- 1 - 主文 本件控訴を棄却する。 当審における未決勾留日数中90日を原判決の刑に算入する。 理由 1 弁護人の控訴理由(量刑不当) 被告人を懲役7年に処した原判決の量刑は重すぎて不当である。 2 控訴理由に対する判断⑴ 本件は、令和6年2月3日から当時の交際相手(被害者の母)及びその子(被害者)と自宅で同居していた被告人が、同年3月18日、被害者(当時2歳)の態度等に怒りを募らせ、抱きかかえた被害者をおとなしくさせようとして、被害 者の両足を左腕で抱え込み、その後頭部付近を右腕で抱えてその顔面を右上腕部付近に密着させるなどの暴行を加え、よって、被害者を鼻口部閉塞による窒息により死亡させたという事案である。 ⑵ 原判決は、量刑の理由として、暴行態様が非常に危険で執拗である、遅くとも令和6年3月初旬には被害者への暴力が日常化しており、犯意が偶発的・一時的 とはいえない、被告人は当時、精神的に追い詰められていた旨供述するが、被害者に暴力を振るうことがやむを得なかった事情とみる余地などないから、同種事案(傷害致死1件のみ、単独犯、児童虐待、凶器等なし、被害者の落ち度なし、前科なし)の量刑傾向の中で、中程度からやや重い部類に属すると説示した上、被告人が本件後、自ら被害者を病院に連れて行き、公判廷では罪を争わず、日常的な虐待 の事実を認めていること、父が監督を申し出ていること、現在の妻である被害者の母が社会復帰を待っているようであることといった一般情状を考慮しても、懲役7年は免れないと判断した(求刑:懲役7年)。 ⑶ 原判決の量刑判断が重すぎて不当であるとまではいえない。 弁護人は、①被告人は、 帰を待っているようであることといった一般情状を考慮しても、懲役7年は免れないと判断した(求刑:懲役7年)。 ⑶ 原判決の量刑判断が重すぎて不当であるとまではいえない。 弁護人は、①被告人は、生命に関わる程の深刻な暴行を日常的に行っていたわけ ではなく、本件が普段の暴力の延長であったかも疑わしく、被害者を暴れさせない - 2 -ようにした行為が偶々痛ましい結果を招いてしまったものである、②被害者は、令和5年10月以降、虐待などのストレスを一定期間受けていた可能性が高いとされるところ、ストレスの原因は被告人の虐待以外にも考えられるのに、原判決はそれを十分に検討せず、被害者の受けていたストレスの全部が被告人によるものとみており不当である、③原判決は、被告人が精神的に追い詰められていた点に関し、被 害者の母に同居を持ち掛けた見通しが甘いというが、後に入籍しており安易に同居に及んでいない、④被害者の急変に気付いてからは被告人なりに救命行為に及んだことや、養育すべき子がいること、被害者の母は被告人と婚姻し社会復帰を待っていることなどの有利な情状を十分に酌んでいないと指摘し、本件は同種事案の中央値(懲役7年)よりやや軽い部類に属すると主張する。 しかし、①原判決のいう日常的な暴力とは、被害者の反抗的な態度に苛立ち、頬を平手打ちするなどであって、生命に関わる程の深刻な暴行を日常的に繰り返していた旨をいうものではないと解され、犯意が偶発的・一時的とはいえないとの原判決の評価は不合理ではない。②被害者の受けていたストレスと死因とのつながりは不明であるし、原判決はストレスの原因がすべて被告人にあるとも認めていない。 ③原判決は、被告人が精神的に追い詰められていたとしても、それは被告人の行為責任を減じる事情には 死因とのつながりは不明であるし、原判決はストレスの原因がすべて被告人にあるとも認めていない。 ③原判決は、被告人が精神的に追い詰められていたとしても、それは被告人の行為責任を減じる事情にはなり得ない旨を指摘しているのであって、不合理ではなく、以上によれば、本件が同種事案の中で中程度からやや重い部類に属するという原判決の評価は不当とまではいえない。そして、④有利な一般情状についての原判決の評価が不十分とはいえない(なお、事案に鑑み、被害者の母の心情を考慮するにも 限度があるというべきである)。 3 適用した法令刑訴法396条、刑法21条、刑訴法181条1項ただし書令和7年5月13日福岡高等裁判所第1刑事部 - 3 -裁判長裁判官溝國禎久 裁判官内藤恵美子 裁判官大友真紀子
▼ クリックして全文を表示