平成23(わ)653 詐欺

裁判年月日・裁判所
平成24年10月5日 神戸地方裁判所
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判決文本文11,431 文字)

- 1 -平成平成平成平成24年10 10月5日宣告日宣告日宣告日宣告裁判所書記官裁判所書記官裁判所書記官裁判所書記官平成23年第653号詐欺被告事件判 決 主 文被告人を懲役3年6月に処する。 未決勾留日数中280日をその刑に算入する。 理 由【犯罪事実犯罪事実犯罪事実犯罪事実】被告人は,平成20年8月6日から同月7日にかけて,大阪市a区bc丁目d番e号所在の当時のf保健福祉センター(以下「福祉センター」という。)で,その職員であるAに対し,アダルトビデオ店経営による収入があるのに,無職で収入がないかのように装い,3年前より高血圧で体調が悪く,働くこともできず友人からの援助や借金で生活している旨の嘘を言った上,過去3か月間収入がなく今後もその見込みがない旨嘘の内容を記載した収入申告書を提出するなどして生活保護の支給を申請し,福祉センターの課長であるBらにそれを信じ込ませ,よって,別表記載のとおり,同年9月16日から平成23年3月3 の見込みがない旨嘘の内容を記載した収入申告書を提出するなどして生活保護の支給を申請し,福祉センターの課長であるBらにそれを信じ込ませ,よって,別表記載のとおり,同年9月16日から平成23年3月31日までの間,33回にわたり,福祉センターでその職員から直接交付を受け又は被告人名義の預金口座に振り込ませる方法により,生活保護費として合計416万1941円の金員の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させた。 【証拠】省略【補足説明補足説明補足説明補足説明】 第1 本件本件本件本件の争点 争点 争点 争点 本件公訴事実の要旨は, - 2 -被告人は,指定暴力団C構成員として活動しているものであるが,暴力団の構成員は大阪市から生活保護の適用を受けられない取扱いがなされている旨を知りながら,自己が暴力団の構成員である事実を隠し,生活保護法に基づく保護を受けようと企て,平成20年8月6日から同月7日までの間,福祉センターで,Aに対し,被告人が前記暴力団構成員として現に活動しており,前記暴力団から離脱する意思がないのに,それらの事情を隠すとともに,アダルトビデオ店経営による収入があるのに,あたかも無職で収入がない生活困窮者であるように装い,犯罪事実記載のとおりの嘘を言い,あるいは収入申告書を提出するなどして生活保護の支給を申請し,よって,生活保護費として別表記載のとおりの金員をだまし取ったというものである。 これに対して弁護人は,被告人が暴力団構成員であること,被告人が,Aに対して,公訴事実記載のとおりの申告や収入申告書の提出をするなどして生活保護の支給の申請をし,その結果,生活保護費として別表記載のとおりの金員の交付を受けたことについては争わないが,被告人は暴力団構成員である 訴事実記載のとおりの申告や収入申告書の提出をするなどして生活保護の支給の申請をし,その結果,生活保護費として別表記載のとおりの金員の交付を受けたことについては争わないが,被告人は暴力団構成員である事実を隠す欺罔行為をした事実はなく,また,被告人はアダルトビデオ店を経営しておらず収入もないのであって,申告内容に偽りはないから,被告人は無罪である旨主張した。 当裁判所は,以下の検討により,被告人が暴力団構成員であることに関する欺罔行為をしたとは認められないが,職業と収入に関する欺罔行為をした点は認定できることから,被告人は有罪であると判断した。 第2 当裁判所当裁判所当裁判所当裁判所の判断 判断 判断 判断 1 前提事実前提事実前提事実前提事実(証拠上証拠上証拠上証拠上容易容易容易容易に認定 認定 認定 認定できできできでき,かつかつかつかつ当事者間当事者間当事者間当事者間にもにもにもにも概ね争いがないいがないいがないいがない事実 事実 事実 事実) 被告人被告人被告人被告人の素性素性素性素性被告人は,Dの弟分として暴力団に所属し始め,平成19年3月頃には暴力団Cの構成員となり,少なくとも平成23年7月(この頃,警察署に脱退届を提出した。 甲16)までその地位にあった。なお,被告人は,左肩から腕にかけて入れ墨があり,左手小指が欠損していた (証人E,被告人質問,乙3)。 - 3 -また,被告人は,平成9年にDが死亡した際,従来Dが経営していた大阪市a区g町h番i号所在の「F」と称するアダルトビデオ店の経営を引き継ぎ,その後(遅くとも平成17年以降),当時の妻及びGと共にFを営業して収入を得ていた。その過程で,F内でのわいせつ図画販売目的所 a区g町h番i号所在の「F」と称するアダルトビデオ店の経営を引き継ぎ,その後(遅くとも平成17年以降),当時の妻及びGと共にFを営業して収入を得ていた。その過程で,F内でのわいせつ図画販売目的所持罪により検挙され,平成18年3月,懲役10月,4年間その刑の執行猶予の有罪判決を受けた(証人G,被告人質問,甲14)。  大阪市大阪市大阪市大阪市におけるにおけるにおけるにおける暴力団員暴力団員暴力団員暴力団員に対するするするする生活保護生活保護生活保護生活保護の適用適用適用適用平成18年3月30日,厚生労働省社会・援護局保護課長は,都道府県や政令指定都市などに宛てて,暴力団員については,生活保護の要件を満たさないものとし,急迫した状況にある場合を除いて申請を却下すべきことなどを内容とする通知を発出した。大阪市においては,生活保護に関して,この通知を踏まえた運用(以下「本件運用」という。)をしていた(甲2,3)。  被告人被告人被告人被告人によるによるによるによる生活保護生活保護生活保護生活保護の申請申請申請申請と生活保護費生活保護費生活保護費生活保護費の受給受給受給受給被告人は,平成20年8月6日,福祉センターでAと面談し,その際,3年前より高血圧で体調が悪く,働くことができず,友人からの援助や借金で生活していること,現在通院している眼科医から目の手術が必要であると言われているが,友人からのこれ以上の援助は望めず,医療費や生活費がないことから,生活保護を申請する旨などを述べた。Aは,被告人に対し,生活保護に関する説明が記載された「生活保護のしおり」を渡し,申請に必要な書類を教示するなどした。翌7日,被告人は,福祉セン 費がないことから,生活保護を申請する旨などを述べた。Aは,被告人に対し,生活保護に関する説明が記載された「生活保護のしおり」を渡し,申請に必要な書類を教示するなどした。翌7日,被告人は,福祉センターで,Aに対し,病気のため仕事ができない旨の記載のある生活保護開始(変更)申請書や,過去3か月間収入がなく今後もその見込みがない旨記載した収入申告書を提出し,Aはそれを受理した(以上の2日間の面談を,以下「本件面談」という。)。これら本件面談時における被告人の申告や提出書類を踏まえ,福祉センター所定の手続を経て,被告人に対し,別表記載の金員が生活保護費として支給された(甲2ないし4,証人A)。 2 暴力団構成員暴力団構成員暴力団構成員暴力団構成員であるであるであるである事実 事実 事実 事実を隠す欺罔行為欺罔行為欺罔行為欺罔行為の有無有無有無有無についてについてについてについて - 4 -  判断 判断 判断 判断の概要概要概要概要本件面談時,Aが被告人に対して暴力団加入の有無を明示的に尋ねたことはなく,被告人が暴力団構成員ではない旨明示的に告知したこともなかった(証人A,被告人質問。当事者間でもこの点についての争いはない。)。このような事情下で,被告人がAに対して自身が暴力団構成員でないと欺罔したといえるためには,少なくとも本件面談終了までに被告人が本件運用について概括的に認識しており,かつ本件面談の具体的状況に照らして,被告人が暴力団構成員であることを告知しなかったこと(不作為)又は告知しないで生活保護申請をしたこと(作為)が,明示的に告知した場合と刑法上同視できると認められなければならない。 当裁判所は,以下に検討するとおり,被告人が本件面談終了までに本件運用を認識し 又は告知しないで生活保護申請をしたこと(作為)が,明示的に告知した場合と刑法上同視できると認められなければならない。 当裁判所は,以下に検討するとおり,被告人が本件面談終了までに本件運用を認識していたと認めるに足りる証拠がないことから,被告人がAに対して自身が暴力団構成員であることに関して欺罔行為をしたとは認められないと判断した。  本件面談前本件面談前本件面談前本件面談前からからからから被告人被告人被告人被告人が本件運用本件運用本件運用本件運用を知っていたていたていたていたか被告人は,当公判廷で,本件面談に赴く際,本件運用のことは知らなかった旨述べるところ,少なくとも平成20年当時は,本件運用が社会常識として誰もが当然知っているはずの事柄であったとまではいえないから,この供述自体を不合理であるとして排斥することはできない。もっとも,被告人は,捜査段階では,本件面談の数日前に暴力団員の知人から本件運用のことを聞いた旨述べる(乙4,5,17)が,さほど具体性のある供述ではなく裏付けもないこと,その後公判廷では前記のとおり異なる供述をしていることなどからすると,その信用性には疑いがある。また,被告人と同じくC構成員であるEは,当公判廷で,Cの事務所が明石に移転した平成19年3月から間がない時期に,C内部の会合で,上層部が構成員に対し,「暴力団対策法第9条で禁止している15の行為」と題する書面を構成員に回し読みさせて暴力団員に禁止されている行為を説明し,その中で,暴力団員は生活保護を受けられない旨の説明をしており,被告人はそれらの会合に出席していたはずである旨供述する。しかし,この供述は信用できない。すなわち,前記書面は,暴力団対策法により禁止される行為が印刷文字で列挙され,余白に「不正に権利を取得 り,被告人はそれらの会合に出席していたはずである旨供述する。しかし,この供述は信用できない。すなわち,前記書面は,暴力団対策法により禁止される行為が印刷文字で列挙され,余白に「不正に権利を取得 - 5 -する詐欺行為.(賃借権,ローン,カード,国民保険,生保,損保等)」と手書きされているものである(甲37)ところ,Eは,会合では手書きで「生保」と書かれた部分が生活保護を意味するものとして説明がなされたというのである。しかし,前記書面の主要な記載である暴力団対策法による禁止行為に生活保護の受給は含まれていない上,「生保」との手書き記載については,その体裁(「国民保険,生保,損保」と列挙していること)からして「生命保険」を意味すると考えるのが自然であり,これを「生活保護」(あるいは「生命保険及び生活保護」)と読むのはかなり無理がある。加えて,上層部がした説明内容に関するEの供述は非常に漠然としていること,Eは,その説明がなされた会合において,他にどのような伝達事項があったか等をほとんど記憶していないことなども考慮すると,Eの公判供述が自身の記憶に基づいてなされたものかについては疑問があり,その信用性は低いというべきである。 なお,検察官は,Aが本件面談を経ても被告人の入れ墨や指の欠損に気付かなかったことから,被告人がそれらの身体的特徴を殊更に隠したと認められる旨主張する(そのように認定できるならば,そのことから被告人が本件運用を知っていたと推認する余地もないではない。)。しかし,Aの公判供述によっても,被告人が殊更にその身体的特徴を隠したと考えるべき挙動をした事実は認められない。また,被告人の身体的特徴は前記(1)のようなものであり,かつAは,被告人の身体的特徴を「さりげなく」(証人A)観察していたにすぎないことからすると,被 たと考えるべき挙動をした事実は認められない。また,被告人の身体的特徴は前記(1)のようなものであり,かつAは,被告人の身体的特徴を「さりげなく」(証人A)観察していたにすぎないことからすると,被告人が意図的に隠さなくとも,結果的にAが気付かないこともあり得る。そうすると,被告人が殊更に身体的特徴を隠したとは認定できない。結局,被告人が,本件面談に赴くまでに本件運用について認識していたと認めるに足りる証拠はない。  本件面談時本件面談時本件面談時本件面談時におけるにおけるにおけるにおけるAによるによるによるによる本件運用本件運用本件運用本件運用に関するするするする説明説明説明説明の有無等有無等有無等有無等本件面談時,Aが被告人に対して本件運用に関する説明したことを認定しうる客観的な証拠はなく,Aが被告人に交付した「生活保護のしおり」にも,本件運用に関する記載はない(証人A)。また,Aは,本件面談当時の状況について十分な記憶 - 6 -を保持しておらず,本件運用に関する説明をしたかどうかに関しても,説明している可能性が高いが確実とはいえない旨供述するにとどまる(証人A,甲4)。被告人も,当公判廷において,Aから説明を受けた記憶はない旨述べる。もっとも,被告人は,捜査段階においては,本件面談中Aから「暴力団員は受けられないとの説明があった」旨述べる(乙4,5,15,17)が,ごく概括的な供述を判で押したように繰り返すばかりで,具体性が著しく乏しい。多少具体性のある供述としては,Aからパンフレットのようなもの(前記「生活保護のしおり」を指すものと考えられる。)を見せられながら,生活保護を受ける条件のひとつとしてそのような説明を受けた旨述べられた警察官調書(乙5)があ は,Aからパンフレットのようなもの(前記「生活保護のしおり」を指すものと考えられる。)を見せられながら,生活保護を受ける条件のひとつとしてそのような説明を受けた旨述べられた警察官調書(乙5)があるが,前記のとおり,「生活保護のしおり」に本件運用に関する記載はないから,供述内容自体に疑問を差し挟む余地がある。 そうすると,被告人の捜査段階の供述に基づきAが本件運用の説明をしたと認定するのは相当でない。 よって,本件面談時,Aが被告人に対して本件運用に関する説明をした事実を認定することはできない。  まとめまとめまとめまとめ以上からすると,被告人が本件面談終了までに本件運用を認識していたと認めるに足りる証拠がないから,被告人がAに対して自身が暴力団構成員であることについて欺罔したとは認定できない。 3 職業及職業及職業及職業及び収入収入収入収入に関するするするする欺罔行為欺罔行為欺罔行為欺罔行為の有無有無有無有無についてについてについてについて  判断 判断 判断 判断の概要概要概要概要この点に関する核心的な争点は,被告人が本件面談当時もFを経営していたか否かである。弁護人は,被告人は平成18年3月の執行猶予付き判決後Fの営業はやめ,その店舗を他人に貸していたから,本件面談当時Fの経営による収入はなかったと主張するのに対し,検察官は,間接事実を総合すれば,被告人は,本件面談当時もFを経営して収入を得ていたことが推認できると主張する。当裁判所は,概ね検察官の主張するとおり,証拠上認定できるいくつかの間接事実を総合すれば,本件面談当時,被告人はFの経営により収入を得ていたものと認められるから,本件面談 - 7 -時における被告人の申 ね検察官の主張するとおり,証拠上認定できるいくつかの間接事実を総合すれば,本件面談当時,被告人はFの経営により収入を得ていたものと認められるから,本件面談 - 7 -時における被告人の申告等は欺罔行為にあたると判断した。  被告人被告人被告人被告人が本件面談本件面談本件面談本件面談の前後前後前後前後を通じてじてじてじてFの家賃家賃家賃家賃を支払支払支払支払っていたことっていたことっていたことっていたことDの息子であるHは,当公判廷において,概ね以下のように供述した。すなわち,Fの建物の所有者はIであり,DがFを経営していた際は,Hの母親名義でそれを賃借していた。Dが死亡し,Fの経営が被告人に引き継がれる際,Hの母親が被告人に建物を又貸しすることになり,当初は,家賃は被告人が直接Iに支払うこととされていたが,被告人がその支払いをしなかったため,平成17年頃,I,Hの母及びHの話合いにより,Hの母及びHが家賃として毎月18万円をIに支払うことになった。また,被告人との関係では,被告人がHに対して家賃として毎日6000円を支払うことが話し合われ,同年6月頃以降,それに基づき,被告人から家賃を受け取るようになった。被告人からの集金は,毎日Hが被告人に電話をしてF近くの路地で被告人と会い,被告人から直接現金を受け取る方法でなされていたが,被告人から支払いを受けられない日もあり,そのような時,被告人は,「今日はあかんわ。」等と述べていた。被告人のHに対する家賃の支払いは,平成17年頃から少なくとも平成20年11月頃までの間,Fに警察の捜査が入った一時期(平成18年1月頃から数か月間)を除いて続いており,支払われる金額に変動はあったが,全く支払いのない月はなかった。また,家賃を持参するのは専ら 成20年11月頃までの間,Fに警察の捜査が入った一時期(平成18年1月頃から数か月間)を除いて続いており,支払われる金額に変動はあったが,全く支払いのない月はなかった。また,家賃を持参するのは専ら被告人で,被告人以外の者から受け取ったことはなかった。なお,被告人から,Fの経営をやめる旨の話を聞いたことはない。以上のように述べる。この供述は,かなり具体的で,客観的な証拠(甲36,65参照)による裏付けがある上,被告人自身も,細かい点を除いて概ねこれに沿う供述をしていることから,信用できる。したがって,この供述どおりの事実があったと認定すべきである。  被告人被告人被告人被告人が本件面談後本件面談後本件面談後本件面談後にもにもにもにもFの営業営業営業営業に関与関与関与関与していたしていたしていたしていたことことことこと ア Jの供述供述供述供述とそのとそのとそのとその信用性信用性信用性信用性Fから2度にわたってDVDを購入したJは,検察官に対して,以下のように述べる。すなわち,平成21年又は平成22年の1月から3月までの間,客としてFを訪れた際,被告人が単独で応対し,「郵送もしますよ。」「たくさん買うんだったら - 8 -1枚1000円にしますわ。」などと答えた。その後の平成22年5月頃,JがDVDを購入するためにFに電話をかけた際,被告人が電話口に出て,「10枚や20枚では,1枚1000円では売れへんわ,こっちが損するわ。」「最低でも50枚は買うてもらわな。」などと言った。その数日後の被告人との通話で,被告人は代金の振込口座として被告人名義の銀行口座を教示するなどし,後日,Jは,その口座に代金として5万円を振り込んだ 最低でも50枚は買うてもらわな。」などと言った。その数日後の被告人との通話で,被告人は代金の振込口座として被告人名義の銀行口座を教示するなどし,後日,Jは,その口座に代金として5万円を振り込んだ。同年9月頃にも,被告人と電話でDVDの売買について話したが,その際,被告人は当初「50枚じゃないと安くはならん。」と言ったが,Jがそんなにたくさんはいらない旨述べると,「30枚やったら1枚1000円にするわ。」等と言った。その後,Jは被告人にDVDを注文し,代金3万円を被告人名義の銀行口座に振り込んだ。以上のとおり供述する。 この供述も相当具体的で,不自然・不合理な点もなく,客観的な資料による裏付けもある。また,Jが殊更に被告人に不利な虚偽の供述をする事情も見当たらない。被告人も,Jに対して2度にわたってDVDを販売し,それに際して会話を交わした事実は認めており(被告人質問),Jの供述と大きく抵触するような点はない。以上からすると,Jの供述は信用できる。 イ Kの供述供述供述供述とそのとそのとそのとその信用性信用性信用性信用性以前Cの構成員であったKは,当公判廷において,平成22年6月頃から8月頃にかけ,被告人が,Cの事務所で,Kに対し自身がビデオ店をやっている旨話したり,裏ビデオを1枚500円で卸すなどと持ち掛け,あるいは多数のDVDを持ち込んで他の構成員らに購入を勧めていた旨供述するところ,この供述も,相応に具体性がある上,明らかに不合理な点はない。また,被告人とさほど深い人間関係はなく,現在では暴力団を脱退しているKが,敢えて被告人に不利な虚偽供述をする理由も見出せない。こうしたことからKの供述も信用できる(弁護人は,Kが反対尋問において拒絶的な態度を示し,自身の供述調書の手控えを持っ は暴力団を脱退しているKが,敢えて被告人に不利な虚偽供述をする理由も見出せない。こうしたことからKの供述も信用できる(弁護人は,Kが反対尋問において拒絶的な態度を示し,自身の供述調書の手控えを持っているか否かという質問について記憶がない旨答えるなどしたことから,その供述態度が不自然かつ不合理である旨主張する。しかし,Kが拒絶的な態度をとったのは過去の自身の刑事事件や暴力団組織脱退の経緯,他の暴力団構成員の特定に関する質問を受けた場面以降であるが,そうした点について供述することに抵抗感や恐怖感を覚えるこ - 9 -とが不自然であるとは言い難い。また,供述調書に関する質問に対する供述はいささか要領を得ないものではあるが,供述全体の信用性に影響する事柄ではない。)。  小括Hの供述から認定できる事実に加え,前記の前提事実を総合すると,被告人は,自身でFを経営していたことが明らかな平成17年以降,本件面談の時期を経て,その後に至るまで,継続的にFの家賃をHに支払っており,その際,一貫してFの経営者として振る舞っていたことが認められる。また,J及びKの各供述を前提とすると,被告人は,遅くとも平成22年の時点で,Fの客と応対し,自らの判断で商品の販売条件について交渉した上,販売するか否かを決定し,販売した商品の代金を受領するなどの行為を,ある程度継続的に行っていたほか,周囲に対して自身がアダルトビデオ店を経営している旨話し,かつそれに沿う具体的な言動をしていたのであり,こうした事情からすれば,平成22年の時点において,被告人が,単独であるいはGなどの他人と共同して,Fの経営を行っていたと推認できる。それに加え,被告人は,平成18年3月以降,本件面談時の前後も通じて,Fの鍵を所持し続けていたこと(被告人質問), 被告人が,単独であるいはGなどの他人と共同して,Fの経営を行っていたと推認できる。それに加え,被告人は,平成18年3月以降,本件面談時の前後も通じて,Fの鍵を所持し続けていたこと(被告人質問),被告人名義の銀行預金口座には,平成18年4月以降毎月断続的な入金があり,本件面談の直前の平成20年5月から同年7月までの間には合計で30万円以上の入金があること(甲19,なお,被告人が金融業者から借入れを行うことは困難な状況にあった。甲27)なども考慮すると,本件面談当時,被告人はFを経営して収入を得ていたことが強く推認できる。 反対証拠反対証拠反対証拠反対証拠についてについてについてについて前記の推認に反する証拠としては,G及び被告人の各公判供述がある。しかし,以下に述べるとおり,いずれも信用性に乏しく,前記の推認を覆すに足りない。まず,Gは,当公判廷において,平成18年3月以降Fの経営者はGであり,被告人はFの営業には一切かかわっていない旨述べる。しかし,Gは,平成18年以降被告人がFに出入りしたのは自転車を置かせてくれと言って顔を出した程度であると述べたり,Fの家賃について,被告人の使いの者に渡していたと証言するなど,重要な点において前記のJの供述と抵触し,被告人の公判供述とも食い違っている。 - 10 -また,Gは,警察官に対しては,平成18年以降もFの経営者は被告人で,Gは雇われていただけであるとの趣旨の供述をしていた(甲13)ほか,証人喚問前には,弁護人の求めに応じて前記警察官に対する供述を前提とした陳述書(弁5)を作成していた。公判廷での供述は,これらと大きく異なるが,そうした変遷が生じた理由に関する説明(従来の供述は平成18年以前の事情についてのものであった旨)は不自然で,到底納得できないもので 弁5)を作成していた。公判廷での供述は,これらと大きく異なるが,そうした変遷が生じた理由に関する説明(従来の供述は平成18年以前の事情についてのものであった旨)は不自然で,到底納得できないものである。 また,被告人も,公判廷で,平成18年3月以降被告人はFの経営から離れており,本件面談当時のFの経営者はGであった旨述べるが,捜査段階では自身が一貫して経営者であった旨述べたことがあり(乙3),公判段階でも,当初は,平成18年3月以降,Fの家賃の支払いにも営業にも一切かかわっていない旨述べていたのに,HやJの供述が証拠として現れるや,それに合わせて供述を変えるなど,その変遷ぶりは甚だしく,供述が変わった理由として被告人が述べるところ(Jの調書を見て思い出した,あるいは,Hをかばうために隠していた旨)も,不合理ないし不可解というほかない。また,最終的な供述内容を見ても,平成18年3月以降Hに家賃を渡していたのは,Fの経営者とHとの間で家賃の支払いを仲介していただけである旨述べ,あるいは,FでJに応対したのはたまたまテレビを見にFに立ち寄っていた折であるなどと述べるが,いずれも相当不自然な話であり,それ自体信じがたい。 結論以上の次第で,被告人は,本件面談当時,Fの経営による収入を得ていたと認められ,それにもかかわらず,Aに対し無職・無収入であるかのような申告をしているのであるから,そこに欺罔行為があったと認められる。 【法令法令法令法令の適用適用適用適用】罰  条               刑法246条1項未決勾留日数の算入  刑法21条訴訟費用の負担       刑事訴訟法181条1項ただし書(負担させない) - 11 -【量刑量刑    刑法246条1項未決勾留日数の算入  刑法21条訴訟費用の負担       刑事訴訟法181条1項ただし書(負担させない) - 11 -【量刑量刑量刑量刑の理由 理由 理由 理由】2日間にわたる大阪市職員との面談の中で,自身の職業と収入を偽り続けたものであり,大胆な犯行である。400万円を超える金員をだまし取っており,被害額もかなり大きい。被告人は,本件犯行当時,前に犯した罪で執行猶予中であった。加えて,公判においては偽りの弁解を重ねて罪を逃れようとしており,反省の態度を見出すことができない。被告人に有利な事情としては,被害のごく一部(16万円余り)が弁償されていること,前科は多いが同種の前科はないこと等を挙げうるにとどまる。被告人の刑事責任は相当重く,3年を相当程度超える実刑は免れないものと判断した(求刑は懲役4年)。 平成平成平成平成24年10 10月10 10日 神戸神戸神戸神戸地方裁判所地方裁判所地方裁判所地方裁判所第4刑事部刑事部刑事部刑事部 裁判官 丸 田 顯

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