平成13(ネ)450 損害賠償等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成15年4月18日 広島高等裁判所 山口地方裁判所 下関支部 平成12(ワ)169
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判決文本文12,256 文字)

主文 1 被控訴人らは,控訴人に対し,別紙物件目録記載①ないし⑦の各不動産について山口地方法務局下関支局平成10年1月5日受付第4号をもって経由された平成7年12月28日相続を原因とする所有権移転登記(共有持分各3分の1)並びに同目録記載⑧ないし⑫及び⑬-2ないし<25>の各不動産について同支局同日受付第3号をもって経由された平成9年9月20日遺産相続を原因とするA持分全部移転登記(共有持分各12分の1)の,各否認登記手続をせよ。 2 被控訴人らは,控訴人に対し,それぞれ625万円及びこれに対する平成14年5月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 控訴人のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを5分し,その1を控訴人の,その余を被控訴人らの各負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(当審における訴訟の受継に伴い,訴えが交換的に変更された。)(1) 主文第1項と同旨(2) 被控訴人らは,控訴人に対し,各自3000万円(若しくはそれぞれ1000万円宛の合計3000万円)及びこれに対する平成10年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被控訴人ら控訴人の各請求(当審において交換的に変更された各請求)をいずれも棄却する。 第2 事案の概要原審における本件訴訟は,訴訟被承継人(元原告)有限会社B(以下「B」という。)及び同有限会社C(以下「C」といい,前記両名を「元原告ら」ともいう。)が,A(以下「破産者」という。)に対する損害賠償請求権を被保全債権とし,破産者及び被控訴人らが行った同人らの父である亡D(以下「亡D」という。)の 「C」といい,前記両名を「元原告ら」ともいう。)が,A(以下「破産者」という。)に対する損害賠償請求権を被保全債権とし,破産者及び被控訴人らが行った同人らの父である亡D(以下「亡D」という。)の遺産に関する遺産分割協議が詐害行為に当たるとして,その取消しを求めるとともに,被控訴人らが,同遺産分割協議によって取得した不動産を善意の転得者に売却したとして,その不動産の価額(破産者の法定相続分に相当する不動産価額)の償還を求めた事案であった。 これについて原審は,前記遺産分割協議を詐害行為と認めたが,詐害行為取消権の消滅時効が完成しているとして,前記各請求をいずれも棄却したため,元原告らから本件各控訴が提起された。 その後,元原告らがした破産申立てに基づき,破産者についての破産宣告がされて訴訟手続が中断したことから,同人の破産管財人が前記中断した訴訟手続を受継した上,同受継に伴う訴えの変更(破産法上の否認訴訟等。交換的変更)をした。 1 争いのない事実等(1) 亡Dは,別紙物件目録記載の各不動産を所有していたが,平成7年12月28日に死亡した。亡Dの子は,破産者及び被控訴人らの計4名である。 (2) 破産者及び被控訴人ら4名は,平成8年9月27日付けで,別紙物件目録記載⑧ないし⑩,⑭,⑮,⑲ないし<25>の各不動産につき,平成7年12月28日相続を原因として,各共有持分4分の1の所有権移転登記を経由した。 (3) 破産者及び被控訴人ら4名は,平成9年6月17日付けで,別紙物件目録記載⑬-1及び⑬-2の各土地(以下,両土地を併せて「本件各土地」といい,個別には「本件土地1」などという。)につき,平成7年12月28日相続を原因として,各共有持分4分の1の所有権移転登記を経由した。 (4) 破産者及び被控訴人ら4名は,平 て「本件各土地」といい,個別には「本件土地1」などという。)につき,平成7年12月28日相続を原因として,各共有持分4分の1の所有権移転登記を経由した。 (4) 破産者及び被控訴人ら4名は,平成9年9月12日付けで,別紙物件目録記載⑪,⑫,⑯ないし⑱の各不動産につき,平成7年12月28日相続を原因として,各共有持分4分の1の所有権移転登記を経由した。 (5) 山口地方法務局所属公証人Eは,B及び破産者から,並びに有限会社F(平成11年11月15日Cに商号変更,以下「F」という。)及び破産者からの各作成嘱託に基づき,それぞれ債務弁済契約公正証書(前者は平成9年第156号,後者は同年第174号。以下,両公正証書を「本件各公正証書」という。)を作成した。前者の公正証書は同年7月15日作成に係るものであり,これには,債権者をB,債務者を破産者とし,「債務者は債権者に対し,2500万円(ただし,平成8年7月8日付不動産売買契約につき債務者の契約違反により同売買契約が解除されたことを認め,その契約解除により債権者に発生した損害金)の債務を負担していることを承認し,これを平成9年8月31日までに一括弁済する」旨が,後者の公正証書は同年7月30日作成に係るものであり,これには,債権者をF,債務者を破産者とし,「債務者は,債権者に対し,450万円(ただし,平成8年7月8日付不動産売買契約〔売主債務者,買主B〕につき債務者が同人の契約違反により同売買契約が解除されたことを認め,その契約解除により同契約を仲介した債権者に発生した損害金)の債務を負担していることを承認し,これを平成9年8月31日までに一括弁済する」旨が,それぞれ記載されている(甲1の1,2)。 (6) 破産者及び被控訴人らは,平成9年9月20日,別紙物件目録記載の各不動産を含む亡 とを承認し,これを平成9年8月31日までに一括弁済する」旨が,それぞれ記載されている(甲1の1,2)。 (6) 破産者及び被控訴人らは,平成9年9月20日,別紙物件目録記載の各不動産を含む亡Dのすべての遺産につき,破産者を除く被控訴人ら3名のみが,各共有持分3分の1ずつ取得する旨の遺産分割協議(以下「本件遺産分割」という。)を成立させた。 (7) 破産者及び被控訴人ら4名は,本件遺産分割に基づき,平成10年1月5日付けで,別紙物件目録記載⑧ないし<25>の各不動産については,平成9年9月20日付け本件遺産分割を原因として,破産者の共有持分4分の1につき各12分の1ずつを,同目録記載①ないし⑦の各不動産については,平成7年12月28日相続を原因として,各共有持分3分の1ずつを,被控訴人ら3名に移転する旨の所有権移転登記を経由した。なお,同目録記載<26>及び<27>の各土地については,価値が全くないため,相続登記がされていない。 (8) 被控訴人らは,平成10年7月31日,医療法人G内科医院(以下「G医院」という。)に対し,本件土地1を代金1億円で売却した(乙10)。 (9) 平成14年1月9日午前10時,山口地方裁判所下関支部において破産者についての破産宣告がされ,破産管財人Hが本件訴訟を受継した(当裁判所に顕著な事実)。 2 争点(1) 平成9年9月20日の本件遺産分割当時,被控訴人らに害意があったか。 (2) 控訴人主張に係る債権は存在するか(後記本件各和解契約及びこれに基づく本件各公正証書は公序良俗に反し無効か。)。 (3) 否認権の行使は,債権保全の範囲に限定されるか(価額償還の額はいくらになるか。)。 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)について(控訴人)ア破産者 )。 (3) 否認権の行使は,債権保全の範囲に限定されるか(価額償還の額はいくらになるか。)。 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)について(控訴人)ア破産者及び被控訴人らの計4名は,平成9年9月20日の本件遺産分割当時,他に元原告らの破産者に対する前記債権を満足させ得る財産がなく,同人が無資力である点につき悪意であったから,本件遺産分割が元原告ら債権者を害することを知っていた。よって,控訴人は,破産法72条1号に基づき,これを否認する。 イ本件各土地を被控訴人らから買い受けた転得者であるG医院は本件詐害行為につき善意であったので,控訴人は,被控訴人らに対し,本件土地1の価額の償還を求める。本件土地1の売買代金額は,約1億2000万円であったので,破産者の本来の取り分は,その4分の1の3000万円となるから,被控訴人らは各自3000万円(若しくは被控訴人ら各1000万円宛で計3000万円)及びこれに対する平成10年8月1日(本件土地1をG医院に売却した日の翌日)から支払済みまで民法所定の法定利率年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。 (被控訴人ら)ア本件遺産分割は,破産者が財産管理に自信がないとして任意に申し出たことに基づくものであり,受益者である被控訴人らは,詐害行為について善意であった。詐害行為成立のためには,特定の債権が存在することが必要であり,詐害行為について善意というのも,この特定の債権の存在について善意という意味である。被控訴人らは,本件遺産分割当時,破産者が作成した公正証書の存在を知らず,これに基づく前記債務も知らなかった。 イ本件遺産分割を否認しても,共有状態に戻るに止まり,否認対象となる不動産が処分されていた場合,受益者に対して価額償還を求 成した公正証書の存在を知らず,これに基づく前記債務も知らなかった。 イ本件遺産分割を否認しても,共有状態に戻るに止まり,否認対象となる不動産が処分されていた場合,受益者に対して価額償還を求めることは許されない。 (2) 争点(2)について(控訴人)ア破産者は,平成8年7月8日,Fを介して,Bとの間で,亡Dの遺産のうち別紙物件目録記載①ないし③の各土地(以下,単に①土地などという。)を代金8152万円で売り渡す旨の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結し,Bから手付金300万円を受領した。しかし,亡Dの相続人である破産者及び被控訴人らが限定承認していたことなどから,破産者において本件売買契約を履行することができなくなったため,平成9年2月21日,元原告らは破産者に対し,本件売買契約を解除する旨の意思表示をした。 イ前同日(平成9年2月21日),元原告らは,破産者との間で,前記解除に基づく破産者に対する損害賠償に関する各和解契約(以下「本件各和解契約」という。)を締結した。すなわち,その内容は,賠償額については,B分が2500万円,F分が450万円であり,これらの弁済期をいずれも同年8月31日とするものであった。そして,本件各和解契約に基づき,Bに関する分については平成9年7月15日,Fに関する分については同月30日,いずれも山口地方法務局所属公証人E作成に係る各債務弁済契約公正証書(B分が平成9年第156号,F分が同年第174号。本件各公正証書)が作成された。 (被控訴人ら)ア本件遺産分割が行われた当時の破産者の債権については,控訴人の主張するもの以外はすべて完済しているし,さらに,破産者及び被控訴人らは,亡D所有の別紙物件目録記載①ないし③の各土地につき,同人の死亡により,各共 割が行われた当時の破産者の債権については,控訴人の主張するもの以外はすべて完済しているし,さらに,破産者及び被控訴人らは,亡D所有の別紙物件目録記載①ないし③の各土地につき,同人の死亡により,各共有持分4分の1を相続した。したがって,破産者は,本件売買契約時である平成8年7月8日時点では,同各土地につき,共有持分4分の1しか有しておらず,これを超える部分についての上記売買は他人物売買となるところ,元原告らは,亡Dの死亡を知っており,他人物売買であることを知っていた。したがって,元原告らが,被控訴人らに対し損害賠償請求することはできない(民法561条ただし書,563条3項)。 イ元原告らと破産者間の本件各和解契約は,いずれも,債務額が過大であり,また,破産者の代理人である弁護士が関与せずにされたものである。 ウまた,仮に,元原告らの破産者に対する本件各和解契約に基づく損害賠償債権が成立するとしても,その損害額は信頼利益に限られる。そして,元原告らは,専門の不動産業者であり,相続不動産の売買には全相続人の同意が必要であることを知り得たにもかかわらず,その同意を得ずに本件売買契約を締結したのであるから,過失があり,その過失割合は80パーセントである。 エ元原告らは,破産者を強迫しあるいはしつこくつきまとい困惑させて本件各和解契約及びこれに基づく本件各公正証書を作成させたものである。 オ以上によれば,本件各和解契約は,破産者に対し,著しく過大な債務を負担させるもので,公序良俗に反し無効である。 (3) 争点(3)について(被控訴人ら)ア否認権の行使は,債権保全の限度で行使されるべきものであるところ,本件遺産分割に係る不動産のうち,本件各土地を除いたそれ以外の不動産だけでも元原告らの主張する債権を (被控訴人ら)ア否認権の行使は,債権保全の限度で行使されるべきものであるところ,本件遺産分割に係る不動産のうち,本件各土地を除いたそれ以外の不動産だけでも元原告らの主張する債権を保全するには十分であるから,控訴人の被控訴人らに対する本件土地1に係る支払請求(価額償還請求)は認められない。 イまた,Bに対しては,仮に同元原告の請求が認められるとしても,破産者が平成10年2月5日の時点で308万7534円を供託しているから,2500万円に対する平成9年9月1日(本件公正証書に規定されている返済期日同年8月31日の翌日)から前記供託日までの遅延損害金に充当した残額を残元本に充当した額に止まるべきである。 (控訴人)争う。本件土地1以外の不動産には多額の担保が設定されていたり,無価値のものがあり,控訴人の債権を充足するものではない。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,控訴人の本件請求は一部理由があり,被控訴人らの抗弁はいずれも理由がないと判断するものであるが,その理由は次のとおりである。 1 争点(1)について(1) 前記争いのない事実等並びに証拠(枝番のあるものについては,枝番を含むものとする。甲1,6,7,13ないし15,17,20ないし25,乙4,10,11,証人J〔以下「J」という。〕,原審証人破産者,原審被控訴人I本人〔以下「I」という。〕)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められ,同認定に反する部分に係る破産者の証言及びI本人尋問の結果(乙3を含む。)は採用しない。 ア破産者は,平成8年7月8日,Fを介して,Bに対し,別紙物件目録記載①ないし③の各土地を,代金8152万円で売却する旨の本件売買契約を締結し,Bから手付金300万円を受領した。しかし,同土地の共有者である被 ,平成8年7月8日,Fを介して,Bに対し,別紙物件目録記載①ないし③の各土地を,代金8152万円で売却する旨の本件売買契約を締結し,Bから手付金300万円を受領した。しかし,同土地の共有者である被控訴人らの同意が得られなかったため,破産者は同契約を履行することができなくなった。そこで,元原告らは,破産者に対し,平成9年2月21日,本件売買契約を解除する旨の意思表示をした。 イ本件売買契約を解除すると同時に(前同日),元原告らは,破産者との間で,解除に基づく破産者に対する損害賠償に関する本件各和解契約を締結した。その内容は,前記のとおり(争点(2)についての控訴人の主張イのとおり)であって,すなわち,損害賠償額については,B分が2500万円,F分が450万円であり,これらの弁済期がいずれも平成9年8月31日であるというものであった。そして,本件各和解契約に基づき,前記のとおり(同主張のとおり),Bに関する分については平成9年7月15日,Fに関する分については同月30日,いずれも山口地方法務局所属公証人E作成に係る本件各公正証書が作成された。 ウ破産者の自宅部分(別紙物件目録記載④及び⑤の土地と⑦の建物)には,担保権が設定されていない。 (2) 破産法72条1号の立証責任に関しては,否認を免れようとする受益者がその行為の当時破産債権者を害することを知らなかったことの立証責任を負うと解されている(最高裁判所昭和37年12月6日民集16巻12号2313頁)。 そこで,検討するに,本件遺産分割は,破産者が当時居住していた亡D名義の建物(及びその敷地)をも含む同人の遺産のすべてを破産者を除く相続人3名(被控訴人ら)だけの共有とする内容のものであり(前記事実,乙4,原審での破産者),これらの事情に前記争いのない事実等を併 名義の建物(及びその敷地)をも含む同人の遺産のすべてを破産者を除く相続人3名(被控訴人ら)だけの共有とする内容のものであり(前記事実,乙4,原審での破産者),これらの事情に前記争いのない事実等を併せ考慮すれば,被控訴人らは,本件遺産分割の結果,破産者には他に確たる財産がなく無資力となることを知っていたと認めるのが相当である。また,被控訴人らは,本件遺産分割当時,本件各公正証書作成の事実につき善意であった旨主張するが,これを認めるに足りる的確な証拠は見当たらない上,仮にそうであったにせよ,甲14の2によれば,平成8年10月28日ころの時点では既に元原告ら代理人からの通知書(破産者が本件売買契約を履行する意思があるかどうかの回答を求めるとともに,もし,同人にその意思がない場合には,同人に対し,元原告らは,同契約の債務不履行に基づく損害賠償〔Bの分が7045万円余,F分が1000万円〕を求める意向である旨を予告したもの)が,被控訴人ら代理人(当時は破産者の代理人でもあった。)に送達されていたのであるから,金額はともかくとして,元原告らの主張する債権の存在そのものは認識していたはずであって,被控訴人らが,元原告らの損害賠償請求につき,民法上認められないと理解し,あるいは,公序良俗違反等により無効であると考えていたとしても,これをもって債権者を害する意思がなかったとはいえない(被控訴人らは,本件遺産分割は,破産者が亡Dの遺産を管理する自信がないと申し出たことにより行われたものであると主張し,これに沿う証拠〔乙3,原審証人破産者,原審I〕もあるが,前記のとおり,破産者は,それまでは自分が亡Dの全遺産を単独で相続できると考えていたこと〔原審同人20項ないし23項〕及び前記のとおり,本件遺産分割によりそれまで居住していた破産者の自宅部分の不動産まで とおり,破産者は,それまでは自分が亡Dの全遺産を単独で相続できると考えていたこと〔原審同人20項ないし23項〕及び前記のとおり,本件遺産分割によりそれまで居住していた破産者の自宅部分の不動産まで放棄する結果となっていることに照らして不自然であり,前記証拠は信用できず,被控訴人らの前記主張は採用できない。)。 (3) よって,被控訴人らが本件遺産分割により破産債権者である元原告らを害することにつき善意であったと認めることはできず,他に被控訴人らの善意を認めるに足りる証拠はない。被控訴人らの前記主張は採用できない。 2 争点(2)について(1) 前記争いのない事実等及び証拠等(甲21,23,弁論の全趣旨)によれば,山口地方裁判所下関支部において,平成14年1月9日,破産者について破産宣告がされたところ,これに対し,同月11日,同人から広島高等裁判所に対して即時抗告の申立てがされたが,同月31日に棄却され,この結果,前記破産宣告は確定したことが認められる。 そして,前記のとおり,本件訴訟は,もともとは,元原告らが破産者及び被控訴人らがした本件遺産分割が債権者である元原告らの破産者に対する債権を害する意図で行われたものであるとして,民法424条の債権者詐害行為取消権に基づき本件遺産分割の取消し等を求めたものであったところ,破産者についての破産宣告が確定したことから,いったん中断した本件訴訟を破産管財人が受継し,これに伴い,前記のとおり,訴えが,破産管財人である控訴人による破産法72条1号の否認訴訟(本件遺産分割に基づく所有権移転登記の否認登記等を求めるもの)に交換的に変更されたところである。 (2) 本件において,元原告らの主張に係る債権の存否については,元原告らと被控訴人らとの間で激しい攻防が行われてきたことは,本件記 の否認登記等を求めるもの)に交換的に変更されたところである。 (2) 本件において,元原告らの主張に係る債権の存否については,元原告らと被控訴人らとの間で激しい攻防が行われてきたことは,本件記録上明らかであり,このことは,少なくとも破産者についての破産宣告が確定したことにより訴えが交換的に変更されるまでは,すなわち,詐害行為取消訴訟の維持・遂行のためにはもとより必要不可欠なことであった。しかし,当審においては,前記のとおり,破産宣告が確定しているのであり,破産手続は,破産者に総債権者の債権を弁済する能力がないため,破産者の全財産をもって総債権者の公平な満足をはかるものであって,裁判所が破産者に破産原因があるものと認めて破産宣告をすることによってその手続が開始されるものであることはいうまでもない。また,配当にあずかることのできる破産債権については,債権の届出,債権調査期日における調査,債権確定訴訟等破産法所定の手続によって確定すべきものとされている。ところで,元原告ら主張に係る債権については,適法な債権届出がされたものの,その全額について破産管財人から異議が出ているのであり(当裁判所に顕著な事実である。),そして,破産管財人がその職務を遂行するに当たり,破産債権者に分配すべき破産財団の確保のために必要があるとして,本件訴訟を受継して本件否認権を行使している以上,その相手方である被控訴人らにおいて元原告らの破産債権の不存在を主張して否認権行使の効果を否定しようとすることは,先に見た破産手続の性格と相容れないものとして許されないといわなければならない(最高裁昭和58年11月25日第二小法廷判決。民集第37巻第9号1430頁参照)。(付言するに,本件記録によれば,元原告ら主張に係る破産債権については,元原告らが破産者に対して相当額の損害 ならない(最高裁昭和58年11月25日第二小法廷判決。民集第37巻第9号1430頁参照)。(付言するに,本件記録によれば,元原告ら主張に係る破産債権については,元原告らが破産者に対して相当額の損害賠償請求権を有していることが認められはするが,前記のとおり,本来,同破産債権の存否については,これの全額について破産管財人から異議が出ている以上,元原告らが破産管財人を相手方として破産債権確定訴訟を提起して明らかにするのが通常求められる訴訟手続ではある〔破産法244条〕。) 3 争点(3)について(1) 被控訴人らは,否認権の行使は,債権保全の限度で認められるべきものであり,本件遺産分割に係る不動産のうち,本件各土地を除いたそれ以外の不動産だけでも元原告らの主張する債権を保全するには十分であるから,控訴人の被控訴人らに対する本件土地1に係る支払請求(価額償還請求)は認められない旨主張する。 しかしながら,前記のとおり,本件においては,既に破産宣告が確定しているのであるから,破産管財人(控訴人)としては,破産法の定めるところに従い,破産債権につき調査するとともに,破産財団を評価し,これらを適宜換価する等して配当原資を形成し,破産債権者に対してしかるべく配当すべき義務を負っているのであって,このことは,破産債務者が当該債務の存否を争っている場合や破産財団が破産債権額を上回る場合であっても,変わるものではなく,破産財団の換価事務は,当該破産債権額の範囲内に止まるものではないというべきである。けだし,当該届出破産債権につき異議を述べられたが,未だ債権確定訴訟を提起していないとしても,これを不存在とみなすことはできないし,否認権を行使しても,それは破産財団を原状に復させるに止まり(破産法77条1項),否認された対象物が金銭であっても直ち だ債権確定訴訟を提起していないとしても,これを不存在とみなすことはできないし,否認権を行使しても,それは破産財団を原状に復させるに止まり(破産法77条1項),否認された対象物が金銭であっても直ちに破産債権者に交付されるものではなく,また,破産財団は,単に破産債権者に対する配当原資となるに止まらず,破産手続費用や破産管財人報酬等の財団債権,さらには債権届出期間内に届け出なかった他の破産債権者(配当から除斥されるだけであって,破産債権を失うわけではなく,期限後の届出も可能である。)への配当原資ともなるのであるから,届け出られた破産債権額をもって限度とすると解することのできないことは明らかである。このように解しても,その後,破産債権が存在しないことに確定したり,全破産債権額及び破産管財人報酬並びに諸費用等を支払っても破産財団に剰余が発生した場合は,その剰余額は破産者に戻入されるのであるから,その利益を不当に侵害することにはならない。 したがって,元原告ら主張の破産債権が争われていたり,また,たとえ本件土地1のほかの不動産だけでも同債権を保全するに十分であるとしても,先に見た破産手続の性格に照らし,被控訴人らの前記主張は到底採用することができない。 (2) 次に,価額償還の場合において,相手方が償還すべき価額は目的物の時価であるが,その算定基準時については破産管財人が否認権を行使した時と解するのが相当である(最高裁判所昭和61年4月3日第1小法廷判決。判例時報1198号110頁)。そして,控訴人は,平成14年5月10日の当審第1回弁論期日において本件否認権を行使しているから,この時点における本件土地1の時価を算定すべきことになる。ところで,被控訴人らが平成10年7月31日に本件土地1のみをG医院に代金1億円で売却した事実は,前記 日において本件否認権を行使しているから,この時点における本件土地1の時価を算定すべきことになる。ところで,被控訴人らが平成10年7月31日に本件土地1のみをG医院に代金1億円で売却した事実は,前記のとおりであるが,わが国の土地の価格が,最近10年以上にわたり下落傾向にあり,この傾向は平成10年当時から平成14年当時までにおいても同様であること(公知の事実)に加え,本件土地1の平成14年度の固定資産評価額は5797万2640円であること(弁論の全趣旨)をも勘案すると,本件土地1の前記否認権行使時における時価は7500万円(前記固定資産評価額の約1.3倍に相当する。)を超えるものではないというべきである。 したがって,価額償還の対象となるのはその4分の1(破産者の持分)である1875万円となるから,被控訴人ら1人当たりの価額償還額は,その3分の1宛である625万円となる(破産者の相続分に相当する価額償還額を被控訴人らが連帯して支払う義務を負うものではなく,全体の償還額は被控訴人らそれぞれに当然に分割されるべきものと解される。)。 なお,価額償還額の算定基準時を否認権行使時とする以上,本件における前記価額償還額に係る遅延損害金の起算日も,否認権行使時である平成14年5月10日の翌日となると解すべきである。 4 以上の次第で,当審で交換的に変更された控訴人(訴訟承継人)の請求は上記の限度で理由がある。 よって,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第2部 裁判長裁判官鈴木敏之裁判官松井千鶴子裁判官工藤涼二(別紙)物件 判官鈴木敏之裁判官松井千鶴子裁判官工藤涼二(別紙)物件目録<1> 下関市甲町a山林89㎡<2> 同所b山林750㎡<3> 同所c畑1611㎡<4> 同所d宅地1021.36㎡<5> 同所e宅地304.55㎡<6> 下関市大字乙f田1094㎡<7> 下関市甲町d家屋番号d主たる建物木・鉄筋コンクリート造陸屋根2階建居宅1階 159.77㎡2階  32.65㎡附属建物符号5コンクリートブロック造陸屋根平家建車庫33.29㎡<8> 下関市丙町g宅地231.75㎡<9> 同所h宅地287.98㎡<10> 同所i宅地319.43㎡<11> 下関市丁町j宅地154.77㎡<12> 同所k宅地292.12㎡<13>-1 同所l宅地1002.64㎡<13>-2 同所m宅地285.76㎡<14> 同所n宅地1153.00㎡<15> 下関市戊町o宅地660.72㎡<16> 下関市丁町p家屋番号p木造スレート葺平家建居宅72.45㎡<17> 下関市丁町q家屋番号qの1木造セメント瓦葺平家建居宅66.24㎡<18> 同所同番地家屋番号qの2木造セメント瓦葺平家建居宅66.24㎡<19> 下関市丁町r家屋番号rの1木造スレート葺2階建居宅1階 52.17㎡2階 26.49㎡<20> 家屋番号qの2木造セメント瓦葺平家建居宅66.24㎡<19> 下関市丁町r家屋番号rの1木造スレート葺2階建居宅1階 52.17㎡2階 26.49㎡<20> 同所同番地家屋番号rの2木造スレート葺2階建居宅1階 53.82㎡2階 25.67㎡<21> 同所同番地家屋番号rの3木造スレート葺平家建居宅69.14㎡<22> 同所同番地家屋番号rの4木造スレート葺2階建居宅1階 52.06㎡2階 24.84㎡<23> 同所同番地家屋番号rの5木造スレート葺平家建居宅69.76㎡<24> 同所同番地家屋番号rの6木造スレート葺平家建居宅70.56㎡<25> 下関市戊町s家屋番号s木造セメント瓦葺2階建共同住宅1階 162.30㎡2階 162.30㎡<26> 下関市丙町t畑9.91㎡<27> 同所u畑6.61㎡以上

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