平成7(オ)839 損害賠償、建物明渡等

裁判年月日・裁判所
平成8年5月28日 最高裁判所第三小法廷 判決 その他 東京高等裁判所 平成6(ネ)2191
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判決文本文3,269 文字)

主文 一上告人の上告に基づき、原判決中上告人の請求に関する部分を次のとおり変更する。 1 被上告人は、上告人に対し、金二四七〇万円及び内金二三五〇万円に対する平成五年一月一〇日から、内金一二〇万円に対する平成六年一〇月七日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 2 上告人のその余の請求を棄却する。 二本件附帯上告を棄却する。 三訴訟の総費用はこれを二分し、その一を上告人の、その余を被上告人の負担とする。 理由 上告代理人西口徹、同安部井上の上告理由のうち違約金の支払に係る損害に関する原審判断の違法をいう点について一上告人の本件請求は、被上告人が上告人に対してした本件建物についての仮差押命令の申立て及び訴えの提起が不法行為に当たり、これにより上告人は本件建物の転売契約を履行することができなくなり、買主に違約金として支払った三〇〇〇万円、得べかりし転売利益八四七九万円(強制競売による買受代金四五二一万円と転売代金一億三〇〇〇万円との差額)及び弁護士費用一九〇万円の損害を被ったと主張し、うち八六六九万円及び遅延損害金の支払を被上告人に対して請求するものである。 二原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。 1 被上告人は、本件建物及びその敷地を所有していたが、本件建物について強制競売の申立てがされ、上告人が、昭和六一年八月二六日、代金を四五二一万円とする本件建物についての売却許可決定を受けた。被上告人は、右売却許可決定の内- 1 -容を知り、執行抗告を申し立てたが抗告を棄却され、さらに最高裁判所に抗告したが抗告を却下された。上告人は、同六二年六月一日、代金四五二一万円を納付して、本件建物の所有権及びその敷地についての法定地上 容を知り、執行抗告を申し立てたが抗告を棄却され、さらに最高裁判所に抗告したが抗告を却下された。上告人は、同六二年六月一日、代金四五二一万円を納付して、本件建物の所有権及びその敷地についての法定地上権を取得した。 2 上告人は、昭和六二年六月二日、Dとの間で、本件建物(法定地上権付き)を代金一億円で売り渡す旨の売買契約を締結し、Dから手付金二〇〇〇万円を受領した。 3 被上告人は、上告人が本件建物の所有権を取得した後も本件建物を上告人に明け渡すことを拒むなどして上告人と争っていたが、自らの主張が法律上認められないことを知りながら、上告人による本件建物の利用や取引を妨害する意図をもって、(一) 昭和六三年七月一八日、上告人に対する本件建物の賃料債権を被保全権利として、本件建物について仮差押命令の申立てをし、これにより仮差押命令が発せられて本件建物に仮差押えの登記がされ、(二) 平成元年七月六日、上告人に対して、本件建物の所有権移転登記の抹消登記手続等を求める訴えを提起し、これにより本件建物に所有権抹消の予告登記がされた。 4 本件建物に右3(一)の仮差押えの登記がされたため、上告人がDに対して売買契約を履行することが事実上不可能になったので、上告人とDは、平成元年六月七日、売買契約を合意解除し、上告人は、Dに対して違約金として三〇〇〇万円を支払った。 5 上告人とDは、同日、一年以内に右仮差押命令が取り消されることを条件として、本件建物(法定地上権付き)を代金一億三〇〇〇万円で売り渡す旨の条件付売買契約を締結した。しかし、右条件が成就しないばかりか、翌月には右3(二)の予告登記もされるに至ったため、上告人は、右条件付売買契約の履行をすることができなかった。 6 被上告人は、右3(一)(二)の仮差押命令の申立て及び訴えの提起をした時点 かりか、翌月には右3(二)の予告登記もされるに至ったため、上告人は、右条件付売買契約の履行をすることができなかった。 6 被上告人は、右3(一)(二)の仮差押命令の申立て及び訴えの提起をした時点- 2 -においては、上告人が転売の意思をもって本件建物を取得、保有していること及び転売がされた場合には上告人が少なくとも一三五〇万円の利益を得ることを知ることができた。 三原審は、右事実関係の下において、被上告人のした右二3(一)(二)の仮差押命令の申立て及び訴えの提起は上告人に対する不法行為に当たるから、被上告人は、上告人に対して、転売利益相当額一三五〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成五年一月一〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金並びに弁護士費用相当額一二〇万円及びこれに対する訴え変更申立書送達の日の翌日である平成六年一〇月七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があると判断し、上告人の請求を右の限度で認容し、その余を棄却すべきものとした。 四しかしながら、原審の右判断は、被上告人が上告人に対して更に一〇〇〇万円の損害賠償義務を負うことを認めなかった点において、是認することができない。 その理由は、次のとおりである。 1 上告人は、違約金として支払った三〇〇〇万円についての損害の賠償も求めているところ、原審の確定したところによれば、上告人には、転売利益及び弁護士費用相当額の損害のほかに、Dから受領した手付金二〇〇〇万円と同人に違約金として支払った三〇〇〇万円の差額に相当する一〇〇〇万円の損害が発生したことが明らかである。 2 原審の確定したところによれば、被上告人は、不法行為をした時点において、本件建物の競売による買受代金が四五二一万円であることを知っており、ま る一〇〇〇万円の損害が発生したことが明らかである。 2 原審の確定したところによれば、被上告人は、不法行為をした時点において、本件建物の競売による買受代金が四五二一万円であることを知っており、また、上告人が転売の意思をもって本件建物を取得、保有していること及び転売がされた場合には上告人が少なくとも一三五〇万円の利益を得ることを知ることができたというのであるから、被上告人は、自らの不法行為によって、上告人が転売契約を履行- 3 -できずに一〇〇〇万円程度の違約金を負担せざるを得なくなることをも知ることができたというべきである。そうすると、被上告人には、上告人に生じた右一〇〇〇万円の損害も賠償する義務がある。 3 これと異なる原審の判断には法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は右の限度で理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、原審の確定したところによれば、上告人の請求は、原審が認容した部分の外に、一〇〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成五年一月一〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を認容すべきである。 上告代理人西口徹、同安部井上のその余の上告理由について所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は採用することができない。 被上告人の附帯上告理由について所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は採用することができない。 よって、上告人の上告に基づき原判決中上告人の請求に関する部分を主文第一項のとおり変更し、本件附帯上告を棄却することとし、民訴法四〇八条、三九六条、三 違法はない。論旨は採用することができない。 よって、上告人の上告に基づき原判決中上告人の請求に関する部分を主文第一項のとおり変更し、本件附帯上告を棄却することとし、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、三八四条、九六条、八九条、九二条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官尾崎行信裁判官園部逸夫- 4 -裁判官可部恒雄裁判官大野正男裁判官千種秀夫- 5 -

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