平成20(行コ)48 既得権有効確認請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第216号)

裁判年月日・裁判所
平成21年1月28日 東京高等裁判所 その他
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判決文本文5,058 文字)

- 1 -主文本件控訴を棄却する。 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨原判決を取り消す。 被控訴人は,控訴人に対し,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法 律第28条第1項の規定又は第2項の規定に基づく条例の規定を,控訴人が営む店舗型性風俗特殊営業(所在東京都中央区α×番地14,名称A)について,適用しないことを確認する。 (略語等は,原則として,原判決に従う)第2事案の概要。 控訴人は,肩書地所在の建物()において,いわゆるファッション 本件営業所ヘルス業を営んでいたところ,同営業は,昭和59年法律第76号による改正後の風(),俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の施行に伴い昭和59年風営法同法の規制対象である風俗関連営業に該当することとなったが,控訴人が東京都公安委員会に対し,同法27条1項,昭和59年法律第76号附則4条に基づく届出をしたことから,昭和59年風営法28条3項により,同条2項に基づく条例の適用を受けないものとして営業を継続していた。 控訴人は,平成16年2月,本件営業所の工事()を行ったところ,所轄本件工事警察署より,本件工事は大規模な修繕等に当たり,平成10年法律第55号による改正後の風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律()28平成10年風営法条2項に基づく条例の適用を受ける結果,今後は上記営業を継続できないとされたことから,本件工事は大規模な修繕等に該当せず,控訴人の営業には同条3項が適用されるとして,上記営業について同条1項の規定又は2項の規定に基づく条例の規定を適用しないことの確認を求めた事案である。 原審は,控訴人の請求を棄却した。 - 2 -当裁判所も,原審と同様に,控訴人の請求を棄却すべきものと判 同条1項の規定又は2項の規定に基づく条例の規定を適用しないことの確認を求めた事案である。 原審は,控訴人の請求を棄却した。 - 2 -当裁判所も,原審と同様に,控訴人の請求を棄却すべきものと判断した。 法令の規定等,争いのない事実,争点,争点に関する当事者の主張は,当審に おける控訴人の主張及び被控訴人の反論を次項に加えるほかは,原判決の事実及び理「」()由の第2事案の概要1から4まで原判決2頁21行目から7頁20行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 当審における控訴人の主張及び被控訴人の反論 憲法22条違反(1)(控訴人)風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律()は,職業選択の自由風営法を保障する憲法22条に違反するから,同法に基づいて控訴人の営業の自由を事実上制限する被控訴人の処分は無効である「営業の自由」は,基幹的・根源的な基本的人。 権であり,真にやむを得ない理由がなければ,その制限は許されない。自由主義経済の発展のためには,あらゆる「営業の自由」を基本的に保障することが最大の「公共の福祉」である。風営法違反の罪は,同法が定めている行政手続を担保するために設けられている「いわゆる行政罰」と呼ばれる犯罪にすぎないものであり,6月以下の懲役又は100万円以下の罰金という法定刑でしか処罰されないものであるのに,この規定があることを理由に基本的人権としての「営業の自由」を制限することは憲法に違反する。 (被控訴人)風営法は,憲法22条に違反しない。風営法上の規制は,憲法22条1項にいう公共の福祉のために要求される必要かつ合理的な規制措置として,その合憲性が是認されている。控訴人の主張は,風営法28条1項の規定又は2項の規定の適用を受けるか否かを確認する本件訴訟の請求の趣旨と明らかに の福祉のために要求される必要かつ合理的な規制措置として,その合憲性が是認されている。控訴人の主張は,風営法28条1項の規定又は2項の規定の適用を受けるか否かを確認する本件訴訟の請求の趣旨と明らかに矛盾する。 憲法31条違反(2)(控訴人)被控訴人は,風営法29条による指示処分,同法30条による業務の停止ないし廃- 3 -止命令の行政手続を経て,控訴人の本件営業所の既得権の消滅を確定させなければならないにもかかわらず,この手続を経ていない。このような行政の指示・助言・指導を行なわずに本件営業所における営業ができないとする被控訴人の判断は,適正手続を保障した憲法31条に違反している。控訴人は,既得権を有し,禁止区域内で店舗型性風俗特殊営業を営んでいたものであり,もともと既得権のない者が禁止区域内で営業した場合と異なり,既得権の存否について手続保障がされなければならない。現に被控訴人は,平成9年2月,控訴人が本件営業所の工事を実施した際には,控訴人に対し,弁明の機会を与え,営業所の構造を届出時の状態に復するよう指示処分をしている。 (被控訴人)風営法上,控訴人に対して行うべき行政上の措置は何ら規定されていない。風営法29条に基づく指示については,同条かっこ内のただし書で,風営法28条2項の規定に基づく条例の規定は除外されていることから指示処分をすることができないし,同法30条2項の営業廃止命令についても,本件営業所における営業は風営法49条6号の罪に該当するから営業廃止命令をすることはできない。平成9年当時に被控訴人が指示処分をしていたからといって,本件工事について指示処分等の行政処分を行わなかったことが違法となるものではない。 風営法28条3項の解釈(3)(控訴人)控訴人の営業は,本件工事によって営業としての同一性は失われていな いって,本件工事について指示処分等の行政処分を行わなかったことが違法となるものではない。 風営法28条3項の解釈(3)(控訴人)控訴人の営業は,本件工事によって営業としての同一性は失われていない。風営法28条3項にいう「現に営業を営む者の営業」の解釈運用においては法の制度趣旨から具体的な基準を導き出すことが不可欠であり,風俗営業が周辺環境に及ぼす負荷について,空間軸及び時間軸の両面から観察すべきところ,本件工事後の本件営業所における営業は,いずれの面からみても,周辺環境に及ぼす負荷が増大しているとまではいえないから,本件工事の前後において営業の同一性が維持されていると認められる。具体的には,店舗型性風俗特殊営業の店舗が空間軸において周辺に与える負荷と- 4 -しては,当該店舗が存在しているということそのものによる視覚的な負荷ということになるが,この場合の着眼点は,店舗の位置,規模,意匠の変動にあり,店舗内部の壁や床の素材が何であるか,柱が交換されたかということは,営業の同一性判断とは何の関係もないことになる。また,上記店舗の時間軸において周辺に与える影響については,店舗の存在時間に正比例的に性風俗の悪化が見られることはなく,存続期間がそのまま負荷の増大に結果するわけでもない。仮に「大規模な修繕」及び「大規模な模様替」が行われたとしても,それが既存の営業の寿命を延長させ時間軸でみた風俗環境への負荷を増大させるものかどうかは,単純に捉えることはできないから,現時点で本件工事により「営業の同一性」が失われたということはできない。 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について平「」(,,),成14年1月22日付け警察庁丙生環発第4号警察庁丙少発第3号は本件基準上記の風俗営業の周辺環境への負荷 制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について平「」(,,),成14年1月22日付け警察庁丙生環発第4号警察庁丙少発第3号は本件基準上記の風俗営業の周辺環境への負荷という基底的な観点が欠けているから,本件基準の機械的なあてはめによって結論を出すべきでない。 (被控訴人)本件基準は,風営法28条3項の制度趣旨に従い,営業所について新築,改築,大規模な修繕等がされた場合は,もはや営業としての同一性が失われたとするもので,同項の解釈基準として,相当かつ合理的なものである。控訴人は,営業の同一性の判断につき営業が周辺環境に及ぼす負荷を考慮すべきであると主張するが,控訴人独自の見解であって失当である。仮に控訴人の見解に従うとしても,本件工事後の本件営業所の周辺環境に及ぼす負荷は増大するものと認められる。 第3当裁判所の判断当裁判所の判断は,次項で当審における控訴人の主張に対する判断を加えるほ かは,原判決の事実及び理由の「第3争点に対する判断」1から5まで(原判決7頁22行目から11頁21行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 当審における控訴人の主張に対する判断 憲法22条違反について(1)- 5 -控訴人は,本件訴訟において,風営法28条1項の規定又は2項の規定が有効であることを前提とし,これらの規定に基づく条例の規定を控訴人の営む本件営業に適用しないことの確認を求めていると解されるから,風営法自体の違憲無効を主張することには矛盾があるといわざるを得ないが,有効であることを前提としていないと解するとしても,風営法の規制は,善良な風俗と清浄な風俗環境の保持及び少年の健全な育成という目的のために制定された,公共の福祉のための合理的な制限であり,憲法22条に違反するものではないから,控訴人 するとしても,風営法の規制は,善良な風俗と清浄な風俗環境の保持及び少年の健全な育成という目的のために制定された,公共の福祉のための合理的な制限であり,憲法22条に違反するものではないから,控訴人の主張は失当である。 憲法31条違反について(2)控訴人の本件営業所における営業は,本来営業が許されない地域において,例外的に営業の継続が認められたものであるから,営業の同一性が失われるような場合には風営法28条3項の適用が除外されると解すべきであり,同条項の適用がなくなるか否かは,現実に行われた工事の結果に基づき客観的に判断されるべきであることは,上記引用に係る原判決の判断するとおりである。そして,風営法上,同条項の適用がなくなる場合について控訴人主張のような指示処分等の措置を採らなければならないとの規定はない。本件工事により,本件営業所における営業につきその同一性が失われたと認められることは後記のとおりである。 したがって,控訴人の既得権が消滅することにつき,被控訴人が控訴人主張の行政処分をしなかったからといって,何らの違法もないというべきであって,被控訴人の手続が憲法31条に違反するとの主張は理由がない。なお,上記引用に係る原判決が認定した本件工事の経緯に照らすと,本件営業所の構造を本件工事前の状態に復することは不可能であったと認められ,控訴人主張のような指示・助言・指導を行う余地はなかったというべきである。 風営法28条3項の解釈について(3)本件基準の内容が相当かつ合理的なものと認められ,控訴人の本件工事が,本件営業所の大規模の修繕若しくは模様替をするものであり,本件営業所の営業につきその同一性が失われたと認められることは,上記引用に係る原判決が認定説示するとおり- 6 -である(控訴人は,当審において,甲第12号証の写真を提出 は模様替をするものであり,本件営業所の営業につきその同一性が失われたと認められることは,上記引用に係る原判決が認定説示するとおり- 6 -である(控訴人は,当審において,甲第12号証の写真を提出し,被控訴人の提出した乙第10号証の写真と比較して,工事前後で変化は乏しく営業の同一性があると主張するが,上記証拠によっても,原判決の認定を左右しない。 。)控訴人は,空間軸及び時間軸の両面からの検討により,本件営業所の周辺環境に及ぼす負荷が増大しているとはいえないなどと主張するが,独自の見解であって採用できない。本件工事によって,本件営業所は,外壁及び店内の塗装,模様等がすべて新しいものに変えられており,耐久性,耐用年数が増したことは明らかである。 よって,控訴人の請求は理由がない。 第4 結論 以上によれば,原判決は相当であるから,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第1民事部裁判長裁判官一宮なほみ裁判官土屋文昭裁判官田川直之

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