令和2(ワ)11491 意匠権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年9月15日 東京地方裁判所
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1 令和3年9月15日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 令和2年(ワ)第11491号 意匠権侵害差止等請求事件 口頭弁論終結日 令和3年7月9日 判 決 原 告 プラスワン株式会社 5 同訴訟代理人弁護士・弁理士 小 林 幸 夫 同訴訟代理人弁護士 神 田 秀 斗 同訴訟復代理人弁護士 河 部 康 弘 被 告 株式会社ショーエイコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 白 木 裕 一 10 同補佐人弁理士 藤 本 昇 野 村 慎 一 石 井 隆 明 主 文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 15 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事 実 及 び 理 由 第1 請求の趣旨 1 被告は,別紙被告製品目録記載の製品を製造し,販売し,輸入し,又は販売 の申出をしてはならない。 20 2 被告は,別紙被告製品目録記載の製品及び半製品(別紙被告意匠(原告)目 録①又は②記載の構成態様を具備しているが製品として完成するに至らないも の)を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,2200万円及びこれに対する令和2年7月7日から 支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 25 4 訴訟費用は被告の負担とする。 2 5 仮執行宣言 第2 事案の概要 1 本件は,意匠に係る物品を「排水口用ゴミ受け」とする意匠権(意匠登録第 1651754号。以下「原告意匠権」という。)を有する原告が,被告に対 し,被告による別紙被告製品目録記載の製 事案の概要 1 本件は,意匠に係る物品を「排水口用ゴミ受け」とする意匠権(意匠登録第 1651754号。以下「原告意匠権」という。)を有する原告が,被告に対 し,被告による別紙被告製品目録記載の製品(以下「被告製品」という。)の 5 製造,販売,輸入及び販売の申出が原告意匠権を侵害するとして,意匠法37 条1項及び2項に基づき,被告製品の製造,販売,輸入及び販売の申出の差止 め及び廃棄(被告製品の半製品の廃棄を含む。)を求めるとともに,民法70 9条に基づき,損害賠償金2200万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日 である令和2年7月7日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延 10 損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によ り認定できる事実。なお,本判決を通じ,証拠を摘示する場合には,特に断ら ない限り,枝番を含むものとする。) (1) 当事者 15 ア 原告は,家庭用品,生活雑貨,アイデア商品等の企画・開発・製造・販 売を主な業務とする株式会社である。 イ 被告は,フィルムパッケージを中心とした,包装資材の企画・製造・販 売及び日用雑貨品の企画・販売を主な業務とする株式会社である。 (2) 原告意匠権 20 原告は,以下の登録意匠(以下「原告意匠」という。)に係る意匠権(原 告意匠権)を有している。(甲1,2) ア 登録番号 意匠登録第1651754号 イ 出願日 令和元年8月20日(意願2019-18319) ウ 登録日 令和2年1月10日 25 エ 意匠に係る物品 排水口用ゴミ受け 3 オ 意匠に係る物品の説明 「本物品は,洗面台の排水口等に設置し,排水口の配管内への毛髪,ゴ ミ,コンタクトレンズ等の侵入を防 5 エ 意匠に係る物品 排水口用ゴミ受け 3 オ 意匠に係る物品の説明 「本物品は,洗面台の排水口等に設置し,排水口の配管内への毛髪,ゴ ミ,コンタクトレンズ等の侵入を防止する排水口用ゴミ受けに関するもの である。本物品を構成する材質は,水切れの良いスポンジ若しくは脱膜ス ポンジである。」 5 カ 登録意匠 別紙原告意匠目録記載のとおり (3) 被告の行為 ア 被告は,株式会社ダイセン(以下「ダイセン」という。)から被告製品 を仕入れ,遅くとも令和元年12月以降,業として,株式会社キャンドゥ (以下「キャンドゥ」という。)に対し,被告製品を販売している。(甲 10 4,6) イ 被告製品は,別紙被告製品目録記載のとおり,材質をポリウレタンとす る8枚の排水口フィルターが一体成形されたシート3枚で構成されており, 個々の排水口フィルターは,シートから切り離して使用される。(甲5, 乙1) 15 ウ 被告製品のシートから切り離された排水口フィルターの形状は,別紙被 告意匠(原告)目録①又は②記載のとおりの形状である。(甲5) (4) 公知意匠 原告意匠の登録出願前に,別紙公知意匠目録記載1~13の各意匠が存在 した(以下,証拠番号に従い,「乙2意匠」などということがある。)。 20 3 争点 (1) 原告意匠と被告製品の意匠の類否(争点1) (2) 先使用の抗弁の成否(争点2) (3) 原告意匠の登録が意匠登録審判により無効にされるべきものと認められる か(争点3) 25 ア 乙30意匠に基づく新規性欠如(争点3-1) 4 イ 乙31意匠に基づく新規性欠如(争点3-2) ウ 乙30意匠等に基づく創作非容易性欠如(争点3-3) (4) 差止め及び廃棄請求の可否(争点4) ( 規性欠如(争点3-1) 4 イ 乙31意匠に基づく新規性欠如(争点3-2) ウ 乙30意匠等に基づく創作非容易性欠如(争点3-3) (4) 差止め及び廃棄請求の可否(争点4) (5) 損害額(争点5) 第3 争点に関する当事者の主張 5 1 争点1(原告意匠と被告製品の意匠の類否)について 〔原告の主張〕 (1) 被告製品の意匠の特定 被告製品は,シートに連結された排水口フィルターを一つずつ分解して排 水口に装着して使用するものであり,被告製品の包装袋(乙1の3)をみて 10 も,「本体を1個ずつ切り離してご使用ください」「24枚入り」などと被 告製品の本体が個々の排水口フィルターであることを前提とした記載がある から,被告製品の意匠は,別紙被告意匠(原告)目録①及び②記載のとおり, 個々の排水口フィルターに基づいて特定されるべきである。 (2) 原告意匠と被告製品の意匠との類否 15 ア 原告意匠の構成 (ア) 基本的構成態様(以下,符号に従い「構成A」などという。) A ゴミ受け本体が,中央に円孔が開設された円形状のものである。 B ゴミ受け本体の半径方向の一部に前記円孔に連通する切欠部が形成 されてなる。 20 C ゴミ受け本体の外周縁上に該本体から突出したつまみ部が形成され てなる。 D ゴミ受け本体の表面上に,模様(材質に由来しない人為的に施され た絵又は柄)が存在しない。 (イ) 具体的構成態様 25 E 前記切欠部は,中央の円孔に連通すべくゴミ受け本体の周方向に対 5 し,約3mm幅に開口した直線状の切欠部である。 F 前記つまみ部は,ゴミ受け本体の直径の長さに対し約1対0.3と長 く突出し,かつ,その形状はゴミ受け ミ受け本体の周方向に対 5 し,約3mm幅に開口した直線状の切欠部である。 F 前記つまみ部は,ゴミ受け本体の直径の長さに対し約1対0.3と長 く突出し,かつ,その形状はゴミ受け本体に対し頂部を隅丸とし,両側 辺が一直線状である矩形状の起立体である。 G 前記つまみ部を上部とするとその対角線上の下部に前記切欠部が形 5 成されてつまみ部と切欠部が一直線を呈してなる。 イ 原告意匠の要部 (ア) 原告意匠に係る物品は,排水口用ゴミ受けであり,洗面台から流れる 髪の毛やゴミを排水口で受け止め,パイプの詰まり等を防止する役割を 持つ。 10 このような物品の特性からすれば,需要者は,主婦等の個人消費者が 想定される。かかる個人消費者は,物品としての機能やゴミを受ける表 面部の形状に着目することが多く,かつ,当該物品の単価が安価であり, 長期にわたって使用されるものではなく,大量購入,大量消費が原則で あることもあいまって,全体として大まかにしか商品を観察しない。実 15 際,被告製品は,袋に入れられており,需要者は,それ自体を手に取っ て詳細に観察することはない。 したがって,原告意匠の要部は,その基本的構成態様である構成A~ Dを全て備えた点,すなわち,原告意匠及び被告製品の意匠の要部は, ①本体部の外周縁上につまみ部が形成されていること,②本体部の中央 20 に円孔部があること,③本体の任意の位置に中央の円孔につながるよう に切欠部が設けられていること,④本体部の表面上に模様がないことに ある。 (イ) 被告は,原告意匠において,構成A~Dは,公知のありふれた構成で あるのに対し,その具体的構成態様である構成E~Gは新規で特徴ある 25 構成であるから,原告意匠の要部は,構成A~Dではなく,構成E~G 6 おいて,構成A~Dは,公知のありふれた構成で あるのに対し,その具体的構成態様である構成E~Gは新規で特徴ある 25 構成であるから,原告意匠の要部は,構成A~Dではなく,構成E~G 6 であると主張する。 しかし,被告の主張する公知意匠(乙2~8,30~32)をみても, 構成A~Dを全て備えるものは存在しない。乙30,31の各意匠につ いては,洗濯機用パンの排水口に設置する部材に関するものであり,原 告意匠に係る物品(排水口用ゴミ受け)とは,物品としての用途,機能 5 が異なるから,原告意匠の要部に当たって考慮されるべきではない。 また,被告が原告意匠の要部として主張するつまみ部の形状は,需要 者に概括的にしか把握されない上,つまみ部の長さが一定の公知意匠(乙 5~8)や,原告意匠のつまみ部と類似したつまみ部を有する排水口用 ゴミ受け(甲12~14)が存在するから,要部ではない。 10 被告が原告意匠の要部と主張するつまみ部と切欠部の位置関係につい ても,原告意匠とつまみ部の数やつまみ部と切欠部の位置関係が異なる 意匠の登録出願(意願2019-018384。甲7)に対し,特許庁 審査官から,つまみ部及び位置関係は,美観を相違させるものではなく, 原告意匠に類似するとして拒絶理由が通知されたこと(甲8)からも明 15 らかなように,意匠の美観に影響を与えるものではないから,要部では ない。 ウ 被告製品の意匠の構成 (ア) 基本的構成態様(以下,符号に従い「構成a」などという。) a ゴミ受け本体が,中央に円孔が開設された円形状のものである。 20 b ゴミ受け本体の半径方向の一部に前記円孔に連通する切り目が形成 されている。 c ゴミ受け本体の外周縁上に該本体から突出したつまみ部が形成され ている。 た円形状のものである。 20 b ゴミ受け本体の半径方向の一部に前記円孔に連通する切り目が形成 されている。 c ゴミ受け本体の外周縁上に該本体から突出したつまみ部が形成され ている。 d ゴミ受け本体の表面上に模様が存在しない。 25 (イ) 具体的構成態様 7 e 前記切り目は,線状の切り目である。 f 前記つまみ部は,ゴミ受け本体の直径に対し約1対0.16の割合 で突出する弧状(半円状)のものである。 g 前記つまみ部を上部とすると,前記切り目は,つまみ部の左側近傍 部又は右側下方部に位置ずれして形成されている。 5 (ウ) なお,被告は,被告製品の意匠は,本体全体がスポンジ模様からなる から,構成dを備えないと主張するが,原告が主張する「模様」とは, 材質に由来しない人為的に施された絵又は柄のことを指すところ,被告 製品の意匠からスポンジ模様が看取できたとしても,何ら人為的な絵又 は柄がない以上,構成dを備える。 10 エ 共通点と相違点 (ア) 両意匠の共通点 原告意匠と被告製品の意匠は,基本的構成態様(構成A~D,構成a ~d)が共通する。 (イ) 両意匠の相違点 15 a 原告意匠と被告製品の意匠は,以下の点で相違する。 (a) 原告意匠のつまみ部は,ゴミ受け本体の直径の長さに対し約1対 0.3と極めて長く突出し,かつ形状はゴミ受け本体に対し頂部を隅 丸とし,両側辺が一直線状である矩形状の起立体であるのに対し,被 告製品の意匠のつまみ部は,ゴミ受け本体の円周の外周縁の延長線 20 上から約1対0.16とわずかに弧状(半円状)に突出した突部形 態である点 (b) 原告意匠では,切欠部がつまみ部の対角線上に存在する の意匠のつまみ部は,ゴミ受け本体の円周の外周縁の延長線 20 上から約1対0.16とわずかに弧状(半円状)に突出した突部形 態である点 (b) 原告意匠では,切欠部がつまみ部の対角線上に存在するのに対し, 被告製品の意匠では,つまみ部を上部とすると,切り目がつまみ部 に対し左側近傍又は右側下方部に位置ずれして形成され,つまみ部 25 の対角線上に存在しない点 8 b 被告は,切欠部(切り目)の形状が,原告意匠では,明確に開口し た形状であるのに対し,被告製品の意匠では存在すら視認できない形 状である点で相違すると主張するが,被告製品においては,明確に視 認できる切り目が存在する(甲5)から,切欠部(切り目)の形状が 相違点になることはない。 5 オ 類否 (ア) 両意匠は,基本的構成態様が一致する以上,両意匠から生じる美感, すなわち,表面が平らで,円形の丸みを帯びた「C」の字状の本体に, 半円形の突出が付着するという印象が共通する。 (イ) 他方,原告意匠と被告製品の意匠の相違点のうち,つまみ部の形状は, 10 そもそも需要者はその構成態様を仔細に観察・確認するとは考え難い上, つまみ部の形状のある公知意匠(甲12~14,乙5~8)と比較して も原告意匠が特異というわけではなく,両意匠ともに隅丸形状であるこ とにも変わりはないから,「丸みを帯びた印象」という美感に差異はな い。 15 また,切欠部は,ポップアップ式の排水口に取り付けるためのもので あるから,ゴミ受け本体のいずれかの位置に形成されていればよく,需 要者は特段その位置関係に着目するものではない。 (ウ) 以上によれば,両意匠の上記各相違点は,基本的構成態様が共通する ことによる両意匠の美感の共通性を凌駕するものではないから,両意匠 20 は類似する。 段その位置関係に着目するものではない。 (ウ) 以上によれば,両意匠の上記各相違点は,基本的構成態様が共通する ことによる両意匠の美感の共通性を凌駕するものではないから,両意匠 20 は類似する。 〔被告の主張〕 (1) 被告製品の意匠の特定について 被告製品は,8枚の排水口フィルターの集合体としてのシートとして販売 されているのであって,個々の排水口フィルターは,購入後にシートから切 25 り離して使用する際に生じるものにすぎないから,被告製品の意匠は,個々 9 の排水口フィルターに係るものではなく,別紙被告意匠(被告)目録のとお り,8枚の排水口フィルターで一体成形された排水口フィルター用シートに 基づいて特定されるべきである。 そうすると,原告意匠と被告製品の意匠とは,その基本的構成態様である 1個の排水口用ゴミ受けと8個のゴミ受けの集合体としての排水口フィルタ 5 ー用シートの形態は全く異なるので,両意匠が類似することはあり得ない。 (2) 原告意匠と被告製品の意匠との類否について ア 原告意匠の構成について 原告意匠が,構成A~C,E~Gを備えることは認めるが,構成Dを備 えることについては争う。 10 原告意匠の意匠公報(甲1)の意匠に係る物品の項に,「本物品を構成 する材質は,水切れのよいスポンジ若しくは脱膜スポンジである。」との 記載があることからも明らかなように,原告意匠に係る物品の材質はスポ ンジ(内部に細かな孔が無数に開いた多孔質の柔らかい物質)である以上, ゴミ受け本体の表面部に多孔質なスポンジ模様が現出している。 15 したがって,原告意匠は構成Dを備えない。 イ 原告意匠の要部について 構成A及びBは乙2~4の各意匠等,構成Cは甲12~14, 面部に多孔質なスポンジ模様が現出している。 15 したがって,原告意匠は構成Dを備えない。 イ 原告意匠の要部について 構成A及びBは乙2~4の各意匠等,構成Cは甲12~14,乙5~8 の各意匠等,構成Dは乙4,5の各意匠によって周知ないし公知であって 新規の形態ではない。構成A~Cを全て備えるゴミ受け及びその類似物品 20 も,乙30~32の各意匠等によって公知である。このように,原告意匠 の基本的構成態様は,需要者の注意力を喚起しないありふれた構成態様で ある。 他方,構成要件Eの切欠部の形状,構成Fのつまみ部の形状,構成Gの 切欠部とつまみ部との位置関係については,原告意匠の新規で特徴ある構 25 成と評価できるものである。 10 したがって,原告意匠の要部は構成E~Gにある。 ウ 被告製品の意匠の構成について 被告製品の意匠は,前記のとおり,集合体としての排水口フィルター用 シートであるが,原告の主張に基づき単一体としての排水口用ゴミ受けで あると仮定した場合,被告製品の意匠が構成a~c,e~fを備えること 5 は認める(以下では,単一体としての排水口用ゴミ受けについて類否を論 じる。)。 エ 共通点と相違点について (ア) 両意匠の共通点 原告意匠と被告製品の意匠は,その基本的構成態様(構成A~C,構 10 成a~c)が共通する。 (イ) 両意匠の相違点 原告の主張する相違点のほか,両意匠は,「切欠部(切り目)につい て,原告意匠では,約3mm幅の明確な開口部からなる切欠形状である のに対し,被告製品の意匠では,線状の切り目は存在するものの,明確 15 に視認することができない点」において相違する。 オ 類否について (ア) 明確な開口部からなる切欠形状である のに対し,被告製品の意匠では,線状の切り目は存在するものの,明確 15 に視認することができない点」において相違する。 オ 類否について (ア)a 切欠部の形状の相違(構成E,e) 原告意匠の切欠部は,明確に所定の寸法幅(約3mm)開口した形 状であるのに対し,被告製品の意匠の切り目は,存在すら視認できな 20 い線状のものであるから,両意匠の切欠部(切り目)の形状は,看者 に与える印象を全く異にするものである。 b つまみ部の形状の相違(構成F,f) 原告意匠のつまみ部の形状は,ゴミ受け本体に対し長く突出し,そ の形状も頂部を隅丸として両側辺を長く一直線上の矩形状の起立体と 25 して形成してなるため,ゴミ受け本体に対し極めて目立つように大き 11 く突出している印象を看者に強く与えるものであるのに対し,被告製 品の意匠のつまみ部の形状は,ゴミ受け本体の円周の外周縁の延長線 上からわずかに弧状(半円状)に突出するにすぎず,ほとんど目立た ないから,両意匠のつまみ部の形状も,看者に与える審美感を異にす るものである。 5 c 切欠部とつまみ部の位置関係の相違(構成G,g) 原告意匠のつまみ部は,つまみ部を上部とするとその対角線上の下 部に一直線に切欠部が形成されてなるのに対し,被告製品の意匠では, つまみ部の位置に対し,切り目はつまみ部に対し左側近傍又は右側下 方部の位置に形成されており,対角線上には存在しない。 10 (イ) このように原告意匠と被告製品の意匠は,要部である具体的構成態様 において明らかに相違する。両意匠を全体観察すると,原告意匠は,本 体部に対してつまみ部が大きく,かつ,長く角柱状に目立つように突出 しているため,つまみ部が取っ 製品の意匠は,要部である具体的構成態様 において明らかに相違する。両意匠を全体観察すると,原告意匠は,本 体部に対してつまみ部が大きく,かつ,長く角柱状に目立つように突出 しているため,つまみ部が取っ手として機能する使用感が著しく大であ り,切欠部とつまみ部とが一直線状であることにより,より一層差し込 15 み時の作業性が良いとの印象を需要者に与える。また,原告意匠の切欠 部はその開口部が明確であり,使用時に差込みが容易であるとの印象を 与える。 これに対し,被告製品の意匠のつまみ部はわずかな突出感しかないた め,つまみ部に比べて本体部分の形状が強く印象付けられる。また,被 20 告製品の意匠は,明確な切欠部が存在しないため,切欠部と切り目が需 要者に与える審美感が異なる。 (ウ) 以上によれば,原告意匠と被告製品の意匠は類似しない。 2 争点2(先使用の抗弁の成否)について 〔被告の主張〕 25 (1) 被告製品開発の経緯 12 被告は被告製品をダイセンから仕入れているところ,被告とダイセンが同 製品を開発した経緯(下記ア~ケの年月日はいずれも平成31年又は令和元 年である。)は,以下のとおりである。 ア ダイセンは,4月11日,中国法人のWuxi社(Wuxi Perm anent Co.,Ltd)とCNTA社(上海希達科技有限公司)と 5 の間で,洗面台の排水口フィルターについて新製品の開発についての打合 せを行い,Wuxi社から紙媒体の抜き型図面(乙20)を受領した。同 日の商談記録表(乙21)には,同月13日までに抜き型の形状を確定さ せるとともに,同月21日に試作品が完成予定である旨の記載がある(乙 21)。 10 イ ダイセンの担当課長は,5月27日,被告製品のサンプルを持参して被 告を往訪し,被告の担当課長と打合 を確定さ せるとともに,同月21日に試作品が完成予定である旨の記載がある(乙 21)。 10 イ ダイセンの担当課長は,5月27日,被告製品のサンプルを持参して被 告を往訪し,被告の担当課長と打合せを行い,10月の販売開始を目標と して商品化を進めることで合意した(乙22)。 ウ ダイセンの担当者は,6月5日,CNTA社の担当者に対し,被告製品 の試作品の写真及び図面の画像データを添付した電子メールを送信した 15 (乙23の1,23の2の1・2)。 エ ダイセンの担当課長は,6月12日,被告の担当課長との打合せの際, 競合他社製品比較表(以下「製品比較表」という。乙23の4)を手交し た。同表の「提案品」欄の「商品画像」は,乙23の2の1の試作品の写 真と同一であり,「サイズ」は乙20に記載された数値と一致する。 20 オ 被告の担当課長とダイセンの担当課長は,7月22日に打合せを行い, ダイセン側は,被告製品について当初の提案形状にて商品化することを依 頼し,被告の担当課長の了承を得た(乙25)。 カ 被告は,7月25日,キャンドゥに対し,被告製品の見積書を送付し, 同月30日,同社から採用通知書(乙26)を受領した。これを受けて, 25 被告の担当課長は,ダイセンの担当課長に対し,被告製品の採用決定を通 13 知した。 キ ダイセンの担当課長は,7月31日,CNTA社の担当者に対し,電子 メール(乙27)を送付し,被告製品が採用になった旨を連絡したが,そ の際に同メール本文に挿入された被告製品の写真画像は,乙23の2の1 の試作品及び乙23の4の製品比較表の提案品欄の商品画像と同一であ 5 り,寸法の数値も乙20の図面や乙23の2の1の画像データと同一であ る。また,同メールには被告製品を包装する化粧袋のデザインを作成中で ある旨の記載 4の製品比較表の提案品欄の商品画像と同一であ 5 り,寸法の数値も乙20の図面や乙23の2の1の画像データと同一であ る。また,同メールには被告製品を包装する化粧袋のデザインを作成中で ある旨の記載がある。 ク 被告の担当課長とダイセンの担当課長は,8月2日,打合せを行い,被 告製品を採用することとした上で,その出値代や納期についての話合いが 10 行われた(乙29)。被告は,ダイセンに対し,同日付け注文書をもって, 被告製品2万個を注文した(乙28)。 ケ 被告は,10月30日,ダイセンから被告製品を仕入れ,倉庫に入庫し, 11月12日,キャンドゥへの販売を開始した。 (2) ダイセンの先使用による通常実施権の取得 15 このように,ダイセンは,原告が原告意匠を出願した事実を知ることなく, 自ら又は創作者であるWuxi社から知得することにより,平成31年4月 13日には被告製品の意匠に係る抜き型図面を作成し,被告製品の意匠を完 成していた上,原告意匠の出願当時(令和元年8月20日)には,被告から 被告製品を2万個受注していたのであるから,事業の遂行又はその準備とし 20 て,同製品の販売又は販売の申出をしていたということができる。 そうすると,ダイセンは,意匠法29条に基づき,原告意匠権について通 常実施権を有していたというべきであり,被告は,通常実施権者が製造した 被告製品を仕入れて販売していたのであるから,その行為に違法性はない。 (3) 原告の主張について 25 ア 抜き型図面(乙20)について 14 (ア) 原告は,抜き型図面には作成日付が印字されていないと指摘するが, 平成31年4月17日作成の同月11日の商談記録表(乙21)に「抜 き型の形状は4月13日までに協議した上で決定させる。※別紙参照: 抜型図面デー 抜き型図面には作成日付が印字されていないと指摘するが, 平成31年4月17日作成の同月11日の商談記録表(乙21)に「抜 き型の形状は4月13日までに協議した上で決定させる。※別紙参照: 抜型図面データ」との記載があるとおり,抜き型図面は,同月11日に ダイセン,Wuxi社,CNTA社の3社で商談をし,同月13日に確 5 定した図面である。また,原告は,抜き型図面に作成者名の記載がない と主張するが,図面に作成者名が記載されていなくても不自然ではない。 (イ) 原告は,抜き型図面の元となるデータに作為が介在した可能性を否定 できないと主張するが,いかなる改ざん,編集が行われたかについて具 体的な主張をしていない。このことは,乙23の2の1の画像データ, 10 乙23の4の製品比較表に掲載された写真の画像データ,乙27の電子 メールに挿入された画像データについても同様である。 イ 令和元年6月5日付け電子メール(乙23の1)に添付された図面及び 写真データ(乙23の2の1・2)について (ア) 令和元年6月5日付け電子メールは,同日午前11時19分に送信さ 15 れたものであり,同メールに添付された乙23の2の1の画像データの 作成日時は,そのプロパティ(乙34)によれば同日午前11時14分 15秒であり,乙23の2の2の画像データの撮影日は同日午前11時 15分であり(乙35),いずれも原告意匠の出願日前に作成されたも のである。 20 (イ) 原告は,乙20の抜き型図面と乙23の2の1の画像データの作成順 が不自然であると主張するが,ダイセンの担当者は,抜き型図面及び被 告製品の試作品の写真に基づいて乙23の2の1の画像データを作成し たのであるから,抜き型図面の作成日が乙23の2の1の画像データの 作成日より早い時期であるのはむしろ当然である。 抜き型図面及び被 告製品の試作品の写真に基づいて乙23の2の1の画像データを作成し たのであるから,抜き型図面の作成日が乙23の2の1の画像データの 作成日より早い時期であるのはむしろ当然である。 25 ウ 製品比較表(乙23の4)について 15 (ア) 原告は,製品比較表についても,作為が加えられた可能性を否定でき ないと主張するが,同表の元となるデータのプロパティ(乙36の2) によれば,その最終保存日は令和元年6月5日午前9時41分であり, 最終印刷日は同日午前9時40分であるから,同表は原告意匠の出願日 前に作成されたものである。 5 (イ) 原告は,製品比較表のデータファイルのプロパティに最終更新日が記 載されていないと主張するが,同プロパティの更新日時は令和元年6月 5日午前9時41分となっているので,同日時が最終更新日である。ま た,同プロパティの示す最終印刷の対象が同表のデータの画面であるこ とは明らかである。 10 (ウ) 原告は,製品比較表やそのデータファイル(乙36の1)に掲載され ている写真は画像が粗く,視認できないと主張するが,いずれの画像も, 被告製品の意匠を視認することができる。また,製品比較表とデータフ ァイルの画面に異なる点があるのは,同データファイルの画面を1つの 画面に全て写すためにスクロールしたからである。 15 (エ) 原告は,製品比較表のデータファイルの作成日時が本件よりもはるか に過去の日付であると指摘するが,同日時は,同表の元になったフォー マットの作成日時を示すものにすぎない。 エ 令和元年7月31日付け電子メール(乙27)について 令和元年7月31日付け電子メールの送信日時欄の記載によれば,同電 20 子メールが同日午後3時49分に送信されたことは明らかである。ま 令和元年7月31日付け電子メール(乙27)について 令和元年7月31日付け電子メールの送信日時欄の記載によれば,同電 20 子メールが同日午後3時49分に送信されたことは明らかである。また, 同電子メールは,ダイセンとCNTA社間のメールであり,被告が関与で きるものではない。 オ 被告製品のデザインの完成時期について (ア) 令和元年6月5日付け電子メールに添付された乙23の2の1の図 25 面及び写真の画像データ,乙23の4の製品比較表に掲載されている被 16 告製品の試作品の写真並びに令和元年7月31日付け電子メール(乙2 7)に挿入された画像データが抜き型図面(乙20)と同一であること は前記(1)のとおりである。 (イ) 原告は,令和元年8月2日の商談記録表(乙29)に「デザイン案を 提出したが,NGとのことであった。W氏が在籍している間にデザイン 5 を作り入稿しないと,希望納期に間に合わない状況。」と記載があるこ とに基づき,被告製品の意匠が未完成であったと主張する。 しかし,乙29にいう「デザイン」とは,被告製品の意匠ではなく, 被告製品を包装する化粧袋のデザインのことであり,同デザインが作成 中であったことは,令和元年7月31日付けメール(乙27)に「現在, 10 化粧袋のデザインを作成中で御座います。」と記載されているとおりで ある。 また,上記の商談記録表には「提案中の「CD洗面台排水口フィルタ ー24Pピンセット付」は,採用が決定。弊社出値「¥36円/個」で 着地」との記載があるが,被告製品の意匠が決定される前に,商品採用 15 の決定がされることや商品の売値が確定することは想定し難いので,令 和元年8月2日には被告製品のデザインは確定していたことは明らかで ある。 〔原告の主張〕 (1) 被告 前に,商品採用 15 の決定がされることや商品の売値が確定することは想定し難いので,令 和元年8月2日には被告製品のデザインは確定していたことは明らかで ある。 〔原告の主張〕 (1) 被告がダイセンの先使用権の根拠として提出する証拠は,以下のとおり, 20 いずれも信用性に乏しい。 ア 抜き型図面(乙20)について (ア) 被告が被告製品の意匠の完成図面として依拠する抜き型図面は,作成 日付が印字されてないため,原告意匠の登録出願前に作成されたものか どうか不明である。なお,同図面上には,「4/13 最終案」と手書 25 きで記載されているが,同図面と同一のものとされる乙23の2の1の 17 画像データには手書きの文字は認められないことに照らすと,上記の手 書き部分は後日追記された可能性がある。 (イ) ダイセンがWuxi社から紙媒体を受け取ったという経緯も不自然 である。現在,海外法人とのやり取りは通常電子メールで行われており, 抜き型図面の元となったCADファイルについても,中国から電子メー 5 ルで送信すれば足りる。しかるに,Wuxi社は,抜き型図面のCAD ファイルをわざわざ印刷した上で,紙媒体を日本まで郵送したというこ とになるが,これは非常に迂遠な作業であって,不自然である。 (ウ) 抜き型図面は画像データを印刷したものであるが,元の画像データに 作為が加わる可能性は否定できない。このように作為が加わった可能性 10 があるのは,乙23の2の1の画像データ,乙23の4の製品比較表に 掲載された写真の画像データ,乙27の電子メールに挿入された画像デ ータも同様である。 イ 令和元年6月5日付け電子メール(乙23の1)に添付された図面及び 写真の画像データ(乙23の2の1)について 15 (ア) 被告は乙23の2の 子メールに挿入された画像デ ータも同様である。 イ 令和元年6月5日付け電子メール(乙23の1)に添付された図面及び 写真の画像データ(乙23の2の1)について 15 (ア) 被告は乙23の2の1の画像データのプロパティを提出するが(乙3 4),プロパティの日付表示はパソコン上の時刻設定の変更やアプリ等 によって容易に変更することができるので(甲18),その信用性には 疑問がある。 (イ) 上記プロパティ上の作成日は「2019年6月5日」とされており, 20 他方,平成31年4月13日には存在したとされる抜き型図面は紙媒体 であるが,通常,データを作成してから,印刷するはずであるから,こ れより後に同図面の画像データ(乙23の2の1)が作成されることは あり得ない。そうすると,同プロパティの作成日付が信用できないか, 抜き型図面の手書きによる作成日の記載が令和元年6月5日以降である 25 ことになる。 18 ウ 製品比較表(乙23の4)について (ア) 画像データのプロパティの日付表示を変更することが容易であるこ とは,前記イ(ア)のとおりである上,乙36の2のプロパティの作成日時 は「2014/12/17」と本件よりはるかに過去のものになってお り,本件に関連した作成日ではない。また,最終更新日も記載されてお 5 らず,同プロパティにある「最終印刷日」もいずれの画面を印刷したの か不明である。 (イ) 製品比較表及びデータファイル(乙36の1)の画像は粗く,同比較 表上の画像と同データファイルの画像とは異なるものであり,同プロパ ティは同表の作成日を示すものではない。 10 (ウ) 被告が主張するように,製品比較表のデータファイルの最終印刷日 (令和元年6月5日午前9時40分)が同表の作成日付であると考える と,その日時は,被 同表の作成日を示すものではない。 10 (ウ) 被告が主張するように,製品比較表のデータファイルの最終印刷日 (令和元年6月5日午前9時40分)が同表の作成日付であると考える と,その日時は,被告製品の試作品の写真が掲載された画像データ(乙 23の2の1)の作成日時(同日午前11時14分15秒。乙34)よ り早いことになる。製品比較表上の写真は元のデータから切り抜いて作 15 成されたと考えるのが自然であるので,同表の作成日時が,元データで ある乙23の2の1の画像データの作成日時より先であるのは不自然で ある。 エ 令和元年7月31日付け電子メール(乙27)について 電子メールの改ざん,編集は容易であって,被告だけでなく,被告製品 20 の製造販売元として原告意匠権を侵害するダイセンにも,乙27の電子メ ールを改ざんする動機がある。 (2) 被告製品のデザインの完成時期について 乙20の抜き型図面に記載されたデザインがダイセンにおいて一貫して採 り入れられていたかどうかは,他の証拠に照らしても明らかではない。むし 25 ろ,令和元年8月2日の打合せに係る商談記録表(乙29)には,「デザイ 19 ン案を提出したが,NGとのことであった。W氏が在籍している間にデザイ ンを作り入稿しないと,希望納期に間に合わない状況。」と記載されており, これによれば,同時点においてデザインが完成していなかったことがうかが われる。 (3) 以上によれば,被告の主張する被告製品の意匠が原告意匠の登録出願前に 5 完成されていたとの事実は認められない。 3 争点3(原告意匠の登録が意匠登録審判により無効にされるべきものと認め られるか)について (1) 争点3-1(乙30意匠に基づく新規性欠如) 〔被告の主張〕 10 乙30意匠は,意匠に係る 3 争点3(原告意匠の登録が意匠登録審判により無効にされるべきものと認め られるか)について (1) 争点3-1(乙30意匠に基づく新規性欠如) 〔被告の主張〕 10 乙30意匠は,意匠に係る物品が「目皿部材」で,斜視図や平面図からも 明らかなように,原告が要部であると主張する原告意匠の基本的構成態様A ~Cを全て具備するものである。 したがって,原告意匠は,乙30意匠と少なくとも類似するため,意匠登 録を受けることができない意匠(意匠法3条1項3号)に該当するから,意 15 匠登録無効審判によって無効とされるべきものである。 〔原告の主張〕 乙30意匠は,洗濯機用パンの排水口に設置する部材に関するものであり, 原告意匠に係る物品(排水口用ゴミ受け)とは,物品としての用途,機能が 異なるから,原告意匠の新規性を検討するにあたって考慮されるべきもので 20 はない。仮に,乙30意匠が考慮されるとしても,乙30意匠は構成Dを備 えないから,原告意匠と類似しない。 したがって,被告の乙30意匠に基づく新規性欠如の主張には理由がない。 (2) 争点3-2(乙31意匠に基づく新規性欠如) 〔被告の主張〕 25 乙31意匠は,意匠に係る物品が「排水トラップ用の目皿」で,正面図や 20 側面図から明らかなように,原告が要部であると主張する原告意匠の基本的 構成態様A~Cを全て具備するものである。 したがって,原告意匠は,乙31意匠と少なくとも類似するため,意匠登 録を受けることができない意匠(意匠法3条1項3号)に該当するから,意 匠登録無効審判によって無効とされるべきものである。 5 〔原告の主張〕 乙31意匠は,洗濯機用パンの排水口に設置する部材に関するものであり, 原告意匠に係る物品(排水口用ゴミ受け)とは,物品としての用途, によって無効とされるべきものである。 5 〔原告の主張〕 乙31意匠は,洗濯機用パンの排水口に設置する部材に関するものであり, 原告意匠に係る物品(排水口用ゴミ受け)とは,物品としての用途,機能が 異なるから,原告意匠の新規性を検討するにあたって考慮されるべきもので はない。仮に,乙31意匠が考慮されるとしても,乙31意匠は構成Dを備 10 えないから,原告意匠と類似しない。 したがって,被告の乙31意匠に基づく新規性欠如の主張には理由がない。 (3) 争点3-3(乙30意匠等に基づく創作非容易性欠如) 〔被告の主張〕 構成Aは乙2~5の各意匠から,構成Bは乙2~4の各意匠から,構成C 15 は甲12~14,乙5~8の各意匠から,それぞれ明らかなように,排水口 用ゴミ受けの属する分野において,原告意匠の登録出願当時,周知ないし公 知の構成態様であった。 そして,原告意匠の具体的構成態様も,原告意匠の登録出願当時,周知な いし公知な構成態様であったこと(甲12~14,乙2~8,30~32) 20 や原告自身が原告意匠の具体的構成態様は要部ではないと主張していること に照らすと,原告意匠は,上記の公知意匠に基づき当業者が容易に創作する ことができたものであるということができる。 したがって,原告意匠は,意匠登録を受けることができない意匠(意匠法 3条2項)に該当するから,意匠登録無効審判によって無効にされるべきも 25 のである。 21 〔原告の主張〕 乙30及び乙31の各意匠は,洗濯機用パンの排水口に設置する部材に関 するものであり,原告意匠に係る物品(排水口用ゴミ受け)とは,物品とし ての用途,機能が異なるから,原告意匠の創作非容易性を検討するにあたっ て考慮されるべきものではない。また,乙32意匠は,原告意匠の要部で のであり,原告意匠に係る物品(排水口用ゴミ受け)とは,物品とし ての用途,機能が異なるから,原告意匠の創作非容易性を検討するにあたっ て考慮されるべきものではない。また,乙32意匠は,原告意匠の要部であ 5 る構成B,Dを欠いており,これらの構成を創作することが容易であるとい うことはできない。 したがって,被告の創作非容易性欠如の主張は理由がない。 4 争点4(差止め及び廃棄請求の可否)について 〔原告の主張〕 10 被告による被告製品の製造,販売,輸入及び販売の申出は,原告意匠権を侵 害するものであるから,原告は,被告に対し,被告製品の製造,販売,輸入及 び販売の申出の差止請求権及び廃棄請求権を有する。 〔被告の主張〕 争う。なお,被告は,被告製品をダイセンから購入して販売しているのであ 15 って,被告製品の製造,輸入及び販売の申出はしていない。 5 争点5(損害額)について 〔原告の主張〕 原告は,「つまめる洗面台のゴミガード」という品名の排水口用ゴミ受けを 製造販売している(甲9)ところ,競合品の被告製品の販売等により,本来得 20 られたはずの利益を失い,損害を被った。 被告は,本訴提起までに約5か月間,被告製品の販売等をしてきたところ, 被告製品の販売代金は1袋当たり110円(甲3),販売個数は月10万個, 利益率は40%を下回るものではないから,被告が被告製品の販売等により本 訴提起までに得た利益は,2200万円(110円×10万個×40%×5か 25 月)を下回らない。 22 したがって,原告の逸失利益は,2200万円と推定される(意匠法39条 2項)。 〔被告の主張〕 争う。 第4 当裁判所の判断 5 1 争点2(先使用の抗弁の成否) 事案に鑑み したがって,原告の逸失利益は,2200万円と推定される(意匠法39条 2項)。 〔被告の主張〕 争う。 第4 当裁判所の判断 5 1 争点2(先使用の抗弁の成否) 事案に鑑み,まず争点2について判断する。 (1) 被告製品の意匠の特定 前提として,被告製品の意匠について検討する。 ア 前記前提事実のとおり,被告製品は,8枚の排水口フィルターを結合し 10 たシート3枚から構成されているところ,被告は,個々の排水口フィルタ ーではなく,一体成形された排水口フィルター用シートに基づいて特定さ れるべきであると主張する。 しかし,被告製品は,その通常の使用形態として,シートから個々の排 水口フィルターを切り離して使用することが予定されており,同シートの 15 外観も,個々の排水口フィルターの形態を区別して視認することができる 上,被告製品の包装袋(乙1の3)の裏面には「本体を1 個ずつ切り離し てご使用ください」と記載され,シートから切り離された排水口フィルタ ーを洗面台の排水口にはめ込む図が印刷されているとの事実が認められ る。これによれば,被告製品の意匠は個々の排水口フィルターに基づいて 20 特定することが相当である。 イ 上記アのとおり,被告製品の意匠を個々の排水口フィルターに基づいて 特定する場合,被告製品の意匠が以下の構成を備えることは,当事者間に 争いがない(なお,原告意匠は,意匠公報(甲1)の【意匠に係る物品の説 明】の記載や【図面】等に照らすと,形状に係る意匠であると解するのが 25 相当であり,排水口用ゴミ受け本体の表面部に模様等が存在しないことが 23 その構成態様に含まれると解することはできない。)。 (ア) 基本的構成態様 a ゴミ受け本体が,中央に円孔が開設された円形状のも 表面部に模様等が存在しないことが 23 その構成態様に含まれると解することはできない。)。 (ア) 基本的構成態様 a ゴミ受け本体が,中央に円孔が開設された円形状のものである。 b ゴミ受け本体の半径方向の一部に前記円孔に連通する切り目が形成 されてなる。 5 c ゴミ受け本体の外周縁上に該本体から突出したつまみ部が形成され てなる。 (イ) 具体的構成態様 e 前記切り目は,別紙被告製品目録及び別紙被告意匠(被告)目録の 図面から明らかなように線状の切り目である。 10 f 前記つまみ部は,ゴミ受け本体の直径に対しわずかに突出する弧状 (半円状)のものである。 g 前記つまみ部を上部とすると,前記切り目は,つまみ部の左側近傍 部又は右側下方部の位置に形成されてなる。 (2) 被告製品の開発経緯 15 次に,被告製品の製品化に向けた開発経緯に関し,前提事実,後掲証拠及 び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実(下記ア~クの年月日はいずれも平 成31年又は令和元年である。)が認められる。 ア ダイセンは,4月11日,Wuxi社及びCNTA社との間で,「洗面 台のゴム流れ防止シート」の新製品の開発について打合せを行い,①シー 20 トサイズを径40mm(穴部分の径12mm),厚さ5mm,取っ手8m mとすること,②ダイセンは上記①のサイズ8枚を1シートとして試作を すること,③抜き型の形状は同月13日までに決定することについて合意 するとともに,Wuxi社から抜き型図面(乙20)を受け取った。 上記抜き型図面には,個々のフィルターの径が38mm(内側の穴部分 25 の径12mm),取っ手部分の突出の長さが6.5795mmと表示され, 24 図面外の部分に 乙20)を受け取った。 上記抜き型図面には,個々のフィルターの径が38mm(内側の穴部分 25 の径12mm),取っ手部分の突出の長さが6.5795mmと表示され, 24 図面外の部分に赤色で「4/13 最終案」と手書きされている。 (以上,乙20,21,33) イ ダイセンの担当課長は,5月27日,被告の担当課長と打合せを行い, 新製品の「洗面台の排水口フィルター」について提案を行ったところ,被 告の担当課長から,10月販売開始を目標に商品化を進めるとの意向を伝 5 えられるとともに,他社製品と比較する資料の作成を依頼された。(乙2 2) ウ ダイセンの担当課長は,6月5日午前9時40分,同社で使用されてい るエクセルのフォーマットを利用して作成した製品比較表(乙23の4) のデータファイルを印刷し,同日午前9時41分,同ファイルを更新した 10 (乙36の1・2)。 製品比較表には,ダイセンが試作した試作品及び競合他社製品の画像, サイズ,特長等が対比されており,ダイセンの提案する「提案品」の「商 品画像」欄には,つまみ部を備えた8枚のフィルターから構成される1枚 のシートの写真が掲載され,「サイズ」欄には,その寸法が「外径寸法: 15 約38mm,内径寸法:約12mm,厚み約5mm」と記載されている。 エ ダイセンの担当者は,上段に抜き型図面,下段に排水口フィルターの試 作品の写真が掲載されたPDFファイル(乙23の2の1)及び同写真を 拡大したものが掲載されたJPEGファイル(乙23の2の2)を作成し た上,6月5日午前11時19分,CNTA社の担当者に対し,これらの 20 ファイルを添付した電子メール(乙23の1)を送信し,図面と試作品を 比較して確認するよう依頼した。同メールの本文には確認すべき点の記載 はないが,添付された乙23 A社の担当者に対し,これらの 20 ファイルを添付した電子メール(乙23の1)を送信し,図面と試作品を 比較して確認するよう依頼した。同メールの本文には確認すべき点の記載 はないが,添付された乙23の2の1の図面においては,抜き型図面の個々 の排水口フィルターの結合部の幅が2mmであるのに対し,試作品の同幅 が5mmであることが赤丸で囲まれるなどして対比されている。 25 その後,ダイセンの担当課長は,同日午前11時28分,上記電子メー 25 ルに続き,CNTA社の同担当者に対し,製品の素材がポリウレタンであ ることを確認できるMSDS(化学物質等安全データシート)の入手,展 開を依頼する電子メール(乙23の3)を送信した。 オ ダイセンの担当課長は,6月12日,被告の担当課長と打合せを行い, 同課長に製品比較表(乙23の4)を交付するとともに,新製品の開発の 5 進捗状況について報告した。ダイセンの担当課長は,10月販売開始で問 題はないと伝えるとともに,大創産業の意匠等の有無についての確認を行 うように求められるなどした。(乙24) カ ダイセンの担当課長は,7月22日,被告の担当課長と打合せを行い, 同課長から,排水口フィルターの形状を当初提案した抜き型図面の意匠の 10 ままで商品化することで了承を得た。(乙25) キ 被告は,キャンドゥから,7月30日付けの採用通知書(乙26)を受 領し,発注開始予定日を10月22日,店着単価を48円,発注数量を2 万個として被告製品を採用する旨の通知を受けた。 ダイセンの担当課長は,7月31日午後3時49分,CNTA社の担当 15 者に対し,電子メール(乙27)を送信し,「下記のフィルターで,採用 決定しました」と伝えるとともに,その直下に被告製品の試作品の画像デ ー 当課長は,7月31日午後3時49分,CNTA社の担当 15 者に対し,電子メール(乙27)を送信し,「下記のフィルターで,採用 決定しました」と伝えるとともに,その直下に被告製品の試作品の画像デ ータ(乙23の4に掲載された試作品の画像と同一のもの)を挿入した。 また,同メールには,化粧袋のデザインを作成中である旨の記載がある。 ク 被告の担当課長は,8月2日,ダイセンの担当課長と打合せを行い,提 20 案に係る製品の採用が決定された旨を伝え,両者は同製品の単価を1個3 6円とすることで合意した。(乙29) 被告は,同日,ダイセンに対し,被告製品を単価36円で2万個発注す る旨の注文書(乙28)をファックスで送信した。 ケ 被告は,10月30日,ダイセンから被告製品を仕入れ,倉庫に入庫し, 25 11月12日,キャンドゥへの販売を開始した。 26 (3) 検討 ア 原告意匠の出願日は令和元年8月20日であるところ,上記(2)におい て判示した被告製品の開発経緯によれば,被告製品を開発・製造して被告 に販売したダイセンは,Wuxi社及びCNTA社との間で洗面台用排水 口フィルターの新製品の開発を進め,平成31年4月にWuxi社から抜 5 き型図面(乙20)を受け取り,これに基づき試作品を作成した上で,被 告に対して新製品販売の提案を行い,被告製品の意匠は令和元年7月に被 告に採用されて,被告製品の製造・販売に至ったものと認められる。 イ ダイセンがWuxi社から受領した上記抜き型図面の構成は,上記(1) イの被告製品の意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様をいずれも備 10 えたものであり,被告製品の意匠と同一又は類似するということができる。 そして,同図面に基づいて作成されたと推認される被告製品の試作品(乙 23の2の1の 成態様及び具体的構成態様をいずれも備 10 えたものであり,被告製品の意匠と同一又は類似するということができる。 そして,同図面に基づいて作成されたと推認される被告製品の試作品(乙 23の2の1の下段,乙23の2の2,乙23の4)も同様に被告製品の 意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様をいずれも備え,被告製品の意 匠が被告に採用された後に,ダイセンの担当課長がCNTA社の担当者に 15 送信した電子メール(乙27)の本文に挿入された試作品の画像も同各態 様を備えていたものと認められる。 そうすると,原告意匠と同一又は類似する意匠は,平成31年4月にダ イセンがWuxi社から知得し,仮にそうではないとしても,ダイセンが 被告と打合せを重ねる中で原告意匠の出願日までの間に創作したもので 20 あり,その意匠は平成31年4月から被告製品の意匠の採用時まで,一貫 して,上記(1)イの基本的構成態様及び具体的構成態様を備えていたもの というべきである。 ウ 意匠法29条は「現に日本国内においてその意匠又はこれに類似する意 匠の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は,そ 25 の実施又は準備をしている意匠及び事業の目的の範囲内において,その意 27 匠登録出願に係る意匠権について通常実施権を有する」と規定するところ, 上記(2)のとおり,ダイセンは,令和元年8月2日には被告から2万個の被 告製品の製造を受注していたことに照らすと,原告意匠の出願日(同月2 0日)には原告意匠又はこれに類する意匠の実施である事業を開始してい たというべきである。 5 加えて,ダイセンが,原告意匠の出願日当時,原告意匠について知って いたことを示す証拠はない。 エ 以上によれば,原告意匠と被告製品の意匠が類似しているとしても うべきである。 5 加えて,ダイセンが,原告意匠の出願日当時,原告意匠について知って いたことを示す証拠はない。 エ 以上によれば,原告意匠と被告製品の意匠が類似しているとしても,ダ イセンは,原告意匠を知らないで自ら原告意匠又はこれに類似する意匠を 創作し,又は同意匠の創作をした者から知得して,原告意匠登録出願の際, 10 現に日本国内において原告意匠又はこれに類似する意匠の実施である事 業をしていたということができるので,意匠法29条に基づき,原告意匠 権について通常実施権を有するものというべきである。そうすると,被告 が,原告意匠権について通常実施権を有するダイセンから被告製品を仕入 れて販売等する行為が原告意匠権を侵害するということはできない。 15 (4) 原告の主張について ア 抜き型図面(乙20)について (ア) 原告は,抜き型図面は,作成日付が印字されておらず,手書き部分は 後日追記された可能性があるため,同図面が原告意匠の登録出願前に作 成されたかどうか不明であると主張する。 20 しかし,ダイセンが平成31年4月11日にWuxi社及びCNTA 社と打合せを行った際の商談記録表(乙21)には,「シートサイズ: φ40mm(穴/12mm)×厚さ5mm,取っ手/8mm(45℃)」, 「抜き型の形状は4月13日までに協議した上で決定させる。」,「別 紙参照:抜き型図面データ」との記載がある。同記録表はその内容,形 25 式等に照らして,その「作成日」(同月17日)に作成されたものと信 28 用し得るところ,同記録表の上記記載に加えて,令和元年6月5日付け の電子メールに添付されていた乙23の2の1上段の画像データが乙 20の抜き型図面と同一であり,同図面にはその寸法が記載されている ことなども るところ,同記録表の上記記載に加えて,令和元年6月5日付け の電子メールに添付されていた乙23の2の1上段の画像データが乙 20の抜き型図面と同一であり,同図面にはその寸法が記載されている ことなども考慮すると,平成31年4月11日の上記打合せにおいて同 抜き型図面が配布されたと認めるのが相当である。 5 原告は,同抜き型画面には「4/13 最終案」との手書きの書込み があるのに対し,乙23の2の1上段の画像データには同様の書込みが ないと主張するが,同画像データは,乙20の抜き型図面の図面部分の みを画像データとしたものとも考えられることからすると,同画像デー タに書込みがないことをもって,「4/13 最終案」との上記書込み 10 が原告と被告間の紛争が生じてからされたものであるということはで きない。 (イ) また,原告は,Wuxi社が,抜き型図面のCADファイルをわざわ ざ印刷した上で,紙媒体を日本まで郵送したというのは不自然であると 主張する。 15 この点,Wuxi社が抜き型図面の元データを印刷して紙媒体として 配布した経緯は明らかではないが,データの流用,改変の防止などの観 点から,CADデータを印刷し,精度を落とした上で,取引先との打合 せにおいて配布したとしても不自然ということはできない。 (ウ) さらに,原告は,乙20の抜き型図面の元データに作為が加わる可能 20 性は否定できないと主張するが,乙20の画像データに作為が加えられ たことを具体的に示す証拠は存在しない。 イ 令和元年6月5日付け電子メール(乙23の1)に添付された図面及び 写真データ(乙23の2の1)について (ア) 原告は,乙23の2の1の画像データ及び製品比較表(乙23の4) 25 の画像データのプロパティ(乙34,36の2)は容易 に添付された図面及び 写真データ(乙23の2の1)について (ア) 原告は,乙23の2の1の画像データ及び製品比較表(乙23の4) 25 の画像データのプロパティ(乙34,36の2)は容易に変更すること 29 ができるので,その信用性には疑問があると主張するが,同プロパティ が変更されたことを具体的に示す証拠は存在しない。 (イ) 原告は,被告の主張によると乙23の2の1上段の画像データが作成 されたのは抜き型図面の作成後ということになるが,通常,データを作 成してから印刷するはずであるから,被告の主張は不自然であると主張 5 する。 しかし,被告の主張するとおり,本件では,Wuxi社が,自らの保 有するデータに基づき,紙媒体の抜き型図面を作成してダイセンに交付 し,その後にダイセンが紙媒体の同図面から必要な部分をデータ化して 乙23の2の1上段の画像データを作成したものと認めるのが相当であ 10 る。そうすると,抜き型図面の作成時期が乙23の2の1上段の画像デ ータの作成時期より早いのは当然であるというべきである。 ウ 製品比較表(乙23の4)について (ア) 原告は,乙36の2のプロパティの作成日時は「2014/12/1 7」と本件よりはるかに過去のものになっており,また,最終更新日も 15 記載されておらず,同プロパティにある「最終印刷日」もいずれの画面 を印刷したのか不明であると主張する。 しかし,同プロパティの「作成日時」の記載は,同表の元になったフ ォーマットの作成日時を示すものであると考えられ,製品比較表の作成 日を示すものということはできない。 20 また,同プロパティによれば,その最終更新日は令和元年6月5日午 前9時41分であり,最終印刷日は同日午前9時40分であると認めら れ,印刷対象は同表である 日を示すものということはできない。 20 また,同プロパティによれば,その最終更新日は令和元年6月5日午 前9時41分であり,最終印刷日は同日午前9時40分であると認めら れ,印刷対象は同表であると認められる。そうすると,同プロパティの 最終更新日や印刷対象が不明であるということはできない。 同プロパティに表示された最終更新日や最終印刷日は,令和元年5月 25 27日の商談記録表(乙22)に「類似商品が販売されていないか,確 30 認の依頼を受ける。比較資料を作成し,提出するとした。」との記載が あり,その次の打合せが同年6月12日に行われていること(乙24) とも整合するものであり,信用することができるというべきである。 (イ) 原告は,製品比較表の表示と乙36の1のデータファイルの画像とは 異なると主張するが,乙36の1は画面の一部をスクロールしたために 5 その一部が表示されていないものにすぎず,製品比較表(乙23の4) と乙36の1のデータファイルとは同一のものであると認められる。 (ウ) 原告は,製品比較表は乙23の2の1下段の画像データを利用してい るので製品比較表のデータファイルの最終印刷日(令和元年6月5日午 前9時40分)が乙23の2の1の画像データの作成日時(同日午前1 10 1時14分。乙34)より早いのは不自然であると主張する。 しかし,被告の主張する「乙23の2の1の画像データの作成日時」 は,乙23の2の1の画像データを貼り付けたエクセルファイルをPD Fファイルに変換した日時にすぎないものと認められる(乙34)から, 被告が,試作品の画像データを作成した上で,これを利用して製品比較 15 表を作成し,その後同データと抜き型図面の画像データを併せて乙23 の2の1のPDFファイルを作成したとも考えられる。そうする 被告が,試作品の画像データを作成した上で,これを利用して製品比較 15 表を作成し,その後同データと抜き型図面の画像データを併せて乙23 の2の1のPDFファイルを作成したとも考えられる。そうすると,製 品比較表のデータファイルの最終印刷日が被告製品の試作品の写真の 画像データを貼り付けたPDFファイルの作成日時より早いとしても 不自然ということはできない。 20 エ 令和元年7月31日付け電子メール(乙27)について 原告は,電子メールの改ざんや編集は容易であって,ダイセンにも乙2 7の電子メールを改ざんする動機があったと主張するが,同メールの記載 やその本文に挿入された試作品の画像データが改ざんされたことを具体 的に示す証拠は存在しない。 25 オ 被告製品の意匠の完成時期について 31 原告は,令和元年8月2日の打合せに係る商談記録表(乙29)に「デ ザイン案を提出したが,NGとのことであった。」と記載されていること をもって,この時点においてデザインが完成していなかったと主張する。 しかし,①同年7月22日に行われた被告とダイセンの商談記録表には 「当初の提案形状のままで,商品化を依頼した」との記載があること,② 5 同月30日付けでキャンドゥから採用通知書がダイセンに送付されてい ること(乙26),③ダイセンの担当課長のCNTA社の担当者宛の電子 メール(乙27)に「下記のフィルターで,採用決定しました。」と記載 され,その直下に被告製品の試作品の画像が挿入されていることによれば, 乙29の商談記録表における「デザイン」とは被告商品の形状に関するデ 10 ザインではなく,上記電子メールに「作成中」であると記載されている被 告製品の化粧袋のデザインであると解するのが相当である。 そうすると,同年8月2日 「デザイン」とは被告商品の形状に関するデ 10 ザインではなく,上記電子メールに「作成中」であると記載されている被 告製品の化粧袋のデザインであると解するのが相当である。 そうすると,同年8月2日時点において被告製品のデザインが完成して いなかったとの原告の主張は採用し得ない。 カ 以上によれば,原告の主張はいずれも採用することができない。 15 2 結論 よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも 理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 20 裁判長裁判官 佐 藤 達 文 裁判官 25 32 𠮷 野 俊 太 郎 裁判官 齊 藤 敦 5 33 (別紙) 被告製品目録 「排水口フィルター24Pピンセット付」との品名の排水口用ゴミ受け 5 【被告製品(包装袋入り)】 【8枚組シート】 34 (別紙) 被告意匠(原告)目録① 【斜視図】 【正面図】 5 10 【平面図】 【右側面図】 【底面図】 15 35 (別紙) 被告意匠(原告)目録② 【斜視図】 【正面図】 5 10 【平面図】 15 35 (別紙) 被告意匠(原告)目録② 【斜視図】 【正面図】 5 10 【平面図】 【右側面図】 15 【底面図】 20 36 (別紙) 原告意匠目録 【登録に係る意匠】: 【斜視図】 5 10 【正面図】 15 【平面図】 20 37 【右側面図】 【底面図】 5 10 38 (別紙) 公知意匠目録 1 乙2(「ポップアップ式にも使える!洗面台のゴミガード(18個)」【平成 30年8月13日ウェブサイト「ROOMIE」に写真公開】) 5 2 乙3(「ポップアップ式にも使える!洗面台のゴミガード(18個)」 (左),「洗面台用ゴミガード スポンジタイプ(16個)」(右)【平成30 年9月7日ウェブサイト「家モノカタログ」に写真公開】) 10 39 3 乙4(「ポップアップ式にも使える!洗面台のゴミガード(18個)」 (左),「洗面台用ゴミガード スポンジタイプ(16個)」(右)【平成30 年9月7日ウェブサイト「家モノカタログ」に写真公開】) 4 乙5(文献名を「OXO-Tub Stopper」とする文献【公知資料番 5 号HJ2100368500号,平成21年5月18日公知】) 5 乙6(「C-86-BF4 排水口用ゴミや油をトルシート 20枚入り 4 個セット」【平成28年9月7日にAmazon.co. J2100368500号,平成21年5月18日公知】) 5 乙6(「C-86-BF4 排水口用ゴミや油をトルシート 20枚入り 4 個セット」【平成28年9月7日にAmazon.co.jpでの取扱開始】) 10 40 6 乙7(考案の名称を「浴室に於ける目皿用フィルター」とする登録実用新案公 報【登録番号第3062657号,平成11年10月8日発行】) 【図2】 7 乙8(考案の名称を「排水口用フィルター」とする公開実用新案公報【実開平 7-15872号,平成7年3月17日公開】) 5 【図3】 【図4】 8 乙30(意匠に係る物品を「目皿部材」とする意匠公報【登録番号第1347 645号,平成21年1月5日発行】) 【斜視図1】 【平面図】 10 41 9 乙31(意匠に係る物品を「排水トラップ用の目皿」とする意匠公報【登録番 号第1372731号,平成21年11月2日発行】) 【正面図】 【右側面図】 10 乙32(「セシール洗面台の排水口抜け毛髪の毛ストッパー(30枚組)」 【平成29年9月14日にAmazon.co.jpでの取扱開始】) 5 42 11 甲12(発明の名称を「ヘアキャッチャー」とする公開特許公報【特開20 09-52357,平成21年3月12日公開】) 12 甲13(「パナソニック ささっとキレイ防汚キャッチャー」【平成27年 5月7日にAmazon.co.jpでの取扱開始】) 5 13 甲14(「ヘアキャッチャーZXH」【平成13年頃販売開始】) 43 (別紙) 被告意匠(被告)目録 【平面図(写真)】 【平面図( 13 甲14(「ヘアキャッチャーZXH」【平成13年頃販売開始】) 43 (別紙) 被告意匠(被告)目録 【平面図(写真)】 【平面図(図面)】 5 【斜視図(写真)】 【斜視図(図面)】

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