平成17年7月5日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成15年(ワ)第10368号損害賠償等請求事件(口頭弁論終結の日平成17年4月25日)判決原告アキレス株式会社訴訟代理人弁護士安原正之同佐藤治隆同小林郁夫同鷹見雅和被告興和機材株式会社被告 A上記被告2名訴訟代理人弁護士岡内真哉同並河宏郷被告株式会社協同訴訟代理人弁護士橘高郁文 主文 1 被告ら3名は,原告に対し,連帯して8923万4368円,及び,これに対する,被告興和機材株式会社及び被告株式会社協同については平成15年4月1日から,被告Aについては同年5月18日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告興和機材株式会社及び被告Aは,原告に対し,連帯して3億7979万6348円,及び,これに対する被告興和機材株式会社については平成15年4月1日から,被告Aについては,平成17年2月5日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ,連帯して3億7979万6348円,及び,これに対する被告興和機材株式会社については平成15年4月1日から,被告Aについては,平成17年2月5日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用はこれを5分し,その1を被告ら3名の連帯負担とし,その余を被告興和機材株式会社及び被告Aの連帯負担とする。 4 原告の被告Aに対するその余の請求を棄却する。 5 この判決は,第1,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告ら3名は,原告に対し,連帯して8923万4368円及びこれに対する平成15年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告興和機材株式会社及び被告Aは,原告に対し,連帯して3億7979万6348円及びこれに対する平成15年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,後記二つの商標権を有する原告が,被告興和機材株式会社(以下「被告興和機材」という。)及び被告株式会社協同(平成17年4月1日,旧商号「協同ゴム工業株式会社」から現商号に変更登記。以下「被告協同ゴム」という。)が,別紙「被告標章目録」1ないし3に記載の標章(以下「被告標章1」,「被告標章2」などといい,まとめて「被告各標章」という。)を,ゴム製排水管用継手(以下「ゴム継手」という。)又は塩化ビニール製排水管用継手(以下「塩ビ継手」といい,ゴム継手とまとめて「管継手」という。)等に使用して販売した行為が,原告が有する後記各商標権を侵害するものであるとして,原告が,被告興和機材及び被告協同ゴムに対し,商標法38条2項に基づいて損害賠償を求め,また,被告興和機材の代表取締 等に使用して販売した行為が,原告が有する後記各商標権を侵害するものであるとして,原告が,被告興和機材及び被告協同ゴムに対し,商標法38条2項に基づいて損害賠償を求め,また,被告興和機材の代表取締役である被告Aに対して,商法266条の3に基づき損害賠償を求めている事案である。 1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)ア当事者a) 原告は,ゴム及び合成樹脂製品の製造加工及び販売等を目的とする株式会社である。 b) 被告興和機材は,管工機材の製造及び販売等を業とする株式会社であり,被告Aは,同社の代表取締役である(なお,被告興和機材は,本件口頭弁論終結後の平成17年5月25日午後5時に破産宣告を受け,同日,破産管財人として弁護士濱田芳貴が選任された。)。 c) 被告協同ゴムは,工業用ゴム製品の販売等を業とする株式会社である。 イ原告が有する商標権原告は,下記の各商標権を有している(以下,順に「本件商標権1」,「本件商標権2」といい,登録商標を「本件登録商標1」,「本件登録商標2」という。また,これらを合わせて「本件各商標権」あるいは「本件各登録商標」という。)。(甲1ないし4)a) 本件商標権1登録番号第2636168号登録商標別紙登録商標目録1記載のとおり出願日平成4年1月31日登録日平成6年3月31日指定商品第9類産業機械器具,動力機械器具(電動機を除く)風水力機械器具,事務 6年3月31日指定商品第9類産業機械器具,動力機械器具(電動機を除く)風水力機械器具,事務用機械器具(電子応用機械器具に属するものを除く)その他の機械器具で他の類に属しないもの,これらの部品および附属品(他の類に属するものを除く)機械要素b) 本件商標権2登録番号第1487821号登録商標別紙登録商標目録2記載のとおり出願日昭和52年4月19日登録日昭和56年11月27日指定商品第9類産業機械器具,動力機械器具(電動機を除く)風水力機械器具,事務用機械器具(電子応用機械器具に属するものを除く)その他の機械器具で他の類に属しないもの,これらの部品及び附属品(他の類に属するものを除く)機械要素ウ本件に至る経緯a) 従来の取引関係① 原告(当時の商号は「興国化学工業株式会社」)と被告協同ゴムは,昭和54年6月,本件各登録商標又はこれと類似の商標を使用した管継手に係る特別仕様成型品に関する契約を締結した(甲5)。被告協同ゴムは,同契約に基づいて,原告から支給された原材料を用いて,ゴム継手を製造し,これを原告から支給されたダンボールやビニール袋等を用いて梱包し,原告に納品していた(なお,被告協同ゴムは下請会社に同ゴム継手を製造させることもあった。)。 給された原材料を用いて,ゴム継手を製造し,これを原告から支給されたダンボールやビニール袋等を用いて梱包し,原告に納品していた(なお,被告協同ゴムは下請会社に同ゴム継手を製造させることもあった。)。 このとき両者が交わした「アキレスジョイント(管継手)に係る特別仕様成型品に関する契約書」(甲5)の7条には,「乙(判決注・被告協同ゴム)はこの契約期間中,当社ブランドを付した製品及びこれに類似した製品に関して,独自に製造,販売することは出来ない。」と規定されていた。 そして,被告協同ゴムから原告に納品されたゴム継手は,原告から岡谷鋼機株式会社(以下「岡谷鋼機」という。)を通して,被告興和機材に販売され,被告興和機材が代理店等に販売していた。 ② 塩ビ継手については,原告は,原告が指定する原材料により,訴外株式会社日本興産(以下,「日本興産」という。)に製造及び納品させ,これを岡谷鋼機を通して被告興和機材に販売し,被告興和機材がその代理店等に販売していた。 ③ 原告と被告興和機材は,平成5年2月28日,「相互の協力,努力によって需要者開拓が継続された結果,ゴムまたはプラスチックを材料とする排水管用継手商品『アキレスジョイント』(以下本商品という)が業界内に周知されるに至った経過を認め,より一層の発展のため次の通り取引契約を締結する。」との前文が掲げられた契約書(甲6・取引契約書)を取り交わした。原告と被告興和機材の取引製品の範囲は,「1.製品に『アキレス』のブランド名を冠し,甲(判決注・原告)の登録商標を添付したゴム又はプラスチックを材料とする排水管継手。 2.その他甲と乙(判決注・被告興和機材)にて合意した商品」(同契約書第2条)と規定され,原告が被告興和機材に対し 甲(判決注・原告)の登録商標を添付したゴム又はプラスチックを材料とする排水管継手。 2.その他甲と乙(判決注・被告興和機材)にて合意した商品」(同契約書第2条)と規定され,原告が被告興和機材に対し,同製品を継続的に供給すること,原告と同被告は互いに販売ルートが競合しないように連絡を密にすることが合意された(同契約書第1条,第4条2項)。 ④ 上記のとおり,従来から,ゴム継手については,被告協同ゴムが製造し,これを原告に納入し,原告から岡谷鋼機を通して被告興和機材に納入し,被告興和機材が代理店等に販売するという販売経路で,また,塩ビ継手については,日本興産において製造したものを原告に納品させ,原告から岡谷鋼機を通して被告興和機材に納入し,被告興和機材が代理店等に販売するという販売経路で取引が行われていた(以下,当該販売経路による販売を「正規ルートによる販売」ともいう。)。 b) 正規ルートによる販売以外の製造,販売の発覚① 平成14年3月ころ,被告協同ゴム及び被告興和機材が,原告を経由することなく,被告各標章を使用してゴム継手を販売している事実が原告に判明した(以下では,被告協同ゴムが製造し,正規ルートを経由せず,被告興和機材が販売した製品を,特に「被告協同ゴム侵害製品」ともいう。)。 ② 原告が,上記事実を被告興和機材及び被告協同ゴムに指摘したところ,両社とも事実関係を認めて原告に陳謝したため,原告と被告興和機材は,平成14年7月4日,「多年にわたりゴムまたはプラスチックを材料とする排水管用継手商品『アキレスジョイント』(以下本商品という)を相互に協力して需要者開拓をしてきた結果,業界において確固たる信用を得てきました。今後も互いの協力のもと,更なる発展を目指していく為に,本取 管用継手商品『アキレスジョイント』(以下本商品という)を相互に協力して需要者開拓をしてきた結果,業界において確固たる信用を得てきました。今後も互いの協力のもと,更なる発展を目指していく為に,本取引約定書を締結する。但し,今般乙(判決注・被告興和機材)が従前の契約に反し,問題が生じたため,従前の契約を全て終結することで合意し,新たに次の通り取引契約を締結する。」との前文を掲げた契約書(甲7・取引約定書)を取り交わし,原告がその商品を被告興和機材以外の代理店には原則として販売しないこと,被告興和機材にまた不正があった場合には,原告は契約を解除することができ,その場合には,原告は被告興和機材を通さず,直接,同被告の販売店へ販売することができること(同契約第4条1項,第3条4項)などが合意された(以下,このとき締結された同契約を「新契約」という。)。 また,原告と被告協同ゴムについても,同年9月12日,原告と被告協同ゴムとは,原告と被告協同ゴムで「過去取り交わされた契約に乙(判決注・被告協同ゴム)が違反する行為(商標権の侵害)を行ったので,今後の為,甲,乙(判決注・原告と被告協同ゴム)間で下記のとおり合意する。」との前文の掲げられた覚書(甲8)を取り交わした(以下,このとき交わされた合意を「新覚書」という。)。 原告と被告協同ゴムは,新覚書により,被告協同ゴムは,「ゴムまたはプラスチックを材料とするアキレスジョイント及び類似品を製造及び販売しない。」ことなどを条件に,原告が被告協同ゴムに対し損害賠償請求をしない旨を合意した。 ③ ところが,平成14年10月末ころ,被告興和機材及び被告協同ゴムが,新契約及び新覚書の締結以降も,正規ルートによる販売によらず,被告各標章を使用して被告 をしない旨を合意した。 ③ ところが,平成14年10月末ころ,被告興和機材及び被告協同ゴムが,新契約及び新覚書の締結以降も,正規ルートによる販売によらず,被告各標章を使用して被告協同ゴム侵害製品の販売を継続していることが原告に判明した。 原告が,その旨を被告両社に告げると,被告興和機材は,原告に対し,被告協同ゴムから被告各標章を使用した被告協同ゴム侵害製品を直接購入していた事実を認める報告書(甲9)を提出した。 ④ 原告は,もはや,被告興和機材との取引関係を継続することはできないとして,平成15年2月27日到達の内容証明郵便にて被告興和機材に対し,新契約を解除する旨の意思表示をした(甲11の1及び2)。 これに対し,被告興和機材の代理人弁護士から原告の代理人弁護士に対し,平成15年3月4日付けで,取引関係の継続を求める回答書(甲13)が送付された。しかし,被告興和機材が,本件登録商標1と同一の標章が付された塩ビ継手を,平成14年10月から平成15年2月28日までの間,原告を通さずに日本興産から取り扱っていた事実も判明したため,原告は,同年3月25日到達の内容証明郵便にて,改めて被告興和機材に対し,新契約の継続はできないこと及び本件各商標権侵害に基づく損害賠償等を請求した(甲17の1及び2)。 ⑤ 原告は,被告協同ゴムに対しても,平成15年2月27日到達の内容証明郵便にて,本件各商標権侵害の警告を行い,事実関係の報告を求めた(甲12の1及び2)ところ,被告協同ゴムからも,概ね事実を認める内容の書面(甲15の1)が原告宛てに送付された。 2 本件の争点(1) 被告らの行為が,原告の有する本件各商標権を侵害するかア被告らの行 協同ゴムからも,概ね事実を認める内容の書面(甲15の1)が原告宛てに送付された。 2 本件の争点(1) 被告らの行為が,原告の有する本件各商標権を侵害するかア被告らの行為の内容(争点1)イ被告らが販売した製品は,原告の有する本件各商標権の指定商品に含まれるか-指定商品との同一性又は類似性(争点2)ウ本件各登録商標と被告各標章との類似性(争点3)(2) 原告の損害の内容及び額ア被告らの販売数量及び利益の額(争点4)イ商標法38条2項の適用の可否(争点5)(3) 被告Aの責任(争点6)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告らの行為の内容)について(1) 原告の主張ア被告協同ゴム又は被告協同ゴムの従業員は,平成9年1月ころから平成15年3月ころまで間,原告の承諾なく,被告標章1を付したゴム継手を製造して,被告興和機材に販売した。 イ被告興和機材は,平成9年1月ころから平成15年3月ころまでの間,原告の承諾なく,ゴム継手及び塩ビ継手を,その指示により被告協同ゴム以外の第三者ないし下請けに製造させて販売した。これらの製品の梱包用段ボールには,原告商号である「アキレス株式会社」が製造元として表示されるとともに,被告標章1ないし3が付されていた。また,ゴム継手の包装用ビニール袋の一部には,被告標章1が付されていた。さらに,これらの製品のカタログには,被告標章1,被告標章2及び被告標章1と社会通念上ほぼ同一とみられる「 ACHILLESJOINT 」が使用されていた(以下,被告興和機材が原告を経由することなく,被告協同ゴム,その従業員又は他の第三者から仕入れ,販売したすべての製品を「被告侵害製品」 とみられる「 ACHILLESJOINT 」が使用されていた(以下,被告興和機材が原告を経由することなく,被告協同ゴム,その従業員又は他の第三者から仕入れ,販売したすべての製品を「被告侵害製品」という。)。 (2) 被告興和機材及び被告Aの主張被告興和機材の指示により,下請けに製造させたとの点は否認する。 また,梱包用段ボールについては,常に「アキレス株式会社」を製造元として表示し,被告標章1ないし3を付していたわけではなく,同様に,ゴム継手の包装用ビニール袋にも,常に被告標章1を付していたわけではない。 (3) 被告協同ゴムの主張被告協同ゴム又は被告協同ゴムの従業員は,平成9年ころから平成14年12月までの間,原告の承諾なく,被告標章1を付したゴム継手を製造,販売し,被告興和機材は,平成9年ころから平成15年3月ころまでの間に,被告協同ゴムから直接仕入れた同製品を販売した。 2 争点2(指定商品との同一性又は類似性)について(1) 原告の主張本件各登録商標は,平成3年法律第65号による改正(施行日は平成4年4月1日)前の商標法(以下「旧法」という。)に基づく出願に係るものであり,いずれの出願も,出願当時の商標法施行令(平成3年9月25日政令第299号改正前のもの。以下「旧施行令」という。)1条の別表第9類の「機械要素」を含む商品区分の商品を指定商品として登録されたものである。 本件各登録商標の出願当時における商標法施行規則(以下「旧施行規則」という。)3条においては「商標法施行令第1条の規定による商品の区分に属すべき商品は,別表のとおりとする。」とされており,その別表には第9類の機械要素として,「七管継ぎ手」が明記されている(以 」という。)3条においては「商標法施行令第1条の規定による商品の区分に属すべき商品は,別表のとおりとする。」とされており,その別表には第9類の機械要素として,「七管継ぎ手」が明記されている(以下,旧施行令による商品区分を「旧商品区分」という。)。 旧商品区分上においては,「管継ぎ手」が属すべき指定商品の区分は第9類以外にはなく,第9類全体を指定商品としている本件各登録商標の指定商品の中の「管継ぎ手」に,被告侵害製品が属することは明白である。 (2) 被告ら3名の主張ゴム継手は,本件各登録商標の指定商品である「管継ぎ手」には含まれず,また,旧商品区分の第9類に掲げられる商品と類似しない。第9類に掲げられた指定商品は,あくまで金属加工等の産業用機械器具に使用される軸,ベアリング,歯車,バネ,バルブ等と同様の,機械の要素としての継手である。他方,管継手は,家庭やオフィスビル等のトイレ,洗面所等の排水管の接続に使用されるものであって,第9類に区分される産業用機械器具の機械要素としての管継ぎ手とは,材質,性能,需要者,流通経路,使用方法が異なるため,産業用機械器具の機械要素としての継ぎ手と同一の商品区分に属さず,また,同商品区分に属する商品と類似してもいない。 したがって,管継手は,産業用機械器具の機械要素としての継手とは同一商品ではなく,これと類似もしていない。 3 争点3(本件各登録商標と被告各標章との同一性又は類似性)について(1) 原告の主張ア被告標章1又は2の「Joint」又は「ジョイント」は継手を表すものであるから,被告標章1(「 AchillesJoint 」)の要部は「Achilles」の部分にあり,また,被告標章2(「アキレスジョイント」)の 「Joint」又は「ジョイント」は継手を表すものであるから,被告標章1(「 AchillesJoint 」)の要部は「Achilles」の部分にあり,また,被告標章2(「アキレスジョイント」)の要部は「アキレス」にある。 したがって,被告標章1及び被告標章2は,本件登録商標1及び本件登録商標2と類似する。 イ被告標章3が,本件登録商標1及び本件登録商標2と類似することは明らかである。 (2) 被告ら3名の主張争う。 4 争点4(被告らの販売数量及び利益の額)について(1) 原告の主張裁判所が公認会計士Bに命じた計算鑑定(以下「本件計算鑑定」という。)によれば,被告興和機材は,平成9年1月1日から平成15年3月末までの間,本件各商標権侵害行為により,4億6903万716円の利益を得た。そのうち,①被告協同ゴムからの仕入れに関するものが7027万3788円,②被告協同ゴム従業員からの仕入れに関するものが1896万0580円であるから,この合計は8923万4368円である。 (2) 被告興和機材及び被告Aの主張本件計算鑑定の対象となった製品のうち,「ASP25」,「ASP92」,「ハイカンカバーAC240」,「AY05F75」,「AY05F100」,「AW-08TOTO」,「AW-08INAX」,「AF04」,「AF04ホンタイ」,「KF75」,「AJ103」,「AW80T」,「AW80i」には,被告標章1は付されていない。 被告興和機材が,被告各標章が付されていない商品を原告以外から購入して販売しても,本件各商標権を侵害するものではないから,上記製品の販売により得た利益を本件各商標権侵害行為により得た利益に含めるべ 被告興和機材が,被告各標章が付されていない商品を原告以外から購入して販売しても,本件各商標権を侵害するものではないから,上記製品の販売により得た利益を本件各商標権侵害行為により得た利益に含めるべきではない。 したがって,これらの販売利益については,除外されるべきである。 (3) 被告協同ゴムの主張ア被告興和機材の販売数量及び利益額については知らない。 イ被告協同ゴムが,被告興和機材に対し,原告の承諾なく,ゴム継手を販売したことによる売上げは,平成12年11月から平成14年12月の間において,帳簿(丙1の1ないし7)上は6116万6419円であるが,741万9220円の上乗せ分があるため,実際の売上総額は5374万7199円である。すなわち,被告協同ゴムの帳簿には,被告興和機材が,被告協同ゴムの社員(C係長)と結託して,原告納品用のゴム継手を横流しさせていたことがあり,被告興和機材に横流ししていたゴム継手を,経理上売上として処理しただけであり,実際にはその分の被告協同ゴムから被告興和機材への売上げがあったわけではなく,被告興和機材から実際に入金があったわけでもなく,入金があったように処理されているだけの部分が記載されている。 すなわち,被告協同ゴムは,被告興和機材において,当時営業の実権を握っていたD部長から融資の依頼を受け,同人に対し,被告協同ゴムの会長のE(以下「被告協同ゴム会長」という。)が平成14年5月24日に150万円,被告協同ゴムが同年6月10日に350万円,合計500万円を融資したことがあり,その返済を被告興和機材に対する売上代金に上乗せして支払うことを約し,上記のとおり,売上代金の上乗せがなされたのである。 5 争点5(商標法38条2項適用の可否)に 00万円を融資したことがあり,その返済を被告興和機材に対する売上代金に上乗せして支払うことを約し,上記のとおり,売上代金の上乗せがなされたのである。 5 争点5(商標法38条2項適用の可否)について(1) 原告の主張ア本件各商標権の侵害行為は,①被告興和機材と被告協同ゴム,②被告興和機材と被告協同ゴムの従業員,③被告興和機材と第三者(被告協同ゴム及び被告協同ゴム従業員以外の第三者)の三つの態様による共同不法行為である。 被告協同ゴムは,被告協同ゴムの従業員の行為について使用者としての責任を負うから,上記①及び②の場合について,被告興和機材と連帯してその責任を負うべきである。 したがって,原告に対し,被告興和機材及び被告協同ゴムは,被告興和機材が本件各商標権の侵害行為により得た4億6903万716円の利益のうち,商標法38条2項,民法719条1項,715条1項本文に基づき,連帯して,8923万4368円の損害賠償義務を負い,被告興和機材は,その他に,商標法38条2項に基づき,3億7979万6348円の損害賠償義務を負うものである。 イ被告の主張に対する反論(商標法38条2項の適用について)a) 損害の発生について① 被告らは,原告にはいわゆる中間マージンに相当する損害しか生じないと主張する。 しかし,原告は,被告協同ゴムに対し,製品の原材料を納入することによる利益を上げてきただけでなく,被告らの侵害行為がなければ,被告らを介さずして,独自に製品を販売することにより被告らと同程度の利益を上げられたのである。 商標法38条2項は,同条1項と異なり,必ずしも権利者が実際に侵 なければ,被告らを介さずして,独自に製品を販売することにより被告らと同程度の利益を上げられたのである。 商標法38条2項は,同条1項と異なり,必ずしも権利者が実際に侵害者と全く同様の実施形態を実際にとっていなければならないとするものではない。また,侵害行為が行われた当時,侵害品の数量に対応する製品を権利者において直ちに供給することが実際に可能な状態にあった必要はなく,権利者が,侵害行為がなければ権利者としてこれらに代わって供給できる潜在的な能力を有すれば,38条2項の推定を認めるべきである。 被告らの主張を前提とすれば,被告らが,商標権侵害行為によって不当に得た利益を,被告らの元に残すという社会正義に反する結論を認めることになる。 原告が,被告らの侵害行為当時,ユーザーに対して直接販売を行っていなかったのは,被告らとの間に契約が存在したためであって,このような事情がなければ,原告も被告興和機材と同等の販売行為を行っていたはずである。実際に,原告は,被告らの侵害行為当時,既に,被告協同ゴム以外の製品供給先も確保しており,被告らとの間の取引関係が完全に消滅してからも原告独自に販売ルートを速やかに確立し,被告らを介さず製品を販売しているのである。特に,後述のとおり,本件各登録商標には格別の顧客吸引力があるので,被告らが販売した侵害品が吸収した市場利益の全額を,権利者たる原告の損害額と推定することには強い合理性がある。 ② 侵害品がいったん販売されれば相当期間利用され続け,再度の需要が生じるまでに相当な期間が必要となる場合,権利者が喪失した市場機会は,当該侵害品の販売時における権利者の市場機会を奪うのみならず,ユーザーにおいて侵害品が利用さ ば相当期間利用され続け,再度の需要が生じるまでに相当な期間が必要となる場合,権利者が喪失した市場機会は,当該侵害品の販売時における権利者の市場機会を奪うのみならず,ユーザーにおいて侵害品が利用され続けることにより,権利者のそれ以降の市場機会をも奪うものである。 本件のような管継手の場合,いったん当該商品を販売・設置してしまえば,相当期間交換の必要性のない耐久性のある商品であるから,被告らの販売行為時以降も権利者である原告の市場機会が奪われたものといえる。 そうだとすれば,被告らの侵害行為時に厳密な意味での原告の実施行為を要するものではなく,被告らが得た利益が原告の損害であると推定することに合理性がある。 ③ 以上によれば,被告らの利益と原告の損害との間の因果関係は存在し,38条2項の推定は覆滅しないというべきである。 ウ本件各登録商標の顧客吸引力について被告らは,被告侵害製品の顧客吸引力には,本件各登録商標が寄与していない旨主張する。しかし,本件各登録商標に対する需要者の信頼が高かったからこそ,被告らは,原告と共同して製品を製造・販売することにしたものである。 本件各登録商標に高度の信用や顧客吸引力がなければ,被告らがわざわざ本件各登録商標と類似する被告各標章を付した包装用のビニール袋や段ボールを,原告に無断で制作してまで,被告侵害製品を販売する必要はないはずである。 被告興和機材は,本件各登録商標に類似する被告各標章を使用することができなくなって以降,独自の商標を付して管継手を販売してきたが,その販売がおもわしくなく,結局倒産状態になった。被告侵害製品は,本件各登録商標に類似する被告各標章が付 する被告各標章を使用することができなくなって以降,独自の商標を付して管継手を販売してきたが,その販売がおもわしくなく,結局倒産状態になった。被告侵害製品は,本件各登録商標に類似する被告各標章が付されることにより,製品価値が高まったものであり,本件各登録商標のもつ信頼性・品質保証機能は極めて高い。 (2) 被告興和機材及び被告Aの主張ア原告の損害は,被告協同ゴムと被告興和機材の中間で搾取していた利益が得られなくなったものにすぎない。したがって,原告は,被告侵害製品について,原告が正規のルートで製品を販売した場合の売上額から仕入れ額を控除して粗利を算出し,原告の仕入れ及び販売にかかる経費を控除した純利益を算出して,損害の計算をすべきである。 イ仮に,被告興和機材の行為が,商標権侵害行為に当たるとしても,商標法38条2項は,侵害者が商品を販売したことにより,商標権者が同一の購入者に販売する機会を喪失して損害を被ることを前提としている。 原告の販売先は,被告興和機材に限定されていたのであるから,同条を適用する前提を欠き,同条2項の適用はない。 ウ仮に,商標法38条2項が適用されるとしても,原告の逸失利益が,被告興和機材等の利益よりも低廉である場合,同条2項の推定覆滅事由となるというべきである。 原告の損害は,原告を経由しなかったために,搾取できなかった中間利益であり,本件各商標権侵害行為により原告の販売が減少した個数の販売高に販売時期に近い時点の原告の利益(純利益)率を乗じた額を計算し,各商品の逸失利益額を合計した額が原告の損害額となるというべきである。 エ原告は,被告らの上記主張を前提とすれば,被告らが商標権侵害行為によって不当に取得した利益 率を乗じた額を計算し,各商品の逸失利益額を合計した額が原告の損害額となるというべきである。 エ原告は,被告らの上記主張を前提とすれば,被告らが商標権侵害行為によって不当に取得した利益を,被告らの元に残すという社会正義に反する結論を認めることになる,と主張する。 しかし,損害賠償制度は,損害の公平な分担を目的とするものであって,懲罰的な賠償は認められない。商標法38条2項は,同条1項ただし書きと異なり,あくまでも証明責任の軽減のために,商標権侵害行為による利益を商標権者の損害と推定したものにすぎないというべきである。 (3) 被告協同ゴムの主張ア本件の場合,被告興和機材の販売行為がなければ,原告が被告侵害製品を販売し得たという因果関係を欠くから,商標法38条2項に基づく推定は働かない。 同項は,権利者において,侵害者が侵害行為により得ている利益と対比されるような同種同質の利益を現実に失ったという損害が発生している場合,経験則を前提として,侵害者が侵害行為により得ている利益を権利者の逸失利益と推定するものである。しかし,原告は,被告協同ゴムから仕入れた製品を被告興和機材だけに転売していただけであり,原告自らは製品の製造も行っていない。したがって,原告と被告興和機材は,市場において競合関係にあったわけではない。原告は,被告興和機材が行っていた顧客の新規獲得や獲得済みの顧客の維持,取引数量の拡大といった営業活動は行っていないのである。 イ原告が得られた利益は,原告の販売単価の30%であり,訴外株式会社タキノと被告協同ゴムからの原告の製品購入比率は,57%:43%であって,単価,経費は,発送・検査労役費のみでは5%を超えないと原告は,自認しているから(原告準 販売単価の30%であり,訴外株式会社タキノと被告協同ゴムからの原告の製品購入比率は,57%:43%であって,単価,経費は,発送・検査労役費のみでは5%を超えないと原告は,自認しているから(原告準備書面(4)参照),被告興和機材が被告協同ゴムや被告協同ゴム従業員から直接仕入れたゴム継手の品名及びその数量を本件計算鑑定から抽出し,これに原告の売値単価(販売単価)を掛けて原告の売上高を算出し,これを上記タキノと被告協同ゴムとの振り分けて原告の粗利を求め,粗利から5%を引くと,2547万2290円となる。 ウ商標権侵害においては,侵害商品の売上げが,登録商標の顧客吸引力によってのみ達成されていることは稀であって,商品自体の内容や侵害者の営業努力等の事情があいまって利益をあげているというのが通常である。 本件においても,被告侵害製品の売上げは,被告協同ゴム製造の製品の品質や被告興和機材の営業努力や信用によるところが大きく,本件各登録商標の顧客吸引力はたいしたものではない。 カタログについてみても,当初は,カタログの表紙に,被告興和機材の会社名とともに,原告の会社名や被告各標章が併記されていたが(甲40の1,2),昭和63年から平成3年ころは原告の会社名はカタログの表紙からはずされ,被告興和機材の単独表記となり,平成5年ころからは,カタログの表紙から被告各標章もなくなり,「排水用フレキシブルジョイント総合カタログ」(乙7)とされ,被告興和機材の会社名のみが記載されている。 このようなカタログの記載の変遷についてみても,本件各登録商標の売上への寄与ないし顧客吸引力が著しく減少していたことは裏付けられる。 したがって,原告の損害額については,被告らの行為と相当因果 タログの記載の変遷についてみても,本件各登録商標の売上への寄与ないし顧客吸引力が著しく減少していたことは裏付けられる。 したがって,原告の損害額については,被告らの行為と相当因果関係のある原告の逸失利益のみが認められるべきである。 6 争点5(被告Aの責任)について(1) 原告の主張ア被告興和機材は,従業員7人ほどの小規模な会社である。そして,被告興和機材は,被告各標章を使用した管継手の販売をその中心的業務とし,ほぼ独占的に同継手の販売にあたっていた。被告Aは,そのような被告興和機材の代表取締役であるから,本件商標権侵害行為が被告Aの指示ないし承認,少なくとも暗黙の了解のもとに,被告協同ゴムと共同でなされたものであることは明らかである。しかも,被告Aは,原告に本件各商標権侵害行為が発覚し,その中止を約束した後も,同侵害行為を継続したものであって,この経緯からしても本件各商標権侵害行為を主導して行った者であることは明らかである。 なお,被告興和機材及び被告Aが,具体的に本件各登録商標の存在を知らなかったとしても,被告らが使用した被告各標章は,いずれも原告の商号に基づく「アキレス」,「 Achilles 」を含むものであって,本件各登録商標の存在が当然に予測されていたのであるから,これを権限なく使用することは,故意による商標権侵害行為であり,少なくとも本件各商標権の侵害について重大な過失が有ることは明らかである。 したがって,被告Aは,商標権侵害行為者として他の被告らとともに損害賠償の責任がある。 イ被告Aは,被告興和機材の代表取締役として適法に業務執行をなし,取引先をはじめとして第三者に損害を生じさせないようにする義務を負う。被告興和機材は, とともに損害賠償の責任がある。 イ被告Aは,被告興和機材の代表取締役として適法に業務執行をなし,取引先をはじめとして第三者に損害を生じさせないようにする義務を負う。被告興和機材は,その中心的業務である,本件各登録商標を使用した管継手の販売行為により,本件各商標権を侵害して原告に損害を与えたものである。被告興和機材の行為が違法な行為であることは,前記のとおりであり,被告Aは故意にこれを行ったものと考えられる。仮に,被告興和機材の事務担当者が独断でなしたとしても,そのような違法な行為を被告Aが認知することは普通の注意を払っていれば容易なことである。被告Aは,そのような違法行為を防止すべき義務があり,それを見逃して原告に損害を与えたのであるから,重大な過失があるというべきである。 以上によれば,被告Aは,商法266条の3に基づき,被告興和機材が原告に対して与えた損害について,被告興和機材と連帯して賠償する義務を負う。 (2) 被告Aの主張被告Aは,仕入れについて,被告興和機材の担当者Fに任せており,原告から仕入れたものか,原告以外から仕入れたものかについて,全く知らなかった。 被告Aは,被告協同ゴム等からの直接購入について積極的な役割を果たしていたわけではなく,また,原告の有する本件各商標権についても知らなかったから,商法266条の3に基づく損害賠償義務は認められない。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(被告らの行為の内容)について被告興和機材の被告各標章の使用について,当事者間に争いのない事実,乙7及び弁論の全趣旨を総合すれば,次のとおりであると認められる(争点1(被告らの行為の内容)については,後述の「6 争点1(被告らの行為の内容)及び争点6(被告A いて,当事者間に争いのない事実,乙7及び弁論の全趣旨を総合すれば,次のとおりであると認められる(争点1(被告らの行為の内容)については,後述の「6 争点1(被告らの行為の内容)及び争点6(被告Aの責任)並びに被告らの責任について」の項で詳細に検討する。)。 (1) 被告興和機材が,平成9年1月1日から平成15年3月末日までの間に,販売したゴム継手又は塩ビ継手の梱包用段ボールには,原告の商号である「アキレス株式会社」が製造元として表示され,本件各被告標章が付されることが多かった。また,同ゴム継手の包装用ビニール袋には,被告標章1が付されることもあった。 (2)ア被告興和機材の平成5年以降に使用されたカタログの表紙には,「排水用フレキシブルジョイント総合カタログ」と表示され,INDEXの後に,「ACHILLESJOINT」と大きく記載された後に,各管継手製品の取付使用例が図とともに掲載されている。 イ被告興和機材の上記カタログに掲載された製品の中には,製品そのものに「AchillesJoint」(被告標章1)と刻印されているものもある(AK-2075L,ASK65VP,ASK65VUなど)が,何も刻印されていないものもある(ASP25など)。 ウ被告興和機材の上記カタログ中の製品の説明箇所では,「取付のポイント」として,「1 あらかじめ壁からアキレスジョイント排水管つきあて部までの距離を確認の上,配管してください。2 アキレスジョイント(AK2075L,AK2375S,AK2075S)配管カバー(AC240)を適当な長さにカットしてください。・・・4 排水管をアキレスジョイント排水管つきあて部まで差し込み,ステンレスバンドで固定した後,便器排水口をアキレスジョイント便器つきあて部まで差し込み 240)を適当な長さにカットしてください。・・・4 排水管をアキレスジョイント排水管つきあて部まで差し込み,ステンレスバンドで固定した後,便器排水口をアキレスジョイント便器つきあて部まで差し込み,ステンレスバンドで固定してください。」(同カタログ・7頁参照)などと記載されており,これにより,被告興和機材の上記カタログに掲載されたすべての製品に被告標章2(「アキレスジョイント」)を使用していた。 エ被告興和機材の上記カタログに掲載されている製品の性質等を紹介する箇所(同49頁)には,「アキレスジョイント軟質塩ビ製品の物性と耐薬品性」及び「アキレスジョイント特殊ブレンドゴム製品の物性と耐薬品性」と題し,それぞれの製品についての「一般物理特性」及び「耐薬品性」に関する表が掲載されており,被告標章2(「アキレスジョイント」)を被告興和機材の上記カタログに掲載された製品に同様に使用している。上記の各表は,被告興和機材の同カタログの46頁ないし48頁に掲載されている財団法人化学品検査協会の原告(アキレス株式会社)に対する試験報告書の試験結果を前提として,その物性等をまとめた表であるから,被告興和機材の同カタログに掲載されている製品は,原告の管継手製品と同一の物性,あるいは,同一の品質のものである。 オなお,昭和59年に作成された被告興和機材作成のカタログの表紙には,その上部に「アキレスジョイント総合カタログ」と表示され,その右側面に「」と「 Joint 」と横書きで表示され,その下部に被告興和機材の会社名と原告の会社名が上下段で記載されている(甲40の1)。昭和61年ないし昭和62年の被告興和機材発行のカタログの表紙も同様の表示がされている(甲40の2)。また,昭和63年ないし平成元年の被告興和機材発行のカタログ表紙 段で記載されている(甲40の1)。昭和61年ないし昭和62年の被告興和機材発行のカタログの表紙も同様の表示がされている(甲40の2)。また,昭和63年ないし平成元年の被告興和機材発行のカタログ表紙には,「アキレスジョイント総合カタログ」と表示され,右側縦一列に「 ACILLESJOINT 」と横書きに表示され,その下部に被告興和機材の会社名のみが表示されており(甲40の3),平成2年ないし平成3年の被告興和機材のカタログ表紙にも,同様の表示がされている(甲40の4)。 2 争点2(指定商品との同一性又は類似性)について(1) 本件各登録商標は,旧法に基づく出願に係るものであり,旧施行令1条に規定される別表による旧商品区分に従うものであって,旧商品区分に属すべき商品については,旧施行規則3条に規定される別表により定められるものである。 本件各登録商標は,旧商品区分第9類を指定商品として登録されたものであり,旧施行令1条の別表によれば,旧商品区分第9類には,「産業機械器具動力機械器具(電動機を除く)風水力機械器具事務用機械器具(電子応用機械器具に属するものを除く)その他の機械器具で他の類に属しないものこれらの部品および附属品(他の類に属するものを除く)機械要素」が含まれている。そして,旧商品区分第9類に属すべき商品として旧施行規則3条の別表に定められた商品は,次のとおりである。 「産業機械器具(以下略)動力機械器具(以下略)風水力機械器具(以下略)事務用機械器具(以下略)その他機械器具で他の類に属しないもの(以下略)機械要素一軸受け,軸,軸継ぎ手およびベアリング(以下略)七 務用機械器具(以下略)その他機械器具で他の類に属しないもの(以下略)機械要素一軸受け,軸,軸継ぎ手およびベアリング(以下略)七管継ぎ手八パッキングおよびガスケット九キーおよびコッタ」(2) そして,被告らが販売する管継手が,旧商品区分第10類の「理化学機械器具(電子応用器具に属するものを除く。)光学機械器具(電子応用機械器具に属するものを除く。)写真機械器具映画機械器具測定器械器具(電子応用機械器具に属するもの及び電機磁気測定器を除く。)医療器械器具これらの部品及び附属品(他の類に属するものを除く。)写真材料」,同第11類の「電機機械器具電気通信機械器具電子応用機械器具(医療器械器具に属するものを除く)電気材料」,同第12類の「輸送機械器具その部品及び附属品(他の類に属するものを除く。)」,同第13類の「手動利器手動工具金具(他の類に属するものを除く。)」のいずれにも属さないものであることは明らかである。 以上からすれば,被告らが販売する管継手が,旧商品区分第9類「機械要素」の「管継ぎ手」に該当することは明らかである。 (3) 被告らは,第9類に掲げられた指定商品は,あくまで金属加工等の産業用機械器具に使用される軸,ベアリング,歯車,バネ,バルブ等と同様の,機械の要素としての継手であり,管継手は,家庭やオフィスビル等のトイレ,洗面所等の排水管の接続に使用されるものであって,第9類に区分される産業用機械器具の機械要素としての管継ぎ手とは,材質,性能,需要者,流通経路,使用方法が異なるため,産業用機械器具の機械要素としての継ぎ手と同一の商品区分に属さず,また,同商品区分に属する商品と類 産業用機械器具の機械要素としての管継ぎ手とは,材質,性能,需要者,流通経路,使用方法が異なるため,産業用機械器具の機械要素としての継ぎ手と同一の商品区分に属さず,また,同商品区分に属する商品と類似もしていない,と主張する。 しかし,旧商品区分における第9類は,「産業用機械器具の機械要素」と規定されているものではなく,上記のとおり,「産業機械器具」のほか,「事務用機械器具」「その他の機械器具で他の類に属しないもの」などと並び「機械要素」が挙げられ,その中の細目として「管継ぎ手」が分類されているもので,産業用機械器具の機械要素という限定は付されていない。また,被告らも,管継手が,他のいかなる商品区分に属するのかについて何ら主張しておらず,旧商品区分において,家庭やオフィスビル等のトイレ,洗面所等の排水管の接続に使用される管継手が属していると認められる他の分類も見当たらない。 よって,被告らの上記主張は採用できない。 3 争点3(本件各登録商標と被告各標章との同一性又は類似性)について(1) 本件各登録商標の構成ア本件登録商標1は,アルファベット文字「A」を「」のようにデザイン化したものの後に続けて,アルファベット文字で「chilles」と太めのゴシック体活字で横書して成るものである。 本件登録商標1は,上記のとおり,「A」のアルファベット文字がデザイン化されているものの,アルファベット文字の「A」を意味することが容易に認められ,「あきれす」の称呼を生ずるものと認められる。 イ本件登録商標2は,本件登録商標1と同様に,アルファベット文字「A」を「」のようにデザイン化したものの後に続けて,アルファベット文字で「chilles」と太めのゴシック体 る。 イ本件登録商標2は,本件登録商標1と同様に,アルファベット文字「A」を「」のようにデザイン化したものの後に続けて,アルファベット文字で「chilles」と太めのゴシック体活字で横書し,その上側に,カタカナ文字で「アキレス」と太めのゴシック体活字で,2段に横書して成るものである。 本件登録商標2は,本件登録商標1と同様に,「A」のアルファベット文字がデザイン化されているとはいえ,アルファベット文字の「A」を意味することが容易に認められ,その上に,カタカナ文字で「アキレス」と表示されていることから,その称呼は「あきれす」であると認められる。 (2) 被告各標章の構成等ア被告各標章の構成a) 被告標章1は,アルファベット文字で「AchillesJoint」とゴシック体で表示されているものである。 b) 被告標章2は,カタカナ文字で「アキレスジョイント」とゴシック体で表示されているものである。 c) 被告標章3は,アルファベット文字「A」を「」のようにデザイン化したものの後に続けて,アルファベット文字で「chilles」と太めのゴシック体活字で横書きされているものである。 イ被告各標章の要部a) 被告標章1における「AchillesJoint」のうち,「Joint」の部分は「継手」を言い換えただけのものであるから,「Achilles」の部分が自他商品識別機能を有する要部と認められる。 b) 被告標章2においては,「アキレスジョイント」のうち,「ジョイント」の部分は「継手」を言い換えただけのものであるから,「アキレス」の部分が自他商品識別機能を有する要部と認められる。 被告標章2においては,「アキレスジョイント」のうち,「ジョイント」の部分は「継手」を言い換えただけのものであるから,「アキレス」の部分が自他商品識別機能を有する要部と認められる。 c) 被告標章3は,「」と表示されているものであるから,その全体が自他商品識別機能を有するものと認められる。 (3) 本件登録商標と被告標章1ないし3の類否本件各登録商標においては,その全体が見る者の注意を引く部分と認められる。 そして,被告標章1の要部である「Achilles」と本件登録商標1及び本件登録商標2のうちの「」とは,その外観は,初めの文字をアルファベットの「A」と表示するか,このアルファベットの「A」をデザイン化した「」と表示するかが相違するだけであるから類似し,その称呼は,いずれも「あきれす」である。したがって,被告標章と本件各登録商標とは,全体として類似するものといえる。 なお,被告興和機材カタログ中に使用されている「ACHILLES JOINT」は,被告標章1をすべて大文字のアルファベットにしただけのものであるから,上記と同様に,本件各登録商標と類似するものといえる。 また,被告標章2の要部は,「アキレス」と表示された部分であり,しかも本件登録商標2の上段部分の「アキレス」と外観上も称呼も同一であるから,上記と同様に,本件各登録商標と全体として類似するものといえる。 さらに,被告標章3は,本件登録商標1及び本件登録商標2の下段に表示されている「」と外観上全く同一であり,称呼も同一であると認められるから,本件各登録商標と同一ないし全体として類似するものといえる。 (4) まとめ以上によれば,被告興和機 ている「」と外観上全く同一であり,称呼も同一であると認められるから,本件各登録商標と同一ないし全体として類似するものといえる。 (4) まとめ以上によれば,被告興和機材が,平成9年1月1日から平成15年3月末までの間に,被告各標章を付した梱包用段ボールを使用して管継手を販売した行為,被告標章2を付した包装用ビニール袋を使用して管継手を販売した行為,被告興和機材のカタログ中に被告標章1,被告標章2及び「ACHILLESJOINT」を使用して管継手を販売した行為は,本件商標権1及び本件商標権2を侵害するものと認められる。 また,個々の管継手について,被告標章1と刻印し,これを販売した行為についても,同様に,本件商標権1及び本件商標権2を侵害するものである。 4 争点4(被告らの販売数量及び利益の額)について(1) 本件計算鑑定の実施の経過本件においては,原告が被告らの提出した請求書(控え)や売掛金台帳の信用性を争い,また,被告協同ゴムは,自ら提出した売上帳(丙1の1ないし7)に,架空の取引があり,水増しして計上されている箇所があることを自認し,これを裏付ける証拠(丙4,5)などを提出していたことから,損害額の認定を迅速かつ適正に行うため,原告の申立てにより損害計算のための鑑定(特許法105条の2)を採用した。 当裁判所は,平成16年8月25日に公認会計士Bを鑑定人に選任の上,平成9年1月1日から平成15年3月31日までの間に,被告興和機材が販売した,同社の前記カタログに掲載されているすべての製品(ゴム継手又は塩ビ継手)の販売数量及び利益額の鑑定を命じ,これを受けて,同鑑定人は,同年9月から10月にかけて10回にわたり被告興和機材及び被告協同ゴムを訪れ 記カタログに掲載されているすべての製品(ゴム継手又は塩ビ継手)の販売数量及び利益額の鑑定を命じ,これを受けて,同鑑定人は,同年9月から10月にかけて10回にわたり被告興和機材及び被告協同ゴムを訪れて両社の代表取締役や会計担当の従業員から任意に会計帳簿,伝票類等の提示を受け,その内容の説明を受けるなどした上で,これを検討し,同年11月30日に計算鑑定書(以下「本件鑑定書」という。)を提出した。 (2) 本件鑑定書の内容とその信用性についてB鑑定人は,被告らから,個別の取引先ごとの売り上げを記録した帳簿等を含めた一切の関係書類の開示を受け,個々の取引の内容を含め,すべての事項について必要な説明を受け,本件鑑定書を作成したものであり,本件鑑定書の以下に記載する内容を考慮すれば,本件鑑定書は,次に述べるとおり,証拠として信用できるものということができる。 本件鑑定書の内容及び,本件鑑定書により認定される事実は次のとおりである(なお,本件鑑定書においては,被告侵害製品の販売数量と利益額についての調査の手順と最終的な調査結果及び補足事項が記されるにとどまり,個々の取引における販売先の名称など被告興和機材の販売事業における企業秘密にわたる事項については,被告興和機材の利益を配慮して記載されていない。)。 ア利益額の計算について(本件鑑定書14頁)販売数量 a製品1個当たりの売上単価 b製品1個当たりの仕入単価 c製品1個当たりの補助材料費 d製品1個当たりの加工費 e製品1個当たりの物流費 f製品1個当たりの利益 g 当たりの補助材料費 d製品1個当たりの加工費 e製品1個当たりの物流費 f製品1個当たりの利益 g利益額 h製品1個当たりの売上単価bから控除する費用(控除対象費用)=c+d+e+f製品1個当たりの利益g=b-(c+d+e+f)当該製品の利益額h=a×gイ取引フローの類型について(同31頁)被告興和機材が製品を仕入れるまでの取引フローは,次の三つに大別される。 a) 正規取引ルート正規取引ルートは,原告が,仕入れ先から仕入れた製品が,岡谷鋼機を通して,有限会社エイ・ジェイ・コーポレーション(以下「エイジェイ」という。)から被告興和機材に流通する経路である。ただし,エイジェイは,被告興和機材に実質的に支配されているペーパーカンパニーである。 b) エイジェイ経由ルート(非正規ルート)エイジェイ経由ルートは,エイジェイが原告とは無関係の仕入れ先から仕入れた製品を被告興和機材に販売するという経路である(以下「エイジェィ経由ルート」という。)。 c) 直接取引ルート(非正規ルート)被告興和機材が原告とは無関係の仕入先から製品を直接仕入れる経路である(以下「直接取引ルート」という。)。 ウ販売数量についてa) 本件計算鑑定における鑑定命令では,上記のとおり,正規品を含む販売数量等を求めていたが,本件鑑定書においては,侵害品の販売数量及び利益額を求めており,侵害品の仕 数量についてa) 本件計算鑑定における鑑定命令では,上記のとおり,正規品を含む販売数量等を求めていたが,本件鑑定書においては,侵害品の販売数量及び利益額を求めており,侵害品の仕入先毎の数量を把握し,仕入れた数量の製品は,ほぼ第三者に販売しているとの前提のもとに,仕入数量を販売数量とみなしている。すなわち,本件鑑定書における「販売数量」は,「侵害品と正規品は,興和機材において区別されることなく保管,販売されていることから,販売数量の中から侵害品だけを確定するのは困難である。また,侵害品の仕入ルート及び仕入先によって,製品1個当たりの利益が異なると予想されることから,侵害品の仕入数量をもって販売数量とみなすことにした。この場合,次のような調整計算を行うことで,当該計算鑑定期間の販売数量とみなす。」(同15頁)として,「平成8年12月31日の在庫数量+当該計算鑑定期間の仕入数量-平成15年3月31日現在の在庫数量」(同15頁)との調整計算を行っている。そして,本件鑑定書では,「実際に販売した数量を『実際販売数量』,仕入数量をもって販売数量とみなす場合の当該数量を『みなし販売数量』と記載する。」(同15頁)とした上で,「一か月単位でみた場合,前月末と在庫数に変動が生じるために,実際販売数量とみなし販売数量は必ずしも一致しない。しかし,本件の場合,計算鑑定期間が75か月と長期であり,平成15年3月31日をもって興和機材は,アキレスジョイントの販売を停止し,在庫品もごく少量しか残っていなかったことから,両者の数量差は少ないであろうと想定した・・・」(同15頁)としている。 このように,仕入数量をみなし販売数量と算定することは,本件計算鑑定の対象が管継手であって,季節性のないものであり,頻繁にモデルチェンジ 定した・・・」(同15頁)としている。 このように,仕入数量をみなし販売数量と算定することは,本件計算鑑定の対象が管継手であって,季節性のないものであり,頻繁にモデルチェンジされるものでもなく,生鮮食品のように賞味期限もないことなどを考慮すれば,いったん仕入れた製品について,滅失,毀損,廃棄などはほとんどないと考えられることから,妥当である。 b) 本件計算鑑定の過程において,被告興和機材の帳簿上,被告興和機材の次に掲げる非通例取引が含まれていることが判明しており,これらにおけるみなし販売数量については,次のとおり調整している。 ① 被告協同ゴム従業員が被告興和機材と行った非通例取引(i) 被告興和機材は,平成8年10月から平成12年7月までの間,被告協同ゴム従業員の個人の名前を冠した商店から被告各標章を使用した管継手の仕入を行っていた。被告協同ゴムにおいては通常の仕入先から仕入れたものは,原告を通す正規品と原告を通さない侵害品といった区別をすることなく管理し,その後,この製品を正規ルートと非正規ルートに分けて出荷している。非正規ルートは,上記のエイジェイ経由ルートによって行われ,売上代金は被告興和機材から被告協同ゴム従業員の個人口座に支払われた。 被告協同ゴムは,後日発覚したこの事実に基づいて,約900万円の売上を計上し,このうちの600万円は,この従業員に対する貸付金として貸借対照表に計上し,本件計算鑑定の実施日直近の事業年度である平成15年10月31日現在の貸借対照表にも,この貸付金を計上している(被告協同ゴムでは今後その回収を図ることになる。)。残りの300万円については,エイジェイに対する売上・売掛金として計上してい 平成15年10月31日現在の貸借対照表にも,この貸付金を計上している(被告協同ゴムでは今後その回収を図ることになる。)。残りの300万円については,エイジェイに対する売上・売掛金として計上していたが,その後回収はなく,売上値引等で売掛金残高を消している。 なお,被告興和機材の仕入帳においては,被告協同ゴムから直接仕入れられたルート(直接仕入ルート)と被告協同ゴム従業員の個人名を冠した商店から仕入れたルート(エイジェイ経由ルート)について,それぞれ別々に記載されていた。 (ii) 本件鑑定書には,上記の現状から,「売上として計上した900万円のうち,3分の1以上が回収されないものの,被告協同ゴムの在庫から出荷されていること,会計処理として売上高を会社として計上していることから,非通例取引ながら,実在したものとして取扱い,被告興和機材は,被告協同ゴムから当該仕入を行ったとして,みなし販売数量に含めた」(同16頁)としている。 被告ら間で実際の商品取引があったと認められる以上,本件計算鑑定のこの認定は相当である。 ② 被告興和機材の従業員が被告協同ゴムと行った非通例取引(i) 被告興和機材の従業員個人が,被告協同ゴム及び被告協同ゴムの会長個人から受けた融資に関して,実際には個人で返済を行わず,被告興和機材と被告協同ゴムの製品売買を仮装し,そこから返済に充当させていた。 この売買の仮装は,被告協同ゴムの販売数量の水増しによって行われていた。すなわち,売上単価は所定の額のとおりであり,それに水増しした販売数量を乗じた額が,個人融資の返済として扱われていた。個人融資は平成14年5月及び6月 同ゴムの販売数量の水増しによって行われていた。すなわち,売上単価は所定の額のとおりであり,それに水増しした販売数量を乗じた額が,個人融資の返済として扱われていた。個人融資は平成14年5月及び6月に行われ,同年5月から12月までの売買を仮装して,その返済に充当された。 (ii) 本件鑑定書においては,「上記の水増し数量は,被告協同ゴムの売掛金台帳に『上乗せ分』として,別管理されており,『上乗せ分』と記載した販売数量が確かに出荷されなかったことを示す証拠書類はなかったものの,台帳の記載内容と台帳自体の綴り方,被告協同ゴム総務部長や経理担当女性事務員の当時の状況説明から,水増し分は出荷の実態がないものと判断した。従って,これらについては,みなし販売数量の対象外とした。」(同16頁)としている。 被告ら間の商品取引が仮装のものと認められる以上,本件計算鑑定のこの認定も相当である。 エ売上単価について本件鑑定書においては,「売上単価は,製品別の実際売上高を実際販売数量で除して計算する。再仕入を前提に低価で販売する場合や平成15年3月31日に低価で一括販売する場合など,第三者の視点からみて正常な売上としての実態がないと判断されるものは,売上単価を計算する際に,売上高及び販売数量からこれらを控除した。・・・値引きについては,・・・著しく異常な態様で発生しておらず,従って,販売取引の中で定型的に行われるものと判断して売上単価から控除した。」(同17頁)と認定しているが,この認定も妥当である。 オ仕入単価について本件鑑定書においては,「直接仕入ルートの場合,興和機材が外部から仕入れた価格をもって仕入価額とし,エイジェイ経由ルートについ の認定も妥当である。 オ仕入単価について本件鑑定書においては,「直接仕入ルートの場合,興和機材が外部から仕入れた価格をもって仕入価額とし,エイジェイ経由ルートについては,エイジェイが外部から仕入れた価格をもって仕入価格とした。エイジェイ経由ルートの場合,被告興和機材は,エイジェイが仕入れた価格に一定の利益率を乗じた価格でこれらを仕入れている。しかし,エイジェイと興和機材は実質的に一体であることから,両者間の内部利益が上乗せされない価格をもって仕入価額とした。」(同17頁)としている。前記のとおり,エイジェイがペーパーカンパニーであることを考慮すれば妥当な処理である。 カ控除対象費用について本件鑑定書においては,「興和機材には,平成5年ころに前役員が作成したとされる『原価資料』が保存されていた。原価資料には,アキレスジョイント品番ごとの製品1個当たりの原価が記載されている。・・・控除対象費用を確定するために,まず,この原価資料を参考にした。」(同18頁)とし,「補助材料費」として,バンド,ボルト,ガスケット,パッキン及び接着剤他の費用を,「加工費」として,セット,取付及びOリングの費用を,「販売物流費」として,梱包材料費,配送費及び荷役費を控除している(同18,19頁)。 これらは,侵害品を販売するのに不可避的に発生する費用であるから,控除対象費用として取扱うことは相当である。 (3)ア以上によれば,本件鑑定書の内容はその信頼性が高く,本件計算鑑定によれば,平成9年1月1日から平成15年3月31日までの間に,被告興和機材が,正規ルート以外の販売経路によって販売した被告各標章のいずれかを使用したゴム継手又は塩ビ継手の数量及びその利益額は,次のとお れば,平成9年1月1日から平成15年3月31日までの間に,被告興和機材が,正規ルート以外の販売経路によって販売した被告各標章のいずれかを使用したゴム継手又は塩ビ継手の数量及びその利益額は,次のとおりであると認められる。 販売数量 2,301,933個利益額 469,030,716円なお,上記の販売数量及び利益額は,被告興和機材の前記カタログに掲載されておらず,裁判所が鑑定の対象とすることを命じた製品目録に記載のない「AY-05Fホンタイ」を含むものである。しかし,同製品は,被告興和機材が,その販売管理上,社内において,いわゆるアキレスジョイント製品として取り扱っていた製品であることから,被告興和機材カタログに掲載された他の製品と同様に,被告標章1あるいは被告標章2を使用して販売していたことが推認されるため,この販売数量及びその利益額についても,被告興和機材の販売数量及び利益額に含めるのが相当である。 イ被告興和機材は,被告侵害製品のうち,「ASP25」,「ASP92」,「ハイカンカバーAC240」,「AY05F75」,「AY05F100」,「AW-08TOTO」,「AW-08INAX」,「AF04」,「AF04ホンタイ」,「KF75」,「AJ103」,「AW80T」,「AW80i」のように個別に被告標章1が付されていないものは,本件各商標権を侵害するものといえないから,これらについての販売利益は控除すべきであると主張する。 しかし,個別に被告各標章が付されていないものであっても,被告侵害製品は,被告標章1(あるいは被告標章1をすべて大文字のアルファベットにした「ACHILLES JOINT」)や被告標章2が付されている被告興和機 に被告各標章が付されていないものであっても,被告侵害製品は,被告標章1(あるいは被告標章1をすべて大文字のアルファベットにした「ACHILLES JOINT」)や被告標章2が付されている被告興和機材の前記カタログに掲載され,販売されていたものであるから,被告興和機材の上記行為は,商標法2条3項8号に規定される「商品・・・に関する広告,価額表・・・に標章を付して展示し,又は頒布する行為」に該当し,被告各標章の「使用」に当たるというべきである。 したがって,被告興和機材の前記カタログに掲載されている被告興和機材製品について,被告標章1あるいは被告標章2を使用する行為は,本件商標権1及び2を侵害するものであって,個別の製品に被告標章1が付されていないとしても,同カタログに掲載されている製品について,被告興和機材の上記行為は,被告侵害製品の販売数量及びその利益額から控除すべきとはいえない。 5 争点5(商標法38条2項の適用の可否)について本件計算鑑定に基づき,被告らが原告に支払うべき損害賠償の額について判断する。 (1) 商標法38条2項の適用についてア商標法38条2項は,侵害行為と相当因果関係のある商標権者の売上減少や売上増加の機会の逸失による利益の喪失を証明することが困難であることから,損害についての商標権者の立証を容易にする目的で設けられた規定である。同条が,侵害行為者の得た利益の額を商標権者の受けた損害の額と推定するのは,商標権者の商品と侵害行為者の商品とが市場において競合関係にある場合には,侵害行為により商標権者の上記利益が失われる蓋然性が高いと考えられるためである。 そうすると,商標権者の商品と侵害者の商品とが市場において競合関係にない場合には,競合関係 合には,侵害行為により商標権者の上記利益が失われる蓋然性が高いと考えられるためである。 そうすると,商標権者の商品と侵害者の商品とが市場において競合関係にない場合には,競合関係がある中で侵害者の商品が販売されたことによって商標権者の商品の販売が阻害された場合という同項に定める推定の前提を欠くものであるから,同項は適用されないものと解すべきであり,同項を適用する前提として,商標権者の商品と侵害者の商品との市場における競合関係が必要となるというべきである。 イ市場における競合関係の有無についてa) 原告と被告興和機材との競合関係について原告と被告興和機材の取引対象は,いずれも排水管用の管継手であり,原告は,本件各登録商標と同一ないし類似の商標を使用して管継手を販売し,被告興和機材においても,本件各登録商標と類似する被告各標章を使用して管継手を販売しているものであって,両者が市場において競合関係にあり,かつ,出所の誤認混同を生ずるおそれがあることは明らかである。 本件について,商標法38条2項を適用して,被告らが得た利益の額を原告の損害の額と推定することは相当である。 b) 被告らは,正規ルートによる取引の場合,原告は,被告協同ゴムから仕入れた製品を被告興和機材に販売することにより,その中間において限定的な利益を得るものであるのに対し,被告興和機材は,仕入れた製品を第三者に販売することによって原告よりも大きな利益を得るものであって,その実施態様が異なるから,商標法38条2項の規定による推定を受けない,と主張する。 しかし,商標法38条2項は,商標権者が,登録商標を使用している商品と,侵害者の侵害品とが,市場に 態様が異なるから,商標法38条2項の規定による推定を受けない,と主張する。 しかし,商標法38条2項は,商標権者が,登録商標を使用している商品と,侵害者の侵害品とが,市場において競合関係があることを同推定規定が適用される前提としていると解すべきであるものの,それ以上に,侵害行為者の行為がなければ,商標権者が侵害者と同額の利益を得たことまで立証することを要求しているものではなく,むしろ商標権者の立証の負担を軽減するために,その立証を不要とした規定であることは前記のとおりである。 被告らの上記主張は,同条項の適用を否定する理由とはなり得ない。 (2) 商標法38条2項の推定覆滅事由についてア被告らは,仮に,商標法38条2項が適用されるとしても,原告が被告らに対し,正規ルートにより得られたはずの利益の額以上の金額を損害として請求することは不合理であるとし,原告が請求し得る損害は,正規ルートで得られた場合の利益額に止まるべきであり,同利益額が,同項の推定を覆滅させる事由となる,と主張する。 しかし,商標法38条2項の規定による推定は,法律上の事実推定であるから,同条項の適用が認められる場合には,侵害者は,商標権者が被った「侵害行為と相当因果関係のある損害の額」が侵害者が侵害行為により得た利益の額を下回ることについて立証(本証)しない限り,同条項による推定を覆滅することはできないというべきである。 原告は,前提となる事実において認定したとおり,被告興和機材と継続的商品供給契約を締結し,被告協同ゴムなどに製造させた管継手を,被告興和機材を通して第三者に販売することが多かったのであるから,この契約期間中に正規ルートで販売した場合には,被告協同ゴムと 材と継続的商品供給契約を締結し,被告協同ゴムなどに製造させた管継手を,被告興和機材を通して第三者に販売することが多かったのであるから,この契約期間中に正規ルートで販売した場合には,被告協同ゴムと被告興和機材が本件の侵害行為により得た利益の合計額よりも少ない利益しか挙げ得なかったということはできる。しかし,被告興和機材や被告協同ゴムが本件各商標権侵害行為を継続していた期間中は,原告は,この事実を知れば,いつでも同社との契約を解約し,被告らを排除した異なるルートで本件各登録商標を使用した商品を販売し,侵害者らが得た利益の額と同額かそれを上回る金額を得ることができたことは前記認定事実から明らかである。すなわち,被告らの本件各商標権侵害行為と原告と被告らとの上記契約とはその性質上両立し得ないものであるから(原告が被告らによる本件商標権侵害行為が将来も継続することを認めたまま,上記契約を継続することは経験則上考え難いことである。),本件各商標権侵害行為により原告に生じた損害を認定するときに,上記継続的供給契約により原告が得ていた利益を上記規定による推定覆滅事由として考慮する必要はないのである(考慮するとすれば,原告と契約関係にあった企業全体の利益であろう。)。したがって,原告が被告興和機材と継続的供給契約を締結していたとの事実をもって,被告らの本件各商標権侵害行為により,原告が被った損害の額が被告らが得た利益の額を下回るものであることを立証し得たものということはできない。なお,このように解さないと,被告らが原告との継続的供給契約に反し,故意に本件各商標権侵害行為を行うことにより得た利益の額の一部を,侵害者である被告らの下に留めることを認める結果となるのであり,このような結果が相当ではないことも明らかである。 6 争点1(被告らの行為の内容 標権侵害行為を行うことにより得た利益の額の一部を,侵害者である被告らの下に留めることを認める結果となるのであり,このような結果が相当ではないことも明らかである。 6 争点1(被告らの行為の内容)及び争点6(被告Aの責任)並びに被告らの責任について(1) 本件計算鑑定及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア被告協同ゴム又は被告協同ゴムの従業員は,平成9年1月1日から平成14年12月末までの間,被告各標章を使用したゴム継手を製造し(あるいは下請けに製造させ),これを,原告を経由せずに,直接被告興和機材に販売し,あるいは,被告興和機材のペーパーカンパニーであるエイジェイに販売した。 イ被告興和機材は,平成9年1月1日から平成15年3月31日までの間に,被告各標章を使用したゴム継手を,原告を経由せずに,被告協同ゴムないし被告協同ゴムの従業員から仕入れ,これを販売することにより8923万4368円の利益を上げ,また,被告各標章を使用したゴム継手及び塩ビ継手を原告を経由せずに,その他の仕入れ先から仕入れ,これを販売することにより3億7979万6348円の利益を上げた。 ウ被告興和機材の中心的業務は,正規ルートにより,本件各登録商標を使用した管継手を販売することであったにもかかわらず,非正規ルートで被告各標章を使用した管継手を販売し,本件各商標権を侵害したものである。 (2) 被告らの責任上記(1)認定の事実に基づいて被告らの責任について検討する。 ア被告協同ゴムの従業員が,原告を経由せずに,ゴム継手を被告興和機材に販売していたことについては,外形上,被告協同ゴムの職務の執行に当たる行為に該当するものといえるので,被告協同ゴムは,同従業員の行為による損 ゴムの従業員が,原告を経由せずに,ゴム継手を被告興和機材に販売していたことについては,外形上,被告協同ゴムの職務の執行に当たる行為に該当するものといえるので,被告協同ゴムは,同従業員の行為による損害について,民法715条による責任を負うべきである。 イ被告興和機材が,原告を経由せずに仕入れた製品を販売した行為のうち,被告協同ゴム及び被告協同ゴムの従業員から仕入れた製品により販売した行為については,被告協同ゴム及び被告協同ゴムの従業員が関与しなければなし得なかった行為であるから,被告興和機材の上記商標権侵害の行為については,民法719条1項に基づき,被告協同ゴム及び被告協同ゴムの従業員と被告興和機材との共同不法行為が成立し,被告協同ゴム及び被告協同ゴムの従業員と被告興和機材の行為によって生じた損害全体について,被告興和機材と被告協同ゴムとが連帯して責任を負うものと解すべきである。 ウまた,被告Aについても,前記前提となる事実に記載した本件に至る経緯等にかんがみると,被告興和機材の本件商標権侵害行為について,商法266条の3の責任を負うべきものと解される。すなわち,被告興和機材が,原告を経由せずに非正規ルートにより被告各標章を使用した管継手を仕入れ,これを販売することにより利益を上げていたのは,少なくとも,平成9年1月1日から平成15年3月31日までの6年余りの長期間にわたっており,その間に販売された数量も2,301,933個と大量であることからみても,被告興和機材の代表取締役である被告Aが,被告興和機材の従業員が非正規ルートによる取引が行われていたことについて知らなかったものであるとは到底認められず,被告Aについては,被告興和機材の本件各商標権侵害行為について,同社の代表取締役としての職務の執行について,悪意 ルートによる取引が行われていたことについて知らなかったものであるとは到底認められず,被告Aについては,被告興和機材の本件各商標権侵害行為について,同社の代表取締役としての職務の執行について,悪意又は少なくとも重大な過失があったものと認めざるを得ない。 以上によれば,被告Aは,商法266条の3に基づき,被告興和機材が原告に対して与えた損害について,被告興和機材と連帯して賠償する義務があるというべきである。 被告Aは,管継手の仕入れ及び販売について,被告興和機材のD部長に任せていたから,正規ルート以外により製品を仕入れていることを知らなかったとか,被告協同ゴムからの直接購入について積極的な役割を果たしていたわけではないとか,本件各商標権の存在を知らなかったなどとして同条に基づく責任を否定する。 しかし,上記認定の事実によれば,被告Aの上記主張をいずれも採用し得ないことは明らかである。 エまとめ前記認定事実によれば,①被告興和機材が,被告協同ゴム及び被告協同ゴムの従業員から仕入れ,これを販売したことによる,被告協同ゴムと被告興和機材の共同不法行為に基づく損害額は8923万4368円,②被告興和機材が,被告協同ゴム及び被告協同ゴムの従業員以外の者から仕入れ,これを販売したことによる,被告興和機材の不法行為に基づく損害額は3億7979万6348円であり,これらの損害額と,これらに対する不法行為の後の日である平成15年4月1日から民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める原告の請求は理由がある。 被告Aの損害賠償債務は,法が取締役の責任を加重するために特に認めたものであって,不法行為に基づく損害賠償債務の性質を有するものではない 金の支払を求める原告の請求は理由がある。 被告Aの損害賠償債務は,法が取締役の責任を加重するために特に認めたものであって,不法行為に基づく損害賠償債務の性質を有するものではないから(最高裁昭和39年(オ)第1175号同44年11月26日大法廷判決・民集23巻11号2150頁,同昭和49年(オ)第768号同年12月17日第三小法廷判決・民集28巻10号2059頁参照),履行の請求を受けた時に遅滞に陥るものである。したがって,被告Aについては,上記①の額については,原告が,被告興和機材及び被告協同ゴムの共同不法行為について商法266条の3に基づく損害賠償を請求したことが記録上明らかな平成15年5月17日(訴状送達の日)の翌日である同月18日から,また,上記②の額については,原告が,上記以外の被告興和機材の不法行為について商法266条の3に基づく損害賠償を請求したことが記録上明らかな平成17年2月4日(平成17年1月31日付け訴え変更の申立書送達の日)の翌日である同月5日から,上記各損害額に対する民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 第5 結論以上によれば,原告の被告興和機材及び被告協同ゴムに対する本訴請求はすべて理由があるから,いずれもこれを認容し,原告の被告Aに対する請求については,主文掲記の限度で理由があるからこれを認容し,原告の被告Aに対するその余の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担については,民訴法61条,64条ただし書,65条1項ただし書を,仮執行宣言について同法259条1項を各適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁 主文 いて同法259条1項を各適用して、主文のとおり判決する。 理由 事実 争点 判断 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官設楽隆一 裁判官鈴木千帆 裁判官荒井章光 別紙被告商標目録 別紙登録商標目録
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