主文 被告人を懲役1年に処する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の全部の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,A株式会社B支社C地区連絡会に所属するD郵便局長であり,同地区連絡会の地区統括局長等を務めていた者であるが,A株式会社の内部通報制度に基づき,被告人の二男であり,同地区連絡会に所属するE郵便局長のFが,E郵便局において社内ルールに違反するなどしたとして行われた内部通報につき,同地区連絡会に所属するG郵便局長のH(当時44歳)らによるものではないかと疑い,Hに同内部通報を行ったことを認めさせるなどしようと考え,平成31年1月24日午前8時51分頃から同日午前10時9分頃までの間,福岡県鞍手郡a町b番地c所在のD郵便局において,Hに対し,「今回の件が後で出てきたら,お前,お前のそこに名前絶対ないね。」「絶対ないね。お前,その時あったらどうする。」「辞めるか。そのくらいの断言できるね。」「今なら許す。今なら許す。最後ぞ。誰にも言わん。5人おろうが。5人。」「クビ賭けきーか。」「局長の名前が載っちょったら,そいつらは,俺が辞めた後も絶対潰す。絶対どんなことがあっても潰す。 辞めさせるまで追い込むぞ,俺は。辞めてもな。」「そこに,お前の名前は無いねっち,俺は言いよう。」「あるいは,そこに名前を載っちょった奴を,お前は知らんか。」などと言って,Hが同内部通報を行ったことを直ちに認めるなどしなければ,後に同人が同内部通報を行ったことが明らかになった際に同人にG郵便局長を辞めさせるなどする旨申し向け,Hに同内部通報を行ったことを認めることなどを要求し,その要求に応じなければ,Hの自由及び名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない 明らかになった際に同人にG郵便局長を辞めさせるなどする旨申し向け,Hに同内部通報を行ったことを認めることなどを要求し,その要求に応じなければ,Hの自由及び名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨を告知して脅迫し,同人に義務のないことを行わせようとしたが,同人がこれに応じなかったため,その目的を遂げなかった。 (量刑の理由) 本件は,郵便局長である被告人が,自らの二男についてなされた内部通報を行ったのが被害者なのではないかと考え,郵便局長である被害者に対し,「局長の名前が載っちょったら,そいつらは,俺が辞めた後も絶対潰す」「辞めさせるまで追い込むぞ」などと言い,内部通報を行ったことを認めさせようとしたがこれを遂げなかった,という強要未遂の事案である。 被告人は,前記内部通報を行ったのは郵便局長であると考え,郵便局長が内部通報という方法を採ったことに強い憤りを抱き,通報者の特定をしないよう関係者から厳重に注意されていたにもかかわらず本件に及んでおり,本件は,内部通報制度を蔑ろにするものである。その態様は,被害者の人事評価等について権限を有する被告人が,内部通報を行ったことを被害者が認めなければ被害者を辞めさせるなどと,相当の時間にわたって何度も述べるものであり,脅迫の程度が強く,執拗である。未遂にとどまったとはいえ,被害者は強い恐怖を感じており,結果を軽視することはできない。これらの犯情に照らすと,被告人の刑事責任は軽くない。 ただし,被告人が事実を認めて謝罪と反省の弁を述べるほか,被害弁償の意向を示していること,被告人に前科前歴がないことなど被告人のために酌むべき一般情状が認められ,これらの事情を考慮すると,今回は執行猶予を付すのが相当である。 (求刑懲役1年)令和3年6月8日福岡地方 前科前歴がないことなど被告人のために酌むべき一般情状が認められ,これらの事情を考慮すると,今回は執行猶予を付すのが相当である。 (求刑 懲役1年)令和3年6月8日福岡地方裁判所第3刑事部裁判官 林 直 弘
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