平成13(ワ)26 生活協同組合コープこうべ夏季賞与請求

裁判年月日・裁判所
平成15年2月12日 神戸地方裁判所
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判決文本文18,489 文字)

判決平成15年2月12日神戸地方裁判所平成13年(ワ)第26号未払い一時金請求事件 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告らに対し,それぞれ別紙請求債権目録「夏季一時金請求額」欄記載の各金員及び上記各金員に対する平成12年7月11日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告が,被告の職員であった原告らに対し,原告らが被告の希望退職優遇制度の適用を申請して被告を退職した際,夏季賞与を支給しなかったところ,原告らが,賞与支給対象期間を継続勤務することを賞与の支給要件とする被告の正職員給与規程の定めが公序良俗に違反して無効であると主張して,労働契約に基づき,また,被告との間で,被告が原告らに対して夏季賞与を日割計算で支払う旨の黙示の合意が成立していると主張して,上記合意に基づき,被告に対し,それぞれ夏季賞与及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。 1 争いのない事実等(証拠等を掲記した事実を除き,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告らは,いずれも被告の職員であったが,被告に対し,後記(3)の希望退職優遇制度の適用を申請し,原告A及び同Bは平成12年3月15日,その余の原告らは同年4月15日,被告を退職した(退職日につき甲1の1,乙2,6の1,2,弁論の全趣旨)。 イ被告は,消費生活協同組合法に基づき設立された生活協同組合であり,兵庫県全域において,協同互助の精神に基づき,組合員の文化的経済的向上を目的として活動している組織であり,肩書地に本部を有 イ被告は,消費生活協同組合法に基づき設立された生活協同組合であり,兵庫県全域において,協同互助の精神に基づき,組合員の文化的経済的向上を目的として活動している組織であり,肩書地に本部を有するほか,店舗事業(166店舗),無店舗事業(29事業所)を行っている。 その職員数は,同年3月31日現在,正職員5038名,嘱託・パート職員等1万0850名である。 (2) 夏季賞与の支給被告の正職員給与規程(乙1の2)は,32条において,「賞与は毎年2回,生協事業の状況および職員の勤務状態を考慮して支給する。」と定め,33条1項2号において,賞与は,「賞与支給対象期間を継続勤務し,対象期間後に退職した者」(以下「継続勤務要件」ともいう。)等について支給すると定め,同条2項において,夏季賞与の支給対象期間は,「前年11月16日~当年5月15日」とすると定めている。夏季賞与の支給日は,7月10日である。 被告の正職員就業規則は,25条6号において,「満60歳に達したとき」,職員はその資格を失う(誕生月の末日をもって定年退職とする。)と定めている。 被告は,遅くとも平成2年ころから,2月ないし4月の末日に定年退職した者に対しても,月割計算で夏季賞与を支給している。もっとも,この取扱いは,正職員給与規程(乙1の2)において明文化されていない。 (3) 希望退職優遇制度被告は,平成12年1月28日付けで,同年4月1日現在で満45歳以上,勤続20年以上となる正職員2003名に対し,「希望退職優遇制度(案)の実施について」と題する書面(甲1の1,乙4)を配布した。上記書面には,「制度導入提案に至った背景と状況」について,「昨年来より危機的な財務体質の改革に 2003名に対し,「希望退職優遇制度(案)の実施について」と題する書面(甲1の1,乙4)を配布した。上記書面には,「制度導入提案に至った背景と状況」について,「昨年来より危機的な財務体質の改革に向けて,新規出店抑制を中心とした投資の見直しやさらなる物件費と人件費の圧縮,そして土地などの資産売却も不退転の思いですすめてきました。」「事業活動の基本数値となる供給高につきましては,96年度の約3,800億円をピークとして,97年度は3,700億円,98年度は3,600億円,そして99年度は3,360億円程度まで切れ込む予測となります。」「このように事業活動のベースとなる供給高が,わずか数年でピーク時よりおよそ500億円もの減少となる予測しかし得ない以上,当然,この減少する事業規模に見合った経費構造にしていくことが事業体として生き残るために不可欠なこととなります。」などと記載されている。 被告は,同年2月1日から同月5日にかけて,17回にわたり,希望退職優遇制度(理事会案)についての説明会を開催し,また,その後,個別面談を実施して,上記書面を配布した対象者全員に対し,希望退職優遇制度(理事会案)の内容を説明した(説明会の回数につき乙10,証人L)。 被告は,同月22日,コープこうべ労働組合との間で,経営合理化策の一環として,希望退職優遇制度(以下「本件制度」という。)に関する協定(乙2。 以下「本件協定」という。)を締結した。 本件協定は,本件制度の優遇内容のうち,退職金の支給については,「①年齢は満60歳とみなす」,「②勤続は満60歳とみなす」,「③退職事由は定年扱いとする(乗率2.0)」と定め,退職日については,「①原則として2000年4月15日とする。ただし,前倒しの退職希望については考慮する とみなす」,「②勤続は満60歳とみなす」,「③退職事由は定年扱いとする(乗率2.0)」と定め,退職日については,「①原則として2000年4月15日とする。ただし,前倒しの退職希望については考慮する。」と定めている。 被告は,原告らに対し,本件制度における夏季賞与の支給の有無については,口頭でも書面でも説明しなかった。 被告は,原告らに対し,原告らが賞与支給対象期間満了前に退職したため,夏季賞与を支給しなかった。 (4) 厚生年金基金及び雇用保険における取扱い原告C宛の厚生年金基金選択一時金裁定通知書(甲5)には,「加算終了又は喪失事由」欄に「会社都合」と記載され,同原告宛の雇用保険被保険者離職票-2(甲6)には,「(離職理由)」欄の「ニ,事業主の勧奨による退職」の部分に丸印が記載されている。 (5) 住宅資金積立預金(以下「住宅預金」という。)の利子補給組合内預金規程(甲17)は,10条1項において,組合内預金の預入者が「任意退職,解雇により職員たる資格を失ったとき」や「定年退職または死亡したとき」は,資格喪失者として元本全額を即時支払うものとすると定め,14条2項において,組合内預金のうちの住宅預金の預入れ当初から支払日前までの銀行預金利率と組合内預金利率との差額(以下「利子補給金」という。)を,目的内払戻しの時は補てん支給し,目的外払戻しの時は補てん支給しないこととすると定め,同条3項において,「第10条資格喪失による払戻しの内,定年退職,死亡,組合の都合による解雇の場合は目的内払戻し扱いとする。」と定めている。 被告は,本件制度の適用を申請して被告を退職した者らのうち住宅預金の預入れをしていた者らに対し,住宅預金を払い戻す際,利子補給金を 解雇の場合は目的内払戻し扱いとする。」と定めている。 被告は,本件制度の適用を申請して被告を退職した者らのうち住宅預金の預入れをしていた者らに対し,住宅預金を払い戻す際,利子補給金を補てん支給しなかったところ,原告Dが被告に対し,利子補給金の補てん支給を申し入れたため,被告は,平成12年6月1日付けで,上記の者らに対し,「生協内住宅預金の利子補給について」と題する書面(同原告宛は甲18)を送付し,同月12日,利子補給金を補てん支給した(振込日につき甲18)。上記書面には,「標記の件,すでに希望退職にともない住宅預金の解約手続きが完了されていますが,事務処理上の問題で今回の利息計算が「自己都合退職」となっていることが判明しました。 再度,通常の「定年退職と同様」で再計算し,下記のとおり利子補給分につきまして振込をさせていただきますので,ご確認願います。皆様には心からお詫びをするとともに,諸事情につきましてご理解頂きますよう,よろしくお願いします。」などと記載されている。 (6) 退職時の確認書(甲26の2)の記載原告D作成の退職時の確認書(甲26の2)の5項には,退職後の給与・賞与の振込先について,「原則として,退職後3ヶ月は解約しないでください。」と記載されている。 2 主要な争点(1) 継続勤務要件が公序良俗に違反するか否か。 (2) 原告らと被告との間で,被告が原告らに対して夏季賞与を日割計算で支払う旨の黙示の合意が成立していたか否か。 3 当事者の主張(1) 原告らの主張ア継続勤務要件が公序良俗に違反するか否か(争点(1))について(ア) 賃金とは,基本的には「労働力」の対価であり,賞与も賃金であることに変わりがない。 張ア継続勤務要件が公序良俗に違反するか否か(争点(1))について(ア) 賃金とは,基本的には「労働力」の対価であり,賞与も賃金であることに変わりがない。 ただ,賞与は,毎月支払われる月例賃金とは多少その性質を異にし,対象期間の労働だけでは具体的な請求権は発生せず,労使間の合意等により,支給額,支給条件,支給時期等が定められて初めて賞与の支給内容が確定して具体的権利となるものとされている。 したがって,労使間の合意等でその条件が確定するまでは具体的権利ではないにしても,労働者は,賞与の支給を受けるべき期待権を有しているのである。 そのため,在籍要件(賞与支給対象期間を継続勤務し,支給日当日に在籍する者を賞与支給の対象者とすること)を定めることについては,従来その効力が争われてきたが,近時の判例は,任意退職者は退職時期を選ぶことができる,企業が賞与支給に当たり,労働意欲の向上や確保,勤務の継続ないし確保等に期待することは不合理でないとして,在籍要件を無効でないとしている。 そうすると,在籍要件(継続勤務要件)は,定年退職,死亡退職,整理解雇等,任意に退職時期を選ぶことのできない退職者に対しては,労働者の意思によることなく賞与請求権を一方的に剥奪することになるから,その合理性は認められなくなる。 (イ) 本件制度は,労働者において退職の時期を選ぶことができないものであり,この意味では,在籍要件(継続勤務要件)は,本件制度によって退職する者が有する賞与に対する期待権を一方的に剥奪することになるから,原告らに対しては,その合理性を欠き,公序良俗に違反して無効である。 (ウ) 被告は,本件制度に 本件制度によって退職する者が有する賞与に対する期待権を一方的に剥奪することになるから,原告らに対しては,その合理性を欠き,公序良俗に違反して無効である。 (ウ) 被告は,本件制度による退職は定年退職と同様の取扱いをする旨説明し,賞与の支給は定年退職と別個の取扱いをする(定年退職者のように賞与を日割計算で支給することはしない。)との説明をしていないのであるから,原告らは,被告に対し,労働契約に基づき,日割計算による賞与の請求権を有する。 イ原告らと被告との間で,被告が原告らに対して夏季賞与を日割計算で支払う旨の黙示の合意が成立していたか否か(争点(2))について下記(ア)ないし(オ)によれば,原告らと被告との間で,夏季賞与の支払については,定年退職の場合と同様に,被告が原告らに対してこれを日割計算で支払う旨の黙示の合意が成立していたというべきである。黙示の合意の成立時期は,原告らが被告に対し,「希望退職優遇制度適用申請書」を提出し,被告がこれを受理した平成12年2月7日から同年3月31日までの間である(したがって,下記(ウ)は,黙示の合意が成立した後の事実であり,黙示の合意の成立を裏付けるものである。)。 (ア) すなわち,被告は,「希望退職優遇制度(案)の実施について」と題する書面(甲1の1)の「2.具体的な提案内容について」の「(4) 優遇内容」において,退職金の支給については「退職事由は定年扱いとします」と記載し,希望退職に応じる者については定年退職とするとしていた。 また,労使の交渉経過について組合員に報告をしている「きょうゆう」(甲2の1ないし4)や本件協定(乙2)においても,退職事由は定年扱いとすると記載されており,いずれの記載においても, また,労使の交渉経過について組合員に報告をしている「きょうゆう」(甲2の1ないし4)や本件協定(乙2)においても,退職事由は定年扱いとすると記載されており,いずれの記載においても,夏季賞与の場合には定年扱いをしない旨の記載はない。 (イ) 被告は,平成12年2月1日から同月5日までの間に実施されたE人事担当理事による説明会,同月7日から同月21日までの間に実施された人事教育部の人事担当者による管理職,7級以上の職員を対象とした個別面談及び同月23日から同年3月末日までの間に実施された労組員,6級以下の職員を対象とした個別面談において,退職条件については定年退職と同様であると説明し,夏季賞与は支払わないとの説明はしていない。 (ウ) 被告は,生協内住宅預金の利子補給についても,原告Dの要求により「定年退職と同様」で再計算し,「自己都合退職」として普通預金の利息となっていたこと(利子補給金を支給しなかったこと)を詫びた。 (エ) 被告は,雇用保険及び厚生年金基金についても,退職事由を生協都合として,希望退職者に有利になるように配慮した。 (オ) 被告は,遅くとも「昭和49年夏季一時金に関する妥結確認書」(甲8)が成立した昭和49年6月29日以降は,正職員給与規程とは異なり,賞与支給対象期間中に定年退職した者に対しても,同期間の2分の1以上継続勤務していれば,賞与を日割計算で支払っており,これは,現時点では労使慣行化されている。 ウ役割手当の加算について被告は,原告F,同G,同H,同I,同J及び同Kに対し,平成12年3月20日から同年4月7日ころまでの間に,それぞれ配置転換の業務命令を出し,チーフなどの役職を解いた。 被告は,原告F,同G,同H,同I,同J及び同Kに対し,平成12年3月20日から同年4月7日ころまでの間に,それぞれ配置転換の業務命令を出し,チーフなどの役職を解いた。 しかし,この人事異動は,退職直前の配置転換であって,配置転換先で具体的な業務に従事した者はなく,業務の必要性を欠き,役割手当のカットを目的とした業務命令であり,無効である。 したがって,上記原告らの請求額は,役割手当を加算して計算している。 エ遅延損害金の利率について原告らは,被告に対し,夏季賞与の額に対する夏季賞与の支給日の翌日である平成12年7月11日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 被告が,利益を得て生鮮食料品はもちろん,家具等多品種の販売を行っているものであり,商行為をしている商人であることは,その実体からして明らかである。 (2) 被告の主張ア継続勤務要件が公序良俗に違反するか否か(争点(1))について(ア) 賞与の支給要件については,賞与支給対象期間を継続勤務し,かつ,賞与支給日に在籍していることを求める場合(支給日在籍要件)と,賞与支給対象期間を継続勤務すれば,賞与支給対象期間経過後賞与支給日までの間に退職しても賞与を支給する場合(継続勤務要件)とがある。賞与の支給条件としては,継続勤務要件よりも支給日在籍要件の方が厳しい内容となるが,近時の判例が支給日在籍要件の有効性を認めていることは原告らも認めるとおりである(東京地裁平成8年10月29日判決・判例タイムズ938号130頁,最高裁昭和60年11月28日判決・判例タイムズ578号61頁,最高裁昭和57年10月7日判決・判例 とは原告らも認めるとおりである(東京地裁平成8年10月29日判決・判例タイムズ938号130頁,最高裁昭和60年11月28日判決・判例タイムズ578号61頁,最高裁昭和57年10月7日判決・判例タイムズ485号63頁)。 (イ) 被告においては,夏季賞与は,前年の11月16日から当年の5月15日までを支給対象期間として7月10日に支給しているが,上記支給対象期間を継続勤務すれば,5月16日以降に退職した者についても夏季賞与を全額支給しており,支給日在籍要件よりも緩やかな支給条件を定めている。上記判例に照らせば,被告の継続勤務要件の有効性が否定される理由はない。 (ウ) 確かに,本件制度においては,退職日が原則として平成12年4月15日に固定されており(乙4),退職日を支給対象期間経過後の日に設定することはできない。 しかしながら,退職日の選択以前に,そもそも本件制度に応募するか否かの選択については対象従業員の自由な判断に委ねられていたのである(乙2の8頁)。本件希望退職者は,退職日が同日とされて継続勤務要件を充たさないことを承知の上で自身の自由な判断に基づき本件制度に応募したのであるから,被告が継続勤務要件を適用することにより本件希望退職者から一方的に賞与受給権を剥奪したという評価は全く正当でない。 (エ) したがって,継続勤務要件は,公序良俗に違反することはなく,有効である。 イ原告らと被告との間で,被告が原告らに対して夏季賞与を日割計算で支払う旨の黙示の合意が成立していたか否か(争点(2))について以下に述べるとおり,原告らと被告との間で,「本件希望退職者の退職条件は,すべて定年退職者と同様とする」旨の黙示の合意が成立していたと解 が成立していたか否か(争点(2))について以下に述べるとおり,原告らと被告との間で,「本件希望退職者の退職条件は,すべて定年退職者と同様とする」旨の黙示の合意が成立していたと解することは不可能である。 (ア)a 被告は,本件希望退職者に対し,口頭でも書面でも「本件希望退職者の退職条件は,すべて定年退職者と同様とする」旨の説明を行った事実は全くない(乙4,9)。 b 被告が本件希望退職者に対して夏季賞与を月割支給するつもりであったのであれば,応募者を増やすために,黙示の合意というあいまいな形式ではなく,書面により明示的に説明していたはずである。 c 仮に黙示の合意が成立していたのであれば,被告は,これに基づき,本件希望退職者に対し,夏季賞与を支給するはずであるが,被告はこれを履行していない。被告は,支給額を決定するために必要な人事考課も行っていないのである(乙10の第4の5(1)ウ(ア))。 d 被告に対して夏季賞与の日割支給を請求してきたのは,本件希望退職者約640名中約70名にすぎない。残りの約570名の者については,夏季賞与の支給に関して何らの問い合わせも異議の申出も行うことがなかったのである。 (イ)a 本件協定の4項(1)③の「退職事由は定年扱いとする」旨の規定は,本件協定に基づき希望退職した場合にはその退職事由は自己都合退職に該当するところ,本件制度の優遇条件の一つとして,退職金算定基準における退職事由別乗率については「自己都合退職」による乗率(勤続年数に応じ1.2~1.6)ではなく,「定年退職」による乗率(2.0)を適用することを特記したものにすぎず,退職金の算定以外の場面においても希望退職者を定年退職者と同様に扱う旨 退職」による乗率(勤続年数に応じ1.2~1.6)ではなく,「定年退職」による乗率(2.0)を適用することを特記したものにすぎず,退職金の算定以外の場面においても希望退職者を定年退職者と同様に扱う旨を取り決めたものではない。 かかる趣旨は,本件協定において,上記規定が「(1)退職金の支給について」の項の一項目として明記されており,かつ,上記規定の末尾に「(乗率2.0)」と記載されていることからも明らかであり,これを別意に解する余地はない。 b 説明会は,平成12年2月1日から同月5日にかけて合計17回行われ,いずれの回もE理事と再就職支援会社の担当者が説明を行った。E理事は,本件制度を実施するに至った経緯や制度目的を中心に約30分間の説明を行った。 「希望退職優遇制度説明会」と題する書面(乙9)は,同日に行われた説明会の反訳書であるが,E理事は原稿に基づいて毎回同じ内容の説明を行っていたところ(証人L),上記書面によれば,E理事が本件希望退職者の退職条件をすべて定年退職者と同様とする旨の説明など行っていないことは明らかである。 c 本件希望退職者に対する住宅預金の払戻しは目的外払戻しであり,本件制度による退職の法的性格は自己都合退職であるから,被告は,組合内預金規程に基づき,本件希望退職者のうち住宅預金を預け入れていた者に対して住宅預金を払い戻す際,利子補給を行わなかった。 これに対し,平成12年5月ころ,原告Dらから,被告が賃金の計算・支払業務を委託している関連会社に対し,定年退職の場合と同様に利子補給を行うよう要求があった。 被告は,組合内預金規程上は利子補給の義務はないが,本件制度による の計算・支払業務を委託している関連会社に対し,定年退職の場合と同様に利子補給を行うよう要求があった。 被告は,組合内預金規程上は利子補給の義務はないが,本件制度による退職を選択し,被告の経営再建策に協力した従業員に対し,目的外払戻しに対するペナルティーの趣旨を有する定めをそのまま適用するのは気の毒な感があること,本件希望退職者に対する利子補給に必要な費用は合計200万円ほどであったことなどから,同年6月12日,本件希望退職者のうち住宅預金制度を利用していた者に対する恩恵的措置として利子補給を実施することとした(乙10の第4の5(3)イ)。 「生協内住宅預金の利子補給について」と題する書面(甲18)の文言は,利子補給の場面でも当初から本件希望退職者を定年退職者と同様の取扱いがされるべきであったところを被告が事務処理を誤ったかのような表現が使用されているが,これは,「同じ利子補給を実施するのであれば,恩恵的な給付であるという実態をそのまま記載して恩を着せようとするよりも,被告側が手続を誤ったことにしておく方が,本件希望退職者に気持ちよく受け取ってもらえるであろう」という考えから上記のような表現となったものである。 d 厚生年金基金選択一時金裁定通知書(甲5)の資格喪失事由は「会社都合」,雇用保険被保険者離職票-2(甲6)の離職理由は「事業主の勧奨による退職」とされている。これは,「会社都合」等の方が「定年退職」よりも受給者に有利となることから,関係行政機関と協議の上で定めたものである。 上記各証拠(甲5,6)には,本件希望退職者が定年退職者と同様に取り扱われることを窺わせる記載は全く見当たらない。 e 被告は,昭和49年 ものである。 上記各証拠(甲5,6)には,本件希望退職者が定年退職者と同様に取り扱われることを窺わせる記載は全く見当たらない。 e 被告は,昭和49年の夏季賞与の労使間合意の交渉過程において,組合側から要求のあった賞与支給対象期間の途中で退職した者(定年退職者に限らない。)に対する賞与の日割支給を明確に拒否した(乙8の1,2)。また,その後においても,平成2年ころからは既に定年退職者に対する賞与の月割支給が実施されていたにもかかわらず,被告は,平成6年6月,平成11年4月の賞与規定の改正の際にも,あえてこれを明文化していない。以上からすると,被告は,定年退職者への賞与の月割支給をする取扱いを労働契約の内容としては明示的に排除していると評価することができる。 また,定年退職者への賞与の月割支給の取扱いは,もっぱら被告の判断で定年退職者への恩恵的措置として一方的に開始したものであり,かかる事実を従業員に周知していなかったうえ,被告内部においても事務取扱規則等でかかる取扱いが定められていなかったのであるから,被告と従業員がかかる取扱いについて労使間の労働条件の規範とするだけの共通認識を有していなかったことは明らかである。 したがって,定年退職者への賞与の月割支給に関して労使慣行は成立しない。 ウ役割手当の加算について被告は,後任者への業務の円滑な引継ぎを可能にするため,毎年4月の定期人事異動に合わせて,原告らの一部の役割を解いたものである。 また,退職直前に役割を解かれたとしても,退職金支給額が減額されることはない。 エ遅延損害金の利率について被告は商人で 役割を解いたものである。 また,退職直前に役割を解かれたとしても,退職金支給額が減額されることはない。 エ遅延損害金の利率について被告は商人ではなく,被告と原告らとの間の労働契約は商法514条の「商行為」に該当しない。 したがって,原告らは,商事法定利率による遅延損害金を請求することはできない。 第3 当裁判所の判断 1 継続勤務要件が公序良俗に違反するか否か(争点(1))について(1) 証拠(乙1の1)によれば,被告の正職員就業規則(乙1の1)は,49条において,「職員の・・・賞与に関する事項は,正職員給与規程で定める。」と定め,前記争いのない事実等(2)によれば,被告の正職員給与規程(乙1の2)は,32条において,「賞与は毎年2回,生協事業の状況および職員の勤務状態を考慮して支給する。」と定め,33条1項2号において,賞与は,「賞与支給対象期間を継続勤務し,対象期間後に退職した者」等について支給すると定め,同条2項において,夏季賞与の支給対象期間は,「前年11月16日~当年5月15日」とすると定めているというのである。また,証拠(乙1の2,乙10)及び弁論の全趣旨によれば,同規程は,34条において,賞与の算定基礎給は,「(基本給×役割手当)×支給月数×賞与支給ランク別係数」という計算式で計算するものとし,賞与支給ランク別係数は,資格等級と賞与支給対象期間中の職員の勤務状態等に対する人事考課に応じて定められることが認められる。 以上によれば,被告の職員が被告に対して夏季賞与を請求するためには,夏季賞与の支給対象期間を継続勤務し,かつ,同期間中の勤務状態等に対する人事考課により賞与支給ランク別係数が定められて賞与の算定基礎給の額が確定するこ の職員が被告に対して夏季賞与を請求するためには,夏季賞与の支給対象期間を継続勤務し,かつ,同期間中の勤務状態等に対する人事考課により賞与支給ランク別係数が定められて賞与の算定基礎給の額が確定することを要するものと解される。 これを本件についてみると,前記争いのない事実等(1)アによれば,原告らは,いずれも夏季賞与の支給対象期間満了前である平成12年3月15日又は同年4月15日,被告を退職したというのであり,継続勤務要件を満たさないから,原告らの労働契約に基づく夏季賞与の請求は,いずれも理由がない。 (2) この点,原告らは,本件制度は労働者において退職の時期を選ぶことができないものであり,この意味では,継続勤務要件は,本件制度によって退職する者が有する賞与に対する期待権を一方的に剥奪することになるから,原告らに対しては,その合理性を欠き,公序良俗に違反して無効であると主張するので,検討する。 賞与は,労働の対償としての性格を有するものであるが,他方,前記認定のとおり,賞与は生協事業の状況及び職員の勤務状態を考慮して支給するものとされ,賞与の算定基礎給の額を定めるためには賞与支給対象期間中の職員の勤務状態等に対する人事考課が不可欠であることからすると,賞与は,収益分配や功労報奨としての性格をも併せ持つものであり,個々の労働に応じて支給される通常の賃金とは異なり,賞与支給対象期間中の職員の勤務状態等を全体として評価したうえで支給されるものであるということができる。 このような賞与の性格に合致する継続勤務要件は一定の合理性を有するものというべきであり,賞与支給の基準を明確に定める必要性があることをも考慮すると,継続勤務要件を満たさない原告らとの関係で継続勤務要件が公序良俗に違反して無効で 継続勤務要件は一定の合理性を有するものというべきであり,賞与支給の基準を明確に定める必要性があることをも考慮すると,継続勤務要件を満たさない原告らとの関係で継続勤務要件が公序良俗に違反して無効であるとはいえない。 もっとも,定年退職した者等退職日を任意に選択することができない職員に対し,継続勤務要件を満たさないことを理由に労働の対償としての性格を有する賞与を支給しないのは公序良俗に違反するとの議論もあり得るところであるが,原告らは,自らの意思に基づいて本件制度の適用を申請し,被告を退職したものであり,本件制度の適用を申請せずに継続勤務要件を満たして夏季賞与の支給を受けることもできたのであるから,退職日を任意に選択することができなかったとはいえない。また,前記争いのない事実等(3)によれば,本件制度においては,原則として,退職日が夏季賞与の支給対象期間満了前である平成12年4月15日と定められていたというのであり,本件制度の適用を申請する職員は,継続勤務要件を満たして退職することはできなかったのであるが,これは,被告と被告の職員を代表すると推認されるコープこうべ労働組合との間で締結された本件協定により定められたものであるから,被告が本件制度による退職日を夏季賞与の支給対象期間満了前に定めることにより,原告らの賞与に対する期待権を一方的に剥奪したとみることはできない。 以上によれば,原告らの上記主張は,理由がない。 2 原告らと被告との間で,被告が原告らに対して夏季賞与を日割計算で支払う旨の黙示の合意が成立していたか否か(争点(2))について原告らは,平成12年2月7日から同年3月31日までの間に,原告らと被告との間で,夏季賞与の支払については,定年退職の場合と同様に,被告が原告らに対してこれを日 たか否か(争点(2))について原告らは,平成12年2月7日から同年3月31日までの間に,原告らと被告との間で,夏季賞与の支払については,定年退職の場合と同様に,被告が原告らに対してこれを日割計算で支払う旨の黙示の合意が成立していた旨主張するので,検討する。 (1) 「退職事由は定年扱いとします」との記載原告らは,被告が「希望退職優遇制度(案)の実施について」と題する書面(甲1の1,乙4)の「2.具体的な提案内容について」の「(4) 優遇内容」において,退職金の支給については「退職事由は定年扱いとします」と記載したこと,労使の交渉経過について組合員に報告をしている「きょうゆう」(甲2の1ないし4)や本件協定(乙2)においても同様の記載があることを上記合意の成立を基礎付ける事実として主張する。 しかしながら,前記争いのない事実等(3)によれば,上記書面(甲1の1,乙4)による提案に基づいて締結された本件協定は,本件制度の優遇内容のうち,退職金の支給については,「①年齢は満60歳とみなす」,「②勤続は満60歳とみなす」,「③退職事由は定年扱いとする(乗率2.0)」と定めているというのであり(上記書面(甲1の1,乙4)及び「きょうゆう」(甲2の4)にも同様の記載がある。),また,証拠(甲3,乙1の3)によれば,被告の職員の退職金の金額決定に当たっては,「(年齢定額+勤続定額)×等級乗率×退職事由別乗率」という算定式を用いるものとされていることが認められ,上記優遇内容の①ないし③がそれぞれ年齢定額,勤続定額,退職事由別乗率に対応することが明らかである。 そうすると,「退職事由は定年扱いとします」との記載は,まさしく退職金の支給に関するものであって,この記載から夏季賞与の支給についても ,退職事由別乗率に対応することが明らかである。 そうすると,「退職事由は定年扱いとします」との記載は,まさしく退職金の支給に関するものであって,この記載から夏季賞与の支給についても定年扱いをするとの趣旨を導き出すことはできない。 なお,本件協定上,夏季賞与の支給に関する記載は一切窺われないし,退職条件を夏季賞与の支給を含むすべての点について定年退職の場合と同様とするとの趣旨も窺われない。上記書面(甲1の1,乙4),希望退職優遇制度退職金試算表(甲1の2,乙4)及び「きょうゆう」(甲2の1ないし4)においても同様である。 したがって,「退職事由は定年扱いとします」との記載は,上記合意の成立を基礎付けるものとはいえない。 (2) 説明会及び個別面談における説明原告らは,被告が説明会や個別面談において,退職条件については定年退職と同様であると説明したことを上記合意の成立を基礎付ける事実として主張する。また,原告C本人は,説明会や個別面談において,今回の退職は生協都合の定年扱いと聞いた旨供述し,同旨の同原告作成の陳述書(甲24)がある。さらに,原告D本人は,説明会等において,すべての面において定年退職者扱いになるとの話があった旨供述する。 しかしながら,「希望退職優遇制度説明会」と題する書面(乙9)は,平成12年2月5日に開催された説明会において,E理事が本件制度の背景とその内容等を説明した際の反訳書であるが,上記書面によってE理事の発言内容を精査しても,上記原告らが指摘するような趣旨の発言があったとは窺われない。前記争いのない事実等(3)によれば,説明会は17回開催されたというのであるところ,証拠(乙10,証人L)及び弁論の全趣旨によれば,E理事は,毎回同 が指摘するような趣旨の発言があったとは窺われない。前記争いのない事実等(3)によれば,説明会は17回開催されたというのであるところ,証拠(乙10,証人L)及び弁論の全趣旨によれば,E理事は,毎回同様の説明をしたものと認められる。 また,証拠(乙10,証人L)及び弁論の全趣旨によれば,被告の人事・教育部人事のメンバーが個別面談を実施した際,対象者に対し,本件協定の内容を具体的に説明したが,本件協定に定められている事項以外の事項を説明したことはなかったことが認められる。本件協定上,退職条件を夏季賞与の支給を含むすべての点について定年退職の場合と同様とするとの趣旨が窺われないことは前記のとおりである。 さらに,上記原告らの各供述には,E理事らが上記原告らが指摘するような趣旨の発言をしたのか,それとも,上記原告らがE理事らの発言を聞いてその趣旨を上記原告らが指摘するように理解したにすぎないのかについて,あいまいな点もみられる。 これらの点に照らせば,上記原告らの上記各供述及び原告C作成の陳述書(甲24)はいずれも直ちに採用することができず,他に被告が説明会や個別面談において,退職条件については定年退職と同様であると説明したと認めるに足りる証拠はない。 なお,前記争いのない事実等(3)によれば,被告は,原告らに対し,本件制度における夏季賞与の支給の有無については,口頭でも書面でも説明しなかったというのであるところ,原告らは,被告が夏季賞与を支給しないと説明しなかったと主張して,そのことが原告らの夏季賞与の請求権を根拠付けるものであるかのごとくである。しかしながら,上記合意が成立している場合等,原告らが上記請求権を有している場合には,被告が夏季賞与を支給しないと説明してその同意を得ない らの夏季賞与の請求権を根拠付けるものであるかのごとくである。しかしながら,上記合意が成立している場合等,原告らが上記請求権を有している場合には,被告が夏季賞与を支給しないと説明してその同意を得ない限り,夏季賞与を支給すべきであるという帰結になるが,本件においては,上記合意の成否,原告らの上記請求権の有無が問題なのであって,被告が夏季賞与を支給しないと説明しなかったことは,上記合意の成否とは無関係であり,原告らの上記請求権を根拠付けるものとはいえない。 (3) 利子補給金の支給原告らは,被告が生協内住宅預金の利子補給についても原告Dの要求により「定年退職と同様」で再計算し,「自己都合退職」として普通預金の利息となっていたこと(利子補給金を支給しなかったこと)を詫びたことを上記合意の成立を裏付ける事実として主張する。 確かに,前記争いのない事実等(5)によれば,被告は,本件制度の適用を申請して被告を退職した者らのうち住宅預金の預入れをしていた者らに対し,住宅預金を払い戻す際,利子補給金を補てん支給しなかった(上記の者らは,自己都合であるか生協都合であるかはともかく,任意退職したものであるから,組合内預金規程(甲17)によれば,上記の者らに対する住宅預金の払戻しは目的外払戻しに当たり,利子補給金は本来補てん支給されない。)ところ,原告Dが被告に対し,利子補給金の補てん支給を申し入れたため,被告は,平成12年6月1日付けで,上記の者らに対し,「生協内住宅預金の利子補給について」と題する書面(同原告宛は甲18)を送付し,同月12日,利子補給金を補てん支給したものであり,上記書面には,「標記の件,すでに希望退職にともない住宅預金の解約手続きが完了されていますが,事務処理上の問題で今回の利息計算が「自己都合退 送付し,同月12日,利子補給金を補てん支給したものであり,上記書面には,「標記の件,すでに希望退職にともない住宅預金の解約手続きが完了されていますが,事務処理上の問題で今回の利息計算が「自己都合退職」となっていることが判明しました。再度,通常の「定年退職と同様」で再計算し,下記のとおり利子補給分につきまして振込をさせていただきますので,ご確認願います。皆様には心からお詫びをするとともに,諸事情につきましてご理解頂きますよう,よろしくお願いします。」などと記載されているというのである。すなわち,上記書面の記載によれば,被告は,当初から,上記の者らに対する住宅預金の払戻しについては,定年退職の場合と同様に目的内払戻し扱いとし(組合内預金規程14条3項),利子補給金を補てん支給する意思であったのに,事務処理を誤ったため,利子補給金を補てん支給しなかったとも考えられる。 しかしながら,仮に,被告が住宅預金の払戻しについて定年退職の場合と同様とする意思であったとしても,そのことから直ちに夏季賞与の支給についても定年退職の場合と同様とする意思であったということはできない。上記書面(甲18)において,夏季賞与の支給に関する記載は一切窺われないし,退職条件を夏季賞与の支給を含むすべての点について定年退職の場合と同様とするとの趣旨も窺われない。 したがって,被告が利子補給金の補てん支給について「定年退職と同様」で再計算し,利子補給金を支給しなかったことを詫びたことは,上記合意の成立を裏付けるものとはいえない。 (4) 厚生年金基金及び雇用保険における取扱い原告らは,被告が雇用保険及び厚生年金基金についても退職事由を生協都合として,希望退職者に有利になるように配慮したことを上記合意の成立を基礎付ける 年金基金及び雇用保険における取扱い原告らは,被告が雇用保険及び厚生年金基金についても退職事由を生協都合として,希望退職者に有利になるように配慮したことを上記合意の成立を基礎付ける事実として主張する。 前記争いのない事実等(4)によれば,原告C宛の厚生年金基金選択一時金裁定通知書(甲5)には,「加算終了又は喪失事由」欄に「会社都合」と記載され,同原告宛の雇用保険被保険者離職票-2(甲6)には,「(離職理由)」欄の「ニ,事業主の勧奨による退職」の部分に丸印が記載されているというのである。 証拠(乙2)によれば,これは,本件協定において「厚生年金基金の年金給付や雇用保険の給付の対応として,退職理由を「生協都合」として取り扱う。」と定められたことに基づく措置であると認められる。 このように,被告は,原告らが主張するとおり,厚生年金基金の年金給付及び雇用保険の給付について退職事由を生協都合とし,本件制度の適用を申請して被告を退職した者に有利な取扱いをしたものであるが,そうであるからといって,被告が夏季賞与の支給についても上記の者に有利な取扱いをしなければならないわけではない。前記認定のとおり,厚生年金基金の年金給付及び雇用保険の給付における有利な取扱いは本件協定に基づく措置であるが,本件協定上,夏季賞与の支給に関する記載は一切窺われないし,退職条件を夏季賞与の支給を含むすべての点について定年退職の場合と同様とするとの趣旨も窺われないことは前記のとおりである。上記各証拠(甲5,6)においても,同原告を定年退職の場合と同様に扱うとの趣旨は窺われない。 また,退職事由が生協都合であるからといって,夏季賞与の支給を含むすべての点について定年扱いをしなければならないわけでもない。原告らは,退職事 場合と同様に扱うとの趣旨は窺われない。 また,退職事由が生協都合であるからといって,夏季賞与の支給を含むすべての点について定年扱いをしなければならないわけでもない。原告らは,退職事由が生協都合であれば,当然に定年扱いをすべきであるかのようにいうのであるが,そもそも生協都合と定年扱いは別個の概念であって,直接結びつくものではない。E理事らが説明会や個別面談において「生協都合の定年扱い」との発言をしたと認めることができないことは前記のとおりである。 したがって,被告が厚生年金基金の年金給付及び雇用保険の給付について退職事由を生協都合とし,本件制度の適用を申請して被告を退職した者に有利な取扱いをしたことは,上記合意の成立を基礎付けるものとはいえない。 (5) 退職時の確認書(甲26の2)原告らは,上記合意の成立を裏付ける証拠として,原告D作成の退職時の確認書(甲26の2)を提出する。 確かに,前記争いのない事実等(6)によれば,同原告作成の退職時の確認書(甲26の2)の5項には,退職後の給与・賞与の振込先について,「原則として,退職後3ヶ月は解約しないでください。」と記載されているというのであり,この記載のみをみれば,被告は,同原告に対し,退職後夏季賞与を支給する意思であったと読めなくもない。 しかしながら,退職時の確認書の記入例(甲26の1)の退職年月日欄に「H9.5.15」と記載されていることからも明らかなように,退職時の確認書の用紙は,本件制度のために作成されたものではなく,従前から用いられていた定型書式であり,被告が退職者に対して賞与を支給するか否かにかかわらず用いられるものであると推認されるから,同原告作成の退職時の確認書(甲26の2)に退職後の たものではなく,従前から用いられていた定型書式であり,被告が退職者に対して賞与を支給するか否かにかかわらず用いられるものであると推認されるから,同原告作成の退職時の確認書(甲26の2)に退職後の給与・賞与の振込先の口座を解約しないように指示する旨の記載があるからといって,被告が同原告に対して夏季賞与を支給する意思であったとはいえない。 また,上記記入例(甲26の1)は,本件制度の適用を申請した者らにそれぞれ配布されたものであると窺われるところ,その上部には,上記の者らに向けて「記入例に従い,記入して全員提出してください。」「*退職月以降3か月は,給与の振り込み口座を解約しないで下さい。」と記載されているが,ここにおいては賞与の振込みに言及されていないのであって,このことも,被告が原告らに対して夏季賞与を支給する意思であったとはいえないとの判断を裏付けるものである。 以上によれば,同原告作成の退職時の確認書(甲26の2)は,上記合意の成立を裏付けるものとはいえない。 (6) 結論したがって,被告が夏季賞与の支給を含むすべての点について原告らを定年退職の場合と同様に扱う意思であったと認めることはできないから,被告が賞与支給対象期間中に定年退職した者に対しても,同期間の2分の1以上継続勤務していれば,賞与を日割計算で支払うという取扱いが労使慣行として成立しているか否かについて判断するまでもなく,上記合意が成立していたと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 第4 結語よって,原告らの本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないから,これらを棄却することとし,訴訟費用の負担について民訴法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 て,原告らの本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないから,これらを棄却することとし,訴訟費用の負担について民訴法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第六民事部裁判長裁判官松村雅司裁判官水野有子裁判官増田純平

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