主文 被告人を無期懲役に処する。 回転弾倉式けん銃2丁(平成11年押第973号符号15,同号符号12),実包16発(同号符号13,14)を没収する。 理由 (犯罪事実)第1 (シーマ窃盗等事件) 1 被告人は,窃盗の目的で,平成11年3月27日午後11時10分ころ,大阪市a区bc丁目d番e号所在の甲の看守するC重整備工業所に南側出入口の施錠を外して侵入し,同所において,甲所有の普通乗用自動車1台(時価約30万円相当)を窃取した。 2 被告人は,公安委員会の運転免許を受けないで,そのころ,同所付近道路において,前記自動車を運転した。 第2(Dランドリー事件) 1 被告人は,平成11年3月28日午前零時30分ころ,大阪市a区bf丁目g番h号「Dランドリー」こと乙(58歳)方玄関前において,故意に有形力を行使して,乙所有の玄関ドアガラス1枚(時価6500円相当)を割り,もって,他人の器物を損壊した。 2 被告人は,法定の除外事由がないのに,前記日時ころ,不特定もしくは多数の者の用に供される場所である前記乙方前歩道上において,殺意をもって,乙方玄関内にいた乙に対し,所携の回転弾倉式けん銃(平成11年押第973号符号15)で銃弾合計2発を発射し,1発を乙の右上腕及び右胸部に,1発を左胸部にそれぞれ命中させたが,乙に加療約30日間を要する右上腕及び左右胸部銃創等の傷害を負わせたにとどまり,殺害の目的を遂げなかった。 3 被告人は,法定の除外事由がないのに,同日時ころ,同所において,前記けん銃1丁を,これに適合する実包2発と共に携帯して所持するとともに,その実包2発をけん銃に使用することができるものとして所持した。 第3(神戸事件) 1 被告人は,丙(41歳)を殺害しようと企て,平成11年3月28日午後11時5分ころ,神戸市i区j町 するとともに,その実包2発をけん銃に使用することができるものとして所持した。 第3(神戸事件) 1 被告人は,丙(41歳)を殺害しようと企て,平成11年3月28日午後11時5分ころ,神戸市i区j町k丁目l番所在の市営j第m住宅n号棟3階エレベーター前通路付近において,丙に対し,所携の前記回転弾倉式けん銃で銃弾合計3発を発射し,これを丙の左前胸部,右胸背部,右手掌部にそれぞれ命中させ,よって,同月29日午前零時15分ころ,同市o区p町q丁目r番地所在の神戸市立E病院において,丙を左前胸部射創により失血死させ,もって,殺害した。 2 被告人は,法定の除外事由がないのに,同日時ころ,同所において,前記けん銃1丁を,これに適合する実包3発と共に携帯して所持するとともに,その実包3発をけん銃に使用することができるものとして所持した。 第4(F時計店事件) 1 被告人は,丁(57歳)を殺害しようと企て,平成11年4月12日午後6時50分ころ,大阪市a区st丁目u番v号「F時計店」こと丁方に表出入口から侵入し,同所において,丁に対し,所携の前記回転弾倉式けん銃で銃弾合計3発を発射したが,丁がとっさに身をかわしたため,いずれも命中せず,殺害の目的を遂げなかった。 2 被告人は,法定の除外事由がないのに,同日時ころ,同所において,前記けん銃1丁を,これに適合する実包3発と共に携帯して所持するとともに,その実包3発をけん銃に使用することができるものとして所持した。 第5(G理容室事件) 1 被告人は,戊(36歳)を殺害しようと企て,平成11年4月14日午後8時5分ころ,大阪市a区bw丁目x番y号「G理容室」こと戊方に表出入口から侵入し,同所において,戊に対し,所携の前記回転弾倉式けん銃で銃弾合計3発を発射し,そのうち1発を戊の左肩部に命中させて貫通させたが ろ,大阪市a区bw丁目x番y号「G理容室」こと戊方に表出入口から侵入し,同所において,戊に対し,所携の前記回転弾倉式けん銃で銃弾合計3発を発射し,そのうち1発を戊の左肩部に命中させて貫通させたが,戊に加療約28日間を要する左肩部貫通性銃創の傷害を負わせたにとどまり,殺害の目的を遂げなかった。 2 被告人は,法定の除外事由がないのに,同日時ころ,同所において,前記けん銃1丁を,これに適合する実包3発と共に携帯して所持するとともに,その実包3発をけん銃に使用することができるものとして所持した。 第6(H方けん銃等所持事件)被告人は,法定の除外事由がないのに,平成11年4月15日ころ,大阪市a区bz丁目a1番b1号H方において,回転弾倉式けん銃1丁(同号符号12)を,これに適合する実包8発(同号符号13)と共に保管して所持するとともに,その8発を含めた実包合計16発(同号符号14)をけん銃に使用することができるものとして所持し,さらに,火薬類である電気雷管9個及び同雷管を工業雷管様に改造した雷管3個を所持した。 (補足説明)第1 被告人の主張と証拠構造 1 被告人の主張被告人は,第1回公判期日において,全ての事実について全く身に覚えがないと主張して各公訴事実を否認する以外は,捜査公判を通じて完全黙秘を貫いている。弁護人も被告人の主張に沿い,無罪を主張する。 2 証拠構造本件では,現場に遺留された弾丸等の物件,けん銃や車両,犯行前後の目撃供述などは多いが,被告人と犯行を直接結びつける証拠は多いとはいえず,この点で,共犯者とされるB(以下,「B」という。)の証言が最も重要な証拠となるもので,その信用性の有無が結論を決することになる。 そこで,(1)まず,本件判断の前提として,被告人とBの関係を見たうえで,(2)各公訴事実ごとに,被告人が犯 いう。)の証言が最も重要な証拠となるもので,その信用性の有無が結論を決することになる。 そこで,(1)まず,本件判断の前提として,被告人とBの関係を見たうえで,(2)各公訴事実ごとに,被告人が犯人であるとするB証言に個別的信用性が認められるかを,他の証拠と照らし合わせて検討し,(3)Bがそのような共犯供述をすることに伴う利害関係の有無,取調べ状況や供述の変遷,Bの性格や精神状態の観点から見た一般的信用性を検討し,さらに,(4)B証言以外に被告人と犯行を結びつける物証等の有無や被告人の犯行動機の有無についても検討することにする。 第2 被告人とBの関係 1 被告人,B,そしてI(以下,「I」という。)らとの関係について,Bは要旨以下のとおり証言する。 (1) Bは,中学校卒業後,昭和53年7月,暴力団J組の組員になったが,それ以前に,中学の1年先輩のIから,韓国人で友達がいないと泣きつかれ,反感を持っていたが哀れに思ったため,堅気の兄弟分の関係を結んでいた。 (2) Bは,昭和59年9月,暴力団K組系L組M組の組員となり,Iの実兄のN(以下,「N」という。)の舎弟で,年齢的にはIの先輩にあたる若頭補佐の被告人と,同じ組の構成員として挨拶をする間柄になった。 (3) 被告人は,同年末ころ刑務所から出所したが,当時,NがL組の直参になったため,Iの3番目の兄のO(以下,「O」という。)が本部長,被告人は行動隊長に昇格し,Iは若頭補佐で,3人は地位的には同じ若頭補佐だが,名札の順では被告人がIよりも上の立場にあった。 しかし,昭和61年,Iが若頭に昇格してP組を結成したことで,先輩格の被告人の方がIよりも地位が下になった。 (4) P組若中になったBは,平成元年ころ,以前Iに巻き上げられたBの実父の生命保険金を返還するよう,覚せい剤を打った状 格してP組を結成したことで,先輩格の被告人の方がIよりも地位が下になった。 (4) P組若中になったBは,平成元年ころ,以前Iに巻き上げられたBの実父の生命保険金を返還するよう,覚せい剤を打った状態でIに文句をつけ,Iによって通報されて逮捕され,絶縁処分となった。 同じころ,M組が解散したため,IはL組内P組を結成し,被告人もP組に移って副組長となり,Bは平成元年12月ころに出所した際,Iに請われて復帰し,被告人と付き合うようになった。 (5) 被告人は,前刑服役中の平成4年4月ころ,Iとの間ではいずれ組に戻すとの約束で,形式上の破門処分となった。他方,Bは,長年金銭的に搾取されるなどしたIに反感を抱き,平成7年6月に出所後,P組を脱退し,Iとの縁を切った。しかし,同年中には,P組自体が解散して消滅した。 (6) 被告人は,平成11年3月22日に刑務所を出所したが,翌23日夜,同月4日に仮出獄していたBとファミリーレストラン「Q」で待ち合わせ,共通の知人のR(以下,「R」という。)の3人でふぐ料理店「S」で食事をした。この日,BからIと縁を切ったという話を聞かされ,Bに対し,自分が出所した際,実弟のT(以下,「T」という。)しか迎えに来ず,Iの迎えがなかったと話し,「Iなんか,もう関係あらへん。」「もう堅気で行く。」と言い,2人はIに対する憎しみで共感し合い,以後,被告人を兄,Bを弟とする兄弟分の付き合いをすることになった。 2 被告人及びBの暴力団経歴については,IがBとほぼ同様の供述をしており,被告人が今回出所した後のBとの関係については,Tが自分以外に出所の迎えに来た者はいなかった事実を,Rが3人で会食した際にIの迎えがなかったと被告人が話していた事実を,その他,被告人の妻,U(以下,「U」という。)や知人,スナックのホステスなど が自分以外に出所の迎えに来た者はいなかった事実を,Rが3人で会食した際にIの迎えがなかったと被告人が話していた事実を,その他,被告人の妻,U(以下,「U」という。)や知人,スナックのホステスなど被告人の周囲の者が,それぞれ,Bが被告人方に頻繁に出入りし,被告人を兄貴と呼んで行動を共にしていた事実を供述していることから,被告人との人間関係についての上記B証言は信用してよい。 3 以上を前提に,以下,個々の事件について,客観的証拠との符合,他の供述との一致,裏付け証拠の有無を中心に,主として,犯人と被告人との結びつきの点につき,B証言に信用性が認められるかを詳細に検討する。 第3 建造物侵入,窃盗,道路交通法違反被告事件(判示第1,「シーマ窃盗等事件」) 1 客観的情況事実の認定本件事案については,①平成11年3月27日午後8時から28日午前6時50分までの間に,何者かがC重整備工業所内にその南側出入口ドアの南京錠をこじ開けて侵入し,甲所有の普通乗用自動車日産シーマ(以下,「シーマ」という。)を窃取したこと[被害届(甲42),実況見分調書(甲45),Vの警察官調書(甲67)等],②同月29日午前5時30分ころ,甲の知人のWが大阪市a区bc1丁目d1番e1号X方西側路上に駐車されているシーマを見かけ,10時50分に発見されたこと[Wの警察官調書(甲68),盗品等発見報告書(甲43)等],③被告人が平成3年9月20日に普通運転免許を失効させ,平成11年3月27日当時,運転免許を有していないこと[免許照会結果書(甲81),捜査報告書(甲82)]が認められる。 2 B証言の要旨Bは,本件につき,要旨以下のとおり証言する。 (1) Bは,平成11年3月23日,前記のように,被告人と「Q」で待ち合わせ,引き続き午後7時ころから,被告人及びRを交 められる。 2 B証言の要旨Bは,本件につき,要旨以下のとおり証言する。 (1) Bは,平成11年3月23日,前記のように,被告人と「Q」で待ち合わせ,引き続き午後7時ころから,被告人及びRを交えた3人でふぐ料理店「S」で食事をし,以後被告人と兄弟分の関係で付き合うことになったが,その待ち合わせの際,被告人は,Bに,中古車の段取りとL組組長に挨拶するため若頭と連絡を取ることを依頼した。 Bは,午後9時ころ,知人のY(以下,「Y」という。)に会うため,一足先に店を出て,タクシーで阪急Z駅へ向かい,Yと会った。 (2) Bは,同月25日,L組若頭のC1(以下,「C1」という。)に電話をかけ,被告人が組長に挨拶をしたいと言っているので一度会ってほしい旨伝えたが,C1から,処遇についてはL組本部長でD1会会長のNを通すべきで,そうしたら直参待遇にすると言われ,C1と会うことは断られた。 その報告をBから受けた被告人は,「これで清々した。」と言い,L組に戻る意思はもうないと告げるとともに,「マメが湿気ってるんや,マメを探してくれ,38歳や,親はあるんや。」との言い方で,38口径のけん銃用実包の調達をBに依頼した。 (3) 同月26日,Bは,被告人から荷物を運ぶためレンタカーを借りるよう指示され,翌27日,レンタカーの受領を依頼したE1(以下,「E1」という。)とF1(以下,「F1」という。)に会い,白色軽自動車のマツダのスクラムバン(以下,「スクラムバン」という。)を受け取った。その際,同人らも車が必要だと言い,被告人方に3人で行って,もう1台のレンタカーを借りる料金を被告人に負担してもらった。 その後,Bは,被告人方f1号棟の下で,スクラムバン助手席に被告人を乗せたが,その際,被告人は,箱が入った白い紙袋を持っており,袋の中から「天誅」, タカーを借りる料金を被告人に負担してもらった。 その後,Bは,被告人方f1号棟の下で,スクラムバン助手席に被告人を乗せたが,その際,被告人は,箱が入った白い紙袋を持っており,袋の中から「天誅」,K組の菱代紋の中に「L」,その下に「罪もない女子供を痛めてまで,うまいもん喰らうな」と書かれたビラを取り出して感想を求め,Bは,自分のIへの気持ちと同じだと感じ,「ええ言葉ですね。」と答えた。 Bは,被告人の指示で,g1区内のG1給油所に行き,被告人が水色のポリ容器に入った灯油を購入し,午後8時ころ,Bが「H1」で,バールやしの等の工具を購入してスクラムバンに積み込んだ。その後,a区内のローソンI1店で,被告人が天誅ビラをコピーした。 (4) 被告人は,金庫破りを手伝うようにBを誘ったが断られ,結局,Bに現場まで案内させて,J1は許せないから金庫を盗むなどと言って,誤って「株式会社K1」に行き,更に「L1株式会社M1輸送センター」にも侵入したが,いずれも失敗し,車内で「ダンプカーで突っ込んだら一発や。」「甲のダンプで前はやってた。」と言って,「甲のところへ行ってくれ。」とBに指示した。 Bがa区b4丁目のC工業所付近路上にスクラムバンを停車すると,被告人は,Bに「ダンプを取ってくるから,おまえは車の中で待っとれ。」と言い,腰にしのを付け,手袋をはめて下車した。 (5) しばらくすると,スクラムバンの右横に被告人の運転するシーマが停車し,Bは,被告人の指示で,当時居候中であったa区h1i1丁目のN1方付近路上までシーマを先導した。被告人は,ダンプでない理由について,「これがええと思うたからこれ乗ってきた。」と答えた。 被告人は,スクラムバンからシーマに荷物を積み替え,助手席にBを乗せて出発し,途中,Bにドライバーセットを購入させて,ナンバープレー 由について,「これがええと思うたからこれ乗ってきた。」と答えた。 被告人は,スクラムバンからシーマに荷物を積み替え,助手席にBを乗せて出発し,途中,Bにドライバーセットを購入させて,ナンバープレートを外そうと試みたが封緘が取れず,Bに付け替えのできる者を探させたが,午後11時56分ころ,O1(以下,「O1」という。)から別のナンバープレートが必要であると言われて断念した。 Bは,被告人と運転を交替し,被告人方があるa区bj1丁目のP1団地へと戻る途中,判示第2の現場近くのQ1温泉に行くよう被告人から指示され,往復にシーマを利用した。 また,翌28日午後9時ころ,被告人は,シーマを運転してBと共にR1(以下,「R1」という。)方に行き,助手席側後部座席に乗り込んだR1からその運転免許証を借り,これをBに見せて「似てるやろ。」と言った。 その後,判示第3の神戸事件への往復にシーマを利用した後,翌29日未明,Bの案内で,上記X方西側路上にシーマを駐車したが,同月30日午後,Bが取りに行くと,シーマはなかった。 3 B証言の信用性及び関連する証拠の検討(1) 客観的証拠,他の供述との符合,裏付け証拠の有無等アまず,被告人出所後,Bとの関係が始まるきっかけとなった会食の事実及びその後,BがYと会った事実については,同席したRが,同月23日午後7時過ぎに被告人及びBと待ち合わせて,「S」で3人で食事をし,Bが午後9時ころ,用事があると言って先にタクシーを呼んで帰ったと供述し(甲284),Yも同月23日午後10時ころ,阪急Z駅でBと会ったと供述しており(第32回公判Y証人尋問調書),Bの供述と合致している。 この点,弁護人は,Rは同席していたにもかかわらず,Bが被告人から若頭の調査を依頼されたという件を聞いていないし,現に,後にR自身が同様 り(第32回公判Y証人尋問調書),Bの供述と合致している。 この点,弁護人は,Rは同席していたにもかかわらず,Bが被告人から若頭の調査を依頼されたという件を聞いていないし,現に,後にR自身が同様の調査を被告人から依頼されており,同じ内容を重複して依頼するのは変であることから,Bの供述の信用性に疑問があるという。 しかしながら,Bは,被告人と「Q」で2人だけのときに言われたと供述しているところ(第27回公判),この点,Rも待ち合わせ場所には先に2人が来ていたと供述しており,会食時にRが聞いていなくても当然である。 また,たしかに,Rは,4月1日に,被告人からL組の若頭は誰か調べてほしいと依頼された旨供述しており,Bへの依頼と重複する上,既に3月25日にBから被告人が報告を受けた後のことになり,B証言とは符合しない。 しかし,BがC1に25日に電話をかけていることは,後述のとおり,S1(以下,「S1」という。)の第18回公判期日における証言で裏付けられているから,Bの供述の信用性を減殺するものではない。 また,弁護人は,Yは,Bから高速道路で兄貴分と一緒に移動中である旨の電話連絡を受けた後,その相手と電話を替わり,「もうすぐ着くから待ってやっといてくれ。」と言われたと証言しており,Bが被告人以外の何者かと行動を共にしていた可能性が高いと指摘する。 しかし,Yは,Bが「兄貴分と会って,高速の上を走っている。」と言ったと証言しているところ,「兄貴分と一緒にいる」という話があったかを尋問されて肯定したが,今車の中に一緒にいるという意味かどうかは分からない旨証言するにとどまり,「兄貴分と一緒に移動中である」と言ったと明言してはいない。 Bは,もともとYとk1で6時から8時の間に会う約束だったのが,9時に店にタクシーを呼んで追いかけており,第三者 い旨証言するにとどまり,「兄貴分と一緒に移動中である」と言ったと明言してはいない。 Bは,もともとYとk1で6時から8時の間に会う約束だったのが,9時に店にタクシーを呼んで追いかけており,第三者と約束して待ち合わせていたとは考えにくい上,この日の用事は,文通友達のYの顔を見ることと,未決勾留中に差し入れてもらったお金を返すことが目的であり,第三者の同行があったとは認めがたい。また,車中でもう1人の男が「もうすぐ着くから待ってやっといてくれ。」と言った点は,Bが道を直接聞いてもらうため電話を替わったというタクシー運転手との間で出た話とも考えられる。結局,1人でYに会いに行ったとのB証言が不自然とはいえない。 イ次に,被告人がC1に会う件についてBが断られた事実について,S1証言によれば,同月25日にBから電話があったと聞いたC1が,Bに電話をかけ直し,「A(被告人)と会うのは筋が違う。話をしたかったらIかNを通すのが筋だ。」と言って電話を切った旨話していたと証言しており,B証言と時期も会話の内容も合致している。 これを報告したBが被告人から実包の調達を依頼されたという件については,Yは同月25日ころ,Bから,義理のある人に頼まれているので,38口径のけん銃用実包10発を入手してほしい旨の電話があったと証言し,T1も4月5日から10日までの間に,Bから38口径のけん銃用実包の入手を依頼されたが断った旨証言しており(第21回T1証人尋問調書),実際にBが25日以後,実包を調達すべく動いていた事実が認められる。 ところで,弁護人は,被告人は形式上の破門処分に過ぎず,IやNを通しさえすれば,L組に復帰することは可能だったのであるから,この報告を聞いて「これで清々した。」と言ったというのは了解しがたいという。 しかし,破門されたばかりか,出所の 破門処分に過ぎず,IやNを通しさえすれば,L組に復帰することは可能だったのであるから,この報告を聞いて「これで清々した。」と言ったというのは了解しがたいという。 しかし,破門されたばかりか,出所の迎えにも来てもらえず,今回の面会申し入れさえ筋違いとして拒まれたことに被告人が立腹し,I3兄弟に頭を下げてまでL組に復帰するつもりはないとしてL組に見切りをつける発言をしたことは了解可能である(後に第11の2の(2)で動機に関して再述する。)。 また,被告人がBにけん銃の実包調達を依頼したことにつき,弁護人は,①Bは絶縁処分になっている人物で,被告人とは23日に久しぶりに一度食事をしたにすぎず,実包を入手するルートを有するのかも不明であるのに,突然依頼するというのは唐突であること,②Bが実包を調達した4月9日まで被告人は実包を所持していなかったことになり,被告人はDランドリー事件や神戸事件を敢行できないはずであること,③Bは実包入手先がO1であると証言するが,O1自身はそれを認めていないこと等を挙げて,B証言は信用できないとする。 しかし,①の点は,Bは,本件当時は絶縁処分になっていても,元組員でその期間も長い以上,組所属時代の仲間など実包を入手できるルートを持っていて不思議ではなく,唐突な依頼とはいえない。②の点は,被告人がU1に対して独自に実包の入手を依頼していたことをBは双方から聞いている(第25回公判B証人尋問調書60頁)ことからしても,被告人にはB以外の他の入手ルートがあることが窺われるうえ,L組の若頭の件でも,被告人はB以外にRにも調査を依頼していたように,被告人は,複数の人物に入手を依頼し,そのうちの誰かから,Bが調達した4月9日以前に入手していたものと考えても不自然ではない。③の点は,O1の調書(甲270)は,まだ被告 調査を依頼していたように,被告人は,複数の人物に入手を依頼し,そのうちの誰かから,Bが調達した4月9日以前に入手していたものと考えても不自然ではない。③の点は,O1の調書(甲270)は,まだ被告人らが逮捕される前に作成され,その内容は,同月15日にP1団地駐車場で発見された普通乗用自動車日産シルビア(以下,「シルビア」という。)の入手経緯に関するものであって,Bに実包を調達したことが上記調書中に現れていないのは当然である上,BとO1が頻繁に連絡を取り合っていたことは明らかであって,O1の自供がないからといって,Bの信用性が減殺されるものではない。 ウまた,スクラムバンをレンタルした事実については,マツダレンタリースV1店店長のW1の供述(甲260)等により,Bが電話でレンタカーを予約し,27日午後3時ころ,E1がBの代理でスクラムバンを受領したことが認められる。 そして,E1は,Bは兄貴と呼ぶ人と携帯で話をして,E1らが借りてくれるよう頼んだ別のレンタカーについて,その代金を出してくれるよう頼んでおり,「兄貴からレンタカー代貰ろて来るわ。」とP1団地f1号棟へ入って行き,戻ってくると「レンタカー代や。」と言って現金をF1に渡していたと供述し(甲261),同行したF1も同様の供述をしており(甲262),被告人の出捐の事実が認められることから,本件犯行の足となったレンタカーは,被告人が指示してBに入手させたものと認められる。 この点,弁護人は,B証言と異なり,E1らは被告人と会ったことを供述していないことから,Bの供述は信用できないと主張するが,Bは「3人でf1号棟の下まで行った。被告人に下りてきてもらいお金をもらった。」と供述するにすぎず,Bだけが下車し,E1とF1は被告人と会っていなくても,両者の供述は何ら矛盾しない。 エそ るが,Bは「3人でf1号棟の下まで行った。被告人に下りてきてもらいお金をもらった。」と供述するにすぎず,Bだけが下車し,E1とF1は被告人と会っていなくても,両者の供述は何ら矛盾しない。 エその他,以下の事実について,B証言を裏付ける証拠が認められる。 (ア) 第20回公判期日における警察官X1の証言によれば,同月27日午後7時43分に,g1区内のG1給油所において,Dランドリー前に遺留された青色ポリ容器と同一の物に灯油20リットルを入れて販売された事実が認められる。 (イ) シーマのトランク内から,シールを外そうとした跡のあるバール及びしの各1本が発見押収されているところ(甲46),3月22日から28日までの間に,g1区内の「H1」において,遺留品と同一のバール及びしの各1本が販売され(第14回公判Y1証人尋問調書,甲79),鑑定の結果,上記遺留品のしのに付着していた青色塗料は,C重整備工業所南側出入口の施錠である南京錠の青色塗料と同種であることが認められる(甲55)。 このことから,Bが購入した上記しのが上記南京錠を破壊するための侵入道具として用いられたと認められる。 (ウ) さらに,27日午後11時32分,「ローソンZ1店」において,シーマのトランク内から押収されたドライバーセットと同じ商品が販売されており(甲72),鑑定の結果,シーマの後部ナンバープレートの封印部の工具痕は,上記遺留品のドライバーセットのうち緑色握りのドライバーにより印象された可能性があり,2本のドライバーには封印部分と同一の金属片が付着していることが認められる(甲423)。 また,F1は,同日深夜,Bからの電話で,シーマのナンバープレートを付け替えるため,京都のO1のところまで運転して行って欲しいと頼まれ,O1に確認すると,既にBから電話があったと話し 甲423)。 また,F1は,同日深夜,Bからの電話で,シーマのナンバープレートを付け替えるため,京都のO1のところまで運転して行って欲しいと頼まれ,O1に確認すると,既にBから電話があったと話していたが,盗難車の疑いもあったので依頼を断った旨供述しているところ(甲262),Bの携帯電話の発信記録(甲392)を見ると,Bは午後11時43分,O1に,午後11時56分,F1に,電話をかけている事実が認められる。これらによって,盗難車であることがばれないように,ドライバーでナンバープレートを外そうと試みたが外れず,付け替えできる人物を当たったが,断られて諦めたとのB証言が十分裏付けられている。 (エ) そして,シーマのトランク内からは,「和洋菓子店C2」の紙袋とその在中物も押収されている(甲46)。この紙袋は,a区sの本店のみで,赤飯と饅頭の包装用に使用されている物であるが(甲77),Uは,第5回公判期日において,同月22日の夕方,被告人の出所祝いにUの母と妹から「C2」の赤飯と饅頭をもらったが,その後,その紙袋はなくなったと証言している。 さらに,その紙袋の中には,Dランドリー事件で遺留された天誅ビラと同じビラ2枚,「D2」のシールが貼られた箱に入ったジスクグラインダ1個,「D2」のシールが貼られた切断砥石2個等が入っていたが,Tは,第7回公判期日において,被告人の出所を迎えに行った同月22日,最初に立ち寄った実家を午前10時ころに出て,被告人方へ送る途中,被告人が工具が欲しいと言ったため,神戸市l1区m1のホームセンター「D2」へ行き,被告人がグラインダー等を購入した旨証言しているところ,「D2・E2店」の防犯ビデオに,同日午前10時28分ころから42分ころまでの間,被告人がグラインダー等を購入する姿が録画されており(甲75),ジ 人がグラインダー等を購入した旨証言しているところ,「D2・E2店」の防犯ビデオに,同日午前10時28分ころから42分ころまでの間,被告人がグラインダー等を購入する姿が録画されており(甲75),ジャーナルでも販売事実が裏付けられている(甲74)。そして,その販売品はシーマ遺留のグラインダー及び切断砥石と同じ商品である(甲424)。 U及びTが,夫であり実兄である被告人にことさら不利益な虚偽供述をするとは考えがたいことからしても,被告人は,自宅にあった紙袋に,被告人が購入した工具を入れて,シーマのトランクに持ち込んだものと推認でき,さらには,同じ紙袋内にあった天誅ビラと被告人の関わりも窺われる。 (オ) また,R1は,同月28日午後8時40分ころ,被告人から電話で,「今すぐお前とこへ行くから,ちょっと下へ降りてきてくれ。」と言われて自宅前路上に行ったところ,シーマが停まっていて,運転席に被告人,助手席にBが乗車しており,被告人が手招きしたので助手席側後部ドアを開けて乗り込んだところ,被告人から運転免許証を貸してくれと頼まれたので貸したと供述しており(甲263),B証言と合致する。しかも,助手席側後部ドア外面からR1の指紋が採取されている(甲60)。 この点,弁護人は,R1はシーマ窃盗犯人として逮捕勾留中に被告人の関与を供述したものであるから,自己の刑事責任を免れるために虚偽供述をしているおそれがある上,所在不明を理由に2号書面として証拠採用された検察官調書(甲265)は信用性を欠くと主張する。 シーマにR1の指紋が付着していた事実は,R1自身がシーマを盗んで乗り回していた可能性を示唆すると一般的にはいえるとしても,本件指紋は運転席周辺でなく,助手席側後部ドア外面から検出されており,R1及びBの供述内容に符合する位置であって,R1が乗り回 ーマを盗んで乗り回していた可能性を示唆すると一般的にはいえるとしても,本件指紋は運転席周辺でなく,助手席側後部ドア外面から検出されており,R1及びBの供述内容に符合する位置であって,R1が乗り回していた事実とは結びつかない。また,R1は,Uの実妹の夫という姻戚関係にある上,被告人がM組にいたころに,被告人から誘われて弟分として一時期暴力団組員として活動しており,Bとも同じ建設会社で働いたことがあり,会えば挨拶をする程度の関係であって,あえて被告人に不利益な虚偽供述をして罪を転嫁する理由も認めがたい。そして,2号書面として採用されたR1の調書は,被告人とOとの口論内容を供述するものであるが,その事実はUの証言とも合致している。 よって,R1の供述は信用性に欠けるところはない。 以上より,シーマを被告人が使用していたことが認められ,本件及びシーマを用いた他事件への被告人の関与が窺われる。 (2) B証言の評価と被告人の犯人性ア以上のように,B証言は具体的かつ詳細であり,供述内容に特段不自然な点は認められない。しかも,(1)で検討したとおり,他の証拠によって裏付けられ,客観的証拠との合致も多数認められる。 イ特に,被告人と本件犯行との結びつきを示すものとして,以下の点が挙げられる。 (ア) 本件犯行の足となったレンタカーに関し,Bが,兄貴からレンタカー代を貰うと携帯で話をつけ,被告人方のあるP1公団f1号棟下に赴き,貰ってきたと言って現金を渡したという経緯についてB以外の者も同様の供述をしていることに照らすと,レンタカーを借りた主体はBではなくて被告人であり,しかも,現にBはバンという容量の大きい車種を指定しており,被告人は当初から窃取品であろう「荷物」を運ぶ目的を有し,その旨Bに指示してレンタカーを借りさせたものと考えられる。 ( くて被告人であり,しかも,現にBはバンという容量の大きい車種を指定しており,被告人は当初から窃取品であろう「荷物」を運ぶ目的を有し,その旨Bに指示してレンタカーを借りさせたものと考えられる。 (イ) 本件シーマと被告人との関連性について,そのトランク内から,被告人方が出所祝いにもらった地元の和菓子店の紙袋や,被告人が出所日に購入した物と同一の工具等,被告人との結びつきが強く認められる物が発見されているのは,被告人がシーマを使用していたことの証であるし,R1がシーマを運転する被告人を目撃し,被告人がR1から運転免許証まで借りていることは,シーマを継続して使用する意思の表れといえる。 (ウ) また,被告人には,事務所・店舗への侵入窃盗多数と自動車盗の前科があり(乙6),侵入の技術や経験を有することも窺える。 ウこれに対して,弁護人は,被告人の指紋等は一切検出されておらず,物的証拠がないから,被告人との結びつきは認められないと主張するが,Bは,H1で手袋とタオルも一緒に購入し,被告人は同店駐車場で,買ったバール,しの等の工具のシールを剥がそうとし,タオルで指紋も拭き取っており,その後,「K1」に侵入したとき以後,ずっと手袋をはめていた旨証言しており(第24回公判B証人尋問調書40,45,48,55頁),被告人は指紋がつかないよう配慮していることが窺えるから,被告人の指紋が検出されなかったからといって,結びつきが否定されるわけではない。 4 結論以上の証拠を総合すると,本件犯行は被告人によるものと認められる。 本件犯行の動機について,被告人は,事務所荒らしに失敗し,以前窃盗に使用したことのある甲所有のダンプカーを用いて実行することを思いつき,C工業所に侵入したものの,ダンプカーがなく,そのかわりに鍵のついたシーマが駐車されており,折しも被 所荒らしに失敗し,以前窃盗に使用したことのある甲所有のダンプカーを用いて実行することを思いつき,C工業所に侵入したものの,ダンプカーがなく,そのかわりに鍵のついたシーマが駐車されており,折しも被告人は,中古車を入手しようとしていたところであったことから,シーマを盗むことにしたものと考えられる。 また,犯行時刻については,シーマ窃取後,BがC工業所から約4.1キロメートル離れた(甲70)「ローソンZ1店」で,ドライバーセットを購入した時刻は午後11時32分であり,それまでに積載物を整理したり,ナンバープレートを外そうとしたりして,2か所で停車している経過に照らすと,犯行時刻は同日午後11時10分ころと推認できる。 そして,無免許運転については,シーマ窃取後,ローソン近くの路上まで被告人が運転した事実が認められる。 したがって,判示第1のとおりの事実が認定できる。 第4 器物損壊,殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(判示第2,「Dランドリー事件」) 1 客観的情況事実の認定本件事案については,平成11年3月28日午前零時30分ころ,2階にいた乙(以下,「乙」という。)は,1階玄関ドアガラスの割れる音を聞き,階下に降りて作業所内の電気をつけたところ,玄関ドアのカーテンが揺れており,玄関ドアガラスの下段が割れているのが分かり,バットを持って確認しようと「誰や,何すんねん。」と声をかけ,カーテンを右側に半分くらい開けたところ,歩道上に立っていた男から,玄関ドアの上段ガラス越しに,約170センチメートル離れた位置から,突然けん銃で銃弾1発を発射され,それが乙の右上腕を貫通して右胸部に命中したこと,直後に乙が逃げようと右半身になったとき,さらに男から銃弾1発を発射され,それが左胸部に命中したこと,これにより,乙は加療約30日間を要す 発射され,それが乙の右上腕を貫通して右胸部に命中したこと,直後に乙が逃げようと右半身になったとき,さらに男から銃弾1発を発射され,それが左胸部に命中したこと,これにより,乙は加療約30日間を要する右上腕及び左右胸部銃創等の傷害を負ったことが認められる[乙の警察官調書(甲20から24),第10回公判乙証人尋問調書,被害届(甲2),捜査報告書(甲3,5),実況見分調書(甲18)等]。 2 B証言の要旨Bは,本件につき,要旨以下のとおり証言する。 (1) 前述のとおり,Bは,被告人が3月27日午後11時56分ころシーマのナンバープレートの付け替えを断念した後,被告人と運転を交代し,被告人方へ向かう途中,被告人から「Q1温泉に行ってくれ。」と言われ,a区bn1丁目o1番p1号所在のQ1温泉北側路上に停車した。 (2) Bは,被告人から天誅ビラ1枚を手渡され,マスクをつけて,Dランドリー前のガードレールに貼ってくるよう指示された。Bは,被告人がDランドリー裏のQ1マンションで前刑事件の収入印紙偽造を行っていたため,クリーニング店の店主が警察に密告でもして,その報復に被告人がビラを貼ろうとしているものと考えた。そしてBは,何度かシーマに戻って,貼る位置や向きについて被告人に尋ね直しながら,ビラを同店前電信柱の車道側の目線の高さに貼った。 (3) Bがシーマに戻ると,シーマ後方路上に青色ポリ容器が置いてあり,Bが運転席に乗り込んで「兄貴,貼ってきましたで。」と言うと,被告人は,シーマに積まれていたえんじ色のフード付きジャンパーを来て,サングラス,白マスク,手袋をして,入れ替わりに助手席から降りて行った。 Bが運転席で被告人を待っていると,まもなく,連続的に2発の銃声が聞こえ,すぐに,被告人が走って戻ってきて助手席に乗り込むと,Bに「出せ。」と命 ク,手袋をして,入れ替わりに助手席から降りて行った。 Bが運転席で被告人を待っていると,まもなく,連続的に2発の銃声が聞こえ,すぐに,被告人が走って戻ってきて助手席に乗り込むと,Bに「出せ。」と命じ,Bは急いでシーマを発進させた。 被告人は,シーマに乗りこむ際,手袋をはめた右手に黒色回転式けん銃を持っており,助手席に座るとけん銃をズボンの左腹辺りに挟み込んでいたので,Bは被告人が発砲してきたものと思った。 (4) 被告人は,シーマを駐車するため,BにF2ホテルに行くよう指示し,向かう途中の車内で,「これは保険や。」「灯油忘れてきた。」と独り言を言った。 約15分後,Bは,大阪市q1区r1にあるF2ホテルの立体駐車場の5階にシーマを停め,タオルでシーマの車体を拭いていた際,被告人は,シーマ後方で駐車場の屋外を向いて立っていたが,けん銃の弾倉から空薬きょう2個を取り出し,Bからタオルを受け取ると,タオル,手袋,空薬きょう2個を外に投げ捨てた。 その後,被告人とBは,3月28日午前2時ころ,a区ss1丁目にあるスナック「G2」で約1時間過ごして帰宅した。 3 B証言の信用性及び関連する証拠の検討(1) 客観的証拠,他の供述との符合,裏付け証拠の有無等アまず,本件現場には,乙方歩道上の電柱に,「天誅」,K組の代紋の中に「L」,その下に「罪もない女子供を痛めてまで」,さらに下に「うまいもん喰らうな」と書かれたビラ1枚が,約139センチメートルの高さに,車道側に向けて,輪にして両面テープにしたガムテープを裏面の四隅につけて貼られており,さらに,乙方前歩道上に灯油20リットルが入った青色ポリ容器1個が遺留されているところ(甲17,31),B証言はこのような現場の状況と合致している。 弁護人は,青色ポリ容器について,G1給油所で販売された事実はB 歩道上に灯油20リットルが入った青色ポリ容器1個が遺留されているところ(甲17,31),B証言はこのような現場の状況と合致している。 弁護人は,青色ポリ容器について,G1給油所で販売された事実はBの供述以前に捜査官が確認済みで,Bが秘密の暴露的供述をしたわけでもなく,指紋などの物的証拠も出ておらず,何者かが購入したというだけで被告人とは結びつかないと主張するが,これがB供述の信用性を基礎づける証拠の一つであることは明らかである。 イ次に,Bは,発砲音を聞いた後,被告人がシーマに乗り込む際に,けん銃を所持していたのを目撃した旨供述している。このけん銃に関しては被告人と犯行とを結びつける極めて重要な証拠であり,他の事件でも同様に問題となるところであるから,最後に(第8項)まとめて検討することにし,各事件の検討においては,当該けん銃について証拠上認められる事実を摘示するにとどめる。 (ア) 乙の体内から摘出された2個の弾頭は,いずれも口径0.38インチのスペシャル型回転弾倉式けん銃から発射されたもので(甲15),うち1個についての鑑定によると,口径0.38インチのロッシ回転弾倉式けん銃によって発射されたものと認められる(甲16)。さらに,後述の,シルビアの右前輪タイヤ上から押収された口径0.38インチのスペシャル型ブラジル製ロッシMOD.68回転弾倉式けん銃(以下,「ロッシ」という。)(甲234)との関係について,これにより発射された可能性が高いとの鑑定結果がある(甲235)。 (イ) また,F2ホテル駐車場管理人H2は,同月28日午前4時30分ころの巡回の際に,5階28番枠にシーマが駐車されていたと供述しており(甲345),B証言が裏付けられているが,Bの自供に基づき(甲417),その駐車場に隣接する住宅展示場駐車場を捜索した結果,空 ころの巡回の際に,5階28番枠にシーマが駐車されていたと供述しており(甲345),B証言が裏付けられているが,Bの自供に基づき(甲417),その駐車場に隣接する住宅展示場駐車場を捜索した結果,空薬きょう2個が発見されている(甲34)。そして,この空薬きょうがロッシにより発射されたものであるとの鑑定結果がある(甲40)。これは,捜査官の知らなかった事項を自供し,その結果,物が発見されたもので,B証言の信用性を高めている。 この点についても,弁護人は,空薬きょうから被告人の指紋が検出されたわけでもないから,被告人関与についての証言の信用性と関係ないと主張するが,シーマを被告人が使用していたことは既に証拠上明らかであって,さらに,それが同ホテルに駐車されていたことも認められるところ,そこに隣接する場所から空薬きょうが発見された事実は,本件犯行と被告人との結びつきを推認させるといえる。 ウさらに,被害者ら複数の者による犯人目撃供述を検討する。 (ア) I2は,3月28日午前零時30分過ぎ,Dランドリー北東側車道上を北から南へ自転車で走行中,銃声2発を聞き,その直後に,白いマスクを付けた人物が約104メートル前方の同店前歩道上を急ぎ気味に北に歩き,角をQ1温泉の方向へ左折するのを目撃したと供述しており(甲28),被告人の服装,逃走経路についてB証言と合致する。 (イ) また,被害者の乙は,犯人の特徴について,身長170から175センチメートルの男で,黒とっくりセーターを着て,焦げ茶もしくは黒っぽい中折れ帽をかぶり,白色マスクをして,がっちり型であったと供述していたが(甲20等),公判廷では,黒のセーターについては断言できないが,中折れ帽については特に印象が強いと証言している(第10回公判証人尋問調書)。 この乙の供述に関し,弁護人は,乙 たと供述していたが(甲20等),公判廷では,黒のセーターについては断言できないが,中折れ帽については特に印象が強いと証言している(第10回公判証人尋問調書)。 この乙の供述に関し,弁護人は,乙が供述する「中折れ帽子」を捉えて,シーマのトランク内から押収された麦わら帽子のことであるとするのは無理があり,また,「いかり肩のシルエット」のがっちり型の男と被告人の体格は異なっていると指摘する。 この点,乙は,「中折れ帽子」について,例えば生地等について特徴を詳しく述べているわけではなく,公判でも「ひさしがあって真ん中がへこんだ形,何かそれだけ,慌ててたんですけど」と証言しているところ,そのような当時の目撃状況からして,形の一部が記憶に残っていたものであるが,シーマに遺留された麦わら帽子も中折れの形をしており,周囲にひさしもあり,この点では形状において一致しているといってよい。乙も,麦わら帽子と形が似ていたことを認めている。帽子の色や着衣についても同様に,第三者を疑わせるほど大きな食い違いがあるとはいえない。また,犯人の体格についても,その着衣の形や目撃者の主観の影響も考慮すると,被告人の体格と矛盾するとはいえない。 (ウ) なお,Bは,被告人が下車したときの服装について,公判廷では「えんじ色のフード付きジャンパーを着てフードをかぶって出て行った。逃走するときに帽子をかぶった記憶があるから帽子はかぶっていない。」と証言し,捜査段階の供述と変わっていることが窺われるが,Bは,公判廷で,捜査段階で記憶と違うことを述べたということはないと証言し,乙が一貫して中折れ帽と供述し,特にその印象は強いと証言していることに照らすと,上記の点に関するBの公判供述は記憶が変容したものといえ,信用しがたい。 よって,全体として見た場合,乙らの犯人目撃供述とB証 貫して中折れ帽と供述し,特にその印象は強いと証言していることに照らすと,上記の点に関するBの公判供述は記憶が変容したものといえ,信用しがたい。 よって,全体として見た場合,乙らの犯人目撃供述とB証言は矛盾せず,整合しているといってよい。 エさらに,スナック「G2」の店員K2の供述(甲346)によると,同月28日午前2時過ぎに,被告人とBが来店し,3時30分ころ帰ったことが目撃されており,B証言を裏付けている。 (2) B証言の評価と被告人の犯人性ア B証言は具体的かつ詳細であり,他の証拠による裏付けも多く,空薬きょうについては秘密の暴露となる供述をしている。また,現場状況など客観的証拠との合致も多い。 Bが本件犯行現場となったDランドリー付近へのビラ貼りを手伝った動機に関連して,被告人の前刑事件の犯行現場は,「bn1丁目o1番p1号Q1マンション」で(乙16),Dランドリーの裏であり,その事件での密告に対する報復と理解したという点も了解可能である。 また,Bは,発砲した理由を被告人に聞かなかったのは,「考える時間もなく,理由を知りたいという気持ちがなかった。」「そういう気持ちを自分で封じ込めていた。」と,さらに,被告人の発した「保険や。」の言葉の意味を聞かなかったのは,兄貴のすることだから深く詮索したくないという気持ちがあったからだと証言して,犯行現場に居合わせた者の心情について述べ,とりわけ「保険や。」の発言については,無差別的犯行あるいは後の神戸事件と関係するか明らかではないとしても,臨場感と迫真性のある証言といえる。さらに,被告人のことを兄貴と慕い信頼していたのに,嫌がる窃盗をさせようとするなどIと同じではないかと思ったり,発砲現場に居合わせて共犯と疑われる不安感から,「覚せい剤でも打たなやってれんような気分になった」ため ことを兄貴と慕い信頼していたのに,嫌がる窃盗をさせようとするなどIと同じではないかと思ったり,発砲現場に居合わせて共犯と疑われる不安感から,「覚せい剤でも打たなやってれんような気分になった」ため,帰宅後,西成に覚せい剤を買いに行き,使用したことなど,その複雑な思いを率直に吐露している。 この点,弁護人は,ビラ貼りや発砲の理由を質問しなかったというのは不可解,不合理な行動であるというが,発砲については予想外の出来事に直面し,何が起こったのか考える余裕すらないというのは正直な感情と思われるし,被告人は,極道としてBより上の人物であって,兄貴として慕っていたが,優しいところと怖いところと二面性があると感じており(第26回公判34頁),その被告人に対して,兄貴なりの考えがあってしていることだから深く詮索しないというのも,不可解とまではいえない。 イ特に,被告人と本件犯行との結びつきを示す事実として,以下の点が挙げられる。 (ア) 被告人がBと共に行動し,被告人がシーマを盗んだり乗り回したりしたことは,シーマの遺留品やR1供述等から認められることは前記のとおりであるが,シーマのナンバープレートの付け替えを断念したのは,本件犯行時刻の約30分前であることも明らかであり,犯行直前に被告人とBが一緒に行動していたことが認められる。 (イ) 犯行現場に遺留されていた青色ポリ容器と天誅ビラについても,シーマ窃盗事件についてのB証言により,ポリ容器は被告人が購入したと認められ,被告人との関連性が強く認められる「C2」の紙袋在中の天誅ビラと同一のビラが現場に貼られていることからも,被告人が本件に関与していることが推認できる。 (ウ) シーマ後部座席に遺留されていたえんじ色ジャンパーは,甲が所有するシーマに当初から積載されていた物であるが,その袖に灯油臭 れていることからも,被告人が本件に関与していることが推認できる。 (ウ) シーマ後部座席に遺留されていたえんじ色ジャンパーは,甲が所有するシーマに当初から積載されていた物であるが,その袖に灯油臭はついていなかったと甲が説明しているところ(甲46),被告人が使用していたシーマから犯行当時来ていたとBが証言するジャンパーが発見されたことに加え,Bがビラを貼ってくる間に,被告人が駐車したシーマ後部路上で,ポリ容器の蓋を開けてビラを突っ込んで,現場まで持ち運んでいれば,灯油がこぼれて袖に付着する可能性があり,ポリ容器を被告人が遺留したことを裏付けている。 (エ) 本件犯行の約1時間30分後には,被告人がBと2人でスナックにいるところが目撃されているところ,Bが犯行直前に被告人と行動を共にしていたことは前記(ア)のとおりであり,被告人と本件犯行時だけ別行動をとって,被告人以外の別人と共に,あるいは単独で,本件犯行現場に行ったとは考えがたい。 ウこれに対して,弁護人は,本件の3日前の同月25日午前3時30分ころ,Dランドリーに何者かが発砲した事実が認められるとして,本件とその事件との相違点等を挙げて,本件は被告人による犯行ではないと主張する。 (ア) まず,25日に,そのような発砲事件があったと認められるかであるが,乙方には,玄関ドア上部ガラスの銃弾による貫通痕の他に,玄関ドア北側の3枚組雨戸のうち,最も左側の雨戸に,歩道からの高さ163センチメートルの位置に貫通痕が認められ,その内側の窓ガラスアルミ枠の高さ162.8センチメートルの位置にも円形の凹部があり,雨戸の貫通痕とほぼ対応する位置にあることが認められる(甲17)。また,実際に郵便受け内から弾丸1個が発見,領置されている(甲11)。この弾丸について,乙は,同月25日午前3時30分こ 凹部があり,雨戸の貫通痕とほぼ対応する位置にあることが認められる(甲17)。また,実際に郵便受け内から弾丸1個が発見,領置されている(甲11)。この弾丸について,乙は,同月25日午前3時30分ころ,自宅2階で就寝中,車のバックファイアーのような音を1回聞き,目を覚ました直後,ガラスの割れる音がしたので階下へ行くと,玄関ドア下段ガラスが割れており,とりあえず,ガラスの破片を歩道の端に寄せておき,翌朝,店舗内のガラス片も掃き出して,歩道上の破片と一緒にした際,その中に鉛の塊を発見し,郵便受けに入れておいたと供述している(甲23)。以上の事実に加えて,本件犯行直前には,乙はガラスが割れる音を聞いただけで,自分が撃たれた際の銃声2発以外に銃声を聞いておらず,その弾丸はいずれも乙の体内から摘出されていることに照らすと,何者かが,25日に,乙方の雨戸にけん銃を発砲した事実が認定できる。そして,内側の窓ガラスアルミ枠との間でとどまっていた弾丸が地面に落ち,掃除の際に発見されたものと認められる。 (イ) この事実を前提に,以下,弁護人の主張を検討する。 ① 弁護人は,まず,本件と近接した日時に,同一場所において敢行された25日の発砲事件は,本件と同一人物によるものと推認するのが合理的であるところ,シーマもスクラムバンも入手しておらず,逃走車両のない状態である25日に,被告人が単独で敢行するのは無理であるから,本件も別人が犯人である可能性が高いと主張する。 しかし,25日の事件は,午前3時30分という付近住民も完全に寝静まった時刻に発生しており,そのような人通りのない時間帯であれば,逃走用車両がなくても,建造物損壊を敢行することは可能といえる。そして,25日の事件では,人がいれば命中しやすい玄関ドアガラスでなく,右隣の雨戸を狙っていることから,建造 通りのない時間帯であれば,逃走用車両がなくても,建造物損壊を敢行することは可能といえる。そして,25日の事件では,人がいれば命中しやすい玄関ドアガラスでなく,右隣の雨戸を狙っていることから,建造物損壊の故意のみであったと考えられる。 また,被告人がBに実包調達を依頼したのは25日であるが,その際の「マメが湿気ってるんや。」との発言に照らすと,被告人は既に実包を入手しており,それが湿気ていることを認識していたものと認められる。鑑定書(甲15)によれば,郵便受けに入っていた弾丸の変形は少なく,衝突力が弱かったことを示しており,実際に雨戸内側の窓ガラスのアルミ枠は貫通しておらず,このような発射及び衝突状況から,実包が湿気ているものと認識したと推認することが可能である。25日の発砲が試し撃ちであり,湿気っていたために別の弾丸の入手を図ったとも考えられる。 よって,逃走車両を入手した日よりも前であるからといって,25日の事件を被告人による犯行ではないとすることはできない。 ② 次に,弁護人は,雨戸の貫通痕の高さは歩道面から163センチメートルで,アルミ枠の凹部とほぼ同じ高さであることから,水平に発射されたものと認められるところ,けん銃を構えた胸部の高さがこの位置であるとすると,身長が175センチメートル以上の大柄な人物が犯人像として考えられ,被告人と身長が合致しないことから,25日の事件と本件が同一人物であれば,本件は被告人によるものではないと主張する。 しかし,建造物のどこかを損壊するだけの場合は,けん銃を構える高さが目のあたりであっても不都合はなく,貫通痕の高さが犯人の胸の高さに相当するとはいえない。 ③ また,弁護人は,実況見分調書(甲17,写真90から93)によると,本件の推定弾道は上方から下方に向いており,相当高い位置から発砲されてい 貫通痕の高さが犯人の胸の高さに相当するとはいえない。 ③ また,弁護人は,実況見分調書(甲17,写真90から93)によると,本件の推定弾道は上方から下方に向いており,相当高い位置から発砲されていることが認められるとして,本件の犯人も大柄な人物と推認され,被告人とは異なっているとも主張する。しかし,カーテンの貫通孔は裾から123センチメートル程度であるところ,当該写真の犯人の立ち位置は歩道上の電信柱より車道側であるが,乙の証言によれば,その写真よりも乙方に近い歩道上に犯人が立っており,発射高はより低くなるから,推定弾道の写真を根拠に,犯人が大柄の人物であるとはいえない。 ④ また,弁護人は,被告人がBを介してC1に連絡をとり,面会を断られた旨の報告を受けたのは25日の日中であるから,25日未明の事件の際には,被告人には発砲事件を敢行する理由がないとも主張する。被告人の内心については,出所時にI三兄弟のいずれも迎えに来ず,受刑中に被告人の家族の面倒を見なかったことで,面会を断られる前からIへの報復を既に決心していた可能性及び復帰についてL組から色良い返答はもらえそうにないことを予期していた可能性があり,試し撃ち等報復の準備をする理由がなかったとはいえない。本件動機を確定することは困難であるが,C1に断られたことと25日の発砲の先後を理由に,本件が被告人によるものではないとすることはできない。 (ウ) 以上により,25日の発砲の犯人が誰であるかの断定はできないが,被告人が犯人ではないとはいえないから,それを理由に本件も被告人が犯人ではないとする弁護人の主張は採用できない。 4 捜査手続の瑕疵の主張についてところで,弁護人は,本件に関する証拠中,平成11年3月28日付け捜査報告書(甲9)について,その記載内容から,4月14日以降に作成され 護人の主張は採用できない。 4 捜査手続の瑕疵の主張についてところで,弁護人は,本件に関する証拠中,平成11年3月28日付け捜査報告書(甲9)について,その記載内容から,4月14日以降に作成されたことは明らかであり,直ちに作成すべき捜査報告書を完成させていなかったことから,故意に又は過失により作成日付を遡らせている以上,同書証のみならず他の書証の信用性についても疑いを生じさせるとする。 この点につき,第35回公判期日における警察官K2の証人尋問によれば,平原は,3月28日に乙の体内から摘出された弾丸を医師から受け取り,同報告書の本文部分を作成したが,別件事件が入ったため,フロッピーディスクに保存しておいたところ,同年4月14日にG理容室事件が発生し,その初動捜査に従事して,速やかに仕上げるべき領置経過報告書を完成させなければならないと思い,翌15日に作成したが,その際,領置年月日を間違えないことが念頭にあったため,過失で頭書の作成日付を領置年月日にしてしまい,また,戊事件の翌日でもあり,被害者戊の名前が頭に残っていたため,被害者名を間違えてしまったと証言する。 平原の供述する作成経緯,誤記の理由に特に不自然な点はなく,作成年月日と被害者名という重要事実の記載を誤った点の不注意は責められるべきであるが,故意に日付を遡らせて,内容虚偽の証拠を作出したと認めるべき事情は窺われないのであり,本件誤記が一般的に他の捜査報告書の作成や内容の真正に疑問を抱かせるものとも認められない。 よって,弁護人の主張は採り得ない。 5 結論以上の証拠を総合すると,本件犯行は被告人によるものと認められる。 乙に対する殺意についても,約170センチメートルの至近距離(乙の証言及び甲18見取図)から,殺傷能力が非常に高いけん銃で銃弾2発を連続的に発射し,胸部等 ,本件犯行は被告人によるものと認められる。 乙に対する殺意についても,約170センチメートルの至近距離(乙の証言及び甲18見取図)から,殺傷能力が非常に高いけん銃で銃弾2発を連続的に発射し,胸部等の人体枢要部にいずれも命中させ,重傷を負わせて,逃走したもので,これらの状況に照らすと,被告人が確定的殺意を有していたことは優に認められる。 よって,判示のとおりの事実が認定できる。 第5 殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(判示第3,「神戸事件」) 1 客観的情況事実の認定本件事案については,平成11年3月28日午後11時5分ころ,市営j第m住宅n号棟3階エレベーター前通路付近において,何者かが,丙(以下,「丙」という。)に対し,けん銃で銃弾合計3発を発射し,それが丙の左前胸部,右胸背部,右手掌部に命中し,これにより,丙は,翌29日午前零時15分ころ,左前胸部射創により失血死したことが認められる[死体検案書(甲309),実況見分調書(甲310,332),検証調書(甲333),捜査報告書(甲311),L2の検察官調書(甲312)等]。 2 B証言の要旨Bは,本件につき,要旨以下のとおり証言する。 (1) Bは,3月28日午後,電話で呼ばれて被告人方へ行くと,R1と被告人の妻の弟のM2が来ており,被告人は,Bに「今これOと話しとるんや。」と言い,電話口に向かって「Bに指一本でも触れたら承知せえへんぞ。」と言っていた。Bはこれを聞き,同月25日にBがC1に直接電話をかけた件でL組内で非難の声が出ていると,町で偶然会ったOに言われたと被告人に報告していたことから,被告人がBのためにOに文句を言ってくれているのだと思った。 被告人は,Bと2人きりになると,「刑務所に行く前に何人かに金貸してるんや。」などと言って,丙に関する興信所の調査書を取 していたことから,被告人がBのためにOに文句を言ってくれているのだと思った。 被告人は,Bと2人きりになると,「刑務所に行く前に何人かに金貸してるんや。」などと言って,丙に関する興信所の調査書を取り出し,「この人間に金貸してるけども,一緒に取り立てせんか。」「これよう読んどいてくれ。」と言って,Bに手渡した。 (2) Bは,被告人と共に,被告人が預けていた質屋に行った後,F2ホテルの駐車場5階に停めていたシーマを取りに行き,被告人がシーマを運転して,R1方前の路上で,シーマの後部座席に乗り込んだR1からその運転免許証を借りた。 被告人は,午後9時ころから,Bと調査書を見ながら尼崎市内で食事をしていた際,今から丙方に下見に行くとBに告げ,午後10時前ころ,共に店を出た。 (3) 被告人は,神戸市i区内のj第m住宅に到着すると,付近路上にシーマを停め,丙方のある同住宅n号棟へBと向かった。このときの被告人の服装は,作業服上下に,紺色ジャンパー,その上にシーマに積んであったえんじ色ジャンパーを着て,H1で購入した紺色の帽子,手袋という服装で,Bの服装は,ジーンズ上下に黄土色のウインドブレーカーを着て,眼鏡をかけ,手袋をしていた。 Bらは,途中,棟を間違えて,その棟の1階エレベーターホールに居た若者や,付近にたむろしていた若者にn号棟への道を尋ねた。 被告人とBは,n号棟の駐車場枠を,次いで3階に上がってt1号室の表札で丙方を確認し,エレベーターホールに戻ったが,帰ろうとしたBに対し,被告人は,「ちょっと見てきてくれ。」「偽名を使って呼び出してくれ。」と指示した。そこで,Bは丙方のドアを開け,「夜分すみません。」と声をかけると,室内の丙が「誰や。」と尋ねたので,思いつくまま「N2’です。」と答えた。すると,丙は,「N2”か。」「変わった れ。」と指示した。そこで,Bは丙方のドアを開け,「夜分すみません。」と声をかけると,室内の丙が「誰や。」と尋ねたので,思いつくまま「N2’です。」と答えた。すると,丙は,「N2”か。」「変わったなあ。上がって飲もうや。」と言ったので,Bは困惑してエレベーターホールの被告人の方を見ると,被告人が丙を連れ出せという手招きをしたので,Bは「連れがいるので,一緒に飲みに行きましょう。」と誘ったところ,丙は服を着て,Bの後ろからエレベーターホールへと向かった。 (4) Bが先にエレベーターに乗り込み,「開く」ボタンを押し続けていると,サングラスとマスクをつけ,エレベーターホールの柱の陰にいた被告人が丙に近寄って行き,向かい合って睨み合い,丙が「ようし,分かった。」と言ってt1号室の方へと走り出し,すぐに被告人がその後を追った。 その直後,Bは銃声を聞き,エレベーターの中から見ると,Bに背を向けた被告人と重なり合うように向き合っていた丙が,よろめいて右側のt1号室の方へ倒れ込むようにして視界から消え,被告人は,その方に向けて,けん銃を構えた右腕を伸ばして2発目を発射し,更に右に向きを変え,丙に正対するような格好で,3発目を発射した。 被告人がエレベーターに乗り込んで来たので,Bは,通してやってからエレベーターのドアを閉めたが,駆けつけて来た丙の妻に,エレベーターのドアのガラス越しに顔を見られた。その際,被告人は,Bの後ろにいた。 (5) 被告人は,エレベーターの中で,まだ右手に持っていた黒いけん銃を左脇下に着けていたホルスターにしまい,その際,Bは,被告人が右脇下にも別の黒いけん銃1丁を入れたホルスターを着けているのを見た。 1階に下りてから,慌てていたBは,別の方向に走ってしまい,被告人から「B,どこ行くねん。」と声をかけられ,シーマに戻って出発 が右脇下にも別の黒いけん銃1丁を入れたホルスターを着けているのを見た。 1階に下りてから,慌てていたBは,別の方向に走ってしまい,被告人から「B,どこ行くねん。」と声をかけられ,シーマに戻って出発した車内で,運転席の被告人に対し,丙を撃った理由を尋ねたところ,被告人は「O2の敵や。」と答えた。これを聞いてBは,平成12年2月に,D1会の若頭で,被告人がかわいがっていたO2が殺害された件があり,その犯人が丙で,その報復をしたものと理解した。被告人は車内でえんじ色ジャンパーとサングラス,マスクを外していた。 被告人は,途中,a区内で調査書を燃やして川に投棄した後,Bを誘ってa区su1丁目にあるスナック「P2」に行き,同店のトイレ内でBに手伝わせて,両脇に下げていたホルスター2個とナイフの吊り紐の乱れを直した。 その後,被告人は,Bの案内で,a区bc1丁目d1番e1号所在のX方西側路上にシーマを駐車して帰宅した。そして,30日午前,Bが被告人からシーマを取りに行くよう言われて行ってみると,そこにシーマはなかった。 3 B証言の信用性及び関連する証拠の検討(1) 客観的証拠,他の供述との符合,裏付け証拠の有無等ア医師のL2は,解剖所見として,丙の4つの創傷について,①左前胸部射創は,約15センチメートル以内の至近距離で,丙に向かって右の方向から発射されたもので,心臓を貫通し,左側胸下部が射出口であること,②右胸背部射創は,右肩胛骨下から右斜め上方に向かい,右脇の下が射出口であり,丙が犯人に背中を向けて,背中を丸めた状態で動いているときに撃たれたと推定して矛盾はないこと,③右手掌部射創は,小指側面が射入口で,表皮に亀裂があり,近射,跳弾,遠射の3つの可能性があること,④山型の左手背部の創傷は,エレベーターホール直近から押収された弾丸が たと推定して矛盾はないこと,③右手掌部射創は,小指側面が射入口で,表皮に亀裂があり,近射,跳弾,遠射の3つの可能性があること,④山型の左手背部の創傷は,エレベーターホール直近から押収された弾丸がアルミサッシ枠に当たって跳ね返り,射入したとすれば,矛盾なく説明できることを供述している(甲312)。 このうち④の創傷は,捜査当初は成傷器不明の鉤型刺創と判断されていたものであるが,これを受けて弁護人は,創傷を見る限り,刺傷と判断するのが適切であり,鉤型刺創を成傷しうるけん銃以外の成傷器が凶器として用いられた可能性があるところ,被告人がそのような凶器を所有していた事実はないことからも犯人性が否定されると主張する。 しかし,龍野供述によれば,④の創傷が刺傷であるとしても,それを形成しうる凶器は,先端が三角錐で各辺が鋭利なものであるところ,かかる凶器が存在するのか疑問であること,また,刺創では内部の骨が複雑に折れることは通常考えにくいことから,刺創という判断に検討中との留保を付していたところ,後にアルミサッシ枠の弾丸衝突痕,その位置関係,押収された弾丸の断面図が判明し,再検討した結果,跳弾による射創と考えて矛盾はないというものであり,その説明は十分納得できるものである。 そして,現場から弾丸は3発しか押収されていないにもかかわらず,創傷が4個認められる理由についても,斜め下方に発射されて①を成傷後,アルミサッシ枠に当たって跳ね返り,変形した跳弾が④を成傷したと合理的に推認できる。 以上から,B証言は,被害現場の状況及び丙の創傷の部位に合致しているといえる。 ところで,弁護人は,現場の客観的状況を見ると,被害者は3階西端のv1号室前まで逃げており,犯人は2,3発目を丙を追いかける形で発砲した可能性が高く,Bが同階中央のエレベーター内から といえる。 ところで,弁護人は,現場の客観的状況を見ると,被害者は3階西端のv1号室前まで逃げており,犯人は2,3発目を丙を追いかける形で発砲した可能性が高く,Bが同階中央のエレベーター内から犯行を目撃できたか疑問があり,B証言の信用性は疑わしいと主張するが,龍野医師の供述(甲312)によると,頭部でなく胸部を撃たれた場合は,未だ意識が残っており,最後の力を振り絞れば走ることも可能とのことであるから,弁護人の主張は前提を欠く。 イまた,Bは,被告人が犯行の際及び直後のエレベーター内,更にはスナック「P2」のトイレ内で,けん銃を所持しているのを目撃した旨供述しているところ,現場付近から押収された3個の弾丸は,いずれも本件ロッシから発射されたものと考えられるとの鑑定結果がある(甲235)。詳細は後に検討する。 また,被告人方からホルスターが発見されており(甲250),それに火薬残渣が付着していることが認められ(甲254),B供述のうち,被告人がホルスター内にけん銃を保持したという点につき裏付けがある。 さらに,被告人がもう一つ別のけん銃を所持していたという点についても,後述のとおり,平成11年7月27日に,Tが任意提出したバッグの中からロッシとは別の回転弾倉式けん銃1丁が発見されており,一応の裏付けとなる。 ウ次に,Bが犯行直前に道を尋ねたという2人,及び逃走する際に顔を見られたという丙の妻の大蔵Q2の犯人目撃供述を検討する。 (ア) まず,証人R2は,3月28日午後10時55分ころ,j住宅w1号棟1階エレベーターホールで引越し作業中,2人連れの男の1人からn号棟までの道を尋ねられて道順を教えたが,その尋ねた男はBに間違いなく,もう1人は,被告人に似た人相の男だったと証言し,証人S2は,午後11時ころ,同住宅x1号棟付近で雑談 2人連れの男の1人からn号棟までの道を尋ねられて道順を教えたが,その尋ねた男はBに間違いなく,もう1人は,被告人に似た人相の男だったと証言し,証人S2は,午後11時ころ,同住宅x1号棟付近で雑談中,男からn号棟までの道を尋ねられて道順を教えたが,その男はBに間違いないが,通路入口で待っていた連れの男は,離れていたのでよく分からなかったと証言しており,Bの証言する犯行直前の経緯と合致している。 (イ) また,丙の妻のQ2(以下,「Q2」という。)は,第4回公判期日において,同月28日午後11時ころ,Bが「N”’の友達」と称して丙方を訪れ,「外で話したい言うてるから。」と言って丙を外へ連れ出し,しばらくするとエレベーターの方で「ドーン」という衝撃音がしたため,トラブルが起こったものと思って,玄関へ行きかけた際,続けて「パーン」という音が3回し,傘を2本持って玄関外に出ると,丙はv1号室前でうずくまりかけていたが,その時にエレベーターが閉まるような音がしたので駆けつけると,Bがドア付近に乗っているのがガラス越しに見え,奥に,顔は見えなかったが,赤い上着を着た人が乗っていたと証言する。 Q2の視力や当時のエレベーター内の明るさに問題はなく,エレベーターのドア前約40センチメートルという至近距離から見たもので,中の様子がはっきり見えることは再現でも明らかであり(甲334),その供述の信用性は高い。そして,被告人が着ていたとBが証言する,シーマに遺留されていたえんじ色のフード付きジャンパー(甲46)は,エレベーター内の蛍光灯の下では赤色に見え得るもので,B証言を裏付けている。 (ウ) 加えて,発砲音を聞いた直後,n号棟南隣のマンションのベランダから,n号棟東面にいた不審な男を目撃したT2は,2人の男のうち1人が南側の駐車場出入口付近まで来て, で,B証言を裏付けている。 (ウ) 加えて,発砲音を聞いた直後,n号棟南隣のマンションのベランダから,n号棟東面にいた不審な男を目撃したT2は,2人の男のうち1人が南側の駐車場出入口付近まで来て,引き返していったと説明しており(甲337),Bが証言する,反対方向に行きかけて,被告人に声をかけられて戻ったという逃走経路と合致する。また,n号棟y1号室前通路からエレベーターホールに通じる1階中央階段付近にいた男が駐車場を北側へ行くのを目撃したU2は,その男が赤い服を着ていたと説明しており(甲337),Q2の目撃供述と合致しており,信用性を高めている。 (エ) これに対して,弁護人は,①R2らの目撃供述について,R2がBの連れの人物のことを「25から30歳,センター分けの髪,黒の服着用」と証言し,被告人との面通しで少し雰囲気が違うという感想を持ったとも証言していること,その他に「茶髪のセンター分けでサーファーカットの短めの人」と供述した人もいること(第27回公判B証人尋問調書38頁)等を挙げ,これらはBが被告人ではない誰かと当時一緒にいたことを示すものである旨主張する。 道順を尋ねられたR2らは,Bの側にいたもう1人の人物については,同一人物を目撃しているはずであるのに,髪型,服装等ばらばらの供述をし,食い違っている。これらの犯人識別供述の食い違いについては,直接話しかけられたBについてはその特徴をよく記憶しているものの,接触のなかった人物については,Bほど注意して見ていなかったため,誤って知覚されたものと考えられる。このB以外の人物については,夫の急を知って駆けつけたQ2の目撃供述,すなわち,もう1人は赤い上着を来ていたとの供述が最も正確といえ,これを支えるU2の供述も存在するから,Bの証言と符合しているといってよい。 なお,弁護人 夫の急を知って駆けつけたQ2の目撃供述,すなわち,もう1人は赤い上着を来ていたとの供述が最も正確といえ,これを支えるU2の供述も存在するから,Bの証言と符合しているといってよい。 なお,弁護人は,S2がもう1人の人物について,Bの若い衆のような人物に見えたという趣旨の証言をしていることを指摘するが,S2は,「道を聞いた人の後ろについて歩いて行くような感じ」と述べるにすぎず,その人物が被告人ではないことの根拠にはならない。 さらに,弁護人は,②Bが丙を呼び出す経緯について,Bは被告人とどんな偽名を用いるか相談することもせずに,直ちに名乗っており,しかも,その「N2’」という名は,偶然にも過去に丙とトラブルがあったN2””と同じ名字であるうえ,Bは「N”’の友達」と名乗り,吉田本人とは名乗らなかったとQ2が証言しており,「N2’です。」と名乗ると,丙が「ほんまにN2”か。」と言ったとのB証言と異なっており,丙にとって気まずい仲の吉田とBを誤認することはあり得ない点などを挙げる。 Bが「N2’」又はその友人と名乗ったところ,丙が知人の吉田と誤認したという点は,偶然の事情ではあるが,特段不自然とまではいえず,その後の経緯については,Q2証言と一致しているといえ,B証言の信用性を損なうほどの問題ではない。 エ被告人が犯行前後,Bと行動を共にしていたことについて他の目撃供述等の裏付けが存在する。 Uは,3月28日午後,M2とR1とBの3人が被告人方に来て,被告人は電話でOと口論しており,M2とR1が夕方帰り,被告人はBと外出したことを証言している。R1も,同日午後,被告人方にいた際,被告人に対し,「Oが兄貴に『電話させ。』言うとりましたわ。」と話すと,被告人は不愉快そうにしてOに電話をかけ,喧嘩腰の口調でR1を介して連絡を取らせようとし 。R1も,同日午後,被告人方にいた際,被告人に対し,「Oが兄貴に『電話させ。』言うとりましたわ。」と話すと,被告人は不愉快そうにしてOに電話をかけ,喧嘩腰の口調でR1を介して連絡を取らせようとしたことの文句を言うなどした後,「お前ら3人の中で,1人でも出所するとき,迎えに来てくれりゃ,俺も寂しい思いせんで済んだんや。」と不満を述べ,遅れて来たBに報告していたと詳細に供述し(甲265),前述のとおり,午後8時か9時ころ,シーマを運転してBと一緒に自宅前に来た被告人に免許証を貸したことも供述している(甲263)。 被告人の妻UばかりかR1についても,あえて被告人に不利益な供述をする理由がないことは先に述べたとおりであり,信用できる。 また,同月22日に被告人から頼まれてT名義で質入れした腕時計について(第7回公判T証人尋問調書),28日午後7時前に,Bが電話を質店にかけ(甲392),行った事実が認められ(甲275,276),B証言が裏付けられている。 そして,犯行後の29日午前0時30分ころ,被告人とBがスナック「P2」に来店し,Bが被告人のためにガムを購入させ,同日午前1時30分ころ帰った事実が,従業員V2の供述(甲354)から認められる。 (2) B証言の評価と被告人の犯人性ア B証言は具体的かつ詳細であり,特に犯行目撃状況は体験した者にしか分からない迫真性,臨場感に富んだ供述である。また,Bは,「エレベーターの中で被告人から手袋をしていたかと聞かれ,していたと答えたが,もし手袋をしていなかったらやばい,口封じされたかも知れず,危ないところだったと感じた。」旨を述べ,債権回収の下見に同行したつもりが予想外に殺人の犯行現場を目撃した後の,被告人に対する恐怖心の入り交じった複雑な心情を告白しており(第25回公判34頁),生々しさが感じら ったと感じた。」旨を述べ,債権回収の下見に同行したつもりが予想外に殺人の犯行現場を目撃した後の,被告人に対する恐怖心の入り交じった複雑な心情を告白しており(第25回公判34頁),生々しさが感じられる。 イ特に,被告人と本件犯行との結びつきを示すものとして,以下の点が挙げられる。 (ア) 被告人が午後4時ころから被告人方でBと会っていたことは明らかであり,その後,Bが質店と交渉した質物は,被告人所有物であることからも,被告人がBを再度呼び寄せて行動を共にしていたことが認められ,R1供述からも,犯行直前まで2人は行動を共にしていたことが裏付けられている。 (イ) 犯人が赤いジャンパーを着ていた旨の目撃供述が複数あるところ,犯行前に被告人が運転していたシーマ車内から,翌朝えんじ色ジャンパーが発見されており,しかも,シーマに同乗していたBは犯行時,Q2の供述によるとベージュっぽいジャンパー(甲362)(Bは黄土色と証言しており,ほぼ一致する。)を着ていたものであるから,赤ジャンパーを着ていたのは被告人であると考えられる。 (ウ) 犯行の約2,3時間前まで被告人と一緒にいたBが,犯行直後の29日午前0時30分ころ,被告人と共にa区で飲んでおり,その経緯からすると,犯行時にBと一緒にいた人物も被告人であると考えるのが自然である。 (エ) そして,被告人と丙の間には,本件の動機になったと推認される怨恨の存在が認められる。 まず,被告人と丙の関係についてみると,丙は,昭和56年ころ,Tを介して被告人と知り合い,そのころ,被告人が暴力団K組系L組内M組神戸支部を結成して同組支部長となり,丙は副支部長となったが,被告人と共謀して敢行した脅迫等により,昭和57年7月ころ逮捕され,59年ころ,刑務所を出所した後は,組から離脱し,梱包会社やクレーン会社で働 部を結成して同組支部長となり,丙は副支部長となったが,被告人と共謀して敢行した脅迫等により,昭和57年7月ころ逮捕され,59年ころ,刑務所を出所した後は,組から離脱し,梱包会社やクレーン会社で働き,家族と神戸市o区z1やi区内の犯行当時の住居で生活していたものである(甲362,378,430,第12回公判W2証人尋問調書等)。 次に,丙と被告人との間でトラブルがあったことについて,丙の長男のX2は,昭和60年ころ,夜に柄の悪そうな男から電話があり,丙は「今から行ったるから待っとけ。」と言って,日本刀を持ち出して出かけたことを(甲371),かつてM組神戸支部員であったW2は,平成元年ころ,偶然会った丙から,「Aを舞子墓園に呼び出して,一生ヤクザしかできないような顔にしてやった」と,斜めに手を振り下ろす仕草をして打ち明けられたことを,Q2は,本件の約10日前,家計の話になった際,以前,丙がTの連帯保証人になったのをQ2が肩代わりした話をすると,丙は「あいつには片つけたからな。」と言っていたことを,そして,Bも,昭和60年ころ,被告人が顎と腕に怪我をし,重傷で入院したが,車で崖から落ちたと言っていたものの,刃物で誰かにやられたような傷であったことを,それぞれ供述する。 これらを総合すると,被告人は,昭和60年頃,丙から,日本刀で顔等を切り付けられて傷害を負わされ,それに対する復讐から本件犯行に及んだものではないかと推認される。 これに対して,弁護人は,①被告人と丙は,昭和57年7月ころ共に逮捕されたのが最後の接点であり,その後,被告人は昭和61年から平成元年まで身柄を拘束されているから,丙が昭和63年に現住居に移転していることを知る術はなく,犯行当時の丙の居所を知りえなかったはずであるし,また,現住居を知る手がかりとなったと考えられ 1年から平成元年まで身柄を拘束されているから,丙が昭和63年に現住居に移転していることを知る術はなく,犯行当時の丙の居所を知りえなかったはずであるし,また,現住居を知る手がかりとなったと考えられている調査書について,被告人は,平成3年から平成11年まで身柄を拘束されており,およそ入手不可能であるし,今回出所後のわずか7日間で取り寄せることも無理であるとして,犯人性が否定されるとする。そして,調査書に関するBの供述は抽象的で,丙がBも属していたM組の幹部であるのに,調査書で名前を見ても気付かなかったという点も不自然であり信用できないとして,調査書の存在そのものに疑問を呈する。 しかし,被告人は,平成元年から平成2年までは社会内にいたから,この間に興信所に丙に関する調査書の作成を依頼し,入手していれば,昭和63年に丙が現住居に引っ越したことを,前刑服役前に知ることは可能であったことになる。そして,今回出所後,L組に対する様々な思いとともに,同じくL組内M組に在籍していた丙への個人的遺恨が再燃し,復讐の実行を決意した可能性も考えられる。そして,調査書については,たしかに作成日付等を一切覚えていないなど,Bの供述に曖昧な点があるのは否めないが,Bは,幹部の名札に丙の名前があったことを後から思い出したと供述するところ,BがM組に出入りしていたのは,昭和59年9月から同組内P組に移った昭和61年までの短い期間であり,丙の服役やその後の組離脱を考えると,会ったこともないとのB証言は不自然といえない。 また,弁護人は,②丙が被告人に傷害を負わせた事件が仮に事実であっても,既に14年の月日が経過しており,被告人には身柄不拘束の時期もあったのであるから,今回まで待たなくても,敢行するのに事実上の障害はなかったこと,被告人は長期の服役を終え出所したば に事実であっても,既に14年の月日が経過しており,被告人には身柄不拘束の時期もあったのであるから,今回まで待たなくても,敢行するのに事実上の障害はなかったこと,被告人は長期の服役を終え出所したばかりであるのに,わざわざ危険を犯して殺人行為に及ぶことは考えがたいことなどから,被告人には,そもそも丙を殺害する動機がないと主張する。 しかし,被告人がL組に属している限り,組を離脱してはいても同組関係者であった丙に対する報復の実行は困難であり,今回出所後,被告人の望む形での復帰可能性を絶たれ,L組との関係が決裂するに及んで,IらL組への復讐とともに,丙についても,殺害を決意し,実行に移したものと推認することが可能である。 なお,検察官は,犯行後逃走中の車内で,Bから丙を撃った理由を尋ねられた被告人が,「義久の敵や。」と答えた点について,D1会若頭の義久哲也が殺害されたのは平成2年12月で,丙との接点もなく,丙が殺害した事実は認められないから,被告人がBを納得させるために,その場しのぎの言い訳をしたものと主張する。しかし,丙がM組神戸支部に在籍していた当時の義久との接点の有無は証拠上は全く不明であり,丙が殺害したものと被告人が思い込んでいた可能性も否定できない。 被告人が丙との関係を含め一切を供述していないため,丙殺害の動機について明確に認定することは困難であるが,動機となる事情を推認できることは以上のとおりである。 4 結論以上の証拠を総合すると,本件犯行は被告人によるものと認められる。 丙に対する殺意についても,被告人は,Bを使って丙を自宅から連れ出した上で,殺傷能力が非常に高いけん銃で,人体枢要部等を狙って連続的に銃弾3発を発射しており,被告人が確定的殺意を有していたことは明白である。 よって,判示のとおりの事実が認定できる。 から連れ出した上で,殺傷能力が非常に高いけん銃で,人体枢要部等を狙って連続的に銃弾3発を発射しており,被告人が確定的殺意を有していたことは明白である。 よって,判示のとおりの事実が認定できる。 第6 住居侵入,殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(判示第4,「F時計店事件」) 1 客観的情況事実の認定本件事案については,平成11年4月12日午後6時50分ころ,「F時計店」の奥の仕事場で外出の準備をしていた丁(以下,「丁」という。)は,店の表の方から「おい。居てるか。」という男性の声がしたため,「はい。」と答えて作業場と店舗の境まで行くと,店舗入口内に帽子をかぶり黒いサングラスと白いマスクをした迷彩服上下の男が立っており,4,5メートル離れた位置から,無言のまま,右手に持ったけん銃で銃弾3発を発射されたが,とっさにしゃがみながら仕事場の椅子などに身を隠したため,いずれも命中せず,丁の顔面をかすめて壁掛け時計等に命中したこと,犯人は店舗内カウンター付近に合計28枚の天誅ビラを置いて逃走したことが認められる[丁の検察官調書(甲109),警察官調書(甲103から108),Y2の警察官調書(甲110),実況見分調書(甲85),検証調書(甲86)等]。 2 B証言の要旨Bは,本件につき,要旨以下のとおり証言する。 (1) Bは,被告人から,段取りを依頼されていた中古車を催促され,O1の紹介でZ2(以下,「Z2」という。)から,中古車を購入するまでの代車として,同年4月5日,a区bの喫茶店「C3」で,被告人及びD3(以下,「D3」という。)と共にZ2に会ってシルビアを受け取った。被告人は,同月6日,再びR1から運転免許証を借りた。 また,Bは,まだ入手できずにいた実包についても被告人から催促され,同月9日ころ,O1に依頼し,翌10 と共にZ2に会ってシルビアを受け取った。被告人は,同月6日,再びR1から運転免許証を借りた。 また,Bは,まだ入手できずにいた実包についても被告人から催促され,同月9日ころ,O1に依頼し,翌10日の午前1時ころ,豊中市内のファミリーレストランの駐車場に被告人と2人で行き,BがO1から実包13発を受け取り,代金13万円を被告人から預かってO1に支払った。 被告人は,同日,Bと共にg1区の「G4」という店で,被告人用の被り型及びB用の前開き型の迷彩服各1着と,迷彩服ズボン1着を購入し,シルビアのトランク内に積んだ。Bは,もともと持っていた自分の迷彩柄のズボン1着を同様にシルビアのトランクに積んだ。 (2) 被告人は,同日深夜から翌11日未明までの間と,同日深夜から翌12日未明までの間に,3月27日に侵入した「K1」と「L1株式会社M1輸送センター」に盗みに入ったが,いずれも失敗した。 (3) 被告人は,同日の夕方,迷彩服上下を着用して,シルビアに乗ってBを呼び出し,Bも被告人に合わせて迷彩服に着替え,その後,行動を共にした。途中,被告人は,Bと運転を交替し,財布から,前の天誅ビラと文言は同じだが,K組の代紋の中ではなく下に「L組」が書かれている点が異なっている折り畳まれた天誅ビラを出して,Bにコピーするよう指示し,Bは,a2区b2にある「ファミリーマートE3店」で,天誅ビラ30枚をコピーした。 そして,Bは,被告人からU1と計画していたa区sの人夫派遣会社の事務所予定地に案内するよう言われて,F3商店街に行って,その場所を教え,被告人方に帰ろうとしたとき,対向車から当て逃げされる接触事故に遭い,その後,降車して,外れかかった右側後部テールランプをガムテープで固定して貸主のZ2に電話で報告した。 (4) Bは,P1団地の駐車場の171番 うとしたとき,対向車から当て逃げされる接触事故に遭い,その後,降車して,外れかかった右側後部テールランプをガムテープで固定して貸主のZ2に電話で報告した。 (4) Bは,P1団地の駐車場の171番枠にシルビアを駐車し,下車してG3に電話をかけたが,被告人から,再度,先の事務所予定地に行くよう指示され,被告人を助手席に乗せて出発した。このとき,被告人もBも迷彩服上下を着用していた。 Bは,被告人から,P1団地駐車場北側にあるH3公園北側路上に駐車していた不審な乗用車の様子を見てくるよう指示され,同車の前にシルビアを停車させ,下車して同車運転席側ドアへ行き,運転席と助手席の男2人に対し,「sはどっちですか。」と尋ね,「知らん。」と言われてシルビアに戻り,「この辺のもんとちゃいます。やくざみたいです。」と報告した。 Bは,上記F3商店街北側出口に到着すると,被告人の指示で,停車中のトラックの後方にシルビアを停車させた。被告人は,サングラス,マスク,手袋を着用して,コピーした天誅ビラ30枚の内,上下2枚を除く28枚を持ち,Bに対して「時計屋へ行って来る。待っといてくれ。」と言った。Bは,これを聞き,近所に2軒ある時計屋のうち,「I3時計店」が事務所予定地の地主であるため,ビラをまくのを見られてはまずいと思い,どちらの時計屋か被告人に確認したところ,被告人は,「商店街の中や。」と答えて,F3商店街の方へ歩いて行った。 (5) Bがエンジンをかけたまま,窓を閉めてFM放送の音楽を聴きながら待っていると,短時間で被告人が戻ってきて,助手席に乗り込み,Bに「出してくれ。」と言って,駐車場へ戻るよう指示した。 被告人は,走行中の車内で神戸事件の際に見たのと同じけん銃を出して,空薬きょうを抜き,弾倉の掃除をしながら,「『おるか』と言うたら,こけよった 出してくれ。」と言って,駐車場へ戻るよう指示した。 被告人は,走行中の車内で神戸事件の際に見たのと同じけん銃を出して,空薬きょうを抜き,弾倉の掃除をしながら,「『おるか』と言うたら,こけよった。腕が鈍ったな。」と言っており,Bは,被告人がけん銃を発砲したことが分かったが,あえて理由は尋ねなかった。 Bは,P1団地の駐車場の171番枠にシルビアを駐車し,被告人とBは,迷彩服上下を脱いでシルビアのトランクにしまった。このとき,Bは,被告人が迷彩服の下にジャージを着ていたのを見た。 被告人は,Bに対し,「ええとこ,連れて行ってやる。」と言って,被告人方からタクシーを呼ばせ,その間に自分はスーツに着替え,2人でタクシーに乗車すると,被告人は,Bに,ティッシュに包まれた空薬きょうを手渡して捨てるよう命じ,Bは,J3橋南詰めで信号待ちの際,タクシーから降りてK3川に捨てた。 その後,Bは吉村方でスーツに着替え,被告人と午後8時ころから午後10時ころまで,F2ホテルのスカイラウンジで飲食後,a区梅香にあるスナック「L3」で約40分間飲食して帰宅した。 3 B証言の信用性及び関連する証拠の検討(1) 客観的証拠,他の供述との符合,裏付け証拠の有無等ア天誅ビラについて,以下の事実が認められる。 (ア) まず,本件現場に天誅ビラ28枚が遺留されていた事実が認められるが(甲96から99),B証言はこの現場状況と合致している。 (イ) 第15回公判期日におけるM3の証言及び鑑定書(甲117)によると,上記「ファミリーマートE3店」設置のコピー機の蓋に存在する固有のノイズ(多数の点状の汚れ)が現場遺留の天誅ビラにも複写されており,その特徴が一致していることが認められる。 (ウ) さらに,上記M3証言及び鑑定書(甲102)によると,現場遺留の天誅ビラの菱 有のノイズ(多数の点状の汚れ)が現場遺留の天誅ビラにも複写されており,その特徴が一致していることが認められる。 (ウ) さらに,上記M3証言及び鑑定書(甲102)によると,現場遺留の天誅ビラの菱形紋章と「L組」の文字は,被告人方から押収されたL組の腕章(甲100)もしくはそれと同種の物を元にして作成されたことが認められる。 (エ) これらについて,弁護人は,コピー蓋のノイズと現場遺留の天誅ビラのノイズが一致したとの鑑定は,被告人がBに指示したことなどを立証するものではなく,また,上記L組腕章は,多数の構成員に頒布されている可能性が高く,被告人方から押収された腕章が唯一のものでない以上,上記鑑定は,現場遺留ビラが「被告人宅で発見された」腕章に依拠したことを立証するものではなく,証拠価値がないと主張する。 しかし,これらの鑑定が被告人と本件を結びつける上で,決定的な意味合いを有しないとしても,B証言を客観的に裏付け,その信用性を高めるものであり,また,上記ビラを印象する元になった腕章と同様の物が被告人方にも存在した事実は,被告人がこのビラを作成することが可能であったことを示し,ひいては犯人である可能性を示す事情となる点で,証拠価値を有する。 イ次に,Bは,犯行後逃走中の車内で,被告人が神戸事件の際に見たのと同様のけん銃を出して,空薬きょうを抜き,弾倉の掃除をしていた旨供述しているところ,詳細は後に検討するが,現場から押収された3個の弾丸は,38口径スペシャル型回転弾倉式けん銃用実包で(甲94),本件ロッシから発射された可能性が高いとの鑑定結果がある(甲235)。 ウそして,被告人とシルビアの関係について,以下の事実が認められる。 (ア) まず,シルビアの取得経緯について,O1,Z2,D3,喫茶店「C3」経営者N3(以下,「N3」とい 果がある(甲235)。 ウそして,被告人とシルビアの関係について,以下の事実が認められる。 (ア) まず,シルビアの取得経緯について,O1,Z2,D3,喫茶店「C3」経営者N3(以下,「N3」という。)の供述によれば,O1がシルビアの所有者Z2をBに紹介し,同月5日,「C3」で,Z2から中古車を購入するまでの代車としてシルビアを借りるため,名義を借りたD3,B,被告人の4人で会い,引渡しを受けた被告人が自宅まで運転して行ったことが認められる(甲271から273,第17回公判N3証言)。 (イ) シルビアが駐車されていたP1団地駐車場の171枠を利用するに至った経緯について,被告人の義妹のO3,R1,Uの供述によれば,O3が新しくできた公団に当選し,従来使用していた171枠をR1に譲る予定であったが,R1も公団に当選したことから不要になり,R1が被告人へ出所祝いのつもりで譲ろうと考え,O3は引越しの終わった同月10日ころ,Uにリモコンを渡し,以後被告人が171枠を使用するようになったことが認められる(甲263,282,283,第5回公判U証人尋問調書)。 (ウ) さらに,被告人本人がシルビアを使用する意図であったことを示す事実として,R1が,同月6日に,Bがシルビアに乗って免許証を自宅前まで借りに来て,被告人に電話を代わると,被告人が貸してくれと言った旨供述していることからも明らかである(甲263,264)。 (エ) 以上より,被告人が自身が使用する意図でシルビアを入手し,以後,被告人方団地の駐車場の171枠に駐車していたことが認められる。 エ(ア) そして,神戸事件の捜査のために,P1団地付近で被告人の行動確認捜査に従事していた警察官のP3(以下,「P3」という。)とQ3(以下,「Q3」という。)の2人の証言によれば,以下の事実が認められ ) そして,神戸事件の捜査のために,P1団地付近で被告人の行動確認捜査に従事していた警察官のP3(以下,「P3」という。)とQ3(以下,「Q3」という。)の2人の証言によれば,以下の事実が認められる。 ① 被告人は,4月12日午前10時過ぎ,171枠にシルビアを駐車して降車したが,その際,被告人は肩から袖口にかけて白いラインが入った黒色ジャージを着用していた。 ② P3とQ3は,被告人に捜査車両と感づかれた可能性があるため,一旦i署に戻って捜査車両を交換し,午後4時前から張り込みを再開したところ,そのときは171枠には車両はなかったが,午後6時24分,シルビアが西方から入庫し,171枠に駐車した。 ③ P3が,約100メートル離れて双眼鏡で確認していたところ,午後6時26分,助手席から肩から袖口にかけて白いラインが入った黒っぽいヤッケ風上着を着用した男が下車し,2棟へ行った。そして,運転席の男が下車し,車内から前開き型迷彩服パーカーを出して,脱ぎ着して再び乗車した。 ④ 午後6時32分,シルビアが発進し,駐車場を出て北東方向へ走行したが,すぐに東方から来て,P3とQ3が乗車した捜査車両の前に駐車すると,運転席の男が下車して近づき,「s行きたいんやけど,道知らん。」「ここはどこ。」などと運転席にいたP3に尋ね,「知らん。」「b違うか。」などとP3らが答えると戻って行ったが,この時,助手席に男と思われる人物が乗車していた。そして,午後6時48分,シルビアは西方へ発進した。 その後,P3は車内で道を尋ねてきた男の顔の特徴と,服装について「迷彩」とメモした。 (イ) 以上の事実から,次の点が認められる。 (a) ①から,被告人は,Bと一緒ではない時も個人的にシルビアを使用していたことが認められる。 (b) その際の服装に照らし,③で午後6時26 モした。 (イ) 以上の事実から,次の点が認められる。 (a) ①から,被告人は,Bと一緒ではない時も個人的にシルビアを使用していたことが認められる。 (b) その際の服装に照らし,③で午後6時26分に助手席から下車するのを目撃された人物は,車内で迷彩服を脱いでジャージ姿になった被告人であると認められる。被告人が逮捕後に,P3供述と酷似する白ライン入り黒ジャージを着ていた事実(甲118)もこれを裏付けるものといえ,犯行後,被告人が迷彩服の下にジャージを着ていたことが分かったとのB証言にも合致する。 (c) 午後6時26分に被告人が下車し,32分過ぎに助手席に誰かが乗車しているが,被告人方付近で,短時間に,被告人ではない第三者を乗せることは考えがたく,Q3が見た助手席の人物は被告人であると推認できる。 (d) ③で運転席から下車した男が脱ぎ着していたのが前開き型迷彩服であったということは,後日シルビアのトランクから発見された迷彩服上下2組は,前開き型と被り型であったことに照らすと(甲174),被告人用の迷彩服は,もう一方の被り型迷彩服であろうと推察され,B証言と合致するところ,その被り型迷彩服上着の右袖口からは燃焼残渣が検出されている(甲248)。 (e) シルビアは,午後6時48分に発進しているところ,本件犯行は50分ころに発生しているが,P3らが声をかけた位置から現場まで車で3分以内で走行可能と報告されている(甲121)。 この点,弁護人は,上記の走行実験は,Bの一連の動作に伴う時間を測っておらず,条件が実際とは異なっていて,現場に2分で到着することは不可能であると主張するが,P3が記録した48分というのは,シルビアが発進した時刻である以上,走行実験の条件に実際と異なるところはなく,1か月弱後の再現ではあるが,時間帯や曜日も合わせて することは不可能であると主張するが,P3が記録した48分というのは,シルビアが発進した時刻である以上,走行実験の条件に実際と異なるところはなく,1か月弱後の再現ではあるが,時間帯や曜日も合わせており,信号待ちもあるなど,顕著な差を生じるような実験上の問題点は認められない。 よって,上記目撃されたシルビアで犯行時刻に現場まで行くことは可能であったと認められる。 オさらに,犯人目撃供述を検討すると,被害者の丁は,犯人の特徴を,身長170センチメートル,40から50歳,がっちり型,迷彩服上下,黒色サングラス,白色マスク,帽子を着用していたと供述する(甲103等)。 発射音を聞いた後,「F時計店」前道路を走って,あるいは早足で逃げていく男を目撃したR3(甲111)及びS3(甲112)も,男は迷彩服上下を着ていた旨供述しており,B証言と合致する。なお,丁は,帽子について,「同じく迷彩色の帽子をかぶっていたが形までは憶えていない(甲103)。」「どんな形,色かは憶えていない(甲109)。」と迷彩服のフード部分であった可能性も否定していないところ,R3は迷彩色帽子をかぶっていたと供述している。 この点,弁護人は,丁が「ガッチリ型」,R3が「小太り」,S3が「30歳,175センチメートル,ガッチリ」と供述している点で,被告人の特徴と合致しないというが,前述のとおり,一瞬の目撃供述において,被告人とは必ずしも一致しない身体的特徴についての供述が含まれているとしても,最も特徴的な迷彩服上下を着ていたと供述している部分の信用性まで否定されるわけではない。 なお,丁がとっさにしゃがんで椅子に身を隠したため,犯人の銃弾が命中しなかったことは,丁供述で明らかであるところ,B証言によれば,被告人は,「こけよった。腕が鈍ったな。」と言ったというのであり,符合 なお,丁がとっさにしゃがんで椅子に身を隠したため,犯人の銃弾が命中しなかったことは,丁供述で明らかであるところ,B証言によれば,被告人は,「こけよった。腕が鈍ったな。」と言ったというのであり,符合している。 カ被告人が犯行直後,Bと行動を共にしていたことについて他の目撃供述等の裏付けが多数存在する。 Uは,同日の夜,被告人とBは一旦帰宅後,Bがタクシーを呼んで一緒に出かけ,午後11時30分すぎに帰宅したと供述し,犯行後タクシーで外出し飲食したとのB証言に合致している。さらに,T3タクシー無線局従業員U3が,同日午後7時25分に被告人方から配車要請があった事実を(甲129),同タクシー運転手V3が,午後7時32分,被告人とBをP1団地から乗せ,途中,BがJ3橋の信号待ちの際と,スーツに着替える際の2度降車した事実を(甲128),「F2ホテル」スカイラウンジ店員のW3は,被告人の会員カードから認められる,被告人とBが,同日午後8時6分から午後10時7分まで同店で飲食した事実を(甲130)供述し,これらは犯行後も被告人と共に行動したとのB証言を十分に裏付けるものである。 キさらに,BがO1から実包を入手した件について,X3組若頭補佐のO1は,Z2がシルビアを貸す前後にBから電話があり,豊中のファミリーレストランの駐車場で,午前0時ころにBと会ったことを供述しており,会ったこと自体はB証言に沿うものである。なお,O1が実包譲渡について供述していない点がB証言の信用性を減殺するものではないことは,シーマ窃盗事件の項で検討したとおりである。 (2) B証言の評価と被告人の犯人性ア B証言は具体的かつ詳細であり,他の証拠による裏付けも多数存在する。また,犯行直後に被告人がけん銃を所持しているのを目撃した状況について,シルビアに乗り込む際には B証言の評価と被告人の犯人性ア B証言は具体的かつ詳細であり,他の証拠による裏付けも多数存在する。また,犯行直後に被告人がけん銃を所持しているのを目撃した状況について,シルビアに乗り込む際には見ていないが,車内で見たことは間違いないと区別して明確に供述し,車内の被告人の言動も見た者にしか分からない具体的なものであり,その他にも,被告人が着ていたジャージのデザインや,車に乗り込んできた方向など,捜査段階では供述していても証言時に覚えていないことは,その旨はっきりと述べており,そのような供述態度に照らしても信用できる。 さらに,4月11日深夜から翌12日未明に,「L1株式会社M1輸送センター」に侵入したが,非常ベルが鳴って失敗したとのB証言は,被害届(甲439)と合致している。 また,弁護人は,B証言について,犯行直前の会話が「どちらの時計屋か」と尋ねたとか,被告人から「たこ焼きでも食べて待っといて」と言われたなど,これからけん銃を発砲しようとする犯人との受け答えとしては不自然であると指摘する。 しかし,Bは,被告人はF時計店にビラを撒きにいくと思い,けん銃を発砲するとは予想していなかったものである。加えて,被告人はわざわざ,犯行直前にはBを不審車両内の警察官とも疑われる人物に道を聞きに行かせたり,犯行直後には2人でスナックに飲みに行ったり,後のG理容室事件後,シルビアが発見され撤去された後は,車や積載物の返還を求めて自ら警察に出向いたりするなど,大胆な行動が多く,警察の捜査の目が自分達に向けられていることが分かっていても,特に警戒もしていないことが窺われ,その心情ないし理由は不明であるが,そのような被告人から上記発言があったところで不自然ともいえず,B証言の信用性を減殺するものではない。 イ特に,被告人と本件犯行との結びつきを いないことが窺われ,その心情ないし理由は不明であるが,そのような被告人から上記発言があったところで不自然ともいえず,B証言の信用性を減殺するものではない。 イ特に,被告人と本件犯行との結びつきを示すものとして,以下の点が上げられる。 (ア) 本件犯行に供用されたと認められるシルビアについて,被告人はその入手に自ら立ち会い,引き渡しを受けて自宅まで運転し,親戚のO3から171枠の駐車場を譲り受け,以後,R1から免許証を借りたり,警察官の行動調査でも目撃されたように,単独でもシルビアを使用している状況などからして,シルビアを入手した主体は被告人である。 (イ) 犯行の約2分前というまさに犯行直前,被告人と思しき人物とBが一緒にシルビアに乗車しているのを警察官に目撃されており,また,犯行約30分後にも,被告人方からBと一緒にタクシーに乗車したのが目撃されており,その前後も2人は終始,行動を共にしていたもので,犯行の間だけBが被告人以外の第三者と合流したとか,単独行動をとったとは考えがたい。 (ウ) Bが使用していないことが目撃されている被り型迷彩服から燃焼残渣が発見されており,Bでなく被告人が実行犯であることを示唆している。 4 結論以上の証拠を総合すると,本件犯行は被告人によるものと認められる。 丁に対する殺意についても,被告人は,「F時計店」店内に侵入するや,同店奥に声をかけて呼び出し,丁が奥から出てきたところを,殺傷能力が非常に高いけん銃で,至近距離から,人体枢要部の顔面を狙い,連続的に銃弾3発を発射して,逃走したもので,銃弾は丁に命中してはいないが,丁の近くの壁掛け時計や壁に命中しており,丁を狙って発砲したものと認められるから(甲85,見取図6等),被告人が確定的殺意を有していたことは明らかである。 よって,判示のとおりの事実が認 ないが,丁の近くの壁掛け時計や壁に命中しており,丁を狙って発砲したものと認められるから(甲85,見取図6等),被告人が確定的殺意を有していたことは明らかである。 よって,判示のとおりの事実が認定できる。 第7 住居侵入,殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(判示第5,「G理容室事件」) 1 客観的情況事実の認定本件事案については,平成11年4月14日午後8時5分ころ,「G理容室」店内の中央座席に客のY3を座らせて,その左後方に立って散髪をしていた戊(以下,「戊」という。)が,左後方に気配を感じて振り向くと,店舗出入口内にサングラスと白マスクをした迷彩服の男が立っており,4,5メートル離れた位置から,無言で,けん銃を持った右手を伸ばして,顔や胸の高さを狙っており,戊は「殺される」と思って後ずさりしたところ,男から銃弾1発を発射され,あわてて勝手口へ通じる左後方の扉へ逃げようとしたが,更に銃弾2発を発射され,そのうち1発が左回りで半身になってドアの向こうへ逃げる最中の戊の左肩に命中したこと,これにより,戊は加療約28日間を要する左肩部貫通性銃創の傷害を負ったことが認められる[戊の検察官調書(甲163),警察官調書(甲159から162),実況見分調書(甲151),捜査報告書(甲132,135),診断書(甲134)等]。 2 B証言の要旨Bは,本件につき,要旨以下のとおり証言する。 (1) 4月14日昼ころ,被告人はBと,シルビアで被告人の母親が通院する神戸市のZ3病院へ行くなどしてから,Bを吉村方で下ろして帰宅した。 午後7時30分ころ,Bが吉村方にいると,被告人から電話で風呂に誘われ,喫茶店「C3」の前で午後8時に待ち合わせることにした。 Bは,風呂の用意をして,午後8時前に「C3」前で被告人を待っていた際,店内にいたN3と ろ,Bが吉村方にいると,被告人から電話で風呂に誘われ,喫茶店「C3」の前で午後8時に待ち合わせることにした。 Bは,風呂の用意をして,午後8時前に「C3」前で被告人を待っていた際,店内にいたN3と目が合って会釈した。 しばらくして,被告人がシルビアを運転して現れ,Bが助手席に乗り込むと,被告人は迷彩服上下を着て,サングラスをかけていたため,Bが「風呂は行かないんですか。」と尋ねると,被告人は「風呂はやめや。」と答えた。 被告人は,途中,公園近くでBと運転を交替し,Bに「C4行ってくれ。」と指示し,bc2丁目にあるC4の店付近へ向かわせた。Bは,C4の近くにUの実家があり,以前に被告人がUの実家にけん銃を置いていると聞いたことがあったことから,被告人がけん銃を戻しに行くものと思った。 (2) Bが,bc2丁目のC4北西側路上に西向きにシルビアを駐車すると,被告人は,Bに対し,「エンジンかけて電気消して待っといてくれ。」と言って助手席から下り,後方へ歩いて行った。 間もなく3発の銃声が聞こえ,すぐに,被告人が走って戻ってきて助手席に乗り込み,車を出すよう指示した。このとき,被告人は,マスクと手袋をして,右手にはけん銃を持っていた。 (3) Bは,シルビアを発進させて,P1団地に戻り,171番枠に南向きにシルビアを駐車した。助手席にいた被告人から,「待ち合わせの場所に行っといてくれ。」と言われたため,先に運転席から降車して「C3」に向かった。 Bは,「C3」の前にある「D4」でアイスクリームを買い,食べかけたときに,被告人が歩いてやって来て,午後8時3,40分ころ,一緒にスナック「P2」へ行った。Bは,被告人のために,ホステスにガム1箱を約1500円で買って来させた。 その後,Bの携帯電話にUから,警察官が被告人方に来ているとの連絡が 後8時3,40分ころ,一緒にスナック「P2」へ行った。Bは,被告人のために,ホステスにガム1箱を約1500円で買って来させた。 その後,Bの携帯電話にUから,警察官が被告人方に来ているとの連絡があった。被告人は,「P2」の隣の「ローソン」で警察官と待ち合わせることにし,被告人とBは「P2」を出て,ローソン前で警察官と会い,「P2」で飲んでいたと話した。 Bは,1人でスナック「L3」に行き,そこで,警察官が「P2」に確認に来たことを電話でホステスから聞いて知り,翌15日午前零時過ぎころ,吉村方に帰宅した。 3 B証言の信用性及び関連する証拠の検討(1) 客観的証拠,他の供述との符合,裏付け証拠の有無等アまず,被告人の母E4は,4月12日か14日に被告人とBにZ3病院から自宅まで送ってもらい,2人は午後2時過ぎに帰ったと供述し,P1団地付近で張り込み捜査に従事中であった警察官のF4は,同月14日午後12時30分,被告人運転のシルビアが同団地から西方へ走行してきたのを発見し追尾したが,a区h1d2丁目付近で気づかれないように追尾を中止したところ,後にBの居候先である吉村方の近所であったことが判明したこと,同団地に戻って張り込みを続行していた同日午後5時26分ころ,再びシルビアが入庫して171枠に駐車し,被告人が1人で降車したことを証言し,さらに,Uは,同日午後7時30分ころ,被告人が風呂に行くから用事があればBの携帯に電話するように言って外出したことを証言しており,被告人が当日もシルビアを使用していたこと及び犯行前にBと行動を共にしていたとのB証言を裏付けている。 また,N3は,同日午後7時50分ころ,「C3」のドアガラス越しに,同店前で誰かを待つ風であったBと挨拶したが,1,2分後にBはいなかったと証言しており,犯行直前のBの とのB証言を裏付けている。 また,N3は,同日午後7時50分ころ,「C3」のドアガラス越しに,同店前で誰かを待つ風であったBと挨拶したが,1,2分後にBはいなかったと証言しており,犯行直前のBの行動を裏付けている。 イそして,犯行直後の2人の足取りについて,午後8時13分ころに,Bが「D4b店」でアイスクリームを購入する様子が同店の防犯ビデオに映っており(甲180),スナック「P2」の従業員だったG4は,同日午後8時50分ころに被告人とBが来店したこと,風呂の道具をBから預かったが2人とも濡れていなかったこと,午後8時54分ころ,Bに,禁煙中の被告人のためと言われて,ガム1ケースを買いに行ったことを証言し(第22回公判G4証言),ガムについては,「ローソンI1店」における販売事実の裏付けもあり(甲183),犯行直後に被告人と行動を共にしていたとするB証言が裏付けられている。 ウ次に,Bは,車内で待機中,銃声を聞き,被告人が走って戻って来た際に,右手にけん銃を持っているのを見た旨供述している。本件ロッシと被告人との関連性については,後の項で詳細に検討するが,現場から押収された3個の弾丸は,いずれも口径0.38インチスペシャル型回転弾倉式けん銃用実包の発射銅メッキ鉛弾丸で(甲146),うち,戊の身体を貫通した人血付着の弾丸1個について,本件ロッシから発射されたものである可能性が十分考えられるとの鑑定結果がある(甲235)。 エ(ア) 犯人目撃供述を検討すると,被害者の戊は,犯人の特徴を,えんじ色がかった迷彩服,ズボンは足首が絞られていて,サングラス,白マスク,帽子を着用し,172センチメートル,がっちり型であったと供述するが,帽子については,「つばを見た記憶はなく,フードかもしれない。」(甲160)と迷彩服のフード部分であった可能性 グラス,白マスク,帽子を着用し,172センチメートル,がっちり型であったと供述するが,帽子については,「つばを見た記憶はなく,フードかもしれない。」(甲160)と迷彩服のフード部分であった可能性を否定していない。H4(以下,「H4」という。)も,同日午後8時ころ,「C4」北側道路を車で走行中,爆竹音を聞き,すぐに交差点の南から,迷彩服上下のフードをかぶり,黒サングラス,白マスク姿の男が,右手を上着のポケットに入れて前屈みで小走りに来て,停まっていたリアスポイラー付きシルビアの助手席に乗り込むのを目撃したと供述している(甲172)。 さらに,H4は,同車が発進直後,近所のI4(以下,「I4」という。)が同車後部に黄色プラスチックケースを投げて当たったと供述しているところ(甲172),「G理容室」の東向かい側で食料雑貨店「J4」を経営するI4は,同日午後8時5分ころ,店外で3発の銃声を聞き道路に出ると,「G理容室」の入口ドアが閉まりかけており,フード付き迷彩服の男が道路の北側交差点を左折しようとするところだったので,捕まえようと,右手に黄色プラスチックケースを持って男を追いかけたところ,男は西向きに駐車されていた乗用車の助手席に乗り込み,I4が右手のケースを乗用車に投げつけると,同車の後部ナンバープレート上のトランクの蓋に当たったのと同時に同車は発進したこと,同車は後部に「SILVIA」と書かれ,ナンバーが「4435」であったことを供述している(甲170等)。 また,犯行当時,「G理容室」と路地を隔てた西側にある戊の実家の玄関にいた戊の妻のK4も,3回銃声を聞き,店舗との間の路地に出ると,北側道路に黒っぽい乗用車が停車しており,黒っぽい服装の男が東方向から来て助手席に乗車し,I4が黄色プラスチックケースを同車の後部に投げて当たったこと も,3回銃声を聞き,店舗との間の路地に出ると,北側道路に黒っぽい乗用車が停車しており,黒っぽい服装の男が東方向から来て助手席に乗車し,I4が黄色プラスチックケースを同車の後部に投げて当たったこと,北側道路まで行くと,同車は走り去るところで,I4が同車を見て「4435や。」と叫んでいたこと,後部にスポーツカータイプの羽(リアスポイラー)が付いていたことを供述している(甲165等)。 これらの供述から,犯人の特徴として,サングラス,白マスク,迷彩服を着用していたことが明らかであって,Bの証言する本件当時の被告人の服装等と一致している。また,逃走車の特徴として,ナンバーの下4桁が4435で,リアスポイラー付の黒っぽいシルビアで,トランク蓋にケースが当たった時の傷ないし凹みがあることになる。 (イ) これらの点につき,弁護人は,①戊が供述する「172センチメートル,がっちり型」との犯人の特徴も,②I4が供述する「30から35歳,165センチメートル位,華奢」との特徴も,被告人の身体的特徴と合致しないとするが,①については,被告人の身長170センチメートルとむしろ合致するといえ,②の年齢については,I4が見たのは左折や乗車する一瞬を除いて,ほとんど犯人の後ろ姿であり,迷彩服などから判断したと考えられるし,体格の点は,①と②でも正反対であって正確を期しがたいといえる。 また,弁護人は,Bが運転中シルビアの後部に衝撃を感じなかったと証言する点について,相当大きい力がかかったはずであるのに,気が付かないとの供述は不自然であると主張する。 しかし,本件ケースは重量1.2キログラムで(甲156),大きな振動が生じるほどのものではないから,発進させることに気を取られて気づかなかったとしても不自然とはいえない。 オそして,この目撃者I4の供述に基づき,犯 は重量1.2キログラムで(甲156),大きな振動が生じるほどのものではないから,発進させることに気を取られて気づかなかったとしても不自然とはいえない。 オそして,この目撃者I4の供述に基づき,犯行使用車として本件シルビアが発見され,その右前輪タイヤ上から本件ロッシが発見されるに至っている。 (ア) シルビア発見経緯について,第16回公判における警察官L4,警察官M4の各証言,捜査報告書(甲173),実況見分調書(甲174)によると,本件発生直後,ナンバーの下4桁が「4435」の黒っぽいシルビアの捜索が手配され,翌15日午前4時20分,機動捜査隊員のL4がP1団地171枠に駐車されているシルビアを発見し,警察官M4らが関係者の接近を警戒して付近で張り込みを実施したが,同車に近づく者はなかったことから,午後3時に実況見分を開始し,約15分後,右前輪タイヤ上から白色タオルに包まれたロッシが発見されたことが認められる。 (イ) 逃走車両と発見されたシルビアの同一性についてみると,シルビアのナンバーが「京都77て4435」であり,塗装は紺色で,後部にリアスポイラーが取り付けられ,後部車体に「SILVIA」のエンブレムがあり,トランクの蓋に凹損が存在することが認められる(甲174)。 加えて,シルビアの名義人のZ2は,同月5日にBにシルビアを貸したときにはトランクの凹損はなかったと供述し(甲271),Bも「F時計店」の事件の前の接触事故をガムテープで補強した際,トランクの凹損はなかった旨証言している。また,客観的にも,トランクの凹損部分に印象された擦過痕の位置やその形状等から,I4が投げたプラスチックケースが当たったものと見て矛盾はなく(甲156),トランク凹損部分に付着していた樹脂とケースの材質はいずれもポリプロピレンで合致すること(甲157 痕の位置やその形状等から,I4が投げたプラスチックケースが当たったものと見て矛盾はなく(甲156),トランク凹損部分に付着していた樹脂とケースの材質はいずれもポリプロピレンで合致すること(甲157)が認められ,シルビアの凹損がI4の行為によるものであることの裏付けがある。 (ウ) 以上により,P1団地171枠駐車場で発見され,被告人との結びつきが強く認められるシルビアが,本件犯行後の逃走の際に使用された車両であると認められる。 (2) B証言の評価と被告人の犯人性ア B証言は具体的かつ詳細であり,他の供述や客観的証拠による裏付けも多い。 イ特に,被告人と本件犯行との結びつきを示すものとして,①犯行直前と犯行直後に,被告人がBと行動を共にしていることにつき多数の裏付けがあり,本件犯行時のみ,Bが被告人以外の者と行動したということは考えがたいこと,②被告人用と考えられる被り型迷彩服の袖口に火薬残渣が付着していること,③シルビアが被告人使用車両と認められるところ,それが逃走車両として手配され,発見されたことが認められる。 4 結論以上の証拠を総合すると,本件犯行は被告人によるものと認められる。 戊に対する殺意についても,被告人は,「G理容室」の表玄関から店内に侵入し,散髪中の戊が気付いて振り返るとすぐに,至近距離から,人体枢要部である顔面及び胸部を狙って,殺傷能力が非常に高いけん銃で銃弾1発を発射し,戊が逃げようとするところをさらに銃弾2発を連続的に発射し,1発を左肩部に命中させ,左肩貫通性銃創の重傷を負わせて逃走したもので,わずかでもずれていたら左胸部に命中していた可能性も高く,被告人が確定的殺意を有していたことは優に認められる。 よって,判示のとおりの事実が認定できる。 第8 本件使用車両及び使用けん銃について 1 判示第5の犯行に たら左胸部に命中していた可能性も高く,被告人が確定的殺意を有していたことは優に認められる。 よって,判示のとおりの事実が認定できる。 第8 本件使用車両及び使用けん銃について 1 判示第5の犯行に使用された車両と認められるシルビアの右前輪タイヤ上から発見されたロッシについて,判示第2から第5の事件との関連性及び被告人との結びつきが認められるかについて,以下検討する。 (1) まず,発見されたけん銃は,全長約19.6センチメートル,口径0.38インチスペシャル型ブラジル製ロッシMOD.68回転弾倉式けん銃で,発射痕跡があり発射機能を有するが(甲234),本件ロッシと各犯罪事実との関連性について,各事件で発見遺留された弾丸の腔旋痕との比較対照の結果,前述のとおり,それぞれ,Dランドリー事件は本件ロッシによって発射された可能性が高い,郵便受けに入っていた弾丸についても本件ロッシによって発射されたものと考えられる,神戸事件はロッシにより発射されたものと考えられる,F時計店事件は本件ロッシによって発射された可能性が高い,G理容室事件は本件ロッシによって発射された可能性が十分考えられるとされ,第2から第4の事件は,同一のけん銃による発砲事件であるかその可能性が大きく,第5の事件もこれと同一のけん銃による発砲事件の可能性が大きいとされており,強い関連性を認める鑑定結果となっている(甲235)。 (2) そして,本件ロッシが包まれていた白色タオルには火薬残渣が付着していることが認められ(甲237),ロッシが発砲に使用されたことを裏付けている。このタオルには「N4温泉ホテルO4TELP4(代)」と記載されているが(甲238),同ホテル支配人のQ4らの供述によると,本件タオルは同ホテルの各客室に宿泊客の人数に応じて備え付けられているもので,客が自由に持 N4温泉ホテルO4TELP4(代)」と記載されているが(甲238),同ホテル支配人のQ4らの供述によると,本件タオルは同ホテルの各客室に宿泊客の人数に応じて備え付けられているもので,客が自由に持ち帰れるものであること,Uが平成10年8月15日から翌16日にかけて宿泊していることが認められる(甲239等)。Uも,平成10年の夏,同ホテルに宿泊し,タオルを2,3枚持って帰ったが,自宅が捜索されるまでにタオルはなくなっていた旨証言している。 また,本件ロッシと被告人方から押収されたホルスターについて,そのロッシの溝とホルスターの窪み,弾倉の位置とホルスターの先端部からの長さ,銃身とホルスターの長さ等の比較から,ロッシがこのホルスターに収納されていた可能性が大きいとの捜査報告書(甲255)がある。 (3) 弁護人は,本件ロッシと被告人との結びつきを認めるには不十分であると主張する。 ア弁護人は,各事件で発射された各弾丸が本件ロッシによって発射されたものであるとする鑑定(甲235)の正確性について,以下の点で疑問があるとする。すなわち,①本件ロッシが各けん銃に固有の特異な発射痕を持つことについて実証されておらず,本鑑定は科学的根拠に乏しい,②鑑定書の7頁が重複しており,作成上の慎重さに欠ける,③Dランドリー事件に関し,3月25日の郵便受けに入っていた弾丸もロッシによって発射されたものと考えられるとされているところ,25日の事件は犯人像が被告人とは異なっているから,被告人以外がロッシを使用したことを示している,④「大阪市e2区の事件」(平成3年12月11日付けで鑑定嘱託)の銃弾についても,本件ロッシによって発射された可能性は十分とされており,③と同様,被告人の関与が認められない事件で本件ロッシが使用された可能性があることは,被告人がロッシを使 1日付けで鑑定嘱託)の銃弾についても,本件ロッシによって発射された可能性は十分とされており,③と同様,被告人の関与が認められない事件で本件ロッシが使用された可能性があることは,被告人がロッシを使用した犯人であるとの推測を否定する方向に働くことを挙げている。 まず,①の点について,弾丸が当該けん銃から発射されたものか否かの鑑定については,一般に,弾丸が発射される際に,銃腔面と摩擦しながら螺旋運動することによって生じる複数の腔旋痕は,同じ銃身から発射された弾丸でも腔旋痕が全体において完全に一致するというものではないが,腔旋痕の条痕の深浅や幅等の特徴には各けん銃毎に著しい差があり,当該弾丸を発射した銃身が持つ固有の特徴であることが認められている。要するに,けん銃の「種類」の同一性ではなく,各個体毎の特異な発射痕とされており,科学的根拠に乏しいとの批判は当たらない。 ②の点は,鑑定の信用性に影響を及ぼす過誤ではなく,③の点は,「Dランドリー事件」において検討したとおり,25日の事件の犯人像も被告人と矛盾するものではなく,④の「大阪市e2区の事件」も,本件各事件の犯人との同一性は不明というほかなく,主張の前提において採り得ない。 イ弁護人は,①「ホテルO4」のタオルは極めて多数の宿泊客に配布されているし,Bを含め被告人宅に出入りしていた人物がタオルを持ち去った可能性もあるから,Uのタオルを被告人が使用したとは限らないこと,②被告人方から押収されたホルスターから火薬残渣が検出されたとしても,本件ロッシから火薬が付着したことは何ら立証されていないこと,③ホルスターの凹凸が本件ロッシと一致したとの点は,他のけん銃と一致するかという対照実験がない以上,本件ロッシに固有のものとは認められないことから,被告人が本件ロッシを保有していたことを示す証拠 ,③ホルスターの凹凸が本件ロッシと一致したとの点は,他のけん銃と一致するかという対照実験がない以上,本件ロッシに固有のものとは認められないことから,被告人が本件ロッシを保有していたことを示す証拠は存在しないと主張する。 ①については,それ自体で強い関連性を示すことはないとしても,被告人がロッシを包んでシルビアの前輪上に置いた可能性を肯定させる証拠であり,また,Bは本件犯行後,被告人に促されて先にシルビアから下車し,待ち合わせ場所に向かっているから,本件タオルに包んだロッシを前輪上に置いたとは認められない。 ②③については,被告人の所持するホルスターに発射済みけん銃が入れられたことがあった事実,及び当該ホルスターに本件ロッシが入っていたと見て矛盾しないことを示し,被告人が本件ロッシを所持し発砲した事実の推認を支える間接証拠であることは否定できない。 ウまた,弁護人は,本件ロッシがシルビアの右前輪タイヤ上に置かれた経緯について,Bも知らず,被告人が真犯人であればそのような場所に凶器を隠すのは経験則上考えられず,何者かが被告人を犯人に仕立て上げようとした作為が存在した可能性が強く推認されると主張する。 この点を検討すると,まず,Bがその経緯を知らないのは,被告人が先に待ち合わせ場所の「C3」に向かわせたためで,現に被告人より先に到着して,向かいの店でアイスクリームを1人で購入している裏付けもあることは前記のとおりであり,当然である。また,普通はこのような場所に凶器を置くことはしないといえるが,しかし,被告人は,「F時計店」事件の時から,張り込み中の警察官が乗車中の不審車両にわざわざ戻って声をかけさせ,「G理容室」事件後,自宅に警察が来たとの連絡を受け,Bと飲食していた店の近くで警察官と待ち合わせて事情聴取に応じるなど,自分達に捜査の み中の警察官が乗車中の不審車両にわざわざ戻って声をかけさせ,「G理容室」事件後,自宅に警察が来たとの連絡を受け,Bと飲食していた店の近くで警察官と待ち合わせて事情聴取に応じるなど,自分達に捜査の目が向けられ,警察にマークされていることを十分察知していたはずであるのに,それを意に介さない数々の大胆というべき行動を取っているもので,警察の検挙を免れようという意図を持って行動していたかすら疑問といわざるを得ない。このような被告人の心境を考えると,出所直後から何件も発砲事件を連続的に敢行し,警察に捕まることを覚悟の上で,今更逃げ隠れせず,挑発するかのような大胆な行動を取っていたと見ることも可能であり,あるいは,第三者が犯人であると言い逃れする余地を作出しようとしたとも考えられる。警察の捜査が身辺に迫ったと知った直後に被告人が自宅に凶器を持ち帰ったり,トランクや車内に隠匿しても発見押収される危険がある以上,誰でも置ける可能性のある車輪上を選んだと考え得るし,特段の意図はなしに,大胆にもこのような場所に放置した可能性も残る。したがって,理由は不明というほかないが,少なくとも,第三者が被告人を犯人に仕立て上げるべく,本件ロッシをここに置いたという作為の存在を窺わせる事情は見当たらない。 (4) なお,被告人が一連の事件のころ,けん銃を所持していた事実について,上記Bの各証言のほかに,被告人の親族らの証言がある。 ア Tは,平成4年5月8日ころ,Uから,被告人から預かっているという施錠された黒色鞄を預かったが,外側から触ると中に回転弾倉式けん銃のような物が入っており,以後自宅で保管していたところ,被告人が出所した当日の平成11年3月22日に,鞄を預かっていると被告人に話すと,それを持ってきてくれと言われて被告人に渡したと証言し(第7回公判T証人尋問 入っており,以後自宅で保管していたところ,被告人が出所した当日の平成11年3月22日に,鞄を預かっていると被告人に話すと,それを持ってきてくれと言われて被告人に渡したと証言し(第7回公判T証人尋問調書),Uも前刑で被告人が逮捕された後,被告人が使用していたベンツ内にボストンバッグを発見し,けん銃が入っていると分かったため自宅に隠していたが,面会の際に被告人から預けておくように言われ,平成4年5月中旬,Tに預けていたところ,被告人が出所した当日,Tがバッグを被告人方に持参し,被告人がハサミで開封しているのを目撃したほか,平成11年3月25日,4月上旬,10日の3回,自宅で回転弾倉式けん銃を目撃し,「子供に見られる」と被告人に文句を言ったこと,次女のR4からも三女のS4が触ったらどうするのと言われ,R4もけん銃を見たことが分かったことなどを証言し(第5回公判U証人尋問調書),R4も,同年3月25日か26日に,両親の部屋で白いタオルに包まれた黒いけん銃を見つけ,母のUに言ったこと,そのけん銃は全体が黒で握りが茶色だったので,本件ロッシと同じであること,4月中旬までに,自宅で5,6回けん銃を見たことなどを供述または証言している(甲290,291,第6回公判R4証人尋問調書)。 3人は被告人の実弟,妻,次女であり,ことさら被告人に不利益な虚偽供述をするとは考えられない。 イところで,Bは,神戸事件で犯行の際及びその直後に計3回にわたって被告人がけん銃を所持しているのを目撃しており,公判では,ロッシを示されて神戸事件のとき見たけん銃であると証言するが,黒色などの特徴を述べるにとどまり,a3事件で見たけん銃と同じかどうかなどは分からないと証言している。その理由としてBは,ごく短時間見たにすぎないことを挙げているが,けん銃の同一性の正確な識別は ,黒色などの特徴を述べるにとどまり,a3事件で見たけん銃と同じかどうかなどは分からないと証言している。その理由としてBは,ごく短時間見たにすぎないことを挙げているが,けん銃の同一性の正確な識別は容易とはいえないうえ,本件ロッシと判示第6のけん銃の2丁を比べて見ても,銃身は黒色で握り部分は茶色で似ているということができるのであって,特定できないとする証言は首肯できるというべきである。 ウそうすると,上記アのうち,自宅で見たけん銃と本件ロッシが同一物であるとのR4の供述は容易に信用できないといわざるを得ない。 したがって,これらの証言からは,被告人がロッシに似たけん銃を当時所持していたことが認められるのであるが,それ以上にその同一性の特定まではできないというべきであり,その点の弁護人の主張は理由がある。 (5) 次に,弁護人は,本件で使用された車両のシルビアについても,被告人と結びつきがあるとはいえないと主張する。 アまず,本件シルビアについては,Bも単独で使用していることが目撃されており,駐車場の入場ゲートのリモコンは車内に置かれていたことから,シルビアを使用できる者であれば,誰でも駐車場を出入りすることができるといえ,被告人でなくBが犯人である可能性もあると主張する。 「F時計店」事件当日の4月12日と,「G理容室」事件当日の同月14日に,被告人がシルビアを使用し,171枠に駐車していた事実は,警察官の目撃によって明らかである。さらに,前述のシルビア及び171番駐車枠の入手経緯・利用状況,そして,R1やUの供述から,Bが単独でシルビアを使用した事実は認められるけれども,それは同月10日ころにO3の引越しが完了して,被告人が完全に171枠を利用できるようになるまでの間,Bが預かっていた頃に限られ,同月11日以降は,Bが単独でシルビアを した事実は認められるけれども,それは同月10日ころにO3の引越しが完了して,被告人が完全に171枠を利用できるようになるまでの間,Bが預かっていた頃に限られ,同月11日以降は,Bが単独でシルビアを使用するのは目撃されていないことに照らすと,被告人が自己の車として単独で使用していたものと認められる。 イまた,弁護人は,犯行の際に着用した迷彩服をシルビアのトランク内に遺留し,さらに,警察に赴いて,撤去されたシルビアの返還を申し入れるといった行動は,被告人が犯人であれば取るはずのない行動であるから,この点でも被告人の犯人性は否定されると主張するが,被告人が当時種々の不自然といえなくもない行動をとっていたことについては,既にロッシの関係で検討したとおりである。 (6) 以上の検討から,被告人と本件シルビア及び本件ロッシに関して,いずれも強い結びつきが認められるのであり,各事件の銃弾が本件ロッシによって発砲されたものであるとの強い証明力を有する鑑定結果を総合すれば,被告人が各発砲事件の犯人であることが強く推認される。 第9 銃砲刀剣類所持等取締法違反,火薬類取締法違反被告事件(判示第6,「H方けん銃等所持事件」) 1 関係証拠から認定できる事実(1) 平成11年7月27日,Tが,Uから預かっていた手提げ鞄1個を任意提出し,Uに確認の上で鍵を任意提出させ,その立会の下に,開錠させたところ,中にセカンドバッグがあり,その中から布に包まれた回転弾倉式けん銃1丁並びに実包合計16発及び雷管様の物合計12個在中の封筒1枚を発見し,任意提出の上,領置したという経緯が認められる(甲194)。 そして,鑑定結果によると,①けん銃は,口径0.38インチスペシャル型米国製スミスアンドウエッソンMOD.36-1回転弾倉式けん銃(以下,「スミスアンドウエッソン」とい 緯が認められる(甲194)。 そして,鑑定結果によると,①けん銃は,口径0.38インチスペシャル型米国製スミスアンドウエッソンMOD.36-1回転弾倉式けん銃(以下,「スミスアンドウエッソン」という。)で,過去に発射された痕跡があり,現状で発射機能を有すること,②実包は,いずれも実包としての効力を有し,本件スミスアンドウエッソンに適合する口径0.38インチスペシャル型回転弾倉式けん銃用実包8発と,口径7.62ミリメートルトカレフ型自動装填式けん銃用実包8発であり(甲203),③雷管は,雷管としての効力を有する電気雷管9個,工業雷管様に改造した雷管3個であったことが認められる(甲385,387)。 (2) Uは,本件手提げ鞄をTに預けた経緯について,以下のとおり証言する(第5回公判U証人尋問調書)。 平成11年4月15日の昼前ころ,被告人からUの祖母のH(以下,「H」という。)方の手押し車の中に入れるよう茶封筒を渡され,重量等から実包5,6個が在中しているものと思ったが,被告人が行くと捕まるかもしれないと思って引き受け,被告人方から自転車で約5分で,当時Hが入院中で空き家になっていて被告人方で鍵を管理していたH方に行き,玄関土間の手押し車を開けたところ,既にけん銃1丁が入っていたため,渡された茶封筒を手押し車の中に置いて帰宅したUは,被告人に対し,「ああいうとこに鉄砲置かれたら困るやないの。」と注意したところ,被告人は「分かった。」と答えていた。同月26日に被告人が逮捕された後,手押し車の中を2回確認したところ,そのままの状態でけん銃1丁と茶封筒があったため,これらをTに預けようと考え,同月30日に,これらを持ち出して本件手提げ鞄に入れ,「C3」前でTに手渡して預けた。 また,Tも,第7回公判において,同月30日にUから施錠された手提 封筒があったため,これらをTに預けようと考え,同月30日に,これらを持ち出して本件手提げ鞄に入れ,「C3」前でTに手渡して預けた。 また,Tも,第7回公判において,同月30日にUから施錠された手提げ鞄を預かった経緯,以前にもけん銃らしき物の入った鞄をUから預かったことや,被告人逮捕後という時期から,今回もけん銃ではないかと思いつつ車のトランクで保管していたが,7月27日に任意提出することにしたと証言し,U証言に沿う内容である。 両名の証言に不自然な点はなく,具体的である上,被告人の親族であるから,あえて被告人に不利益な虚偽供述をするとは考えがたい。 (3) これに対して,弁護人は,被告人が本件スミスアンドウエッソンを手押し車の中に保管したとの裏付け証拠は存在しないし,被告人の支配がH方の手押し車の中にまで及んでおらず,被告人の占有は認められないこと,そして,被告人が本件スミスアンドウエッソンを自己所有物だと認めたという内容は,U証言にも出てこないことなどの点で,被告人の所有または管理に係るものであることの立証がないとする。 しかし,①本件スミスアンドウエッソン等が保管されていたH方の鍵は,被告人方で自宅やシルビアの鍵を置いていたところに置いて保管していたもので,H方には,被告人以外の第三者,とりわけ被告人と特に近しいBでも,容易に入ることはできない場所であるから,被告人以外の第三者の占有は考えられないこと,かつ,②「ああいうとこに鉄砲置かれたら困るやないの」とUが注意すると,被告人が「分かった。」と答えたとの証言は,被告人が手押し車の中にけん銃が入っていることの認識があることを示すものであり,現に,3月下旬ころ,被告人は,Uの祖父の仏壇にお参りしたいと言って鍵を持ち出したこともあることの2点から,被告人には本件スミスアンドウエッソ ん銃が入っていることの認識があることを示すものであり,現に,3月下旬ころ,被告人は,Uの祖父の仏壇にお参りしたいと言って鍵を持ち出したこともあることの2点から,被告人には本件スミスアンドウエッソンについて,占有の意思があり,管理支配も及んでいたと認められる。 2 結論以上を総合すると,被告人が同年4月15日ころに,H方の手押し車の中に,本件スミスアンドウエッソンを入れて保管,所持し,Uに指示して,上記の実包及び雷管等を置かせて所持したことは優に認められ,判示のとおりの事実が認定できる。 第10 B証言の一般的信用性についてこれまで各事件について供述証拠及び客観的証拠を検討してきたが,冒頭に説示したとおり,本件犯罪事実の立証認定,とりわけ被告人の犯人性の認定において,Bの証言が重要な意味を持っている。そこで,B証言の個別事件ごとの信用性にとどまらず,その全体を通じての一般的信用性についても,弁護人の所論に即して,共犯供述をすることに伴う利害関係の有無,取調べ状況及び供述の変遷の有無,性格,精神状態等の観点から検討しておく。 1 共犯供述をすることに伴う利害関係(1) 弁護人は,Bには被告人を共犯者として引っ張り込む供述をする利益や動機があると主張する。すなわち,①Bは,被告人と異なる人物像の者と行動を共にしていることが窺われ,真犯人と思しき第三者を庇う利益や,②被告人が主犯で,自分は運転手役にすぎないと供述することによって,自己の刑事責任を軽減させる利益があり,現に,Bは,本件について共謀共同正犯ではなく,Dランドリー事件の銃刀法違反,F時計店事件の犯人隠避,G理容室事件の幇助で起訴され,神戸事件は訴追なしという処分を受けており,その取引がなされた可能性もあって,その利益は切実なものであったから,B証言の信用性は否定されるべ ,F時計店事件の犯人隠避,G理容室事件の幇助で起訴され,神戸事件は訴追なしという処分を受けており,その取引がなされた可能性もあって,その利益は切実なものであったから,B証言の信用性は否定されるべきであるという。 しかし,弁護人指摘の共犯者供述の危険性は,一般的には当てはまるといえるが,これまで各論で見てきたように,①については,Bが被告人以外の者と行動を共にしていた可能性は否定でき,庇うべき第三者の存在は窺われない。②については,Bが神戸事件で何ら罪に問われていないのは,Bとしては債権回収の下見に行くつもりが,丙を呼び出すように被告人から言われた後,発砲事件が起きて驚いた帰路も被告人がシーマを運転したというBが証言する事実を前提にする限り,犯人隠避や幇助には問えないことになるし,被告人の発砲を予期し又は事後に初めて知って逃走を助けた他の事件についても,幇助又は犯人隠避にとどまり,Bの関与程度,知情性に照らして,共謀共同正犯での起訴は困難であると判断したことは不自然とは考えられず,利益供与の存在を窺わせたり,それに向けて虚偽供述を図ったとは認めがたい。 (2) また,弁護人は,③Bは,取調官から被告人が自分の悪口を言っていると聞かされ,被告人への悪感情から報復目的で,被告人を巻き込む供述をする動機もあったと主張している。 B証言によれば,取調中に刑事から,被告人がBの悪口を言っていると聞かされ,もう庇う必要がなくなったというのであるが,虚偽供述までしたという事情は窺うことができない。Bにとって,被告人は,もともと昭和59年ころ以来,組の序列上の兄貴分であり,さらに犯行直前には個人的な兄弟分関係も結び,Bが被告人の復帰話を上部団体に持っていったことの裏付けもある。本件当時,Bと被告人との間には何ら確執もなく,むしろ,Bは被告人方に頻 上の兄貴分であり,さらに犯行直前には個人的な兄弟分関係も結び,Bが被告人の復帰話を上部団体に持っていったことの裏付けもある。本件当時,Bと被告人との間には何ら確執もなく,むしろ,Bは被告人方に頻繁に出入りし,被告人の母親の通院先を訪れたこともあり,被告人を兄貴と呼び,何度も一緒に飲食するなど,親密に行動を共にしていたものであって,世話になっていても恨むような関係は認められない。そして,現在においても,被告人を兄貴と慕う気持ちに変わりはないと述べている。 このような2人の関係に照らせば,本件に全く関わっていない被告人を犯人に仕立て上げるような虚偽供述をBがすることは考えがたいというべきであり,取調官から悪口を聞かされた程度では,失望あるいは悪感情を抱くことはあっても,無実の者を罪に陥れるほどの強い恨みを生じるとは思われない。さらには,被告人はBの直接の兄貴分にあたる組幹部であって,Bは被告人を慕うと共に怖れる気持ちを有していたことは前記のとおりであり,犯人に仕立てる供述をすれば被告人から報復されるおそれもあるというべきである。 (3) よって,Bが虚偽の引き込み供述をするなど,その証言の信用性を否定すべき事情は認められない。 2 自白に至る経緯及び取調べ状況(1) Bは,取調べ状況等について,要旨以下のとおり証言する。 ア Bは,平成11年4月26日,同月14日に発生したG理容室事件で,被告人と共に逮捕された。 Bは,被告人から4月上旬と逮捕当日の昼の2回,「逮捕されたら22日間黙っとけ。嫌不になるから。調書も一切取らすな。」と黙秘を指示されていたため,5月4日ころまで,自分は事件と無関係で,犯人が誰であるかも知らないと全面的に否認していた。 しかし,5月4日,T4刑事から交替したS1刑事から,「犯人はAでないことはわかっている。お いたため,5月4日ころまで,自分は事件と無関係で,犯人が誰であるかも知らないと全面的に否認していた。 しかし,5月4日,T4刑事から交替したS1刑事から,「犯人はAでないことはわかっている。お前が言わんばっかりにAはこうして勾留されている。Aを早く家に帰したってくれ。」「犯人はおまえがかんでいるのは分かっている。この事件は2人でないとでけへん。わしはIやと思うとるんや。 おまえとIがやったんやろ。」と言われた。 これに対して,Bは,自分は詳しい犯行状況は分からないから調書は書けない旨答えたところ,S1刑事から「お前が持っていってくれるなら,調書みたいなものどうでもかまへん。」「それは任せとけ。」と言われたため,Bは思いつくままS1刑事の筋に沿って,「Iと共謀の上,神戸事件はIが実行し,aの3つの事件はBが実行した」との内容の自供書を作成した。 このようにS1刑事に供述した直後,最初の取調官のT4刑事が自分にも話を聞かせてほしいと再び取調べに入った際,犯行状況の詳細を答えることができず,不審に感じたT4刑事の様子から,調書は何とかするとのS1刑事の話が通じていないと分かり,そういうことなら先の話は嘘であるとして,以後再び否認に転じた。 しかし,一度自身の関与を認めて供述をしてしまい,話のつじつまも合わなくなったことで,知らないでは通らなくなり,被告人を庇うことも難しくなり,また,刑事から,被告人がBの悪口ばかり言っていると何度も聞かされ,被告人の自分に対する思いを知り,庇う必要がなくなったことなどから観念し,5月8日,被告人と2人でやったと認める自供書を作成し,以後,公判廷での証言と同内容の供述をするに至った。 イなお,Bは,取調べ状況について,逮捕以後,しばらくは,警察官の取調べは特に厳しく,殴ったり,蹴ったり,プロレス技をか と認める自供書を作成し,以後,公判廷での証言と同内容の供述をするに至った。 イなお,Bは,取調べ状況について,逮捕以後,しばらくは,警察官の取調べは特に厳しく,殴ったり,蹴ったり,プロレス技をかけたり,立ちっぱなしにさせたりといった暴行もあり,長時間にわたる取調べが行われたと供述し,警察官調書には訂正してもらえず不正確な箇所もあると供述する。他方で,Bは,検察官調書については,誘導もなく,訂正申し立ても聞いてくれたので,内容はほぼ正確であると供述する。 (2) 検討平成11年5月8日付自供書(甲440)によれば,Bは,本件各事件について,被告人の行動や会話について,簡潔ではあるが踏み込んだ内容の記載をしており,捜査官の一方的誘導でなくB自ら供述したと考えられるのであって,自白経過についての上記証言を裏付けるものといってよい。 弁護人は,①B供述は暴行を伴う取調べの中で得られたもので,任意性,内容の信用性に重大な疑問があり,②偽計に基づく取調べの結果得られた自白であり,類型的に信用性を低めるものであり,③被告人が関与したと供述する見返りとして,Bは犯人隠避,幇助にとどめるとの利益誘導で取引に基づき自白が引き出された可能性があることを挙げて,信用性に疑問があるとする。 ①については,B証言によると,逮捕当初の取調べで,警察官からの暴行,長時間に及ぶ追及など不当な取調べが行われた可能性を否定することは困難である。しかし,最終的には,Bは,つじつまが合わなくなったことなどから観念して,自らの意思で自白したものと認められる。そして,少なくとも,検察官調書においては,逮捕当初の不当な取調べの影響は既に遮断された状態で録取されたものと認められるから,自白した調書とほぼ同内容といえるBの公判証言の証拠能力や信用性を損なう事情には当たらない。 検察官調書においては,逮捕当初の不当な取調べの影響は既に遮断された状態で録取されたものと認められるから,自白した調書とほぼ同内容といえるBの公判証言の証拠能力や信用性を損なう事情には当たらない。 ②については,S1刑事がI共犯者説を持ちかけ,Bの関与を認めさせて,T4刑事が被告人関与を認めさせようと迫ったとの主張は,弁護人の推測に過ぎず,偽計であったと疑うほどの事情はない。 なお,③については,前述のとおり,利益供与があったとは認められない。 Bの供述は上記のように大きく変遷しているのであるが,変遷の理由は,B証言によれば,被告人から黙秘を指示され,否認して被告人を庇ってきたが,取調べで厳しい追及を受けていた上に,取調官からIが犯人であるとの心証を話されたことで,これに乗ってみたものの,虚偽と看破され,矛盾が露呈して被告人を庇いきれなくなったというもので,このような変遷と自白の経緯は,当時のBの心理に鑑みれば了解可能であって,不合理とはいえない。そして,自白後の供述には核心部分に変遷はなく,一貫して詳細な供述がなされていることも併せ考えると,変遷していることが自白全体の信用性を揺るがすものではない。 以上のとおり,Bの自白に至る取調べ経過において,B証言の信用性を否定すべき事情があるとは認められない。 3 Bの性格,精神状態等(1) 弁護人は,I,R,Y等の供述から,Bには,虚言癖,酒癖が悪い,異様な言動が窺われ,本件犯行期間中も,覚せい剤を常用していたことや,度重なる覚せい剤使用の後遺症で,幻覚・幻聴,躁うつ病,不眠症など精神状態が荒廃している可能性があることを指摘し,Bの記憶の正確性や供述内容の信用性には疑問があると主張する。 (2) 検討IはBには虚言癖があると証言しているが,BがIと縁を切ることになった経緯や,Iが今回 している可能性があることを指摘し,Bの記憶の正確性や供述内容の信用性には疑問があると主張する。 (2) 検討IはBには虚言癖があると証言しているが,BがIと縁を切ることになった経緯や,Iが今回,Bが当初供述したI共犯者説が原因で逮捕・勾留された経緯に照らすと,Bに対して悪感情を有していると思われる人物であり,その証言中,Bに対する思いやその人格に対する部分は信用しがたい。また,他の者の供述によっても,Bの人格に多少の問題があることは肯定されるとしても,被告人を罪に陥れることにつながるような異常さは到底認められない。 さらに,弁護人指摘のとおり,Bは,過去に,大量の覚せい剤を続けて使用するなどして覚せい剤精神病で3回措置入院になったこと,幻聴・幻覚体験を有し,環境が変化するとフラッシュバック現象による幻聴を経験することがあること,躁うつ病と診断されたこと,受刑中に不眠で睡眠薬を処方されたこと,本件当時,3月24日に覚せい剤を使用して以後,逮捕直前まで使用していたことも認められる。しかし,本件当時覚せい剤を使用した一因は,被告人の犯行に加担した後ろめたさがあったというのであり,当時のBの精神状態を見た場合,Bは,前刑出所後,幻聴は1回出たというにすぎず,Bと接触した他の者の供述を見ても,供述の信用性を低下させるような異常な精神状態にあったと考えるべき事情は見当たらない。 4 まとめ以上の検討からは,B証言の一般的信用性について,疑問を抱かせるような事情は認められない。 また,Bの公判廷での供述態度を見ても,落ち着いて淡々と証言し,被告人の行為についてもB自身の行為についても隠そうと思い気持ちは揺れ動いていたが,今は正直に話す心境になっていると述べ,事件の内容を具体的に説明しながらも,捜査官調書とは異なる内容や記憶が十分でない点 人の行為についてもB自身の行為についても隠そうと思い気持ちは揺れ動いていたが,今は正直に話す心境になっていると述べ,事件の内容を具体的に説明しながらも,捜査官調書とは異なる内容や記憶が十分でない点はその旨説明し,信用するに足りる証言態度と見てよい。 結局,B証言は,個別的信用性の検討で論じたとおりの詳細かつ具体的で迫真性を伴う内容と,証言態度,他の証拠との符合などを総合すると,十分信用することができる。 第11 総括的検討以上をふまえ,本件一連の事件における被告人の犯人性について,Bの役割や被告人の動機などを加えた総合的見地から検討を加える。 1(1) 弁護人は,Bが本件に関与していることは間違いがないところ,①Bは,Iに対して,反感を抱きながらもなかなか離れられずに長年付き合ってきたもので,2人の間には軋轢があったこと,②Bは絶縁処分で,望んでもL組には復帰できない状態であったのに対し,被告人は,破門にすぎない上,Nを通せば直参待遇で復帰することさえ可能な状況であったこと,③他方,Iと被告人との関係は,I証言によれば,良好な関係にあったことなどに照らすと,Bは,aの各事件を引き起こし,M組関係者の丙を殺害することにより,L組の関与を疑わせ,L組に復讐するという,本件を起こす必然性も動機も備えていたから,Bが本件を敢行したものであると主張する。 この弁護人の主張からは,①Bが単独で敢行した可能性,②Bが被告人以外の第三者と共に敢行した可能性が考えられ,さらに,③Bが被告人と共に敢行したものであるが,その役割は,Bが主犯で被告人が幇助という可能性もあることになろう。 (2) まず,①については,例えば,神戸事件では,丙を呼び出したB以外に赤い上着の男が目撃されており,この人物が実行犯であると考えられることから,そもそもBが単独で敢行 能性もあることになろう。 (2) まず,①については,例えば,神戸事件では,丙を呼び出したB以外に赤い上着の男が目撃されており,この人物が実行犯であると考えられることから,そもそもBが単独で敢行したとするのは否定される。 ②については,被告人と異なる人物像の者についての目撃供述に信用性がないことは既に論じたとおりであるし,さらに,例えば,F時計店事件では,犯行の約2分前に被告人方近くで,2人が一緒にシルビアに乗っているところを目撃され,犯行の約30分後には,再び被告人方近くで,被告人と思しき者と一緒にタクシーに乗り込むのを目撃されており,犯行の際だけ,Bが被告人と別れて第三者と合流し,すぐに被告人と合流するということは,時間的にも物理的にも不可能に近く,想定しがたいといえ,このことは他の事件でもほぼ同様である。 ③については,弟分のBが,兄貴分に運転や準備等を手伝わせること自体,常識的に見て余りに不自然であるし,Bの動機といっても,神戸事件については,被告人には動機を推認することは可能であるが,Bについては,動機どころか,証拠上丙との接点すら認めることはできない。 2(1) また,本件動機について,検察官は,神戸事件は大蔵から傷害を負わされたことへの復讐から敢行された可能性があり,a事件3件は,強いて言えば,Iに報復する目的と共に,L組から復縁話を持ちかけさせる目的で,かつてのP組組事務所があった付近,さらには,I方住居の付近であるというだけの理由で,3件の商店を無差別的に選び出して敢行したものであると主張する。他方,弁護人は,被告人にはおよそ動機がなく,自ら望みさえすればL組の直参待遇になることも可能な状態であって,復讐を企てる事情もないことから犯人ではないと主張している。 (2) 神戸事件については,前記の検討のとおり,昭和6 およそ動機がなく,自ら望みさえすればL組の直参待遇になることも可能な状態であって,復讐を企てる事情もないことから犯人ではないと主張している。 (2) 神戸事件については,前記の検討のとおり,昭和60年ころに,丙から日本刀様のもので顔等を切り付けられたことに対する復讐から敢行されたものと推認することができる。 しかし,a事件3件については,うち2件の犯行現場に遺留された天誅ビラの記載内容から,L組に関わる犯行動機が窺われること以上に,認定することは甚だ困難であると言わざるを得ない。その記載内容でさえ,「L組が」各被害商店に天誅を加えるという趣旨なのか,それとも,被害商店の犠牲のもと,「L組に」天誅を加えるという趣旨なのか不明であるし,ましてや,この3件の商店がなぜ標的にされたのかに至っては,DランドリーとF時計店の玄関には「a暴力団追放協議会」のステッカーが,G理容室には「防犯協会賛助会員証」のステッカーが貼付されていたことくらいしか手がかりはなく,被告人との個人的トラブル等もないことから,不明であるというしかなく,無差別に選んだものと見ざるを得ない。 しかしながら,被告人がL組やIに憤慨し,何らかの手段により報復を企てたと見るべき事情があることは,これまでにも再三説示したとおりである。すなわち,前刑受刑中,Iは被告人の家族の面倒を見ることもなく(第19回公判でI自身が明言している。),出所の迎えにも行かず,本家のC1も被告人の復帰に対して,願い出るなら筋を通せとすげない対応をし,Nが被告人を自分の若い衆にしたいと言ったのに対しても,Iが反対したことなどから,これらの事情をBやOから聞いた被告人は,I及びL組に対して恨みを持ち,その報復目的で,L組に罪を着せようと天誅ビラを用意して,本件犯行に及んだものと一応推認できる。 弁護人 対したことなどから,これらの事情をBやOから聞いた被告人は,I及びL組に対して恨みを持ち,その報復目的で,L組に罪を着せようと天誅ビラを用意して,本件犯行に及んだものと一応推認できる。 弁護人は,L組への復帰が可能であったというが,被告人はL組の方から復縁の話があれば応じてもよいとの気持ちを持っていたところ,上記の状況からすると,被告人が受け入れられる形の円満な復縁は極めて困難になっていたと認められ,被告人自身もこれを断念する意思を表明していたことが明らかである。 なお,検察官が主張するところの,L組から復縁話を持ちかけさせる目的で一連の事件を敢行したというのは,迂遠にすぎると思われ,被告人は,C1の返事をBから聞くや,L組に戻るつもりはないと言って実包の調達を依頼したのであるから,なおも復縁を望んで話を持ってこさせるために,逮捕覚悟で重大事件を連続敢行し,L組名を出した一種の犯行声明文を遺留したとは容易に考えがたい。 よって,a事件3件の動機については,詳細は不明であるといわざるを得ないが,少なくとも,L組にまつわる動機であることは認定でき,被告人には動機がないとの弁護人の主張は当たらない。 第12 結論一連の本件各犯行について,B,あるいはそれ以外の第三者が実行犯である可能性は考えられず,他方で,本件各事件に用いられたと認められる物証である本件ロッシについて,被告人との結びつきが認められること,被告人が犯人であるとするB証言には多数の裏付けがあり,十分信用できること,被告人には神戸事件についての動機があるとともに,a事件についてもL組との軋轢という限度での一応の動機の存在が認められることなどから,本件各犯行は,被告人によるものであると認定できる。 (累犯前科) 1 平成4年7月3日大阪地方裁判所堺支部宣告詐欺罪により懲 もL組との軋轢という限度での一応の動機の存在が認められることなどから,本件各犯行は,被告人によるものであると認定できる。 (累犯前科) 1 平成4年7月3日大阪地方裁判所堺支部宣告詐欺罪により懲役5年平成10年1月21日刑執行終了 2 平成5年3月30日大阪地方裁判所宣告印紙犯罪処罰法違反罪(1の判決確定前の犯行)により懲役1年2か月平成11年3月21日刑執行終了(前科調書(乙5),判決書謄本(乙15,16)により認定)(法令の適用)罰条第1の1の行為建造物侵入の点は刑法130条前段,窃盗の点は235条第1の2の行為道路交通法118条1項1号,64条第2の1の行為刑法261条第2の2の行為殺人未遂の点は刑法203条,199条,けん銃発射の点は銃砲刀剣類所持等取締法31条,3条の13第2の3,第3の2,第4の2,第5の2の行為けん銃加重所持の点は銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項,1項,3条1項,実包所持の点は同法31条の8,3条の3第1項第3の1の行為刑法199条第4の1,第5の1の行為住居侵入の点は刑法130条前段,殺人未遂の点は同法203条,199条第6の行為けん銃加重所持の点は銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項,1項,3条1項,実包所持の点は同法31条の8,3条の3第1項,雷管所持の点は火薬類取締法59条2号,21条科刑上一罪第1の1,第4の1,第5の1の行為について刑法54条1項後段,10条(第1の1について重い窃盗罪の刑で,第4の1,第5の1について重い殺人未遂罪の刑でそれぞれ処断)第2の2,第2の3,第3の2,第4の2,第5の2,第6の行為について同法54条1項前段,10条(第2の2について重い殺人未遂罪の刑で,第2の3,第3の2,第4の2,第5の2につい でそれぞれ処断)第2の2,第2の3,第3の2,第4の2,第5の2,第6の行為について同法54条1項前段,10条(第2の2について重い殺人未遂罪の刑で,第2の3,第3の2,第4の2,第5の2について重いけん銃加重所持罪の刑で,第6について最も重いけん銃加重所持罪の刑でそれぞれ処断)刑種の選択第1の2,第2の1の罪について懲役刑を,第3の1の罪について無期懲役刑を,第2の2,第4の1,第5の1の罪について有期懲役刑を選択累犯加重第1の1,2,第2の1から3,第3の2,第4の1,2,第5の1,2,第6の各罪の刑について刑法56条1項,57条(第2の2,3,第3の2,第4の1,2,第5の1,2,第6の各罪について更に同法14条)併合罪の処理刑法45条前段,46条2項(他の刑を科さない)没収刑法19条1項1号,2項本文訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑事情)本件は,元暴力団組員である被告人が,けん銃を発砲し短期間にほぼ連続して敢行した殺人1件(神戸事件)及び大阪市a区内での殺人未遂3件(Dランドリー事件,F時計店事件,G理容室事件)のほか,犯行に使用した自動車に関する建造物侵入,窃盗,無免許運転,犯行の用に供したけん銃とは別のけん銃1丁を実包16発等と共に親戚方に隠匿して所持した件からなる事案である。 被告人は,平成11年3月22日に前刑で刑務所を出所したが,そのわずか6日後の3月28日に2件,4月12日と4月14日に各1件という短期間内に,いずれもけん銃を使用して,殺人1件,殺人未遂3件という凶悪重大事件を連続的に起こしたものであり,しかも,a事件3件は商店街店主を狙ったもので,無差別的犯行であり,犯情は特に悪質である。 本件動機は,被告人が黙秘を貫いているため,必ずしも明らかではない 悪重大事件を連続的に起こしたものであり,しかも,a事件3件は商店街店主を狙ったもので,無差別的犯行であり,犯情は特に悪質である。 本件動機は,被告人が黙秘を貫いているため,必ずしも明らかではない。 神戸事件については,被告人が以前被害者丙から傷害を負わされた件への報復目的である可能性が高いが,本件犯行時,既に事件から約14年も経過し,丙も暴力団を離脱して真面目に稼働していたものであり,殺害という報復手段に出たことについて酌量の余地があるとは到底いえず,執念深く居所を追跡して犯行に及んでいる点で常軌を逸している。 また,a3事件は,被告人と何ら接点もなく,トラブルも認められない善良な商店主が被害者で,自分がなぜ狙われたのか理由を教えてほしいと切実に訴えているように,理不尽な無差別的犯行である。動機としては,L組に対する報復目的が窺われるが,暴力団組織とは無関係のこれら善良な一般市民の貴重な生命を奪うことによって,暴力団に関係する自らの目的を達成しようとした犯行動機は身勝手極まりない恐るべきものであって,手段を選ばぬ被告人の反社会的傾向が顕著であり,人命軽視も甚だしく,動機において酌量の余地は全くない。 犯行の態様及び結果を見ると,被告人は,出所当日にけん銃1丁を入手し,5日後にシーマを窃取した上,翌日の未明に,Dランドリー事件を,同日中の深夜には,予め入手していた被害者についての興信所調査書に基づいて神戸事件を敢行し,また,シーマが使用できなくなると,4月5日にシルビアを入手し,10日に新たな実包を入手し,12日にF時計店事件を,14日にG理容室事件を敢行したもので,一連の犯行は被告人が受刑中,もしくは出所直後に計画し,凶器のけん銃と実包や逃走用車両などを準備し,極めて周到に実行されたものである。 神戸事件は,Bを使って大蔵を誘 G理容室事件を敢行したもので,一連の犯行は被告人が受刑中,もしくは出所直後に計画し,凶器のけん銃と実包や逃走用車両などを準備し,極めて周到に実行されたものである。 神戸事件は,Bを使って大蔵を誘き出させて待ち伏せし,危険を察知した丙の至近距離から1発,逃げようとする背後からさらに2発発射して,右胸背部等に命中させたもので,殺意の強固さを物語る一方的な殺害方法は残忍冷酷というほかなく,犯行態様は極めて悪質である。丙は,無惨にも連続して銃弾を浴び,間もなく絶命しており,家族を残して死亡する無念さは察するに余りがある。最愛の夫であり,息子であり,父親であった丙を失った遺族の悲しみは誠に深く,被告人を極刑に処することを強く望んでおり,その被害感情は極めて厳しい。 a事件3件について見ると,Dランドリー事件は,ガラスを割って乙を誘き出した上で,2発発射し,右胸部等に命中させており,乙の不意をついた一方的で卑劣な犯行であり,F時計店事件は,営業中の店内に声をかけ,丁が出てきたところを,至近距離から連続的に3発発射し,命中こそしなかったものの,丁のすぐ側の壁等を破損しており,顔面や上半身に命中した可能性が高かったもので,やはり一方的で危険な犯行である。そして,G理容室事件は,散髪中の戊が気配に気付いて入口の方を振り向いたところを,至近距離から顔面等を狙って1発,さらに裏口へと逃げるところへ2発発射し,うち1発を左肩部に命中させたもので,傍の客に当たっていた可能性も高く,危険な犯行であって,いずれも犯行態様は誠に悪質である。そして,殺害の点は未遂に終わったものの,乙に加療30日間,戊に加療28日間の重傷を負わせた本件の結果は重大である。これらの被害者についても,肉体的,精神的苦痛は大きく,丁についても,身をかわすのが遅れれば命中していた可能性 ったものの,乙に加療30日間,戊に加療28日間の重傷を負わせた本件の結果は重大である。これらの被害者についても,肉体的,精神的苦痛は大きく,丁についても,身をかわすのが遅れれば命中していた可能性があり,いずれも死の恐怖に直面させられたものであり,厳重処罰を望み,再び被告人から理不尽にも狙われるのではないかとの恐怖感におびえていると述べ,無差別犯行の被害者故の不安な胸の内を訴えている。動機も不明で無差別的犯行である以上,再び社会に戻った場合,実際に再犯に及ぶおそれは無視できないものがあり,量刑上,十分に斟酌する必要がある。 これらの重大な被害を与えたにもかかわらず,被告人は,捜査公判を通じて完全黙秘を続け,犯行を否認しているもので,もとより慰謝の措置は皆無である。 被告人は,住居・建造物侵入,窃盗,道交法違反,銃刀法違反などの同種前科を含む前科合計8犯を有し,とりわけ,昭和61年と平成3年の2回けん銃及び実包所持罪で有罪判決を受けており,18歳の少年時以降長期間にわたって,服役を繰り返してきたにもかかわらず,今回またもけん銃を入手所持したばかりか,これを使用して凶行に及んでいるのであって,犯罪傾向は受刑生活によって改善されるどころか,より深化している。そして,本公判廷においても,弁護人に暴行を振るうなど,全く改悛の情を窺い知ることはできない。 また,本件犯行は,神戸事件については,深夜の市営住宅内の通路において行われたものであり,付近住民に与えた不安感や衝撃は大きく,a事件については,何ら落ち度のない一般市民を無差別に標的にし,安全な場所であるはずの自宅・店舗内において連続的に行われたもので,暴力団の関わりを示す天誅ビラを現場に遺留したことも加わって,地域住民の不安感を煽り,恐怖に陥れ,社会を震撼させた事件である。銃器を使用し 所であるはずの自宅・店舗内において連続的に行われたもので,暴力団の関わりを示す天誅ビラを現場に遺留したことも加わって,地域住民の不安感を煽り,恐怖に陥れ,社会を震撼させた事件である。銃器を使用した犯罪が多発し,市民に著しい脅威となっている今日,本件のような連続発砲殺傷事件を敢行した被告人の反社会性は厳しく非難されなければならない。 以上の諸事情に鑑みれば,被告人の刑事責任は極めて重大である。 しかしながら,他方で,被害者を死亡させており,被告人の罪責を決する上で最も重要というべき神戸事件については,利欲目的に基づくものでも無差別に狙ったものでもなく,過去の怨恨に基づく犯行と窺われる点で,他の3件の無差別的犯行よりも動機の類型として悪質性が若干低いといえること,他の3件においては,被害者自身が早期に通報する努力をしたり(Dランドリー事件),とっさに身をかわして運良く命中しなかった(F時計店事件)ためではあるが,結果的に各被害者が一命を取り留めたことは事実であり,その危険性はともかくとして結果においては殺害に匹敵すると評価するわけにはいかないこと,被告人にはこれまで暴行等の粗暴犯前科はあるが,傷害や殺人の前科はなく,改善の余地が絶無であるとまではいえないことなど,量刑上被告人に有利に考慮すべき事情も存する。 以上を総合すると,被告人に対して極刑を選択することが必要とまではいいがたく,今後その一生涯を賭けた受刑生活の中で,償いを果たす責任に目覚め,贖罪の日々を送らせるべきであり,無期懲役刑を科するのが相当と判断した。 (求刑死刑,けん銃2丁及び実包16発の没収)平成14年5月8日大阪地方裁判所第15刑事部裁判長裁判官米山正明裁判官荒木美穂裁判官田村政喜は転補のため署名押印することがで 及び実包16発の没収)平成14年5月8日大阪地方裁判所第15刑事部裁判長裁判官米山正明裁判官荒木美穂裁判官田村政喜は転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官米山正明
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