平成11(行ウ)59 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成13年2月28日 東京地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文16,111 文字)

主文 一原告らの本訴請求を棄却する。 二原告らの中間確認の訴えを却下する。 三訴訟費用のうち、原告らと被告の間に生じた費用は被告の負担とし、参加によって生じた費用は参加人の負担とする。 事実及び理由 第一請求一被告は東京都に対し、金八五億円を支払え。 二原告らは、右のほか、中間確認の訴えとして、「東京都の事業用地の取得につき、その価格決定が東京都財産価格審議会条例第二条『価格の評定』を経ていず、かつ、同審議会諮問議案等作成要領も経ていず、価格決定における先決の法律関係が不存在であることの確認を求める。」との判決を求めた。 第二事案の概要本件は、東京都が訴訟上の和解に基づいて支出した八五億円に関して、原告らが、右和解は、地方自治法(以下「法」という。)上必要とされる議会の議決を経ていない違法があると主張して、法二四二条の二第一項四号前段に基づき、東京都に代位して、右支出当時東京都知事の職にあった被告に対し、右支出相当額の損害賠償を求めるとともに、前記第一の二記載の中間確認の裁判を求めている住民訴訟である。 一前提事実(甲一、一八、三八、三九、五一、五二、乙二、争いがない事実、弁論の全趣旨) 1 原告らは、東京都内に住所を有する者である。 2 東京都は、平成三年八月二八日、日本ビルプロジェクト株式会社(以下「日本ビルプロ」という。)との間で、東京都が所有する後記(一)の土地と日本ビルプロが所有する同(二)の土地を、日本ビルプロから同(三)の金額の支払を受けて交換する旨の契約(以下「本件交換契約」という。)を締結した。 (一) 東京都の所有地(以下、「αの土地」という。)所在東京都江東区β五番一三地積一万一五一五・四三平方メートル金額一五〇億五五二七万三一八二円(二) 日本ビルプロの所有地(以 。 (一) 東京都の所有地(以下、「αの土地」という。)所在東京都江東区β五番一三地積一万一五一五・四三平方メートル金額一五〇億五五二七万三一八二円(二) 日本ビルプロの所有地(以下「γの土地」という。)所在東京都江戸川区γ一五番一地積二万〇三六四・六二平方メートル(公簿上の面積)金額一三〇億六九九六万八一九〇円(三) 日本ビルプロが東京都に支払う額一九億八五三〇万四九九二円 3 日本ビルプロは、平成八年三月二八日、αの土地のうち八二六四・四九平方メートル(東京都江東区β五番一六として分筆。以下、この土地を「本件第一土地」といい、αの土地その余の部分を「本件第二土地」という。)を、三井松島産業株式会社(以下「三井松島」という。)に譲渡した。 4 αの土地は、東京都が、東京湾埋立事業の一環としてのごみの埋立処分場として供用していたものであったところ、本件第一土地を取得した三井松島は、分譲マンションを建築すべく土壌調査をした。その結果、三井松島は、本件第一土地の土壌中に、カドミウム、シアン、鉛、砒素、総水銀、PCBなどの有害物質が存在することが判明したとして、日本ビルプロに対し、平成八年一〇月二二日、右土地部分の土壌中の有害物質の除去を請求した。 5 日本ビルプロ及び三井松島は、東京都に対し、平成八年一二月一八日、αの土地から環境基準を大幅に上回る有害物質が検出されたとして、瑕疵担保責任の履行を申し入れた。 6 日本ビルプロは、東京都に対して、平成九年一二月一七日、αの土地の有害物質及び廃棄物の除去を求める旨の妨害排除請求の訴えを提起した(東京地方裁判所平成九年(ワ)第二七〇六四号事件)。その後、右訴訟において、平成一〇年三月三〇日、以下の要旨の和解(以下「本件和解」という。)が成立した。 (一) 三井松島 排除請求の訴えを提起した(東京地方裁判所平成九年(ワ)第二七〇六四号事件)。その後、右訴訟において、平成一〇年三月三〇日、以下の要旨の和解(以下「本件和解」という。)が成立した。 (一) 三井松島は、東京都に対して、本件第一土地を譲渡する。 (二) 日本ビルプロは、東京都に対して、本件第二土地を譲渡する。 (三) 東京都は、三井松島及び日本ビルプロに対して、金八五億円を支払う。 7 都が応訴した事件についてする和解は、「訴えの提起等の知事専決処分について」と題する東京都議会の議決(以下「本件議決」という。)に基づき、都知事が専決処分することができるとされていた。そして、都知事の権限に属する事務のうち、訴訟上の和解に関する事項は、総務局長に委任されており、さらに総務局内においては、東京都事案決定規程四条に基づき部長が決定すべきものとされているところ、本件和解については、平成一〇年三月二六日に決裁された。 また、本件和解に係る支出の支出命令権者である東京都清掃局総務部経理課長は、平成一〇年五月二八日付けで支出命令を行い、同年六月四日付けで右金員が支出された。そして、本件和解に係る専決処分については、同年六月、第二回都議会定例会で報告された。 8 原告らは、平成一〇年一一月二五日付けで、東京都監査委員に対して、都知事がその専決処分としてした本件和解に基づく和解金の支払について、東京都議会の議決が必要であるのにこれを欠き、法一七九条では認められていない都知事の専決処分に基づく違法な公金支出である旨主張して、地方自治法二四二条一項に基づき監査請求をしたところ、同監査委員は、同年一二月二二日付けで、①本件専決処分は法一八〇条に基づくものであるから右請求はその根拠において前提を欠き、②議会がその権限に属するどのような事項を法一八〇条に基づき都知事の専決 、同監査委員は、同年一二月二二日付けで、①本件専決処分は法一八〇条に基づくものであるから右請求はその根拠において前提を欠き、②議会がその権限に属するどのような事項を法一八〇条に基づき都知事の専決処分とするかは議会が自らの権限において行う判断にかかわるものであるから原告らの主張は財務会計上の行為について請求したものとは認められないなどと判断して、右監査請求は不適法であるので受理しない旨の通知をした。 原告らは、右通知の結論が却下でなく受理しないというものであったため、未だ監査請求に対する判断が示されていないものと考え、先にした監査請求を補正するものとして、平成一一年一月一九日付けで、右支払は予算が計上されておらず、また、本件和解は、東京都議決条例二条にいう議会の議決に付すべき契約であり、地方自治法九六条によっても議決が必要であるにもかかわらず議決を欠いたままなされた違法な公金支出である旨記載した監査請求書を提出したところ、同監査委員は、同年二月一五日付けで、本件和解金の支出は土地開発基金によって執行されたものであること、本件和解は右条例にいう議決に付すべき契約には該当しないと判断して、右請求は不適法であるので受理しない旨の通知をした。 9 原告らは、右の二回目の通知の後、東京都監査委員会事務局からの説明により、通知の趣旨が監査請求を却下するというものであることに気付き、平成一一年三月一七日、本件訴えを提起した。 二争点本件の争点は、(1)本件和解が、本件議決に基づいて、都議会の議決を経ずに都知事の専決処分によりなされたことに関して、都知事に違法性が認められるかどうか(争点1)、(2)本件和解により東京都が被った損害の有無(争点2)であり、これらの点に関する当事者の主張は以下のとおりである。 1 本件和解に関する違法性の有無(争点1 に違法性が認められるかどうか(争点1)、(2)本件和解により東京都が被った損害の有無(争点2)であり、これらの点に関する当事者の主張は以下のとおりである。 1 本件和解に関する違法性の有無(争点1)について(原告らの主張)(一) 東京都が和解をするについては、法九六条一項に基づき議会の議決が必要であるところ、被告が、議会の議決を経ることなく本件和解を成立させ、これを執行したことは、違法であるというべきである。 被告は、都が応訴した事件についてする和解は、法一八〇条に基づく本件議決により、都知事の専決処分ですることができると主張する。 しかしながら、地方公共団体が応訴することについては、法律上、議会の議決事項ではなく、議会がこれに関する事項を知事の専決処分として委任することはできないから、これを都知事の専決処分とした本件議決は当然無効というべきである。 また、被告の主張するように、本件議決が応訴事件についてする和解は額の制限なく都知事の専決事項とする趣旨のものであるとすれば、右議決は「軽易な事項」ではない事項についても都知事に委任したものと言わざるを得ないから、法一八〇条一項に反する違法なものである。 したがって、本件議決には、明白かつ重大な瑕疵があるにもかかわらず、都知事は、これに基づいて本件和解を専決処分により行ったものであるから、都知事が本件和解をしたことは違法であるというべきである。 (二) 本件議決は、地方自治法一六条五項、東京都告示式条例六条に定める公布施行等の手続を欠くから無効である。 (三) 本件和解に基づく支出については、予算の議決を欠くから、予算に基づかずに支出負担行為を行うことは、法二三二条の三に反する。 監査委員は、本件和解に基づく支出は、土地開発基金から拠出されたとしているが、和解金を右基金から支出するこ 予算の議決を欠くから、予算に基づかずに支出負担行為を行うことは、法二三二条の三に反する。 監査委員は、本件和解に基づく支出は、土地開発基金から拠出されたとしているが、和解金を右基金から支出することは、会計原則に反する流用であり、違法なものというべきである。 (四) 本件和解によりγの土地を取得したことは、法九六条一項八号にいう「財産の取得」に該当するから、これに行うには東京都議会の議決を経るべきものであったところ、右議決を欠くものであるから、違法なものというべきである。 (五) 東京都財産価格審議会条例は、東京都が公有財産の取得に関する価格の決定をしようとするときは東京都財産価格審議会の議を経ることが必要である旨を定め、その議案作成要領も定められているところ、東京都が本件和解によりγの土地を取得し、和解金として八五億円を支払ったことに関しては、右審議会の議を経ることなく、内部的な打合せだけで価格決定事務を処理したものであるから、本件和解は違法なものというべきである。 (六) 本件和解の先行行為である本件交換契約も、東京都が土地の評価を誤り自ら膨大な損害を被る一方、日本ビルプロに巨額の利得を生じさせるものであって、それ自体が違法な財務会計行為というべきである。 (被告の主張)(一) 本件議決は、その文言から解釈すれば、一号は、東京都が原告となる訴訟事件で目的の価額が一〇〇〇万円以下のものについて都知事が専決処分できることを定め、二号は、東京都が被告となっている訴訟事件及び原告となっている一号の訴訟事件の和解について知事が専決処分できることを定めたものである。このように、本件議決は、東京都が被告となっている訴訟事件の和解について、訴訟の目的の価額に金額の制限なく専決処分としたものと解すべきである。 そして、すべての応訴事件について和解に応 ものである。このように、本件議決は、東京都が被告となっている訴訟事件の和解について、訴訟の目的の価額に金額の制限なく専決処分としたものと解すべきである。 そして、すべての応訴事件について和解に応じることは、以下の理由から「軽易な事項」というべきである。すなわち、第一に、都が応訴した事件について和解する必要性が生じるのは、判決になれば、都が全面敗訴する可能性が極めて高い場合である。敗訴判決となれば、原告の請求のうち、理由がある範囲では、都は全部その請求に応じなければならないところ、和解であれば原告の譲歩により、都が支払うべき金額、負うべき義務の範囲が減少し、都に有利な結果となる。もちろん、和解の中には、判決になれば、都が全面勝訴する可能性が高い場合に行われるものもあるが、かかる事例において、都が譲歩する内容は極めて小さいものであるから、「軽易な事項」に当たることは明らかである。第二に、訴訟上の和解は、裁判所の関与のもとに行われるものであるから、「なれあい」的な和解は不可能である。この点で、訴訟外で行われる和解とは大きく異なる。したがって、応訴事件における訴訟上の和解につき、金額の制限を設けなくとも、都にとって不利益な事態は予想されず、議会の権限に属する事項のうち「軽易な事項」と判断されたものと解される。 以上によれば、本件議決が法に反するところはない。 (二) 本件議決が法に適合するかどうかの判断は、議会に委ねられており、都知事が右判断の当否を論ずることは許されず、また、議会の議決により都知事の専決事項とされたものについて、都知事が議会に対して議決を求めることは許されないから、本件議決がある限り、都知事は専決処分として和解をすべきことを義務付けられているというべきである。 (三) 応訴した事件についてする和解に係る専決処分は、都知事か て議決を求めることは許されないから、本件議決がある限り、都知事は専決処分として和解をすべきことを義務付けられているというべきである。 (三) 応訴した事件についてする和解に係る専決処分は、都知事からその部下職員に対して内部的に委任されているから、本件で問題とされる被告の財務会計行為に関する違法性は、当該部下職員がした専決処分に関する管理監督義務に違背したかどうかの有無にすぎない。しかるところ、被告には右管理監督義務違反は認められない。 2 本件和解に基づく支出による損害の有無(争点2)について(原告らの主張)(一) 被告は、本件和解を専決処分により行い、八五億円の支出を行い、東京都に右同額の損害を与えたものである。 (二) 東京都が本件和解に際してしたγの土地の評価(東京都清掃局が都議会都市環境委員会に対して提出したもの。甲第三八号証)によれば、平成九年六月一日時点での右土地の価額は六八億四四五二万五二五五円とされているが、この評価には前記1(五)のとおりの違法があるし、その根拠となる「路線価」欄の価格は、国税庁が発表した路線価ではないものを「路線価」として虚偽の記載をし、本件土地の評価金額を不当につりあげているものである。 (被告の主張)本件交換契約は、東京都が所有していたαの土地と日本ビルプロが所有していたγの土地を交換し、その際交換差額金一九億八五三〇万四九九二円の支払を日本ビルプロから東京都が受けたものであるところ、これを解除した場合、東京都と日本ビルプロとの間において、αの土地の所有権は東京都に戻り、γの土地の所有権は日本ビルプロに戻り、交換差額金一九億八五三〇万四九九二円については、東京都は、右交換差額金受領時から、返還時までの商事法定利率による利息を付して返還することとなる。 しかるところ、本件和解は、実質的には プロに戻り、交換差額金一九億八五三〇万四九九二円については、東京都は、右交換差額金受領時から、返還時までの商事法定利率による利息を付して返還することとなる。 しかるところ、本件和解は、実質的には、まず、本件交換契約を解除するのと同様の法的効果の発生を内容とするものである。すなわち、右解除による原状回復義務の履行のうち、交換差額金については、端数を切り上げることにより、その限度内で利息を付し、それを越える利息については日本ビルプロが放棄することとして、東京都は日本ビルプロに対し、金二〇億円を返還することとしたものである。 したがって、右二〇億円の返還の実質は、原状回復義務の履行に他ならず、東京都の損害ではない。 次に、東京都は、日本ビルプロの所有に戻ることとなるγの土地については、有償で取得することとし、平成九年六月一日時点におけるγの土地の評価額は、金六八億四四五二万五二五五円であったが、裁判所から提示された和解金八五億円から交換差金二〇億円を引くと六五億円が土地の価格と推測され、東京都がした平成九年六月一日時点における評価額より低価であることから、この金額がγの土地の取得金額とされたものである。したがって、東京都は、相当の対価をもってγの土地を取得したことに他ならず、損害は発生していない。 (参加人の主張)甲第三八号証に示されている本件土地の評価は、本件土地をめぐる問題を解決するために、東京都の内部資料として、東京都の土地評価方式により、かつ概算によりされたものである。これにより、本件土地の一平方メートル当たりの価格は、三三万六一〇〇円、本件土地全体の価額は、六八億四四五二万五二五五円とされた。 右土地評価方式は、東京都における土地取引や損失補償等のために行われる東京都の土地評価方式であるが、これとは別に、相続税路線価方式によ 、本件土地全体の価額は、六八億四四五二万五二五五円とされた。 右土地評価方式は、東京都における土地取引や損失補償等のために行われる東京都の土地評価方式であるが、これとは別に、相続税路線価方式による本件土地の地価公示水準の価額を算定すると、七一億七四六七万円(千円未満切捨て)となるところ、甲第三八号証に示される本件土地の評価額はこれとほぼ近似する価額であるから、適正な金額であるといえる。 よって、本件和解により東京都には損害が生じていないというべきである。 第三当裁判所の判断一証拠(甲三、七、一二、一九の1ないし4、二一、二八、四三、乙一)によれば、以下の事実が認められる。 1 東京都議会は、昭和二五年九月五日、「応訴等の知事専決処分に関する件の改正について」と題する議案を議決した。その際の議案についての説明は、「本改正案各号の訴訟及び和解は比較的軽易な事項と認められるので、本案を提出いたします。」とのものであった。右議決の結果改正された内容は、次のとおりである。なお、右改正は、同年九月一六日付けをもって東京都公報に公告としてではなく雑報として掲載された。 左の事項は知事が専決処分にすることができる。 (一) 都を被告として提起した訴えに対する応訴(二) 都が提起する訴えであってもその訴訟の目的の価額が三〇〇万円以下のもの(三) 前各号の訴訟事件についてする和解 2 昭和三八年法律第九九号による地方自治法の改正により、従前の九六条第一項一〇号に「訴訟」とあったのが「訴えの提起」と改められ(この改正で同号は一一号とされ、さらに、昭和六一年法律第七五号による改正によって一二号とされた。)、応訴については議会の議決が不要であることが明文化された。 3 右改正を受けて、東京都議会は、昭和三九年三月二三日、「訴えの提起等の知事専決処分につ 法律第七五号による改正によって一二号とされた。)、応訴については議会の議決が不要であることが明文化された。 3 右改正を受けて、東京都議会は、昭和三九年三月二三日、「訴えの提起等の知事専決処分について」と題する議案を議決(本件議決)をした。その際の議案についての説明は、「地方自治法の一部改正により、応訴は議会の議決を要しないことになったので、この案を提出いたします。」とのものであった。本件議決の内容は次のとおりである。 (一) 昭和三九年四月一日以降の次の事項は、知事が専決処分することができる。 (1) 都が提起する訴えであって、その訴訟の目的の価額が一〇〇〇万円以下のもの(2) 都が応訴した事件及び前号の事件についてする和解(二) 「応訴等の知事専決処分に関する件」(昭和二五年九月一六日東京都議会議決)は、昭和三九年三月三一日限り廃止する。 4 全国の都道府県議会においては、法一八〇条に基づき、議会の議決事項の一部を専決処分に指定する旨の議決がなされており、和解に関しても専決処分としている例が多いが、応訴事件についてする和解につき、事件の種類又は金額を問題とすることなくすべて専決処分と指定している例はほとんどない。 二本件議決の適法性について 1 法九六条一項一二号は、普通地方公共団体の議会が議決すべき事項として、「普通地方公共団体がその当事者である審査請求その他の申立て、訴えの提起、和解、斡旋、調停及び仲裁に関すること」を挙げている。右規定は、地方公共団体に係る紛争解決に当たっては、多額の財政支出を伴う場合も予想されるので、その紛争解決方法の採用及び内容について、地方公共団体の団体意思の確認を得ることが必要であるとの趣旨から、議会の議決事項とされたものと解される。 2 他方、法一八〇条一項は、普通地方公共団体の議会の権限に属する軽 方法の採用及び内容について、地方公共団体の団体意思の確認を得ることが必要であるとの趣旨から、議会の議決事項とされたものと解される。 2 他方、法一八〇条一項は、普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共団体の長において、これを専決処分にすることができる旨規定している。右規定は、議会の議決事項とされたものであっても、議会によって代表される住民の意思や議決にどの程度の重要性が与えられているかについては、各議決事項の性質や具体的な議決内容如何によっては程度の差があることに鑑み、軽易な事項については、予め長に委任することを許すこととしたものであると解される。 3 しかるところ、本件議決は、東京都が応訴した事件については、事件の種類や訴訟の目的物の価額の多寡を問わず、すべて都知事の専決処分により和解をすることが可能なものであり、その限度で法九六条一項一二号を空文化するに等しいものであって、法一八〇条一項がそのような大幅な委任を許しているものとは到底考えられない上、和解しようとする紛争の具体的な事案によっては東京都において極めて大きな財政負担を生じさせる場合も考えられるのであって、法九六条一項一二号が多額の財政支出を伴う場合を予想して和解の締結を議会の議決事項とした趣旨に照らせば、実質的にみても「軽易な事項」とはいえない事項までを一律に委任してしまったものというほかない。したがって、本件議決は、訴訟の目的の価額を相当な範囲に限定しないまま、和解について一律に専決権を付与した点において、法一八〇条一項に反する違法なものというほかはない。 4 これに対して、被告は、一般に、東京都が裁判所の関与の下でする応訴事件における和解については、支払うべき金額、負うべき義務の範囲が減少するものであり、金額の制 する違法なものというほかはない。 4 これに対して、被告は、一般に、東京都が裁判所の関与の下でする応訴事件における和解については、支払うべき金額、負うべき義務の範囲が減少するものであり、金額の制限を設けなくとも、都にとって不利益な事態は予想されないと主張する。しかしながら、訴訟上の和解は、裁判所が関与するとはいえ、本質的には双方当事者が任意にその内容を決するものであるから、当事者の認識に誤りがあれば、その当事者が和解によって不利益を受けることも絶無とはいい難い。また、前記のとおり、法が和解を議決事項としたのは、和解という紛争解決方法を選択すること自体についても議会の意思にかからしめる趣旨と解されるし、東京都が支払うべき金額等が減少するとしても、その絶対額は莫大なものである場合もあることを考慮すれば、たとえ不利益な事態が生じることがほとんどないとしても、直ちに裁判上の和解がすべて「軽易な事項」に該当するということはできない。 なお、前記のとおり本件議決が違法であるとしても、本件議決に基づいてなされた訴訟上の和解に基づき東京都が支払義務を負う金額が極めて少額な場合など、結果として「軽易な事項」に属することとなるものについて都知事が専決処分を行う場合も考えられるところであり、そのような専決処分との関係では、本件議決が必ずしも違法とまでいえないという考え方も採り得るところではある。しかしながら、本件和解は、八五億円という高額な支払を内容とするものであるから、和解の具体的内容に照らしても、これを「軽易な事項」に属するものということは到底できない。 三争点1について 1 地方自治法二四二条の二の規定に基づく住民訴訟は、普通地方公共団体の執行機関又は職員による同法二四二条一項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実の予防又は是正を裁判所に請求す 争点1について 1 地方自治法二四二条の二の規定に基づく住民訴訟は、普通地方公共団体の執行機関又は職員による同法二四二条一項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実の予防又は是正を裁判所に請求する権能を住民に与え、もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするものである。そして、同法二四二条の二第一項四号の規定に基づく代位請求に係る当該職員に対する損害賠償請求訴訟は、このような住民訴訟の一類型として、財務会計上の行為を行う権限を有する当該職員に対し、職務上の義務に違反する財務会計上の行為による当該職員の個人としての損害賠償義務の履行を求めるものにほかならない。したがって、当該職員の財務会計上の行為をとらえて右の規定に基づく損害賠償責任を問うことができるのは、これに先行する原因行為に違法事由が存する場合であっても、右原因行為を前提としてされた当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られると解するのが相当である。 ところで、地方公共団体の長は、関係規定に基づき予算執行の適正を確保すべき責任を地方公共団体に対して負担するものであるが、反面、議会固有の権限内容にまで介入し得るものではなく、このことから、地方公共団体の長の有する予算の執行機関としての職務権限には、おのずから制約が存する。したがって、地方公共団体の長は、議会がその権限としてした議決については、それが著しく合理性を欠き、そのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合でない限り、右議決を尊重し、その内容に応じた財務会計上の措置を採るべき義務があり、これを拒むことは許されないものと解するのが相当である。 しかしながら、議会が地方自治法に反する違法な議決をした場合に至っては、議会といえども、法に反することとなる職務執 措置を採るべき義務があり、これを拒むことは許されないものと解するのが相当である。 しかしながら、議会が地方自治法に反する違法な議決をした場合に至っては、議会といえども、法に反することとなる職務執行を地方公共団体の長に強いることができないことは明らかであり、地方公共団体の長がその議決を尊重すべき根拠はもはや失われたというべきであるから、その場合、地方公共団体の長は、法律に基づき予算執行の適正を確保すべき責任を全うするという見地からして、当該違法な議決に従う義務を有しないといわなければならない。そうすると、違法な議決を前提としてなされた財務会計上の行為は、当該議決の違法が一義的に明白でないなどの特段の事情がない限り、違法なものといわざるを得ない。 2 これを本件についてみると、本件議決は、単に都知事に専決権を付与したものであって専決すべき義務を課したものではないから、都知事としては、本件議決に疑問があれば、専決することを差し控え逐一議会の議決を求めることも可能であったと考えられること(この点に関する被告の主張は、本件議決の文言及びその根拠である法一八〇条一項の趣旨からして採用できない。)、本件議決は、前述のとおり、法一八〇条一項に反する違法なものであり、本件議決の内容上、法一八〇条一項にいう「軽易な事項」に該当しない事項についても都知事の専決処分を許すものである点で違法であることが一見して明らかなものであること、本件和解は、東京都が八五億円という巨額の金員を支出することになるものであり、その具体的な事案に即してみても「軽易な事項」とはいい難いことなどの事情も認められることからすれば、本件和解をするに当たって、議会の議決を経ることなく行われた公金の支出は、財務会計法規上の義務に違反するものというべきである。 ところで、本件和解の当時、和 などの事情も認められることからすれば、本件和解をするに当たって、議会の議決を経ることなく行われた公金の支出は、財務会計法規上の義務に違反するものというべきである。 ところで、本件和解の当時、和解をする権限については、東京都事務決定規程により、知事の職にあった被告から補助職員である部長に委任されており、本件和解については、当該補助職員がこれを行ったものである。右のように、被告は、自己の権限に属する支出を部下職員に委任し、専決により処理させたのであるから、その指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失によりこれを阻止しなかったと認められる場合には、東京都に対し右違法な支出によって東京都が被った損害を賠償する義務を負うことになると解される。 そして、本件和解を行うことは、必要な議会の議決を経ていないという点で地方自治法に違反する重大な違法があること、また、本件議決は執務にあたっての一般的な基準となるべきものであって、そのような一般的基準に誤りがあるときは、補助職員に対して当該基準によるべきでないことを指導することは、指揮監督権者として最低限なすべきことであると考えられることを考慮すると、被告が法により本来議会の議決事項とされている和解につき議会の議決を経ないままに行うことを補助職員に委ねていたことは、その指揮監督上の義務に違反したものであって、これにつき少なくとも過失があったというのが相当である。したがって、被告は、東京都に対し、違法な本件支出により東京都が被った本件和解による支出金相当額の損害について、これを賠償する義務を負うというべきである。 四争点2について 1 本件和解は、本来、専決処分により得ないにもかかわらず議会の議決を経ないで専決処分としてされた点において、無権限でされたものというほかないが、外形上は適式にされたものというほ 四争点2について 1 本件和解は、本来、専決処分により得ないにもかかわらず議会の議決を経ないで専決処分としてされた点において、無権限でされたものというほかないが、外形上は適式にされたものというほかないし、前記第二の一7のとおり平成一〇年六月中に都議会に報告されたにもかかわらず、都議会全体として本件和解の効力を否定するような議決等をした形跡がなく、今日に至るまで東京都においても本件和解の効力を否定する態度をとっていないことからすると、現時点においては、もはや本件和解の効力を否定することは不可能というべきである。 2 そうすると、本件和解により東京都に損害が生じたかどうかは、結局のところ、本件和解の前後における東京都の権利状態を比較し、これに減少があるかどうかということになる。そこで、以下、このような観点から検討するに、証拠(甲三二、三四、三五、三八、四〇、丙二ないし六)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (一) γの土地は、東京都清掃局が、江戸川清掃工場建替用地として取得を希望していたものであった。 (二) 日本ビルプロは、東京中央木材市場株式会社から、平成二年二月二八日、γの土地を購入し、同年三月一日受付で所有権移転登記を経た。なお、日本ビルプロの購入価格については、これを認めるに足りる的確な証拠はない。 (三) γの土地は、平成三年八月二八日に締結された本件交換契約において、一三〇億六九九六万八一九〇円と評価されていた。 (四) 他方、αの土地は、東京都が、東京湾埋立事業の一環としてのごみの埋立処分場として供用していたものであり、本件第一土地を取得した三井松島が、分譲マンションを建築すべく土壌調査をした。その結果、三井松島は、本件第一土地の土壌中に、カドミウム、シアン、鉛、砒素、総水銀、PCBなどの有害物質が存在する り、本件第一土地を取得した三井松島が、分譲マンションを建築すべく土壌調査をした。その結果、三井松島は、本件第一土地の土壌中に、カドミウム、シアン、鉛、砒素、総水銀、PCBなどの有害物質が存在することが判明したとして、日本ビルプロに対し、平成八年一〇月二二日、右土地部分の土壌中の有害物質の除去を請求した。 そして、日本ビルプロ及び三井松島は、東京都に対し、平成八年一二月一八日、αの土地につき環境基準を上回る汚染物質が存在するとして、その土壌改良に要する費用等を具体的に説明した上で、解決策として、αの土地の土壌処理、その買戻し、損害賠償の支払等の検討を申し入れ、以後、右当事者間で協議が行われた。日本ビルプロ及び三井松島は、東京都に対して、平成九年七月九日、αの土地その土壌改良に要する費用として一一六億八〇〇〇万円及び建設工事遅延に関する損害金の負担を求める旨の要求をした。 これに対して、東京都は、平成九年六月一日の時点でのγの土地の価額を六八億四四五二万五二五五円と評価していたところ、同年九月一六日、αの土地を買い戻し、本件交換契約における差金を返還し、γの土地を確保するという趣旨で、日本ビルプロ及び三井松島に対して、合計八五億円を支払うとの提案をしたが、結局合意は成立せず、この件が訴訟で争われることとなった。 (五) 東京都がγの土地に関して平成九年六月一日の時点でした評価の概要は以下のとおりである。 (1) 地積二万〇三六四・五五平方メートル(2) 路線価三八万六〇〇〇円(3) 奥行逓減率不明(4) 側道加算率不明(5) 河川保全区域による減価不明(6) その他の減価不明ただし、敷地の一部(地下)に六価クロムが埋設されていることによる利用制限。減価対象面積二五九〇・七平方メートル。 (7) 広大 明(5) 河川保全区域による減価不明(6) その他の減価不明ただし、敷地の一部(地下)に六価クロムが埋設されていることによる利用制限。減価対象面積二五九〇・七平方メートル。 (7) 広大地減価不明(8) 評価額三三万六一〇〇円(前記(3)ないし(7)で「不明」とされた部分の内容は、当時東京都において具体的な数字を念頭に考慮していたものと認められるが、現在では、東京都及び参加人において、これらを明らかにすることを拒んでいるため、証拠上、明らかでないものである。もっとも、(2)及び(8)を対比すると、これら全体としては約一三パーセントの減価がされていることが計算上明らかである。)(9) 金額六八億四四五二万五二五五円(六) γの土地は、概ね長方形であり、その四辺において道路と接しているところ、各道路に付された相続税財産評価基準による路線価は、平成元年において二八万円ないし三一万円、平成二年において三六万円ないし四二万円、平成九年において二九万円ないし三四万円の範囲にあった。 また、γの土地の近隣の地価公示地(東京都江戸川区γ二番一七外)の平成九年一月一日の公示価格は三八万六〇〇〇円、その前面道路の平成九年の相続税路線価は三一万円であった。また、右地価公示地の平成一〇年一月一日の公示価格は三六万二〇〇〇円であった。 (七) γの土地の状況は次のとおりである。 (1) γの土地は、四方が道路に囲まれた土地であり、その奥行は、東側路線境を起点として最長約一二一メトトル(最短約一〇三メートル)、北側路線境を起点として最長約一九八メートル(最短約一六六メートル)である。 (2) γの土地は、普通住宅地区にある。 (3) γの土地の地下の一部には、六価クロムを埋設した部分があり、平成元年七月までに恒久処理工事が終了して 約一九八メートル(最短約一六六メートル)である。 (2) γの土地は、普通住宅地区にある。 (3) γの土地の地下の一部には、六価クロムを埋設した部分があり、平成元年七月までに恒久処理工事が終了している。3 右認定事実及び前記第二の一記載の前提事実からすると、本件和解契約は、結局のところ、本件交換契約を解消して各土地を元の所有者に戻すとともに東京都が受け取った交換差金を無利息で返還した上、改めて東京都がγの土地を代金六五億円余りで買取ったのに等しいものである。このような権利状態の変更のうち、本件交換契約を解消したことによって東京都が損害を受けたか否かについては、これを認めるに足りる証拠がない上、原告においては、本件交換契約によって東京都は膨大な損害を被ったと主張しているのであるから、それを解消することは東京都にとって何ら損害を生じさせるものではないことを自認しているに等しい。 そうすると、本件和解による権利状態の変更によって東京都が損害を受けたか否かは、その時点におけるγの土地の評価として六五億円余りが相当であったか否かということに尽きることとなるが、東京都は本件和解に当たりγの土地につき一平方メートル当たり三三万六一〇〇円、全体として六八億円余りと評価しており、右の価格水準は、平成九年における地価公示地の地価、同年の相続税路線価と比較して不当に高いものとはいえず、東京都は、相当の対価をもってγの土地を取得したと解することができ、この点において東京都に損害が生じているとは認め難い。 したがって、本件和解により東京都に損害が生じたということはできない。 4 以上によれば、原告らの本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。 五原告は、「東京都の事業用地の取得につきその価格決定が東京都財産価格審議会条例第二条『価格の評定 ない。 4 以上によれば、原告らの本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。 五原告は、「東京都の事業用地の取得につきその価格決定が東京都財産価格審議会条例第二条『価格の評定』を経ていず、かつ、同審議会諮問議案等作成要領も経ていず、価格決定における先決の法律関係が不存在であることの確認を求める。」旨の「中間確認の訴え」と題する書面を提出しているところ(なお、右でいう「東京都の事業用地の取得」とは、前記第二の一6(三)の支払の対象となったγの土地の取得であると解される。)、このような訴えは、法二四二条の二で認められている住民訴訟のいずれの類型にも該当しない不適法なものであることは明らかである。 五結論以上の次第で、原告らの本訴請求は理由がないから棄却し、中間確認の訴えは不適法であるから却下するが、訴訟費用の負担については、原告らの違法事由の主張には理由があり、被告はその点に責任を負うべきであって、参加人においても今後これを是正すべきことを考慮すると、原告において本件住民訴訟を提起したことはその制度趣旨に合致する有意義なものであったというべきであるから、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六六条、六二条の趣旨に照らして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第三部裁判長裁判官藤山雅行裁判官谷口豊裁判官加藤聡

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