平成17(行ヒ)145 労働者災害補償保険給付不支給処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年6月28日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所 平成16(行コ)174
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判決文本文2,097 文字)

- 1 -主文本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人古川景一ほかの上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。 (1)上告人は,作業場を持たずに1人で工務店の大工仕事に従事するという形態で稼働していた大工であり,株式会社A(以下「A」という。)等の受注したマンションの建築工事についてB株式会社(以下「B」という。)が請け負っていた内装工事に従事していた際に負傷するという災害(以下「本件災害」という。)に遭った。 (2)上告人は,Bからの求めに応じて上記工事に従事していたものであるが,仕事の内容について,仕上がりの画一性,均質性が求められることから,Bから寸法,仕様等につきある程度細かな指示を受けていたものの,具体的な工法や作業手順の指定を受けることはなく,自分の判断で工法や作業手順を選択することができた。 (3)上告人は,作業の安全確保や近隣住民に対する騒音,振動等への配慮から所定の作業時間に従って作業することを求められていたものの,事前にBの現場監督に連絡すれば,工期に遅れない限り,仕事を休んだり,所定の時刻より後に作業を開始したり所定の時刻前に作業を切り上げたりすることも自由であった。 (4)上告人は,当時,B以外の仕事をしていなかったが,これは,Bが,上告- 2 -人を引きとどめておくために,優先的に実入りの良い仕事を回し,仕事がとぎれないようにするなど配慮し,上告人自身も,Bの下で長期にわたり仕事をすることを希望して,内容に多少不満があってもその仕事を受けるようにしていたことによるものであって,Bは,上告人に対し,他の工務店等の仕事をすることを禁じていたわけではなかった。また,上告人がBの仕事を始めてから本 て,内容に多少不満があってもその仕事を受けるようにしていたことによるものであって,Bは,上告人に対し,他の工務店等の仕事をすることを禁じていたわけではなかった。また,上告人がBの仕事を始めてから本件災害までに,約8か月しか経過していなかった。 (5)Bと上告人との報酬の取決めは,完全な出来高払の方式が中心とされ,日当を支払う方式は,出来高払の方式による仕事がないときに数日単位の仕事をするような場合に用いられていた。前記工事における出来高払の方式による報酬について,上告人ら内装大工はBから提示された報酬の単価につき協議し,その額に同意した者が工事に従事することとなっていた。上告人は,いずれの方式の場合も,請求書によって報酬の請求をしていた。上告人の報酬は,Bの従業員の給与よりも相当高額であった。 (6)上告人は,一般的に必要な大工道具一式を自ら所有し,これらを現場に持ち込んで使用しており,上告人がBの所有する工具を借りて使用していたのは,当該工事においてのみ使用する特殊な工具が必要な場合に限られていた。 (7)上告人は,Bの就業規則及びそれに基づく年次有給休暇や退職金制度の適用を受けず,また,上告人は,国民健康保険組合の被保険者となっており,Bを事業主とする労働保険や社会保険の被保険者となっておらず,さらに,Bは,上告人の報酬について給与所得に係る給与等として所得税の源泉徴収をする取扱いをしていなかった。 (8)上告人は,Bの依頼により,職長会議に出席してその決定事項や連絡事項- 3 -を他の大工に伝達するなどの職長の業務を行い,職長手当の支払を別途受けることとされていたが,上記業務は,Bの現場監督が不在の場合の代理として,Bから上告人ら大工に対する指示を取り次いで調整を行うことを主な内容とするものであり,大工仲間の取りまとめ役 の支払を別途受けることとされていたが,上記業務は,Bの現場監督が不在の場合の代理として,Bから上告人ら大工に対する指示を取り次いで調整を行うことを主な内容とするものであり,大工仲間の取りまとめ役や未熟な大工への指導を行うという役割を期待して上告人に依頼されたものであった。 以上によれば,上告人は,前記工事に従事するに当たり,Aはもとより,Bの指揮監督の下に労務を提供していたものと評価することはできず,Bから上告人に支払われた報酬は,仕事の完成に対して支払われたものであって,労務の提供の対価として支払われたものとみることは困難であり,上告人の自己使用の道具の持込み使用状況,Bに対する専属性の程度等に照らしても,上告人は労働基準法上の労働者に該当せず,労働者災害補償保険法上の労働者にも該当しないものというべきである。上告人が職長の業務を行い,職長手当の支払を別途受けることとされていたことその他所論の指摘する事実を考慮しても,上記の判断が左右されるものではない。 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官泉徳治裁判官横尾和子裁判官甲斐中辰夫裁判官才口千晴)

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