平成13(ネ)245 住友軽金属工業保険金請求

裁判年月日・裁判所
平成14年4月24日 名古屋高等裁判所
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判決文本文13,078 文字)

主文 1 1審原告らの控訴及び当審における請求の拡張に基づき,原判決を次のとおり変更する。 (1) 1審被告は,1審原告Aに対し,金1836万円及びこれに対する平成9年7月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (2) 1審被告は,1審原告Bに対し,金1711万5000円及びこれに対する平成10年10月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (3) 1審被告は,1審原告Cに対し,金2111万7000円及びこれに対する平成10年10月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (4) 1審原告らのその余の請求(当審において拡張された請求を含む。)をいずれも棄却する。 2 1審被告の控訴を棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審ともこれを3分し,その2を1審原告らの負担とし,その余を1審被告の負担とする。 4 この判決は,1項(1)ないし(3)に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 1審原告ら(1) 原判決を次のとおり変更する。 ア 1審被告は,1審原告Aに対し,6120万円及びこれに対する平成9年7月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 イ 1審被告は,1審原告Bに対し,6120万円及びこれに対する平成10年10月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 ウ 1審被告は,1審原告Cに対し,6680万円及びこれに対する平成10年10月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (当審において,1審原告Cは,請求金額を6120万円から6680万円に拡張し,かつ,1審原告ら全員は,遅延損害金の割合を年5分から年6分に拡張した。)(2) 1審被告の控訴を棄却する。 ( え。 (当審において,1審原告Cは,請求金額を6120万円から6680万円に拡張し,かつ,1審原告ら全員は,遅延損害金の割合を年5分から年6分に拡張した。)(2) 1審被告の控訴を棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも1審被告の負担とする。 (4) 仮執行宣言 2 1審被告(1) 原判決中1審被告の敗訴部分を取り消す。 (2) 上記取消しにかかる1審原告らの請求をいずれも棄却する。 (3) 1審原告らの控訴及び当審において拡張された請求をいずれも棄却する。 (4) 訴訟費用は,第1,2審とも1審原告らの負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,1審被告の従業員であった亡D(以下「亡D」という。),亡E(以下「亡E」という。)及び亡F(以下,「亡F」といい,上記3名を併せて「亡Dら」という。)の各妻が,1審被告が亡Dらを被保険者として訴外日本生命保険相互会社ほか8社との間で締結した団体定期保険契約に基づき,亡Dらの死亡によって1審被告が支払を受けた生命保険金について,それが遺族である各妻に支払われるべきものであるとして,1審被告に対し,それぞれ保険金全額に相当する金員の支払を請求した事案であり,原審が,1審原告らの請求を一部認容しその余は棄却したため,当事者双方が控訴したものである。 2 争いのない事実等,争点及び当事者の主張は,以下に原判決を改訂し,当審主張を付加するほか,原判決「事実及び理由」の「第二事案の概要」の一,二項及び「第三争点についての当事者の主張」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 原判決の改訂(1) 原判決6頁5行目の「各団体定期保険契約」」の後に「又は「本件団体定期保険契約」」を加える。 (2) 同10頁10行目の「死亡保険金として」から11頁2行目末尾までを次のとおり改める。 「死亡保険金と 判決6頁5行目の「各団体定期保険契約」」の後に「又は「本件団体定期保険契約」」を加える。 (2) 同10頁10行目の「死亡保険金として」から11頁2行目末尾までを次のとおり改める。 「死亡保険金として,亡D及び亡Eにつきそれぞれ合計6120万円,亡Fにつき6090万円(乙18,20ないし23)の支払を受けた。その内訳は,原判決別紙保険目録記載(ただし,亡Fについては,保険金額が増額及び減額された平成6年12月1日以降の死亡であるため,同目録の括弧内の金額であるが,増額契約の責任開始日以前の死亡,あるいは病気療養中などの理由により,第一生命からは240万円,協栄生命からは250万円,日本生命からは1270万円,第百生命からは150万円の限度で支払われた。)のとおりである。(亡F分につき,乙18,20ないし23)」(3) 同56頁8行目から9行目にかけての「1164万9000円」を「1164万円」と,同行目の「1094万3000円」を「1093万4000円」と,それぞれ改める。 4 1審原告らの当審主張(1) 1審原告Cの請求金額について(請求拡張の原因)亡Fが死亡したのは,平成6年12月21日であるところ,同月1日をもって,本件各団体定期保険契約の保険金の総額は6680万円に増額された。 よって,1審原告Cは,上記保険金全額(ほかに(2)の遅延損害金)を請求する。 (2) 遅延損害金の割合(請求拡張の原因)1審被告は株式会社であり,本訴請求の元本債権は商事債権であるから,1審原告らは,1審被告に対し,商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (3) 明治44年の商法改正前における親族主義の下においては,企業が保険契約を締結して保険金を従業員の福利厚生に利用できるようにすることを目的として,同意主義への改正が提案され の支払を求める。 (3) 明治44年の商法改正前における親族主義の下においては,企業が保険契約を締結して保険金を従業員の福利厚生に利用できるようにすることを目的として,同意主義への改正が提案されていたもので,従業員に付保して企業が保険金を利得することは全く考えられていなかったことは明らかである。 (4) 同意主義の濫用を防止するためには,同意主義においても被保険者の被保険利益が重視されなければならない。生命保険契約において,被保険者とは付保されるものとして被保険利益の主体であると同時に,保険の受益者たるべきものである。 (5) 原判決は,何故,社会的に相当な金額が遺族に対して支払われれば団体定期保険契約が公序良俗に反しなくなるのか,その理由を示していない。 原判決の論旨を前提にしても,団体定期保険契約の本来の目的は,従業員の福利厚生にあるのであるから,保険契約が本来の目的とは異なる目的,方法で利用されていれば,公序良俗に違反し許されないのであり,そこには,社会的に相当な金額が遺族に支払われているかどうかという観点は持ち込まれないはずである。 (6) 原判決は,何故,団体定期保険契約が公序良俗に反しないというために遺族に支払われるべき保険料相当額が保険金総額の2分の1が相当であるかという点については,全く説明していない。 1審被告は,度重なる大蔵省の行政指導や生命保険協会の申合せを無視して,多数の生命保険会社との間において従業員の生命と人格を無視して,従業員の生命を経済取引の材料にして保険契約を繰り返してきたものというほかはなく,このような場合においては,保険金相当額は被保険者の遺族に全額引き渡されるべきであり,そうでなければ公序良俗違反を免れないものというべきである。 ところが,原判決は,亡Dらの死亡保険金のうち,1審被告がそれぞれ3 おいては,保険金相当額は被保険者の遺族に全額引き渡されるべきであり,そうでなければ公序良俗違反を免れないものというべきである。 ところが,原判決は,亡Dらの死亡保険金のうち,1審被告がそれぞれ3000万円近くを取得するという不当な結論を導き出している。その理由として原判決は,「1審被告においては,3000名を超える従業員全員を被保険者として本件各団体定期保険に加入し,これを継続することにより毎年度多額の保険料を負担して恒常的に持ち出しをしているものであり,前記のように従業員の死亡保険金のうち,半分近くを取得したとしても,何ら利得を得るものではないことからすれば,福利厚生措置としての本件各団体定期保険契約の継続の費用に充当するためのものとして,その取得を認めることに不都合はないというべきである。」旨述べている。これは,1審原告らが繰り返し主張・立証してきた団体定期保険の支分契約性を無視しているだけでなく,死亡した従業員の保険金を会社が損失補填に充てたり,他の従業員の保険料の支払いにあてることを厳しく批判している原判決の判示部分とも矛盾する判断である。 (7) 原判決は,遺族に対して支払われるべき社会的に相当な金額を3000万円としているが,その算定基準を示していない。 (8) 原判決が,1審原告らへの保険金引渡金額から既払分の退職金額を控除したことは,以下の理由により不当である。 アそもそも従業員が退職するという事実と団体定期保険金が支給されるという事実の間には何ら関連性がないのであるから,支給された団体定期保険金から既払退職金を控除するという論理構造そのものが成り立ち得ないものである。 退職金の支払原資は,団体定期保険金からの充当など全く予定せず,退職給与引当金や適格退職年金制度により賄われていたことは,原判決も明確に認定している う論理構造そのものが成り立ち得ないものである。 退職金の支払原資は,団体定期保険金からの充当など全く予定せず,退職給与引当金や適格退職年金制度により賄われていたことは,原判決も明確に認定している。 イ退職金の法的性格については,今日,労働協約等により使用者に支払義務があるものは賃金と認められ,実質的にも賃金の後払的性格を有することは争いがない。これに対して,福利厚生給付とは,使用者が労働の対償としてではなく,労働者の福利厚生のために支給する利益または費用であり,典型的には資金給付,住宅貸与等があげられる。 とすれば,退職金は福利厚生給付とは本来一線を画されるべき概念の制度というべきであり,原判決も強調する「従業員の死亡の場合に福利厚生制度に基づいて支払われる」団体定期保険制度により充当が予定されるべき制度とはいえないというべきである。 ウ従業員が死亡しないまま退職した場合には,団体定期保険金は受領できないため退職給与引当金等から取り崩すことになる。しかし,従業員が死亡して退職した場合には退職給与引当金等からの取り崩しをすることなく団体定期保険金から充当できることになるならば,企業の利益という見地からすれば後者の方が得をすることになり,企業としても従業員の死亡退職を望むことになりかねず,本末転倒な結果を招くことになる。 エ退職給与引当金及び退職年金基金の積み立てに税制上の優遇措置がとられている上に,さらに退職金の財源確保のために団体定期保険契約の保険料の損金計上という優遇措置を認めることは,企業に二重の税制上の恩典を与えることになり,不当・過剰な優遇にすぎ,税制上不公平というべきである。 オ原判決は,「契約の趣旨(付保目的)についての合意の内容に照ら」すという理由から,「1審被告の社内規定に基づいて・・・1審原告らに支払われた給 当・過剰な優遇にすぎ,税制上不公平というべきである。 オ原判決は,「契約の趣旨(付保目的)についての合意の内容に照ら」すという理由から,「1審被告の社内規定に基づいて・・・1審原告らに支払われた給付分にも死亡保険金による充当が認められる」と結論づけている。 しかし,本件での契約の趣旨(付保目的)についての合意内容を分析するならば,原判決も認めるように,そもそも契約の趣旨(付保目的)についての合意すらほとんどなされていない以上,契約の趣旨からしても死亡退職金への充当を認めることは誤りというべきである。 この点,確かに日本生命との間では平成5年や同6年の契約申込書等に記載された趣旨からすれば死亡退職金として最高755万円の限度で充当する合意があったと認めることも論理的にはありうるであろう。しかし,そもそも1審被告は退職金の支払原資を退職給与引当金や適格退職年金制度により賄うことを予定し,現実にもこれらにより賄っているのである。とすれば,そもそも死亡退職金への充当目的を合意すること自体が不合理であり,許されないというべきである。 また,仮に退職金への充当が許されると解したとしても,団体定期保険金から少なくとも死亡退職金への充当は日本生命との間の合意である755万円分に限定されるべきであり,それ以上に充当を認めることは許されないと解することが原判決の論理に一貫するはずである。それ以外の生命保険会社との間では何ら死亡退職金への充当の合意は認められないし,むしろ弔慰金等への充当を合意していると認められるものもある。 (9) 1審被告の当審主張(3)に対する反論ア 1審被告は,原審の答弁書において,団体定期保険が支分契約性という特性を有することを認めているが,保険金の帰属については,契約当事者である団体に帰属するものと主張しており,1審被告の主 する反論ア 1審被告は,原審の答弁書において,団体定期保険が支分契約性という特性を有することを認めているが,保険金の帰属については,契約当事者である団体に帰属するものと主張しており,1審被告の主張は矛盾している。 イ 1審被告のいう,当該年度支払保険料総額から受取保険金と配当金の総額を差し引くと赤字になり利得が存しないとの弁解は,保険制度を理解しない間違った主張である。 すなわち,保険制度というものは保険会社の存立を前提とするものであるから,保険金と保険料の収支が同額ということはあり得ず,保険料総額が保険金総額を上回るよう設定されるものである。 したがって,当該年度の保険収支が保険契約者である1審被告にとって赤字であったとしても,不労な利得の有無を検討するにあたっては何らの意味も持たないものである。 ウ 1審被告が亡Dのために支払った保険料の合計額は239万5589円となるが, そのうち約80パーセントは配当金として払い戻される。他方,1審被告が亡Dの死亡により受取った保険金は6120万円であり,亡Dの遺族が1審被告から受け取ったのは,退職金1094万3000円,葬祭料65万6000円及び慶弔金5万円にすぎない。さらに,そもそも,この退職金は適格退職年金基金と退職給与引当金で全額賄われ遺族に直接支払われている。 仮に,保険金から退職金,葬祭料,慶弔金を支出したとしても,1審被告は亡Dの退職金等の4倍以上の利得を得たことになり,1審被告が亡Dの死亡によりいかに不労な利得を得ることができたかが分かる。さらに,死亡退職金は,在職中に死亡したことにより付加されて支払われる金員ではないから,厳密にいえば,在職中に死亡したことにより付加されて支払われた金員は葬祭料65万6000円と慶弔金5万円に過ぎず,これは亡Dの保険金の1%に過ぎない。 により付加されて支払われる金員ではないから,厳密にいえば,在職中に死亡したことにより付加されて支払われた金員は葬祭料65万6000円と慶弔金5万円に過ぎず,これは亡Dの保険金の1%に過ぎない。 (10) 1審被告の当審主張(4)に対する反論1審被告は,団体定期保険契約を締結することについて,1審被告には何らの保険契約のメリットがないかのように述べているが,事実に反する。 1審被告としても,長期にわたる低利の設備投資資金の供給先を生命保険会社に求めるとともに,生命保険会社が1審被告の株式を取得することは,安定株主として1審被告にとって大きなメリットである。さらに,最も重要なことは,1審被告の支払う団体定期保険料は全額損金に計上できるという税制上の優遇措置があるということである。バブル時期に生命保険金額や契約が増大している原因は,生命保険会社の競争だけでなく,1審被告の節税(脱税)対策でもあったことは明らかである。 (11) 1審被告の当審主張(5)に対する反論1審被告の上記主張は,団体定期保険契約と労働協約を混同する主張である。労働協約は,1審被告の社内規定であり,団体定期保険契約は,いうまでもなく労働協約とは別個の契約である。とりわけ,労働協約には業務上外の死亡について,何等の補償規定のない状況において,団体定期保険契約申込書や協定書・覚書に弔慰金として支払う旨の意思表示がある場合における保険金の帰属が問題になっているのである。労働協約に規定がないからという理由で,従業員の遺族の生活保障を目的とする団体定期保険金を1審被告が全額取得できるというのは社会通念上も到底許されない論外の主張である。 5 1審被告の当審主張(1) 1審原告Cの請求金額について亡F死亡時の本件各団体定期保険契約の保険金額は,前年と比較して第一生命が るというのは社会通念上も到底許されない論外の主張である。 5 1審被告の当審主張(1) 1審原告Cの請求金額について亡F死亡時の本件各団体定期保険契約の保険金額は,前年と比較して第一生命が40万円増額,協栄生命が320万円増額,日本生命が430万円増額,第百生命が50万円増額,日産生命が30万円減額の合計6680万円となっていたが,増額契約の責任開始日以前の死亡,あるいは病気療養中などの理由により,上記増額分については支払がなかったため,1審被告は,総額6090万円の保険金の支払を受けた。 したがって,1審原告Cの請求拡張の原因は,理由がない。 (2) 遅延損害金の割合1審原告らが本訴において元本債権として主張するものは,従業員の会社に対する請求権であり,商事債権となる理由はない。 したがって,1審原告らのこの点の請求拡張は理由がない。 (3) 団体定期保険契約は,万が一の事態に備え労働協約による給付の履行確保の手段の一つとして財源確保のために締結するものであり,死亡保険金を受領したからといって,協約を超えて保険金を遺族に支払う上乗せ制度ではない。いかに大企業といえども,いかなる事態が発生しても常に必ず補償の財源があるとは限らず,そのための保険制度であるが,幸いにして現在までのところ,1審被告ではそのような事態は生じておらず,保険収支は累積的に赤字であり,いわば余分な出費となっているのが実態であって,死亡保険金により企業が利得していることはない。原判決の判示するような従業員の生命を利用して他人が利得を得るに等しいというような実態は存在しない。 (4) 生命保険会社各社は,融資あるいは株式取得等のいわば見返りとして必ず保険シェアを要求してくるのが常であり,そのためだけに1審被告の株式を取得した生命保険会社もあるのが実情である。 しない。 (4) 生命保険会社各社は,融資あるいは株式取得等のいわば見返りとして必ず保険シェアを要求してくるのが常であり,そのためだけに1審被告の株式を取得した生命保険会社もあるのが実情である。 1審被告にとって保険金自体は大した意味を持っていたわけではなく,コスト負担の微増を意味するに過ぎないもので,金融機関へ支払う金利相当のコスト負担との認識であった。1審被告のみならず,大企業の80%前後が団体定期保険に加入していた事実からも,保険金額の増加は経営上,付き合い上のものであったことを物語る。 (5) 仮に,保険会社と保険契約者との間に原判決のいうような付保目的についての合意があったとしても,それは保険金を受け取ったときは社内規定に基づく給付金を支払うという内容に過ぎず,社内規定を超えて保険金の全部又は一部を遺族に支払うとの合意を含むものではない。 (6) 原判決のいう社会的に相当な金額が何を意味するのか明らかではないが,仮にそのような概念を肯定したとしても,団体定期保険は年齢,経歴,勤続年数の異なる全従業員を被保険者としているところ,画一的金額が遺族補償として社会的に相当な金額であるとすると不公平,不合理な結果となろう。現に退職金等の給付金額は亡Dら3名においてそれぞれ異なっているもので,遺族補償だけは同一とすべき理由はない。 (7) 団体定期保険制度の発足当時の社会情勢は,社会保険等未整備により遺族補償制度もなく,民間会社等においても就業規則,退職金規程等も未整備であり,また生命保険の普及も十分ではなかったものであり,その中で,団体定期保険の保険金が,直接的に遺族補償制度としての機能を持っていたであろうことは想像に難くないところである。しかし,その後,団体定期保険が1社独占ではなくなり,多数の保険会社の商品となるに及んで,団体定期 の保険金が,直接的に遺族補償制度としての機能を持っていたであろうことは想像に難くないところである。しかし,その後,団体定期保険が1社独占ではなくなり,多数の保険会社の商品となるに及んで,団体定期保険の国策的側面はなくなり,また公的遺族補償制度の整備,労働協約の整備等が進むに及び,団体定期保険の趣旨,目的は発足当初から大きく変質したものと考えられる。 団体定期保険は,もはや直接的遺族補償制度としての機能は持たず,予想を遙かに超えるような大規模災害等に備え,労働協約等による会社の給付金等の履行確保の原資確保の一つとしての機能を目的として契約されるものとなっているものと見るべきである。 よって,契約により1審被告が保険金受取人となることには何ら問題がない。 (8) 1審原告らは,保険金引渡しの根拠として,1審被告と被保険者との黙示の合意を主張するものであるが,原判決は,本件各保険会社と1審被告との間に保険金の全部又は相当部分の支払の合意を認定し,1審原告らが本件訴訟提起により受益の意思を表示したものと認定するが,両者は構造的に全く別のものというべきで,弁論主義に違反する。 (9) 1審原告らのその余の当審主張は争う。 第3 当裁判所の判断当裁判所も,1審原告らの本訴請求(当審において拡張された請求を含む)は,1審原告Aに対し1836万円及びこれに対する平成9年7月25日から,1審原告Bに対し1711万5000円及びこれに対する平成10年10月6日から,1審原告Cに対し2111万7000円及びこれに対する平成10年10月6日から,各支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきものと判断するが,その理由は,以下に原判決を改訂するほか,原判決「事実及び理由」の「第四争点に 6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきものと判断するが,その理由は,以下に原判決を改訂するほか,原判決「事実及び理由」の「第四争点に対する判断」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。 1 原判決の改訂(1) 原判決117頁7行目の「と超えている」を「を超えている」と,同133頁7行目の「経済的損失の」を「経済的損失を」と,同161頁6行目の「契約者」を「保険契約者」と,同166頁4行目の「一通票」を「一通」と,同170頁4行目の「契約者」を「保険契約者」と,同182頁12行目の「四二」を「四二の1ないし3,四三」と,同206頁4行目の「退職協定」を「退職金協定」と,同225頁10行目の「確認されているに」を「確認されている」と,同226頁4行目の「あったすれば」を「あったとすれば」と,それぞれ改める。 (2) 同228頁1行目の「これから」を「また,平成6年12月1日の契約更新によって保険金は6680万円になっていたが,亡Fについては,前記のとおり6090万円の限度で保険金が支払われたから,これから,」と改める。 (3) 同228頁3行目の「5871万0600円」を「5841万0600円」と改める。 (4) 同230頁13行目の「保険金6120万円」を「保険金,すなわち,亡D及び亡Eにつき6120万円,亡Fにつき6090万円」と改める。 (5) 同231頁5行目から6行目にかけての「2935万5300円」を「2920万5300円」と,同232頁6行目の「1835万1000円」を「1836万円」と,それぞれ改める。 2 当審主張に対する判断(1) 1審原告らの当審主張(1),1審被告の当審主張(1)について前記第2の3(2)に認定のとおり,亡F死亡時点においては,本件各 1836万円」と,それぞれ改める。 2 当審主張に対する判断(1) 1審原告らの当審主張(1),1審被告の当審主張(1)について前記第2の3(2)に認定のとおり,亡F死亡時点においては,本件各団体定期保険契約の保険金総額は6680万円に増額されていたものの,本件各保険会社から支払われた保険金は合計6090万円であり,この金額を前提とすると,1審原告Cに対する認容額は,引用にかかる原判決の認定判断(改訂部分を含む。)のとおりとなる。 1審原告らの上記主張は採用できない。 (2) 1審原告らの当審主張(2),1審被告の当審主張(2)について当裁判所は,1審原告らの請求は,本件各保険会社と1審被告との間の契約の趣旨(付保目的)についての合意に基づき認められるものと判断するものであり,上記合意は,少なくとも一方の当事者が商人たる株式会社によってなされているから,商行為に当たり,同合意に基づく請求権については,商事法定利率年6分の遅延損害金が支払われるべきものである。 1審被告の上記主張は採用できない。 (3) 1審原告らの当審主張(5),(6)について引用にかかる原判決の認定によれば,団体定期保険契約の主たる目的は,福利厚生措置によって遺族に支払う弔慰金,死亡退職金,労災上乗せ補償金等の給付に充てることにあるところ,団体定期保険契約を毎年維持し続けるためには相当額の経費の支出が必要となり,保険金額が高額になるほどその経費は増大するものであり,保険契約者における団体定期保険契約の収支は,保険会社から支払われる配当金及び保険金の全額をその年度の保険料の支払に充当しても通常赤字になるものであるから,保険金額が社会的に相当な金額を超える場合には,原則として同相当額を超える部分を上記経費に充てることは許容すべきである。ただし,保険金額がさら 保険料の支払に充当しても通常赤字になるものであるから,保険金額が社会的に相当な金額を超える場合には,原則として同相当額を超える部分を上記経費に充てることは許容すべきである。ただし,保険金額がさらに大きくなり,上記社会的に相当な金額の2倍を上回るときには,上記原則に従うならば,1審被告が保険金額の2分の1を超えて取得することとなり,上記団体定期保険契約の主たる目的に沿わないものというべきであるから,保険金額の2分の1の限度において上記経費に充てることを許容すべきである。そうすると,保険金額が大きくなればなるほど,保険契約者が取得する金額が大きくなるが,このことは,同取得額が保険料の支払に充当され,他方で遺族に支払われる金額も大きくなることに鑑みると,不当なことではないと解される。 以上のとおり考えると,保険金額が社会的に相当な金額を超えるときには,原則として上記相当な金額,ただし,保険金額が上記相当額の2倍を上回るときには保険金額の2分の1が,遺族に支払われるならば,団体定期保険契約は公序良俗に反しないものと解することは,相当であるといわなければならない。 なお,団体定期保険契約に支分契約性があることから,直ちに,保険金相当額が全額被保険者に支払われるべきことを結論づけることはできないものと解される。 そうすると,1審原告らの上記主張は採用できない。 (4) 1審原告らの当審主張(7),1審被告の当審主張(6)について引用にかかる原判決認定の事情,特に,本件各団体定期保険契約の保険金総額,1審被告の規模,福利厚生制度の内容のほか,現在の社会の状況等一切の事情を総合考慮すると,本件において,上記社会的に相当な金額は亡Dらにつきいずれも3000万円と認めるのが相当であり,亡Dらにつき,個別に異なる金額とすべきものとする事情は,これを認め 状況等一切の事情を総合考慮すると,本件において,上記社会的に相当な金額は亡Dらにつきいずれも3000万円と認めるのが相当であり,亡Dらにつき,個別に異なる金額とすべきものとする事情は,これを認めるに足りる証拠はない。算定基準を示していない旨の1審原告らの非難は当たらない。 (5) 1審原告らの当審主張(8)について引用にかかる原判決の認定判断のとおり,本件各保険会社と1審被告との保険契約の趣旨(付保目的)についての合意は,保険金の全部又は一部を福利厚生措置によって遺族に支払う弔慰金,死亡退職金,労災上乗せ補償金等の給付に充てることを内容とするものであるから,既払の死亡退職金は,遺族に対して支払われるべき保険金相当額から控除するのが相当である。 1審原告らは,退職金は賃金の後払的性格を有し,福利厚生措置には含まれないとして,その控除をすべきでない旨主張するが,上記合意においては,保険金の充当されるべき対象として死亡退職金を含むことがその内容となっているから,「福利厚生措置」という文言の意味によって,退職金を控除することが否定されるものとは解されない。 また,1審原告らは,仮に退職金への充当が許されると解したとしても日本生命との間の合意である755万円に限定されるべきである旨主張するが,引用にかかる原判決の認定事実のとおり,本件各団体定期保険契約においては,その契約の趣旨が,日本生命との間で755万円につき死亡退職金に充当することが合意されていたほかは,業務外の死亡に関しては,死亡退職金を含む福利厚生制度に基づく給付に充当することが合意されていただけで,具体的な使途は特定されていなかったものであるから,上記主張は採用できない。 1審原告らの上記主張中のその余の部分も,引用にかかる原判決の認定判断(改訂部分を含む。)に照らして採用で ていただけで,具体的な使途は特定されていなかったものであるから,上記主張は採用できない。 1審原告らの上記主張中のその余の部分も,引用にかかる原判決の認定判断(改訂部分を含む。)に照らして採用できない。 (6) 1審被告の当審主張(8)について原判決は,本件各保険会社と1審被告との間の保険契約の趣旨(付保目的)についての合意を第三者のためにする契約と認定して同契約に基づく請求を認容したものであるところ,当審の第1回口頭弁論期日において,当事者双方は,原判決のとおり原審口頭弁論の結果を陳述したことは当裁判所に顕著である。 そうすると,原審においては,上記契約に基づく請求権が選択的に併合されていたものと認められ,その請求原因は,そのような法的構成を明示して主張されていなかったとしても,原審の口頭弁論に顕れていたものと解するのが相当であるから,1審被告の上記主張は採用できない。 (7) その他,1審原告ら及び1審被告は当審においてるる主張し,証拠(甲284ないし288,乙18ないし23,枝番号を含む。)を提出するが,いずれも引用にかかる原判決の認定判断(改訂部分を含む。)及び上記判断を覆すに足りない。 第4 結論よって,1審原告らの控訴及び当審における請求の拡張に基づき,以上と異なる原判決を変更し,1審被告の控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第3部裁判長裁判官福田晧一裁判官藤田敏裁判官倉田慎也 倉田慎也

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