平成23(ワ)29033 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年4月24日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-84166.txt

キーワード

判決文本文11,643 文字)

平成26年4月24日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成23年(ワ)第29033号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日平成26年2月4日判決愛知県北名古屋市〈以下略〉原告 日進医療器株式会社同訴訟代理人弁護士 前川弘美                   中島康雄春名潤也同補佐人弁理士 飯田昭夫江間路子名古屋市〈以下略〉被告 株式会社三貴工業所同訴訟代理人弁護士 乾 子同補佐人弁理士 宇佐見 忠 男主文原告の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。事実及び理由第1 請求 1 被告は,別紙イ号物件目録及び同ロ号物件目録各記載の車椅子(以下,それぞれを「イ号物件」,「ロ号物件」といい,両者を「被告製品」と総称する。)を製造し,販売してはならない。 2 被告は,原告に対し,1億2562万5000円及びこれに対する平成23年9月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。第2 事案の概要本件は,原告が,被告に対し,被告による被告製品の製造及び販売が原告の特許権の侵害に当たる旨主張して,被告製品の製造等の差止め及び損害賠償を求める訴訟である。 1 争いのない事実等(後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実を含む。)(1) 当事者原告は,車椅子,医療器械等の製造,販売等を業とする株式会社である。被告は,車椅子,福祉用具等の製造,販売等を業とする株式会社である。(2) 原告の特許権(甲3,4,10,14)ア原 原告は,車椅子,医療器械等の製造,販売等を業とする株式会社である。被告は,車椅子,福祉用具等の製造,販売等を業とする株式会社である。(2) 原告の特許権(甲3,4,10,14)ア原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許を「本件特許」と,その特許出願の願書に添付された明細書及び図面(ただし,平成23年10月25日付け審決による訂正が確定した後のもの)を「本件明細書」という。)の特許権者である。特許番号第3680160号出願年月日平成12年9月4日(特願2000-266850号)登録年月日平成17年5月27日発明の名称車椅子イ本件特許権に係る特許請求の範囲の請求項1の記載(ただし,後記ウの訂正請求前のもの)は次のとおりであり(以下,この発明を「本件発明」という。),下記の構成要件に分説される(以下,各構成要件を「構成要件A」などという。)。「 前輪と後輪とを支持する車輪フレーム体が,介護者用のハンドル部を有する背フレーム・サイドフレーム・脚フレームを有して障害者を座位可能に支持する座席フレーム体を間にして左右一対に配置されて構成される車椅子であって,それぞれの前記車輪フレーム体は,前記座席フレーム体の両側において,前記座席フレーム体に軸着して前記座席フレーム体を揺動可能に支持する上部フレームと,前記上部フレームの下方に配置される下部フレームと,前記座席フレーム体の両側部において前記座席フレーム体の揺動時に前記座席フレーム体を支持して摺動可能なガイド手段を構成するガイドフレームと,を有して枠体状に構成されていることを特徴とする車椅子。」記A 前輪と後輪とを支持する車輪フレーム体が,介護者用のハンドル部を有する背フレーム・サイドフレー ームと,を有して枠体状に構成されていることを特徴とする車椅子。」記A 前輪と後輪とを支持する車輪フレーム体が,介護者用のハンドル部を有する背フレーム・サイドフレーム・脚フレームを有して障害者を座位可能に支持する座席フレーム体を間にして左右一対に配置されて構成される車椅子であって,B それぞれの前記車輪フレーム体は,B-1 前記座席フレーム体の両側において,前記座席フレーム体に軸着して前記座席フレーム体を揺動可能に支持する上部フレームと,B-2 前記上部フレームの下方に配置される下部フレームと,B-3 前記座席フレーム体の両側部において前記座席フレーム体の揺動時に前記座席フレーム体を支持して摺動可能なガイド手段を構成するガイドフレームと,を有して枠体状に構成されているC ことを特徴とする車椅子。ウ原告は,本件特許につき被告が請求した無効審判の手続において,平成25年8月9日付けで訂正請求をした。訂正請求に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりであり,下記の構成要件に分説される(訂正箇所に下線を付した。以下,後記C’の構成要件を「構成要件C’」という。)。「 前輪と後輪とを支持する車輪フレーム体が,介護者用のハンドル部を有する背フレーム・サイドフレーム・脚フレームを有して障害者を座位可能に支持する座席フレーム体を間にして左右一対に配置されて構成される車椅子であって,それぞれの前記車輪フレーム体は,前記座席フレーム体の両側において,前記座席フレーム体に軸着して前記座席フレーム体を揺動可能に支持する上部フレームと,前記上部フレームの下方に配置される下部フレームと,前記座席フレーム体の両側部において前記座席フレーム体の揺動時に前記座席フレーム体を支持して摺動可能なガイ ム体を揺動可能に支持する上部フレームと,前記上部フレームの下方に配置される下部フレームと,前記座席フレーム体の両側部において前記座席フレーム体の揺動時に前記座席フレーム体を支持して摺動可能なガイド手段を構成するガイドフレームと,を有して枠体状に構成され,前記座席フレーム体が中央部で幅方向に折畳可能に構成されていることを特徴とする車椅子。」記A 前輪と後輪とを支持する車輪フレーム体が,介護者用のハンドル部を有する背フレーム・サイドフレーム・脚フレームを有して障害者を座位可能に支持する座席フレーム体を間にして左右一対に配置されて構成される車椅子であって,B それぞれの前記車輪フレーム体は,B-1 前記座席フレーム体の両側において,前記座席フレーム体に軸着して前記座席フレーム体を揺動可能に支持する上部フレームと,B-2 前記上部フレームの下方に配置される下部フレームと,B-3 前記座席フレーム体の両側部において前記座席フレーム体の揺動時に前記座席フレーム体を支持して摺動可能なガイド手段を構成するガイドフレームと,を有して枠体状に構成され,C’前記座席フレーム体が中央部で幅方向に折畳可能に構成されているD ことを特徴とする車椅子。(3) 被告の行為ア被告は,平成13年12月頃からイ号物件(製品型番:MWCSW-46Ti)を,平成17年4月頃からロ号物件(同:M-GFsp)を製造し,販売している。イイ号物件及びロ号物件の構成は,それぞれ別紙イ号物件目録,同ロ号物件目録に各記載のとおりである。 2 争点及び争点に関する当事者の主張原告が,前記1(2)ウの訂正請求の前後を通じて本件特許権の侵害が成立する旨主張するのに対し,被告は,構成要件B-3の充足性を争 各記載のとおりである。 2 争点及び争点に関する当事者の主張原告が,前記1(2)ウの訂正請求の前後を通じて本件特許権の侵害が成立する旨主張するのに対し,被告は,構成要件B-3の充足性を争うとともに(本件発明のその余の構成要件及び訂正請求により追加された構成要件C’の充足性は争いがない。),本件特許には無効理由があるので特許法104条の3第1項により原告の権利行使が制限される旨主張している。本件の争点は,(1) 構成要件B-3の充足性,(2) 無効理由の有無,(3)原告の損害額であり,争点に関する当事者の主張は,次のとおりである。(1) 争点1(構成要件B-3の充足性)について(原告の主張)ア被告製品の間隔規制枠(イ号物件の141’A及び141’B,ロ号物件の141’’A及び141’’B)は,内側に座席フレーム体の底フレームが挿通され,座席フレーム体の両側部において車輪フレーム体の間隔を規制することによって,座席フレーム体の揺動時に座席フレーム体が下がらないように支持している。したがって,上記間隔規制枠は構成要件B-3の「座席フレーム体の揺動時に前記座席フレーム体を支持して摺動可能なガイド手段を構成するガイドフレーム」を充足する。イこれに対し,被告は,構成要件B-3の「支持」は重力方向(下向き)にかかる力を支えることに限られるとして,充足性を否定する。しかし,支持とは,重力方向の力を下から支える場合に限られず,側面方向や斜め方向から当接して重力方向の力を支える場合も含まれる。以下のとおりの本件明細書の記載によれば,「支持」とは,座席フレーム体が下がらないように支えることを意味し,座席フレーム体の揺動時に車輪フレーム体に発生する「円弧方向にハの字型に開こうとする力」をガイド手段によって規 細書の記載によれば,「支持」とは,座席フレーム体が下がらないように支えることを意味し,座席フレーム体の揺動時に車輪フレーム体に発生する「円弧方向にハの字型に開こうとする力」をガイド手段によって規制し,その結果,座席フレーム体が下がらないように支持していることを含む。すなわち,本件明細書(段落【0006】,【0013】,【図2】,【図5】及び【図6】)によれば,本件発明は,ティルト式の車椅子を始めとする車輪フレーム体を左右に独立に配置した車椅子において,ピンの連結点より車輪の接地点が外側にあることにより,車輪フレーム体に「円弧方向にハの字型に開こうとする力」が働き,座席フレーム体が下がってしまうという当業者が一般に認識する課題を解決するため,ガイド手段によって座席フレーム体と車輪フレーム体を係合することにより座席フレーム体が下がらないように支持するというものである。また,本件明細書の実施形態の記載(段落【0025】~【0027】及び【図5】)によれば,ガイドフレーム14の外周面を両側から把持するローラ27の上下はクリアランスとなっており,上下方向では接触しておらず,ローラが接触して支えるのは「円弧方向にハの字型に開こうとする力」を制御する方向のみである。したがって,「支持」が重力方向の力を下方向からダイレクトに支えるものに限られないことは明らかである。被告製品は,ピンの連結点と車輪の接地点を比較した場合,車輪の接地点が外側にあり,被告製品の座席フレーム体の揺動時に車輪フレーム体には円弧方向にハの字型に開こうとする力が働く。そうすると,間隔規制枠は,このハの字型に開こうとする力を規制することにより,座席フレーム体が下がらないように支えているから,「支持」を充足する。(被告の主張)ア構成要件B-3の「支持 く。そうすると,間隔規制枠は,このハの字型に開こうとする力を規制することにより,座席フレーム体が下がらないように支えているから,「支持」を充足する。(被告の主張)ア構成要件B-3の「支持」は,障害者の体重,すなわち,重力方向(下向き)の力を支えることを意味する。本件明細書の実施形態の車椅子は,ガイドフレームの左右をガイドのローラが把持することにより,ガイドフレームは上下方向にも固定されて摺動する構成である。イ被告製品の間隔規制枠と座席フレーム体の底フレームは上下左右に固定されておらず,間隔規制枠と底フレームは接触しないように構成されている。間隔規制枠と底フレームとから成る構成は,座席フレーム体に及ぼされる下向きの力を間隔規制枠において支持するものではないから「支持」に当たらない。また,底フレームと間隔規制枠は「摺動」しない。ウしたがって,被告製品は構成要件B-3を充足しない。(2) 争点2(無効理由の有無)について(被告の主張)本件特許には以下の無効理由があるので,原告は本件特許権を行使することができない。ア特許請求の範囲の記載によれば,「ガイドフレーム」は「前記座席フレーム体の両側部において前記座席フレーム体の揺動時に前記座席フレーム体を支持して摺動可能なガイド手段を構成する」ものであり,ガイド手段はガイドフレームによって構成されるものとされる。ところが,本件明細書には,ガイド手段の作用効果に関する記載はあるが,ガイド手段の構成に関する記載はない。また,本件特許の請求項1(本件発明)と請求項2のガイド手段に関する記載は整合していない。したがって,本件発明の特許請求の範囲の記載は,発明の詳細な説明において記載された範囲を超えており,しかも,明確なものでないから,本件特許は特許法36条 項2のガイド手段に関する記載は整合していない。したがって,本件発明の特許請求の範囲の記載は,発明の詳細な説明において記載された範囲を超えており,しかも,明確なものでないから,本件特許は特許法36条6項1号及び2号の各規定に違反する(同法123条1項4号)。イ本件発明は,国際公開第00/27332号(乙1の1~3。以下「刊行物1」という。),米国特許第6203106号明細書(乙4の1・2。以下「刊行物2」という。)及び特開平10-328241号公報(乙5。以下「刊行物3」という。)に記載された発明と同一であり,又は,少なくとも,刊行物1に記載された発明に刊行物2及び3に記載された周知技術を適用し,若しくは刊行物2に記載された発明に刊行物1及び3に記載された周知技術を適用することにより,当業者が容易に発明することができたものである。したがって,本件発明は新規性又は進歩性を欠くから,本件特許は特許法29条1項3号又は同条2項の規定に違反する(同法123条1項2号)。(原告の主張)争う。本件特許に記載不備の違法はなく,また,本件発明が新規性又は進歩性を欠くことはない。なお,仮に本件発明が進歩性等を欠くとしても,原告が行った訂正請求(前記1(2)ウ)により,この点は解消されている。したがって,被告の主張する無効理由は認められない。(3) 争点3(原告の損害額)について(原告の主張)被告は,平成17年5月27日(本件特許権の設定登録日)から平成23年8月27日までの6年3か月間に,1か月当たり,イ号物件を10台,ロ号物件を25台,それぞれ製造して販売した。1台当たりの販売価格はイ号物件が17万5000円,ロ号物件が19万8000円であり,被告の利益率はいずれも25%を下らない。したがって,被告がこれらの製 号物件を25台,それぞれ製造して販売した。1台当たりの販売価格はイ号物件が17万5000円,ロ号物件が19万8000円であり,被告の利益率はいずれも25%を下らない。したがって,被告がこれらの製造及び販売により得た利益は,イ号物件が3281万2500円(10台×75月×17万5000円×25%,ロ号物件が9281万2500円(25台×75月×19万8000円×25%)であり,合計1億2562万5000円となる。よって,原告は,被告に対し,特許法102条2項,民法709条に基づき,特許権侵害による損害賠償金1億2562万5000円及びこれに対する不法行為の後である平成23年9月9日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。(被告の主張)争う。第3 当裁判所の判断 1 争点1(構成要件B-3の充足性)について被告製品は,車輪フレーム体に,内側に座席フレーム体の底フレームが挿通され,座席フレーム体の両側部において車輪フレーム体の間隔を規制する構成を有する間隔規制枠を備えている。原告は,この間隔規制枠が構成要件B-3にいう「ガイド手段を構成するガイドフレーム」に当たり,上記のような間隔規制枠の構成は,下向きにかかる力を支えるものでないとしても,構成要件B-3の「支持」を充足する旨主張するので,以下,検討する。(1) まず,特許請求の範囲の記載についてみるに,「支持」とは,その文言上,支えること,支えて持ちこたえることをいうところ(広辞苑〔第6版〕1221頁参照),本件特許の特許請求の範囲の請求項1には,ガイドフレームが座席フレーム体を「支持」すること(構成要件B-3)に加え,上部フレームが座席フレーム体を「支持」すること(構成要件B-1)が記載され ており 特許請求の範囲の請求項1には,ガイドフレームが座席フレーム体を「支持」すること(構成要件B-3)に加え,上部フレームが座席フレーム体を「支持」すること(構成要件B-1)が記載され ており,ガイドフレームが上部フレームと共に座席フレーム体を支持するものであることが本件発明の構成要件とされている。そして,座席フレーム体は障害者を座位可能に「支持」するものであり(構成要件A),障害者の体重が座席フレーム体に対して下向き(重力方向)にかかることは明らかであるから,ガイドフレーム及び上部フレームが座席フレーム体を「支持」するとは,下向きにかかる障害者の体重及び座席フレーム体の重量を支えることを意味するということができる。そうすると,特許請求の範囲の文言上,「支持」の具体的な構成についての記載はないものの,下向きにかかる力を支えない場合には「支持」に当たらないと解することができる。(2) 次に,本件明細書の記載(図面を含む。)を考慮すると(特許法70条2項参照),構成要件B-3にいう「支持」の意義は次のように解釈することができる。ア本件明細書の【発明の詳細な説明】欄には,「支持」に関して,以下の趣旨の記載がある(甲3)。(ア) 従来技術のリクライニング可能な車椅子は,座席フレーム体がサイドフレームと前フレームと後フレームと背フレームとを有して構成され,背フレームが座(又はサイドフレーム)に対して傾倒するというものである。そのため,① 障害者は座位した姿勢を崩さずにリクライニングすることができず,重度な障害者ではリクライニング動作が困難となることがあるという問題点と,② 背フレームが座(又はサイドフレーム)に対してピンのみで支持するように構成されていることから,ピンで障害者の重量を受けることとなり,ピンが破損しやす 動作が困難となることがあるという問題点と,② 背フレームが座(又はサイドフレーム)に対してピンのみで支持するように構成されていることから,ピンで障害者の重量を受けることとなり,ピンが破損しやすく危険を伴うという問題点があった。(段落【0002】~【0006】)(イ) 本件発明は,上記問題点を解決するためにされたものであり,① 障害者の安定した姿勢を保持した状態でリクライニング作用が行なえると ともに,② 堅固に構成されたリクライニング機構を有する車椅子を提供することを目的とする。(段落【0007】)(ウ) 上記目的を達成するため,本件発明は,車輪フレーム体が障害者を座位可能に支持する座席フレーム体を間にして左右に一対配置されて構成される車椅子であって,それぞれの車輪フレーム体は,座席フレーム体の両側において,座席フレーム体に軸着して座席フレーム体を揺動可能に支持する上部フレームと,上部フレームの下方に配置される下部フレームと,座席フレーム体の揺動時に座席フレーム体を支持して摺動可能なガイド手段を構成するガイドフレームとを有して枠体状に構成されていることを特徴とする。(段落【0008】)(エ) 本件発明の車椅子は,座席フレーム体の背フレームを,車輪フレーム体に対して傾倒させる際,座席フレーム体は,車輪フレーム体のガイドフレームに案内されながら,左右一対の車輪フレーム体に対して揺動される。そして,① 座席フレーム体は,背フレームとサイドフレームと脚フレームとを備えて構成されていることから,座席フレーム体に座位する障害者は,座位姿勢のままでリクライニング作用を行なうことができ,身体を動かせない重度な障害者であっても,安定した姿勢でリクライニングすることが可能となる。さらに,② 座席フレーム体が,車輪フレーム 害者は,座位姿勢のままでリクライニング作用を行なうことができ,身体を動かせない重度な障害者であっても,安定した姿勢でリクライニングすることが可能となる。さらに,② 座席フレーム体が,車輪フレーム体に対して揺動する際,揺動支点部のピンだけでなくガイド手段で支持されて摺動することができることから,障害者の体重を十分に支持することができて,障害者を安心して車椅子に搭乗させてリクライニングさせることができる。(段落【0013】)(オ) 本件発明の実施形態の車椅子においては,座席フレーム体を構成するサイドフレーム22は,上部フレーム11の頂点部111下面で筒体131を介して固着された支点部13の軸132の先端に筒体221を介して枢着するように連結されていることから,座席フレーム体20は車輪フレーム体10に対して揺動可能に配置されている。そして,座席フレーム体20の底フレーム23に2か所で固着されたブラケット26が,ガイドフレーム14を囲うように配置されるとともに,パイプ状に形成されたガイドフレーム14の外周面を把持して摺動可能に配置された一対のローラ27,27を軸支するようにして形成されている。また,座席フレーム体20は,車輪フレーム体10に対して,底フレーム23を介してガイドフレーム14に案内されながら揺動されるとともに,座席フレーム体20に搭乗する障害者の体重は一対のローラ27,27を介して車輪フレーム体10で支持される構成となっている。したがって,リクライニング時に,座席フレーム体20が車輪フレーム体10に対して揺動する際,揺動支点部13の軸132だけでなく,ローラ27を介してガイドフレーム14で支持されて摺動することができることから,障害者の体重を十分に支持することができて,障害者を安心して車椅子1に搭乗させてリ 揺動支点部13の軸132だけでなく,ローラ27を介してガイドフレーム14で支持されて摺動することができることから,障害者の体重を十分に支持することができて,障害者を安心して車椅子1に搭乗させてリクライニングさせることが可能となる。(段落【0024】~【0026】,【0044】,【図1】,【図3】~【図5】及び【図7】)。イ本件明細書の上記記載を総合すると,本件発明は,従来の車椅子には,リクライニング時に,① 座位した姿勢を崩さずにリクライニングすることができず,重度な障害者ではリクライニング動作が困難となることがあり,また,② ピンで障害者の重量を受けることから,ピンが破損しやすく危険を伴うという問題点があったので,これらを解決するため,① 座席フレーム体については,背フレームとサイドフレームと脚フレームとを備え,その全体が車輪フレーム体に対して揺動するように構成するとともに,② 車輪フレーム体は,座席フレーム体が車輪フレーム体に対して揺動する際に,座席フレーム体と車輪フレーム体が軸着される上部フレームの揺動支点部のみならず,ガイドフレームでも障害者の体重を支えて摺動することができるとの構成を採用したものであると認められる。したがって,構成要件B-3にいう「支持」とは,ガイドフレームが上部フレームと共に障害者の体重(下向きの力)を支えることをいうもの,換言すると,上部フレームの揺動支点部にかかる障害者の体重による負荷を軽減するために,ガイドフレームにも上記負荷がかかるものであることを要すると解釈することができる。(3) 以上によれば,構成要件B-3にいう「支持」に当たるというためには,ガイドフレームが座席フレーム体にかかる障害者の体重,すなわち重力方向(下向き)の力を支えるものであることを要すると判断する 3) 以上によれば,構成要件B-3にいう「支持」に当たるというためには,ガイドフレームが座席フレーム体にかかる障害者の体重,すなわち重力方向(下向き)の力を支えるものであることを要すると判断することが相当である。(4) 被告製品の間隔規制枠は,別紙イ号物件目録及び同ロ号物件目録の各写真7A,7B,8A及び8Bにみられるとおり,内側に座席フレーム体の底フレームが挿通され,座席フレーム体の両側部において,車輪フレーム体の間隔を規制する構成であり(検乙1,2),その構成に照らし,座席フレーム体にかかる障害者の体重を支えるものと認めることはできない。そうすると,被告製品は,構成要件B-3の「支持」を充足しないと解すべきものである。(5) これに対し,原告は,(ア) 本件発明は,車輪フレーム体を左右に独立に配置した車椅子において,「円弧方向にハの字型に開こうとする力」が働き,座席フレーム体が下がってしまうという課題を解決するため,ガイド手段によって座席フレーム体が下がらないように支持するというものであること,(イ) 本件明細書の実施形態によれば,ガイドフレームの外周面を両側から把持するローラが支えるのは「円弧方向にハの字型に開こうとする力」を制御する方向のみであることからすれば,構成要件B-3の「支持」とは,座席フレーム体の揺動時に車輪フレーム体に発生する「円弧方向にハの字型に開こうとする力」をガイド手段によって規制し,その結果,座席フレーム体が下がらないように支えることを含む旨主張し,これを前提に,(ウ) 被告製品の車輪フレームに円弧方向にハの字型に開こうとする力が働き,間隔規制枠の座席フレーム体側の内側面が底フレームの外周面に接するので,「支持」の要件を充足する旨主張する。そこで判断するに,(ア)につ 車輪フレームに円弧方向にハの字型に開こうとする力が働き,間隔規制枠の座席フレーム体側の内側面が底フレームの外周面に接するので,「支持」の要件を充足する旨主張する。そこで判断するに,(ア)について,前記(2)イのとおり,本件明細書には,揺動支点部のピンのみで障害者の体重を支えるのではなく,ガイドフレームでも障害者の体重を支えるという技術思想が開示されているというべきであり,車輪フレーム体に「円弧方向にハの字型に開こうとする力」がかかることや,このような力がかかることを課題として,その解決手段として本件発明の構成を採用したことの記載はない。また,(イ)について,本件明細書に開示された実施形態では,底フレームに固着されたブラケットがガイドフレームの外周面を把持して摺動可能に構成されたローラを軸支するものとされているから,ガイドフレーム(車輪フレーム体)がその外周面を把持するローラを介して底フレーム(座席フレーム体)にかかる障害者の体重を支える構成を有していることは明らかであり(段落【0025】,【0044】,図1,3及び5),「円弧方向にハの字型に開こうとする力」を規制する構成が開示されているとは認められない。さらに,(ウ)について,仮にそのような事実が認められるとしても,座席フレーム体に軸着する揺動支点部にかかる障害者の体重による負荷を軽減する構成であるとはいえないから,前記(2)イの説示に照らせば,本件発明の構成要件B-3にいう「支持」を充足するということはできない。したがって,原告の主張は採用することができない。(6) 以上のとおり,被告製品は構成要件B-3を充足しないから,本件発明の技術的範囲に属するとは認められない。 2 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はい 上のとおり,被告製品は構成要件B-3を充足しないから,本件発明の技術的範囲に属するとは認められない。 2 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第46部裁判長裁判官長谷川浩二裁判官清野正彦裁判官髙橋彩

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る