平成29年9月5日判決言渡平成28年(行ウ)第421号社会保険等の支払い請求事件 主文 1 処分行政庁が平成27年10月16日付けで原告に対してしたP1の厚生年金保険原簿を訂正しない旨の処分のうち,平成20年7月1日から平成23年8月21日までの期間について訂正しない部分を取り消す。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の,その余を被告の各負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 処分行政庁が,平成27年10月16日付けで原告に対してしたP1の厚生年金保険原簿を訂正しない旨の処分を取り消す(以下「本件処分取消しの訴え」という。)。 2 裁決行政庁が平成28年4月25日付けで原告に対してした原告の審査請求を棄却する旨の裁決を取り消す(以下「本件裁決取消しの訴え」という。)。 第2 事案の概要 1 本件は,①原告が,厚生年金保険法(以下「厚年法」という。)28条の2(平成24年法律第63号による改正前のもの。以下同じ。)第1項に基づいて原告の夫であるP1の厚生年金保険原簿の訂正の請求をしたが,処分行政庁から平成27年10月16日付けで訂正しない旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けたことから,被告に対し,本件処分の取消しを求める(本件処分取消しの訴え)とともに,②原告が,本件処分を不服として審査請求をしたが,裁決行政庁から平成28年4月25日付けでその審査請求を棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)を受けた ことから,被告に対し,本件裁決の取消し(本件裁決取消しの訴え)を求める事案である。 2 関係法令等の定め別紙2のとおりである(以下,法令等の略語は,同別紙の略語に従う。)。 3 前提事実(当事者間に争 告に対し,本件裁決の取消し(本件裁決取消しの訴え)を求める事案である。 2 関係法令等の定め別紙2のとおりである(以下,法令等の略語は,同別紙の略語に従う。)。 3 前提事実(当事者間に争いがないか,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)(1) P1の厚生年金保険原簿の訂正の請求原告は,原告の夫であるP1(昭和23年生まれ,平成23年▲月▲日死亡。)が,平成19年11月11日から平成23年8月までの期間(以下「原告請求期間」という。)に○○市を所在地とし,警備業を営む個人事業主である「P2」(以下「本件事業所」という。)に勤務し,給料が支給されていたにもかかわらず,それが年金記録に反映されていないとして,厚生労働大臣に対し,平成27年4月2日付け(同月8日受付)でP1の厚生年金保険原簿の訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)をした。(乙1)(2) 地方年金記録訂正審議会への諮問厚生労働大臣から権限の委任を受けた関東信越厚生局長は,平成27年9月29日,本件訂正請求について,関東信越地方年金記録訂正審議会に諮問した。(乙2)(3) 地方年金記録訂正審議会の答申関東信越地方年金記録訂正審議会は,本件訂正請求について,平成27年10月7日,関東信越厚生局長に対し,原告請求期間についてP1の本件事業所における厚生年金保険被保険者資格の取得年月日及び喪失年月日の訂正を認めることはできないとする答申をした。(乙3)(4) 本件処分関東信越厚生局長は,上記(3)の答申を受けて,平成27年10月16 日,原告に対し,厚年法28条の4第2項に基づき,P1の厚生年金保険原簿の訂正をしない旨の決定(本件処分)をした。(乙4)(5) 本件裁決原告は,平成27年10月 27年10月16 日,原告に対し,厚年法28条の4第2項に基づき,P1の厚生年金保険原簿の訂正をしない旨の決定(本件処分)をした。(乙4)(5) 本件裁決原告は,平成27年10月25日付けで,厚生労働大臣に対し,本件処分に対する審査請求をしたが,厚生労働大臣は,平成28年4月25日,同審査請求を棄却する旨の裁決(本件裁決)をした。(甲1,2,乙5,6)(6) 本訴提起原告は,平成28年9月14日,本件訴えを提起した。(顕著な事実)(7) 別件訴訟なお,原告は,本訴に先立ち,P1の死亡が通勤又は業務上の事由に起因するとして,労働者災害補償保険法に基づく遺族給付等を請求し,不支給処分を受けたことから,別途,当該処分の取消し等を求める訴訟(東京地方裁判所平成24年(行ウ)第666号労働保険不支給処分取消等請求事件)を提起したが,請求棄却等の判決を受けた。(弁論の全趣旨)第3 争点 1 本件処分取消しの訴えの関係本件処分に取消原因となる瑕疵があるか否か(争点1)であり,具体的には,①原告請求期間について本件事業所におけるP1の厚生年金保険被保険者資格(厚年法9条)が認められるか否か,②当該被保険者資格が認められる場合においてP1の厚生年金保険原簿の訂正をすべきか否かである。 2 本件裁決取消しの訴えの関係本件裁決に固有の瑕疵があるか否か(争点2)第4 争点についての当事者の主張 1 本件処分に取消原因となる瑕疵があるか否か(争点1)(1) 原告の主張ア P1が原告請求期間において厚生年金保険の被保険者であったことP1は,原告請求期間(平成19年11月11日から平成23年8月まで)に本件事業所において警備員として勤務していた。このことは,P1の「月給支払明細書」と題 て厚生年金保険の被保険者であったことP1は,原告請求期間(平成19年11月11日から平成23年8月まで)に本件事業所において警備員として勤務していた。このことは,P1の「月給支払明細書」と題する書面(乙13,以下「本件各明細書」という。)において障害保険の控除がされていることからも,間違いがない。 したがって,P1は,原告請求期間において厚生年金保険の被保険者であったから,P1の年金記録について,本件訂正請求に基づき,原告請求期間に厚生年金保険の被保険者であった旨の訂正がされるべきである。 よって,本件処分は違法であるから,取り消されるべきである。 イ原告が本件訴訟を提起した経緯は,次のとおりである。 P1は,平成23年▲月▲日,通勤中に頭を殴られる暴行を受け,搬送先のP3病院での精密検査により脳腫瘍,肺がん等があると診断され,いきなり余命3か月か半年と宣告された。その後,P1は,病状が急激に悪化し,同年▲月▲日,東京都内の入院先の病院において死亡した。P1は,本件事業所で酷使され続け,通勤中の暴行事件をきっかけとして,労災により死亡したものであり,原告は,□□労働基準監督署長に対し,P1の労災の申請をしたが,その申請は認められず,裁判所に対し,その不支給処分の取消しを求める訴えを提起したが,これも認められなかった。 原告は,以上のようなこれまでの経緯を踏まえて,本件訴訟を提起し,本件処分及び本件裁決の各取消しを求めているものである。 (2) 被告の主張 ア訂正請求についての判断基準等訂正請求に係る厚生年金保険原簿の訂正に関する判断の基準については,厚生年金保険記録訂正請求認定基準・要領(平成27年2月27日厚生労働大臣決定)(本件認定基準・要領。別紙2の第7の部分)が定められているところ 厚生年金保険原簿の訂正に関する判断の基準については,厚生年金保険記録訂正請求認定基準・要領(平成27年2月27日厚生労働大臣決定)(本件認定基準・要領。別紙2の第7の部分)が定められているところ,これによれば,被保険者期間の相違又は被保険者期間の記録がない事案については,まず,共通する審議として,請求期間に被保険者資格の要件があるか否か(被保険者資格要件。厚年法9条参照)を審議し,次に,当該要件を満たした場合にはじめて,その余の訂正の要件についての審議(厚年法75条ただし書該当の審議,厚生年金特例法1条1項該当の審議又は厚年法75条本文該当の審議)を行うことになる。 イ被保険者資格要件の審議(ア) 被保険者資格要件を審議するに際し,基本的に次の要件を判断する。 a ①事業所への勤務要件請求期間において,勤務先の事業所に使用されており,勤務実態(勤務時間,勤務日数など,常用的雇用関係が認められるような勤務形態であること)があったと認められることが必要となる。 b ②適用事業所となる要件事業所を単位として厚生年金保険が適用される(一部の任意加入を除く。)ため,厚生年金記録の訂正を認める場合,請求期間当時,勤務先事業所が厚生年金保険の適用事業所(厚年法6条)であったか,又は適用事業所となる要件を満たしていたことが必要となる。 c ③被保険者となる要件厚生年金記録の訂正を認めるためには,請求期間当時,被保険 者であったか,又は被保険者となる要件を満たしていることが必要となる。 (イ) P1は原告請求期間に上記(ア)の①及び③の要件を満たさないことa 厚年法9条の「事業所に使用される…者」の意義厚年法9条の「事業所に使用される…者」とは,労働者が適用事業所に労務を提供し,これに対し事業主が一定 (ア)の①及び③の要件を満たさないことa 厚年法9条の「事業所に使用される…者」の意義厚年法9条の「事業所に使用される…者」とは,労働者が適用事業所に労務を提供し,これに対し事業主が一定の報酬を支払うという使用関係がある者である。使用される者であるためには,事業主との間に労働契約が締結されていることは必ずしも必要とされず,形式的な法形式よりも,労務の提供の態様,報酬の支払,人事管理等の実質的な内容から,使用関係があるといえるか否かが判断される。 ところで,ここでいう「使用される者」は,必ずしも使用従属関係にある者に限られないが,被用者保険において使用関係がある者に被保険者資格を認めているのは,事業主が各種届出,保険料の賃金からの源泉控除,保険料の納付等を行うからである。それゆえ,以上で述べた事業主との使用関係が想定され得ないような形態での労務の提供,例えば,請負関係の下で労務の提供が行われる場合などにおいては,同条にいう「使用される者」には該当しないものと解される。 bP1は本件事業所に「使用される者」であったとはいえないこと(a) P1の原告請求期間における就労形態,職務内容,本件事業所との関係が明らかでないことP1は,原告請求期間(平成19年11月11日から平成23年8月まで)に本件事業所に警備員として勤務していたこと はうかがえるが,本件事業所は,平成25年5月10日に厚生年金保険の適用事業所ではなくなっており,本件事業所の原告請求期間当時の事業主の所在が確認できないことから,P1の原告請求期間における本件事業所との関係や勤務の実態等について照会することができず,他にP1と本件事業所との関係を直接明らかにする証拠はない。 この点,本件事業所で原告請求期間を含む期間に勤務していたB氏 における本件事業所との関係や勤務の実態等について照会することができず,他にP1と本件事業所との関係を直接明らかにする証拠はない。 この点,本件事業所で原告請求期間を含む期間に勤務していたB氏は,P1と一緒に仕事をしていた旨を回答書(乙15の1)に記載しているが,その期間にはP1が死亡した平成23年10月17日以降の日も含まれており,B氏が一緒に仕事をしていた人物とP1が同一人物であることには疑義がある上,P4(本件事業所の後継事業所)の事業主も,原告請求期間当時,P1を何回か見たことがある程度のことを述べるにとどまっている(乙12の3)。また,原告は,本件訂正請求の請求書において,P1の仕事内容について「建築現場の警備」をしていたと記載しているが(乙1),原告の申告によれば,本件事業所の所在地は〇〇市内であったというのであり,他方,原告の居住地は東京都内であったのであるから,原告が原告請求期間におけるP1の仕事内容を正確かつ具体的に把握していたとはいい難い。 つまり,P1については,P1の原告請求期間当時の就労形態,職務内容,本件事業所との関係はそもそも明らかでないのである。 (b) 本件各明細書(乙13)の記載内容に照らしても,P1が本件事業所に「使用される者」であったということはできないこと 本件各明細書には,次のとおり種々の疑問点がある。 ① 本件各明細書の表題は「月給支払明細書」であり,その右上部に「週給者」又は「月給者」と記載があることからすると,本件事業所とP1との間にあたかも雇用関係があり,P1にその労務の対価として給料が支払われていたかのようにも見受けられる。 しかし,本件各明細書の「出勤」欄,「残業」欄の右横には数字等が記載されているが,例えば,「出勤」日として現にカウントされ にその労務の対価として給料が支払われていたかのようにも見受けられる。 しかし,本件各明細書の「出勤」欄,「残業」欄の右横には数字等が記載されているが,例えば,「出勤」日として現にカウントされるとする記載がありながら,本来の基本給ともいうべき「日給」とされる項目に係る支給が全くなく,単に「皆勤」とされる項目で月額3000円の支給がされた形になっているものや,「残業」とされる項目においてのみ金員の支給がされた形になっているものが随所にある(乙13の1ないし6枚目)。これらの記載ぶりは,P1が,本件各明細書に記載された「週給者」又は「月給者」という文言のとおり本件事業所に労務を提供し,その対価として給料を得ていたと評価するには,大いに疑問が残る。 ② この点を措くとしても,例えば,「出勤」日数の合計として「21」と記載されている平成20年6月,同年7月及び同年9月の「差し引支給金額」欄の右端の数字を見ると,平成20年6月は「2,625」,同年7月は「124,680」,同年9月は「216,960」と記載されており,最低金額と最高金額の差は21万円以上になる。また,「出勤」日数の合計として「26」と記載されている平成20年2月,同年3月,同年10月,同年12月,平成21年1月及び平成23年6月の「差し引支給金額」欄の右端の数字を見ると, 平成20年2月は「3,845」,同年3月は「10,525」,同年10月は「253,928」,同年12月は「258,435」,平成21年1月は「249,668」,平成23年6月は「184,387」と記載されており,最低金額と最高金額の差は25万円以上になる。そして,一般的に「週給者」又は「月給者」に対する労働の対価として支払われる給料は,出勤日数が同じであるならば,多少の差はあれど,2 と記載されており,最低金額と最高金額の差は25万円以上になる。そして,一般的に「週給者」又は「月給者」に対する労働の対価として支払われる給料は,出勤日数が同じであるならば,多少の差はあれど,25万円以上の差が生じることは想定し難く,本件においてそのような差が生じる合理的理由は明らかではない。 この点,原告は,P1は,本件事業所において1日10時間,20日以上勤務していた「正社員」であったと申告しているようであるが,そうでありながら,給料の額に上記のような著しい変動があるということは,なおさら不可解である。 さらに,本件各明細書に労働時間が明らかとなる記載はないところ,「出勤」日数の合計として記載された数字においても,例えば,平成22年4月に「30.5」と記載され,同月の1か月の日数(30日)を超えていることも踏まえれば,本件各明細書の「出勤」日数の合計の数字が労働日数であるともいい難い。 以上を要するに,本件各明細書におけるこれらの記載ぶりの不可解さからすると,P1に支払われたとされる金員の性質を,本件各明細書の記載のとおり労働の対価である給料と解することは困難というべきであり,本件各明細書を根拠にP1が本件事業所に「使用される者」であったということは到底困難である。 (c) 本件事業所で勤務していた他の者との比較においても,P1 が本件事業所に「使用される者」であったということはできないことまず,平成10年1月から平成24年6月まで本件事業所に警備員として勤務したB氏は,給与明細書の控除欄に「社会保険料」,「住民税」及び「所得税」という項目があり,それぞれ給料から控除されていた旨述べているところ,オンライン記録上も,B氏は,本件事業所が適用事業所(適用事業所の整理番号は「▲-○」)となった平成 」,「住民税」及び「所得税」という項目があり,それぞれ給料から控除されていた旨述べているところ,オンライン記録上も,B氏は,本件事業所が適用事業所(適用事業所の整理番号は「▲-○」)となった平成20年1月18日に本件事業所において厚生年金保険被保険者となっている(乙15の1ないし3)。また,平成23年7月から平成24年6月まで本件事業所に警備員として勤務したA氏も,給与明細書の控除欄に「社会保険料」及び「源泉徴収税」という項目があり,それぞれ金額が記載されていた旨述べているところ,A氏も,オンライン記録上,平成23年10月1日,本件事業所において厚生年金保険被保険者となっている(乙14の1ないし3)。以上のことからすると,A氏及びB氏がそれぞれ本件事業所と使用関係にあったことは明らかであると思料される。 他方,P1は,オンライン記録(乙17)上,昭和46年から平成19年までに「新規取得」や「再取得」と記載された年月日から「喪失」と記載された年月日の前日までの各間は,厚生年金保険被保険者となっていた一方,平成19年11月11日以降は,オンライン記録上,厚生年金保険被保険者となったことを確認できず,本件事業所の整理番号である「▲-○」の記載もない。また,本件各明細書には,「控除金額」欄に「社会保険料」の項目すらなく,「源泉徴収税」の項目はあるものの金額欄が空欄となっており,社会保険料,住民税,所得税が 給与から控除されていたというA氏やB氏とは,取扱いが明らかに異なっていた。 さらに,B氏は,本件事業所から受領していた給与明細書の大きさについて,週刊誌よりも小さかった旨述べており(乙15の2),P1が受領していたとされる本件各明細書の体裁自体も,B氏らのものと異なっていたものである。 以上を要するに,本件事 与明細書の大きさについて,週刊誌よりも小さかった旨述べており(乙15の2),P1が受領していたとされる本件各明細書の体裁自体も,B氏らのものと異なっていたものである。 以上を要するに,本件事業所は,原告請求期間(平成19年11月11日から平成23年8月まで)を含む期間において本件事業所で勤務し,本件事業所と使用関係があったと思料されるA氏やB氏については,給与から所得税や社会保険料等を源泉徴収していた一方で,P1については,唯一の手がかりとされる本件各明細書からも上記源泉徴収の事実は認められない。 確かに,A氏やB氏の供述を前提としても,本件事業所において使用関係のあった者についてすべからく社会保険料を納入させる対応がとられていたかどうかまでは明らかではない。しかし,本件事業所は,A氏及びB氏については,厚生年金保険被保険者として届出をしたにもかかわらず,平成19年11月11日の前日までは厚生年金保険被保険者であったP1については,その届出をせず,所得税等の源泉徴収すらしなかったということは不可解であり,このような事実からしても,P1は,本件事業所に「使用される者」であったとは認められない。 (ウ) 被保険者資格要件についての小括以上からすると,本件では,被保険者資格要件のうち,②適用事業所になる要件については,本件事業所が平成20年1月18日から平成25年5月10日の前日までは適用事業所となる要件を満たしていたと考えられるとしても,P1は,本件事業所と使用関係に はなく,厚年法9条の「使用される者」とはいえないから,P1は,原告請求期間(平成19年11月11日から平成23年8月まで)について,①事業所への勤務要件及び③被保険者となる要件をいずれも満たさず,原告請求期間において被保険者資格要件を満たさない ,P1は,原告請求期間(平成19年11月11日から平成23年8月まで)について,①事業所への勤務要件及び③被保険者となる要件をいずれも満たさず,原告請求期間において被保険者資格要件を満たさないというべきである。 ウその余の訂正の要件の審議P1が被保険者資格要件を満たさないことは,上記イで述べたとおりであるところ,仮にP1が被保険者資格要件を満たすとしても,以下のとおり,その余の訂正の要件をいずれも満たさないというべきである。 (ア) 厚年法75条ただし書該当及び厚生年金特例法1条1項該当の各審議について本件事業所の事業主により,原告請求期間に係る厚生年金保険の資格・喪失日等の届出がされたこと,また,保険料を納付していたことを認めるに足りる証拠はなく,本件各明細書には厚生年金保険料の控除がされていないことから,厚年法75条ただし書及び厚生年金特例法1条1項のいずれにも該当しないことは明らかである。 (イ) 厚年法75条本文該当の審議について本件各明細書は,存在はするが,原告請求期間のうち平成20年1月より前のものはなく,平成22年6月及び7月のものも存在しない。また,本件各明細書には,随所に不可解な記載がある上,本件各明細書に記載された「差し引支給金額」欄の額は,「出勤」日数の合計が同じであるにもかかわらず,最大で約25万円の差がある月もあるなど合理的に説明できないものである。さらに,本件において,届出により記録されるはずの取得日・喪失日等が明らかなことを示す人事記録や在籍証明書等がなく,事業主から被保険者に 支払われた請求期間における標準報酬月額の算定の基礎となる期間に係る報酬額も確認することができない。 したがって,厚年法75条本文該当の要件である,本来届出により記録されるはずの取得日・喪 支払われた請求期間における標準報酬月額の算定の基礎となる期間に係る報酬額も確認することができない。 したがって,厚年法75条本文該当の要件である,本来届出により記録されるはずの取得日・喪失日等が明らかであると評価することは,困難であるから,厚年法75条本文にも該当しないというべきである。 エ被告の主張のまとめ以上によれば,P1が原告請求期間において厚生年金保険被保険者であったと認めることはできず,その余の訂正の要件も満たさない以上,本件訂正請求に理由があるとは認められないから,本件処分は適法である。 2 本件裁決に固有の瑕疵があるか否か(争点2)(1) 原告の主張本件裁決は違法であるから,取り消されるべきである。 (2) 被告の主張ア行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)10条2項は,「処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には,裁決の取消しの訴えにおいては,処分の違法を理由として取消しを求めることができない。」と規定しているところ,これは,行政処分とこれを維持した裁決がある場合に,行政処分と裁決のいずれに対しても取消訴訟を提起することは可能であるが,当初の原処分の違法事由(瑕疵)は,処分取消しの訴えにおいてのみ主張することが許され,裁決の取消しの訴えにおいてこれを主張することはできないとする原処分主義を定めるものである。したがって,行訴法10条2項が採用する原処分主義に基づいて裁決取消しを求める訴えにおいては,原処分の違法は主張し得ず, 裁決固有の瑕疵を主張し得るにすぎない。 そして,裁決固有の瑕疵とは,裁決における違法事由(瑕疵)のうち,原処分が適法であるとした実態的判断に関するものを除いたものをいい,具体的には 裁決固有の瑕疵を主張し得るにすぎない。 そして,裁決固有の瑕疵とは,裁決における違法事由(瑕疵)のうち,原処分が適法であるとした実態的判断に関するものを除いたものをいい,具体的には,裁決の手続に関する瑕疵として,①裁決主体の瑕疵,②審理手続の瑕疵,③裁決形式の瑕疵等を主張しなければならない。 イ本件裁決に係る裁決書(乙6)の記載等からも明らかなように,本件裁決の裁決主体,審理形式及び裁決形式等の形式面に何ら瑕疵は存在しないところ,そもそも原告は,本件裁決に固有の瑕疵を何ら主張していない。 したがって,本件裁決の取消しを求める原告の主張は失当である。 第5 当裁判所の判断 1 本件処分に取消原因となる瑕疵があるか否か(争点1)(1) 年金記録訂正制度についてア年金記録確認第三者委員会の設置年金の保険料の納付に関する記録が社会保険庁(当時)に正確に記録されていない事案が発覚したことから,平成19年6月22日,総務省に臨時の機関として年金記録確認第三者委員会が設置された。同委員会は,年金記録に係る苦情申立てに対し,年金記録の訂正の要否等を判断し,これを踏まえ,総務大臣は,厚生労働大臣に対し,年金記録訂正のあっせん又は訂正は必要でないとする通知を行い,厚生労働大臣は,これらを尊重して年金記録の訂正等を行うものとされた。 イ年金記録の訂正手続の創設(ア) 年金記録確認第三者委員会によるあっせん等が実施されてきたところ,申立受付件数が減少傾向となった上,厚生年金保険における比較的最近の期間に係る標準報酬月額等を対象とした事案が主体 となる傾向が見られたこと等から,年金行政の主管省である厚生労働省において恒常的な年金記録の訂正手続が整備され,平成27年3月1日,新たに年金記録の訂正手続が創設 を対象とした事案が主体 となる傾向が見られたこと等から,年金行政の主管省である厚生労働省において恒常的な年金記録の訂正手続が整備され,平成27年3月1日,新たに年金記録の訂正手続が創設された。 (イ) 年金記録の訂正手続の内容は,要旨,被保険者又は被保険者であった者は,厚生労働大臣の管理する国民年金原簿ないし厚生年金保険原簿(以下,これらを併せて「原簿」という。)に記録された自己の特定国民年金原簿記録ないし特定厚生年金保険原簿記録が事実ではないか,又は記録されていないと思料するときは,厚生労働省令の定めるところにより,厚生労働大臣に対し,原簿の訂正請求をすることができ,厚生労働大臣は,訂正請求に対し,あらかじめ社会保障審議会に諮問した上,原簿を訂正する旨又は訂正をしない旨の決定をするというものである(国年法14条の2ないし4,厚年法28条の2ないし4)。 (ウ) 厚生労働大臣は,上記決定に係る権限を地方厚生局長ないし地方厚生支局長に委任することができ,この場合,社会保障審議会の業務は,地方年金記録訂正審議会が担うこととなる(国年法109条の9第1項ないし3項,国年令11条の12の2,厚年法100条の9第1項ないし3項,厚年令4条の4の2,厚生労働省組織令153条の2)。 ウ年金記録の訂正に関する方針の制定訂正手続の具体的手続の定めは,厚生労働省令に委任されるとともに,厚生労働大臣は,訂正請求に係る原簿の訂正に関する方針を定めなければならないこととされる(国年法14条の2第1項,14条の3第1項,厚年法28条の2第1項,28条の3第1項)。これを受けて,厚生労働大臣は,国民年金原簿及び厚生年金保険原簿の訂正に関する方針(平成27年厚生労働省告示第42号,以下「基本方針」 という。乙7)を定め,訂正 項,28条の3第1項)。これを受けて,厚生労働大臣は,国民年金原簿及び厚生年金保険原簿の訂正に関する方針(平成27年厚生労働省告示第42号,以下「基本方針」 という。乙7)を定め,訂正請求の内容を十分にくみ取り国民の信頼に応えるよう努めるなどの基本的考え方を定めるとともに,判断基準を,関連資料及び周辺事情等を踏まえて総合的に判断し,訂正請求の内容が社会通念に照らして明らかに不合理ではなく,一応確からしいものであることとした。 エ原簿の訂正に関する事務取扱要領の策定基本方針を受け,厚生労働大臣は,原簿の訂正に関する事務取扱要領(乙8)を策定し,訂正請求の手続につき,「年金記録訂正請求書兼年金記録に係る確認調査申立書」により日本年金機構が受け付け,日本年金機構から同申立書の送付を受けた地方厚生局長又は地方厚生支局長は,関連資料及び周辺事情等を基に請求内容に応じた審査をし,地方年金記録訂正審議会の答申を経て,訂正請求に対する処分をすべきこととした。 オ本件認定基準・要領の策定(ア) 厚生労働大臣は,基本方針に基づき,本件認定基準・要領(乙9)を策定し,本件のように,厚生年金保険の被保険者期間の相違又は被保険者期間の記録がない事案においては,次のとおり審議するものとした。 (イ) 共通審議事項の審議(別紙2の第7の1)まず,共通審議事項(年金記録の訂正に共通して審議すべき事項)として,請求期間に被保険者資格要件があるかどうかを審議することとし,具体的には,①請求期間において,勤務先事業所に使用されており,勤務実態があったと認められること,②請求期間当時,勤務先事業所が厚生年金保険の適用事業所であり,又は適用事業所となる要件を満たしていたこと,③請求期間当時,被保険者であったか,又は被保険者となる要件を満 があったと認められること,②請求期間当時,勤務先事業所が厚生年金保険の適用事業所であり,又は適用事業所となる要件を満たしていたこと,③請求期間当時,被保険者であったか,又は被保険者となる要件を満たしていたことが訂正請求を認 める要件となるとしている。 (ウ) 厚年法75条ただし書該当の審議(別紙2の第7の2)厚年法75条本文は,保険料を徴収できない期間については,保険給付を制限すると規定している。このため,保険料を徴収する権利が時効により消滅した後,事業主により取得日・喪失日等の届出が行われた場合は,当該届出に基づく期間は保険給付の対象外となる。これに対し,厚年法75条ただし書により,被保険者の資格の届出,確認の請求又は訂正の請求があったにもかかわらず,保険料を徴収する権利が時効により消滅した場合には,通常どおり保険給付が行われる。 以上を踏まえ,厚年法に基づく訂正の判断では,厚年法75条ただし書の規定に関し,請求期間当時(保険料徴収権の時効消滅前に),被保険者の資格取得日等に係る届出を行っていた,又は事業主が厚生年金保険料を納付していた(保険料を納付できるということは,事業主により届出が行われている。)か否かを判断し,届出又は保険料納付を行っていたと判断できる場合には,保険給付の対象期間として訂正を認める。 (エ) 厚生年金特例法1条1項該当の審議(別紙2の第7の3)厚生年金特例法1条1項は,社会保障審議会の審議の結果として,事業主が被保険者から保険料を源泉控除しながら当該被保険者に係る保険料を納付する義務を履行したことが明らかでない場合(被保険者の資格の届出や届出に基づく保険料納付を行っていた場合を除く。)に該当するとの意見があった場合には,厚生労働大臣は,被保険者の資格の確認又は標準報酬の改定等 履行したことが明らかでない場合(被保険者の資格の届出や届出に基づく保険料納付を行っていた場合を除く。)に該当するとの意見があった場合には,厚生労働大臣は,被保険者の資格の確認又は標準報酬の改定等を行うこととなる。このため,「事業主により,請求期間に対応(一部の期間に対応する場合を含む。)した保険料控除が行われていたと判断できる場合」と 認められるか否かを判断する。(同法1条1項ただし書に関する説明は省略)(オ) 厚年法75条本文該当の審議(別紙2の第7の4)上記(ウ)及び(エ)で訂正を認められない場合(例えば,保険料の徴収権が時効により消滅した後に届出が行われた場合や被保険者が事業主により保険料を源泉控除されていない場合等)であっても,請求期間当時,厚生年金保険の被保険者資格要件を満たしていることを前提とし,本来届出により記録されるはずの取得日・喪失日等が明らかである場合には,それらの事実が厚生年金保険原簿と相違していれば,事実に即した記録を管理する必要があるため,訂正を認めることとなる。 ただし,訂正を認める期間が保険料徴収権の時効消滅後の期間であれば,保険料を徴収することができないため,保険給付の対象とならない記録(厚年法75条本文に該当)として訂正を認めることとなる。 (2) 検討1(被保険者資格要件について)ア厚年法9条は,厚生年金保険の被保険者となる要件として,「適用事業所に使用される七十歳未満の者は,厚生年金保険の被保険者とする。」と定めているところ,本件事業所は,平成20年1月18日から平成25年5月10日まで,任意包括適用事業所であったこと(乙10,弁論の全趣旨),P1(昭和23年生まれ,前提事実(1))は,原告請求期間(平成19年11月11日から平成23年8月まで)当時,70歳未 5年5月10日まで,任意包括適用事業所であったこと(乙10,弁論の全趣旨),P1(昭和23年生まれ,前提事実(1))は,原告請求期間(平成19年11月11日から平成23年8月まで)当時,70歳未満であったことがそれぞれ認められる。そうすると,原告請求期間のうち,本件事業所が適用事業所であった平成20年1月18日から平成23年8月まで(以下「本件期間」という。)の当時,P1が本件事業所に「使用される」(厚年法9条)者であったと認め られるとすれば,P1は,被保険者資格要件を満たすこととなる。 この点,「使用される」(厚年法9条)の意義についてみるに,厚年法は,適用事業所に使用される70歳未満の者を原則として厚生年金保険の被保険者とし(9条),その被保険者資格について,「適用事業所に使用されるに至った日」に取得し(13条1項),「その事業所…に使用されなくなったとき」に該当するに至った日の翌日…に喪失すると定めており(14条2号),厚年法は,「適用事業所に使用される」という事実の発生によって,法律上当然に被保険者資格が発生し「その事業所に使用されなくなった」という事実の発生によって,法律上当然に被保険者資格を喪失するものとしている。このことに加えて,上記の規定において,適用事業所と被保険者との契約関係を意味する「雇用」,「請負」等の文言ではなく,「使用」という事実的な文言が用いられていることにも鑑みると,「使用される」(9条)とは,適用事業所の業務に従事し,その対価として事業主より一定の報酬を支払われるという事実上の使用関係をいうと解するのが相当であり,その判断は,契約の形式のみをみて判断するのではなく,就労の実態に照らして個別具体的に判断すべきである。 そこで,上記の見地から,本件期間当時,本件事業所とP1との間 うと解するのが相当であり,その判断は,契約の形式のみをみて判断するのではなく,就労の実態に照らして個別具体的に判断すべきである。 そこで,上記の見地から,本件期間当時,本件事業所とP1との間に事実上の使用関係があったか否かについて検討する。 イ認定事実上記前提事実に各項に掲記した証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の各事実が認められる。 (ア) 本件事業所についてa 本件事業所は,個人として警備業を営み,事業所名称が「P2」,事業主氏名が「P5」であり,平成20年1月18日から平成25年5月10日まで任意包括適用事業所であった。 (前提事実(1), 乙10,弁論の全趣旨)b 本件事業所については,商業登記が見当たらず,本件期間当時の事業主の所在を確認することができない。(乙2~4,6,11)c 本件期間当時,本件事業所で事務員として勤務していたとされるP6(同人は,平成23年9月の時点で本件事業所と同一の住所に本店を有していた「P4」の代表取締役とされる者である。)は,本件事業所における警備員は,請負として勤務していた旨回答している。(乙12の1ないし3)本件事業所の賃金台帳等は保存されていない。(乙12の3)(イ) 原告の月給支払明細書について原告は,本件訂正請求に際し,本件事業所の本件期間(平成22年6月及び同年7月を除く。)に係るP1の月給支払明細書(本件各明細書)を提出した。 なお,本件各明細書は,P1が平成23年8月下旬ないし9月頃,原告がP1の部屋から持ち帰った書類等の中に含まれていた。(以上につき,乙13,弁論の全趣旨)(ウ) 本件各明細書の記載内容の要点は,概ね次のとおりである。(乙13,弁論の全趣旨)a 様式,記載項目等に関する指摘事項(a) 「月給支 れていた。(以上につき,乙13,弁論の全趣旨)(ウ) 本件各明細書の記載内容の要点は,概ね次のとおりである。(乙13,弁論の全趣旨)a 様式,記載項目等に関する指摘事項(a) 「月給支払明細書」と題する書類であり,出勤日,現場名,出勤日数,休日出勤日数,夜勤日数,昼残業の時間数,夜残業の時間数,差引支給金額(給料合計額-控除金額)が記載されている。 (b) 「給料合計額」欄には,支払日給(単価×日数),昼残業(単価×時間数),夜勤手当(単価×日数),休日手当(単価日数), 皆勤,精勤,定期代,交通費,通信費等の記載項目がある。 (c) 「控除金額」欄には,障害保険,源泉徴収税,当日欠勤,前借金,雇用保険等の記載項目があるが,厚生年金保険料の記載項目はない。 b 具体的な支給状況等に関する指摘事項(a) 平成20年1月度から同年6月度まで,P1は,「週給者」と位置付けられ,月当たり21日ないし26日の出勤日数があるが,それに対応する給料の金額は記載されていない。他方,各月により内容は異なるが,昼残業手当,休日手当,皆勤手当,通信費等が支給されているほか,同年1月度には,講習代として1万8000円が支給されている。 (b) 平成20年7月度から平成23年8月度まで(ただし,月給支払明細書が提出されていない平成22年6月及び同年7月を除く。),P1は,「月給者」と位置付けられ,出勤日数は約20日から30日前後の間で推移し,1日当たりの単価である6000円ないし6500円を乗じた額が支給されている。他に,各月により内容は異なるが,昼残業手当,夜勤手当,休日手当,皆勤(精勤)手当,交通費,定期代,通信費のほか,P7(現場名)の手当,交通誘導2級の手当等が支給されている。 また,平成20年12月度は,「P7病院 内容は異なるが,昼残業手当,夜勤手当,休日手当,皆勤(精勤)手当,交通費,定期代,通信費のほか,P7(現場名)の手当,交通誘導2級の手当等が支給されている。 また,平成20年12月度は,「P7病院の残業も日報の勤務時間記入欄に記入して下さい。P7病院,日曜・祝日勤務時間9:30~17:30」と付記されている。 (c) 平成20年1月度から平成23年8月度まで(ただし,平成22年6月及び同年7月を除く。),控除金額として,毎月,障害保険の1000円が控除されており,その余の控除項目(源泉徴収税,当日欠勤,前借金,雇用保険等)は空欄とされてい るほか,厚生年金保険料の控除をうかがわせるような記載はみられない。 ウ上記認定事実によれば,本件事業所は,警備業を営んでおり,P1は,本件期間当時,本件事業所と契約関係にある警備員として勤務していたところ,本件事業所は,P1の出勤日数,休日勤務日数,夜勤日数,昼残業時間数,夜残業時間数を管理し,これに各単価を乗じた額を支給していたほか,P1の講習代,定期代,交通費,通信費等の職務を遂行する上で必要となる経費的な手当も支給し,「障害保険」(これは厚生年金保険料ではなく,保険会社等との何らかの保険契約等に基づく保険料等であると推認される。)の月額保険料を控除していたことが認められる。 このことからすれば,P1の勤務実態は,本件事業所の人事管理下にあって,本件事業所のために本件事業所が営む警備業に従事するものであり,本件期間のうち少なくとも平成20年7月度以降の期間は,その対価として本件事業所により勤務日数,残業時間数等に基づいて一か月を単位として計算される一定の報酬(上記の経費的な手当を含む。)が現実に支払われるという,事実上の使用関係があったと認めるのが相当である(なお,平成 業所により勤務日数,残業時間数等に基づいて一か月を単位として計算される一定の報酬(上記の経費的な手当を含む。)が現実に支払われるという,事実上の使用関係があったと認めるのが相当である(なお,平成23年8月度については,本件各明細書の「出勤」欄に「休み」と記載された最終の日である同月20日を越えて,P1が本件事務所に使用されていたことを認めるに足りる的確な証拠はない。)。 エ被告の主張について(ア) 被告は,本件各明細書の記載には,出勤日に応じた日給が支払われていない月があることや,同程度の出勤日数でありながら給料の額に最大で約25万円の差が生じている理由が明らかでない旨主張する。 確かに,証拠(乙13)によれば,本件期間の当初の6か月間(平成20年1月度から同年6月度)においては,出勤日数が21日ないし26日であるにもかかわらず,日給が0円とされ,諸手当(残業手当,休日手当,皆勤手当等)による差引支給金額が2625円ないし2万2100円にとどまっていることが認められるところ,そのような取扱いがされた理由は不明であり,就労の実態等がその後の期間とは異なっていた可能性は否定できない。しかしながら,これに続く平成20年7月以降については,出勤日数は約20日から30日前後の間で推移し,1日当たりの単価である6000円ないし6500円を乗じた額が支給され,他に,各月により内容は異なるが各種の手当が支給されていること(認定事実(ウ)b(b))が認められることからすれば,本件期間のうち平成20年7月以降の期間において,P1には,本件各明細書に記載された内容に基づいた勤務実態があったと評価するについて,大きな妨げはないというべきである。 よって,この点に関する被告の主張は採用することができない。 (イ) 被告は,本 ,本件各明細書に記載された内容に基づいた勤務実態があったと評価するについて,大きな妨げはないというべきである。 よって,この点に関する被告の主張は採用することができない。 (イ) 被告は,本件各明細書には,所得税や社会保険料の源泉徴収に関する記載がなく,本件事業所との間に使用関係があり,本件事業所により厚生年金被保険者資格の届出がされていたと考えられるA氏やB氏とは取扱いが明らかに異なっていたことからすれば,本件事業所とP1との間に事実上の使用関係があったとは認められない旨主張する。 しかしながら,事実上の使用関係があるか否かは,上記アのとおり,就労の実態に照らして個別具体的に判断すべきであり,その際,給与所得としての源泉徴収の有無,雇用保険,厚生年金保険等の保険料徴収の有無は,参考となる判断要素であるが,P1の就労及び 給与支払の実態が上記イのとおりであったと認められる以上,P1の厚生年金保険の保険料等が徴収されていない(認定事実(ウ)a(C),b(C))からといって,本件事業所とP1との間の事実上の使用関係を否定することは相当でない。 また,本件事業所において警備員として勤務し,厚生年金被保険者とされたA氏やB氏とは,P1の取扱いが異なるとされる点については,A氏やB氏の供述(乙14の1,2,乙15の1,2)を前提としても,本件事業所において使用関係のあった者についてすべからく社会保険料を納入させる対応がとられていたかどうかまでは明らかではなく,むしろ,証拠(乙12の3,乙15の1,2)によれば,本件事業所においては,同じように警備員として勤務する者の中でも,その者の希望により社会保険に加入させたりさせなかったりしていたことがうかがわれることからすれば,少なくとも本件においては,社会保険料の徴収の有無 いては,同じように警備員として勤務する者の中でも,その者の希望により社会保険に加入させたりさせなかったりしていたことがうかがわれることからすれば,少なくとも本件においては,社会保険料の徴収の有無等から直ちに事実上の使用関係の有無を判断することは相当でない。 よって,この点に関する被告の主張は採用することができない。 オ検討1(被保険者資格要件)のまとめ以上によれば,P1は,本件期間のうち平成20年7月以降の期間(ただし平成23年8月は20日まで)において,本件事業所に「使用される」(厚年法9条)者であったと認められるから,被保険者資格要件(上記(1)オ(イ)参照)のうち,①事業所への勤務要件及び③被保険者となる要件をいずれも満たし,また,認定事実(ア)aのとおり,②適用事業所となる要件も満たすと認められる。したがって,P1は,上記の期間において,被保険者資格要件を満たすというべきである。 (3) 検討2(その余の記録訂正の要件について)ア厚年法75条ただし書該当の審議(上記(1)オ(ウ)) 本件期間当時(保険料徴収権の時効消滅前に),被保険者の資格取得日等に係る届出を行っていた,又は事業主が厚生年金保険料を納付していたと認めるに足りる証拠はない。したがって,厚年法75条ただし書該当の審議に基づく年金記録の訂正を認めることはできない。 イ厚生年金特例法1条1項該当の審議(上記(1)オ(エ))本件事業所が,被保険者から厚生年金保険料を源泉控除していたと認めるに足りる証拠はない。したがって,厚生年金特例法1条1項該当の審議に基づく年金記録の訂正を認めることはできない。 ウ厚年法75条本文該当の審議(上記(1)オ(オ))上記(1)オ(オ)のとおり,上記ア及びイで訂正を認められない場合(保険料の 1項該当の審議に基づく年金記録の訂正を認めることはできない。 ウ厚年法75条本文該当の審議(上記(1)オ(オ))上記(1)オ(オ)のとおり,上記ア及びイで訂正を認められない場合(保険料の徴収権が時効により消滅した後に届出が行われた場合や被保険者が事業主により保険料を源泉控除されていない場合等)であっても,請求期間当時,厚生年金保険の被保険者資格要件を満たしていることを前提とし,本来届出により記録されるはずの取得日・喪失日等が明らかである場合には,それらの事実が厚生年金保険原簿と相違していれば,事実に即した記録を管理する必要があるため,その訂正を認めることとなる。 この点,P1は,上記(2)のとおり本件事業所における被保険者資格要件を満たし,次のエのとおり厚生年金保険原簿を訂正すべきである。 エ訂正すべき事項等本件認定基準・要領によれば,厚生年金保険の被保険者期間の相違又は被保険者期間の記録がない事案について,厚年法75条本文該当期間の訂正をすべき場合の訂正事項は,(ア)ないし(ウ)の各aのとおりであるところ(乙9),本件は,(ア)ないし(ウ)の各bのとおり訂正されるべきである。 (ア) 適用事業所名 a 厚生年金保険の適用事業所の記録がある場合には,適用事業所として記録されている「事業所名称(船舶所有者名)」を認定する。 b 本件事業所(「P2」)(イ) 訂正期間a 資格取得日から資格喪失日までの期間のうち,「訂正すべき期間(自)(至)」は,「年月日」単位で認定する。また,訂正期間(至)は,事業所又は船舶に使用されなくなった日の翌日とする。 b 訂正期間(自)平成20年7月1日(至)平成23年8月21日(ウ) 訂正後の標準報酬月額・標準賞与額a 請求者に係る給与明細書等の 所又は船舶に使用されなくなった日の翌日とする。 b 訂正期間(自)平成20年7月1日(至)平成23年8月21日(ウ) 訂正後の標準報酬月額・標準賞与額a 請求者に係る給与明細書等の関連資料により訂正期間における本来の報酬額(標準報酬月額の決定又は改定の基礎となる期間の報酬額)を確認し,当該報酬額に基づく標準報酬月額を認定する。 また,請求者に係る賞与支給明細書等の関連資料により訂正期間における賞与支払額を確認し,当該報酬額に基づく標準賞与額を認定する。 b 本件各明細書の記載を前提とすれば,処分行政庁は,訂正後の標準報酬月額・標準賞与額を容易に認定し得るというべきであるから,訂正後の標準報酬月額・標準賞与額は明らかであると認められる。 2 争点2(本件裁決に固有の瑕疵があるか否か)について行訴法10条2項は,処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には,裁 決の取消しの訴えにおいては,処分の違法を理由として取消しを求めることができないと定めているところ,原告は,本件裁決に固有の瑕疵を具体的に主張しておらず,また,本件裁決に何らかの固有の瑕疵があるとも認められない。 したがって,本件裁決取消しの訴えは理由がない。 3 結論よって,本件処分取消しの訴えは,本件処分のうち平成20年7月1日から平成23年8月21日までの期間についてP1の厚生年金保険原簿を訂正しない部分の取消しを求める限度で理由があるから一部を認容し,その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について行訴法7条,民訴法61条,64条本文を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官 がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について行訴法7条,民訴法61条,64条本文を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官谷口豊 裁判官工藤哲郎 裁判官細井直彰(別紙1省略) 別紙2 関係法令等の定め 第1 国民年金法(以下「国年法」という。)14条(国民年金原簿)厚生労働大臣は,国民年金原簿を備え,これに被保険者の氏名,資格の取得及び喪失,種別の変更,保険料の納付状況,基礎年金番号(〔括弧内略〕)その他厚生労働省令で定める事項を記録するものとする。 14条の2(訂正の請求)1項被保険者又は被保険者であった者は,国民年金原簿に記録された自己に係る特定国民年金原簿記録(被保険者の資格の取得及び喪失,種別の変更,保険料の納付状況その他厚生労働省令で定める事項の内容をいう。以下この項において同じ。)が事実でない,又は国民年金原簿に自己に係る特定国民年金原簿記録が記録されていないと思料するときは,厚生労働省令で定めるところにより,厚生労働大臣に対し,国民年金原簿の訂正の請求をすることができる。 14条の3(訂正に関する方針)1項厚生労働大臣は,前条1項(〔括弧内略〕)の規定による請求(次条において「訂正請求」という。)に係る国民年金原簿の訂正に関する方針を定めなければならない。 14条の4(訂正請求に対する措置)1項厚生労働大臣は,訂正請求に理由があると認めるときは,当該訂正請求に係る国民年金原簿の訂正をする旨を決定しなければならない。 2項厚生労働大臣は,前項 14条の4(訂正請求に対する措置)1項厚生労働大臣は,訂正請求に理由があると認めるときは,当該訂正請求に係る国民年金原簿の訂正をする旨を決定しなければならない。 2項厚生労働大臣は,前項の規定による決定をする場合を除き,訂正請求に係る国民年金原簿の訂正をしない旨を決定しなければならない。 3項厚生労働大臣は,前2項の規定による決定をしようとするときは,あらかじめ,社会保障審議会に諮問しなければならない。 109条の9(地方厚生局長等への権限の委任)1項この法律に規定する厚生労働大臣の権限(〔括弧内略〕)は,厚生労働省令(14条の4に規定する厚生労働大臣の権限にあっては,政令)で定めるところにより,地方厚生局長に委任することができる。 2項前項の規定により地方厚生局長に委任された権限は,厚生労働省令(14条の4に規定する厚生労働大臣の権限にあっては,政令)で定めるところにより,地方厚生支局長に委任することができる。 3項 1項の規定により14条の4に規定する厚生労働大臣の権限が地方厚生局長に委任された場合(前項の規定により同条に規定する厚生労働大臣の権限が地方厚生支局長に委任された場合を含む。)には,同条3項中「社会保障審議会」とあるのは,「地方厚生局に置かれる政令で定める審議会」とする。 第2 国民年金法施行令(以下「国年令」という。)11条の12の2(地方厚生局長等への権限の委任)1項国年法14条の4に規定する厚生労働大臣の権限は,国年法14条の2第1項(〔括弧内略〕)の規定による請求を受理した日本年金機構の事務所(年金事務所(日本年金機構法(〔括弧内略〕)29条に規定する年金事務所をいう。以下同じ。)を含む。次項において同じ。)の所在地を管轄する地方厚生局長に委任する。ただし,厚生労働大 年金機構の事務所(年金事務所(日本年金機構法(〔括弧内略〕)29条に規定する年金事務所をいう。以下同じ。)を含む。次項において同じ。)の所在地を管轄する地方厚生局長に委任する。ただし,厚生労働大臣が自らその権限を行うことを妨げない。 2項前項の規定により地方厚生局長に委任された権限は,国年法14条の2第1項の規定による請求を受理した日本年金機構の事務所の所在地を管轄する地方厚生支局長に委任する。ただし,地方厚生局長が自らその権限を行うことを妨げない。 第3 厚生年金保険法(厚年法)9条(被保険者)適用事業所に使用される七十歳未満の者は,厚生年金保険の被保険者とする。 28条(記録)(平成24年法律第63号による改正前)厚生労働大臣は,被保険者に関する原簿を備え,これに被保険者の氏名,資格の取得及び喪失の年月日,標準報酬(標準報酬月額及び標準賞与額をいう。以下同じ。),基礎年金番号(〔括弧内略〕)その他厚生労働省令で定める事項を記録しなければならない。 28条の2(訂正の請求)(平成24年法律第63号による改正前)1項被保険者又は被保険者であった者は,前条の原簿(以下「厚生年金保険原簿」という。)に記録された自己に係る特定厚生年金保険原簿記録(被保険者の資格の取得及び喪失の年月日,標準報酬その他厚生労働省令で定める事項の内容をいう。以下この項において同じ。)が事実でない,又は厚生年金保険原簿に自己に係る特定厚生年金保険原簿記録が記録されていないと思料するときは,厚生労働省令で定めるところにより,厚生労働大臣に対し,厚生年金保険原簿の訂正の請求をすることができる。 28条の3(訂正に関する方針)1項厚生労働大臣は,前条1項(〔括弧内略〕)の規定による請求(次条において「訂正請求」という。) 大臣に対し,厚生年金保険原簿の訂正の請求をすることができる。 28条の3(訂正に関する方針)1項厚生労働大臣は,前条1項(〔括弧内略〕)の規定による請求(次条において「訂正請求」という。)に係る厚生年金保険原簿の訂正に関する方針を定めなければならない。 28条の4(訂正請求に対する措置)1項厚生労働大臣は,訂正請求に理由があると認めるときは,当該訂正請求に係る厚生年金保険原簿の訂正をする旨を決定しなければならない。 2項厚生労働大臣は,前項の規定による決定をする場合を除き,訂正請 求に係る厚生年金保険原簿の訂正をしない旨を決定しなければならない。 3項厚生労働大臣は,前二項の規定による決定をしようとするときは,あらかじめ,社会保障審議会に諮問しなければならない。 75条保険料を徴収する権利が時効によって消滅したときは,当該保険料に係る被保険者であった期間に基づく保険給付は,行わない。ただし,当該被保険者であった期間に係る被保険者の資格の取得について27条の規定による届出若しくは31条1項の規定による確認の請求又は28条の2第1項(同条2項及3項において準用する場合を含む。)の規定による訂正の請求があった後に,保険料を徴収する権利が時効によって消滅したものであるときは,この限りでない。 100条の9(地方厚生局長等への権限の委任)1項この法律に規定する厚生労働大臣の権限(〔括弧内略〕)は,厚生労働省令(28条の4に規定する厚生労働大臣の権限にあっては,政令)で定めるところにより,地方厚生局長に委任することができる。 2項前項の規定により地方厚生局長に委任された権限は,厚生労働省令(28条の4に規定する厚生労働大臣の権限にあっては,政令)で定めるところにより,地方厚生支局長に委任することができ とができる。 2項前項の規定により地方厚生局長に委任された権限は,厚生労働省令(28条の4に規定する厚生労働大臣の権限にあっては,政令)で定めるところにより,地方厚生支局長に委任することができる。 3項 1項の規定により28条の4に規定する厚生労働大臣の権限が地方厚生局長に委任された場合(前項の規定により同条に規定する厚生労働大臣の権限が地方厚生支局長に委任された場合を含む。)には,同条3項中「社会保障審議会」とあるのは,「地方厚生局に置かれる政令で定める審議会」とする。 第4 厚生年金保険法施行令(以下「厚年令」という。)4条の4の2(地方厚生局長等への権限の委任)1項厚年法28条の4に規定する厚生労働大臣の権限は,厚年法28条 の2第1項(〔括弧内略〕)の規定による請求を受理した日本年金機構の事務所(年金事務所(日本年金機構法(〔括弧内略〕)29条に規定する年金事務所をいう。以下同じ。)を含む。次項において同じ。)の所在地を管轄する地方厚生局長に委任する。ただし,厚生労働大臣が自らその権限を行うことを妨げない。 2項前項の規定により地方厚生局長に委任された権限は,厚年法28条の2第1項の規定による請求を受理した日本年金機構の事務所の所在地を管轄する地方厚生支局長に委任する。ただし,地方厚生局長が自らその権限を行うことを妨げない。 第5 厚生年金保険の保険給付及び保険料の納付の特例等に関する法律(以下「厚生年金特例法」という。)1条(保険給付等に関する特例等)1項厚年法28条の4第3項の規定による諮問に応じた社会保障審議会(同法100条の9第1項又は第2項の規定により同法28条の4に規定する厚生労働大臣の権限が地方厚生局長又は地方厚生支局長に委任された場合にあっては,同法100条の9第3項の規 応じた社会保障審議会(同法100条の9第1項又は第2項の規定により同法28条の4に規定する厚生労働大臣の権限が地方厚生局長又は地方厚生支局長に委任された場合にあっては,同法100条の9第3項の規定により読み替えて適用する同法28条の4第3項に規定する地方厚生局に置かれる政令で定める審議会。以下この項〔中略〕において同じ。)の調査審議の結果として,同法27条に規定する事業主が,同法84条1項又は2項の規定により被保険者の負担すべき保険料を控除した事実があるにもかかわらず,当該被保険者に係る同法82条2項の保険料を納付する義務を履行したことが明らかでない場合(当該保険料(以下「未納保険料」という。)を徴収する権利が時効によって消滅する前に同法27条の規定による届出若しくは同法31条1項の規定による確認の請求又は同法28条の2第1項(同条2項及び3項において準用する場合を含む。)の規定による訂正の請求があった場合を除き,未納保険料を徴収する権利が 時効によって消滅している場合に限る。)に該当するとの社会保障審議会の意見があった場合には,厚生労働大臣は,当該意見を尊重し,遅滞なく,未納保険料に係る期間を有する者(以下「特例対象者」という。)に係る同法の規定による被保険者の資格の取得及び喪失の確認又は標準報酬月額若しくは標準賞与額の改定若しくは決定〔中略〕を行うものとする。ただし,特例対象者が,当該事業主が当該義務を履行していないことを知り,又は知り得る状態であったと認められる場合には,この限りでない。 第6 厚生労働省組織令153条の2(地方年金記録訂正審議会)1項地方厚生局に,地方年金記録訂正審議会を置く。 2項地方年金記録訂正審議会は,厚生年金保険法及び国民年金法の規定によりその権限に属させられた事項の処理に 3条の2(地方年金記録訂正審議会)1項地方厚生局に,地方年金記録訂正審議会を置く。 2項地方年金記録訂正審議会は,厚生年金保険法及び国民年金法の規定によりその権限に属させられた事項の処理に関する事務をつかさどる。 3項前項に定めるもののほか,地方年金記録訂正審議会の組織,所掌事務及び委員その他の職員その他地方年金記録訂正審議会に関し必要な事項については,厚生労働省令で定める。 第7 厚生年金保険記録訂正請求認定基準・要領(平成27年2月27日厚生労働大臣決定)(以下「本件認定基準・要領」という。)第1章第5(総合認定の基準の審議)の1及び第4章(総合認定の基準の要領)第1節第1の要旨 1 共通する審議(被保険者資格要件)厚生年金保険の年金記録がないとして訂正請求をする事案においては,①事業所への勤務要件,②適用事業所となる要件,③被保険者となる要件についてまず審議する。訂正請求を認容するには,①について,請求者が,請求期間において,勤務先事業所に使用されており,勤務実態(勤務時間,勤務日数など,常用的雇用関係が認められるような勤務形態であること) があったと認められることが,②について,請求者が使用されていた勤務先事業所は,請求期間において,適用事業所としての記録があるか又は適用事業所となる要件を満たしていることが,③について,請求者が請求期間当時,被保険者であったか,又は被保険者となる要件を満たしていたことがそれぞれ必要となる。 2 厚年法75条ただし書該当の審議厚年法75条本文において,保険料を徴収できない期間については,保険給付を制限することとしている。このため,保険料を徴収する権利が時効により消滅した後になって,事業主により取得日・喪失日等の届出が行われた場合は,当該届出に基づく期間につい ない期間については,保険給付を制限することとしている。このため,保険料を徴収する権利が時効により消滅した後になって,事業主により取得日・喪失日等の届出が行われた場合は,当該届出に基づく期間について,保険給付の対象外としている。これに対し,厚年法75条ただし書において,被保険者の資格の届出,確認の請求又は訂正の請求があったにもかかわらず,保険料を徴収する権利が時効により消滅した場合には,通常どおり保険給付が行われることとしている。 以上を踏まえて,厚年法に基づく訂正の判断では,厚年法75条ただし書の規定に関して,請求期間当時(保険料徴収権の時効消滅前に),被保険者の資格取得日等に係る届出を行っていた,又は事業主が厚生年金保険料を納付していた(保険料を納付できるということは,事業主により届出が行われている。)か否かを判断し,届出又は保険料納付を行っていたと判断できる場合には,保険給付の対象期間として訂正を認めることとなる。 3 厚生年金特例法1条1項該当の審議厚生年金特例法は,被保険者が保険料を事業主により源泉控除されていたが事業主が保険料を納付していないため,取得日・喪失日等が厚生年金記録に反映されていない事案について,保険給付を行うため,所要の措置を講じたものである。同法1条1項では,社会保障審議会の審議の結果として,事業主が被保険者から保険料を源泉控除しながら当該被保険者に係 る保険料を納付する義務を履行したことが明らかでない場合(被保険者の資格の届出や届出に基づく保険料納付を行っていた場合を除く。)に該当するとの意見があった場合には,厚生労働大臣は,被保険者の資格の確認又は標準報酬の改定等を行うこととなる。このため,「事業主により,請求期間に対応(一部の期間に対応する場合を含む。)した保険料控除が行われて 見があった場合には,厚生労働大臣は,被保険者の資格の確認又は標準報酬の改定等を行うこととなる。このため,「事業主により,請求期間に対応(一部の期間に対応する場合を含む。)した保険料控除が行われていたと判断できる場合」と認められるか否かを判断する。〔同法1条1項ただし書に関する説明は省略〕 4 厚年法75条本文該当の審議上記2及び3で訂正を認められない場合(保険料の徴収権が時効により消滅した後に届出が行われた場合や被保険者が事業主により保険料を源泉控除されていない場合等)であっても,請求期間当時,厚生年金保険の被保険者資格要件を満たしていることを前提とし,本来届出により記録されるはずの取得日・喪失日等が明らかである場合には,それらの事実が厚生年金記録と相違していれば,事実に即した記録を管理する必要があるため,訂正を認めることとなる。 ただし,訂正を認める期間が保険料徴収権の時効消滅後の期間であれば,保険料を徴収することができないため,保険給付の対象とならない記録(厚年法75条本文に該当)として訂正を認めることとなる。 以上
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