平成25年8月28日判決言渡平成25年(ネ)第10018号特許権侵害差止等請求権不存在確認等請求控訴事件(原審・大阪地裁平成23年(ワ)第7407号事件)口頭弁論終結日平成25年5月27日判決控訴人 atoo株式会社控訴人 X両名訴訟代理人弁護士山田威一郎同補佐人弁理士立花顕治同山下未知子被控訴人日本ロレアル株式会社被控訴人エヌ・エル・オー株式会社両名訴訟代理人弁護士鈴木秀彦同水口美穂同渡部峻輔同坂井健吾 主文 原判決を次のとおり変更する。 1 被控訴人らによる別紙商品目録記載の商品の輸入,製造,販売又は使用につき,控訴人Xが別紙特許権目録記載の特許権に基づく差止請求権,損害賠償請求権及び不当利得返還請求権をいずれも有しないことを確認する。 2 控訴人らは,文書,口頭若しくはインターネットを通じて,別紙商品目録記載の商品の輸入,製造,販売又は使用が,別紙特許権目録記載の特許権を侵害し,又は侵害するおそれがある旨を,需要者, 被控訴人らの取引関係者及びその他の第三者に告知したり,流布してはならない。 3 控訴人らは,被控訴人日本ロレアル株式会社に対し,連帯して金110万円及びこれに対する控訴人atoo株式会社においては平成2 の取引関係者及びその他の第三者に告知したり,流布してはならない。 3 控訴人らは,被控訴人日本ロレアル株式会社に対し,連帯して金110万円及びこれに対する控訴人atoo株式会社においては平成23年7月6日から,控訴人Xにおいては同年6月29日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 控訴人らは,被控訴人エヌ・エル・オー株式会社に対し,連帯して金110万円及びこれに対する控訴人atoo株式会社においては平成23年7月6日から,控訴人Xにおいては同年6月29日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを20分し,その1を被控訴人らの負担とし,その余を控訴人らの負担とする。 7 この判決は,第2項から第4項までに限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中,控訴人らの敗訴部分を取り消す。 2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は第1審,第2審とも被控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要 1 原判決で用いられた略語は,当審でもそのまま用いる。原判決を引用する部分では,「原告」を「被控訴人」に,「被告」を「控訴人」に,それぞれ読み替えるものとする。別紙は,いずれも原判決の別紙と同一のものである。 2 被控訴人らは,(1)被控訴人らによる本件口紅の輸入,製造,販売又は使用につき,控訴人Xが本件特許権に基づく差止請求権,損害賠償請求権及び不当利得返 還請求権をいずれも有しないことの確認を求めるとともに,(2)控訴人らが,本件口紅の製造,輸入,販売は本件特許権を侵害するものであるとの虚偽の事実を,本件口紅の需要者,被控訴人らの取引 得返 還請求権をいずれも有しないことの確認を求めるとともに,(2)控訴人らが,本件口紅の製造,輸入,販売は本件特許権を侵害するものであるとの虚偽の事実を,本件口紅の需要者,被控訴人らの取引関係者及びその他の第三者に告知,流布したことが,不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争行為(信用毀損行為)に当たるとして,①控訴人らに対し,同法3条1項に基づき,文書,口頭若しくはインターネットを通じて,本件口紅の輸入,製造,販売又は使用が,本件特許権を侵害し,又は侵害するおそれがある旨を,需要者,被控訴人らの取引関係者及びその他の第三者に告知,流布する行為の差止め,②控訴人atooに対し,同法14条に基づく信用回復措置として,本判決確定の日から7日以内に,別紙謝罪文目録(被控訴人ら請求)記載の謝罪文を別紙信用回復措置対象アドレス目録記載の控訴人atooホームページアドレス上に掲載すること,③控訴人らに対し,不正競争行為に基づく損害賠償として,被控訴人ら各自に金2000万円ずつ及びこれに対する訴状送達の日の翌日(控訴人atooについて平成23年7月6日,控訴人Xについて同年6月29日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払をそれぞれ求めた。 原審は,(1)控訴人Xに対する本件特許権に基づく差止請求権,損害賠償請求権及び不当利得返還請求権をいずれも有しないことの確認請求,(2)①控訴人らに対する差止請求,③控訴人らに対する各200万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払請求の限度で,被控訴人らの請求を認容し,その余の被控訴人らの請求をいずれも棄却した。 控訴人らは,これを不服として,控訴人らの敗訴部分の取消し及び被控訴人らの請求をいずれも棄却するこ の連帯支払請求の限度で,被控訴人らの請求を認容し,その余の被控訴人らの請求をいずれも棄却した。 控訴人らは,これを不服として,控訴人らの敗訴部分の取消し及び被控訴人らの請求をいずれも棄却することを求めて,本件控訴を提起した。 3 判断の基礎となる事実及び争点は,次のとおり付加訂正する他は,原判決の「第2 事案の概要」の「1 判断の基礎となる事実」及び「2 争点」(原判決4頁6行目から17頁19行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。 (1) 原判決4頁7行目から8行目の「証拠又は弁論の全趣旨」を「証拠又は弁論 の全趣旨に加えて当裁判所に顕著な事実」に改める。 (2) 原判決9頁4行目末尾に次のとおり挿入する。 「被控訴人ロレアルは,同判決に対して,上告及び上告受理申立てをしたが,上告については,同年11月5日に取り下げられ,上告受理申立てについては,平成25年3月5日に不受理決定がされ,同判決は確定した(当裁判所に顕著な事実)。 これに伴い,本件訂正請求を認める前記審決も確定した。」(3) 原判決10頁12行目末尾に,改行の上,次のとおり挿入する。 「また,本件容器は,本件特許訂正発明1の構成要件訂正Aから訂正F及び訂正Hを,本件特許訂正発明2の構成要件訂正Iから訂正Kをそれぞれ充足する(構成要件訂正Gの充足性については争いがある。)。」(4) 原判決10頁16行目末尾に,次のとおり挿入する。 「この判定請求事件において,被控訴人エヌ・エル・オーが提出した答弁書には,「請求人の説明する繰り出し容器は,被請求人の製造・販売に係る製品とは異なる。」等との記載があった。」(5) 原判決17頁7行目を次のとおり改める。 「ア本件容器が本件特許訂正発明1及び同2の技術的範囲に属するか」(6 請求人の製造・販売に係る製品とは異なる。」等との記載があった。」(5) 原判決17頁7行目を次のとおり改める。 「ア本件容器が本件特許訂正発明1及び同2の技術的範囲に属するか」(6) 原判決17頁11行目末尾に,改行の上,次のとおり挿入する。 「エ先使用権の消滅(争点1-4)」第3 争点に関する当事者の主張 1 当事者の主張は,次のとおり付加訂正する他は,原判決の「第3 争点に対する当事者の主張」(原判決17頁20行目から35頁8行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 原判決17頁21行目から18頁24行目を次のとおり改める。 「1 争点1-1(本件容器が本件特許訂正発明1及び同2の技術的範囲に属するか)について【控訴人らの主張】 本件容器は,「突状部は,内側部材が外側部材から取り出された時においても曲がっている」との構成を備えるが,これにより,内側部材は外側部材に収容されていたことが確認できる。そのため,本件容器は,本件特許訂正発明1の「分別時においても突片部(6)が変形していることで使用済み確認を可能にした」(構成要件訂正G)を充足する。 したがって,本件容器は,本件特許訂正発明1及びこれを引用する本件特許訂正発明2の技術的範囲に属する(本件特許発明1及びこれを引用する本件特許発明2の技術的範囲にも属する。)。 【被控訴人らの主張】本件容器において,「分別時の使用済み確認」は,突片部の変形によって可能になるものではないから,構成要件訂正Gを充足しない。すなわち,「使用済み」の意味が,繰り出し容器に収納された製品が本来の目的に使用されたことであるならば,「使用済み」であることは,口紅の消耗から一見して明らかであり,内筒と外筒とを分解して,突片部の変形の有無を確 済み」の意味が,繰り出し容器に収納された製品が本来の目的に使用されたことであるならば,「使用済み」であることは,口紅の消耗から一見して明らかであり,内筒と外筒とを分解して,突片部の変形の有無を確認するまでもない。他方,「使用済み」の意味が,繰り出し容器として組み立てられたことをもって,その部品である内筒が「使用済み」になるという意味であるとすると,そもそも,内筒が外筒に収容されている状態の製品を見れば,内筒が「使用済み」であることは一目瞭然であり,内筒と外筒とを分解して,突片部の変形の有無を確認するまでもない。 なお,本件容器は,内筒と外筒を「分別」して回収すること自体が不可能であり,実際にそのような分別回収がなされることはあり得ない。外筒を破壊しない限り,内筒と外筒は外れないし,外筒を破壊し,内筒だけを分別回収して再利用するなどということはあり得ないからである。 したがって,本件容器は構成要件訂正Gを充足せず,本件特許訂正発明1及びこれを引用する本件特許訂正発明2の技術的範囲に属しない。」 3 原判決24頁21行目末尾に,改行の上,次のとおり挿入する。 「このように,被控訴人らが本件特許発明について先使用による通常実施権を有 するのであるから,本件特許発明をさらに限定する本件特許訂正発明についても,被控訴人らは先使用権を有することになる。」 4 原判決28頁17行目及び20行目の「シャ・シン社」を,いずれも「蘇州シャ・シン社」と改める。 5 原判決29頁3行目末尾に,改行の上,次のとおり挿入する。 「また,被控訴人らは,本件特許訂正発明についても,本件特許発明と同様に,先使用権を有することはない。」 6 原判決30頁18行目末尾に,改行の上,次のとおり挿入する。 「ウ本件容器の突状部は,甲19考案の らは,本件特許訂正発明についても,本件特許発明と同様に,先使用権を有することはない。」 6 原判決30頁18行目末尾に,改行の上,次のとおり挿入する。 「ウ本件容器の突状部は,甲19考案のうち,弾性係合固定片を「等分に設置」との要件を満たさず,また,「円滑な回転制御を確保する」という機能を果たし得ないから,本件容器は甲19考案の作用効果を奏し得るものではなく,本件容器は甲19考案の実施品には該当しない。蘇州シャ・シン社は,あくまで控訴人Xの指示に基づいて本件容器を作製したものである。」 7 原判決32頁5行目末尾に,改行の上,次のとおり挿入する。 「4 争点1-4(先使用権の消滅)【控訴人らの主張】特許法79条の先使用による通常実施権は,特許出願前に発明の実施事業又はその準備を行っていた者に付与される権利であるが,先使用による通常実施権者が,発明の実施の事業を中止又は中断した場合は,一旦成立した通常実施権は消滅し,再度事業を再開したとしても先使用の抗弁は認められるべきではない。 被控訴人らの主張によれば,被控訴人らは,突片部を有する容器を使用した本件口紅を平成19年3月中旬ころ発売したが,同年末ころには,突片部を有する容器の使用を中止しており,その後5年以上の間,突片部を有する容器を用いた本件口紅の販売を再開していない。 仮に,被控訴人らに先使用による通常実施権が成立したとしても,実施事業の中止によって,当該通常実施権は消滅している。 【被控訴人らの主張】被控訴人らの取得した先使用による通常実施権について,実施を中止したことにより消滅したとの控訴人らの主張は,法的根拠がなく,その主張自体失当である。 また,被控訴人らの本件口紅の輸入行為が行われたのが平成19年であったとしても,本件口紅は ついて,実施を中止したことにより消滅したとの控訴人らの主張は,法的根拠がなく,その主張自体失当である。 また,被控訴人らの本件口紅の輸入行為が行われたのが平成19年であったとしても,本件口紅は平成23年時点で市場で販売されており,この点からも,控訴人らの主張は失当である。」 8 原判決32頁6行目冒頭の「4」を「5」に,33頁1行目冒頭の「5」を「6」に,同4行目,同14行目,34頁2行目,同6行目及び同24行目の「前記4」を「前記5」に,33頁23行目冒頭の「6」を「7」に,34頁11行目冒頭の「7」を「8」に,同21行目冒頭の「8」を「9」に,それぞれ改める。 第4 当裁判所の判断 1 当裁判所は,被控訴人らの請求について,不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求の損害額について結論を異にする他は,原判決のとおりであると判断する。 その理由は,次のとおり付加訂正する他は,原判決の「第4 当裁判所の判断」(原判決35頁9行目から57頁21行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。 (1) 原判決35頁10行目から37頁24行目を次のとおり改める。 「1 争点1-1(本件容器が本件特許訂正発明1及び同2の技術的範囲に属するか)について本件容器につき,本件特許訂正発明1及び同2のうち構成要件訂正Gを除く部分の充足性に争いはない。 そして,以下のとおり,本件容器は,構成要件訂正Gも充足するため,本件特許訂正発明1及び同2の各技術的範囲に属すると判断する。 (1) 特許請求の範囲の文言構成要件訂正Gは,「分別時においても突片部(6)が変形していることで,使用済み確認を可能にしたことを特徴とする」とするものであるが,特許請求の範囲の その他の記載とを併せて読むと,内筒部(4)の外壁に設けられた変形 時においても突片部(6)が変形していることで,使用済み確認を可能にしたことを特徴とする」とするものであるが,特許請求の範囲の その他の記載とを併せて読むと,内筒部(4)の外壁に設けられた変形可能な突片部(6)が,内筒部(4)を外筒部(3)に収容する際に変形することにより,その後に内筒部(4)と外筒部(3)を分別しても,その変形が視覚的に確認可能な程度に残存すること,つまり,突片部(6)の変形残存によって,内筒部(4)が繰り出し容器として使用済みであることを確認し得ることを前提としていると解される。 (2) 本件明細書の記載本件明細書は,【発明が解決しようとする課題】につき,「この発明は,被繰り出し物の用途に応じてリュースをしてはいけない場合や,衛生面に特に配慮が必要な部材を分別後,又は,部材洗浄後にも特定可能な構造の繰り出し容器を得ようとするものである。」(段落【0008】)とした上,【課題を解決するための手段】として,「内筒部4の外壁に変形可能な突片部6を設け,内筒部4を外筒部3に収容する際に,突片部6を変形させ,分別時の使用済み確認を可能にした」(段落【0009】),「このように,容器の分別後には突片部6が変形しているので使用済み部材であることを容易に確認することができる。」(段落【0010】)と記載されている。 これら記載は,特許請求の範囲に基づく上記(1)の解釈と整合するものといえる。 (3) 構成要件訂正Gの解釈以上によれば,構成要件訂正Gは,内筒部(4)の外壁に設けられた突片部(6)につき,内筒部(4)の外筒部(3)への収容時に生じる変形が,内筒部(4)と外筒部(3)の分別後にも,視覚的に確認可能な程度残存していることを求めるものと解される。 (4) 本件容器の構成前記判断の基礎となる事 外筒部(3)への収容時に生じる変形が,内筒部(4)と外筒部(3)の分別後にも,視覚的に確認可能な程度残存していることを求めるものと解される。 (4) 本件容器の構成前記判断の基礎となる事実,証拠(甲51,乙21,証人A)及び弁論の全趣旨によれば,本件容器の構成につき,以下の事実が認められる(本件図面[甲51]は,被控訴人らが日本国内で販売する口紅のうち商品名「ランコム」の口紅容器に係るものであるが,これと本件容器との間には,以下の認定の範囲において構成上 の差異はない。)。 本件容器の内側部材の外周面には,容易に曲げることができる水平方向に突き出した突状部が設けられている。当該突状部は,内側部材底部と内側部材を回転させる回転台が相互に接続する周囲縁上に4片設けられており,薄片状のポリプロピレン(PP)又は同程度の弾性を有するプラスチックでできている。これら4片の突状部は,内側部材の長手軸に対して直交し,かつ,互いに直交する2本の軸線のそれぞれに対して線対称に設けられており,一方の軸線からの距離が他方の軸線からの距離よりやや離れて設けられている。本件容器を組み立てた状態,すなわち,内側部材が外側部材により外側を覆われた状態で,いずれの突状部も,回転台側に折れ曲がっている。一旦組み立てた本件容器を分解した場合,回転台側に押し倒された突状部は復元力により元の起立した状態に戻ろうとするが,塑性変形した分は元に戻らず,折れ曲がった状態が視覚的に確認できる程度残存する。 (5) 充足性の判断本件容器の「内側部材」は本件特許訂正発明1の「内筒部(4)」に,「外側部材」は「外筒部(3)」に当たり,「突状部」は,「内筒部(4)の外壁に設けられた突片部」に当たる。そして,当該「突状部」は,本件容器を組み立てた状態で,回転台側に 明1の「内筒部(4)」に,「外側部材」は「外筒部(3)」に当たり,「突状部」は,「内筒部(4)の外壁に設けられた突片部」に当たる。そして,当該「突状部」は,本件容器を組み立てた状態で,回転台側に折れ曲がる上,本件容器の分解後も,それら突状部は水平方向には戻らず,折れ曲がった状態が視覚的に確認できる程度残存すると認められるから,構成要件訂正Gの求める構成,つまり,突片部(6)の変形が,内筒部(4)と外筒部(3)の分別後にも,視覚的に確認可能な程度に残存するとの構成を備えており,同構成要件を充足するといえる。 (6) 小括したがって,本件容器は,本件特許訂正発明1及び同2の全ての構成要件を充足しており,それらの技術的範囲に属するといえる。」(2) 原判決53頁22行目の「本件特許発明1及び同2」を「本件特許訂正発明1及び同2」に,54頁15行目の「本件特許発明」を「本件特許訂正発明」に改 める。 (3) 原判決54頁20行目末尾に,改行の上,次のとおり挿入する。 「3 争点1-4(先使用による通常実施権の消滅)について控訴人らは,被控訴人らが先使用による通常実施権を有したとしても,当該通常実施権は,消滅していると主張する。 しかし,控訴人らの主張は,以下のとおり,採用できない。 特許法79条は,特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は,その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において,通常実施権を有すると規定する。 前記2のとおり,被控訴人らは,平成19年3月1日に本件特許が出願された際,本件特許訂正発明1及び同2の技術的範囲に属する本件容器を備えた本件口紅を輸入し,もって「現に日本国内においてその発明の実施である事業」をしてい 訴人らは,平成19年3月1日に本件特許が出願された際,本件特許訂正発明1及び同2の技術的範囲に属する本件容器を備えた本件口紅を輸入し,もって「現に日本国内においてその発明の実施である事業」をしていたと認められる。そして,被控訴人らの輸入行為は,販売等に係る事業を目的とするものであること,被控訴人らは,その後本件容器を備えた本件口紅の輸入は行っていないが,控訴人Xが特許権侵害の事実を発見したとする平成23年1月においても,店頭で入手が可能な状態に置かれているとおり,本件容器を備えた本件口紅の販売が継続されていること,被控訴人らは,別のブランドでも突片部を有する容器の使用を行っていること(甲1,48,乙5,27,証人A,控訴人X,弁論の全趣旨)が認められる。これらの事情を総合すると,当該先使用による通常実施権が消滅したとの控訴人らの主張を採用することはできない。」(4) 原判決54頁21行目から55頁11行目を次のとおり改める。 「4 争点2-1(不正競争防止法2条1項14号(信用毀損行為)該当性)について前記判断の基礎となる事実(第2の1(5))記載のとおり,控訴人Xは,被控訴人らの取引先に書面を送付して,被控訴人らによる本件口紅の販売等が控訴人Xの本件特許権を侵害する旨の事実を告知し,また控訴人atooは,これに沿う記事及 び被控訴人らと控訴人らの紛争の経過をそのウェブサイトに掲載した。 しかし,前記のとおり,被控訴人らによる本件口紅の販売等は,被控訴人らに先使用による通常実施権が成立する結果,控訴人Xの本件特許権を侵害するものとは認められない。加えて,第2の1(5)のとおりの,控訴人らによる被控訴人らの取引先への告知の態様は,執拗かつ広汎であり,脅迫的とも評価し得ることを考慮すれば,控訴人らの上記行為は,「競 するものとは認められない。加えて,第2の1(5)のとおりの,控訴人らによる被控訴人らの取引先への告知の態様は,執拗かつ広汎であり,脅迫的とも評価し得ることを考慮すれば,控訴人らの上記行為は,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布」するものとして,不正競争防止法2条1項14号の定める不正競争行為(信用毀損行為)に該当するというべきである。 そして,上記書面の送付は控訴人Xの名によるもの,ウェブサイトへの掲載は控訴人atooによるものであるが,内容的に一体のものとして行われていること,控訴人Xは,控訴人atooの代表取締役であること,前記第2の1(1)のとおり,被控訴人らは「ロレアル」のブランドの下に事業を行っていることを考慮すると,上記信用毀損行為は,控訴人らが共同して,被控訴人ら各々に対して行ったものと認めるのが相当である。また,上記信用毀損行為は,期間的にも3か月ほどの間に集中して行われたこと,控訴人Xの意思の下に実行されたと考えられることからすれば,一連のものとして,全体として不正競争行為に該当するとするのが相当である。」(5) 原判決55頁12行目冒頭の「4」を「5」と改める。 (6) 原判決55頁21行目から57頁4行目を次のとおり改める。 「6 争点2-3(控訴人らの故意又は過失)について証拠及び弁論の全趣旨によれば,上記の認定事実に加えて,① 控訴人Xは,平成19年4月下旬には,蘇州シャ・シン社から,本件容器と同一の部位に同一形状の突状部を付けた容器図面を見せられ,当該突状部につき同社が日本で権利化している旨の説明を受けた上,同年6月にはそれが甲19考案に係る平成17年10月19日登録の実用新案権であることも知らされたこと(前記2(2)),② 控訴人Xは,平成22年6月2 同社が日本で権利化している旨の説明を受けた上,同年6月にはそれが甲19考案に係る平成17年10月19日登録の実用新案権であることも知らされたこと(前記2(2)),② 控訴人Xは,平成22年6月22日,特許庁に対し判定の請求をし(甲32),特許庁は,同 年10月29日付けで,「繰り出し容器」が本件特許権の技術的範囲に属する旨の判定をしたこと(甲24),③ 被控訴人らが本件特許権について先使用権を有するとの主張は,本件の訴状に至って初めてされたもので,前記判定の際の答弁書(甲33)にも,先行する仮処分(前記第2の1(6)のとおり)の際にも,主張されることはなかったこと,以上の各事実が認められる。 このように,控訴人Xは,特許庁から,「繰り出し容器」が本件特許権の技術的範囲に属する旨の判定を得ており,また,先使用権に関する主張は信用毀損行為の時点ではされてはいなかった。しかし,前記第2の1(5)のとおりの,控訴人らによる本件特許権を侵害するものであるとの告知が,被控訴人らの取引先に対してされていること,また,告知の態様は,執拗かつ広汎で,脅迫的と評価し得るようなものであったことをも考慮すれば,控訴人X及び同人が代表取締役を務める控訴人atooの行為は,過失に基づく信用毀損行為であるというべきである。 7 争点2-4(被控訴人らの損害)について(1) 無形損害控訴人らの前記信用毀損行為により被控訴人らが被った無形損害は,控訴人らの信用毀損行為の態様,回数,内容に加えて,本件口紅は本件特許訂正発明の技術的範囲に属するものの,被控訴人らに先使用権が発生する結果,本件特許権の侵害とならないことなど本件における諸般の事情を総合考慮し,被控訴人ら各自につき100万円と認めるのが相当である。 (2) 弁護士費用本件訴訟の 訴人らに先使用権が発生する結果,本件特許権の侵害とならないことなど本件における諸般の事情を総合考慮し,被控訴人ら各自につき100万円と認めるのが相当である。 (2) 弁護士費用本件訴訟の内容,難易度,金員請求に加えて差止請求も認容すべきことなど,本件における諸般の事情を総合考慮し,控訴人らの前記信用毀損行為と相当因果関係のある弁護士費用は,被控訴人ら各自につき10万円と認めるのが相当である。 (3) その他の損害被控訴人らは,他にも信用回復のための費用等を損害として主張するが,既に上記(1)及び(2)で評価した範囲を超えて,別途損害が生じたと認めるに足りる証拠は ない。 (4) 損害額の合計したがって,被控訴人らが被った損害額の合計は,それぞれ110万円ずつである。 (5) 連帯債務関係控訴人らの信用毀損行為は,客観的に関連共同して行われたものであるから,控訴人らは,被控訴人ら各自に対し,上記損害を連帯して賠償すべき責任を負うものといえる。」(7) 原判決57頁5行目冒頭の「7」を「8」に改める。 2 結論以上によれば,被控訴人らの請求は,(1)控訴人Xに対する本件特許権に基づく差止請求権,損害賠償請求権及び不当利得返還請求権をいずれも有しないことの確認請求,(2)①控訴人らに対する差止請求,③控訴人らに対する各110万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払請求の限度で理由があり,その余の被控訴人らの請求は理由がなく棄却するべきであるから,原判決を変更することとして主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官 きであるから,原判決を変更することとして主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官飯村敏明 裁判官八木貴美子 裁判官小田真治 (別紙)商品目録商品名メイベリンウォーターシャイニーピュアダイヤモンド(同商品のうち,同商品の繰り出し容器の内筒部の外壁に突片部があるタイプ)輸入者日本ロレアル株式会社 (別紙)特許権目録名称繰り出し容器出願日平成19年3月1日出願番号特願2007-89375登録日平成21年8月14日特許番号特許第4356901号 (別紙)謝罪文目録(被控訴人ら請求) <掲載省略> (別紙)信用回復措置対象アドレス目録 <掲載省略> 別紙本件口紅輸入経過表 <掲載省略>
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