平成14(ワ)416 損害賠償反訴請求

裁判年月日・裁判所
平成15年8月29日 津地方裁判所
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判決文本文7,260 文字)

主文 1 反訴被告は,反訴原告に対し,金52万6413円及びこれに対する平成14年11月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 反訴原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを5分し,その2を反訴原告の負担とし,その余を反訴被告の負担とする。 4 この判決は,1項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 反訴原告(1) 反訴被告は,反訴原告に対し,70万1455円及びこれに対する平成14年11月27日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は反訴被告の負担とする。 (3) 仮執行宣言 2 反訴被告(1) 反訴原告の請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は反訴原告の負担とする。 第2 当事者の主張 1 請求原因(1) 当事者ア反訴原告は,自動車の運搬,レッカー移動等を目的とする有限会社である。 イ反訴被告は,缶コーヒーなどの清涼飲料の製造及び販売等を目的とする株式会社である。 (2) 反訴被告の不法行為責任及び契約締結上の過失ア反訴原告と反訴被告は,平成7年6月9日,反訴原告本店所在地の駐車場に反訴被告所有の自動販売機(以下「本件自販機」という。)を設置し,反訴原告が電気使用料金を負担する代わりに販売された商品1本あたり20円の販売リベートを反訴被告が反訴原告に支払うという内容の,自動販売機設置契約を締結した(以下「本件1契約」という。)。 イ反訴被告のS営業所の従業員Aは,本件1契約の締結に際し,自動販売機設置に伴う電気使用料金は僅かであって反訴原告に利益が生ずると強調し,電気使用料金や売上について具体的な見込みを何ら示さなかったため,反訴原告はさほど電気使用料金もかからず販売リベートにより利益を得られると信じて 用料金は僅かであって反訴原告に利益が生ずると強調し,電気使用料金や売上について具体的な見込みを何ら示さなかったため,反訴原告はさほど電気使用料金もかからず販売リベートにより利益を得られると信じて本件1契約の締結に至った。 ところが,本件自販機の作動に伴う電気使用料金の負担により,後記(5)アのとおり,反訴原告は多大な損害を被った。 本件自販機の作動に伴う電気使用量は反訴原告の事務所の電気使用量に合算されて電気使用料金が計算されるため,原告は,実際にどの程度の使用量になるか,どの程度の電気使用料金が費やされているかは全くわからない。 一方,反訴被告にとっては,自動販売機による商品販売事業を展開しているから,本件自販機の作動に伴う電気使用料金がどのくらいかかるのか,地域性からどれくらいの商品が販売できるのかについて,認識しているか,認識できる情報を有しているといえる。 したがって,Aの上記勧誘は,故意に情報を隠して反訴原告に誤解を生じさせるもので,詐欺行為に当たる。Aの上記行為は反訴被告の事業の執行につきなされたものであるから,反訴被告は民法715条により責任を負う。 ウまた,反訴被告は,自販機業者として,本件自販機の設置に伴う予想される収支を説明した上で,自販機設置の契約締結の勧誘をすべき義務があるのに,これを怠り,反訴原告に対し本件1契約を締結させた点は,契約締結上の過失にもあたる。 (3) 反訴被告の不法行為責任(仮定的主張)ア仮に,反訴原告と反訴被告との間で本件1契約が締結されていないとしても,反訴被告は,Bに対し,平成7年6月9日,反訴原告本店所在地に反訴被告所有の自動販売機を設置して反訴被告の発売する商品のみを入れて販売するとの条件で反訴被告所有の自動販売機を貸し渡し(以下「本件2契約」という Bに対し,平成7年6月9日,反訴原告本店所在地に反訴被告所有の自動販売機を設置して反訴被告の発売する商品のみを入れて販売するとの条件で反訴被告所有の自動販売機を貸し渡し(以下「本件2契約」という。),反訴原告とBは,そのころ,反訴原告本店所在地において,同所の駐車場(反訴原告所有)に反訴被告所有の本件自販機を設置し,反訴原告が電気使用料金を負担する代わりに販売された商品1本あたり20円の販売リベートをBが反訴原告に支払うという内容の自動販売機設置契約を締結した(以下「本件3契約」という。)。 イ反訴被告のS営業所の従業員Aは,本件3契約の締結を誘引し,自動販売機設置に伴う電気使用料金は僅かであって反訴原告に利益が生ずると強調し,電気使用料金や売上について具体的な見込みを何ら示さなかったため,反訴原告はさほど電気使用料金もかからず販売リベートにより利益を得られると信じて本件3契約の締結に至った。 ところが,本件自販機の作動に伴う電気使用料金の負担により,後記(5)アのとおり,反訴原告は多大な損害を被った。 本件自販機の作動に伴う電気使用量は反訴原告の事務所の電気使用量に合算されて電気使用料金が計算されるため,原告は,実際にどの程度の使用量になるか,どの程度の電気使用料金が費やされているかは全くわからない。 一方,反訴被告にとっては,自動販売機による商品販売事業を展開しているから,本件自販機の作動に伴う電気使用料金がどのくらいかかるのか,地域性からどれくらいの商品が販売できるのかについて,認識しているか,認識できる情報を有しているといえる。 したがって,自動販売機業者であって,自動販売機設置にかかる契約締結の誘引をなす反訴被告としては,自動販売機を設置するであろう契約締結誘引対象者である反訴原告に対して,自動 しているといえる。 したがって,自動販売機業者であって,自動販売機設置にかかる契約締結の誘引をなす反訴被告としては,自動販売機を設置するであろう契約締結誘引対象者である反訴原告に対して,自動販売機設置に伴うリスクすなわち支払うべき電気使用料金の説明をなすべき義務があるというべきで,これを怠った反訴被告の従業員であるAの上記契約締結の誘引は,不法行為に該当する。Aの上記行為は反訴被告の事業の執行につきなされたものであるから,反訴被告は民法715条により責任を負う。 (4) 反訴原告は,本件自販機に多大な電気使用料金を要することを知り,反訴被告のS営業所の所長に対し,その正確な情報を求め,かつ対処方法を尋ねたにもかかわらず,同所長にあっては,何らの回答もなく,反訴原告においてやむなく本件自販機に省エネタイマーを設置したところ,反訴被告は,反訴原告に対し何らの要請もしないまま,平成14年5月21日,津地方裁判所に,動産引渡断行仮処分申請をした。反訴被告のこの対応は,反訴原告において対処しようと交渉を申し入れたにもかかわらず,それを無視して反訴原告への事前交渉もないまま,いきなり同申立てをしたというもので,明らかに濫申立てというべきものであり,不法行為に該当する。 (5) 反訴原告の損害ア Aの上記(2)もしくは(3)の行為により,反訴原告は販売リベートという利益を得たものの,これを上回る電気使用料金の負担を負うことになった。すなわち,販売リベートは平成7年7月から平成14年6月までで17万4160円であるのに対し,同期間に本件自販機の作動によって反訴原告が負担した電気使用料金は77万5615円であり,両者の差額60万1455円が反訴原告の損害となる。 イまた,反訴被告の上記(4)の行為により反訴原告は,動産引渡断行仮処分申 動によって反訴原告が負担した電気使用料金は77万5615円であり,両者の差額60万1455円が反訴原告の損害となる。 イまた,反訴被告の上記(4)の行為により反訴原告は,動産引渡断行仮処分申請への対応,弁護士への依頼(着手金10万円),裁判所への出頭をよぎなくされた。反訴原告は法的手続を取ることを余儀なくされ,少なくとも10万円の損害を被った。 (6) よって,反訴原告は,反訴被告に対し,70万1455円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成14年11月27日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金(もしくは民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求める。 2 請求原因に対する認否(1) 請求原因(1)の事実は認める。 (2) 同(2)の事実は否認する。 (3) 同(3)のうち,アの事実は認め,その余の事実は否認する。 (4) 同(4)の事実は否認ないし争う。 (5) 同(5)のうち,反訴原告が販売リベートを得たこと及びその額は認め,その余の事実は否認する。 (6) 同(6)は争う。 第3 当裁判所の判断 1 請求原因(1)の事実は当事者間に争いがない。 2 請求原因(2)アの事実については,これを認めるに足る証拠はない。 反訴原告代表者は,これに沿う供述をするが,C自動販売機貸付契約書(甲2)で,貸主が反訴被告,借主がBとされていること,Bが反訴原告にリベートを支払っていたこと(反訴原告代表者)からして,採用できない。 3 請求原因(3)アの事実は当事者間に争いがない。 4 そこで,請求原因(3)イ及び(5)アの事実につき検討する。 (1) 証拠(甲8,乙2の1・2,3の1ないし6,5,証人A,反訴原告代表者)によれば,以下の事実が認められる。 ア反訴被告の従業員であるAは,平成7年6 (5)アの事実につき検討する。 (1) 証拠(甲8,乙2の1・2,3の1ないし6,5,証人A,反訴原告代表者)によれば,以下の事実が認められる。 ア反訴被告の従業員であるAは,平成7年6月ころ,反訴原告の事務所を訪れ,自動販売機の設置を勧めた。反訴原告代表者が「商品の入れ替えが面倒なので,何もしなくていいのなら自動販売機をおいてもいい。」と述べたところ,Aは,「自動販売機の維持管理や商品の詰め替えは反訴被告もしくはその代理店が行い,反訴原告は自動販売機が消費する電気使用料金を負担する代わりに売上げ1本あたり20円のリベートを受け取ることになる。」と説明したが,具体的な電気使用料金の額や売上げ見込みについては説明しなかった。当時,Aは,自動販売機を設置すると,1か月当たり約6000円の電気使用料金がかかることは知っていたが,反原告代表者は,自動販売機の設置によりどの程度の電気使用料金がかかるかを全く知らなかった。 イ反訴原告がAの提案を了解したため,Bと反訴被告が本件2契約を,反訴原告とBが本件3契約を締結することとなり,以後,Bが本件自販機の商品の詰め替えを行い,反訴原告に売上げ1本あたり20円のリベートを支払うようになった。 Bが反訴原告に支払ったリベートの平成13年7月から平成14年5月までの月間平均は2073円である。 ウ反訴原告は,本件自販機の作動に伴う電気使用量は反訴原告の事務所の電気使用量に合算されて電気使用料金が計算されるため,実際にどの程度の使用量になるか,どの程度の電気使用料金が費やされているかがわからなかった。 ところが,反訴原告は,平成13年夏頃,Dの従業員Eから,「本件自販機は電気使用料金の負担が大きく,省エネタイマーを設置することにより,電気使用料金を大幅に抑え ているかがわからなかった。 ところが,反訴原告は,平成13年夏頃,Dの従業員Eから,「本件自販機は電気使用料金の負担が大きく,省エネタイマーを設置することにより,電気使用料金を大幅に抑えることができる。本件自販機の場合,おおよそ1か月に5000円の電気使用料金がかかり,販売リベートが1か月当たり2000円とすると,毎月3000円の赤字である。」旨を伝えられ,本件自販機に予想外の電気使用料金がかかることを知った。 そこで,反訴原告は,そのころ,同従業員のアドバイスに従い,本件自販機に省エネタイマーを設置した。 エ反訴被告は,本件自販機に省エネタイマーが設置されたことを知り,反訴原告に対し,その取り外しを求めたが,反訴原告がこれに応じなかったため,反訴被告は,平成14年5月21日,当庁に本件自販機の仮の引渡を求める断行の仮処分申請(平成14年(ヨ)第33号)をした。 オ反訴原告は,平成14年7月ころ,Dに本件自販機の作動によって平成7年7月から平成14年6月までの間に負担した電気使用料金の試算を中部電力の資料などをもとに求めたところ,平成7年7月から同年12月までの分が5万6918円,平成8年分が11万0614円,平成9年分が11万4457円,平成10年分が11万1829円,平成11年分が10万8858円,平成12年分が10万9565円,平成13年1月から8月までの分が6万7574円で,同年9月から12月までの分が4万1185円で,平成14年1月から6月までの分が5万4617円と推定された(乙2の1・2)。 なお,反訴原告は,「Aが自動販売機設置に伴う電気使用料金は僅かであって反訴原告に利益が生ずると強調した。」旨主張し,これに沿う反訴原告代表者の供述は存するが,反対趣旨の証人Aの供述に照らし採用で なお,反訴原告は,「Aが自動販売機設置に伴う電気使用料金は僅かであって反訴原告に利益が生ずると強調した。」旨主張し,これに沿う反訴原告代表者の供述は存するが,反対趣旨の証人Aの供述に照らし採用できない。 (2) 上記認定の事実によれば,反訴原告は自動車の運搬等を目的とする有限会社で清涼飲料の販売などを主たる業務とするものではないうえ,本件自販機の作動に伴う電気使用量は反訴原告の事務所の電気使用量に合算されて電気使用料金が計算されるため,原告には実際にどの程度の使用量になるか,どの程度の電気使用料金が費やされているかがわからない一方,反訴被告は清涼飲料製造販売の業者で,その従業員Aは本件自販機の設置により1か月当たり約6000円の電気使用料金がかかることを知っていたのであるから,Aとしては,反訴被告所有にかかる本件自販機の設置に関わる本件3契約締結を誘引するに当たり,反訴原告が本件自販機の設置によりどの程度の電気使用料金の負担を負うことになるのか,その負担はどの程度の売上げがあれば補填されるのかを具体的に説明し,反訴原告に予想外の不利益を及ぼさないようにすべき信義則上の義務があったというべきである。 しかるに,Aは,反訴原告代表者に対し,電気使用料金の負担の程度及びそれを補填できる売上げの額につき何ら説明をせずに本件3契約締結の誘引をし,反訴原告が本件3契約を締結したため,反訴原告において予想外の電気使用料金を負担することになったものであり,この点につきAに上記の信義則上の義務違反があって,不法行為を構成すると認められる。 反訴被告はAの使用者であり,Aは反訴被告の事業の執行につき本件3契約締結の誘引をなしたものであるから,反訴被告は民法715条の責任を負う。 (3) Aの上記不法行為により,反訴原告が被った損害については,反訴 使用者であり,Aは反訴被告の事業の執行につき本件3契約締結の誘引をなしたものであるから,反訴被告は民法715条の責任を負う。 (3) Aの上記不法行為により,反訴原告が被った損害については,反訴原告が平成13年夏頃に本件自販機に予想外の電気使用料金がかかることを知り,同年8月末までには本件3契約を解約することが可能であったといえるから,本件自販機が設置された平成7年7月から平成13年8月末までの間に本件自販機にかかった電気使用料金から,Bから受け取ったリベートを差し引いた分がその損害であるというべきである。平成7年7月から平成13年8月末までの間に本件自販機にかかった電気使用料金は67万9815円であり,リベートの額は15万3402円(2073円×74月)と推定されるから,その損害額は52万6413円となる。 この点,反訴被告は,「反訴原告は独立の営業主体として契約内容を了承した上で本件3契約を締結したのであるから,そこから生じる利益ないし損失を反訴原告が負担するのは当然である。また,反訴原告の営業所内に清涼飲料水の自動販売機が設置されることは,その従業員や顧客にとっても大変便利で,反訴原告はかかる利便性を享受しうることを勘案して,本件自販機設置に踏み切ったものである。したがって,電気使用料金と販売リベートの差額がそのまま損害であるとはいえない。」旨主張する。 しかし,証拠(反訴原告代表者)によると,反訴原告にとり本件自販機にかかる電気使用料金は予想外であり,反訴原告が本件3契約に際し,本件自販機にかかる電気使用料金を知っていれば,本件3契約を締結しなかったと認められるから,反訴被告の同主張は採用できない。 5 請求原因(4)の事実につき検討する。 反訴被告が,反訴原告に対し何らの要請もしないままに,平成14年5月21 契約を締結しなかったと認められるから,反訴被告の同主張は採用できない。 5 請求原因(4)の事実につき検討する。 反訴被告が,反訴原告に対し何らの要請もしないままに,平成14年5月21日,津地方裁判所に,動産引渡断行仮処分申請をしたものであるとしても,反訴被告は本件自販機の所有者で,その返還を求める一応の根拠はあるから,格別その仮処分申請が不法行為に該当するとはいえない。 6 以上によれば,反訴原告の請求は52万6413円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成14年11月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は棄却すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 津地方裁判所民事部裁判官内田計一

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