平成25(ワ)12789 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年1月15日 大阪地方裁判所
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判決文本文11,598 文字)

主文 1 被告は,原告Aに対し,11万円及びこれに対する平成24年8月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告B,同C,同D及び同Eに対し,それぞれ5万5000円及びこれに対する平成24年8月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,これを100分し,その3を被告の負担とし,その余を原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告らに対し,それぞれ200万円及びこれに対する平成24年8月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,甲事件において死刑判決を言い渡され,死刑確定者として乙拘置所に収容されている原告A並びに同人の再審請求のために選任された弁護人(以下「再審請求弁護人」という。)である原告B,同C,同D及び同E(以下,原告B,原告C,原告Dと併せて「原告Bら」という。)が,原告Bらが乙拘置所において原告Aと面会する際に同拘置所長(以下「拘置所長」という。)に対し,120分間の面会を認めること,同拘置所職員(以下「職員」という。)の立会いのない面会を認めること,コンピューターの使用を認めることを要請したにもかかわらず,拘置所長が面会時間を60分に限定したこと,職員の立会いのない面会を認めなかったこと,コンピューターの使用を一切認めなかったことが違法であると主張して,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項による損害賠償請求権に基づき,被告に対し,それぞれ200万円(慰謝 料等及び弁護士費用の合計金額)及びこれに対する平成24年8月29日(不法行為の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅 害賠償請求権に基づき,被告に対し,それぞれ200万円(慰謝 料等及び弁護士費用の合計金額)及びこれに対する平成24年8月29日(不法行為の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実並びに争いのない事実)(1) 原告Aは,平成14年12月11日,丙地方裁判所において,殺人,殺人未遂及び詐欺事件の被告人として死刑判決を言い渡された。原告Aは,これを不服として控訴したが控訴棄却の判決を言い渡され,上告審でも棄却の判決を言い渡されて,平成21年5月19日に死刑判決が確定し,同年6月3日以降,死刑確定者として乙拘置所に収容されている。原告Aは,同年7月22日,丙地方裁判所に再審の請求をした(同。 原告Bらは,いずれも弁護士であり,平成21年5月20日,原告Aから,上記再審請求の弁護人に選任された。(乙4)(2) 原告Bらは,平成24年8月28日,「要請書」と題する書面をもって,拘置所長に対し,同月29日午前10時から原告Aとの接見をする予定であり,接見の際には,120分間の接見を認めること,職員の立会いのない接見を認めること及びコンピューターの使用を認めることを要請した。(甲1)(3) 原告Bらは,平成24年8月29日午前10時前,乙拘置所において原告Aとの面会を申し入れた。その際,原告Bらは,職員に対し,PDF形式のファイルに変換した証拠をパソコンの画面に表示し,その利用方法を説明するとともに,面会終了後に同パソコンを確認してもらっても構わないこと,同パソコン内の訴訟関係記録,事件記録等を書類で持ち込むことはおよそ不可能であること,パソコンの録音機能や通信機能はいずれも用いないことを説明した。また,当日の面会の目的は, らっても構わないこと,同パソコン内の訴訟関係記録,事件記録等を書類で持ち込むことはおよそ不可能であること,パソコンの録音機能や通信機能はいずれも用いないことを説明した。また,当日の面会の目的は,真犯人は誰かという重要かつ秘密を要する事項であること,真犯人が原告Aの関係者や身内であることも否定できないことを説明し,立会いのない面会を求めた。 (4) 拘置所長は,職員を通じて,原告Bらの要請に対し,面会時間は60分とする(以下「本件措置1」という。),職員の立会いのない面会は認めない(以下「本件措置2」という。),コンピューターの使用は一切認めない(以下「本件措置3」という。)旨回答した。 原告Bらは,上記回答の内容では,本来の面会目的を達することはできないとして,同日に原告Aと面会することを取りやめた。 (甲4,乙10,11)(5) 関連法令の定めア刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「刑事収容法」という。)(ア) 114条1項刑事施設の長は,受刑者の面会に関し,法務省令で定めるところにより,面会の相手方の人数,面会の場所,日及び時間帯,面会の時間及び回数その他面会の態様について,刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限をすることができる。 2項前項の規定により面会の回数について制限をするときは,その回数は,1月につき2回を下回ってはならない。 (イ) 120条1項刑事施設の長は,死刑確定者(未決拘禁者としての地位を有するものを除く。以下この目において同じ。)に対し,次に掲げる者から面会の申出があったときは,148条3項又は次節の規定により禁止される場合を除き,これを許すものとする。 1号死刑確定者の親族 2号婚姻関係の調整,訴訟の遂行,事 に掲げる者から面会の申出があったときは,148条3項又は次節の規定により禁止される場合を除き,これを許すものとする。 1号死刑確定者の親族 2号婚姻関係の調整,訴訟の遂行,事業の維持その他の死刑確定者の身分上,法律上又は業務上の重大な利害に係る用務の処理のため面会することが必要な者3号面会により死刑確定者の心情の安定に資すると認められる者(ウ) 121条刑事施設の長は,その指名する職員に,死刑確定者の面会に立ち会わせ,又はその面会の状況を録音させ,若しくは録画させるものとする。 ただし,死刑確定者の訴訟の準備その他の正当な利益の保護のためその立会い又は録音若しくは録画をさせないことを適当とする事情がある場合において,相当と認めるときは,この限りでない。 (エ) 122条1項113条(1項2号ニを除く。)及び114条の規定は,死刑確定者の面会について準用する。この場合において,同条2項中「1月につき2回」とあるのは,「1日につき1回」と読み替えるものとする。 イ刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則(以下「処遇規則」という。)73条刑事収容法114条1項の規定により被収容者の面会の時間について制限をするときは,その時間は,30分を下回ってはならない。ただし,面会の申出の状況,面会の場所として指定する室の数その他の事情に照らしてやむを得ないと認めるときは,5分を下回らない範囲内で,30分を下回る時間に制限することができる。 3 争点及び争点に対する当事者の主張(1) 拘置所長が面会時間を60分しか認めなかったこと(本件措置1)が違法であるか(争点1)(原告らの主張)ア憲法34条,37条3項,国際準則,刑訴法39条1項等は,被告人に ついて一切 会時間を60分しか認めなかったこと(本件措置1)が違法であるか(争点1)(原告らの主張)ア憲法34条,37条3項,国際準則,刑訴法39条1項等は,被告人に ついて一切の制限を許さない秘密交通権(以下「絶対的秘密交通権」という。)を保障していること,刑訴法440条1項が再審請求人の弁護人選任権を認めていることからすれば,再審請求人及び再審請求弁護人にも絶対的秘密交通権が認められるべきであり,これが認められなければ,再審請求弁護人が実効性のある弁護活動をすることが困難となる。 また,憲法32条は市民の側から見れば公正な裁判にアクセスする権利を保障していると解すべきである。そして,再審請求人に公正な裁判へアクセスする権利を保障するためには法的援助者たる弁護人との自由な秘密接見が保障されなければならないところ,再審請求をする死刑確定者の法的及び現実的な状況を勘案すれば,同人に絶対的秘密交通権を保障するものと解すべきである。 以上のように,再審を請求する死刑確定者及びその弁護人には絶対的秘密交通権が保障されるから,弁護人と再審を請求する死刑確定者との面会の時間を制限する正当な権限なしに面会時間を60分に制限した拘置所長の措置は刑訴法39条1項等に反し,違法である。 イ仮に,再審請求者に刑訴法39条1項の適用がないとしても,刑事収容法120条1項2号は,重要用務者に面会の権利を認めており,再審請求弁護人は重要な用務者であるから,同人には絶対的秘密交通権が認められるべきであり,刑事収容法を根拠に面会に制限を付すことはできない。 (被告の主張)ア死刑確定者は,判決の効力により拘束され,死刑の執行のために必然的に付随する手続として一般社会とは厳重に隔絶してその身柄を確保されるべき者として を付すことはできない。 (被告の主張)ア死刑確定者は,判決の効力により拘束され,死刑の執行のために必然的に付随する手続として一般社会とは厳重に隔絶してその身柄を確保されるべき者として収容されているから,被告人又は被疑者とは全く異なる地位にあり,再審請求をする死刑確定者に刑訴法39条1項は適用されないし,その類推適用又は準用がされることもない。 イ刑事収容法122条,処遇規則73条によれば,刑事施設の長は,刑事 施設の管理運営上必要があれば,死刑確定者の面会の時間を制限することができる。拘置所長は,原告Bらの面会の目的が再審請求に関する打ち合わせであり,従前から再審請求弁護人の面会時間を60分程度まで伸張する配慮をしていた経緯を考慮し,原告Aに対しても再審請求弁護人からの援助を受ける機会を実質的に保障するため,60分の面会時間を認める判断をしたものである。このように,拘置所長が,原告Aと原告Bらの面会時間を60分としたこと(本件措置1)は,刑事施設の管理運営上,必要かつ合理的な制限であり,裁量権の逸脱又は濫用は認められないから,国賠法1条1項の適用上,違法とはいえない。 (2) 拘置所長が職員の立会いのない面会を認めなかったこと(本件措置2)が違法であるか(争点2)(原告らの主張)ア再審請求における弁護人選任権は憲法34条によって保障されるから,再審請求弁護人の面会にも刑訴法39条1項の適用,類推適用ないし準用が認められるべきである。したがって,職員の立会いのない面会を認めなかった拘置所長の措置は違法である。 イ仮に,刑訴法39条1項が適用されないとしても,次のとおり,立会いのない面会を認めなかった拘置所長の措置は違法である。 刑訴法440条1項は再審請求人の弁護人選任権を認めてお 法である。 イ仮に,刑訴法39条1項が適用されないとしても,次のとおり,立会いのない面会を認めなかった拘置所長の措置は違法である。 刑訴法440条1項は再審請求人の弁護人選任権を認めており,再審請求弁護人が請求人との信頼関係を形成,維持していくためには職員の立会いのない面会を行うことが必要不可欠である。また,原告らが予定していた打ち合わせ内容は真犯人が誰であるかという秘密性の確保が特に必要とされる事項であって,職員の立会いを強要することは面会を認めないことに等しいことからすれば,原告Bらが職員の立会いのない面会をすることは,再審請求弁護人の固有の権利利益であり,かつ,再審請求人の固有の利益でもある。 再審を請求する死刑確定者とその弁護人が再審請求の打ち合わせのために面会する場合は,訴訟準備その他の正当な利益の保護のため,職員の立会いをさせないことを適当とする事情があり,相当と認めるときに該当するから,刑事収容法121条ただし書きに基づき,職員の立会いを省略すべきである。 なお,被告が,原告Aに自殺,自傷の可能性があったとして提出する資料は,原告Aの自殺,自傷の蓋然性を分析するためにされた面会記録ではないから,これを根拠としてされた心情分析は不適切なものであり,信用できない。 このように拘置所長の本件措置2は,合理的な根拠がなく,著しく妥当性を欠くものであるから,裁量権を逸脱又は濫用したものとして違法である。 (被告の主張)拘置所長は,平成23年3月24日の面接調査による分析並びに同年7月12日及び平成24年3月22日に実施した職権面接での原告Aの言動等から,本件面会時において原告Aの精神状態は不安定であり,面会における会話状況や動静を踏まえて,同人の心情に及ぼす影響を把握する必要が高いと考 成24年3月22日に実施した職権面接での原告Aの言動等から,本件面会時において原告Aの精神状態は不安定であり,面会における会話状況や動静を踏まえて,同人の心情に及ぼす影響を把握する必要が高いと考え,本件措置2を講じたものであるから,裁量権の逸脱又は濫用はない。 (3) 拘置所長が面会においてパソコンの使用を認めなかったこと(本件措置3)が違法であるか(争点3)(原告らの主張)ア再審請求における弁護人選任権は憲法34条によって保障されるから,再審請求弁護人の面会にも刑訴法39条1項の適用が認められるべきであり,被告人等との面会においてパソコン等の電子機器が日常的に使用されていることからすれば,パソコンの使用は再審請求弁護人の固有の権利利 益であり,また,パソコンを持ち込んだ弁護人と面会することは再審請求人の権利利益でもあると解すべきである。 仮に,刑訴法39条1項の適用がないとしても,再審請求弁護人も被告人等の弁護人と類似する地位にあるから,再審請求弁護人と再審請求人には上記権利利益がある。さらに,原告Bらが,原告Aとの面会を効率的に行うためには,パソコンに訴訟記録等のデータを取り込み,すぐに検索できる状態にしておく必要があるから,原告Bらと原告Aの上記権利利益は法的保護に値する。 イ刑事収容法にはパソコンの使用を制限する根拠規定はなく,再審請求の訴訟準備のためのパソコンの持ち込みは,刑事収容法122条が準用する114条の刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限ではないから,本件措置3は合理的な根拠がなく,著しく妥当性を欠くものとして裁量権の逸脱又は濫用に当たり,違法である。 (被告の主張)ア再審請求弁護人が死刑確定者と面会するに当たり,パソコンを使用するこ ,本件措置3は合理的な根拠がなく,著しく妥当性を欠くものとして裁量権の逸脱又は濫用に当たり,違法である。 (被告の主張)ア再審請求弁護人が死刑確定者と面会するに当たり,パソコンを使用することは法律上保護された利益ではなく,刑事施設の長は再審請求弁護人にパソコンの使用を認める措置を講じる職務上の法的義務を負わない。 イ仮にパソコンが持ち込まれた場合,刑事施設の職員はそのパソコン内に不適切な情報が保存されていないかを確認する必要があり,限られた人的物的資源の中でかかる作業を行うことは本来の業務の適切な遂行を困難にし,刑事施設の管理運営上,支障を生じさせることは明らかである。また,外部交通の制限を超えた使用がされる恐れもある。再審請求弁護人としては面会に必要な証拠を印刷して持参すれば面会の目的は達成できるのであるから,パソコンの使用が制限されたとしても重大な不利益を被ることはない。たとえ,原告らが必要と考える証拠を印字して持参することが不可能である等の実情があったとしても,それによって,刑事施設の長にパソ コンの使用を認めるべき法的義務が発生するものではない。 (4) 原告らに生じた損害額(争点4)(原告らの主張)ア原告A原告Bらと面会できると期待していたのにそれができなかった焦燥感や,これにより再審請求の理由の補充に支障が出たことの苦痛に対する精神的損害は180万円を下らない。 イ原告Bら面会できると期待していたのにそれができなかった焦燥感,再審請求の理由を補充する作業に支障が出たこと及び本来不要であるはずの抗議や提訴をせざるを得なかったことの苦痛に対する精神的損害並びに面会の準備等に要した時間と乙拘置所までの交通費等の財産的損害の合計額は,180万円を下らない。 ウ び本来不要であるはずの抗議や提訴をせざるを得なかったことの苦痛に対する精神的損害並びに面会の準備等に要した時間と乙拘置所までの交通費等の財産的損害の合計額は,180万円を下らない。 ウ原告らそれぞれについて,必要な弁護士費用は1名あたり20万円を下らない。 (被告の主張)否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(拘置所長が面会時間を60分としたこと(本件措置1)が違法であるか)について(1) 死刑確定者は,死刑の執行を確保するための措置として,その執行に至るまで一般社会とは厳重に隔絶して刑事施設において拘置される者である。そして,再審請求手続においては当事者主義の構造がとられていないから,再審請求をする死刑確定者は,被告人や被疑者など検察官と対立する当事者とは全く異なる地位にある。このような死刑確定者の立場・地位,再審請求手続の構造に鑑みれば,再審請求をする死刑確定者に刑訴法39条1項は適用 されないし,その類推適用又は準用もないと解するのが相当であり,憲法32条,34条,37条3項,国際準則等が刑訴法39条1項の適用を認める根拠になるとも解されない。 刑事収容法114条1項及び処遇規則73条によれば,刑事施設の長には,面会の時間について,刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限をする裁量が認められている。他方,死刑確定者が再審請求の手続を行うには再審請求弁護人との面会の機会が実質的に保障されなければならないから,刑事施設の長が面会の時間を制限する際はかかる点に十分配慮をしなければならない。 これを本件についてみるに,証拠(乙10,12)及び弁論の全趣旨によれば,平成24年当時,原告Aが収容されていた乙拘置所の1日平均収容人員は1388名であったこと 分配慮をしなければならない。 これを本件についてみるに,証拠(乙10,12)及び弁論の全趣旨によれば,平成24年当時,原告Aが収容されていた乙拘置所の1日平均収容人員は1388名であったこと,乙拘置所には12室の一般面会室が設けられているが,立会職員の人員の関係上,稼働している面会室は7室から8室であったこと,面会時間は午前8時30分から午後零時まで及び午後1時から午後4時までの合計6時間30分であったこと,拘置所長は,原告Bらが要求する120分の面会時間を認めることは面会の実施に支障を生ずることが明白であるものの,従来も再審請求段階の弁護人との面会については60分程度まで伸長する配慮を行っていたことから,今回も60分までの面会を認めることとしたこと(本件措置1)が認められる。 上記認定事実によれば,拘置所長の本件措置1は,刑事収容法114条1項及び処遇規則73条の定めを前提としつつ,死刑確定者と再審請求弁護人との面会については60分程度まで伸長する従前の取扱いを考慮してされたものであって,上記法令が定める下限の時間,乙拘置所における収容人員,同所の人的物的設備の関係で実際に稼働させることができる面会室の数などに鑑みても,刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限であったというべきであり,原告Aと原告Bらが面会する利益を侵害するも のと評価することはできない。 したがって,本件措置1について拘置所長に裁量権の逸脱又は濫用は認められないから,この点に関する原告らの主張は理由がない。 2 争点2(拘置所長が職員の立会いのない面会を認めなかったこと(本件措置2)が違法であるか)について(1) 前判示のとおり,再審請求をする死刑確定者に刑訴法39条1項の適用,類推適用ないし準用はされないものの, 職員の立会いのない面会を認めなかったこと(本件措置2)が違法であるか)について(1) 前判示のとおり,再審請求をする死刑確定者に刑訴法39条1項の適用,類推適用ないし準用はされないものの,刑訴法440条1項が再審請求者の利益保護のために弁護人の関与を認めている趣旨からすれば,その手続を保障し,弁護人の活動を実効あらしめるためには秘密面会の利益が保護されることが不可欠であると解される。そうすると,再審請求をする死刑確定者については,刑事収容法121条ただし書きにいう「正当な利益」として,再審請求弁護人については刑訴法440条1項の趣旨から,それぞれ秘密面会をする利益があると解するのが相当である。 そして,秘密面会の利益が死刑確定者と再審請求弁護人にとって重要なものであることに鑑みれば,刑事施設の長は,死刑確定者の面会に関する許否の権限を行使するに当たっては,刑事施設の規律及び秩序の維持等の観点からその権限を適切に行使することは勿論,上記秘密面会の利益をも十分に尊重しなければならない。 したがって,死刑確定者又は再審請求弁護人が再審請求に向けた打合せをするために秘密面会の申出をした場合に,これを許さない刑事施設の長の措置は,秘密面会により刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認められ,又は死刑確定者の面会についての意向を踏まえその心情の安定を把握する必要性が高いと認められるなど特段の事情がない限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして,国賠法1条1項の適用上違法となると解するのが相当である(・平成25年12月10日第三小法廷判決・民集67巻9号1761頁参照)。 (2) この点,被告は,原告Aの心情に及ぼす影響を把握する必要が高かったことから,本件措置2を講じた (・平成25年12月10日第三小法廷判決・民集67巻9号1761頁参照)。 (2) この点,被告は,原告Aの心情に及ぼす影響を把握する必要が高かったことから,本件措置2を講じた旨主張する。 そこで検討するに,証拠(乙5ないし8)によれば,乙拘置所の統括矯正処遇官は,平成21年12月11日,原告Aが同月8日の職権面接の際,「自殺の可能性は高いよ。」「ぽっくり死にたい。」などと自殺,自傷を疑わせる発言をした旨記載した視察表を作成していること,分類部上席統括矯正処遇官は平成23年3月24日に原告Aと面接し,原告Aに軽い躁傾向が認められ,狭義の精神病と人格の偏りの中間に位置するような心性を有しており,当面行動が安定する可能性は低いなどと分析した「処遇困難者に対する面接結果について(報告)」を作成していること,統括矯正処遇官は,同年7月12日に原告Aと面接した際,原告Aが50歳の節目にきちんと整理したいとの理由で,遺体等の取引先を申告したことなどから,今後も将来を悲観して人生の終結を決意し,計画的又は突発的に自殺,自傷行為に及ぶおそれがある旨記載した面接簿を作成していること,分類部首席矯正処遇官は,平成24年3月22日に原告Aと面接し,原告Aが処遇について強い不満を内在させており,職員に暴行等の直接的な攻撃行動に出る危険があり,職員を困惑させるために自傷,自殺企図に及ぶおそれも多分にあると思われる旨記載した面接簿を作成していることが認められる。 上記認定事実によれば,原告Aが死刑確定者として前途を悲観し,あるいは処遇に不満をもって不規則発言をしていたことは認められるものの,実際に原告Aが自傷行為に及んだ事実は認められないし,平成24年3月22日以降の心情を示す資料はなく,本件措置2の当時(平成24年8月29日)において て不規則発言をしていたことは認められるものの,実際に原告Aが自傷行為に及んだ事実は認められないし,平成24年3月22日以降の心情を示す資料はなく,本件措置2の当時(平成24年8月29日)において,原告Aの心情が不安定であったことを認めることもできない(上記認定の事実を前提にしたとしても,かかる状況が本件措置2の当時まで継続していたと推認することは困難である。)。 (3) そして,本件措置2の当時,秘密面会によって乙拘置所の規律及び秩序 を害する結果を生ずるおそれがあったとの事情は認められないし,また,原告Aにおいて,秘密面会を望まない意向であったとの事情も窺われない。 (4) そうすると,拘置所長の本件措置2は,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして,国賠法1条1項の適用上違法となると解される。 3 争点3(拘置所長がパソコンの使用を認めなかったこと(本件措置3)が違法であるか)について前判示のとおり,再審請求をする死刑確定者に刑訴法39条1項の適用,類推適用ないし準用はされないし,また,再審請求弁護人が,死刑確定者と面会する際にパソコンの持ち込みを認める法令等も存在しない。 確かに,コンピューターが普及しその技術が発達した現代社会においては,パソコンに訴訟記録等のデータを取り込み,検索できる状態にしてこれを面会の場に持ち込むことの利便性は高いと解されるが,他方で,パソコンの持ち込みを許容すれば,死刑確定者が一般社会とは厳重に隔絶した施設に拘置されているにもかかわらず,パソコンの有する通信機能等やパソコン内に保存されたデータによって法律上許容される範囲を超えた外部交通が可能となり,職員の立会いが許されない面会においてはこれを防ぐ効果的な手立てはない。仮に事前に検査等を実施するとしても,コンピューターの技術革 たデータによって法律上許容される範囲を超えた外部交通が可能となり,職員の立会いが許されない面会においてはこれを防ぐ効果的な手立てはない。仮に事前に検査等を実施するとしても,コンピューターの技術革新はめざましく,その進歩に対応した措置を適切に講じることは,現状の人的物的態勢を前提にする限り極めて困難であろうし,パソコン内に保存された大量のデータを確認することにも自ずと限界がある。 そうすると,刑事施設の長が,再審請求弁護人と死刑確定者との面会においてパソコンの使用を制限することは,現段階においては,刑事施設の管理運営上,必要かつ合理的なものというべきである。 したがって,拘置所長の本件措置3が違法であるとの原告らの主張は理由がない。 4 争点4(原告らに生じた損害額)について 前判示のとおり,本件措置2は国賠法1条1項の適用上,違法であると解されるところ,本件措置2の内容及び本件の経緯(前記前提事実)のほか,原告Bらが原告Aに面会しなかったのは,面会時間を60分とされたこと(本件措置1),パソコンの使用が認められなかったこと(本件措置3)も理由になっていることなども併せ考慮すると,原告Aが本件措置2によって被った精神的苦痛を慰謝するための慰謝料は10万円をもって相当と認め,原告Bらが本件措置2によって被った精神的苦痛を慰謝するための慰謝料はそれぞれ5万円をもって相当と認める。なお,原告Bらが被った財産的損害を認めるに足りる証拠はない。 また,上記認容額などに照らすと,上記違法行為と相当因果関係にある損害として,原告Aについて1万円,原告Bらについては各5000円の弁護士費用を認めるのが相当である。 5 結論以上によれば,原告らの請求は,国賠法1条1項に基づく損害賠償請求権に基づき,それぞれ上記4で認定した額及 て1万円,原告Bらについては各5000円の弁護士費用を認めるのが相当である。 5 結論以上によれば,原告らの請求は,国賠法1条1項に基づく損害賠償請求権に基づき,それぞれ上記4で認定した額及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余はいずれも理由がないから棄却し,仮執行宣言については相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第11民事部 裁判長裁判官小池明善 裁判官岩井一真 裁判官植草元博

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