び着火することになるが,ベースメタルが既に溶融して存在しないときには,再着火装置(それぞれのトーチに対応して,1炉につきA系,B系の2本がある。なお,冷却水は,再着火 チの損耗部分を交換した後,再び着火することになるが,ベースメタルが既に溶融して存在しないときには,再着火装置(それぞれのトーチに対応して,1炉につきA系,B系の2本がある。なお,冷却水は,再着火装置にも循環する)を作動させて,。 ベースメタルに代わる鉄製の再着火棒を炉内に挿入し,炉底電極に接触させた状態にした後,トーチに通電してプラズマを発生させる,というものである。 なお,トーチに冷却水を循環させるポンプと,再着火装置に冷却水を(「」。),循環させるポンプとは同一のものであり以下本件ポンプというそのポンプを運転させると,トーチ内と再着火装置内の双方に,同時に冷却水が循環する仕組みとなっている。 ((イ)につき,甲6,弁論の全趣旨)(ウ)そして,灰溶融炉設備には中央制御室が設けられているところ,本件ポンプの運転は,同室においてのみ可能であった。 (エ)また,後記本件事故発生当時,再着火装置については,これに冷却水が循環していなければ再着火棒を灰溶融炉内に挿入できないようにするインターロックが設置されて機能していたが,トーチについては,このようなインターロックは設置されておらず,トーチに冷却水が循環していなくても,これを炉内に挿入することが可能となっていた。 (3)原告と被告との間の委託契約ア委託契約の締結(ア)原告及び被告は,平成14年11月22日,原告を委託者,被告を受託者とする次のとおりの委託契約を締結した。 a委託業務の名称本件センター焼却・灰溶融施設運転維持管理業務委託 b委託期間平成14年12月1日から平成15年3月31日までc業務委託料1974万円(消費税込み。月額493万5000円)(イ)原告及び被告は,平成15年4月1日,上記(ア)記載の業務委託契約を次のとおり更新した(以下, から平成15年3月31日までc業務委託料1974万円(消費税込み。月額493万5000円)(イ)原告及び被告は,平成15年4月1日,上記(ア)記載の業務委託契約を次のとおり更新した(以下,更新の前後を通じ「本件委託契約」,という。 。)a委託業務の名称上記(ア)aと同じb委託期間平成15年4月1日から平成16年3月31日までc業務委託料1億3965万円(消費税込み。月額1163万7500円)イ本件委託契約に基づく被告の義務等(ア)本件委託契約1条1項は,被告は,別冊仕様書に基づき,上記業務委託料をもって,上記委託期間終了までに委託業務を完成し,成果品を原告に提出しなければならないと定め,上記別冊仕様書に当たる「弘前地区環境整備センター焼却・灰溶融施設運転維持管理業務委託仕様書」(以下「本件仕様書」という)2条1項は,被告は,本件センターの。 機能を十分に発揮できるよう,契約書・仕様書・機器取扱説明書・その他関係書類(現場説明を含む)に基づき,能率的,経済的,かつ,完。 全に業務を遂行しなければならないと定め,同16条1項前段は,被告は,業務の範囲内において,各種機器の機能,使命を十分理解し,運転計画ないし操炉計画に沿って,一切の運転操作を適正に行わなければならないと定めている(甲2,3。 ),,,(イ)そして本件施設に関する委託業務の内容は本件施設の運転操作 日常の保守点検,整備,修理(定期的に実施する灰溶融炉出滓口の耐火物補修,出滓口の取替え並びにプラズマ発生装置のトーチ及びトーチ用部品の交換を含む)及び清掃に関する業務並びにこれに関連する業務。 である。 (ウ)また,本件仕様書4条1項は,被告は,一定の有資格者及び技術員,,,を含め業務を完全に遂行できる人員を配置し業務を行うも 含む)及び清掃に関する業務並びにこれに関連する業務。 である。 (ウ)また,本件仕様書4条1項は,被告は,一定の有資格者及び技術員,,,を含め業務を完全に遂行できる人員を配置し業務を行うものと定め同条2項は,被告は,従業員の中から総括責任者及び作業班の責任者を,(,定めるとともに人員を目的に応じて配置するものと定めている甲23。 )(4)灰溶融炉設備の負荷試運転と負荷運転本件施設の灰溶融炉設備については,平成15年1月から同年3月にかけて負荷試運転が行われた上,同年4月から負荷運転が開始された(甲23,乙1,5,7,17,被告代表者,弁論の全趣旨。 )(5)爆発事故の発生(甲6,11,26,乙17)平成15年7月17日午後11時9分31秒ころ,本件施設の1号灰溶融炉設備(以下,その全体についても,1号灰溶融炉そのものについても,単に「本件灰溶融炉」という)において水蒸気爆発が発生し,その約5秒後。 に2回目の,更にその約2分後に3回目の水蒸気爆発が発生するという事故が発生した(以下,この事故を「本件事故」という。 。)そして,本件事故が発生するに至った経緯及び原因については,調査の結果,次のように推定されている。 ア本件事故発生当日においては被告作業員B作業班の責任者以下B,(。 「作業員という同C以下C作業員という及び同D以下D」。),(「」。)(「作業員」という)が本件灰溶融炉を運転操作していたところ,午後9時。 ころ,トーチ電圧が乱れ始め,電圧高による灰の供給停止が頻発した。 イB作業員は,上記事態の原因がトーチからの漏水によるものと考え,午 後10時1分,本件灰溶融炉内のトーチ(A系)を本件灰溶融炉内から炉外の待機位置に取り外して点検作業(目視による確認) した。 イB作業員は,上記事態の原因がトーチからの漏水によるものと考え,午 後10時1分,本件灰溶融炉内のトーチ(A系)を本件灰溶融炉内から炉外の待機位置に取り外して点検作業(目視による確認)を行ったが,漏水等の異常は認められなかった。 ,,,ウB作業員は午後10時12分再びトーチを本件灰溶融炉内に挿入し午後10時49分までの間,再三にわたり着火を試みたが,再着火しなかった。 エB作業員は,午後10時51分,再びトーチを待機位置に取り外して2回目の点検作業を行ったところ,漏水を認めたため,中央制御室にいたD作業員に無線で連絡して本件ポンプを停止させた上,午後11時5分までの間,トーチ先端部品であるコリメータ及びアダプタスリーブを交換する作業を行った。 オB作業員は,その後,本件ポンプを起動させないまま,午後11時6分にトーチを待機位置から本件灰溶融炉内に挿入させ始め,午後11時7分にトーチは本件灰溶融炉内の着火準備完了位置にセットされた。 カ以上のように,冷却水が循環していない状態でトーチが本件灰溶融炉内に挿入されたことから,トーチの先端部は冷却されないまま直近の輻射源による加熱下に置かれることになり,その結果,トーチ先端部品(コリメータ,アダプタスリーブ,Oリング)が溶損して脱落し,そのまま本件ポンプを起動させれば,多量の冷却水が上記脱落部分から流出して本件灰溶融炉内に流れ込む状態になった。 ,,,キB作業員はその後再着火棒を本件灰溶融炉内に挿入しようとしたが冷却水が再着火装置に循環していなかったため,再着火棒を本件灰溶融炉内に挿入できないようにするインターロックが働き,装置が作動しなかった。 クB作業員は,そのことに気づき,本件ポンプを起動させて再着火装置に冷却水を循環させた上で再着火棒を本件灰溶融炉内 灰溶融炉内に挿入できないようにするインターロックが働き,装置が作動しなかった。 クB作業員は,そのことに気づき,本件ポンプを起動させて再着火装置に冷却水を循環させた上で再着火棒を本件灰溶融炉内に挿入しようと考え, 午後11時9分,D作業員に無線で指示をして,トーチを本件灰溶融炉から取り外さないまま,本件ポンプを運転させた。 ケ本件灰溶融炉は,容積が約7㎥の,ほぼ閉鎖空間に準じるものであるところ,上記の経緯で本件ポンプが運転されたことにより,多量の冷却水がトーチ先端部の部品脱落部分から本件灰溶融炉内に流れ込んで,1500℃程度を保持していた約1.3㎥の溶融スラグ等に接触したため,冷却水が急速に加熱されて蒸気が発生し,さらに,その蒸気が高温過熱により急,,速に体積を膨張させたことから本件灰溶融炉内の圧力が急上昇した結果本件事故が発生した。 コそして,水蒸気爆発の衝撃等により,本件灰溶融炉の本体・トーチ・附属設備その他の設備ばかりでなく,2号灰溶融炉設備及び共通系機器が破損するなどし,使用不能となった。 (6)被告が受領した手順書の記載内容ア「据付、操作および保守マニュアル」と題する書面(甲7)の47頁には「トーチを運転に入れる前に水漏れを確認してこれを直さないとトー,チを損傷するかもしれません」との記載がある。 。 イ後部電極交換手順書(甲8)の2頁には,トーチの後部電極,コリメータ,アダプタスリーブの交換作業について「全作業終了後、トーチ冷却,水ポンプを運転し、現場での水漏れ確認及び、CRT画面にて冷却水水量のチェックを行って下さい」との記載がある。 。 ウ平成15年4月14日付けの「トーチ電極交換手順」と題する書面(甲9。以下「本件手順書」という)の2頁には,トーチの後部電極等の交。 換後,本件ポンプを運転し 行って下さい」との記載がある。 。 ウ平成15年4月14日付けの「トーチ電極交換手順」と題する書面(甲9。以下「本件手順書」という)の2頁には,トーチの後部電極等の交。 換後,本件ポンプを運転して,漏水有無のチェック(水漏れのないこと,トーチ冷却水量及び冷却水圧力の確認)をし,その後にトーチをセットして再着火すべき旨の記載がある。 エそして,被告は,Aから,本件事故発生前に上記アないしウ記載の各書 面を受領していた。 (7)再着火装置の溶損事故の発生なお,本件施設においては,本件事故発生に先立つ平成15年5月ころ,被告作業員が再着火装置に冷却水を循環させないまま再着火棒を灰溶融炉内に挿入したために,同装置が溶損するという事故が発生していた。 争点 (1)被告の債務不履行の有無(2)被告の債務不履行と原告の損害発生との因果関係の有無(3)被告の過失の存否(4)原告の損害額(5)過失相殺の可否 当事者の主張(1)被告の債務不履行の有無(争点(1))について(原告の主張)被告は,本件委託契約に基づき,本件施設の運転操作等を適正に行うべき義務,すなわち,手順書の記載(前記争いのない事実等(6)アないしウ)や現地教育における指導内容に従って,本件施設の運転操作を行うべき義務を負っていたところ,トーチ先端部品の交換後,トーチを本件灰溶融炉内に挿入するに当たっては,まず本件ポンプを運転し,その後,漏水の有無と冷却水の水量を確認する必要があるのに,B作業員は,トーチ先端部品を交換した後,本件ポンプを運転しないままトーチを本件灰溶融炉内に挿入し,その結果,トーチ先端部品が炉内の高温で溶損したにもかかわらず,トーチを本件灰溶融炉内に挿入したままの状態で,漫然と本件ポンプを運転したのであるから,被告には,上記義務に違反 件灰溶融炉内に挿入し,その結果,トーチ先端部品が炉内の高温で溶損したにもかかわらず,トーチを本件灰溶融炉内に挿入したままの状態で,漫然と本件ポンプを運転したのであるから,被告には,上記義務に違反した債務不履行があったものである。 (被告の主張)被告が原告主張の義務を負っていたとの点,及び,B作業員が本件ポンプ を運転しないでトーチを本件灰溶融炉内に挿入したとの点は認めるが,本件手順書によれば,本件ポンプを運転する目的は,あくまでも漏水有無のチェックのためであって,その後の再着火に際して本件ポンプを運転することは,,,求められていなかったのでありしかも冷却水循環のチェックについては本件事故発生以前の手順書には記載がなかったのであって,これらの事情からすれば,B作業員がトーチを本件灰溶融炉内に挿入する際に本件ポンプを運転させなかったとしても,被告には債務不履行がなかったというべきである。 (2)被告の債務不履行と原告の損害発生との因果関係の有無(争点(2))について(原告の主張)前記争いのない事実等(5)記載のとおり,本件事故においては,B作業員が,本件ポンプを運転しないままトーチを本件灰溶融炉内に挿入したため,トーチ先端部品が無冷却のまま直近の輻射源による加熱下に置かれ,その結果,同部品が溶損して脱落した後,そのままの状態で本件ポンプを運転したことから,高温で閉鎖された本件灰溶融炉内に多量の冷却水が流れ込み,水蒸気爆発が発生したのである。したがって,被告の債務不履行と原告の損害発生との間には因果関係がある。 なお,被告は,再着火装置にのみインターロックを取り付ける改造がされたと主張するが,上記インターロックは当初から設置されていた。 (被告の主張)本件事故においては,再着火装置にのみインターロックを取り付ける改造がされ 装置にのみインターロックを取り付ける改造がされたと主張するが,上記インターロックは当初から設置されていた。 (被告の主張)本件事故においては,再着火装置にのみインターロックを取り付ける改造がされていたため,被告作業員は,トーチを炉内に挿入した後,再着火棒を挿入できなくなったことから,上記のインターロックを解除しようとして本件ポンプを運転させた際,冷却水が再着火装置のみならず,トーチにも循環して水蒸気爆発が発生したものである。 したがって,被告作業員に債務不履行があったとしても,原告の損害発生との間に因果関係はない。 (3)被告の過失の存否(争点(3))について(被告の主張)被告は,作業員として原告から要請された資格者を用意していたが,本件,,,灰溶融炉は他にない施設でありその特徴・危険性安全対策等についてはこれを設計・施工したAしか知らなかったところ,被告作業員は,A等から水蒸気爆発の危険性を知らされておらず,本件灰溶融炉に関して水蒸気爆発を回避するための安全装置が備えられていると信頼していた。さらに,本件手順書等にも,水蒸気爆発の危険性についての指摘はなく,操作手順を誤った場合の水蒸気爆発の回避措置の手順も示されていなかった。 むしろ,上記のような本件手順書等の記載内容,運転教育・指導の過程において水蒸気爆発の危険があるとの指摘が一切なかったこと,Aがトーチから水漏れするまでコリメータの交換を許さなかったことからすると,Aも水蒸気爆発の危険性を意識していなかったものと考えられるのであって,ましてや,被告には,水蒸気爆発の発生について予見可能性も回避可能性もなかったものである。 (原告の主張)本件委託契約は,被告作業員が委託業務について専門的知識を十分持ち合わせる必要があることを前提とするものであるところ,そのような について予見可能性も回避可能性もなかったものである。 (原告の主張)本件委託契約は,被告作業員が委託業務について専門的知識を十分持ち合わせる必要があることを前提とするものであるところ,そのような専門的知識を有している者であれば,冷却水を循環させずに高温の炉内にトーチを挿入すれば,トーチが溶損することを当然に認識すべきであるし,さらに,溶損したトーチを炉内に挿入したまま通水させれば,そのトーチから水が炉内に流出する結果,水蒸気爆発が発生する危険があることは当然に認識し得るはずであるから,被告に,水蒸気爆発についての予見可能性及び回避可能性がなかったとはいえない。 (4)原告の損害額(争点(4))について(原告の主張)本件事故によって破損又は変形した灰溶融炉設備の補修及び取替工事(解体,撤去,作動確認を含む)に要する費用は,同設備の設計施工を行った。 ,,。 Aの見積りによれば4億2630万円でありこれが原告の損害額であるなお,上記見積りに関し,以下の事情を補足する。 ア上記設備は,Aの有する特許(以下「本件特許」という)を含む非常。 ,,,に高度な技術が用いられているプラントでありAは本件特許について他社に対する設計,製作(復旧を含む)及び販売等のライセンス許諾を。 行っていないから,A以外の業者が,同設備を本件事故以前の状態に復旧し(そのための費用の見積りを含む,所期性能の発揮及び必要な安全。)性を確保することは,不可能である。 ,,イ上記設備はその着火も含めて基本的に電力を動力源とするものであり電気設備は灰溶融炉設備と一体となって機能するものであるから,適切な電気工事の実施は設備の復旧に必要不可欠であり,A又はその適切な指導監督下にある業者が行う必要がある。 ウ電気工事を行う範囲については,Aが, 溶融炉設備と一体となって機能するものであるから,適切な電気工事の実施は設備の復旧に必要不可欠であり,A又はその適切な指導監督下にある業者が行う必要がある。 ウ電気工事を行う範囲については,Aが,技術的,専門的な見地から,単に外観上破損している配線のみならず,技術的ないし論理的に破損箇所の影響が生じる可能性が否定できない配線全体に工事を施さなければ,同設備の所期性能の発揮及び必要な安全性を確保できないとの判断のもとに,適切に決定したものである。 (被告の主張)Aによる見積りは,焼損した配線を取り替えるのではなく,必要のない部分も含め,配線を全面的に取り替えることを前提としている。また,本件灰溶融炉の上ぶたは,規格外の弱いボルトで固定されていたのに,Aは本来の損害の範囲を超える金額の見積りをしている。一方,炉に関する国内トップ メーカーである黒崎播磨株式会社の見積りによれば,本件灰溶融炉のうち水蒸気爆発により破損するなどした部分の補修に要する費用は,1190万円であり,それ以外の部分の補修に要する費用を含めても,1573万円にす。 ,,。 ぎないしたがってAによる上記見積りは過剰なものというべきである(5)過失相殺の可否(争点(5))についてア本件灰溶融炉の安全性について(被告の主張)原告は,被告に対し,本件委託契約に基づき,通常有すべき安全性を備えた施設を引き渡すべき義務を負っており,平成10年7月28日付けの労働局労働基準局長の通達により機械装置の本質的安全化を図ることフ,(ェールセーフ)を要請されていたにもかかわらず,原告が被告に引き渡した本件灰溶融炉は,以下に述べるように,水蒸気爆発につながる人為的ミスを誘発する設計・施工がされており,また,水蒸気爆発の危険性を十分に考えた安全対策がとられた設計でもな らず,原告が被告に引き渡した本件灰溶融炉は,以下に述べるように,水蒸気爆発につながる人為的ミスを誘発する設計・施工がされており,また,水蒸気爆発の危険性を十分に考えた安全対策がとられた設計でもなく,通常有すべき安全性を備えていなかった(なお,弘前労働基準監督署も,本件事故発生後,本件センターに対し,機械装置の本質的安全化を図ることなどについて指導した)。 から,原告には,上記義務に違反した過失があった。 (ア)灰溶融炉は,その性質上,水蒸気爆発の危険が当然に考えられるものであり,その設備には上記の危険を回避するための措置が当然にとられるべきところ,本件灰溶融炉においては,トーチ挿入作業は現場操作盤で,本件ポンプの運転作業は中央操作盤で行うものとされており,2,,つの作業が分離されていたからトーチ挿入作業を行う現場操作盤でもトーチに冷却水が循環しているか否かを確認できるようにしておくべきであったにもかかわらず,現場操作盤には,その点を確認することができる表示がなかった。 (イ)また,水蒸気爆発を防止するため,冷却水が循環していなければト ーチを炉内に挿入できないようにするインターロックを設置すべきであったのに,それが設置されていなかった。さらに,トーチに冷却水が循環していない状態でこれを炉内に挿入しようとした場合に,これを警告するための警報装置も取り付けられていなかった。そればかりか,本件ポンプを運転させる操作画面には,トーチが炉内にあるか否かを確認する画面すら表示されなかった。 (ウ)さらに,本件事故においては,被告作業員が,再着火棒を炉内に挿入するために,本件ポンプを運転して再着火装置に冷却水を循環させようとしたところ,トーチへの冷却水の循環と再着火装置へのそれとが同一のポンプで行われていたため,再着火装置だけでな 再着火棒を炉内に挿入するために,本件ポンプを運転して再着火装置に冷却水を循環させようとしたところ,トーチへの冷却水の循環と再着火装置へのそれとが同一のポンプで行われていたため,再着火装置だけでなく,トーチにも冷,,。 ,却水が循環しその結果水蒸気爆発が発生したものであるそもそもトーチの挿入と再着火棒の挿入とは別個の作業なのであるから,冷却水ポンプを別々に設置するか,各装置に独立して通水できるような設備にすべきであった。 (原告の主張)本件灰溶融炉は,次のとおり,水蒸気爆発の危険を回避するための十分な措置がとられていたものであって,通常有すべき安全性を欠くものではなかった(なお,弘前労働基準監督署による指導は,本件灰溶融炉そのものの欠陥を指摘したものではなく,今後の安全対策を更に行うための方策を示したにすぎない。 。)(ア)本件灰溶融炉においては,中央制御室に中央監視画面が配備され,トーチ部品の点検及び交換作業並びにトーチ挿入作業を含む現場で実施される作業については,現場の作業員と同室の作業員とが連絡を取り合いながら連携して実施する中央一括管理方式が採用されており,トーチ冷却水量及び圧力等の確認も,上記の中央監視画面上で行うこととなっていたから,トーチ移動装置の現場動力制御盤に冷却水量及び圧力等を 重ねて表示することは不要である。そして,本件ポンプを操作する中央監視画面には「溶融炉トーチ位置監視」画面が設けられており,トー,チが炉内にあるか否かについては,中央制御室において容易に確認できる仕組みになっていた。 (イ)なお,トーチに冷却水を循環させなければこれを炉内に挿入できないようにするインターロック又はこれを警告するための警報装置が設置されていなかったことは認めるが,トーチ部品の交換作業の際,トーチに )なお,トーチに冷却水を循環させなければこれを炉内に挿入できないようにするインターロック又はこれを警告するための警報装置が設置されていなかったことは認めるが,トーチ部品の交換作業の際,トーチに冷却水を循環させた後でなければ,これを高温の炉内に挿入すべきでないとの点については,前記争いのない事実等(6)イ及びウ記載の各手順書にも明記されているだけでなく,本件灰溶融炉の運転・保守・管理に従事する者にとって初歩中の初歩といってもいいほどの注意義務であるから,トーチについてのインターロックが設置されていなかったからといって,本件灰溶融炉が通常有すべき安全性を欠いていたとはいえない。 イ灰溶融炉設備に関する運転教育・指導について(被告の主張)(ア)原告は,本件委託契約に基づき,Aをして,被告作業員に対し,灰溶融炉設備に関する十分な運転教育・指導をさせるべき義務を負っていたところ,本件灰溶融炉は,高温を発するプラズマ装置を閉鎖空間で使用するという特質を持つ設備であり,水蒸気爆発が発生する危険性があったにもかかわらず,原告は,Aをして,水蒸気爆発を未然に防止するための運転教育・指導をさせることを怠った。 すなわち,被告は,Aからプラズマ装置のマニュアル(前記争いのない事実等(6)アの文書)の配布は受けていたものの,プラズマ装置を閉鎖空間である灰溶融炉内で用いることの特質性を前提としたマニュアルは作成されず,Aが本件手順書を作成してこれを被告に渡したのは,平 成15年4月14日以降のことであった。 しかも,本件手順書においては,水蒸気爆発の危険性や冷却水循環の確認の重要性等が記載されておらず,誤って冷却水を循環させないままトーチを炉内に挿入した場合にとるべき手順も記載されていなかった。 ,,,また運転教育・指導の過程においても水蒸 性や冷却水循環の確認の重要性等が記載されておらず,誤って冷却水を循環させないままトーチを炉内に挿入した場合にとるべき手順も記載されていなかった。 ,,,また運転教育・指導の過程においても水蒸気爆発の危険性について一切指摘がなかった。 (イ)原告は,後記のとおり,Aによる運転教育・指導は十分であったと主張するが,灰溶融炉設備の負荷試運転の開始が当初予定の平成14年12月23日よりも大幅に遅れ,かつ,その後もしばしば灰溶融炉設備の運転が止まる状況の下,被告作業員は,Aの担当者によるトラブル処,。 理の応援に追われ運転教育・指導を十分に受けられない状態であったそして,Aが平成15年4月以降も運転教育・指導を継続したことは認めるが,担当者の人数を減らすなど,その運転教育・指導は十分なものではなかった。さらに,被告がそのことを指摘したにもかかわらず,原告は,同年6月10日,Aによる運転教育・指導を終了させたのであって,以上のような経過に照らせば,Aによる運転教育・指導が十分であったとはいえない。 (原告の主張)Aの運転教育・指導は十分すぎるものであり,被告作業員が灰溶融炉設備の運転を十分に習熟できなかったのは,被告作業員の運転技術の未熟さや被告作業員の交替が度重なったことによるものである。 すなわち,Aは,当初,運転指導期間を45日間と予定して,平成14年12月以降,被告作業員に対し,上記設備の運転手順を指導し,特に,トーチ冷却水系統や配管等については,現場において確認し,冷却水循環の必要性を周知徹底させた。 しかも,被告作業員の熟達度が十分でなかったことから,Aは,原告の 求めに応じ,平成15年5月まで被告作業員に対する運転指導期間を延長し,さらに,被告作業員がAの運転指導員の指導に従わなかったり頻繁にメンバーが交替したため 分でなかったことから,Aは,原告の 求めに応じ,平成15年5月まで被告作業員に対する運転指導期間を延長し,さらに,被告作業員がAの運転指導員の指導に従わなかったり頻繁にメンバーが交替したため,同月28日,再度,運転指導期間を同年6月27日まで延長したものである。 したがって,原告には,同設備に関する運転教育・指導について,過失はない。 第3当裁判所の判断 被告の債務不履行の有無(争点(1))について前記争いのない事実等(3)イ記載の事実によれば,被告は,原告に対し,本件委託契約に基づき,機器取扱説明書等に従って本件施設の運転操作を適正に行うべき義務を負っていたものである。 そして,同(5)記載のとおり,本件事故は,本件灰溶融炉のトーチから冷却水が漏れていたため,B作業員がトーチ先端部品の交換作業を行った後に発生したものであるところ,同(6)ウ及びエ記載のとおり,被告が本件事故発生前に受領した本件手順書には,トーチの後部電極等の交換後,本件ポンプを運転して,漏水有無のチェック(水漏れのないこと,トーチ冷却水量及び冷却水圧力の確認)をし,その後に,トーチをセットして再着火すべきことが記載されていたのであるから,被告は,上記交換作業を行った後にトーチを本件灰溶融炉内に挿入するに当たっては,本件ポンプを運転して漏水有無のチェック(トーチ冷却水量及び冷却水圧力の確認を含む)をした上で,トーチを本件灰溶。 融炉内に挿入すべき義務を負っていたものというべきである。 ところが,同(5)記載の事実によれば,B作業員は,トーチ先端部品の交換作業を行った後,本件ポンプを運転しないまま,トーチを本件灰溶融炉内に挿入して上記先端部品を溶損させ,その後に本件ポンプを運転して多量の冷却水を本件灰溶融炉内に流れ込ませたというのであるから,これが本件手順書記 後,本件ポンプを運転しないまま,トーチを本件灰溶融炉内に挿入して上記先端部品を溶損させ,その後に本件ポンプを運転して多量の冷却水を本件灰溶融炉内に流れ込ませたというのであるから,これが本件手順書記載の上記手順に反する不適正な運転操作であって,被告に上記義務に違反した債 務不履行があったことは明らかである。これを否定する被告の主張は,上記認定,判断を左右するに足りるものではないから,採用しない。 被告の債務不履行と原告の損害発生との因果関係の有無(争点(2))について前記争いのない事実等(5)記載の本件事故発生に至った経緯及び原因に照らすと,B作業員が本件手順書に従い,本件ポンプを運転して漏水有無のチェックをした後にトーチを本件灰溶融炉内に挿入していさえすれば,トーチ先端部品が溶損して脱落したり,多量の冷却水が本件灰溶融炉内に流れ込むことはなく,ひいては,水蒸気爆発が発生して本件灰溶融炉等が破損することもなかったであろうことに疑いを容れる余地はない。したがって,前記1認定の被告の債務不履行と原告の損害発生との間に因果関係が認められる。これを否定する被告の主張は,失当というべきである。 被告の過失の存否(争点(3))について(1)被告は,被告作業員は,A等から水蒸気爆発の危険性を知らされていなかったし,本件灰溶融炉に関して水蒸気爆発を回避するための安全装置が備えられていると信頼していた上,本件手順書等にも,水蒸気爆発の危険性について指摘はなく,操作手順を誤った場合の水蒸気爆発の回避措置の手順も示されていなかったなどとして,被告には,水蒸気爆発の発生について予見可能性も回避可能性もなかったと主張する。 (2)しかしながら,そもそも,債務不履行における債務者の過失の存否は,債務不履行そのものについて検討すべきものであるから, ,水蒸気爆発の発生について予見可能性も回避可能性もなかったと主張する。 (2)しかしながら,そもそも,債務不履行における債務者の過失の存否は,債務不履行そのものについて検討すべきものであるから,被告の債務不履行による水蒸気爆発の発生やこれに伴う損害の発生について,被告に予見可能性等がなかったとしても,直ちに被告が債務不履行責任を免れることになるわけではない。 しかるところ,前記1認定のとおり,被告の債務不履行は,B作業員が,トーチ先端部品を交換した後,本件手順書に従って本件ポンプを運転しない まま,トーチを本件灰溶融炉内に挿入し,その後に本件ポンプを運転したという点にあるのであって,そのような運転操作をすれば,トーチが溶損するおそれがあることは容易に認識することができたはずである。また,水漏れのためにトーチ先端部品を交換したというのであるから,その後直ちに漏水の有無を確認するのも,極めて当然の事柄というべきである。 以上に加えて,①被告が,本件事故発生前に,何度もトーチ先端部品の交換を適正に行っていたこと(乙1,2,17,被告代表者,②被告は,本)件事故発生前,遅くとも平成15年4月15日までに本件手順書を受領していたこと(前記争いのない事実等(6)ウ及びエ,乙8,17,③一般に,)手順書に従わないで運転操作をすれば,何らかの危険があるのではないかと考えてこれを避けようと注意するのが通常であること,④本件事故の際にト,,ーチを本件灰溶融炉内に挿入して本件ポンプの運転を指示したB作業員は平成14年12月初めころから本件施設の運転教育・指導を受け,平成15,,年1月からは本件施設の運転操作に携わり同年3月から同年5月にかけて3回にわたり,トーチの後部電極等の交換に関与した上,その3回目には,再着火装置に冷却水を循環させ 育・指導を受け,平成15,,年1月からは本件施設の運転操作に携わり同年3月から同年5月にかけて3回にわたり,トーチの後部電極等の交換に関与した上,その3回目には,再着火装置に冷却水を循環させないまま再着火棒を灰溶融炉内に挿入したた,,め同装置が溶損するという本件事故に類似する事故を発生させたのでありこのような経緯に照らせば,同作業員は,本件事故発生当時,トーチや再着火棒を灰溶融炉内に挿入する際に,あらかじめ冷却水を循環させることの重要性を十分に認識していて然るべきであること(前記争いのない事実等(5)及び(7),甲19,20,23,乙17)などの事情にかんがみれば,トーチ先端部品の交換後に求められる作業は,本件手順書を参照すれば把握できる基本的なものであって,しかも,被告は,本件事故発生当時,その点について十分な知識及び経験を有していたのであるから,被告にとって,本件手順書に従って運転操作を適正に行うことは容易であったというべきであるし,かつ,被告は,そのことの重要性を十分に認識していたと推認される。 そうすると,本件において,B作業員は,漫然と本件手順書に従わないで不適正な運転操作を行ったものというほかないから,被告に過失がなかったということはできない。 (3)したがって,被告の上記(1)記載の主張は,採用しない。 原告の損害額(争点(4))について(1)A作成の「復旧費用等見積条件について」と題する書面(甲25。甲10はその一部。以下「本件見積書」という)によれば,Aは,平成16年。 6月4日,本件事故によって損傷した灰溶融炉設備を本件事故発生前の状態に復旧するための工事に要する費用を4億2630万円と見積もったことが認められる。 そして,前記争いのない事実等(2)イ(ア)記載のとおり,Aが同設備の設計施工 た灰溶融炉設備を本件事故発生前の状態に復旧するための工事に要する費用を4億2630万円と見積もったことが認められる。 そして,前記争いのない事実等(2)イ(ア)記載のとおり,Aが同設備の設計施工を行ったこと,同設備にはAが特許を有する技術が用いられていること(弁論の全趣旨,Aは,同設備の破損等を補修するなどの能力を有する)ことを前提として,原告に対し,同設備の所期性能を保証する責任を負っていたこと(甲17)からすると,Aは,専門的,技術的な見地から上記工事費用を最も的確に見積もることができる立場にあることが明らかである。 また,同(5)コ記載のとおり,本件事故により,本件灰溶融炉の本体・トーチ・附属設備その他の設備ばかりでなく,2号灰溶融炉設備及び共通系機,,,,器が破損するなどし使用不能となったところAは本件見積書において上記損傷に対応する多数の項目ごとに工事費用を見積もって積算しているのであって,その内容をみても,Aが不必要な工事費用を計上したり,過大な工事費用を見積もったという形跡は,特に窺われない。 以上によれば,本件見積書の信用性に疑問はないというべきであるから,本件見積書記載の見積額4億2630万円をもって,本件事故による原告の損害額と認めるのが相当である。 (2)アこれに対し,被告は,Aによる上記見積りは,配線を必要のない部分 も含めて全面的に取り替えることを前提としているし,本件灰溶融炉の上ぶたは規格外の弱いボルトで固定されていたのに,本来の損害の範囲を超える金額の見積りをしていると主張する。 しかしながら,前者について,被告は,具体的に配線のどの部分が取り替える必要がないのかを何ら明らかにしていない上,Aは,溶融炉室を経由するケーブル類については,損害のあるケーブルの取捨選択の判断が非常に困難である 者について,被告は,具体的に配線のどの部分が取り替える必要がないのかを何ら明らかにしていない上,Aは,溶融炉室を経由するケーブル類については,損害のあるケーブルの取捨選択の判断が非常に困難であること,営業運転中の焼却設備等に隣接するケーブル類が工事の対象であることなどから,不慮の事故等を極力抑える方法として,損傷の可能性が少しでも考えられると判断したケーブルは新規ケーブルと交換するものとして,本件見積書記載の見積りをしている(甲10,25)ところ,この判断は,あながち不合理とはいえない。 また,後者については,証拠(乙12)によれば,本件灰溶融炉の炉ぶたが通常よりピッチの短いボルトで本体と固定されていた可能性があることが認められるが,被告は,本件見積書が通常のボルトの使用を前提としているとする根拠,その部品代の差額等,具体的な点を何ら明らかにしていない。さらに,被告が本件見積書記載のいずれの項目が相当でないと主張するのかも,明らかでない。 したがって,被告の上記主張は,採用しない。 イまた,被告は,炉に関する国内トップメーカーであるEの見積りによれば,本件灰溶融炉のうち水蒸気爆発により破損するなどした部分の補修に要する費用は,1190万円であり,それ以外の部分の補修に要する費用を含めても,1573万円であると主張し,これに沿う証拠として,同社作成の「御見積書」と題する各書面(乙11,13)がある。 しかしながら,上記各証拠及び証拠(乙12)によれば,同社は,平成16年6月2日,灰溶融炉設備のうち,天がい及び本体側壁の耐火物についてのみ点検調査を行い,天がいのキャスタブル耐火物の欠損や溶損,本 体側壁のキャスタブル壁の損傷や側壁レンガの溶損等を観察した上,同月8日,①炉ぶた(外ぶた)キャスタブル解体施工,②炉ぶた(内ぶた)キャス 査を行い,天がいのキャスタブル耐火物の欠損や溶損,本 体側壁のキャスタブル壁の損傷や側壁レンガの溶損等を観察した上,同月8日,①炉ぶた(外ぶた)キャスタブル解体施工,②炉ぶた(内ぶた)キャスタブル解体施工,③側壁キャスタブル解体施工(全周又は約3分の1周,④炉底スラグ撤去,⑤乾燥焚き作業を内容とする「灰溶融炉耐火物)補修工事」に要する費用を1573万円(キャスタブル全周補修の場合)又は1190万円(部分補修の場合)と見積もったことが認められるが,上記耐火物補修工事が,同設備の損傷をすべて補修して本件事故発生前の状態に復旧し,同設備の所期性能を回復させるものでないことは明らかである。 したがって,被告の上記主張は,採用しない。 過失相殺の可否(争点(5))について(1)本件灰溶融炉の安全性についてア前記争いのない事実等(2),(5)ないし(7),証拠(甲6,乙14ないし16)及び弁論の全趣旨によれば,灰溶融炉設備は,作業員がその運転操作を行うに当たって,高温物,高電圧,多量の冷却水等を取り扱うことが求められ,その運転操作を誤ると,設備が損傷するおそれがあるだけでなく,熱傷,感電,水蒸気爆発等により,人の生命・身体に重大な危険を及ぼすおそれがあることが認められる。 そして,このような危険を伴う機械設備の運転操作を委託する者は,委託契約に基づく付随義務ないし安全配慮義務として,受託者に対し,作業員が機械設備の運転操作を誤らないようにする対策のほか,その運転操作を誤っても重大な事故に至らないよう,できる限りの対策を講じて,機械設備が通常有すべき安全性を確保すべき義務を負うものと解される。 そうすると,原告は,本件委託契約に基づき,被告に対し,上記のような重大な危険を伴う本件施設の運転操作等を委託したのであるから,同契約に基づ 通常有すべき安全性を確保すべき義務を負うものと解される。 そうすると,原告は,本件委託契約に基づき,被告に対し,上記のような重大な危険を伴う本件施設の運転操作等を委託したのであるから,同契約に基づき,被告に対し,灰溶融炉設備が通常有すべき安全性を確保すべ き義務を負っていたものというべきである。 イそして,前記1及び2で説示したところによれば,B作業員が,トーチに冷却水を循環させないままで,これを本件灰溶融炉内に挿入したという不適正な運転操作をしたことが本件事故の根本的な原因であることは明らかであるが,他方,トーチに冷却水が循環していない場合には,これを灰溶融炉内に挿入できないようにするインターロックが本件灰溶融炉に設置されていれば,上記のような不適正な運転操作を未然に防ぐことができ,本件事故が発生することがなかったこともまた,明らかである。 しかるところ,前記争いのない事実等(2)イ(エ)記載のとおり,本件事故発生当時,再着火装置については,作業員が運転操作を誤ることを想定してインターロックが設置されていたのに,トーチについては,再着火装置と同様の運転操作の誤りが想定されるにもかかわらず,それを回避するためのインターロックが設置されていなかったというのであるから,本件灰溶融炉は,不適正な運転操作や水蒸気爆発の発生を防止するための対策が十分に講じられていなかったといわざるを得ず,通常有すべき安全性を欠いていたものというべきである。 しかも,同(7)記載のとおり,本件事故発生に先立つ平成15年5月ころに,被告作業員が再着火装置に冷却水を循環させないまま再着火棒を灰溶融炉内に挿入したために同装置が溶損するという,本件事故に類する事故が発生していたというのであるから,原告は,遅くともその事故が発生した以降,被告作業員がトーチの灰溶融炉 させないまま再着火棒を灰溶融炉内に挿入したために同装置が溶損するという,本件事故に類する事故が発生していたというのであるから,原告は,遅くともその事故が発生した以降,被告作業員がトーチの灰溶融炉内への挿入についても運転操作を誤るおそれがあること,そして,それによる事故を防ぐためには,再着火装置と同様に,トーチについてもインターロックを設置する必要性があることを容易に認識することができ,これを認識していれば,トーチにインターロックを設置することは可能であったということができる。 したがって,原告には,上記ア記載の義務に違反した過失があるものと いうべきであり,これが本件事故を誘発した要因であったことは否定し難,,,いからこの点を考慮して原告が本件事故により被った損害については相当な過失相殺を施すのが相当である。 ウそこで,原告の過失割合について検討すると,原告の上記イ記載の過失の内容及び程度のほか,被告作業員が本件手順書に従ってトーチ挿入前に本件ポンプを運転するなど,本件施設の運転操作を適正に行っていたならば,本件のような水蒸気爆発が発生することはなかったこと,前記3(2)記載の被告の過失の内容及び程度,原告が本件事故発生前に被告からトーチにインターロックを設置するように求められたことがなかったこと(乙17,被告代表者,その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると,原告)の過失割合については,これを2割と認めるのが相当である。 (2)灰溶融炉設備に関する運転教育・指導についてア被告は,原告が被告に対して灰溶融炉設備に関する十分な運転教育・指導をさせるべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠ったなどと主張する。 イしかしながら,前記3(2)で説示したとおり,トーチ先端部品の交換後に求められる作業は,本件手順書を参照す 転教育・指導をさせるべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠ったなどと主張する。 イしかしながら,前記3(2)で説示したとおり,トーチ先端部品の交換後に求められる作業は,本件手順書を参照すれば把握できる基本的なものであって,被告は,本件事故発生当時,これについて十分な知識及び経験を有していたのであるから,仮に灰溶融炉設備に関する運転教育・指導につき必ずしも万全でない側面があったとしても,被告が通常の注意を払っていれば,不適正な運転操作を回避することができたはずである。 したがって,被告の上記アの主張は,採用しない。 結論 以上の検討をまとめると,被告は,原告に対し,債務不履行責任に基づき,前記4(1)記載の原告の損害額4億2630万円の8割相当額である3億4104万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな平 成17年2月19日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金を支払うべきである。 第4結語よって,原告の本件請求は,主文第1項の限度で理由があるから,これを認容し,その余は理由がないから棄却することとする。なお,仮執行宣言については,相当でないから,これを付さない。 青森地方裁判所弘前支部裁判長裁判官加藤亮裁判官佐藤英彦裁判官増田純平
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